説明

環境試験装置

【課題】被試験物に生じる温度ばらつきを再現し、実際の使用環境により近い状態で環境試験を行うことができる装置を開発する。
【解決手段】内部の環境を調節する恒温恒湿槽3に加えて、基板の温度ばらつきを監視するための温度ばらつき検知手段35を備えている。温度ばらつき検知手段35は、3個の温度センサー36,37,38である。そして温度ばらつきが適正範囲に収まる様に送風機20を制御し、送風量を増減する。温度ばらつきが小さいときは風速は下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関するものであり、特に電子機器等を所定の環境に置き、この状態で電子機器等に通電する試験を行う試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の電子素子に対しては、出荷前にバーンイン試験と称される環境試験が行われることが多い。バーンイン試験とは、電子機器を高温等の所定の環境に置き、電子機器に電源電圧や所定の信号を入力して行われる試験である。
【0003】
バーンイン試験は電子機器を高温環境等に置く必要から、恒温恒湿槽を備えた環境試験装置が利用される。即ちバーンイン試験では、電子機器を恒温恒湿槽内に置き、この状態で外部から電源電力や信号を電子機器に入力する。
ところで環境試験装置は、一般に、ヒータや冷凍機の他に、送風機を備えている。そして恒温恒湿槽内の温度ばらつきを減少させるために送風機によって槽内の空気を循環させる。送風機を備えた環境試験装置(バーンイン試験装置)は、特許文献1,2に開示されている。
【特許文献1】特開平3−48780号公報
【特許文献2】特開2001−147251号公報
【0004】
特許文献1,2に開示された環境試験装置においても、送風機は、もっぱら恒温恒湿槽内の温度ばらつきを解消させるために利用されている。
また一般に環境試験装置では、送風機の回転数は一定である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年IC等の単体に対してバーンイン試験するだけでなく、IC等の電子素子が組み込まれた基板に対して環境試験を行う要求がある。
即ちICやメモリー、トランジスタ、抵抗、コンデンサー、コイル等の電子素子が配線された基板を環境試験装置内に置き、高温環境や低温環境に晒した状態で電源電力や信号を基板に入力して基板の動作を確認する。
ここで上記した基板には、通電することによって発熱する素子がある。そのため実際に基板が動作する環境においては、基板全体に温度ばらつきが生じる。例えば基板がパソコンの筐体に組み込まれて使用された場合、筐体内の基板は、基板全体として温度ばらつきが生じている。即ち特定の素子が発熱すると、当該素子が高温になり、素子の発熱が周囲に伝播して素子の周囲が昇温する。また素子から離れた部位は、熱が伝わらないので温度が低い。
しかしながら、従来技術の環境試験装置によると、この様な温度ばらつきが生じた状態を再現することができない。
【0006】
即ち従来技術の環境試験装置は、内部の環境を一定の温度や湿度に保つために送風を行っている。そのため環境試験装置内は、常に送風状態であると言える。また前記した様に環境試験装置では、送風機の回転数が一定であるから、従来技術の環境試験装置では、試験中、常に一定風速の風が送風されている。
そのため基板の特定の素子から発生する熱が送風に奪われ、素子の温度が低下する。また素子から周囲への熱伝播が減少し、基板は全体として均一温度となる。
図11は、従来技術の環境試験装置を使用して基板を試験した場合の温度分布の変化を示す概念図であり、網かけが濃い部位は高温部を表している。
図11の様に試験装置内の温度が変化する際に被試験物が発生する熱が送風に奪われ、試験装置内が高温状態に達した時や、低温状態に達した時には基板の温度が平滑化してしまう。
【0007】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、被試験物に生じる温度ばらつきを再現し、実際の使用環境により近い状態で試験を行うことができる環境試験装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、被試験物が置かれる環境を調節する環境調節手段と、被試験物に通電する通電手段を有する環境試験装置において、被試験物単体における温度ばらつきを直接的に又は間接的に検知する温度ばらつき検知手段を有し、前記環境調節手段は、少なくとも送風手段及び送風環境制御手段を有し、被試験物の温度ばらつきが所定の値に維持されるように前記送風環境制御手段によって送風環境を変化させることを特徴とする環境試験装置である。
【0009】
ここで送風環境とは、例えば総風量、風速、風向等である。
本発明の環境試験装置では、温度ばらつき検知手段を有し、被試験物の温度ばらつきを監視している。そして被試験物の温度ばらつきが維持されるように送風環境を変化させる。そのため被試験物には、実際の使用環境と同様に温度ばらつきが生じ、より現実的な環境試験を行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、被試験物が置かれる環境を調節する環境調節手段と、被試験物に通電する通電手段を有する環境試験装置において、被試験物単体における温度ばらつきを直接的に又は間接的に検知する温度ばらつき検知手段を有し、前記環境調節手段は、少なくとも送風手段及び送風環境制御手段を有し、被試験物の温度ばらつきが所定の値より大きい場合には被試験物に接する送風を増大させ、被試験物の温度ばらつきが所定の値より小さい場合には被試験物に接する送風を減少させることを特徴とする環境試験装置である。
【0011】
本発明の環境試験装置においては、被試験物の温度ばらつきが目標値等の所定の値よりも大きい場合には被試験物に接する送風を増大させる。風量の増大は、温度ばらつきの量に応じて段階的に行ってもよく、温度ばらつきの値に比例して増大させてもよい。なお風量を低下させる場合も同様である。
本発明では、被試験物の温度ばらつきが大きい場合に被試験物に接する送風を増大させるので、基板から送風が奪う熱量が増大し、温度ばらつきが低下傾向となる。
また本発明の環境試験装置においては、被試験物の温度ばらつきが所定の値よりも小さい場合には被試験物に接する送風を減少させる。そのため送風が奪う熱量が減少し、温度ばらつきが増大傾向となる。
従って本発明の環境試験装置によると、被試験物の温度ばらつきが、所望の範囲に制御される。
【0012】
温度ばらつき検知手段は、被試験物単体の二点以上の部位の温度を測定するものであってもよい(請求項3)。
【0013】
また温度ばらつき検知手段は、被試験物単体の各部の電気的特性の変化に基づいて温度ばらつきを間接的に検知するものであってもよい(請求項4)。
【0014】
請求項5に記載の発明は、被試験物が置かれる環境を調節する環境調節手段と、被試験物に通電する通電手段を有する環境試験装置において、前記環境調節手段は、少なくとも送風手段及び送風環境制御手段を有し、被試験物が置かれる環境が所定の環境となるまでの間は所定の送風量で送風し、被試験物に対する環境が所定の環境となった後は、被試験物の温度ばらつきが所定の値となる様に被試験物に接する送風を調節すること特徴とする環境試験装置である。
【0015】
本発明の環境試験装置では、被試験物に対する環境が所定の環境となった後に被試験物に接する送風を温度ばらつきに応じて調節する。そのため被試験物に所望の範囲の温度ばらつきが生じ、これが維持される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、所定の環境下において被試験物に通電した場合に発生する被試験物の温度ばらつきを先行的に試験し、当該試験に基づいて抽出されたデータによって、被試験物の温度ばらつきが抽出されたデータに基づく所定の値になる様に送風を調節することを特徴とする請求項5に記載の環境試験装置である。
【0017】
本発明によると、温度ばらつきが一定の基準に達する確率が上昇し、より実際の温度ばらつきに近づけることができる。
【0018】
また請求項7に記載の発明は、送風環境制御手段は、送風量、風速、風向の少なくともいずれかを変化させることができるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の環境試験装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の環境試験装置は、被試験物を実際に使用した際に生じる温度分布を再現することができ、より実際の環境に近い環境を作りだすことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の環境試験装置の構成図である。
本実施形態の環境試験装置1は、断熱材2によって囲まれた恒温恒湿槽3を備え、制御装置4によって恒温恒湿槽3内の環境が制御される。
この様に恒温恒湿槽3は、公知のそれと同様に、内部の温度や湿度等の内部環境を任意に調節する機能を持つ。最初に恒温恒湿槽3の概略構成と、恒温恒湿槽3内の環境を調節する手段について説明する。
【0021】
恒温恒湿槽3の内部は、仕切り板9によって上下に仕切られ、図1の様に被試験物配置室5と、空調通路6に分かれている。空調通路6は、被試験物配置室5の下部にあり、両側面側に被試験物配置室5と連通する開口7,8がある。一方の開口7は、吸入側開口として機能し、他方の開口8は、送風用開口として機能する。
【0022】
被試験物配置室5内であって、送風用開口8の近傍に室内温度検知センサー11と湿度検知センサー12が設けられている。
室内温度検知センサー11は具体的には熱電対である。
室内温度検知センサー11及び湿度検知センサー12の検知信号は、図1の様に制御装置4に入力される。
【0023】
下部の空調通路6には、加湿器15、空気冷却用熱交換器16、除湿用熱交換器17、加熱ヒータ18及び送風機20が配されている。
加湿器15、空気冷却用熱交換器16、除湿用熱交換器17及び加熱ヒータ18は、いずれも公知のものを採用することができる。
送風機20は、本実施形態では、回転速度を任意に変更できるものが採用されている。即ち送風機20を回転するモータ21は、直流モータ或いはインバータ制御された交流モータであり、回転数が可変である。
前記した加湿器15、空気冷却用熱交換器16、除湿用熱交換器17、加熱ヒータ18及び送風機20はそれぞれリレー等の駆動装置に接続され、さらに図1の様に制御装置4からの信号を受けて動作する。
【0024】
本実施形態の環境試験装置1では、送風機20によって恒温恒湿槽3内の空気が循環して空調通路6を通過し、所望の環境が作られる。即ち恒温恒湿槽3内の空気は送風機20によって空調通路6の吸入側開口7から吸入され、空調通路6を通過して送風用開口8に抜ける。このとき、空気は前記した空気冷却用熱交換器16、除湿用熱交換器17を通過し、さらに加熱ヒータ18に触れる。また必要に応じて加湿器15から水蒸気が供給される。
【0025】
環境試験装置1の制御装置4には、テンキーやタッチパネル等の設定入力手段22が接続されており、希望する恒温恒湿槽3内の環境を設定入力することができる。また制御装置4には、表示手段23が接続されており、設定内容や、現在の恒温恒湿槽3内の環境が数値で表示される。
【0026】
環境試験装置1では、室内温度検知センサー11と湿度検知センサー12によって被試験物配置室5内の温度と湿度が監視されている。そして被試験物配置室5内の温度が設定環境の温度よりも低い場合には加熱ヒータ18に通電して空気を昇温させ、被試験物配置室5内の温度が設定環境の温度よりも高い場合には空気冷却用熱交換器16に冷媒を流して空気冷却用熱交換器16の温度を低下させ、流通する空気から熱を奪う。
また被試験物配置室5内の湿度が設定環境の湿度よりも低い場合には加湿器15から蒸気を噴射して通過する空気に混入する。
逆に被試験物配置室5内の湿度が設定環境の湿度よりも高い場合には除湿用熱交換器17によって水蒸気を凝縮させる。
【0027】
次に本実施形態の環境試験装置1に特有の構成及び機能について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、IC等の電子機器が装着された基板30を試験することができるものであり、そのための特有の構成を具備している。即ち本実施形態の環境試験装置1では、基板30に給電するための給電端子32,33を備えている。また基板の温度ばらつきを監視するための温度ばらつき検知手段35を備えている。温度ばらつき検知手段35は、具体的には3個の温度センサー36,37,38(第一温度センサー36,第二温度センサー37,第三温度センサー38)である。温度センサー36,37,38は熱電対やサーミスタ等の公知のセンサーを活用することができる。
温度ばらつき検知手段35を構成する温度センサーの数は任意であるが、ばらつきを検知するために少なくとも2個のセンサーが必要である。もちろん温度ばらつき検知手段35を構成する温度センサーの数は、多いほど良いと言える。
温度センサー36,37,38は、端子40,41,42に接続されており、さらに信号線によって制御装置4に接続されている。
【0028】
また本実施形態で採用する制御装置4は、温度センサー36,37,38から検知される信号から、温度センサー36,37,38が検知した温度の差を演算する計算部を備えている。なお現実には、制御装置4はCPUを内蔵するものであり、計算部はソフトウェアによって構成されている。
【0029】
また制御装置4は、各温度センサー36,37,38から検知された温度の差が設定の範囲内であるか否かを判断する判定部を備える。判定部についてもソフトウェアによって構成されている。
そして制御装置4は、各温度センサー36,37,38が検知する基板30各部の温度の差が設定の範囲よりも大きい場合には送風機20の送風量を増大させる信号を発する。即ち基板30の温度ばらつきが設定範囲を越える場合には送風量を増大させる。
逆に各温度センサー36,37,38が検知する基板30各部の温度の差が設定の範囲よりも小さい場合には送風機20の送風量を減少させる信号を発する。即ち基板30の温度ばらつきが設定範囲よりも小さい場合には送風量を絞る。
【0030】
次に本実施形態の環境試験装置1の機能を図2、図3を参照しつつ、実際の試験手順を追って説明する。なお図2は、本実施形態の環境試験装置の動作を示すフローチャートである。図3は、本実施形態の環境試験装置の動作を示すタイムチャートである。
【0031】
本実施形態の環境試験装置1は、前記した様に基板30を検査するものであり、試験の準備段階として、試験条件を設定する。即ち基板30を設置する恒温恒湿槽3内の温度、湿度及びこれらの許容範囲を設定する。また温度や湿度を繰り返し変動させる場合には、その周期や一定に保つ時間等が設定される。
さらに本実施形態に特有のものとして、基板30の各部の温度ばらつきを設定する。
具体的には、第一温度センサー36,第二温度センサー37,第三温度センサー38が検知する温度の差の適正範囲を設定する。例えば第一温度センサー36の検知温度と第二温度センサー37の差が2°Cから4°Cであり、第二温度センサー37と第三温度センサー38の差が1°Cから2°Cであり、第三温度センサー38と第一温度センサー36の差が5°Cから6°Cといった様な設定を行う。3個の温度センサー36,37,38の検知温度の内、最高の値と最低の値との差を設定してもよい。
【0032】
そして続いて恒温恒湿槽3内に被試験物たる基板30を設置する。具体的には、被試験物配置室5に基板30を置く。そして被試験物配置室5に設けられた給電端子32,33を基板30の給電端子(図示せず)に接続する。
【0033】
準備が整うと、環境試験装置1を起動し、試験を開始する。以下、環境試験装置1は、図2のフローチャートの様に機能する。
即ち環境試験装置1を起動すると、ステップ1で各温調機能等が動作を開始する。具体的には、加湿器15、空気冷却用熱交換器16、除湿用熱交換器17、加熱ヒータ18が起動し、環境を設定された環境に近づけようとする。またステップ2で送風機20が回転を開始する。この時の送風機20の回転数は、図3の様にフル回転である。
そしてステップ3で、設定された環境となるのを待つ。
【0034】
図3のタイムチャートの様にa時間が経過し、設定された環境となればステップ4に移行し、基板30への通電を開始する。その後、ステップ5からステップ8によって基板30の温度ばらつきを監視し、温度ばらつきが適正範囲に収まる様に送風量を増減する。
【0035】
具体的には、ステップ5で基板30の温度ばらつきが設定範囲よりも過大であるか否かを判定する。ばらつきが設定範囲を越えて大きいならばステップ6に移行して送風量を増大させた後ステップ9に移行する。ステップ5がNOであればステップ7に移行し、ばらつきが過少であるか否かを判断する。ばらつきが過少であるならばステップ8に移行して送風量を減少させた後ステップ9に移行する。
ステップ7がNOであれば基板30の温度ばらつきが適正範囲であるから、送風量を変更することなくステップ9に移行する。
ステップ9では、送風量以外の環境(温度や湿度)が適正範囲であるか否かが判断される。温度等の環境が許容範囲であるならばステップ11に移行し、試験終了の信号があるか否かを判断する。例えば一定時間や一定の繰り返しが終了したか否かが判断されることとなる。
【0036】
ステップ9がNOであり、温度等の環境が許容範囲を外れているならばステップ10に移行し、発熱量を増大させる等の信号を発した後にステップ11に移行する。
ステップ11がNOであり、まだ試験が終了していないならばステップ5に戻り、ステップ5からステップ10によってばらつきと環境が適正であるか否かを監視する。なお、基板30の温度にばらつきが生じたり、これが変化するには相当の遅れ時間が必要であるから、遅れ時間を見越したタイマー等を設けることが望ましい。
【0037】
ステップ11で試験終了を示す信号が確認された場合には、試験を終了する。
【0038】
上記した一連の試験によると、基板30の温度がばらついた状態で所望の試験を行うことができ、実際に置かれる環境を再現することができる。
また恒温恒湿槽3内の温度環境を低温から高温へ、さらに高温から低温へと繰り返し変化させる様な試験を行う場合においても、図4に示すように温度変化時に基板30側からの熱放散が少なく、低温時においても高温時においても基板30の温度ばらつきが確保される。なお図4は、本発明の環境試験装置を使用して基板を試験した場合の温度分布の変化を示す概念図であり、網かけが濃い部位は高温部を表している。
【0039】
以上説明した実施形態では、送風機20のモータ21の回転数を変更することによって送風量を調節したが、ダンパー等を設け、ダンパーの開度を調節することによって送風量を増減することも可能である。
また風の向きを制御する風向板等を設け、風向を変化させて基板と接する実際の風量を増減させてもよい。
さらに図5に示す実施形態の様に、被試験物配置室5内に風速センサー45を設け、風速センサー45で検知される風速を監視しながらモータ21の回転数やダンパーの開度を制御してもよい。なお、図5に示す環境試験装置50は、風速センサー45を有する点を除いて図1の環境試験装置1と同一であるから、同一の部材に同一の番号を付することによって詳細な説明に代える。
【0040】
また図5に示す装置は、風速センサー45によって被試験物配置室5内を流れる送風の全体的な風速を検知するものであるが、風速センサー45の位置や向き、個数を工夫することによって、基板30に直接接触する風の風速や、基板30の面方向の風速あるいは風量を検知する構成としてもよい。
【0041】
また前記した実施形態では、送風量を段階的に変化させたが、目標となるばらつきの量との偏差に応じて送風量を増減してもよい。即ち送風量や風速を基板30の温度ばらつきに応じて比例制御してもよい。
【0042】
また上記した実施形態は、空調通路6に加熱ヒータ18を置き、加熱ヒータ18で通過する空気を昇温させることによって恒温恒湿槽3内の温度環境を調節し、被試験物たる基板30の温度を制御するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばハロゲンランプ等を使用して赤外線を基板30に照射し、基板30の温度を制御したり、温度制御された熱板の上に基板30を置いて基板30の温度を調節してもよい。また温調した空気を被試験物に直接吹きつけてもよい。
【0043】
また上記した実施形態では、温度ばらつき検知手段35を熱電対等の温度センサー36,37,38で構成し、温度センサー36,37,38を直接基板30に取り付けることによって温度ばらつきを検出した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、基板30から発せられる赤外線等を検知することによって基板30の各部位の温度を検出してもよい。さらに温度ばらつき検知手段として、サーモビュワーと称される装置の様な非接触で温度分布を直接的に測定する温度分布測定装置を活用してもよい。
【0044】
また基板30の各部の抵抗の変化や流れる電流値の変化から、間接的に温度のばらつきを検出する方策も可能である。
即ち図6に示すように基板30の各部(例えばa〜i)間の抵抗値を監視する。ここで基板30等の被試験物は、一般的に温度によって抵抗値が僅かに変化するから、各部の抵抗値の変化を監視することによって基板30の温度ばらつきを間接的に検知することができる。
また特に本発明の環境試験装置は、基板30に通電しつつ試験を行うものであるから、各部を流れる電流や電圧の変化を監視しやすい。電流や電圧の変化を監視することによって電気的特性の変化を検知することができ、間接的に温度ばらつきを知ることができる。
【0045】
また上記した実施形態の環境試験装置は、いずれも何らかの手段によって基板30の温度ばらつきを測定し、これに基づいて風量等を制御したが、予め予備的な試験を行い、この試験データに基づいて風量等を制御してもよい。
【0046】
例えば、被試験物を低温から高温へ、さらに高温から低温へと繰り返し変化させる様な試験を行う場合に、予め予備的な試験を行い、この時の温度ばらつきと送風に関する情報(風速、風量、向き、強弱のタイミング等)を測定しておく。そして当該試験に基づいて抽出されたデータによって、被試験物の温度ばらつきが再現される様に送風量を調節する。
即ち被試験物に所望の温度ばらつきが生じる様な送風環境(風速、風量、向き、強弱のタイミング等)をデータに基づいてプログラムし、このプログラムを制御装置に記憶させる。そして実際の環境試験は、このプログラムに則って行う。例えば、加熱量と加熱時間をプログラムし、一定時間の加熱が終了すると、一定時間の間、送風機の回転数を低下させる。あるいは、恒温恒湿槽3内の環境が、一定の領域に達した時に送風機の回転数を低下させてもよい。
【0047】
また図2に示したフローチャート及び図3のタイムチャートでは、被試験物が置かれた環境が所望の試験環境となった後に被試験物たる基板30に通電したが、より早い時期から通電を開始してもよい。
例えば図7に示すフローチャート及び図8に示すタイムチャートの様に、温調機や送風機等の起動と共に基板30に通電し、被試験物が置かれた環境が所定の環境となった後に送風環境を調節してもよい。
【0048】
次に本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
図9は、図1に示す環境試験装置を用いて基板の環境試験を行った際の基板の3点の温度分布の変化を示すグラフである。図10は、従来技術の環境試験装置を用いて基板の環境試験を行った際の基板の3点の温度分布の変化を示すグラフである。
図9,10を比較して明らかな様に、本実施形態の環境試験装置を使用すると、基板の温度ばらつきを再現することができる。そのため本実施形態の環境試験装置は、より有用な試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態の環境試験装置の構成図である。
【図2】本実施形態の環境試験装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の環境試験装置の動作を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の環境試験装置を使用して基板を試験した場合の温度分布の変化を示す概念図である。
【図5】本発明の他の実施形態の環境試験装置の構成図である。
【図6】基板の温度ばらつきを測定する方策を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態の環境試験装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態の環境試験装置の動作を示すタイムチャートである。
【図9】図1に示す環境試験装置を用いて基板の環境試験を行った際の基板の3点の温度分布の変化を示すグラフである。
【図10】従来技術の環境試験装置を用いて基板の環境試験を行った際の基板の3点の温度分布の変化を示すグラフである。
【図11】従来技術の環境試験装置を使用して基板を試験した場合の温度分布の変化を示す概念図である。
【符号の説明】
【0050】
1,50 環境試験装置
3 恒温恒湿槽
4 制御装置
11 室内温度検知センサー
12 湿度検知センサー
15 加湿器
16 空気冷却用熱交換器
17 除湿用熱交換器
18 加熱ヒータ
20 送風機
21 モータ
22 設定入力手段
23 表示装置
30 基板(被試験物)
35 温度ばらつき検知手段
36 第一温度センサー
37 第二温度センサー
38 第三温度センサー
45 風速センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物が置かれる環境を調節する環境調節手段と、被試験物に通電する通電手段を有する環境試験装置において、被試験物単体における温度ばらつきを直接的に又は間接的に検知する温度ばらつき検知手段を有し、前記環境調節手段は、少なくとも送風手段及び送風環境制御手段を有し、被試験物の温度ばらつきが所定の値に維持されるように前記送風環境制御手段によって送風環境を変化させることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
被試験物が置かれる環境を調節する環境調節手段と、被試験物に通電する通電手段を有する環境試験装置において、被試験物単体における温度ばらつきを直接的に又は間接的に検知する温度ばらつき検知手段を有し、前記環境調節手段は、少なくとも送風手段及び送風環境制御手段を有し、被試験物の温度ばらつきが所定の値より大きい場合には被試験物に接する送風を増大させ、被試験物の温度ばらつきが所定の値より小さい場合には被試験物に接する送風を減少させることを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
温度ばらつき検知手段は、被試験物単体の二点以上の部位の温度を測定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
温度ばらつき検知手段は、被試験物単体の各部の電気的特性の変化に基づいて温度ばらつきを間接的に検知するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項5】
被試験物が置かれる環境を調節する環境調節手段と、被試験物に通電する通電手段を有する環境試験装置において、前記環境調節手段は、少なくとも送風手段及び送風環境制御手段を有し、被試験物が置かれる環境が所定の環境となるまでの間は所定の送風量で送風し、被試験物に対する環境が所定の環境となった後は、被試験物の温度ばらつきが所定の値となる様に被試験物に接する送風を調節すること特徴とする環境試験装置。
【請求項6】
所定の環境下において被試験物に通電した場合に発生する被試験物の温度ばらつきを先行的に試験し、当該試験に基づいて抽出されたデータによって、被試験物の温度ばらつきが抽出されたデータに基づく所定の値になる様に送風を調節することを特徴とする請求項5に記載の環境試験装置。
【請求項7】
送風環境制御手段は、送風量、風速、風向の少なくともいずれかを変化させることができるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の環境試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−225496(P2007−225496A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48455(P2006−48455)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】