生体情報解析レポート、生体情報解析装置及び生体情報解析プログラム
【課題】心電図の計測結果に応じた心臓の状態を、医師にも被検者にも直感的に理解させることができる生体情報解析レポートを提供すること。
【解決手段】生体情報解析レポート110において、負荷前アベレージ波形ブロック112、負荷後アベレージ波形ブロック113及びリズム波形ブロック115は、被検者から取得された心電図の波形を表示する。心臓イラストブロック114は、心臓の模式図を表示し、さらに、波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、病態の重症度に応じた色で、病態の発生部位に相当する模式図内の位置に表示する。
【解決手段】生体情報解析レポート110において、負荷前アベレージ波形ブロック112、負荷後アベレージ波形ブロック113及びリズム波形ブロック115は、被検者から取得された心電図の波形を表示する。心臓イラストブロック114は、心臓の模式図を表示し、さらに、波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、病態の重症度に応じた色で、病態の発生部位に相当する模式図内の位置に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報解析レポート、生体情報解析装置及び生体情報解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体情報解析レポートとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この生体情報解析レポートには、被検者の氏名等の個人情報と、被検者から取得された心電図波形と、心電図波形の解析結果を説明するに適した心臓のイラストとが、同一紙面において表示される。
【特許文献1】特開2007−190227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の生体情報解析レポートにおいては、心電図波形の解析の結果、心疾患が認められ又は疑われる場合であっても、それを説明するために選択・表示される心臓のイラストは、一般的な心臓の外観或いは断面であって、その具体的な病態まで視覚化したものではない。よって、説明を受ける被検者も、説明する役割を担う医師も、その心疾患を理解するには、その具体的な病態を自分自身の頭の中で想像する必要がある。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、心電図の計測結果に応じた心臓の状態を、医師にも被検者にも直感的に理解させることができる生体情報解析レポート、生体情報解析装置及び生体情報解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の生体情報解析レポートは、被検者から取得された心電図の波形を表示する波形表示部と、心臓の模式図を表示する心臓表示部とを有し、1枚の用紙又は1画面に描画される心電図解析レポートであって、前記心臓表示部は、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、構成を採る。
【0006】
本発明の生体情報解析装置は、被検者から取得された心電図の波形を解析する解析手段と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成手段と、を有し、前記作成手段は、前記生体情報解析レポートにおいて、前記波形と心臓の模式図とを表示し、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、構成を採る。
【0007】
本発明の生体情報解析プログラムは、被検者から取得された心電図の波形を解析する解析機能と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成機能と、をコンピュータに実現させ、前記作成機能は、前記生体情報解析レポートにおいて、前記波形と心臓の模式図とを表示し、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、心電図の計測結果に応じた心臓の状態を、医師にも被検者にも直感的に理解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体情報解析装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、生体情報解析装置10は、制御部11、ディスプレイインタフェース(以下「I/F」と略記する)12、プリンタI/F13、心電計I/F14及び記憶部15を有する。
【0012】
本発明の解析手段及び作成手段としての制御部11は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行する生体情報解析プログラムを記憶する記憶装置とにより構成される。制御部11は、生体情報解析プログラムを実行することにより、後述する生体情報解析レポート作成処理における各ステップを実行する機能を、生体情報解析装置10において実現する。
【0013】
ディスプレイI/F12は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)表示装置等のディスプレイ20と生体情報解析装置10とを通信可能に接続するI/Fであり、ディスプレイ20と生体情報解析装置10との間で授受されるデータは、ディスプレイI/F12を経由する。
【0014】
プリンタI/F13は、レーザ式やサーマルヘッド式等のプリンタ30と生体情報解析装置10とを通信可能に接続するI/Fであり、プリンタ30と生体情報解析装置10との間で授受されるデータは、プリンタI/F13を経由する。
【0015】
心電計I/F14は、四肢用電極部41と胸部用電極部42とにより被検者から例えば標準12誘導心電図等の心電図を取得する心電計と生体情報解析装置10とを通信可能に接続するI/Fであり、心電計40と生体情報解析装置10との間で授受されるデータは、心電計I/F14を経由する。
【0016】
記憶部15は、ハードディスクドライブや半導体記憶装置等の記憶装置により構成される。記憶部15は、多数の心臓イラストデータを記憶するデータベースである。心臓イラストデータは、心臓の模式図を含む心臓イラストを心電図解析レポートに表示させるためのデータである。個々の心臓イラストデータは、識別可能なインデックスを付与されて記憶される。心臓イラストの具体例については後述する。なお、心臓の模式図は、イラストだけに限られず、写真等が用いられてもよい。
【0017】
以上、生体情報解析装置10の構成について説明した。なお、生体情報解析装置10の構成は、上記のものだけに限定されず、種々変更することができる。
【0018】
例えば、上記構成では、生体情報解析装置10と心電計40とが互いに独立しているが、これらは一体化されていてもよい。
【0019】
また、生体情報解析装置10は、その用途に応じて他の装置と接続し又は組み合わせて使用することができる。
【0020】
例えば、トレッドミル等によりストレステストを行う用途で生体情報解析装置10を用いる場合には、生体情報解析装置10は、トレッドミル等を含むストレステストシステムとして使用することができるよう構成される。また、解析対象の生体情報に心電図だけでなく血圧等も含まれる場合には、生体情報解析装置10は、それぞれの生体情報を測定するセンサ等と接続され、それぞれの生体情報を被検者から取得することができるよう構成される。
【0021】
また、生体情報解析装置10は、CCU(Coronary Care Unit:冠状動脈疾患管理室)又は手術室において生体情報モニタ又はポリグラフ検査装置等として使用することができる。この場合、心筋梗塞の状態と心電図との相関を基に、例えばPCI(経皮的冠動脈手術)の治療前後における心臓の経時的な状態変化を監視することができる。
【0022】
図2は、生体情報解析装置10の制御部11により実行される生体情報解析レポート作成処理を説明するためのフロー図である。
【0023】
ステップS1では、解析対象の心電図データ(被検者から取得された心電図の波形を示すデータ)を、心電計I/F14を介して心電計40から取得する。
【0024】
ステップS2では、取得した心電図の波形を解析し、その結果として、心電図の所見を導出する。所見は、被検者の心臓の状態が正常か否か、また、正常でない場合は、波形から認められ又は疑われる心疾患の病態及びその重症度等を含む情報である。ここでは、心疾患には、虚血性心疾患(冠状動脈が狭窄した状態である狭心症と、冠状動脈が完全に閉塞した状態である心筋梗塞とを含む)、不整脈等が含まれる。
【0025】
ステップS3では、解析結果として導出した所見に対応するインデックスを付与されている心臓イラストデータを、記憶部15から読み出す。
【0026】
ステップS4では、取得し又は解析した心電図データ及び心臓イラストデータに基づいて、生体情報解析レポートを、ディスプレイ20の画面上に表示し、或いは、プリンタ30によりレポート用紙上に印刷する。波形及び心臓イラストは、画面上又はレポート用紙上の所定の位置にそれぞれ描画される。
【0027】
以上のようにして、生体情報解析レポートが作成される。なお、上記生体情報解析レポート作成処理は一例であり、種々変更して実施可能である。
【0028】
以下、1枚のレポート用紙又は1画面に描画される生体情報解析レポートの具体例について説明する。なお、ここでは、ストレステストにおける心電図の測定結果を報告する目的で作成される生体情報解析レポートを例にとって説明する。
【0029】
図3、図4及び図5には、生体情報解析レポートのフォーマットについての幾つかの例が示されている。これらの例は、ストレステストにおける心臓の経時的な状態変化の表示に、特に適している。
【0030】
図3に示す生体情報解析レポート110のフォーマットは、情報ブロック111a、111b、111c、負荷前アベレージ波形ブロック112、負荷後アベレージ波形ブロック113、心臓イラストブロック114及びリズム波形ブロック115を含む。
【0031】
情報ブロック111a、111b、111cには、被検者名等の個人情報、トレンドグラフ、ストレステストのモード選択情報、画面操作用アイコン等、様々な情報が選択的に表示される。
【0032】
波形表示部としての負荷前アベレージ波形ブロック112には、被検者に負荷をかけ始める前の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(負荷前アベレージ波形)が表示される。表示されるアベレージ波形の一例は、図6に示される。なお、図6のアベレージ波形には、標準12誘導心電図のうちII誘導(図6の(a))、V2誘導(図6の(b))及びV5誘導(図6の(c))のアベレージ波形が含まれているが、他の誘導波形が含まれてもよく、また、表示チャネル数は3つでなくてもよい。
【0033】
波形表示部としての負荷後アベレージ波形ブロック113には、被検者に負荷をかけ終えた後の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(負荷後アベレージ波形)が表示される。
【0034】
波形表示部としてのリズム波形ブロック115には、リズム波形が表示される。リズム波形の一例は、図7に示される。
【0035】
心臓表示部としての心臓イラストブロック114には、心臓の外観又は断面の模式図を含むイラスト(心臓イラスト)が表示される。模式図の一例は、図8に示される。図8における例は、主として左冠動脈の前下行枝(左前下行枝)151、左回旋枝152及び右冠動脈153が分かるように簡略化された心臓の外観を示す模式図150である。ちなみに、左前下行枝151が閉塞しその周辺の心筋が壊死した場合には、前壁梗塞と診断される。また、側壁梗塞の多くは、左回旋枝152が閉塞したときに診断される。また、下壁梗塞の多くは、右冠動脈153が閉塞したときに診断される。なお、表示される心臓の模式図は、心疾患の病態を説明するに適したものとなるよう、心電図の所見に応じて適宜変更される。
【0036】
心電図の波形を解析した結果、何らかの心疾患が認められ又は疑われる場合には、心臓の模式図において、その心疾患の病態の発生部位に相当する位置に、その病態の種別に応じたマークが、その病態の重症度に応じた色で、表示される。
【0037】
例えば前壁梗塞と下壁梗塞との合併が認められ又は疑われる場合には、例えば図9に示すような心臓イラスト160が表示される。具体的には、心臓自体の模式図のほかに、左前下行枝151の閉塞を示すマーク161が、左前下行枝151の一部分に重ねて表示される。閉塞を示すマーク161は、黒又は青のような輝度の低い色で、閉塞が生じたと推測される個所を塗りつぶすマークである。また、前壁梗塞を示すマーク163が、前壁の一部分に重ねて表示される。梗塞を示すマーク163は、比較的輝度の低い色(例えば紫色)で、梗塞が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。また、右冠動脈153の閉塞を示すマーク162が、右冠動脈153の一部分に重ねて表示される。閉塞を示すマーク162は、黒又は青のような輝度の低い色で、閉塞が生じたと推測される個所を塗りつぶすマークである。また、下壁梗塞を示すマーク164が、下壁の一部分に重ねて表示される。梗塞を示すマーク164は、比較的輝度の低い色(例えば比較的暗い灰色)で、梗塞が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。
【0038】
また、例えば前壁と下壁とに虚血が認められ又は疑われる場合には、例えば図10に示すような心臓イラスト170が表示される。具体的には、心臓自体の模式図のほかに、前壁の虚血を示すマーク171が、前壁の一部分に重ねて表示される。虚血を示すマーク171は、比較的輝度の高い色(例えばピンク色)で、虚血が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。また、下壁の虚血を示すマーク172が、下壁の一部分に重ねて表示される。虚血を示すマーク172は、比較的輝度の高い色(例えば比較的明るい灰色)で、虚血が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。
【0039】
また、不整脈が認められる場合には、ここでは図示しないが、障害が発生していると推測される心臓模式図内の位置に不整脈の発生を示すマーク(例えば星印)が重ねられた心臓イラストが、表示される。
【0040】
心臓イラストは、ある期間において測定された心電図の波形(例えば、負荷後アベレージ波形又は特定の誘導波形)を解析した結果として導出された所見に従って制御部11が記憶部15から読み出した心臓イラストデータに基づいて表示される。
【0041】
図3の生体情報解析レポート110が1画面に表示される場合には、ある期間において測定された心電図に基づいてリアルタイムにリズム波形及びアベレージ波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいてリアルタイムに心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。なお、リズム波形、アベレージ波形及び心臓イラストの表示はリアルタイムでなくてもよく、過去の測定結果に基づくものであってもよい。
【0042】
心臓イラストを画面に表示する場合には、短期間(例えば数秒から数十秒程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合と、長期間(例えば数分〜数十分程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合とがある。前者の場合には、心臓イラストブロック114には、解析期間における心疾患の病態を示す静止画の心臓イラストが表示される。これに対し後者の場合には、解析期間における心疾患の病態の経時変化が分かるよう、動画又はコマ送りの心臓イラストが表示される。よって、後者の場合には、この生体情報解析レポート110を見た者は、病態の経時変化を容易に理解することができる。
【0043】
図3の生体情報解析レポート110が用紙に印刷されて表示される場合にも、ある期間において測定された心電図に基づいてリズム波形及びアベレージ波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいて心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。
【0044】
図4に示す生体情報解析レポート120のフォーマットは、情報ブロック121a、121b、121c、心臓イラストブロック122、3誘導波形ブロック123及びリズム波形ブロック124を含む。
【0045】
情報ブロック121a、121b、121cは、情報ブロック111a、111b、111cと同様である。リズム波形ブロック124は、リズム波形ブロック115と同様である。心臓イラストブロック122は、心臓イラストブロック114と同様である。
【0046】
波形表示部としての3誘導波形ブロック123には、3つの誘導波形が表示される。表示される誘導波形の一例は、図11に示される。なお、図11の3誘導波形には、標準12誘導心電図のうちII誘導(図11の(a))、V2誘導(図11の(b))及びV5誘導(図11の(c))の波形が含まれているが、他の誘導波形が表示されてもよい。また、表示チャネル数は3つに限られず、適宜変更可能である。
【0047】
図4の生体情報解析レポート120が1画面に表示される場合には、ある期間において測定された心電図に基づいてリアルタイムにリズム波形及び3誘導波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいてリアルタイムに心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。なお、リズム波形、3誘導波形及び心臓イラストの表示はリアルタイムでなくてもよく、過去の測定結果に基づくものであってもよい。
【0048】
心臓イラストを画面に表示する場合には、短期間(例えば数秒から数十秒程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合と、長期間(例えば数分〜数十分程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合とがある。前者の場合には、心臓イラストブロック122には、解析期間における心疾患の病態を示す静止画の心臓イラストが表示される。これに対し後者の場合には、解析期間における心疾患の病態の経時変化が分かるよう、動画又はコマ送りの心臓イラストが表示される。よって、後者の場合には、この生体情報解析レポート120を見た者は、病態の経時変化を容易に理解することができる。
【0049】
図4の生体情報解析レポート120が用紙に印刷されて表示される場合にも、ある期間において測定された心電図に基づいてリズム波形及び3誘導波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいて心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。
【0050】
図5に示す生体情報解析レポート130のフォーマットは、情報ブロック131a、131b、131c、負荷前アベレージ波形ブロック132、負荷中アベレージ波形ブロック133、負荷後アベレージ波形ブロック134、135、負荷前心臓イラストブロック136、負荷中心臓イラストブロック137及び負荷後心臓イラストブロック138、139を含む。
【0051】
情報ブロック131a、131b、131cは、情報ブロック111a、111b、111cと同様である。負荷前アベレージ波形ブロック132は、負荷前アベレージ波形ブロック112と同様である。
【0052】
波形表示部としての負荷中アベレージ波形ブロック133には、被検者に負荷をかけている途中の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(負荷中アベレージ波形)が表示される。
【0053】
波形表示部としての負荷後アベレージ波形ブロック134、135は、負荷後アベレージ波形ブロック113と同様である。負荷後アベレージ波形ブロック134に表示される負荷後アベレージ波形は、例えば被検者に負荷をかけ終えてから1分経過後の一定期間における誘導波形を平均化したものである。負荷後アベレージ波形ブロック135に表示される負荷後アベレージ波形は、例えば被検者に負荷をかけ終えてから3分経過後の一定期間における誘導波形を平均化したものである。
【0054】
心臓表示部としての負荷前心臓イラストブロック136には、負荷前アベレージ波形ブロック132に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての負荷中心臓イラストブロック137には、負荷中アベレージ波形ブロック133に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての負荷後心臓イラストブロック138には、負荷後アベレージ波形ブロック134に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての負荷後心臓イラストブロック139には、負荷後アベレージ波形ブロック135に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。
【0055】
すなわち、図5の生体情報解析レポート130には、一定期間において測定された誘導波形の経時変化及びそれに対応する心疾患の病態の経時変化が分かるように、複数のアベレージ波形と複数の心臓イラストとが並置されて表示される。
【0056】
なお、上記の例では、並置される波形及び心臓イラストの組み合わせは、負荷前のものが1つ、負荷中のものが1つ、負荷後のものが2つとなっているが、異なる組み合わせが用いられてもよい。また、並置される波形及び心臓イラストの数は4つに限られず、適宜変更可能である。
【0057】
図5の生体情報解析レポート130を用いる場合には、例えば図12を用いて以下説明するように、病態の経時変化が一目瞭然となる。
【0058】
図12(a)には測定のタイミングが示され、図12(b)には図12(a)の各タイミングにおける心電図の波形が示され、図12(c)には図12(b)の各波形のSTレベルが示され、図12(d)には図12(b)の各波形の所見に基づく心臓イラストが示されている。
【0059】
図12の例では、負荷を継続するに伴い、波形のSTレベル低下が進んでいる。そして、STレベル低下が進むと虚血の症状が進み、心臓の組織の一部分が壊死する様子が分かるようにマークの表示態様が変化する複数の心臓イラストが選択され、表示される。図5の生体情報解析レポート130を用いると、これらの波形及び心臓イラストが一括表示されるため、この生体情報解析レポート130を見た者は、病態の経時変化を容易に理解することができる。
【0060】
図13には、生体情報解析レポートのフォーマットについてのさらに他の例が示されている。この例は、PCIの治療前後における心臓の経時的な状態変化の表示に、特に適している。
【0061】
図13に示す生体情報解析レポート180は、術前アベレージ波形ブロック181、術後アベレージ波形ブロック182、183、184、術前心臓イラストブロック185及び術後心臓イラストブロック186、187、188を含む。
【0062】
波形表示部としての術前アベレージ波形ブロック181には、被検者(図13の例では、手術を受ける患者)に手術を施す前の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(術前アベレージ波形)が表示される。
【0063】
波形表示部としての術後アベレージ波形ブロック182、183、184には、被検者に手術を施した後の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(術後アベレージ波形)が表示される。典型的には、術後アベレージ波形ブロック182に、手術終了直後の一定期間における誘導波形を平均化した術後アベレージ波形が表示され、術後アベレージ波形ブロック183に、手術の1ヶ月後の一定期間における誘導波形を平均化した術後アベレージ波形が表示され、術後アベレージ波形ブロック184に、手術の3ヶ月後の一定期間における誘導波形を平均化した術後アベレージ波形が表示される。ただし、術後アベレージ波形ブロック182、183、184のそれぞれに、手術後のいつのアベレージ波形を表示するかは、医師等のユーザが任意に設定することができる。また、術後アベレージ波形ブロック182の位置に、被検者に手術を施している途中の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(術中アベレージ波形)を表示してもよい。
【0064】
心臓表示部としての術前心臓イラストブロック185には、術前アベレージ波形ブロック181に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての術後心臓イラストブロック186、187、188には、術後アベレージ波形ブロック182、183、184に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。
【0065】
すなわち、図13の生体情報解析レポート180には、PCIによる心臓の状態の回復過程が一目で理解できるよう、手術前後の数ヶ月の期間に測定された誘導波形から得られる複数のアベレージ波形と複数の心臓イラストとが並置されて表示される。なお、並置される波形及び心臓イラストの数は4つに限られず、適宜変更可能である。また、術後経過監視期間は、分単位、時間単位、日単位、週単位、月単位、年単位等で任意に設定することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態によれば、1枚の用紙又は1画面に表示される生体情報解析レポートにおいて、被検者から取得された心電図の波形と、心臓の模式図とを表示し、さらに、波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、病態の重症度に応じた色で、病態の発生部位に相当する模式図内の位置に表示する。このため、心臓のどの部位でどのような症状が発生しその重症度がどの程度であるかを、医師も被検者も一目で理解することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成及び動作等についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポート作成処理を説明するためのフロー図
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第1例を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第2例を示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第3例を示す図
【図6】アベレージ波形の一例を示す図
【図7】リズム波形の一例を示す図
【図8】本発明の一実施の形態に係る心臓の模式図の一例を示す図
【図9】本発明の一実施の形態に係る心臓イラストの第1例を示す図
【図10】本発明の一実施の形態に係る心臓イラストの第2例を示す図
【図11】3誘導波形の一例を示す図
【図12】心疾患の病態の経時変化の一例を説明するための図
【図13】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第4例を示す図
【符号の説明】
【0069】
10 生体情報解析装置
11 制御部
12 ディスプレイI/F
13 プリンタI/F
14 心電計I/F
15 記憶部
20 ディスプレイ
30 プリンタ
40 心電計
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報解析レポート、生体情報解析装置及び生体情報解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体情報解析レポートとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この生体情報解析レポートには、被検者の氏名等の個人情報と、被検者から取得された心電図波形と、心電図波形の解析結果を説明するに適した心臓のイラストとが、同一紙面において表示される。
【特許文献1】特開2007−190227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の生体情報解析レポートにおいては、心電図波形の解析の結果、心疾患が認められ又は疑われる場合であっても、それを説明するために選択・表示される心臓のイラストは、一般的な心臓の外観或いは断面であって、その具体的な病態まで視覚化したものではない。よって、説明を受ける被検者も、説明する役割を担う医師も、その心疾患を理解するには、その具体的な病態を自分自身の頭の中で想像する必要がある。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、心電図の計測結果に応じた心臓の状態を、医師にも被検者にも直感的に理解させることができる生体情報解析レポート、生体情報解析装置及び生体情報解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の生体情報解析レポートは、被検者から取得された心電図の波形を表示する波形表示部と、心臓の模式図を表示する心臓表示部とを有し、1枚の用紙又は1画面に描画される心電図解析レポートであって、前記心臓表示部は、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、構成を採る。
【0006】
本発明の生体情報解析装置は、被検者から取得された心電図の波形を解析する解析手段と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成手段と、を有し、前記作成手段は、前記生体情報解析レポートにおいて、前記波形と心臓の模式図とを表示し、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、構成を採る。
【0007】
本発明の生体情報解析プログラムは、被検者から取得された心電図の波形を解析する解析機能と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成機能と、をコンピュータに実現させ、前記作成機能は、前記生体情報解析レポートにおいて、前記波形と心臓の模式図とを表示し、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、心電図の計測結果に応じた心臓の状態を、医師にも被検者にも直感的に理解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体情報解析装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、生体情報解析装置10は、制御部11、ディスプレイインタフェース(以下「I/F」と略記する)12、プリンタI/F13、心電計I/F14及び記憶部15を有する。
【0012】
本発明の解析手段及び作成手段としての制御部11は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行する生体情報解析プログラムを記憶する記憶装置とにより構成される。制御部11は、生体情報解析プログラムを実行することにより、後述する生体情報解析レポート作成処理における各ステップを実行する機能を、生体情報解析装置10において実現する。
【0013】
ディスプレイI/F12は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)表示装置等のディスプレイ20と生体情報解析装置10とを通信可能に接続するI/Fであり、ディスプレイ20と生体情報解析装置10との間で授受されるデータは、ディスプレイI/F12を経由する。
【0014】
プリンタI/F13は、レーザ式やサーマルヘッド式等のプリンタ30と生体情報解析装置10とを通信可能に接続するI/Fであり、プリンタ30と生体情報解析装置10との間で授受されるデータは、プリンタI/F13を経由する。
【0015】
心電計I/F14は、四肢用電極部41と胸部用電極部42とにより被検者から例えば標準12誘導心電図等の心電図を取得する心電計と生体情報解析装置10とを通信可能に接続するI/Fであり、心電計40と生体情報解析装置10との間で授受されるデータは、心電計I/F14を経由する。
【0016】
記憶部15は、ハードディスクドライブや半導体記憶装置等の記憶装置により構成される。記憶部15は、多数の心臓イラストデータを記憶するデータベースである。心臓イラストデータは、心臓の模式図を含む心臓イラストを心電図解析レポートに表示させるためのデータである。個々の心臓イラストデータは、識別可能なインデックスを付与されて記憶される。心臓イラストの具体例については後述する。なお、心臓の模式図は、イラストだけに限られず、写真等が用いられてもよい。
【0017】
以上、生体情報解析装置10の構成について説明した。なお、生体情報解析装置10の構成は、上記のものだけに限定されず、種々変更することができる。
【0018】
例えば、上記構成では、生体情報解析装置10と心電計40とが互いに独立しているが、これらは一体化されていてもよい。
【0019】
また、生体情報解析装置10は、その用途に応じて他の装置と接続し又は組み合わせて使用することができる。
【0020】
例えば、トレッドミル等によりストレステストを行う用途で生体情報解析装置10を用いる場合には、生体情報解析装置10は、トレッドミル等を含むストレステストシステムとして使用することができるよう構成される。また、解析対象の生体情報に心電図だけでなく血圧等も含まれる場合には、生体情報解析装置10は、それぞれの生体情報を測定するセンサ等と接続され、それぞれの生体情報を被検者から取得することができるよう構成される。
【0021】
また、生体情報解析装置10は、CCU(Coronary Care Unit:冠状動脈疾患管理室)又は手術室において生体情報モニタ又はポリグラフ検査装置等として使用することができる。この場合、心筋梗塞の状態と心電図との相関を基に、例えばPCI(経皮的冠動脈手術)の治療前後における心臓の経時的な状態変化を監視することができる。
【0022】
図2は、生体情報解析装置10の制御部11により実行される生体情報解析レポート作成処理を説明するためのフロー図である。
【0023】
ステップS1では、解析対象の心電図データ(被検者から取得された心電図の波形を示すデータ)を、心電計I/F14を介して心電計40から取得する。
【0024】
ステップS2では、取得した心電図の波形を解析し、その結果として、心電図の所見を導出する。所見は、被検者の心臓の状態が正常か否か、また、正常でない場合は、波形から認められ又は疑われる心疾患の病態及びその重症度等を含む情報である。ここでは、心疾患には、虚血性心疾患(冠状動脈が狭窄した状態である狭心症と、冠状動脈が完全に閉塞した状態である心筋梗塞とを含む)、不整脈等が含まれる。
【0025】
ステップS3では、解析結果として導出した所見に対応するインデックスを付与されている心臓イラストデータを、記憶部15から読み出す。
【0026】
ステップS4では、取得し又は解析した心電図データ及び心臓イラストデータに基づいて、生体情報解析レポートを、ディスプレイ20の画面上に表示し、或いは、プリンタ30によりレポート用紙上に印刷する。波形及び心臓イラストは、画面上又はレポート用紙上の所定の位置にそれぞれ描画される。
【0027】
以上のようにして、生体情報解析レポートが作成される。なお、上記生体情報解析レポート作成処理は一例であり、種々変更して実施可能である。
【0028】
以下、1枚のレポート用紙又は1画面に描画される生体情報解析レポートの具体例について説明する。なお、ここでは、ストレステストにおける心電図の測定結果を報告する目的で作成される生体情報解析レポートを例にとって説明する。
【0029】
図3、図4及び図5には、生体情報解析レポートのフォーマットについての幾つかの例が示されている。これらの例は、ストレステストにおける心臓の経時的な状態変化の表示に、特に適している。
【0030】
図3に示す生体情報解析レポート110のフォーマットは、情報ブロック111a、111b、111c、負荷前アベレージ波形ブロック112、負荷後アベレージ波形ブロック113、心臓イラストブロック114及びリズム波形ブロック115を含む。
【0031】
情報ブロック111a、111b、111cには、被検者名等の個人情報、トレンドグラフ、ストレステストのモード選択情報、画面操作用アイコン等、様々な情報が選択的に表示される。
【0032】
波形表示部としての負荷前アベレージ波形ブロック112には、被検者に負荷をかけ始める前の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(負荷前アベレージ波形)が表示される。表示されるアベレージ波形の一例は、図6に示される。なお、図6のアベレージ波形には、標準12誘導心電図のうちII誘導(図6の(a))、V2誘導(図6の(b))及びV5誘導(図6の(c))のアベレージ波形が含まれているが、他の誘導波形が含まれてもよく、また、表示チャネル数は3つでなくてもよい。
【0033】
波形表示部としての負荷後アベレージ波形ブロック113には、被検者に負荷をかけ終えた後の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(負荷後アベレージ波形)が表示される。
【0034】
波形表示部としてのリズム波形ブロック115には、リズム波形が表示される。リズム波形の一例は、図7に示される。
【0035】
心臓表示部としての心臓イラストブロック114には、心臓の外観又は断面の模式図を含むイラスト(心臓イラスト)が表示される。模式図の一例は、図8に示される。図8における例は、主として左冠動脈の前下行枝(左前下行枝)151、左回旋枝152及び右冠動脈153が分かるように簡略化された心臓の外観を示す模式図150である。ちなみに、左前下行枝151が閉塞しその周辺の心筋が壊死した場合には、前壁梗塞と診断される。また、側壁梗塞の多くは、左回旋枝152が閉塞したときに診断される。また、下壁梗塞の多くは、右冠動脈153が閉塞したときに診断される。なお、表示される心臓の模式図は、心疾患の病態を説明するに適したものとなるよう、心電図の所見に応じて適宜変更される。
【0036】
心電図の波形を解析した結果、何らかの心疾患が認められ又は疑われる場合には、心臓の模式図において、その心疾患の病態の発生部位に相当する位置に、その病態の種別に応じたマークが、その病態の重症度に応じた色で、表示される。
【0037】
例えば前壁梗塞と下壁梗塞との合併が認められ又は疑われる場合には、例えば図9に示すような心臓イラスト160が表示される。具体的には、心臓自体の模式図のほかに、左前下行枝151の閉塞を示すマーク161が、左前下行枝151の一部分に重ねて表示される。閉塞を示すマーク161は、黒又は青のような輝度の低い色で、閉塞が生じたと推測される個所を塗りつぶすマークである。また、前壁梗塞を示すマーク163が、前壁の一部分に重ねて表示される。梗塞を示すマーク163は、比較的輝度の低い色(例えば紫色)で、梗塞が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。また、右冠動脈153の閉塞を示すマーク162が、右冠動脈153の一部分に重ねて表示される。閉塞を示すマーク162は、黒又は青のような輝度の低い色で、閉塞が生じたと推測される個所を塗りつぶすマークである。また、下壁梗塞を示すマーク164が、下壁の一部分に重ねて表示される。梗塞を示すマーク164は、比較的輝度の低い色(例えば比較的暗い灰色)で、梗塞が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。
【0038】
また、例えば前壁と下壁とに虚血が認められ又は疑われる場合には、例えば図10に示すような心臓イラスト170が表示される。具体的には、心臓自体の模式図のほかに、前壁の虚血を示すマーク171が、前壁の一部分に重ねて表示される。虚血を示すマーク171は、比較的輝度の高い色(例えばピンク色)で、虚血が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。また、下壁の虚血を示すマーク172が、下壁の一部分に重ねて表示される。虚血を示すマーク172は、比較的輝度の高い色(例えば比較的明るい灰色)で、虚血が生じたと推測される個所をぼやかすマークである。
【0039】
また、不整脈が認められる場合には、ここでは図示しないが、障害が発生していると推測される心臓模式図内の位置に不整脈の発生を示すマーク(例えば星印)が重ねられた心臓イラストが、表示される。
【0040】
心臓イラストは、ある期間において測定された心電図の波形(例えば、負荷後アベレージ波形又は特定の誘導波形)を解析した結果として導出された所見に従って制御部11が記憶部15から読み出した心臓イラストデータに基づいて表示される。
【0041】
図3の生体情報解析レポート110が1画面に表示される場合には、ある期間において測定された心電図に基づいてリアルタイムにリズム波形及びアベレージ波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいてリアルタイムに心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。なお、リズム波形、アベレージ波形及び心臓イラストの表示はリアルタイムでなくてもよく、過去の測定結果に基づくものであってもよい。
【0042】
心臓イラストを画面に表示する場合には、短期間(例えば数秒から数十秒程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合と、長期間(例えば数分〜数十分程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合とがある。前者の場合には、心臓イラストブロック114には、解析期間における心疾患の病態を示す静止画の心臓イラストが表示される。これに対し後者の場合には、解析期間における心疾患の病態の経時変化が分かるよう、動画又はコマ送りの心臓イラストが表示される。よって、後者の場合には、この生体情報解析レポート110を見た者は、病態の経時変化を容易に理解することができる。
【0043】
図3の生体情報解析レポート110が用紙に印刷されて表示される場合にも、ある期間において測定された心電図に基づいてリズム波形及びアベレージ波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいて心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。
【0044】
図4に示す生体情報解析レポート120のフォーマットは、情報ブロック121a、121b、121c、心臓イラストブロック122、3誘導波形ブロック123及びリズム波形ブロック124を含む。
【0045】
情報ブロック121a、121b、121cは、情報ブロック111a、111b、111cと同様である。リズム波形ブロック124は、リズム波形ブロック115と同様である。心臓イラストブロック122は、心臓イラストブロック114と同様である。
【0046】
波形表示部としての3誘導波形ブロック123には、3つの誘導波形が表示される。表示される誘導波形の一例は、図11に示される。なお、図11の3誘導波形には、標準12誘導心電図のうちII誘導(図11の(a))、V2誘導(図11の(b))及びV5誘導(図11の(c))の波形が含まれているが、他の誘導波形が表示されてもよい。また、表示チャネル数は3つに限られず、適宜変更可能である。
【0047】
図4の生体情報解析レポート120が1画面に表示される場合には、ある期間において測定された心電図に基づいてリアルタイムにリズム波形及び3誘導波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいてリアルタイムに心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。なお、リズム波形、3誘導波形及び心臓イラストの表示はリアルタイムでなくてもよく、過去の測定結果に基づくものであってもよい。
【0048】
心臓イラストを画面に表示する場合には、短期間(例えば数秒から数十秒程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合と、長期間(例えば数分〜数十分程度)における心電図の所見に基づいて心臓イラストを表示する場合とがある。前者の場合には、心臓イラストブロック122には、解析期間における心疾患の病態を示す静止画の心臓イラストが表示される。これに対し後者の場合には、解析期間における心疾患の病態の経時変化が分かるよう、動画又はコマ送りの心臓イラストが表示される。よって、後者の場合には、この生体情報解析レポート120を見た者は、病態の経時変化を容易に理解することができる。
【0049】
図4の生体情報解析レポート120が用紙に印刷されて表示される場合にも、ある期間において測定された心電図に基づいてリズム波形及び3誘導波形を表示することができ、さらに、その心電図の波形解析結果に基づいて心疾患の病態を示す心臓イラストを表示することができる。
【0050】
図5に示す生体情報解析レポート130のフォーマットは、情報ブロック131a、131b、131c、負荷前アベレージ波形ブロック132、負荷中アベレージ波形ブロック133、負荷後アベレージ波形ブロック134、135、負荷前心臓イラストブロック136、負荷中心臓イラストブロック137及び負荷後心臓イラストブロック138、139を含む。
【0051】
情報ブロック131a、131b、131cは、情報ブロック111a、111b、111cと同様である。負荷前アベレージ波形ブロック132は、負荷前アベレージ波形ブロック112と同様である。
【0052】
波形表示部としての負荷中アベレージ波形ブロック133には、被検者に負荷をかけている途中の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(負荷中アベレージ波形)が表示される。
【0053】
波形表示部としての負荷後アベレージ波形ブロック134、135は、負荷後アベレージ波形ブロック113と同様である。負荷後アベレージ波形ブロック134に表示される負荷後アベレージ波形は、例えば被検者に負荷をかけ終えてから1分経過後の一定期間における誘導波形を平均化したものである。負荷後アベレージ波形ブロック135に表示される負荷後アベレージ波形は、例えば被検者に負荷をかけ終えてから3分経過後の一定期間における誘導波形を平均化したものである。
【0054】
心臓表示部としての負荷前心臓イラストブロック136には、負荷前アベレージ波形ブロック132に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての負荷中心臓イラストブロック137には、負荷中アベレージ波形ブロック133に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての負荷後心臓イラストブロック138には、負荷後アベレージ波形ブロック134に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての負荷後心臓イラストブロック139には、負荷後アベレージ波形ブロック135に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。
【0055】
すなわち、図5の生体情報解析レポート130には、一定期間において測定された誘導波形の経時変化及びそれに対応する心疾患の病態の経時変化が分かるように、複数のアベレージ波形と複数の心臓イラストとが並置されて表示される。
【0056】
なお、上記の例では、並置される波形及び心臓イラストの組み合わせは、負荷前のものが1つ、負荷中のものが1つ、負荷後のものが2つとなっているが、異なる組み合わせが用いられてもよい。また、並置される波形及び心臓イラストの数は4つに限られず、適宜変更可能である。
【0057】
図5の生体情報解析レポート130を用いる場合には、例えば図12を用いて以下説明するように、病態の経時変化が一目瞭然となる。
【0058】
図12(a)には測定のタイミングが示され、図12(b)には図12(a)の各タイミングにおける心電図の波形が示され、図12(c)には図12(b)の各波形のSTレベルが示され、図12(d)には図12(b)の各波形の所見に基づく心臓イラストが示されている。
【0059】
図12の例では、負荷を継続するに伴い、波形のSTレベル低下が進んでいる。そして、STレベル低下が進むと虚血の症状が進み、心臓の組織の一部分が壊死する様子が分かるようにマークの表示態様が変化する複数の心臓イラストが選択され、表示される。図5の生体情報解析レポート130を用いると、これらの波形及び心臓イラストが一括表示されるため、この生体情報解析レポート130を見た者は、病態の経時変化を容易に理解することができる。
【0060】
図13には、生体情報解析レポートのフォーマットについてのさらに他の例が示されている。この例は、PCIの治療前後における心臓の経時的な状態変化の表示に、特に適している。
【0061】
図13に示す生体情報解析レポート180は、術前アベレージ波形ブロック181、術後アベレージ波形ブロック182、183、184、術前心臓イラストブロック185及び術後心臓イラストブロック186、187、188を含む。
【0062】
波形表示部としての術前アベレージ波形ブロック181には、被検者(図13の例では、手術を受ける患者)に手術を施す前の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(術前アベレージ波形)が表示される。
【0063】
波形表示部としての術後アベレージ波形ブロック182、183、184には、被検者に手術を施した後の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(術後アベレージ波形)が表示される。典型的には、術後アベレージ波形ブロック182に、手術終了直後の一定期間における誘導波形を平均化した術後アベレージ波形が表示され、術後アベレージ波形ブロック183に、手術の1ヶ月後の一定期間における誘導波形を平均化した術後アベレージ波形が表示され、術後アベレージ波形ブロック184に、手術の3ヶ月後の一定期間における誘導波形を平均化した術後アベレージ波形が表示される。ただし、術後アベレージ波形ブロック182、183、184のそれぞれに、手術後のいつのアベレージ波形を表示するかは、医師等のユーザが任意に設定することができる。また、術後アベレージ波形ブロック182の位置に、被検者に手術を施している途中の一定期間における誘導波形を平均化したアベレージ波形(術中アベレージ波形)を表示してもよい。
【0064】
心臓表示部としての術前心臓イラストブロック185には、術前アベレージ波形ブロック181に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。心臓表示部としての術後心臓イラストブロック186、187、188には、術後アベレージ波形ブロック182、183、184に表示されるアベレージ波形から導出される所見に基づいて心臓イラストが表示される。
【0065】
すなわち、図13の生体情報解析レポート180には、PCIによる心臓の状態の回復過程が一目で理解できるよう、手術前後の数ヶ月の期間に測定された誘導波形から得られる複数のアベレージ波形と複数の心臓イラストとが並置されて表示される。なお、並置される波形及び心臓イラストの数は4つに限られず、適宜変更可能である。また、術後経過監視期間は、分単位、時間単位、日単位、週単位、月単位、年単位等で任意に設定することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態によれば、1枚の用紙又は1画面に表示される生体情報解析レポートにおいて、被検者から取得された心電図の波形と、心臓の模式図とを表示し、さらに、波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、病態の重症度に応じた色で、病態の発生部位に相当する模式図内の位置に表示する。このため、心臓のどの部位でどのような症状が発生しその重症度がどの程度であるかを、医師も被検者も一目で理解することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成及び動作等についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポート作成処理を説明するためのフロー図
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第1例を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第2例を示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第3例を示す図
【図6】アベレージ波形の一例を示す図
【図7】リズム波形の一例を示す図
【図8】本発明の一実施の形態に係る心臓の模式図の一例を示す図
【図9】本発明の一実施の形態に係る心臓イラストの第1例を示す図
【図10】本発明の一実施の形態に係る心臓イラストの第2例を示す図
【図11】3誘導波形の一例を示す図
【図12】心疾患の病態の経時変化の一例を説明するための図
【図13】本発明の一実施の形態に係る生体情報解析レポートのフォーマットについての第4例を示す図
【符号の説明】
【0069】
10 生体情報解析装置
11 制御部
12 ディスプレイI/F
13 プリンタI/F
14 心電計I/F
15 記憶部
20 ディスプレイ
30 プリンタ
40 心電計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者から取得された心電図の波形を表示する波形表示部と、心臓の模式図を表示する心臓表示部と、を有し、1枚の用紙又は1画面に描画される生体情報解析レポートであって、
前記心臓表示部は、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ことを特徴とする生体情報解析レポート。
【請求項2】
前記波形表示部は、異なる時刻に又は一定期間内に取得された心電図の波形を表示し、
前記心臓表示部は、前記異なる時刻又は前記一定期間における前記病態の経時変化に応じて、前記マークを変動させる、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報解析レポート。
【請求項3】
被検者から取得された心電図の波形を解析する解析手段と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成手段と、を有し、
前記作成手段は、前記生体情報解析レポートにおいて、
前記波形と心臓の模式図とを表示し、
前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ことを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項4】
被検者から取得された心電図の波形を解析する解析機能と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成機能と、をコンピュータに実現させ、
前記作成機能は、前記生体情報解析レポートにおいて、
前記波形と心臓の模式図とを表示し、
前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ことを特徴とする生体情報解析プログラム。
【請求項1】
被検者から取得された心電図の波形を表示する波形表示部と、心臓の模式図を表示する心臓表示部と、を有し、1枚の用紙又は1画面に描画される生体情報解析レポートであって、
前記心臓表示部は、前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ことを特徴とする生体情報解析レポート。
【請求項2】
前記波形表示部は、異なる時刻に又は一定期間内に取得された心電図の波形を表示し、
前記心臓表示部は、前記異なる時刻又は前記一定期間における前記病態の経時変化に応じて、前記マークを変動させる、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報解析レポート。
【請求項3】
被検者から取得された心電図の波形を解析する解析手段と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成手段と、を有し、
前記作成手段は、前記生体情報解析レポートにおいて、
前記波形と心臓の模式図とを表示し、
前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ことを特徴とする生体情報解析装置。
【請求項4】
被検者から取得された心電図の波形を解析する解析機能と、前記波形の解析結果に基づいて、1枚の用紙又は1画面上に生体情報解析レポートを作成する作成機能と、をコンピュータに実現させ、
前記作成機能は、前記生体情報解析レポートにおいて、
前記波形と心臓の模式図とを表示し、
前記波形から認められ又は疑われる心疾患の病態種別に応じたマークを、前記病態の重症度に応じた色で、前記病態の発生部位に相当する前記模式図内の位置に表示する、ことを特徴とする生体情報解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−148740(P2010−148740A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331472(P2008−331472)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
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