説明

環境データ収集システム

【課題】観測機器の設置場所や設置方法の選定や、得られたデータを真性値に補正するコンサルティング機能を含む環境データ収集システムを提供する。
【解決手段】センサにより得られた環境データを計測し、これを収集して所定のユーザー端末に環境データを提供するためのシステムにおいて、センサ1により得られた初期の環境データを収容する中間サーバー2を有し、この中間サーバー2には、センサ1固有の測定特性及びこのセンサ1の設置環境により現れる特有の測定誤差を収容した誤差データ群3と、入力された初期の環境データを誤差データ群3と照合して真理値を算出するデータ補正手段4とを設け、初期の環境データ群を中間サーバー2により補正してユーザー端末5側へ提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境データを収集するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業治水や公共事業において当該事業地域周辺の天候や諸々の自然環境を測定するニーズは極めて大きい。例えば道路の設計においては、その路線の降水量、風力、さらには降雪量などの中長期的なデータ収集が不可欠である。また、治水工事にあっては河川の水位動向を正確に把握する必要がある。
【0003】
これらのデータ収集は概して人口密度の低い低開発地で行われることが多いため、人為的な長期継続測定は不可能である。そこで、近年は様々なセンサを利用した自動計測システムを用いるのが一般的である。
【0004】
つまり、風力測定であれば、風力センサを所定の場所に設置しこの風力センサからの信号をデジタルデータに変換し、これをデータロガーと呼ばれるデータ集積装置に格納する。そして格納したデータは後日収集するか、あるいは携帯電話網や無線伝送装置を利用した伝送システムを併設して外部にデータを送信する。これにより環境データを定期的に回収することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の環境データ収集システムでは、通常アナログ値で得られるセンサ出力を単にデジタル変換し、これを時系列的に記録または送信するだけのものであるため、このデータだけでは真の観測値を把握することができないという問題がある。
つまり自然現象の真性値と現実の測定データとの間には誤差が存在するため、得られた観測値をそのまま真性値として処理すると環境データの把握に誤認を生ずることになる。
【0006】
この問題は観測機器の精度が不十分であるというよりは、無人のデータ収集に起因する問題がある。
すなわち、観測機器を販売したり設置する業者は機器の性能については専門家であるが、自然現象の真性値とセンサから得られる測定データとの相関関係については十分把握していない場合が多い。一方、環境データの収集を依頼する側の方は、工事設計や都市計画などについては専門家であるが、観測機器についてもまた自然現象の真性値と現実の測定結果との相関関係についても専門知識を有しているとはいい難い。
【0007】
したがって、イレギュラーなデータでもそのまま真性な結果として扱われてしまう結果となる。
以上の事情から、観測機器の設置場所や設置方法の選定や、得られたデータを真性値に補正するコンサルティング機能が不可欠であるが従来そのようなものはなかった。
そこで、本発明者は、問題を生じさせる要因である自然現象の真性値と現実の測定結果との相関関係について着目し、種々検討を行った。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいてされたものであり、その課題は、観測機器の設置場所や設置方法の選定や、得られたデータを真性値に補正するコンサルティング機能を含む環境データ収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下のような発明の特定事項を備えている。
その第1の構成例として、センサ1により得られた環境データを計測し、これを収集して所定のユーザー端末5に環境データを提供するためのシステムにおいて、センサ1により得られた初期の環境データを収容する中間サーバー2を有している。
【0010】
そして、この中間サーバー2には、センサ1固有の測定特性及びこのセンサ1の設置環境により現れる特有の測定誤差を収容した誤差データ群3と、入力された初期の環境データを誤差データ群3と照合して真理値を算出するデータ補正手段4とを設け、初期の環境データ群を中間サーバー2により補正してユーザー端末5側へ提供する。
この構成例は主に無線伝送が困難な谷あい地などの測定環境下において、環境データを有線で収集する場合に好適である。
【0011】
また、第2の構成例として、センサ1により得られた環境データを計測し、これを収集して所定のユーザー端末5に環境データを提供するためのシステムにおいて、
センサ1により得られた初期の環境データを収容する中間サーバー2をネットワーク6中に設置し、この中間サーバー2には、センサ固有の測定特性及びこのセンサ1の設置環境により現れる特有の測定誤差を収容した誤差データ群3と、入力された初期の環境データを誤差データ群3と照合して真理値を算出するデータ補正手段4とを設けた。
【0012】
そして、初期の環境データ群を中間サーバー2により補正してユーザー端末5側へ自動送信するよう構成した。この構成例では無線や携帯電話網が利用できる環境下において適用可能である。
さらに第3の構成例として、センサ1により得られた環境データに当該センサ固有の識別コードを付加する識別コード付加手段7と、環境データに対して識別コード毎に予め設定した所定の補正を与えるための補正処理手段8と、この補正処理手段8で処理された環境データをユーザー端末5側に送信するための送信手段9とを備えている。
【0013】
この構成例では複数のセンサを様々な環境に設置した場合においても、個々のセンサ特性や個々の設置環境において現れる誤差傾向などに個々に対応することが可能となり、正確な観測データを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサに固有の誤差や、観測機器の設置場所や設置方法の選定いかんによって現れる誤差を補正できるから信頼性の高い環境データが得られる。また、初期の環境データ群を中間サーバーにより補正してユーザー端末側へ自動送信するよう構成したものでは処理省力化を図ることができる。さらに、センサにより得られた環境データに当該センサ固有の識別コードを付加する識別コード付加手段を設けたものでは、多数のセンサを用いたシステムであっても個々に正確な環境データに補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0015】
実施例1を図1とともに説明する。
センサ1は環境測定場所に設置されるものであり、このセンサ1からの出力は同じく環境測定場所に設置されるデータロガー20にデジタルデータとして蓄積されるようになっている。センサ1からの出力は一般的にアナログであるためデジタル変換した後、データを不揮発メモリーに書き込むよう構成されたデータロガー20に書き込まれる。このデータロガー20は商用電源がない場所に設置されることが多いため太陽電池とリチウムイオン電池を組み合わせた電源システムが設けられている。
【0016】
データロガー20にはデータ入出力端子が設けられており、ここに中間サーバー2が接続できるようになっている。中間サーバー2としては可搬式のパーソナルコンピュータが用いられている。中間サーバー2はセンサ1により得られた初期の環境データを収容するためのもので、センサ1固有の測定特性及びこのセンサ1の設置環境により現れる特有の測定誤差を収容した誤差データ群3と、入力された初期の環境データを誤差データ群3と照合して真理値を算出するデータ補正手段4とが設けられている。
【0017】
これら誤差データ群3とデータ補正手段4とは実際にはソフトウエアであり、誤差データ群3とはセンサ1の非直線性や温度特性などによる測定結果の誤差を相殺するための数値となっている。
誤差データ群3はさらに、センサ1の設置環境により現れる特有の測定誤差データを含んでいる。この誤差とは例えばセンサ1の構造上環境の変化に対して大きな非直線性が生じたり、設置場所が極端な高湿度環境であったりする場合に発生するものである。
データ補正手段4は実際に得られた測定データを誤差データ群3と照会して演算することで前記した誤差を相殺する機能を持っている。
【0018】
そしてデータ補正手段4から得られた環境データを集計して所定のユーザー端末5に環境データを提供する。この提供方法はデータをフラッシュメモリなどのメディアに記憶させたものであってもよいし、インターネット上で提供してもよい。
このように最終ユーザーには誤差を修正した真理値が提供される。
【実施例2】
【0019】
実施例2を図2とともに説明する。
この実施例では実施例1におけるデータロガー20以降をネットワーク6中で接続したものである。データロガー20内には携帯電話カードが設けられており携帯電話網を介してデータを送信することができるようになっている。
【0020】
そしてデータロガー20とネットワーク6中で接続された中間サーバー2は初期の環境データ群を補正してユーザー端末5側へ自動送信する。この構成例では比較的人家に近い携帯電話網エリアで利用することが可能である。
【実施例3】
【0021】
実施例3を図3とともに説明する。
この実施例では実施例1における中間サーバー2に、センサ1により得られた環境データに当該センサ固有の識別コードを付加する識別コード付加手段7と、環境データに対して識別コード毎に予め設定した所定の補正を与えるための補正処理手段8と、この補正処理手段8で処理された環境データをユーザー端末5側に送信するための送信手段9とが設けられている。
【0022】
識別コード付加手段7はセンサ固有の条件、つまり物性的な特性の外、実施例1で説明した設置環境に応じて個別の識別コードを付加するものである。これにより、センサの特定が可能となる。補正処理手段8はセンサ1からのデータに対してこの識別コード別に異なる補正を加えるものである。この構成とすることで複数のセンサを様々な環境に設置した場合においても、個々のセンサ特性や個々の設置環境において現れる誤差傾向などに個々に対応することが可能となる。
【0023】
そして、このように得られた測定データは真性値に近似となり信頼性の高いものとなる。
図4は前記したシステムを現実のサービスとして実施する場合のフロー図である。ステップ100においてユーザーから受注を受け、ステップ101において測定機器を設置する。ステップ102において実際のデータをモニタリングするが、このときの実験結果を参考に誤差データ群3の値が決定される。そして、ステップ103において補正後のデータが提供される。
【0024】
観測が終了した後は設置業者が機器の撤去を行う(ステップ104)。なお、データに異常が発生した場合には(ステップ105)誤差データ群3のデータを変更してデータの補正を行うか、業者が設置現場に行ってその原因を究明する(ステップ106)。ここで設置現場に行ってその原因を究明する業者は、機器販売会社とユーザーの中間に位置するコンサルタント会社であることが望ましく、前記した設置業者を兼ねてもよい。
【0025】
このコンサルタント会社がセンサ1やデータロガー20の設置と中間サーバー2の設置を行うことでよりきめ細かいデータ補正を行うことができる。
なお、データはCSV(Comma Separated Value)ファイルでユーザーに提供されるがユーザーの希望に応じてオプション処理を行うことが可能である(ステップ107)。これはユーザーが求める自動データ処理や表・グラフの自動作成、あるいは報告書の作成を行うものである。
【0026】
なお、CSVファイルは値をコンマで区切った形式のデータでありテキストファイルであるため、プラットホームの違いやアプリケーション間の違いがあっても幅広く対応できるものである。
図5に示すものは、オプション処理を行って納品した測定表を示し、風向、風速、気温、湿度について例を示し、縦方向に時間、横方向に各種データを配したものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る環境データ収集システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例2に係る環境データ収集システムを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例3に係る環境データ収集システムを示すブロック図である。
【図4】本発明の環境データ収集システムを示すフロー図である。
【図5】本発明の実施例を示す実際の環境データの測定表である。
【符号の説明】
【0028】
1 センサ
2 中間サーバー
3 誤差データ群
4 データ補正手段
5 ユーザー端末
6 ネットワーク
7 識別コード付加手段
8 補正処理手段
9 送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより得られた環境データを計測し、これを収集して所定のユーザー端末に環境データを提供するためのシステムにおいて、
センサにより得られた初期の環境データを収容する中間サーバーを有し、この中間サーバーには、センサ固有の測定特性及びこのセンサの設置環境により現れる特有の測定誤差を収容した誤差データ群と、入力された初期の環境データを誤差データ群と照合して真理値を算出するデータ補正手段とを設け、初期の環境データ群を中間サーバーにより補正してユーザー端末側へ提供するよう構成したことを特徴とする環境データ収集システム。
【請求項2】
センサにより得られた環境データを計測し、これを収集して所定のユーザー端末に環境データを提供するためのシステムにおいて、
センサにより得られた初期の環境データを収容する中間サーバーをネットワーク中に設置し、この中間サーバーには、センサ固有の測定特性及びこのセンサの設置環境により現れる特有の測定誤差を収容した誤差データ群と、入力された初期の環境データを誤差データ群と照合して真理値を算出するデータ補正手段とを設け、初期の環境データ群を中間サーバーにより補正してユーザー端末側へ自動送信するよう構成したことを特徴とする環境データ収集システム。
【請求項3】
センサにより得られた環境データに当該センサ固有の識別コードを付加する識別コード付加手段と、環境データに対して識別コード毎に予め設定した所定の補正を与えるための補正処理手段と、この補正処理手段で処理された環境データをユーザー端末側に送信するための送信手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の環境データ収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−163445(P2007−163445A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381068(P2005−381068)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(506023378)
【Fターム(参考)】