説明

理髪用鋏の枢着部の構造

【課題】切れ味に優れた理髪用鋏の枢着部の構造を提供する。
【解決手段】静刃となる刃体1に矩形孔3と、その上部に座繰り孔21のエッジをテーパ状に面取りした面取り部25をその軸心o´が矩形孔3の軸心oに対し、刃先と反対側に角度θ傾斜させて形成する。動刃となる刃体4に回転可能に軸支される枢軸15は、矩形部8を有し、該矩形部8が上記矩形孔3に嵌合することにより、刃体1が枢軸15に対し廻り止めされる。ダイヤル状のナット12には、逆台形部18とネジ19が設けられ、ネジ19を矩形部8に捩じ込むと、逆台形部18のテーパがテーパ状の面取り部25に係合し、これにより枢軸15を傾斜させて両刃体1及び4の刃先を互いに押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理容院や美容院等で用いられ、一対の刃体を枢軸により開閉可能に軸着した理髪用鋏の枢着部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の理髪用鋏の枢着部の代表的な例を示すもので、一対の刃体のうち、静刃となる刃体1には、ドリルで開けた座繰り孔2にプレスのパンチダイスで矩形の孔3があけられる一方、開閉操作される動刃となる刃体4には、断面略逆椀形状の座繰り孔5が形成され、両刃体1及び5を軸着する枢軸6は、段付きボルト状で、座繰り孔5に装着される断面略逆椀形状の頭部7と、矩形孔3に嵌合して刃体1が枢軸6に対し回り止めされる矩形部8と、先端のネジ部9を有し、刃体1より突出するネジ部9に皿バネ11を介してダイヤル状のナット12が捩じ込まれ、該ナット12の捩じ込みにより両刃体1及び4が枢軸6によって回動可能に軸着された構造をなしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1に示す枢着部の構造において、動刃となる刃体4の座繰り孔5に装着される枢軸頭部7についてもそうであるが、枢軸6の矩形部8は組付け上の問題から静刃となる刃体1の矩形孔3に若干の遊びを存して嵌合されているのが常である。前者の枢軸頭部7は、ナット12の締め込みにより頭部7の断面台形部のテーパが座繰り孔5の断面台形部のテーパに圧着することにより、枢軸6に対し刃体4が開閉操作中、図の横向きにずれたり、傾くことはないが、刃体1の場合、遊びによって刃体1が枢軸6に対し、図の横方向にずれたり、傾いたりしがちで、傾くと、とくに刃体1の刃先が刃体4の刃先より開いたり、刃体1の刃が刃体4の刃より浮いて切れ味を損なうようになる。
【0004】
本発明は、上記の問題を解消することを目的としてなされたもので、切れ味に優れた理髪用鋏の枢着部の構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係わる発明は、静刃となる刃体と、動刃となる刃体を枢軸により開閉可能に軸着した理髪用鋏の枢着部の構造であって、枢軸は多角形の廻り止め部を有して、該廻り止め部が静刃となる刃体に嵌合することにより静刃となる刃体との廻り止めを行い、動刃となる刃体とは回転可能に軸支され、静刃となる刃体側の枢軸自由端部にナットを捩じ込むことにより、前記両刃体が開閉可能に軸着される枢着部の構造において、前記ナットは断面台形部を有して該台形部のテーパが静刃となる刃体の座繰り孔のエッジ又は該エッジを面取りした面取り部に係合することを特徴とする。
【0006】
本発明における枢軸自由端へのナットの捩じ込みは、枢軸自由端部にネジを刻設し、該ネジにナットを捩じ込むか、或いはナットにネジを突設し、該ネジを枢軸自由端部に捩じ込むことにより行われる。
また、面取り部は円弧状であってもよいが、好ましくはテーパ状とされる。
【0007】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記面取り部は、その軸心が座繰り孔の軸心に対し、刃先と反対側の方向に向けて傾斜するように形成されることを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記面取り部は、その軸心が座繰り孔の軸心に対し、刃と反対側の方向に向けて傾斜するように形成されることを特徴とする。
【0008】
また請求項4に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記面取り部は、その軸心が座繰り孔の軸心に対し、刃先及び刃と反対側の方向に向けて傾斜するように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明の枢着部の構造によると、ナットの捩じ込みにより台形部のテーパが座繰り孔のエッジ又は面取り部に係合して静刃となる刃体の横ずれや傾きを防止し、これにより刃先がずれたり開いたりし、或いは静刃の刃が動刃の刃より浮くのが防止され、切れ味が損なわれることがない。
【0010】
請求項2に係わる発明によると、動刃の刃先側が静刃の刃先側に押付けられるようになり、切れ味が向上する。
【0011】
請求項3に係わる発明によると、動刃の刃が静刃の刃に押付けられるようになり、切れ味が向上する。
【0012】
請求項4に係わる発明によると、動刃の刃先側が静刃の刃先側に、かつ動刃の刃が静刃の刃に押付けられるようになり、切れ味がより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の理髪用鋏の枢着部の構造について図面により説明する。図中、図1に示す構造と同一構造部分には同一符号を付した。
【0014】
図2に示す枢着部の構造は、枢軸15の断面略逆椀形状をなす頭部7が動刃となる刃体4に形成される同断面形状の座繰り孔5に装着され、かつ矩形部8が静刃となる刃体1の矩形孔3に嵌合して刃体1と廻り止めされる点は、図1に示す枢着部の構造と変わりがない。図2に示す構造と異なる点は、刃体1に形成される矩形孔3上部の座繰り孔16のエッジがテーパ状に面取りされた面取り部17となり、またダイヤル状のナット12の下部に逆台形部18と、該逆台形部18より突出するネジ19を設け、該ネジ18を枢軸上部の矩形部8に捩じ込んで締め込むことにより、逆台形部18のテーパを前記面取り部17に係合させるようになっていることである。
【0015】
本実施形態の枢着部の構造によると、矩形部8は図示するように図1に示す従来の構造と同様、矩形孔3に若干の遊びを持たせて嵌合しているが、ナット12の締め込みによりナット下部の逆台形部18のテーパが面取り部17に係合することにより、刃体1の横ずれはもちろん、枢軸15に対する刃体1の傾きも防止され、傾きにより両刃体1及び4の刃先が開いたり、刃が浮くことも無く、良好な切れ味が維持される。
【0016】
図3に示す枢着部の構造は、図2に示す枢着部の構造において、座繰り孔21のエッジをテーパ状に面取りした面取り部25の軸心o´が矩形孔3の軸心oに対し、角度θだけ刃先と反対側(図3の右側)に傾斜するように面取り部25を形成したものである。
【0017】
本実施形態の枢着部の構造によると、枢軸15の軸心が図示するように面取り部25の軸心o´と一致するように傾き、動刃の刃体4を刃先が上向く側に傾斜させる。そして静刃の刃体1の刃先に押付ける。これにより切れ味が向上する。
【0018】
図3に示す実施形態では、面取り部25の軸心o´が矩形孔3の軸心oに対し、刃先と反対側に向けて傾斜し、枢軸15を図の左右方向に傾斜させているが、別の実施形態では面取り部25の軸心o´が矩形孔3の軸心oに対し、刃と反対側、すなわち図3の紙面と直交する手前側に向けて傾斜するように面取り部25が形成され、枢軸15下部が奥側になるように傾いて刃体4の刃が刃体1の刃に押付けられるようにされる。これによって同じく刃の切れ味が向上する。
【0019】
更に別の実施形態では、面取り部25の軸心o´が矩形孔3の軸心oに対し刃先と反対側及び刃と反対側の双方に向けて傾斜して形成される。これにより両刃体1及び4の刃先と刃が互いに押し付けられるようになり、切れ味がより一層向上する。
【0020】
図2及び図3に示す実施形態では、ナット12にネジ19を突設して枢軸上部の矩形部8に捩じ込んで連結されているが、別の実施形態では、図1に示す従来構造と同様、枢軸上部の矩形部8より突設するネジ部にナットが捩じ込まれて連結される。図4は、この種の構造を示すもので、枢軸20の矩形部21より突出するネジ部22に算盤玉状のナット23を捩じ込んで刃体1及び4を開閉可能に連結している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の枢着部の構造を示す断面図。
【図2】本発明に係わる枢着部の構造を示す断面図。
【図3】本発明に係わる枢着部の構造の別の態様を示す断面図。
【図4】本発明に係わる枢着部の構造の更に別の態様を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
1・・静刃となる刃体
2、5、16、21・・座繰り孔
3・・矩形孔
4・・動刃となる刃体
6、15、20・・枢軸
7・・頭部
8、21・・矩形部
9、22・・ネジ部
11・・皿バネ
12・・ダイヤル状のナット
17、25・・面取り部
18・・逆台形部
19・・ネジ
23・・算盤玉状のナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静刃となる刃体と、動刃となる刃体を枢軸により開閉可能に軸着した理髪用鋏の枢着部の構造であって、枢軸は多角形の廻り止め部を有して、該廻り止め部が静刃となる刃体に嵌合することにより静刃となる刃体との廻り止めを行い、動刃となる刃体とは回転可能に軸支され、静刃となる刃体側の枢軸自由端部にナットを捩じ込むことにより、前記両刃体が開閉可能に軸着される枢着部の構造において、前記ナットは断面台形部を有して該台形部のテーパが静刃となる刃体の座繰り孔のエッジ又は該エッジを面取りした面取り部に係合することを特徴とする枢着部の構造。
【請求項2】
前記面取り部は、その軸心が座繰り孔の軸心に対し、刃先と反対側の方向に向けて傾斜するように形成されることを特徴とする請求項1記載の枢着部の構造。
【請求項3】
前記面取り部は、その軸心が座繰り孔の軸心に対し、刃と反対側の方向に向けて傾斜するように形成されることを特徴とする請求項1記載の枢着部の構造。
【請求項4】
前記面取り部は、その軸心が座繰り孔の軸心に対し、刃先及び刃と反対側の方向に向けて傾斜するように形成されることを特徴とする請求項1記載の枢着部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−325690(P2007−325690A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158091(P2006−158091)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(504332931)株式会社レオックス (5)
【Fターム(参考)】