説明

生体成分測定装置

【課題】生体成分の測定を正確かつ迅速に行うことのできる生体成分測定装置の提供。
【解決手段】測定対象である生体成分と同一の成分を既知の濃度で含有する校正液を貯留する校正液貯留槽と、外部から内部へと測定対象の生体成分を浸透させることのできる浸透部を備えるとともに、前記校正液を収容するプローブと、前記校正液貯留槽から前記プローブ内に供給された前記校正液と前記浸透部を通じて浸透して来た測定対象との混合液に含まれる測定対象を測定するセンサと、前記校正液貯留槽から前記プローブへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブから前記センサへと前記混合液を流通可能にする状態(A)と、前記プローブを経由することなく前記校正液貯留槽から前記センサへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブ内の液を循環可能にする状態(B)とのいずれかの状態に切り替える流通切替手段と、前記プローブ内の液を循環させる液循環手段とを備えて成る生体成分測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体成分測定装置に関し、より詳しくは、生体成分の測定を正確かつ迅速に行うことのできる生体成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療現場等では、生体から種々の成分を採取して測定することにより、生体の情報を得ることが多い。
【0003】
特許文献1には、「フロー流路内に、検体等の被検液中に臨ませたフィルタ部を介して計測対象成分をろ過吸引するとともにフロー流路中をキャリヤ液とともに移送して計測部位に配したセンサにより計測するものであって、前記フロー流路を閉成状態として該流路をキャリヤ液で満たす計測準備工程と、該キャリヤ液で満たされた前記フロー流路を、前記フィルタ部の上流側で閉成するとともに、前記フィルタ部を介して被検液中より前記計測対象成分を前記フロー流路内にろ過して取入れるように前記フィルタ部の下流側で吸引動作を行うサンプリング工程と、前記吸引動作を停止するとともに前記フロー流路を再び開成して集積された前記計測対象成分をキャリヤ液によって前記センサの計測部位に移送する成分移送工程と、該計測部位において前記センサにより前記計測対象成分の計測を行なう工程と、よりなることを特徴とする検体等の被検液の計測方法」が記載されている(特許文献1の請求項1を参照)。
【0004】
しかしながら、校正液を流通させる操作は、試料液を流通させる前後に行うので、効率が悪かった(特許文献1の第5頁左上欄第19行〜右下欄第10行、及び図1参照)。つまり、試料液中の生体成分を測定する時間に加えて校正操作に要する時間が必要であり、したがってその余分な時間が迅速な生体成分の測定の妨げとなっている。一方、ろ過はフィルタを構成するろ過膜の性能変化に大きく影響され、十分な時間を置かないと正確な成分濃度を測定できないという問題もあった。
【0005】
そこで、プローブ内での生体成分含有液の調製、しかもより短縮された時間内での調製を行うことができ、しかもセンサの校正を同時に行うことができ、ひいては、正確な生体成分の測定を行うことのできる生体成分測定装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−12134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、プローブ内での生体成分及び校正液の混合液の調製と、センサの校正とを同時に行うと共に、より短縮された時間内で前記混合液を調製することができ、ひいては正確な生体成分の測定を行うことのできる生体成分測定装置を提供することである。
【0008】
この発明が解決しようとする更なる課題は、制御装置により流路の切り替えを制御する生体成分測定装置を提供することである。
【0009】
この発明が解決しようとする他の課題は、プローブ外からその内部に生体成分が円滑に浸透することができて経年劣化し難い生体成分測定装置を提供することである。
【0010】
この発明が解決しようとする別の課題は、センサに導入される液が、測定対象である生体成分を含有する液であるか否かを判別することにより、測定対象である生体成分を含有しない液をもって生体成分を測定するなどと言ったことのない生体成分測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、
(1) 測定対象である生体成分と同一の成分を既知の濃度で含有する校正液を貯留する校正液貯留槽と、
外部から内部へと測定対象の生体成分を浸透させることのできる浸透部を備えるとともに、前記校正液を収容することができるプローブと、
前記校正液貯留槽から前記プローブ内に供給された前記校正液と前記浸透部を通じて浸透して来た測定対象の生体成分との混合液に含まれる測定対象の生体成分を測定するセンサと、
前記校正液貯留槽から前記プローブへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブから前記センサへと前記混合液を流通可能にする状態(A)と、前記プローブを経由することなく前記校正液貯留槽から前記センサへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブ内の液を循環可能にする状態(B)とのいずれかの状態に切り替える流通切替手段と、
前記プローブ内の液を循環させる液循環手段と、
を備えて成ることを特徴とする生体成分測定装置であり、
(2) 前記流通切替手段は、前記プローブへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブから前記センサへは流通不可能にする状態(C)にも切替可能である前記(1)に記載の生体成分測定装置であり、
(3) 前記流通切替手段は、制御部により前記状態(A)又は前記状態(B)に切り替えられるように制御されることを特徴とする前記(1)に記載の生体成分測定装置であり、
(4) 前記流通切替手段は、前記状態(A)、前記状態(B)又は前記状態(C)に切り替えられるように制御部により制御されることを特徴とする(2)に記載の生体成分測定装置であり、
(5) 状態(A)である場合には前記校正液貯留槽から前記プローブまでに至る流路に、及び、状態(B)である場合には前記校正液貯留槽から前記センサまでに至る流路に、気体を混入することのできる気体供給手段が設けられて成ることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の生体成分測定装置であり、
(6) 前記気体供給手段は、前記制御部により気体の混入が制御されることを特徴とする(5)に記載の生体成分測定装置であり、
(7) 前記制御部は、前記状態(B)においてセンサに気体を混入し、次いで状態(A)に切り替えてプロ−ブへと気体を混入するように気体供給手段を制御する(6)に記載の生体成分測定装置であり、
(8) 測定対象である生体成分と同一の成分を含まないベース液を貯留したベース液貯留槽、及び、このベース液貯留槽と、前記校正液貯留槽とを、前記センサへの流路に選択的に接続する流路切替装置を備えることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一項に記載の生体成分測定装置
である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、流通切替手段における流路の状態を状態(A)又は(B)に切り替えることにより、生体から移動して来る生体成分と校正液との混合をプローブ内で行って混合液すなわち試料液を調製している間に、センサの校正を行うことができ、測定前に必ず校正済みになっているセンサで生体成分を測定するので正確な生体成分の測定を行うことのできる生体成分測定装置を提供することができる。
【0013】
また、この発明によると、流通切替手段における流路の状態を流通切替手段を状態(C)に切り替えることにより、プローブにおける浸透部のフラッシング、特にプローブに設けられている浸透部の表面をフラッシングすることができるので、浸透部表面に目詰まりを起こす等してプローブ内に生体成分が浸透する効率、すなわち浸透効率を低下させることのない生体成分測定装置を提供することができる。
【0014】
この発明によると、制御部により制御される流通切替手段を備えているので、プローブにおける試料液の調製を行いつつ、センサの校正をしているので、生体成分の測定を正確に行うことのできる生体成分測定装置を提供することができる。
【0015】
また、この発明によると、流路切替装置を備えているので、プローブにおける試料液の調製を行いつつ、流路切替装置によってベース液貯留槽からセンサにベース液を流通させることによりセンサから出力される信号のベースラインを決定することができ、ベースライン及び校正液による校正値が決定された後に混合液すなわち試料液中の生体成分を測定するので、生体成分の測定を正確に行うことのできる生体成分測定装置を提供することができる。
【0016】
この発明によると、校正液に気体を混入することにより、センサが測定すべき測定対象である生体成分を含有する試料液を測定すべき試料液であると容易に判別することができ、目的とする試料液以外の液を試料液と判別すること等の誤りなくなり、その結果として正確に生体成分を測定することのできる生体成分測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明に係る生体成分測定装置の一実施態様における流通切替手段が状態(A)である場合の説明図である。
【図2】図2は、この発明に係る生体成分測定装置の一実施態様における流通切替手段が状態(B)である場合の説明図である。
【図3】図3は、この発明に係る生体成分測定装置のゼロ・スパン校正をすることのできる態様を示す説明図である。
【図4】図4は、この発明に係る生体成分測定装置の他の実施態様における流通切替手段が状態(A)である場合の説明図である。
【図5】図5は、この発明に係る生体成分測定装置の他の実施態様における流通切替手段が状態(B)である場合の説明図である。
【図6】図6は、この発明に係る生体成分測定装置の他の実施態様における流通切替手段が状態(C)である場合の説明図である。
【図7】図7は、この発明に係る生体成分測定装置の他の実施態様の説明図である。
【図8】図8は、この発明に係る生体成分測定装置の他の実施態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明に係る生体成分測定装置の一実施態様を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1には、この発明の一実施態様である生体成分測定装置1Aが示されている。なお、生体成分測定装置1Aは、血糖値測定装置である。
【0020】
生体成分測定装置1Aは、校正液貯留槽2と、プローブ3と、センサ4と、回転弁5Aと、ポンプ6と、排液槽7とを備えている。
【0021】
校正液貯留槽2は、この発明に係る生体成分測定装置における貯留槽の一例であり、測定対象である生体成分と同一の成分を既知の濃度で含有する校正液を貯留する部材乃至手段である。なお、図1及び後述の図2〜7における校正液貯留槽2は、同一の部材である。
【0022】
前記生体成分は、生体内に見出される成分と同じ成分であり、例えば血液中の成分、皮下に存在する細胞間質液、尿中に含まれる成分、精液中に含まれる成分、リンパ液中に含まれる成分等を挙げることができる。生体成分には、体液例えば血液の生化学検査項目に列挙される成分があり、例えば、グルコース、コレステロール、ホスファチジルコリン、乳酸、及び尿酸等の酵素センサで測定可能な成分、ナトリウムイオン等の電解質成分、インスリン等のホルモンが含まれる。また、生体成分は、血液の生化学検査項目に挙げられている項目を含む。したがって、この発明においては、生体成分が、性質としてのpH値をも含む。
【0023】
校正液は、この発明に係る生体成分測定装置で測定しようとする生体成分と同じ生体成分を既知の濃度で含有する。たとえばこの発明に係る生体成分測定装置で生体成分としてグルコースを測定するのであればこの校正液中に含まれる生体成分はグルコースである。なお、校正液に含まれる生体成分は、生体から分離した成分であってもよく、また、生体から分離された成分ではなく、生体中に見出される成分と同一の成分であり、天然物であっても合成物であってもよい。
【0024】
校正液は、前記生体成分と同一の成分を、生体に悪影響を与えることのない水溶液に、溶解して成る液である。生体に悪影響を与えることのない水溶液の典型例として、生理食塩水を挙げることができる。なお、生理食塩水としては、水に塩化ナトリウムを溶解した液体であって、塩化ナトリウム以外にカルシウム及びカリウム等を加えた溶液であっても良い。さらに、生理食塩水には、ヘパリン又はクマリン誘導体等の抗凝固作用を有する化合物が含まれていても良い。
【0025】
校正液貯留槽に貯留される校正液は、センサを校正する校正液であり、プローブ内で測定対象である生体成分と混合することによりセンサで測定される生体成分を含有する試料液の調製原料でもある。
【0026】
校正液中の生体成分の濃度は、測定対象である生体成分の種類に応じて概ね決定されており、その生体成分の測定値が正常値であると判断される値の上限値を下限値とし、その生体成分の測定値が正常値であると判断される値の2〜3倍程度の値を上限値とする範囲内で適宜に決定される。生体成分がグルコースである場合には、校正液中のグルコースの濃度は、通常100mg/dL以上300mg/dL以下の範囲から決定される。
【0027】
なお、この校正液に含まれる生体成分は測定対象となる生体成分であることが必要であるが、測定対象とはならない生体成分を、センサによる測定を阻害しない限り、校正液に含んでいてもよい。測定対象となる生体成分と測定対象になっていない生体成分とが校正液に含まれている場合に、その校正液における生体成分の濃度は、測定対象となっている生体成分の濃度を意味する。
【0028】
この発明に係る生体成分測定装置における校正液貯留槽は、校正液を貯留することのできる部材であれば良く、好ましくは校正液貯留槽2から後述のプローブ3へ校正液を送出することができれば良い。前記校正液貯留槽の大きさとしては、生体成分の種類に応じて生体成分と混合する校正液の必要量が変化するが、例えば校正液を数mL〜2000mL貯留することができる程度であれば良い。また、前記校正液貯留槽の形状としては、液体をその内部に貯留することができる形状であり、かつ衛生面を考慮して気密であれば良く、例えば両端が閉塞された筒体、密閉可能な箱体、及び球体を挙げることができる。校正液貯留槽の材料としては、校正液を貯留することによって変質しない材料であれば良く、例えばプラスチック、金属及びセラミックス等を挙げることができる。前記校正液貯留槽の具体例としては、医療現場で用いる輸液バッグ、又はプラスチックの密閉容器等を挙げることができる。
【0029】
校正液貯留槽2から延在する流路は、後述の回転弁5Aの一部に接続されている。
【0030】
前記プローブ3は、プローブ3の外部から内部へと生体成分を浸透させることのできる、ろ過膜からなる浸透部9を備えると共に、前記校正液をその内部に収容することができる部材である。換言すると、このプローブにおける浸透部は、プローブの内部から外部へと測定対象である生体成分を通過させないように、しかも生体内の生体成分がプローブの内部へと浸透することができるように構成される。
【0031】
ここで、この発明に係る生体成分測定装置は、種々の生体成分を測定することができる。測定可能な生体成分としては、好適には血液の生化学検査項目に列挙される項目を挙げることができ、例えばナトリウムイオン、グルコース、コレステロール、ホスファチジルコリン、乳酸、尿素等を挙げることができる。なお、前記生体成分の採取方法としては、ろ過、拡散を利用した採血方式あるいは無採血方式が挙げられる。図1に示される生体成分測定装置1Aは血糖値測定装置であるので、測定する生体成分はグルコースである。よって、図1に示されるように、プローブ3は、血管8に留置されている。
【0032】
図1のプローブ3における浸透部9は、生体成分、具体的には例えば血管8内を流通する血液に含まれるグルコースが透過することができる材料、例えばセルロースで形成されることができる。生体成分が透過することのできるセルロース以外の材料としては、例えば酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル及びポリスルホン等を挙げることができる。
【0033】
また、この発明に係る生体成分測定装置におけるプローブは、体内から生体成分を取り込むことができるとともに校正液を収容する領域が内部に設けられていると共に、前記浸透部を有している限り種々の構造を取り得ることができ、生体成分を生体から直接採取することができ、かつ生体に留置可能であることが好ましい。プローブの好適な態様としては、例えばプローブの形状が針状であり、プローブの大きさが太さ0.1〜1mm、長さ5〜500mmであり、プローブの材料としては、チタン、ステンレス等の金属や、PTFE、PVC、PP、ナイロン等のプラスチックを挙げることができる。もっとも、プローブの材料は、プローブに浸透する生体成分、プローブに収容される校正液の種類及びプローブの使用環境等に応じて適宜変更することができる。
【0034】
なお、図1に示されるように、液体が流通する流路は、一方が後述の回転弁5Aの一部から延在し、かつプローブ3の一部に接続されると共に、他方がプローブ3の一部から延在し、かつ回転弁5Aの一部に接続されている。
【0035】
前記センサ4は、前記プローブ3内で調製されるところの、校正液と生体成分との混合液、すなわち試料液に含まれる生体成分を測定する部材である。
【0036】
この発明に係る生体成分測定装置におけるセンサは、生体成分を定性的及び定量的に測定することのできるセンサであれば良く、前記生体成分に応じてセンサの種類を変更したり、複数のセンサを配置したりすることができる。
【0037】
前記センサとしては、例えば光学センサ、イオンセンサ及びバイオセンサ等を挙げることができる。この発明に係る生体成分測定装置において、好ましくはバイオセンサを用いると良く、さらに好ましくはグルコースセンサ及びアルコールセンサ等の酵素センサを用いるのが良い。図1に示されるセンサ4は、血中グルコース濃度を測定することのできるグルコースセンサである。
【0038】
前記センサ4には、回転弁5Aの一部から延在する流路が接続されている。
【0039】
前記回転弁5Aは、校正液貯留槽2からプローブ3へと校正液を流通可能にすると共に、プローブ3からセンサ4へと校正液及び生体成分の混合液を流通可能にする状態(A)(図1参照)と、プローブ3を経由することなく校正液貯留槽2からセンサ4へと校正液を流通可能にすると共に、プローブ3内の液を循環可能にする状態(B)(図2参照)とのいずれかの状態に切り替える部材である。なお、回転弁5Aは、この発明に係る生体成分測定装置における流通切替手段の好ましい一実施態様である。回転弁5A内には2本の流路が設けられており、回転弁5Aを回転させるだけで状態(A)及び状態(B)のいずれかに切り替えることができる。
【0040】
ここで、図1は、回転弁5Aが状態(A)に切り替えられた状態を示しており、図2は、状態(B)に切り替えられた状態を示している。図1及び図2における回転弁5A近傍に示された白抜きの矢印は、回転弁5Aの回転可能方向を示している。図1と図2との回転弁5Aを比較すると、回転弁5Aが白抜きの矢印方向に90°回転している。この回転弁5Aの回転により、生体成分測定装置1Aは、状態(A)と状態(B)とのいずれかに切り替えることができる。
【0041】
この発明に係る生体成分測定装置における流通切替手段としては、状態(A)又は状態(B)に切り替えることができれば良く、校正液の流路及び生体成分と校正液との混合液の流路を容易に切り替えることのできる装置が好ましい。なお、状態(A)及び状態(B)の切り替えは、手動及び自動のいずれであっても良い。回転弁5A以外の流通切替手段としては、例えば複数の遮断弁又は三方弁等を組み合せた態様を採用することもできる。ただし、前述したような回転弁を適用することにより、その回転操作のみで前記状態(A)と状態(B)とに複数の流路を同時に切り替えることができるので、操作性が向上するとともに、複数の弁装置を個々に切り替えるようにした構成に比較して、誤操作のおそれが少ないという利点が得られる。
【0042】
図1に示される状態(A)は、校正液貯留槽2から校正液を導出する流路と、プローブ3内に校正液を導入する流路とを接続し、かつプローブ3から混合液を導出する流路と、センサ4に前記混合液を導入する流路とを接続した状態である。すなわち、前記状態(A)では、校正液貯留槽2から校正液がプローブ3に流通すると、プローブ3内の液体がセンサへ押し流される。特に、プローブ3が針状であるときには、校正液と体内より浸透して来た測定対象の生体成分とが混合されて得られるその混合物が充満しているそのプローブ3内に、校正液が、送液されると、送液された校正液の分だけ混合液が試料液として押し出されて、センサに向う。
【0043】
図2に示される状態(B)は、校正液貯留槽2から校正液を導出する流路と、センサ4に液を導入する流路とを、プローブ3を経由することなく接続すると共に、プローブ3内に校正液を導入する流路を閉鎖し、プローブ3内で形成される混合液をセンサ4へ導出する流路を閉鎖することにより、プローブ3内の液をプローブ3内に閉じ込めておくようにし、特に図2ではポンプ6によりプローブ3内にある液をプローブ3からその外部に導出し、導出した液をプローブ3内に導入するようにして液を循環することができるようにした状態である。すなわち、前記状態(B)では、校正液貯留槽2からプローブ3を経由することなくセンサ4に校正液を流通させると同時に、プローブ3内にある液をプローブ3からその外部に導出し、導出した液をプローブ3内に導入するようにして液を循環可能にしている。
【0044】
前記ポンプ6は、前記プローブ3内の液を、プローブ3から回転弁5Aへ、次いで回転弁5Aからプローブ3へと循環させる液循環手段である。なお、前記ポンプ6は、この発明に係る生体成分測定装置における液循環手段の好適例である。
【0045】
前記プローブ3は校正液を収容することができるので、前記プローブ3の内部には、前記浸透部9において内部に浸透する生体成分と、前記校正液貯留槽2から流通する校正液とが存在することとなる。ポンプ6は、プローブ3内に存在する生体成分と校正液とを循環させることにより、生体成分及び校正液からなる混合液を試料として調製することができる。
【0046】
この発明に係る生体成分測定装置において、プローブ内の液体を液循環手段により循環させるのは、プローブ内の液中に生体成分を均一に分散させることにより均一な濃度の試料液を調製することができるからである。
【0047】
詳しく言うと、プローブ内の液を循環させない場合、プローブの内部において、浸透部から浸透する生体成分は浸透部近傍に偏在し易くなり、プローブ内全体の生体成分の濃度が均一に成り難い。生体成分が浸透部近傍に偏在していると、プローブの内側と外側との生体成分の濃度差が生じ難くなり、生体成分の浸透する速度が低下するので、十分量の生体成分をプローブ内に浸透させるまでの所要時間が長くなる。例えば針状のプローブ内に十分量の生体成分が浸透していない状態のままで、校正液貯留槽から校正液をプローブ内に供給すると、供給された校正液の供給量分だけ、十分量の生体成分を含んでいない液体をセンサに導出することになるので、センサでの測定結果は、測定すべき本来の生体成分の濃度よりも低くなってしまうことがある。また、センサに導入する液中で生体成分の偏在により生体成分の濃度が均一でないと、センサでの測定値が一定とならないので、正確な測定値を得難い。したがって、この発明に係る生体成分測定装置は、正確な測定結果を得ることができるように、状態(B)に切り替えた後に、プローブ内の液を循環させるのである。
【0048】
前記ポンプ6以外の液循環手段としては、流通切替手段を前記状態(B)に切り替えたときにプローブ内の液をプローブ内で循環させることができ、又はプローブ内の液を一旦プローブ外に取り出し、回転弁を経由して再びプローブに液を戻すようにして液を循環させ得る限り特に制限は無く、例えば攪拌機、スクリュー等を用いることができる。
【0049】
前記ポンプ6の好ましい態様としては、ローラポンプ等のチューブポンプ、遠心ポンプ、ダイアフラムポンプ、ネジポンプ又は回転容積式ポンプ等を挙げることができる。液循環手段として適宜のポンプを用いることにより、プローブ内の液を効率よく循環させることができるので、センサで測定する混合液の調製を短時間で完了することができる。よって、液循環手段としてポンプを用いると、この発明に係る生体成分測定装置は、生体成分の測定を短時間で行うことができ、さらに測定する液が十分に混合されているので測定値の正確さがより一層向上する。
【0050】
前記排液槽7は、センサを通過した校正液、及び試料液としての混合液が貯留される容器である。
【0051】
前記排液槽7の大きさとしては、上述したように校正液の必要量が変化するので排液の量も変化するが、例えば数mL〜3000mL貯留することができる程度であれば良い。また、排液槽7の形状としては、液体をその内部に貯留することができる形状であれば良く、例えば有底円筒体、両端を閉塞された筒体、密閉可能な箱体、及び球体等を挙げることができる。排液槽7の材料としては、校正液及び混合液を貯留することによって変質しない材料であれば良く、例えばプラスチック、金属及びセラミックス等を挙げることができる。
【0052】
ここで、生体成分測定装置1Aの使用方法及びその作用を、以下に説明する。
【0053】
先ず初期状態として、ポンプ6を駆動せずに、図1に示されるように回転弁5Aを状態(A)に切り替えておくと、図1に示される生体成分測定装置1Aは、校正液貯留槽2からプローブ3へと校正液を流通させることができ、かつプローブ3からセンサ4へと液体を流通させることができる状態にある。この状態下では、ポンプ6が駆動されていないので、校正液貯留槽2からプローブ3へと校正液が流れない。
【0054】
次に、プローブ3を、生体成分がプローブ3内に浸透することができる状態に、する。生体成分測定装置1Aは、血糖値測定装置であるので、プローブ3を血管8に留置する。なお、血管にプローブを留置するのであるから、この例におけるプローブは穿刺針のように細い直径を有するともに、先端が閉鎖された形態を有する。留置によって、プローブ3内に生体成分が浸透することができる状態が実現する。なお、この発明に係る生体成分測定装置においては、生体への負荷を考慮して、予め採取した生体成分を含有する液、例えば血液を適宜の容器に収容しておき、前記容器にプローブを挿入して生体成分を含有する液例えば血液に前記プローブ3を浸漬することにより、生体成分をプローブ3内に浸透可能な状態としても良い。
【0055】
続いて、ポンプ6を駆動することにより校正液貯留槽2からプローブ3へと校正液の流通乃至供給を開始する。回転弁5Aは状態(A)に切り替えているので、校正液貯留槽2から導出される校正液は、プローブ3内に流入し、プローブ3内が満たされると、プローブ3から溢出した液体がセンサ4に流入する。センサ4を通過した液体は、排液槽7に流入する。図1中に示した白抜き矢印以外の矢印は、校正液貯留槽2から校正液を流通させたときの液体の流通方向を示している。もっとも、校正液の流通と、プローブ3内に生体成分が浸透可能にする操作とは、操作の順序を逆にしても良い。
【0056】
プローブ3内が校正液で満たされた後、図2に示されるように回転弁5Aを状態(B)に切り替える。回転弁5Aを状態(B)に切り替えることにより、校正液貯留槽2から校正液が流通する流路は、プローブ3を経由することなく、センサ4に液体が流入する流路に直接接続されると共に、プローブ3内の液が循環可能となる。なお、回転弁5Aを状態(B)に切り替える際にはポンプ6の駆動を停止してもよいし、また、ポンプ6の駆動を継続していても良い。
【0057】
回転弁5Aの回転駆動により状態(A)から状態(B)に切り替わった後においてポンプ6が駆動状態になっていると、プローブ3内の液体が、プローブ3から回転弁5Aに、次いで回転弁5Aからプローブ3へと循環することができる。プローブ3の浸透部9では、生体成分が血管8からプローブ3の内部に浸透し、プローブ3内に満たされている校正液と混じりあう。ポンプ6は、予めプローブ3内に満たされている校正液と、浸透して来た生体成分との混合を促進することができる。プローブ3の内部においては、浸透部9近傍に生体成分が偏在し易いので、生体成分の浸透速度が低下し易い。しかしながら、この発明では、ポンプ6によりプローブ3内の生体成分及び校正液を、プローブ3から回転弁5Aへ、そして回転弁5Aからプローブ3へと循環させると、浸透部9近傍の生体成分の偏在を解消することができるので、生体成分の浸透速度を向上又は維持することができる。
【0058】
また、回転弁5Aにより状態(B)が実現していると、校正液貯留槽2からプローブ3を経由することなくセンサ4に校正液が直接に流通すると、センサ4の校正を行うことができる。つまり、測定対象である生体成分を既知の濃度で含有する校正液をセンサに供給し、その校正液についてセンサから生体成分の測定値として例えば電流値が出力される。また、測定対象である生体成分を含有しない液をセンサに供給しても生体成分の測定値としての電流値はほぼゼロである。したがって、測定対象成分の既知の濃度と測定対象成分の濃度ゼロとの間で、濃度と出力電流値との検量線が求められる。測定対象である生体成分をプローブで採取する毎に、校正液を測定試料としたときのセンサからの出力電流を測定しておくことにより、常に検量線の校正を行うことになる。
【0059】
なお、図2中に示した白抜き矢印以外の矢印は、校正液貯留槽2から流通する校正液と、プローブ3内を流通する生体成分及び校正液の混合液との流通方向を示している。
【0060】
また、図3に示されるような態様にあっては、プローブ3にて生体成分と校正液との混合操作を行って試料液を調製している最中に、センサ4のゼロ・スパン校正すなわち測定すべき生体成分の濃度ゼロと既知の生体成分濃度とで2点校正を行うことができる。
【0061】
図3に示される生体成分測定装置においては、校正液貯留槽2から回転弁5Aへと至る流路であって、校正液貯留槽2から回転弁5Aに校正液を流通させることのできる流路の途中に、切替弁例えば三方切替弁21を介装し、この三方切替弁21に生体適合液貯留槽13を結合した外は図1に示される生体成分測定装置の構成と同様である。
【0062】
なお、生体適合液貯留槽13内に貯留される生体適合液13Aは、生体に悪影響を及ぼさないこと、及びこの発明に係る生体成分測定装置で測定対象とする生体成分を含有していないことと言う条件を満たす限り特に制限がなく、通常は生理食塩水が使用され、また測定するべき生体成分を校正液から除いたとするときの組成液であるのも好ましい。
【0063】
前記ポンプ6によるプローブ3内の液体の循環を一定時間行うと、プローブ3の内部と血管8の内部との生体成分の濃度が同一となるので、生体中の測定すべき生体成分がプローブ3内に浸透しなくなる。このとき、測定するべき生体成分と校正液とを混合して混合液すなわち試料液の調製が完了する。混合液の調製が完了した後に、回転弁5Aを状態(A)に切り替える。すなわち、回転弁5Aを、図2の状態から図1の状態に戻す。プローブ3内外の生体成分の濃度が同一となったときに、混合液中に含まれる生体成分をセンサで測定すると、本来測定すべき正確な生体成分濃度を得ることができる。
【0064】
なお、回転弁5Aを状態(B)から状態(A)に切り替える際に、校正液と生体から浸入してきた生体成分とは、ポンプ6の駆動により循環流通している状態であっても、ポンプ6の駆動停止により循環流通していない状態であっても良い。ポンプ6による液体の循環を行う時間及び速度は、生体成分の種類及び浸透部の材料に応じて操作者が経験的に決定すれば良い。
【0065】
回転弁5Aを状態(B)から状態(A)に切り替える際に、前記したように校正液と生体から浸入してきた生体成分との混合液が循環流通していない場合つまりポンプ6の駆動が停止しているときにはポンプ6の駆動を再開する。
【0066】
回転弁5を状態(B)から状態(A)に切り替えた後に、ポンプ6の駆動により校正液貯留槽2から回転弁5Bを経由してプローブ3に校正液を流通させると、プローブ3に移送される校正液がプローブ3内の混合液を、センサ4へ押し流す。
【0067】
混合液がセンサ4に流入することにより、センサ4は試料液としての混合液に含まれる測定対象たる生体成分の測定を行う。これで、生体成分の測定が完了する。生体成分の測定を止めるときは、ポンプ6の駆動を停止した後、プローブ3内に生体成分が浸透不能となる状態、例えばプローブ3を血管8から抜去すれば良い。なお、この発明に係る生体成分測定装置において、生体成分を測定する回数に制限は無い。
【0068】
さらに、生体成分の測定を続行するときは、プローブ3内の混合液が全て送出された後、回転弁5Aを状態(B)に切り替える。生体成分の測定を続行するときは、プローブ3内が生体成分含有液で満たされているので、特に準備段階を経ることなく回転弁5Aを状態(B)に切り替えれば良い。
【0069】
流通切替手段を状態(B)に切り替える操作以降は、上述した操作の順序通りに操作を繰り返していくと、生体成分の測定を複数回続けて行うことができる。
【0070】
この発明に係る生体成分測定装置は、プローブ内で試料液の調製を行っている最中に、流通切替装置を状態(B)に切り替えた後に校正液貯留槽から校正液をセンサに流通させることにより、センサの校正も行うことができる。したがって、センサを校正する操作ノ後に試料液を調製し、次いで調製された試料をセンサで分析する従来の装置乃至手法に比べると、生体成分測定に必要な時間を短縮することができる。しかも、生体成分をするときには必ずセンサの校正が実施されるので、この発明に係る生体成分測定装置による測定結果は正確である。
【0071】
なお、この発明に係る生体成分測定装置を用いて生体成分の測定を複数回繰り返す場合、測定する生体成分を途中で変更しても、混合液の調製と同時に生体成分の変更による装置の校正等も行うので、正確な測定値を得ることができる。
【0072】
また、図1〜3に示される生体成分測定装置にあっては1基の校正液貯留槽が備え付けられているが、校正液貯留槽が複数基備えられ、それぞれの校正液貯留槽には互いに測定対象が相違する生体成分を含む校正液が貯留されているようにしてもよい。つまり生体成分測定装置は、測定対象たる生体成分aを有する校正液を収容する校正液貯留槽2Aと測定対象たる他の生体成分bを有する校正液を収容する校正液貯留槽2B等の複数の校正液貯留槽を有していてもよい。
【0073】
また、図1及び2に示されるように、この発明に係る生体成分測定装置における流通切替手段が内部に流路を有する回転弁5Aであると、状態(A)及び状態(B)の切り替えが簡便であり、流路が複雑化することも無いので、誤作動が生じ難くなり、結果として生体成分の測定の正確さが増すこととなる。
【0074】
以上の説明が、図1及び2に示した生体成分測定装置1Aの使用方法及びその作用である。
【0075】
図4〜6には、図1及び2で用いた回転弁5Aの代わりに回転弁5Bを用いた生体成分測定装置1Bが示されている。
【0076】
回転弁5Bは、前記回転弁5Aの2本の流路に加えて、図4〜6において破線で示すところの、3本目の独立した流路を有している。図4〜6において、回転弁以外の部材は、図1及び2に示される部材と共通の部材を用いているので、図1及び2におけるのと同一の番号を図面に付すこととし、詳細な説明を省略することがある。
【0077】
ここで、この発明に係る生体成分測定装置における流通切替手段の好ましい態様として、前記状態(A)及び前記状態(B)だけでなく、プローブへと生体成分含有液を流通可能にすると共に、プローブからセンサへは流通不可能にする状態(C)にも切り替えることができる態様を挙げることができる。状態(C)にも切り替えることのできる流通切替手段の一具体例が、図4〜6に示すような回転弁5Bである。
【0078】
図4〜6に示すように、状態(A)、状態(B)及び状態(C)を実現することのできる回転弁5Bは、校正液をプローブに供給する第1流路と、校正液をプローブに供給しているときにプローブ内の液、すなわち混合液乃至試料液をセンサに供給する第2流路と、プローブ内の液をセンサーに供給しないように第2流路を遮断しているときに校正液をプローブに供給する第3流路とを備えている。
【0079】
前記状態(C)にも切り替えることのできる態様は、プローブの外部又は外表面に付着した生体成分の残渣又は固形物を除去することのできる生体成分測定装置とするのに好適である。通常、生体中には測定する生体成分以外に多種の生体成分が含まれている。非測定対象である生体成分は、プローブ内に測定対象たる生体成分を浸透させたときにプローブの外部、特に浸透部の外部に付着することが多い。例えば図1〜図7に示されるような血管内にプローブを留置する場合は、血餅等がプローブの外表面に付着する。また、生体成分とはいえないが生体成分由来の変質物がプローブの外部特に浸透部の外表面に付着することもある。
【0080】
前記状態(C)は、図6に示されるように、校正液貯留槽2から校正液を導出する流路と、プローブ3内に校正液を導入する流路とを接続し、かつプローブ3から混合液を導出する流路と、センサ4に混合液を導入する流路とを遮断した状態である。すなわち、前記状態(C)では、校正液貯留槽2から校正液がプローブ3に供給されると、プローブ3内に流入した校正液がセンサ4には流通しないので、プローブ3内の校正液の圧力が高まり、校正液がプローブ3を形成する膜であり、かつ浸透部を通してプローブ3の外部方向に滲出しようとする。これにより、プローブ3の外表面に付着している血餅等の残渣又は固形物を、プローブ3の外表面から剥離させることができる。このような動作は、フラッシングと称されることがある。
【0081】
このような状態(C)を実現するには、前記回転弁5Bを有する流通切替手段と、回転弁5Bからプローブ3に液を供給する流路の途中に設けられたポンプ6Bとが必要である。
【0082】
ここで、生体成分測定装置1Bの使用方法及びその作用について説明する。
【0083】
なお、生体成分測定装置1Bでの生体成分の測定は、図4及び図5に示されるように回転弁5B及びポンプ6Bを操作する等して行うことができ、詳しくは、上述した生体成分測定装置1Aの操作と同様である。
【0084】
生体成分測定装置1Bを用いてグルコースの測定を行うと、プローブ3の外周面、特に浸透部9の外周面に血餅が付着することがある。血餅が浸透部9の外周面に付着していると、生体成分の浸透効率が低下するので、混合液の調製に長時間を要するようになることもある。
【0085】
浸透部9の外周面に血餅等の残渣又は固形物が付着することにより生体成分の浸透効率が低下したとき、図6に示されるように、回転弁5Bを状態(C)に切り替えると、プローブ内への生体成分の浸透効率を維持又は向上させることができる。
【0086】
具体的に言うと、回転弁5Bを状態(C)に切り替えると、流路の途中に設けたポンプ6Bの駆動により校正液貯留槽2から回転弁5Bを経由してプローブ4に校正液を移送供給すると、プローブ3に供給された校正液はプローブ4のさらに下流側に流通することが無いので、浸透部9の内側から外側に向かって、全体的にいうとプローブ3の内部から外側に向って液圧が作用することになる。浸透部9の内側から外側に液圧が作用すると、付着した血餅等の残渣又は固形物を剥離させることができる。血餅等の残渣又は固形物が浸透部9から剥離すると、プローブ3内への生体成分の浸透効率を維持又は向上させることができる。プローブ3における生体成分の浸透効率が高いと、プローブ3内の生体成分の濃度が血管8内の生体成分の濃度と同一となり易く、正確な測定値を得易くなる。
【0087】
図7には、この発明の一実施態様である生体成分測定装置1Cを示している。生体成分測定装置1Cにおいて、前記生体成分測定装置1Aとの相違点は、制御部10である。生体成分測定装置1Aと生体成分測定装置1Cとにおいて、制御部10以外の部材は、共通の部材を用いているので、同一の番号を図面に付すこととし、詳細な説明を省略することがある。
【0088】
この発明に係る生体成分測定装置における流通切替手段の好ましい態様としては、流通切替手段が制御部10により制御される態様を挙げることができる。図7に示される生体成分測定装置1Cは、流通切替手段が制御装置により制御される態様の一例であり、回転弁5Aが制御部10により制御されるようになっている。
【0089】
前記制御部としては、流通切替手段を制御することができ、かつ制御の態様を予め操作者により設定することができる装置を用いると良く、例えばマイクロコンピュータ等を用いることができる。なお、図7に示す制御部10は、回転弁5A以外の部材、センサ4及びポンプ6も制御可能となっている。図7に示す制御部10は、回転弁5Aの状態(A)又は状態(B)への切り替えを制御することができる。生体成分測定装置1Cの変形例としては、図示しないが、例えば回転弁5Aを回転弁5Bに変更することにより、制御部10が回転弁5Bの状態(A)、状態(B)又は状態(C)への切り替えを制御する態様も採用することができる。
【0090】
生体成分測定装置1Cの使用方法及びその作用は、生体成分測定装置1Aと同様である。
【0091】
生体成分測定装置1Cを使用すると、センサ4、回転弁5A、ポンプ6を制御部10により制御することとなるので、以下に、制御部10による他の部材の制御方法を示す。
【0092】
制御部10による回転弁5Aの切り替えは、時定数を用いると良い。詳しく言うと、状態(A)に切り替えてからプローブ3内の混合液がセンサ4に流入し、生体成分の測定が完了するまでの所要時間、及び、状態(B)に切り替えてから前記混合液の調製が完了し、かつセンサ4の校正が完了するまでの所要時間等から算出される時定数を用いると良い。さらに言うと、センサ4の校正はセンサ4からの出力で判別できるので、時定数を決定し易い。回転弁5Aを時定数が設定された制御部10により制御すると、校正液の無駄のない流通を達成することができ、かつ混合液の調製及びセンサ4の校正を正確に行うことができるので、結果としてセンサ4で得られる測定値の正確さが向上することとなる。
【0093】
なお、生体成分測定装置1Cの変形例として、回転弁5Aに代えて回転弁5Bを用い、流路の途中にポンプ6Bを介在させる場合には、回転弁5の状態(C)への切り替えも制御部10により制御することとすると、状態(C)に切り替えてからプローブ3に付着した生体成分の残渣又は固形物を除去するまでの所要時間等から算出される時定数を用いると良い。
【0094】
図8には、この発明の一実施態様である生体成分測定装置1Dを示している。生体成分測定装置1Dにおいて、前記生体成分測定装置1Cとの相違点は、気体混入器11である。生体成分測定装置1Cと生体成分測定装置1Dとにおいて、気体混入器11以外の部材は、共通の部材を用いているので、同一の番号を図面に付すこととし、詳細な説明を省略することがある。
【0095】
この発明に係る生体成分測定装置における校正液貯留槽2の好ましい態様としては、校正液貯留槽2が、状態(A)における校正液貯留槽2とプローブ3との間、及び、状態(B)における校正液貯留槽2とセンサ4との間に気体を混入可能な態様を挙げることができる。さらに言うと、校正液貯留槽2から排出される校正液に気体を混入する場合のその混入位置、混入のタイミング及び混入の時間的長さ等は、制御部10により制御されるのが好ましい。図8に示される生体成分測定装置1Dは、生体液貯留槽2が気体を混入することができ、かつ流通切替手段が制御部10により制御される態様の一例であり、センサ4、回転弁5A、ポンプ6及び気体混入器11が制御部10により制御されるようになっている。前記制御部10としては、回転弁5Aを制御することができ、かつ制御の態様を予め操作者により設定することができる装置を用いると良く、例えばマイクロコンピュータ等を用いることができる。図8に示す制御部10は、回転弁5Aの状態(A)又は状態(B)への切り替えを制御することができる。
【0096】
生体成分測定装置1Dの変形例としては、図示しないが、例えば回転弁5Aに代えて回転弁5Bを用い、流路の途中にポンプ6Bを介在させることにより、制御部が回転弁5Bの状態(A)、状態(B)又は状態(C)への切り替えを制御する態様も採用することができる。
【0097】
生体成分測定装置1Dの使用方法及びその作用は、生体成分測定装置1Cと略同様である。生体成分測定装置1Dの使用と、生体成分測定装置1Cの使用とにおいて、相違する点は、気体の混入である。すなわち、センサ4で混合液を測定する際の操作が生体成分測定装置1Cと生体成分測定装置1Dとでは相違しており、センサ4での混合液の測定までの操作は共通しているので、説明を省略する。
【0098】
この発明に係る生体成分測定装置において、プローブにて校正液と生体から受容した測定対象の生体成分とを混合して調製された混合液すなわち試料液中に含まれる測定対象の生体成分の濃度と、もともとの校正液中に含まれる測定対象たる生体成分の濃度とが近接している場合には、前記試料液中の生体成分と校正液中の生体成分とをセンサで連続的に測定すると、混合液つまり試料液の測定値と校正液の測定値との判別をし難いことがある。なお、前記「連続的に測定」するとの意味は、センサにおける検出部に液を送り込むパイプ等の流路内をある時点では試料液としての混合液が流れ、その次のある時点では校正液が流れている場合には、ある時点で試料液中の生体成分の濃度測定をし、その次のある時点では校正液中の生体成分の濃度測定をしているというように、時系列に沿って校正液のセンサによる測定及び試料液のセンサによる測定が繰り返されることを言う。この場合、センサにおける検出部に液を送り込む流路中を流れる試料液と校正液とは画然と区分けされているわけではない。流路内を流通する液中の生体成分の濃度について考察すると、流路内における生体成分の流路軸線方向における濃度は、校正液中の生体成分の既知の濃度となっている部分からその既知の濃度が上昇し、遂には試料液中の生体成分の濃度となる。つまり流路内では校正液と試料液とが混合している部分が存在し、流路内を流通する液においてどこまでが校正液であり、どこからが試料液であるかの区別がつきにくい。このように区別がつきにくい状態下では、センサで測定された生体成分の濃度が試料液の生体成分量であるのか校正液の生体成分量であるのかの区別がつきにくいのである。
【0099】
図8に示されるように、この生体成分測定装置1Dにあっては、回転弁5Aからセンサ4に液を送出する流路の途中に、好ましくは回転弁5Aからセンサ4に液を送出する流路の途中であって回転弁5A近傍に、この流路内に気体を混入する気体混入器11が設けられ、校正液貯留槽2から回転弁5Aに到る流路の途中にこの流路内に気体を混入する第2気体混入器11Aが設けられ、回転弁5Aからセンサ4に液を送出する流路の途中に、好ましくは回転弁5Aからセンサ4に液を送出する流路の途中であってセンサ4の近傍に、気体検出器13が設けられている。
【0100】
図8に示される生体成分測定装置1Dにおいては、状態(A)となるように回転弁5Aを切換えておき、この状態(A)下に、校正液貯留槽2から校正液を回転弁5Aを経由してプローブ3に到らせ、プローブ3内が校正液で満たされると回転弁5Aを駆動することにより状態(B)を実現する。所定の時間の間、状態(B)を継続するとプローブ3内に存在する液中の生体成分すなわち測定対象となる生体成分の濃度が生体中の測定対象たる生体成分の濃度と同じになる。また、校正液貯留槽2から回転弁5Aを経由してセンサ4に至る流路内は校正液で充満されている。
【0101】
そこで、回転弁5Aを動作させて状態(B)から状態(A)に切換える。状態(A)に切り替わったときに、回転弁5Aからセンサ4に至る流路の内部に、気体混入器11により、気泡を、混入させる。混入させる気泡の量は、前記流路の内部空間に存在する液を上流側の液と下流側の液とに気泡で分割するに足る量である。回転弁5A近傍の流路内に気泡が混入されると、回転弁5Aの切替動作完了まではプローブ3から回転弁5Aまでの流路には試料液としての混合液が充満し、回転弁5Aからセンサ4までの流路には校正液が充満していたのであるから回転弁5Aの切替動作後においては回転弁5Aからセンサ4までの流路においては混入した気泡により上流側の液と下流側の液とに分割され、上流側の液は試料液としての混合液であり、下流側の液は校正液である。そして流路内を気泡が移動して行くに連れ上流側の試料液と下流側の校正液とが流路内を移動していく。流路内を移動して行く液がセンサに供給されると、センサは校正液中の生体成分を検出し、次いで気泡を検知し、その後に試料液中の生体成分を検出することになる。
【0102】
この場合、センサによる液と気体との弁別が明確にできるので、生体成分についての検出値が校正液及び試料液のいずれについての値であるかに間違いを生じることがない。つまり正確な検出が実行できる。したがって、この発明に係る生体成分測定装置の測定結果の正確さがより一層向上する。
【0103】
上述したように、センサ4自体が気泡を検出する機能を有する場合には、図8に示される気泡検出器13は特に必要がない。
【0104】
センサ4として気泡検出機能を有しないセンサを使用する場合、及びセンサ4として気泡検出機能を有しているが、気泡の通過をより一層確実に検出する場合には、図8に示されるように回転弁5Aからセンサ4に到る流路の途中に、好ましくはセンサ4の近傍に、気泡検出器13を設置するのが良い。
【0105】
なお、気体混入器11を備えると以下のような利点もある。つまり、校正液がセンサ内を通過した後にセンサ4内を気体混入器11によって気体で置換し、次いで気体で置換されたセンサ4内に試料液を供給すると、センサ内で校正液と試料液とが混じり合ってしまうことによる不都合を解消することができる。
【0106】
気体混入器11を回転弁5Aからセンサ4に到る流路に設置すると、気泡検出機能を有するセンサ4によって、又はセンサ4が気泡を検出する機能を有しない場合には気泡検出器13によって、センサ4に流入する液が最初は校正液であり、次いで試料液に変化することを検出することができる。
【0107】
センサ4に流入する液が試料液から校正液へと変化することを検出するには、図8に示されるように、校正液貯留槽2から回転弁5Aに到る流路に気体混入器11Aを介在させるのが良い。
【0108】
このように、気体混入器11を設けると校正液から試料液への切替時点を正確に検出することができ、第2気体混入機11Aを設けると試料液から校正液への切替時点を正確に検出することができる。
【0109】
このように切替時点の正確な検出は生体成分の測定結果の正確さに寄与する。
【0110】
なお、気体混入器11には、例えば空気を送出可能なポンプ等を用いることができる。
【0111】
気体を混入する方法としては、回転弁5Aを状態(B)に切り替えた後、混合液の調製が完了したときに、回転弁5Aを状態(A)に切り替える前に気体を混入し始め、さらに状態(A)に切り替えてからも適当な時間だけ気体を混入し続けると良い。この場合、センサ4には、先ず回転弁5Aが状態(B)であるときに混入された気体が流入し、次いで状態(A)に切り替えられた後に混入された気体によりプローブ3から押し出された混合液が流入し、さらに混合液を押し出した気体が流入する。よって、センサ4で得られる測定値は、センサ4を校正する校正液の測定値、気体の測定値、混合液の測定値及び気体の測定値の順に変化していくことになる。
【0112】
よって、仮に、混合液に生体成分が少量しか含まれておらず、生体成分の測定値が生体成分含有液の測定値と判別し難い場合であっても、気体の測定値の間に測定される液体が混合液であると判別し易いので、生体成分の測定がより一層正確となる。
【0113】
なお、図8に示されるように、生体成分測定装置1Dは、気体混入器11の気体の混入を前記制御部10により制御することとしている。気体の混入の制御は、例えば回転弁5Aにおける状態(A)及び状態(B)の切り替えるタイミングを時定数として設定することにより、達成される。また、センサ4、回転弁5A及びポンプ6の制御部10による制御は、生体成分測定装置1Cと同様であれば良い。
【0114】
上記各実施態様において、センサ4の校正をするときに、測定対象である生体成分を含有する試料液に代えて校正のためにのみ用いる校正専用液(これをベース液と称することもある。)を供給するようにしても良い。このためには、例えばセンサ4への流路の途中に、校正液貯留槽2と、校正専用液を貯留した校正専用液貯留槽の何れかを選択的に切り替え接続する弁装置を設け、前記状態(B)のとき(例えば図2又は図4を参照。)に、校正専用液を貯留した校正専用液貯留槽がセンサ4への流路に接続するように前記弁装置を切り替えて、校正専用液による校正を行うように構成するのである。なお、校正専用液は所定の生体成分濃度を有する溶液であり、この実施態様に適合するものとしては例えばグルコース標準液(200mg/dL)である。このようにすることにより、センサ4の校正をより適切に行うことが可能である。
【0115】
なお、校正専用液を貯留した校正専用液貯留槽は校正専用液の濃度毎に設けることが好ましく、例えば濃度0mg/dL、50mg/dL、100mg/dLのように、濃度が50mg/dLずつ異なる校正専用液を貯留した複数の校正専用液貯留槽を設けることが好ましい。
【0116】
ここで、濃度0mg/dLの校正液とは、測定対象の生体成分濃度が0mg/dLでない校正液から測定対象の生体成分を除去した後の校正液をいう。
【0117】
また、上記各実施態様では、センサ4の校正を行う前記状態(B)のときには、校正液貯留槽2に収容される校正液を重力に基づいてセンサ4に送り込む構成になっているが、このような構成の代わりに、校正液貯留槽2とセンサ4とを連通する流路の途中にポンプ等の圧送手段を介装し、このポンプを介して校正液を強制的にセンサ4に圧送するようにしても良い。前記圧送手段は、前記経路のどの部分に介装してもよいが、校正液貯留槽2と回転弁5A(又は5B)との間の流路に介装すると、状態(C)のとき(図5参照。)、即ちプローブ3のフラッシングを行う状態のときに、プローブ3の浸透部9に対して正圧のより高い液圧を作用させて、浸透部9に付着した血餅等の剥離及び洗浄をより効果的に行うことが可能になる。
【0118】
この発明に係る生体成分測定装置は、図面に示される実施態様に制限されること無く、この発明の目的を達成することができる限り、適宜の設計変更をすることができる。
【符号の説明】
【0119】
1A、1B、1C、1D 生体成分測定装置
2 貯留槽
3 プローブ
4 センサ
5A、5B 回転弁
6 ポンプ
7 排液槽
8 血管
9 浸透部
10 制御部
11 気体混入器
13 生体適合液貯留槽
13A 生体適合液
21 三方切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象である生体成分と同一の成分を既知の濃度で含有する校正液を貯留する校正液貯留槽と、
外部から内部へと測定対象の生体成分を浸透させることのできる浸透部を備えるとともに、前記校正液を収容することができるプローブと、
前記校正液貯留槽から前記プローブ内に供給された前記校正液と前記浸透部を通じて浸透して来た測定対象の生体成分との混合液に含まれる測定対象の生体成分を測定するセンサと、
前記校正液貯留槽から前記プローブへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブから前記センサへと前記混合液を流通可能にする状態(A)と、前記プローブを経由することなく前記校正液貯留槽から前記センサへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブ内の液を循環可能にする状態(B)とのいずれかの状態に切り替える流通切替手段と、
前記プローブ内の液を循環させる液循環手段と、
を備えて成ることを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項2】
前記流通切替手段は、前記プローブへと前記校正液を流通可能にするとともに、前記プローブから前記センサへは流通不可能にする状態(C)にも切替可能である請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記流通切替手段は、制御部により前記状態(A)又は前記状態(B)に切り替えられるように制御されることを特徴とする請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
前記流通切替手段は、前記状態(A)、前記状態(B)又は前記状態(C)に切り替えられるように制御部により制御されることを特徴とする請求項2に記載の生体成分測定装置。
【請求項5】
状態(A)である場合には、前記校正液貯留槽から前記プローブまでに至る流路に、及び、状態(B)である場合には、前記校正液貯留槽から前記センサまでに至る流路に、気体を混入することのできる気体供給手段が設けられて成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体成分測定装置。
【請求項6】
前記気体供給手段は、前記制御部により気体の混入が制御されることを特徴とする請求項5に記載の生体成分測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記状態(B)においてセンサに気体を混入し、次いで状態(A)に切り替えてプロ−ブへと気体を混入するように気体供給手段を制御する請求項6に記載の生体成分測定装置。
【請求項8】
測定対象である生体成分と同一の成分を含まないベース液を貯留したベース液貯留槽を備えること、及び、前記流通切替手段が、このベース液貯留槽と前記校正液貯留槽とを、前記センサへの流路に選択的に接続することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の生体成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−254224(P2012−254224A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129571(P2011−129571)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】