説明

理化学的モニタリングユニット

【課題】可搬式キャビネットに導電率計およびTOC計を直列に設け、1台または最少の台数で複数個所でのインライン測定を行えるようにすることにより、初期的および定期的な経済的な負担を軽減するようにした理化学的モニタリングユニットを提供する。
【解決手段】理化学的モニタリングユニットは、導電率計41およびTOC計30を直列に設けた可搬式キャビネット10に、サンプル水を導入して、モニター盤40の記録計42に導電率、温度およびTOC値を連続記録するようにした。これにより、理化学的モニタリングユニットを可搬式または固定式に使用でき、初期的および定期的な経済的な負担を軽減することができる。また、導電率およびTOC値が設定値を越えた場合には、モニター盤40に警報が発信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は理化学的モニタリングユニットに関し、特に一般産業向け純水製造装置や純水供給装置および医薬品製造用の純水製造装置や純水供給装置の導電率、温度および有機体炭素(TOC)値の測定に用いられる理化学的モニタリングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製薬用水製造システムにおける精製水製造部分は、図7に示すように、精製水が製造される精製水製造装置710と、精製水製造装置710から導出された精製水供給パイプ720と、精製水供給パイプ720が接続された精製水タンク740と、精製水タンク740から導出された精製水供給パイプ750と、精製水供給パイプ750の途中に配置された精製水供給ポンプ760と、精製水供給パイプ750から分岐され精製水タンク740に帰還する精製水供給パイプ770と、精製水供給パイプ770の途中に接続されたシンク780と、精製水供給パイプ770の途中に接続された医薬品製造装置790とから、その主要部が構成されていた。精製水供給パイプ720には、第1の導電率記録警報計(CRA)721が固定的に接続されている場合が多いが、精製水供給パイプ720に第1のTOC記録警報計(TOC)722が装備されている場合は多くなかった。また、精製水供給パイプ770の精製水タンク740の近傍には、第2の導電率記録警報計(CRA)771が固定的に接続されている場合が多いが、精製水供給パイプ770に第2のTOC記録警報計(TOC)772が装備されている場合は多くなかった。なお、符号741は、精製水タンク740のレベルセンサー(LS)を示す。
【0003】
また、従来の製薬用水製造システムにおける注射用水製造部分は、図7に示すように、精製水供給パイプ750が接続された蒸留水製造装置810と、蒸留水製造装置810から導出された蒸留水供給パイプ820と、蒸留水供給パイプ820が接続された注射用水タンク830と、注射用水タンク830から導出された注射用水供給パイプ840と、注射用水供給パイプ840に接続された注射用水供給ポンプ850と、注射用水供給ポンプ850から導出され注射用水タンク830に帰還する注射用水供給パイプ860と、注射用水供給パイプ860の途中に接続されたシンク870と、注射用水供給パイプ860の途中に接続された医薬品製造装置880とから、その主要部が構成されていた。蒸留水供給パイプ820には、第3の導電率記録警報計(CRA)821が固定的に接続されている場合が多いが、蒸留水供給パイプ820に第3のTOC記録警報計(TOC)822が装備されている場合は多くなかった。また、注射用水供給パイプ860の注射用水タンク830の近傍には、第4の導電率記録警報計(CRA)861が固定的に接続されている場合が多いが、注射用水供給パイプ860に第4のTOC記録警報計(TOC)862が装備されている場合は多くなかった。なお、符号831は、注射用水タンク830のレベルセンサー(LS)を示す。
【0004】
ところで、第十五改正日本薬局方によれば、製薬用水の品質管理として、理化学的モニタリングによる導電率およびTOC値の管理が求められている。すなわち、製薬用水の日常管理項目については、導電率およびTOC値の管理が非常に有用であり、また製薬用水システムの理化学的なモニタリングは、通例、導電率およびTOC値を指標として行われると述べられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第十五改正日本薬局方、2006年5月31日、厚生労働省発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の製薬用水製造システムでは、純水製造装置や純水供給装置に設置される導電率計およびTOC計は、装置の測定する個所毎に固定されていた。医薬品製造用に使用される純水には、精製水、注射用水、逆浸透膜水,限外濾過膜水等があるが、いずれも導電率およびTOC値の測定を要求されている。純水の導電率およびTOC値の測定は、純水製造装置はもとより純水供給装置にも要求される。一般産業や製薬工場に設備される純水製造装置や純水供給装置は、工場に1基のみではなく、数基ある場合が多く、各装置毎に導電率計およびTOC計を設置すると初期的な経済的な負担が大きくなるという問題点があった。また、メンテナンス時、特に製薬向けの場合は、定期的なキャリブレーションが要求されるため、定期的な経済的な負担が大きくなるという問題点があった。
【0007】
ところで、平成23年に改正が予定されている第十六改正日本薬局方では、「精製水」および「注射用水」の各条の改正が検討されているといわれている。具体的には、純度試験で、TOC<=0.50mg/L以下が検討されている。このため、オフライン測定では、サンプリングおよび測定記録が手動となるので、サンプリング容器、サンプリング環境等により測定時差が生じ、サンプリングエラーおよび測定記録エラーが発生するという問題点がある。このため、第十六改正日本薬局方では、「精製水」および「注射用水」についてはインライン測定を行うことが検討されている。
【0008】
本発明の目的は、上述の点に鑑み、可搬式キャビネットに導電率計およびTOC計を直列に設け、1台または最少の台数で複数個所でのインライン測定を行えるようにすることにより、初期的および定期的な経済的な負担を軽減するようにした理化学的モニタリングユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の理化学的モニタリングユニットは、導電率計およびTOC計を直列に設けた可搬式キャビネットにサンプル水を導入して、前記導電率計および前記TOC計により測定された導電率、温度およびTOC値をモニター盤の記録計に連続記録できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の理化学的モニタリングユニットは、請求項1に記載の理化学的モニタリングユニットにおいて、導電率およびTOC値が設定値を越えた場合に前記モニター盤に警報が発信されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の理化学的モニタリングユニットは、請求項1に記載の理化学的モニタリングユニットにおいて、導電率計用電極を1台または2台備え、前記モニター盤に設置する導電率計が2以上のレンジ設定を行えるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の理化学的モニタリングユニットは、請求項1に記載の理化学的モニタリングユニットにおいて、前記理化学的モニタリングユニットにストッパー付きキャスターを設け、可搬式または固定式に切換使用可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の理化学的モニタリングユニットによれば、導電率計およびTOC計を直列に設けた可搬式キャビネットにサンプル水を導入して、導電率計およびTOC計により測定された導電率、温度およびTOC値をモニター盤の記録計に連続記録できるようにしたことにより、導電率計およびTOC計の台数を削減することを可能にして、初期的および定期的な経済的な負担を軽減することができるという効果がある。
【0014】
請求項2に記載の理化学的モニタリングユニットによれば、導電率およびTOC値が設定値を越えた場合に前記モニター盤に警報が発信されることにより、計測者はサンプル水の異常を迅速に知ることができるという効果がある。
【0015】
請求項3に記載の理化学的モニタリングユニットによれば、導電率計用電極を1台または2台備え、前記モニター盤に設置する導電率計が2以上のレンジ設定を行えるようにしたので、導電率が異なるレンジに属する複数種類のサンプル水を容易に測定することが可能になるという効果がある。
【0016】
請求項4記載の理化学的モニタリングユニットは、理化学的モニタリングユニットにストッパー付きキャスターを設けたことにより、可搬式または固定式に切換使用することが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a),(b)および(c)は本発明の実施例1に係る理化学的モニタリングユニットの平面図、正面図および側面図である。
【図2】実施例1に係る理化学的モニタリングユニットのブロック構成図である。
【図3】実施例1に係る理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムのプロセス図である。
【図4】実施例1に係る理化学的モニタリングユニットの動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例2に係る理化学的モニタリングユニットのブロック構成図である。
【図6】実施例2に係る理化学的モニタリングユニットの動作を示すフローチャートである。
【図7】従来の理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムのプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1(a),(b)および(c)は、本発明の実施例1に係る理化学的モニタリングユニットの外観を示す平面図、正面図および側面図である。実施例1に係る理化学的モニタリングユニットは、直方体状の枠体で形成された可搬式キャビネット10と、可搬式キャビネット10の下段部に設けられたセル配管取付部20と、可搬式キャビネット10の中段部に配置されたTOC計30と、可搬式キャビネット10の上段部に配置されたモニター盤40と、可搬式キャビネット10の下面四隅に取り付けられたストッパー付きキャスター50とを含んで構成されている。なお、理化学的モニタリングユニットは、プラグ46(図2参照)を通じて家庭用交流電源100Vが給電されるようになっている。
【0020】
図2は、実施例1に係る理化学的モニタリングユニットのブロック構成図である。
【0021】
セル配管取付部20には、図2に示すように、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22と、停止時にサンプル水導入チューブ11,11内の水をブローするためのブロー弁23,24と、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22に接続された導電率計用電極25とが配設されている。なお、セル配管取付部20には、2本のサンプル水導入チューブ11,11が付属されている。第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22は、理化学的モニタリングユニットに導入するサンプル水を切り換える役目をする。ブロー弁23,24は、停止時にサンプル水導入チューブ11,11および理化学的モニタリングユニット内に留まったサンプル水を逃がす役目をする。
【0022】
導電率計用電極25は、導電率を測定する電極である。導電率計用電極25に電気的に接続される、モニター盤40に設けられた導電率計41は、2サンプルの水質を同時に測定することが可能であるので、導電率計用電極25は、1台または2台備えることができる。
【0023】
TOC計30は、オリフィス33を通じて外部に導通している。TOC計30は、さらに、レギュレーター311と、第1センサー312と、UV(紫外線)チャンバー313と、UVランプ314と、第2センサー315と、流量計316と、第3センサー317と、CPU(中央処理装置)318とを含んで構成されている。なお、本実施例では、TOC計30をUV酸化方式としたが、燃焼方式、燃焼触媒酸化方式、湿式酸化方式等の他の方式であっても同様に使用することができる。
【0024】
モニター盤40は、導電率および温度を指示する導電率指示計である導電率計(CIA)41と、サンプル水の導電率、温度およびTOC値を記録する記録計42と、導電率またはTOC値が警報基準値(アラートレベル)の設定値以上の場合に点灯する警報表示灯43と、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22が手動開閉のときに記録計42のチャンネルを切り換えるサンプル水仕分用スイッチ44と、モニター盤40全体の動作を制御するシーケンサー45とを含んで構成されている。
【0025】
記録計42は、第1〜第6チャンネルを有しており、第1〜第3チャンネルが第1のサンプル水切換弁21から導入されるサンプル水の導電率、温度およびTOC値の記録に使用され、第4〜第6チャンネルが第2のサンプル水切換弁22から導入されるサンプル水の導電率、温度およびTOC値の記録に使用されるようになっている。なお、記録計42の記録方式は、紙式、電子式、パーソナルコンピュータ接続式等のどのような方式であってもよい。
【0026】
サンプル水仕分用スイッチ44は、図2中に示すように、第1のサンプル水切換弁21から導入されるサンプル水を選択する「第1弁」位置と、第2のサンプル水切換弁22から導入されるサンプル水を選択する「第2弁」位置とを手動で切り換えるロータリー切換スイッチである。サンプル水仕分用スイッチ44において「第1弁」位置が選択されると、記録計42において第1〜第3チャンネルが選択され、サンプル水仕分用スイッチ44において「第2弁」位置が選択されると、記録計42において第4〜第6チャンネルが選択される。
【0027】
図3は、実施例1に係る理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムのプロセス図である。
【0028】
実施例1に係る理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムにおける精製水製造部分は、図3に示すように、精製水が製造される精製水製造装置310と、精製水製造装置310から導出された精製水供給パイプ320と、精製水供給パイプ320が接続された精製水タンク340と、精製水タンク340から導出された精製水供給パイプ350と、精製水供給パイプ350の途中に配置された精製水供給ポンプ360と、精製水供給パイプ350から分岐され精製水タンク340に帰還する精製水供給パイプ370と、精製水供給パイプ370の途中に接続されたシンク380と、精製水供給パイプ370の途中に接続された医薬品製造装置390とから、その主要部が構成されている。精製水供給パイプ320の精製水タンク340の近傍には、第1のサンプリング弁321が装備されている。また、精製水供給パイプ370には、第2のサンプリング弁371が装備されている。なお、符号341は、精製水タンク340のレベルセンサー(LS)を示す。
【0029】
また、実施例1に係る理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムにおける注射用水製造部分は、図3に示すように、精製水供給パイプ350が接続された蒸留水製造装置410と、蒸留水製造装置410から導出された蒸留水供給パイプ420と、蒸留水供給パイプ420が接続された注射用水タンク430と、注射用水タンク430から導出された注射用水供給パイプ440と、注射用水供給パイプ440に接続された注射用水供給ポンプ450と、注射用水供給ポンプ450から導出され注射用水タンク430に帰還する注射用水供給パイプ460と、注射用水供給パイプ460の途中に接続されたシンク470と、注射用水供給パイプ460の途中に接続された医薬品製造装置480とから、その主要部が構成されている。蒸留水供給パイプ420には、第3のサンプリング弁421が装備されている。また、注射用水供給パイプ440の注射用水タンク430の近傍には、第4のサンプリング弁461が装備されている。なお、符号431は、注射用水タンク430のレベルセンサー(LS)を示す。
【0030】
図4は、実施例1に係る理化学的モニタリングユニットの第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22が手動切換であるときの動作を示すフローチャートである。
【0031】
次に、このように構成された実施例1に係る理化学的モニタリングユニットの動作について、サンプル水導入チューブ11を2本使用する場合を例にとって説明する。
【0032】
まず、精製水をサンプル水とするモニタリングを開始するために、計測者は、可搬式キャビネット10を水平方向に押してストッパー付きキャスター50を転がしながら実施例1に係る理化学的モニタリングユニットを精製水タンク340の近傍まで移動させる。
【0033】
次に、計測者は、2本のサンプル水導入チューブ11,11により第1のサンプリング弁321および第2のサンプリング弁371と理化学的モニタリングユニットとの間を接続する(図4のステップS101)。詳しくは、一方のサンプル水導入チューブ11の一端を第1のサンプリング弁321に水密的に固着し、他端を第1のサンプル水切換弁21に水密的に固着する。また、他方のサンプル水導入チューブ11の一端を第2のサンプリング弁371に水密的に固着し、他端を第2のサンプル水切換弁22に水密的に固着する。以下、便宜上、第1のサンプリング弁321からのサンプル水である精製水を一次側精製水といい、第2のサンプリング弁371からのサンプル水である精製水を二次側精製水という。
【0034】
次に、 計測者は、手動で第1のサンプル水切換弁21を開とする(図4のステップS102)。すると、第1のサンプリング弁321からサンプル水である一次側精製水がサンプル水導入チューブ11を通じて第1のサンプル水切換弁21に至り、理化学的モニタリングユニット内に導入される。理化学的モニタリングユニット内に導入されたサンプル水である一次側精製水の一部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第1センサー312、UVチャンバー313、第2センサー315、および流量計316を経由して外部に排水されるようになる。また、サンプル水である一次側精製水の他部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第3センサー317、およびオリフィス33を経由して外部に排水されるようになる。
【0035】
続いて、計測者は、TOC計30への100mL/min以上の導入水量を、図示しない調整手段により、例えば、20mL/min程度となるように調整する(図4のステップS103)。
【0036】
次に、計測者は、サンプル水仕分用スイッチ44を「第1弁」位置に操作することにより、第1のサンプル水切換弁21側に設定する(図4のステップS104)。すると、記録計42において、第1〜第3チャンネルが選択される。
【0037】
続いて、記録計42は、現在の日時を印字する(図4のステップS105)。
【0038】
次に、記録計42は、第1のサンプリング弁321からのサンプル水である一次側精製水の導電率、温度およびTOC値を記録する(図4のステップS106)。詳しくは、記録計42は、導電率計用電極25を通じて導電率計41で計測されたサンプル水の導電率および温度を記録する。また、記録計42は、TOC計30を通じて計測されたTOC値を記録する。具体的には、TOC計30では、サンプル水はレギュレーター311を通過し、その際にサンプル水の圧力変動が緩衝されTOC計30内に一定条件のサンプル水が供給される。レギュレーター311の二次側で分岐されたサンプル水は、第3センサー317を通過し温度および比抵抗が測定され、オリフィス33を経由してTOC計30外に排水される。次に、レギュレーター311の二次側で分岐された残りのサンプル水は、第1センサー312を通過し、温度および導電率が測定される。続いて、UVチャンバー313内の合成石英管を通過する際にサンプル水中のTOCはUVランプ314からの強力な紫外線光により酸化分解され二酸化炭素に変化する。さらに、サンプル水は、第2センサー315により酸化後の温度および導電率が測定され、流量計316を経由した後に、TOC計30外に排水される。このように、TOC計30は、サンプル水の酸化前後の導電率を指標として水温や水質の条件による補正を行いながら連続的にTOC値の測定を行う。
【0039】
サンプル水である一次側精製水の一定時間(例えば、1〜2時間)のモニタリングが終了すると、計測者は、手動で第1のサンプル水切換弁21を閉とするとともに、第2のサンプル水切換弁22を開とする(図4のステップS107)。すると、第1のサンプリング弁321からのサンプル水である一次側精製水が第1のサンプル水切換弁21を通じて理化学的モニタリングユニット内に導入されなくなる一方、第2のサンプリング弁371からのサンプル水である二次側精製水がサンプル水導入チューブ11を通じて第2のサンプル水切換弁22に至り、理化学的モニタリングユニット内に導入される。理化学的モニタリングユニット内に導入されたサンプル水である二次側精製水の一部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第1センサー312、UVチャンバー313、第2センサー315、および流量計316を経由して外部に排水されるようになる。また、サンプル水である二次側精製水の他部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第3センサー317、およびオリフィス33を経由して外部に排水されるようになる。
【0040】
次に、計測者は、サンプル水仕分用スイッチ44を「第2弁」位置に操作することにより、第2のサンプル水切換弁22側に設定する(図4のステップS108)。すると、記録計42において、第4〜第6チャンネルが選択される。
【0041】
続いて、記録計42は、現在の日時を印字する(図4のステップS109)。
【0042】
次に、記録計42は、第4〜第6チャンネルにサンプル水である二次側精製水の導電率、温度およびTOC値を記録する(図4のステップS110)。詳しくは、記録計42は、導電率計用電極25を通じて導電率計41で計測された導電率および温度を記録する。また、記録計42は、TOC計30を通じて計測されたTOC値を記録する。TOC計30内での詳細な動作については、すでに述べたので割愛する。
【0043】
サンプル水である二次側精製水の一定時間(例えば、1〜2時間)のモニタリングが終了すると、計測者は、手動で第2のサンプル水切換弁22を閉とする(図4のステップS111)。以上を繰り返し実行することにより、一次側精製水および二次側精製水をサンプル水とするモニタリングのデータが蓄積される。
【0044】
一次側精製水および二次側精製水をサンプル水とするモニタリングを停止すると、計測者は、一方のサンプル水導入チューブ11の一端を第1のサンプリング弁321から取り外すとともに、他方のサンプル水導入チューブ11の一端を第2のサンプリング弁371から取り外す。必要に応じて、一方のサンプル水導入チューブ11の他端も第1のサンプル水切換弁21から取り外すとともに、他方のサンプル水導入チューブ11の他端も第2のサンプル水切換弁22から取り外す。
【0045】
次に、注射用水をサンプル水とするモニタリングを開始するために、計測者は、可搬式キャビネット10を水平方向に押してストッパー付きキャスター50を転がしながら実施例1に係る理化学的モニタリングユニットを注射用水タンク430の近傍まで移動させる。
【0046】
そして、注射用水をサンプル水とするモニタリングを開始するために、2本のサンプル水導入チューブ11,11により第3のサンプリング弁421および第4のサンプリング弁461と理化学的モニタリングユニットとの間を接続する(図4のステップS101)。詳しくは、一方のサンプル水導入チューブ11の一端を第3のサンプリング弁421に水密的に固着し、他端を第1のサンプル水切換弁21に水密的に固着する。また、他方のサンプル水導入チューブ11の一端を第4のサンプリング弁461に水密的に固着し、他端を第2のサンプル水切換弁22に水密的に固着する。以下、便宜上、第1のサンプリング弁321からのサンプル水である注射用水を一次側注射用水といい、第2のサンプリング弁371からのサンプル水である注射用水を二次側注射用水という。
【0047】
以下、一次側精製水および二次側精製水をサンプル水とするモニタリングの場合と同様に、ステップS101〜S111を一次側注射用水および二次側注射用水に対して繰り返し実行して、一次側注射用水および二次側注射用水をサンプル水とするモニタリングを行う。これを繰り返し実行することにより、一次側注射用水および二次側注射用水をサンプル水とするモニタリングのデータが蓄積される。
【0048】
なお、精製水および注射用水以外の逆浸透膜水,限外濾過膜水等をサンプル水とするモニタリングが必要な場合には、必要な回数だけ理化学的モニタリングユニットを移動させて、ステップS101〜S111を繰り返すことにより必要なモニタリングを行うことができる。
【0049】
実施例1によれば、導電率計41の導電率計用電極25およびTOC計30をサンプル水の流路に直列に設けた可搬式キャビネット10にサンプル水を導入して、導電率計41およびTOC計30により測定された導電率、温度およびTOC値をモニター盤40の記録計42に連続記録できるようにしたことにより、1台または最小台数の理化学的モニタリングユニットを移動させて必要な個所での必要な種類のサンプル水のモニタリングを繰り返すことができるので、初期的および定期的な経済的な負担を軽減することができる。
【実施例2】
【0050】
図5は、本発明の実施例2に係る理化学的モニタリングユニットのブロック構成図である。実施例2に係る理化学的モニタリングユニットは、図2に示された実施例1に係る理化学的モニタリングユニットにおいて第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22が手動切換であったのに対して、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22を電磁弁で形成し、自動切換可能にするようにしたものである。したがって、実施例2に係る理化学的モニタリングユニットは、図2に示された実施例1に係る理化学的モニタリングユニットとほぼ同様に構成されているが、モニター盤40にサンプル水仕分用スイッチ44の代わりに第1のサンプル水切換スイッチ47および第2のサンプル水切換スイッチ48が配設されて、これらが第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22に電気的に接続されている点が異なっている。第1のサンプル水切換スイッチ47および第2のサンプル水切換スイッチ48は、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22が自動切換の場合の、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22の開閉スイッチである。自動切換の場合には、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22の開閉が時間の経過に応じて切り換わるようになっている。また、モニター盤40には、理化学的モニタリングユニットによるモニタリングの運転を指示する運転スイッチ49が設けられている。
【0051】
第1のサンプル水切換スイッチ47は、図5中に示すように、第1のサンプル水切換弁21を開く「開」位置と、第1のサンプル水切換弁21の開閉を自動とする「自動」位置と、第1のサンプル水切換弁21を閉じる「閉」位置とを手動で切り換えるロータリー切換スイッチである。第2のサンプル水切換スイッチ48も、図5中に示すように、第2のサンプル水切換弁22を開く「開」位置と、第2のサンプル水切換弁22の開閉を自動とする「自動」位置と、第2のサンプル水切換弁22を閉じる「閉」位置とを手動で切り換えるロータリー切換スイッチである。運転スイッチ49は、図5中に示すように、理化学的モニタリングユニットによるモニタリングの休止を指示する「休止」位置と、理化学的モニタリングユニットによるモニタリングの運転を指示する「運転」位置とを手動で切り換えるロータリー切換スイッチである。
【0052】
なお、その他の部分については、図2に示された実施例1に係る理化学的モニタリングユニットの対応する部分と同様に構成されているので、対応部分には同一の符号を付して、それらの詳しい説明を省略する。
【0053】
実施例2に係る理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムにおける精製水製造部分および注射用水製造部分は、図3に示した実施例1に係る理化学的モニタリングユニットが接続される製薬用水製造システムにおける精製水製造部分および注射用水製造部分と同様に構成されているので、それらの詳しい説明を省略する。
【0054】
図6は、実施例2に係る理化学的モニタリングユニットの第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22が自動切換のときのフローチャートを示す。
【0055】
次に、このように構成された実施例2に係る理化学的モニタリングユニットの動作について、サンプル水導入チューブ11を2本使用する場合を例にとって説明する。
【0056】
まず、精製水をサンプル水とするモニタリングを開始するために、計測者は、可搬式キャビネット10を水平方向に押してストッパー付きキャスター50を転がしながら実施例1に係る理化学的モニタリングユニットを精製水タンク340の近傍まで移動させる。
【0057】
次に、計測者は、サンプル水導入チューブ11を第1のサンプリング弁321および第2のサンプリング弁371と理化学的モニタリングユニットとの間に接続する(図6のステップS201)。詳しくは、一方のサンプル水導入チューブ11の一端を第1のサンプリング弁321に水密的に固着し、他端を第1のサンプル水切換弁21に水密的に固着する。また、他方のサンプル水導入チューブ11の一端を第2のサンプリング弁371に水密的に固着し、他端を第2のサンプル水切換弁22に水密的に固着する。
【0058】
次に、計測者は、第1のサンプル水切換スイッチ47および第2のサンプル水切換スイッチ48をそれぞれ「自動」位置に操作することにより、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22を自動切換側とする(図6のステップS202)。
【0059】
続いて、計測者は、運転スイッチ49を「運転」位置に設定する(ステップS203)。
【0060】
これにより、第1のサンプル水切換弁21が自動的に開く(図6のステップS204)。すると、第1のサンプリング弁321からサンプル水である一次側精製水がサンプル水導入チューブ11を通じて第1のサンプル水切換弁21に至り、理化学的モニタリングユニット内に導入される。理化学的モニタリングユニット内に導入されたサンプル水である一次側精製水の一部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第1センサー312、UVチャンバー313、第2センサー315、および流量計316を経由して外部に排水されるようになる。また、サンプル水である一次側精製水の他部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第3センサー317、およびオリフィス33を経由して外部に排水されるようになる。
【0061】
続いて、計測者は、TOC計30への100mL/min以上の導入水量を、図示しない調整手段により、例えば、20mL/min程度となるように調整する(図6のステップS205)。
【0062】
すると、記録計42は、現在の日時を印字する(図6のステップS206)。
【0063】
次に、記録計42は、第1〜第3チャンネルにサンプル水である一次側精製水の導電率、温度およびTOC値を記録する(図6のステップS207)。詳しくは、記録計42は、導電率計用電極25を通じて導電率計41で計測されたサンプル水である一次側精製水の導電率および温度を記録する。また、記録計42は、TOC計30を通じて計測されたTOC値を記録する。なお、TOC計30の詳しい動作については、実施例1に係る理化学的モニタリングユニットにおけるTOC計30の動作と全く同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0064】
続いて、モニター盤40は、一定時間(設定は、任意)経過後、モニター盤40のシーケンサー45を介して第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22を自動的に切り換える(図6のステップS208)。ここでは、第1のサンプル水切換弁21が閉となり、第2のサンプル水切換弁22が開となる。すると、第2のサンプリング弁371からサンプル水である二次側精製水がサンプル水導入チューブ11を通じて第2のサンプル水切換弁22に至り、理化学的モニタリングユニット内に導入される。理化学的モニタリングユニット内に導入されたサンプル水である二次側精製水の一部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第1センサー312、UVチャンバー313、第2センサー315、および流量計316を経由して外部に排水されるようになる。また、サンプル水である二次側精製水の他部は、導電率計用電極25、レギュレーター311、第3センサー317、およびオリフィス33を経由して外部に排水されるようになる。
【0065】
次に、記録計42は、日時を印字する(図6のステップS209)。
【0066】
続いて、記録計42は、第4〜第6チャンネルにサンプル水である二次側精製水の導電率、温度およびTOC値を記録する(図6のステップS210)。詳しくは、記録計42は、導電率計用電極25を通じて導電率計41で計測されたサンプル水である二次側精製水の導電率および温度を記録する。また、記録計42は、TOC計30を通じて計測されたTOC値を記録する。
【0067】
次に、モニター盤40は、一定時間(設定は、任意)経過後、モニター盤40のシーケンサー45を介して第2のサンプル水切換弁22を自動的に閉じる(図6のステップS211)。以上を繰り返し実行することにより、一次側精製水および二次側精製水をサンプル水とするモニタリングのデータが蓄積される。
【0068】
一次側精製水および二次側精製水をサンプル水とするモニタリングを停止すると、計測者は、一方のサンプル水導入チューブ11の一端を第1のサンプリング弁321から取り外すとともに、他方のサンプル水導入チューブ11の一端を第2のサンプリング弁371から取り外す。必要に応じて、一方のサンプル水導入チューブ11の他端も第1のサンプル水切換弁21から取り外すとともに、他方のサンプル水導入チューブ11の他端も第2のサンプル水切換弁22から取り外す。
【0069】
次に、計測者は、注射用水をサンプル水とするモニタリングを開始するために、可搬式キャビネット10を水平方向に押してストッパー付きキャスター50を転がしながら実施例2に係る理化学的モニタリングユニットを注射用水タンク430の近傍まで移動させる。
【0070】
そして、計測者は、サンプル水導入チューブ11を第1のサンプリング弁321および第2のサンプリング弁371と理化学的モニタリングユニットとの間に接続する(図6のステップS201)。詳しくは、一方のサンプル水導入チューブ11の一端を第3のサンプリング弁421に水密的に固着し、他端を第1のサンプル水切換弁21に水密的に固着する。また、他方のサンプル水導入チューブ11の一端を第4のサンプリング弁471に水密的に固着し、他端を第2のサンプル水切換弁22に水密的に固着する。
【0071】
以下、一次側精製水および二次側精製水をサンプル水とするモニタリングの場合と同様に、ステップS201〜S211を一次側注射用水および二次側注射用水に対して繰り返して、一次側注射用水および二次側注射用水をサンプル水とするモニタリングを行う。これを繰り返し実行することにより、一次側注射用水および二次側注射用水をサンプル水とするモニタリングのデータが蓄積される。
【0072】
なお、精製水および注射用水以外の逆浸透膜水,限外濾過膜水等をサンプル水とするモニタリングが必要な場合には、必要な回数だけ理化学的モニタリングユニットを移動させて、ステップS201〜S211を繰り返すことにより必要なモニタリングを行うことができる。
【0073】
実施例2によれば、第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22が自動で切り換えられるので、実施例1に比べて、モニタリングを行う計測者の操作負担を軽減することができる。
【0074】
以上、本発明の各実施例について説明したが、これらはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、各実施例では、TOC計30を、UV酸化方式としたが、燃焼方式、燃焼触媒酸化方式、湿式酸化方式等の他の方式であっても同様に使用することができることはいうまでもない。
【0076】
また、各実施例では、サンプル水切換弁を第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22の2つとしたが、1つまたは3つ以上とすることができる。さらに、2つの第1のサンプル水切換弁21および第2のサンプル水切換弁22に対して、サンプル水導入チューブ11を2本使用する場合を例にとって動作を説明したが、1本または3本以上のサンプル水導入チューブ11を1つまたは3つ以上のサンプル水切換弁に対して使用することもできる。
【0077】
加えて、導電率計用電極25は、1台または2台とするばかりでなく、3台以上とすることもできる。複数台の導電率計用電極25のレンジを異ならしめることによって、導電率が異なるレンジに属する複数種類のサンプル水を容易に測定することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、医薬品製造用の技術分野ばかりでなく、医学、生物学、半導体等の純水を使用する一般産業の広い技術分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 可搬式キャビネット
11 サンプル水導入チューブ
21 第1のサンプル水切換弁
22 第2のサンプル水切換弁
25 導電率計用電極
30 TOC計
33 オリフィス
40 モニター盤
41 導電率計
42 記録計
43 警報表示灯
44 サンプル水仕分用スイッチ
45 シーケンサー
46 プラグ
47 第1のサンプル水切換スイッチ
48 第2のサンプル水切換スイッチ
49 運転スイッチ
50 ストッパー付きキャスター
311 レギュレーター
312 第1センサー
313 UVチャンバー
314 UVランプ
315 第2センサー
316 流量計
317 第3センサー
318 CPU
321 第1のサンプリング弁
371 第2のサンプリング弁
421 第3のサンプリング弁
461 第4のサンプリング弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電率計およびTOC計を直列に設けた可搬式キャビネットにサンプル水を導入して、前記導電率計および前記TOC計により測定された導電率、温度およびTOC値をモニター盤の記録計に連続記録できるようにしたことを特徴とする理化学的モニタリングユニット。
【請求項2】
前記導電率およびTOC値が設定値を越えた場合に前記モニター盤に警報が発信される請求項1に記載の理化学的モニタリングユニット。
【請求項3】
導電率計用電極を1台または2台とし、前記モニター盤に設置する導電率計が2以上のレンジ設定を行えるようにした請求項1に記載の理化学的モニタリングユニット。
【請求項4】
前記理化学的モニタリングユニットが、可搬式または固定式に使用可能とした請求項1記載の理化学的モニタリングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−286379(P2010−286379A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140893(P2009−140893)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(594023711)株式会社東京科研 (1)
【Fターム(参考)】