説明

瓦葺状折板屋根材及びその製造方法

【課題】屋根材を建物梁部に安定支持することができる歪みのない瓦葺状折板屋根材を提供する。
【解決手段】山折部11と谷折部12によりジグザグ状に折り曲げて形成された長尺の折曲げ金属板10aの山折部と谷折部にそれぞれ略直交する段差部が形成された瓦葺状折板屋根材であって、山折部の段差部13の下方には、段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部14aを形成するとともに、凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブ14b、14cを形成した山折歪緩和部14を設け、谷折部の段差部の上方には、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部15aを形成するとともに、凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブ15b、15cを形成した谷折歪緩和部15を設け、山折歪緩和部と谷折歪緩和部とは、段差部を挟んで互い違いに設けられている瓦葺状折板屋根材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や工場などの屋根材に好適に使用される瓦葺状パターンが形成された瓦葺状折板屋根材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅や工場などに用いられる建物屋根材は、フラットな金属板をロール成形機やプレス機などにより折り曲げ加工して波板面を形成した金属製の折板屋根が用いられている。さらに、このような波板面に屋根瓦パターンを形成して、その外観を和風調にデザインした瓦葺状折板屋根材なども提供されている。
このような瓦葺状折板屋根材には、太陽光による輻射熱や屋根裏面に発生する結露を防ぐための断熱材もしくは屋根面に当たる雨音などを低減させるための吸音材として、発泡ポリエチレンやガラス繊維シートなどが貼付されている。例えば特許文献1には、平板状の鋼板に断熱材を貼り付けた後、ロールフォーミングなどの方法で折板屋根の形状に成形加工する断熱折板屋根の成形方法が記載されている。また、断熱材が厚いものでは鋼板に貼り付けて折板屋根に成形することが困難であるため、鋼板を折板屋根形状に成形した後に、手作業でこれを貼り付けるものもある。また、折板成形した2枚の鋼板の間に断熱材を積層させたり、鋼板にシート状断熱材を貼って成形した屋根材の裏側に天井を兼ねた断熱材を敷き並べたりする工法などが用いられているものもある。
また、特許文献2には、屋根板の流れ方向の軒先側に、裏面に向けて折り曲げた折曲げ部が形成され、折返し重合部の折曲げ部の周辺に流れ方向と平行な突条部が局所的に形成されている屋根構造が記載されている。
さらに、特許文献3には、長さ方向に沿って突設された複数本の平行な山部と、山部と直交する向きに互いに間隔を置いて成形された多数の段部を有し、山部がテーパー形の段付き波形金属屋根板が記載されている。特許文献3に記載のような屋根材は、長尺の金属板の長さ方向に沿って平行な山部を有する波形金属屋根板に、山部と直交する向きの段部を等間隔に設け、瓦葺き屋根と同じようなデザインの屋根材としている。このような段付き波形金属屋根板は、屋根の上から下までの距離が1枚の長尺板により上下方の接合部がなく葺ける縦葺き用として作られるため、成形に際してはまず長尺板にロールフォーミングによって長さ方向に平行な山折部及び谷折部を設け、しかる後プレス工程において山折部及び谷折部に対して直交する向きの段差部を等間隔でプレス成形する手順を経る。
【特許文献1】特開平6−336791号公報
【特許文献2】特開2001−349012号公報
【特許文献3】実開昭59−77516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、予め成形された山折部及び谷折部の上に後の工程として段差部を形成する場合には、段差部を境とした領域に絞りじわが生ずることとなり、瓦葺状折板屋根材の美観を損ねたりするといった問題点があった。特に、前記従来の瓦葺状折板屋根材のような、折り曲げ加工された波板面の深さ(山折部と谷折部との寸法差)が小さい場合は、長さ方向に形成された山折部及び谷折部と直交する向きの段部は比較的容易に形成されるが、ロールフォーミングなどの方法で成形加工された一枚の折板屋根に多数の山折部及び谷折部が形成されたものや、山折部と谷折部との寸法差が大きい(山谷の深さが深い)場合は、山折部と直交する向きに互いに間隔を置いて段差部(段部)を形成すると、段差部の周囲に発生する成形歪みが大きくなり、段差部周辺だけでなく傾斜部にも絞りじわが波及し、折板屋根全体的に歪みが生じプレス成形そのものを阻害するという問題点を有していた。
【0004】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、金属板をロール成形及びプレス成形して屋根瓦パターンを形成するに際して、金属板に生じる歪みを効率的に緩和して、屋根材の成形加工を安定的に行うことができ、美観に優れた瓦葺状折板屋根材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の瓦葺状折板屋根材は、山折部と谷折部によりジグザグ状に折り曲げて形成された長尺の折曲げ金属板の山折部と谷折部にそれぞれ略直交する段差部が形成された瓦葺状折板屋根材であって、
前記山折部の段差部の下方には、該段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、該凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、
前記谷折部の段差部の上方には、該段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、該凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設け、
前記山折歪緩和部と谷折歪緩和部とは、前記段差部を挟んで互い違いに設けられていることを特徴とする。
【0006】
(2)本発明の瓦葺状折板屋根材は前記(1)において、前記折曲げ金属板における梁材当接面となる山折部及び谷折部の裏面に制振シートを添着し、前記制振シートを添着した裏面全部を断熱シートで被覆したことを特徴とする。
【0007】
(3)本発明の瓦葺状折板屋根材の製造方法は、前記(1)又は(2)の瓦葺状折板屋根材の製造方法であって、
(a)折曲げ金属板における山折部となる裏面の所定位置に制振シートを貼着する制振シート貼着工程と、
(b)前記金属板における裏面全体に断熱シートを貼着する断熱シート貼着工程と、
(c)前記制振シート及び前記断熱シートがそれぞれ貼着された前記金属板を複数のロールにより挟圧変形させて山折部及び谷折部によりジグザグ状に折り込まれた折曲げ金属板に成形するロール成形工程と、
(d)前記折曲げ金属板の山折部及び谷折部に直交する方向の段差部を長尺状型枠を用いて順次プレス成形して、山折部の段差部の下方に、段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、該凹部の左右側部に該凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、
谷折部の段差部の上方に、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、該凸部の左右側部に該凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設けるプレス成形工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、山折部と谷折部によりジグザグ状に折り曲げて形成された長尺の折曲げ金属板の山折部と谷折部にそれぞれ略直交する段差部が形成された瓦葺状折板屋根材において、山折部の段差部の下方には、段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、谷折部の段差部の上方には、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設け、山折歪緩和部と谷折歪緩和部とは、段差部を挟んで互い違いに設けられているので、金属板をロール成形又はプレス成形して屋根瓦状パターンを形成するに際して、金属板に生ずる歪みを効率的に吸収緩和して、屋根材の成形加工を安定的に行うことができ、美観に優れた瓦葺状折板屋根材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本実施形態の瓦葺状折板屋根材は、山折部と谷折部によりジグザグ状に折り曲げて形成された長尺の折曲げ金属板の山折部と谷折部にそれぞれ略直交する段差部が形成され、山折部の段差部の下方には、段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、谷折部の段差部の上方には、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設け、山折歪緩和部と谷折歪緩和部とは、段差部を挟んで互い違いに設けられている。
これによって、金属板をロール成形及びプレス成形して屋根瓦パターンを有した瓦葺状折板屋根材を製造するに際して、折曲げ金属板には成形加工時における歪みを分散吸収することができ、歪みのない屋根材を効率的に形成させることができる。
【0010】
また、屋根材を建物に施工するに際して、建物梁部に屋根材を確実に密着固定させて安定的に載置することができ、屋根材に当接する雨音を低減する制振性や、輻射熱や結露に対抗する断熱性、屋根施工におけるコスト性及び、作業性に優れた瓦葺状折板屋根材を提供することができる。
【0011】
折曲げ金属板とする金属板としては、例えば、横巾約1〜3m、長手方向3〜10m、厚み約1〜2mm程の矩形状に形成された亜鉛メッキ鋼板などが挙げられる。この金属板をロールフォーミング加工やプレス成形加工などによりジグザグ状に折り曲げて形成される。このような亜鉛メッキ鋼板などの板面には防音効果の高い制振材や断熱材を予め被覆したものなどを適用できる。
【0012】
屋根瓦パターンは、例えば、縦横40cm程度の山形の瓦状に形成したユニットが多数縦横に配列されたパターンのものをいう。このような屋根瓦パターンは折曲げ金属板を所定のプレス型を用いてプレス成形することによって、すなわち、折曲げ金属板の山折部と谷折部とにそれぞれ直交する段差部を、長手方向に30〜50cm程度の間隔で配置することで実現することができる。
なお、実施の形態では、屋根瓦パターンを形成する折曲げ金属板の山折部の間隔は約15〜25cm程度とし、山折部と谷折部との差(深さ)は8〜15cm程度とすることが好ましい。
【0013】
山折歪緩和部は、山折部の段差部の下方に設けられ、段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部を凹状に形成し凹部としたものであり、凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成している。谷折歪緩和部は、谷折部の段差部の上方に設けられ、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部を凸状に形成し凸部としたものであり、凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成している。山折歪緩和部及び谷折歪緩和部は、折曲げ金属板の山折部及び谷折部において、段差部周囲に生ずるしわなどの歪みを吸収する部分である。
上記のように、山折部及び谷折部の段差部において、張り出し凹部及びその両側にリブを形成することで、表面績を大きくし段差部周囲に生ずるしわをこの部分に集中することにより見栄えをよくすることができるのである。
なお、段差部の高さとしては、プレス加工で形成できる高さで2cm〜10cm程度のものである。
【0014】
本実施形態の瓦葺状折板屋根材は、前記折曲げ金属板における梁材当接面となる山折部及び谷折部の裏面に、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、無機粉体などを含む制振シートが添着され、制振シートが添着された裏面全部を、さらに発泡ポリエチレン樹脂などからなる断熱シートで被覆することもできる。これによって、風雨や温度変化による材質劣化を起こし難い制振シートや断熱シートを積層することにより、耐候性及び遮音性能に優れた瓦葺状折板屋根材を提供することができる。
制振シートには断熱シートが積層貼付されているので、雨などの落下物を瓦葺状折板屋根材に貼付された制振シートが直接受けて衝撃吸収することが可能となり、良好な遮音性能を発揮するとともに、断熱シートの働きによって輻射熱を遮断して、結露を防止するとともに制振シートにおける材質劣化を防止することも可能となる。
【0015】
制振シートは、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、無機粉体などを含む混合体からなる弾力性に優れたテープ状素材からなり、建物梁材によって支持される瓦葺状折板屋根材における山折部又は谷折部巾と略同じ巾でそれらの内側長手方向に沿って貼着され、屋根面に雨粒が当たる際に発生する振動を吸収する防音効果を備えたものである。
このような瓦葺状折板屋根材に貼付される遮音性能に優れた薄肉樹脂製の制振シートは、亜鉛メッキ鋼板などの金属板を瓦葺状折板屋根材に二次加工する際に、金属板の加工に追随して変形し、剥離や破断を起こさないことが要求される。
【0016】
断熱シートは、発泡ポリエチレン樹脂などからなる樹脂シート体であって、瓦葺状折板屋根材の裏面全部に被覆されていることが望ましい。
【0017】
本実施形態の瓦葺状折板屋根材の製造方法は、前記瓦葺状折板屋根材の製造方法であって、
(a)折曲げ金属板における山折部となる裏面の所定位置に制振シートを貼着する制振シート貼着工程と、
(b)金属板における裏面全体に断熱シートを貼着する断熱シート貼着工程と、
(c)制振シート及び断熱シートがそれぞれ貼着された金属板を複数のロールにより挟圧変形させて山折部及び谷折部によりジグザグ状に折り込まれた折曲げ金属板に成形するロール成形工程と、
(d)折曲げ金属板の山折部及び谷折部に直交する方向の段差部を長尺状型枠を用いて順次プレス成形して、山折部の段差部の下方に、段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、
谷折部の段差部の上方に、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設けるプレス成形工程と、を有するように構成される。
これによって、金属板を素材としてロール成形やプレス成形により屋根瓦パターンを有した瓦葺状折板屋根材を効率的に製造することができる。特に、瓦葺状折板屋根材に山折歪緩和部や谷折歪緩和部を設けることにより、段差部を加工する際に発生する歪みを効果的に吸収することができるため、美観に優れた瓦葺状折板屋根材を製造方法することができる。
【0018】
さらに、本実施形態の瓦葺状折板屋根材の製造方法において、前記屋根瓦パターンを形成させる長尺状型枠がセラミックス質骨材(A)に合成樹脂成分(B)を混合硬化させて形成した樹脂硬化体からなる上下一対のプレス型とすることもできる。
これによって、従来のような金属製のモールド型を用いた瓦葺状折板屋根材の製造方法に比べて、加工素材となる金属板をクッション性を有したプレス型によってソフトに変形させることができ、加工傷や加工歪みの発生を軽減して、成形歩留りに優れた瓦葺状折板屋根材の製造方法を提供できる。
【0019】
長尺状型枠の合成樹脂成分としては、例えば、ポリアミド、エポキシ、ポリエーテル、ポリテトラフロロエチレンなどの機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチック材や、比較的軟質の熱可塑性プラスチック材などを適用することができる。
セラミックス質骨材は、前記合成樹脂成分の硬度や剛性を補完して長尺状型枠に所定の機械的特性を付与するための成分であり、例えば、粒度調整した砕石粉末やシリカ、アルミナなどの金属酸化物粉末などを適用することができる。
なお、セラミックス質骨材の粒度は、特に限定されるものではないが、その平均粒子径が約0.2〜2mmの範囲とすることが好ましい。セラミックス質骨材の平均粒子径が0.2mm未満であると、単位重量当たりの粒子数が多くなって混合工程に長時間を要するようになり、逆に平均粒子径が2mmを超えると、瓦葺状折板屋根材のプレス成形時に表面の荒れや貼付された断熱シートや制振シートの破断等をきたす原因となることがある。
【0020】
屋根瓦パターンが形成される長尺状型枠において、そのセラミックス質骨材(A)と合成樹脂成分(B)との質量混合比率(A/B)は、1:5〜1:2の範囲とすることが好ましい。この理由は、質量混合比率(A/B)が1:5より小さくなると、折曲げ金属板をプレス加工により瓦葺状折板屋根材にする成形する際の耐摩耗性が不足して、長尺状型枠のメンテナンス交換頻度が高くなりコスト性の悪化傾向が生じるためである。逆に、質量混合比率(A/B)が1:2を超えて大きくなると、プレス成形時における長尺状型枠との摩擦抵抗が増大するとともに、加工傷の発生が顕著となって歩留り低下の一因ともなるからである。
【0021】
(実施例1)
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本実施例の瓦葺状折板屋根材の施工例を示す斜視図であり、図2は本実施例の瓦葺状折板屋根材の平面図であり、図3は図2における矢視A−A断面図である。
実施例1の瓦葺状折板屋根材10は図1〜図3に示すように、山折部11と谷折部12を設けてジグザグ状に折り曲げられた折曲げ金属板10aの山折部と谷折部に、それぞれ略直交する直線状に形成された段差部13(13a〜13e)が所定間隔で複数配置されて構成されている。
このような瓦状折板屋根材10は図1に示すように、建物梁材20の当接支持面21上に載置されて固定支持されることで建物の屋根部分が形成されるようになっている。
【0022】
段差部13は、折曲げ金属板10aに形成された約5cmの高さの段差が形成された部分であり、折曲げ金属板10aの山折部及び谷折部に直交するようにプレス成形などにより形成されている。この5cmの高さは、凹部14a,凸部15aを形成した山折部及び谷折部での段差の寸法であり、山折部及び谷折部の両脇の傾斜部での段差寸法はこれよりも少し小さく、例えば4cmとなっている。
図4に示すように、山折部11において、各段差部13a〜13eの下方に、段差部をさらに下方に張り出して山折部11の一部に凹部14aを形成するとともに、凹部14aの左右側部に凹部14aの張り出し方向(図4では下方)とは反対の上方へ張り出した凸状のリブ14b、14cを形成した山折歪緩和部14が配設されている。このリブ14b、14cの形状は凹部14aの左右側部に沿って細長状に形成されている。
また、谷折部12において、各段差部13a〜13eの上方に、段差部をさらに上方へ張り出して谷折部12の一部に凸部15aを形成するとともに、凸部15aの左右側部に凸部15aの張り出し方向(図4では上方)とは反対の下方へ張り出した凹状のリブ15b、15cを形成した谷折歪緩和部15が配設されている。このリブ15b、15cの形状は凹部15aの左右側部に沿って細長状に形成されている。
これにより、山折部11と谷折部12によりジグザグ状に形成された折曲げ金属板10aをさらに直交する方向で段差部13を形成させる際に生ずる折曲げ金属板10aの不均一な歪みを、山折歪緩和部14と谷折歪緩和部15に集中させ、折曲げ金属板10aの他の部分に歪みを生じさせないようにすることができるのである。
また、これによって折曲げ金属板10aの全面に屋根瓦パターン40が形成されて、瓦葺状折板屋根材10における形状安定性や美観などが確保されるようにできる。
さらに、本実施例では、山折部11と谷折部12の段差部に連接して設けられる歪緩和部は、各段差部13a〜13eの上下に互い違いに設けられているが、各段差部に連接した全てに設けることもできる。すなわち、山折部11の段差部の上方に、谷折部12の段差部の上方に設けた谷折歪緩和部15と同様の形状の歪緩和部を設け、谷折部12の段差部の下方に、山折部11の段差部の下方に設けた山折歪緩和部14と同様の形状の歪緩和部を設けることにより、段差部13を形成させる際に生ずる折曲げ金属板10aの不均一な歪みを、より山折歪緩和部14と谷折歪緩和部15に集中させることができる。
ここで、屋根瓦パターン40とは、図2の破線で示すように、山折部11と左右両端の谷折部12とで挟まれ、かつ、上の段差部13と下の段差部13とで囲まれた部分をいう。
【0023】
折曲げ金属板10aの裏面10b側における建物梁材との当接支持面となる谷折部12には矩形テープ状に形成された合成樹脂材からなる制振シート16が貼着され、このような制振シート16が貼付けられた折曲げ金属板10aの裏側全面に断熱シート17でさらに被覆されている。なお、瓦葺状折板屋根材10における建物梁材20との当接支持部材が山折部11に当接するような場合には、この山折部11に制振シートが配置されるようにしている。
【0024】
ここで制振シート16は、スチレン−イソプレンブロック共重合体100重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部、並びに、粘土粉末350重量部からなる樹脂組成物を加熱混練して、約1mm厚みのシート状に押出成形して作成したものが好ましく用いられる。なお、制振シートの片面にゴム系接着剤などを用いて、アルミニウム箔などを積層して断熱性を高めるようにしてもよい。瓦葺状折板屋根材10は、この得られたシート体を一方の面を金属板となる亜鉛メッキ鋼板に貼付した後、さらに断熱シート17で被覆したものをロール成形及びプレス成形の工程を経て図1に示すような形状に加工したものである。
【0025】
実施例1の瓦葺状折板屋根材10は以上のように構成され、折曲げ金属板10aには、その成形加工時における歪みを分散吸収するための山折歪緩和部14、谷折歪緩和部15が、段差部13を挟んで互い違いに設けられているので、歪みのない屋根材を効率的に形成させることができる。
こうして、屋根材を建物に施工するに際して建物梁材20に密着固定させて安定的に載置して、屋根材に当たる雨音を低減する制振性や、輻射熱や結露に対抗する断熱性、屋根施工におけるコスト性、作業性に優れた瓦葺状折板屋根材10を提供することを可能としている。
【0026】
(実施例2)
図5は本発明の実施例2における瓦葺状折板屋根材の製造方法の一例を示す説明図であり、図6は実施例2の製造方法において折曲げ金属板に段差部を形成させるプレス成形の模式図であり、図7は実施例2のプレス成形における型枠の模式説明図である。
実施例2における瓦葺状折板屋根材30の製造方法は、図5に示すように(a)制振シート貼着工程、(b)断熱シート貼着工程、(c)ロール成形工程、(d)プレス成形工程を主たる構成要素として有している。以下、図面を参照しながら瓦葺状折板屋根材30の製造方法について説明する。
【0027】
制振シート貼着工程は、瓦葺状折板屋根材の素材となるロール巻きされた金属板である亜鉛メッキ鋼板30aを所定長さに裁断して、瓦葺状折板屋根材の裏面30bの山折部及び/又は谷折部となる位置に、テープ状の制振シート31を、折部の巾と略同じ巾で折部長手方向に貼着する工程である。この工程では、塗布された接着材を介して制振シート31を亜鉛メッキ鋼板30aの裏面30bに貼付することによって、瓦葺状折板屋根材に雨音などに対する防音効果や遮音効果が付与されるようにしている。
【0028】
断熱シート貼着工程は、制振シート31が貼付された亜鉛メッキ鋼板30aの裏面30b全体をさらに被覆するように、無機質粉末を含有分散させた合成樹脂材などからなる幅広の断熱シート32を貼着して、瓦葺状折板屋根材に結露防止効果や保温効果を保持させるようにしている。
【0029】

ロール成形工程では、制振シート31及び断熱シート32がそれぞれ貼着された亜鉛メッキ鋼板30aを、亜鉛メッキ鋼板の上下に配設された複数の加工ロール33を通すことによって、その上下方向よりジグザグ状に順次挟圧加工する。こうして図3に示す実施例1と同様(但し、段差部はまだ形成されていない)の山折部と谷折部とからなるジグザグ状断面を有した折曲げ金属板34が得られる。
【0030】
プレス成形工程は、図6に示すように、折曲げ金属板34の山折部及び谷折部に直交する方向の段差部35を、一段毎に長尺状型枠36を用いて順次プレス成形させて屋根瓦パターン40を形成し、瓦葺状折板屋根材30を成形する工程である。
図7に示すように、上下一対の長尺状型枠36は、折曲げ金属板34に段差部35を順次形成するとともに、この段差部35に、山折歪緩和部37a及び谷折歪緩和部37bを形成させるための対となる凸部36a1、36d1及び凹部36b1、36c1を備えたプレス型である。
長尺状型枠36には、折曲げ金属板34の山折部及び谷折部に形成させる歪緩和部の位置にそれぞれ対応させて、山折歪緩和用型枠部36a、36bと谷折歪緩和用型枠部36c、36dとが配置されている。
【0031】
山折歪緩和用型枠部36a、36b及び谷折歪緩和用型枠部36c、36dは、プレス成形される折曲げ金属板34の山折部と谷折部の段差部35に対応する位置に配置されている。
ここで、山折部と谷折部の段差部に対応する位置とは、折曲げ金属板の山折部の段差部に山折歪緩和部を形成させるように長尺状型枠36に山折歪緩和用型枠部36a、36bを設けた位置をいい、折曲げ金属板の谷折部の段差部に谷折歪緩和部を形成させるように長尺状型枠36に谷折歪緩和用型枠部36c、36dを設けた位置をいう。
長尺状型枠36を用いて折曲げ金属板34の山折部及び谷折部に直交する方向の段差部35を一段毎に順次プレス成形させ、屋根瓦パターンを有した瓦葺状折板屋根材を製造する際に、山折歪緩和部及び谷折歪緩和部に歪緩和部分を集中させ、瓦葺状折板屋根材の段差部成形加工時における歪みを吸収する機能を有している。
【0032】
なお、長尺状型枠36は、炭素鋼などからなる金属型の他に、平均粒径約1mmのシリカアルミナ質骨材にエポキシ樹脂成分を1:3の質量混合比率で混合硬化させて形成した樹脂硬化体とすることもできる。このようなセラミックス質骨材含有の樹脂型とすることによって、薄肉鋼板からなる折曲げ金属板34への長尺状型枠36の当たりをソフトにして、段差部13の形成にあたっての成形歩留りに優れたものとすることができる。
【0033】
実施例2における瓦葺状折板屋根材の製造方法によれば、樹脂組成物などで形成した制振シートを亜鉛メッキ鋼板の裏面に積層して安定的に配置することができるので、遮音効果や騒音抑制効果を高めることができる。また、制振シートの厚みを薄くすることによって平板状の金属板裏面に制振シートを積層した後に亜鉛メッキ鋼板を折曲形成することができ、簡単な作業工程で複雑な形状の瓦葺状折板屋根材を製造することができる。
【0034】
(実施例3)
図8は本発明の実施例3における瓦葺状折板屋根材を巾方向に2枚重ねた状態を示す概略断面図であり、図2における矢視B−B断面図である。
実施例3の瓦葺状折板屋根材50は図8に示すように、2枚の山折部11の端部どうしを重ね巾方向に拡張しされて構成されている。
実施例3の瓦状折板屋根材50は、図8に示すように、重ね部分51において下側になる瓦状折板屋根材の山折歪緩和部14に形成された凸状のリブ14b、14cの一方が形成されていない。リブを片方だけ形成することにより、重ね部分51における重ねあわせをより密着させることができる。
【0035】
以上説明したように本発明は、山折歪緩和部及び谷折歪緩和部を瓦葺状折板屋根材に設けることによって、金属加工により生じる歪みを吸収緩和して、歪みのない屋根材とすることができる。
なお、本発明は、歪みのない瓦葺状折板屋根材を提供することを要旨としたものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。
例えば、本実施例では、瓦葺状折板屋根材の素材として電気亜鉛メッキ鋼板を例に説明したが、溶融亜鉛メッキ鋼板やアルミメッキ鋼板、樹脂塗装鋼板、ラミネート鋼板、プライマコート鋼板などの表面処理鋼板を適用することもできる。また、折曲げ金属板のジグザグ状断面はその一例を示すものであって、本発明の瓦葺状折板屋根材は実施例の形態のものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の瓦葺状折板屋根材の施工例を示す斜視図である。
【図2】実施例1の瓦葺状折板屋根材の平面図である。
【図3】図2における矢視A−A断面図である。
【図4】実施例1の山折歪緩和部及び谷折歪緩和部の詳細を説明した拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施例2における瓦葺状折板屋根材の製造方法の一例を示す説明図である。
【図6】実施例2の製造方法の段差部を形成させるプレス成形工程の模式図である。
【図7】実施例2のプレス成形工程における型枠の模式説明図である。
【図8】本発明の実施例3における瓦葺状折板屋根材を巾方向に2枚重ねた状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 実施例1の瓦葺状折板屋根材
10a 折曲げ金属板
10b 裏面
11 山折部
12 谷折部
13、13a〜13e 段差部
14 山折歪緩和部(歪緩和部)
14a 凹部
14b、14c 凸状のリブ
15 谷折歪緩和部(歪緩和部)
15a 凸部
15b、15c 凹状のリブ
16 制振シート
17 断熱シート
20 建物梁材
21 当接支持面
30 実施例2における瓦葺状折板屋根材
30a 亜鉛メッキ鋼板(金属板)
30b 裏面
31 制振シート
32 断熱シート
33 加工ロール
34 折曲げ金属板
35 段差部
36 長尺状型枠
36a、36b 山折歪緩和用型枠部
36c、36d 谷折歪緩和用型枠部
36a1 凸部
36b1 凹部
36c、36d 谷折歪緩和用型枠部
36c1 凹部
36d1 凸部
37 歪緩和部
37a 山折歪緩和部
37b 谷折歪緩和部
40 屋根瓦パターン
50 実施例3の瓦葺状折板屋根材
51 重ね部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山折部と谷折部によりジグザグ状に折り曲げて形成された長尺の折曲げ金属板の山折部と谷折部にそれぞれ略直交する段差部が形成された瓦葺状折板屋根材であって、
前記山折部の段差部の下方には、
該段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、
該凹部の左右側部に凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、
前記谷折部の段差部の上方には、
該段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、
該凸部の左右側部に凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設け、
前記山折歪緩和部と谷折歪緩和部とは、前記段差部を挟んで互い違いに設けられていることを特徴とする瓦葺状折板屋根材。
【請求項2】
前記折曲げ金属板における梁材当接面となる山折部及び谷折部の裏面に制振シートを添着し、
前記制振シートを添着した裏面全部を断熱シートで被覆したことを特徴とする請求項1記載の瓦葺状折板屋根部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の瓦葺状折板屋根材の製造方法であって、
(a)折曲げ金属板における山折部となる裏面の所定位置に制振シートを貼着する制振シート貼着工程と、
(b)前記金属板における裏面全体に断熱シートを貼着する断熱シート貼着工程と、
(c)前記制振シート及び前記断熱シートがそれぞれ貼着された前記金属板を複数のロールにより挟圧変形させて山折部及び谷折部によりジグザグ状に折り込まれた折曲げ金属板に成形するロール成形工程と、
(d)前記折曲げ金属板の山折部及び谷折部に直交する方向の段差部を長尺状型枠を用いて順次プレス成形して、
山折部の段差部の下方に、
段差部をさらに下方へ張り出して山折部の一部に凹部を形成するとともに、
該凹部の左右側部に該凹部の張り出し方向とは反対の上方へ張り出した凸状のリブを形成した山折歪緩和部を設け、
谷折部の段差部の上方に、
段差部をさらに上方へ張り出して谷折部の一部に凸部を形成するとともに、
該凸部の左右側部に該凸部の張り出し方向とは反対の下方へ張り出した凹状のリブを形成した谷折歪緩和部を設けるプレス成形工程と、
を有することを特徴とする瓦葺状折板屋根材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−112151(P2010−112151A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334994(P2008−334994)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【特許番号】特許第4261619号(P4261619)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(506124044)丸大鐵工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】