説明

生体成分分析装置及び校正用カートリッジ

【課題】常に信頼性の高い分析結果を得ることができる生体成分分析装置を提供する。
【解決手段】被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置20。既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、分析用の試薬が予め収容されているとともに生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジ40を選択的に装着可能な装着部22と、試料に含まれる成分を検出する検出部30と、校正用カートリッジに収容された既知濃度試料に含まれる成分を検出して得られる第1検出値に基づいて検量線を作成し、分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を検出して得られる第2検出値及び前記検量線に基づいて当該被検試料に含まれる生体成分を分析する解析部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体成分分析装置及び校正用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトを含む生体から採取された試料に含まれる生体成分を分析する分析装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、被験者の皮膚に形成された微細孔から抽出される組織液を収集したゲルに含まれるグルコース及び電解質の濃度を測定し、得られるグルコース濃度及び電解質濃度に基づいて、当該被験者の血糖―時間曲線下面積を測定する装置が開示されている。この装置の検出部又は測定部は、グルコースに作用するグルコース測定用電極と、電解質に作用する電解質測定用電極とを備えている。電解質濃度を測定するときには、電解質測定用電極によりゲルに電圧を印加して電流値を取得し、得られる電流値と電解質濃度との関係式に基づいて、組織液に含まれる電解質濃度を測定する。一方、グルコース濃度を測定するときには、グルコース測定用電極によりゲルに電圧を印加して電流値を取得し、得られる電流値とグルコース濃度との関係式に基づいてグルコース濃度を測定する。そして、特許文献1記載の装置は、このようにして測定されたグルコース濃度と電解質濃度とに基づいて被験者の血糖―時間曲線下面積を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/013808号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解質測定用電極においては、電極への析出物の付着や電極の酸化といった状態変化が生じることがある。特許文献1記載の装置は、ゲルに電圧を印加したときの微小な電流値に基づいて、ゲルに収集された組織液に含まれる微量の電解質濃度を測定する。そのため、電解質測定用電極に状態変化が生じると、電解質濃度の測定に誤差が生まれ、血糖−時間曲線下面積の算出結果の信頼性低下を招くおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、常に信頼性の高い分析結果を得ることができる生体成分分析装置及び校正用カートリッジを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面における生体成分分析装置は、被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置であって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、分析用の試薬が予め収容されているとともに生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジを選択的に装着可能な装着部と、
試料に含まれる成分を検出する検出部と、
前記校正用カートリッジに収容された既知濃度試料に含まれる成分を検出して得られる第1検出値に基づいて検量線を作成し、前記分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を検出して得られる第2検出値及び前記検量線に基づいて当該被検試料に含まれる生体成分を分析する解析部と
を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明の第1の局面における生体成分分析装置では、既知濃度試料を収容する校正用カートリッジを装置に装着することにより検量線を作成し、作成した検量線と、分析用カートリッジに収容される被検試料に含まれる生体成分を検出して得られる検出値とに基づいて、当該被検試料に含まれる生体成分を分析することができる。検出部における電極などのセンサが経時変化した場合であっても、カートリッジの装着により簡単に検量線を作成しなおすことができる。したがって、検出部に状態変化が生じた場合であっても、常に信頼性の高い生体成分の分析を行うことができる。
【0009】
前記校正用カートリッジに既知濃度試料を供給する供給部をさらに備えていることが好ましい。
【0010】
前記供給部は、前記装着部に装着された校正用カートリッジに、第1濃度の生体成分を含有する第1既知濃度試料、及び当該第1濃度より高濃度の第2濃度の生体成分を含有する第2既知濃度試料を供給するように構成することができる。
【0011】
前記供給部は、第1既知濃度試料を供給して当該第1既知濃度試料に含まれる成分が検出された後に、第2既知濃度試料を供給するように構成することができる。
【0012】
前記校正用カートリッジ及び前記分析用カートリッジの少なくとも一方に、カートリッジの種類を識別するための識別部が設けられており、
前記生体成分分析装置は、前記識別部を検知する検知部をさらに備えており、
前記解析部は、検知部の検知結果に基づいて、前記装着部に装着されたカートリッジの種類を判別し、装着部に装着されたカートリッジが校正用カートリッジであると判別した場合に、検量線を作成することが好ましい。
【0013】
前記解析部は、検知部の検知結果に基づいて、前記装着部に装着されたカートリッジが分析用カートリッジであると判別した場合に、当該分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を分析することが好ましい。
【0014】
前記校正用カートリッジが第1識別部を備え、前記分析用カートリッジが第1識別部と異なる第2識別部を備え、
前記解析部は、前記第1識別部が検知されたとき、装着部に装着されたカートリッジが校正用カートリッジであると判別し、前記第2識別部が検知されたとき、装着部に装着されたカートリッジが分析用カートリッジであると判別することが好ましい。
【0015】
前記識別部がカートリッジの表面に形成された凹部からなり、
前記検知部が、前記装着部に前記カートリッジが装着されたときに前記凹部に収容可能なスイッチを含んでおり、
前記解析部は、前記スイッチと前記カートリッジとの接触状態に基づいて、カートリッジの種類を判別するものとすることができる。
【0016】
前記校正用カートリッジは、所定強度の光が照射されると所定強度の光を出射する光学系確認部を含み、
前記検出部は、前記光学系確認部に光を照射する光源と、前記光学系確認部から出射される光を受光する受光部とを備え、
前記解析部は、前記受光部の受光量に基づいて、前記検出部の状態を確認するものとすることができる。
【0017】
前記検出部は、被検試料に含まれる第1生体成分を検出して前記第2検出値を出力する第1検出部と、前記被検試料に含まれる第2生体成分を検出して第3検出値を出力する第2検出部とを含んでおり、
前記解析部は、前記第2検出値と検量線とに基づいて被検試料に含まれる第1生体成分の量を取得し、前記第3検出値に基づいて被検試料に含まれる第2生体成分の量を取得し、被検試料に含まれる第1生体成分の量にと第2生体成分の量とに基づいて、被検試料が採取された被検者の体内の第2生体成分の量に関する情報を取得するように構成することができる。
【0018】
前記解析部は、第1生体成分の量として被検試料に含まれるイオン量を取得し、第2生体成分の量として当該被検試料に含まれるグルコース量を取得するものとすることができる。
【0019】
前記イオン量をナトリウムイオンの量とすることができる。
【0020】
本発明の第2の局面における生体成分分析装置は、被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置であって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、分析用の試薬が予め収容されているとともに生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジを選択的に装着可能な装着部と、
試料に含まれる成分を検出する検出部と、
前記校正用カートリッジに収容された既知濃度試料に含まれる成分を前記検出部によって検出することにより得られる第1検出値に基づいて、前記検出部を校正し、前記分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を校正された前記検出部によって検出することにより得られる第2検出値に基づいて、前記被検試料に含まれる生体成分を分析する解析部と
を備えたことを特徴としている。
【0021】
本発明の第3の局面における生体成分分析装置は、被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置であって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジを選択的に装着可能な装着部と、
前記装着部に装着された校正用カートリッジに既知濃度試料を供給可能に構成された供給部と、
試料に含まれる成分を検出する検出部と、
前記装着部に装着された校正用カートリッジに既知濃度試料を供給するように前記供給部を制御し、前記校正用カートリッジに供給された既知濃度試料に含まれる成分を検出するように前記検出部を制御し、前記検出部によって得られる検出値に基づいて検量線を作成する解析部と
を備えたことを特徴としている。
【0022】
本発明の第3の局面における生体成分分析装置によれば、既知濃度試料を供給する供給部を備えることにより、校正用カートリッジに予め既知濃度試料を収容させておく必要がない。したがって、校正用カートリッジを再利用することができる。
【0023】
本発明の第4の局面における校正用カートリッジは、分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を検量線を用いて分析可能に構成された生体成分分析装置に着脱可能に装着され、前記検量線を作成するのに用いられる校正用カートリッジであって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容する収容部と、
カートリッジの種類を識別するための識別部と
を備えたことを特徴としている。
【0024】
前記識別部は、カートリッジの表面に形成された凹部からなるものとすることができる。
【0025】
前記凹部は、矩形状のカートリッジの長辺の縁部に形成された切り欠きであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の生体成分分析装置及び校正用カートリッジによれば、常に信頼性の高い分析結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の生体成分分析装置の一実施の形態の外観を示す斜視説明図である。
【図2】生体成分分析装置のタンクの概略断面図である。
【図3】生体成分分析装置の流体回路図である。
【図4】本発明に係る生体成分分析方法において用いられる組織液収集シートの斜視説明図である。
【図5】図4に示される組織液収集シートの断面説明図である。
【図6】(a)は本発明の生体成分分析装置に用いられる分析用カートリッジの一例の平面図であり、(b)は図6(a)に示される分析用カートリッジから光導波部材及びグルコース反応体を取り除いた状態の分析用カートリッジの平面図であり、(c)は分析用カートリッジをA方向からみた側面図である。
【図7】(a)は図6に示される分析用カートリッジのB−B線断面図であり、(b)は同C−C線断面図である。
【図8】図6に示される分析用カートリッジの底面図である。
【図9】(a)は本発明の校正用カートリッジの一実施の形態の平面図であり、(b)は図9(a)の光学系確認部を取り除いた状態の校正用カートリッジの平面図であり、(c)は校正用カートリッジをD方向からみた側面図である。
【図10】図9に示される校正用カートリッジのE−E線断面図である。
【図11】図9に示される校正用カートリッジの底面図である。
【図12】図1に示される生体成分分析装置に分析用カートリッジを装着した状態の断面説明図である。
【図13】図1に示される生体成分分析装置に校正用カートリッジを装着した状態の断面説明図である。
【図14】本発明に係る生体成分分析方法のフローチャートである。
【図15】分析処理のフローチャートである。
【図16】検量線作成処理のフローチャートである。
【図17】測定濃度に対する干渉イオンの影響を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の生体成分分析装置及び校正用カートリッジの実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
〔生体成分分析装置〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体成分分析装置20の外観の斜視説明図である。この生体成分分析装置20は、後述する収集体12に収集された組織液に含まれるグルコースの濃度及びナトリウムイオンの濃度に基づいて、被検者の血糖―時間曲線下面積(血糖AUC)を測定する装置である。生体成分分析装置20は、装着部22と、検出部30と、解析部を含む制御部35と、供給部24と、測定結果やエラーメッセージなどを表示する表示部33と、測定開始の指示などを行うための操作ボタン34とを主に備えている。
【0030】
生体成分分析装置20は、厚みのある直方体形状の筐体を備えており、筐体上面の天板には凹部21が形成されている。凹部21には、凹部21よりもさらに深く形成された凹部からなる装着部22が設けられている。さらに凹部21には、凹部21の側壁の高さとほぼ同じ厚みを有する可動天板23が連結されている。可動天板23は、支軸23aを中心に折り畳むことによって、図1に示される状態から凹部21内に収納し、又は凹部21に収納された状態から図1に示されるように起立させることができる。装着部22は、後述する分析用カートリッジ40及び校正用カートリッジ50を選択的に収納(装着)することができる大きさを有している。
【0031】
可動天板23は、凹部21に収納される方向に付勢されるように、支軸23aに支持されている。したがって、装着部22に配置された分析用カートリッジ40又は校正用カートリッジ50は、可動天板23によって上方から押さえつけられる。可動天板23の裏面23bには、装着部22に装着されたカートリッジの種類を識別するとともに、カートリッジが正しく装着されているか否かを検知するための検知部を構成する2本のピン状のスイッチ60a、60bが裏面23bから突出するように設けられている。これらのスイッチ60a、60bは、可動天板23の裏面23bから離れる方向に付勢されるとともに、裏面23bに近づく方向に押圧されることで可動天板23内に収納されるように構成されている。
【0032】
検出部30は、収集体12に収集された組織液に含まれる成分を検出するものであり、グルコース検出部31と、ナトリウムイオン検出部32とを備えている。
【0033】
グルコース検出部31は、可動天板23の裏面23b、すなわち可動天板23が凹部21に収納されたときに装着部22と対向する側の面に設けられている。グルコース検出部31は、光を照射するための光源31aと、この光源31aによって照射された光の反射光を受光するための受光部31bとを備えている。これにより、グルコース検出部31は、装着部22に配置された分析用カートリッジ40に対して光を照射するとともに、照射された分析用カートリッジ40からの反射光を受光できるように構成されている。分析用カートリッジ40は、生体から収集された組織液中のグルコースと化学反応して変色する試薬からなるグルコース反応体41を含んでいる。グルコース検出部31は、グルコース反応体41の変色による吸光度の変化を反射光量に基づいて検出し、反射光量からグルコースを定量することが可能である。
【0034】
ナトリウムイオン検出部32は、装着部22の底面に設けられている。ナトリウムイオン検出部32は、装着部22の底面に設けられた長方形状を有する板状の部材を備え、この板状部材の略中央には一対のナトリウムイオン濃度測定用電極が設けられている。ナトリウムイオン濃度測定用電極は、ナトリウムイオン選択膜を備えた銀/塩化銀からなるナトリウムイオン選択性電極と、対電極である銀/塩化銀電極とを含んでいる。ナトリウムイオン検出部32は、これらの電極が試料に満たされた状態で電極間に一定の電流を印加し、そのときの電圧を検出値として制御部35に出力する。
【0035】
このナトリウムイオン検出部32は、数十mVの微小な電圧値を読み取って検出値として出力する。制御部35は、このような微小な検出値(電圧値)に基づいて、回収液中に数mMの濃度で含まれる微量のナトリウムイオンの濃度を測定する。そのため、電極表面に僅かでも状態変化が生じると、検出値(電圧値)が相対的に大きく変動し、ナトリウムイオン濃度の測定誤差が生まれる可能性がある。状態変化とは、例えば電極表面に析出物が付着することや電極の酸化が挙げられる。そこで、本実施の形態の生体成分分析装置20は、校正用カートリッジ50を装着部22に装着することにより検量線を作成し、作成された検量線に基づいてナトリウムイオン濃度を測定できるように構成した。これにより、ナトリウムイオン検出部32に状態変化が生じたとしても、常に信頼性の高い血糖AUCの分析結果を得ることが可能となる。
【0036】
制御部35は、生体成分分析装置20の内部に設けられており、解析部であるCPUや、記憶部であるROM、RAMなどを含んでいる。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の動作を制御する。また、後述するように、校正用カートリッジ50に収容された既知濃度試料に含まれる成分を検出して得られる検出値に基づいて検量線を作成し、分析用カートリッジ40に収容された被検試料に含まれる生体成分を検出して得られる検出値及び検量線に基づいて被検試料に含まれる生体成分を分析する。RAMは、ROMに記憶されたプログラムが実行される際のプログラムの展開領域として利用される。
【0037】
生体成分分析装置20は、その内部にポンプからなる供給部24、高濃度食塩水を収容するタンク27、低濃度食塩水を収容するタンク28、純水を収容するタンク29、及び廃液タンク25を備えている。供給部24は、タンク27〜29に収容された液体を、装着部22に配置された校正用カートリッジ50又は分析用カートリッジ40に送液するための機構であり、ニップル24aを介して、装着部22に配置された校正用カートリッジ50又は分析用カートリッジ40にタンク26内に収容されている液体を注入する。タンク29に収容された純水は、分析用カートリッジ40に収容された収集体12に含まれる組織液の回収及び装置内の洗浄に用いられる。タンク27及びタンク28に収容された高濃度食塩水及び低濃度食塩水は、検量線を作成する際に使用される。廃液タンク25は、その上部が大気開放された容器からなり、ニップル25aを介して校正用カートリッジ50又は分析用カートリッジ40から排出された液体を貯留する。
【0038】
生体成分分析装置20の筐体の上面には、蓋37が設けられている。この蓋37を開くと、開口を介して装置内部のタンク27〜29及び廃液タンク25が露出する。タンク27〜29及び廃液タンク25は、開口を介して取り出すことが可能である。空になった使用済みのタンク27〜29は、新たなタンクと交換される。また、廃液タンク25を取り出すことにより、廃液タンク25に溜まった廃液を廃棄することができる。
【0039】
図2は、タンク27と生体成分分析装置20の接続状態を示す概略断面図である。タンク27〜29は同じ構成であるため、ここではタンク27を例に挙げて説明する。タンク27は、合成樹脂からなる容器27aと、容器27aの底部に設けられたゴム製のOリング27cおよび27dと、Oリング27c及び27dの開口を塞ぐフィルム27eと、容器27aに収容された高濃度食塩水27bとを備える。
【0040】
一方、生体成分分析装置20の内部には、供給部24から廃液タンク25に至るパイプからなる流路FPが設けられている。この流路FPは、供給部24側から供給された空気をタンク27に注入するための第1ニップルANと、タンク27から押し出された高濃度食塩水を流路FPに導入するための第2ニップルLNとを備えている。
【0041】
タンク27を装着する際には、筐体上面の蓋37を開き、第1ニップルANと第2ニップルLNを露出させる。タンク27のフィルム27eを下に向けて開口内部に挿入し、第1ニップルAN及び第2ニップルLNがフィルム27eを突き破ってOリング27c及び27dを貫通するまでタンク27を押し込み、装着が完了する。タンク27が装着された状態で供給部24から空気が供給されると、図中に矢印で示したように、第1ニップルANを介して空気がタンク27に送り込まれる。タンク27に送り込まれた空気は、容器27a内部の高濃度食塩水27bを押し出し、押し出された高濃度食塩水27bは第2ニップルLNを介して流路FPに流入し、廃液タンク25側に向けて移送される。
【0042】
タンク27〜29のそれぞれの収容量は100mLである。収集体12からの組織液の回収に使用される純水の量は約1mLであり、タンク27に収容された純水を使用して約100回の組織液の回収が可能である。また、1回の検量線の作成に使用される高濃度食塩水及び低濃度食塩水の量はそれぞれ約1mLであり、タンク28及び29に収容された高濃度及び低濃度食塩水を使用して約100回の検量線作成が可能である。
【0043】
タンク27に収容された高濃度食塩水及びタンク28に収容された低濃度食塩水は、既知濃度のナトリウムイオンを含有する食塩水からなる。低濃度食塩水のナトリウムイオン濃度(X0)は、例えば0.5〜1.0mMの範囲内で決定される濃度からなり、好ましくは0.75mMである。高濃度食塩水のナトリウムイオン濃度(X1)は、例えば3.0〜10.0mMの範囲内で決定される濃度からなり、好ましくは7mMである。濃度(X0)及び濃度(X1)は、予め制御部35の記憶部に記憶されている。
【0044】
図3は、生体成分分析装置20の流体回路を示す図である。生体成分分析装置20は、上述した供給部24、タンク27〜29、ニップル24a、ニップル24b及び廃液タンク25に加え、電磁弁V1〜V10を備えている。電磁弁V1〜V4は、流路の開閉を切り替える機能を有する。電磁弁V5〜V10は三方弁で構成されている。これらのうち、電磁弁V5〜V8及びV10は、2つの流入口と1つの流出口を備え、流入口を切り替えることにより流路を切り替える機能を有する。電磁弁V9は、1つの流入口と2つの流出口を備え、流出口を切り替えることにより流路を切り替える機能を有する。
【0045】
供給部24は、電磁弁V1〜V3を介してタンク27〜29に接続されている。
タンク27は、電磁弁V8及びV9を介してニップル24aに接続されている。また、タンク27は、電磁弁V8、V9、及びV10を介して廃液タンク25に接続されている。タンク28は、電磁弁V7、V8、V9を介してニップル24aに接続されている。また、タンク28は、電磁弁V7、V8、V9及びV10を介して廃液タンク25に接続されている。タンク29は、電磁弁V5、V6、V7、V8及びV9を介してニップル24aに接続されている。また、タンク29は、電磁弁V5、V6、V7、V8、V9及びV10を介して廃液タンク25に接続されている。
【0046】
さらに、供給部24は、電磁弁V4、V5、V6、V7、V8及びV9を介してニップル24aに接続されている。また、供給部24は、電磁弁V4、V5、V6、V7、V8、V9、及びV10を介して廃液タンク25に接続されている。
【0047】
生体成分分析装置20の制御部35は、これら電磁弁V1〜V10及び供給部24を制御することにより、高濃度食塩水供給処理、低濃度食塩水供給処理、純水供給処理、洗浄処理、及び送液処理の5通りの処理を実行可能である。各処理の詳細について説明する。
【0048】
〈高濃度食塩水供給処理〉
この処理は、装着部22に装着された校正用カートリッジ50に高濃度食塩水を供給するときに実行される処理である。この処理では、まず電磁弁V1によって、電磁弁V1を経由して供給部24からタンク27に至る流路が開放される。さらに、電磁弁V8によって、電磁弁V8及びV9を経由してタンク27からニップル24aに至る流路が開放される。さらに、電磁弁V10によって、電磁弁V10を経由してニップル25aから廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、タンク27からニップル24aに向かって高濃度食塩水が供給される。
【0049】
〈低濃度食塩水供給処理〉
この処理は、装着部22に装着された校正用カートリッジ50に低濃度食塩水を供給するときに実行される処理である。この処理では、まず電磁弁V2によって、電磁弁V2を経由して供給部24からタンク28に至る流路が開放される。さらに、電磁弁V7、V8及びV9によって、電磁弁V7、V8及びV9を経由してタンク28からニップル24aに至る流路が開放される。さらに、電磁弁V10によって、電磁弁V10をニップル25aから廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、タンク28からニップル24aに向かって低濃度食塩水が供給される。
【0050】
〈純水供給処理〉
この処理は、収集体12に収集された組織液を回収するために、装着部22に装着された分析用カートリッジ40に純水を供給するときに実行される処理である。分析用カートリッジ40の分析においては、後述するように、ゲル12に含まれる組織液を純水によって回収し、回収した組織液中の成分を検出して成分濃度を測定する。測定条件を均一にするために、組織液の回収のために純水を供給するときは、純水を一定量だけ定量して分析用カートリッジ40に供給する。この処理について具体的に説明する。
【0051】
この処理では、まず電磁弁V3によって、電磁弁V3を経由して供給部24からタンク29に至る流路が開放される。さらに、電磁弁V5、V6、V7及びV8によって、電磁弁V5〜V8を経由してタンク29から電磁弁V9に至る流路が開放される。さらに、電磁弁V9によって、電磁弁V9−V10間の流路が開放される。さらに、電磁弁V10によって、電磁弁V10から廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、分析用カートリッジ40を経由せずに、タンク28から廃液タンク25に向かって純水が移送される。同時に、電磁弁V5−V6間の流路が純水によって満たされる。電磁弁V5−V6間の流路は、組織液の回収に必要な所定量の純水を収容可能な容積を有している。ついで、電磁弁V3が閉じ、電磁弁V4が開き、電磁弁V6の流入口が切り替えられる。これにより、電磁弁V4、V6、V7、V8、V9及びV10によって、電磁弁V5−V6間を経由せずに供給部24から廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、電磁弁V6の下流にある余分な純水が廃液タンク25に移送される。ついで、電磁弁V5の流入口が切り替えられ、電磁弁5を経由して電磁弁V4から電磁弁V6に至る流路が開放される。さらに、電磁弁V9の流出口が切り替えられ、電磁弁V9を経由して電磁弁V8からニップル24aに至る流路が開放される。さらに、電磁弁V10の流入口が切り替えられ、電磁弁V10を経由してニップル25aから廃液タンク25に至る流路が開放される。したがって、これら電磁弁V5、V9及びV10の流路切替によって、電磁弁V4、V5、V6、V7、V8、V9を経由して、供給部24からニップル24aに至る流路が開放される。さらに、電磁弁V10によってニップル25aから廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、電磁弁V5−V6間の流路内の純水がニップル24aに向かって移送される。これにより、所定量の純水が分析用カートリッジ40に供給される。
【0052】
〈洗浄処理〉
この処理は、装着部22に装着された校正用カートリッジ50に純水を供給し、カートリッジ内部の流路を洗浄するときに実行される処理である。この処理では、まず電磁弁V3によって、電磁弁V3を経由して供給部24からタンク29に至る流路が開放される。さらに、電磁弁V5、V6、V7、V8及びV9によって、電磁弁V5〜V10を経由してタンク29からニップル24aに至る流路が開放される。さらに、電磁弁V10によって、電磁弁V10を経由してニップル25aから廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、タンク29からニップル24aに向かって純水が供給される。ニップル24aに供給された純水は、校正用カートリッジ50の内部を通過し、ニップル25aを介して廃液タンク25に流れる。
【0053】
〈送液処理〉
この処理は、装着部22に装着された分析用カートリッジ40に空気を供給し、分析用カートリッジ40内部に収容された液体を下流に送液するときに実行される処理である。この処理では、まず電磁弁V4、V6、V7、V8及びV9によって、タンク27〜29を経由せずに供給部24からニップル24aに至る流路が開放される。さらに、電磁弁V10によってニップル25aから廃液タンク25に至る流路が開放される。この状態で供給部24から空気が送出されると、供給部24から送出された空気がニップル24aからカートリッジ内部に送り込まれ、カートリッジ内部の液体が下流に向かって移送される。
【0054】
かかる生体成分分析装置20においては、図1において、一点鎖線で示されるように、被験者の皮膚から取り外された組織液収集シート10は分析用カートリッジ40の所定箇所に貼り付けられ、この分析用カートリッジ40が生体成分分析装置20の装着部22に配置される。生体成分分析装置20は、装着部22に配置された分析用カートリッジ40及びこれに貼付された組織液収集シート10に対する所定の分析処理を実行し、組織液収集シート10の収集体12に収集された組織液中のグルコース濃度及びナトリウムイオン濃度を取得する。
【0055】
〔組織液収集シート〕
つぎに被験者の皮膚から組織液を収集するために被験者の皮膚に貼付され、所定時間経過後に皮膚から剥がされる組織液収集シート10について説明する。
図4は、保持シート11と、この保持シート11に保持された収集体12とを備えた組織液収集シート10の斜視説明図であり、図5は、図4のF−F線断面図である。
【0056】
収集体12は、被験者の皮膚から抽出した組織液を保持可能な保水性を有するゲルからなっている。ゲルは、抽出媒体としてカリウムイオンを含む純水を含有している。このゲルは、組織液を収集することが可能であれば特に限定されないが、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも一種の親水性ポリマーから形成されたゲルが好ましい。
【0057】
収集体12は、図4〜5に示される例では直方体形状を呈しており、皮膚と当接する面のサイズは7mm×12mmである。ただし、収集体12の形状及びサイズは、これに限定されるものではない。
【0058】
保持シート11は、小判形状のシート本体11aと、このシート本体11aの片面に形成された粘着剤層11bとで構成されており、粘着剤層11bが形成された側の面が粘着面とされている。収集体12は、同じく小判形状の、台紙としても機能する剥離シート13のほぼ中央に配設されており、この収集体12を覆うように保持シート11が剥離シート13に貼付されている。収集体12は、保持シート11の粘着面の一部によって保持シート11に保持されている。保持シート11の面積は、組織液収集時における収集体12の乾燥を防ぐために、収集体12を覆うことが可能な大きさを有している。すなわち、保持シート11によって収集体12を覆うことにより、組織液収集時に皮膚と保持シート11との間を気密に保つことができ、組織液収集時に収集体12に含まれる水分が蒸発するのを抑制することができる。
【0059】
保持シート11のシート本体11aは、無色透明又は有色透明であり、シート本体11aの表面側(粘着剤層11bと反対側の面)から、保持シート11に保持されている収集体12を目視にて容易に確認することができる。シート本体11aは、組織液の蒸発や収集体の乾燥を防ぐため透湿性が低いものが好ましい。シート本体11aの材質としては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルムなどが挙げられ、その中でもポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムが好ましい。シート本体11aの厚さは、特に限定されないが、概ね0.025〜0.5mm程度である。
【0060】
組織液収集シート10は、収集体12が被験者の微細孔形成領域(組織液の抽出を促進させるために適宜の微細孔形成手段によって被験者の皮膚に複数の微細孔が形成された領域)に配置されるように、保持シート11の粘着面によって被験者の皮膚に貼付される。そして、収集体12を微細孔形成領域に配置した状態で所定時間、例えば60分以上、好ましくは180分以上放置することにより、微細孔を介して抽出される組織液を収集体12に収集する。
【0061】
〔分析用カートリッジ〕
つぎに生体成分分析装置20の装着部22に装着される分析用カートリッジ40について詳細に説明する。
【0062】
図6の(a)は生体成分分析装置20に用いられる分析用カートリッジ40の一例の平面図であり、(b)は図6(a)に示される分析用カートリッジ40から光導波部材70およびグルコース反応体41を取り除いた状態の分析用カートリッジ40の平面図であり、(c)は分析用カートリッジ40をA方向からみた側面図であり、図7の(a)は図6に示される分析用カートリッジ40のB−B線断面図であり、(b)は同C−C線断面図である。また、図8は図6に示される分析用カートリッジ40の底面図である。
【0063】
分析用カートリッジ40は、矩形状の薄板からなっており、アクリル樹脂などの合成樹脂で作製されている。分析用カートリッジ40の表面側には、図6(a)に示されるようにゲル収容部42、第2貯留部43、光導波部材70及びグルコース反応体41が設けられている。裏面側には、図8に示されるように第1貯留部44が設けられている。
【0064】
ゲル収容部42は、被験者の皮膚から抽出された組織液を収集したゲルからなる収集体12が配置される部分であり、収集体12は、保持シート11の粘着面に保持された状態でゲル収容部42に配置される。すなわち、貼付してから所定時間経過後に被験者の皮膚から剥がされた保持シート11は、収集体12がゲル収容部42に位置するように、分析用カートリッジ40の表面に貼付される。その際、保持シート11は無色透明又は有色透明な材質で作製されているので、収集体12を正確にゲル収容部42の所定箇所に配置することができる。
【0065】
ゲル収容部42は矩形状の凹所からなっており、この凹所内には、凹所内に供給される純水の流れを妨げる緩衝壁45a、45bが形成されている。収集体12は、この緩衝壁45a、45bの上縁に載るようにゲル収容部42に配置される。ゲル収容部42の4つの隅部のうちの一隅部には、貫通孔46が形成されており、この一隅部と対角線上にある他の隅部には、裏面側に設けられた第1貯留部44と縦流路47a(図7参照)を介して連通する横流路47bが形成されている。貫通孔46は、分析用カートリッジ40が装着部22に装着されたときに、供給部24に接続されたニップル24aと連通する位置に形成されている。
【0066】
第2貯留部43は、矩形状の第1凹所43aと、この第1凹所43aのほぼ中央に設けられており、第1凹所43aよりも深い第2凹所43bとからなっている。この第2凹所43bの4つの隅部のうちの一隅部には、裏面側に設けられた第1貯留部44と連通する縦流路48(図7参照)が形成されており、この一隅部と対角線上にある他の隅部には貫通孔49が形成されている。貫通孔49は、廃液タンク25に接続されたニップル25aと連通可能な位置に形成されている。
【0067】
第2貯留部43の第1凹所43aの開放面は、光導波部材70で閉止されている(図12参照)。光導波部材70は、内部に光導波路が形成された透光性を有する部材からなる。光導波部材70に光が照射されると、照射された光が内部の光導波路において反射を繰り返して外部に出射するように構成されている。この光導波部材70の裏面に、グルコース測定試薬であるグルコース反応体41が設けられている。このグルコース反応体41は、GOD、H、PODおよび発色色素を含んでいる。グルコース反応体41は、組織液に含まれるグルコースと下記の化学反応を生じ、反応量に応じて変色する。
グルコース+O+HO→(GODによる触媒)→グルコン酸+H
+発色色素→(PODによる触媒)→2HO+発色色素(酸化・発色)
【0068】
グルコース検出部31は、このようなグルコース反応体41の変色度合いを検出し、検出信号を出力する。具体的には、グルコース検出部31は、光源31aから光導波部材70に向かって光を照射し、光導波部材70から出射した光を受光部31bによって受光する。光源31aから光が照射されると、光は、変色したグルコース反応体41により吸光されながら、光導波部材44の内部で反射を繰り返して受光部31bに入射する。したがって、受光部31bにおける受光量は、グルコース反応体41の変色度合い、ひいては回収液中のグルコース量に比例する。グルコース検出部31bは、受光量に応じた検出信号を制御部35に出力するように構成されている。制御部35は、検出信号に含まれる受光量と、予め制御部35の記憶部に記憶されている検量線とに基づいて、グルコース濃度を取得するように構成されている。
【0069】
第1貯留部44は、図8に示されるように、円形の凹所からなり、この凹所内には円形の第1凸部44a及び円形の第2凸部44bが設けられている。これら第1凸部44a及び第2凸部44bは、流入した液体の流れを変えることにより第1貯留部44全体に液体を行き渡らせる。
【0070】
第1凸部44a側の周縁には、上述の縦流路47aを介してゲル収容部42と連通する第1横流路44cが径外方向に形成されている。第2凸部44b側の周縁には、上述の縦流路48を介して第2貯留部43と連通する第2横流路44dが径外方向に形成されている。
【0071】
このように、分析用カートリッジ40には、貫通孔46、ゲル収容部42、横流路47b、縦流路47a、第1横流路44c、第1貯留部44、第2横流路44d、縦流路48、第2貯留部43、及び貫通孔49からなる液体の流路が形成されており、この流路によって、ニップル24aとニップル25aとが連通されるように構成されている。
【0072】
また、分析用カートリッジ40の表面、より詳細には矩形状のカートリッジの長辺の縁部には、カートリッジの種類を識別するための識別部である半円状の切り欠き40aが形成されている。この切り欠き40aは、分析用カートリッジ40を生体成分分析装置20の装着部22に装着して可動天板23を閉じたときに、可動天板23の裏面23bに設けられたピン状のスイッチ60bが対応する位置に形成されている。切り欠き40aは、可動天板23が閉じられたときに、ピン状のスイッチ60bの先端が接触しないような深さにされている。
分析用カートリッジ40は使い捨て可能であり、分析終了後に装着部22から取り外され、ゲル収容部42に収容されたゲルとともに廃棄される。
【0073】
〔校正用カートリッジ〕
つぎに生体成分分析装置20の装着部22に装着される校正用カートリッジ50について詳細に説明する。
図9の(a)は生体成分分析装置20に用いられる校正用カートリッジ50の一例の平面図であり、(b)は図9(a)の光学系確認部80を取り除いた状態の校正用カートリッジ50の平面図であり、(c)は校正用カートリッジ50をD方向からみた側面図であり、図10は図9に示される校正用カートリッジ50のE−E線断面図であり、図10は図9に示される校正用カートリッジ50の底面図である。
【0074】
校正用カートリッジ50は、上述の分析用カートリッジ40と同じサイズの矩形状の薄板からなっており、アクリル樹脂などの合成樹脂で作製されている。校正用カートリッジ50の表面側には、図9(a)に示されるように屈曲した横流路51、第2貯留部53、及び光学系確認部80が設けられている。図9(a)では分かり易くするために図示を省略しているが、横流路51の開口は、液漏れを防ぐためにシールによって塞がれている。裏面側には、図11に示されるように第2貯留部54が設けられている。校正用カートリッジ50には、分析用カートリッジ40と異なり、ゲルを収容するためのゲル収容部は設けられていない。
【0075】
横流路51の一端には貫通孔56が形成されており、他端には、貯留部54と連通する縦流路57(図10参照)が接続されている。貫通孔56は、校正用カートリッジ50が装着部22に装着されたときに、供給部24に接続されたニップル24aと連通する位置に形成されている。
【0076】
第2貯留部53は、分析用カートリッジ40の第2貯留部43と同様に、矩形状の第1凹所53aと、この第1凹所53aのほぼ中央に設けられており、第1凹所53aよりも深い第2凹所53bと備える。この中央の第2凹所53bの4つの隅部のうちの一隅部には、裏面側に設けられた第1貯留部54と連通する縦流路58(図10参照)が形成されており、この一隅部と対角線上にある他の隅部には貫通孔59が形成されている。貫通孔59は、廃液タンク25に接続されたニップル25aと連通する位置に形成されている。
【0077】
光学系確認部80は、第1凹所53aの開放を閉止するように設けられている(図13参照)。この光学系確認部80は、上述の光導波部材70と同じく、内部に光導波路が形成された透光性を有する部材で作製されている。光学系確認部80にグルコース検出部31の光源31aから所定強度の光が照射されると、照射された光が導波路の内部で反射を繰り返し、所定強度の光を出射するように構成されている。このような構成の光学系確認部80を用いて、光源31a及び受光部31bが正常に動作しているか否かの確認が行われる。校正用カートリッジ50の光学系確認部80の裏面には、分析用カートリッジ40とは異なりグルコース反応体41が設けられていない。
【0078】
貯留部54は、図11に示されるように、円形の凹所からなり、この凹所内には円形の凸部54aが配設されている。この凸部54aは流入した液体の流れを変えることにより、貯留部54全体に液体が行き渡るようにする機能を有する。
【0079】
貯留部54を構成する凹所の周縁には、上述の縦流路57を介して横流路51と連通する第1横流路54cが径外方向に形成されている。一方、第1横流路54cの反対側には、上述の縦流路58を介して光学系確認部53と連通する第2横流路54dが径外方向に形成されている。
【0080】
校正用カートリッジ50には、上述の貫通孔56、横流路51、縦流路57、貯留部54、縦流路58、光学系確認部53、及び貫通孔59からなる液体の流路が形成されており、この流路によって、ニップル24aとニップル25aとが連通可能にされている。
【0081】
また、校正用カートリッジ50の表面、より詳細には矩形状のカートリッジの長辺の縁部には、上述の分析用カートリッジ40と同様に、カートリッジの種類を識別するための識別部である半円状の切り欠き50aが形成されている。この切り欠き50aは、校正用カートリッジ50を生体成分分析装置20の装着部22に装着して可動天板23を閉じたときに、可動天板23の裏面23bに設けられたピン状のスイッチ60aが対応する位置に形成されている。切り欠き50aの深さは、可動天板23が閉じられたときに、ピン状のスイッチ60aの先端が接触しないような深さに設定されている。
【0082】
校正用カートリッジ50の切り欠き50aと分析用カートリッジ40の切り欠き40aとは、図6及び図9より分かるように、カートリッジの長手方向において異なる位置に形成されている。より具体的には、校正用カートリッジ50の切り欠き50aは、分析用カートリッジ40の切り欠き40aよりも、カートリッジ長辺における中央に近い位置に設けられている。
【0083】
校正用カートリッジ50は、検量線作成が終了した後に装着部22から取り外され、再利用される。本実施の形態では、上述のとおり、生体成分分析装置20に供給部24及びタンク27〜29を設けたため、校正用カートリッジ50には、低濃度食塩水及び高濃度食塩水からなる消耗品は収容されていない。そのため、本実施形態の校正用カートリッジ50は再利用可能である。
【0084】
〔分析フロー〕
つぎに生体成分分析装置20を用いた生体成分の分析フローについて説明する。
図14は、生体成分分析装置20の制御部35によって実行される処理の流れを示すフローチャートであり、図15は検量線作成処理のフローチャートであり、図16は分析処理のフローチャートである。
【0085】
まず、制御部35による処理に先立って、ユーザにより生体成分分析装置20の可動天板23が起立され、ついで露出した装着部22に分析用カートリッジ40又は校正用カートリッジ50が装着され、その後可動天板23が閉じられる。
【0086】
ステップS1において、制御部35はユーザにより測定開始ボタン34が押下されたか否かが判断する。制御部35は、測定開始ボタン34が押下されたと判断すると、ステップS2へ処理を進める。
【0087】
ついで、ステップS2において、制御部35はカートリッジが正しく装着されたか否かを判断する。本実施の形態では、分析用カートリッジ40及び校正用カートリッジ50に識別部である切り欠き40a、50aが形成されており、これら切り欠き40a、50aはカートリッジの長手方向において互いに異なる位置に形成されている。また、生体成分分析装置20の可動天板23の裏面には、各切り欠き40a、50aに対応してピン状のスイッチ60a、60bが設けられている。したがって、本実施の形態では、分析用カートリッジ40又は校正用カートリッジ50が正しく装着部22に装着されたとき、ピン状のスイッチ60a、60bのうちの一方がカートリッジの表面により押圧されて可動天板23内に退避させられる。これにより、スイッチ60aが押圧され且つスイッチ60bが押圧されないときは、分析用カートリッジ40が装着されたと判断することができ、また、スイッチ60bが押圧され且つスイッチ60aが押圧されないときは、校正用カートリッジ50が装着されたと判断することができる。
【0088】
このように、カートリッジにより異なる位置に切り欠きを形成し、各切り欠きに対応してスイッチを設けたことにより、装着されたカートリッジの種類を識別するとともに装着部22にカートリッジが正しく装着されたか否かを判断することができる。具体的には、カートリッジを上下逆に、又は裏表を逆に装着して可動天板23を閉じると、スイッチ60a、60bの両方が押圧される。また、カートリッジを装着するのを忘れて可動天板23を閉じると、スイッチ60a、60bはいずれも押圧されない。こうして、スイッチ60a、60bの両方が押圧された場合、及び、スイッチ60a、60bのいずれも押圧されない場合は、カートリッジが正しく装着されていない(装着部22にカートリッジが全く装着されていない場合も含む)と判断することができる。
【0089】
ステップS2において、制御部35は、装着部22にカートリッジが正しく装着されていないと判断すると、ステップS3において、エラーメッセージが表示部33に表示される。ステップS2において、制御部35は、カートリッジが正しく装着されていると判断すると、ステップS4へ処理を進め、ステップS4において、制御部35は、さらに装着されたカートリッジが分析用カートリッジであるか否かの判断を上述のようにして行なう。
【0090】
ステップS4において、制御部35は、装着部22に装着されたカートリッジが分析用カートリッジ40であると判断すると、ステップS5へ処理を進め、ステップS5において、後述する分析処理を行う。一方、ステップS4において、制御部35は、装着部22に装着されたカートリッジが分析用カートリッジ40ではない、すなわち校正用カートリッジであると判断すると、ステップS7へ処理を進め、ステップS7において、後述する検量線作成処理を行う。
【0091】
ステップS5において分析処理が終了すると、制御部35は、ステップS6において分析結果を表示部33に表示する。
一方、ステップS7において検量線作成処理が終了すると、制御部35は、ステップS8において、グルコース検出部31の光源31a及び受光部31bの動作確認を行う。具体的には、グルコース検出部31の光源31aから光学系確認部53にも受けられた所定の反射率を有する光学系確認部80に所定強度の光を照射し、受光部31bによって光学系確認部80から出射した光を受光する。グルコース検出部31は、受光量に応じた検出信号を制御部35に出力する。制御部35は、ステップS9−1において、検出信号に含まれる受光量が所定範囲内であるか否かを判断する。光学系確認部80は、所定強度の光が照射されたとき、所定強度の光を出射するように構成されているから、受光部31bにおいて受光した光量が所定範囲内でないときには、光源31aによる照射光強度が正常でないか、又は受光部31bの受光感度が正常でないかのいずれかの異常が考えられる。制御部35は、所定範囲内の光量が受光された場合には処理を終了する。制御部35は、所定範囲内の光量が受光されない場合には、ステップS9−2へ処理を進め、ステップS9−2において、表示部33にエラーメッセージを表示させる。
[分析処理]
図15はステップS5における分析処理のフローチャートである。また、図12は生体成分分析装置20に分析用カートリッジ40が装着された状態の断面説明図である。なお、図12及び後出する図13では、分かり易くするために、ゲル収容部や第1貯留部及び第2貯留部などの形状やサイズを誇張して描いている。
【0092】
まず、ステップS10において、制御部35は、上述の純水供給処理を実行し、所定量の純水を分析用カートリッジ40のゲル収容部42に供給する。
【0093】
ついで、ステップS11において、制御部35は、分析用カートリッジ40への所定量の純水の供給が終了してから所定時間(例えば、10分間)が経過したか否かの判断を行なう。制御部35は、分析用カートリッジ40へ純水が供給されてから所定時間(例えば、10分間)が経過したと判断すると、ステップS12へ処理を進める。所定時間の間に収集体(ゲル)12が純水に浸されて、ゲルに含まれる被験者の皮膚から抽出された組織液が純水によって回収される。ここでいう組織液の回収とは、純水に組織液を拡散させることを意味する。
【0094】
ついで、ステップS12において、制御部35は、上述の送液処理を実行して、空気を分析用カートリッジ40に送り、ゲル収容部42に収容されている液体を第1貯留部44及び第2貯留部43に送液する。これにより、第2貯留部43において液体に含まれるグルコースとグルコース反応体41とが反応し、グルコース反応体41が変色する。
【0095】
ついで、ステップS13において、ナトリウムイオン検出部32で一対のナトリウムイオン濃度測定用電極間の電圧vが測定される。ナトリウムイオン検出部32は、電圧vに応じた検出信号を制御部35に出力する。さらに、グルコース検出部31の光源31aによって、光導波部材70に光が照射され、光導波部材70から出射した光が受光部31bにおいて受光される。グルコース検出部31は、受光量に応じた検出信号を制御部35に出力する。
【0096】
ついで、ステップS14において、制御部35はナトリウムイオン濃度及びグルコース濃度の解析を行う。
制御部35は、記憶部から下記式(1)からなる関係式(検量線)を読み出す。
X=exp{(v−d)/c}−(m×k) ・・・・・・(1)
【0097】
制御部35は、ナトリウムイオン検出部32から出力された検出信号に基づいて、この式(1)に電圧vを代入して、ナトリウムイオン濃度を算出する。式(1)は、後述の検量線作成処理によって作成される関係式(検量線)であり、詳細については後述する。
また、制御部35は、受光量とグルコース濃度との関係を規定する関係式(検量線)を読み出す。制御部35は、読み出された関係式に、グルコース検出部31から出力された検出信号に含まれる受光量を適用してグルコース濃度を算出する。
【0098】
ついで、ステップS15において、制御部35は、ステップS14で得られたグルコース濃度及びナトリウムイオン濃度に基づいて、被検者の体内における血糖―時間曲線下面積(血糖AUC)を算出する。
【0099】
体内におけるナトリウムイオンの濃度は、時間による変化や個人差がなく、一定であると考えることができるので、単位時間あたりに得られるナトリウムイオンの総量は、組織液の収集し易さであるグルコース透過率(P)を示すものと考えることができる。したがって、グルコース透過率(P)は、ナトリウムイオン濃度をNa、収集体(ゲル)の体積をvol、組織液の抽出時間をtとすると、
P=a×(Na×vol/t)+b ・・・・・・(2)
で表される。ここで、a及びbは、実験により求められる定数である。
【0100】
測定により得られるグルコース量(Glc)は、体内のグルコース総量(AUC)とグルコース透過率(P)との積により得られるので、以下の式(3)が成り立つ。
AUC=Glc×vol/P ・・・・・・(3)
式(2)及び(3)より、
AUC=Glc×vol/{a×(Na×vol/t)+b}
となり、グルコース濃度及びナトリウムイオン濃度に基づいて血糖AUC(単位:濃度×時間)を算出することができる。
【0101】
ついで、ステップS16において、制御部35は、上述の送液処理を実行して、第1貯留部44及び第2貯留部43に収容されている液体を廃液タンク25に送液する。
【0102】
[検量線作成処理]
図16はステップS7における検量線作成処理のフローチャートである。また、図13は生体成分分析装置20に校正用カートリッジ50が装着された状態の断面説明図である。
本実施の形態において、「検量線の作成」とは、校正用カートリッジに収容された既知濃度試料に含まれる成分を検出部によって検出して得られる検出値と、既知濃度試料に含まれる成分の濃度とに基づいて、検出部で得られる検出値と成分濃度との関係式を作成することをいう。
【0103】
まず、ステップS20において、制御部35は、変数「i」を「0」にリセットする。
ついで、ステップS21において、制御部35は、上述の洗浄処理を実行して、校正用カートリッジ50の貯留部54の洗浄を行う。
【0104】
ついで、ステップS22において、制御部35は、上述の低濃度食塩水供給処理を実行して、低濃度食塩水を貯留部54に送液する。
【0105】
ついで、ステップS23において、ナトリウムイオン検出部32で一対のナトリウムイオン濃度測定用電極間の電圧(V0)が測定される。
ついで、ステップS21と同様にして、制御部35は、洗浄処理を実行して、校正用カートリッジ50の貯留部54の洗浄を行う。
【0106】
ついで、ステップS25において、制御部35は、上述の高濃度食塩水供給処理を実行して、高濃度食塩水を貯留部54に送液する。
【0107】
ついで、ステップS26において、ナトリウムイオン検出部32で一対のナトリウムイオン濃度測定用電極間の電圧(V1)が測定される。
ついで、ステップS21と同様にして、制御部35は、上述の洗浄処理を実行して、校正用カートリッジ50の貯留部54の洗浄を行う。
【0108】
ついで、ステップS28において、制御部35は、測定により得られたV0及びV1が所定の範囲内にあるか否かの判断を行う。この所定の範囲とは、検量線作成処理において、電圧値がエラーではないとされる範囲のことであり、例えばV0としては−50mV〜−100mVとすることができ、V1としては0〜50mVとすることができる。制御部35は、V0及びV1が所定の範囲内にあると判断するとステップS29へ処理を進める。一方、制御部35は、V0及びV1の少なくとも一方が所定の範囲内ではないと判断するとステップS30へ処理を進める。
【0109】
ステップS30において、制御部35は、変数「i」が「1」以上であるか否かを判断し、「1」未満であると判断すると、ステップS31へ処理を進め、ステップS31において変数i=i+1とする処理を行い、ステップS21に戻り、ステップS21乃至28の処理を再度実行する。一方、制御部35は、変数「i」が「1」以上であると判断すると、ステップS32へ処理を進め、表示部33にエラーメッセージを表示させる。変数iが1以上であるとき、つまり2回連続で電圧が正常範囲内に収まらなかったときは、検量線の作成によっては対応できない程度までナトリウム検出部32の電極が劣化していると考えられる。そこで、このような場合にはエラーメッセージを表示させることにより、ユーザに生体成分分析装置20の修理を促すことができる。
【0110】
ついで、ステップS29において、制御部35は、記憶部に記憶されている低濃度食塩水の濃度X0及び高濃度食塩水の濃度X1並びに測定された電圧値v0、v1に基づいて検量線を作成する。この処理について詳細に説明する。
【0111】
ナトリウム選択性電極を用いた場合、一般に液体中のナトリウムイオン濃度の対数は、液体の電圧に比例することが知られている。したがって、液体の電圧値vとナトリウムイオン濃度の対数logXとの関係は、未知数c及びdを用いて、
v=c×log(X)+d ・・・・・・(4)
と表すことができる。式(4)は、
X=exp{(v−d)/c} ・・・・・・(5)
と表すことができる。
【0112】
被験者の皮膚から抽出される組織液には、ナトリウムイオン以外にKなどのイオン(以下、被験者の皮膚から抽出される組織液に含まれる、ナトリウムイオン以外のイオンを「干渉イオン」という)が含まれている。その結果、図17に模式的に示されるように、実線で示される真のナトリウムイオン濃度に対して、破線で示されるように電圧値がその分だけ底上げされるので、かかる干渉イオンによる影響を排除する必要がある。ここで、干渉イオン(濃度k)が存在している場合は、その干渉率をm(0<m<1)とすると、出力される結果は、m×kが付加された値になる。そこで、この干渉イオンの影響を排除するため、真のナトリウムイオン濃度(X)を求めるための関係式(検量線)は、
X=exp{(v-d)/c}−(m×k)
となり、上述の式(1)が得られる。本実施の形態においては、干渉率m及び干渉イオンの濃度kは、実験により予め求めた値が一律に用いられる。したがって、未知数c及びdを求めることにより、式(6)が作成される。
v=c×log(X)+d ・・・・・・(6)
【0113】
そこで、制御部35は、式(6)に、低濃度食塩水の濃度X0及びこれを用いたときに得られた電圧値v0、並びに、高濃度食塩水の濃度X1とこれを用いたときに得られた電圧値v1をそれぞれ代入し、下記式(7)及び(8)を得る。
V0=c×log(X0)+d ・・・・・・(7)
V1=c×log(X1)+d ・・・・・・(8)
【0114】
制御部35は、式(7)と式(8)を連立して解くことにより未知数c及びdを求め、式(6)を取得する。制御部35は、記憶部に記憶されている関係式(検量線)を、作成された関係式(検量線)で上書きし、処理を終了する。以後に行われる分析処理においては、上書きされた関係式が読み出されてナトリウムイオン濃度の算出に用いられる。
【0115】
〔他の変形例〕
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施の形態では、校正用カートリッジにタンクから既知濃度の試料(食塩水)を供給しているが、校正用カートリッジが予め既知濃度試料を含有していてもよい。この場合、1つの校正用カートリッジが2種類の濃度(低濃度食塩水及び高濃度食塩水)の既知濃度試料を含有してもよいし、低濃度の既知濃度試料を含有するカートリッジと、高濃度の既知濃度試料を含有するカートリッジとを別々に設けてもよい。
【0116】
また、前述した実施の形態では、同一のカートリッジに低濃度の既知濃度試料と高濃度の既知濃度試料を供給しているが、低濃度の既知濃度試料を供給するときと、高濃度の既知濃度試料を供給するときに、別々のカートリッジを使用することもできる。
また、既知濃度の試料は、前述した実施の形態のように装置の内部に設ける形態に限らず、生体成分分析装置の外部に設け、外部から校正用カートリッジに供給する形態であってもよい。
【0117】
また、前述した実施の形態では、装着部に配設されたカートリッジの種類を、分析用カートリッジ及び校正用カートリッジに設けられた識別部を検知部により検知することで判別しているが、例えば、装着部に配設されたカートリッジの種類を、生体成分分析装置に設けられた入力部からユーザが入力する形態であってもよい。
また、前述した実施の形態では、分析用カートリッジ及び校正用カートリッジの両方に識別部を設けているが、いずれか一方に設けることで、両カートリッジを識別することができる。
【0118】
また、前述した実施の形態では、識別部としてカートリッジの縁に形成された切り欠きを用いているが、この切り欠きに代えて、例えばカートリッジの表面(縁から内部に所定距離だけ入った箇所)に形成された凹部又は凹所を用いることもできる。
また、識別部としては、凹部や凹所に限定されるものではなく、例えばカートリッジの表面に形成された突起や凸部などを用いることもできる。
【0119】
また、前述した実施の形態では、検量線の作成に際して、高濃度食塩水及び低濃度食塩水からなる2つの濃度の既知濃度試料を用いて検量線を作成する形態を示したが、このような形態に限定されるものではない。例えば、1つの濃度の既知濃度試料のみを用いて検量線を作成する形態であってもよい。このような形態としては例えば次のような例が挙げられる。
予め検出値(v0´)―濃度(X0´)からなる点を固定点(p0)として定めておく。濃度(X1´)からなる既知濃度試料を用いて検出値(v1´)を取得し、濃度(X1´)と検出値(v1´)とからなる可変点(p1)を求める。このp0及びp1を通過する直線式を求めることにより、検量線を作成することができる。
【0120】
さらなる別の形態として、3つの濃度の既知濃度試料を用いて検量線を作成する形態であってもよい。
【0121】
また、前述した実施の形態では、識別部を検知する検知部として、可動天板の裏面から突出するピン状のスイッチを用いているが、このスイッチは、凹部21の底面から突出する形態であってもよい。さらに、検知部として、メカニカルスイッチを用いる以外に、光センサや磁気センサなどの他の検知手段を採用することもできる。例えば検知部として磁気センサを用いる場合は、識別部として、カートリッジの表面に磁性体を設けることができる。
【符号の説明】
【0122】
10 組織液収集シート
11 保持シート
12 収集体(ゲル)
20 生体成分分析装置
21 凹部
22 装着部
23 可動天板
23b 裏面
24 供給部(ポンプ)
24a ニップル
25 廃液タンク
25a ニップル
27〜29 タンク
30 検出部
31 グルコース検出部
32 ナトリウムイオン検出部
33 表示部
34 操作ボタン
35 制御部
40 分析用カートリッジ
41 グルコース反応体
42 ゲル収容部
43a 第1凹所
43b 第2凹所
44 第1貯留部
46 貫通孔
50 校正用カートリッジ
53 光学系確認部
54 貯留部
56 貫通孔
59 貫通孔
60a スイッチ
60b スイッチ
70 光導波部材
80 光学系確認部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置であって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、分析用の試薬が予め収容されているとともに生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジを選択的に装着可能な装着部と、
試料に含まれる成分を検出する検出部と、
前記校正用カートリッジに収容された既知濃度試料に含まれる成分を検出して得られる第1検出値に基づいて検量線を作成し、前記分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を検出して得られる第2検出値及び前記検量線に基づいて当該被検試料に含まれる生体成分を分析する解析部と
を備えたことを特徴とする生体成分分析装置。
【請求項2】
前記校正用カートリッジに既知濃度試料を供給する供給部をさらに備えた、請求項1に記載の生体成分分析装置。
【請求項3】
前記供給部は、前記装着部に装着された校正用カートリッジに、第1濃度の生体成分を含有する第1既知濃度試料、及び当該第1濃度より高濃度の第2濃度の生体成分を含有する第2既知濃度試料を供給する、請求項2に記載の生体成分分析装置。
【請求項4】
前記供給部は、第1既知濃度試料を供給して当該第1既知濃度試料に含まれる成分が検出された後に、第2既知濃度試料を供給する、請求項3に記載の生体成分分析装置。
【請求項5】
前記校正用カートリッジ及び前記分析用カートリッジの少なくとも一方に、カートリッジの種類を識別するための識別部が設けられており、
前記生体成分分析装置は、前記識別部を検知する検知部をさらに備えており、
前記解析部は、検知部の検知結果に基づいて、前記装着部に装着されたカートリッジの種類を判別し、装着部に装着されたカートリッジが校正用カートリッジであると判別した場合に、検量線を作成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項6】
前記解析部は、検知部の検知結果に基づいて、前記装着部に装着されたカートリッジが分析用カートリッジであると判別した場合に、当該分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を分析する、請求項5に記載の生体成分分析装置。
【請求項7】
前記校正用カートリッジが第1識別部を備え、前記分析用カートリッジが第1識別部と異なる第2識別部を備え、
前記解析部は、前記第1識別部が検知されたとき、装着部に装着されたカートリッジが校正用カートリッジであると判別し、前記第2識別部が検知されたとき、装着部に装着されたカートリッジが分析用カートリッジであると判別する、請求項5又は6に記載の生体成分分析装置。
【請求項8】
前記識別部がカートリッジの表面に形成された凹部からなり、
前記検知部が、前記装着部に前記カートリッジが装着されたときに前記凹部に収容可能なスイッチを含んでおり、
前記解析部は、前記スイッチと前記カートリッジとの接触状態に基づいて、カートリッジの種類を判別する、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項9】
前記校正用カートリッジは、所定強度の光が照射されると所定強度の光を出射する光学系確認部を含み、
前記検出部は、前記光学系確認部に光を照射する光源と、前記光学系確認部から出射される光を受光する受光部とを備え、
前記解析部は、前記受光部の受光量に基づいて、前記検出部の状態を確認する、請求項請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項10】
前記検出部は、被検試料に含まれる第1生体成分を検出して前記第2検出値を出力する第1検出部と、前記被検試料に含まれる第2生体成分を検出して第3検出値を出力する第2検出部とを含んでおり、
前記解析部は、前記第2検出値と検量線とに基づいて被検試料に含まれる第1生体成分の量を取得し、前記第3検出値に基づいて被検試料に含まれる第2生体成分の量を取得し、被検試料に含まれる第1生体成分の量にと第2生体成分の量とに基づいて、被検試料が採取された被検者の体内の第2生体成分の量に関する情報を取得する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項11】
前記解析部は、第1生体成分の量として被検試料に含まれるイオン量を取得し、第2生体成分の量として当該被検試料に含まれるグルコース量を取得する、請求項10に記載の生体成分分析装置。
【請求項12】
前記イオン量がナトリウムイオンの量である、請求項11に記載の生体成分分析装置。
【請求項13】
被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置であって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、分析用の試薬が予め収容されているとともに生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジを選択的に装着可能な装着部と、
試料に含まれる成分を検出する検出部と、
前記校正用カートリッジに収容された既知濃度試料に含まれる成分を前記検出部によって検出することにより得られる第1検出値に基づいて、前記検出部を校正し、前記分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を校正された前記検出部によって検出することにより得られる第2検出値に基づいて、前記被検試料に含まれる生体成分を分析する解析部と
を備えたことを特徴とする生体成分分析装置。
【請求項14】
被検試料に含まれる生体成分を分析する生体成分分析装置であって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容可能に構成された校正用カートリッジ、及び、生体成分を含有する被検試料を収容可能に構成された分析用カートリッジを選択的に装着可能な装着部と、
前記装着部に装着された校正用カートリッジに既知濃度試料を供給可能に構成された供給部と、
試料に含まれる成分を検出する検出部と、
前記装着部に装着された校正用カートリッジに既知濃度試料を供給するように前記供給部を制御し、前記校正用カートリッジに供給された既知濃度試料に含まれる成分を検出するように前記検出部を制御し、前記検出部によって得られる検出値に基づいて検量線を作成する解析部と
を備えたことを特徴とする生体成分分析装置。
【請求項15】
分析用カートリッジに収容された被検試料に含まれる生体成分を検量線を用いて分析可能に構成された生体成分分析装置に着脱可能に装着され、前記検量線を作成するのに用いられる校正用カートリッジであって、
既知濃度の成分を含有する既知濃度試料を収容する収容部と、
カートリッジの種類を識別するための識別部と
を備えたことを特徴とする校正用カートリッジ。
【請求項16】
前記識別部は、カートリッジの表面に形成された凹部からなる、請求項15に記載の校正用カートリッジ。
【請求項17】
前記凹部は、矩形状のカートリッジの長辺の縁部に形成された切り欠きである請求項16に記載の校正用カートリッジ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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