生体シミュレーションシステム及びコンピュータプログラム
【課題】 個々の患者に対応した生体モデルのパラメータを求めるための技術的手段を提供する。
【解決手段】 生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセットとの組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、生体モデルの出力に対応する実際の生体応答に近似する前記テンプレートデータベースの参照用出力値を選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットを選択するデータベース参照手段を備えている。
【解決手段】 生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセットとの組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、生体モデルの出力に対応する実際の生体応答に近似する前記テンプレートデータベースの参照用出力値を選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットを選択するデータベース参照手段を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体シミュレーション、特に、糖尿病の病態をシミュレートするシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体を数理モデルによって記述することが従来から試みられている。このようなモデルとしては、例えば、バーグマンのミニマルモデルを挙げることができる(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
このミニマルモデルは、血糖値、血漿インスリン濃度及び末梢組織のインスリン作用点におけるインスリン作用量すなわちリモートインスリンを変数としている。ここで、時刻tにおける血糖値をG(t)、血漿インスリン濃度をI(t)、リモートインスリンをX(t)とすると、G(t)、I(t)、X(t)はそれぞれ時間微分を左辺とする下記の微分方程式で記述される。
【0003】
dG(t)/dt=−p1(G(t)−Gb)−X(t)G(t)
dX(t)/dt=−p2X(t)+p3(I(t)−Ib)
dI(t)/dt=−n(I(t)−Ib)+γ(G(t)−h)(ただしG(t) >h)
=−n(I(t)−Ib)+γ(G(t)−h)(ただしG(t) <=h)
ここで、式中の各パラメータは、
p1 :インスリン非依存性ブドウ糖代謝速度
Gb :血糖値基底値
p2 :インスリンの作用点におけるインスリン取込能
p3 :インスリン依存性ブドウ糖代謝に対するインスリン消費率
Ib :インスリン濃度基底値
n :単位時間当たりのインスリン消費量
γ :ブドウ糖刺激に対するインスリン分泌感度
h :インスリン分泌が開始される血糖値しきい値
であって、これらは各個人によって異なる値をもつものである。
【非特許文献1】バーグマン(Bergman)等、アメリカン ジャーナル オブ フィジィオロジー(American Journal of Physiology)、1979年、第236巻、第6号、p.E−667−77
【非特許文献2】バーグマン(Bergman)等、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲイション(Journal of Clinical Investigation )、1981年、第68巻、第6号、 p.1456−67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような生体モデルを個々の患者に適用して、患者の生体をシミュレートし、それを患者の診断等に用いようとすれば、生体モデルを構成する上記パラメータを個々の患者に応じて適切に設定する必要がある。
つまり、生体モデルによって患者の実際の生体を再現しようとすれば、上記パラメータの正確性が重要となり、個々の患者によって異なるべきパラメータをできるだけ正確に求める必要がある。
そこで本発明は、個々の患者に対応した生体モデルのパラメータを求めるための技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセットとの組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、実際の生体応答に近似する参照用出力を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットを選択するデータベース参照手段を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0006】
第1発明によれば、実際の生体応答に基づいて、テンプレートデータベースを参照することで、適切な内部パラメータセットを選択することができる。
【0007】
第2の発明は、前記内部パラメータセット生成部が、前記データベース参照手段によって選択された内部パラメータセットに基づいて、実際の生体応答に、より近似する出力を生成する内部パラメータセットを探索するパラメータセット探索手段を更に備えていることを特徴とする。
【0008】
テンプレートデータベース参照によって得られた内部パラメータセットは、比較的適切なものであるから、これに基づいて、より近似する出力を生成するパラメータセットを探索することで、効率良く探索を行うことができる。
【0009】
第3の発明は、前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの探索範囲を決定する探索範囲決定手段を更に備え、前記パラメータセット探索手段は、前記探索範囲決定手段によって決定された探索範囲内で、前記パラメータセットを探索するように構成されていることを特徴とする。
テンプレートデータベース参照によって得られた内部パラメータセットは、比較的適切なものであるから、この内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの探索範囲を決定することで、比較的狭いが適切な探索範囲を決定でき、効率よく探索を行うことができる。
【0010】
第4の発明は、前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの選択範囲を決定する選択範囲決定手段を更に備え、前記パラメータセット探索手段は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択して、複数の内部パラメータセットを得る第1次選択手段と、前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0011】
第4発明によれば、第1次選択手段によって得られた複数の内部パラメータセットを、テンプレートデータベースを参照して得られたパラメータセットに基づいて決定された選択範囲で絞り込むことによって、適切なパラメータセットを得ることができる。
【0012】
第5発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット探索範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、実際の生体応答に近似する参照用出力を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの探索範囲を選択するデータベース参照手段と、前記探索範囲内で、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0013】
第5発明によれば、比較的狭いが適切な探索範囲でパラメータセットを選択すればよいため、効率的に適切なパラメータセットを得ることができる。
【0014】
第6の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット選択範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、実際の生体応答に近似する参照用出力を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの選択範囲を選択するデータベース参照手段と、前記探索範囲内で、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する第1選択手段と、前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0015】
第6発明によれば、第1次選択手段によって得られた複数の内部パラメータセットを、テンプレートデータベースを参照して得られた選択範囲で絞り込むことによって、適切なパラメータセットを得ることができる。
【0016】
また、コンピュータプログラムに係る発明は、コンピュータを、前記の生体シミュレーションシステムとして機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生体モデルのための適切なパラメータセットを生成でき、適切な生体シミュレーションが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体シミュレーションシステム(以下、単に「システム」ともいう)のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るシステム100は、本体110と、ディスプレイ120と、入力デバイス130とから主として構成されたコンピュータ100aによって構成されている。本体110は、CPU110aと、ROM110bと、RAM110cと、ハードディスク110dと、読出装置110eと、入出力インタフェース110fと、画像出力インタフェース110hとから主として構成されており、CPU110a、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110d、読出装置110e、入出力インタフェース110f、及び画像出力インタフェース110hは、バス110iによってデータ通信可能に接続されている。
【0019】
CPU110aは、ROM110bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM110cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム140aを当該CPU110aが実行することにより、後述するような各機能ブロックが実現され、コンピュータ100aがシステム100として機能する。
ROM110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0020】
RAM110cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM110cは、ROM110b及びハードディスク110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU110aの作業領域として利用される。
ハードディスク110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム140aも、このハードディスク110dにインストールされている。
【0021】
読出装置110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体140に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体140には、コンピュータを本発明のシステムとして機能させるためのアプリケーションプログラム140aが格納されており、コンピュータ100aが当該可搬型記録媒体140から本発明に係るアプリケーションプログラム140aを読み出し、当該アプリケーションプログラム140aをハードディスク110dにインストールすることが可能である。
【0022】
なお、前記アプリケーションプログラム140aは、可搬型記録媒体140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ100aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム140aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク110dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム140aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0023】
入出力インタフェース110fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス130が接続されており、ユーザが当該入力デバイス130を使用することにより、コンピュータ100aにデータを入力することが可能である。
画像出力インタフェース110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ120に接続されており、CPU110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ120に出力するようになっている。ディスプレイ120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0024】
図2は、生体数理モデル(以下、単に「生体モデル」ということがある)を用いた生体シミュレーションシステム(以下、単に「システム」ということがある)のブロック図を示している。
【0025】
図2に示されるように、生体モデル(生体モデル演算部)は、膵臓ブロック(膵臓ブロック演算部)1、肝臓ブロック(肝臓ブロック演算部)2、インスリン動態ブロック(インスリン動態ブロック演算部)3及び末梢組織ブロック(末梢組織ブロック演算部)4から構成されており、各ブロックはそれぞれ、生体モデル外部から又は他のブロックから与えられる入力と、他のブロックへの出力とを有している。
すなわち、膵臓ブロック1は、膵臓の機能を模した演算を行うものであり、血糖値6を入力とし、インスリン分泌速度7を他のブロックへの出力としている。
肝臓ブロック2は、肝臓の機能を模した演算を行うものであり、消化管からのグルコース吸収5、血糖値6及びインスリン分泌速度7を入力とし、正味グルコース放出8及び肝臓通過後インスリン9を出力としている。
インスリン動態ブロック3は、インスリン動態を模した演算を行うものであり、肝臓通過後インスリン9を入力とし、末梢組織でのインスリン濃度10を出力としている。
末梢組織ブロック4は、末梢組織を模した演算を行うものであり、正味グルコース放出8及び末梢組織でのインスリン濃度10を入力とし、血糖値6を出力としている。
前記グルコース吸収5は、外部から与えられるデータであり、この機能は例えば入力デバイス130を用いてユーザが検査データ等を入力することにより実現される。また、それぞれの機能ブロック1〜4は、コンピュータプログラム140aがCPU110aにより実行されることにより実現される。
なお、各ブロックの出力としては、他のブロックへ与えるための出力以外に、インスリン動態ブロック3における血中インスリン濃度I1(図5参照)のように、ブロック3において算出されるが他のブロックにはそのままでは与えられない値も存在し、このような値も生体モデル全体としてみた場合には、生体モデルから得られる値であり、生体モデルの出力に含まれる。
【0026】
つぎに、前述した例における各ブロックの詳細について説明する。なお、FGB及びWsはそれぞれ空腹時血糖値(FGB=BG(0))及び想定体重を示しており、またDVg及びDViはそれぞれグルコースに対する分布容量体積及びインスリンに対する分布容量体積を示している。
膵臓ブロック1の入出力の関係は、以下の微分方程式(1)を用いて記述することができる。また、微分方程式(1)と等価な、図3に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(1):
dY/dt = −α{Y(t)−β(BG(t)−h)} (ただし、BG(t)> h)
= −αY(t) (ただし、BG(t)<= h)
dX/dt = −M・X(t)+Y(t)
SR(t) = M・X(t)
変数:
BG(t):血糖値
X(t) :膵臓から分泌可能なインスリン総量
Y(t) :グルコース刺激に対して新たに供給されるインスリン供給速度
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
パラメータ:
h :インスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値
α :グルコース刺激に対する追従性
β :グルコース刺激に対する感受性
M :単位濃度あたりの分泌速度
ここで、図2における膵臓ブロック1への入力である血糖値6はBG(t)と対応し、また出力であるインスリン分泌速度7はSR(t)と対応する。
【0027】
図3のブロック線図において、6は血糖値BG、7は膵臓からのインスリン分泌速度SR(t)、12はインスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値h、13はグルコース刺激に対する感受性β、14はグルコース刺激に対する追従性α、15は積分要素、16はグルコース刺激に対して新たに供給されるインスリン供給速度Y(t)、17は積分要素、18は膵臓から分泌可能なインスリン総量X(t)、19は単位濃度当たりの分泌速度Mをそれぞれ示している。
【0028】
肝臓ブロック2の入出力の関係は、以下の微分方程式(2)を用いて記述することができる。また、微分方程式(2)と等価な、図4に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(2):
dI4(t)/dt = α2{−A3I4(t) + (1−A7)・SR(t) }
Goff(FBG) = f1(ただしFBG< f3)
= f1 + f2・(FBG−f3)(ただしFBG>=f3)
Func1(FBG)= f4 − f5・(FBG−f6)
Func2(FBG)=f7/FBG
b1(I4(t))= f8{1 + f9・I4(t)}
HGU(t) =r・Func1(FBG)・b1(I4(t))・RG(t)+ (1 −r)・Kh・BG(t)・I4(t) (ただしHGU(t)>= 0)
HGP(t) = I4off・Func2(FBG)・b2+Goff(FBG)
−I4(t)・Func2(FBG)・b2
(ただしHGP(t)>= 0)
SGO(t) =RG(t)+ HGP(t)−HGU(t)
SRpost(t) = A7SR(t)
変数:
BG(t):血糖値
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
RG(t):消化管からのグルコース吸収
HGP(t) :肝糖放出
HGU(t) :肝糖取込
SGO(t) :肝臓からの正味グルコース
I4(t) :肝インスリン濃度
パラメータ:
Kh :単位インスリン、単位グルコース当たりの肝臓糖取り込み速度
A7 :肝臓でのインスリン取り込み率
Goff :基礎代謝に対するグルコース放出速度
b2 :肝糖放出抑制率に関する調整項
r :インスリン非依存性肝糖取り込み分配率
α2 :肝インスリンに対する伝播効率
I4off :肝糖放出が抑制されるインスリン濃度のしきい値
関数:
Goff(FBG): 基礎代謝に対するグルコース放出速度
Func1(FBG): 消化管からのグルコース刺激に対する肝糖取り込み率
Func2(FBG): インスリン刺激に対する肝糖放出抑制率
f1〜f9 : 上記の3要素の表現にあたって用いた定数
b1(I4(t)): 肝糖取り込み率に関する調整項
ここで、図2における肝臓ブロックへの入力である、消化管からのグルコース吸収5はRG(t)、血糖値6はBG(t)、インスリン分泌速度7はSR(t)とそれぞれ対応し、また出力である正味グルコース放出8はSGO(t)、肝臓通過後インスリン9はSRpost(t)とそれぞれ対応している。
【0029】
図4のブロック線図において、5は消化管からのグルコース吸収RG(t)、6は血糖値BG(t)、7は膵臓からのインスリン分泌速度SR(t)、8は肝臓からの正味グルコースSGO(t)、9は肝臓通過後のインスリンSRpost(t)、24は肝臓のインスリン通過率(1−A7)、25は肝インスリンに対する伝播効率α2、26は肝臓通過後のインスリン分配速度A3、27は積分要素、28は肝インスリン濃度I4(t)、9はインスリン依存性肝糖取り込み分配率(1−r)、30は単位インスリン、単位グルコース当たりの肝臓糖取り込み速度Kh、31はインスリン非依存性肝糖取り込み分配率r、32は消化管からのグルコース刺激に対する肝糖取り込み率Func1(FBG)、33は肝糖取り込み率に関する調整項b1(I4(t))、34は肝糖取込HGU(t)、35は肝糖放出が抑制されるインスリン濃度のしきい値I4off、36はインスリン刺激に対する肝糖放出抑制率Func2(FBG)、37は肝糖放出抑制率に関する調整項b2、38は基礎代謝に対するグルコース放出速度、39は肝糖放出HGP(t)、40は肝臓でのインスリン取り込み率A7を示している。
【0030】
インスリン動態分泌の入出力の関係は、以下の微分方程式(3)を用いて記述することができる。また、微分方程式(3)と等価な、図5に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(3):
dI1(t)/dt = −A3I1(t) +A5I2(t) + A4I3(t) +SR post(t)
dI2(t)/dt= A6I1(t)− A5I2(t)
dI3(t)/dt=A2I1(t) − A1I3(t)
変数:
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
I1(t) :血中インスリン濃度
I2(t) :インスリン非依存組織でのインスリン濃度
I3(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
A1 :末梢組織でのインスリン消失速度
A2 :末梢組織へのインスリン分配率
A3 :肝臓通過後のインスリン分配速度
A4 :末梢組織通過後のインスリン流出速度
A5 :インスリン非依存組織でのインスリン消失速度
A6 :インスリン非依存組織へのインスリン分配率
ここで、図2におけるインスリン動態ブロックの入力である肝臓通過後のインスリン9は、SRpost(t)と対応し、また出力である末梢組織でのインスリン濃度10は、I3(t)と対応する。
【0031】
図5のブロック線図において、9は肝臓通過後のインスリンSRpost(t)、10は末梢組織でのインスリン濃度I3(t)、50は積分要素、51は肝臓通過後のインスリン分配速度A3、52は血中インスリン濃度I1(t)、53は末梢組織へのインスリン分配率A2、54は積分要素、55は末梢組織でのインスリン消失速度A1、56は末梢組織通過後のインスリン流出速度A4、57はインスリン非依存組織へのインスリン分配率A6、58は積分要素、59はインスリン非依存組織でのインスリン濃度I2(t)、60はインスリン非依存組織でのインスリン消失速度A5をそれぞれ示している。
【0032】
末梢組織ブロック4の入出力の関係は、以下の微分方程式(4)を用いて記述することができる。また、微分方程式(4)と等価な、図6に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(4):
dBG´/dt = SGO(t)−u* Goff(FBG)−Kb・BG´(t)− Kp・I3(t)・BG´(t)
変数:
BG´(t) :血糖値
(ただしBG[mg/d1]、BG´[mg/kg])
SGO(t) :肝臓からの正味グルコース
I3(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
Kb :末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度
Kp :単位インスリン、単位グルコースあたりの
末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度
u :基礎代謝に対するグルコース放出速度のうち
基礎代謝に対するインスリン非依存グルコース消費が占める割合
関数:
Goff(FBG):基礎代謝に対するグルコース放出速度
f1〜f3 :Goffの表現にあたって用いた定数
ここで、図2における末梢組織ブロックへの入力である末梢組織でのインスリン濃度10はI3(t)、肝臓からの正味グルコース8はSGO(t)とそれぞれ対応し、また出力である血糖値6はBG(t)と対応する。
【0033】
図6のブロック線図において、6は血糖値BG(t)、8は肝臓からの正味グルコースSGO(t)、10は末梢組織でのインスリン濃度I3(t)、70は基礎代謝に対するインスリン非依存グルコース消費速度u* Goff(FBG)、71は積分要素、72は末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度Kb、73は単位インスリン、単位グルコース当たりの末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度Kp、74は単位変換定数Ws/DVgをそれぞれ示している。
【0034】
各ブロックは、以上の微分方程式に基づいて、それぞれの出力項目の時系列変化を出力することができる。さらに、図2に示すように、本システムを構成するブロック間の入力、出力は、相互に接続されており、あるブロックの出力が他のブロックの入力が与えられるため、ブロックの出力の時間的変化に反応して他の各ブロックの出力が変化する。したがって、例えば、この生体モデルに消化管からのグルコース吸収RGを入力として与えることで、血糖値BG(t)と血中インスリン濃度I1(t)といった値の時系列変化を、数式に基づいて計算し、シミュレートすることができる。
このように逐次的に算出した血糖値、インスリン濃度は、ディスプレイ120に表示することが可能である。これによって、前述のように生体器官を模擬した結果をユーザが容易に確認することができる。また、糖尿病診療支援システムのような医療システムの中の生体機能を模擬するサブシステムとして本システムを採用することもできる。この場合には、算出した血糖値、インスリン濃度の時系列変化を医療システムの他の構成要素に受け渡し、これによって例えば糖尿病診療支援情報を作成する等、本システムによって算出した血糖値、インスリン濃度に基づいて信頼性の高い医療情報を得ることも可能である。
なお、本システムの微分方程式の計算には、例えばE−Cell(慶應義塾大学公開ソフトウェア)やMatLab(マスワークス社製品)を用いることができるが、他の計算システムを用いてもよい。
【0035】
図2〜図6に示す上述の生体モデルによって、個々の患者の生体器官をシミュレートするには、個々の患者に応じて、前述のパラメータと変数の初期値とを決定する必要がある(なお、以下では、特に区別しなければ、変数の初期値も生成対象のパラメータに含めるものとする)。
このため、本システムは、生体モデルの内部パラメータの組である内部パラメータセット(以下、単に「パラメータセット」ということがある)を求めるパラメータセット生成機能(パラメータセット生成部)を有しており、当該機能によって生成されたパラメータセットを前記生体モデルに与えることで、生体モデル演算部は生体器官の機能のシミュレートを行う。
【0036】
[パラメータセット生成部:第1実施形態]
[OGTT時系列データ入力:ステップS1−1]
図7は、第1実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。同図に示すように、パラメータを求めるには、まず、OGTT(Oral Glucose Tolerance Test;経口ブドウ糖負荷試験)時系列データの入力処理(ステップS1−1)が行われる。
OGTT時系列データは、生体モデルによってシミュレートしようとする患者に対して実際に行った検査であるOGTT(所定量のブドウ糖液を経口負荷して血糖値や血中インスリン濃度の時間的変化を測定)の結果であり、本システムは、実際の生体応答(実際の検査値)として入力を受け付ける。ここでは、OGTT時系列データとして、OGTTグルコースデータ(血糖値変動データ)と、OGTTインスリン(血中インスリン濃度変動データ)の2つが入力される。
【0037】
図8は、入力されるOGTT時系列データとしての血糖値変動データ(図8(a))及び血中インスリン濃度変動データ(図8(b))を示している。
図8(a)の血糖値変動データは、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血糖値BG(t)の時間的変化に対応した実測データである。
また、図8(b)の血中インスリン濃度変動データは、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血中インスリン濃度I1(t)の時間的変化に対応した実測データである。
なお、OGTT時系列データの本システムへの入力は、キーボード・マウスなどの入力デバイス130を用いて行ってもよいし、予めOGTT時系列データが登録されたデータベースなどの外部記憶装置から行ってもよい。
【0038】
[テンプレートマッチング:ステップS1−2]
次に、本システム(CPU100a)は、入力されたOGTT時系列データと、テンプレートデータベースDB1のテンプレートとのマッチングを行う。
テンプレートデータベースDB1は、図9に示すように、テンプレートとなる生体モデルの参照用出力値T1,T2,・・と、当該参照用出力値を発生させるパラメータセットPS#01,PS#02・・とが対応付けられた複数組のデータが予め格納されたものである。参照用出力値とパラメータセットの組を作成するには、任意の参照用出力値に対して、適当なパラメータセットを割り当てたり、逆に任意のパラメータセットを選択した場合の生体モデルの出力を生体シミュレーションシステムで求めたりすればよい。
【0039】
図10は、テンプレート(参照用出力値)T1の例を示している。図10(a)は、テンプレートとしての血糖値変動データであり、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血糖値BG(t)の時間的変化に対応した参照用時系列データである。図10(b)は、テンプレートとしての血中インスリン濃度変動データであり、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血中インスリン濃度I1(t)の時間的変化に対応した参照用時系列データである。
【0040】
システム(CPU100a)は、上記テンプレートデータベースDB1の各参照用時系列データと、OGTT時系列データとの類似度を演算する。類似度は、誤差総和を求めることによって得られる。誤差総和は、次式によって得られる。
誤差総和=αΣ|BG(0)−BGt(0)|+βΣ|PI(0)−PIt(0)|
+αΣ|BG(1)−BGt(1)|+βΣ|PI(1)−PIt(1)|
+αΣ|BG(2)−BGt(2)|+βΣ|PI(2)−PIt(2)|
+・・・
=α{Σ|BG(t)−BGt(t)|}+β{Σ|PI(t)−PIt(t)|}
ここで、
BG:入力データの血糖値[mg/dl]
PI:入力データの血中インスリン濃度[μU/ml]
BGt:テンプレートの血糖値[mg/dl]
PIt:テンプレートの血中インスリン濃度[μU/ml]
t:時間[分]
また、α及びβは規格化に用いる係数であり、
α=1/Average{ΣBG(t)}
β=1/Average{ΣPI(t)}
定式のAverageはテンプレートデータベースDB1に格納された全テンプレートに対する平均値を指す。
【0041】
図11は、テンプレートT1に対するOGTT時系列データの誤差総和(規格化なし)を示しており、具体的には、図11(a)は、図8(a)の血糖値と図10(a)の血糖値との誤差を示しており、図11(b)は、図8(b)のインスリンと図10(b)のインスリンの誤差を示している。
図8の入力データ(10分間隔の0分から180分のデータ)と、図10のテンプレートT1についてみると、
Σ|BG(t)−BGt(t)|=29
Σ|PI(t)−PIt(t)|=20
となる。ここで、α=0.00035、β=0.00105とすると、
誤差総和=(0.00035×29)+(0.00105×20)
=0.03115
【0042】
上記のようにして、CPU100aは、テンプレートデータベースDB1中の各テンプレートについて誤差総和を求め、誤差総和(類似度)が最小となるテンプレート、すなわちOGTT時系列データに最も近似するテンプレートを決定する(ステップS1−2)。
【0043】
[しきい値判定:ステップS1−3]
続いて、ステップS1−3では、CPUA100aは、ステップS1−2において決定されたテンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値以下であるか否かを判定することによって、決定されたテンプレートが入力されたOGTT時系列データに対し十分に類似しているか否かの判定を行う。例えば、しきい値(判定基準値)を0.1と定めた場合であって、ステップS1−2で上記テンプレートT1(誤差総和=0.03115)が抽出された場合、テンプレートT1はOGTT時系列データに類似していると判定される。
【0044】
[パラメータセット獲得:ステップS1−4]
さらに、ステップS1−4では、CPU100aは、ステップS1−2において決定され、ステップS1−3において類似していると判定されたテンプレートに対応するパラメータセットを、テンプレートデータベースDB1から獲得する。つまり、テンプレートT1に対応するパラメータセットPS#01が得られる(図9参照)。
なお、本システムにおいて、テンプレートデータベースDB1を用いて、ステップS1−2、ステップS1−4によってパラメータセットを選択する機能は、本システムにおけるデータベース参照手段を構成している。
下記表1は、このようにして得られたパラメータセットPS#01に含まれるパラメータ値の具体的数値例を示している。
【表1】
上記パラメータセットPS#01は、生体モデルに与えられると、入力されたOGTT時系列データに近似した出力を生成できるため、患者の生体器官を適切にシミュレーションすることができる。
【0045】
[生体機能プロファイル出力:ステップS1−5]
そして、本システム(CPU100a)は、得られたパラメータセットPS#01に含まれる各パラメータ値に基づいて、図12に示す生体機能プロファイルを作成し、ディスプレイ120に出力する。なお、図12(a)は、膵臓ブロックのパラメータに基づいて作成された膵臓プロファイルであり、図12(b)は、肝臓ブロックのパラメータに基づいて作成された肝臓プロファイルであり、図12(c)は、末梢組織ブロックのパラメータに基づいて作成された糖代謝プロファイルである。
【0046】
[生体モデルパラメータセット推定処理:ステップS1−6]
ステップS1−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、テンプレートデータベースDB1を用いずに、以下のパラメータセット推定処理によりパラメータセットを生成する。
図13は、遺伝的アルゴリズム(以下、単に「GA」ともいう)によるパラメータセット推定処理を示している。
GAによるパラメータセット候補の生成は、図13に示すように、パラメータセットの初期集団を生成する処理(ステップS1−6−1)、適応度評価処理(ステップS1−6−2)、選択・交叉・突然変異処理(ステップS1−6−4)、終了判定処理(ステップS1−6−3,S1−6−5)をCPU100aが実行することによって行われる。
以下、図13のアルゴリズムを詳述する。
【0047】
[初期集団生成:ステップS1−6−1]
本システムは、下記表2に示すような、生体モデルのパラメータのそれぞれについての探索範囲の情報を有している。表2の探索範囲は、各パラメータについて、人間が取り得る値の範囲であり、以下、表2の探索範囲を基本探索範囲という。
本システムは、パラメータごとに表2の最小値と最大値の範囲内で乱数を発生させることで、パラメータセットPSをランダムに自動生成する機能を有している。以下、このようにして得られたパラメータセットPSを「個体」と呼ぶことがある。
【表2】
【0048】
表2の探索範囲内でパラメータごとに乱数を発生させる処理を繰り返すことで、複数(例えば、10個)のパラメータセットPSからなる初期集団を生成することができる。
【0049】
[適応度評価:ステップS1−6−2]
本システムは、生成された個体に対して適応度評価を行い、(初期)集団中の個体PSの中から一部の個体PSを選択・抽出する。
適応度評価には、図7のステップS1−1で入力された実測のOGTT時系列データ(図8(a)(b)参照)がリファレンスとして用いられる。リファレンスとなる実測のデータ(生体応答)は、本システムが、生体モデルの出力として再現したいデータであり、生成されたパラメータセットを適用した生体モデルでもリファレンスと同様の応答が得られれば、その個体は、実測値への適応性が高いといえる。
そこで、生成されたパラメータセットの適応度評価は、生成されたパラメータセットを適用した生体モデルの出力(血糖値データ、血中インスリン濃度データ)と、リファレンス(OGTTグルコースデータ、OGTTインスリンデータ)との類似度(適応度)を判定することで行う。
【0050】
[選択:ステップS1−6−4−1]
続いて、本システムは、所定の選択基準、例えば適応度の高さ、に基づき、(初期)集団の中から、一部(例えば4個体)を選択し、「親」とする。なお、選択基準としては、「適応度の高いもの」に限らず、後の世代の「子」において適応度が高くなることを期待して、適応度が低い「親」が一部含まれるような基準であってもよい。
【0051】
[交叉:ステップS1−6−4−2]
上記「選択」によって「親」として選ばれた個体群に対し、本システムは、以下の手順で「子」となる新しい2個体を生成する。
まず、(1)選択された個体群から任意に2個体を選ぶ。次に、(2)個体同士の交叉回数(交換対象となるパラメータの数)を求める。交叉確率をXR(0〜1の範囲)とすると、交叉回数は次式で定められる。
交叉回数 = [XR × 1個体がもつパラメータ数]
ただし、[]はガウス記号である。(例)[3.14]=3
続いて、(3)交叉ポイントを求める。交叉ポイントは、1からパラメータ数(表2の場合「22」)までの整数値を、“交叉回数”回ランダムに発生させることで求められる。
最後に、(4)新しい個体の生成が行われる。具体的には、(1)で選んだ2個体に対し、(3)で定めた交叉ポイントのパラメータを交換し、新しい2個体を生成する。
上記(1)〜(4)の処理を繰り返すことで、「選択」によって減った個体数分(上記例では6個体)の新個体(子)を生成し、新たな集団を生成する。
【0052】
[突然変異:ステップS14−3]
さらに、本システムは、新集団のすべての個体に対し、突然変異確率MR(0〜1の範囲)により以下の手順で各個体の各パラメータを変化させる。
例えば、突然変異処理は、ある個体のあるパラメータについて、0〜1の範囲で乱数Rを発生させ、R ≦ MR であれば、表2に示す探索範囲内で乱数を発生させ、元のパラメータの値と置き換える。同様の処理を、すべての個体の全てのパラメータについて行う。
【0053】
[終了条件判定処理:ステップS1−6−3,S1−6−5]
図12に示すように、ステップS12〜S14までの処理は、繰り返し行われるが、ステップS1−6−2において適応度評価処理を行った結果、現在の集団の中に所定の基準以上に適応度の高い個体がある場合には、GAの処理を終了し、集団の中で最高の適応度の個体(パラメータセット)を推定結果とする(ステップS1−6−3)。
また、ステップS1−6−2〜S1−6−4(適応度評価〜突然変異)までの処理の繰り返し回数がある回数を超えた場合には、GAの処理を終了し、集団の中で最高の適応度の個体(パラメータセット)を推定結果とする(ステップS1−6−5)。終了条件としての繰り返し回数としては、例えば、300回とすることができる。
【0054】
以上の生体モデルパラメータセット推定処理によって求められたパラメータが、生体モデルに与えられると、入力されたOGTT時系列データに近似した出力を生成できるため、患者の生体器官を適切にシミュレーションすることができる。また、本システムは、推定処理によって求められたパラメータセットに含まれるパラメータ値に基づいて、生体機能プロファイルを作成し、ディスプレイ120に出力する(ステップS1−5)。
【0055】
第1実施形態によれば、テンプレートデータベースDB1のテンプレートの中に、OGTT時系列データと近似するものがあれば、当該データベースDB1を参照して簡単にパラメータセットを得られるため、生体モデルパラメータセット推定処理だけでパラメータセットを生成する場合に比べて、処理を高速化することができる。
なお、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、生体モデルパラメータセット推定処理(S1−6)用の機能を省略してもよい。
【0056】
[パラメータセット生成部:第2実施形態]
図14は、第2実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図14のステップS2−1、ステップS2−2、ステップS2−3、ステップS2−4は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3、ステップS1−4と同様の処理である。
第2実施形態では、テンプレートマッチングの結果、ステップS2−4において、テンプレートデータベースDB1より獲得されたパラメータセットをそのまま用いるのではなく、CPU100aは、当該パラメータセットに基づき、局所的なパラメータ探索範囲を決定する(ステップS2−5)。
ステップS2−5で決定される局所的探索範囲は、ステップS2−4で獲得されたパラメータセットの各パラメータ値を含むとともに、上記表2で示す基本探索範囲よりも範囲が狭いものである。具体的には、局所的探索範囲は、ステップS2−4で獲得されたパラメータセットのパラメータ値を中心値とし所定の探索幅mm1〜mm22を持つものである。つまり、各パラメータ値には、表3に示すように、それぞれ探索幅mm1〜mm22が設定されている。例えば、ステップS2−4で獲得されたパラメータセットのパラメータ値「h」については「h−mm1」が、パラメータ「h」の局所的探索範囲の最小値となり、「h+mm1」が、パラメータ「h」の局所的探索範囲の最大値となる。
【表3】
【0057】
一方、ステップS2−3において、CPU100aは、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定した場合、探索範囲としては、表2に示す既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を採用する。
【0058】
そして、ステップS2−7では、ステップS2−5で決定された局所的探索範囲、又はステップS2−6で決定された基本探索範囲で生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すなわち、局所的探索範囲又は基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
このように、第2実施形態におけるステップS2−5の機能は、パラメータセットを探索するパラメータセット探索手段を構成している。
また、ステップS2−7で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS2−8)。
【0059】
以上のように、第2実施形態のパラメータセット生成部は、テンプレートデータベースDB1から獲得したパラメータセットをそのまま用いるのではなく、得られたパラメータセットに基づいて探索範囲を決定し、当該探索範囲で、入力されたOGTT時系列データにより近似する出力を生成するパラメータセット探索するため、より適切なパラメータセットを得ることができる。
しかも、第2実施形態では、テンプレートデータベースDB1から獲得したパラメータセットに基づいて、基本探索範囲よりも小さい局所的な探索範囲が設定されるため、基本探索範囲で生体モデルパラメータセット推定処理によりパラメータセットを生成する場合に比べて、処理を高速化することができる。
なお、第2実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、基本探索範囲での生体モデルパラメータセット推定処理機能を省略してもよい。
【0060】
[パラメータセット生成部:第3実施形態]
図15は、第3実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図15のステップS3−1、ステップS3−2、ステップS3−3、ステップS3−4は、それぞれ図7のステップS1−1(図14のステップS2−1)、ステップS1−2(図14のステップS2−2)、ステップS1−3(図14のステップS2−3)、ステップS1−4(図14のステップS2−4)と同様の処理である。
また、図15のステップS3−5は、図14のステップS2−5と同様の処理である。ただし、図14のステップS2−5では、テンプレートデータベースDB1から獲得したパラメータセットに基づき「探索範囲」を決定していたが、第3実施形態のステップS3−5では、ステップS2−5と同様の処理により「選択範囲」を決定する。
なお、このステップS3−5の機能は、本システムにおける選択範囲決定手段を構成している。
【0061】
また、第3実施形態のステップS3−6では、前記「選択範囲」に関係なく、既定値パラメータ探索範囲(基本探索範囲)で、生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すわち、基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの自動生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
遺伝的アルゴリズムの実行中に自動生成されたパラメータセットは、遺伝的アルゴリズムにおける適応度評価による第1次選択で絞られ、入力されたOGTT時系列データに近似したパラメータセットが選択される。なお、ステップS3−6の機能は、本システムの第1次選択手段を構成している。
また、ここで、遺伝的アルゴリズムは、複数回実行され、複数のパラメータセットの生成が行われる。複数生成されたパラメータセットは、生体モデルに与えられると、いずれも入力されたOGTT時系列データに近似した出力を生成できるものであるが、同様の出力を生成できるパラメータセットは複数あり得る。例えば、複数のパラメータセットの中には、人ではあり得ないパラメータ値の組み合わせを持つパラメータセットが含まれていることがある。
【0062】
そこで、第3実施形態では、ステップS3−6の生体モデルパラメータセット推定処理で求めた複数のパラメータセットを前記「選択範囲」で絞り込む第2次選択処理を行う(ステップS3−7)。「選択範囲」は、適切なパラメータ値が存在する可能性の範囲であるから、複数のパラメータセットのうち、この「選択範囲」に入るパラメータセットを選択することで、適切なパラメータセットを選ぶことができる。なお、ステップS−7の機能は、本システムの第2次選択手段を構成している。
【0063】
また、第3実施形態では、ステップS3−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を探索範囲とした生体モデルパラメータセット推定処理により単一のパラメータセットを生成する。
そして、ステップS3−7で選択されたパラメータセット又はステップS3−8で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS3−9)。
なお、第3実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、ステップS3−8の処理機能を省略してもよい。
【0064】
[パラメータセット生成部:第4実施形態]
図16は、第4実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図16のステップS4−1、ステップS4−2、ステップS4−3は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3と同様の処理である。
また、図16のステップS4−4は、図7のステップS1−4とほぼ同様の処理であるが、ステップS4−4では、テンプレートデータベースDB1ではなく、図17に示すテンプレートデータベースDB2を参照する。図17のテンプレートデータベースDB2は、一つのテンプレート(参照用出力)に対応して複数のパラメータセット候補が割り当てられている。例えば、テンプレートT1には、5つのパラメータセット候補PS#01−A、PS#02−A,PS#03−A,PS#04−A,PS−#05−Aが割り当てられている。これらの5つのパラメータセット候補は、それぞれパラメータ値が異なっているが、生体モデルにパラメータとして与えられると、当該生体モデルは、テンプレートT1に近似した出力を発生するものである。
第4実施形態においては、OGTT時系列データに最も近似するテンプレートとしてテンプレートT1が選択された場合、ステップS4−4において、テンプレートデータベースDB2を参照し、テンプレートT1に対応する5つのパラメータセット候補PS#01−A〜PS#05−Aを獲得する。
【0065】
これらの候補PS#01−A〜PS#05−Aは、生体モデルに与えられると、いずれもOGTT時系列データ(テンプレートT1)に比較的近似した出力を発生させることができるものであるが、それらの出力は互いに多少異なっている。
そして、ステップS4−5では、CPU100aが、各パラメータセット候補PS#01−A〜PS#05−Aが与えられた生体モデルの出力と、OGTT時系列データとを対象に、テンプレートマッチングと同様の類似度演算(誤差総和演算)を行う。誤差総和が最小となるパラメータセット候補が、OGTT時系列データに最も近似する出力を発生可能なものである。
なお、テンプレートデータベースDB2において、一つのテンプレートに対応するパラメータセット候補の数は、5個に限られるものではなく、いくつであっても良い。
【0066】
また、第4実施形態では、ステップS4−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を探索範囲とした生体モデルパラメータセット推定処理によりパラメータセットを生成する。
そして、ステップS4−5又はステップS4−6で得られたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS4−7)。
なお、第4実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、ステップS3−7の処理機能を省略してもよい。
【0067】
[パラメータセット生成部:第5実施形態]
図18は、第5実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図18のステップS5−1、ステップS5−2、ステップS5−3は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3と同様の処理である。
また、図18のステップS5−4は、図7のステップS1−4や図14のステップS2−4とほぼ同様の処理であるが、ステップS5−4では、テンプレートデータベースDB1ではなく、図19に示すテンプレートデータベースDB3を参照する。図19のテンプレートデータベースDB3には、一つのテンプレート(参照用出力)に対応してパラメータの探索範囲が割り当てられている。例えば、テンプレートT1に対応する探索範囲としては、下記表4に示す範囲が設定されている。
【表4】
【0068】
テンプレートデータベースDB3においてテンプレートに対応する探索範囲は、表2に示す既定のパラメータ探索範囲(基本探索範囲)よりも範囲が狭く、当該探索範囲における任意のパラメータセットは、生体モデルに与えられるとテンプレートに近似した出力を発生させるものである。すなわち、表4の探索範囲は、前述の局所的探索範囲と同様のものである。
この第5実施形態では、第2実施形態と同様に、テンプレートに基づき、基本探索範囲よりも狭い探索範囲を決定できるが、テンプレートデータベースDB3に局所的探索範囲が格納されているため、テンプレートマッチングから直ちに局所探索範囲を得られ、高速な処理が可能である。
【0069】
また、ステップS5−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、探索範囲としては、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)が採用され(ステップS5−5)、ステップS5−6では、ステップS5−4で決定された局所的探索範囲、又はステップS5−5で決定された基本探索範囲で生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すなわち、局所的探索範囲又は基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
上記のように、ステップS5−6の機能は、本システムにおいて、パラメータセットを選択する選択手段を構成している。
また、ステップS5−6で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS5−7)。
【0070】
[パラメータセット生成部:第6実施形態]
図20は、第6実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図20のステップS6−1、ステップS6−2、ステップS6−3は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3と同様の処理である。
また、図20のステップS6−4は、図18のステップS5−4と同様の処理である。ただし、図18のステップS5−4は、テンプレートデータベースDB3からパラメータセット「探索範囲」を獲得していたが、第6実施形態のステップS6−4では、ステップS5−4と同様の処理によりパラメータセットの「選択範囲」を決定する。
【0071】
また、ステップS6−5では、第3実施形態のステップS3−6と同様に、前記「選択範囲」に関係なく、既定値パラメータ探索範囲(基本探索範囲)で、生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すわち、基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの自動生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
遺伝的アルゴリズムの実行中に自動生成されたパラメータセットは、遺伝的アルゴリズムにおける適応度評価による第1次選択で絞られ、入力されたOGTT時系列データに近似したパラメータセットが選択される。
また、ここで、遺伝的アルゴリズムは、複数回実行され、複数のパラメータセットの生成が行われる。
このように、ステップS6−5の機能は、本システムの第1次選択手段を構成している。
【0072】
そして、第6実施形態では、第3実施形態のステップS3−7と同様に、生体モデルパラメータセット推定処理で求めた複数のパラメータセットを前記「選択範囲」で絞り込む第2次選択処理を行う(ステップS6−6)。「選択範囲」は、適切なパラメータ値が存在する可能性の範囲であるから、複数のパラメータセットのうち、この「選択範囲」に入るパラメータセットを選択することで、適切なパラメータセットを選ぶことができる。
このように、ステップS6−6の機能は、本システムの第2次選択手段を構成している。
【0073】
また、第6実施形態でも、ステップS6−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を探索範囲とした生体モデルパラメータセット推定処理により単一のパラメータセットを生成する(ステップS6−7)。
そして、ステップS6−6で選択されたパラメータセット又はステップS6−7で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120出力される(ステップS6−8)。
なお、第6実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、ステップS6−7の処理機能を省略してもよい。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、シミュレーションの対象は、糖尿病の病態に限られるものではなく、他の病態に関するものであってもよい。また、生体モデルの構成やそのパラメータも上記のものに限られるものではなく、適宜変更可能である。
また、探索手段(選択手段)は、遺伝的アルゴリズムによって構成するものに限られず、ランダムにパラメータセットを自動生成し、適切な基準によって、適切なパラメータセットを選択するものであれば、他のアルゴリズムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】生体モデルの全体構成を示すブロック図である。
【図3】生体モデルにおける膵臓モデルのブロック図である。
【図4】生体モデルにおける肝臓モデルのブロック図である。
【図5】生体モデルにおけるインスリン動態モデルのブロック図である。
【図6】生体モデルにおける末梢組織モデルのブロック図である。
【図7】第1実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】OGTT時系列データであり、(a)は血糖値、(b)は血中インスリン濃度である。
【図9】テンプレートデータベースDB1の構成図である。
【図10】テンプレートデータであり、(a)は血糖値、(b)はインスリン濃度である。
【図11】テンプレートT1に対するOGTT時系列データの誤差総和を示す図であり、(a)は血糖値、(b)はインスリン濃度である。
【図12】生体機能プロファイルである。
【図13】遺伝的アルゴリズムのフローチャートである。
【図14】第2実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第3実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】第4実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】テンプレートデータベースDB2の構成図である。
【図18】第5実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】テンプレートデータベースDB3の構成図である。
【図20】第6実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 膵臓ブロック
2 肝臓ブロック
3 インスリン動態ブロック
4 末梢組織ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体シミュレーション、特に、糖尿病の病態をシミュレートするシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体を数理モデルによって記述することが従来から試みられている。このようなモデルとしては、例えば、バーグマンのミニマルモデルを挙げることができる(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
このミニマルモデルは、血糖値、血漿インスリン濃度及び末梢組織のインスリン作用点におけるインスリン作用量すなわちリモートインスリンを変数としている。ここで、時刻tにおける血糖値をG(t)、血漿インスリン濃度をI(t)、リモートインスリンをX(t)とすると、G(t)、I(t)、X(t)はそれぞれ時間微分を左辺とする下記の微分方程式で記述される。
【0003】
dG(t)/dt=−p1(G(t)−Gb)−X(t)G(t)
dX(t)/dt=−p2X(t)+p3(I(t)−Ib)
dI(t)/dt=−n(I(t)−Ib)+γ(G(t)−h)(ただしG(t) >h)
=−n(I(t)−Ib)+γ(G(t)−h)(ただしG(t) <=h)
ここで、式中の各パラメータは、
p1 :インスリン非依存性ブドウ糖代謝速度
Gb :血糖値基底値
p2 :インスリンの作用点におけるインスリン取込能
p3 :インスリン依存性ブドウ糖代謝に対するインスリン消費率
Ib :インスリン濃度基底値
n :単位時間当たりのインスリン消費量
γ :ブドウ糖刺激に対するインスリン分泌感度
h :インスリン分泌が開始される血糖値しきい値
であって、これらは各個人によって異なる値をもつものである。
【非特許文献1】バーグマン(Bergman)等、アメリカン ジャーナル オブ フィジィオロジー(American Journal of Physiology)、1979年、第236巻、第6号、p.E−667−77
【非特許文献2】バーグマン(Bergman)等、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲイション(Journal of Clinical Investigation )、1981年、第68巻、第6号、 p.1456−67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような生体モデルを個々の患者に適用して、患者の生体をシミュレートし、それを患者の診断等に用いようとすれば、生体モデルを構成する上記パラメータを個々の患者に応じて適切に設定する必要がある。
つまり、生体モデルによって患者の実際の生体を再現しようとすれば、上記パラメータの正確性が重要となり、個々の患者によって異なるべきパラメータをできるだけ正確に求める必要がある。
そこで本発明は、個々の患者に対応した生体モデルのパラメータを求めるための技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセットとの組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、実際の生体応答に近似する参照用出力を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットを選択するデータベース参照手段を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0006】
第1発明によれば、実際の生体応答に基づいて、テンプレートデータベースを参照することで、適切な内部パラメータセットを選択することができる。
【0007】
第2の発明は、前記内部パラメータセット生成部が、前記データベース参照手段によって選択された内部パラメータセットに基づいて、実際の生体応答に、より近似する出力を生成する内部パラメータセットを探索するパラメータセット探索手段を更に備えていることを特徴とする。
【0008】
テンプレートデータベース参照によって得られた内部パラメータセットは、比較的適切なものであるから、これに基づいて、より近似する出力を生成するパラメータセットを探索することで、効率良く探索を行うことができる。
【0009】
第3の発明は、前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの探索範囲を決定する探索範囲決定手段を更に備え、前記パラメータセット探索手段は、前記探索範囲決定手段によって決定された探索範囲内で、前記パラメータセットを探索するように構成されていることを特徴とする。
テンプレートデータベース参照によって得られた内部パラメータセットは、比較的適切なものであるから、この内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの探索範囲を決定することで、比較的狭いが適切な探索範囲を決定でき、効率よく探索を行うことができる。
【0010】
第4の発明は、前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの選択範囲を決定する選択範囲決定手段を更に備え、前記パラメータセット探索手段は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択して、複数の内部パラメータセットを得る第1次選択手段と、前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0011】
第4発明によれば、第1次選択手段によって得られた複数の内部パラメータセットを、テンプレートデータベースを参照して得られたパラメータセットに基づいて決定された選択範囲で絞り込むことによって、適切なパラメータセットを得ることができる。
【0012】
第5発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット探索範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、実際の生体応答に近似する参照用出力を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの探索範囲を選択するデータベース参照手段と、前記探索範囲内で、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0013】
第5発明によれば、比較的狭いが適切な探索範囲でパラメータセットを選択すればよいため、効率的に適切なパラメータセットを得ることができる。
【0014】
第6の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット選択範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、実際の生体応答に近似する参照用出力を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの選択範囲を選択するデータベース参照手段と、前記探索範囲内で、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する第1選択手段と、前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステムである。
【0015】
第6発明によれば、第1次選択手段によって得られた複数の内部パラメータセットを、テンプレートデータベースを参照して得られた選択範囲で絞り込むことによって、適切なパラメータセットを得ることができる。
【0016】
また、コンピュータプログラムに係る発明は、コンピュータを、前記の生体シミュレーションシステムとして機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生体モデルのための適切なパラメータセットを生成でき、適切な生体シミュレーションが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体シミュレーションシステム(以下、単に「システム」ともいう)のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るシステム100は、本体110と、ディスプレイ120と、入力デバイス130とから主として構成されたコンピュータ100aによって構成されている。本体110は、CPU110aと、ROM110bと、RAM110cと、ハードディスク110dと、読出装置110eと、入出力インタフェース110fと、画像出力インタフェース110hとから主として構成されており、CPU110a、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110d、読出装置110e、入出力インタフェース110f、及び画像出力インタフェース110hは、バス110iによってデータ通信可能に接続されている。
【0019】
CPU110aは、ROM110bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM110cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム140aを当該CPU110aが実行することにより、後述するような各機能ブロックが実現され、コンピュータ100aがシステム100として機能する。
ROM110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0020】
RAM110cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM110cは、ROM110b及びハードディスク110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU110aの作業領域として利用される。
ハードディスク110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム140aも、このハードディスク110dにインストールされている。
【0021】
読出装置110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体140に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体140には、コンピュータを本発明のシステムとして機能させるためのアプリケーションプログラム140aが格納されており、コンピュータ100aが当該可搬型記録媒体140から本発明に係るアプリケーションプログラム140aを読み出し、当該アプリケーションプログラム140aをハードディスク110dにインストールすることが可能である。
【0022】
なお、前記アプリケーションプログラム140aは、可搬型記録媒体140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ100aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム140aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク110dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム140aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0023】
入出力インタフェース110fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス130が接続されており、ユーザが当該入力デバイス130を使用することにより、コンピュータ100aにデータを入力することが可能である。
画像出力インタフェース110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ120に接続されており、CPU110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ120に出力するようになっている。ディスプレイ120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0024】
図2は、生体数理モデル(以下、単に「生体モデル」ということがある)を用いた生体シミュレーションシステム(以下、単に「システム」ということがある)のブロック図を示している。
【0025】
図2に示されるように、生体モデル(生体モデル演算部)は、膵臓ブロック(膵臓ブロック演算部)1、肝臓ブロック(肝臓ブロック演算部)2、インスリン動態ブロック(インスリン動態ブロック演算部)3及び末梢組織ブロック(末梢組織ブロック演算部)4から構成されており、各ブロックはそれぞれ、生体モデル外部から又は他のブロックから与えられる入力と、他のブロックへの出力とを有している。
すなわち、膵臓ブロック1は、膵臓の機能を模した演算を行うものであり、血糖値6を入力とし、インスリン分泌速度7を他のブロックへの出力としている。
肝臓ブロック2は、肝臓の機能を模した演算を行うものであり、消化管からのグルコース吸収5、血糖値6及びインスリン分泌速度7を入力とし、正味グルコース放出8及び肝臓通過後インスリン9を出力としている。
インスリン動態ブロック3は、インスリン動態を模した演算を行うものであり、肝臓通過後インスリン9を入力とし、末梢組織でのインスリン濃度10を出力としている。
末梢組織ブロック4は、末梢組織を模した演算を行うものであり、正味グルコース放出8及び末梢組織でのインスリン濃度10を入力とし、血糖値6を出力としている。
前記グルコース吸収5は、外部から与えられるデータであり、この機能は例えば入力デバイス130を用いてユーザが検査データ等を入力することにより実現される。また、それぞれの機能ブロック1〜4は、コンピュータプログラム140aがCPU110aにより実行されることにより実現される。
なお、各ブロックの出力としては、他のブロックへ与えるための出力以外に、インスリン動態ブロック3における血中インスリン濃度I1(図5参照)のように、ブロック3において算出されるが他のブロックにはそのままでは与えられない値も存在し、このような値も生体モデル全体としてみた場合には、生体モデルから得られる値であり、生体モデルの出力に含まれる。
【0026】
つぎに、前述した例における各ブロックの詳細について説明する。なお、FGB及びWsはそれぞれ空腹時血糖値(FGB=BG(0))及び想定体重を示しており、またDVg及びDViはそれぞれグルコースに対する分布容量体積及びインスリンに対する分布容量体積を示している。
膵臓ブロック1の入出力の関係は、以下の微分方程式(1)を用いて記述することができる。また、微分方程式(1)と等価な、図3に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(1):
dY/dt = −α{Y(t)−β(BG(t)−h)} (ただし、BG(t)> h)
= −αY(t) (ただし、BG(t)<= h)
dX/dt = −M・X(t)+Y(t)
SR(t) = M・X(t)
変数:
BG(t):血糖値
X(t) :膵臓から分泌可能なインスリン総量
Y(t) :グルコース刺激に対して新たに供給されるインスリン供給速度
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
パラメータ:
h :インスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値
α :グルコース刺激に対する追従性
β :グルコース刺激に対する感受性
M :単位濃度あたりの分泌速度
ここで、図2における膵臓ブロック1への入力である血糖値6はBG(t)と対応し、また出力であるインスリン分泌速度7はSR(t)と対応する。
【0027】
図3のブロック線図において、6は血糖値BG、7は膵臓からのインスリン分泌速度SR(t)、12はインスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値h、13はグルコース刺激に対する感受性β、14はグルコース刺激に対する追従性α、15は積分要素、16はグルコース刺激に対して新たに供給されるインスリン供給速度Y(t)、17は積分要素、18は膵臓から分泌可能なインスリン総量X(t)、19は単位濃度当たりの分泌速度Mをそれぞれ示している。
【0028】
肝臓ブロック2の入出力の関係は、以下の微分方程式(2)を用いて記述することができる。また、微分方程式(2)と等価な、図4に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(2):
dI4(t)/dt = α2{−A3I4(t) + (1−A7)・SR(t) }
Goff(FBG) = f1(ただしFBG< f3)
= f1 + f2・(FBG−f3)(ただしFBG>=f3)
Func1(FBG)= f4 − f5・(FBG−f6)
Func2(FBG)=f7/FBG
b1(I4(t))= f8{1 + f9・I4(t)}
HGU(t) =r・Func1(FBG)・b1(I4(t))・RG(t)+ (1 −r)・Kh・BG(t)・I4(t) (ただしHGU(t)>= 0)
HGP(t) = I4off・Func2(FBG)・b2+Goff(FBG)
−I4(t)・Func2(FBG)・b2
(ただしHGP(t)>= 0)
SGO(t) =RG(t)+ HGP(t)−HGU(t)
SRpost(t) = A7SR(t)
変数:
BG(t):血糖値
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
RG(t):消化管からのグルコース吸収
HGP(t) :肝糖放出
HGU(t) :肝糖取込
SGO(t) :肝臓からの正味グルコース
I4(t) :肝インスリン濃度
パラメータ:
Kh :単位インスリン、単位グルコース当たりの肝臓糖取り込み速度
A7 :肝臓でのインスリン取り込み率
Goff :基礎代謝に対するグルコース放出速度
b2 :肝糖放出抑制率に関する調整項
r :インスリン非依存性肝糖取り込み分配率
α2 :肝インスリンに対する伝播効率
I4off :肝糖放出が抑制されるインスリン濃度のしきい値
関数:
Goff(FBG): 基礎代謝に対するグルコース放出速度
Func1(FBG): 消化管からのグルコース刺激に対する肝糖取り込み率
Func2(FBG): インスリン刺激に対する肝糖放出抑制率
f1〜f9 : 上記の3要素の表現にあたって用いた定数
b1(I4(t)): 肝糖取り込み率に関する調整項
ここで、図2における肝臓ブロックへの入力である、消化管からのグルコース吸収5はRG(t)、血糖値6はBG(t)、インスリン分泌速度7はSR(t)とそれぞれ対応し、また出力である正味グルコース放出8はSGO(t)、肝臓通過後インスリン9はSRpost(t)とそれぞれ対応している。
【0029】
図4のブロック線図において、5は消化管からのグルコース吸収RG(t)、6は血糖値BG(t)、7は膵臓からのインスリン分泌速度SR(t)、8は肝臓からの正味グルコースSGO(t)、9は肝臓通過後のインスリンSRpost(t)、24は肝臓のインスリン通過率(1−A7)、25は肝インスリンに対する伝播効率α2、26は肝臓通過後のインスリン分配速度A3、27は積分要素、28は肝インスリン濃度I4(t)、9はインスリン依存性肝糖取り込み分配率(1−r)、30は単位インスリン、単位グルコース当たりの肝臓糖取り込み速度Kh、31はインスリン非依存性肝糖取り込み分配率r、32は消化管からのグルコース刺激に対する肝糖取り込み率Func1(FBG)、33は肝糖取り込み率に関する調整項b1(I4(t))、34は肝糖取込HGU(t)、35は肝糖放出が抑制されるインスリン濃度のしきい値I4off、36はインスリン刺激に対する肝糖放出抑制率Func2(FBG)、37は肝糖放出抑制率に関する調整項b2、38は基礎代謝に対するグルコース放出速度、39は肝糖放出HGP(t)、40は肝臓でのインスリン取り込み率A7を示している。
【0030】
インスリン動態分泌の入出力の関係は、以下の微分方程式(3)を用いて記述することができる。また、微分方程式(3)と等価な、図5に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(3):
dI1(t)/dt = −A3I1(t) +A5I2(t) + A4I3(t) +SR post(t)
dI2(t)/dt= A6I1(t)− A5I2(t)
dI3(t)/dt=A2I1(t) − A1I3(t)
変数:
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
I1(t) :血中インスリン濃度
I2(t) :インスリン非依存組織でのインスリン濃度
I3(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
A1 :末梢組織でのインスリン消失速度
A2 :末梢組織へのインスリン分配率
A3 :肝臓通過後のインスリン分配速度
A4 :末梢組織通過後のインスリン流出速度
A5 :インスリン非依存組織でのインスリン消失速度
A6 :インスリン非依存組織へのインスリン分配率
ここで、図2におけるインスリン動態ブロックの入力である肝臓通過後のインスリン9は、SRpost(t)と対応し、また出力である末梢組織でのインスリン濃度10は、I3(t)と対応する。
【0031】
図5のブロック線図において、9は肝臓通過後のインスリンSRpost(t)、10は末梢組織でのインスリン濃度I3(t)、50は積分要素、51は肝臓通過後のインスリン分配速度A3、52は血中インスリン濃度I1(t)、53は末梢組織へのインスリン分配率A2、54は積分要素、55は末梢組織でのインスリン消失速度A1、56は末梢組織通過後のインスリン流出速度A4、57はインスリン非依存組織へのインスリン分配率A6、58は積分要素、59はインスリン非依存組織でのインスリン濃度I2(t)、60はインスリン非依存組織でのインスリン消失速度A5をそれぞれ示している。
【0032】
末梢組織ブロック4の入出力の関係は、以下の微分方程式(4)を用いて記述することができる。また、微分方程式(4)と等価な、図6に示されるブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式(4):
dBG´/dt = SGO(t)−u* Goff(FBG)−Kb・BG´(t)− Kp・I3(t)・BG´(t)
変数:
BG´(t) :血糖値
(ただしBG[mg/d1]、BG´[mg/kg])
SGO(t) :肝臓からの正味グルコース
I3(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
Kb :末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度
Kp :単位インスリン、単位グルコースあたりの
末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度
u :基礎代謝に対するグルコース放出速度のうち
基礎代謝に対するインスリン非依存グルコース消費が占める割合
関数:
Goff(FBG):基礎代謝に対するグルコース放出速度
f1〜f3 :Goffの表現にあたって用いた定数
ここで、図2における末梢組織ブロックへの入力である末梢組織でのインスリン濃度10はI3(t)、肝臓からの正味グルコース8はSGO(t)とそれぞれ対応し、また出力である血糖値6はBG(t)と対応する。
【0033】
図6のブロック線図において、6は血糖値BG(t)、8は肝臓からの正味グルコースSGO(t)、10は末梢組織でのインスリン濃度I3(t)、70は基礎代謝に対するインスリン非依存グルコース消費速度u* Goff(FBG)、71は積分要素、72は末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度Kb、73は単位インスリン、単位グルコース当たりの末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度Kp、74は単位変換定数Ws/DVgをそれぞれ示している。
【0034】
各ブロックは、以上の微分方程式に基づいて、それぞれの出力項目の時系列変化を出力することができる。さらに、図2に示すように、本システムを構成するブロック間の入力、出力は、相互に接続されており、あるブロックの出力が他のブロックの入力が与えられるため、ブロックの出力の時間的変化に反応して他の各ブロックの出力が変化する。したがって、例えば、この生体モデルに消化管からのグルコース吸収RGを入力として与えることで、血糖値BG(t)と血中インスリン濃度I1(t)といった値の時系列変化を、数式に基づいて計算し、シミュレートすることができる。
このように逐次的に算出した血糖値、インスリン濃度は、ディスプレイ120に表示することが可能である。これによって、前述のように生体器官を模擬した結果をユーザが容易に確認することができる。また、糖尿病診療支援システムのような医療システムの中の生体機能を模擬するサブシステムとして本システムを採用することもできる。この場合には、算出した血糖値、インスリン濃度の時系列変化を医療システムの他の構成要素に受け渡し、これによって例えば糖尿病診療支援情報を作成する等、本システムによって算出した血糖値、インスリン濃度に基づいて信頼性の高い医療情報を得ることも可能である。
なお、本システムの微分方程式の計算には、例えばE−Cell(慶應義塾大学公開ソフトウェア)やMatLab(マスワークス社製品)を用いることができるが、他の計算システムを用いてもよい。
【0035】
図2〜図6に示す上述の生体モデルによって、個々の患者の生体器官をシミュレートするには、個々の患者に応じて、前述のパラメータと変数の初期値とを決定する必要がある(なお、以下では、特に区別しなければ、変数の初期値も生成対象のパラメータに含めるものとする)。
このため、本システムは、生体モデルの内部パラメータの組である内部パラメータセット(以下、単に「パラメータセット」ということがある)を求めるパラメータセット生成機能(パラメータセット生成部)を有しており、当該機能によって生成されたパラメータセットを前記生体モデルに与えることで、生体モデル演算部は生体器官の機能のシミュレートを行う。
【0036】
[パラメータセット生成部:第1実施形態]
[OGTT時系列データ入力:ステップS1−1]
図7は、第1実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。同図に示すように、パラメータを求めるには、まず、OGTT(Oral Glucose Tolerance Test;経口ブドウ糖負荷試験)時系列データの入力処理(ステップS1−1)が行われる。
OGTT時系列データは、生体モデルによってシミュレートしようとする患者に対して実際に行った検査であるOGTT(所定量のブドウ糖液を経口負荷して血糖値や血中インスリン濃度の時間的変化を測定)の結果であり、本システムは、実際の生体応答(実際の検査値)として入力を受け付ける。ここでは、OGTT時系列データとして、OGTTグルコースデータ(血糖値変動データ)と、OGTTインスリン(血中インスリン濃度変動データ)の2つが入力される。
【0037】
図8は、入力されるOGTT時系列データとしての血糖値変動データ(図8(a))及び血中インスリン濃度変動データ(図8(b))を示している。
図8(a)の血糖値変動データは、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血糖値BG(t)の時間的変化に対応した実測データである。
また、図8(b)の血中インスリン濃度変動データは、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血中インスリン濃度I1(t)の時間的変化に対応した実測データである。
なお、OGTT時系列データの本システムへの入力は、キーボード・マウスなどの入力デバイス130を用いて行ってもよいし、予めOGTT時系列データが登録されたデータベースなどの外部記憶装置から行ってもよい。
【0038】
[テンプレートマッチング:ステップS1−2]
次に、本システム(CPU100a)は、入力されたOGTT時系列データと、テンプレートデータベースDB1のテンプレートとのマッチングを行う。
テンプレートデータベースDB1は、図9に示すように、テンプレートとなる生体モデルの参照用出力値T1,T2,・・と、当該参照用出力値を発生させるパラメータセットPS#01,PS#02・・とが対応付けられた複数組のデータが予め格納されたものである。参照用出力値とパラメータセットの組を作成するには、任意の参照用出力値に対して、適当なパラメータセットを割り当てたり、逆に任意のパラメータセットを選択した場合の生体モデルの出力を生体シミュレーションシステムで求めたりすればよい。
【0039】
図10は、テンプレート(参照用出力値)T1の例を示している。図10(a)は、テンプレートとしての血糖値変動データであり、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血糖値BG(t)の時間的変化に対応した参照用時系列データである。図10(b)は、テンプレートとしての血中インスリン濃度変動データであり、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血中インスリン濃度I1(t)の時間的変化に対応した参照用時系列データである。
【0040】
システム(CPU100a)は、上記テンプレートデータベースDB1の各参照用時系列データと、OGTT時系列データとの類似度を演算する。類似度は、誤差総和を求めることによって得られる。誤差総和は、次式によって得られる。
誤差総和=αΣ|BG(0)−BGt(0)|+βΣ|PI(0)−PIt(0)|
+αΣ|BG(1)−BGt(1)|+βΣ|PI(1)−PIt(1)|
+αΣ|BG(2)−BGt(2)|+βΣ|PI(2)−PIt(2)|
+・・・
=α{Σ|BG(t)−BGt(t)|}+β{Σ|PI(t)−PIt(t)|}
ここで、
BG:入力データの血糖値[mg/dl]
PI:入力データの血中インスリン濃度[μU/ml]
BGt:テンプレートの血糖値[mg/dl]
PIt:テンプレートの血中インスリン濃度[μU/ml]
t:時間[分]
また、α及びβは規格化に用いる係数であり、
α=1/Average{ΣBG(t)}
β=1/Average{ΣPI(t)}
定式のAverageはテンプレートデータベースDB1に格納された全テンプレートに対する平均値を指す。
【0041】
図11は、テンプレートT1に対するOGTT時系列データの誤差総和(規格化なし)を示しており、具体的には、図11(a)は、図8(a)の血糖値と図10(a)の血糖値との誤差を示しており、図11(b)は、図8(b)のインスリンと図10(b)のインスリンの誤差を示している。
図8の入力データ(10分間隔の0分から180分のデータ)と、図10のテンプレートT1についてみると、
Σ|BG(t)−BGt(t)|=29
Σ|PI(t)−PIt(t)|=20
となる。ここで、α=0.00035、β=0.00105とすると、
誤差総和=(0.00035×29)+(0.00105×20)
=0.03115
【0042】
上記のようにして、CPU100aは、テンプレートデータベースDB1中の各テンプレートについて誤差総和を求め、誤差総和(類似度)が最小となるテンプレート、すなわちOGTT時系列データに最も近似するテンプレートを決定する(ステップS1−2)。
【0043】
[しきい値判定:ステップS1−3]
続いて、ステップS1−3では、CPUA100aは、ステップS1−2において決定されたテンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値以下であるか否かを判定することによって、決定されたテンプレートが入力されたOGTT時系列データに対し十分に類似しているか否かの判定を行う。例えば、しきい値(判定基準値)を0.1と定めた場合であって、ステップS1−2で上記テンプレートT1(誤差総和=0.03115)が抽出された場合、テンプレートT1はOGTT時系列データに類似していると判定される。
【0044】
[パラメータセット獲得:ステップS1−4]
さらに、ステップS1−4では、CPU100aは、ステップS1−2において決定され、ステップS1−3において類似していると判定されたテンプレートに対応するパラメータセットを、テンプレートデータベースDB1から獲得する。つまり、テンプレートT1に対応するパラメータセットPS#01が得られる(図9参照)。
なお、本システムにおいて、テンプレートデータベースDB1を用いて、ステップS1−2、ステップS1−4によってパラメータセットを選択する機能は、本システムにおけるデータベース参照手段を構成している。
下記表1は、このようにして得られたパラメータセットPS#01に含まれるパラメータ値の具体的数値例を示している。
【表1】
上記パラメータセットPS#01は、生体モデルに与えられると、入力されたOGTT時系列データに近似した出力を生成できるため、患者の生体器官を適切にシミュレーションすることができる。
【0045】
[生体機能プロファイル出力:ステップS1−5]
そして、本システム(CPU100a)は、得られたパラメータセットPS#01に含まれる各パラメータ値に基づいて、図12に示す生体機能プロファイルを作成し、ディスプレイ120に出力する。なお、図12(a)は、膵臓ブロックのパラメータに基づいて作成された膵臓プロファイルであり、図12(b)は、肝臓ブロックのパラメータに基づいて作成された肝臓プロファイルであり、図12(c)は、末梢組織ブロックのパラメータに基づいて作成された糖代謝プロファイルである。
【0046】
[生体モデルパラメータセット推定処理:ステップS1−6]
ステップS1−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、テンプレートデータベースDB1を用いずに、以下のパラメータセット推定処理によりパラメータセットを生成する。
図13は、遺伝的アルゴリズム(以下、単に「GA」ともいう)によるパラメータセット推定処理を示している。
GAによるパラメータセット候補の生成は、図13に示すように、パラメータセットの初期集団を生成する処理(ステップS1−6−1)、適応度評価処理(ステップS1−6−2)、選択・交叉・突然変異処理(ステップS1−6−4)、終了判定処理(ステップS1−6−3,S1−6−5)をCPU100aが実行することによって行われる。
以下、図13のアルゴリズムを詳述する。
【0047】
[初期集団生成:ステップS1−6−1]
本システムは、下記表2に示すような、生体モデルのパラメータのそれぞれについての探索範囲の情報を有している。表2の探索範囲は、各パラメータについて、人間が取り得る値の範囲であり、以下、表2の探索範囲を基本探索範囲という。
本システムは、パラメータごとに表2の最小値と最大値の範囲内で乱数を発生させることで、パラメータセットPSをランダムに自動生成する機能を有している。以下、このようにして得られたパラメータセットPSを「個体」と呼ぶことがある。
【表2】
【0048】
表2の探索範囲内でパラメータごとに乱数を発生させる処理を繰り返すことで、複数(例えば、10個)のパラメータセットPSからなる初期集団を生成することができる。
【0049】
[適応度評価:ステップS1−6−2]
本システムは、生成された個体に対して適応度評価を行い、(初期)集団中の個体PSの中から一部の個体PSを選択・抽出する。
適応度評価には、図7のステップS1−1で入力された実測のOGTT時系列データ(図8(a)(b)参照)がリファレンスとして用いられる。リファレンスとなる実測のデータ(生体応答)は、本システムが、生体モデルの出力として再現したいデータであり、生成されたパラメータセットを適用した生体モデルでもリファレンスと同様の応答が得られれば、その個体は、実測値への適応性が高いといえる。
そこで、生成されたパラメータセットの適応度評価は、生成されたパラメータセットを適用した生体モデルの出力(血糖値データ、血中インスリン濃度データ)と、リファレンス(OGTTグルコースデータ、OGTTインスリンデータ)との類似度(適応度)を判定することで行う。
【0050】
[選択:ステップS1−6−4−1]
続いて、本システムは、所定の選択基準、例えば適応度の高さ、に基づき、(初期)集団の中から、一部(例えば4個体)を選択し、「親」とする。なお、選択基準としては、「適応度の高いもの」に限らず、後の世代の「子」において適応度が高くなることを期待して、適応度が低い「親」が一部含まれるような基準であってもよい。
【0051】
[交叉:ステップS1−6−4−2]
上記「選択」によって「親」として選ばれた個体群に対し、本システムは、以下の手順で「子」となる新しい2個体を生成する。
まず、(1)選択された個体群から任意に2個体を選ぶ。次に、(2)個体同士の交叉回数(交換対象となるパラメータの数)を求める。交叉確率をXR(0〜1の範囲)とすると、交叉回数は次式で定められる。
交叉回数 = [XR × 1個体がもつパラメータ数]
ただし、[]はガウス記号である。(例)[3.14]=3
続いて、(3)交叉ポイントを求める。交叉ポイントは、1からパラメータ数(表2の場合「22」)までの整数値を、“交叉回数”回ランダムに発生させることで求められる。
最後に、(4)新しい個体の生成が行われる。具体的には、(1)で選んだ2個体に対し、(3)で定めた交叉ポイントのパラメータを交換し、新しい2個体を生成する。
上記(1)〜(4)の処理を繰り返すことで、「選択」によって減った個体数分(上記例では6個体)の新個体(子)を生成し、新たな集団を生成する。
【0052】
[突然変異:ステップS14−3]
さらに、本システムは、新集団のすべての個体に対し、突然変異確率MR(0〜1の範囲)により以下の手順で各個体の各パラメータを変化させる。
例えば、突然変異処理は、ある個体のあるパラメータについて、0〜1の範囲で乱数Rを発生させ、R ≦ MR であれば、表2に示す探索範囲内で乱数を発生させ、元のパラメータの値と置き換える。同様の処理を、すべての個体の全てのパラメータについて行う。
【0053】
[終了条件判定処理:ステップS1−6−3,S1−6−5]
図12に示すように、ステップS12〜S14までの処理は、繰り返し行われるが、ステップS1−6−2において適応度評価処理を行った結果、現在の集団の中に所定の基準以上に適応度の高い個体がある場合には、GAの処理を終了し、集団の中で最高の適応度の個体(パラメータセット)を推定結果とする(ステップS1−6−3)。
また、ステップS1−6−2〜S1−6−4(適応度評価〜突然変異)までの処理の繰り返し回数がある回数を超えた場合には、GAの処理を終了し、集団の中で最高の適応度の個体(パラメータセット)を推定結果とする(ステップS1−6−5)。終了条件としての繰り返し回数としては、例えば、300回とすることができる。
【0054】
以上の生体モデルパラメータセット推定処理によって求められたパラメータが、生体モデルに与えられると、入力されたOGTT時系列データに近似した出力を生成できるため、患者の生体器官を適切にシミュレーションすることができる。また、本システムは、推定処理によって求められたパラメータセットに含まれるパラメータ値に基づいて、生体機能プロファイルを作成し、ディスプレイ120に出力する(ステップS1−5)。
【0055】
第1実施形態によれば、テンプレートデータベースDB1のテンプレートの中に、OGTT時系列データと近似するものがあれば、当該データベースDB1を参照して簡単にパラメータセットを得られるため、生体モデルパラメータセット推定処理だけでパラメータセットを生成する場合に比べて、処理を高速化することができる。
なお、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、生体モデルパラメータセット推定処理(S1−6)用の機能を省略してもよい。
【0056】
[パラメータセット生成部:第2実施形態]
図14は、第2実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図14のステップS2−1、ステップS2−2、ステップS2−3、ステップS2−4は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3、ステップS1−4と同様の処理である。
第2実施形態では、テンプレートマッチングの結果、ステップS2−4において、テンプレートデータベースDB1より獲得されたパラメータセットをそのまま用いるのではなく、CPU100aは、当該パラメータセットに基づき、局所的なパラメータ探索範囲を決定する(ステップS2−5)。
ステップS2−5で決定される局所的探索範囲は、ステップS2−4で獲得されたパラメータセットの各パラメータ値を含むとともに、上記表2で示す基本探索範囲よりも範囲が狭いものである。具体的には、局所的探索範囲は、ステップS2−4で獲得されたパラメータセットのパラメータ値を中心値とし所定の探索幅mm1〜mm22を持つものである。つまり、各パラメータ値には、表3に示すように、それぞれ探索幅mm1〜mm22が設定されている。例えば、ステップS2−4で獲得されたパラメータセットのパラメータ値「h」については「h−mm1」が、パラメータ「h」の局所的探索範囲の最小値となり、「h+mm1」が、パラメータ「h」の局所的探索範囲の最大値となる。
【表3】
【0057】
一方、ステップS2−3において、CPU100aは、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定した場合、探索範囲としては、表2に示す既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を採用する。
【0058】
そして、ステップS2−7では、ステップS2−5で決定された局所的探索範囲、又はステップS2−6で決定された基本探索範囲で生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すなわち、局所的探索範囲又は基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
このように、第2実施形態におけるステップS2−5の機能は、パラメータセットを探索するパラメータセット探索手段を構成している。
また、ステップS2−7で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS2−8)。
【0059】
以上のように、第2実施形態のパラメータセット生成部は、テンプレートデータベースDB1から獲得したパラメータセットをそのまま用いるのではなく、得られたパラメータセットに基づいて探索範囲を決定し、当該探索範囲で、入力されたOGTT時系列データにより近似する出力を生成するパラメータセット探索するため、より適切なパラメータセットを得ることができる。
しかも、第2実施形態では、テンプレートデータベースDB1から獲得したパラメータセットに基づいて、基本探索範囲よりも小さい局所的な探索範囲が設定されるため、基本探索範囲で生体モデルパラメータセット推定処理によりパラメータセットを生成する場合に比べて、処理を高速化することができる。
なお、第2実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、基本探索範囲での生体モデルパラメータセット推定処理機能を省略してもよい。
【0060】
[パラメータセット生成部:第3実施形態]
図15は、第3実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図15のステップS3−1、ステップS3−2、ステップS3−3、ステップS3−4は、それぞれ図7のステップS1−1(図14のステップS2−1)、ステップS1−2(図14のステップS2−2)、ステップS1−3(図14のステップS2−3)、ステップS1−4(図14のステップS2−4)と同様の処理である。
また、図15のステップS3−5は、図14のステップS2−5と同様の処理である。ただし、図14のステップS2−5では、テンプレートデータベースDB1から獲得したパラメータセットに基づき「探索範囲」を決定していたが、第3実施形態のステップS3−5では、ステップS2−5と同様の処理により「選択範囲」を決定する。
なお、このステップS3−5の機能は、本システムにおける選択範囲決定手段を構成している。
【0061】
また、第3実施形態のステップS3−6では、前記「選択範囲」に関係なく、既定値パラメータ探索範囲(基本探索範囲)で、生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すわち、基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの自動生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
遺伝的アルゴリズムの実行中に自動生成されたパラメータセットは、遺伝的アルゴリズムにおける適応度評価による第1次選択で絞られ、入力されたOGTT時系列データに近似したパラメータセットが選択される。なお、ステップS3−6の機能は、本システムの第1次選択手段を構成している。
また、ここで、遺伝的アルゴリズムは、複数回実行され、複数のパラメータセットの生成が行われる。複数生成されたパラメータセットは、生体モデルに与えられると、いずれも入力されたOGTT時系列データに近似した出力を生成できるものであるが、同様の出力を生成できるパラメータセットは複数あり得る。例えば、複数のパラメータセットの中には、人ではあり得ないパラメータ値の組み合わせを持つパラメータセットが含まれていることがある。
【0062】
そこで、第3実施形態では、ステップS3−6の生体モデルパラメータセット推定処理で求めた複数のパラメータセットを前記「選択範囲」で絞り込む第2次選択処理を行う(ステップS3−7)。「選択範囲」は、適切なパラメータ値が存在する可能性の範囲であるから、複数のパラメータセットのうち、この「選択範囲」に入るパラメータセットを選択することで、適切なパラメータセットを選ぶことができる。なお、ステップS−7の機能は、本システムの第2次選択手段を構成している。
【0063】
また、第3実施形態では、ステップS3−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を探索範囲とした生体モデルパラメータセット推定処理により単一のパラメータセットを生成する。
そして、ステップS3−7で選択されたパラメータセット又はステップS3−8で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS3−9)。
なお、第3実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、ステップS3−8の処理機能を省略してもよい。
【0064】
[パラメータセット生成部:第4実施形態]
図16は、第4実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図16のステップS4−1、ステップS4−2、ステップS4−3は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3と同様の処理である。
また、図16のステップS4−4は、図7のステップS1−4とほぼ同様の処理であるが、ステップS4−4では、テンプレートデータベースDB1ではなく、図17に示すテンプレートデータベースDB2を参照する。図17のテンプレートデータベースDB2は、一つのテンプレート(参照用出力)に対応して複数のパラメータセット候補が割り当てられている。例えば、テンプレートT1には、5つのパラメータセット候補PS#01−A、PS#02−A,PS#03−A,PS#04−A,PS−#05−Aが割り当てられている。これらの5つのパラメータセット候補は、それぞれパラメータ値が異なっているが、生体モデルにパラメータとして与えられると、当該生体モデルは、テンプレートT1に近似した出力を発生するものである。
第4実施形態においては、OGTT時系列データに最も近似するテンプレートとしてテンプレートT1が選択された場合、ステップS4−4において、テンプレートデータベースDB2を参照し、テンプレートT1に対応する5つのパラメータセット候補PS#01−A〜PS#05−Aを獲得する。
【0065】
これらの候補PS#01−A〜PS#05−Aは、生体モデルに与えられると、いずれもOGTT時系列データ(テンプレートT1)に比較的近似した出力を発生させることができるものであるが、それらの出力は互いに多少異なっている。
そして、ステップS4−5では、CPU100aが、各パラメータセット候補PS#01−A〜PS#05−Aが与えられた生体モデルの出力と、OGTT時系列データとを対象に、テンプレートマッチングと同様の類似度演算(誤差総和演算)を行う。誤差総和が最小となるパラメータセット候補が、OGTT時系列データに最も近似する出力を発生可能なものである。
なお、テンプレートデータベースDB2において、一つのテンプレートに対応するパラメータセット候補の数は、5個に限られるものではなく、いくつであっても良い。
【0066】
また、第4実施形態では、ステップS4−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を探索範囲とした生体モデルパラメータセット推定処理によりパラメータセットを生成する。
そして、ステップS4−5又はステップS4−6で得られたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS4−7)。
なお、第4実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、ステップS3−7の処理機能を省略してもよい。
【0067】
[パラメータセット生成部:第5実施形態]
図18は、第5実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図18のステップS5−1、ステップS5−2、ステップS5−3は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3と同様の処理である。
また、図18のステップS5−4は、図7のステップS1−4や図14のステップS2−4とほぼ同様の処理であるが、ステップS5−4では、テンプレートデータベースDB1ではなく、図19に示すテンプレートデータベースDB3を参照する。図19のテンプレートデータベースDB3には、一つのテンプレート(参照用出力)に対応してパラメータの探索範囲が割り当てられている。例えば、テンプレートT1に対応する探索範囲としては、下記表4に示す範囲が設定されている。
【表4】
【0068】
テンプレートデータベースDB3においてテンプレートに対応する探索範囲は、表2に示す既定のパラメータ探索範囲(基本探索範囲)よりも範囲が狭く、当該探索範囲における任意のパラメータセットは、生体モデルに与えられるとテンプレートに近似した出力を発生させるものである。すなわち、表4の探索範囲は、前述の局所的探索範囲と同様のものである。
この第5実施形態では、第2実施形態と同様に、テンプレートに基づき、基本探索範囲よりも狭い探索範囲を決定できるが、テンプレートデータベースDB3に局所的探索範囲が格納されているため、テンプレートマッチングから直ちに局所探索範囲を得られ、高速な処理が可能である。
【0069】
また、ステップS5−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、探索範囲としては、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)が採用され(ステップS5−5)、ステップS5−6では、ステップS5−4で決定された局所的探索範囲、又はステップS5−5で決定された基本探索範囲で生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すなわち、局所的探索範囲又は基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
上記のように、ステップS5−6の機能は、本システムにおいて、パラメータセットを選択する選択手段を構成している。
また、ステップS5−6で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120に出力される(ステップS5−7)。
【0070】
[パラメータセット生成部:第6実施形態]
図20は、第6実施形態に係るパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。図20のステップS6−1、ステップS6−2、ステップS6−3は、それぞれ図7のステップS1−1、ステップS1−2、ステップS1−3と同様の処理である。
また、図20のステップS6−4は、図18のステップS5−4と同様の処理である。ただし、図18のステップS5−4は、テンプレートデータベースDB3からパラメータセット「探索範囲」を獲得していたが、第6実施形態のステップS6−4では、ステップS5−4と同様の処理によりパラメータセットの「選択範囲」を決定する。
【0071】
また、ステップS6−5では、第3実施形態のステップS3−6と同様に、前記「選択範囲」に関係なく、既定値パラメータ探索範囲(基本探索範囲)で、生体モデルパラメータセット推定処理を行う。すわち、基本探索範囲で、個体生成・交叉・突然変異を行う遺伝的アルゴリズムにより、パラメータセットの自動生成が行われる。なお、遺伝的アルゴリズムの処理手順は、図7のステップS1−6における処理手順と同様である。
遺伝的アルゴリズムの実行中に自動生成されたパラメータセットは、遺伝的アルゴリズムにおける適応度評価による第1次選択で絞られ、入力されたOGTT時系列データに近似したパラメータセットが選択される。
また、ここで、遺伝的アルゴリズムは、複数回実行され、複数のパラメータセットの生成が行われる。
このように、ステップS6−5の機能は、本システムの第1次選択手段を構成している。
【0072】
そして、第6実施形態では、第3実施形態のステップS3−7と同様に、生体モデルパラメータセット推定処理で求めた複数のパラメータセットを前記「選択範囲」で絞り込む第2次選択処理を行う(ステップS6−6)。「選択範囲」は、適切なパラメータ値が存在する可能性の範囲であるから、複数のパラメータセットのうち、この「選択範囲」に入るパラメータセットを選択することで、適切なパラメータセットを選ぶことができる。
このように、ステップS6−6の機能は、本システムの第2次選択手段を構成している。
【0073】
また、第6実施形態でも、ステップS6−3において、テンプレートの誤差総和(類似度)がしきい値より大きい(類似しない)と判定された場合、既定値パラメータ探索範囲(基本パラメータ探索範囲)を探索範囲とした生体モデルパラメータセット推定処理により単一のパラメータセットを生成する(ステップS6−7)。
そして、ステップS6−6で選択されたパラメータセット又はステップS6−7で生成されたパラメータセットに基づき、生体機能プロファイルが生成され、ディスプレイ120出力される(ステップS6−8)。
なお、第6実施形態において、テンプレートデータベースDB1が十分に多くのテンプレートを持つ場合には、ステップS6−7の処理機能を省略してもよい。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、シミュレーションの対象は、糖尿病の病態に限られるものではなく、他の病態に関するものであってもよい。また、生体モデルの構成やそのパラメータも上記のものに限られるものではなく、適宜変更可能である。
また、探索手段(選択手段)は、遺伝的アルゴリズムによって構成するものに限られず、ランダムにパラメータセットを自動生成し、適切な基準によって、適切なパラメータセットを選択するものであれば、他のアルゴリズムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】生体モデルの全体構成を示すブロック図である。
【図3】生体モデルにおける膵臓モデルのブロック図である。
【図4】生体モデルにおける肝臓モデルのブロック図である。
【図5】生体モデルにおけるインスリン動態モデルのブロック図である。
【図6】生体モデルにおける末梢組織モデルのブロック図である。
【図7】第1実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】OGTT時系列データであり、(a)は血糖値、(b)は血中インスリン濃度である。
【図9】テンプレートデータベースDB1の構成図である。
【図10】テンプレートデータであり、(a)は血糖値、(b)はインスリン濃度である。
【図11】テンプレートT1に対するOGTT時系列データの誤差総和を示す図であり、(a)は血糖値、(b)はインスリン濃度である。
【図12】生体機能プロファイルである。
【図13】遺伝的アルゴリズムのフローチャートである。
【図14】第2実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第3実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】第4実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】テンプレートデータベースDB2の構成図である。
【図18】第5実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】テンプレートデータベースDB3の構成図である。
【図20】第6実施形態に係る内部パラメータ生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 膵臓ブロック
2 肝臓ブロック
3 インスリン動態ブロック
4 末梢組織ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセットとの組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
実際の生体応答に近似する参照用出力値を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットを選択するデータベース参照手段を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって選択された内部パラメータセットに基づいて、実際の生体応答に、より近似する出力を生成する内部パラメータセットを探索するパラメータセット探索手段を更に備えていることを特徴とする請求項1記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの探索範囲を決定する探索範囲決定手段を更に備え、
前記パラメータセット探索手段は、前記探索範囲決定手段によって決定された探索範囲内で、前記パラメータセットを探索するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの選択範囲を決定する選択範囲決定手段を更に備え、
前記パラメータセット探索手段は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択して、複数の内部パラメータセットを得る第1次選択手段と、
前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、
を備えていることを特徴とする請求項2記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項5】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット探索範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
実際の生体応答に近似する参照用出力値を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの探索範囲を選択するデータベース参照手段と、
前記探索範囲内で、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、
を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項6】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット選択範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
実際の生体応答に近似する参照用出力値を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの選択範囲を選択するデータベース参照手段と、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する第1選択手段と、
前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、
を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1〜6のいずれかに記載の生体シミュレーションシステムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセットとの組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
実際の生体応答に近似する参照用出力値を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットを選択するデータベース参照手段を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって選択された内部パラメータセットに基づいて、実際の生体応答に、より近似する出力を生成する内部パラメータセットを探索するパラメータセット探索手段を更に備えていることを特徴とする請求項1記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの探索範囲を決定する探索範囲決定手段を更に備え、
前記パラメータセット探索手段は、前記探索範囲決定手段によって決定された探索範囲内で、前記パラメータセットを探索するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記内部パラメータセット生成部は、前記データベース参照手段によって、選択された内部パラメータセットに基づいて、内部パラメータセットの選択範囲を決定する選択範囲決定手段を更に備え、
前記パラメータセット探索手段は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択して、複数の内部パラメータセットを得る第1次選択手段と、
前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、
を備えていることを特徴とする請求項2記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項5】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット探索範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
実際の生体応答に近似する参照用出力値を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの探索範囲を選択するデータベース参照手段と、
前記探索範囲内で、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、
を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項6】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルの参照用出力値と、当該参照用出力値に対応付けられた内部パラメータセット選択範囲との組み合わせを複数有するテンプレートデータベースと、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
実際の生体応答に近似する参照用出力値を前記テンプレートデータベースから選択し、選択された参照用出力値に対応する内部パラメータセットの選択範囲を選択するデータベース参照手段と、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する第1選択手段と、
前記第1次選択手段によって得られた内部パラメータセットのうち、前記選択範囲内のパラメータセットを選択する第2次選択手段と、
を備えていることを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1〜6のいずれかに記載の生体シミュレーションシステムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−314453(P2006−314453A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138563(P2005−138563)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]