説明

環状オレフィン系樹脂組成物、該樹脂組成物からなる樹脂成形品の製造方法、ならびに該樹脂組成物からなるフィルム

【解決手段】本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、1分子中にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両方を有する化合物(B)0.3〜0.7重量部と、ヒンダードフェノール構造を有する上記(B)成分以外の化合物(C)0.3〜0.7重量部とを含有し、分子量が3000以下の化合物の合計含有量が1.0重量部以下であることを特徴としている。
【効果】本発明によれば、成形時に金型やロールなどの成形機具に汚れを生じにくく、耐熱性、透明性に優れた成形体の材料として好適な環状オレフィン系樹脂組成物、それを用いた樹脂成形品ならびにフィルムの製造方法を提供することができる。本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、特に、各種光学部品用途や電気電子材料などの成形品の用途に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物、該樹脂組成物からなる樹脂成形品の製造方法、ならびに該樹脂組成物からなるフィルムに関する。詳しくは、本発明は、環状オレフィン系開環重合体水素化物と、特定の耐光安定剤および酸化防止剤を含み、耐熱性に優れ、成形の際のロール汚れや金型汚れを防止できる環状オレフィン系樹脂組成物、およびそれを用いた樹脂成形品の製造方法、ならびに該樹脂組成物からなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも、屈折率の異方性が小さいことによる低複屈折性を示すなどの特長を有することから、耐熱性、透明性、光学特性に優れた熱可塑性透明樹脂として注目されている。
【0003】
このような環状オレフィン系樹脂の1つとして、工業的に入手が容易であり安価なジシクロペンタジエン(DCP)などの環状オレフィン系化合物を含む単量体を開環重合し、さらに水素添加した樹脂が挙げられ、例えば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料、光学用フィルム・シートあるいは医薬品等の容器などへの応用が提案されている。(特許文献1、2参照)
一般に、環状オレフィン系化合物の開環重合体は、適当な溶媒中で、メタセシス触媒系などの開環重合触媒の存在下に単量体を開環重合することに得ることができる。さらにその水素添加物は、前記開環重合体の溶液に、適当な水素添加触媒を添加して水素と反応させることにより得ることができる。(特許文献3〜6参照)
DCP系単量体などの環状オレフィン系単量体の重合体水素添加物は、環状オレフィン系樹脂の中でも安定性に優れるため、各種成形体の材料として好適に用いられるが、光学用途などではさらに高度な耐熱性が望まれるため、添加剤の配合による耐熱安定性の更なる向上が図られている。
【0004】
たとえば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に、ヒンダードアミン系対紺耐光安定剤と、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤とを配合し、耐光劣化性を改良した樹脂組成物が提案されている(引用文献7参照)。
【0005】
しかしながら、リン系の酸化防止剤を添加した樹脂組成物の成形では、酸化防止剤に起因する成形時の金型汚れ、ロール汚れなどが発生する場合があった。このため、リン系酸化防止剤を用いることなく、高度な耐熱性を有する成形体を製造しうる、環状オレフィン系樹脂組成物の出現が望まれていた。
【特許文献1】特開平11−124429号公報
【特許文献2】特開平11−130846号公報
【特許文献3】特開昭63−264626号公報
【特許文献4】特開平1−158029号公報
【特許文献5】特開平1−168724号公報
【特許文献6】特開平1−168725号公報
【特許文献7】特開平9−268250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性に優れ、しかも成形時にロールや金型などの成形機具への汚れを生じ
にくい、環状オレフィン系樹脂組成物、それを用いた成形体およびフィルムの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、
環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、
1分子中にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両方を有する化合物(B)0.3〜0.7重量部と、
ヒンダードフェノール構造を有する上記(B)成分以外の化合物(C)0.3〜0.7重量部とを含有し、
分子量が3,000以下の化合物の合計含有量が1.0重量部以下であることを特徴としている。
【0008】
このような本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、化合物(C)が、融点が100℃以上250℃未満の化合物であることが好ましい。
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、化合物(C)が、1分子中に2以上のヒンダードフェノール構造を有する化合物であることが好ましい。
【0009】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、化合物(B)が、1分子中に2以上のヒンダードフェノール構造を有する化合物であることが好ましい。
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、組成物中にリン原子を含まないことが好ましい。
【0010】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、厚さ3.2mmに成形した成形品の初期黄色度(YI値)が0.6以下であることが好ましい。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、前記本発明の環状オレフィン系樹脂組成物を射出成形することを特徴としている。
【0011】
本発明のフィルムの製造方法は、前記本発明の環状オレフィン系樹脂組成物を溶融押出法により成形することを特徴としている。
本発明のフィルムは、環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、
1分子中にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両方を有する化合物(B)0.3〜0.7重量部と、
ヒンダードフェノール構造を有する上記(B)成分以外の化合物(C)0.3〜0.7重量部とを含有し、
分子量が3,000以下の化合物の合計含有量が1.0重量部以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形時に金型やロールなどの成形機具に汚れを生じにくく、耐熱性、透明性に優れた成形体、特にフィルムの材料として好適な環状オレフィン系樹脂組成物、それを用いた樹脂成形品ならびにフィルムとその製造方法を提供することができる。本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、特に、各種光学部品用途や電気電子材料などの成形品の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)と、特定の化合物(B)、化合物(C)を必須成分として含有する。
(A)環状オレフィン系開環重合体水素化物
本発明において、環状オレフィン系重合体は、少なくとも1種の環状オレフィン系化合物からなる単量体の単独重合体または共重合体のみならず、環状オレフィン系化合物と共重合可能なほかの化合物からなる単量体を共重合してなる共重合体をも含む。本発明において、開環重合とは、開環重合および開環共重合の両方を、開環重合体とは、開環重合体および開環共重合体の両方を表す。また、本発明における水素化(水素添加)は、特段の断りがない限り、メタセシス開環重合により生じた環状オレフィン系重合体主鎖中のオレフィン性不飽和結合や、DCPの5員環側の不飽和結合の様に、開環重合しない脂肪族オレフィン性不飽和結合に対するものであり、芳香族性不飽和結合等他の不飽和結合に対するものではない。
【0014】
本発明で用いられる環状オレフィン系開環重合体水素化物は、環状オレフィン系単量体を含む単量体を開環重合し、得られた環状オレフィン系開環重合体を水素化して製造することができる。以下、本発明で用いられる環状オレフィン系開環重合体水素化物の製造方法について説明する。
<環状オレフィン系重合体>
単量体
本発明において用いられる環状オレフィン系開環重合体水素化物の前駆体である、環状オレフィン系開環重合体は、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物を含む単量体を開環重合して得ることができる。
【0015】
単量体として用いられる環状オレフィン系化合物としては、特に限定されるものではないが、たとえば、下記式(1m)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
式(1m)中、mおよびA1〜A4は、mは0、1または2であり、A1〜A4はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜30、好ましくは1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。
【0018】
式(1m)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0019】
また、置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば炭素原子数1〜
10の2価の炭化水素基(例えば、−(CH2m−(式中、mは1〜10の整数)で表さ
れるアルキレン基);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−SO2−)、エー
テル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−N
HCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R2)−(式中、Rはメチル、エ
チルなどのアルキル基))などが挙げられ、これらの複数を含む連結基であってもよい。
【0020】
極性基としては、たとえば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0021】
式(1m)で表される環状オレフィン系化合物としては、具体的には、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデ
カ−3−エン、ヘキサシクロ [6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプト−4−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−6−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−6−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−
8−イソプロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−
3−エン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ
[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3.8−ジエン等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0022】
本発明においては、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物を1種単独で、あるいは2種以上併用して単量体として用いることができる。また、本発明においては、1種以上の環状オレフィン系化合物と、共重合性化合物とを含む単量体を用いることもできる。
【0023】
本発明において、開環重合に供する単量体の種類や配合割合は、得られる樹脂に求められる特性に応じて適宜選択されるものであり、一義的に決定されるものではないが、通常は、得られる樹脂を用いた成形品などの接着・密着性、印刷性あるいは顔料など他素材の分散性が向上するので、その分子内に酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原
子から選ばれた少なくとも1種の原子を少なくとも1個含む構造(以下、「極性構造」という。)を有している環状オレフィン系化合物を含む単量体を選択することが好ましい。もちろん、係る極性構造を有する単量体のみを用いてもよいし、極性構造を有さない単量体と併用してもよい。
【0024】
開環重合
次に、環状オレフィン系化合物を含む単量体の開環重合について説明する。
・重合触媒
単量体の開環(共)重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行うことができる。
【0025】
本発明に用いられる開環重合用の触媒としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN,J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。
【0026】
このような触媒としては、たとえば、(a)W、Mo、ReおよびV、Tiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cd、Hg、B、Al、Si、Sn、Pbなどの化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなるメタセシス重合触媒が挙げられる。この触媒は、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。また、その他の触媒として(d)助触媒を用いない周期表第4族〜8族遷移金属-カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体などからな
るメタセシス触媒が挙げられる。
【0027】
上記(a)成分として適当なW、Mo、ReおよびV、Tiの化合物の代表例としては、
WCl6、MoCl5、ReOCl3、VOCl3、TiCl4など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0028】
上記(b)成分としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、
(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特
開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0029】
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−240517号公報に示される化合物を使用することができる。
【0030】
上記触媒(d)の代表例としては、W(=N-2,6-C6H3 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Mo(=N-2,6-C6H3 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh32Cl2、Ru(=CHPh)(PC6
112Cl2などが挙げられる。
【0031】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と、全単量体とのモル比で「(a)成分:全単量体」が、通常1:500〜1:500,000となる範囲、好ましくは1:1000〜1:100,000となる範囲であるのが望ましい。(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲であるのが望ましい。また、このメタセシス触媒に上記(c)添加剤を添加する場合、(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲であるのが望ましい。また、触媒(d)の使用量は、(d)成分と全単量体とのモル比で「(d)成分:全単量体」が、通常1:50〜1:50000となる範囲、好ましくは1:100〜1:10000となる範囲であるのが望ましい。
・分子量調節剤
開環(共)重合体の分子量の調節は重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。ここに、好適な分子量調節剤としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、開環(共)重合反応に供される全単量体1モルに対して0.001〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルであるのが望ましい。
・開環(共)重合反応用溶媒
開環(共)重合反応において用いられる溶媒、すなわち、環状オレフィン系単量体、メタセシス触媒および分子量調節剤を溶解する溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類を挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。本発明では、これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0032】
溶媒の使用量としては、「溶媒:全単量体(重量比)」が、通常1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量であるのが望ましい。
・開環重合体
単量体の開環重合の条件は、特に限定されるものではないが、重合反応温度は、通常、70〜150℃程度であるのが望ましい。
【0033】
本発明に係る環状オレフィン系開環重合体の分子量は、所望の特性により決定されるものであり一義的に規定されるものではないが、通常、固有粘度(ηinh )は0.2〜5.0、好ましくは0.4〜1.5である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量としては、重量平均分子量(Mw)が通常1.0×103〜1.0×106、好ましくは5.0×103〜5.0×105であり、分子量分布が(Mw/Mn)が通常1〜10、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。本発明では、このような分子量の環状オレフィン系開環重合体が得られるような条件を選択して、環状オレフィン系単量体を含む単量体の開環重合反応を行うことが好ましい。
【0034】
開環重合体の分子量が高くなりすぎると水素添加反応の効率が低下することがあり、得られる環状オレフィン系開環重合体水素化物の水素添加率が所望の値に達しなかったり、反応時間が長くなったりするなどの問題が生じることもある。
【0035】
分子量の調節は、開環(共)重合反応における重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、一般的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類等の分量調節剤を反応系に添加する方法が、添加量を調整するだけで所望の分子量にできるので容易であり好適に用いられる。
【0036】
このようにして得られた環状オレフィン系開環重合体は、開環重合に伴って主鎖中に生じたオレフィン性不飽和結合を有している。
<開環重合体の水素化>
本発明で用いる環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)は、上述のようにして得た環状オレフィン系開環重合体の、オレフィン性不飽和結合を水素化する水素化反応を行って製造することができる。
・水素化
本発明で用いる環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)は、上記のようにして得られる環状オレフィン系開環重合体を、水素添加触媒を用いて水素化して調製することができる。
【0037】
水素化反応は、通常の方法、すなわち、開環(共)重合体の溶液に水素化触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。水素化触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素化反応に用いられるものを使用することができる。この水素化触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が公知である。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。これらの水素化触媒は、「開環(共)重合体:水素化触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。水素化率は、通常、50〜100%、好ましくは80〜100%である。
【0038】
本発明で用いる環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)の固有粘度(ηinh)は、
ウベローデ粘度計を用いてクロロベンゼン(0.5g/dl)、30℃で測定した場合に、
0.2〜5の範囲であることが好適であり、さらに好ましくは0.3〜4である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン換算)による分子量の測定では、数平均分子量が1×103〜5×105、重量平均分子量が3×103〜2×106であり、好ましくは数平均分子量が3×103〜3×105であり、重量平均分子量が5×103〜1×106である。
【0039】
本発明で用いる環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)は、開環重合により生じた重合体主鎖中の不飽和結合(C=C二重結合)が、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上水素添加され、飽和結合となっているのが望ましい。
化合物(B)
本発明で用いる化合物(B)は、1分子中にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両方を有し、光安定化機能を有する化合物である。
【0040】
本発明においてヒンダードアミン構造を有するとは、窒素原子の隣接する2つの炭素原子に複数の立体障害作用を示す置換基を持ったピペリジン環を有することを意味する。このような立体障害作用を示す置換基としては、例えば、メチル基等を挙げることができる。このような置換基を有する化合物の好ましい例としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基を有する化合物、及び1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0041】
また、本発明において、ヒンダードフェノール構造を有するとは、フェノール性水酸基のオルト位(2位及び/又は6位)に立体障害作用を示す置換基を有することを意味する。このような立体障害作用を示す置換基としては、例えば、t−ブチル基、1−メチルペ
ンタデシル基、オクチルチオメチル基等を挙げることができる。なお、置換基が2位及び6位の両方にある場合には、その置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
このような化合物(B)としては、たとえば、下記式で表される化合物が挙げられ、市販品としては、例えば三共(株)製 商品名:サノールLS−2626、チバ・スペシャ
ルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:TINUVIN144などが挙げられる。
【0043】
【化2】

【0044】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物における化合物(B)の含有量は、上述した環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、通常0.3〜0.7重量部、好ましくは0.3〜0.5重量部の範囲である。
化合物(C)
本発明において化合物(C)は、ヒンダードフェノール構造を有する化合物であって、化合物(B)以外の化合物であり、酸化防止機能を有する。具体的には、フェノール性水酸基のオルト位(2位及び/又は6位)に立体障害作用を示す置換基を持った化合物である。このような立体障害作用を示す置換基としては、例えば、t−ブチル基、1−メチルペンタデシル基、オクチルチオメチル基等を挙げることができる。なお、置換基が2位及び6位の両方にある場合には、その置換基は同一であっても異なっていてもよい。このような置換基を有する化合物の好ましい例としては、(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)基を有する化合物を挙げることができる。
【0045】
具体的には、たとえば下記の化合物を挙げることができる。
ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)プロピオネート]、
チオジエチレン ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロ
ピオネート]、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオナミド]、
3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、
イソオクチル2,4−ジメチル−6−(1−メチルぺンタデシル)フェノール、
ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、
3,3',3'',5,5',5''−ヘキサ−t−ブチル−a,a',a''−(メシチレン−
2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾールカルシウム、
ジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、
4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾ−ルエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、
ヘキサメチレン ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロ
ピオネート]、
1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンN−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、
2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−べンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン。
【0046】
これらの化合物の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:イルガノックス 1010,1010FP、1010FF、1098、1222、1330、1425WL、259、3114,565、565FL等を挙げることができる。
【0047】
本発明では、化合物(C)として、これらの化合物のうち、融点が100℃以上250℃未満の化合物を用いることが好ましく、融点が100℃以上230℃未満の化合物を用いることがより好ましく、融点が100℃以上180℃未満の化合物を用いることが特に好ましい。
【0048】
また、本発明では、化合物(C)として、1分子中に2以上のヒンダードフェノール構造を有する化合物を用いることが好ましい。このような好ましい化合物(C)としては、例えば、1分子中に4個のヒンダードフェノール構造を有する化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:イルガノックス1010;
1分子中に3個のヒンダードフェノール構造を有する化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:イルガノックス1330、3114、東レ(株)製 商品名:TTIC;
1分子中に2個のヒンダードフェノール構造を有する化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:イルガノックス245、259、1035、1098
、1425などが挙げられる。
【0049】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物における化合物(C)の含有量は、上述した環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、通常0.3〜0.7重量部、好ましくは0.3〜0.5重量部の範囲である。
その他の成分
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、必要に応じて、上述の化合物(B)および化合物(C)以外の成分を含有していてもよい。このようなその他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、充填材、滑剤等が挙げられる。本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、成形時の金型やロールなどの汚れを防止するため、リン系酸化防止剤は含まないことが好ましく、リン原子を含有する化合物を含まないことが好ましい。
【0050】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、分子量が3000以下の化合物の合計含有量が1.0重量部以下である。分子量が3000以下の化合物には、通常、上述の化合物(B)および化合物(C)、ならびにその他の添加剤などが含まれる。
【0051】
このような本発明の樹脂組成物を用いると、成形の際にロールや金型の汚れを生じにくく、しかも耐光安定性に優れた成形体を製造することができる。本発明の樹脂組成物を用いると、成形の際に酸化などによる着色を生じにくく、成形により厚さ3.2mmに成形した成形品の初期黄色度(YI値)を、0.6以下、好ましくは0.4〜0.5以下とすることができる。
樹脂成形品
本発明では、上述した環状オレフィン系樹脂組成物を適宜成形することにより、樹脂成形品を製造することができる。成形方法としては、公知の生計方法をいずれも採用できるが、射出成形法、溶融押出法、溶液流延法が特に好ましい。樹脂成形品としては、特に限定されるものではないが、フィルムまたはシート形状が好適である。フィルムまたはシートの製造においては、溶液流延法または溶融押出法により行うのが好ましい。
【0052】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物、ならびにそれからなる成形品は、光学部品や電気電子材料などの分野の用途において特に有用であり、例えば、光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ(fθレンズ、ピックアップレンズ、レーザープリンター用レンズ、カメラ用レンズ等)、眼鏡レンズ、光学フィルム(ディスプレイ用フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、偏光板保護フィルム、透明導電フィルム、波長板、光ピックアップフィルム等)、液晶配向膜、光学シート、光ファイバー、導光板、光拡散板、光カード、光ミラー、IC・LSI・LED封止材などの用途が挙げられる。
【0053】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」は重量部を示す。
(A−1成分)
A−1成分としては、以下の参考例1で得た環状オレフィン系樹脂を用いた。
[参考例1](A−1成分の調製)
8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン225部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/リットル)3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.65dl/gであった。
【0054】
このようにして得られた開環共重合体溶液4000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533 0.48部を添加し、水
素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添
加反応を行った。
【0055】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(環状オレフィン系樹脂A−1)を得た。
(化合物(B))
以下のものを用いた。
B−1:ヒンダードアミン系耐光耐熱安定剤(商品名:サノールLS−2626、三共(株)製)
(化合物(C))
以下のものを用いた。
C−1成分:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:Irganox1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
C−2成分:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:Irganox1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
(その他の化合物)
D−1成分:リン系熱安定剤(商品名:IRGAFOS168、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・試験片の成形方法
表1の配合割合(部)で各成分をドライブレンドし、住友重機(株)射出成形機(SG75M−S)に導入して、樹脂温度260〜300℃、金型温度80〜140℃の条件で射出成形し、40×50mm、厚さ3.2mmの平板を成形して試験片とした。
・試験片の評価(耐熱試験)
上記で得た試験片を、成形直後と、120℃ギアオーブン中で1000時間保持して紫外線照射を行った後とにおいて、以下の方法で色相(YI)および全光線透過率測定を行った。
【0056】
色相(YI)は、村上色彩技術研究所(株)製 高性能ベンチトップ測色分光光度計8
200型を用いて測定した。
全光線透過率は、村上色彩技術研究所(株)製 ヘーズメーターHM−150型を用い
て測定した。
・ロール汚れの評価
表1の配合割合(部)で各成分をドライブレンドした原料樹脂を、ジーエムエンジニアリング(株)製 50mmφ押出機を用いて、280℃で溶解し、500mm幅Tダイを
用いて膜状に引き伸ばし、これを500mm幅の300mmφのロールに転写させて鏡面フィルムを引取り速度6m/minで引取った。
【0057】
このときの冷却ロールの曇り度合いを目視にて次の三段階で評価した。
A:曇りなし
B:ロール表面の一部に曇りあり
C:ロール表面の全面に曇りあり
実施例1〜2、比較例1〜4
表1に示す組成により本発明の耐光耐熱性樹脂組成物を用いた射出成形品の耐熱試験を行い、所定時間の色相および耐紫外線性を評価した。評価結果を表1に併せて示す。
【0058】
【表1】

【0059】
上記実施例1〜2と、比較例1〜3の結果より、本発明の樹脂組成物を用いると、成形時のロール汚れが少なく、工業的な成形体の生産性に優れていることがわかる。また、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品は、成形直後の着色がなく、高温での紫外線照射後においても色相が安定しており、耐光性および耐熱性にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂組成物、ならびにそれからなる成形体は、光学部品や電気電子材料などの分野の用途において特に有用であり、例えば、光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ(fθレンズ、ピックアップレンズ、レーザープリンター用レンズ、カメラ用レンズ等)、眼鏡レンズ、光学フィルム(ディスプレイ用フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、透明導電フィルム、波長板、光ピックアップフィルム等)、液晶配向膜、光学シート、光ファイバー、導光板、光拡散板、光カード、光ミラー、IC・LSI・LED封止材などの用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、
1分子中にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両方を有する化合物(B)0.3〜0.7重量部と、
ヒンダードフェノール構造を有する上記(B)成分以外の化合物(C)0.3〜0.7重量部とを含有し、
分子量が3,000以下の化合物の合計含有量が1.0重量部以下であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】
化合物(C)が、融点が100℃以上250℃未満の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
化合物(C)が、1分子中に2以上のヒンダードフェノール構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(B)が、1分子中に2以上のヒンダードフェノール構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
組成物中にリン原子を含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
厚さ3.2mmに成形した成形品の初期黄色度(YI値)が0.6以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物を射出成形することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物を溶融押出法により成形することを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項9】
環状オレフィン系開環重合体水素化物(A)100重量部に対して、
1分子中にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両方を有する化合物(B)0.3〜0.7重量部と、
ヒンダードフェノール構造を有する上記(B)成分以外の化合物(C)0.3〜0.7重量部とを含有し、
分子量が3,000以下の化合物の合計含有量が1.0重量部以下であることを特徴とするフィルム。

【公開番号】特開2007−197604(P2007−197604A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19022(P2006−19022)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】