説明

生体検査装置及び生体検査装置のプログラム

【課題】複数の発生源からなる生体信号から必要な生体信号を分離することにより検出精度の高い生体検査装置を得る。
【解決手段】生体センサが検出した生体信号から極値を抽出する極値抽出手段と、
前記極値抽出手段が抽出した極値情報をもとに生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定手段と、
前記周期判定手段が判定した周期の情報に基づいて前記生体センサが検出した生体信号から周期波形を抽出する周期波形抽出手段と、
前記周期波形抽出手段が抽出した周期波形に基づいた信号と前記極値抽出手段が抽出した検査対象の波形信号の極値情報を用いて、該検査対象の波形信号に含まれる周期波形を推定し、推定した推定周期波形を該検査対象の波形信号から除去する非周期波形抽出手段と、を有する信号処理部を備えた生体検査装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検体からの生体信号を取得する生体検査装置に関するもので、特に非周期的な生体信号の取得を行う生体検査装置に関するものである。
【0002】
本発明は、突発的、非周期的に発生する咳の回数や種類、嚥下の回数、頻度を解析する生体検査装置に関するもので、特に生体信号に含まれる発生源が異なり周期的に発生する心音や呼吸音といった解析に不必要なノイズを除去、低減する生体検査装置及び生体検査装置のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
被検体からの生体信号を取得する装置としては、特許文献1では、マイクロホンにより生体音を検知する収集装置が開示されている。このようなマイクロホンにより生体信号を検出する収集装置では、呼吸音、心拍音などの複数の発生源による音(振動)が重畳されて信号波形として検出される、目的の生体信号を検出するためには、複数の発生源による信号を発生源毎に分離して解析する必要がある。
【0004】
特許文献1の収集装置では、このような問題に対して、呼吸音と心拍音では周波数帯域が異なることから、周波数フィルタにより生体信号を分離することにより解決を図っている。
【特許文献1】特開2006−192020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、周波数フィルタにより発生源が異なる生体信号を分離するためには、各生体信号間での周波数帯域が異なっている必要があり、周波数帯域が重なる生体信号間では特許文献1の手段では必要な生体信号を分離することができない。例えば呼吸、咳、嚥下及び静脈弁の動作音等では周波数帯域が一部重なる。
【0006】
本願発明は上記問題に鑑み、複数の発生源からなる生体信号から必要な生体信号を分離することにより検出精度の高い生体検査装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
(1)生体信号を検出する生体センサと、
前記生体センサが検出した生体信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備えた生体検査装置であって、
前記信号処理部は、
生体信号から極値を抽出する極値抽出手段と、
前記極値抽出手段が抽出した極値情報をもとに生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定手段と、
前記周期判定手段が判定した周期の情報に基づいて前記生体センサが検出した生体信号から周期波形を抽出する周期波形抽出手段と、
前記周期波形抽出手段が抽出した周期波形に基づいた信号と前記極値抽出手段が抽出した検査対象の波形信号の極値情報を用いて、該検査対象の波形信号に含まれる周期波形を推定し、推定した推定周期波形を該検査対象の波形信号から除去する非周期波形抽出手段と、
を有することを特徴とする生体検査装置。
(2)前記周期波形抽出手段で抽出した周期波形に基づいた信号は、複数の周期波形から作成したことを特徴とする(1)に記載の生体検査装置。
(3)前記非周期波形抽出手段は、検査対象の波形信号の振幅及び周期を極値情報として用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の生体検査装置。
(4)前記周期判定手段は、生体信号から複数の極値を抽出し、該極値の信号値又は該極値相互間の時間間隔に基づいて周期を判定することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の生体検査装置。
(5)前記周期判定手段は、生体信号から複数の極値を抽出し、複数の極値相互の時間間隔から複数の候補周期を選択し、該候補周期とした場合の隣接する候補波形相互間の相関係数を算出し、算出した相関係数が最も高い候補周期を前記生体信号に含まれる周期波形の周期とすることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の生体検査装置。
(6)前記生体信号は、発生源が異なる複数の生体信号であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の生体検査装置。
(7)前記非周期波形抽出手段は、周期波形信号が変化した時期を検出し、該検出した時期に基づいて非周期波形信号の検出を行う検査期間を決定することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の生体検査装置。
(8)生体信号を取得する複数の生体センサを有し、
前記非周期波形抽出手段は、一つの生体センサが検出した生体信号に基づいて前記検査期間を決定し、決定した該検査期間における他の生体センサが検出した生体信号から非周期波形信号の検出を行うことを特徴とする(7)に記載の生体検査装置。
(9)前記判定手段が、周期的な生体信号を抽出できない場合にはエラー判定することを特徴とする(1)に記載の生体検査装置。
(10)生体信号を検出する生体センサを有する生体検査装置のプログラムであって、
前記生体センサが検出した生体信号から極値を抽出する極値抽出ステップと、
前記極値抽出ステップで抽出した極値情報をもとに生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定ステップと、
前記周期判定ステップで判定した周期の情報に基づいて前記生体センサが検出した生体信号から周期波形を抽出する周期波形抽出ステップと、
前記周期波形抽出ステップで抽出した周期波形に基づいた信号と前記極値抽出手段が抽出した検査対象の波形信号の極値情報を用いて、該検査対象の波形信号に含まれる周期波形を推定し、推定した推定周期波形を該検査対象の波形信号から除去する非周期波形抽出ステップと、
を有することを特徴とするコンピュータに実行させる生体検査装置のプログラム。
(11)前記周期波形抽出ステップで抽出した周期波形に基づいた信号は、複数の周期波形から作成したことを特徴とする(10)に記載の生体検査装置のプログラム。
(12)前記非周期波形抽出ステップでは、検査対象の波形信号の振幅及び周期を極値情報として用いることを特徴とする(10)又は(11)に記載の生体検査装置のプログラム。
(13)前記周期判定ステップは、生体信号から複数の極値を抽出する極値抽出ステップと、該極値の信号値又は極値間の時間間隔に基づいて周期を判定する周期抽出ステップとを含むことを特徴とする(10)乃至(12)のいずれかに記載の生体検査装置のプログラム。
(14)前記周期抽出ステップでは、複数の極値相互の時間間隔から複数の候補周期を選択し、該候補周期とした場合の隣接する候補波形相互間の相関係数を算出し、算出した相関係数が最も高い候補周期を前記生体信号に含まれる周期波形の周期とすることを特徴とする(10)乃至(12)のいずれかに記載の生体検査装置のプログラム。
(15)前記生体信号は、発生源が異なる複数の生体信号であることを特徴とする(10)乃至(14)のいずれかに記載の生体検査装置のプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の発生源からなる生体信号から必要な生体信号を分離することにより検出精度の高い生体検査装置を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0010】
図1は、生体信号採取装置の使用例を示す模式図である。同図に示す例では二つの生体信号採取装置の生体センサ1を被検体の生体面Hに取り付けた状態を示している。生体信号採取装置により、咳、嚥下音、呼吸音、心音、その他の発生源の異なる複数の生体信号を検知して後述の信号処理部2に送信する。
【0011】
図2は、生体センサ1の断面図である。同図に示す例では生体信号として生体音を採取するものである。同図に示すように、生体センサ1は、円柱形状で一端面が開口した筐体部12と、該筐体部12の開口面を閉塞するように筐体部12に密着した中間シート部材13とを備えている。
【0012】
生体センサ1は、いわゆるコンデンサマイクロホン方式の集音ユニットである。生体センサ1は変換部15と、上面及び下面が開口した円錐形状の空気室壁16からなる集音部と、変換部15により得た電気信号を増幅してデジタル信号に変換したり、外部の記憶部あるいは信号処理部(図示せず)に送信したりする素子19と、変換部15及び素子19を搭載した基板17と、変換部15及び素子19に電源を供給するバッテリ部18から構成される。
【0013】
生体センサ1は、中間シート部材13に設けられた粘着剤層14により患者(被検体)の所定の部位に貼り付けられている。患者が呼吸や嚥下などを行うことにより生体音を発すると、この生体音の波長に合わせて中間シート部材13が微小振動する。中間シート部材13の微小振動は空気室壁16を伝って変換部15に伝搬される。そして、生体音の振動が変換部15により電気信号に変換され、素子19によりデジタル信号に変換されて、後述の信号処理部2に送信される。
【0014】
なお生体センサ1として、集音部を有して音信号を取得するセンサについて説明したが、これに限られず加速度センサにより加速度信号を取得する生体センサであってもよい。
【0015】
図3は、実施形態に係る生体検査装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、生体検査装置は、生体センサ1、信号処理部2を備えている。信号処理部2では生体センサ1が取得した生体信号から周期的な信号を取り除くことにより非周期的な生体信号を検出する。信号処理部2は、生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定部210、判定した周期の情報に基づいて生体信号から周期波形を抽出し、抽出した周期波形から規格化波形を生成する規格化波形生成部220、生成した規格化波形と検査対象(検出対象ともいう)の生体信号とに基づき非周期波形を検出する非周期波形抽出部230を備えている。信号処理部2が有する内部メモリに記憶しているプログラムをCPU(不図示)が実行することにより前記各部の制御及び各種処理を実行する。
【0016】
次に図4から図11に基づき各部で実行する処理について説明する。図4は実施形態に係る生体検査装置の処理を説明するフローチャートである。なお、図4のステップS11〜S13までが周期判定部210で、ステップS21及びS22が規格化波形生成部220で、ステップS31及びS32が非周期波形抽出部230で、それぞれ実行される処理である。
【0017】
まず周期判定部210では、極値pの算出を行う(ステップS11)。ステップS11について図5、図6を用いて説明する。
【0018】
図5は、ステップS11のサブルーチンを説明する図である。同図において、ステップS111では、生体センサからの生体信号sが基準値をクロスしたか否かを判断する。ここで基準値とは所定の出力値であり、例えば0(ゼロ)出力である。また信号値に対するオフセットの影響を除去するために、あらかじめ生体信号に対してローパスフィルタを介した信号を用いてもよい。またクロスするとは、いいかえると基準値と信号値が一致することである。図6は生体センサからの生体信号と基準値との関係を示す図である。同図に示すように生体信号sと基準値(0)とは、cp1、cp2の2箇所でクロスしていることを示している。
【0019】
ステップS111で生体信号sと基準値がクロス(cp1)した場合(ステップS111:Yes)には、以降の生体信号sの信号値と時間(位置)を記録し続ける(ステップS112)。続いてステップS113ではステップS111と同様の判断を行い、次にクロス(cp2)した場合(ステップS113:Yes)には、ステップS114では、それまでにステップS112で記録した生体信号sの中から極値pとその極値pの時間を算出して図4のフローに戻る(Return)。
【0020】
なお、極値pの算出のフローとして、生体信号sが基準値をクロス(cp1)した時点で変数をリセットし、次にクロス(cp2)するまで生体信号sの信号値が変数よりも大きい場合(あるいは小さい場合)に変数を当該信号値に書き換えを行うことによって二つのクロス点間の極大値(あるいは極小値)を求めるように処理してもよい。
【0021】
例えばステップS111でcp1、ステップS113でcp2をそれぞれクロスした点と判断した場合には、cp1とcp2間における生体信号sの中で最大の値(あるいは最小の値)を極値pとする。なお、本稿では、極値pとはある期間内、具体的には基準値をクロスする2つのクロス点間での最大あるいは最小の値の意味として用いる。また以降の説明では、極値pのうち最大値である極大値を用いて処理を行う例について説明を行うが、極値pのうち最小の値である極小値を用いて処理を行ってもよいし、極大値と極小値の両方を用いて処理を行ってもよい。
【0022】
図4のステップS12では、基準最大値pmaxを算出する。ステップS12について図7、図8を用いて説明する。
【0023】
図7は、ステップS12のサブルーチンを説明する図である。同図のフローにより図8に示すような生体信号の信号値から所定時間tcの範囲内での最大の極値pを算出する。まず、図7のステップS121では変数yを0に初期化する。続くステップS122では、比較の対象となる極値p(例えば図8のp1)を変数yの値と比較する。極値pの方が変数yよりも大きい場合は、変数yを極値pに更新する(ステップS122)。
【0024】
これを所定時間tcが経過するまでは(ステップS123:No)比較の対象となる極値pを順次p1からp6まで更新してゆき、ステップS122で最大値を適宜更新してゆく。
【0025】
所定時間経過した場合(ステップS123:Yes)には、その時点で変数yに記録されている極値p(図8に示す例ではp3)を基準最大値pmaxに決定し(ステップS124)、図4のフローに戻る(Return)。
【0026】
図4のステップS13では、基準周期Tsを算出する。ステップS13について図9、図10を用いて説明する。
【0027】
図9は、ステップS13のサブルーチンを説明する図である。まずステップS131では、初期化としてカウンタ変数nを1に設定する。ステップ132では対象の極値pを設定する。具体的には、ステップS12で算出した基準最大値pmaxからn番目後の極値p(n)を対象とする。
【0028】
ステップS133ではpmaxと対象の極値p(n)(例えば、p(1))の信号値とを比較し、所定の範囲内か否かを判断する。具体的にはpmaxの信号値に対して±10%(90%〜110%)の範囲内であるかを判断する。所定の範囲内でなければ(ステップS133:No)、カウンタ変数nをインクリメントし、対象の極値p(n)を次の極値に変更する(ステップS137)。なおこの際nが所定の範囲よりも大きく(ステップS138:No)、所定の回数で基準周期Tsが決定できなかった場合には、エラー判定し、異常信号を出力して終了する(ステップS139、End)。
【0029】
一方、所定の範囲内であると判断した場合(ステップS133:Yes)には、pmaxとp(n)との時間間隔を候補周期Tn(図10の例ではT1)にセットする(ステップS134)。なお候補周期Tnとしては所定周期範囲内でない、極端に短い周期は候補周期とはしないようにしている。
【0030】
例えば、咳や嚥下の生体信号を解析する場合に含まれる心拍や静脈弁の動作音を除去したい場合は、除去したい信号の下限周期以下である例えば0.3秒以下の周期を候補周期としないことで、処理回数を減らすことができる。
【0031】
次のステップS135では、pmaxから候補周期の2倍の時間経過した前後に所定範囲内の極値pがあるか否かを判断する。具体的には図10の示す例では、pmaxから候補周期T1の2倍の時間経過した所定範囲内(破線枠a内)の時間に、所定範囲内の信号値の極値pがあるかを判断する。
【0032】
なお、所定範囲内とは、図10に示す例ではy方向としてはpmaxの±10%(90〜110%)の範囲内、x方向としてはT1の2倍(200%)から±20%の範囲内(180%〜220%)を所定範囲内としている。
【0033】
所定範囲a内に極値pが存在していない場合(ステップS135:No)にはステップS137以降のフローを継続する。一方、所定範囲aの中に極値pが存在している場合(ステップS135:Yes)には、候補周期Tnを基準周期Tsに確定して(ステップS136)、図4のフローに戻る(Return)。
【0034】
基準周期Ts内で複数の極大値(極小値)が存在していても、簡単な処理で精度よく基準周期Tsを求めることが可能になる。従って、基準周期Ts内で極大値(極小値)が一つしか存在しない周期的な生体信号であれば処理をする必要はない。
【0035】
概念の理解のために、オフライン処理をイメージして処理の考え方を説明しているが、オンラインで処理する場合には、最初の極大値p1を基準にして図4のステップS13の基準周期Tsを算出する処理を並行して行ってもよい。あるいは、次の極大値p2が極大値p1よりも大きければ極大値p2を基準にし直して、図4のステップS13の基準周期Tsを算出する処理を初期化して再度並行して行う処理にしてもよく、特に限定するものではない。
【0036】
続いて図4のステップS21では、ステップS13で算出した基準周期Tsに基づいて生体信号sから波形を抽出(切り出しともいう)、及び抽出した波形の規格化を行う。当該処理について、図11に基づいて説明する。図11は生体信号sから非周期波形を検出する処理を説明するための概念図である。同図において生体信号sから、基準周期Tsとpmaxの信号値及びそのタイミングの情報に基づいて、波形を抽出する。具体的には基準周期Ts前後(基準周期の90%〜110%)でpmax前後(pmax信号値の90〜110%)の極値が存在した場合には極値間を周期Ts1とする一つの周期波形と判断する。図11において抽出した周期波形の例がwf1〜wf4である。なお、基準周期Tsは周期Ts1の値で逐次置き換えを行ってもよいし、基準周期Tsと周期Ts1を平均化処理した値に置き換えてもよい。
【0037】
そして抽出した周期波形wfを規格する規格化処理を行う。規格化処理とは周期波形の波高値(ピークツーピークともいう)及び周期Twfaに基づいて時間軸(横軸)と信号値軸(縦軸)を一定の範囲値に伸縮することである。例えば波高値、周期Twfaをそれぞれ8bitの256の値に収まるように変換する。このようにすることで、抽出した周期波形から、周期及び振幅の情報を取り除いた「波形の形状情報のみ」を抽出することができる。
【0038】
なお、信号値軸(縦軸)を波高値で規格化せずにpmax0の値で規格化したり、pmax0とpmax1の大きい方で規格化したりしてもよく、除去する周期波形の特性に適した方法で規格化処理すればよく限定するものではない。
【0039】
規格化波形を作成する目的は、生体信号のため周期Ts1やpmax1及び波高値が変化するため規格化せずに信号波形を平均化処理すると誤差が生じて性能が低減するのを改善するためである。なお「周期波形に基づいた信号」とは、当該規格化処理をした規格化波形のことを意味する概念である。
【0040】
このようにしてステップS21では、事前に抽出した周期波形から規格化波形を生成することにより初期規格化波形を生成する。
【0041】
ステップS22では、検査対象周辺の信号から周期波形を抽出し、抽出した周期波形を規格化し、当該規格化した周期波形をステップS21であらかじめ算出しておいた初期規格化波形に対して平均化処理することにより規格化波形を逐次更新していく。初期規格化波形wfb(0)を更新したものが規格化波形wfb(n)である。ここでいう平均化処理とは公知のデジタルフィルタ演算処理を含む。
【0042】
ステップS31では、検査対象の波形(図11のwf3)から特徴点を抽出する。ここで特徴点とは極値情報のことであり、例えば振幅(あるいは波高値)と周期(時間間隔)のことである。検査対象wf3のこれらの「特徴点」と、ステップS22で「規格化処理した波形」とを用いて推定周期波形wfcを算出する。具体的には、検査対象wf3の振幅と周期の値を用いて規格化処理とは逆の変換処理(復元処理ともいう)を行う。
【0043】
このように規格化波形を復元して推定周期波形を算出するようにすることで、検査対象の生体信号における周期波形の周期あるいは振幅(波高値)が変化しても、精度よく周期波形を推定することができる。
【0044】
検査対象wf3の振幅と周期の波形に非周期波形wfdが含まれることで、検査対象wf3の振幅と周期が正しく検出できなかった場合に、直前の検査対象wf2で得られている振幅と周期の値を用いて規格化処理とは逆の変換処理(復元処理)を行ってもよいし、更に以前の検査対象wf1で得られている振幅と周期の値を用いて線形近似や2次関数近似の関数近似の手法を用いて検査対象wf3の振幅と周期を推定した値を用いて同様の処理を行ってもよいし、オフライン処理の様に一度波形をメモリに保持することで次の検査対象wf4の振幅と周期の値を利用して関数近似してもよい。
【0045】
極値(極大値)の周期だけでなく、極大値と極小値間の周期も演算した値も利用して例えば規格化処理とは逆の変換処理する特徴点の信号に利用することでより検出の精度を高める様にしてもよい。
【0046】
ステップS32では、検査対象(wf3)の生体信号(生波形)から、ステップS31で算出した推定周期波形wfcを除去して非周期波形wfdを検出して終了する(End)。
【0047】
なお極値pのうち最大値を用いて処理の説明を行ったが、これに限られず、極値pのうち最小値(負の極値)を用いて処理を行うようにしてもよい。更に、ステップS13において基準周期Tsの算出を、信号値が同等の極値が等間隔で存在するか否かにより決定する処理について説明したが、これに限られない。「相関係数」を用いて周期を算出する方法として以下の方法を用いてもよい。(1)基準の極大値p(0)に続く複数の極大値p(n)に基づいて、基準の極大値p(0)と複数の極大値p(n)間の複数の候補基準周期Ts(n)を設定しておき、(2)基準の極大値p(0)から極大値p(n)間波形と極大値p(n)からTs(n)時間間の波形の相関係数をn個それぞれ算出し、(3)n個の相関係数の中で最大値となった波形に対応する極大値p(m)を求め、(4)基準の極大値p(0)と極大値p(m)間の時間から候補基準周期Ts(m)を基準周期Tsとして算出する。
【0048】
また図3、図4等の説明では、基準周期の算出、波形の規格化、非周期波形の抽出、等の処理をシリアルに行う例について説明したがこれに限られず、これらの処理をパラレルに行っておき基準周期周期Ts、規格化波形をリアルタイムで逐次更新するようにしてもよい。また取得した生体信号sをオフラインで信号処理部が処理することにより検査対象の生体信号よりも前の波形信号だけではなく、後の波形信号も用いて更に精度よく非周期波形の検出を行うようにしてもよい。
【0049】
このように、「生体センサが検出した生体信号から極値を抽出する極値抽出手段と、生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定手段と、周期判定手段が判定した周期の情報に基づいて前記生体センサが検出した生体信号から周期波形を抽出する周期波形抽出手段と、周期波形抽出手段が抽出した周期波形に基づいた信号と極値抽出手段が抽出した検査対象の波形信号の極値情報を用いて、該検査対象の波形信号に含まれる周期波形を推定し、推定した推定周期波形を該検査対象の波形信号から除去する非周期波形抽出手段と、を有する信号処理部を備えた生体検査装置」とすることにより、生体信号に含まれる検査(検出)対象外の周期的な生体信号を除去することができ、ひいては検査精度を向上することができる。特に、生体の弾性振動を生体に密着して測定する密着型のセンサにより、咳や嚥下を検査する場合に心拍や静脈弁の振動を低減することができる。
【0050】
[他の実施形態]
図12は、他の実施形態に係る生体検査装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示す例は第2の生体信号センサの信号に基づいて検査対象期間を定め、その検査対象期間において第1の生体信号センサにおいて非周期波形の抽出処理を行うものである。なお第2の生体信号センサとしては例えば特開2007−125360号に記載の加速度センサを用いた体動測定部やマイクを用いることができる。
【0051】
図12に示すように第2の生体信号センサからの生体信号により、検査対象期間を定め、定めた検査対象期間について第1の生体信号センサからの生体信号から周期的な体動や外部から生体に伝わる振動であるノイズを除去、低減すことができ検査精度を向上することができる。
【0052】
図13は、生体信号をモニタした際の周期と信号強度(振幅)の時間変化をプロットした例である。周期と信号強度は所定の値に基づいて規格化してプロットしている。同図に示すように非周期波形(非周期信号)として咳が発生した場合に、周期や信号強度が正しく求められなかったりその前後で周期と信号強度の双方の値が変化したりしていることがわかる。この変化を判断することによりその期間で非周期波形が発生した可能性が高いと判断できるので、変化が発生した前後の期間を検査対象期間とすることで体動測定部を用いずに検査対象期間と判断することにより、センサ1個で咳や嚥下の検査ができ被験者の取り付けられたセンサの煩わしさが低減でき利便性を向上できる。
【0053】
また検査対象期間の精度を上げるために、体動測定部の信号と組み合わせて検査対象期間の信号を作成することで検査対象期間より正確に判定できるため精度よく検査することが可能となる。更に、周期的な信号波形を抽出することができるので、抽出した信号波形の振幅信号を監視し、所定値以下である場合に、センサの異常(故障、取付不良)を判断し異常を出力することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】生体信号採取装置の使用例を示す模式図である。
【図2】生体センサ1の断面図である。
【図3】実施形態に係る生体検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る生体検査装置の処理を説明するフローチャートである。
【図5】ステップS11のサブルーチンを説明する図である。
【図6】生体センサからの生体信号と基準値との関係を示す図である。
【図7】ステップS12のサブルーチンを説明する図である。
【図8】最大の極値pの算出方法を説明する図である。
【図9】ステップS13のサブルーチンを説明する図である。
【図10】基準周期Tsの算出方法を説明する図である。
【図11】生体信号sから非周期波形を抽出する処理を説明するための概念図である。
【図12】他の実施形態に係る生体検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】生体信号をモニタした際の周期と信号強度(波高値)の時間変化をプロットした例である。
【符号の説明】
【0055】
1 生体センサ
2 信号処理部
210 周期判定部
220 規格化波形生成部
230 非周期波形抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体信号を検出する生体センサと、
前記生体センサが検出した生体信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備えた生体検査装置であって、
前記信号処理部は、
生体信号から極値を抽出する極値抽出手段と、
前記極値抽出手段が抽出した極値情報をもとに生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定手段と、
前記周期判定手段が判定した周期の情報に基づいて前記生体センサが検出した生体信号から周期波形を抽出する周期波形抽出手段と、
前記周期波形抽出手段が抽出した周期波形に基づいた信号と前記極値抽出手段が抽出した検査対象の波形信号の極値情報を用いて、該検査対象の波形信号に含まれる周期波形を推定し、推定した推定周期波形を該検査対象の波形信号から除去する非周期波形抽出手段と、
を有することを特徴とする生体検査装置。
【請求項2】
前記周期波形抽出手段で抽出した周期波形に基づいた信号は、複数の周期波形から作成したことを特徴とする請求項1に記載の生体検査装置。
【請求項3】
前記非周期波形抽出手段は、検査対象の波形信号の振幅及び周期を極値情報として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体検査装置。
【請求項4】
前記周期判定手段は、生体信号から複数の極値を抽出し、該極値の信号値又は該極値相互間の時間間隔に基づいて周期を判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体検査装置。
【請求項5】
前記周期判定手段は、生体信号から複数の極値を抽出し、複数の極値相互の時間間隔から複数の候補周期を選択し、該候補周期とした場合の隣接する候補波形相互間の相関係数を算出し、算出した相関係数が最も高い候補周期を前記生体信号に含まれる周期波形の周期とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体検査装置。
【請求項6】
前記生体信号は、発生源が異なる複数の生体信号であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の生体検査装置。
【請求項7】
前記非周期波形抽出手段は、周期波形信号が変化した時期を検出し、該検出した時期に基づいて非周期波形信号の検出を行う検査期間を決定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の生体検査装置。
【請求項8】
生体信号を取得する複数の生体センサを有し、
前記非周期波形抽出手段は、一つの生体センサが検出した生体信号に基づいて前記検査期間を決定し、決定した該検査期間における他の生体センサが検出した生体信号から非周期波形信号の検出を行うことを特徴とする請求項7項に記載の生体検査装置。
【請求項9】
前記判定手段が、周期的な生体信号を抽出できない場合にはエラー判定することを特徴とする請求項1に記載の生体検査装置。
【請求項10】
生体信号を検出する生体センサを有する生体検査装置のプログラムであって、
前記生体センサが検出した生体信号から極値を抽出する極値抽出ステップと、
前記極値抽出ステップで抽出した極値情報をもとに生体信号に含まれる周期波形の周期を判定する周期判定ステップと、
前記周期判定ステップで判定した周期の情報に基づいて前記生体センサが検出した生体信号から周期波形を抽出する周期波形抽出ステップと、
前記周期波形抽出ステップで抽出した周期波形に基づいた信号と前記極値抽出手段が抽出した検査対象の波形信号の極値情報を用いて、該検査対象の波形信号に含まれる周期波形を推定し、推定した推定周期波形を該検査対象の波形信号から除去する非周期波形抽出ステップと、
を有することを特徴とするコンピュータに実行させる生体検査装置のプログラム。
【請求項11】
前記周期波形抽出ステップで抽出した周期波形に基づいた信号は、複数の周期波形から作成したことを特徴とする請求項10に記載の生体検査装置のプログラム。
【請求項12】
前記非周期波形抽出ステップでは、検査対象の波形信号の振幅及び周期を極値情報として用いることを特徴とする請求項10又は11に記載の生体検査装置のプログラム。
【請求項13】
前記周期判定ステップは、生体信号から複数の極値を抽出する極値抽出ステップと、該極値の信号値又は極値間の時間間隔に基づいて周期を判定する周期抽出ステップとを含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の生体検査装置のプログラム。
【請求項14】
前記周期抽出ステップでは、複数の極値相互の時間間隔から複数の候補周期を選択し、該候補周期とした場合の隣接する候補波形相互間の相関係数を算出し、算出した相関係数が最も高い候補周期を前記生体信号に含まれる周期波形の周期とすることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の生体検査装置のプログラム。
【請求項15】
前記生体信号は、発生源が異なる複数の生体信号であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の生体検査装置のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−11540(P2009−11540A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176082(P2007−176082)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】