説明

生体情報計測装置

【課題】
本発明は、受光素子を複数個設け、該各受光素子が計測した各受光信号を用いて、体動ノイズを低減し或いはノイズが少ない受光信号を選択し、精度の高い脈波情報を得ることができる生体情報計測装置を提供すること目的とする。
【解決手段】
本発明の生体情報計測装置は、一の面が透光性を有する筺体と、該筺体の内部に配置され、前記一の面を通して前記筺体の外部へ出射光を発光する少なくとも1個の発光素子と、前記筐体の内部に配置され、前記一の面を通して前記出射光が前記筺体の外部で散乱した散乱光を受光する2個以上の受光素子と、前記各受光素子が計測した各受光信号のうち、波形の交流成分と直流成分とからなる評価関数値が最大となる受光信号を選択する第3計測値処理手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の耳介等の生体の一部で生体情報を検出する生体情報計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化が進み、成人の生活習慣病への対応が社会的に大きな課題となっている。特に高血圧に関連する疾患の場合、長期の血圧データの収集が非常に重要である点が認識されている。このような観点から、血圧をはじめとした各種の生体情報の計測装置が開発されている。
【0003】
従来、外耳部で生体情報を計測する装置については、外耳道又は外耳中の他の部位に、挿入され、常時装着する患者モニタ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、動脈の脈波や血流を検出する方法として、発光素子により生体へ照射した照射光が生体の動脈あるいは動脈内の血球により散乱した散乱光を、受光素子により受光し、散乱光から脈波や血流を検出する方法が開示されている。ここで脈拍、脈波、心電、体温、動脈血酸素飽和度、及び血圧などを生体内へ放射した赤外光、可視光の散乱光の受光量から計算できるとしている。
【0004】
また、外耳道又は耳朶に装着する装置としては、無線通信手段を有し、動脈血酸素飽和濃度センサ、体温センサ、心電センサ、脈波センサを備えている緊急情報装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
一方、血圧の測定に関しては、血管の脈動波形による血圧測定装置は、他の方式であるカフ振動法や容積補償法などによる血圧測定装置(例えば、非特許文献1参照。)と並んで有力な血圧の測定方法として認められている。
【0006】
なお、本願では、耳介の名称は非特許文献2に、耳介の軟骨の名称は非特許文献3による。
【特許文献1】特開平9−122083
【特許文献2】特開平11−128174
【非特許文献1】山越 憲一、戸川 達男著、「生体センサと計測装置」、日本エム・イー学会編/ME教科書シリーズ A−1、39頁〜52頁
【非特許文献2】Sobotta 図説人体解剖学第1巻(監訳者:岡本道雄)、p.126、(株)医学書院、1996年10月1日発行
【非特許文献3】Sobotta 図説人体解剖学第1巻(監訳者:岡本道雄)、p.127、(株)医学書院、1996年10月1日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の発光素子と受光素子による脈波や血流の検出方法は開発途上であり、実験結果が散見されるのみで、計測結果にはノイズが多く含まれている。本発明者らは、発光素子により生体へ照射した照射光のうち生体の動脈あるいは動脈内の血球により散乱した散乱光を、受光素子により受光する際に、体動により受光素子に多くの雑音光が加わることを見出した。すなわち、発光素子と受光素子とからなるセンサを収容した筐体は、カフに組み込まれるか或いはカフと分離しながらもカフの膨張による締め付けを利用するように配置されることがほとんどである。そして、カフは内部を加圧し、さらに減圧するために、カフの形状は大きく変化する。そのため、発光素子と受光素子と生体との位置関係が微妙に変化するために反射光の方向と反射光の量もさまざまに変化し、この反射光の量の変化が、体動ノイズとなり、脈波の検出に大きな妨害となっていた。
【0008】
そこで本発明は、受光素子を複数個設け、該各受光素子が計測した各受光信号を用いて、体動ノイズを低減し或いはノイズが少ない受光信号を選択し、精度の高い脈波情報を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る生体情報計測装置は、少なくとも1個以上の発光素子と、2個以上の受光素子を設けることとした。
【0010】
また第1発明に係る生体情報計測装置は、一の面が透光性を有する筺体と、該筺体の内部に配置され、前記一の面を通して前記筺体の外部へ出射光を発光する少なくとも1個の発光素子と、前記筐体の内部に配置され、前記一の面を通して前記出射光が前記筺体の外部で散乱した散乱光を受光する2個以上の受光素子と、前記各受光素子が計測した各受光信号のうち、波形の交流成分と直流成分とからなる評価関数値が最大となる受光信号を選択する第3計測値処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記のように、2個以上の受光素子を設けることにより、カフの形状が大きく変化して反射光の方向と反射光の量がさまざまに変化したとしても、各受光素子のうちいずれかは、この変化が少ない受光信号を計測するものがある。したがって、前記各受光素子が計測した各受光信号のうち、波形の交流成分と直流成分とからなる評価関数値を指標として、体動ノイズが最も少ない受光信号を選択することで、精度の高い脈波情報を得ることができる。
【0012】
第1発明に係る生体情報計測装置は、前記第3計測値処理手段が、評価関数を前記交流成分とし、前記各受光信号のうち、前記交流成分が最大の値を有する受光信号を選択する場合を包含する。受光信号のうち、波形の交流成分は、脈波情報等の生体情報を含んでおり、一方、波形成分の直流成分は、ノイズ、迷光の情報を含んでいる。そこで、評価関数を交流成分として、その最大の値を有する受光信号を選択することで、体動ノイズが少ない受光信号を選択するものである。
【0013】
或いは第1発明に係る生体情報計測装置では、前記第3計測値処理手段が、評価関数を(前記交流成分/前記直流成分)とし、前記各受光信号のうち、(前記交流成分/前記直流成分)が最大の値を有する受光信号を選択する場合を包含する。評価関数を(交流成分/直流成分)として、その最大の値を有する受光信号を選択することで、体動ノイズが少ない受光信号を選択するものである。
【0014】
或いは第1発明に係る生体情報計測装置は、前記第3計測値処理手段が、評価関数を(前記交流成分のうち特定周波数範囲の成分/前記直流成分)とし、前記各受光信号のうち、(前記交流成分のうち特定周波数範囲の成分/前記直流成分)が最大の値を有する受光信号を選択する場合を包含する。交流成分は、脈波情報等の生体情報を多く含んでいるもののノイズも含んでいる。このうち、生体情報由来の交流成分は、例えば0.1〜10Hzに含まれる。一方、ノイズの交流成分は、0.1Hz以下の低周波側で多く、10Hzを超える高周波側にも含まれている。そこで、特定周波数範囲の交流成分、例えば0.5〜10Hzの周波数範囲ではノイズの交流成分に対して生体情報関連の交流成分が多いので、評価関数を(交流成分のうち特定周波数範囲の成分/直流成分)として、その最大の値を有する受光信号を選択することで、体動ノイズが少ない受光信号を選択するものである。
【0015】
第1発明において、前記筐体の内部に、前記発光素子と前記受光素子との分離壁を設けることが好ましい。分離壁を設けることで、迷光が減り、受光素子が受光する光のうち生体での散乱光の割合を高めることができる。
【0016】
第1発明において、前記発光素子及び前記受光素子を同一放物面上、同一球面上若しくは同一双曲面上に配置することが好ましい。これらの面上に発光素子及び受光素子を配置することで、受光素子が受光する光のうち生体での散乱光の割合を高めることができる。
【0017】
第1発明の生体情報計測装置は、前記各受光素子が前記発光素子を中心として同一円周上に所定間隔で配置された構造を有することが好ましい。このとき発光素子と各受光素子との間隔が一定となり、各受光素子から発光素子6への影響を同一条件とすることができる。
【0018】
第1発明は、前記発光素子を2個以上配置し、該発光素子のうち選択した発光素子を発光させる発光切替手段を設けた場合を包含する。発光素子を単独若しくは任意に発光させることができ、脈波情報が最も大きく出力される発光素子を選択できる。
【0019】
第1発明は、前記一の面を密閉するように覆って、該一の面を押圧面とする、透光性を有する伸縮部材と、前記筺体の内部へ加圧空気を供給する空気供給パイプと、をさらに設けた場合を包含する。本発明は、筐体とカフを分離した形態を含むほか、伸縮部材と空気供給パイプを設け、カフに筐体を組み込んだ形態であっても良い。生体の測定箇所に併せてこれらいずれかの形態を用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の生体情報計測装置によれば、受光素子を複数個設け、該各受光素子が計測した各受光信号を用いることで、体動ノイズを低減し或いはノイズが少ない受光信号を選択し、精度の高い脈波情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(第1実施形態)
【0022】
最初に、図1及び図2を参照しながら、第1実施形態に係る生体情報計測装置の基本的な構成を説明する。図1は第1実施形態に係る生体情報計測装置の概略断面図である。図2は第1実施形態に係る生体情報計測装置の筐体外部から一の面の方向を見たときの概略平面図である。なお、図2のA−Aでの断面図が図1に相当する。また図2では、発光素子と受光素子の台座は省略した。第1実施形態に係る生体情報計測装置100は、一の面3が透光性を有する筺体2と、筺体2の内部に配置され、一の面3を通して筺体2の外部へ出射光25を発光する少なくとも1個の発光素子6と、筐体2の内部に配置され、一の面3を通して出射光25が筺体2の外部で散乱した散乱光4を受光する8個の受光素子5a〜5hと、各受光素子5a〜5hが計測した各受光信号のうち、体動ノイズが最も少ない受光信号を選択する第1計測値処理手段(不図示)と、を備える。
【0023】
なお、図1及び図2並びに以下に説明する図においては、発光素子6の駆動回路、受光素子5a〜5hの信号を増幅する増幅器など通常の技術により実現できる部分は表示していない。
【0024】
筺体2は、発光素子6と受光素子5a〜5hの収容容器の役目を為すと同時に外部光の入射を遮蔽するものである。そして、筺体2の一の面3が透光性を有するように形成されて、一の面3のみから光の入出射が許容される。例えば、一の面3を開口し、該開口を透光性のガラスやプラスチックシートで覆うことにより、一の面3が透光性を有するように形成される。
【0025】
発光素子6は、発光ダイオード(LED)、EL素子、電球等の発光体であればいずれも使用することができるが、本実施形態では光量、消費電力等の特性からLEDを使用することが好ましい。発光素子6のパッケージの径は0.5〜2mmが好ましく、0.8〜1.2mmがより好ましく、最適は約1mmである。LED等の発光素子では、出射光量が最も良く使われる数十マイクロワットから数百マイクロワットのときに、発光効率最もよくなるのが数百ミクロン角の大きさであるからである。
【0026】
発光素子6より一の面3を通して筐体2の外部に出射された出射光25は、生体1を照射し、生体1の内部で散乱する。その散乱光4は、一の面3を通して筐体2の内部に入り、受光素子5a〜5hによって計測される。
【0027】
受光素子5a〜5hは、フォトトランジスタ、フォトダイオード、光導電素子等の受光素子であればいずれも使用することができるが、本実施形態ではフォトトランジスタを使用することが好ましい。受光素子5a〜5hのパッケージの径は0.5〜2mmが好ましく、0.8〜1.2mmがより好ましく、最適は約1mmである。受光素子の場合も、入射光量が最も良く使われる数十マイクロワットから数百マイクロワットのときに、受光効率最もよくなるのが数百ミクロン角の大きさであるからである。
【0028】
図1及び図2に示した第1実施形態に係る生体情報計測装置100では、発光素子を1個、受光素子を8個とし、発光素子6を囲んで受光素子5a〜5hを配列する形態を示したが、本発明はこの配置に限定されない。例えば、図2において、発光素子を2個以上並べ、その周囲に複数の受光素子を配列しても良い。受光素子を複数個設けることで、1個の受光素子のみならず、他の受光素子でも散乱光4を検知することができる。或いは図2では、発光素子6を中心として、受光素子5a〜5hを正方形の辺上及び角に均等間隔で配置させた例を示したが、発光素子6を中心として、受光素子5a〜5hを同心円周上に所定間隔、好ましくは均等間隔で配置させても良い。このとき発光素子6と各受光素子5a〜5hとの間隔が一定となり、各受光素子5a〜5hから発光素子6への影響を同一条件とすることができる。或いは図3に示すように発光素子6と受光素子5とでペア7を作り、ペア7を複数並べることで、隣接する素子が互いに発光と受光とを交互に接するように配置しても良い。図3は、発光素子と受光素子の他の配置例を示す概略図である。発光素子に隣接する受光素子は、全て等価な位置にあるため、見掛けの受光面積が拡大したことと等しい効果を得ることができる。なお図3では、発光素子と受光素子以外の構成は不図示とした。
【0029】
また、本発明では、発光素子の個数は1個以上、受光素子の個数は2個以上とし、この関係を満たす範囲内で適宜発光素子と受光素子の個数を増減しても良い。例えば、(1)図2で示したように発光素子を1個、受光素子を複数個の場合、(2)図3で示したように発光素子を複数個、受光素子を複数個、且つ、発光素子と受光素子が同数個の場合、(3)発光素子を複数個、受光素子を複数個、且つ、発光素子が受光素子よりも多い場合、(4)発光素子を複数個、受光素子を複数個、且つ、発光素子が受光素子よりも少ない場合、のいずれであっても良い。
【0030】
発光素子と受光素子の中心間距離は、1〜5mmとすることが好ましく、1.55〜1.95mmとすることがより好ましい。最適は約1.75mmである。
【0031】
ここで、図4に示すように、筐体2の内部に、発光素子6と受光素子5との分離壁8を設けることが好ましい。図4は、図2に示した生体情報計測装置100に分離壁を設けた一形態を示す概略平面図である。分離壁は、遮光性材料で形成されていることが好ましく、壁面を起毛させて分離壁での散乱をさらに低下させても良い。分離壁を設けることで、迷光が減り、受光素子が受光する光のうち生体での散乱光の割合を高めることができる。
【0032】
図2或いは図3の実施形態では、発光素子同士を並列に接続する場合が含まれる。図5に本実施形態に係る生体情報計測装置における発光素子の第1接続形態の回路図を示した。図5中、9は回路電源、10は定電流源である。この場合、各発光素子は同時に発光する。ただし、本実施形態では各発光素子の発光強度は同じ強度で発光させる場合のみならず、相互に異なる強度で発光させる場合を含む。或いは、発光素子を2個以上配置し、さらに、発光素子を単独で発光させるか或いは発光素子のうち選択した発光素子のみを発光させる発光切替手段を設けても良い。図6に本実施形態に係る生体情報計測装置における発光素子の第2接続形態の回路図を示した。図6の回路では、発光素子6を4個配置し、スイッチ11を設けることで、各発光素子に対応するスイッチで構成される発光切替手段12により、発光素子を単独で発光させるか或いは発光素子のうち選択した発光素子のみを発光させることが可能である。発光素子の点灯を切り換えることで、脈波が最大となる位置の発光素子を選ぶことが可能となる。また、受光素子の消費電流と比べ、発光素子の消費電流は一般的に数桁多いため、最適な発光素子を選ぶことで省電力に資することができる。
【0033】
図2或いは図3の実施形態では、受光素子同士を並列に接続する場合が含まれる。図7に本実施形態に係る生体情報計測装置における受光素子の第1接続形態の回路図を示した。図7において、受光素子5は並列に接続されている。ここでは抵抗13で電流−電圧変換を実施し、電圧信号として脈波を抽出する。この場合、各受光素子は同時に散乱光4を検知する。また、本実施形態では各受光素子の出力値はそれぞれ独立に配線して第1計測値処理手段へ入力される場合と各受光素子の出力値を1つにまとめるように並列配線して第1計測値処理手段へ入力される場合のいずれの場合も含まれる。
【0034】
生体情報計測装置100において、発光素子6及び受光素子5a〜5hは、同一平面上に配置したが、図8(a)(b)(c)に示すように発光素子及び受光素子を同一放物面上、同一球面上若しくは同一双曲面上に配置しても良い。図8は、発光素子と受光素子の配置例を示す概略断面図であり、(a)は同一放物面上に配置した場合、(b)は同一球面上に配置した場合、(c)は同一双曲面上に配置した場合を示す。同一放物面上、同一球面上若しくは同一双曲面上に発光素子及び受光素子を配置することで、図8に示すように、発光素子の発光面の法線と受光素子の受光面の法線とを交差させることができ、散乱光の検知効率を上げることができる。これによって、受光素子が受光する光のうち生体での散乱光の割合を高めることができる。なお、発光素子の発光面や受光素子の受光面にレンズを配置し、出射光や散乱光を集束させても良い。
【0035】
第1計測値処理手段(不図示)は、各受光素子5a〜5hが計測した各受光信号のうち、体動ノイズが最も少ない受光信号を選択する処理を行なう。脈波が最大となる脈波情報を含む受光信号を選択しても良いし、バックグラウンドが最も低い脈波情報を含む受光信号を選択しても良い。或いは、各受光信号を比較して、平均的な脈波情報を含む受光信号を選択しても良い。さらに、測定中の経過時間に対して常に同一受光素子からの受光信号を選択しても良いが、時間経過に伴い、その都度、体動ノイズが最も少ない受光信号を選択していくことが好ましい。
【0036】
図9は、生体情報計測装置100の具体的な固定方法の一例を示す概略図である。図9に示した生体情報計測装置100は、U字型アーム17の一端側に固定されている。U字型アーム17の他端側には、生体情報計測装置100の一の面3と対向関係を有するようにカフ16が固定されている。耳珠15は、カフ16と一の面3とによって挟まれている。このとき、生体情報計測装置100とカフ16とは分離しながらもカフの膨張により耳珠15を締め付けできる。すなわち、カフ16の内部に空気が供給されて、カフ16が膨張すると、耳珠15は一の面3に押圧される。これにより、耳珠15の脈波の測定を行なうことが可能となる。
【0037】
本実施形態に係る生体情報計測装置において、他形態として、生体情報計測装置とカフとを一体としても良い。図10は、生体情報計測装置200の具体的な固定方法の一例を示す概略図である。図10に示した生体情報計測装置200は、U字型アーム17の一端側に固定されている。生体情報計測装置200は、一の面を密閉するように覆って、一の面を押圧面19とする、透光性を有する伸縮部材20と、筺体2の内部へ加圧空気を供給する空気供給パイプ18を備えている。透光性を有する伸縮部材20は、剛性の低いプラスチック樹脂シートにより形成されていることが好ましい。また空気供給パイプ18は不図示の空気圧縮機につながっている。筐体2に伸縮部材20と空気供給パイプとを組み込むことで、生体情報計測装置200はカフとしても機能することができる。耳珠15は、生体情報計測装置200とU字型アーム17の他端側とによって挟まれている。このとき、生体情報計測装置200はカフと一体となっており、伸縮部材20の膨張により耳珠15を締め付けできる。すなわち、筐体2の内部に空気供給パイプ18から空気が供給されて、伸縮部材20が膨張すると、耳珠15は押圧面19で押圧される。これにより、耳珠15の脈波の測定を行なうことが可能となる。
(第2実施形態)
【0038】
次に第2実施形態に係る生体情報計測装置について説明する。第2実施形態に係る生体情報計測装置は、第1実施形態に係る生体情報計測装置と比較して、計測値処理手段のみが異なるため、計測値処理手段のみを説明し、他の説明は省略する。第2実施形態に係る生体情報計測装置の第2計測値処理手段は、各受光素子が計測した各受光信号を組み合わせ処理して、体動ノイズを低減した受光信号を得る。
【0039】
第2計測値処理手段が行なう組み合わせ処理には、例えば3つの処理方法がある。第1の組み合わせ処置は、各受光信号を平均するか或いは各受光信号のうち2以上の受光信号を選択したのち平均する。例えば、図2の受光素子5a〜5hの全て(8個)の受光信号を第2計測値処理手段に入力し、第2計測値処理手段は全て(8個)の受光信号を平均する。或いは、例えば、図2において、第2計測値処理手段は、受光素子5a〜5hのうち、任意の受光信号を選択し、さらに選択された受光信号を平均する。ここで、任意の受光信号を選択する際に、バックグラウンドの高いものやノイズの高いものを排除することで残りの受光信号を選択することが好ましい。各受光信号を平均化することで、ノイズを低減させることができる。
【0040】
第2の組み合わせ処置は、各受光信号を加重平均するか或いは各受光信号のうち2以上の受光信号を選択したのち加重平均する。例えば、図2の受光素子5a〜5hの全て(8個)の受光信号を第2計測値処理手段に入力し、第2計測値処理手段は全て(8個)の受光信号のうち、ノイズの少ない受光信号を重視し、一方ノイズの多い受光信号を軽視して、加重平均する。或いは、例えば、図2の受光素子5a〜5hのうち、任意の受光信号を選択して、第2計測値処理手段に入力し、第2計測値処理手段は、選択された受光信号のうち、ノイズの少ない受光信号を重視し、一方ノイズの多い受光信号を軽視して、加重平均することとしても良い。ここで、任意の受光信号を選択する際に、バックグラウンドの高いものやノイズの高いものを排除することが好ましい。各受光信号を加重平均化することで、ノイズをより低減させることができる。
【0041】
第3の組み合わせ処置は、各受光信号を差分する。例えば、図2の受光素子5a〜5hのうち、生体情報とノイズを含んでいる第1受光信号と、主としてノイズを含んでいる第2受光信号を選択し、第1受光信号から第2受光信号の差分を求めることで、ノイズを低減することができる。ノイズが単一要因による場合には、差分を求めることによりノイズを低減することができる。また、ノイズが複数の要因による場合は、ノイズの種類ごとに分類して、差分を求めることによりノイズを低減してもよい。
【0042】
なお、生体情報とノイズを含んでいる各受光信号の平均を求め、主としてノイズを含んでいる各受光信号の平均を求めた後、これらの差分を求め、ノイズを低減しても良い。
【0043】
第1実施形態の場合と同様に第2実施形態においても、測定中の経過時間に対して常に同一受光素子からの受光信号を利用しても良いが、時間経過に伴い、その都度、体動ノイズが最も少ない受光信号を利用していくことが望ましい。
(第3実施形態)
【0044】
次に第3実施形態に係る生体情報計測装置について説明する。第3実施形態に係る生体情報計測装置は、第1実施形態に係る生体情報計測装置と比較して、計測値処理手段のみが異なるため、計測値処理手段のみを説明し、他の説明は省略する。第3実施形態に係る生体情報計測装置の第3計測値処理手段は、各受光素子が計測した各受光信号のうち、波形の交流成分と直流成分とからなる評価関数値が最大となる受光信号を選択する。
【0045】
第3計測値処理手段が受光信号を選択するに際して使用する評価関数は、例えば3つの評価関数がある。第1の評価関数は、受光信号の波形の交流成分とするものである。図11は、受光信号強度と経過時間との関係を示すグラフである。波形30は、受光信号を脈波情報として得た脈波波形である。ここで、脈波波形30は、図11で示すように交流成分28と直流成分29とからなる。脈波波形30の交流成分28は、脈波情報等の生体情報を含んでおり、一方、脈波波形30の直流成分29は、ノイズ、迷光の情報を含んでいる。そして、2個以上の受光素子を設けることにより、カフの形状が大きく変化して反射光の方向と反射光の量がさまざまに変化したとしても、各受光素子のうちいずれかは、この変化が少ない受光信号を計測するものがある。したがって、各受光素子が計測した各受光信号のうち、波形の交流成分が最大となる受光信号を選択して精度の高い脈波情報を得ることができる。
【0046】
第2の評価関数は、評価関数を(交流成分/直流成分)とするものである。生体情報を含んでいる交流成分が、ノイズ、迷光の情報を含んでいる直流成分と比して大きい受光信号から、精度の高い脈波情報を得ることができる。そして、2個以上の受光素子を設けることにより、カフの形状が大きく変化して反射光の方向と反射光の量がさまざまに変化したとしても、各受光素子のうちいずれかは、この変化が少ない受光信号を計測するものがある。したがって、各受光素子が計測した各受光信号のうち、(交流成分/直流成分)が最大となる受光信号を選択して精度の高い脈波情報を得ることができる。
【0047】
第3の評価関数は、評価関数を(交流成分のうち特定周波数範囲の成分/直流成分)とするものである。図12に、受光信号強度と交流成分の周波数との関係の概念図を示す。交流成分は、脈波情報等の生体情報を多く含んでいるもののノイズも含んでいる。このうち、生体情報由来の交流成分33は、例えば0.1〜10Hzに含まれる。一方、ノイズの交流成分34は、0.1Hz以下の低周波側で多く、10Hzを超える高周波側にも含まれている。そこで、特定周波数範囲32の交流成分、例えば0.5〜10Hzの周波数範囲ではノイズの交流成分に対して生体情報関連の交流成分が多いので、評価関数を(交流成分のうち特定周波数範囲の成分/直流成分)とする。0.3〜6Hzの周波数範囲、さらに0.5〜4Hzの周波数範囲としても良い。そして2個以上の受光素子を設けることにより、カフの形状が大きく変化して反射光の方向と反射光の量がさまざまに変化したとしても、各受光素子のうちいずれかは、この変化が少ない受光信号を計測するものがある。したがって、各受光素子が計測した各受光信号のうち、(交流成分のうち特定周波数範囲の成分/直流成分)が最大となる受光信号を選択して精度の高い脈波情報を得ることができる。
【0048】
第1実施形態の場合と同様に第3実施形態においても、測定中の経過時間に対して常に同一受光素子からの受光信号を選択しても良いが、時間経過に伴い、その都度、体動ノイズが最も少ない受光信号を選択していくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る生体情報計測装置は、健康や美容のための血圧測定、脈波測定、血流測定に利用することができる。また、細動脈の拍動を検出するのに適しており、透過式を用いることができない場所にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る生体情報計測装置の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係る生体情報計測装置の筐体外部から一の面の方向を見たときの概略平面図である。
【図3】発光素子と受光素子の他の配置例を示す概略図である。
【図4】生体情報計測装置100に分離壁を設けた一形態を示す概略平面図である。
【図5】本実施形態に係る生体情報計測装置における発光素子の第1接続形態の回路図である。
【図6】本実施形態に係る生体情報計測装置における発光素子の第2接続形態の回路図である。
【図7】本実施形態に係る生体情報計測装置における受光素子の第1接続形態の回路図である。
【図8】本実施形態に係る生体情報計測装置における発光素子と受光素子の配置例を示す概略断面図であり、(a)は同一放物面上に配置した場合、(b)は同一球面上に配置した場合、(c)は同一双曲面上に配置した場合を示す。
【図9】生体情報計測装置100の具体的な固定方法の一例を示す概略図である。
【図10】生体情報計測装置200の具体的な固定方法の一例を示す概略図である。
【図11】受光信号強度と経過時間との関係を示すグラフである。
【図12】受光信号強度と交流成分の周波数との関係の概念図である。
【符号の説明】
【0051】
1,生体
2,筺体
3,一の面
4,散乱光
5,5a〜5h,受光素子
6,発光素子
7,ペア
8,分離壁
9,回路電源
10,定電流源
11,スイッチ
12,発光切替手段
13,抵抗
15,耳珠
16,カフ
17,U字型アーム
18,空気供給パイプ
19,押圧面
20,伸縮部材
25,出射光
28,交流成分
29,直流成分
30,脈波波形
32,特定周波数範囲
33,生体情報由来の交流成分
34,ノイズの交流成分
100,200 生体情報計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面が透光性を有する筺体と、
該筺体の内部に配置され、前記一の面を通して前記筺体の外部へ出射光を発光する少なくとも1個の発光素子と、
前記筐体の内部に配置され、前記一の面を通して前記出射光が前記筺体の外部で散乱した散乱光を受光する2個以上の受光素子と、
前記各受光素子が計測した各受光信号のうち、波形の交流成分と直流成分とからなる評価関数値が最大となる受光信号を選択する第3計測値処理手段と、
を備えることを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
前記第3計測値処理手段は、評価関数を前記交流成分とし、前記各受光信号のうち、前記交流成分が最大の値を有する受光信号を選択することを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記第3計測値処理手段は、評価関数を(前記交流成分/前記直流成分)とし、前記各受光信号のうち、(前記交流成分/前記直流成分)が最大の値を有する受光信号を選択することを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記第3計測値処理手段は、評価関数を(前記交流成分のうち特定周波数範囲の成分/前記直流成分)とし、前記各受光信号のうち、(前記交流成分のうち特定周波数範囲の成分/前記直流成分)が最大の値を有する受光信号を選択することを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記筐体の内部に、前記発光素子と前記受光素子との分離壁を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記発光素子及び前記受光素子を同一放物面上、同一球面上若しくは同一双曲面上に配置することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記各受光素子が前記発光素子を中心として同一円周上に所定間隔で配置された構造を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記発光素子を2個以上配置し、該発光素子のうち選択した発光素子を発光させる発光切替手段を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の生体情報計測装置。
【請求項9】
前記一の面を密閉するように覆って、該一の面を押圧面とする、透光性を有する伸縮部材と、
前記筺体の内部へ加圧空気を供給する空気供給パイプと、
を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−39568(P2009−39568A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298270(P2008−298270)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【分割の表示】特願2004−293166(P2004−293166)の分割
【原出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】