説明

環境改善ブロック及びその製造方法

【課題】水質浄化を含めた環境改善に有益で、防水性に優れ、また、製作工程が簡略化され、製造コストが安価な環境改善ブロック及びその製造方法を提供する。
【解決手段】河川11、湖沼及びため池のいずれか1の底面12又は法面13、14に敷き詰められて使用される環境改善ブロック10であって、有底で上部開口の空間部15を有するコンクリートブロック本体16と、コンクリートブロック本体16の空間部15に充填され、透水性を有する多孔質体17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川又は湖沼等の底面及び法面に敷き詰められて使用される環境改善ブロック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川、湖沼及びため池の底面や法面を覆って敷き並べられて使用される環境改善ブロックの一例である水質浄化ブロックとして、例えば、特許文献1に記載の形態のものが知られている。
特許文献1に記載の水質浄化ブロックは、特に、水質浄化能力が優れており、矩形板状のポーラスコンクリート製本体の表面側の中央に形成された直方体状の凹陥部に、火山灰と硫酸第一鉄との混合物を焼成して製作された直方体状のリン吸着剤塊を嵌め込むことにより装着して一体化したものである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−263531号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の水質浄化ブロックは、水質汚濁、特に、有機物、窒素化合物及び溶存リンを防止する目的の場合には、極めて有効であるが、その他の目的、例えば、補強や滑り止めを目的とする場合には、強度が弱かった。
また、硫酸第一鉄を使用し、火山灰と硫酸第一鉄との混合物を焼成してリン吸着剤塊を製造するので、製造工程が複雑で、製造コストが高くなるという問題もあった。
更に、ポーラスコンクリート製本体の裏面が川や湖沼の法面や底面に当接して配置されているため、通水性を有するポーラスコンクリート製本体から川や湖沼の側壁部や底部に浸水するという問題もあった。
また、リン吸着剤塊をポーラスコンクリート製本体に着脱自在に装着しているので、リン吸着剤塊が何らかの条件で、ポーラスコンクリート製本体から外れるという恐れもあった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、水質浄化を含めた環境改善に有益で、防水性に優れ、また、製作工程が簡略化され、製造コストが安価な環境改善ブロック及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る環境改善ブロックは、河川、湖沼及びため池のいずれか1の底面又は法面に敷き詰められて使用される環境改善ブロックであって、有底で上部開口の空間部を有するコンクリートブロック本体と、前記コンクリートブロック本体の前記空間部に充填され、透水性を有する多孔質体とを備えている。
本発明に係る環境改善ブロックにおいて、前記多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利、又は山、海若しくは河川から採集される砂利を主体とし、セメント又は樹脂で固めてもよい。
【0007】
本発明に係る環境改善ブロックにおいて、コンクリートブロック本体には、水抜き部を設けてもよい。
本発明に係る環境改善ブロックにおいて、前記コンクリートブロック本体の裏面には、前記底面又は法面に嵌入可能な1又は複数の脚部を形成してもよい。
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る環境改善ブロックの製造方法は、河川、湖沼及びため池のいずれか1の底面又は法面に敷き詰められて使用される環境改善ブロックの製造方法であって、有底で上部開口の空間部を有するコンクリートブロック本体を成形し、前記コンクリートブロック本体の前記空間部の周縁側部に型枠を配置し、該空間部に透水性を有する多孔質体を打設する。
【0009】
本発明に係る環境改善ブロックの製造方法において、前記多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利、又は山、海若しくは河川から採集される砂利を主体とし、セメント又は樹脂で固めてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜4記載の環境改善ブロックは、有底で上部開口の空間部を有するコンクリートブロック本体の空間部に透水性を有する多孔質体を充填しているので、浸透性が低く強度を有するコンクリートブロック本体と透水性を有する多孔質体との融合により、防水性が高く、強度を高く確保できると共に、水質浄化も可能である。
【0011】
特に、請求項2記載の環境改善ブロックにおいては、多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利、又は山、海若しくは河川から採集される砂利を主体とし、セメント又は樹脂で固めているので、無機質なコンクリートとは異なり、自然と調和した景観を形成することができる。
請求項3記載の環境改善ブロックにおいては、コンクリートブロック本体に水抜き部が設けられているので、多孔質体の水の通過性が向上し、この結果、水質浄化の効果が良くなる。
【0012】
請求項4記載の環境改善ブロックにおいては、コンクリートブロック本体の裏面に、河川、湖沼及びため池のいずれか1の底面又は法面に嵌入可能な1又は複数の脚部を形成しているので、環境改善ブロックの敷き詰め作業が容易にでき、また、環境改善ブロックを底面又は法面に強固に固定することができる。
【0013】
請求項5及び6記載の環境改善ブロックの製造方法は、有底で上部開口の空間部を有するコンクリートブロック本体を成形した後、コンクリートブロック本体の空間部の周縁側部に型枠を配置し、空間部に透水性を有する多孔質体を打設するので、製作工程の簡略化が図られ、しかも、製造コストの低減化が図られる。
【0014】
特に、請求項6記載の環境改善ブロックにおいては、多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利、又は山、海若しくは河川から採集される砂利を主体とし、セメント又は樹脂で固めているので、無機質なコンクリートとは異なり、自然と調和した景観を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る環境改善ブロックが敷き詰められた河川の断面図、図2は同環境改善ブロックを複数枚敷き詰めた状態の斜視図、図3は同環境改善ブロックの斜視図、図4は同環境改善ブロックの平面図、図5は同環境改善ブロックのコンクリートブロック本体の斜視図、図6(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態に係る環境改善ブロックの平面図、正断面図である。
【0016】
図1〜図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る環境改善ブロック10は、河川11の底面12及び法面13、14に敷き詰められて使用される平面視して正方形状のブロックである。
図3〜図5に示すように、環境改善ブロック10は、有底で上部開口の空間部15を有するコンクリートブロック本体16と、コンクリートブロック本体16の空間部15に充填され、透水性を有する多孔質体17とを備えている。以下、これらについて詳しく説明する。
【0017】
図5に示すように、コンクリートブロック本体16は、セメント、水、細骨材、粗骨材及び必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを混練して一体化したものであり、平面視して正方形状の底板部18と、底板部18の四隅部の上端にそれぞれ間隔をあけて一体的に設けられ、底板部18の4つの側面19〜22と同一レベルの対となる側面19b及び20a、側面20b及び21a、側面21b及び22a、側面22b及び19aをそれぞれ有し、平面視して五角形状に形成された上板部23〜26とを備えている。
【0018】
底板部18の一辺の長さはL(例えば、0.7〜2m、本実施の形態では1.5m)、厚さはT(例えば、5〜15cm、本実施の形態では10cm)である。
上板部23(24〜26も同じ)の側面19b及び20a(側面20b及び21a、側面21b及び22a、側面22b及び19aも同じ)の長さはN(例えば、20〜70cm、本実施の形態では35cm)、側面19b及び20a(側面20b及び21a、側面21b及び22a、側面22b及び19aも同じ)に直交して隣接する側面23a及び23b(24a及び24b、25a及び25b、26a及び26bも同じ)の長さはS(例えば、15〜30cm、本実施の形態では20cm)、上板部23(24〜26も同じ)の厚さはt(例えば、5〜15cm、本実施の形態では10cm)である。従って、環境改善ブロック10の厚さはX=T+t、周方向に隣接する上板部23〜26の間隔はK=L−2Nとなる。
【0019】
多孔質体17は、コンクリートブロック本体16の中心位置に配置され、厚さはY(例えば、5〜15cm、本実施の形態では10cm)で、平面視して正八角形状の本体部27と、本体部27の八辺の内、一辺おきに外側に一体的に設けられ、先端の側面が底板部18の側面19〜22と同一レベルに形成された平面視して矩形状(幅はSで長さはK)の縁部28〜31とを備えている。
【0020】
多孔質体17は、製鉄所で発生するスラグから造った砂利を主体とし、セメントで固められている。スラグは鉄を製造する過程で大量に発生するものであり、資源の有効化を図って再利用している。なお、砂利の粒径は環境改善ブロックの使用目的及び環境条件等を考慮して、10〜50mmのうち、適切な粒径を選定している。
コンクリートブロック本体16の裏面の四隅には、前記底面又は法面に嵌入可能な複数(本実施の形態では4個)の、側面視して下側に沿って先細りの台形状、即ち四角錐台の脚部32が一体的に形成されている。
【0021】
次に、環境改善ブロック10を用いた本発明の一実施の形態に係る環境改善ブロックの製造方法及び使用方法について、図を参照しながら説明する。
まず、セメント、水、細骨材、粗骨材及び必要に応じて混和材料を加えて混練して、コンクリート生配合物を造り、これを所定の型枠に打設し、養生を行って硬化させて、有底で上部開口の空間部15を有するコンクリートブロック本体16を製造する。
【0022】
なお、使用するコンクリートの強度は18〜24N/mm2 とする。
次に、製鉄所で発生するスラグから造った砂利(粒径は20〜30mm)を、セメント、水及び必要に応じて混和材料を加えて混練して多孔質体生配合物を造る。
【0023】
最後に、コンクリートブロック本体16の空間部15の4つの周縁側部の開口に型枠をセットして、空間部15に前記多孔質体生配合物を打設し、養生を行って硬化させて環境改善ブロック10を製造する。
【0024】
多数の環境改善ブロック10を用いて、図1及び図2に示すように、河川11の底面12及び法面13、14に所定の枚数敷き詰める。この際、コンクリートブロック本体16の裏面の脚部32が河川11の底面12及び法面13、14に、嵌入するように取付ける。なお、必要に応じて、河川11の底面12及び法面13、14に接触する環境改善ブロック10の背面側や、隣合う環境改善ブロック10間の目地には、モルタル等の接合材を使用する。
【0025】
環境改善ブロック10においては、多孔質体17は製鉄所で発生するスラグから造った砂利を主体としており、廃棄物をリサイクルしているので、安価に製造することができる。また、スラグの有する多孔質により、多様な生物の生息環境を形成することができる。更に、多孔質体17を有するので、無機質のコンクリートブロックだけの場合と異なり、自然と調和した景観を形成することができる。
更に、コンクリートブロック本体16の空間部15に前記多孔質体生配合物を打設するので、施工性が向上し、このため、大幅なコストダウンが可能である。
【0026】
図6(A)、(B)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る環境改善ブロック40は、有底で4つの上部開口の空間部41〜44を有するコンクリートブロック本体45と、コンクリートブロック本体45の空間部41〜44のそれぞれに充填され、透水性を有する多孔質体46〜49とを備えている。
【0027】
コンクリートブロック本体45は平面視して正方形状に形成されており、多孔質体46〜49も平面視して正方形状に形成されており、平面視して正方形状の4つの空間部41〜44が間隔をあけて配置されている。コンクリートブロック本体45の隣合う空間部41〜44間には、上部開口の水抜き部50〜53が形成されており、コンクリートブロック本体45の空間部41〜44の外側二辺にはそれぞれ、コンクリートブロック本体45の周縁側部に達する水抜き部54及び55、56及び57、58及び59、60及び61が設けられている。
【0028】
コンクリートブロック本体45の一辺の長さはZ(例えば、0.7〜2m、本実施の形態では1.5m)、厚さはR(例えば、15〜50cm、本実施の形態では40cm)、多孔質体46〜49の一辺の長さはP(例えば、20〜80cm、本実施の形態では60cm)、厚さはU(例えば、5〜15cm、本実施の形態では10cm)である。
なお、環境改善ブロック40は、まず、有底で4つの上部開口の空間部41〜44及び水抜き部50〜61を有すように、コンクリートブロック本体16と同じコンクリート生配合物を所定の型枠に打設し、養生を行って硬化させてコンクリートブロック本体45を形成し、その後、水抜き部50〜61に型枠をセットして、コンクリートブロック本体45の空間部41〜44に、多孔質体17と同じ多孔質体生配合物を打設し、養生を行って硬化させて多孔質体46〜49を形成して製造する。
【0029】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の環境改善ブロックを構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
本実施の形態では、環境改善ブロックを河川の底面及び法面に敷き詰めたが、これに限定されず、必要に応じて、湖沼及びため池のいずれか1の底面又は法面に敷き詰めることもできる。また、環境改善ブロックを主として、水質浄化用として用いたが、これに限定されず、必要に応じて、補強用や滑り止め用として使用することもできる。
【0030】
多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利を主体とし、セメントで固めたが、これに限定されず、必要に応じて、山、海又は河川から採集される砂利を主体とすることもでき、更に、樹脂で固めることもできる。
コンクリートブロック本体45には、水抜き部50〜61を設けたが、これに限定されず、必要に応じて、水抜き部を省略することもできる。
【0031】
コンクリートブロック本体16の裏面の四隅に4個の脚部32を設けたが、これに限定されず、必要に応じて、1個の脚部を中心部に設けたり、2〜3又は5個以上の脚部を設けたりすることもでき、更には、脚部を省略することもできる。また、脚部をコンクリートブロック本体と一体的に形成したが、これに限定されず、必要に応じて、例えば、金属金具を設けることもできる。
コンクリートブロック本体16の空間部15に多孔質体生配合物を打設し、養生を行って硬化させて多孔質体17をコンクリートブロック本体16に充填したが、これに限定されず、必要に応じて、別途型枠を用いて多孔質体17を製造し、この多孔質体17をコンクリートブロック本体16の空間部15に装着することもできる。
【0032】
コンクリートブロック本体16を平面視して正方形状に形成したが、これに限定されず、必要に応じて、三角形、長方形又は五角形以上に形成することもできる。
多孔質体17を平面視して四方に延設部を有する略八角形状に、また、多孔質体46〜49を平面視して正方形状に形成したが、これに限定されず、必要に応じて、三角形、長方形、五角形〜七角形又は九角形以上に形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る環境改善ブロックが敷き詰められた河川の断面図である。
【図2】同環境改善ブロックを複数枚敷き詰めた状態の斜視図である。
【図3】同環境改善ブロックの斜視図である。
【図4】同環境改善ブロックの平面図である。
【図5】同環境改善ブロックのコンクリートブロック本体の斜視図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態に係る環境改善ブロックの平面図、正断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10:環境改善ブロック、11:河川、12:底面、13、14:法面、15:空間部、16:コンクリートブロック本体、17:多孔質体、18:底板部、19〜22:側面、19a〜22a:側面、19b〜22b:側面、23〜26:上板部、23a〜26a:側面、23b〜26b:側面、27:本体部、28〜31:縁部、32:脚部、40:環境改善ブロック、41〜44:空間部、45:コンクリートブロック本体、46〜49:多孔質体、50〜53:水抜き部、54〜61水抜き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川、湖沼及びため池のいずれか1の底面又は法面に敷き詰められて使用される環境改善ブロックであって、
有底で上部開口の空間部を有するコンクリートブロック本体と、
前記コンクリートブロック本体の前記空間部に充填され、透水性を有する多孔質体とを備えたことを特徴とする環境改善ブロック。
【請求項2】
請求項1記載の環境改善ブロックにおいて、前記多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利、又は山、海若しくは河川から採集される砂利を主体とし、セメント又は樹脂で固めていることを特徴とする環境改善ブロック。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の環境改善ブロックにおいて、コンクリートブロック本体には、水抜き部が設けられていることを特徴とする環境改善ブロック。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の環境改善ブロックにおいて、前記コンクリートブロック本体の裏面には、前記底面又は法面に嵌入可能な1又は複数の脚部が形成されていることを特徴とする環境改善ブロック。
【請求項5】
河川、湖沼及びため池のいずれか1の底面又は法面に敷き詰められて使用される環境改善ブロックの製造方法であって、
有底で上部開口の空間部を有するコンクリートブロック本体を成形し、
前記コンクリートブロック本体の前記空間部の周縁側部に型枠を配置し、該空間部に透水性を有する多孔質体を打設することを特徴とする環境改善ブロックの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の環境改善ブロックの製造方法において、前記多孔質体は製鉄所で発生するスラグから造った砂利、又は山、海若しくは河川から採集される砂利を主体とし、セメント又は樹脂で固めていることを特徴とする環境改善ブロックの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−92436(P2007−92436A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284738(P2005−284738)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(599142165)株式会社クロシオ (2)
【出願人】(505366733)
【Fターム(参考)】