説明

環境影響が軽減された高効率燃焼器およびこれから導き出すことのできる発電方法

少なくとも1種類の燃料と蒸気あるいは水とを混合することを備えてなり、電力を生成することを目的とする、高温耐火材が内張りされた反応炉の中における固体燃料あるいは気体燃料の燃焼方法。反応炉の耐火材料と反応環境の不透過性ガスとによって、入口における反応物質を実質的に瞬時に予熱する高出力放射が引き起こされ、前記反応物質は、赤外線(N2/O2)に対して本質的に透過性であるが不透過性にされ、蒸気による希薄化のために赤外線からのエネルギーの吸収体である。上記方法を実行するための高能率燃焼器が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸素酸化剤(oxygen oxidant)(空気から極低温級までの)を伴う化石燃料の燃焼、すなわち火炎に関連している研究および応用技術は、環境における定量的影響に、また、開発における発電の経済的影響に大いに関連するものである。
【背景技術】
【0002】
環境影響を軽減する特定の目標については、生産性に関して温度が最も重要な変数であるものの、火炎操作用温度範囲の漸進的縮小があった。有毒有機化合物(ダイオキシン、フラン、多芳香族炭化水素(PAH))を制限するために閾値温度限界が置かれ、また、温室効果ガス(NOx)を制限するために上限T値が設定され、一方で、いっそう制御された燃焼条件(CO,NOx)を厳密に達成するために実質的な努力が行われてきた。
【0003】
従って、火炎技術の発展における主要な推進力は、酸化剤を伴う燃料の均質かつ急速な混合を促進することのできる流体力学条件の開発へ絶えず向けられてきた。さらに詳しくは、ここでは、噴射のエネルギーがきわめてさまざまな形状および寸法で変更されて混合が促進され、燃焼したガスとの密閉混合が促進され、所望寸法の位置的安定火炎が形成される噴射火炎へ言及が行われる。
【0004】
火炎の存在場所は一般に、固体粒子が存在しているかあるいは生成される反応帯に一致しており、そのような粒子は、温度範囲1000〜2500Kの内部で可視領域の中へ放射線を放射することができる唯一のものである。気体燃料、例えばメタンの均一な火炎は、固体炭素質ナノ粒子(煤煙、広く立証されたもの)の生成のために、可視領域の中へ放射される。
【0005】
さらにまた、環境に影響を与える放射に何が関係するかについては、火炎が、温度とともに指数関数的に発生するNOxの生成と不完全燃焼に起因するCOの生成とに関連がある。
【0006】
火炎は、巨視的尺度で定量的に、かつ、起きている反応がすでに完了した最終領域でだけ正確に説明することのできる、本質的にきわめて複雑な現象である。化学的作用の効果にとって決定的である巨視的尺度では、この現象は基本的に混沌としている。行うことのできる任意の説明は統計的特性の方法にだけ基づいている。
【0007】
反応がすでに完了している超高温の基本的領域に隣接して、反応がまだ開始されていない寒冷領域がある。
【0008】
反応熱は高いが、高い閾値(1100Kを超える自然発火点)があり、また、急な濃度勾配および温度勾配が確立されている。述べたように、統計的方法を利用してだけ説明することのできる「混沌とした」システムに必然的に起きる、上で述べられた3つのパラメータは、非線形パラメータの備わったシステムの解析のための専門用語を使用して互いに組み合わせるためには、「破局的な」種類のものである。
【0009】
火炎の時間的不確定性(物理的不確定性、統計的説明だけ)は、従来技術の後部燃焼器においても、すなわち、燃料のあるいは燃料および酸化剤の二次噴射で産出され、一次燃焼過程からの排出ガスの中へ入る火炎においても、認められる。実際に、NOx、COおよびTOC(全有機物含有量)における部分的削減が達成されている。この場合には、火炎が1秒の何分の1かのオーダーである時間特性の備わった混沌とした現象であるということは、おそらく付け加えるべきであろう。
【0010】
文献である米国特許第5,154,599号公報には、これらの勾配を顕著に減少させること(酸化剤および燃焼ガスを伴う燃料の実質的希薄化、酸化剤供給原材料(oxidant feed)の、燃料の自然発火閾値より高い温度への予熱)によって方法が示され、燃焼が可視火炎を引き起こすことなく(火炎なし大量燃焼)、すなわち可視領域において放射線を放射することなく行われるであろう新しい作用帯域へ入ることのできた関連のある新規な開発が記載されている。
【0011】
言及することのできる放射に関する最も顕著な効果は、NOx、COの大幅な削減、および煤煙の不存在である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この発明およびこの発明から生じるその後の詳細な基礎的研究によれば、火炎なし状態は、気体燃料の燃焼において、また、およそ3の比(あるいは、希薄化された酸化剤の中におけるおよそ3.5%の最大酸素濃度)より小さくない希薄化によって規定された存在の範囲内で、さらに、自然発火温度より小さくない温度まで予熱することで生じる、ことが示された。
【0013】
両方とも燃焼器の内側および外側で行われることに起因する高い資本コストおよび変動コスト、反応物質の必要な希薄化および加熱は、上に述べたこの発明の工業的用途を著しく制限した。
【0014】
このことは、他の従来技術(および、特に米国特許第5,961,312号、米国特許第5,441,403号、米国特許第4,945,841号、米国特許第5,813,846号、米国特許第4,945,841号、米国特許第5,772,421号、米国特許第5,863,192号、米国特許第5,899,680号、米国特許第5,931,653号)によっても実証されている。これらは一次燃料あるいは二次燃料を混合するための構成に関連しているが、一次燃料あるいは二次燃料は、それぞれの場合には一般的に空気で特定され、いくつかの場合には低水準のNOx生成で向けられた火炎の拡散層の中への燃焼ガスの取り入れで特定される。
【0015】
均一な温度帯の形成に注意が向けられた特許も、任意の濃度における酸素の使用に注意が向けられた特許も、とりわけ、液体燃料および固体燃料の表面燃焼を達成するために燃焼ガスの放射性能の活用に注意が向けられた特許も、加圧燃焼器におけるこれらの効果を利用するわずかな特許さえも、存在しない。
【0016】
いくつかの特許によれば、多かれ少なかれ定義ずみの形状が備わった予見された構成がもたらされるが、それらは諸成分を混合するという目的のためだけのものであり、冷ガスを放射状態へさらす目的のためのものではない。
【0017】
火炎の時間不確定性についてのさらに別の証拠は、難燃性灰分を溶融することのできる高温/超高温火炎を伴う燃焼器(10年前から知られているスラグ形成用燃焼器)の解析から見つけることができる。実際に、その教示によって、実体的割合の難燃性材料を溶融させることが可能になる。しかしながら、それにもかわらず、融解していない難燃性微粒子(飛散灰分)が、まだ存在しており、これはより高い温度によっても除去することができない。従来技術は実際、90%の上限値、すなわち10%の残留灰分に直面している(例えば、米国特許第4,685,404号、米国特許第4,961,389号、米国特許第4,920,899号および4,909,030号の文献を参照のこと)。
【0018】
この出願人から文献PCT/IB2004/001220に例示された燃焼プロセスによれば、適切に「準」等温とされた酸素による燃焼反応炉は、燃焼煙道ガスの中とこの煙道ガスの再生による酸化剤供給原材料の中とにおける不透過性ガス(強い赤外線の吸収体/放射体のあるCO2およびH2O、主としてH2O)の存在によって、飛散灰分の融解灰分への完全変換とともに、導入された燃料物質の完全燃焼を保証することができ、その結果、全有機物濃度、従って煙道ガスの中における有毒有機化合物を特に低く保証することができる、ということが教示されている。
【0019】
従って、
― 煙道ガスの中における有毒有機化合物の実質的削減(生成ではなく変換)
― 燃焼器自体の中で分離された、難燃性灰分の融解灰分への定量的変換
は別として、反応炉出口で適切に、かつ、煙霧後処理操作による介入に先立って、さらに、すべての種類の燃料、とりわけ問題のある燃料で、低濃度の
― NOx
― CO
を伴う煙道ガスを製造することのできる燃焼器を提供するという要求が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この出願人の特許請求の範囲において言及されたように、
― 耐火材内張り反応炉、
― 工業銘柄の酸素の使用、あるいは50%を超える濃度の酸素で好ましくは真空振動吸収(VSA)技術によって製造された90%の酸素で富化された空気の使用、
― 酸化剤と予備混合された、赤外線(IR)に対して不透過性であるガス、すなわちCO2およびH2O、主としてH2Oの導入(再生利用)、
によって得られ、
不透過性ガスの密度を増大させるために、かつ、不透過性ガスから燃料への高温で高いIR放射流を励起するために、圧力下で操作され、
燃料が以下のようにして反応炉へ供給されると、
すなわち、
― 揮発性液体燃料が供給されて水および/または蒸気と一様に大雑把に混合され、
― 不揮発性液体燃料(高分子有機化合物、つまり融解有機固形物)が供給されて水および/または蒸気と一様に大雑把に混合され、
― 固体燃料が2〜3ミリメートルの寸法まで粉砕され、水(水スラリー)の中に懸濁され、スラリーとして供給されると、
燃焼煙道ガスが得られ、それにはきわめて低い濃度のNOxおよびCOも含まれている
等温反応炉が、驚くべきことに見出された。
【発明の効果】
【0021】
燃焼器の上記特性によって、簡単かつ高能率で環境影響が低く、とりわけ問題のある燃料(低級燃料)を処理することのできる熱力学発電サイクルを設計して実施することが可能になる。
【0022】
可能で妥当な1つの説明は、この発明の範囲を制限するものではないが、以下の独自の組み合わせ、すなわち、
― 反応炉の高温耐火壁からのきわめて強い放射、
― 主としてH2OおよびCO2のような強IR放射体(不透過性ガス)を含んでおり、かつ、圧力下にある高温燃焼ガスからのきわめて強い放射、
― ともに(また、主として前者は)強IR吸収体を含んでいる供給原材料の中におけるH2OおよびCO2の濃度、
― 不透過性ガスの濃度を増大させる圧力の下での操作、
― H2OおよびCO2を伴う酸化剤予備希薄化ガスの反応炉への供給。
― 不透過性ガスの濃度を増大させる圧力の下での操作、
の組み合わせによって、
周囲温度で供給された燃料および酸化剤の温度を反応炉の中で瞬時に1300Kの温度まで上昇させることができ、かつ、急な温度勾配および濃度勾配を解消するようにするとともに、反応領域におけるすべての箇所での反応の速度を均等化するようにする条件の下で、燃焼反応を起こさせることが可能になる。従って、この発明を制限することなく、これらの急勾配が解消されると、これら3つのパラメータはもはや「破局的」なものではなくなり、また、統計的に説明することだけが可能である従来技術で知られた「混沌とした」火炎システムの生成は終わる、ということが推測される。
【0023】
従って、この反応システムは、低級燃料からのエネルギーの生成のための効率と放射量の減少との観点からのいっそう好都合な妥協案を達成することのできる新しい作用帯域への接近をもたらす値の範囲内で、定時条件および平均条件の両方の点で容易に制御することができるものになる。
【0024】
さらにまた、そして、この発明の範囲をなお制限することなく、固体燃料および液体燃料の場合には、それらが数パーセントの有機窒素濃度を有しているときであっても、燃料粒子の表面にありがちなきわめて強いIR放射(MW/m2のオーダーの)によって、オーダーの拡散によって支配されかつ制御される本質的に表面的な反応、例えばCからCOへの反応が引き起こされ、それによって、COとの反応によって有機起源のNOxを完全に崩壊させる反応への高い温度での余地とが与えられ、また、バルクガス反応が起きるまで、制御された(「混沌として」いない)条件の下で反応熱の支配的な割合での発生が遅延される。
【0025】
最後に、そして、やはりこの発明の範囲を制限することなく、燃焼器の中における燃料の噴射用「覆い」の中へ蒸気あるいは水を添加する影響は、単独で決定的に得られるものではないが、それにもかかわらず、汚染物質の副生成物のかなりの削減を引き起こし、すぐ上で説明した機構のさらに別の潜在的な確認の一助となる。燃料が難燃性灰分を含んでいるときには、従来技術(この出願人のPCT/IB2004/001220)に記載されたように、灰分は付随して融解し、また、乱流によって液体灰分の粒子の完全合体が保証される。
【0026】
この発明の燃焼器は、供給原材料を予熱することなく、また、火炎安定性の維持を制約することなく火炎のない状態で稼動するが、高い温度にあって水素化された有機化合物および微粒子が実質的にない煙霧を産出するために低級燃料の使用を実現し、また、実質的に少量のガス状汚染物質を産出する。この燃焼器の有用性によれば、そうでない場合には同じような簡単さで達成することのできない電力の生成のための高効率熱力学サイクルを案出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明の好ましい実施形態の1つは、高温耐火材内張り反応炉における気体燃料(H2、CH4、軽炭化水素、S、合成ガスおよび低いカロリー値を備えた他の気体燃料)についての燃焼プロセスである。
【0028】
この反応炉は、蒸気と予備混合された燃料および酸化剤で、かつ/または、さまざまな公知の方法を使用して2つの流れの中へ導入された燃焼煙道ガスで、稼動する。これら2つの流れは別々に送られ、燃料は反応炉の軸線へ、酸化剤は燃料の周りの複数の周縁箇所へ供給されるのが好ましい。耐火材料のおかげで、また、反応環境の不透過性ガス(再生された煙道ガスと導入された蒸気との両方)のおかげで、高出力IR放射線によって、入口における反応物質が瞬時に予熱され、その反応物質は、IR(N2、O2)に対して本質的に透過性であるが、不透過性になり、従って、IR吸収体は蒸気で希薄化される。特に均一で調整された反応領域(火炎のない緩和燃焼、大量燃焼)は、燃料および酸化剤が両方とも完全に消費されるまで発達する。
【0029】
反応は、供給された反応物質の予熱についての下限が明らかに存在することなく、進行する。しかしながら、供給原材料の中の不透過性ガスの濃度は30%未満の範囲にないのが好ましい。
【0030】
反応炉についての、あるいは反応物質の供給原材料についての特に洗練された流体力学をもたらすことは、必要がないように思われる。反応炉に関しては、簡単な円筒形状が少なくともMWの何十倍かの熱出力の規模で効果的である。より大きい規模では、耐火材によって行われたIR放射への寄与は表面積による規模で起きる、ということが心に生じるにちがいない。従って、燃焼煙道ガスによる燃焼装置の瞬時加熱への寄与の水準を増大させることが必要である。この場合には、同一側部における軸線上の入口と周縁の出口とが備わった、添付の概略図面(添付図面)に提案された形状によれば、熱い煙道ガスからの放射によって行われた寄与のおかげで、この要件に完全に合致する。
【0031】
このプロセスの基準によって実行された燃焼反応によれば、化学量論的条件に近い比1.05で、すなわち、従来技術において本質的である比2よりもきわめて低い過剰値で酸化剤(酸素、空気)によって稼動するときであっても、煤煙、TOC、CO、NOxの無視できる放射を達成することが可能になる。
【0032】
エネルギー発生のためのプロセス全体は例えば、空気を引き込むこと(1)と、それを軸流圧縮機の中で1600〜2500kPa絶対値の圧力まで圧縮することとからなる。圧縮は従来技術による断熱的なものであってもよく、圧縮機のそれぞれの段の中へ脱イオン水を噴射することによるか、あるいは水が飽和状態まで噴射され次いで圧縮機の中へ再導入されるガスの中間引き出しによる等温圧縮が好ましい。
【0033】
圧縮ガスは熱回収ユニット(E)まで送られる(4)。この回収ユニットは、タービン(T)からおよそ800〜900Kの温度で出された排気ガス(8)を使用する。
【0034】
従来技術に従って、酸化剤予熱の過程の間に複数の箇所で予熱水(3)を導入することによって、熱回収ユニット(E)を飽和器として使用することがいっそう好ましい。気体燃料(2)は、水の噴射による等温構想に従って圧縮機(C2)の中で圧縮される。
【0035】
圧縮された酸化剤と、600Kまで、好ましくは700Kまで予熱された燃料とは、これら2つの事例の間における差が、気化されて添加されたより大量の水およびより少量の水(燃料+酸化剤の合計に対して重量で40〜60%であって、タービンによって排出されたガスに含まれたすべての熱を回収するまでのもの)によって説明されるが、燃焼器(R)へ送られる(5および6)。
【0036】
完全燃焼が反応炉の中で実行され、排出ガスは、冷却されたセラミックブレードがある従来技術のタービンについての上部稼動温度限界に対応している1400Kの温度に、好ましくは1600Kまでのより高い温度に到達する。
【0037】
低級燃料、例えば、高い含有量の未燃焼有機化合物(2〜3パーセント程度のTOC)および未燃焼微粉末のある固体燃料加熱ガス化装置ガスが使用されるときには、燃焼は、導入された有機物質の完全分解と液化灰分の融解や合体を保証するために、2000Kまでの温度で行われる。次いで、反応炉からの排出ガスへ水が、従来技術のタービンの上部稼動温度限界(1600K)に到達するまで、添加される。
【0038】
燃焼器からのガスは、大気圧と、蒸気含有量の関数として変動することのできる700〜800K程度の温度とへの等エントロピー膨張のために、タービン(T)へ送られる(7)。
【0039】
水の消費が問題であるときには、低級熱回収ユニット(E)からの排出煙道ガスは、濃縮用蒸気回収部(B)へ送られる(9)。この濃縮部は、フィン付管型熱交換器から、あるいは塔の中における冷却水の再循環がある濃縮用コラムから、または両方の型の組み合わせから構成されていてもよい。
【0040】
ただ明らかなことに、このプロセスは、燃焼器/膨張タービンのベースユニット、軸流圧縮機/環状チャンバーのきわめてコンパクトな設計によって特徴付けられた従来技術のターボガスシステムよりも複雑であり、また、コストがかかる。従来技術では、ベースシステムは35〜40%程度の従来技術の(電気的/熱的)サイクルの歩留まりを最大出力でのみ達成する。より高い水準の効率は、「組み合わせ」サイクルで、すなわち、タービンおよび蒸気膨張タービンからの熱出力を回収するために蒸気ボイラーを追加することで、得られる。
【0041】
実際に、この発明のプロセスにおける比較によって、
― 回収ユニット/飽和器(E)は、きわめてコンパクトな設計のものであって、普通の材料から作られる。
― 燃焼器(R)は、環状チャンバー収納用フレームよりも見掛け容積が大きく、ましてや複雑ではなく、さらに洗練されたものである。
【0042】
さらにまた、この発明のシステムは、低級燃料ガスと、ガス化用低級固体燃料、例えば生物燃料および廃棄物から得られた燃料ガスとが含まれる許容できる燃料に関して、例外的に適応性がある。この発明のシステムのさらに別の適応性は、要求された電気負荷が変化されたときにその管理および効率の点で明らかになる。
【0043】
従来技術のターボガスシステムではタービンから得られた仕事の30%が軸流圧縮機における酸化剤の圧縮に消費される、ということが思い出されるであろう。軸流圧縮機は、本質的に適応性がなく、かつ、定格流量からわずかだけ異なっており、かつ、稼動における固定負荷因子である流量(10%未満の公差)で停止し始める。最大負荷に満ない電気負荷では、正味効率は比例方式よりも急速に低下する。さらにまた、加えられた出力を制御するただ1つの方法は、燃料を絞ることであり、それによって、燃焼ガスの温度が低下するとともに、特定の熱力学効率のさらなる減少が引き起こされる。従来技術のターボガスシステムの定評ある急速な始動時間は、稼動の適応性の明らかな欠乏によって、ある程度ずれている。
【0044】
これに比べて、この発明の燃焼器は、
― 広い負荷範囲(20%〜120%)にわたってきわめて低い負荷損失で、安定的な燃焼をもたらし(それに対して、ジェット火炎が、支配的に消費され、また、稼動性のいっそう厳しい範囲にわたって有効である)、
― 加えられた出力を、一定煙霧温度で蒸気の添加を調節することによって調節し、それによって、タービンにおける流量および分子量を調節し、
― 適切に耐火材で内張りされており、この燃焼器は、パイロット火炎で待機状態に、かつ、定格負荷の1%未満の燃料消費量で、きわめて短時間のうちに最大出力まで始動されるように、熱く維持することができる。
【0045】
この発明の上記構成における(電気的/熱的)サイクルの最小熱力学効率は、50%であり、飽和器および1600Kでの反応による熱回収の場合には60%程度の値まで上昇する。このことは、半減した酸化剤を圧縮するために要求された出力のためであり、また、水の添加が吸入排出エネルギーの点でこのサイクルへの衝撃を有しているという事実のためであり、さらに、350K以上の消費煙道ガスからの低級熱の回収のためである。
【0046】
このエネルギー効率は、燃焼器の出口でのほとんど目立たない放射、すなわち、ppmのオーダーのTOC、常に10ppm未満のCO、20〜30ppmのオーダーのNOxおよびより高い燃焼温度にだけ伴っている。
【0047】
より高い温度(いっそう問題のある燃料に要求されるもの)では、効率は低下するが、それはほんのわずかであり、また、ましてやコストの高い燃料を使用する実質的利点がある。
【0048】
1つの好ましい変形例では、90%酸素が酸化剤として使用されるが、この酸素は、ゼオライトにおける選択的吸着が含まれる従来技術の富化プロセスによって、空気から製造れる。富化部によって、90%酸素が、大気圧においてO2の0.1kWh/kg程度の電気エネルギーの全消費率で供給される。
【0049】
酸素は、燃焼空気(軸流圧縮機の中へ250kPaに対応している箇所で噴射された)を富化させるために、あるいは空気を完全に置き換えるために、使用することができる。
【0050】
効率は低下するが、その低下は顕著なものではない。富化された空気および酸素は、単位容積当たりのカロリー値がより低い燃焼用燃料のために指示される。さらにまた、使い尽くされた煙道ガスの容積と凝縮可能成分の含有量との大幅な減少によって、次のことがいっそう容易に可能になる。
― 最終凝縮部(B)の寸法の実質的減少を引き起こし、かつ、サイクルからの水の正味産出量をもたらすこと。
― ソーダ供給原材料の備わった付加的な吸着筒によってCO2を重炭酸ナトリウムの形態で回収すること。
【0051】
このプロセスの別の好ましい実施形態は、エネルギーを発生させる目的で、液体燃料(炭化水素、重い精製所留分、ビチューメン、使用済み溶剤、オリマルション(orimulsion)、固体分解生成物や水やイオウをさまざまな含有量で有している液体燃料)を高温耐火材内張り反応炉の中で燃焼させるためのプロセスである。
【0052】
この反応炉は、さまざまな公知の方法を用いて流れの中へ導入された水と予備混合された燃料で、かつ、蒸気と予備混合された酸化剤で、稼動する。これら2つの流れは別々に供給されるが、燃料は反応炉の軸線上へ供給されるのが好ましく、酸化剤は燃料の周りにおける複数の周辺箇所で供給されるのが好ましい。
【0053】
稼動の原理は、気体燃料燃焼器について上で説明されたものに類似している。特に均一で調整された反応領域(火炎のない緩和燃焼)は、燃料および酸化剤が両方とも完全に消費されるまで発達する。
【0054】
反応は、予熱についての下限が明らかに存在することなく、進行する。しかしながら、供給原材料の中の不透過性ガスの濃度は30%未満の範囲にないのが好ましい。
【0055】
反応炉についての特に洗練された流体力学をもたらすことは、必要がないように思われる。供給された液体のための噴霧化用ノズル、通常の多孔分散管を重大な制約によることなく、断面積が充分であるように設けることも、必要がない。瀝青質燃料の場合には、2〜3百ポアズの粘度が得られるまでの融解および加熱と、蒸気による直列混合とを行うことで充分である。非液体留分は、それらが水の中に分散するものであれば、完全に許容することができ、歩留まりおよび放射のまったく影響しない。
【0056】
1900Kよりも大きい温度で稼動されるこの発明の燃焼器では、同じ出願人のPCT/IB2004/001220の最新の教示によれば、灰分は融解し、融解状態で容易に合体し、また、燃焼器の底に集まる。
【0057】
反応炉が大型化する問題は、気体燃焼器についてすでに試験したものに類似しており、付属文書に示された設計で解決することができる。
【0058】
この反応炉は、燃料/酸化剤の比が1へ到達するように稼動されるが、かろうじて目に見えて従来技術よりもかなり低い、TOC、CO、NOxおよび炭素含有粒子の放射に特徴がある。
【0059】
出力の発生についての全体プロセスは、気体燃料についてすでに導入されたものであってもよいが、ただし、燃料(液体)の異なった性質を考慮するために良好な技術的手法によって要求された不可避の調節は別である。
【0060】
しかしながら、現存するエネルギー発生プラントの後付けの目的のためには、全プロセスは以下の略図(図3)に示された構造のものであってもよい。
【0061】
例えば、空気酸化剤(1)は、圧縮機(C)の中で350kPagの圧力まで圧縮される。圧縮された酸化剤は、蒸気回収・製造ボイラー(S2)による低級熱出力(10)を利用するとともに400〜500Kへ予熱することによって、空気側において蒸気での漸進的飽和をもたらす熱回収ユニット(E)へ送られる(4)。しかしながら、添加された蒸気の予熱の水準および含有量は、低級熱を350Kの温度への完全な利用を保証するためのようなものである。
【0062】
酸化剤および燃料(5および6)は、燃料に反応炉の中で融解状態に合体される灰分が含まれているときには、1600K、好ましくは1900Kの煙霧温度での完全燃焼のために、燃焼器(R)へ送られる。
【0063】
微粒子のない熱ガスは、超臨界蒸気製造ボイラー(S1)の放射帯域へ送られる(7)。1100Kの温度および350kPaの圧力にある排出ガスは、大気圧への膨張のためのタービン(T)へ送られる(8)。それらは次いで、たいていの現存プラントにおける、600〜700Kまでの温度の蒸気を製造するための下流側熱回収部(S2)へ送られる(9)。
【0064】
そのボイラーによって製造された蒸気は、公知の方法により、エネルギー生成のための膨張タービンへ送られる。
【0065】
従来技術に比べて、この発明のプロセスによれば次のことが可能になる。
― 特に低くて実質的には問題にならない水準まで減少されたTOC、微粒子、CO、NOxの放射。
― 微粒子および未燃焼有機化合物がないことによってボイラーの中における腐食および侵食が実質的に減少し、その結果、同一の材料を使用しながらより高い温度が可能になること。
― 小さい寸法のボイラーの放射部の設計。
― 電気/熱出力生成サイクルの50%よりも大きい効率。
【0066】
このサイクルにおける1つの可能な変形例には、ゼオライトにおける選択的吸着が含まれる従来技術のプロセスによって、90%酸素の製造のための部分を追加することが備わっている。この部分によれば、大気圧にある酸素がもたらされ、また、圧縮された空気を部分的にあるいは完全に置換することができる。
【0067】
全体効率は低下するが、それはほんのわずかである。高いイオウ含有量のある燃料が使用されるときには、酸素がとりわけ好ましいが、その理由は、酸素によって、大気への排出に先立つ脱硫のために効率的で密度の高い煙霧の化学的後処理が可能になるからである。酸素の使用によれば、寸法が小さくてコストが低い最終凝縮部を利用することで水サイクルを正の均衡で完了することも実現可能になる。
【0068】
このプロセスにおける別の好ましい実施形態は、エネルギーを発生させる目的を伴った、高温耐火材内張り反応炉の中における固体燃料(坑口炭、高イオウ炭、褐炭、動物粉、粒状形態にある廃棄物)のための燃焼プロセスである。
【0069】
この反応炉は、寸法がmmよりも小さく粉砕されて水で運ばれた燃料で稼動する。酸化剤は、さまざまな公知の方法を用いて流れの中へ導入された蒸気と予備混合される。これら2つの流れは別々に送られ、燃料は反応炉の軸線へ、酸化剤は燃料の周りの複数の周縁箇所へ供給されるのが好ましい。
【0070】
稼動の原理は、気体燃料燃焼器および液体燃料燃焼器について上で説明されたものに類似している。放射は、可視領域で伝統的な火炎とともに観察することができるが、放射の範囲は、特にCOおよびNOxに関しては、石炭の燃焼について従来技術で知られたものよりも低いオーダーの大きさよりも大きい。特に均一で調整された反応領域(緩和燃焼)は、燃料および酸化剤が両方とも完全に消費されるまで発達する。
【0071】
反応は、予熱についての下限が明らかに存在することなく、進行する。しかしながら、供給原材料の中の不透過性ガスの濃度は30重量%未満の範囲にないのが好ましい。
【0072】
反応炉についての特に洗練された流体力学をもたらすことは、必要がないように思われる。70〜80ミクロンへの超微細な粉砕も、同じように必要がない。
【0073】
1900〜2000Kよりも大きい温度で稼動されるこの発明の燃焼器では、PTOIteaの最新の教示によれば、灰分は融解し、いくつかの場合にはフラックス(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、SiO2)の適度な添加の支援で、かつ、溶融したときには、容易に合体し、また、燃焼器の底に集まる。
【0074】
反応炉が大型化する問題は、気体燃焼器および液体燃焼器についてすでに試験したものに類似しており、付属文書に示された設計で解決することができる。
【0075】
この反応炉は、燃料/酸化剤の比が1へ到達するように稼動されるが、かろうじて目に見えて従来技術よりもかなり低い、TOC、CO、NOxおよび炭素含有粒子の放射に特徴がある。
【0076】
エネルギーの生成についての全体プロセスは、気体燃料についてすでに述べられたものであってもよいが、ただし、燃料(固体)の異なった性質を考慮するために良好な技術的手法によって要求された不可避の調節は別である。また、液体燃料についてすでに述べられたものであってもよいが、良好な技術的手法によって要求された調節を常に考慮すべきである。
【0077】
上記変形例は固体燃料へも適用される。従来技術に比べると、この発明のプロセスによれば次のことが可能になる。
― きわめて効率的で高い温度(>900K)の超臨界蒸気ボイラーを、低品質石炭(灰分含有量、イオウ)でも利用すること。低品質石炭のいくらかは、高い温度できわめて腐食性である管における溶融灰分によって引き起こされた「スラグ化」問題のために従来技術では完全に不可能であった。
― 水素化有機化合物の完全な不存在のために、同一の材料を使用して、より高い温度でも超臨界プラントを稼動すること。
【0078】
全体的な電気エネルギー/熱エネルギー効率は50%よりも大きい。
【0079】
この発明のプロセスについてのさらにいっそう好ましい実施形態は、この発明の燃焼器の特徴構成を充分に使用するために良好な技術的手法に従って導き出されるが、それは、先の実施形態における低級の気体燃料、液体燃料および固体燃料を、そして好ましくは固体燃料を、歩留まりの最大化へ向けられた熱力学サイクル(略図付属文書3)の中に挿入されたこの発明の燃焼器の中で酸化剤としての90%酸素で燃焼させるためのプロセスによって表されている。
【0080】
この燃焼器は1600〜2500kPaの圧力で稼動する。固体燃料(0)は、水の中のスラリーの形態で反応炉へ供給される。(VSAによって獲られた)90%酸素(1)は、水で飽和されるとともに、最終煙霧熱回収ユニット(R2)からの予熱水(2)についての多数の噴射箇所で装備された軸流圧縮機(C1)の中で圧縮される。
【0081】
圧縮された酸化剤は、燃焼器へ送られて、タービン(T1)からの排出ガスにおいて作動する回収ユニットR2から得られた蒸気(3)と、膨張タービンT1へ連結された圧縮機(C2)によって圧縮された燃焼ガス(4)とで混合される。
【0082】
この燃焼器は1700Kを超える温度で稼動する。難燃性留分はガラス化したスラグ(5)になる。燃焼器(6)からの排出煙道ガスは、圧縮機C2によって圧縮されたガスと混合されて、温度が1150〜1200Kまで低下し、膨張タービンへ送られる。大気圧(7)で膨張したガスは、回収ユニットR1を通過し、塔DAで乾燥脱酸を受けて、回収ユニットR2における回収部の中を前方へ進む。370Kにあって露点に近い冷ガスは、一部が圧縮機C2の取入口へ戻され(8)、圧縮機C1のそれと同様な方法を用いて、すなわち、圧縮の間にずっと、かつ、飽和器Tに近い出口でその温度(出口で470〜490K)に維持されるR2における予熱水(9)の噴射で、1600〜2500kPaの圧力へ圧縮される。
【0083】
冷ガスの残存留分(10)は、正味産出量+蒸発した水の量に等しいが、膨張タービンT2の中へ入り、凝縮器AFを通して313Kの凝縮状態Tに維持された20kPaの絶対圧力へ膨張される。非凝縮性成分(基本的にはCO2)と結露濃度にある蒸気とは、圧縮機C3で取り出される。圧縮機C3は、水噴射法を用いてその混合物を大気圧へ再圧縮するが、この間、水は予熱されなかった。
【0084】
このサイクルの熱力学効率は60%よりも大きい。提案されたこのプロセスは、複雑であって洗練された従来技術のIGCC(総合気化混合サイクル)と比べても、いっそう進歩しており、かつ、明らかに高い性能の代案である。
【0085】
以下のいくつかの実施例は、この発明の非限定的な例示として設けられている。
【0086】
実施例1.反応炉の準備
外部から冷却される型の金属構造体であって、耐火材料で内張りされかつ5.3m3の内容積がある反応炉が、考慮される。この反応炉には、軽量の燃料(あるいはメタン)および空気が、反応炉の表面を徐々に加熱する(100K/時間)目的で供給される。
【0087】
予熱位相が完了すると、反応炉には、550Kまで冷却された再生煙道ガスと、反応炉へ入る前に煙道ガスで予備混合され、かつ、加圧された酸素(VSAユニットから作り出される含有量87〜93%の酸素)とが供給される。その壁の表面温度はパイロメータによって監視される。
【0088】
両端にある石英丸窓によって、内部観察が行われる。ODC(燃焼の光学的診断)技術もまた、化学発光現象を監視するための300〜1100nmフォトダイオードセンサーによって適用される。
【0089】
反応炉からの排出ガスの温度は、H2O吸収/放出を検出するレーザダイオードと高温Zr熱電対との両方によって、監視される。
【0090】
反応炉からの煙道ガスは、特にFisher−Rosemountによって開発され、大きい化合物であるH2O、CO2と、「微小な」化合物であるCO、NO、NO2、SO2との両方、およびTOC(全有機物含有量、水素化CO2火炎検出器)を監視することのできる一組の高速応答型分析ユニット(T95:1.5秒)によって検出される。これらの分析ユニットによって、10ヘルツの振動数でガスを分析する。最初の信号は、データ補整用ソフトウェアを飛ばして進むために記録される。反応炉の閉サイクル煙道ガスは、それらが、H2O、CO2、SO2、CO、N2O、NO、NO2、HClを40秒の応答時間で検出する一群のFTIRセンサーによって大気圧へ合わされるとすぐに、並行して監視される。
【0091】
実施例2.
実施例1の予熱された反応炉は、そこへ軽量の燃料が供給され、大気圧よりもわずかに高い圧力に維持される。煙道ガスの温度を1500Kから2100Kまで60〜80K/時間の勾配で増大させるために、8時間のサイクルにわたって、燃料供給速度が1.5リットル/分から4リットル/分まで徐々に増大する。煙道ガスの中における酸素の超過量が4〜1.8モル%に維持されるような方法で、酸素が、燃料に対して一定の比率で反応炉へ供給される。再生された煙霧は、煙道ガスの温度を増大させることができるように調節される。
【0092】
放出において次の変化が観察された(明らかなことにデータの散乱がないにもかかわらず)。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 250 40 5
1900Kで 150 15 1
2100Kで 280 5 1
【0093】
供給帯域に近い広範囲の可視火炎帯域が、石英丸窓を通して観察された。この火炎帯域は、次第に縮小して、2000Kの上方で消失する。
【0094】
実施例3.
(実施例2と同様であるが、400kPaの絶対圧力で)
次の変化が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 50 15 2
1900Kで 30 5 1
2100Kで 90 5 1
【0095】
火炎帯域は初めから小さくて、1700Kで消失する。
【0096】
実施例4.
(実施例1と同様であるが、700kPaの絶対圧力で)
次の変化が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 15 5 1
1900Kで 30 5 1
2100Kで 90 5 1
【0097】
火炎帯域は初めはきわめて制限されていて、急速に消失する。
【0098】
実施例5.(比較実施例)
上記反応炉には、大気圧で空気および軽油(燃料1kg当たり23Nm3)が供給される。軽油供給速度は1.6リットル/分から4リットル/分まで徐々に増大する一方で、空気供給速度は減少し、実施例2,3,4でもたらされたものに等しい温度勾配をもたらすように、酸素が添加される。
【0099】
広範囲の火炎帯域が、ほぼ供給帯域(逆円錐形の)から反応炉の中心まで、常に存在している。
【0100】
250ppmから1000ppmを超えるまでの範囲はない(絶対読取値は、それが分析センサーの目盛りの4倍であるため、疑問の余地があるが)。TOCは50ppmの上方から始って、20ppm未満には決して低下しない。COは常に30〜70ppmの範囲の内部にある。
【0101】
実施例6.
実施例1の反応炉には、17重量%のアスファルテン、8%の炭素質物質が含まれている重油、HHV41500kJ/kgと、90%含有量酸素と、550Kまで冷却された再生煙道ガスとが供給される。稼動圧力は400kPa絶対値で維持される。
【0102】
重油は、供給ラインにおいて450Kまで予熱され、次いで、蒸気駆動型噴霧器を通して反応炉の中へ噴射される。燃料の供給速度は5リットル/分に保持され、再生煙道ガスの供給速度は、実施例2〜4の温度勾配を再現するような方法で制御される。
【0103】
次の放出傾向が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 140 50 5
1900Kで 100 30 2
2100Kで 160 10 1
【0104】
供給口に近く位置している小さい火炎帯域が、石英丸窓を通して観察された。この火炎帯域は、次第に縮小して、2000Kの上方で容積が極端に小さくなる。ODCによって、これらの観察結果に対応する質的変化のあることが明らかになる。
【0105】
実施例7.
(実施例6と同様であるが、10リットル/分の重油供給速度)
低温煙道ガスの温度は580Kである。
次の放出傾向が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 150 60 8
1900Kで 110 40 2
2100Kで 160 10 1
【0106】
実施例8.
(実施例6と同様であるが、700kPaの絶対圧力)
次の傾向が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 80 30 3
1900Kで 100 30 1
2100Kで 170 10 1
【0107】
入口に近くて小さい(逆円錐形の)可視火炎帯域はきわめて制限されていて、決して消失することはないが、突然、無視できるほど小さくなる。
【0108】
実施例9.
実施例6と同じシーケンスが実行されたが、酸素供給速度は、煙道ガスの中における酸素の13〜17モル%の超過量を取得するように、増大されている。
【0109】
次の変化が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 210 40 4
1900Kで 150 25 1
2100Kで 230 5 1
【0110】
供給口に近く位置していて、(実施例6に対して)より広い可視火炎の白い帯域が、石英丸窓を通して観察された。この火炎帯域は徐々に縮小したが、実施例6におけるそれよりも広く残存した。ODCによって、これらの観察結果と波長の変化とに対応する質的変化のあることが明らかになる。
【0111】
実施例10.
実施例6のそれに匹敵するシーケンスが、煙道ガスで密閉混合を開始すると思われるものの軸線上供給口から遠い箇所において、反応炉の中へ直接供給された酸素で実行された。
【0112】
オリマルション(70%の水性乳剤)が、8mmのオリフィスのある蒸気駆動型噴霧器によって、6リットル/分で供給される。
次の放出傾向が観察された。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1500Kで 80 40 7
1900Kで 60 20 3
2100Kで 110 10 1
【0113】
実施例11.
カロリー値が28500kJ/kgであって、17重量%の灰分と9%の水分含有量のある南アフリカ産の石炭が、2mmの平均粒子直径(最大粒子寸法は4mm)が得られるような方法でふるいにかけられる。
【0114】
最初はおよそ1〜2mmの直径の粒子に粗く粉砕され、カロリー値が18400kJ/kgであり、8重量%の難燃性灰分、11%の水分、0.7%の有機窒素を有するオリーブ殻が、ペースト状であるがまだ柔軟な液体混合物を得るために、かき混ぜられたタンクにおける水(比率:0.8kgの水当たり1kgのオリーブ殻)の中に懸濁される。
【0115】
ふるいにかけられた石炭は次いで、0.3kgの水とともに(オリーブ殻に対して重量で1:1)添加される。完全な組成は、1部のオリーブ殻、1部のふるいにかけられた石炭、1.2部の水からなっていた。この液体混合物の密度が測定される(1.12kg/リットル)。
【0116】
この液体混合物は、実施例1の反応炉へ汲み上げられて、12mmのオリフィスを通して蒸気推進型噴霧器で噴射される。90%のタイトルが付けられた酸素が、再生型煙道冷ガスとともに予備混合され、次いで、得られた煙道ガスの中で4〜8%の酸素の水準を維持するような割合で、反応炉へ供給される。反応炉のループは400kPaの絶対圧力にある。
【0117】
液体混合物の供給速度は、容積測定ポンプによって、1m3/h程度(より正確には、8時間の稼動合計で9.65m3のスラリー)の一定値に保持され、一方で、再生型煙道冷ガスは、次に煙霧温度水準を2100で保持する前に、1900〜2100の範囲にわたって、実施例2〜4および6〜11の煙霧温度傾斜の勾配を再現するような方法で、制御される。実際に、難燃性物(例えばアルカリ土類および金属酸化物)を融解するためには、より高いT値が必要である。
【0118】
放出傾向は、より広い散乱(+/−15ppm)を示すにもかかわらず、以下のように一覧表示される。
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1900Kで 130 40 9
2100Kで 100 60 3
【0119】
反応炉煙道ガスの中における上記濃度は、定量的に匹敵した外形を得るために、伝統的な技術に関して生成された熱的MN当たり7〜8の因子によって分けられるに違いない、ということは言うまでもない。
【0120】
供給口から離れた、きわめて小さくてわずかに可視的な赤い火炎帯域が、石英丸窓を通して見える。この火炎帯域は、徐々に縮小して、2000Kの上方できわめて制限された容積まで減少し、反応炉全体は明るい赤色へ変化する。軸方向に向けられた細い発光フィラメントが、反応炉容器に沿った側方口を通して見える。
【0121】
溶解したスラグは、反応炉の下部から排出され、冷却されて、加圧水ループによって運び去られる。ガラス化したスラグの特性は以下の表に示されている。
【0122】
結晶化度:0(100%X線非結晶)
C <0.1
二酸化ケイ素 40 %
Al 17
Ca 17
Fe 10
K 7
Mg 3
Na 2
Mn 0.11
Cr 495 ppm
Ba 467
Sr 418
Cu 176
Zn 132
Ni 83
Pb 40
Sn 5
【0123】
飛散灰分の等速吸引が反応炉の出口で行われる。固形物は0.7ミクロンPTFE膜フィルタに捕捉される。吸引ラインおよびフィルタボックスは、凝縮を回避するために、電気的に熱せられ、また、熱的に絶縁されている。
【0124】
1つの8時間試料といくつかのより短い継続時間の試料とが取得された。
8時間平均 18 mg/Nm3
1/2時間の低温位相 31 mg/Nm3 (3つの試料)
高い温度での1/2時間 <5 (4つの試料、すべてがこの技術の 下限に近い)
【0125】
実施例12.
(実施例11を考慮した比較実施例)
実施例1の反応炉は、出口の近傍において壁面温度が1600Kになるまで予熱され、この反応炉に、空気と微粉砕された(平均20ミクロン)石炭とが800kg/時間の速度で供給される。供給口のすぐ前方における空気供給管にはベンチュリ散布器が装着されている。微粉砕された石炭は、ベンチュリの狭い部分に設けられた長穴を通して供給され、次いで、14.0Nm3/kgの空気/石炭比で空気中に浮遊させられる。
【0126】
この空気に低温酸素が添加されて、温度曲線の所望の勾配、すなわち、煙道ガス中の4〜8%超過酸素に維持される。
【0127】
操業は、冷煙霧側に組み込まれたいくつかの装置の稼動温度限界に近い温度による530Kから590Kまでの冷却煙霧温度の増大によって煙道ガスについてのボイラー性能が明らかに劣化するために、4〜6時間後に中断される。その後、管中煙霧ボイラーの点検によって、灰分により引き起こされた管のかなりの付着物とデッドスポット状の灰分堆積とが明らかになる。
【0128】
分析値は常に1500ppmを超える(より正確な数値は、無意味であり、分析器の目盛りよりも6倍以上大きい)。
【0129】
反応炉へ供給された難燃性留分のわずか80%(その差は短縮された稼動から生じる不確実度を超えている)に等しい380kgのガラス化スラグが、反応炉から回収される。
【0130】
実施例13.
(実施例11との比較実施例)
実施例1の反応炉には二重推進チャンバーが取り付けられているが、これは、粒状固形物を加圧型反応炉へ供給するために、圧縮空気を11バールで供給する高速サイクル(0.2ヘルツ)が行われる。実施例11からの、ふるいにかけられた石炭とオリーブ殻との乾燥した1:1混合物が、推進チャンバーへ少量供給され、不連続的に加圧されかつ噴射される。
【0131】
この混合物の供給速度は、このシーケンスの8時間にわたって、ほぼ800kg/時間で一定に保持される。90%酸素が、再生冷煙霧と予備混合され、次いで、生成された煙道ガスの中における酸素の超過量が4〜8%の間に維持されるような割合で、反応炉へ供給される。反応炉ガスループは400kPaの圧力で加圧される。再生煙霧は、実験的操業(+80K/時間)の反応炉煙霧温度傾斜を再現するように調整される。
【0132】
温度の突然のかつ広い変動(+/−150K)は、固体燃料噴射サイクルに対応している振動数でのレーザダイオードの読取値から明らかである。組成の数値は、実施例11のシーケンスにおいて記録された統計的散乱よりも広い長サイクル変動によってもまた、影響を受ける。しかしながら、計算された平均値によって、次の放出傾向が与えられる。
【0133】
反応炉へ供給された比較的大きい粒子があるのにもかかわらず、
T 煙道ガス NO ppm CO ppm TOC ppm
1900Kで 600 35 6
2100Kで 750 40 2
【0134】
同じ1/8因子は、単位燃料当たりの煙道ガスの異なった容積を考慮に入れるために、上記数値へ適用されるにちがいない。ガラス化スラグの特徴付けは実施例11に対して重要な相違点のないことが明らかである。
【0135】
必然的に、この発明の原理は同様に残されており、実施形態の形態および構成の細部は、この発明の範囲から逸脱することなく、説明されかつ例示されたそれらに関して広範囲で変化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、この発明の好ましい1つの実施形態を示す図である。
【図2】図2は、この発明の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図3】図3は、この発明の好ましいさらに別の実施形態を示す図である。
【図4】図4は、この発明の好ましいさらに別の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
― 気体、気化性液体、非気化性液体、および固体の所望の物理状態にある少なくとも1種類の燃料と蒸気あるいは水とを混合し、
― 酸化剤を水、蒸気および/または再生煙霧と混合し、
かつ、両方の流れを1300K〜2500Kで、好ましくは1500K〜2100Kで等温反応炉へ送出することを含み、
電力を生成することを目的とする、高温耐火材が内張りされた反応炉の中における固体燃料、液体燃料または気体燃料の燃焼方法。
【請求項2】
燃料は、水素、メタン、軽量炭化水素、合成ガス、および低カロリー値を有している他の気体燃料からなる群から選択されるのが好ましい気体燃料であり、燃焼器が1500kPa〜2500kPaの圧力で稼働され、燃焼器は、電力の生成のために熱力学サイクルの中へ組み込まれることを特徴とする請求項1に記載の燃焼方法。
【請求項3】
酸化剤は、80体積%よりも大きい、好ましくは90体積%よりも大きい含有量の酸素であり、残部が不活性ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
燃料は、霧状化用ノズルによることなく燃焼器へ供給される、任意に低級燃料であってもよい気化性液体あるいは非気化性液体であり、燃焼器は、350kPa〜2500kPaの圧力で稼動され、燃焼器は、電力の生成のために熱力学サイクルの中へ組み込まれることを特徴とする請求項1に記載の燃焼方法。
【請求項5】
酸化剤は、80体積%よりも大きい、好ましくは90体積%よりも大きい含有量の酸素であり、残部が不活性ガスであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
燃料は、任意に低級燃料であってもよい固形物であり、燃焼器は、1500kPa〜2500kPaの圧力で稼動され、燃焼器は、電力の生成のために熱力学サイクルの中へ組み込まれることを特徴とする請求項1に記載の燃焼方法。
【請求項7】
固形物の粒子寸法が60ミクロン〜5mmであることを特徴とする請求項6に記載の燃焼方法。
【請求項8】
固形物の粒子寸法が1mm〜5mmであることを特徴とする請求項7に記載の燃焼方法。
【請求項9】
少なくとも1種類の燃料と蒸気あるいは水とを混合することを含み、反応炉の耐火材料と反応環境の不透過性ガスとによって、入口における反応物質を実質的に瞬時に予熱する高出力放射が引き起こされ、前記反応物質は、赤外線(N2/O2)に対して本質的に透過性であるが不透過性にされ、従って、蒸気による希薄化のために赤外線からのエネルギーの吸収体である、電力を生成することを目的とする、高温耐火材が内張りされた反応炉の中における固体燃料、液体燃料または気体燃料の燃焼方法。
【請求項10】
酸化剤と蒸気とをあらかじめ混合することをさらに備え、混合された酸化剤と燃料とが、2つの流れに分かれて反応炉へ供給されることを特徴とする請求項9に記載の燃焼方法。
【請求項11】
混合された燃料の流れが、実質的に反応炉の軸の水準で供給され、混合された酸化剤が、混合された燃料の周りにおける実質的に複数の帯域において供給されることを特徴とする請求項10に記載の燃焼方法。
【請求項12】
燃料は、水素、メタン、軽量炭化水素、合成ガス、および低カロリー値を有している他の気体燃料からなる群から選択された気体燃料であり、この気体燃料は、蒸気と混合されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の燃焼方法。
【請求項13】
燃料は、液体炭化水素、重い精製所留分、ビチューメン、使用済み溶剤、オリマルション、固体分解生成物や水やイオウをさまざまな含有量で有している液体燃料からなる群から選択された液体燃料であり、この液体燃料は、水と混合されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の燃焼方法。
【請求項14】
燃料は、坑口炭、高イオウ炭、褐炭、動物粉、粒状形態にある廃棄物からなる群から選択された固体燃料であり、この燃料は、1mm未満程度の近似的粒子寸法を得るために粉砕され、水溶性担体によって反応炉の中へ搬送されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の燃焼方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載の燃焼方法を実行するための内部耐熱性内張りを備えている高能率燃焼反応炉。
【請求項16】
同じ側に、軸線上入口と周辺出口とを備えていることを特徴とする請求項15に記載の燃焼反応炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−537417(P2007−537417A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512578(P2007−512578)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001290
【国際公開番号】WO2005/108867
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505394220)
【氏名又は名称原語表記】ITEA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pollastri,6,I−40138 Bologna,ITALIA
【Fターム(参考)】