説明

環境応力亀裂抵抗の高いエチレンの重合体

【課題】応力亀裂抵抗の高いエチレンの重合体の提供。
【解決手段】有効成分として;I)フィリップス触媒、II)上記I)とは異なる成分であって、下記式(A):


で表されるメタロセン錯体から誘導される成分をシリカゲルからなる支持材料に付与した固体、を含む触媒組成物の存在下における、エチレン及び必要により別のコモノマーの重合により得られるエチレンの重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I)フィリップス触媒、
II)上記I)とは異なる成分であって、
下記式(A):
【0002】
【化1】

【0003】
[但し、R1〜R10が、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、置換基としてC1〜C6アルキル基を有していても良い5−乃至7−員のシクロアルキル、C6〜C15アリール或いはアリールアルキル(これらの基の内の隣接する2個の基は合体して炭素原子数4〜15の環状基を形成しても良い)又はSi(R113(但し、R11がC1〜C10アルキル、C6〜C15アリール又はC3〜C10シクロアルキルを表す)を表し、又は上記R4及びR9が合体して基−[Y(R1213)]m−(但し、Yが珪素、ゲルマニウム、錫又は炭素を表し、R12、R13が水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル又はC6〜C15アリールを表す)を形成し;
Mが、IV〜VIII族の遷移金属又はランタニド系列の金属を表し;
1,Z2が、弗素、塩素、臭素、沃素、水素、C1〜C20アルキル或いはアリール、−OR14、−OOCR14
【0004】
【化2】

【0005】
(但し、R14が水素又はC1〜C20アルキルを表し、R15がC1〜C20アルキルを表し、mが1、2、3又は4を表し、そしてn+rの合計が0、1又は2の条件でnが0、1又は2であり及びrが0、1又は2である)を表す]
で表されるメタロセン錯体から誘導される成分がシリカゲルからなる支持材料に付与された固体、そして、必要により III)元素の周期表のIA、IIA、IIB及びIIIA族から選ばれる有機金属成分を含む触媒組成物の存在下における、エチレン及び必要により別のコモノマーの重合により得られるエチレンの重合体に関する。
【0006】
また、本発明は、エチレン及び必要により別のコモノマーの重合に好適な触媒組成物、エチレンの重合体の製造方法、エチレンの重合体を、フィルム、成形体及び繊維の製造に使用する方法、更にそのフィルム、成形体又は繊維に関する。
【0007】
成形体及びフィルムは、ポリエチレンから製造される場合が多い。ポリエチレン成形体は、例えば、プラスチック性の燃料容器(タンク)、危険物の輸送容器、或いはガスや水の圧送パイプとして使用される。これらの用途では、成形体は応力下で破壊されてはならず、換言すれば環境応力亀裂抵抗はできるだけ高くなくてならない。さらに、成形体は、外力の付与に対して容易に変形するものではあってはならない。即ち、その靭性はできる限り大きいことが必要である。
【0008】
処理により環境応力亀裂抵抗が比較的高く且つ靭性も比較的高い成形体を得ることができるエチレンの重合体は、チグラー触媒を用いて得られるエチレンの重合体と、フィリップス触媒を用いて得られるエチレンの重合体とを混合することにより得られる(EP−A0533155及びEP−A0533156)。しかしながら、この方法では、各重合体が別の反応器で異なった触媒を用いて製造され、そしてこれらの成分を別の工程で混合しなければならず、この方法は煩雑である。
【0009】
WO−A92/17511には、細孔容積が異なる2種のフィリップス触媒の存在下におけるエチレンの重合が記載されている。しかしながら、ここで得られる重合体の性質は、満足できない点がある。これは、特に得られる成形体の環境応力亀裂抵抗と靭性との関係である。
【0010】
EP−A0339571に、広い分子量分布と高い溶融抵抗を有するエチレン(共)重合体が、(A)フィリップス触媒、(B)共役π電子系を有する配位子含有遷移金属化合物及び(C)アルミノオキサンからなる触媒の存在下に重合を行うことにより製造することができることが、知られている。2種の異なった固体からなる触媒系の使用、即ち一方がフィリップス触媒で、他方がメタロセン錯体の重合−活性触媒は、この文献には開示されていない。さらに、同時に良好な環境応力亀裂抵抗と高い靭性を有する成形体を製造することができるエチレン重合体をいかにして製造するかについては何ら示唆はない。
【0011】
本発明の目的は、上述の不利を持たず、或いはわずかな程度でしか持たず、そして環境応力亀裂抵抗に優れ、靭性の高い成形体を製造するのに適した新規なエチレン重合体を提供することにある。
【0012】
本発明者等は、上記目的は冒頭に定義されたエチレン重合体及び触媒組成物により達成されることを見出した。更に、本発明者等は、エチレン重合体を製造する方法、またフィルム、成形体及び繊維の製造にエチレン重合体を使用する方法、更にそのフィルム、成形体又は繊維、についても見出した。
【0013】
本発明のエチレン重合体は、通常0.925〜0.965g/cm3の範囲、好ましくは0.945〜0.955g/cm3の範囲の密度(DIN53479に従って測定されたもの)、及び0.0g/10分(190℃/21.6kg)〜200g/10分(190℃/21.6kg)の範囲、好ましくは2.0g/10分(190℃/21.6kg)〜50g/10分(190℃/21.6kg)の範囲のメルト・フロー・レート(MFR;溶融流量)(異なった荷重の条件下で(ブラケット中)DIN53735に従って測定されたもの)を有する。
【0014】
その重量平均分子量Mwは、一般に10000〜7000000の範囲、好ましくは20000〜1000000の範囲である。分子量分布Mw/Mnは、3〜300の範囲が一般的で、8〜30が好ましい。分子量分布は、1,2,4−トリクロロベンゼン中で135℃にてGPC(gel permeation chromatography)によりポリエチレン標準を対照にして測定した。
【0015】
一般に、反応器で製造されたエチレン重合体は、押出機内で溶融され、均質化される。押出物のメルト・フロー・レート及び密度は、原材料重合体のものとは異なるものであるが、本発明で規定した範囲に入っている。
【0016】
本発明の触媒組成物は、別々に製造される異種の固体成分I)及びII)及び、所望により、元素の周期表における第1主族(IA)、第2主族(IIA)、第3主族(IIIA)及び第2遷移族(IIB)の有機金属化合物III)からなり、これらは一般に、活性剤として働く。また、有機金属化合物III)の混合物を使用することも可能である。
【0017】
固体成分I)及びII)を製造するには、支持材料を、一般に適当な遷移金属を含む化合物1個以上と接触させる。
【0018】
支持材料は、通常、なおヒドロキシ基を含んでも良い多孔性の無機固体である。このような固体の例としては、当該技術分野の者には公知のものであるが、酸化アルミニウム、酸化珪素(シリカゲル)、二酸化チタン或いはこれらの混合酸化物、又は燐酸アルミニウムを挙げることができる。さらに、好適な支持材料は、ボロン(BE−A−61275)、アルミニウム(US4284527)、珪素(EP−A0166157)、燐(DE−A3635715)又はチタン等の元素の化合物で多孔性表面を変性することにより得ることができる。支持材料は、アンモニウムヘキサフルオロシリケート等の弗化剤の存在又は非存在下、200〜1000℃の酸化又は非酸化条件においてに行うことができる。
【0019】
タイプI)の重合活性成分は、当該技術分野の者には公知のフィリップス触媒であり、その製法は、例えば、DE−A2540279又はDE−A3938723に記載されている。簡単に記載すると、それは、支持材料(例、シリカゲル)にクロム含有溶液をしみ込ませ、溶媒を除去し、そしてその固体を酸化条件、例えば、400〜1000℃で酸素含有雰囲気にて、加熱することにより得られる。この活性化に続いて、例えばクロム含有固体を、一酸化炭素で20〜800℃において処理する還元が実施される。かくして、I)の製造方法は、一般に少なくとも1個の酸化工程を含む。
【0020】
本発明の触媒組成物の重合活性成分II)は、成分I)とは、特に、遷移金属の有機金属化合物が一般にII)の製造における支持材料に付与(塗布)され、続く酸化条件での固体の処理の方は省略される点で、異なっている。その支持材料は、有機金属遷移金属化合物で処理する前に50〜1000℃でか焼することができる。有機金属化合物III)、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキルアルミニウム、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムまたはアルミノオキサン(aluminoxane)、が支持材料に付与されることも好ましい。
【0021】
成分II)を製造するには、式(A)の金属錯体を、一般に、溶媒(例、脂肪族或いは芳香族炭化水素又はエーテル)に溶解し、支持材料と混合する。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、エチルベンゼン、テトラヒドロフラン或いはジエチルエーテル、そして支持材料としては、シリカゲル、酸化アルミニウム或いは燐酸アルミニウムが好ましい。
【0022】
溶媒は得られる懸濁液から、通常蒸発により除去される。
【0023】
金属錯体(A)を、支持材料との接触の前に、1種以上の成分(III)の有機金属化合物、特にC1〜C4トリアルキルアルミニウム(例、トリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウム)と、又はメチルアルミノオキサンと混合し、それから混合物を支持材料と接触させることも可能である。
【0024】
さらにまた、適当な錯体(A)を、昇華によりガス相から支持材料に付着させることもできる。この目的で、錯体(A)は、一般に支持材料(例、シリカゲル、酸化アルミニウム或いは燐酸アルミニウム)と混合され、そして0〜200℃、0.00001〜100kPaの範囲の圧力で加熱される。この方法では、クロム含有錯体(A)そして特に非置換又は置換のビス(シクロペンタジエニル)クロム化合物の使用が好ましい。
【0025】
成分II)の遷移金属含有量は、一般に固体1gに対して遷移金属1〜1000μモルの範囲であり、好ましくは固体1gに対して遷移金属10〜500μモルの範囲である。
【0026】
金属錯体(A)において、
【0027】
【化3】

【0028】
Mが、元素の周期表の、第4〜第8遷移族(IVB〜VIIIB)の金属又はランタニド系列の金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、又はニッケルであり、特にチタン、ジルコニウム、ハフニウム又はクロムが好ましい。
【0029】
1〜R10が、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、置換基としてC1〜C6アルキル基を有していても良い5−乃至7−員のシクロアルキル、C6〜C15アリール或いはアリールアルキル(これらの基の内の隣接する2個の基は合体して炭素原子数4〜15の環状基(環縮合)を形成しても良い)、又はSi(R113(但し、R11がC1〜C10アルキル、C6〜C15アリール又はC3〜C10シクロアルキルを表す)を表し、又は上記R4及びR9が合体して基−[Y(R1213)]m−(但し、Yが珪素、ゲルマニウム、錫又は炭素を表し、R12、R13が水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル又はC6〜C15アリールを表す)を形成する。
【0030】
1〜R10は、好ましくは水素、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、縮合6−又は7−員カルボシクリック環(炭化水素環)系及び/又は橋かけ−[Y(R1213)]m−である。特に、R1〜R10は、水素、メチル、n−ブチル、tert−ブチル、縮合6−又は7−員のカルボシクリック環系(インデニル型リガンド)及び/又は橋かけ−[Y(R1213)]m−である。好ましい橋かけ−[Y(R1213)]m−は、Yが炭素又は珪素、R12、R13が水素、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル又はフェニル、そしてmが1又は2の場合である。
【0031】
(A)のZ1,Z2が、弗素、塩素、臭素、沃素、水素、C1〜C20アルキル或いはアリールであり、好ましくはC1〜C20脂肪族基、C3〜C10脂環式基、C6〜C15芳香族基又はアリールの炭素原子数が6〜15でアルキルの炭素原子数が1〜10のアラルキル基である。具体例としては、メチル、エチル、iso−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、iso−ブチル、シクロペンチル、フェニル、トリル及びベンジルを挙げることができる。
【0032】
1、Z2がアルコキシド−OR14、カルボキシレート−OOCR14、アルドレート
【0033】
【化4】

又はシクロペンタジエニル基の誘導体
【0034】
【化5】

【0035】
(但し、R1〜R10は、は前記と同義であり、R14、R15が水素、C1〜C20アルキル(好ましくはメチル、エチル、iso−プロピル又はtert−ブチル)を表す。)を表す。
【0036】
1、Z2は、好ましくは水素、塩素、メチル又はフェニルであり、特に塩素である。
【0037】
(A)のインデックスmは、1、2、3又は4であり、好ましくは1又は2で、特に1である。極めて好ましい橋かけはジメチルシリル基である。
【0038】
(A)のインデックスn及びrは、n+rの合計が0、1又は2の条件で、0、1又は2である。n及びrは、n+rの合計が0又は2の条件で、0、1又は2であることが好ましい。
【0039】
式(A)の好適な化合物は、非置換又は置換のビス(シクロペンタデシル)又はビス(インデニル)リガンドを含む錯体であり、また、橋かけ置換又は非置換インデニルリガンドを含む錯体であり、例えばDE−C4344672に記載されている。
【0040】
式(A)の好ましいメタロセン錯体の例としては、ジメチルシリルビス(2−メチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)クロム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロム、ビス(インデニル)クロム及びビス(フルオレニル)クロムを挙げることができる。
【0041】
特に使用される化合物(A)として、ジメチルシリルビス(2−メチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド又はビス(シクロペンタジエニル)クロムを挙げることができる。
【0042】
触媒成分I)及びII)は、一般に自由に選択することができるが、個々の成分I)及びII)がエチレン/コモノマーのモノマー混合物に対する共重合挙動において異なる触媒組成物が好ましい。
【0043】
共重合挙動は下記の式: R=(b−1)/aで記すことができる。
【0044】
上式において、bは共重合体の誘導された構造単位のモル比(エチレン:コモノマー)であり、そしてaは反応器におけるモノマー混合物中のエチレンとコモノマーのモル比である。
【0045】
I)とII)の好適な組合せは、一般に個々の成分のR値が2以上の率で異なるものであり、特にR値が4以上の率で異なるものである。
【0046】
本発明の重合体は、触媒成分I)及びII)及び必要によりIII)の存在下に、エチレンの単独重合により、或いはエチレンと他のモノマー1種以上との共重合により得ることができる。
【0047】
有用なコモノマーとしては、通常C3〜C15アルカ−1−エン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン又は1−ペンタデセンを挙げることができる。特に、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテンの使用が好ましく、中でも1−ヘキセンが好ましい。
【0048】
共重合体中のコモノマーの化学結合比率は、一般に、共重合体に対して、0.1〜2モル%、好ましくは0.3〜1.5モル%である。
【0049】
重合は、オレフィンの重合に通常使用される公知の方法により行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、攪拌ガスの相又はガス相の流動層法、或いは連続法、バッチ法を挙げることができる。溶媒又は懸濁媒体としては、iso−ブタン等の不活性炭化水素或いはモノマーそれ自身を使用することができる。
【0050】
圧力は、一般に100〜10000kPa、好ましくは1000〜6000kPaであり、温度は、一般に10〜150℃、好ましくは30〜125℃の範囲である。
【0051】
特に、本発明の重合体を製造するための好適な方法は、懸濁法及びガス相の流動層法である。特別の触媒組成により、本発明の重合体を単一の反応器から得ることが可能となる。
【0052】
触媒成分I)及びII)は、モノマーと接触する前に混合され、一緒に重量を測って反応器に投入されるか、或いは反応器に互いに別々に重量を測って(例えば複数の場所で)反応器に投入される。
【0053】
重合は、元素の周期表のIA、IIA、IIB及びIIIA族から選ばれる有機金属成分III)の存在下に、有利に行うことができる。適当な化合物III)の例としては、リチウム、硼素、亜鉛或いはアルミニウムのC1〜C10アルキルあるいはアルキルハライド、又は例えばEP−A284708に記載されているようなC1〜C4アルキルアルミノオキサンを挙げることができる。この種の好適な化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、トリエチル硼素、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド及びメチルアルミノオキサンを挙げることができる。成分II)としてビス(シクロペンタジエニル)クロム又はその置換シクロペンタジエニル誘導体の1個を使用した場合、成分III)としてn−ブチルリチウムが特に有用である。
【0054】
有機金属化合物III)の遷移金属に対するモル比は、1000:1〜0.01:1、好ましくは500:1〜1:1の範囲である。
【0055】
モル重量調節剤として、一般に水素が使用されるが、IVB 族又はVIB 族の金属(例、ジルコニウム又はクロム)を含む成分II)を使用する場合に好ましい。水素の非存在下では、重合体のモル重量は、反応温度の変更により影響を受ける。
【0056】
本発明の重合体は、環境応力亀裂抵抗に優れ、同時に靭性(密度)の高いものである。これらは、環境応力亀裂抵抗に優れ、靭性の高いことが必要な部品、特にガス或いは水の圧送パイプの製造に適している。
【0057】
重合体を提供することにある。更に、これらは、パイプの被覆及びケーブル外装の製造に有利に使用することができる。
【0058】
実施例 触媒の製造
[実施例1]
<成分I> 116.5g(0.29モル)の硝酸クロム(III)9水塩及び37.5g(0.21モル)のジアンモニウムヘキサフルオロシリケート(ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム)を、1.5kgのシリカゲル(SD3216、グレース社製)を8l(リットル)の水に懸濁させた液に添加し、混合物を25℃で1時間攪拌した。次いで、水を100℃、減圧下に除去し、得られた固体を空気流中で550℃にて2時間処理した。
【0059】
<成分IIa)(クロム含有)>
シリカゲル(SG332、グレース社製)を、アルゴン流中で800℃にて6時間か焼し、それから異なった3種類の変体A〜C(下記に記載)であるビス(シクロペンタジエニル)クロム(クロモセン(chromocene))と接触させた。
【0060】
<変体A>
4g(0.02モル)のビス(シクロペンタジエニル)クロムを、60gのか焼したシリカゲルの500mlのヘプタン懸濁液に添加し、次いで溶媒を除去した。得られた固体のクロム含有量は、1.9重量%であった。
【0061】
<変体B>
60gのか焼したシリカゲルを、4g(0.02モル)のビス(シクロペンタジエニル)クロムと、乾燥状態で混合し、反応容器の圧力を0.01kPaまで下げ、2時間維持した。この間にビス(シクロペンタジエニル)クロムがシリカゲル上に付着した。得られた固体のクロム含有量は、1.9重量%であった。
【0062】
<変体C>
変体Bの手順を、得られた触媒固体を80℃で2時間加熱した以外、繰り返し行った。得られた固体のクロム含有量は、1.9重量%であった。
【0063】
<成分IIb)(ジルコニウム含有)>
1.19g(0.0021モル)のrac−ジメチルシランジイルビス(2−メチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリドを、メチルアルミノオキサンの1.53モルトルエン溶液583.5ml(0.82モル)に、室温で溶解した。アルゴン流中800℃でか焼した100gのシリカゲル(SG332、グレース社製;25〜40μm)を、ゆっくりこの溶液内に導入し、次いで溶媒を蒸発させた。
【0064】
<重合>
[実施例2及び3](エチレン/1−ヘキサン共重合)
重合は、懸濁媒体としてiso−ブテンを用いて180l(リットル)フィリップス・サスペンション・ループ反応器内で行った。触媒成分I)及びIIa)(実施例1)を、2つの異なる重量測り位置から加えた。触媒成分IIa)を実施例1に記載したように製造した(変体B)。重合を、成分III)としてn−ブチルリチウム(ヘプタン中に0.063モル)の存在下、モル質量調節剤として水素を用いて行った。反応器にまずモノマー、助触媒及び懸濁媒体を充填し、そして重合を触媒成分I)及びIIa)内でこれらの重量を測って開始し、それから連続的に行った。製造パラメーターを表1に示し、生成物の性質を表2に示した。
【0065】
【表1】

a)重合体のg/触媒固体のg
【0066】
【表2】

【0067】
b)DIN53479に従い測定
c)DIN53735に従って測定された、190℃、21.6kg荷重時のメルト・フロー・レート(MFR;溶融流量)
d)BASF独自の方法で決定された環境応力亀裂抵抗。即ち、重合体を、圧縮して1mm厚の板(直径38mmに打ち抜かれた)を形成する。これらのディスクの一方の表面に深さ200μm、長さ2cmのノッチを設ける。その板を、50℃にされた界面活性剤5%濃度溶液(レテンゾール(LutensolR)FSA)に浸漬し、板の一方の表面に3バールの圧力を加える。圧力の付与からディスクが割れるまでの時間を測定する。5個の測定の算術平均を計算する。
【0068】
[比較例]
DE−A2540279(実施例)に記載の通常のフィリップス触媒を用いて得られるエチレン/1−ヘキセン共重合体(1−ヘキセンから誘導された単位が0.004モル%、d=0.9465g/cm3)のESCRを測定した。118時間であった。
【0069】
実施例2及び3に記載されたようにして製造された本発明の重合体は、比較実験の重合体より高い環境応力亀裂抵抗を有し、一方密度は少なくとも同じくらい高い。
【0070】
<実施例4及び5>
<一般>
11のオートクレーブに、500mlのイソブテン、5mlの1−ヘキセン(0.04モル)及び20mgのn−ブチルリチウム(ヘキサン中に0.063モル)を充填した。オートクレーブの内容物を80℃に加熱し、圧力をエチレンにより4000kPsまで増加させ、触媒固体I)及びIIb)をそれぞれ40mg測り入れ、重合を90分間行った。
【0071】
[実施例4]
ここでは、触媒成分I)をまず測り入れ、そして成分IIb)(実施例1)をそれから測り入れた。104gの重合体が得られた。これは触媒固体1gに対して重合体1300gの生産性に対応している。重合体の密度は0.935g/cm3で、MFR(190℃、21.6kg荷重)は0.0g/10分であった。
【0072】
[実施例5]
実施例4を、まず成分IIb)を測り入れた後成分I)を測り入れた以外は、繰り返した。123gの重合体が得られた。これは触媒固体1gに対して重合体1540gの生産性に対応している。重合体の密度は0.9280g/cm3で、MFR(190℃、21.6kg荷重)は0.0g/10分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として;
I)フィリップス触媒、
II)上記I)とは異なる成分であって、
下記式(A):
【化1】


[但し、R1〜R10が、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、置換基としてC1〜C6アルキル基を有していても良い5−乃至7−員のシクロアルキル、C6〜C15アリール或いはアリールアルキル(これらの基の内の隣接する2個の基は合体して炭素原子数4〜15の環状基を形成しても良い)又はSi(R113(但し、R11がC1〜C10アルキル、C6〜C15アリール又はC3〜C10シクロアルキルを表す)を表し、又は上記R4及びR9が合体して基−[Y(R1213)]m−(但し、Yが珪素、ゲルマニウム、錫又は炭素を表し、R12、R13が水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル又はC6〜C15アリールを表す)を形成し;
Mが、IV〜VIII遷移族の金属又はランタニド系列の金属を表し;
1,Z2が、弗素、塩素、臭素、沃素、水素、C1〜C20アルキル或いはアリール、−OR14、−OOCR14
【化2】

(但し、R14が水素又はC1〜C20アルキルを表し、R15がC1〜C20アルキルを表し、mが1、2、3又は4を表し、そしてn+rの合計が0、1又は2の条件でnが0、1又は2であり及びrが0、1又は2である)を表す]
で表されるメタロセン錯体から誘導される成分がシリカゲルからなる支持材料に付与された固体、
を含む触媒組成物の存在下における、エチレン及び必要により別のコモノマーの重合により得られるエチレンの重合体。
【請求項2】
触媒組成物が、さらにIII)元素の周期表のIA、IIA、IIB及びIIIA族から選ばれる有機金属成分を含み、且つIII)有機金属成分として、C1-4トリアルキルアルミニウム及びメチルアルミノキサンから選択される少なくとも1種を用いた場合に、メタロセン錯体から誘導される成分が、上記III)有機金属成分とを混合されたのち、支持材料に付与される請求項1に記載のエチレンの重合体。
【請求項3】
(A)におけるMが、ジルコニウム又はクロムである請求項1又は2に記載のエチレンの重合体。
【請求項4】
密度が0.925〜0.965g/cm3である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレンの重合体。
【請求項5】
コモノマーとしてC3〜C15アルカ−1−エンを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレンの重合体。
【請求項6】
有効成分として;
I)フィリップス触媒、
II)上記I)とは異なる成分であって、
下記式(A):
【化3】


[但し、R1〜R10が、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、置換基としてC1〜C6アルキル基を有していても良い5−乃至7−員のシクロアルキル、C6〜C15アリール或いはアリールアルキル(これらの基の内の隣接する2個の基は合体して炭素原子数4〜15の環状基を形成しても良い)又はSi(R113(但し、R11がC1〜C10アルキル、C6〜C15アリール又はC3〜C10シクロアルキルを表す)を表し、又は上記R4及びR9が合体して基−[Y(R1213)]m−(但し、Yが珪素、ゲルマニウム、錫又は炭素を表し、R12、R13が水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル又はC6〜C15アリールを表す)を形成し;
Mが、IV〜VIII遷移族の金属又はランタニド系列の金属を表し;
1,Z2が、弗素、塩素、臭素、沃素、水素、C1〜C20アルキル或いはアリール、−OR14、−OOCR14
【化4】


(但し、R14が水素又はC1〜C20アルキルを表し、R15がC1〜C20アルキルを表し、mが1、2、3又は4を表し、そしてn+rの合計が0、1又は2の条件でnが0、1又は2であり及びrが0、1又は2である)を表す]
で表されるメタロセン錯体から誘導される成分がシリカゲルからなる支持材料に付与された固体、
を含む触媒組成物。
【請求項7】
触媒組成物が、さらにIII)元素の周期表のIA、IIA、IIB及びIIIA族から選ばれる有機金属成分を含み、且つIII)有機金属成分として、C1-4トリアルキルアルミニウム及びメチルアルミノキサンから選択される少なくとも1種を用いた場合に、メタロセン錯体から誘導される成分が、上記III)有機金属成分とを混合されたのち、支持材料に付与される請求項6に記載のエチレンの触媒組成物。
【請求項8】
(A)におけるMが、ジルコニウム又はクロムである請求項6又は7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
(A)が、置換又は非置換の橋かけインデニル配位子を含むジルコニウム錯体である請求項6〜8のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の触媒組成物の存在下に、エチレン及び必要により別のコモノマーを重合することによりエチレンの重合体を製造する方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体を、フィルムの製造に使用する方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体を、成形体の製造に使用する方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体を、繊維の製造に使用する方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体からなるフィルム。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体からなる成形体。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体からなる繊維。

【公開番号】特開2008−231434(P2008−231434A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119595(P2008−119595)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【分割の表示】特願平9−509767の分割
【原出願日】平成8年8月7日(1996.8.7)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】