説明

生体情報計測装置

【課題】安全かつ確実に外部機器に対して生体情報を送信するための技術を提供する。
【解決手段】生体情報計測装置は、生体情報を計測する生体情報計測手段と、計測された生体情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている生体情報を外部機器に対して送信する通信手段と、未送信の生体情報が存在することを示す未送信サインを表示するための表示手段と、ユーザの操作を受け付ける操作手段と、制御手段と、を備える。制御手段は、生体情報計測手段による計測が行われ記憶手段に新たな生体情報が追加された場合に未送信サインを表示し、ユーザにより所定のクリア操作が行われた場合にのみ未送信サインの表示を消す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の計測、記録、および外部機器への送信が可能な生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体から生体情報を計測し記録する装置としては、たとえば、体重計、体組成計、体重体組成計、血圧計、血糖計などが知られている。従来、これらの計測装置はスタンドアローンで用いられるのが一般的であったが、今後は、各種計測装置で得られた生体情報を外部機器(携帯電話やパソコンなど)に転送し、この外部機器上あるいはネットワーク上で生体情報の管理や加工を行う、といった利用形態が増加するものと予想される。そこで、計測装置から外部機器に対して生体情報を安全かつ確実に転送するための技術が必要となる。
【0003】
機器間通信の従来技術として、特許文献1には、デジタルカメラで撮影した画像データを携帯電話等の通信端末を介してサーバに転送するデータ転送システムが開示されている。このシステムは、デジタルカメラのメモリの空き容量が少なくなると利用者に通知し、データ転送が実行されると転送済みのデータをメモリから自動で削除する構成を採用している。
【特許文献1】特開2001−128113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術を生体情報の機器間通信に適用すると次のような問題が生じる。
【0005】
生体情報計測装置や携帯電話などの機器では、機器間通信に片方向(単方向)通信方式が用いられることが多い。片方向通信の場合、送信側は一方的にデータを送信することしかできず、受信側が正しくデータを受け取ったかどうかを確認することができない。それゆえ、特許文献1に開示された方法を用いると、受信側が正しくデータを受信できていなかったとしても、送信側は送信処理の終了とともに未送信データは無くなったと判断し、自動的にメモリの残量表示をクリアし、かつメモリ内のデータを削除してしまう。
【0006】
したがって、従来技術の場合は、ユーザが生体情報の転送に失敗したことに気付かない、あるいは気付くのに遅れる可能性がある。しかも、たとえ転送の失敗に気付いたとしても、すでにデータが削除されているため、再転送することができない。また、一回の転送で計測装置内のデータを削除してしまうと、別の機器へのデータ送信ができないという問題も生じる。
【0007】
生体情報は、人の健康に関わる重要な情報であるというだけでなく、定期的に計測し日々の値の変化を観察することが大切である。よって、上記のように、ユーザが知らないうちに情報が失われてしまう事態は避けなければならない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、安全かつ確実に外部機器に対して生体情報を送信するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0010】
本発明の生体情報計測装置は、生体情報を計測する生体情報計測手段と、前記生体情報計測手段によって計測された生体情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている生体情報を外部機器に対して送信する通信手段と、未送信の生体情報が存在することを示す未送信サインを表示するための表示手段と、ユーザの操作を受け付ける操作手段と、制御手段と、を備える。前記制御手段は、前記生体情報計測手段による計測が行われ前記記憶手段に新たな生体情報が追加された場合に前記未送信サインを表示し、ユーザにより所定のクリア操作が行われた場合にのみ前記未送信サインの表示を消す。
【0011】
この構成によれば、ユーザが生体情報の計測を行うと、自動的に未送信サインが表示される。この未送信サインの表示は、未送信の生体情報の存在をユーザに認識させるとともに、生体情報を外部機器に送信する契機をユーザに与える効果がある。
【0012】
この未送信サインは、生体情報の送信処理を行うだけでは消えず、ユーザにより所定のクリア操作が行われない限り表示されたままである。言い換えれば、未送信サインを消してよいかどうかの判断、未送信サインを消すタイミングの決定などは、ユーザ自身が行うことになる。これにより、外部機器が生体情報を正しく受信できたことをユーザが確認した後に未送信サインを消したり、予定していた複数の機器全てに生体情報を送信した後で未送信サインを消す、などの使い方がされるものと期待できる。したがって、生体情報の転送に失敗したことをユーザが気付かないとか、ユーザが知らないうちに情報が失われてしまうといった事態を可及的に防止でき、安全かつ確実な生体情報の送信が可能になる。
【0013】
本発明は、生体情報計測装置から外部機器へのデータ送信が片方向(単方向)通信方式で行われる場合に特に好ましく適用できる。片方向通信では、データ送信が正しく行えたかどうかを送信側が確認できないため、データ送信の確実を保証するのが難しいからである。
【0014】
前記通信手段は、所定のタイムアウト期間のあいだ前記生体情報を繰り返し送信することが好ましい。同一のデータを繰り返し送信することで、受信側のデータ受信機会を増やすことができるため、データ転送の確実性が高まるからである。
【0015】
ところで、タイムアウト前に生体情報の受信完了を外部機器上で確認できた場合、ユーザとしては、送信処理を途中終了しようと何らかの操作を行うのが自然なアクションである。これを未送信サインのクリア操作に利用することも好ましい。すなわち、前記所定のタイムアウト期間が経過する前に前記操作手段がユーザにより操作されることを、前記所定のクリア操作として扱うのである。これによりユーザに特別な操作負担をかけることなく自然な動作の中で未送信サインのクリアを行わせることができ、ユーザビリティの向上を図ることができる。また生体情報の送信処理からの流れの中で未送信サインのクリアもできるため、未送信サインを誤って消してしまったり、逆に未送信サインを消し忘れてしまったりすることを防ぐ効果も得られる。
【0016】
さらに、前記所定のクリア操作が、前記所定のタイムアウト期間の経過前に前記生体情報の繰り返し送信を終了するための操作を兼ねていることが好ましい。これにより、ワンアクションで未送信サインのクリアと送信処理の終了ができ、ユーザビリティのさらなる向上を図ることができる。
【0017】
前記制御手段は、ユーザにより所定の削除操作が行われた場合にのみ前記記憶手段に記憶されている生体情報を削除することが好ましい。この構成によれば、生体情報の送信処理を行ったり未送信サインをクリアしたりするだけでは記憶手段内の生体情報は削除されず、ユーザにより所定の削除操作が行われない限り生体情報は残ったままである。言い換
えれば、生体情報を削除してよいかどうかの判断、生体情報を削除するタイミングの決定などは、ユーザ自身が行うことになる。したがって、ユーザが知らないうちに情報が失われてしまうといった事態を防止でき、安全かつ確実な生体情報の送信が可能になる。また、1または複数の外部機器に対して同じ生体情報を何度も送信できるようになるため、ユーザビリティの向上も図ることができる。
【0018】
前記制御手段は、前記未送信サインの表示が消された後のみ前記所定の削除操作を受け付けることが好ましい。これにより、未送信の生体情報を誤って削除してしまう事態を防止することができる。
【0019】
前記記憶手段は、N回(Nは1より大きい整数)の計測の生体情報を記憶可能であり、前記通信手段は、各生体情報が未送信か否かにかかわらず、毎回、前記記憶手段に記憶されているN回の計測の生体情報を送信することが好ましい。毎回全データを送信することにより、受信側のデータ受信機会を増やすことができるため、データ転送の確実性が高まる。しかも、送信時間にばらつきがあるとユーザの中には送信エラーや故障の発生を疑う者もでてくるが、上記構成のように送信データサイズが毎回同じであると送信時間も毎回ほぼ同じになるため、ユーザに上記懸念を与えなくて済み、結果としてユーザビリティの向上につながる。
【0020】
前記通信手段は、前記生体情報の送信処理の状況を示すステイタス情報を前記外部機器に対して送信し、前記外部機器を介して前記送信処理の状況をユーザに報知することが好ましい。これにより、送信処理の進捗を容易に確認することができる。この構成は特に片方向通信の場合に有効である。片方向通信では、送信側と受信側の同期をとることができないからである。
【0021】
本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する生体情報計測装置として捉えてもよいし、生体情報計測装置と外部機器とを含む生体情報計測管理システムとして捉えてもよい。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む生体情報計測装置の制御方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムやそのプログラムを記録した記録媒体として捉えることもできる。なお、上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安全かつ確実に外部機器に対して生体情報を送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。以下の実施形態では、本発明に係る生体情報計測装置の例として、体重および体組成を計測可能な体重体組成計を例示する。ただし本発明の適用範囲はこれに限られず、たとえば、体重を計測する体重計、体組成を計測する体組成計、血圧を計測する血圧計、血糖値を計測する血糖計など、各種の生体情報計測装置に本発明を適用することができる。また生体情報の送信先となる外部機器として、以下の実施形態では携帯電話を例示しているが、携帯電話以外にもパーソナルコンピュータ、携帯端末、携帯音楽プレーヤなど、通信機能を有する各種機器を用いることが可能である。
【0024】
<第1実施形態>
(体重体組成計の構成)
図1は、体重体組成計の外観を示している。
【0025】
この体組成計は、概略、本体1と保持部(表示操作部)2とから構成される。本体1と
保持部2は、ケーブル3で接続されており、信号の送受信が可能である。なお、本体1と保持部2とを無線通信により接続する構成でも構わない。非使用時は、本体1の保持部収納部13に、保持部2及びケーブル3を収納可能である。
【0026】
本体1の上面には、4つの足用電極10L、10R、11L、11Rが設けられている。電極10L、10Rは、左右の足裏に電流を印加するための電極であり、電極11L、11Rは、左右の足裏から電圧を検知するための電極である。また本体1は複数の荷重センサから構成される体重測定部12を内蔵している。
【0027】
保持部2には、左右のグリップ20L、20R、表示部21、操作部22、通信部23などが設けられている。表示部21は、測定結果や各種ガイダンス(後述する未送信サイン含む)を表示する表示手段であり、例えばLCD(液晶ディスプレイパネル)から構成される。操作部22は、ユーザの操作を受け付ける操作手段であって、この実施形態では、ユーザ選択ボタン22A、表示切替ボタン22B、メモリボタン22C、データ転送ボタン22D、表示クリアボタン22E、データ削除ボタン22Fなどから構成される。グリップ20L、20Rにはそれぞれ、手のひらに電流を印加するための電極24L、24Rと、手のひらから電圧を検知するための電極25L、25Rとが設けられている。通信部23は、計測した生体情報を携帯電話などの外部機器4に対して送信する通信手段である。通信方式は問わないが、ユーザビリティの観点からは無線通信であることが好ましい。本実施形態の通信部23は、片方向通信方式の高速赤外線通信であるIrSS(IrSimpleShot)を利用している。
【0028】
図2は、体組成計の構成を示すブロック図である。図2に示すように、保持部2は、制御部26、インピーダンス測定部27、記憶部28、電源29などを内蔵している。制御部26は、体組成計の各構成要素を制御したり、体組成の推定処理などの演算を行う制御手段であって、具体的にはプログラムを実行するCPUとメモリなどから構成される。インピーダンス測定部27は、印加した電流と検知された電圧とに基づいて体内のインピーダンスを計測する手段である。本実施形態では、このインピーダンス測定部27と上述した体重測定部12とが、生体情報を計測する生体情報計測手段に対応する。
【0029】
記憶部28は、不揮発性メモリなどの記憶媒体から構成される。記憶部28には、体重測定部12およびインピーダンス測定部27によって計測された生体情報がその計測日時とともに、ユーザ別に記憶される。本実施形態では、複数(4人)のユーザを登録可能であり、各ユーザについて30回分の計測データを記憶可能である。なお記憶部28には、各ユーザの身体特定化情報である年齢、身長、性別も記憶される。
【0030】
(体重体組成計の動作)
図3のフローチャートに沿って、体重体組成計の動作を説明する。
【0031】
ユーザが体組成計の電源をONすると、制御部26が体重計の校正処理(ゼロキャリブレーション)を実行する(S10)。校正完了後、ユーザ選択可能となる。ユーザがユーザ選択ボタン22Aで個人番号(1〜4のいずれか)を指定すると(S11)、制御部26は、指定された個人番号に関連付けられた身体特定化情報を記憶部28から読み込む(S12)。
【0032】
ユーザが本体1の上に乗り静止すると、体重測定部12によって体重の計測が行われる(S13)。この計測値は制御部26に入力される。続いて、インピーダンス測定部27によって生体インピーダンスの計測が行われる(S14)。この計測値は制御部26に入力される。
【0033】
制御部26は、S13で計測した体重と、S14で計測した生体インピーダンスと、記憶部28から読み込んだユーザの身体特定化情報に基づいて、体組成を推定する(S15)。体組成の推定は公知の手法を用いればよい。ここでは、体組成として、体脂肪率、皮下脂肪率、骨格筋率を算出する。またこれらの算出結果に基づいて、内臓脂肪レベル、基礎代謝、体年齢、BMIなど、健康管理やダイエットに有益な指針情報を求める。
【0034】
次に、制御部26は、体重、体脂肪率、皮下脂肪率、骨格筋率、内臓脂肪レベル、基礎代謝、体年齢、BMIなどの生体情報を、計測日時とともに記憶部28に保存する(S16)。このとき制御部26は、図4に示すように、記憶部28に保存されているデータの数を調べ、30個より少なければ(S160;NO)、前回のデータを保存した番地(アドレス)の次の番地に今回のデータを保存し(S161)、30個に達していたら(S160;YES)、最も古いデータが保存されている番地に今回のデータを上書きする(S162)。このような保存制御により、(ユーザ自身が削除しない限り)過去30回分の計測データが記憶部28に保持されることとなる。
【0035】
次に、制御部26は、図5に示すように、計測した生体情報(体重)を表示部21に表示するとともに(S17)、未送信サイン50の表示を更新する(S18)。この未送信サイン50は、外部機器4への転送が行われていない生体情報(以下単に「未送信データ」ともいう)が記憶部内に存在することを示すものである。本実施形態では、図6に示すように、未送信データの数に応じてバーの長さが変化するインジケータ表示を採用している。これにより、ユーザは未送信データがどの程度蓄積されているかを容易に確認することができる。なお後述するように、未送信サイン50の表示を消すには、ユーザが所定のクリア操作を行う必要がある。
【0036】
その後、制御部26は、ユーザのボタン操作(イベント入力)を監視する(S19)。ボタン操作が所定時間以上行われないか、電源スイッチが押下された場合には(S21;YES)、制御部26は体組成計の電源をオフにする。一方、ユーザによりいずれかのボタンが押下された場合には(S19;YES)、制御部26は当該ボタンに割り当てられたイベント処理を実行する(S20)。図7にイベント処理の詳細フローを示す。
【0037】
(1)表示切替ボタン22Bが押された場合(S200)、制御部26は、体重→体脂肪率→内臓脂肪レベル→皮下脂肪率→骨格筋率→基礎代謝→体年齢→BMI→体重→・・・のように、表示項目を順に切り替える(S205)。
【0038】
(2)メモリボタン22Cが押された場合(S210)、制御部26は、記憶部28に保存されている過去のデータ(前回値)を読み出し、表示部21に表示する(S215)。もう一度メモリボタン22Cが押されると、今回のデータに戻る。
【0039】
(3)データ転送ボタン22Dが押された場合(S220)、制御部26は、外部機器4への生体情報の転送処理を実行する(S225)。図8に転送処理の詳細フローを示す。制御部26は、記憶部28から全30回分のデータを読み出し(S100)、通信部23を介して全データを一括送信する(S101)。このとき、制御部26は、所定のタイムアウト期間(例えば30秒)が経過するか、ユーザにより転送が中断されるまで、繰り返しデータ送信を行う(S101、S102)。同一のデータを繰り返し送信することで、受信側のデータ受信機会を増やすことができるため、データ転送の確実性が高まるからである。図9はデータ転送時の画面表示例を示している。表示部21にはデータ転送中であることを示す「転送中」のアイコンが表示される。また外部機器4はデータを受信すると、その表示部に転送が終了した旨を表示する。
【0040】
(4)表示クリアボタン22Eが押された場合(S230)、制御部26は、表示部2
1の未送信サイン50の表示を消す(S235)。このように本実施形態では、データ転送を行うだけで未送信サイン50が自動で消えることはない。ユーザにより所定のクリア操作が行われない限り未送信サイン50は表示されたままである。
【0041】
(5)データ削除ボタン22Fが押された場合(S240)、制御部26は、記憶部28に保存されている当該ユーザの全データを一括削除する(S245)。このように本実施形態では、データ転送を行うだけで保存データが自動で削除されることはない。ユーザにより所定の削除操作が行われない限りデータは記憶部28内に保持されたままである。
【0042】
(本実施形態の利点)
本実施形態の構成によれば、ユーザが生体情報の計測を行うと、自動的に未送信サイン50が表示される。この未送信サイン50の表示は、未送信の生体情報の存在をユーザに認識させるとともに、生体情報を外部機器4に送信する契機をユーザに与える効果がある。
【0043】
この未送信サイン50は、ユーザにより所定のクリア操作が行われない限り表示されたままである。つまり、未送信サイン50を消してよいかどうかの判断、未送信サイン50を消すタイミングの決定などは、ユーザ自身が行うことになる。これにより、外部機器4が生体情報を正しく受信できたことをユーザが確認した後に未送信サイン50を消したり、予定していた複数の機器全てに生体情報を送信した後で未送信サイン50を消す、などの使い方がされるものと期待できる。したがって、生体情報の転送に失敗したことをユーザが気付かないとか、ユーザが知らないうちに情報が失われてしまうといった事態を可及的に防止でき、安全かつ確実な生体情報の送信が可能になる。
【0044】
さらに本実施形態では、生体情報の送信処理を行ったり未送信サイン50をクリアしたりするだけでは記憶部内の生体情報は削除されず、ユーザにより所定の削除操作が行われない限り生体情報は残ったままである。言い換えれば、生体情報を削除してよいかどうかの判断、生体情報を削除するタイミングの決定などは、ユーザ自身が行うことになる。したがって、ユーザが知らないうちに情報が失われてしまうといった事態を防止でき、安全かつ確実な生体情報の送信が可能になる。また、1または複数の外部機器に対して同じ生体情報を何度も送信できるようになるため、ユーザビリティの向上も図ることができる。
【0045】
本実施形態では、生体情報の通信に片方向通信方式のIrSSを利用しているため、データ送信が正しく行えたかどうかを送信側が確認できず、データ送信の確実を保証するのが難しい。しかし上記のように、未送信サインのクリアや保存データの削除の判断をユーザに任せることで、重要情報である生体情報を安全かつ確実に取り扱うことができるようになるとともに、ユーザビリティの向上を図ることが可能になる。
【0046】
また、毎回全30回分のデータを送信することにより、受信側のデータ受信機会を増やすことができるため、データ転送の確実性が高まる。しかも、送信時間にばらつきがあるとユーザの中には送信エラーや故障の発生を疑う者もでてくるが、本実施形態のように送信データサイズが毎回同じであると送信時間も毎回ほぼ同じになるため、ユーザに上記懸念を与えなくて済み、結果としてユーザビリティの向上につながる。
【0047】
<第2実施形態>
データ送信がタイムアウトする前に生体情報の受信完了を外部機器4上で確認できた場合、ユーザとしては、体重体組成計における送信処理を途中終了しようと何らかの操作を行うのが自然なアクションである。本実施形態では、これを未送信サインのクリア操作に利用する。
【0048】
図10は本発明の第2実施形態における転送処理の詳細フローを示している。その他の構成および処理は第1実施形態と同様である。
【0049】
データ転送ボタン22Dが押されると、制御部26は、記憶部28から全30回分のデータを読み出し(S110)、通信部23を介して全データを一括送信する(S111)。その後、制御部26は、データ送信を繰り返しつつ、タイムアウト期間(例えば30秒)経過前に所定のボタン操作が行われるか否かを監視する(S112)。ここで受け付けるボタン操作としては、データ転送ボタン22Dの再押下でもよいし、表示クリアボタン22Eの押下でもよいし、また任意のボタン押下でもよい。さらに誤操作を防ぐためにボタンの長押しを要求してもよい。
【0050】
ユーザによる所定のボタン操作が行われた場合(S112;YES)、制御部26は、外部機器4へのデータ転送が正しく行われたものとみなし、データ送信を終了するとともに、未送信サイン50をクリアする(S113)。
【0051】
これによりユーザに操作負担をかけることなく自然な動作の中で未送信サインのクリアを行わせることができ、ユーザビリティの向上を図ることができる。また生体情報の送信処理からの流れの中で未送信サインのクリアができるため、未送信サインを誤って消してしまったり、逆に未送信サインを消し忘れてしまったりすることを防ぐことができる。しかも、ワンアクションで未送信サインのクリアと送信処理の中断ができ、ユーザビリティのさらなる向上を図ることができる。
【0052】
なお、データ送信開始直後にボタンが押下されると、データの転送が正しく行われないうちに処理を終了してしまうおそれがある。そこで、データ送信開始から一定期間(例えば7秒間)のあいだボタンの押下を検知しないようにしてもよい。
【0053】
<第3実施形態>
前述のように、片方向通信を利用した場合には、送信側と受信側の同期をとることができないため、データ転送の確実を保証するのが難しい。そこで本実施形態の体組成計では、送信処理の状況を示すステイタス情報を外部機器に対して送信し、外部機器を介して送信処理の状況をユーザに報知する。これは、データ転送の最中は、ユーザは体組成計ではなく外部機器のほうを見ている蓋然性が高いことに着目したものである。
【0054】
図11は第3実施形態における転送処理の詳細フローを示している。その他の構成および処理は第1実施形態と同様である。
【0055】
データ転送ボタン22Dが押されると、制御部26は、まず「転送準備中」を示すステイタス情報を通信部23を介して送信する(S120)。外部機器4がこのステイタス情報を受信し表示することで、ユーザに対し「転送準備中」であることを通知することができる。次に、制御部26は、記憶部28からデータの読み出しを完了し転送準備が整うと(S121)、「転送開始」を示すステイタス情報を送信する(S122)。このステイタス情報が外部機器4に表示されることで、ユーザはデータの転送が開始されることを知ることができる。そして、データ送信が終了すると(S123、S124;YES)、制御部26は、「転送終了」を示すステイタス情報を送信する(S125)。このステイタス情報が外部機器4に表示されることで、ユーザはデータの転送が終了したことを知ることができる。
【0056】
以上述べた構成によれば、ユーザは送信処理の進捗を外部機器上で容易に確認することができ、ユーザビリティのさらなる向上を図ることができる。
【0057】
<第4実施形態>
図12は第4実施形態におけるデータ削除処理の詳細フローを示している。その他の構成および処理は前述の実施形態と同様である。
【0058】
データ削除ボタン22Fが押下されると(S240;YES)、制御部26は、未送信サインがクリアされているか否かを調べる(S241)。そして、未送信サインがクリアされている(非表示である)場合には(S241;YES)、制御部26は保存データを削除し(S245)、未送信サインが表示されている場合には保存データの削除は行わない(S241;NO)。
【0059】
このように未送信サインの表示が消された後のみデータの削除操作を受け付けるようにしたことで、未送信の生体情報を誤って削除してしまう事態を防止することができる。
【0060】
<その他>
なお、上記実施形態は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0061】
例えば上記実施形態では片方向通信方式の高速赤外線通信を利用したが、通信方式はこれに限らず、双方向通信を利用してもよいし、赤外線通信以外の通信方式を利用してもよい。
【0062】
また上記実施形態では、生体情報を計測した後にデータ転送を行うフローを示したが、データ転送のタイミングはこれに限らない。例えば生体情報を計測しなくても、データ転送ボタンを押下すればいつでもデータ転送が実行されるようにしてもよい。
【0063】
また操作部のボタン構成は上記実施形態のものに限らない。例えば、1つのボタンに複数の機能を割り当てることにより、ボタンの数を減らすことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、体重体組成計の外観を示す図である。
【図2】図2は、体重体組成計の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、体重体組成計のメインの動作フローを示すフローチャートである。
【図4】図4は、生体情報の保存処理の詳細フローを示すフローチャートである。
【図5】図5は、表示部の表示例を示す図である。
【図6】図6は、未送信サインの表示例を示す図である。
【図7】図7は、第1実施形態におけるイベント処理の詳細フローを示すフローチャートである。
【図8】図8は、第1実施形態における転送処理の詳細フローを示すフローチャートである。
【図9】図9は、データ転送時の画面表示例を示す図である。
【図10】図10は、第2実施形態における転送処理の詳細フローを示すフローチャートである。
【図11】図11は、第3実施形態における転送処理の詳細フローを示すフローチャートである。
【図12】図12は、第4実施形態における削除処理の詳細フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 本体
2 保持部
3 ケーブル
4 外部機器
10L、10R、11L、11R 足用電極
12 体重測定部
13 保持部収納部
20L、20R グリップ
21 表示部
22 操作部
22A ユーザ選択ボタン
22B 表示切替ボタン
22C メモリボタン
22D データ転送ボタン
22E 表示クリアボタン
22F データ削除ボタン
23 通信部
24L、24R、25L、25R 手用電極
26 制御部
27 インピーダンス測定部
28 記憶部
29 電源
50 未送信サイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を計測する生体情報計測手段と、
前記生体情報計測手段によって計測された生体情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている生体情報を外部機器に対して送信する通信手段と、
未送信の生体情報が存在することを示す未送信サインを表示するための表示手段と、
ユーザの操作を受け付ける操作手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記生体情報計測手段による計測が行われ前記記憶手段に新たな生体情報が追加された場合に前記未送信サインを表示し、
ユーザにより所定のクリア操作が行われた場合にのみ前記未送信サインの表示を消すことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
前記通信手段は、所定のタイムアウト期間のあいだ前記生体情報を繰り返し送信するものであり、
前記所定のクリア操作は、前記所定のタイムアウト期間が経過する前に前記操作手段がユーザにより操作されることであることを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記所定のクリア操作は、前記所定のタイムアウト期間の経過前に前記生体情報の繰り返し送信を終了するための操作を兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記制御手段は、ユーザにより所定の削除操作が行われた場合にのみ前記記憶手段に記憶されている生体情報を削除することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記未送信サインの表示が消された後のみ前記所定の削除操作を受け付けることを特徴とする請求項4に記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、N回(Nは1より大きい整数)の計測の生体情報を記憶可能であり、
前記通信手段は、各生体情報が未送信か否かにかかわらず、毎回、前記記憶手段に記憶されているN回の計測の生体情報を送信することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記通信手段は、前記生体情報の送信処理の状況を示すステイタス情報を前記外部機器に対して送信し、前記外部機器を介して前記送信処理の状況をユーザに報知することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−5276(P2010−5276A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170686(P2008−170686)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】