説明

生体用構造体

【課題】人工骨、骨補填材、細胞培養担体など細胞を定着、担持させ、多方向からの細胞侵入を容易とし、より一層の増殖、培養させるのに適する生体用構造体1を提供する。
【解決手段】長手方向に少なくとも1つの貫通孔3を有し、かつ主成分がリン酸カルシウムからなる微小成形物2を集合・固着させてなる生体用構造体1であって、前記微小成形物2の外形形状が柱状を成していると同時に、集合した各微小成形物2の貫通孔3の方向が三次元方向にランダムに位置され、さらに微小成形物2どうしの接触した表面が接合して固着し、微小成形物2間の間隙に三次元網状の気孔4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を有する微小成形物からなる生体用構造体に関し、さらに詳しくは骨補填材などの生体組織補填材や細胞培養担体などに用いられ、骨や血管となる細胞を定着、担持させ、増殖、培養させるのに適する生体用構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨腫瘍摘出や外傷などによる骨の欠損や細胞の培養に対し、従来金属やセラミックなどからなる成形体を生体組織補填材あるいは細胞培養基盤として用いることが検討されており、成形体としては、骨芽細胞などの細胞を侵入、定着させ、増殖あるいは培養させるために多数の気孔を有する多孔質体が知られている。しかし、通常の多孔質体は製造上気孔の大きさや分布を制御することが困難であるため、細胞の侵入がスムーズにいかない場合が多々生じ、十分に生長が促進されないという問題がある。このため、フォーム状のものや一定方向の貫通孔を多数有するハニカム状のものなど種々検討されている。例えばフォーム状成形体は、樹脂フォームにセラミックスラリーを含侵させ、樹脂部を脱脂したのち焼結して得られるもので、三次元網状構造体として知られており、多孔質体のものと比べると、気孔を大きくできると同時に気孔径がある程度設定でき、しかも多方向性を有するなど好ましい特徴を有する。しかし、製造上骨格部にクラックが発生しやすく、強度が極端に低くなるという問題があり、また一通の貫通部が全くないため、細胞の増殖を促進させるのに今一つ十分ではない。他の例として押出成形などにより得られるハニカム形状のものは、気孔の制御が容易であり、かつ均一な径を有する一通の貫通孔が得られるため細胞の十分な生長が望まれ、強度も安定したものであるが、貫通孔が全て一定方向に向いているため他方向からの細胞侵入が困難となり、場所によっては十分な効果が得られない。このため、貫通孔を有するビーズ状の成形体つまり球形を主体とする塊状物を集合させて用いる方法が知られている(特許文献1参照)。この方法を用いることにより、一定の長さの貫通孔を有ししかもその方向が多方向にわたる構造が可能となるのである。
【特許文献1】特開2003−335574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記方法では例えば骨補填材として用いる場合、欠陥部分にビーズ状のものをそのままバラで集合させて埋植させるため、埋植後に移動してしまったり、あるいは埋植中にとび散ったりするなど管理上の問題が生じ、またビーズどうしを結合した場合でも、貫通孔の孔方向のランダムさが明瞭には得られ難いなどの問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記問題を解消した生体用構造体にあり、長手方向に少なくとも1つの貫通孔を有する柱状の微小成形物を集合・固着させてなる構造体であって、前記各微小成形物の貫通孔の方向が三次元方向にランダムに位置されてなることを第1の要旨とする。
【0005】
また集合・固着された微小成形物間の間隙が三次元網状の気孔を形成してなることを第2の要旨とする。
【0006】
さらに微小成形物どうしが自己固着してなることを第3の要旨とする。
【0007】
さらには微小成形物の主成分がリン酸カルシウムであることを第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生体用構造体は、微小成形物の貫通孔が適度の直線性を有し、しかも孔方向が任意の方向にランダムに向いているため、血管の形成や細胞の増殖を促進させると同時に、多方向からの細胞侵入が容易となる。したがって、埋入の仕方や方向を気にすることなく容易に埋め込むことができ、さらには貫通孔の孔径や長さ、またこれらを集合・固着させた構造体を任意の大きさに変えることが可能であるため、培養する細胞の種類や量あるいは補填場所に適した形状に成形することができるなど、種々の利点を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の生体用構造体は、多方向からの細胞が侵入可能となり、細胞の生成と生長が促進されるという目的を実現した。次に、本発明の生体用構造体を図面に沿って説明する。
【0010】
図1は、本発明の生体用構造体1を示す正面図で、図2は微小成形物2を示す斜視図である。本発明の微小成形物2は、円柱状で長手方向に1つの貫通孔3を有し、この貫通孔3の方向を三次元方向にランダムに位置させて微小成形物2を集合・固着することにより生体用構造体1を構成し、集合・固着された微小成形物2間の間隙には、三次元網状の気孔4が形成されている。
【0011】
微小成形物2の外形形状としては柱状のものが用いられ、例えば円柱状、三角柱状、四角柱状、六角柱状などが挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。柱状とすることで、各微小成形物2を三次元方向にランダムに配置させることが容易となり、さらにその結果として微小成形物2間の間隙に目的とする気孔4が得られ易くなるのである。すなわち、柱状素材をランダムに集合させるとその外周面の一部のみが相互に接合し合うようになり、外周面の大部分が接合しないまま三次元的に入り組んだ状態となるため、結果としてこの空隙部が三次元網状の気孔を呈することになるのである。柱状であればいずれを用いてもよいが、特には三次元網状の気孔4が明瞭な形態を保持した状態のものが得られ易いという点で、円柱状であることが好ましい。
【0012】
微小成形物2のL/D(L:長さ、D:外径)は任意であるが、好ましくは1.5以上がよく、特には3以上が好適である。L/Dが1.5未満だと、限りなく円板状になるかあるいは球状化してしまうため、貫通孔の孔方向をランダムに位置させようとしても密に重なり易くなり、生体用構造体1の作製が困難となる。その結果、微小成形物間の間隙に目的とする気孔を得ることも困難となるのである。
【0013】
微小成形物2が有する貫通孔3の孔径は、細胞、血管、骨などが十分に生成し、生長できる範囲であればよく、使用条件に応じて適宜設定できるが、例えば10〜1000μm、特には細胞侵入に適切な径である200〜1000μmの範囲が好ましい。また貫通孔の数は少なくとも1つであり、代表的には図2のようにパイプ形状のものが好ましいが、複数の貫通孔を有するハニカム状のものも用いることができ、さらに1つの微小成形物において孔径の異なった貫通孔を有するものも用いることができる。貫通孔の断面形状は円形、楕円形、三角形、四角形、六角形など任意であるが、通常は円形が好適に用いられる。
【0014】
微小成形物2の主材としては、骨補填材や細胞培養担体などに用いられている従来公知のものであればいずれの材料を使用してもよく、例えば金属、セラミック、樹脂などが挙げられるが、中でも酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、リン酸カルシウムなどのセラミックが好ましく、特にはリン酸カルシウム系セラミックが生体材に近い特質を有することから好適であり、具体的には例えば第一リン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ハイドロキシアパタイト、Ca不足ハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。前記主材のほかに他の材料が添加されていてもよく、例えば主材に用いられる材料以外のセラミック、樹脂や、コラーゲン、ゼラチンなどの生体吸収性高分子物質や炭素などの生体用として好適に用いられている材料が挙げられる。
【0015】
多数個の微小成形物2を集合・固着させた後の構造として、各微小成形物の貫通孔3の方向が三次元方向にそれぞれランダムに位置されてなることを特徴とする。ランダムに位置されることにより、多方向からの細胞侵入が可能となるのである。さらに微小成形物2をランダムに固着することにより、貫通孔3以外に微小成形物2間の間隙にランダムな配置に起因する三次元網状構造を有する気孔4が形成され、この気孔4および直通の貫通孔3の混在により、より一層の細胞の生長、促進がなされるのである。
【0016】
上記構造を得るための固着構造としては、例えば塗布固着および自己固着が挙げられる。塗布固着は、微小成形物2の外周に粘着材あるいは炭素を形成させることで微小成形物どうしを接合させた構造であり、粘着材としては天然樹脂、合成樹脂あるいはコラーゲン、ゼラチンなどが挙げられ、炭素は粘着材を焼成することにより得られる。前記粘着材を微小成形物の外周に塗布あるいは散布するかあるいは粘着材の溶液中に浸し、乾燥もしくは焼成して得られる固着構造である。すなわち、焼成しない乾燥のみの場合には粘着材自体が媒介となり、焼成した場合には粘着材の焼成によって得られた炭素が微小成形物どうしを結びつける媒介となる。ここで、微小成形物の外周に塗布された粘着材あるいは炭素と、微小成形物に内包された材質とが同材質の場合には接合力が向上し、破壊しにくいなどの特徴を有するなど特に好ましいものとなる。
【0017】
自己固着は、粘着材を用いずに微小成形物2自身の有する自己接着力を利用した固着構造である。つまり、微小成形物2を作製する際に原材料として用いる樹脂やコラーゲン、ゼラチンなどの結合材や焼成により結合材から得られる炭素あるいは主材自体の焼結力を利用するもので、成形後の微小成形物素材をランダムに配置すると同時に、微小成形物素材どうしの接触部において互いに内包している結合材を押圧により接合させたり、水などにより活性化させて接合させ、乾燥もしくは焼成することにより微小成形物2どうしを固着する構造である。乾燥の場合には、内包された結合材が微小成形物どうしを結びつけ、焼成した場合には、結合材から得られた炭素および/または主材の焼結力によって結びつけられている。この構造の場合、余分な材料が入り込まず、かつ作り勝手がよく工程上の煩雑さが少ないのでランダムさの程度を十分に向上することができ、結果として微小成形物2間の間隙がそのまま明瞭な形態を保持した状態のものが得られ易くなり、網状の気孔4の有効な活用が可能となるなど種々の利点を有する点で好ましい。さらに上記いずれの固着構造においても、表面の一部である接触部の接合だけで構造体を維持しているのであるが、強度の高い微小成形物が三次元的にランダムに絡み合い組み合わさった集合形状をしているために、逆につぶれにくく破壊しにくいという特徴を有する。
【0018】
本発明の生体用構造体の製造方法について一例を述べると、セラミックなどの主材に樹脂などの結合材を加え、押出成形、射出成形、プレス成形などにより少なくとも1つの貫通孔を有する柱状の微小成形物の素材を作製し、その素材をそのままランダムに集合させるかあるいは粘着材を塗布してランダムに集合させる。粘着材を用いない場合には、集合後に水分などを散布して素材の表面を濡らし、素材に内包された結合材を活性化させる。この方法により固着がスムーズに行われる。これらの集合された素材を乾燥もしくは600℃以上の高温で焼成することにより、外部の粘着材あるいは素材内部の結合材で固着するか、もしくは炭化して焼き固めて固着したり、あるいは主材自体の焼結力により固着して生体用構造体とする。また別の方法として、前記素材を焼成して微小成形物を作製し、この微小成形物の外周に粘着材を塗布してランダムに集合させた後、乾燥するかもしくは焼成することにより固着させる方法もある。上記方法のいずれを用いてもよいが、特には作り勝手や微小成形物間の間隙を有効に活用できるという点から、素材内部の結合材を用いて自己固着する方法が最も好適である。次に実施例を示す。なお、部は「重量部」である。
【実施例1】
【0019】
主材としてリン酸三カルシウム80部と結合材であるポリビニルアルコール20部に水100部を加え、混練後に押出成形して、長さ2.0mm、外径0.5mmで、孔径が300μmの貫通孔を有する円柱状の微小成形物の素材を多数作製した。この素材を0.5cm立方内にランダムに集合させ、水を散布して軽く押圧した。素材内部の結合材が水に濡れて素材表面が活性化され、接合された集合素材が得られた。この集合素材を酸素雰囲気中において最高温度1100℃で焼成し、リン酸三カルシウムからなる微小成形物が得られると同時に、0.5cm立方内に微小成形物の貫通孔の方向が三次元方向にランダムとなるように集合・固着された。このとき、素材と素材との接触部において内包された結合材どうしが表面で接合し、焼成により結合材が酸素中で昇華すると同時に主材の焼結力によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は白色でランダムさの程度がきわめて良好であり、破壊しにくいなどの特徴を有し、さらに微小成形物間の間隙には、三次元網状の構造を有する気孔が明瞭に形成された。この生体用構造体をうさぎに対する骨充填材として埋設し、4週間後に取り出したところ、貫通孔内および間隙の気孔内に神経細胞が増殖し、十分な生長がみられた。
【実施例2】
【0020】
実施例1で作製した集合素材を、アルゴン雰囲気中において最高温度1100℃で焼成し、リン酸三カルシウムおよび炭素からなる微小成形物が実施例1と同様に集合・固着された。このとき、アルゴン雰囲気中での焼成により結合材が炭素となり、この炭素と主材の焼結力によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は、黒色であることを除けば実施例1と同様の特徴を有するものとなった。
【実施例3】
【0021】
主材としてリン酸三カルシウム80部と結合材であるゼラチン20部に水100部を加え、混練後に押出成形して、長さ2.0mm、外径0.5mmで、孔径が300μmの貫通孔を有する円柱状の微小成形物の素材を多数作製した。この素材を0.5cm立方内にランダムに集合させ、水を散布して軽く押圧した。素材内部の結合材が水に濡れて素材表面が活性化され、接合された集合素材が得られた。この集合素材を乾燥することによりリン酸三カルシウムおよび結合材からなる微小成形物が集合・固着された。このとき内包された結合材の接着力によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は白色で、実施例1と同様の特徴を有する。
【実施例4】
【0022】
実施例1で作製した微小成形物素材の外周面に、粘着材であるポリビニルアルコールの水溶液を塗布し、0.5cm立方内にランダムに集合させ軽く押圧して集合素材とした。得られた集合素材をアルゴン雰囲気中において最高温度1100℃で焼成し、リン酸三カルシウムおよび結合材から得られた炭素からなる微小成形物が集合・固着された。このとき、焼成により粘着材から得られた黒色の炭素によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は、粘着材を用いているため製造上煩雑となり、ランダムさの程度がやや十分ではなく、結果として得られた三次元網状の気孔がやや明瞭でなかったものの、内包された結合材と周囲の粘着材から得られた炭素により微小成形物どうしの接合が特に強くなり、黒色でかつ破壊しにくいなどの特徴を有する。
【実施例5】
【0023】
実施例1で作製した微小成形物素材を用い、この素材を酸素雰囲気中で最高温度1100℃で焼成して一通の貫通孔を有する白色の微小成形物を多数作製した後、微小成形物の外周面に粘着材であるコラーゲン溶液を塗布し、0.5cm立方内にランダムに集合させ、軽く押圧して集合素材とした。この集合素材を乾燥することにより、リン酸三カルシウムからなる微小成形物が集合・固着された。このとき粘着材の接着力によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は、粘着材を用いているため製造上煩雑となり、ランダムさの程度がやや十分ではなく、結果として得られた三次元網状の気孔がやや明瞭でなかったものの、焼成パイプを用いたために安定した貫通孔形状を保持し、白色でかつ破壊しにくいなどの特徴を有する。
【実施例6】
【0024】
実施例1で作製した微小成形物素材を用い、この素材を酸素雰囲気中で最高温度1100℃で焼成して一通の貫通孔を有する白色の微小成形物を多数作製した後、微小成形物の外周面に粘着材であるポリビニルアルコールの水溶液を塗布し、0.5cm立方内にランダムに集合させ、軽く押圧して集合素材とした。この集合素材をアルゴン雰囲気中において最高温度1100℃で焼成し、リン酸三カルシウムからなる微小成形物が集合・固着された。このとき、焼成により粘着材から得られた黒色の炭素によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は、黒色であることを除けば実施例5と同様の特徴を有するものとなった。
【実施例7】
【0025】
主材としてリン酸三カルシウム80部と結合材であるコラーゲン20部に水100部を加え、混練後に押出成形して、長さ2.0mm、外径0.5mmで、孔径が300μmの貫通孔を有する円柱状の微小成形物の素材を多数作製した。この素材の外周面に粘着材であるコラーゲン溶液を塗布し、0.5cm立方内にランダムに集合させ、軽く押圧して集合素材とした。この集合素材を乾燥することにより、リン酸三カルシウムとコラーゲンからなる微小成形物が集合・固着された。このとき、粘着材の接着力によって微小成形物どうしが固着し、生体用構造体が得られた。この生体用構造体は、粘着材を用いているため製造上煩雑となり、ランダムさの程度がやや十分ではなく、結果として得られた三次元網状の気孔がやや明瞭でなかったものの、微小成形物に内包された結合材と粘着材とが同材質であるため接合が特に強くなり、白色でかつ破壊しにくいなどの特徴を有する。
【0026】
(比較例1)
実施例1で使用した材料、配合を用い、押出成形後に長さ1mm、外径1mmで孔径が300μmの貫通孔を有する微小成形物素材を作製し、これをアルゴン雰囲気中で最高温度1100℃で焼成した後、略球形をしたビーズ状に加工して微小成形物とした。この微小成形物の外周に粘着材を塗布し、貫通孔がそれぞれ三次元方向にランダムになるように軽く押圧しながら0.5cm立方内に集合させた。得られた集合体を再度アルゴン雰囲気中で1100℃まで焼成し、粘着材を炭化させて微小成形物どうしを固着して生体用構造体とした。この生体用構造体は黒色で、微小成形物がビーズ状をしているため多重に重なってしまい、貫通孔のランダムさの程度が明瞭ではなく、また微小成形物間の間隙にも明瞭な三次元網状の構造を有する気孔は得られなかった。
【0027】
(比較例2)
比較例1の微小成形物素材を乾燥した後、略球形をしたビーズ状に加工し、これを貫通孔がそれぞれ三次元方向にランダムになるように集合させ、水を散布して素材表面の接触部を接合させて集合素材とした。この集合素材を酸素雰囲気中で1100℃まで焼成し、素材どうしを固着させて生体用構造体とした。この生体用構造体は白色で、比較例1と同様に微小成形物が多重に重なってしまって貫通孔のランダムさの程度が明瞭ではなく、微小成形物間の間隙にも明瞭な三次元網状の構造を有する気孔は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の生体用構造体は、血管の形成や細胞の増殖を促進し、かつ多方向からの細胞侵入が容易となるため、良好な骨補填材あるいは細胞培養担体となり、医療分野の要請に対して十分適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の生体用構造体を示す正面図である。
【図2】微小成形物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 生体用構造体
2 微小成形物
3 微小成形物2の貫通孔
4 生体用構造体1の気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に少なくとも1つの貫通孔を有する柱状の微小成形物を集合・固着させてなる構造体であって、前記各微小成形物の貫通孔の方向が三次元方向にランダムに位置されてなることを特徴とする生体用構造体。
【請求項2】
集合・固着された微小成形物間の間隙が三次元網状の気孔を形成してなることを特徴とする請求項1記載の生体用構造体。
【請求項3】
微小成形物どうしが自己固着してなることを特徴とする請求項1または2記載の生体用構造体。
【請求項4】
微小成形物の主成分がリン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の生体用構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−50419(P2009−50419A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219247(P2007−219247)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】