説明

生体分子に結合する活性化ポリマー

本発明は、機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質、結合した機能的生体分子を含むポリマー基質、このような基質を含むデバイス、およびそれらを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排他的ではなく具体的には、機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質、結合された機能的生体分子を含むポリマー基質、このような基質を含むデバイス、およびそれらを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(例えば、タンパク質、抗体または他の生体分子をポリマー表面の個別の位置に結合させて、対象となっている他の分子(ターゲット分子)の結合を可能にし、ターゲット分子の結合を検出する手段が提供される)診断用アレイ技術の到来によって、抗体、他のタンパク質および核酸などの生体分子に結合することができる表面に対する要求が増大している。それは、例えば、生体適合性表面が求められるバイオセンサー、医療用デバイスなどの他の適用、ならびに生体分子に結合することができる表面が求められる薬物標的に対する活性剤のスクリーニングにおいても同様に必要である。
【0003】
これらの適用のための理想的な表面は、それらの機能性を保持しながら、タンパク質または他の生体分子に結合すべきである。この結合は、処理中に反復される洗浄工程を可能にするために長時間にわたって強力で安定であることが必要である。現行の多くのアレイは、96ウェルのポリマーマイクロタイタープレートに基づいている。多くのこれらの技術においては、ポリマー表面に結合するタンパク質は、非特異的物理吸着により結合し、洗浄中のタンパク質の損失、ならびに結合過程が分子種に依存性であることを考慮すると、結合程度のばらつきが生じることになる。物理吸着タンパク質の機能性は、表面との相互作用のエネルギー収支に強く依存し、タンパク質によって様々となる。
【0004】
生体分子に結合させるためのポリマー表面のプラズマガス処理の使用に関連する研究は、多数のグループが実施している。しかしながら、一般に、Wuら(米国特許第5,922,161号)、Gsellら(米国特許第5,258,127号)、Rosierら(米国特許出願第2004/0112518号)、Hsuら(米国特許第5,306,768号)およびZamoraら(米国特許出願第2002/0009604号)により開示されたものなどの技術は、生体分子の機能性が保持されることが示されておらず、さらなる物理的および/または化学的処理工程を必要とするという1つまたは複数の問題を伴っている。加えて、表面は、表面の特性が経時的に変化するような急速な疎水性回復にさらされることが多い。
【特許文献1】米国特許第5,922,161号
【特許文献2】米国特許第5,258,127号
【特許文献3】米国特許出願第2004/0112518号
【特許文献4】米国特許第5,306,768号
【特許文献5】米国特許出願第2002/0009604号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、プラズマ浸漬イオン注入(PIII)条件下、ポリマー表面にプラズマ処理を施すことにより、処理ポリマー表面への一連の生体分子の強力な結合を確実にすること、該表面の疎水性回復を最少にし、および/または遅延させること、それによって、結合した生体分子の機能性を維持することが可能であることを実証した。
【0006】
上記の背景を考慮して、本発明が案出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質であって、前記生体分子への結合が可能となるように活性化された親水性表面および複数の架橋領域を含む内層面とを含む活性化ポリマー基質が提供される。
【0008】
本発明の他の実施形態によれば、機能的生体分子により機能化されたポリマー基質であって、生体分子が結合した親水性表面と、複数の架橋領域を含む内層面とを含む機能化ポリマー基質が提供される。
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質を含むデバイスであって、前記生体分子への結合が可能となるように活性化された親水性表面と複数の架橋領域を含む内層面とを含む基質が提供される。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、機能的生体分子により機能化されたポリマー基質を含むデバイスであって、生体分子が結合した親水性表面と、複数の架橋領域を含む内層面とを含む機能化ポリマー基質を含むデバイスが提供される。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、活性化ポリマー基質を製造する方法であって、プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程を含む方法が提供される。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程を含む方法によって製造された活性化ポリマー基質が提供される。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、生体分子により機能化されたポリマー基質を製造する方法であって、
(a)プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程と、
(b)工程(a)に従って処理された表面を、所望の生体分子と共にインキュベートする工程と
を含む方法が提供される。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、
(a)プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程と、
(b)工程(a)に従って処理された表面を、所望の生体分子と共にインキュベートする工程と
を含む方法によって製造された、生体分子により機能化されたポリマー基質が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、当然のことながら、文脈上別段必要とされない限り、用語の「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などのバリエーションは、記述された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を包含することを意味するが、他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を排除することを意味するものではないことが理解されよう。
【0016】
本明細書内に引用される文書は、参照としてそれらの全体が本明細書に含まれる。
【0017】
本明細書における任意の先行技術に言及することは、その先行技術が、オーストラリアにおける共通の一般的知見の一部を形成することを承認し、または任意の形で示唆するものではなく、またそのように考えるべきではない。
【0018】
上記で述べたように、広範な実施形態において、本発明は、機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質であって、前記生体分子への結合を可能にするために活性化された親水性表面、および複数の架橋領域を包含する内層を含む基質に関する。本発明はまた、このような活性化ポリマー基質を含むデバイスも包含する。
【0019】
用語「活性化」とは、ポリマー基質の親水性表面(これもまた、本発明の方法から得られる)が、生体分子にさらされた後に、生体分子が結合することを受容できるような形で処理されたことを意味するものとする。すなわち、そのポリマーの表面は、生体分子上の1つまたは複数の基、または実際に好適なリンカー基に対する結合への関与に利用でき、次いで、生体分子に結合されるか、または結合することができる化学基または電子が存在する1つまたは複数の高エネルギー状態の領域を有する。
【0020】
本発明の他の広範な態様において、機能的生体分子によって機能化されたポリマー基質であって、前記生体分子への結合を可能にするために活性化された親水性表面および複数の架橋領域を包含する内層を含む基質が提供される。本発明はまた、このような機能化ポリマー基質を含むデバイスも包含する。
【0021】
理論に拘泥するものではないが、本発明によるポリマー表面の活性化により、生体分子の化学基または生体分子に結合するリンカーに対する化学結合、多くの場合は共有結合を形成することが可能であると考えられる。生体分子の化学基は、該分子の外部に位置することなどによって結合相互作用に接近できることが好ましい。ポリマー表面の活性化は、酸素(例えば、空気から)へのPIIIプラズマ処理表面の曝露後に生じ、次いで、アミン基など、生体分子上の反応性種に対する結合部位として利用できる、荷電酸素原子および反応性カルボニルなどの反応性酸素種ならびにカルボン酸部分の生成を含むと考えられる。
【0022】
本出願の範囲内で、ポリマー基質の機能化としての、生体分子、または生体分子に結合するためのリンカーの結合、ならびに「機能化」しているものとして、生体分子またはリンカーが結合しているポリマー基質について言及する。そうでない場合には強い親水性である表面との共有結合による結合によって、有用な生物学的機能を維持することのできる生体分子の時間安定性の強い結合にすることが可能になる。例えば、該ポリマーの親水性表面により、該表面上でのタンパク質の変性がエネルギー的に有利でないことが保証される。表面への共有結合は、例えば、リンカー分子に対して共有結合したアミノ酸側鎖基により達成できる。採用された方式は、共有結合と考えられるものを促進する部位を有するポリマー表面を調製することである。結合部位を作り出すと同時に、該ポリマー表面を安定化することを目的として、高エネルギーイオン処理が利用される。採用されたプラズマ表面処理と関連し、非処理表面に比較して機能的タンパク質結合が増強していること、ならびに反復洗浄工程に対する有意な耐性増加があることを、本発明者らは、機能性アッセイを用いて実証した。すなわち、非処理表面に比較して、生体分子結合の増強があり、該結合は強力で、反復洗浄に耐えることができ、該分子は有用な活性を保持することができる(すなわち、該生体分子は機能的であり、またはいくつかの有用な機能性を保持する)。
【0023】
用語「機能的」は、該分子が、生体系において通常示すと考えられる少なくともいくつかの活性を示すことができることを伝えるものとする。例えば、活性は、抗原/抗体結合、受容体/薬物結合などの結合相互作用に寄与する能力の維持、またはたとえ生体系において通常のレベルよりも低いレベルではあっても、生体反応を触媒するか、または生体反応に寄与する能力の維持を含み得る。該生体分子の機能性を評価するために、ルーチンアッセイが使用できる。好ましくは、該活性化ポリマー表面に結合した該生体分子の活性は、該活性化ポリマーに非結合の場合の該分子の活性の少なくとも20%、好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも60%、70%または80%、最も好ましくは、少なくとも90%、95%、98%または99%である。該結合生体分子の活性は、非結合分子の活性に等しいことが最も好ましい。
【0024】
用語「生体分子」とは、生物源に由来するか、生体系に存在する分子の合成的に製造された複製物であるか、生体系に存在する分子の活性を模倣する分子であるか、またはその他の形で生物学的活性を示す任意の分子を包含するものとする。生体分子の例としては、限定はしないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNAおよび RNAなど)、脂質および炭水化物、ならびにそれらの活性断片が挙げられる。好ましい生体分子としては、タンパク質および薬物または薬物標的が挙げられる。特に好ましい生体分子としては、抗体および免疫グロブリン、受容体、酵素、神経伝達物質または他の細胞シグナル伝達物質、サイトカイン、ホルモンおよび相補性決定タンパク質、ならびにそれらの活性断片が挙げられる。用語「生体分子」はまた、細胞または細胞成分と一体化しているか、または結合している分子も包含し、それを介して細胞または細胞成分が活性化ポリマーに結合することができる。本発明に含まれる生体分子のさらなる特定例は、例えば、コノトキシンならびにヘビおよびクモの毒物などの、細菌、植物または動物由来の毒素を含む天然毒素またはそれらの活性成分、およびシアニドなどの他の有機または無機の毒素および毒物、ならびに抗菌剤、抗真菌剤、除草剤および殺虫剤などの毒素および毒物である。
【0025】
本発明に関連した利点は、ポリマー表面に対する生体分子の結合の過程が、特定の生体分子またはポリマーに依存せず、したがって、広範な生体分子およびポリマーに適用できることである。さらに、生体分子をリンカー分子を介して結合させることは可能だが、本発明によれば、リンカー分子を利用する必要はなく、これが意味するのは、結合のために、時間がかかり、高価となる可能性があり、複雑である湿式の化学的アプローチを必要としないことである。
【0026】
上記で示したように、機能的生体分子を広範なポリマー基質の表面に結合させるために本発明を利用できる。例えば、ポリマー基質は、ホモポリマー、コポリマー、ポリマー混合物またはポリマー含有材料のブロック、シート、フィルム、ストランド、繊維、小片もしくは粒子(例えば、ナノスフェアまたはマイクロスフェアなどのナノ粒子またはマイクロ粒子)、粉末、造形品、織布、またはシートにプレスされた密集繊維(例えば、紙など)の形態をとり得る。ポリマー基質は、固体ポリマー単一材料、ラミネート製品、ハイブリッド材料、あるいは、本来、非金属または金属であり得る任意のタイプの基礎材料のコーティングであり得る。実際、ポリマー基質は、例えば、診断用キット、組織または細胞培養用足場または支持体、バイオセンサー、分析用プレート、アッセイ成分、あるいはコンタクトレンズ、ステント(例えば、心血管ステントまたは胃腸ステント)、ペースメーカー、補聴器、補綴具、人工関節、骨または組織代替材料(例えば、代替の皮膚、結合組織、筋肉または神経組織)、人工臓器または人工皮膚、接着剤、組織シーラント、縫合糸、ステープル、釘、ねじ、ボルトまたは外科で使用する他のデバイスもしくは他のインプラント可能なまたは生体適合性のデバイスなどの医療用デバイスの成分など、デバイスの成分も形成し得る。
【0027】
本発明により製造できる他のデバイスは、化学的処理に関するものである。例えば、本発明は、燃料、バイオ燃料、電気の生成、または化学製品(例えば、バルクまたは精製化学物質、薬物、タンパク質、ペプチド、核酸、ポリマー、食品サプリメントなど)の製造をもたらし得る、表面または基質上で行われる化学的過程に利用されるデバイスを含む。好ましい一実施形態において本発明は、糖またはセルロースまたは他の薬剤に対する酵素の作用によるエタノールの製造に使用されるデバイスを含む。また本発明は、燃料電池またはバイオ燃料電池などにおいて酵素により触媒される化学反応による電気の生成に使用されるデバイスも含む。この文脈で、本発明は、酵素への浸漬によって、または薬剤がその表面上を流れるように調整することにより処理される化学薬剤に対して利用可能にできる酵素により機能化された表面を提供する。薬剤が酵素で機能化された表面上を流れる場合、反応産物による酵素の毒作用による問題を最少化することができる。本発明の他の利点は、酵素が有毒となるか、または不活性になった場合、化学物質のバッチ全体を廃棄する必要なしに、酵素で機能化された表面を他の新鮮な機能化表面によって速やかに簡便に置換することができることである。
【0028】
プラズマ浸漬イオン注入(PIII)条件下での本発明によるプラズマ処理の結果、1つまたは複数の生体分子の結合が可能となるようにポリマー表面が活性化されるのみならず、該ポリマー表面の一般的な親水性が、より親水性を示すように改変されると、本発明者らは判定した。一般的に水性である生体系の環境により、外側領域が本来親水性であることの多い多数の生体分子の立体構造の維持にとって、したがって機能性にとって、このことは重要である。本発明者らはまた、本発明の技術が、処理されたポリマー表面の親水性を増加させるのみならず、PIII処理条件の結果、該処理後に経時的に生じる該表面の疎水性回復までに、PIII条件なしでプラズマ処理されたポリマー表面に比較して遅延があることを示した。疎水性回復の遅延に関連する機序は、該処理によって表面活性化が生じることに加えて、表面安定化の改善ももたらされることであると、本発明者らは理解している。この安定化は、そのポリマーの内層面へエネルギー性イオンが貫入し、基質内層面においてポリマー架橋領域が生じることに起因すると考えられる。そのポリマー表面は、原子の尺度では粗い可能性が高く、このことは、滑らかな平面としてその表面を規定することが難しいことを意味するが、利用されるイオンのエネルギーによって、そのポリマーの内部へ、少なくとも約1nmから約300nmまで貫入することが確実になる。したがって、用語「内層面」は、PIII条件下プラズマ処理に供される、該表面下約1nmと約300nmとの間、好ましくは、約5nmと約200nmとの間、最も好ましくは、該表面下約10nmと約100nmとの間であるポリマー領域を包含することが意図されている。
【0029】
本明細書に用いられる用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ポリマー含有材料、他のポリマーおよび/または天然および合成ゴムなどとのポリマー混合物もしくはブレンド、ならびにポリマーマトリックス複合体それ自体、あるいは、他の材料、例えば、ポリマー、金属またはセラミックス(ガラスを含む)を含む多層ラミネートサンドイッチの一体化および表面配置成分として、または任意のタイプの基質材料上のコーティング(部分的コーティングを含む)を包含することが意図されている。用語「ポリマー」は、熱硬化材料および/または熱可塑材料、ならびにプラズマ堆積法によって作出されたポリマーを包含する。
【0030】
本発明に従って処理することができるポリマー材料としては、限定はしないが、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオレフィン類と他のポリマーまたはゴム類とのブレンドなどのポリオレフィン類;ポリオキシメチレン(アセタール)などのポリエーテル類;ポリ(ヘキサメチレンアジパミド) (ナイロン66)などのポリアミド類;ポリイミド類;ポリカーボネート類;ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラ-フルオロエチレン(PTFE)(Teflon(登録商標))、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、およびポリ塩化ビニル(PVC)などのハロゲン化ポリマー類;ポリスチレン(PS)などの芳香族ポリマー類;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのケトンポリマー類;ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリレートポリマー類;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル類;ならびにABSおよびエチレンプロピレンジエン混合物(EPDM)などのコポリマー類が挙げられる。好ましいポリマーにはポリエチレン、PEEKおよびポリスチレンが含まれる。
【0031】
用語「プラズマ」または「ガスプラズマ」は一般に、イオン化ガスの状態を述べるために用いられる。プラズマは、荷電イオン(正または負)、負電荷電子、および中性種からなる。当技術分野に知られているように、プラズマは、燃焼、炎光、物理的ショック、または好ましくは、コロナまたはグロー放電などの放電により生成させることができる。高周波数(RF)放電では、処理すべき基質を真空チャンバー内に置き、低圧ガスを系内に流す。ガスをイオン化するために、コンデンサー放電または誘導RF放電によって発生させた電磁場が用いられる。ガス内の自由電子は、電磁場からのエネルギーを吸収し、ガス分子をイオン化し、次いでより多くの電子を生成する。
【0032】
本発明によるプラズマ処理を実施する際に、典型的には、プラズマ処理装置(ヘリコンプラズマ源または図1に示されたような他の誘導結合プラズマ源または容量結合プラズマ源を組み込んでいるものなど)は、真空ノズルを真空ポンプに結合することによって真空排気する。ガス源からの好適なプラズマ形成ガスは、チャンバー内の所望のガス圧およびチャンバーを通じての差異が得られるまでガス入口を通して真空装置内へ導入される。所望の周波数電流をRF発生器から電極へ適用することにより、RF電磁場を該装置内に発生させる。該装置内でのガスのイオン化が電磁場により誘導され、管内で得られたプラズマによって、処理過程に供されたポリマー基質表面が改変される。
【0033】
ポリマー基質の表面を処理するために用いられる好適なプラズマ形成ガスとしては、無機および/または有機ガスが挙げられる。無機ガスの例としては、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、水蒸気、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸素、空気、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、塩素、塩化水素、臭素シアニド、二酸化イオウ、硫化水素、キセノン、クリプトンなどがある。有機ガスの例としては、メタン、エチレン、ベンゼン、ギ酸、アセチレン、ピリジン、オルガノシランのガス、アリルアミン化合物およびオルガノポリシロキサン化合物、フルオロカーボンおよびクロロフルオロカーボン化合物などがある。さらに、該ガスは、該表面上にプラズマ重合されるか、堆積されるエチレン性モノマーなどの蒸着有機材料であってもよい。これらのガスは、必要に応じて、単独で、または2種以上の混合物として使用できる。本発明による好ましいプラズマ形成ガスは、窒素およびアルゴンである。
【0034】
典型的なプラズマ処理条件(本明細書では、100平方センチメートルの表面を処理するのに必要となり得る電力に関して見積もられているが、系のサイズに従って拡大縮小することができる)としては、約1ワットから約1000ワット、好ましくは、約5ワットから約500ワットの間、最も好ましくは、約10ワットから約100ワットの間の電力レベル(好適な電力の一例は、100ワットの正方向電力および12ワットの逆方向電力);約1kHzから100MHz、好ましくは、約15kHzから約50MHz、より好ましくは、約1MHzから約20MHzの周波数(好適な周波数の一例は、約13.5MHzである);約0G(すなわち、軸方向の磁場の適用は必須ではない)から約100Gの間、好ましくは、約20Gから約80Gの間、最も好ましくは、約40Gから約60Gの間の軸方向磁場強度(好適な軸方向磁場強度の一例は、約50Gである);約5秒から12時間、好ましくは、約1分から2時間、より好ましくは、約5分と約20分との間の曝露時間(好適な曝露時間の一例は、約13分);や、0.0001トルから約10トル、好ましくは、約0.0005トルから約0.1トルの間、最も好ましくは、約0.001トルと約0.01トルとの間のガス圧(好適な圧の一例は、約0.002トルである);および約1cm3/分から約2000cm3/分のガス流速を挙げることができる。
【0035】
本発明により、プラズマ処理は、ポリマー基質の内層面にガス種を注入する目的で、プラズマ浸漬イオン注入(PIII)条件下でなされる。典型的なPIII条件としては、プラズマから処理されるポリマー内へ、イオンを加速するために、約0.1kVから約150kVの間、好ましくは、約0.5kVから約100kV、最も好ましくは、約1kVから約20kVの基質バイアス電圧(好適な電圧の一例は、約10kV);約0.1Hzから約1MHzの間、好ましくは、約1Hzから約100Hzの間、最も好ましくは、約20Hzから約80Hzの間の周波数(好適な周波数の一例は、約50Hz);約1μsから約1msの間、好ましくは、約10μsから約100μsの間のパルス長(好適なパルス長の一例は、約20μs)が挙げられる。
【0036】
ポリマー基質表面の活性化後、生体分子またはリンカーを用いて、生体分子またはリンカーを含む溶液による活性化表面(基質)を単純にインキュベーションすることより(例えば、表面の水浴、洗浄またはスプレーにより)、ポリマー表面を機能化することが可能である。該溶液は、例えば、好ましくは、リン酸またはトリス緩衝液などの、分子の生物学的機能を維持するために適合性のある緩衝系を含む水溶液(例えば、生理食塩水)であることが好ましい。次いで、やはり生体適合性のある溶液または液体、例えば、インキュベーション用のものと同じ水性緩衝液(ただし、その生体分子を含まない)を用いて、1つまたは複数の洗浄工程を実施し、その表面から任意の非特異的結合物質を除去してから、その機能化ポリマー基質を目的の使用に供する準備をすることが適切であり得る。
【0037】
本発明者らは、活性化ポリマー基質と、本発明による生体分子によって機能化されたポリマー基質の双方が使用期限の延長を示すことを判定した。例えば、該活性化ポリマー基質は、生体分子と共にインキュベーションしてポリマー表面の機能化をもたらす前に、数分、数時間、数日、数週間または数ヵ月の期間、(好ましくは、密封環境内で)貯蔵され得る。同様に、本発明による生体分子により機能化されたポリマー基質は、必要な場合は再水和化されて目的の使用に供される前に、有意な分解なしに、数分、数時間、数日、数週間、数ヵ月または数年の期間、(好ましくは、凍結乾燥後、より好ましくは、低温での密封環境内で)貯蔵され得る。凍結乾燥が採用される場合、凍結乾燥過程の前に、スクロースなどの安定化剤を添加することが有利であり得る。密封環境は、乾燥剤の存在下にあることが好ましく、(好ましくは、真空または酸素減少空気下で)コンテナまたはベッセルを含み得るか、または例えば、ポリマー、ホイルおよび/または好ましくは真空パックされているラミネートパッケージを含み得る。密封環境は、滅菌であり、したがって、該生体分子の活性に対して、有害であり得るプロテアーゼおよびヌクレアーゼなどの物質の存在を防ぐか、少なくとも最少化することが好ましい。
【0038】
ここで、ほんの一例として、以下の非限定的な実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【0039】
(実施例)
(実施例1)
機能的西洋ワサビペルオキシダーゼの結合増強のためのポリエチレンのプラズマ処理
材料および方法
図1は、プラズマ処理チャンバーの図解を示す。供給源領域は、ホウケイ酸ガラス管の周囲に巻きつけられた直径16cmの単一のループアンテナからなる。13.56MHzでの高周波数電力が、Comdel CPM-2000マッチングネットワークによりアンテナに結合される。プラズマ源の上に位置するアルミニウム拡散チャンバーは、試料ホルダーを収容する。アルミニウムチャンバーの外側は、およそ50Gの軸方向磁場を提供するために使用される2対の銅コイルに包囲されている。
【0040】
該チャンバーのベース圧は、およそ3×10-6トルである。窒素ガスが、およそ2mTのチャンバー内圧まで、真空チャンバー内に注入された。プラズマチャンバーに用いられる正方向電力は100Vで、12Wの逆方向電力とマッチさせた。20kV、50Hz、および20μsのパルス長の条件で、プラズマ浸漬イオン注入(PIII)の技術を用いた。これらの条件を、13分20秒の持続時間で用いて、ポリマー試料を処理し、およそ1016イオン.cm-2の注入イオンフルエンスを得た。
【0041】
処理されたポリマーは、およそ200μmの厚さを有するUltra High Molecular Weight Polyethylene(UHMW PE)フィルムであった。そのポリマーは、Goodfellow Cambridge Limited、カタログ番号ET301200/1から供給された。そのポリマーシートを、10mm×13mmの長方形試料に切断した。プラズマ処理の前後に、Kruss 接触角装置(DS10)で、脱イオン水を用いて接触角度を測定した。測定は、3滴の平均値として行った。
【0042】
処理後、真空チャンバーを空気へ通気する2時間の間に、タンパク質西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と共に試料をインキュベートした。HRPはSigma、P6782からのものであった。HRP含有溶液の作製および洗浄の双方で、3種の異なる緩衝液を用いた:(i)10mMのリン酸(PO4)、pH 7 (ii) リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液、pH 7.3(塩の濃度150mM)および(iii) リン酸緩衝食塩水 + 1mg.ml-1のTween20洗浄剤(PBS-T)。Tween20は、BDH Chemicals、オーストラリア国からのものであった。別に記述しない限り、緩衝液のHRP濃度は、50μg.ml-1であった。そのタンパク質濃度は、102mM.cm-1〔1〕の減衰係数を用いて、403nmにおけるHeme基からの吸収によって検証した。
【0043】
HRP緩衝液中で一晩インキュベーション後、試料を、新鮮な緩衝液中、20分間で6回洗浄した。非処理試料を対照として用いた。洗浄後、プラズマ処理試料の表面に密封されたOリング(内径8mm、外径11mm)によって分離された2つのステンレス鋼プレート間に各試料をクランプした。トッププレートは5mm直径の孔を含み、75μlのTMB(3,3',5,5'テトラメチルベンジジン、Sigma T0440)、HRP基質を、Oリングの直径によって決定されるポリマー表面の領域へ加えることが可能であった。30秒後、50μlのアリコートを採取し、100μlのキュベット中2MのHCl 50μlに加えて、反応を停止させた。DUO 530 Life Science UV/VIS分光光度計を用いて、キュベットを通り伝達された450nmの波長における光学密度(O.D.)を測定した。提示された各データポイントは、少なくとも3つの試料からとられた測定値の平均であった。
【0044】
結果および考察
出願人のHRP機能性アッセイにおいて測定された光学密度(O.D.)が、緩衝液浸漬ポリマー表面上に生じる化学的過程によるものであり得ないことを確認するために、HRPの非存在下、PBSおよびPO4緩衝液中で該アッセイを実施した。双方の場合とも、測定された光学密度はゼロであった。
【0045】
図2は、該処理が実施された真空チャンバーから取り出し、大気にさらした後、時間の関数として、プラズマ処理されたPE表面上で測定された水接触角を示している。プラズマ表面処理によって、該表面は非処置表面よりも親水性になる。該表面は、経時的にかなりの疎水性回復を受けるが、出願人の観察時間中に元の接触角へと弛緩することはなかった。
【0046】
図3は、出願人のHRP機能性アッセイからの、時間の関数としての光学密度の測定値を示す。HRP含有緩衝液(示されるように、PBSまたはPO4のいずれか)中、試料を一晩浸漬することによって、HRPは結合した。第1の機能性アッセイ(0日目のデータポイント)を、清浄な緩衝液中、20分間で6回の洗浄直後に実施した。各セットにおける第1のデータポイントは、O.D.測定値の飽和レベルに近いため、一晩浸漬後の試料と第1の洗浄工程の試料間で活性を比較することは難しい。続いてのデータポイントは、6回、20分の洗浄後に機能性アッセイを適用した、他のサイクルを示している。これらの実験の明白な結果は、プラズマPIII処理試料について測定された、洗浄後の活性の有意により高い保持である。非処理対照に比較して、プラズマPIII処理試料全てに、タンパク質活性の保持増強が見られるが、PO4緩衝液中に浸漬、洗浄された試料は、より高い塩のPBS緩衝液中に浸漬、洗浄された試料よりも著しく性能が優れている。
【0047】
図4は、該緩衝液に加えられたTween20ブロック洗浄剤により反復された同じ実験を示している。Tween20は、非処理表面への機能的結合に対して劇的な効果を有するが、PIII処理表面に関する結果にはほとんど影響を及ぼさないことは、2つの表面上への結合に関する機序がきわめて異なっており、HRPに対する処理表面の親和性が、非処理表面の親和性よりかなり高いことを示している。これらの結果は、最初の表面結合後のタンパク質を遊離させず、該表面に結合しつつタンパク質の立体構造を保持させる、処理表面上のタンパク質結合機序とも矛盾しない。
【0048】
図5は、第1の洗浄過程後の機能的結合レベルでの緩衝液中HRP濃度の効果を示している。高レベルの希釈で実施された測定のセットは飽和しないが、図3および図4で用いられたのと同じ希釈で実施されたものは、およそ1.4のO.D.で飽和する。このことは、図3の第1のデータポイントの測定値は飽和している可能性が高いという主張を裏付けている。希釈を増大させた実験により、機能的結合のレベルは、溶液中のタンパク質濃度の対数に比例して増加することが示される。この結果によって、そのタンパク質が一旦処理表面上の活性結合部位に結合したら、それはこれらの部位に結合したままでいるという考えがさらに裏付けられる。該部位が占有されるにつれて、引き続くHRP分子の結合に利用可能な部位の密度は減少する。したがって、活性部位にすでに結合したHRP分子の数に比例して、結合の可能性は低下する。
【0049】
反復洗浄後に、非処理表面に比較して、処理表面上にかなりの機能的結合が保持されるという事実は、処理表面に新規な結合機序が導入されることを示している。この新規な結合は、非処置ポリマー上に生じる物理的吸収のようにTween20によってブロックされることはない。これら双方の結果に矛盾しないモデルは、タンパク質の立体構造、したがってタンパク質の機能が長期にわたって維持される様式で、タンパク質と結合する活性結合部位をプラズマ処理が作り出すというものである。理論に拘泥するものではないが、プラズマ処理により、例えば、ポリマー表面上に、タンパク質分子を共有結合することができるダングリングボンドを作り出すことができる。共有結合は、タンパク質機能を妨害せず、経時的に安定で、洗浄に対して耐性である。
【0050】
これらの結合の時間安定性は、結合HRPの密度が、溶液中の濃度の対数と共に直線的に増大するという事実によっても裏付けられる。これは、HRP分子の1つが共有結合部位に到達するとすぐにこれらの分子によって占有されてしまう共有結合部位の制限された利用可能性と矛盾しない。占有された後、その部位はHRP分子を遊離せず、さらなるHRPを取り入れることができない。したがって、衝突の際に該表面へHRP分子が結合する可能性は、HRPによる該表面の被覆が増加するにつれて減少するであろう(したがって、適用された濃度との対数的関係)。
【0051】
空気中で時間を経た処理表面は、接触角(または疎水性回復)の増加を示したが、機能的HRPタンパク質に結合する能力の変化は示さなかった。これは、疎水性相互作用によって駆動される結合から予想されるように、プラズマ活性化部位に関連した結合機序は、該表面の疎水性によって影響を受けないことを示している。この結果はまた、プラズマ処理によって導入された活性化部位は、経時的に減衰せず、経時的な接触角の変化に関連した変化によって影響されないことを示している。
【0052】
Tween20ブロッカーの非存在下では、処理および非処理表面は双方とも、非特異的物理吸着によっていくつかのタンパク質に結合する。これらのタンパク質分子は、結局はそれらの機能性を失うか、該表面から洗い落とされる(機能性アッセイは、これらの2つの可能性を識別できない)。これらが原因となって、Tween20の非存在下、処理および非処理表面上に見られる活性タンパク質濃度は漸次的に減衰する。
【0053】
処理表面上で、これらの実験の測定時間にわたって、機能的タンパク質のシグナルはゼロまで減衰することはない。これは、プラズマ処理によって、かなり異なった結合機序に依存する、より安定な結合部位が作り出されることを示している。これらの部位は、HRP分子に対して高い親和性を有し、反復洗浄工程後、結合分子を機能的状態に保持する。プラズマ処理のエネルギー性イオン衝突またはその後のそれらの大気中における酸化によって作り出された、ダングリングボンドまたは反応性中心に対するタンパク質の共有結合のモデルは、これらの結果と矛盾しない。
【0054】
(実施例2)
機能的カタラーゼの結合増強を目的とするポリエチレンのプラズマ浸漬イオン注入条件下でのプラズマ処理
材料および方法
採用された材料および方法は、HRPの替わりにカタラーゼ(Sigma、カタログ番号C3155)と共にプラズマ処理ポリマー表面をインキュベートしたことを除いて、実施例1に関するものと同じであった。過酸化水素はカタラーゼによって触媒される反応で消費されるため、Cohenら2の方法に従って、過酸化水素含有溶液への表面曝露を用いるアッセイを次に行い、カタラーゼの機能性を判定した。該表面を、6mMのH2O2と共にインキュベートし、ELISAプレートシェーカー上で6分間反応させてから、アリコートを採取し、残留過酸化水素に関して測定した。残留H2O2は、第二鉄イオンに変換される過剰の第一鉄イオンを加えることによって測定した。次いで、第二鉄イオンはチオシアネートと反応し、475nmにおける波長で吸収する赤/橙色の複合体を形成した。このように、この波長における光学密度は、残留H2O2の量の目安を提供する。
【0055】
光学密度を測定する際、過酸化水素対照溶液の6mM溶液の光学密度も測定した。
【0056】
結果および考察
図6は、処理されたポリマー表面に対する最初のカタラーゼ機能的結合が、非処理表面に関するものよりも多いことを示している。機能的結合は、単にRF放電により処理された表面と、PIIIによっても処理された表面とで同様である。図6はまた、結合カタラーゼの活性が、PIII条件下でプラズマ処理されたポリマー表面の場合、実験過程を通してより高いレベルに維持されることも示している。したがって、PIII条件下でのプラズマ処理は、処理されたポリマー表面の疎水性回復の速度が遅延するため、生体分子の機能性維持において、単純なプラズマ処理よりも効果的であると考えられる。
【0057】
(実施例3)
プラズマ浸漬イオン注入条件下のプラズマ処理後、ポリエチレンおよび競合物質結合表面に対する機能的HRPの結合増強の評価
材料および方法
PIIIプラズマ処理および非処理の競合物質表面、ヌンク(Nunc A/S、デンマーク国、www.nuncbrand.comからのNunc MaxiSorb(登録商標)清浄ポリマーマイクロアレイスライド-参照番号230302)およびHTA(Greiner Bio-One GmbH、ドイツ国、www-greinerbioone.comからのHTA(登録商標) マイクロアレイスライド)の双方に対して、ならびに処理および非処理のポリエチレン双方に対して、HRP機能的結合アッセイを実施したことを除いては、採用された材料および方法は、実施例1のものと同じであった。
【0058】
光学密度は、毎日洗浄および緩衝液交換を行いながら、第1の洗浄後(実施例1において1日当たり0ポイント)および3日後に測定した。誤差棒は、各実験に関して行われた3つの測定値の標準偏差を表している。
【0059】
結果および考察
結果(図7に示されている)は、本発明によるプラズマ処理法により、0日目および3日目に、対照表面全てに対して結合の増強が生じることを示している。0日目のヌンクの改善はわずかであり、シグマ1信頼水準に関してまだ誤差棒内にあるが、その表面の3日目の性能は有意により良好である。非処理ヌンクに対する処理ヌンク表面に関する結論としては、結合性能は同様であるが、該処理によって、経時的に、また反復洗浄サイクルを通して、表面安定性が増強する。単純なポリエチレン表面上に実施された場合、本発明による処理によって、非処理ヌンクに比較して、有意に改善された機能的HRP結合が生じる。
【0060】
(実施例4)
窒素プラズマ処理ポリエチレンに対するカタラーゼの機能的結合に及ぼすTween20の効果
材料および方法
実施例2と同じアプローチを用いて、2セットの活性化ポリエチレン表面に、カタラーゼ(ウシ肝臓カタラーゼ(EC1.11.1.6)(C-3155、20mg/ml))を結合させた。表面の1セットは、10mMのPO4、0.005%のTween20 (BDHから)で1時間処理し、一方、もう一つのセットは、Tween20で処理しなかった。次いで、10mMのPO4、0.005%のTween20 pH 7中のカタラーゼを双方の表面セットに加え、揺動させながら一晩インキュベートした。次いで、試料を10mMのPO4 pH 7緩衝液で、実施例1のとおりに洗浄した。洗浄工程にTween20は含まれなかった。
【0061】
結果および考察
ELISAアッセイにおいて、結合した抗原でコーティングされていないポリマー表面の領域をブロックし、緩く結合した抗原、抗体および試薬を洗い落とすために、洗浄剤は長い間使用されてきた。特に、非イオン性のTween20洗浄剤は、表面を永続的にブロックし、アッセイ下のタンパク質の機能に影響を及ぼさないと思われるため、広く用いられてきた。カタラーゼの機能的アッセイにおけるTween20添加の結果は、図8に示されている。非処理表面および双方のタイプのプラズマ処理表面に関して、ブロック作用はほとんど完全であった。該表面が最初Tweenでブロックされても、Tweenとカタラーゼが同時に加えられても、同じ強力なブロックの結果が得られた。その効果が結合のブロックであって、タンパク質機能の阻害ではないことを確認するために、溶液中のカタラーゼにTween20を加えると、該酵素の機能に対して有害な効果を有さないことが判明した。該実験はまた、0.15MのNaCl を含有する10mMのPO4 pH 7中で、およびPBS緩衝液 pH 7.4中でも、Tween20を加えて、および加えずに、実施した。双方の場合で、Tween20は、全ての表面に対する機能的結合を阻害した(データは示していない)。
【0062】
(実施例5)
窒素プラズマ処理ポリエチレンに対するカタラーゼの機能的結合に及ぼす塩化ナトリウムの効果
材料および方法
実施例2と同じアプローチを用いて、活性化ポリエチレン表面に、カタラーゼ(ウシ肝臓カタラーゼ(EC1.11.1.6)(C-3155、20mg/ml))を結合させた。種々のNaCl濃度の溶液中でカタラーゼを一晩インキュベートし、該タンパク質を浸漬させたのと同じNaCl濃度の溶液中であること、また、6回目の洗浄で、試料を新たなファルコン管に移し、全ての試料を10mMのPO4 中で洗浄したこと以外は、実施例1のとおりに洗浄した。
【0063】
結果および考察
タンパク質間、およびタンパク質と表面との間の静電的相互作用を、溶液中イオンの存在によりスクリーニングする。表面-タンパク質相互作用に及ぼす静電力の役割を判定するために、カタラーゼの結合に及ぼすNaCl濃度の効果を試験した。図9における結果は、塩濃度の増加は、全ての表面上の機能的活性の量を減少させず、むしろ増加させたことを示している。このことは、さらに多くのタンパク質が結合したか、または結合したタンパク質が該表面上で良好に分散し、その機能的部位がより接近可能であったかのいずれかであったことを示唆している。カタラーゼは、溶液中で凝集することが知られており、恐らく、より高い塩濃度によって凝集体が解離して、同じ量のタンパク質でより高い酵素活性をもたらし得ると考えられる。塩の存在下で該結合が減少しないことにより、大部分の結合の原因となっている相互作用が、静電的性質ではない(すなわち、電荷および/または永続的双極子間の相互作用に基づくのではない)ことが示される。これらの結果は、活性化ポリエチレン表面に対するカタラーゼの共有結合と矛盾しない。
【0064】
(実施例6)
窒素プラズマ処理ポリエチレンに対するカタラーゼの機能的結合に及ぼす表面経時変化の効果
材料および方法
実施例2と同じアプローチを用いて、活性化ポリエチレン表面に、カタラーゼ(ウシ肝臓カタラーゼ(EC1.11.1.6)(C-3155、20mg/ml))を結合させた。実施例2のとおりにカタラーゼの機能アッセイを行う前に、活性化ポリエチレン試料を、室温で4ヵ月間、気密でないプラスチック容器に保存した。
【0065】
結果および考察
図10は、処理試料を、室温で4ヵ月間、気密でないプラスチック容器に保存した後のプラズマ処理ポリエチレンに対するカタラーゼの機能的結合を示している。保存した処理表面に関する結果は、処理直後にカタラーゼに結合させた試料と同じであった。これらの結果は、そのプラズマ処理が、少なくとも4ヵ月間安定であることを示している。PIII処理試料は、全ての時点で機能的タンパク質の優れた結合を示したが、一方、プラズマおよび非処置ポリエチレンは、経時変化した試料に関して同様であった。
【0066】
(実施例7)
アルゴンおよび窒素プラズマ処理ポリエチレンに結合した機能的西洋ワサビペルオキシダーゼの経時的安定性
材料および方法
高純度のアルゴン(1分当たり、22標準立法センチメートル(sccm))または窒素(72sccm)を用いて、ポリエチレン表面にプラズマまたはPIIIプラズマ処理を施し、実施例1と同じ条件下でHRPとのインキュベーションおよび活性アッセイを行った。
【0067】
経時的に結合タンパク質の短期安定性を評価するために、アルゴンプラズマおよびアルゴンPIIIプラズマ処理を施した試料を、緩衝液に保存し、該緩衝液は毎日新鮮な緩衝液と取り替えた。該溶液から、インキュベーション後の当日(0日目)、その翌日(1日目)、次いで1日おき(3日目および5日目)に取り出された試料に対して、該アッセイを実施した。
【0068】
窒素プラズマ処理表面およびPIII処理表面の長期安定性(使用期限)を評価するために、タンパク質溶液中でのインキュベーションの前に、室温、大気圧での乾燥空気中デシケーター内に、2週間、4週間、6ヵ月間および1年間保存された表面で、上記の操作を繰り返した。
【0069】
結果および考察
図11は、新鮮処理した試料からの結果に比較して、デシケーター内で2週間および4週間保存された試料に関するHRP活性アッセイからの結果を示している。新鮮Arプラズマ処理表面とAr PIII処理表面双方が、プロットされた平均値に関して、経時的変化した試料よりもわずかに高い機能的結合レベルを示すが、それらのほとんど全てが誤差棒内に一致する(1つの標準偏差)。これらの結果は、処理試料におけるいずれの経時的変化の作用もきわめて小さく、2週間後に安定していたことを実証している。
【0070】
図12は、新鮮処理した試料からの結果に比較して、デシケーター内で4週間、6ヵ月および1年間保存された試料に関するHRP活性アッセイからの結果を示している。タンパク質溶液中でのインキュベーション前に、4週間、6ヵ月および1年間保存されたプラズマ処理表面に結合したHRPの活性は、新鮮処理試料に結合したHRPの活性よりも速やかに減衰した。しかし、新鮮PIII処理表面と保存したPIII処理表面との間に、HRP活性の有意差は見られなかった。
【0071】
これらの結果は、PIII処理表面が、タンパク質結合および活性の最少の損失のみを伴って、2週間から4週間それらの性質を保持したことを実証するものである。成績の最も良い処理(窒素プラズマを用いたプラズマ浸漬イオン注入(PIII))により、4週間後に性能の減少は示されず、1年間の保存後に、優れた結合および活性の保持を示し続けた。別個の実験において、この表面はまた、最低の水接触角および最低レベルの疎水性回復も示した。
【0072】
(実施例8)
プラズマ処理ポリスチレン表面に対する大豆ペルオキシダーゼの結合機序の検討
材料および方法
ポリスチレン(PS)シート(Goodfellow、厚さ0.25mm、二軸指向)をおよそ1cm×1cmのサイズの小さな試料に切断した。次いで、これらの試料をメタノールで清浄にし、実施例1で概説した条件下で処理するために、プラズマ処理チャンバーに移した。2つのタイプのプラズマ処理を適用した。第1のタイプは、注入イオンに対してPIIIの使用を含めず、第2のタイプは、プラズマ処理工程中にPIIIを適用した。タンパク質結合実験は全て、比較のために、非処理対照試料で実施された。プラズマ処理の形態を含めて全ての場合で、処理時間は800秒であった。
【0073】
リン酸緩衝液(PB)は10mMのNaH2PO4および10mMのNa2HPO4、pH 7.0であった。標準的リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、pH 7.4に調整された、150mMのNaClを含有するPBであった。種皮大豆ペルオキシダーゼ(PBS)は、Sigma-Aldrichからのもので、表面上のその活性が、比色アッセイの使用によって容易に判定されるために選択された。該アッセイにおいて、SBP基質、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)の反応は、酸によって停止し、黄色の反応産物を形成し、この光学密度を、450nmで読み取る。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とは異なり、SBPはただ1つのイソ型で存在し、一般により高い安定性を有する。
【0074】
凍結乾燥SBPを緩衝液中に再構成した。次いで、吸光係数ε403 = 94.6mM-1 cm-1を用いて、タンパク質濃度を算出した。次いで、タンパク質を緩衝液によって、実験で用いる濃度に希釈した。
【0075】
処理後、試料および非処置対照を、別に記述しない限りは、50μg mL-1の濃度まで添加したSBPを含有する緩衝液中で一晩インキュベートした。次いで、試料を新しい容器に移し、新鮮な緩衝液中で、各洗浄につき20分間ロッカー上に置いて、6回洗浄した。次いで、TMBアッセイを用いて測定するまで、管内の緩衝液中に試料を保存した。試料をより長期間保存する場合は、溶液を、毎日新鮮な緩衝液に取り替えた。中の液体を密封するためにOリングによって包囲された1つの層の中心に直径7mmの孔を有する2つの金属層からなる小型のホルダー内に、所与の日のアッセイ用に選択された試料を置いた。75μLのTMBを30秒間反応させ、その後、50μLを取り出し、450nmでの分光分析のために酸性化した。測定された吸光度は、該表面上の機能的タンパク質の量と相関している。該表面上に残されたタンパク質(機能的または非機能的)の量の相対的予測を判定するために、Digilab FTS7000 FTIR分光器を用いて、赤外線スペクトルを得た。1cm-1の分解能で、マルチプルバウンスゲルマニウム結晶を用い、減衰前反射(ATR)様式でスペクトルを取った。
【0076】
結果および考察
図13は、洗浄され、10日間保存された試料に対するTMB活性アッセイの結果を示している。インキュベーション工程および洗浄工程をリン酸緩衝液中で行い、緩衝液を毎日取り替えた。活性タンパク質の最初の結合(0日目)は、2種のプラズマ処理表面上でいくらか増強するようである。しかし、PIII過程を用いて処理された表面は、非処理対照およびPIIIイオン注入法なしで処理された表面に比較して、10日間にわたり、はるかにより多くの活性タンパク質を保持することを示す。
【0077】
緩衝液選択の何らかの影響を試験するために、タンパク質を含有するPBS溶液中でインキュベートする実験を繰り返した。塩がTMBアッセイに影響を及ぼすことが知られているため、最後の洗浄工程をPB中で行った。所与の日にアッセイされなかった試料は、アッセイするまで、PBS中に保存された。先に記載した2つの処理方法に加えて、試料の他のバッチを、アルゴンPIII法で処理し、その後酸素プラズマに10秒間さらした。結果は図14に示す。0日目での機能的結合は、非処理対照に比較して、3種のプラズマ処理全てで増強した。やはり、経時的に、非処理およびプラズマ表面上に保持された機能的タンパク質はわずかであったが、一方、PIII法を用いて処理された表面は、11日目まで、機能的タンパク質のおよそ半分の量を保持した。その後酸素プラズマにさらすことにより、経時的に、機能的結合に関して、PIIIプラズマ処理の有効性は減少したようである。
【0078】
図13および図14に示された結果は、PIII処理と共にプラズマにさらされた表面と同様にプラズマにさらされた表面に最初の結合の増強が見られることを示している。しかし、PIII表面のみが、より長期にわたって機能的タンパク質を保持する能力を有する。PIII処理では、イオンが多くの層を貫いてポリスチレン内に進入し、該表面と該表面下で該ポリマー鎖を破壊し架橋する。該表面直下に、架橋された、または炭化された層が形成して、改変ポリマー鎖のレプテーション(reptation)が大量になるのを防ぐことが、PIII処理表面に見られる安定性改善の理由であると考えられる。
【0079】
処理表面対非処理対照の結合機序を区別するために、該表面を洗浄剤で洗浄した。洗浄剤のTween20は、非特異的相互作用をブロックするためにしばしば用いられる。タンパク質含有溶液中に一晩、表面を浸漬してから、0.05%のTween20を含有する緩衝液で洗浄した。その結果を図15に示す。該洗浄剤により、非処理表面からほとんどのタンパク質が除去されたが、いずれのプラズマ処理表面からも除去されず、洗浄剤に抵抗するより強力な相互作用が、プラズマ処理表面上での少なくともいくらかの結合の原因となっていることを示している。
【0080】
結合の強度をさらに試験するために、該表面を5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液中で、10分間沸騰させた。SDSが該タンパク質を変性させるため、TMBアッセイはもはや有効ではないので、該表面上に残っているタンパク質の量を評価するために、該表面のFTIRスペクトルを用いた。表面のFTIRスペクトルはタンパク質の検出に用いられることが多いが、根底にあるポリスチレンのスペクトルの複雑さによって、タンパク質によるピークを見ることが困難であった。この問題を解決するために、タンパク質中でのインキュベーションの前後双方での該表面のスペクトルを記録してから差し引いて、差異のスペクトルを得た。図16に示されるように、得られたスペクトルは、タンパク質の結合により、元の処理表面から変化した吸光度のピークのみを含有する。処理および非処理表面双方で、タンパク質溶液中のインキュベーション後に、1650cm-1〜1660cm-1間のアミドのピークが存在し、タンパク質の存在を示している。使用された緩衝液のスペクトルでは、このバンドに吸収を有するものはなかった。5%のSDS中で沸騰後、非処理表面にはアミドピークは存在せず、一方、PIIIを用いて処理した表面では、最初のピークに比較して強度は減少しているが、アミドのピークがまだ存在していた。また、該ピークは、波数がわずかにより高く、およそ1675cm-1へ移動しており、SDS中での沸騰後、予想されるようなタンパク質の変性を示している。このようにSDSは、該タンパク質に関連したピークの継続した存在によって示されるように、PIII処理表面からタンパク質の全てを引き離すことはできない。このことは、共有結合を介したタンパク質の結合に矛盾しない。この結果を確認するために、5%のSDSと1MのNaOHの双方を含有する溶液中で該表面を沸騰させた。該タンパク質は、該表面に結合したままだった。
【0081】
大気にさらした後、酸素が吸収され、該処理によって生成したフリーラジカルと反応して、該表面上に、カルボニル基および他の酸素含有基が生成することを、出願人は先に、PIII処理ポリスチレン表面の赤外線分光分析を用いて示した。例えばカルボニルは、シッフ塩基形成などの反応によりアミン基と共有結合を形成できることが知られている。このタイプの反応は、図17に示したように、PIII処理表面に対するSBPの、観察された共有結合の原因であり得る。SBPは3つの露出したアミノ基を有する;2つはリシンの形態であり、1つはN末端にある。3つの部位は全てタンパク質の活性部位の反対側にあるため、これらの部位間の結合は、SBP活性のブロックをもたらさないと考えられる。他の可能性は、プラズマ処理法において生じた長寿命のフリーラジカルに対するタンパク質の直接的結合である。
【0082】
タンパク質上のアミン基が処理表面に関連した新規結合機序に関与しているという考えを試験するために、試料を、SBPにさらす前に、0.2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン中に3日間浸漬した。トリス分子のアミン基は、処理ポリマー表面上の活性基と反応して、該タンパク質のアミド基との引き続く相互作用からこれらの部位をブロックすることが予想される。タンパク質中でのインキュベーションの前と後の両方、次いで、再度SDS中での沸騰後に、処理表面からFTIRスペクトルを収集した。タンパク質と共にインキュベートする前に収集されたスペクトルを、インキュベーション後およびSDS曝露後に収集されたスペクトルから差し引いた。この方法で得られた差異スペクトルを図18に示す。SDS中で沸騰させると、全てとは言えないまでも、ほとんどのタンパク質が処理表面から除去されたことが、該スペクトルから示されている。アミドピークにおけるこの減少は、タンパク質溶液中でのインキュベーション後、SDS中での非ブロック表面の沸騰からの減少よりもはるかに大きいことは確かである。この結果により、該タンパク質と結合する共有結合部位が、トリス中に見られるC-NH2またはC-OH官能基と容易に反応することが確認され、それらが、該タンパク質におけるこれらの基とおそらく反応するであろうことを示している。しかしながら、これは、該表面が該タンパク質上の他の官能基と結合するという可能性もまだ残している。
【0083】
PIIIと同時に、ポリスチレン上でのアルゴンガス中プラズマ処理を行うことにより、機能的大豆ペルオキシダーゼに対する結合能力の増強した、ならびに経時的にタンパク質の機能を保持する能力の増強した表面が生じる。結合能力の増強は、少なくとも部分的には、該タンパク質に共有結合する官能基の生成に起因するように思われる。タンパク質アレイおよびバイオセンサーにとって、機能的部位を作り出すためにPIIIを用いる利点としては、環境にやさしいことおよび該方法の簡便さ、ならびに表面のパターン化のためのマスキングに関して現在存在している方法論との直截的統合が挙げられる。その方法は完全にドライであり、アルゴンのみを使用して機能的部位を作り出し、タンパク質または他の生体分子に結合するために化学的リンカーを必要としない。
【0084】
パターン化を目的に、この方法のマスクされた変型を用いてタンパク質アレイを作り出す重要な態様は、非処理表面に対するバックグラウンドタンパク質接着の最少化であろう。タンパク質とのインキュベーション後のTween20洗浄が、非処理と処理表面、それぞれの表面上に残留する機能的タンパク質における1:5の比率を与えることを、これらの結果は示している。バックグラウンドシグナルを除去するための方策の一つは、表面全体を処理し、ロボットによる配置、インクジェット様式のタンパク質プリント、またはディップペンナノリソグラフィーのいずれかにより、所望の部位に該タンパク質を機械的に配置することである。次いで、表面全体が、これらの処理表面に結合しているタンパク質除去に無効であるTween20などの試薬によってブロックされるであろう。
【0085】
(実施例9)
アミン基のSNAブロックによる、PIIIプラズマ処理ポリスチレン表面に対するトロポエラスチン結合機序の検討
材料および方法
ポリスチレンシート(Goodfellows)を、0.8×8cmの細片に切断し、100%のエタノールで拭いた。試料を、ヘリコンPIIIプラズマチャンバーの標的プレート上に乗せ、実施例1に記載されたとおりPIII処理した。非処理対照は、プラズマチャンバー内での処理を受けなかった。トロポエラスチン(Anthony Weiss教授により、大腸菌において構内で製造された)は、先に記載したとおり(2)ブロックしたスルホ-NHSアセテート(SNA)であった。簡単に述べると、トロポエラスチンを、100mMのNaHCO3、pH 8.5中、1mg/mlに可溶化し、25倍モル過剰のSNA (Pierce)を加え、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、過剰のSNAを、4℃で、4×11容量のPBSに対する透析によって除去した。SNA処理試料と並行して、非SNA対照を含めた。透析後、280nmにおける吸光度を測定し、トロポエラスチン濃度の判定に用いた。
【0086】
非処理およびPIII処理ポリスチレンの細片を、0.8×0.8 cmの正方形に切断し、24ウェルプレート(Greiner bio-one)のウェル内に入れた。SNA処理および非処理トロポエラスチンを、PBS中10μg/mlに希釈し、1ウェル当たり、0.75mlを加え4℃で16時間インキュベートした。非結合トロポエラスチンを吸引除去した後、PBSの3×1ml洗浄を行った。該試料を、1.5mlのPBS中5% SDS(w/v)に移すことによってSDS処理し、90℃で10分間インキュベートした。SDS処理後、該試料を、24ウェルプレート内に入れ、3×1mlのPBSで洗浄し、非特異的なポリスチレン結合を、PBS中室温で1時間、10mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)によりブロックした。BSAブロック後、該試料を、2×1mlのPBS洗浄液により洗浄してから、0.75mlの1:1000希釈のマウス抗エラスチン抗体(BA-4、Sigma)中、室温で1時間インキュベートした。抗体を除去し、該試料を、PBSの3×1ml洗浄液で洗浄してから、0.75mlの1:10000希釈ヤギ抗マウスIgG-HRP結合二次抗体(Sigma)中、室温で1時間インキュベートした。二次抗体を除去し、該試料を、4×1mlのPBS洗浄液で洗浄した。該試料を新たな24ウェルプレートに移し、0.75mlのABTS溶液(Sigma)を加えた。30〜40分後、該プレートを攪拌し、ABTSのアリコート100μlを96ウェルプレートに移し、405nmにおける吸光度を読み取った(BIORADモデル450プレートリーダー)。
【0087】
結果および考察
図19(誤差棒はSD(n = 3)を示す)で示されるように、SDSによる処理によって、非処理ポリスチレンから非SNA-ブロックトロポエラスチンが、バックグラウンドレベルまで完全に除去される。図19はまた、SDSが、PIII処理試料からトロポエラスチンを除去しないことも示しており、トロポエラスチンとPIII処理ポリスチレンとの間に強力な結合が存在することも示している。対照的に、SNAブロックトロポエラスチンは、非処理とPIII処理ポリスチレンの双方から、SDS処理によって完全に除去され、SNAが、トロポエラスチンとPIII処理ポリスチレンとの強い相互作用に関与するトロポエラスチンの側鎖をブロックしたことを示している。SNAはリシン側鎖のアミン基をブロックするため、これは、リシン側鎖上のアミンが、PIII処理ポリスチレンに対するトロポエラスチンのSDS耐性結合にとって必要であることを示唆している。
【0088】
【化1】

【0089】
(実施例10)
トロポエラスチンでコーティングされたプラズマ処理ポリスチレン表面に拡散しているヒト皮膚線維芽細胞の検討
材料および方法
細胞の拡散を判定するために、0.8×0.8cmの正方形の非処理、およびPIII処理(実施例1の手順による)ポリスチレンを、PBS中希釈した10μg/mlのトロポエラスチン0.75ml中で24ウェルプレート中、4℃で16時間インキュベートした。非結合トロポエラスチンを吸引し、非コーティングポリスチレンに対する細胞の結合を、PBS中10mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)により、室温で1時間ブロックした。非ブロック試料を、BSAなしのPBS中でインキュベートした。ヒト皮膚線維芽細胞の集密状態に近い75cm2フラスコを、トリプシン-EDTA(Gibco)と37℃で4分間インキュベートすることによりトリプシン化し、引き続いて培地(基本培地(ICN biomedicals)、非必須アミノ酸(Gibco)、必須アミノ酸(Gibco)、ならびにペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco)を含有)を含有する等容量の10% FCS(Gibvo)によって中和した。細胞懸濁液を800gで3分間遠心分離し、細胞ペレットを、5mlの無血清の温培地に再懸濁した。細胞密度をカウントし、1×105細胞/mlに調整した。該ウェルからBSAブロック溶液を吸引し、引き続きPBSの3×1ml洗浄を行った。0.75mlの細胞アリコートを該ウェルに加え、次いで5% CO2のインキュベーターにおいて、37℃で90分間インキュベートした。81μlの37%(w/v)ホルムアルデヒド(Sigma)を該ウェルに20分間かけて直接添加することにより、該細胞を直ちに固定した。ホルムアルデヒドを吸引し、該ウェルをPBSで満たした後、24ウェルプレート上にガラスプレートを重ねた。位相差顕微鏡により、細胞拡散のレベルを判定した。核が見えていて「位相-暗」の場合は細胞が拡散していたが、丸形で「位相-明」の場合は非拡散であった。
【0090】
結果および考察
図20(誤差棒はSD(n = 3)を示す)から見られるように、ヒト線維芽細胞は、トロポエラスチンの非存在下、BSAブロックの非処理ポリスチレン上に拡散していなかった。図20はまた、トロポエラスチンのコーティングにより、非処理ポリスチレン上には、BSAブロックの存在下で、細胞拡散がわずか4%に増加し、BSAブロックの非存在下で、18%に増加することを示している。BSAブロックPIII処理ポリスチレンは、8%の細胞拡散を支持するが、非処理ポリスチレンとは対照的に、トロポエラスチンのコーティングにより、5μg/mlと20μg/mlのトロポエラスチンコーティング濃度に関し、細胞拡散を、それぞれ、80%と83%まで劇的に増加させる。非BSAブロックPIII処理ポリスチレン上への細胞拡散は、98%できわめて高く、したがって、トロポエラスチンのコーティングは、拡散のレベルには影響を及ぼさない。
【0091】
PIII処理は、ポリスチレン表面上への細胞結合を著しく増強する。さらに、PIII処理はまた、該ポリマーにコーティングされているトロポエラスチン上への細胞拡散のレベルを劇的に増加させる。細胞結合におけるこの劇的な増加は、該表面上にコーティングされたトロポエラスチンの選択的な形態によるか、および/またはポリスチレンの疎水性における変化による可能性が考えられ、これが、細胞相互作用の改善を可能にする。したがって、PIII処理は、該ポリマー表面に強く結合しているトロポエラスチンに対する高い細胞結合性を支持するため、劇的改善を示す。
【0092】
(実施例11)
プラズマ浸漬イオン注入条件下でのプラズマ処理後、PTFE(Teflon(登録商標))に対する機能的HRPの結合増強の評価
材料および方法
西洋ワサビペルオキシダーゼを、Sigma(CAS番号:9003-99-0、P6782)から購入し、10mMのリン酸(PO4)緩衝液(pH 7)中、1μg.ml-1の濃度に溶解した。20μmの厚さのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、Halogen(Perm、ロシア国)からのものであった。プラズマ処理に用いられる窒素ガスは、99.99%純粋であった。
【0093】
プラズマ浸漬イオン注入は、実施例1のとおりに実施した。処理中のプラズマ密度は、Hiden Analytical社からのコントローラーを備えたラングミュアプローブを用い、連続的にモニターした。試料表面の前方45mmに置かれた、ステンレス鋼ホルダーに電気的に接続されたステンレス鋼メッシュを有する該ホルダー上に、該試料を乗せた。0.5〜20×1015イオン/cm2の注入イオンフルエンスに対応する20〜800秒の持続時間で、該試料を処理した。1パルスに対応するフルエンスを掛けた高電圧パルスの数から、イオンフルエンスを算出した。本明細書に用いられた条件下で注入されたサテライトポリエチレンフィルムからのUV透過スペクトルを、先のPIIIおよびイオンビーム処理実験における既知のフルエンスで注入された試料と比較することによって、1つの高電圧パルスのフルエンスを判定した。
【0094】
接触角を測定するために、Kruss接触角装置DS10を用い、液滴法を用いて、PTFEの湿潤性を測定した。測定のために、脱イオン水、グリセロール、ホルムアミドおよびジヨードメタンを、試料上に滴下して、液滴端部と該表面との間の角度を測定した。表面エネルギーおよびその成分(極性部分および分散部分)を、回帰法により、ラベル(Rabel)モデルを用いて算出した。PIII処理後、PTFE試料を、室温(23℃)で空気中3日間、密封容器内に保存した。3日後、PTFE試料をHRP溶液中、23℃で1時間インキュベートした。その溶液は、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7中50μg/mlに希釈したHRPを含有した。インキュベーション後、PTFE試料を、緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液 pH 7)中、各2時間ずつ6回洗浄した。次いで、PTFE表面から緩衝液の塩を除去するため、FTIRスペクトル用試料を脱イオン水中で10秒間洗浄した。
【0095】
TMBアッセイ(脱イオン水中で洗浄しない)に用いたPTFE試料(13mm×15mm)を、プラズマ処理表面に密封されたOリング(内径8mm、外径11mm)によって分離した2つのステンレス鋼プレート間にクランプした。上部プレートは、5mm直径の孔を含有した。過酸化水素(75μl、6mM)を該ポリマー表面に加え、6分間インキュベートした。この間に、該プレートを、ELISAプレートシェーカーにクランプした組織培養プレートの表面に加え、振とうさせた。6分後、3μlを取り出し、残りの過酸化物をコーヘンの改変法によりアッセイした。過酸化水素を、0.6MのH2SO4および10mMのFeSO4の混合物からなる0.25mlの溶液に加え、20μlの2.5M KSCNを加えて、発色させた。DU 530ベックマン分光分析器を用いて、475nmにおける吸光度を測定した。
【0096】
45度の入射角で台形のゲルマニウム結晶を有するATRアクセサリー(Harrick、米国)を備えたDigilab FTS7000 FTIR分光器を用いて、PTFE試料のFTIR ATRスペクトルを記録した。十分なシグナル/ノイズ比およびスペクトルバンドの分解能を得るため、1cm-1の分解能での500スキャンを用いた。スペクトルを記録する前に、乾燥空気流を用いて、PTFEの表面を乾燥させた。変化を検出するために、PIII処理前後試料の差異スペクトル、ならびにHRP結合のある、および無いPIII処理試料の差異スペクトルを用いた。スペクトル分析は全て、GRAMSソフトウェアを用いて実施した。
【0097】
結果および考察
図21は、PIII処理後のPTFE表面から取られたスペクトルを示す。非処理表面スペクトルと比較して、改変表面のスペクトルは、改変表面層の追加の線を含有している。特に、1882、1785および1715 cm-1における線は、大気中でのポスト処理酸化の後にPTFE表面上に形成される酸素含有基の振動に対応する。985 cm-1における線は、不飽和C=C基の振動に対応する。
【0098】
図22は、イオンフルエンスの関数としてPTFEの表面層に現れる新たな基の強度の定量的分析の結果を示す。酸素含有基および不飽和基の濃度は、イオンフルエンスと共に明らかに増加する。
【0099】
図23は、HRPタンパク質結合の前後でのPIII改変PTFEのFTIR ATR差異スペクトルを含む。差し引きの後、該スペクトルは、タンパク質溶液中に浸漬後に現れる新たな基に対応する線のみを示す。3315 cm-1 (アミドA)、1650 cm-1(アミドI)および1540 cm-1(アミドII)における線は、PTFE表面に結合したタンパク質分子の振動による。非処理PTFE表面から取られたスペクトルに現れているタンパク質の線の強度は、該スペクトルのノイズのレベルに近いが、PIII改変PTFE表面のスペクトルには、有意な強度が見られる。
【0100】
イオンフルエンスの関数としてのアミドAおよびアミドIIの線に関する正規化された吸光度を図24に示す。これらの線の強度によると、PTFE表面上の結合HRPの濃度は、PIII処理後に明白に増加する。しかし、その濃度は、イオンフルエンスに強く依存するわけではない。該ポリマーにおける構造変化の増大と共に結合タンパク質の濃度が増加することはないという事実は、結合タンパク質の濃度が、比較的低いフルエンスにおいてPIII改変表面上で飽和することを示している。
【0101】
図25は、PIII処理後、PTFE表面上の活性HRPタンパク質のTMB試験結果を含んでいる。PIII処理PTFE表面に関するTMB試験の高い吸光度値は、PIII改変ポリエチレン表面で見られた最高値と同様である。
【0102】
(実施例12)
ポリエチレンに対する凍結乾燥西洋ワサビペルオキシダーゼ
材料および方法
実施例1に概説した方法に従って、ポリエチレン表面に、プラズマまたはPIIIプラズマ処理を施した。プラズマおよびPIIIプラズマ処理ならびに非処理の表面をどちらも、10mMのリン酸緩衝液 pH 7中の西洋ワサビペルオキシダーゼ(50μg/ml)中で一晩インキュベートした。翌日、該試料を、10mMのリン酸緩衝液 pH 7中で6回、各回20分間ずつ洗浄した。最終洗浄で、出願人は、2.5%の最終濃度までスクロースを添加した。次いで該溶液を、500mlの丸底フラスコまたは50mlのファルコン管内の試料と共に、液体窒素内に該容器を浸漬することによって凍結させた。凍結する際、該丸底フラスコをDynavac FD1フリーズドライヤーに結合させることによって、水を除去した。ファルコン管を、フリーズドライヤーの内部に置いた。次いで、一晩凍結乾燥した。凍結乾燥は、該材料の水性内容物が、真空内に昇華することによって除去される過程である。好首尾の凍結乾燥工程により、結合分子の機能が再水和の際に回復することが可能になる。一晩凍結乾燥後、該試料を取り出し、乾燥剤を有する密封容器内に入れ、23℃で保存した。凍結乾燥後、試料を再水和し、選択された時点で、実施例1のようにHRP活性アッセイを施した。
【0103】
結果および考察
PIIIプラズマ処理を施した表面では、ポリエチレン表面に結合したHRPの有意な活性が、最長30日の時点でも保持されたことを、図26に示された結果は実証している。さらに、PIIIプラズマ処理表面の活性は、非処理およびプラズマのみの処理表面双方に関する活性よりも有意に高かった。
【0104】
本発明は、ほんの一例として記載されており、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかである本発明に対する改変および/または変更も、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲および趣旨の範囲に入ると考えられることが理解されるべきである。
[参考文献]

【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明によるポリマー基質の表面活性化の方法に有用な、誘導的に結合させたプラズマ処理チャンバーの概略図である。
【図2】非処理(黒四角形)および処理(白四角形)ポリエチレン(PE)試料に関する、プラズマ処理後の経時的表面親水性の減衰(疎水性回復)を示す図であり、時間(日数)に対する水接触角(度)のグラフを示す図である。
【図3】PE試料に対する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の結合および活性を示す図であり、PO4緩衝液(菱形)およびPBS緩衝液(四角形)と共にインキュベートした、ならびにPIII条件下プラズマ処理(白色)および非処理(黒色)双方のPE表面に関する、時間(日数)に対する450nmにおける光学密度(O.D.)のグラフを示す図である。最初の測定前に一晩試料を浸漬したHRP含有溶液の作製、およびその後、日ベースで実施された洗浄には、同じ緩衝液が用いられた。
【図4】ブロック洗浄剤(Tween20)の存在下、PE試料に対する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の結合および活性を示す図であり、PBS-Tween緩衝液(HRP含有溶液の作製に用いられた)と共にインキュベートし、PO4緩衝液(菱形)またはPBS-Tween緩衝液(四角形)のいずれかで洗浄したPE表面に関する、時間(日数)に対する450nmにおける光学密度(O.D.)のグラフ、ならびにPIII条件下プラズマ処理(白色)および非処理(黒色)双方の表面に関するデータを示す図である。非処理試料に関する2つの結果のセットが重複していることに留意されたい。
【図5】種々のHRP濃度を用いた、PE試料に対する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の結合および活性のレベルを示す図であり、PIII条件下プラズマ処理(白色)および非処理(黒色)双方、ならびに光学密度測定の際に希釈あり(三角形)および希釈なし(四角形)双方に関する、HRPインキュベーション濃度(mg/ml)に対する450nmにおける光学密度(O.D.)のグラフを示す図である。
【図6】カタラーゼの結合および活性を(カタラーゼによって触媒される反応において分解される過酸化水素をアッセイすることにより)示す図であり、プラズマ浸漬イオン注入条件下で処理された表面の結合安定性の改善も示す図であり、非処理(十字を含む四角形)、プラズマ処理(円形)またはプラズマ浸漬イオン注入条件下でプラズマ処理(黒色四角形)してから、カタラーゼと共にインキュベートし、それ以後毎日洗浄したPE表面に関する、時間(日数)に対する475nmにおける光学密度(O.D.)のグラフを示す図であり、同じ緩衝液および6mMの過酸化水素を含む対照を黒色円形で示した図である。
【図7】プラズマ(PIII条件を用いて)処理および非処理競合ポリマー表面、ヌンクおよびHTA、ならびに非処理ポリエチレン(PE)およびPIII条件下でのプラズマ処理PE双方に関する0日目(陰影)および3日目(陰影なし)における、HRPアッセイを用いた光学密度の棒グラフを示す図である。
【図8】窒素処理ポリエチレンに対するカタラーゼの結合に及ぼすTween20の効果を示すために、時間に対する475nmにおける吸光度のプロットを示す図である。A 表面を、カタラーゼ/Tween溶液添加の前に、Tween20で1時間処理した図である。B 先に表面をTweenと共にインキュベートすることなしに、カタラーゼ/Tweenを加えた図である:(黒色四角形)PIII;(十字を含む四角形)プラズマ;(黒色円形)非処理;(白色円形) 6mM H2O2
【図9】窒素処理ポリエチレンに対するカタラーゼの結合に及ぼす塩化ナトリウムの効果を示すために、NaCl濃度(モル/l)に対する475nmにおける吸光度のプロットを示す図である。6mM H2O2の吸光度 = 1.20±0.08:(黒色四角形)PIII;(十字を含む四角形)プラズマ;(黒色円形)非処理;(白色円形) 6mM H2O2
【図10】窒素処理ポリエチレンに対する機能的結合に及ぼすカタラーゼの濃度増加の効果を示すために、カタラーゼ濃度(μg/ml)の対数に対する、475nmにおける吸光度のプロットを示す図である。50μg/mlまでのカタラーゼの最良適合の線の等式(equation for line)が、プラズマ処理表面では結合率がより高いことを示す。PIII y = 0.816(±0.048) 0.23(±0.044) x;プラズマ y = 0.78(±0.042) - 0.27(±0.039) x;非処理 y = 0.944(±0.055) - 0.16(±0.051) x。6mM H2O2の吸光度 = 1.00±0.044:(黒色四角形)PIII;(十字を含む四角形)プラズマ;(黒色円形)非処理;(白色円形) 6mM H2O2
【図11】処理過程の5時間以内(■)、処理後2週間(●)、および処理後4週間(▲)にインキュベートしたPE表面についてのHRP活性アッセイからの光学密度測定値のグラフを示す図である。(a)が、アルゴンプラズマ処理法に関する結果を示し、(b)が、アルゴンPIII表面処理に関する結果を示す。ポイントは、3つの測定値の平均であり、誤差棒は標準偏差1に対応する。0日目のデータポイントは、活性アッセイによる試験の前に、HRP溶液で一晩インキュベートしてから新鮮な緩衝液で洗浄した試料について測定した活性に対応する。
【図12】処理過程の5時間以内(■)、処理後4週間(▲)、処理後6ヵ月(●)および処理後1年(△)に、HRP溶液中でインキュベートしたPE表面についてのHRP活性アッセイからの、図11でのような光学密度測定値のグラフを示す図である。アッセイは種々の時点で行われたため、1セットの対照試料を各々の試料と共に分析し、したがって、この図には、非処理表面に関して3セットのデータが示されている。対照は左側;窒素PIII法によるPE表面処理は右側に、および窒素プラズマ処理表面は中央に示されている。
【図13】経時的に、ポリスチレン(PS)表面上の機能的タンパク質(大豆ペルオキシダーゼ(SBP))の保持時間を示す、時間(日数)に対する吸光度の棒グラフを示す図である。非処理表面(黒)、プラズマ処理表面(白)およびPIII処理(灰色)表面は、実験の間、PB中で保存された。
【図14】経時的に、ポリスチレン(PS)表面上の機能的タンパク質(大豆ペルオキシダーゼ(SBP))の保持時間を示す、時間(日数)に対する吸光度の棒グラフを示す図である。非処理表面(黒)、プラズマ処理表面(白)、PIII処理(灰色)表面およびPIII/O2プラズマ処理表面(重ね)は、実験の間、PBS中で保存された。
【図15】大豆ペルオキシダーゼとインキュベートした非処理、プラズマ処理およびPIII処理のポリスチレン表面に関して、Tween20への曝露(灰色)後または曝露なし(黒)後の吸光度の棒グラフを示す図である。
【図16】いくつかのPS表面から取られたATR-FTIRスペクトルを示す図であり、示された全てのスペクトルがSBP中に浸漬する前に取られた表面の元のスペクトルから差し引いた後のものである。(A)は、タンパク質中でインキュベートした後(黒)およびSDS中で沸騰させた後(灰色)の非処理表面のスペクトルである。(B)は、タンパク質中でインキュベートした後(黒)およびSDS中で沸騰させた後(灰色)のPIII処理表面のスペクトルである。(C)は、種々の溶液-SDS(Bから)、1MのHCl + 5%のSDSおよび1MのNaOH + 5%のSDS、の中でPIII処理表面を沸騰させた後の種々のスペクトルである。
【図17】PIIIプラズマ処理表面に対するタンパク質の共有結合に関する可能性のある機序の略図を示す図である。
【図18】タンパク質(SBS)中でのインキュベート後(黒)およびSDS中沸騰後(灰色)の処理されてトリスブロックされたPS表面のATR-FTIRスペクトルを示す図である。
【図19】非処理およびPIII処理ポリスチレン表面に関して、SNAブロックトロポエラスチン(白)、非ブロックトロポエラスチン(灰色)またはトロポエラスチンなし(黒)のいずれかとインキュベーション後の吸光度の棒グラフを示す図である。
【図20】0、5または20μg/mlでのトロポエラスチンコーティング後、BSAブロックあり(黒色)またはブロックなし(クロスハッチ)での、非処理またはPIII処理のポリスチレン表面に関して、拡散しているヒト皮膚線維芽細胞パーセンテージの棒グラフを示す図である。
【図21】PIII処理後のPTFEのFTIR ATRスペクトルを示す図である。下から上に:非処理、5×1014イオン/ cm2、1015イオン/ cm2、2×1015イオン/ cm2、5×1015イオン/ cm2、1015イオン/ cm2
【図22】PIII処理後のPTFEのFTIR ATRスペクトル線の正規化された吸光度:菱形-1882 cm-1、立方形-1785 cm-1、円形-1715 cm-1、三角形-985 cm-1、を示す図である。
【図23】PIII処理およびHRP浸漬後のPTFEマイナスPIII処理単独後のPTFEの、FTIR ATR差し引きスペクトルを示す図である。下から:非処理、5×1014イオン/ cm2、1015イオン/ cm2、2×1015イオン/ cm2、5×1015イオン/ cm2、1015イオン/ cm2
【図24】PIII処理後のPTFEのFTIR ATRスペクトルにおける、結合HRP線の正規化された吸光度: 三角形-1540 cm-1(アミドII)線、菱形-3315 cm-1(アミドA)線を示す図である。
【図25】PIII処理後のPTFE表面上の活性HRPに関するTMBアッセイ試験における、475nmにおける吸光度を示す図である。
【図26】HRPとインキュベートした非処理(黒円形)、プラズマ処理(白四角形)またはPIIIプラズマ処理(黒四角形) ポリエチレン表面に関する凍結乾燥後の時間(日数)に対する450nmにおける吸光度のグラフを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質であって、前記生体分子への結合が可能となるように活性化された親水性表面と、複数の架橋領域を含む内層面とを含む活性化ポリマー基質。
【請求項2】
ホモポリマー、コポリマー、1つまたは複数のポリマーを含有する材料、混合物あるいはブレンドあるいはポリマーマトリックス複合体を含む、請求項1に記載の活性化ポリマー基質。
【請求項3】
前記ポリマー基質が、ブロック、シート、フィルム、ストランド、繊維、小片または粒子、粉末、造形品、織布、あるいはシートにプレスされた密集繊維である、請求項1または請求項2に記載の活性化ポリマー基質。
【請求項4】
前記ポリマー基質が、診断用キット、バイオセンサー、燃料電池から選択されるデバイス、あるいは化学的処理用デバイス、細胞または組織培養用足場、分析用プレート、アッセイ成分、あるいは医療用デバイスを形成するか、またはこれらの成分である、請求項1から3のいずれか一項に記載の活性化ポリマー基質。
【請求項5】
前記医療用デバイスが、コンタクトレンズ、ステント、ペースメーカー、補聴器、補綴具、人工関節、骨または組織代替材料、人工臓器または人工皮膚、接着剤、組織シーラント、縫合糸、ステープル、釘、ねじ、ボルト、あるいは外科で使用する他のデバイス、あるいは他のインプラント可能なデバイスから選択される、請求項4に記載の活性化ポリマー基質。
【請求項6】
前記ポリマーが、1つまたは複数のポリオレフィン類、ポリオレフィン類と他のポリマー類またはゴム類とのブレンド;ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリイミド類;ポリカーボネート類;ハロゲン化ポリマー類、芳香族ポリマー類、ケトンポリマー類、メタクリレートポリマー類およびポリエステル類を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の活性化ポリマー基質。
【請求項7】
前記ポリマーが、1つまたは複数の低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド) (ナイロン66)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラ-フルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABSおよびエチレンプロピレンジエン混合物(EPDM)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の活性化ポリマー基質。
【請求項8】
機能的生体分子により機能化されたポリマー基質であって、生体分子が結合した親水性表面と、複数の架橋領域を含む内層面とを含む機能化ポリマー基質。
【請求項9】
ホモポリマー、コポリマー、1つまたは複数のポリマーを含有する材料、混合物あるいはブレンドあるいはポリマーマトリックス複合体を含む、請求項8に記載のポリマー基質。
【請求項10】
前記ポリマー基質が、ブロック、シート、フィルム、ストランド、繊維、小片または粒子、粉末、造形品、織布、あるいはシートにプレスされた密集繊維である、請求項8または請求項9に記載のポリマー基質。
【請求項11】
前記ポリマー基質が、診断用キット、バイオセンサー、燃料電池から選択されるデバイス、あるいは化学的処理用デバイス、細胞または組織培養用足場、分析用プレート、アッセイ成分、あるいは医療用デバイスを形成するか、またはこれらの成分である、請求項8から10のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項12】
前記医療用デバイスが、コンタクトレンズ、ステント、ペースメーカー、補聴器、補綴具、人工関節、骨または組織代替材料、人工臓器または人工皮膚、接着剤、組織シーラント、縫合糸、ステープル、釘、ねじ、ボルト、あるいは外科で使用する他のデバイス、あるいは他のインプラント可能なデバイスから選択される、請求項11に記載のポリマー基質。
【請求項13】
前記ポリマーが、1つまたは複数のポリオレフィン類、ポリオレフィン類と他のポリマー類またはゴム類とのブレンド;ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリイミド類;ポリカーボネート類;ハロゲン化ポリマー類、芳香族ポリマー類、ケトンポリマー類、メタクリレートポリマー類およびポリエステル類を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項14】
前記ポリマーが、1つまたは複数の低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド) (ナイロン66)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラ-フルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABSおよびエチレンプロピレンジエン混合物(EPDM)を含む、請求項8から13のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項15】
前記生体分子が、1つまたは複数のアミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、脂質、炭水化物を含む、請求項8から14のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項16】
前記生体分子が、薬物または薬物標的を含む、請求項8から14のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項17】
前記生体分子が、1つまたは複数の抗体、免疫グロブリン、受容体、酵素、神経伝達物質、サイトカイン、ホルモン、相補性決定タンパク質、DNA、RNAおよびそれらの活性断片を含む、請求項8から14のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項18】
前記生体分子が、細胞または細胞成分と一体化しているか、または結合している1つまたは複数の分子を含む、請求項8から14のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項19】
前記生体分子が、活性化ポリマーに共有結合している、請求項8から18のいずれか一項に記載のポリマー基質。
【請求項20】
機能的生体分子に結合することができる活性化ポリマー基質を含むデバイスであって、前記基質が、前記生体分子への結合が可能となるように活性化された親水性表面と、複数の架橋領域を含む内層面とを含むデバイス。
【請求項21】
前記ポリマー基質が、ホモポリマー、コポリマー、1つまたは複数のポリマーを含有する材料、混合物もしくはブレンドまたはポリマーマトリックス複合体を含む、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ポリマー基質が、ブロック、シート、フィルム、ストランド、繊維、小片または粒子、粉末、造形品、織布、あるいはシートにプレスされた密集繊維である、請求項20または請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
診断用キット、バイオセンサー、燃料電池から選択されるデバイス、あるいは化学的処理用デバイス、細胞または組織培養用足場、分析用プレート、アッセイ成分、あるいは医療用デバイスである、請求項20から22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記医療用デバイスが、コンタクトレンズ、ステント、ペースメーカー、補聴器、補綴具、人工関節、骨または組織代替材料、人工臓器または人工皮膚、接着剤、組織シーラント、縫合糸、ステープル、釘、ねじ、ボルト、あるいは外科で使用する他のデバイス、あるいは他のインプラント可能なデバイスから選択される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記ポリマーが、1つまたは複数のポリオレフィン類、ポリオレフィン類と他のポリマー類またはゴム類とのブレンド;ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリイミド類;ポリカーボネート類;ハロゲン化ポリマー類、芳香族ポリマー類、ケトンポリマー類、メタクリレートポリマー類およびポリエステル類を含む、請求項20から24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記ポリマーが、1つまたは複数の低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド) (ナイロン66)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラ-フルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABSおよびエチレンプロピレンジエン混合物(EPDM)を含む、請求項20から24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
機能的生体分子により機能化されたポリマー基質を含むデバイスであって、機能化ポリマー基質が生体分子が結合した親水性表面と、複数の架橋領域を含む内層面とを含むデバイス。
【請求項28】
前記ポリマー基質が、ホモポリマー、コポリマー、1つまたは複数のポリマーを含有する材料、混合物もしくはブレンドまたはポリマーマトリックス複合体を含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記ポリマー基質が、ブロック、シート、フィルム、ストランド、繊維、小片または粒子、粉末、造形品、織布、あるいはシートにプレスされた密集繊維である、請求項27または請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
診断用キット、バイオセンサー、燃料電池から選択されるデバイス、あるいは化学的処理用デバイス、細胞または組織培養用足場、分析用プレート、アッセイ成分、あるいは医療用デバイスである、請求項27から29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記医療用デバイスが、コンタクトレンズ、ステント、ペースメーカー、補聴器、補綴具、人工関節、骨または組織代替材料、人工臓器または人工皮膚、接着剤、組織シーラント、縫合糸、ステープル、釘、ねじ、ボルト、あるいは外科で使用する他のデバイス、あるいは他のインプラント可能なデバイスから選択される、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記ポリマーが、1つまたは複数のポリオレフィン類、ポリオレフィン類と他のポリマー類またはゴム類とのブレンド;ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリイミド類;ポリカーボネート類;ハロゲン化ポリマー類、芳香族ポリマー類、ケトンポリマー類、メタクリレートポリマー類およびポリエステル類を含む、請求項27から31のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項33】
前記ポリマーが、1つまたは複数の低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド) (ナイロン66)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラ-フルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABSおよびエチレンプロピレンジエン混合物(EPDM)を含む、請求項27から32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記生体分子が、1つまたは複数のアミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、脂質、炭水化物を含む、請求項27から33のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項35】
前記生体分子が、薬物または薬物標的を含む、請求項27から33のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記生体分子が、1つまたは複数の抗体、免疫グロブリン、受容体、酵素、神経伝達物質、サイトカイン、ホルモン、相補性決定タンパク質、DNA、RNAおよびそれらの活性断片を含む、請求項27から33のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記生体分子が、細胞または細胞成分と一体化しているか、または結合している1つまたは複数の分子を含む、請求項27から33のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項38】
前記生体分子が、活性化ポリマーに共有結合している、請求項27から37のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項39】
活性化ポリマー基質を製造する方法であって、プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程を含む方法。
【請求項40】
生体分子により機能化されたポリマー基質を製造する方法であって、
(a)プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程と、
(b)工程(a)に従って処理された表面を、所望の生体分子と共にインキュベートする工程と
を含む方法。
【請求項41】
プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程を含む方法により製造された活性化ポリマー基質。
【請求項42】
(a)プラズマ浸漬イオン注入条件下、ポリマー基質の表面に、好適なプラズマ形成ガスとのプラズマ処理を施す工程と、
(b)工程(a)に従って処理された表面を、所望の生体分子と共にインキュベートする工程と
を含む方法により製造された、生体分子により機能化されたポリマー基質。
【請求項43】
凍結乾燥されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の活性化ポリマー、請求項8から19のいずれか一項に記載のポリマー基質、または請求項20から38のいずれか一項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2009−529589(P2009−529589A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558592(P2008−558592)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000321
【国際公開番号】WO2007/104107
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(501305257)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (6)
【Fターム(参考)】