説明

環状同芯撚りビードコードの製造方法及び仮留め治具

【課題】容易に、低コストでバランス良く環状同芯撚りビードコードを製造することが可能な製造方法及びそれに用いられる仮留め治具を提供する。
【解決手段】環状コア11に側線12を螺旋状に巻き付ける際に、環状コア11の外径より小さいコイル内径D1iで線材62が複数回螺旋状に巻かれた第一コイル部63を一方に有し、他方に線材62が側線12の線径dsと略同じコイル内径D2iで複数回螺旋状に巻かれた第二コイル部64を有する仮留め治具61を用いて、仮留め治具61の第一コイル部63の線材62の隙間に環状コア11を介挿し、環状コア11に対して仮留め治具61を相対的に回転させ、第一コイル部63の線材62が環状コア11に巻き付いた状態として仮留め治具61を固定し、側線12の巻き付けの始端部を第二コイル部64の内側に差し込んで保持させた後、環状コア11に側線12を螺旋状かつ環状に複数周巻き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのビード部分などに埋め込まれて用いられる環状同芯撚りビードコードの製造方法及び仮留め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのビード部分に埋め込まれるビードコードは、軟鋼線の環状コア線の周囲に、コアよりも細い鋼線を巻き付けたシース層を有するものが一般的である。
この種のビードコードを製造する技術として、チャック機構でレイヤーワイヤーの先端をコアに仮留めし、コアを周方向に回転させつつ、コアの内外にボビンを公転させることによってレイヤーワイヤーをコアの外周に螺旋状に巻き付け、コアに仮留めされたレイヤーワイヤーの先端がボビンの公転位置と重なる前にチャック機構をコアから開放し、チャック機構とボビンとの干渉を回避してボビンの公転の継続を可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、鋼線の先端を芯金に固定せずに絡ませるか仮留めし、かつ自由に回転できるようにしておき、芯金より小径にベンディングして巻かれている鋼線リールの平面移動および芯金の上下作動と芯金の回転を組み合わせ、鋼線を芯金に鋼線の曲げ応力によって絡ませ、撚回応力が発生しないようにして巻き付けを行うことも知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、環状芯材に対する巻線の巻回開始に際して、芯材の外周の1箇所に取り付けられた結合部材に、巻線の始端部を挟入状態で保持させ、巻線の終端部を結合部材に対して始端部と反対側から挿入して保持させるものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−47169号公報
【特許文献2】特開2004−98640号公報
【特許文献3】特開2005−238997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の場合、コアに仮留めされたレイヤーワイヤーの先端がボビンの公転位置と重なる前にチャック機構をコアから開放し、チャック機構とボビンとの干渉を回避するという複雑な動作を行う装置を要し、設備費が嵩んでしまう。
また、特許文献2のように、単に鋼線を芯金に絡ませただけでは、鋼線が緩んでしまい、芯線への巻回が良好に行われない。
また、特許文献3の場合、巻線の始端部と終端部とを保持する結合部材を環状芯材へ取り付けるという煩雑な作業を要し、しかも、結合部材によってケーブルの重量が偏り、タイヤのバランスが崩れるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、容易に、低コストでバランス良く環状同芯撚りビードコードを製造することが可能な製造方法及びそれに用いられる仮留め治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の環状同芯撚りビードコードの製造方法は、環状コアの周りに側線を螺旋状に巻き付けて1層または複数層のシース層を形成する環状同芯撚りビードコードの製造方法であって、
前記環状コアに前記側線を螺旋状に巻き付ける際に、
前記環状コアの外径より小さいコイル内径で線材が複数回螺旋状に巻かれた第一コイル部を一方に有し、他方に前記線材が前記側線の線径と略同じコイル内径で複数回螺旋状に巻かれた第二コイル部を有する仮留め治具を用いて、
前記仮留め治具の前記第一コイル部における線材の端部とその1周隣りの線材との隙間に前記環状コアを介挿し、
前記環状コアを前記隙間から前記第二コイル部に向けて螺旋状に進ませるように、前記環状コアに対して前記仮留め治具を相対的に回転させ、前記第一コイル部の線材が前記環状コアに巻き付いた状態として仮留め治具を固定し、
前記側線の巻き付けの始端部を前記第二コイル部の内側に差し込んで保持させた後、
前記環状コアに前記側線を螺旋状かつ環状に複数周巻き付けることを特徴とする。
【0008】
この環状同芯撚りビードコードの製造方法によれば、環状コアに側線を螺旋状に巻き付ける際に、仮留め治具における第一コイル部の線材間の隙間に環状コアを介挿してその隙間を螺旋状に進ませると、第一コイル部の線材が環状コアに巻き付いた状態となる。第一コイル部は環状コアの外径より小さいコイル内径で螺旋状に形成されているので、環状コアに巻き付いた状態では環状コアを締め付けて、その締め付け力により仮留め治具は環状コアに対して固定される。さらに、側線の線径と略同じコイル内径で螺旋状に形成された第二コイル部に、側線の巻き付けの始端部を差し込むと、その差し込んだ部分が第二コイル部により保持される。これにより、側線の始端部を環状コアに対して容易に仮留めさせることができる。仮留めした後は、側線を環状コアの周りに螺旋状かつ環状に複数周巻き付ける。側線の巻き付け後は、側線の始端と終端とを連結することにより、高価な装置を用いることなく、重量バランスの良い環状同芯撚りビードコードを低コストで且つ容易に製造することができる。
なお、本発明において、「環状コアに側線を螺旋状に巻き付ける」とは、「環状コアの周りに既にシース層を有する中間環状コアに側線を螺旋状に巻き付ける」ことも含む。
また、「環状コアの外径」とは、環状コアが単線からなる場合はその線径であり、環状コアが撚線構造である場合はその撚線構造の外径である。
【0009】
本発明の環状同芯撚りビードコードの製造方法において、前記環状コアに前記側線を巻き付けた後、
前記環状コア及び前記側線から前記仮留め治具を引き出して除去することが好ましい。
側線の巻き付け後に仮留め治具を引っ張ることで、側線の巻き付けの始端部から第二コイル部を引き抜き、環状コアから第一コイル部を引き抜くことができ、これにより、ビードコードから仮留め治具を除去して、より重量バランスの良い環状同芯撚りビードコードを得ることができる。
【0010】
本発明の環状同芯撚りビードコードの製造方法において、前記線材の線径が0.20mm以上0.80mm以下であり、前記側線の線径が前記線材の線径の7倍以下であることが好ましい。
仮留め治具の線材の線径が0.20mm未満では、環状コアに固定するための剛性が得られにくく、0.80mmを越えると仮留め治具を固定した箇所で環状コアが局所的に増径し、側線の巻き付け成形性に支障が生じるとともに、剛性が高くなるため側線の巻き付け後に仮留め治具を引き出して除去することが困難となる。また、側線の線径が仮留め治具の線材の線径の7倍を越えると、すなわち仮留め治具が側線より7分の1未満の細さになると、側線の位置を固定するための十分な剛性を得ることが難しくなり、側線の位置を固定しにくくなる。
【0011】
本発明の環状同芯撚りビードコードの製造方法において、前記第一コイル部は、コイル内径が前記環状コアの外径の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間が前記環状コアの線径の0.95倍以上であり、
前記第二コイル部は、コイル内径が前記側線の線径の0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間が前記側線の線径の0.95倍以上であることが好ましい。
第一コイル部は、側線を巻き付ける際に環状コアに対してその位置を固定しておく必要があり、そのコイル内径を環状コアの外径の0.98倍以下とすることで、環状コアに対する十分な締め付け力を得ることができる。一方、第一コイル部のコイル内径が環状コアの線径の0.80倍未満となると環状コアに対してコイル内径が小さすぎてしまい、第一コイル部における線材同士の隙間から環状コアを入れていくことが難しくなる。また、第一コイル部の巻き周回数が少なくとも3回であると、環状コアへの安定した固定力が得られる。なお、第一コイル部のコイル巻き周回数が少ないほど、環状コアへの第一コイル部の装着の際、環状コアと仮留め治具を相対的に回転させる回数が少なくなるので、好ましい。また、螺旋部コイル間隙間が環状コアの外径の0.95倍以上であると、環状コアを螺旋状の隙間に沿って回転させるときの抵抗が大きくなりすぎず、作業性がよい。
第二コイル部は、環状コアより細い側線1本を保持すればよいので、そのコイル内径は側線の線径と略同等(0.98倍以上1.01倍以下)として、側線をその端部から差し込んで保持できるようにすればよい。また、第二コイル部の内径は側線の線径と略同等であるので、側線を安定して保持するためには、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間が側線の線径の0.95倍以上であるとよい。
【0012】
また、本発明の仮留め治具は、上記の環状同芯撚りビードコードの製造方法で用いられる仮留め治具であって、
前記環状コアの外径より小さいコイル内径で線材が複数回螺旋状に巻かれた第一コイル部を一方に有し、他方に前記線材が前記側線の線径と略同じコイル内径で複数回螺旋状に巻かれた第二コイル部を有することを特徴とする。
【0013】
この仮留め治具によれば、環状コアに対して固定される第一コイル部と、側線を保持する第二コイル部とからなる簡易な構造であるので、低コスト化を図りつつ、環状コアに対して側線を容易に仮留めさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の環状同芯撚りビードコードの製造方法によれば、環状コアに側線を螺旋状に巻き付ける際に、仮留め治具の第一コイル部を環状コアに容易に固定でき、さらに仮留め治具の第二コイル部に側線を差し込むことで、側線の始端部を環状コアに対して容易に仮留めさせることができる。仮留めした後は、側線を環状コアの周りに螺旋状かつ環状に複数周巻き付け、その後、側線の始端と終端とを連結することにより、高価な装置を用いることなく、重量バランスの良い環状同芯撚りビードコードを低コストで且つ容易に製造することができる。
【0015】
また、本発明の仮留め治具によれば、径の異なる2つのコイル部からなる簡易な構造により、低コスト化を図りつつ、環状コアに対して側線を容易に仮留めさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車両用タイヤの断面図である。
【図2】(a)はビードコードの全体図、(b)はビードコードの部分を示す斜視図である。
【図3】環状コアを振り子運動させる環状同芯撚りビードコードの製造装置を示す概念図である。
【図4】図3の装置の振り子運動の状態を示す概念図である。
【図5】(a)は仮留めに用いる仮留め治具の側面図、(b)は仮留め治具の正面図である。
【図6】(a),(b),(c)はそれぞれ環状コアへの側線の始端部の仮留めの仕方を説明する概略図である。
【図7】図5とは別の仮留め治具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る環状同芯撚りビードコードの製造方法及び仮留め治具の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は車両用タイヤの断面図、図2(a)はビードコードの全体図、図2(b)はビードコードの部分を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、車両用タイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤであって、ビードコード(環状同芯撚りビードコード)2が通る両側のビード部3と各ビード部3からタイヤ半径方向外向きにのびるサイドウォール部4と、その上端間を継ぐトレッド部5とを備える。
また、ビード部3間にカーカス6が掛け渡されるとともに、このカーカス6の外側かつトレッド部5の内方にはベルト層7が周方向に巻装されている。
【0019】
上記の車両用タイヤ1のビード部3に通されたビードコード2は、図2(a),(b)に示すように、1本の側線(単素線)12を用意し、この側線12を、環状コア11の周囲に、複数周回(本例では7周)巻き付けてシース層13を構成している。側線12は、環状コア11の輪の外側から輪の中へ通され、再び輪の外側から輪の中へ通されることにより、環状コア11に所定の巻き付けピッチにて螺旋状に巻き付けられている。なお、本例では、1層のシース層13を有する場合を例示している。
【0020】
環状コア11は、1本のワイヤを環状に曲げて、その両端面同士を溶接により接合したものである。この場合、環状コア11のワイヤ同士の接合部分の増径を生じさせることなく、簡単に接合させることができる。
【0021】
環状コア11は、合金鋼ワイヤからなるもので、その材質は、0.08〜0.27質量%の炭素(C)、0.30〜2.00質量%のケイ素(Si)、0.50〜2.00質量%のマンガン(Mn)及び0.20〜2.00質量%のクロム(Cr)を含み、かつアルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)がそれぞれ0.001〜0.100質量%の範囲で少なくとも1種以上含有し、残部が鉄(Fe)及び不可避的に混入してくる不純物からなる合金鋼である。このような組成であれば、合金鋼ワイヤを環状に形成して環状コア11とする際の両端の溶接部における延性低下抑制効果を得ることができる。
【0022】
また、環状コア11は、炭素(C)を0.28〜0.56質量%含む中炭素鋼ワイヤで形成されていてもよい。このような材質のワイヤを用いても、接合部の溶接性が高くなるため、環状コア11として必要とされる強度を確保することができる。また、環状コア11の表面には、銅合金(例えば、真鍮)または亜鉛のめっき処理が施されていてもよい。
【0023】
側線12は、例えば、炭素(C)を0.7質量%以上含む高炭素鋼ワイヤからなるものである。なお、側線12は、時効硬化が起こる加工が施された高炭素鋼からなることが好ましい。また、側線12の表面には、銅合金(例えば、真鍮)または亜鉛のめっき処理が施されていてもよい。
【0024】
環状コア11を構成するワイヤの直径(線径)は、側線12のワイヤの直径(線径)以上であることが好ましく、例えば、環状コア11のワイヤの直径は1.8mmであり、側線12のワイヤの直径は、1.4mmである。
【0025】
次に、上記の環状同芯撚りビードコードを製造する方法について説明する。
図3は環状コアを振り子運動させる環状同芯撚りビードコードの製造装置を示す概念図、図4は図3の装置の振り子運動の状態を示す概念図、図5(a),(b)は仮留めに用いる仮留め治具の側面図及び正面図、図6(a),(b),(c)はそれぞれ環状コアへの側線の仮留めの仕方を説明する概略図である。
【0026】
図3及び図4に示す製造装置は、環状コア11を周方向に回転させるドライビングユニット30と、リール33に巻かれた側線12を環状コア11の巻き付け部に供給する側線12のサプライ部41とを有する。
【0027】
ドライビングユニット30は、弓形の保持アーム31に設置され、駆動モータと連結された、環状コア11を周方向に回転させる2つのピンチローラ32a,32bを有する。
【0028】
上記保持アーム31には、側線12の供給側に、クランプユニット40を設けている。このクランプユニット40は、2個のローラ40a,40bからなり、環状コア11の横方向の振れを防止し、安定した周方向回転を維持し、側線12の巻き付け点の位置決めを行い、高い巻き付け性を得ている。なお、この例では環状コア11を垂直にして横振れを抑えて、周方向に回転させている。
【0029】
保持アーム31は、クランプユニット40の部分を支点にして、回転円盤42とクランクシャフト43からなる揺動機構50によって振り子運動するように、スタンド44に揺動可能に設置されている。
【0030】
保持アーム31に保持された環状コア11は、振り子運動の周期の一端で、リール33が、環状コア11の輪の外に位置し、環状コア11の振り子運動の周期の他端で、環状コア11の輪の中に位置するようにスイングする。
【0031】
側線12のサプライ部41には、前後一対の対向するカセットスタンド52が、保持アーム31に保持された環状コア11の振り子運動を妨げない距離をおいて水平に設置され、カセットスタンド52の先端に、環状コア11の面を挟んで対向するリール受け渡し機構が設けられている。
【0032】
サプライ部41は、側線12を巻き取ったリール33と、このリール33の外径より少し大きい径で、且つ少なくともリール内幅に相当する円筒形状の外周壁を有するカセット53とからなる。リール33は、側線12の巻き面全体を被うようにカセット53内に回転可能に収容され、所謂カートリッジ化されている。
【0033】
上記のように構成された装置を用いて環状コア11に側線12を螺旋状に巻き付けてビードコード2を製造する場合、まず、側線12の始端部を、保持アーム31に設置した環状コア11に仮留めする。
仮留めを行うには、図5に示す仮留め治具61を使用する。仮留め治具61は、1本の細径の線材62からなり、線材62が複数回螺旋状に巻かれた第一コイル部63と、第一コイル部63より小さいコイル径で線材62が複数回螺旋状に巻かれた第二コイル部64とを有する。第一コイル部63のコイル内径D1iは、環状コア11の外径(線径)より小さく形成され、第二コイル部64のコイル内径D2iは、側線12の線径と略同じになるように形成されている。なお、本実施形態では、図5(b)に示すように第一コイル部63のコイル中心軸と第二コイル部64のコイル中心軸とが一致するように形成されている。
仮留め治具61の線材62は、例えば、炭素(C)を0.6質量%以上含む高炭素鋼ワイヤからなるものである。または、ピアノ線等を使用することもできる。
【0034】
このような仮留め治具61を用いて仮留めを行うには、まず、図6(a)に示すように、仮留め治具61の第一コイル部63における線材62の端部62aとその1周隣りの線材62bとの隙間に環状コア11を介挿する。そして、環状コア11をその隙間から第二コイル部64に向けて螺旋状に進ませるように、環状コア11に対して仮留め治具を矢印A方向に回転させる。第一コイル部63のコイル巻き周回数分回転させると、図6(b)に示すように、第一コイル部63の線材12が環状コア11に巻き付いた状態になる。
【0035】
第一コイル部63のコイル内径D1iは、環状コア11の外径より小さく形成されているので、図6(b)のように環状コア11に巻き付いた状態では環状コア11を締め付けて、その締め付け力により仮留め治具61は環状コア11に対して固定される。
【0036】
第一コイル部63は、側線12を巻き付ける際に環状コア11に対してその位置がずれないように固定しておく必要があり、そのコイル内径D1iを環状コア11の外径の0.98倍以下とすることで、環状コア11に対する十分な締め付け力を得ることができる。一方、第一コイル部63のコイル内径D1iが環状コア11の外径の0.80倍未満であると環状コア11に対してコイル内径D1iが小さすぎてしまい、第一コイル部63における線材62同士の隙間から環状コア11を入れていくことが難しくなる。そのため、コイル内径D1iを環状コア11の外径の0.80倍以上とすることが好ましい。
【0037】
また、第一コイル部63の巻き周回数が少なくとも3回であると、環状コア11への安定した固定力が得られる。なお、第一コイル部63のコイル巻き周回数が少ないほど、環状コア11への第一コイル部63の装着の際、環状コア11と仮留め治具61を相対的に回転させる回数が少なくなるので、好ましい。また、第一コイル部63の螺旋部コイル間隙間S1(図5参照)が環状コア11の外径の0.95倍以上であると、環状コア11を螺旋状の隙間に沿って回転させるときの抵抗が大きくなりすぎず、仮留め治具61を環状コア11に取り付けるときの作業性がよい。
【0038】
また、仮留め治具61を環状コア11に固定するための剛性を確保するには、仮留め治具61の線材12の線径dcが0.20mm以上であるとよい。
【0039】
図6(b)のように仮留め治具61を環状コア11に固定した後、側線12の巻き付けの始端部を第二コイル部64の内側に差し込む。第二コイル部64のコイル内径D2i(図5参照)は、側線12の線径と略同じであるので、第二コイル部64に側線12を差し込むことで、側線12は第二コイル部64内に保持される。また、図5(a)に示すように、第二コイル部64の開放端側(図中右側)のコイル内径が少し広がっていると、側線12を差し込みやすくなる。
【0040】
第二コイル部64は、環状コア11より細い1本の側線12を保持すればよいので、そのコイル内径D2iは側線12の線径と略同等(0.98倍以上1.01倍以下)として、側線12をその端部から差し込んで保持できるようにすればよい。コイル内径D2iが側線12の線径と略同等であれば、保持した側線12に張力が作用しても、側線12と第二コイル部64との間で摩擦が生じて第二コイル部64がそのコイル軸方向に引き伸ばされるように、すなわち第二コイル部64の内径が小さくなるように変形しようとするので、それにより内側の側線12を保持する力が大きくなり、側線12を保持することができる。また、第二コイル部64の内径D2iは側線12の線径と略同等であるので、側線12を安定して保持するためには、巻き周回数を少なくとも5回として、螺旋部コイル間隙間S2(図5参照)を側線12の線径の0.95倍以上とするとよい。
【0041】
仮留め治具61の線材62の線径が0.80mmを越えると、仮留め治具61を固定した箇所で環状コア11が局所的に増径し、側線12を巻き付ける際の成形性に支障が生じる。また、仮留め治具61の剛性が高くなるため側線12の巻き付け後に仮留め治具61を引き出して除去することが困難となる。そのため、線材62の線径は0.80mm以下であることが好ましい。
また、仮留め治具61の線材62の線径dcが側線12の線径dsより7分の1未満の細さになると、側線12の位置を固定するための十分な剛性を得ることが難しくなり、側線12の位置を固定しにくくなる。そのため、側線12の線径dsが線材62の線径dcの7倍以下であること(すなわち7.0≧ds/dcを満たすこと)が好ましい。
【0042】
図6(c)のように側線12の巻き付けの始端部を第二コイル部64の内側に差し込んで保持させ、側線12を仮留めしたら、図3及び図4に示した製造装置におけるサプライ部41のリール33を、所定位置で環状コア11を含む平面であるコア面を横断往復させ、環状コア11を、側線12の巻き付け点となるクランプユニット40を支点にして、振り子運動させる。
【0043】
これにより、リール33から側線12の巻き付け点までの距離をほぼ一定に保ち、巻き付けの際に、リール33から引き出される側線12が緩んだりせず、一定の張力で側線12が環状コア11に螺旋状に巻き付けられる。
【0044】
そして、連続して所定回数巻き付けたら、環状コア11に側線12を仮留めしていた仮留め治具61を取り外し、側線12の始端と終端とを図示略の金属製スリーブなどによって連結固定する。
このようにすると、環状コア11の周囲に、側線12が螺旋状に巻き付けられたシース層13を有するビードコード2が得られる。
【0045】
環状コア11及び側線12から仮留め治具61を取り外すには、仮留め治具61の線材62の一部を摘んで、強く引き出して除去すればよい。側線12の巻き付け後に仮留め治具61を引っ張ることで、仮留め治具61を弾性変形させつつ、側線12の巻き付けの始端部から第二コイル部64を引き抜き、環状コア11から第一コイル部63を引き抜くことができる。特に、仮留め治具61の線材62の線径が0.80mm以下であれば、剛性が適度に抑えられるので、弾性変形させて引き出しやすい。
【0046】
このように、上記環状同芯撚りビードコードの製造方法によれば、環状コア11に側線12を螺旋状に巻き付ける際に、仮留め治具61における第一コイル部63の線材62間の隙間に環状コア11を介挿してその隙間を螺旋状に進ませると、第一コイル部63の線材62が環状コアに巻き付いた状態となり、仮留め治具61は環状コア11に対して固定される。さらに、第二コイル部64に側線12の巻き付けの始端部を差し込むと、その差し込んだ部分が第二コイル部64により保持される。これにより、側線12の始端部を環状コア11に対して容易に仮留めさせることができる。仮留めした後は、側線を環状コアの周りに螺旋状かつ環状に複数周巻き付け、その後は、側線12の始端と終端とを連結することにより、高価な装置を用いることなく、重量バランスの良い環状同芯撚りビードコード2を低コストで且つ容易に製造することができる。
【0047】
また、上記の環状同芯撚りビードコード2の製造に用いる仮留め治具61によれば、環状コア11に対して固定される第一コイル部63と、側線12を保持する第二コイル部64とからなる簡易な構造であるので、低コスト化を図りつつ、環状コア11に対して側線12を容易に仮留めさせることができる。
【0048】
また、仮留め治具61は、図5に示した形態に限らない。例えば、図7(a)に示すように、第一コイル部63のコイル中心軸と第二コイル部64のコイル中心軸とが一致しない形態や、図7(b)に示すように、第一コイル部63のコイル円の外側に第二コイル部64が配置される形態も採用できる。なお、図5及び図7(a)の形態では、第一コイル部63と第二コイル部64の線材の巻き方向が同じであるが、図7(b)の形態では逆であり、本発明において仮留め治具における線材の巻き方向は適宜変更可能である。
【0049】
また、2層以上のシース層を形成する場合には、上記の環状同芯撚りビードコード2を中間環状コアとして、さらにその周りに、側線を螺旋状に巻き付ける。その場合、仮留め治具の第一コイル部が環状同芯撚りビードコード2に対応したコイル径及び螺旋ピッチを有するものを用いることで、1層目のシース層を形成する場合と同様の方法で、2層目以降のシース層を形成することができる。
【実施例】
【0050】
種々の条件で1層または2層のシース層を有する環状同芯撚りビードコードを作製し、仮留め治具を用いた側線巻き付け時の作業性について評価を行った。
【0051】
(1−1)1×1.8+7×1.4の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
外径(線径)1.8mmの環状コアの周囲に線径1.4mmの側線を7周巻き付けてシース層とした。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.399mm(ds/dc=3.5)
コイル内径D1i:1.71mm
螺旋ピッチP1:2.3mm
螺旋部コイル間隙間S1:1.901mm
巻き周回数n1:4
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.399mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:1.39mm
螺旋ピッチP2:1.8mm
螺旋部コイル間隙間S2:1.401mm
巻き周回数n2:9
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.20mm以上0.80mm以下であり、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以下である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが環状コアの外径の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、側線を保持した位置がずれることなく、巻き付け後の仮留め治具の除去もスムースに行うことができた。
【0052】
(1−2)1×1.8+(7+13)×1.4の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
前記(1−1)にて作製したビードコードを中間環状コアとして、さらにその周りに、線径1.4mmの側線を13周巻き付けて2層目のシース層を形成した。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.399mm(ds/dc=3.5)
コイル内径D1i:4.36mm
螺旋ピッチP1:4.8mm
螺旋部コイル間隙間S1:4.401mm
巻き周回数n1:4
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.399mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:1.39mm
螺旋ピッチP2:1.8mm
螺旋部コイル間隙間S2:1.401mm
巻き周回数n2:9
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.20mm以上0.80mm以下であり、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以下である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが中間環状コアの外径(4.6mm)の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が中間環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、側線を保持した位置がずれることなく、巻き付け後の仮留め治具の除去もスムースに行うことができた。
【0053】
前記(1−2)にて作製したビードコードを中間環状コアとして、3層目以降のシース層の形成も可能であり、例えば5層目まで問題なく形成することができた。
【0054】
(2−1)1×1.8+7×1.4の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
線径1.8mmの環状コアの周囲に線径1.4mmの側線を7周巻き付けてシース層とした。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.197mm(ds/dc=7.1)
コイル内径D1i:1.69mm
螺旋ピッチP1:2.0mm
螺旋部コイル間隙間S1:1.803mm
巻き周回数n1:6
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.197mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:1.39mm
螺旋ピッチP2:1.6mm
螺旋部コイル間隙間S2:1.403mm
巻き周回数n2:10
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.20mm未満であり、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以上である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが環状コアの外径の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、巻き付ける途中で側線を保持した位置が大きく振動して揺れたものの、巻き付けは行うことができた。位置がずれた原因は、線材径dcが細いために第一コイル部の巻き付け強さが不十分であったことが考えられる。
【0055】
(2−2)1×1.8+(7+13)×1.4の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
前記(2−1)にて作製したビードコードを中間環状コアとして、さらにその周りに、線径1.4mmの側線を13周巻き付けて2層目のシース層を形成した。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.91mm(ds/dc=1.5)
コイル内径D1i:4.41mm
螺旋ピッチP1:5.6mm
螺旋部コイル間隙間S1:4.69mm
巻き周回数n1:3
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.91mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:1.41mm
螺旋ピッチP2:2.4mm
螺旋部コイル間隙間S2:1.49mm
巻き周回数n2:8
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.80mmより大きく、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以下である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが中間環状コアの外径(4.6mm)の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が中間環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、側線を保持した位置がずれることはなかったが、仮留め治具の剛性が必要以上に大きく、巻き付け後の仮留め治具の除去に時間を要した。
【0056】
(3−1)1×3.0+7×2.2の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
線径3.0mmの環状コアの周囲に線径2.2mmの側線を7周巻き付けてシース層とした。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.799mm(ds/dc=2.75)
コイル内径D1i:2.88mm
螺旋ピッチP1:3.7mm
螺旋部コイル間隙間S1:2.901mm
巻き周回数n1:3
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.799mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:2.21mm
螺旋ピッチP2:3.0mm
螺旋部コイル間隙間S2:2.201mm
巻き周回数n2:7
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.20mm以上0.80mm以下であり、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以下である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが環状コアの外径の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺部コイル間隙間S1が環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、側線を保持した位置がずれることなく、巻き付け後の仮留め治具の除去もスムースに行うことができた。
【0057】
(3−2)1×3.0+(7+13)×2.2の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
前記(3−1)にて作製したビードコードを中間環状コアとして、さらにその周りに、線径2.2mmの側線を13周巻き付けて2層目のシース層を形成した。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.349mm(ds/dc=6.3)
コイル内径D1i:6.99mm
螺旋ピッチP1:7.5mm
螺旋部コイル間隙間S1:7.151mm
巻き周回数n1:6
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.349mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:2.18mm
螺旋ピッチP2:2.5mm
螺旋部コイル間隙間S2:2.151mm
巻き周回数n2:7
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.20mm以上0.80mm以下であり、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以下である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが中間環状コアの外径(7.4mm)の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が中間環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、側線を保持した位置がずれることなく、巻き付け後の仮留め治具の除去もスムースに行うことができた。
【0058】
(4−1)1×3.0+7×2.2の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
線径3.0mmの環状コアの周囲に線径2.2mmの側線を7周巻き付けてシース層とした。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.301mm(ds/dc=7.3)
コイル内径D1i:2.82mm
螺旋ピッチP1:3.3mm
螺旋部コイル間隙間S1:2.999mm
巻き周回数n1:7
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.301mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:2.19mm
螺旋ピッチP2:2.5mm
螺旋部コイル間隙間S2:2.199mm
巻き周回数n2:10
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.20mm以上0.80mm以下であり、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以上である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが環状コアの外径の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、巻き付ける途中で側線を保持した位置が大きく振動して揺れたものの、巻き付けは行うことができた。位置がずれた原因は、側線径と比較して線材径dcが細いために第一コイル部の巻き付け強さが不十分であり、側線径が大きい分、質量も大きいことが考えられる。
【0059】
(4−2)1×3.0+(7+13)×2.2の撚り構造を有する環状同芯撚りビードコード
前記(4−1)にて作製したビードコードを中間環状コアとして、さらにその周りに、線径2.2mmの側線を13周巻き付けて2層目のシース層を形成した。図5に示す仮留め治具において、第一コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.899mm(ds/dc=2.45)
コイル内径D1i:7.16mm
螺旋ピッチP1:8.0mm
螺旋部コイル間隙間S1:7.101mm
巻き周回数n1:3
また、第二コイル部の形状は次の通りである。
線材径dc:直径0.899mm(第一コイル部と同じ)
コイル内径D2i:2.19mm
螺旋ピッチP2:3.0mm
螺旋部コイル間隙間S2:2.101mm
巻き周回数n2:7
この仮留め治具では、線材の線径dcが0.80mmより大きく、側線の線径dsが線材の線径dcの7倍以下である。また、第一コイル部は、コイル内径D1iが中間環状コアの外径(7.4mm)の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数n1が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間S1が中間環状コアの外径の0.95倍以上であり、第二コイル部は、コイル内径D2iが側線の線径dsの0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間S2が側線の線径dsの0.95倍以上である。
図3及び図4に示す装置により側線を巻き付けた時、側線を保持した位置がずれることはなかったが、仮留め治具の剛性が必要以上に大きく、巻き付け後の仮留め治具の除去に時間を要した。
【符号の説明】
【0060】
2:環状同芯撚りビードコード、11:環状コア、12:側線、13:シース層、61:仮留め治具、62:線材、63:第一コイル部、64:第二コイル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状コアの周りに側線を螺旋状に巻き付けて1層または複数層のシース層を形成する環状同芯撚りビードコードの製造方法であって、
前記環状コアに前記側線を螺旋状に巻き付ける際に、
前記環状コアの外径より小さいコイル内径で線材が複数回螺旋状に巻かれた第一コイル部を一方に有し、他方に前記線材が前記側線の線径と略同じコイル内径で複数回螺旋状に巻かれた第二コイル部を有する仮留め治具を用いて、
前記仮留め治具の前記第一コイル部における線材の端部とその1周隣りの線材との隙間に前記環状コアを介挿し、
前記環状コアを前記隙間から前記第二コイル部に向けて螺旋状に進ませるように、前記環状コアに対して前記仮留め治具を相対的に回転させ、前記第一コイル部の線材が前記環状コアに巻き付いた状態として仮留め治具を固定し、
前記側線の巻き付けの始端部を前記第二コイル部の内側に差し込んで保持させた後、
前記環状コアに前記側線を螺旋状かつ環状に複数周巻き付けることを特徴とする環状同芯撚りビードコードの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の環状同芯撚りビードコードの製造方法であって、
前記環状コアに前記側線を巻き付けた後、
前記環状コア及び前記側線から前記仮留め治具を引き出して除去することを特徴とする環状同芯撚りビードコードの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状同芯撚りビードコードの製造方法であって、
前記線材の線径が0.20mm以上0.80mm以下であり、前記側線の線径が前記線材の線径の7倍以下であることを特徴とする環状同芯撚りビードコードの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の環状同芯撚りビードコードの製造方法であって、
前記第一コイル部は、コイル内径が前記環状コアの外径の0.80倍以上0.98倍以下であり、巻き周回数が少なくとも3回であり、螺旋部コイル間隙間が前記環状コアの外径の0.95倍以上であり、
前記第二コイル部は、コイル内径が前記側線の線径の0.98倍以上1.01倍以下であり、巻き周回数が少なくとも5回であり、螺旋部コイル間隙間が前記側線の線径の0.95倍以上であることを特徴とする環状同芯撚りビードコードの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の環状同芯撚りビードコードの製造方法で用いられる仮留め治具であって、
前記環状コアの外径より小さいコイル内径で線材が複数回螺旋状に巻かれた第一コイル部を一方に有し、他方に前記線材が前記側線の線径と略同じコイル内径で複数回螺旋状に巻かれた第二コイル部を有することを特徴とする仮留め治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161675(P2011−161675A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24336(P2010−24336)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(504211429)栃木住友電工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】