説明

環状オレフィン系樹脂

【課題】長期間、光や熱に曝されても、ほとんど変色しない環状オレフィン系樹脂を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系樹脂であって、ガラス転移温度が120℃以上であり、上記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、上記非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、上記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の二量体において、メソ型二連鎖部位とラセモ型二連鎖部位との比(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位)が1.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、主鎖に環状オレフィンの骨格を有する樹脂であり、高透明性、低複屈折性、高熱変形温度、軽量性、寸法安定性、低吸水性、耐加水分解性、耐薬品性、低誘電率、低誘電損失、環境負荷物質を含まない等、多くの特徴をもつ樹脂である。このため、環状オレフィン系樹脂は、これらの特徴が必要とされる多種多様な分野に用いられている。
【0003】
とりわけ、高耐熱性、高透明性、及び、低複屈折性を発揮できる点から、環状オレフィン系樹脂は、レンズ、導光板、回折格子等の光学デバイス、建築ならびに照明分野等の産業材における透明な成形加工品の原料として用いられている。このように、環状オレフィン系樹脂は屋外で使用される製品の原料として使用されることがある。
【0004】
例えば、特許文献1には屋外で長期間使用される製品の原料として環状オレフィン系樹脂を用いる例が開示されている。屋外で使用される他の例としては、特許文献2に、太陽電池を構成する部品の原料として環状オレフィン系樹脂が使用された例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−314594号公報
【特許文献2】特開2006−198922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の通り、環状オレフィン系樹脂は、光学部品の原料として使用可能であり、光に対する耐久性が弱い材料ではない。また、環状オレフィン系樹脂は耐熱性に優れるとされている点についても上記の通りである。
【0007】
しかし、耐光性、耐熱性に問題が無いと考えられている環状オレフィン系樹脂ではあるが、長期間光を照射されたり、高温環境下に曝されたりすることで、環状オレフィン系樹脂の透明性が変色により若干低下するおそれがある。光学用の部品等においては、小さな透明性の低下であっても、製品の品質に大きな影響がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、長期間、光や熱に曝されても、ほとんど変色しない環状オレフィン系樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系樹脂であって、ガラス転移温度が120℃以上であり、上記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、上記非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、上記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の二量体において、メソ型二連鎖部位とラセモ型二連鎖部位との比(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位)が1.0以下である環状オレフィン系樹脂であれば、以上の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系樹脂であって、ガラス転移温度が120℃以上であり、前記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、前記非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、前記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の二量体において、メソ型二連鎖部位とラセモ型二連鎖部位との比(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位)が1.0以下である環状オレフィン系樹脂。
【0011】
(2) 環状オレフィン系成分中における前記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位が三量体として存在する割合が10mol%以下である(1)に記載の環状オレフィン系樹脂。
【0012】
(3) 厚み2mmの平板での、波長520nmにおける面内の位相差が100nm以下である(1)又は(2)に記載の環状オレフィン系樹脂。
【0013】
(4) 厚み2mmの平板での黄色度(YI値)と、115℃、1000時間の条件で処理された厚み2mmの平板での黄色度(YI値)との差が、2.5以下である(1)から(3)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂。
【0014】
(5) 波長300nm以上400nm以下での照射密度が162W/mのキセノンランプに、波長275nm以下の光が遮断された状態で500時間照射された厚み2mmの平板での黄色度(YI値)が10以下である(1)から(4)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂。
【0015】
(6) 波長300nm以上400nm以下での照射密度が162W/mのキセノンランプに、波長275nm以下の光が遮断された状態で500時間照射された厚み2mmの平板での全光線透過率が80%以上である(1)から(5)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂。
【0016】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂と、紫外線吸収剤と、光安定剤と、を含む環状オレフィン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の環状オレフィン系樹脂は、特定の構造を有するため、長期間、光や熱に曝されても、ほとんど変色しない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0019】
<環状オレフィン系樹脂>
本発明の環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、を含むものである。
【0020】
また、本発明の環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位とを含む共重合体の水素添加物であってもよい。
【0021】
また、本発明の環状オレフィン系樹脂には、親水基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したものも含まれる。
【0022】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基等をあげることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができ、好ましくは、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基が挙げられる。
【0023】
[環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位]
環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の種類は特に限定されないが、一般式(I)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化1】

(式中、R〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R〜Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0024】
一般式(I)におけるR〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0025】
〜Rの具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0026】
また、R〜R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0027】
とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0028】
又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0029】
一般式(I)で示される環状オレフィン成分の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0030】
これらの環状オレフィン成分は、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
【0031】
本発明の環状オレフィン系樹脂において、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合は、40mol%以上60mol%以下である。
【0032】
環状オレフィン系モノマーの含有量に対して、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位が二量体として存在する割合については、特に限定されないが、本発明の環状オレフィン系樹脂において二量体部分における立体規則性については、下記の条件を満たす必要がある。なお、二量体の含有量は、例えば、環状オレフィン成分に対して15mol%以上45mol%以下である。
【0033】
上記二量体の立体規則性には、下記式(II)のメソ型と下記式(III)のラセモ型とがあることが知られている。本発明において、上記立体異性体の存在比率(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位)は1.0以下である。より好ましくは0.3以下である。

【0034】
【化2】

【化3】

【0035】
環状オレフィン系成分中における環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位が三量体として存在する割合は、特に限定されないが10mol%以下であることが好ましい。
【0036】
[非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位]
非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の種類は、特に限定されないが、炭素数2〜20のα−オレフィン成分に由来する繰り返し単位であることが好ましい。炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィン成分は、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。これらの中では、エチレンの単独使用が最も好ましい。
【0037】
[その他のモノマーに由来する繰り返し単位]
本発明の環状オレフィン系樹脂は、本発明の効果を害さない範囲で、上記の繰り返し単位以外の繰り返し単位を含有させることができる。任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体等を挙げることができる。炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0038】
<環状オレフィン系樹脂の製造方法>
上記の構造を有する本発明の環状オレフィン系樹脂を製造するための、重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用できる。また、ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよいが、ランダム共重合であることが好ましい。また、具体的な製造条件を調整することで、上記特徴を有する本発明の環状オレフィン系樹脂を製造することができる。具体的には、原料である各モノマーの使用量、反応温度、反応圧力等を従来公知の指針に従って調整することで、本発明の環状オレフィン系樹脂を製造することができる。
【0039】
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0040】
製造した環状オレフィン系樹脂が上記特定の構造を有する点については、従来公知の方法で確認することができる。例えばWO2007/060723に記載の方法で確認することができる。
【0041】
<本発明の環状オレフィン系樹脂の性質>
上記の通り、本発明の環状オレフィン系樹脂は(A)〜(C)の特徴を備える。さらに(D)の特徴を備えることで、本発明の環状オレフィン系樹脂は、長期間、光や熱に曝されても、ほとんど変色しない。
【0042】
(A)環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下。
(B)非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下。
(C)環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の二量体において、メソ型二連鎖部位とラセモ型二連鎖部位との比(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位)が1.0以下。
(D)ガラス転移温度が120℃以上。
【0043】
先ず、長期間、熱に曝されても製品がほとんど変色しない効果について説明する。本発明の環状オレフィン系樹脂は、上記特定の構造を有し、ガラス転移温度が120℃以上であるため、非常に高い耐熱性を備える。ガラス転移温度については、環状オレフィン系樹脂中の環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合を調整することで上記範囲に調整可能である。具体的には環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位が多いほどガラス転移温度が高くなる傾向にある。本発明の環状オレフィン系樹脂において、ガラス転移温度のさらに好ましい範囲は、130℃以上170℃以下である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、DSC法(JIS K7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した値を採用する。
【0044】
具体的には、例えば、厚み2mmの平板での黄色度(YI値)と、115℃、1000時間の条件で処理された厚み2mmの平板での黄色度(YI値)との差が、2.5以下である。平板については、後述する実施例に記載の方法で製造された厚み2mmの平板を使用する。
【0045】
次いで、長期間、光に曝されても製品がほとんど変色しない効果について説明する。本発明の環状オレフィン系樹脂は、上記の通り、特定の構造を有するため非常に高い耐光性を備える。
【0046】
具体的には、波長300nm以上400nm以下での照射密度が162W/mのキセノンランプに、波長275nm以下の光が遮断された状態で500時間照射された厚み2mmの平板での黄色度(YI値)が10以下である。また、波長300nm以上400nm以下での照射密度が162W/mのキセノンランプに、波長275nm以下の光が遮断された状態で500時間照射された厚み2mmの平板での全光線透過率が80%以上である。
【0047】
以上のような優れた耐光性及び耐熱性を有する本発明の環状オレフィン系樹脂は、上記の特定の構造のため、位相差が小さい。具体的には、厚み2mmの平板での、波長520nmにおける面内の位相差が100nm以下である。位相差の具体的な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0048】
上記のような性質を有する本発明の環状オレフィン系樹脂は、屋外で使用される部品や高温環境下で使用される部品の原料に適する。例えば、LEDレンズや車載レンズの原料として、本発明の環状オレフィン系樹脂を好適に使用することができる。
【0049】
なお、本発明の環状オレフィン系樹脂を用いて、製品を製造する場合、本発明の環状オレフィン系樹脂とその他の成分とを含む環状オレフィン系樹脂組成物を原料としてもよい。その他の成分としては、その他の種類の熱可塑性樹脂や、強化剤、可塑剤、安定剤、顔料等の添加剤が例示される。
【0050】
本発明においては、安定剤を併用することが好ましい。安定剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を使用することが好ましい。これらの安定剤を使用すれば、耐熱性及び耐光性向上させる効果がさらに高められる。
【0051】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0052】
具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタロイド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]−フェノール、テトラ−エチル−2,2−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノール)Ni塩、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンNi塩、(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホン酸モノエチルエステルNi塩、(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホン酸モノオクチルエステルNi塩、ジブチルジチオカルバメートNi塩、α−シアノ−β−メチル−β(p−メトキシフェニル)アクリル酸メチル、α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸メチル、N−2−エチルフェニル−N’−2−エトキシ−5−t−フエニルシュウ酸ジアミド、N−2−エチルフェニル−N’−2−エトキシフェニルシュウ酸アミドが挙げられる。これらの中でも、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]−フェノール、テトラ−エチル−2,2−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネートの使用が好ましい。
【0053】
紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、環状オレフィン樹脂組成物中に0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤等が挙げられる。
【0055】
具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンステアリン、プロバンジオイックアシッド[{4−メトキシフェニル}メチレン]−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、1、6ヘキサジアミン−N,N−ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−モルフォリン−2、4、6−トリクロロ−1、3、5−トリアジン反応物、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス−(1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル}ブチルマロネート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、(ミックスト2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ポリ[6−N−モルホリル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミド]、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの縮合物、[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]プロピオンアミド、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートおよびn−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどを挙げることができる。これらの中でも、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンステアリン、プロバンジオイックアシッド[{4−メトキシフェニル}メチレン]−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、1、6ヘキサジアミン−N,N−ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−モルフォリン−2、4、6−トリクロロ−1、3、5−トリアジン反応物、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートの使用が好ましい。
【0056】
光安定剤の含有量は特に限定されないが、環状オレフィン樹脂組成物中に0.05質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
酸化防止剤としては、例えばヒンダートフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)、炭化水素基またはイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など)、エステル基またはアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]
ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。
【0058】
リン系酸化防止剤として、具体的には、トリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト等が挙げられる。これらの中ではトリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの使用が好ましい。
【0059】
安定剤の含有量は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂と上記安定剤とを含む環状オレフィン系樹脂組成物中に0.05質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。0.05質量%以上であれば成形体の初期光学特性が高く、十分な耐熱変色性と耐光変色性を発揮するという理由で好ましく、1.0質量%以下であれば成形体の初期光学特性を損なわないという理由で好ましい。より好ましい含有量は、0.1質量%以上0.5質量%以下である。
【0060】
<環状オレフィン樹脂組成物の製造方法>
本発明の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。一般に樹脂組成物の調製法として公知の設備と方法により、樹脂組成物を調製することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。全ての成分をホッパから同時に投入して溶融混練もよいし、一部の成分をサイドフィード口から投入して溶融混練してもよい。また、環状オレフィン樹脂に安定剤が高濃度で含まれるマスターバッチペレットを、溶融混錬装置を用いて作成し、後述するような樹脂成形体を製造する際、その安定剤が含まれない環状オレフィン樹脂ペレットに目的の濃度(安定剤の濃度)になるようバスターバッチペレットを混ぜて製品を成形しても良い。さらには、上記のように成形用ペレットを製造せずに、後述するような樹脂成形体を製造する際、環状オレフィン樹脂ペレットに安定剤を直接まぶして製品を成形してもよい。
【0061】
<樹脂成形体の製造方法>
樹脂成形体は、従来公知の成形方法で製造することができる。従来公知の成形方法としては、射出成形法、押出成形法等の成形方法を挙げることができる。
【0062】
<樹脂成形体>
本発明の環状オレフィン樹脂組成物は、光耐熱性が要求される車載用光学レンズや、耐熱性と耐光性が同時に要求されるLEDや冷陰極管等を用いた照明装置のレンズや反射板、太陽電池を構成する部品の原料として好ましく使用できる。透明性が求められる光学部品は、高温環境下にさらされることや、LED光や冷陰極管の光源自身や外光にさらされることによる樹脂の劣化により透明性の低下が問題となるが、本発明によれば、長期間、光や熱に曝されても透明性を高い状態で維持できるからである。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0064】
<環状オレフィン樹脂1の合成>
環状オレフィン系樹脂1の合成は、連続重合装置に、ノルボルネン、炭化水素系溶媒(重合溶媒)、エチレン、及び水素を、ノルボルネンの供給量を81kg/h、重合溶媒の供給量を19kg/h、エチレンの供給量を4.5kg/h、水素の供給量を0.64g/hで供給した。同時に触媒(重合触媒)としてジフェニルメチリデン−シクロペンタジエニルフルオレニルジルコニウムジクロライド、助触媒としてメチルアルモキサン(10%トルエン溶液)からなる触媒系を反応装置に供給した。反応装置の温度を70℃に保ち、次工程の撹拌槽で環状オレフィン樹脂に対して0.1%の酸化防止剤(商品名、イルガノックス1010、BASF社製)を加え、続く脱溶媒工程において高温・減圧下で溶媒を除去した。溶融状態にある共重合体をストランド状に押出し、これを切断してペレットとした。
【0065】
<環状オレフィン樹脂2の合成>
環状オレフィン系樹脂2の合成は、連続重合装置に、ノルボルネン、炭化水素系溶媒(重合溶媒)、エチレン、及び水素を、ノルボルネンの供給量を52kg/h、重合溶媒の供給量を23kg/h、エチレンの供給量を4.0kg/h、水素の供給量を0.67g/hで供給した。同時に触媒(重合触媒)としてジフェニルメチリデン−シクロペンタジエニルフルオレニルジルコニウムジクロライド、助触媒としてメチルアルモキサン(10%トルエン溶液)からなる触媒系を反応装置に供給した。反応装置の温度を70℃に保ち、次工程の撹拌槽で環状オレフィン樹脂に対して0.1%の酸化防止剤(商品名、イルガノックス1010、BASF社製)を加え、続く脱溶媒工程において高温・減圧下で溶媒を除去した。溶融状態にある共重合体をストランド状に押出し、これを切断してペレットとした。
【0066】
<環状オレフィン樹脂3の合成>
環状オレフィン系樹脂3の合成は、連続重合装置に、ノルボルネン、炭化水素系溶媒(重合溶媒)、エチレン、及び水素を、ノルボルネンの供給量を44kg/h、重合溶媒の供給量を23kg/h、エチレンの供給量を2.8kg/h、水素の供給量を0.3g/hで供給した。同時に触媒(重合触媒)としてジフェニルメチリデン−シクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロライド、助触媒としてメチルアルモキサン(10%トルエン溶液)からなる触媒系を反応装置に供給した。反応装置の温度を70℃に保ち、次工程の撹拌槽で環状オレフィン樹脂に対して0.1%の酸化防止剤(商品名、イルガノックス1010、BASF社製)を加え、続く脱溶媒工程において高温・減圧下で溶媒を除去した。溶融状態にある共重合体をストランド状に押出し、これを切断してペレットとした。
【0067】
<環状オレフィン樹脂4の合成>
環状オレフィン系樹脂4の合成は、連続重合装置に、ノルボルネン、炭化水素系溶媒(重合溶媒)、エチレン、及び水素を、ノルボルネンの供給量を28kg/h、重合溶媒の供給量を22kg/h、エチレンの供給量を3.0kg/h、水素の供給量を0.18g/hで供給した。同時に触媒(重合触媒)としてジフェニルメチリデン−シクロペンタジエニルインデニルジルコニウムジクロライド、助触媒としてメチルアルモキサン(10%トルエン溶液)からなる触媒系を反応装置に供給した。反応装置の温度を70℃に保ち、次工程の撹拌槽で環状オレフィン樹脂に対して0.1%の酸化防止剤(商品名、イルガノックス1010、BASF社製)を加え、続く脱溶媒工程において高温・減圧下で溶媒を除去した。溶融状態にある共重合体をストランド状に押出し、これを切断してペレットとした。
【0068】
<材料の評価>
環状オレフィン系樹脂1〜環状オレフィン系樹脂4について、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合、環状オレフィン系成分中に環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位が二量体として存在する割合、三量体として存在する割合、上記二量体において、メソ型二連鎖部位とラセモ型二連鎖部位との比(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位(メソ−ラセモ比))、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合を下記の方法で求めた。
【0069】
鎖状オレフィン系単量体(非環式オレフィン系単量体)と橋架環式シクロアルケン系単量体(ノルボルネン系単量体)の割合、及び二連子部位(二量体)、三連子部位(三量体)、並びにメソ−ラセモ比は、13C−NMRによって観測されたスペクトルの積分値より算出できる。
【0070】
それぞれのスペクトルにより同定されるポリマーの一次構造は、「Maclomol. Chem. Phs. 1999, Vol. 200, Page 1340」、「Macromolecules 2004, Vol. 37, Page 9681」、「Macromolecules 2000, Vol. 33 , Page 8931」等に記載されている。
【0071】
鎖状オレフィン系単量体がエチレンで、橋架環式シクロアルケン系単量体(ノルボルネン系単量体)がノルボルネンである場合における、具体的なパラメータの算出方法について説明する。
【0072】
まず、組成の算出について説明する。組成は、13C―NMRによって得られたスペクトルチャートの
ケミカルシフト値44.5−56.0ppmで観測される積分値:IC2,C3(ノルボルネン環の2,3位に由来)、
ケミカルシフト値37.0−44.0ppmで観測される積分値:IC1,C4(ノルボルネン環の1,4位の炭素に由来)、
ケミカルシフト値36.5−33.0ppmで観測される積分値:IC7(ノルボルネン環の7位の炭素に由来)、
ケミカルシフト値44.5−56.0ppmで観測される積分:IC5,C6+IE(ノルボルネン環の5,6位の炭素及びエチレン部の炭素に由来)より、以下の式から、環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合(ノルボルネン成分の組成)を求めることができる。また、100%からノルボルネン成分の組成を引くことで、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合を算出することができる。
【0073】
【数1】

【0074】
二連子部位(式中のNNダイアド)、三連子部位(式中のNNトリアド)の量の比率は、「Maclomol. Chem. Phs. 1999, Vol. 200, Page 1340」に記載されている6つのトリアド(EEE、EEN、NEN、NNN、NNE、ENE)の分布を求め、以下の式から算出することができる。
【0075】
【数2】

【0076】
NNダイアドのメソ体のモル分率は、C5のENNE−メソ体のピーク(28.0−28.5ppm)の積分値と、C6のENNE−メソ体のピーク(31.5−31.8ppm)の合計を、C5、C6、エチレン部分の領域のピーク(29.4−32.5ppm)で除した値と、C7のENNE−メソ体のピーク(33.1−33.2ppm)の積分値をノルボルネンの組成及びC7領域(32.6−39ppm)の積分値で除した値との平均値から求められる。
【0077】
同様にしてNNダイアドのラセモ体のモル分率は、C5のENNE−ラセモ体のピーク(28.0−28.5ppm)の積分値とC6のENNE−ラセモ体のピーク(31.2−31.4ppm)の合計をC5、C6、エチレン部分の領域のピーク(28−32.5ppm)で除した値と、C7のENNE−ラセモ体のピーク(33.4−33.8ppm)の積分値をノルボルネンの組成及びC7領域(32.6−39ppm)の積分値で除した値との平均値から求められる。
【0078】
なお、本発明におけるサンプル調製条件及び測定条件の一例は以下の通りである。
溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2(10容量%ヘキサメチルジシラン含有)
濃度:70mg/mL
装置:Bruker AVANCE600(水素原子の共鳴周波数:600MHz)
サンプルチューブ径:10mm
測定方法:パワーゲート式
パルス幅:15μsec
遅延時間:2.089sec
データ取り込み時間:0.911sec
観測周波数幅:35971.22Hz
デカップリング:完全デカップリング
積算回数:18000回
ケミカルシフトのリファレンス:ヘキサメチルジシランのピークを−2.43ppmとする。
【0079】
以上の測定により得られた環状オレフィン系樹脂の構造、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)及びMVRを表1に示した。MVRは、ISO 1133に基づいて測定し、温度260℃、荷重2.16kgで、10分間の間に排出された樹脂の体積量(mL/10分)を求めた。Tgは、DSC法(JIS K7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した値を採用した。
【表1】

【0080】
<評価用試験片の作製>
住友重機械製射出成形機SE75Dを用い、シリンダ温度がTg+140℃、射出速度が150mm/secの条件で、70×70×厚み2mmtの平板を製造した。この平板を以下に示す位相差の評価、耐熱性の評価、耐光性の評価に使用した。なお、以下の評価においては、ポリカーボネート樹脂1(ユーピロン(登録商標)ML−300(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製))、ポリカーボネート樹脂2(パンライト(登録商標)L−1225ZL100(帝人化成株式会社製))を、上記試験片と同じ形状に成形し、これらについても評価を行った。
【0081】
[位相差の評価]
板状の試験片表面の中央部の、波長520nmにおける面内位相差を、二次元複屈折評価装置(PA−100(株式会社フォトニックラティス製))を用いて測定した。測定結果を表2に示した。
【表2】

【0082】
表2の結果から、本発明の環状オレフィン系樹脂から構成される成形体は位相差が小さいことが確認された。
【0083】
[耐熱性]
先ず、成形後の各試験片について、黄色度(YI)を測定した。具体的には、YKB−Gardnar GmbH製色差計color−sphereにて、黄色度(DIN6167)を測定した。次いで、各試験片に対して115℃、1000時間の条件の熱処理を行い、熱処理後に黄色度を測定した。さらに、熱処理前後での黄色度の差を算出した。熱処理前の黄色度、熱処理後の黄色度、黄色度の差について表3に示した。
【表3】

【0084】
表3の結果から、本発明の環状オレフィン系樹脂は、長期間、高温環境下に曝されても、ほとんど変色しないことが確認された。
【0085】
[耐光性]
先ず、成形後の各試験片について、黄色度(YI)を測定した。次いで、各試験片に対して、500時間の光照射を行い、光照射後に黄色度を測定した。光照射の前後での黄色度の差を算出した。結果を表4に示した。ここで、光照射は、スガ試験機スーパーキセノンウェザーメータを用い、フィルター#275(275nm以下をカット)、ブラックパネル温度89℃、湿度50%RH、照射密度162W/m(300〜400nm)、トータルエネルギー量291.5MJ/mの条件で行った。
【0086】
また、上記の光照射の前後での全光線透過率を測定した。具体的には、ヘイズメーター(東洋精機製作所社製、商品名:ヘイズガードII)を用いて、JIS K7136に準拠する方法で全光線透過率を測定した。結果を表4に示した。
【表4】

【0087】
本発明の環状オレフィン系樹脂は、長期間、光に曝されても、ほとんど変色しないこと、光線透過率の低下が小さいことが確認された。
【0088】
<環状オレフィン樹脂組成物の評価例>
環状オレフィン樹脂1と下記表5に示す紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を含む環状オレフィン樹脂組成物を原料として用いた以外は、上記と同様の方法で評価用試験片を作製し、耐熱性、耐光性を評価した。
【0089】
[安定剤]
紫外線吸収剤1:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール(Tinuvin234、BASFジャパン株式会社製)
紫外線吸収剤2:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin329、BASFジャパン株式会社製)
紫外線吸収剤3:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(LA−31、株式会社ADEKA社製)
紫外線吸収剤4:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(Tinuvin328、BASFジャパン株式会社製)
紫外線吸収剤5:2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール(CYASORB UV−1164、CYTEC INDUSTRIES社製)
紫外線吸収剤6:2−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(Tinuvin1577、BASFジャパン株式会社製)
紫外線吸収剤7:2−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]−フェノール(LA−46、株式会社ADEKA社製)
紫外線吸収剤8:テトラ-エチル−2,2−(1,4−フェニレン-ジメチリデン)−ビスマロネート(Hostavin B−CAP、クラリアントジャパン社製)
光安定剤1:2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンステアリン(CYASORB UV−3853、CYTEC INDUSTRIES社製)
光安定剤2:ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Tinuvin770、BASFジャパン株式会社製)
光安定剤3:プロバンジオイックアシッド[{4−メトキシフェニル}メチレン]−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル(Hostavin PR−31、クラリアントジャパン社製)
光安定剤4:1、6ヘキサジアミン−N,N−ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−モルフォリン−2、4、6−トリクロロ−1、3、5−トリアジン反応物(CYASORB UV−3529、CYTEC INDUSTRIES社製)
光安定剤5:n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(CYASORB UV−2908、CYTEC INDUSTRIES社製)
酸化防止剤:トリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos168、BASFジャパン社製)
混合物1:紫外線吸収剤と光安定剤(光安定剤1)の混合物(CYASORB 7001EF、CYTEC INDUSTRIES社製)
混合物2:紫外線吸収剤(紫外線吸収剤5)と光安定剤(光安定剤4)の混合物(CYASORB THT6435、CYTEC INDUSTRIES社製)
【0090】
【表5】

【0091】
[耐熱性]
成形後の各試験片について、上記と同様の方法で測定した、熱処理前の黄色度、熱処理後の黄色度、黄色度の差について表6に示した。また、実施例1の評価結果も表1に示した。
【0092】
[耐光性]
成形後の各試験片について、上記と同様の方法で測定した、照射前の黄色度(YI)、照射後の黄色度(YI)、黄色度(YI)の差について表6に示した。また、上記と同様の方法で測定した、照射前の全光線透過率、照射後の全光線透過率を表6に示した。なお、実施例1の評価結果も表1に示した。
【表6】

【0093】
表6から、紫外線吸収剤、光安定剤を含む環状オレフィン樹脂組成物とすることで、環状オレフィン樹脂の結果と比較して、耐熱性、耐光性が向上することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位と、を含む環状オレフィン系樹脂であって、
ガラス転移温度が120℃以上であり、
前記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、
前記非環式オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の割合が、40mol%以上60mol%以下であり、
前記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位の二量体において、メソ型二連鎖部位とラセモ型二連鎖部位との比(メソ型二連鎖部位/ラセモ型二連鎖部位)が1.0以下である環状オレフィン系樹脂。
【請求項2】
環状オレフィン系成分中における前記環状オレフィン系モノマーに由来する繰り返し単位が三量体として存在する割合が10mol%以下である請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂。
【請求項3】
厚み2mmの平板での、波長520nmにおける面内の位相差が100nm以下である請求項1又は2に記載の環状オレフィン系樹脂。
【請求項4】
厚み2mmの平板での黄色度(YI値)と、115℃、1000時間の条件で処理された厚み2mmの平板での黄色度(YI値)との差が、2.5以下である請求項1から3のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂。
【請求項5】
波長300nm以上400nm以下での照射密度が162W/mのキセノンランプに、波長275nm以下の光が遮断された状態で500時間照射された厚み2mmの平板での黄色度(YI値)が10以下である請求項1から4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂。
【請求項6】
波長300nm以上400nm以下での照射密度が162W/mのキセノンランプに、波長275nm以下の光が遮断された状態で500時間照射された厚み2mmの平板での全光線透過率が80%以上である請求項1から5のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂と、紫外線吸収剤と、光安定剤と、を含む環状オレフィン樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−18962(P2013−18962A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111909(P2012−111909)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】