説明

生体状態判定装置

【課題】本発明は、運転者の居眠り状態及び飲酒状態を適切に判定することができる生体状態判定装置を提供する。
【解決手段】本発明は、車両の走行支援中に運転者の生体状態を判定する生体状態判定装置1であって、車両のハンドル及びブレーキペダルに反力を付与する操舵アクチュエータ6及びブレーキペダルアクチュエータ7と、ハンドル及びブレーキペダルに反力を付与したときの運転者によるハンドルやブレーキペダルの操作結果に基づいて、生体状態を判定するECU2と、を備える。この生体状態判定装置1によれば、ハンドル及びブレーキペダルに反力を付与したときの運転者の操作結果すなわち運転者の反応から、居眠り状態や飲酒状態等の生体状態を適切に判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の生体状態を判定する生体状態判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、例えば特開平5−85221号公報に記載された異常操舵判定装置が知られている。この異常操舵判定装置では、運転者の操舵量、車線変更動作、及び車両の車速を検出し、これらの検出結果から車線に対する車両位置の偏差量やこの偏差の修正時における運転者の操舵動作の遅れを演算する。そして、演算した操舵動作の遅れに基づいて運転者の状態が居眠り状態等の異常状態であるか否かの判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−85221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者が飲酒状態である場合には、居眠り状態と異なって運転者は意識があるため、操舵動作の遅れが顕著でない場合が考えられる。このため、前述した異常操舵判定装置においては、運転者の飲酒状態について適切に判定できない可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、操作子に反力を付与したときの運転者による操作子の操作結果に基づいて生体状態を判定することにより、運転者の居眠り状態及び飲酒状態を適切に判定することができる生体状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の走行支援中に運転者の生体状態を判定する生体状態判定装置であって、車両の操作子に反力を付与する反力付与手段と、操作子に反力を付与したときの運転者による操作子の操作結果に基づいて、生体状態を判定する生体状態判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る生体状態判定装置によれば、操作子に反力を付与したときの運転者の操作結果すなわち運転者の反応から、居眠り状態や飲酒状態等の生体状態を適切に判定することができる。例えば、飲酒状態の運転者は、体のコントロールが利きにくくなり、反力に対する反応として、必要以上のハンドルの回転操作やブレーキペダルの踏み込み操作等の過操作を行いやすいと考えられるので、操作結果としての過操作量に基づいて運転者の飲酒状態を適切に判定することが可能となる。また、居眠り状態の運転者は、反力に対する反応として、意識が落ちた状態や朦朧とした状態から反力に気づいて操作を開始すると考えられるため、操作結果としての操作遅れ時間に基づいて運転者の居眠り状態を適切に判定することが可能となる。
【0008】
また、生体状態判定手段は、運転者による操作子の操作遅れ時間に基づいて、運転者の居眠り状態を判定することが好ましい。居眠り状態の運転者は、反力に対する反応として、意識が落ちた状態や朦朧とした状態から反力に気づいて操作を開始すると考えられるため、操作結果としての操作遅れ時間に基づいて運転者の居眠り状態を適切に判定することが可能となる。
【0009】
また、生体状態判定手段は、運転者による操作子の過操作量に基づいて、運転者の飲酒状態を判定することが好ましい。飲酒状態の運転者は、反力に対する反応として、必要以上のハンドルの回転やブレーキペダルの踏み込み等の過操作を行いやすいと考えられるので、操作結果としての過操作量に基づいて運転者の飲酒状態を適切に判定することが可能となる。
【0010】
また、操作子は、車両のハンドルであることが好ましい。運転中の運転者が通常保持しているハンドルを操作子として採用することで、付与した反力に運転者が気づかない可能性を低くして、適切な生体状態の判定を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転者の居眠り状態及び飲酒状態を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る生体状態判定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のECUの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る生体状態判定装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る生体状態判定装置1は、車両に設けられ、運転者の居眠り状態や飲酒状態等の生体状態を判定するものであり、装置を統括的に制御するECU[Electric Control Unit](生体状態判定手段)2を有している。
【0015】
ECU2は、演算処理を行うCPU[Central Processing Unit]、記憶部となるROM[Read Only Memory]及びRAM[Random Access Memory]、入力信号回路、出力信号回路、電源回路等により構成されている。ECU2は、走行支援システム3、操舵検出部4、及びブレーキペダル操作検出部5と電気的に接続されている。更に、ECU2は、操舵アクチュエータ(反力付与手段)6、ブレーキペダルアクチュエータ(反力付与手段)7、スピーカ8、及び通信部9と電気的に接続されている。
【0016】
走行支援システム3は、車両の走行を支援するものであり、例えばACC[Active Cruise Control]やLKA[Lane Keep Assist]等の走行支援機能を有している。走行支援システム3は、各種センサにより走行支援中の車両の走行状態(前後方向における先行車両との車間距離や車幅方向における車線境界線との距離等)を検出する。走行支援システム3は、検出した車両の走行状態に関する走行状態情報をECU2に送信する。
【0017】
操舵検出部4は、車両のハンドル(操作子)に設けられ、運転者によるハンドルの操作を検出する。操舵検出部4は、検出したハンドルの操作を操舵情報としてECU2に送信する。
【0018】
ブレーキペダル操作検出部5は、車両のブレーキペダル(操作子)に設けられ、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作を検出する。ブレーキペダル操作検出部5は、検出したブレーキペダルの踏み込み操作をブレーキペダル操作情報としてECU2に送信する。
【0019】
操舵アクチュエータ6は、車両のハンドルに設けられ、ハンドルに回転方向の反力(運転者のハンドルを保持する力に反発する力)を付与する。操舵アクチュエータ6は、ECU2からの指令に応じた反力をハンドルに付与する。
【0020】
ブレーキペダルアクチュエータ7は、車両のブレーキペダルに設けられ、ブレーキペダルに反力(運転者の足を押し返す力)を付与するものである。ブレーキペダルアクチュエータ7は、ECU2からの指令に応じた反力をブレーキペダルに付与する。
【0021】
スピーカ8は、車室内に設けられ、音声により運転者に情報を伝達する。スピーカ8は、ECU2からの指令により、居眠り覚醒のための警報や音声による注意喚起等を行う。通信部9は、車両に設けられ、通信インフラを通じて管理者(例えば、運送事業会社の管理システムや責任者等)に各種情報を送信するものである。通信部9は、ECU2の指令により、運転者の生体状態に関する情報を管理者に通知する。
【0022】
ECU2は、走行支援中の走行支援システム3から送信された走行状態情報に基づいて、
運転者の生体状態を確認すべき確認タイミングであるか否かを判定する。この生体状態の確認タイミングとしては、例えば走行支援システム3による自動走行中の車両が前方の先行車両に追いついたとき(車間距離が予め定められた距離以下となったとき)や、路幅の狭い区間に入って車両と車線境界線等との距離が予め定められた距離以下となったときが挙げられる。
【0023】
ECU2は、運転者の生体状態を確認すべき確認タイミングであると判定した場合、操舵アクチュエータ6及びブレーキペダルアクチュエータ7に反力付与指令を送信する。なお、各アクチュエータが付与する反力の強さは、一定であっても良く、また走行支援の内容等に応じて変化する態様であっても良い。
【0024】
ECU2は、反力付与指令を送信した場合、操舵検出部4からの送信により操舵情報を取得すると共に、ブレーキペダル操作検出部5からの送信によりブレーキペダル操作情報を取得する。ECU2は、取得した操舵情報及びブレーキペダル操作情報に基づいて、ハンドル及びブレーキペダルに反力を付与したときの運転者の操作結果を抽出する。具体的には、操作結果として、反力を付与した時点から運転者がハンドルやブレーキペダルを操作するまでの操作遅れ時間と反力に対して運転者が過剰に操作した過操作量とが抽出される。
【0025】
ECU2は、抽出した操作結果に基づいて、運転者の生体状態を判定する。具体的には、ECU2は、抽出した操作結果に基づいて、運転者の操作遅れ時間が予め定められた遅れ時間閾値以上であるか否かを判定する。ECU2は、操作遅れ時間が遅れ時間閾値以上であると判定した場合、運転者の過操作量が予め定められた過操作閾値以上であるか否かを判定する。
【0026】
ECU2は、運転者の過操作量が過操作閾値以上ではないと判定した場合、運転者は居眠り状態であると判定する。ECU2は、運転者が居眠り状態であると判定した場合、警報により運転者を覚醒させるための警報出力指令をスピーカ8に送信すると共に、管理者に運転者が居眠り状態であると判定されたことを通知する居眠り状態通知指令を送信する。
【0027】
一方、ECU2は、運転者の過操作量が過操作閾値以上であると判定した場合、運転者は飲酒状態であると判定する。ECU2は、運転者が飲酒状態であると判定した場合、車両を停止してアルコール検査を行うことを要求するアルコール検査要求指令をスピーカ8に送信すると共に、管理者に運転者が飲酒状態であると判定されたことを通知する飲酒状態通知指令を送信する。
【0028】
次に、生体状態判定装置1のECU2の処理について図面を参照して説明する。このECU2は、走行支援システム3による走行支援の開始によって処理を開始し、走行支援中以下の処理を繰り返す。
【0029】
図2に示すように、ステップS1において、走行支援中の走行支援システム3から送信された走行状態情報に基づいて、運転者の生体状態を確認すべき確認タイミングであるか否かが判定される。運転者の生体状態を確認すべき確認タイミングではないと判定された場合、所定時間経過後に再び確認タイミングの判定が行われる。
【0030】
一方、運転者の生体状態を確認すべき確認タイミングであると判定された場合、操舵アクチュエータ6及びブレーキペダルアクチュエータ7に反力付与指令が送信される(S2)。その後、操舵検出部4及びブレーキペダル操作検出部5からの送信により、操舵情報及びブレーキペダル操作情報が取得される。そして、取得された操舵情報及びブレーキペダル操作情報に基づいて、ハンドル及びブレーキペダルに反力を付与したときの運転者の操作結果が抽出される(S3)。
【0031】
続いて、抽出した操作結果に基づいて、運転者の操作遅れ時間が予め定められた遅れ時間閾値以上であるか否かが判定される(S4)。操作遅れ時間が遅れ時間閾値以上ではないと判定された場合、運転者は正常状態であると判定して処理を終了し、ステップS1に戻る。一方、操作遅れ時間が遅れ時間閾値以上であると判定された場合、運転者の過操作量が予め定められた過操作閾値以上であるか否かが判定される(S5)。
【0032】
ステップS5において、運転者の過操作量が過操作閾値以上ではないと判定された場合、運転者は居眠り状態であると判定される(S6)。一方、運転者の過操作量が過操作閾値以上であると判定された場合、運転者は飲酒状態であると判定される(S7)。その後、判定結果に応じて、警報及び通知を行うための指令がスピーカ8及び通信部9に送信される(S8)
【0033】
以上説明した生体状態判定装置1では、ハンドル及びブレーキペダルに反力を付与したときの運転者の操作結果すなわち運転者の反応から、居眠り状態や飲酒状態等の運転者の生体状態を判定することができる。例えば、飲酒状態の運転者は、体のコントロールが利きにくくなり、反力に対する反応として、必要以上のハンドルの回転やブレーキペダルの踏み込み等の過操作を行いやすいと考えられるので、操作結果としての過操作量に基づいて運転者の飲酒状態を適切に判定することが可能となる。また、居眠り状態の運転者は、反力に対する反応として、意識が落ちた状態や朦朧とした状態から反力に気づいて操作を開始すると考えられるので、操作結果としての操作遅れ時間に基づいて運転者の居眠り状態を適切に判定することが可能となる。
【0034】
更に、不慣れのため通常運転時に過操作等を行いやすい運転初心者については、操作子に付与された反力に従順に従う傾向があると考えられるので、反力に対する反応に基づいて判定を行うことで運転初心者の不慣れな操作を居眠り状態等による異常操作と誤判定することを回避することが可能となり、これによって生体状態判定装置1の信頼性の向上が図られる。
【0035】
また、乱暴な運転を行う運転者については、そのような運転時に走行支援システムを使用しない傾向があるので、走行支援中に運転者の生体状態を判定する態様とすることで、乱暴な運転操作を居眠り状態等による異常操作と誤判定することを回避することが可能となる。
【0036】
また、生体状態判定装置1では、特許請求の範囲に記載の操作子として、運転中の運転者が通常保持しているハンドルを採用することで、操作子に付与した反力に運転者が気づかない可能性を低くして、適切な生体状態の判定を実現することができる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、操作遅れ時間が遅れ時間閾値以上であり、且つ過操作量が過操作閾値以上である場合に、運転者は飲酒状態であると判定しているが、過操作量のみから運転者の飲酒状態を判定する態様であっても良い。また、操作子は、ハンドル及びブレーキペダルに限られない、アクセルペダル等を加えても良く、或いはハンドルのみであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…生体状態判定装置、2…ECU(生体状態判定手段)、3…走行支援システム、4…操舵検出部、5…ブレーキペダル操作検出部、6…操舵アクチュエータ(反力付与手段)、7・・・ブレーキペダルアクチュエータ(反力付与手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行支援中に運転者の生体状態を判定する生体状態判定装置であって、
前記車両の操作子に反力を付与する反力付与手段と、
前記操作子に反力を付与したときの前記運転者による前記操作子の操作結果に基づいて、前記生体状態を判定する生体状態判定手段と、
を備えることを特徴とする生体状態判定装置。
【請求項2】
前記生体状態判定手段は、前記運転者による前記操作子の操作遅れ時間に基づいて、前記運転者の居眠り状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の生体状態判定装置。
【請求項3】
前記生体状態判定手段は、前記運転者による前記操作子の過操作量に基づいて、前記運転者の飲酒状態を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体状態判定装置。
【請求項4】
前記操作子は、車両のハンドルであることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の生体状態判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−224770(P2010−224770A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70088(P2009−70088)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】