説明

環境試験装置および環境試験装置のワーク搬送方法

【課題】温度槽内のパレット搬送路を長くすることなく、所定温度に到達しているワークを短い間隔で試験位置に送り出すことができる環境試験装置を提供すること。
【解決手段】環境試験装置1では、ワークを載せたワーク搬送パレット2を積み重ねてパレット積層体20とし、この状態で温度槽3を経由するパレット搬送路4に沿って搬送し、各ワーク搬送パレット2に載せられている各ワークを所定の温度に到達させる。各ワークが所定の温度に達すると、パレット積層体20はパレット分離機構9によってワーク搬送パレット2毎に分離され、一枚ずつ通電試験位置Bを通過するように搬送される。パレット積層体20として搬送することによって大量のワークを温度槽3内に滞留させ、複数のワークを同時に所定の温度にできるので、所定の温度に到達したワークを短い間隔で通電試験位置Bに送り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを載せたワーク搬送パレットを温度等が調整されている温度槽を経由する搬送路に沿って搬送し、この温度槽内を搬送する間にワークを所定の温度に到達させ、当該ワークに通電などの環境試験を行う環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置は、温度や湿度が調整された温度槽を経由するように電子基板などのワークを搬送して、当該ワークを所定の温度に到達させて通電などの環境試験を行うものである。ワークはワーク搬送パレットに載せられた状態で、温度槽を経由するパレット搬送路に沿って一枚ずつ一定のピッチで間欠送りされ、温度槽内を搬送される間に所定の温度に到達させられる。また、パレット搬送路上にある所定の通電試験位置に供給されて、通電試験が行われる。このような環境試験装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平9−197000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワークを所定の温度まで高める、あるいは冷やすためには、温度槽内における所定の滞留時間が必要である。このため、間欠送りのタイミングを早くして短い間隔でワークを通電試験位置に送り出すようにすると、温度槽内において一定の長さのパレット搬送路に沿って搬送される各ワークの温度槽内での滞留時間が短くなり、温度槽内に滞留している間にワークを所定の温度にすることができないという問題がある。温度槽内のパレット搬送路を長くすれば滞留時間を延ばすことができるが、パレット搬送路を長くすると温度槽が大型化してしまうので好ましくない。
【0004】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、温度槽内のパレット搬送路を長くすることなく、所定温度に到達しているワークを短い間隔で試験位置に送り出すことができる環境試験装置および環境試験装置のワーク搬送方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の環境試験装置のワーク搬送方法は、
ワークを載せたワーク搬送パレットを上下に分離可能な状態で複数枚積み重ねることにより、パレット積層体を形成し、
前記パレット積層体を、温度が調整されている温度槽を経由するパレット搬送路に沿って、一定の送りピッチで順次に搬送し、
前記パレット積層体が前記温度槽内における前記パレット搬送路上の所定位置まで搬送される間に、当該パレット積層体の各ワーク搬送パレットに載せたワークを同時に所定の温度に到達させることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、ワークを載せたワーク搬送パレットをパレット積層体として搬送するので、温度槽内のパレット搬送路を長くしなくても、大量のワークを温度槽内に滞留させることができる。また、複数のワークを同時に所定の温度に到達させることができる。従って、所定の温度に到達したワークを短い間隔で試験位置に送り出すことができる。この結果、ワークを所定温度に加熱あるいは冷却して試験位置に送り出す動作のスループットが向上する。
【0007】
本発明において、ワーク搬送パレットにワークを載せた状態のままで通電などの環境試験を行なうためには、前記所定位置まで搬送された前記パレット積層体から前記ワーク搬送パレットを一枚ずつ分離して取り出し、
取り出されたワーク搬送パレットを前記パレット搬送路に沿って一枚ずつ試験位置に向けて搬送することが望ましい。
【0008】
この場合には、前記所定位置に至る前記パレット搬送路の部分を第1水平案内レールによって規定し、
前記所定位置の下流側の前記パレット搬送路の部分を、前記第1水平案内レールよりも低い位置にある第2水平案内レールによって規定し、
前記第1水平案内レールをスライドして前記所定位置に至った前記パレット積層体を、前記第1水平案内レールと同一高さ位置に待機している昇降レールに載せ、
しかる後に、
前記パレット積層体における最も下に位置している第1ワーク搬送パレット以外の前記ワーク搬送パレットをそれらの高さ位置に保持する積層体保持工程と、
この状態で、前記昇降レールを前記第1水平案内レールよりも低い位置にある前記第2水平案内レールと同一高さ位置まで下降させることにより、前記第1ワーク搬送パレットを前記パレット積層体から分離させて下降させるパレット下降工程と、
前記昇降レールと共に下降した当該第1ワーク搬送パレットを水平方向に押して、前記第2水平案内レールに送り込むパレット送り込み工程と、
前記昇降レールを前記第1水平案内レールと同一高さ位置まで上昇させる昇降レール上昇工程と、
前記第1ワーク搬送パレットが分離した後も所定の高さ位置に保持されている前記パレット積層体を下降させて前記昇降レールに載せる積層体下降工程と、
を繰り返し行うことにより、前記パレット積層体の各ワーク搬送パレットを一枚ずつ前記第2搬送水平案内レールに送り出すことが望ましい。
【0009】
このようにすれば、第1水平案内レールをスライドしてきたパレット積層体は、このパレット積層体の最も下に位置している第1ワーク搬送パレットから順番に一枚ずつ分離されて、第2水平案内レールに送り出される。
【0010】
ここで、前記積層体保持工程では、前記積層体における前記第1ワーク搬送パレットの上に積層されている第2ワーク搬送パレットを横方からクランプ機構によってクランプし、
前記積層体下降工程に先立って、前記クランプ機構によってクランプされている前記第2ワーク搬送パレットを、下方からパレットリフトによって支持し、
前記積層体下降工程では、前記クランプ機構によるクランプを解除した後に、前記パレットリフトを下降させて、前記第2ワーク搬送パレットを前記昇降レールに載せることが望ましい。
【0011】
次に、本発明は、上記の方法によってワーク搬送を行う環境試験装置であって、
前記温度槽と、
前記第1水平案内レールと、
前記第2水平案内レールと、
前記第1水平案内レールに沿って前記パレット積層体を一定の送りピッチで順次に間欠搬送するパレット積層体搬送機構と、
前記所定位置において、前記パレット積層体をワーク搬送パレット毎に分離して一枚ずつ第2水平案内レールに送り込むパレット分離機構と、
前記第2水平案内レールに送り出された前記ワーク搬送パレットを一定の送りピッチで間欠搬送するパレット搬送機構とを有し、
前記パレット分離機構は、
前記昇降レールと、
前記クランプ機構と、
前記パレットリフトと、
前記ワーク搬送パレットを前記昇降レールから水平に押し出して前記第2水平案内レール上に送り込むプッシャーとを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明において、ワーク搬送パレットにワークを載せた状態で通電試験を行うためには、前記第2水平案内レール上の所定の位置で各ワーク搬送パレットに載せられている各ワークに対して通電試験を行う通電試験装置を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の環境試験装置および環境試験装置のワーク搬送方法によれば、温度槽内のパレット搬送路を長くしなくても、大量のワークを温度槽内に滞留させることができる。また、複数のワークを同時に所定の温度に到達させることができる。従って、所定の温度に到達したワークを短い間隔で試験位置に送り出すことができる。この結果、ワークを所定温度に加熱あるいは冷却して試験位置に送り出す動作のスループットが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明を適用した環境試験装置の実施の形態を説明する。
【0015】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る環境試験装置を模式的に示した概略縦断面図である。環境試験装置1は、電子基板などのワークを載せたワーク搬送パレット2を複数枚積み重ねてパレット積層体20を形成し、このパレット積層体20を温度や湿度が調整された温度槽3を経由するように搬送し、温度槽3のパレット分離位置Aまで搬送される間に各ワーク搬送パレット2に載せられている各ワークを所定の温度に到達させる。しかる後に、パレット積層体20からワーク搬送パレット2を一枚ずつ分離して、試験槽5内へ送り出し、試験槽5内に配置されている通電試験装置6によって通電試験を行う。
【0016】
図1に示すように、温度槽3および試験槽5はいずれも断熱パネルで形成された直方体形状をしており、矢印で示されるパレット搬送方向の上流側からこの順番で直列に連結されている。これらの内部は冷却器および加熱器を備えた温度制御機構(不図示)によって所定の温度状態に保持されている。
【0017】
パレット搬送路4には、パレット分離位置Aに至るまでパレット積層体20を搬送するための第1水平案内レール7と、パレット分離位置Aより下流側においてワーク搬送パレット2を一枚ずつ搬送するための第2水平案内レール8と、パレット分離位置Aにおいて、第1水平案内レール7上を搬送されてきたパレット積層体20を受け取り、ワーク搬送パレット2毎に分離して、一枚ずつ逐次に第2水平案内レール8に送り込むパレット分離機構9が配置されている。
【0018】
第1水平案内レール7は、温度槽3の一方の端板3aの外側から当該一方の端板3aに形成されているパレット搬入口3bを介して温度槽3内の他方の端板3cの側まで平行に延びる一対のレールである。第1水平案内レール7の上流端部分に載せられたパレット積層体20は、パレット積層体搬送機構(不図示)によって第1水平案内レール7上をスライドさせられながら搬送される。本例では、ワークを載せたワーク搬送パレット2は4段に積み重ねられた状態で搬送される。
【0019】
第2水平案内レール8は第1水平案内レール7と同じ幅で平行に延びる一対のレールであり、第1水平案内レール7よりも低い位置に配置されている。温度槽3内の他方の端板3c近傍からこの他方の端板3cに形成されているパレット排出口3dを介して試験槽5槽を貫通して延びている。第2水平案内レール8に載せられた各ワーク搬送パレット2は、パレット搬送機構(不図示)によって第2水平案内レール8上をスライドさせられながら搬送される。
【0020】
ここで、通電試験装置6は、試験槽5内における第2水平案内レール8上の所定の通電試験位置Bおいて、ワーク搬送パレット2に載せられているワークに対して通電試験を行うようになっている。なお、パレット積層体搬送機構とパレット搬送機構は同一の構成のものを用いることができる。これらの構成例は後述する。
【0021】
(ワーク搬送パレット)
図2(a)はワーク搬送パレットをワーク積載面の側から模式的に示した斜視図であり、図2(b)は裏面側から模式的に示した斜視図である。図2に示すように、ワーク搬送パレット2は、一定厚さの長方形のパレット本体板21と、このパレット本体板21のワーク積載面21aの側の四隅から直角に起立している同一寸法の4本のスペーサピン22を備えている。ワークはパレット本体板21のワーク積載面21aに載せられて、位置決め固定されるようになっている。4本のスペーサピン22は位置決め固定されたワークの高さ寸法よりも長い寸法を備えており、その先端部分には先細り部分22aが形成されている。パレット本体板21の裏面21bの側の四隅には、4本のスペーサピン22の先細り部分22aを着脱可能な状態で受け入れることができる4つのピン孔23が形成されている。
【0022】
スペーサピン22の先細り部分22aをピン孔23に嵌めながら複数枚のワーク搬送パレット2を積み重ねることにより、各ワーク搬送パレット2をパレット本体板21に位置決め固定されているワークと干渉しないように積み重ねることができる。また、積層状態の複数枚のワーク搬送パレット2が、搬送途中で崩れないようにすることができる。さらに、積み重ねた複数枚のワーク搬送パレット2を上下方向に引き離すことが容易にできる。
【0023】
(パレット分離機構)
図3(a)はパレット分離機構の概略縦断面図であり、図3(b)は概略正面図である。いずれも、ワーク搬送パレット2(1)〜(4)を積み重ねたパレット積層体20が第1水平案内レール7からパレット分離機構9に受け渡された状態を示している。
【0024】
図3に示すように、パレット分離機構9は、昇降レール11、クランプ機構12、パレットリフト13およびプッシャー14を備えている。
【0025】
昇降レール11は、第1および第2水平案内レール8と同じ幅で平行に延びる一対のレールである。各レールはそれぞれエアシリンダ111によって支持されており、第1水平案内レール7と同じ高さの待機位置Cと第2水平案内レール8と同じ高さの送り込み位置Dとの間を昇降するようになっている。
【0026】
クランプ機構12は、待機位置Cにある昇降レール11にパレット積層体20が載せられると、パレット積層体20のうち下から2番目にあるワーク搬送パレット2をワーク搬送方向と直交する左右方向の両側からクランプし、最も下に位置しているワーク搬送パレット2以外のワーク搬送パレット2をそれらの高さ位置に保持するものである。
【0027】
パレットリフト13は、クランプ機構12によるクランプが解除されたワーク搬送パレット2を、クランプ機構12によるクランプ位置Eから下降させて、待機位置Cにある昇降レール11に載せるものである。パレットリフト13は、昇降レール11を構成している一対のレールの間に配置されているエアシリンダ131を有しており、クランプ機構12によるクランプが解除されるのに先立って、クランプされているワーク搬送パレット2を下方から支持する。その後クランプが解除されると、ワーク搬送パレット2を下降させる。
【0028】
プッシャー14は、昇降レール11が送り込み位置Dまで下降すると、積層状態から分離されて昇降レール11に載っている一枚のワーク搬送パレット2を水平方向に押して、第2水平案内レール8に送り込むものである。プッシャー14については、その構成を後述する。
【0029】
(パレット分離動作)
図4および図5は積層状態のパレット積層体20から各ワーク搬送パレット2を分離するパレット分離動作の各工程(a)〜(f)を説明するための説明図である。
【0030】
図4の工程(a)はパレット分離機構9の初期状態であり、昇降レール11は待機位置Cにある。パレット分離位置Aまで第1水平案内レール7上を搬送されてきたパレット積層体20は、パレット積層体搬送機構によってスライドさせられて、待機位置Cにある昇降レール11に載せられている。
【0031】
パレット積層体20が昇降レール11に載せられると、図4の工程(b)に示すように、クランプ機構12はクランプ部材121を突出させて第2ワーク搬送パレット2を左右の両側からクランプする。
【0032】
次に、図4の工程(c)に示すように、昇降レール11は送り込み位置Dまで下降する。昇降レール11の下降に伴って、パレット積層体20の最も下のワーク搬送パレット2(1)は自重によってパレット積層体20から分離される。そして、昇降レール11に載った状態で下降する。
【0033】
昇降レール11が送り込み位置Dに到着すると、プッシャー14が図中手前側に突出してきて、ワーク搬送パレット2(1)をパレット搬送方向の上流側から下流側に向って水平に押す。ここで、送り込み位置Dは第2水平案内レール8と同じ高さ位置になっているので、ワーク搬送パレット2(1)はスライドして第2水平案内レール8に送り込まれる。この後、ワーク搬送パレット2(1)はパレット搬送機構によって通電試験位置Bを経由するように搬送される。
【0034】
ワーク搬送パレット2(1)の第2水平案内レール8への送り込みが終了すると、図5の工程(d)に示すように、パレットリフト13がクランプ位置Eまで上昇する。また、昇降レール11が待機位置Cまで上昇する。
【0035】
次に、図5の工程(e)に示すように、クランプ機構12によるワーク搬送パレット2(2)の支持が解除され、ワーク搬送パレット2(2)はパレットリフト13によって下方から支持された状態になる。この状態からパレットリフト13は下降して、図5の工程(f)に示すように、待機位置Cにある昇降レール11に第2ワーク搬送パレット2(2)を載せ、昇降レール11よりも下まで退避する。
【0036】
ここで図5の工程(f)は、積載枚数が1枚減った状態のパレット積層体20が昇降レール11に載った状態である。すなわち、積層枚数以外は図4の工程(a)に示す初期状態と同様の状態になっている。従って、引き続き、図4の工程(b)、(c)の動作が行われることにより、ワーク搬送パレット2(2)が第2水平案内レール8に送り出される。また、図5の工程(d)〜(f)の動作が行われることにより初期状態と同様な状態に戻る。これらの動作を、最も上に積み上げられているワーク搬送パレット2(4)を第2水平案内レール8に送り込むまで、繰り返す。
【0037】
(プッシャー)
次に、図1、6を参照してプッシャー14の構成を説明する。図6はプッシャーの概略部分平面図である。
【0038】
図1、6に示すように、プッシャー14は、温度槽3の一方の端板3aよりも外側に配置されているエアシリンダ30と、このエアシリンダ30から一方の端板3aを貫通して温度槽3内を第1水平案内レール7と平行に延びているピストンロッド31と、このピストンロッド31の先端側に構成されている伸縮機構32と、この伸縮機構32に取り付けられている押し出し用ロッド33とを備えている。エアシリンダ30、ピストンロッド31、伸縮機構32および押し出し用ロッド33はいずれも第1水平案内レール7の直下に配置されている。また、一対の第1水平案内レール7の間に配置されている。
【0039】
伸縮機構32は、図6に示すように、ピストンロッド31の先端部分に回転自在に取りつけられているピニオン320と、ピストンロッド31の伸縮方向に沿って延びており、ピニオン320と噛み合う位置に固定されている固定ラック321と、この固定ラック321とはピニオン320を挟んで反対側に配置され、ピニオン320に噛み合っている移動ラック322とを有している。移動ラック322は、ピストンロッド31を中心にして平行に延びる一対の案内レール323に沿ってパレット搬送方向の上流側および下流側へ移動可能に支持されている移動部材324に取り付けられていることにより、ピストンロッド31の伸縮方向に沿って移動可能に支持されている。移動部材324には下流側に向って平行に延びる一対の押し出し用ロッド33が取り付けられている。
【0040】
固定ラック321はピストンロッド31が伸縮する際にピニオン320が移動する範囲(ストロークL)を包含する長さ寸法を備えており、ピニオン320が移動する全範囲でピニオン320と噛み合うようになっている。移動ラック322も固定ラック321と同じ長さ寸法を備えており、ピニオン320が移動する全範囲でピニオン320と噛み合いながら移動するようになっている。
【0041】
図7はプッシャー14によるワーク搬送パレット2の送り出し動作を説明するための説明図である。図7(a)に示されるように、ピストンロッド31が最も縮んでいる初期状態では、ピニオン320は固定ラック321における最も上流側の歯部分と噛み合っている。また、移動ラック322は固定ラック321の上流側に位置しており、ピニオン320は移動ラック322における最も下流側の歯部分と噛み合っている。押し出し用ロッド33の先端部分は、押し出し対象のワーク搬送パレット2の上流側の直近に位置している。
【0042】
ピストンロッド31が延びると、ピニオン320は固定ラック321と噛み合って回転する。この回転により、図7(b)に示すように、ピニオン320と噛み合っている移動ラック322は下流側へと移動する。また、移動ラック322の移動により押し出し用ロッド33の先端部分がワーク搬送パレット2のパレット本体板21の上流側の21c側面に当接して、ワーク搬送パレット2を下流側へスライドさせる。
【0043】
ピストンロッド31が最も延びると、図7(c)に示すように、ピニオン320は固定ラック321における下流側の歯部分と噛み合う状態になる。また、移動ラック322は固定ラック321の下流側に移動しており、ピニオン320はこの移動ラック322における最も上流側の歯部分と噛み合う状態になる。
【0044】
この結果、本例では、ピストンロッド31のストロークLに対して、移動ラック322が倍のストローク2Lで移動する。
【0045】
(パレット搬送機構)
図8を参照して、パレット搬送機構の例を説明する。図8(a)はワーク搬送パレット2が第1水平案内レール7上で停止している状態であり、図8(b)はワーク搬送パレット2が一括して搬送される状態である。なお、パレット積層体搬送機構はパレット搬送機構と同様の構成とすることができる。
【0046】
まず、ワーク搬送パレット2はその長手方向の両端部が一対の第1水平案内レール7に載せられている。ワーク搬送パレット2の表面側の両端部分には、パレット本体板21のワーク積載面21aから垂直方向に延びる係合突起43が取り付けられる。
【0047】
パレット搬送機構は、一対の第1水平案内レール7の外側に設けられた一対の搬送シャフト41、この搬送シャフト41を前後方向にスライド自在、且つその中心軸線を中心として回転自在に支持する軸受部材42、搬送シャフト41を前後方向に往復移動させる送り用エアシリンダ(不図示)、搬送シャフト41を回転させる左右の回転用エアシリンダ(不図示)を有している。搬送シャフト41には、複数の送りピン43が同一のピッチで取り付けられている。
【0048】
パレット搬送機構は、各送りピン43が第1水平案内レール7の内側へ水平に倒れるように搬送シャフト41を所定の角度だけ回転させ、送りピン43をワーク搬送パレット2の係合突起43に係合させる。この状態で、搬送シャフト41を矢印方向の前方へ1ピッチ分送り出すことによって、ワーク搬送パレット2を1ピッチ分搬送する。ワーク搬送パレット2を搬送した後は、パレット搬送機構は搬送シャフト41を回転させて送りピン43と係合突起43との係合を解除して、搬送シャフト41を1ピッチ分戻す。かかる動作を繰り返して行うことにより、第1水平案内レール7上にある各ワーク搬送パレット2を1ピッチずつ間欠的に一括して搬送する。
【0049】
(本形態の効果)
本例によれば、ワークを載せたワーク搬送パレット2をパレット積層体20として搬送するので、温度槽3内の第1水平案内レール7を長くしなくても、大量のワークを温度槽3内に滞留させることができる。また、複数のワークを同時に所定の温度に到達させることができる。従って、所定の温度に到達したワークを短い間隔で通電試験位置Bに送り出すことができる。この結果、ワークを所定温度に加熱あるいは冷却して通電試験位置Bに送り出す動作のスループットが向上する。
【0050】
また、本例によれば、第1水平案内レール7を搬送されてきたパレット積層体20は昇降レール11、クランプ機構12、パレットリフト13およびプッシャー14によって分離されて、一番下のワーク搬送パレット2(1)から順番に一枚ずつ第2水平案内レール8に送り込まれる。この結果、ワークが所定の温度に到達した後はワーク搬送パレット2が一枚ずつ搬送されるので、ワーク搬送パレット2にワークを載せた状態で通電試験を行なうことができる。
【0051】
(その他の実施の形態)
上記の環境試験装置1では温度槽3と試験槽5が直列に配置されていたが、温度槽3内に通電試験装置6を配置することにより、温度槽3が試験槽5を兼ねる構成とすることができる。この場合、通電試験位置Bは第2水平案内レール8上とし、通電試験装置6は第2水平案内レール8に沿って配置する。
【0052】
なお、上記の例では、ワーク搬送パレット2を4段重ね搬送していたが段数はこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態に係る環境試験装置を模式的に示した概略縦断面図である。
【図2】(a)はワーク搬送パレットをワーク積載面側から模式的に示した斜視図であり、(b)は裏面側から模式的に示した斜視図である。
【図3】パレット分離機構の側面図および正面図であり、ワーク搬送パレット群がパレット分離機構に受け渡されている状態を示す。
【図4】積層状態のワーク搬送パレット群から各ワーク搬送パレットを分離するパレット分離動作を説明するための説明図である。
【図5】積層状態のワーク搬送パレット群から各ワーク搬送パレットを分離するパレット分離動作を説明するための説明図である。
【図6】プッシャーの概略平面図である。
【図7】プッシャーによるワーク搬送パレットの送り出し動作を説明するための説明図である。
【図8】パレット搬送機構の例を示す説明図であり、(a)はワーク搬送パレットが搬送路上で停止している状態であり、(b)はワーク搬送パレットが一括して搬送される状態である。
【符号の説明】
【0054】
1 環境試験装置
2、2(1)、2(2)、2(3)、2(4) ワーク搬送パレット
3 温度槽
4 パレット搬送路
5 試験槽
6 通電試験装置
7 第1水平案内レール
8 第2水平案内レール
9 パレット分離機構
11 昇降レール
12 クランプ機構
13 パレットリフト
14 プッシャー
20 パレット積層体
21 パレット本体板
21a ワーク積載面
22 スペーサピン
23 ピン孔
30、111、131 エアシリンダ
31 ピストンロッド
32 伸縮機構
33 押し出し用ロッド
41 搬送シャフト
42 軸受部材
43 係合突起
121 クランプ部材
320 ピニオン
321 固定ラック
322 移動ラック
323 案内レール
324 移動部材
A パレット分離位置
B 通電試験位置
C 待機位置
D 送り込み位置
E 支持位置
L プッシャーのストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載せたワーク搬送パレットを上下に分離可能な状態で複数枚積み重ねることにより、パレット積層体を形成し、
前記パレット積層体を、温度が調整されている温度槽を経由するパレット搬送路に沿って、一定の送りピッチで順次に搬送し、
前記パレット積層体が前記温度槽内における前記パレット搬送路上の所定位置まで搬送される間に、当該パレット積層体の各ワーク搬送パレットに載せたワークを同時に所定の温度に到達させることを特徴とする環境試験装置のワーク搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の環境試験装置のワーク搬送方法において、
前記所定位置まで搬送された前記パレット積層体から前記ワーク搬送パレットを一枚ずつ分離して取り出し、
取り出されたワーク搬送パレットを前記パレット搬送路に沿って一枚ずつ試験位置に向けて搬送することを特徴とする環境試験装置のワーク搬送方法。
【請求項3】
請求項2に記載の環境試験装置のワーク搬送方法において、
前記所定位置に至る前記パレット搬送路の部分を第1水平案内レールによって規定し、
前記所定位置の下流側の前記パレット搬送路の部分を、前記第1水平案内レールよりも低い位置にある第2水平案内レールによって規定し、
前記第1水平案内レールをスライドして前記所定位置に至った前記パレット積層体を、前記第1水平案内レールと同一高さ位置に待機している昇降レールに載せ、
しかる後に、
前記パレット積層体における最も下に位置している第1ワーク搬送パレット以外の前記ワーク搬送パレットをそれらの高さ位置に保持する積層体保持工程と、
この状態で、前記昇降レールを前記第1水平案内レールよりも低い位置にある前記第2水平案内レールと同一高さ位置まで下降させることにより、前記第1ワーク搬送パレットを前記パレット積層体から分離させて下降させるパレット下降工程と、
前記昇降レールと共に下降した当該第1ワーク搬送パレットを水平方向に押して、前記第2水平案内レールに送り込むパレット送り込み工程と、
前記昇降レールを前記第1水平案内レールと同一高さ位置まで上昇させる昇降レール上昇工程と、
前記第1ワーク搬送パレットが分離した後も所定の高さ位置に保持されている前記パレット積層体を下降させて前記昇降レールに載せる積層体下降工程と、
を繰り返し行うことにより、前記パレット積層体の各ワーク搬送パレットを一枚ずつ前記第2搬送水平案内レールに送り出すことを特徴とする環境試験装置のワーク搬送方法。
【請求項4】
請求項3に記載の環境試験装置のワーク搬送方法において、
前記積層体保持工程では、前記積層体における前記第1ワーク搬送パレットの上に積層されている第2ワーク搬送パレットを横方からクランプ機構によってクランプし、
前記積層体下降工程に先立って、前記クランプ機構によってクランプされている前記第2ワーク搬送パレットを、下方からパレットリフトによって支持し、
前記積層体下降工程では、前記クランプ機構によるクランプを解除した後に、前記パレットリフトを下降させて、前記第2ワーク搬送パレットを前記昇降レールに載せることを特徴とする環境試験装置のワーク搬送方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法によりワーク搬送を行う環境試験装置であって、
前記温度槽と、
前記第1水平案内レールと、
前記第2水平案内レールと、
前記第1水平案内レールに沿って前記パレット積層体を一定の送りピッチで順次に間欠搬送するパレット積層体搬送機構と、
前記所定位置において、前記パレット積層体をワーク搬送パレット毎に分離して一枚ずつ第2水平案内レールに送り込むパレット分離機構と、
前記第2水平案内レールに送り出された前記ワーク搬送パレットを一定の送りピッチで間欠搬送するパレット搬送機構とを有し、
前記パレット分離機構は、
前記昇降レールと、
前記クランプ機構と、
前記パレットリフトと、
前記ワーク搬送パレットを前記昇降レールから水平に押し出して前記第2水平案内レール上に送り込むプッシャーとを備えていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載されている環境試験装置において、
前記第2水平案内レール上の所定の位置で各ワーク搬送パレットに載せられている各ワークに対して通電試験を行う通電試験装置を有していることを特徴とする環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−68975(P2009−68975A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237304(P2007−237304)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】