説明

生体情報測定用プローブ

【課題】被検者の手指の太さにかかわらず、手指の所定の位置からずれたり、脱落したりすることなく、また、被検者に不快感、苦痛を感じさせにくいプローブを提供する。
【解決手段】一対のハウジング1、2と、一対のハウジング1、2を開閉可能となるように連結する連結部3と、ハウジング2の内部に配置されたばね4とを有し、ばね4は巻き数を多くすることでばね定数を小さくし、ばね4の変位量による力量の変化量を小さく抑えている生体情報測定用プローブA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
手指に装着され、血中酸素飽和度、脈拍等の生体情報の測定に用いられるプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脈拍や血中酸素飽和度等の生体情報を測定することで、被検者の身体の状態を客観的に観察することが可能である。この生体情報の測定において、人体の手指に装着されるプローブを備えた光電脈波計やパルスオキシメータ等の光電脈波測定装置が用いられている。例えば、前記パルスオキシメータは、まず、被検者の手指に装着された前記プローブから異なる2波長の光(赤色光と赤外光)を投光し、生体(手指)を経由した光の光量変化を検出する。そして、検出された光量変化より得られる2波長脈波波形に基づいて、血中酸素飽和度(SpO2)を求めるものである。
【0003】
前記光電脈波測定装置で血中酸素飽和度及び(又は)脈拍を測定する場合、血液を採取する必要がないので被検者の身体への侵襲が非常に少なく、長時間の継続した(連続した)測定が可能である。このことにより、慢性の呼吸器疾患患者の病状の診断、患者の呼吸状態の日常的な把握といった短時間の測定以外にも、重症患者の呼吸状態の急変の監視、手術中の患者の状態(呼吸、血中酸素飽和度)の監視のような長時間測定にも用いられる。また、最近では、装置が小型化され、長時間の装着でも邪魔になりにくいことから、睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の血中酸素飽和度の測定(およそ8時間以上連続して測定が必要)等の日常生活を送っている最中の測定や、スポーツトレーニング時の血中酸素飽和度の測定等といった運動中にも用いられている。
【0004】
図7は従来のプローブの断面図である。図7に示すようにプローブCは、上側ハウジング91は手指の甲側と接触する上側ホールド部911を備えている。また、下側ハウジング92は手指の掌側と接触する下側ホールド部921を備えている。上側ホールド部911と下側ホールド部921とは手指を押圧する部材である。上側ハウジング91には、手指に対して、測定に必要な波長の光を出射する発光部912を備えられている。下側ハウジング92には、発光部912より出射され手指を透過した光を受光し、その光量を電気信号に変換する受光部922が備えられている。
【0005】
連結部93は上側ハウジング91及び下側ハウジング92の長手方向の中間部を回動可能に連結している。連結部93は上側ハウジング91及び下側ハウジング92が回動するときの支点となっており、上側ハウジング91及び下側ハウジング92が連結部93を中心に回動することで、上側ホールド部911と下側ホールド部921とが接近又は離反する。なお、回動時の中心軸は連結部93の中心部を通っており、プローブCの長手方向と直交する方向に延びている。
【0006】
ばね94は連結部93に配置されるものであり、ねじり方向に力量を発するねじりコイルばねである。ばね94はコイル部941と、コイル部941の両端部より接線方向に突出した支持部942とを備えている。ばね94は連結部93に取り付けられているものであり、コイル部941はその中心が、上側ハウジング91及び下側ハウジング92の中心となるように配置されている。そして、支持部942の一方は上側ハウジング91に他方は下側ハウジング92に取り付けられている。
【0007】
ばね4はプローブCに取り付けられるとき、元の状態よりもねじって反発力を発生するように取り付けられている。これにより、プローブCは閉じる方向、すなわち、上側ホールド部911と下側ホールド部921とが互いに圧接する方向に付勢されている。なお、ばね94の力が偏るとプローブCの開閉が不安定になりやすいので、ばね94は連結部93上のプローブCの短手方向の両端部に1個ずつ配置されている。
【0008】
上側ホールド部911及び下側ホールド部921が接近離反するように開閉されることで、ばね4はねじられ、ばね4の反発力が上側ハウジング91及び下側ハウジング92に作用する。これにより、プローブCは、上側ホールド部911及び下側ホールド部921を手指に圧接させ、手指を挟持する。プローブCにおいて、上側ホールド部911及び下側ホールド部921から、手指への圧接力が所定の範囲内に入っているとき、プローブCはずれにくく、被検者が手指に不快感、苦痛を感じにくい。この接触圧力は、ばね94の力量によって決まるものである。
【0009】
また、従来の手指に装着するプローブとして、例えば、特開平11−188019号公報や特開平7−236625号公報に記載されているプローブもある。特開平11−188019号公報に記載のプローブは、対向して配置された一対のハウジングと、一対のつまみ部と、前記一対のつまみ部を離間させる方向に付勢するばねとを備えており、前記一対のつまみ部が相互に接近すると前記一対のハウジングは離間し、逆に前記一対のつまみ部が相互に離間すると前記一対のハウジングが接近するように構成されている。この構成のプローブを用いることで、前記一対のハウジングの一方に備えられている発光素子と、他方に備えられている受光素子との光軸が指の太さに関係なく一定となる。
【0010】
また、特開平7−236625号公報に記載のプローブは、一対のアームと、前記一対のアームを連結する弾発性のある湾曲部材を備えている。そして、前記一対のアームは、被測定部位の接触する軟質部材と、その外側に設けられた硬質部材とを備えている。この構成によると、前記軟質部材が被検者の指と接触し、前記軟質部材が変形することで前記指への接触圧が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−188019号公報
【特許文献2】特開平7−236625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、プローブCにはばね94を取り付けるための空間が狭く、ばね94として巻き数の少ないコイルばねが用いられており、ばね定数は大きくなる。ばね94のばね定数が大きいと、プローブCの開き量(ここでは、手指の太さ)が変化することで、ばね94の力量が急激に変化する。ばね94の力量は急激に変化するので、ずれにくく、不快感、苦痛を感じにくい開き量の範囲が狭くなる。すなわち、プローブCを細い手指に装着したときにずれにくく調整すると、太い手指に装着したときに不快感、苦痛を感じやすくなり、逆に太い手指に装着したときに不快感、苦痛を感じにくいように調整すると、細い手指に装着したときにずれやすくなる。
【0013】
特開平11−188019号公報に記載のプローブでも同様に、細い手指に装着したときにずれないようにばねを調整すると、太い手指に装着したときの接触圧力が高くなり、被検者に不快感、苦痛を与えてしまう。逆に、太い手指に装着したときに適切な接触圧力となるようにばねを調整すると、細い手指に装着したときの接触圧力が不足し、前記プローブが不安定になり、正確な測定ができなくなる。
【0014】
特開平7−236625号公報に記載のプローブで、前記軟質部材で細い手指に装着したときも、太い手指に装着したときも適切な接触圧力なるように調整した場合、前記軟質部材の厚みを厚くしなくてはならず、前記プローブは大きく、重くなり、被検者の装着時の負担が大きくなる。また、手指の太さが大きく異なると、前記軟質部材による接触圧の調整だけでは不十分な場合があり、被検者に不快感、苦痛を与えてしまったり、取り付けが不安定で、正確な測定ができなかったり等の不具合が生じることがある。
【0015】
そこで本発明は、装着される手指の太さにかかわらず、長時間にわたって、正確に生体情報を測定することができるとともに、被検者が装着されている手指に不快感、苦痛を低減することができるプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため本発明は、一対のハウジングと、前記一対のハウジングを開閉可能となるように連結する連結部と、前記ハウジングの内部に配置されたばねとを有し、手指を挟持し生体情報を測定するプローブであって、前記ハウジングに配置されるばねの巻き数を調整する。
【0017】
この構成によると、前記配置場所に配置されるばねの巻き数を調整することで、ばね定数を調整することが可能である。ばね定数が低いばねを用いることで、前記プローブの開き量に対するばね定数の変化を低く抑えることができ、手指への接触圧力の変化量を低く抑えることができる。
【0018】
手指の太さが変わったときの、前記手指へのプローブからの接触圧力の変化を低く抑えることができる。これにより、手指の太さにかかわらず、長期間連続して正確に、被験者が感じる不快感、苦痛を低減して生体情報を測定することができる生体情報測定用プローブを提供することが可能である。
【0019】
上記構成において、前記一対のハウジングは前記連結部で互いに連結可能となるように連結されており、前記ばねは一方のハウジングの内部に前記手指と並ぶように配置されたコイルばねであり、他方のハウジングは、前記一方のハウジングに向かって突設し、先端部が前記一方のハウジングの内部に侵入するとともに前記ばねの端部と接続された突出部を備えていてもよい。
【0020】
上記構成において、前記一方のハウジングの内部には前記ばねの中心を貫通し、前記ばねが撓むのを抑制するばね支持軸を備えていてもよい。
【0021】
上記構成において、前記ばねは前記手指の長手方向と交差する方向に複数本配列されていてもよい。
【0022】
上記構成において、前記ばねの少なくとも1つは圧縮されて反発力を出力する圧縮ばねであってもよく、前記ばねの少なくとも1つは引張られて反発力を出力する引張ばねであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、装着される手指の太さにかかわらず、長時間にわたって、正確に生体情報を測定することができるとともに、被検者が装着されている手指に不快感、苦痛を低減することができるプローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるプローブを手指に装着した状態の斜視である。
【図2】図1に示すプローブの断面図である。
【図3】図2に示すプローブをIII−III線で切断した断面図である。
【図4】プローブが開いたときの上側ハウジング及び下側ハウジングに作用するばねの反発力との関係を示す図である。
【図5】本発明にかかるプローブの他の例の断面図である。
【図6】本発明にかかるプローブの他の例の平面図である。
【図7】従来のプローブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明にかかるプローブを手指に装着した状態の斜視図であり、図2は図1に示すプローブの断面図であり、図3は図2に示すプローブをIII−III線で切断した断面図である。本発明にかかるプローブAは、ケーブルCaで測定装置に接続されおり、被検者の手指に装着し血中酸素飽和度(SpO2)及び脈拍を測定するパルスオキシメータ用のプローブである。
【0026】
図1に示すように、プローブAは、手指の甲側に配置される上側ハウジング1と、手指の掌側に配置される下側ハウジング2と、上側ハウジング1と下側ハウジング2とを回転可能となるように連結する連結部3と、上側ハウジング1と下側ハウジング2とが閉じる方向に力を付勢するばね4とを備えている。
【0027】
上側ハウジング1は手指の甲側と接触する上側ホールド部11を備えている。また、下側ハウジング2は手指の掌側と接触する下側ホールド部21を備えている。上側ホールド部11と下側ホールド部21とは手指を押圧する部材である。上側ホールド部11又は下側ホールド部21は手指に密着するものが好ましく、発泡ウレタン樹脂や、ゲル状の樹脂のように手指の形状にあわせて変形する材料を採用することができる。
【0028】
上側ハウジング1には、手指に対して、測定に必要な波長の光(パルスオキシメータの場合、約660nm:赤色光、約880nm:赤外光の異なる2波長)を出射できる発光部12を備えられている。発光部12としては、LEDが用いられているが、それに限定されるものではなく、所定波長の光を出射することができる光源(例えば、放電管、レーザ光源等)を広く採用することが可能である。上側ハウジング1の連結部3を挟んで上側ホールド部11と反対側の部分には、下側ハウジング2に向かって突出する突出部10が形成されている。
【0029】
下側ハウジング2には、発光部12より出射され手指を透過した光を受光し、その光量を電気信号に変換する受光部22が備えられている。受光部22は、シリコンフォトダイオードである。しかしながら、これに限定されるものではなく、発光部12より出射され、手指を透過した光を電気信号に変換することができる素子を広く採用することができる。下側ハウジング2はばね4が配置されるばね取付部20を備えている。上側ハウジング1の突出部10及び下側ハウジング2のばね取付部20の詳細については後述する。
【0030】
連結部3は、上側ハウジング1の中間部に形成された上側連結部31と、下側ハウジング2の中間部に形成された下側連結部32とを有している。上側連結部31と下側連結部32とは重なるように配置され、それぞれ、下側ハウジング2及び上側ハウジング1に摺動可能に支持されている。上側ハウジング1及び下側ハウジング2は連結部3を中心に可動範囲内で自在に回動することで、上側ホールド部11と下側ホールド部21とが接近又は離反する。なお、上側連結部31又は下側連結部32は回動中心がずれないように、軸が挿通されていてもよい。また、上側ハウジング1及び下側ハウジング2は連結部3を挟んで上側ホールド部11及び下側ホールド部21が備えられているのと反対側の端部を接近/離反させることで、上側ホールド部11と下側ホールド部21とを離反/接近させることができる。
【0031】
ばね4は軸方向の変化によって(延びる方向に)力を発生するコイルばね(いわゆる圧縮ばね)である。図2、図3に示すように、ばね4はばね取付部20に配置されている。ばね取付部20は下側ハウジング2の内部に形成されている。ばね取付部20はばね4の一方の端部が当接する平面状のばね受け部201と、ばね受け部201より並んで突設され、ばね4が外嵌される2本のばね支持軸202とを備えている。2本のばね4が2本のばね支持軸202のそれぞれに外嵌されて保持されている。プローブAにおいてばね取付部20は下側ハウジング2の長手方向に沿って形成されており、ばね4として長いばねを用いることが可能である。また、ばね4は2本に限定されるものではなく、力をバランスよく突出部10に作用させることができる本数を広く採用することができる。
【0032】
ばね4のばね受け部201と当接しているのと反対側の端部は、ばね取付部20の外部に突出している。そして、上側ハウジング1に形成されている突出部10の先端がばね4の他方の端部と当接している。ばね4はばね取付部20に配置されるときに、予め圧縮されて配置されている。これにより、プローブAが閉じた状態(上側ホールド部11と下側ホールド部21とが接触した状態:初期状態という)のとき、ばね4は突出部10の先端を押している。突出部10の先端が押されることで、突出部10及び突出部10が形成されている上側ハウジング1は連結部3を中心に回転する方向に力が付勢される。また、ばね受け部201がばね4に押されることで、下側ハウジング2が連結部3を中心に上側ハウジング1と反対方向に回転させる力が付勢される。これにより、プローブAは初期状態において、ばね4の反発力で上側ホールド部11と下側ホールド部21とが互いに相手と密着している。
【0033】
また、プローブAが開かれると、上側ハウジング1の回動にあわせて突出部10が連結部3回りに回動する。突出部10の先端はばね4と接触しており、ばね4の反発力によって回動と反対側に力が付勢される。この状態で手指を挟持することで、上側ホールド部11及び下側ホールド部21が手指を接触押圧することができる。なお、手指を挟持するときに上側ホールド部11及び下側ホールド部21から手指に作用する接触圧力が所定の圧力よりも小さくなると、上側ホールド部11及び下側ホールド部21と手指との摩擦力が低下し、プローブAがずれたり、脱落したりしやすくなる。また、接触圧力が一定の圧力よりも大きくなると、被検者がプローブAが取り付けられている手指に不快感、苦痛を感じる。
【0034】
プローブAにおいて、上側ホールド部11及び下側ホールド部21から手指に及ぼされる接触圧力はばね4の力量によって決定される。ここで本発明にかかるプローブAに用いられているばね4の力量について図面を参照して説明する。図4はプローブが開いたときの上側ハウジング及び下側ハウジングに作用するばねの反発力との関係を示す図である。図4において、縦軸はばねから上側ハウジング及び下側ハウジングに付勢される力量、横軸はプローブの開き量である。ここでプローブの開き量とは上側ホールド部11と下側ホールド部21との間の隙間を示すものである。
【0035】
まず、ばねから上側ハウジング及び下側ハウジングに作用する力量と、上側ホールド部及び下側ホールド部から手指に作用する接触圧力について説明する。手指にかかる接触圧力はプローブAの構造上、ばね4の力量によって決まっており、プローブAがずれたり、脱落したりしない接触圧力を発生させるためのばね4の力量をP1、被検者が手指に不快感、苦痛を感じない接触圧力を発生させるためのばね4の力量をP2とする。
【0036】
図4に示すように、力量と開き量との関係が直線L1で示されるばねを用いたプローブAでは、開き量がO1−O2の範囲にあるとき、ばねからの力量がP1とP2との間のハッチング部に収まっている。このプローブAは開き量がO1−O2の間、手指からずれず、被検者に不快感、苦痛を与えずに、生体情報の測定を行うことができる。
【0037】
また、直線L1よりも傾きのゆるい直線L2で表されるばねを用いたプローブでは、開き量がO2−O3の範囲にあるとき、手指からずれず、被検者に不快感、苦痛を与えずに、生体情報の測定を行うことができる。
【0038】
図4において、開き量の範囲はO1−O2よりも開きO2−O3の方が広い。すなわち、直線の傾きがゆるくなると、直線が力量P1−P2の間に入るときの開き量の範囲が広くなることがわかる。直線の傾きはばね4のばね定数によって決まり、すなわち、ばね定数が小さいほど、直線の傾きが緩く、手指からずれず、被検者に不快感、苦痛を与えない開き量の範囲が広くなる。
【0039】
コイルばねにおいて、ばね定数は一般的にばねの巻き数を増やすことで小さくすることができる。プローブAではばね取付部20が長く、ばね取付部20に配置されるばね4の長さが長い。よって、ばね4は巻き数の調整幅が広く、ばね定数の調整幅も広くなる。これにより、プローブAでは、手指からずれず、被検者に不快感、苦痛を与えずに測定可能な手指の太さの範囲を広くすることが可能である。
【0040】
図4において、さらにばねのばね定数を小さくしたばねを用いたときのばねの力量と開き量との関係を直線L3に示す。直線L3は、プローブAの開き量が測定可能な範囲O1−O4全域において、ばねの力量がP1−P2の間に入っている。すなわち、直線L3で示される特徴を有するばねを用いることで、プローブAは開き量にかかわらず、手指からずれず、被検者に不快感、苦痛を与えずに、生体情報の測定を行うことができる。なお、直線L3では、開き量が0のときの力量がほかの例に比べて大きくなるように設定されている。開き量0のときのばね4の力量はばね4を取り付けるとき、自然長からの圧縮長さによって決定するものである。
【0041】
プローブAにおいてばね4が取り付けられるばね取付部20は下側ホールド部21と同程度の長さを有している。ばね4はばね取付部20に圧縮されて取り付けられるが、ばね取付部20の長さが長いので、取付時のばね4を圧縮する長さ、すなわち、反発力の調整を細かく行うことができる。図示を省略しているが、ばね4の長さを調整するために、ばね支持部202に外嵌される円筒形状のスペーサを用いることで容易に行うことが可能である。また、ばね受け部201をばね支持軸202の軸方向に摺動可能且つ所定の位置で固定できるように形成しておき、任意に調整するようにしてもよい。
【0042】
また、ばね定数が小さくなるとばねは湾曲しやすくなるが、ばね4がばね支持軸202に外嵌しているので、ばね4の反発力の発生方向はばね支持軸202の軸方向に規制される。これにより、ばね4の曲がりによって力の作用方向がずれ、プローブAの締め付けの力量が不足するのを抑制することができる。
【0043】
また、ばね4がばね支持軸202に外嵌するので、ばね4の長さを短くして、巻き数を少なくすることも可能である。例えば、被検者を子供に限定されたプローブの場合、測定可能な手指の太さはあまり太くなく、力量が開き量の少ない変化で変化するばねを用いることが可能である。ばね4の端部と突出部10との間に配置され、支持軸202に外嵌された円筒状のスペーサを用いることで短いばねも使用可能である。また、ばね取り付け部20の形状がばね4を湾曲しないように保持できる形状の場合、ばね支持軸202を備えていなくてもよい。
【0044】
本発明にかかるプローブの他の例について図面を参照して説明する。図5は本発明にかかるプローブの他の例の断面図である。図5に示すプローブA2は、下側ハウジング2のばね取付部23が異なる以外は図2に示すプローブAと同じ構造を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。また、実質上同じ部分の詳細な説明に関しては省略する。
【0045】
図5に示すように、プローブA2のばね取付部23は、連結部3に対して下側ホールド部21と反対側に形成されている。そして、ばね取付部23に取り付けられるばね4は引張られることで発揮する(縮む方向に力を発揮する)コイルばね(いわゆる引張コイルばね)である。ばね取付部23は中空空間を備えており、中空空間の奥側にはばね4を保持するばね保持部231が形成されている。またばね4のばね保持部231と反対側の端部は突出部10の先端に固定されている。
【0046】
ばね4は予め伸ばされた状態でばね取付部23に取り付けられる。突出部10がばね4に引張られ、上側ハウジング1は連結部3を支点として、上側ホールド部11が下側ホールド部21と接触する方向に付勢される。下側ハウジング2はばね保持部231がばね4に引張られ下側ハウジング2は連結部3を支点として、下側ホールド部21が上側ホールド部11と接触する方向に付勢される。これにより、プローブA2は上側ホールド部11と下側ホールド部21が密着した(閉じた)状態になっている。
【0047】
このように、ばねとして引張コイルばねを用いることで、ばね4のばね定数にかかわらず、ばね4による力量の発生方向が安定する。よって、ばねの力量方向の調整が容易である。
【0048】
本発明にかかるプローブの他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかるプローブの他の例の平面図である。なお、プローブAと実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。図6に示すプローブBは、上側ハウジング1と、下側ハウジング2と、上側ハウジング1と下側ハウジング2とを連結する連結部3と、上側ハウジング1及び下側ハウジング2とを付勢するばね5とを備えている。上側ハウジング1及び下側ハウジング2は手指と接触し手指を保持する上側ホールド部11及び下側ホールド部21を備えている。
【0049】
連結部3には上側ハウジング1及び下側ハウジング2の回転中心となる連結軸33が備えられている。ばね5はねじられることで反発するねじりコイルばねである。ばね5はコイル状に巻かれたコイル部51と、コイル部51の端部より接線方向に延びる支持部52、53とを備えている。また、支持部52、53は先端部がコイル部51と平行となるように、コイル部51側に曲げられて形成された押え部521、531を備えている。
【0050】
ばね5はコイル部51の内部を連結軸33が貫通するように配置されている。そして、支持部52の押え部521が上側ハウジング1と、支持部53の押え部531が下側ハウジング2と接触して配置されている。ばね5は予めねじられてプローブBに取り付けられており、上側ハウジング1及び下側ハウジング2に対し、上側ホールド部11及び下側ホールド部21が接触する方向にばね5の反発力が作用している。
【0051】
ばね5のコイル部51は連結部3の長さと略同じ長さを有している。よって、コイル部51は巻き線の巻き数を多くすることが可能であり、ばね定数を広い範囲で設定することが可能である。なお、ばね定数を小さくすることで、プローブBの開き量に対するばね5の力量の変化を小さくすることができ、ばね5の力量が所定の範囲内に入るときのプローブBの開き量の範囲を広くすることが可能である。
【0052】
プローブBにおいて、ずれにくく、且つ、不快感、苦痛を感じにくい手指の太さの範囲を広くすることができる。これにより、多くの被検者に対して共通のプローブで、不快感、苦痛を与えずに長時間、継続して正確な生体情報の測定を行うことが可能である。
【0053】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものはない。本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかるプローブは手指に装着し、長時間、継続して脈拍や血中酸素飽和度を測定する光電脈波測定装置の測定用プローブとして用いることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
A プローブ
1 上側ハウジング
11 上側ホールド部
12 発光部
2 下側ハウジング
21 下側ホールド部
22 受光部
3 連結部
4 ばね
5 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のハウジングと、
前記一対のハウジングを開閉可能となるように連結する連結部と、
前記ハウジングの内部に配置されたばねとを有し、手指を挟持し生体情報を測定するプローブであって、
前記ハウジングに配置されるばねの巻き数を調整することを特徴とする生体情報測定用プローブ。
【請求項2】
前記一対のハウジングは前記連結部で互いに連結可能となるように連結されており、
前記ばねは一方のハウジングの内部に前記手指と並ぶように配置されたコイルばねであり、
他方のハウジングは、前記一方のハウジングに向かって突設し、先端部が前記一方のハウジングの内部に侵入するとともに前記ばねの端部と接続された突出部を備えている請求項1に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項3】
前記一方のハウジングの内部には前記ばねの中心を貫通し、前記ばねが撓むのを抑制するばね支持軸を備えている請求項2に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項4】
前記ばねは前記手指の長手方向と交差する方向に複数本配列されている請求項2又は請求項3に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項5】
前記ばねの少なくとも1つは圧縮されて反発力を出力する圧縮ばねである請求項2から請求項4のいずれかに記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項6】
前記ばねの少なくとも1つは引張られて反発力を出力する引張ばねである請求項2から請求項5のいずれかに記載の生体情報測定用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264114(P2010−264114A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118869(P2009−118869)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】