説明

環状高分子有機化合物の包接錯体及びその重合

本発明は、一般式AxBy(式中、不飽和ビニルのXユニットを含有するモノマーであり、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物である)で表される、多様な不飽和を持つモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体に関し、更に前記包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式A(式中、モノマーは不飽和ビニルのXユニットを含有し、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物である)で表される、多様な不飽和を有するモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体に関し、更に前記包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリマーは、2つのカテゴリー、即ち溶融及び溶解挙動によって、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーに分類されてきた。熱可塑性ポリマーは可逆的に、加熱すると溶融状態に変わり、冷却すると固体状態に戻る。この特性は、ポリマーを種々の成形品、例えばフィルム、シート、ロッド及びその他の成形製品、に成形するのに利用される。また、熱可塑性ポリマーは、溶剤に可溶性であり、溶液キャスティング及び溶剤蒸発によりフィルムに転化できる。対照的に、熱硬化性製品は、溶融状態に転化できない又は溶剤に溶解できない。熱硬化性材料は、熱可塑性ポリマーより高度の機械的及び熱的特性を発現するけれども、熱可塑性ポリマーの場合に広く使用されている加工技術を使って最終製品に容易に加工できない。同様に、重合が完結するとポリマー構造を化学的に改質する余地がないので、樹脂を最終製品に転化した後に熱可塑性ポリマーの特性を大幅に高めることはできない。
【0003】
フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂のような二・三の事例では、2段階法が適用され、その場合、重合は、先ず、ポリマーが融解されて溶融状態になれる、又は溶剤に溶解できる段階に止め、次いで、更に架橋されて機械的及び熱的特性が高られた不融解、不溶解の製品になる。
【0004】
反応性基を含有する熱硬化性ポリマーは、塗料として使用される。これらのポリマーは、熱的に、又はイソシアネート、アミン若しくは金属イオンのような官能基の付加による、のどちらかにより更に架橋される格子の形であるのが普通である。網目の形成により、これらの樹脂には、これらの所望の特性、即ち、大半の有機溶剤に不溶解、優れた耐水性及び硬度が得られる(“ヴァン・イー・エス・ジェイ・ジェイ、ポリメリック・ディスパージョンズ(Van E.S.J.J. in Polymeric Dispersions):原理と応用(Priciples and Applications)”の著作の中にある、アスア・ジェイ・エム(Asua,J.M)(編集),クルヴェール(Kluwer)出版社,1997年,p.451);(オオカ、エム(Oaka,M.),オザワ、エッチ(Ozawa,H.)、“プログレス・イン・オーガニック・コーティングズ(Progress in Organic Coatings)”、1994年.第23巻, ,p.325)。シンナモイル又はアゾタイプのような感光性基は、熱的ラジカル重合を行なわずに、UV照射により重合され得る。これらの官能基を含有するポリマーは、UV光線に曝露することにより硬化できる(ミュラー・エッチ、(Mueller,H.),ミュラー・ティー(Mueller,T.),ノイケン・オー(Nuyken,O.)、“マクロモレキュラー・化学速報(Makromolecular.Chem.Rapid.Communications)”,1992年,第13巻,p.289);ラーンビー・ビー(Raanby,B.),“カレント・トレンズ・イン・ポリマー・フォトケミストリー(Current Trends in Polymer Photochemistry)”の著作の中にある、ノルマン(Norman)、アレン(Allen)、(編集)、英国、ロンドン、1995年,p.23)。これらの材料は非線形光学素子用に使用できる。
【0005】
不飽和ポリエステルの場合、不飽和部位を含有するポリエステル樹脂は、酸成分として無水マレイン酸及び/又はフマール酸を使い縮合重合により製造できる。スチレン、メチルメタクリレート、アリルアクリレート等のような別のビニルモノマーで稀釈された樹脂は、所望の形にキャスティングされたのち、更にラジカル開始剤及び促進剤/活性剤の存在で重合して架橋製品にされる。これらの樹脂は、一般的に電気及び自動車産業で使用されているが、これらの樹脂の用途は限定されている。スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド等のような多数のモノマーが、通常のラジカル重合方法によって重合されると、溶剤可溶性、溶融性、融解性樹脂となり、次いで、これは所望の製品に転化され得る。
【0006】
しかし、前述のように、これらの製品は、構造体の中に潜在的に重合可能な部位が存在しないので、引き続いて不溶性、不融解性製品に変換できない。一方、多様な不飽和部位を含有するするモノマー、即ちエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、を持つこれらのモノマーの重合では、有用な形に更に転化できない三次元架橋生成物が生成する、と言うのは、この生成物は溶剤に溶解もせず加熱によっても溶融状態に転化しないからである。
【0007】
溶剤に可溶で熱的に融解するポリマーであり、そして高度の機械的/熱的/耐溶剤特性を有する製品に転化できるポリマーに対するニーズは、エレクトロニクス、フォトレジスト、徐放性薬剤供給システム、微小電子機械システム(MEMS)等の分野でのポリマーの増大する適用と共に高まりつつある。
【0008】
射出可能なポリマーを主成分とするセラミックスは、高温MEMSの製造用に益々検討されつつある。(リュー・エル・エイ(Liew,L,A);ザーング・ダブリュー・エル(Zhang,W.L):ブレイト・ヴイ・エム(Bright,V.M).リナン・エイ(Linan,A.),ダン・エム・エル(Dunn,M.L.)ラー・アール(Raj,R.);“センサーズ・アンド・アクチュエーターズ(Sensors and Actuators)”A. 2001年,第89巻,p.64)。ポリマー前駆体は、ソフトリソグラフィーを使い高性能セラミックの微細構造体へ転化される(ヤング・エッチ(Yang,H);デシャテレクツ・ピー(Deschatelects,P);ブリテイン・エス・ティー(Brittain,S.T)及びホワイトサイデス・ジー・エム( Whitesides,G.M.),“アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)”,2001年,第13巻,p.54)。従って、MEMSデバイスの用途向けにポリマーの特性の手際よい処理を促進する方法論を開発するニーズが存在すると言うことになる。
【0009】
微小立体リソグラフィープロセスでは、三次元微細構造は、液体モノマーを凝固することによって構成される、例えば、Zhang等は、微小立体リソグラフィープロセスを使ってミクロギアーを製造した(ザーング・エックス(Zhang,X);ジュアング・エックス・エヌ(Juang,X.N.),サン・シー(Sun,C.)、“センサーズ・アンド・アクチュエーターズ(Sensors and Actuators)”A. 1999年,第77巻p.149)。ミクロ流体デバイスでは、ポリマーは、汎用性、及びガラスより優れた加工容易性を発現する(サパー・エス・エイ(Saper,S.A.),;フォード・エス・エイ(Ford,S.A.),キー・エス(Qi,S.)マッカレー・アール・エル(McCarley,R.L.),ケレイー・ケイ(Kelly,K.)及びマーフィー・エム・シー(Murphy,M.C.),“分析化学(Analytical Chemistry)”,2000年,第72号,p.643A)。
【0010】
次に、徐放性薬剤供給システム分野では、被膜を提供するためにポリマー溶液又は分散液で被覆された薬剤は、被覆された層からの薬剤の透過に対するバリヤーを形成し、要するに、このデバイスからの薬剤の放出速度を操作するように架橋される。
【0011】
ナノ粒子は、医用、機械及び電子産業用途で使用される材料に対する重要な構成単位を占める(シャー・ワイ(Xia,Y.),ゲイツ・ビー(Gates,B.),イン・ワイ(Yin,Y);ルー・ワイ(Lu,Y.), “アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)”,2000年,第12巻,p.693)。マッケレイズ(Meccrreyes)等は、稀薄溶液の中でポリマーの自己架橋によるナノ粒子を合成した。この手法では、アクリレート/メタクリレート側基がポリマー主鎖上に発生され、続いて、重合されると自己架橋ポリマー粒子が生成した(マッケレイズ・ディー(Meccereyes,D.),レー・ヴイ(Lee,V.),ホーカー・シー・ジェイ(Hawker,C.J.),ヘドリック・ジェイ・エル(Hedrick,J.L);ウルシュ・エイ(Wursch,A);フォルクセン・ヴイ(Volksen,V);マグビタング・ティ(Magbitang,T);ハング・イー(Huang,E.),ミラー・アール・ディ(Miller,R.D.), “アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)”,2001年,第13巻,p.204)。
【0012】
なお別の研究では、ウーレイ(Wooley)(ウーレイ・ケイ・エル(Wooley,K.L.),“ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、エイ、ポリマー・ケミストリー(J Polym.Sci.A.,Polymer Chemistry)”,2000年,第38巻,p.1397)は、ポリマーをミセル集合体に組織化したのち、ミセル内架橋を形成することによりシェル架橋クネデル(shell crosslinked knedels)を製造した。明らかに、可溶化され得る、そして後で重合され得る不飽和部位を含有するポリマーは、広範囲の用途を持つ重要な部類の材料である。
【0013】
多様な不飽和基を含むモノマーをラジカル重合すると不溶性ポリマーが生成する。アニオン重合を使い多様な不飽和基を含有するモノマーの制御された重合に関する報告は殆どない。一例として、1,4ジビニル又は1,4−ジイソプロペニルベンゼンのアニオン重合により多量のビニル側基を含有する反応性ミクロゲルが生成した。しかし、この方法は、アニオン重合に馴染み易いジビニル化合物に限られていて(ヒラー・ジェー・シー(Hiller,J.C.),フンケ・ダブリュー(Funke,W.)、“アンゲバンデ・マクロモレキュラー・ケミストリー(Angew.Makromolecular Chemistry)”,1979年,第76/77巻,p.161);(13)ボルフガング・エス(Wolfgang,S.), フンケ・ダブリュー(Funke,W.)、“マクロモレキュラー・ケミストリー(Makromolecular Chemistry)”,1978年,第179巻,p.2145)、極めて高純度のモノマーと極めて低い温度が必要である。
【0014】
最近、グアン(Guan)(2002年)は、エチレングリコールジメタクリレートのコバルト媒介型ラジカル重合による超分岐ポリマーの合成を報告していて(グアン・ゼッド(Guan,Z.),“ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Jouunal of American Chemical Society)”,2002年,第124巻,p.5616)、この合成により、不飽和を含有する可溶性ポリエチレングリコールジメタクリレートポリマーが生成した。しかしながら、この方法は、エチレングリコールジメタクリレートに特化されていて、多様な不飽和部位を含有する他のモノマーに容易に拡張できない。
【0015】
シクロデキストリン、カリクスアレーン、クリプタンド及びクラウンエーテルのような種々の環状化合物は、ホスト・ゲスト錯体を形成することが知られていて、広く商業的に利用されてきた、例えば、水溶性が劣り、従って、体内への吸収が劣る多数の薬剤は、シクロデキストリン空孔の中に内包化されている。溶解性を高めると、薬剤の生物学的利用能が高まる。クラウンエーテルはカリウムイオンと錯体を形成できる。同様に、カリクスアレーンは、環のサイズに応じてトルエン、ベンゼンのような有機分子と錯体を形成する。(ブラッドシャー・ジェイ・エス(Bradshaw,J.S)、“コンプレヘンシブ・スプラモレキュラー・ケミストリー(Comprehensive Supramolecular Chemistry)”.1996年,第1巻,p.35);オダシモ・ケイ(Odashimo,K.),コヤ・ケイ(Koya,K.)、“コンプレヘンシブ・スプラモレキュラー・ケミストリー(Comprehensive Supramolecular Chemistry)”.1996年,第2巻,p.143);ポチニ・エイ(Pichini,A.),ウンガロ・アール(Ungaro,R.)、“コンプレヘンシブ・スプラモレキュラー・ケミストリー(Comprehensive Supramolecular Chemistry)”.1996年,第2巻,p.103)。
【0016】
シクロデキストリンは、水性媒体中で疎水性化合物を可溶化できる周知の環状オリゴ糖である(ウェンツ・ジー(Wenz,G.),“アンゲバンデ・ケミー(Angewandte.Chemie.)”、1994年,第106巻,p.851)。可溶化は、シクロデキストリンの疎水性空洞内部で水不溶性種を錯化することにより行なわれる。好適なモノマーを水に溶解するためにシクロデキストリンを使用することは、次の文献に記載されている(ストルスベルグ・ジェイ(Storsberg,J.),リッテル・エッチ(Ritter,H.)、“マクロモレキュラー・速報(Makromolecular.Rapid.Communications)”,2000年,第21巻,p.230);ジェロミン・ジェイ(Jeromin,J.),リッテル・エッチ(Ritter,H.)、“マクロモレキュラー・速報(Makromolecular.Rapid.Communications)”,1998年,第19巻,p.377);ジェロミン・ジェイ(Jeromin,J.),ノル・オー(Noll,O.)、リッテル・エッチ(Ritter,H.)、“マクロモレキュラー・化学及び物理学(Makromolecular.Chemistry & Physics)”,1998年,第199巻,p.2641);グロックナー・ピー(Glockner,P.), リッテル・エッチ(Ritter,H.)、“マクロモレキュラー・速報(Makromolecular.Rapid.Communications)”,1999年,第20巻,p.602)。数件の特許が、乳化重合収率を向上するために、好ましくは触媒量のシクロデキストリンを使用することを記載している(ラウ・ダブリュー(Lau.W.)、 ローム・アンド・ハース(Rohm&Haas)欧州特許出願書(Eur.Pat),1996年、;ルードウィグスハーフェン(Ludwigshafen)、ビー・エイ・エス・エフ(BASF)Ger Offen,1997年;米国特許第6,225,299号明細書、2005年5月1日;米国特許第6,040,409号明細書、1998年5月7日)。しかし、多様な不飽和を有するモノマー及び環状化合物を含むホスト−ゲスト錯体の製造は、今日まで報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
驚くことに、本発明者等は、多様な不飽和を含有するモノマーが、シクロデキストリンによって種々の化学量論の包接錯体を形成することを見出した。更に、シクロデキストリン空孔内部に封入された不飽和部位は、成長中の遊離基鎖と反応しない。従って、多様な不飽和を含有するビニルモノマーの包接錯体の重合によって、未反応性不飽和部位を含有する可溶性ポリマーが生成する。一旦、シクロデキストリンがこの系から取り除かれると、非保護の不飽和部位が第2段階で重合に関与し、高度の機械的、熱的及び耐溶剤特性を有する架橋生成物が生成する。従って、これらのポリマーは、熱可塑性ポリマーの加工の容易性及び熱硬化性ポリマーの高度の特性を発現する。
【0018】
本発明の第1の目的は、環状高分子化合物及び多様な不飽和基を含むモノマーの包接錯体を開発することである。
本発明の別の目的は、ラジカル重合方法を使いそのように形成される錯体から可溶性ポリマーを製造する方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、一般式A(式中、不飽和ビニルのXユニットを含有するモノマーであり、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物である)で表される、多様な不飽和を有するモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体に関し、更に前記包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
従って、本発明は、一般式A(式中、不飽和ビニルのXユニットを含有するモノマーであり、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物である)で表される、多様な不飽和を有するモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体に関し、更に前記包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法にも関する。
【0021】
本発明の或る実施態様では、一般式A(式中、Aは不飽和ビニルのXユニットを含有するモノマーであり、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物である)で表される、多様な不飽和を持つモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体である。
【0022】
本発明の別の実施態様では、X及びYユニットの値は、各々、0<x<5であり、Yの値は3<y<9である。
【0023】
本発明のなお別の実施態様では、A対Bの比は、1:0.1〜1:10の範囲内である。
【0024】
本発明の更に別の実施態様では、A対Bの好ましい比は、1:1である。
【0025】
本発明の更に別の実施態様では、包接錯体は、ラジカル重合により遊離不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーに転化され得る。
【0026】
本発明の更に別の実施態様では、請求項1の包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法において、前記方法は次の諸段階を含む:
a)環状化合物又はその誘導体を水の中で周囲温度で攪拌しながら溶解する段階、
b)多様な不飽和を持つ化学量論的量のモノマーを段階(a)の溶液に加える段階、
c)段階(b)の混合物を20°〜30℃の温度範囲で24〜28時間攪拌する段階、
d)段階(c)で形成される錯体を通常の方法により分離する段階、
e)段階(d)の錯体を水で、続いて有機溶剤で洗浄する段階、
f)段階(e)の溶剤洗浄錯体を乾燥し所要の包接錯体を得る段階、
g)段階(f)の包接錯体を極性の非プロトン性溶剤に溶解する段階、
h)アゾレドックス(azoredox)又は過酸化物開始剤を、段階(g)の溶液に窒素パージ下で加える段階、
i)段階(h)の混合物を50℃〜70℃の温度範囲で
j)16時間〜24時間加熱する段階、
k)段階(I)の反応混合物を水の中に注入しホモポリマーを沈殿させる段階、及び
l)段階(j)の沈殿ホモポリマーを濾過により分離する段階。
【0027】
本発明の更に別の実施態様では、段階(a)において、環状化合物は、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプタンド、シクロファン(cyclohane)又はそれらの誘導体から成る群から選ばれる高分子有機化合物である。
【0028】
本発明の更に別の実施態様では、段階(b)において、不飽和を持つモノマーは、ジメタシレート(dimethacylate)、トリメタクリレート、テトラメタシレート(tetramethacylate)、エチレングリコールジメタシレート(dimethacylate)、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタアクリルトリロール(pentacrylthrilol)テトラアクリレート、ペンタクリトリオールトリメタシレート(penta crylthriol trimethacylate)、ペンタアクリシロール(pentaacrythilol)テトラメタアクリレート、ビスフェノール、ジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロール、プロパンアクリレート又はペンタアクトリリロール(pentaacrytllrilol)テトラメチルアクリレート、ビスフェノールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート又はペンタアクリトリロール(pentaacrythrilol)テトラアクリレートから成る群から選ばれる。
【0029】
本発明の更に別の実施態様では、段階(e)において、有機溶剤は、アセトン、エチルアルコール、メタノール又はテトラヒドロフランから成る群から選ばれる。
【0030】
本発明の更に別の実施態様では、段階(g)において、極性の非プロトン性溶剤は、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドから成る群から選ばれる。
【0031】
本発明の更に別の実施態様では、段階(h)において、アゾレドックス又は過酸化物開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド又は過硫酸カリウムから成る群から選ばれる。
【0032】
本発明の更に別の実施態様では、段階(i)において、得られるホモポリマーはその中に存在している不飽和基を有する。
【0033】
本発明の更に別の実施態様では、段階(k)において、得られるホモポリマーは有機溶剤に可溶である。
【0034】
本発明の更に別の実施態様では、段階(e)において、使用される光化学開始剤は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又はベンゾフェノンから成る群から選ばれる。
【0035】
本発明は、一般式A(式中、モノマーは不飽和ビニルのXユニットを含有し、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物である)で表される、多様な不飽和を有するモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体に関し、更に前記包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法にも関する。
【0036】
本発明は、不飽和を含有するジ、トリ又はテトラ官能性架橋体(cross linker)の可溶性ホモポリマー、及びその合成方法を提供する。更に詳しくは、本発明は、多様な不飽和を持つモノマーを含む包接錯体関し、それらの合成及びそれらの重合により可溶性ポリマーが製造される。また本方法は、環状有機化合物を持つモノマーの包接錯体の製造と、それに続く好適な重合開始剤による錯体の重合に関する。
【0037】
本発明は、環状高分子有機化合物の包接錯体及びそれの重合に関する。更に詳しくは、本発明は、前記包接錯体、その合成方法及びその重合方法に関する。更により詳しくは、本発明は、シクロデキストリンと多様な不飽和部位を含有するモノマーを含む錯体、並びにその製造方法及びこれらの錯体を使う可溶性ポリマーの合成方法に関する。
【0038】
そのように製造されたポリマーは、更に、フィルムにキャスティングすることができる、微小球体に又はあらゆる所望の形状に製造でき、更に第2段階で、架橋不溶性生成物に転化できる。通常の方法を使って同じ条件下で製造されるポリマーは、更にフィルムにキャスティングできない、又は微小球体若しくはいずれの所望の形状にも転化できない不溶性生成物となる。本発明は、多様な不飽和を持つモノマー、及びシクロデキストリンを例とする環状有機化合物を含む錯体の製造を包含する。錯体の重合は、好適なラジカル開始剤を使って行なわれる。形成されるポリマーは、普通の溶剤に可溶であり、不飽和基を含有していて、第2段階で更に重合できる。
【0039】
従って、本発明は、多様な不飽和を含有するモノマー及び環状化合物から成る一般式AxByを有する包接錯体を提供する(式中、Aは0<x<5のビニル不飽和数xを含有するモノマーであり、Bは3<y<9のyユニットを含む環状ホスト分子であり、Ax対Byの比は1:0.1〜1:10の範囲内にある)。
【0040】
本発明は、環状化合物又はその誘導体を、水に室温で、随意に攪拌下で溶解すること、多様な不飽和を持つモノマーの化学量論的量をこの溶液に加えること、及びこの混合物を24〜48時間、20℃〜30℃の温度で攪拌すること、通常の方法により錯体を分離すること、水に続いて有機溶剤で洗浄すること、錯体を乾燥し包接錯体を得ることを含む包接錯体の製造方法を提供する。
【0041】
本発明のなお別の実施態様では、環状化合物は、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプタンド、シクロファン又はそれらの誘導体を例とする高分子有機化合物が可能である。
【0042】
本発明のなお別の実施態様では、モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートを例とするジ、トリ又はテトラアクリレート、ジビニルベンゼンを例とする芳香族ジビニル化合物が可能である。
【0043】
本発明の別の実施態様では、モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートを例とするジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート及び芳香族ビニル化合物である包接錯体である。
【0044】
更に別の実施態様では、洗浄用に使用される溶剤は、脂肪族アルコール、ケトン又は水、例えばメタノール、エタノール、アセトン又は水が可能である。
【0045】
更に別の実施態様では、包接錯体は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような極性の非プロトン性溶剤の中に溶解し、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロキシペルオキシド、過硫酸カリウムを例とするアゾ、レドックス又は過酸化物を使うことにより重合されることが可能である。
【0046】
更に別の実施態様では、包接錯体の重合により遊離不飽和基を含有するポリマーが生成し、有機溶剤に可溶である。
【0047】
なお別の実施態様では、不飽和基を含有する前記可溶性ポリマーは、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸カリウムを例とするアゾ、レドックス又は過酸化物タイプの開始剤を使って更に重合され得る。
【0048】
なお別の実施態様では、前記のように製造されたホモポリマーは、不飽和基を含有し、溶剤可溶性である。
【0049】
なお別の実施態様では、不飽和基を含有する前記可溶性ポリマーは、uv照射、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノンを例とする光化学開始剤を使って更に重合され得る。
【0050】
本発明は、更に、好適なラジカル開始剤を使い請求項(1)の包接錯体のラジカル重合方法によるホモポリマーの製造方法も提供する。
【0051】
本発明は、可溶性ホモポリマーの製造方法を提供し、通常の重合方法によって製造すると架橋生成物が生成する。
【0052】
別の実施態様では、重合すると、包接錯体は、遊離不飽和基を含有するポリマーを生成し有機溶剤に可溶である。
【0053】
更に別の実施態様では、不飽和基を含有する可溶性ポリマーは、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸カリウムを例とするアゾ、レドックス又は過酸化物タイプの開始剤を使って更に重合され得る。
【0054】
本発明の特徴の中で、以下のような通常の重合方法も可能である:
1.40℃〜80℃の温度範囲で不活性雰囲気下での熱重合。
2.4℃〜40℃の範囲の温度で光開始剤を使うUV照射による重合。
3.ラジカル開始剤の非存在下でγ線照射による重合。
4.球形状のポリマーを得るための懸濁又は乳化重合。
【0055】
別の特徴の中で、本発明の範囲は、多様な不飽和を含有するモノマー及びシクロデキストリン又はその誘導体に、並びに前記錯体の組成物に限定されない。
【0056】
なお別の特徴の中で、可溶性ホモポリマーの沈殿用の非溶剤は、エーテル、ヘキサン又は水性媒体、例えばジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、テトラヒドロフランも可能である。
【実施例】
【0057】
本発明は、実施例を参照しながら本明細書の下記で説明されるが、この実施例は単に例示であり、本発明の範囲が限定されると決して解釈されてはならない。
【0058】
実施例1
本実施例は、β−シクロデキストリン−エチレングリコールジメタクリレート錯体の製造を説明する。
【0059】
β−シクロデキストリン 11.35g(0.01モル)を室温で蒸留水450mlに溶解した。これに、エチレングリコールジメタクリレート 1.98g(0.01モル)を1回分として加え、混合物をマグネチックスターラーを使って24時間攪拌した。溶液から沈殿した錯体を真空下で濾過した。錯体を蒸留水で充分に洗浄し非錯化のβ−シクロデキストリンを取り除き、非錯化のエチレングリコールジメタクリレートをメタノールで取り除いた。錯体をデシケーターに入れて室温で乾燥した。収率は75%であった。錯体を200MHz 1H NMR及びIRによりキャラクタリゼーションした。錯体の化学量論は、β−シクロデキストリン及びエチレングリコールジメタクリレートのプロトンの面積から測定して1:1であることが判った。IR分光法により、錯体中の不飽和の存在はエチレングリコールジメタクリレート及びβ−シクロデキストリンの包接錯体の形成を示していることが判った。
【0060】
実施例2
本実施例は、β−シクロデキストリン−ジビニルベンゼン錯体の製造を説明する。
【0061】
β−シクロデキストリン 11.35g(0.01モル)を室温で蒸留水450mlに溶解した。これに、エチルベンゼン中の80%の1,4ジビニルベンゼン1.6g(0.01モル)を加えて混合物を室温で24時間攪拌した。1,4ジビニルベンゼン及びβ−シクロデキストリンを含む錯体が溶液から沈殿した。これを真空下で濾過し、水で次にアセトンで洗浄してデシケーターに入れて室温で乾燥した。収率は80%であった。錯体を1H NMR、IRによりキャラクタリゼーションした。錯体の化学量論は、NMRによる測定通り1:1であった。
【0062】
実施例3
本実施例は、β−シクロデキストリン−ビニルメタクリレート錯体の製造を説明する。
【0063】
β−シクロデキストリン 11.35g(0.01モル)を室温で蒸留水450mlに溶解した。これに、ビニルメタクリレート1.2ml(0.01モル)を加えて混合物を室温で24時間攪拌した。ビニルメタクリレート及びβ−シクロデキストリンを含む錯体が溶液から沈殿した。それを真空濾過により回収した。錯体を水で、次にエタノールで洗浄した。錯体を真空デシケーターに入れて室温で乾燥した。収率は80%であった。錯体を1H NMR及びIR分光法によりキャラクタリゼーションした。錯体中のβ−シクロデキストリン及びビニルメタクリレートの化学量論は、1H NMRによる推定通り1.5:1であった。
【0064】
実施例4
本実施例は、γシクロデキストリン−エチレングリコールジメタクリレートの製造を説明する。
【0065】
γ−シクロデキストリン 0.648g(0.0005モル)を水25mlに溶解した。これに、エチレングリコールジメタクリレート 99.2mg(0.0005モル)を加えて混合物を室温で24時間攪拌した。錯体は白色固体として沈殿したので、これを真空下で濾過し、蒸留水で、続いてアセトンで洗浄して室温で乾燥した。収率は70%であった。
【0066】
実施例5
本実施例は、β−シクロデキストリン−トリメチロールプロパントリメタクリレート錯体の製造を説明する。
【0067】
β−シクロデキストリン11.5g(0.01モル)を蒸留水450mlに溶解した。トリメチロールプロパントリメタクリレート3.2ml(0.01モル)をこの溶液に加えて混合物を24時間攪拌した。沈殿した錯体を濾過し、水で、続いてメタノールで洗浄した。収量は6.7g(45%)であった。錯体を1H NMR及びIR分光法によりキャラクタリゼーションした。プロトンNMRにより測定した通り錯体の化学量論は、1:1(トリメチロールプロパントリメタクリレート:β−シクロデキストリン)であった。
【0068】
実施例6
本実施例は、β−シクロデキストリン−トリメチロールプロパン錯体の製造を説明する。
【0069】
β−シクロデキストリン11.5g(0.01モル)を蒸留水450mlに溶解した。トリメチロールプロパントリメタクリレート1.6ml(0.005モル)をこの溶液に加えて混合物を24時間攪拌した。沈殿した錯体を濾過し、水で、続いてメタノールで洗浄した。収量は5.3g(42%)であった。1H NMRにより測定した通り錯体の化学量論は、1:2(トリメチロールプロパントリメタクリレート:β−シクロデキストリン)であった。
【0070】
実施例7
本実施例は、α−シクロデキストリン−エチレングリコールジメタクリレート錯体の製造を説明する。
【0071】
α−シクロデキストリン 0.973g(0.001モル)を水25mlに溶解した。これに、エチレングリコールジメタクリレート 0.198g(0.001モル)を加えて混合物を室温で36時間攪拌した。白色固体が沈殿し、これを濾過して水で洗浄した。収率は6%であった。錯体を1H NMR及びIR分光法によりキャラクタリゼーションした。
【0072】
実施例8
本実施例は、ポリ(ジビニルベンゼン)の製造を説明する。
【0073】
実施例2で説明したジビニルベンゼンとβ−シクロデキストリンとの錯体1gを、20mlのガラス管の中のN,N−ジメチルホルムアミド6mlに溶解した。アゾビスイソブチロニトリル10mgを加えて試験管を10〜15分間窒素でフラッシングした。65℃に保持された水浴の中に試験管を浸漬した。重合は18時間行なった。冷却後、攪拌しながら溶液を水75mlに加えた。水性層に残っているβ−シクロデキストリン及びポリマーを濾過により分離した。ポリマーの収率は58%であった。
【0074】
実施例9
本実施例は、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート、EGDMA)の製造を説明する。
【0075】
実施例1で説明したエチレングリコールジメタクリレート/β−シクロデキストリン錯体1gを試験管の中のN,N−ジメチルホルムアミド6mlに溶解した。アゾビスイソブチロニトリル10mgを加えて試験管を15分間窒素でフラッシングした。重合は65℃で20時間行なった。ポリマー溶液を蒸留水80mlに注ぐとポリマーが沈殿した。ポリマーを濾過して真空下で室温で乾燥した。ポリマーの収率は68%であった。構造は、1H NMR及びIR分光法により確認した。1H NMRは不飽和ビニルの存在を示した。これはIR分光法によっても確認された。GPCによりキャラクタリゼーションしたようにポリマーの分子量はM=1,00754、M=20,932であり、多分散性は4.8であった。
【0076】
実施例10
本実施例は、ポリ(EGDMA)の第2段階の重合を説明する。
【0077】
実施例9により製造したポリ(EGDMA)0.1gを8:2の(ジメチルスルホキシド:ジクロロメタン)に溶解して光開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5mgを加えた。溶液を10分間窒素でパージして20分間UV光線に曝露した。ポリマーが架橋して溶剤混合物の中にゲルが生成した。このことは、第1段階での1個のビニル基の選択的重合と、それに続く第2段階の重合により網状構造が形成した直接の証明である。
【0078】
比較例(a)
エチレングリコールジメタクリレート 1gを試験管の中のN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解した。これに、アゾビスイソブチロニトリル10mgを加えて試験管を15分間窒素でパージした。重合は65℃で18時間行なった。クロロホルム、アセトン、及びメタノールのような普通の有機溶剤に不溶である架橋ゲルとしてポリマーを得た。
【0079】
比較例(b)
エチレングリコールジメタクリレート0.2g(1ミリモル)及びβ−シクロデキストリン1.14g(1ミリモル)を、N,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解した。これに、アゾビスイソブチロニトリル5mgを加えて窒素を10分間通気した。重合は65℃で16時間行なった。ポリマーは、不溶である架橋ゲルとして得られた。
【0080】
実施例11
本実施例は、β−シクロデキストリン−EGDMA錯体の光重合を説明する。
【0081】
実施例1と同じように製造したエチレングリコールジメタクリレート/β−シクロデキストリン錯体1gを試験管の中のN,N−ジメチルホルムアミド6mlに溶解した。1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン10mgを加えて試験管を15分間窒素でフラッシングした。重合は、UV光線への曝露により室温で15分間行なった。ポリマー溶液を蒸留水80mlに注入した。ポリマーを濾過して真空下で室温で乾燥した。ポリマーの収率は55%であった。構造は1H NMR及びIR分光法により確認した。1H NMRは不飽和ビニルの存在を示した。これはIR分光法によっても確認された。
【0082】
本発明の或る実施態様では、包接錯体は、多様な不飽和を含有するモノマー及び環状化合物から成る一般式AxByを有する(式中、Aは0<x<5の不飽和ビニル数xを含有するモノマーであり、Bは3<y<9のyユニットを含む環状ホスト分子であり、Ax対Byの比は1:0.1〜1:10の範囲内にある)。
【0083】
本発明の更に別の実施態様では、環状化合物又はその誘導体を水に室温で、随意に攪拌下で溶解すること、多様な不飽和を持つモノマーの化学量論的量をこの溶液に加えること、及びこの混合物を24〜48時間、20℃〜30℃範囲の温度で攪拌すること、通常の方法により錯体を分離すること、水に続いて有機溶剤で洗浄すること、錯体を乾燥し包接錯体を得ることを含む包接錯体の製造方法である。
【0084】
本発明の更に別の実施態様では、環状化合物は、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプタンド、シクロファン又はそれらの誘導体を例とする高分子有機化合物である。
【0085】
本発明の更に別の実施態様では、モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートを例とするジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート及び芳香族ビニル化合物である。
【0086】
本発明の更に別の実施態様では、モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートを例とするジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート及び芳香族ビニル化合物である。
【0087】
本発明の更に別の実施態様では、洗浄用に使用される溶剤は、アセトン、エチルアルコール、メタノール、テトラヒドロフランを例とする脂肪族アルコール、ケトン、エーテルが可能である。
【0088】
本発明の更に別の実施態様では、請求項(1)の包接錯体のラジカル重合によるホモポリマーの製造方法であり、この方法では、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロキシペルオキシド、過硫酸カリウムを例とするアゾ、レドックス又は過酸化物タイプの開始剤を使い、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような極性の非プロトン性溶剤に溶解することにより、包接錯体は重合される。
【0089】
本発明の更に別の実施態様では、前記のように製造されるホモポリマーは、不飽和基を含有し溶剤可溶性である。
【0090】
本発明の更に別の実施態様では、従来の重合方法により、前述の方法により製造されるホモポリマーからの架橋ポリマーの製造方法である。
【0091】
本発明の更に別の実施態様では、前記錯体の重合により得られるホモポリマーであり、前記のように製造されるホモポリマーは、不飽和基を含有し溶剤可溶性である。
【0092】
本発明の更に別の実施態様では、重合されると、遊離不飽和基を含有するポリマーが生成し有機溶剤に可溶である。
【0093】
本発明の更に別の実施態様では、前述のように前記不飽和基を含有する可溶性ポリマーは、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸カリウムを例とするアゾ、レドックス又は過酸化物タイプの開始剤を使って更に重合され得る。
【0094】
本発明の更に別の実施態様では、UV照射、並びに1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びベンゾフェノンを例とする光化学開始剤を使い請求項9に記載の不飽和基を含有する可溶性ポリマーの更なる重合方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式AxBy(式中、Aは不飽和ビニルのXユニットを含有するモノマーであり、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物であり、各々、X及びYユニットの値は0<x<5であり、Yの値は3<y<9であり、A対Bの比は1:0.1〜1:10の範囲内である)で表される、多様な不飽和を有するモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体。
【請求項2】
対Bの好ましい比が、1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の包接錯体。
【請求項3】
ラジカル重合により遊離不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーに転化され得ることを特徴とする、請求項1に記載の包接錯体。
【請求項4】
一般式A(式中、Aは不飽和ビニルのXユニットを含有するモノマーであり、BはYユニットを持つ環状ホスト化合物であり、各々、X及びYユニットの値は0<x<5であり、Yの値は3<y<9であり、A対Bの比は1:0.1〜1:10の範囲内である)で表される、多様な不飽和を持つモノマー及び環状化合物を含有する包接錯体から不飽和基を持つ可溶性ホモポリマーを製造する方法において、前記方法が:
a)環状化合物又はその誘導体を水の中で周囲温度で攪拌しながら溶解する段階、
b)多様な不飽和を持つ化学量論的量のモノマーを段階(a)の溶液に加える段階、
c)段階(b)の混合物を20°〜30℃の温度範囲で24〜28時間攪拌する段階、
d)段階(c)で形成される錯体を通常の方法により分離する段階、
e)段階(d)の錯体を水で、続いて有機溶剤で洗浄する段階、
f)段階(e)の溶剤で洗浄された錯体を乾燥し所要の包接錯体を得る段階、
g)段階(f)の包接錯体を極性の非プロトン性溶剤に溶解する段階、
g)アゾレドックス又は過酸化物開始剤を、段階(g)の溶液に窒素パージ下で加える段階、
h)段階(h)の混合物を50℃〜70℃の温度範囲で16時間〜24時間加熱する段階、
i)段階(I)の反応混合物を水の中に注入しホモポリマーを沈殿させる段階、及び
j)段階(j)の沈殿ホモポリマーを濾過により分離する段階、
の諸段階を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項5】
段階(a)において、前記環状化合物が、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプタンド、シクロファン又はそれらの誘導体から成る群から選ばれる高分子有機化合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階(b)において、不飽和を持つ前記モノマーが、ジメタシレート(dimethacylate)、トリメタクリレート、テトラメタシレート(tetramethacylate)、エチレングリコールジメタシレート(dimethacylate)、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタアクリルトリロール(pentacrylthrilol)テトラアクリレート、ペンタクリトリオールトリメタシレート(penta crylthriol trimethacylate)、ペンタアクリシロール(pentaacrythilol)テトラメタアクリレート、ビスフェノール、ジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロール、プロパンアクリレート又はペンタアクトリリロール(pentaacrytllrilol)テトラメチルアクリレート、ビスフェノールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート又はペンタアクリトリロール(pentaacrythrilol)テトラアクリレートから成る群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
段階(e)において、前記有機溶剤が、アセトン、エチルアルコール、メタノール又はテトラヒドロフランから成る群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
段階(g)において、前記極性の非プロトン性溶剤が、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドから成る群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
段階(h)において、アゾレドックス又は過酸化物開始剤が、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド又は過硫酸カリウムから成る群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
段階(i)において、得られる前記ホモポリマーが、その中に存在している不飽和基を有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
段階(k)において、得られる前記ホモポリマーが、有機溶剤に可溶であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項12】
段階(e)において、使用される光化学開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又はベンゾフェノンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。

【公表番号】特表2007−516300(P2007−516300A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507564(P2005−507564)
【出願日】平成15年8月12日(2003.8.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003593
【国際公開番号】WO2005/014671
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】