説明

生体計測システム

【課題】
複数の被験者の脳活動信号等の生体情報を計測し、複数の被験者の位置関係を考慮して、計測結果を適切に表示するようにした生体計測システムを提供する。
【解決手段】
被験者の脳の特定の部位に光を照射し、通過光を検出して、前記被験者の脳活動信号を得る生体光計測装置を備え、前記脳活動信号を生体情報として集中制御装置へ出力する計測端末100と、複数の前記計測端末から、複数の被験者の生体情報を入力して、解析・表示する前記集中制御装置200を備えた生体計測システムにおいて、被験者の位置情報を得る被験者位置測定手段48を備え、前記集中制御装置200は、それぞれの被験者の生体情報の解析結果と、それぞれの被験者の位置情報とを関連付けて表示するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体計測システム、特に、複数の被験者の脳活動信号等の生体情報を同時に計測して、複数の被験者の相互作用などを観測できるようにした生体計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳の活動状態は、近赤外分光法NIRS(光トポグラフィ等)により、簡便に日常生活に近い環境で、無侵襲に測定可能となってきた。光トポグラフィ法は、可視から赤外領域に属する波長の光を被検体に照射し、被検体内部を通過した光を光検出器で検出し、血流の変化に伴うヘモグロビン濃度変化量(または、ヘモグロビン濃度と光路長の積の変化量)を計測し、2次元に画像化する方法である。機能的磁気共鳴画像法fMRI、ポジトロン断層撮像法PET等の脳機能計測技術と比較し、被験者に対する拘束性も低いという特徴を持っており、臨床現場において、この方法により、言語機能や視覚機能などの脳活動の計測が行われている。
【0003】
例えば映画、演劇、漫才、音楽会などで観衆は喜怒哀楽や感動など気分・情動の変化が起こる。この内面的な変化によって、脳の賦活の仕方が変わり、脳内の血流変化が起こる。ここで、賦活とは、脳が活動(activation)している状況である。また、身体に装着した生体光計測装置に加速度センサを挿入することで、同時に体動変化が計測され、光信号からは脳血流の他に交換・副交感神経などが関与する血圧・心拍などの時間的・周波数的変化が計測される。さらには、エネルギー的に干渉をおこさない脳波計測との同時利用も可能である。
これら、脳活動計測を含む生体計測を実・仮想空間内で多数計測するシステムの技術分野に属する。
【0004】
特許文献1には、光を用いて生体の血液動態を計測する計測端末と、複数の計測端末を制御しデータ取得と解析表示を行う集中制御装置からなり、同時に複数の被験者の脳活動を計測する生体計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−278903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1記載の生体計測装置では、同時に複数の被験者の脳活動あるいはその他の生体情報を計測し、複数の被験者の血液動態変化を並べて表示することが示されている。しかし、血液動態データを比べて見ただけでは、複数の被験者の脳の賦活の同期を観測することは困難である。また、被験者の位置関係は考慮されておらず、被験者の位置関係に応じた、被験者の脳の賦活の状況を観測することができなかった。
【0007】
本発明は、複数の被験者の脳活動信号等の生体情報を計測し、複数の被験者の位置関係を考慮して、計測結果を適切に表示するようにした生体計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の被験者から得られる脳活動信号等の生体情報と被験者の位置情報を融合して解析し、解析結果を被験者の位置情報と関連付けて表示するものである。
【0009】
本発明の生体計測システムの代表的な一例を挙げるならば、被験者の脳の特定の部位に光を照射し、通過光を検出して、前記被験者の脳活動信号を得る生体光計測装置を備え、前記脳活動信号を生体情報として集中制御装置へ出力する計測端末と、複数の前記計測端末から、複数の被験者の生体情報を入力して、解析・表示する前記集中制御装置を備えた生体計測システムにおいて、被験者の位置情報を得る被験者位置測定手段を備え、前記集中制御装置は、それぞれの被験者の生体情報の解析結果と、それぞれの被験者の位置情報とを関連付けて表示するように構成したものである。
【0010】
また、本発明の生体計測システムは、インターネット網と、被験者の脳の特定の部位に光を照射し、通過光を検出して、前記被験者の脳活動信号を得る生体光計測装置を備え、前記インターネット網を介して、前記脳活動信号を生体情報として集中制御装置へ出力する計測端末と、複数の前記計測端末から、前記インターネット網を介して、複数の被験者の生体情報を入力して、解析・表示する前記集中制御装置を備えた生体計測システムにおいて、被験者の位置情報を得る被験者位置測定手段を備え、前記集中制御装置は、それぞれの被験者の生体情報の解析結果と、それぞれの被験者の位置情報とを関連付けて表示するように構成したものである。
【0011】
本発明の生体計測システムにおいて、前記集中制御装置は、表示画面上において、被験者の位置に対応する位置に、それぞれの被験者の生体情報の解析結果を、色の濃淡を変えて、または色の色調を変えて、または面積を変えて一覧表示するようにしてもよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、前記生体光計測装置は、脳の複数の部位の脳活動信号を得るものでよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、前記計測端末は、更に、脳波計、脳磁場計、心臓機能計測手段、または筋肉運動検出手段を備えるものでよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、前記被験者位置測定手段は、カメラ撮影手段、室内位置検出システム、またはGPS装置でよい。
本発明の生体計測システムにおいて、前記集中制御装置は、それぞれの被験者の生体情報から、所定時間毎に賦活度などの指標を求め、時間を進行させて表示するように構成してもよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、前記集中制御装置は、所定時間毎に指標を求める際に、時間原点を絶対時刻にする、または、イベントのタイミングとするものでよい。
【0012】
本発明の生体計測システムにおいて、更に、被験者の五感に作用する五感情報呈示または五感情報刺激装置を備え、前記集中制御装置は、前記被験者の生体情報の解析結果に応じて前記五感情報呈示または五感情報刺激装置を動作させるフィードバック信号を作成するものでよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、前記五感情報呈示装置は、ランプ等の視覚情報発生手段、スピーカ等の音響情報発生手段、または振動発生手段でよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、前記五感情報刺激装置は、経頭蓋磁気刺激装置でよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、単数の被験者の生体情報に基づいて、単数または複数の被験者に対してフィードバックを行うものでよい。
また、本発明の生体計測システムにおいて、複数の被験者の生体情報に基づいて、単数または複数の被験者に対してフィードバックを行うものでよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体計測システムにおいて、複数の被験者の脳活動信号等の生体情報を計測し、複数の被験者の位置関係を考慮して、計測結果を適切に表示するようにした生体計測システムを提供することができる。
【0014】
また、計測結果を被験者にフィードバックすることにより、注意喚起などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1の生体計測システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の生体計測システムの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の計測端末の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の集中制御装置の構成を示す図である。
【図5】複数の被験者から観測された脳血流データの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施例1の表示例を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の生体計測システムの概略を示す図である。
【図8】本発明の実施例3の生体計測システムの概略を示す図である。
【図9】本発明の実施例3の生体計測システムの概略構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例3の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1の生体計測システムの概略を示す図である。劇場400を例に説明すると、舞台に対して観客席が設けられており、被験者である複数の観客が着席している。被験者からは、それぞれに対応する位置情報を得る。
【0018】
被験者の位置情報は、劇場や教室等の室内空間であれば、座席をカメラ撮影したり、CADなどの電子情報から自動判別したり、室内位置検出システムから被験者位置を自動判別したりして得ることができるし、広場や運動場等の屋外空間であれば、GPS装置や、被験者のカメラ撮影などで得ることができる。
【0019】
被験者300である観客のそれぞれは、生体光計測装置等の計測端末100を装着しており、生体情報を得る。生体情報としては、生体光計測装置から得られる脳機能情報の外に、脳波計、脳磁場計測等の脳機能計測情報、心電計測、超音波心臓および脈管拍動計測、超音波ドップラー血流計測、光による末梢脈波計測、光による静脈還流計測等の心機能計測情報、加速度センサによる振動計測、マイクによる音声計測、タッチセンサ・温度センサ・マウス・キーボード・カメラなどによる運動情報等の筋肉情報などを用いることができる。
【0020】
集中制御装置200において、それぞれの被験者の生体情報とそれぞれの被験者の位置情報とは融合され、解析し、計測結果を表示する。
【0021】
図2に、本発明の実施例1の生体計測システムの概略構成を示す。それぞれの被験者の計測端末100はLAN500に接続され、LANを介して集中制御装置200に接続されている。また、それぞれの被験者の位置測定手段もLAN500に接続されている。それぞれの被験者の生体情報およびそれぞれの被験者の位置情報は、集中制御装置200に集められ、解析・表示される。なお、図2では、計測端末100と集中制御装置200とを有線ケーブルで接続しているが、無線通信装置を用いて無線伝送するようにしてもよい。
【0022】
本生体計測システムは、例えば、同時に40人までのリアルタイム計測を可能とするものである。
【0023】
図3は、計測端末に含まれる生体光計測装置の例を示したものである。生体光計測装置は、光を生体に入射し、生体内を散乱・吸収され伝播して出てきた光を検出するものである。装置本体に含まれる1つまたは複数の光源31から照射される光を、導波路33を介して、被験者300に入射させる。光は、照射点39から被験者300内に入射し、被験者300を透過、伝播した後は、照射点39とは離れた位置にある検出点40から導波路33を介して、1つまたは複数の光検出器34で検出される。ここで、光源31は半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)等であり、光検出器はフォトダイオード(PD)、光電子増倍管(PMT)等であれば良い。また、導波路33は光ファイバ等であれば良い。
光源31は、制御部37により制御される光源駆動部32により駆動される。また、1つまたは複数の光検出器34のゲインは制御部37により制御される。制御部37は、入出力部38から駆動条件等の入力を受ける。
光検出器34で光電変換した電気信号は、増幅器35で増幅され、アナログ−デジタル変換器36でアナログ−デジタル変換され、制御部37へ送られ、入出力部38から出力される。
【0024】
計測端末100は、脳波計などの他の生体計測装置を、生体光計測装置と一体に備えていても良いし、また、生体光計測装置と別に有していても良い。
【0025】
図4は、集中制御装置200の概略構成を示すブロック図である。集中制御装置200は、各計測端末100で計測した生体情報を入力する入力部41、各計測端末から入力した計測データなどを記憶する記憶部42、計測データを処理して必要な情報を演算する解析部43、解析した情報を基に表示に適したデータを作成する表示データ作成部44、計測結果を表示する表示部45から構成されている。被験者位置測定手段からの位置情報も、入力部41から入力される。また、必要な指令を入力するためのキーボードやマウス等の入力手段46を備えている。
【0026】
解析部43では、各被験者から得られた生体情報に基づいて活動状況を示す評価値(指標)を算出する。解析部43には賦活度算出部49が設けられており、それぞれの被験者の脳の特定の部位の脳血流データに基づいて、脳の特定の部位の賦活度を算出する。
脳が活動すると流れる血液量が増加するが、この血液量の増加に対して、測定に使用した光が血液により吸収されるため、光検出器で検出する光の強度が減少する。光検出器の計測データから、図5に示される、各被験者AからDの脳血流データが得られる。図5は、横軸の時間に対して、縦軸の脳血流の大きさを示す模式図である。同じ刺激に対しても、各被験者の反応は様々であり、脳血流データの時間変化も被験者により異なっている。
脳の賦活度は、図5の脳血流データを時間積分することに求めることができ、この積分値が大きいほど、脳の賦活度が高いと評価することができる。
【0027】
本発明は、少なくとも生体光計測装置を用いて脳の各部位の脳血流データを測定するものである。また、併せて、脳波計や心臓機能計測手段などにより、その他の生体情報を計測しても良いものである。
【0028】
人は、喜怒哀楽や気分などに応じて、脳の特定の部位の活動や活動部位の関係性などが変化する。
例えば、脳の46野の前頭葉血流は、短期記憶や気分などと関連している。また、脳の10野の前頭葉血流は、抑制や集中などと関連していて、これらの働きが運動野などへ影響を及ぼし、最終的には行動へも影響を及ぼす。心拍数やLF/HFなどは、自律神経系に属する交感神経・副交感神経の働きを反映しており、興奮や安静の状態と関連している。さらに、脳波計より得られるP300様反応の後頭葉脳波は、視覚的注意などと関連している。大別すると、脳の後方部位は感覚器から入力してきた情報を処理する働きが多く、脳の前方部位は出力するべき行動を判断して実行する働きが多い。
【0029】
前述したように、光による脳血流(血液量)計測によっては多くの部位が活動するため、比較的遅い活動である複雑な高次機能(気分、言語機能、学習など)を計測し、脳波計などでは比較的早い視覚的注意(主に後頭葉)を計測することが適している。
【0030】
例えば、映像・演芸などを鑑賞しているときに視覚的に注意が働くようなシーンを脳波で抽出し、その注目シーンに対する視聴者の気分などを計測することができる。例えば、任意のシーンで思ったような反応(例えば高揚させる)が得られない場合、図7で示した五感情報提示装置へ、その個人に対して情報を送り、高揚するように、振動・香り・味覚情報・視覚情報・聴覚情報を与えたりする。これらを実現するために、五感情報提示装置には、それぞれの感覚に合わせた提示装置が組み込まれている。あるいは、脳内の任意の場所に、磁場によって刺激を与えることが可能な、Trans-Cranial Magnetic Stimulation(TMSまたは経頭蓋磁気刺激装置)装置がそれぞれの観客が装着し、前記脳や生体の情報から解析された情報によって、脳へ直接刺激が与えられる(五感情報刺激装置)。
【0031】
図4において、賦活度算出部49で算出された各被験者の脳の賦活度などは、被験者位置測定手段48で得られた位置情報と関連付けられており、表示データ作成部44では、それぞれの被験者の解析結果と、位置情報とを関連付けて表示のためのデータを作成する。
【0032】
図6は、生体光計測装置による脳の複数の部位の賦活度の算出結果や、その他の計測装置から得られる生体情報を、被験者の位置情報と関連付けて表示した、表示部45の表示例を示すものである。
図6において、左上(a)は脳の46野の前頭葉血流の表示を、右上(b)は脳の10野の前頭葉血流を、左下(c)は心拍数やLF/HFなどの計測結果を、右下(d)は後頭葉脳波を、模式的に表示するものである。図に示すように、賦活度などの値が大きいほど、色が濃くなるように表示しても良いし、或いは、面積を変えたり、色調を変えて表示しても良い。
【0033】
なお、図6では、1つの表示画面に4つの観測結果を表示しているが、1つの表示画面にそれぞれ1つの検束結果を表示し、画面を切り換えるようにしてもよい。
【0034】
ホールでの講演や、教室内の授業においては、表示部45を講演者や教師のところに設ければよい。講演者や教師は、図6に示される、表示部45の画面を見ることにより、各観客や生徒の睡眠や集中度などを知ることができ、講演や授業の進行に反映させることができる。また、演劇や漫才などでは、観客の喜怒哀楽の状態を知ることができ、演技に反映させることができる。
【0035】
この実施例では、劇場や教室での利用の例を説明したが、本発明は屋外で利用することもできる。広場や運動場でのコンサート、演説等の観客の反応を表示することができる。
こういった情報は、観客へのフィードバックの基礎データのみならず、演芸などを行うパフォーマーへ実時間でフィードバックすることで、パフォーマーがその評価をもとにそのパフォーマンス内容を変化させることに役立つ。
図6で示した図はモニタ上に表されるが、会場の座席の周囲に照明を設け、信号強度が高いところは赤の照明を、信号強度が低いところは青の照明で表現することにより、舞台から会場の様子が一目で読み取れる。
こういったシステムの根底には、生体計測装置と、その被計測者の存在する位置情報を関連付けておくことによって初めて実現できる。
【0036】
上記では狭い空間を実例として説明したが、位置情報としては、劇場や広場などにおける平面上の位置だけでなく、必要に応じて高度の情報も含めることができる。
高度情報と生体情報の関係をマップ表示することによって、天候・気圧と生体情報の関連性を明確化することができる。例えば、免疫機能・麻酔の効果などは気圧との高い関連性が或ことが知られているが、ウェアラブルタイプの生体計測システムが実現することにより、高度情報・気圧情報などと関連性を解析することが可能となる。
また、個人の気分ななどの伝播を解析する場合には、所定時間毎に賦活度などの指標を求め、時間を進行させて表示することにより、時間の進行に伴う変化、例えば複数の観客の間での感情の伝搬、を一目で観測することができる。時間原点としては、絶対時刻としても良いし、あるイベントのタイミングとしても良く、また、両者を選択できるようにしても良い。
【実施例2】
【0037】
図7に、本発明の実施例2の生体計測フィードバックシステムの概略を示す。
【0038】
実施例1では、計測端末100から得られるそれぞれの被験者の生体情報と、被験者の位置情報とを関連付けて解析し、結果を被験者の位置と関連させて表示するものであった。本実施例では、集中制御装置200で、解析結果を指標化し、五感情報呈示装置により、被験者300にフィードバックするようにしたものである。例えば、生体情報に基づいて、各座席に取り付けられた五感情報呈示または五感情報刺激装置へフィードバックしたり、被験者の身につけたウェアラブル機器へフィードバックする。具体的には、図4の集中制御装置の構成を示す図において、フィードバック信号作成部51を設け、解析部43で得られる賦活度などの指標に応じて五感情報呈示または五感情報刺激装置52を動作させる駆動信号を作成し、この駆動信号により五感情報呈示または五感情報刺激装置52を動作させる。
【0039】
五感情報呈示または五感情報刺激装置52としては、被験者の五感に訴えるものであれば良く、例えばランプを点灯したり、映像を表示したり、スピーカにより音を出したり、座席やリストバンドなどにより振動を加えたりすればよい。
【0040】
フィードバックの内容としては、次の例が考えられる。
例えば、教室で授業中の生徒やホールで講演を聴いている観客について、生体情報の解析により眠っている状態が観測された場合には、振動を与えたり、刺激臭を与えたり、びっくりする音を出したり、色温度の高い光を与えたり、注意映像を表示したりすればよい。
また、集中している状態(例えば、後頭葉視覚野の視覚的注意の情報、前頭前野の血流から認知的注意)を判別して、五感呈示装置により、集中するように五感情報を与えるようにすればよい。
また、興奮していたら座席の背景色を赤くし、聴いていたり集中していなかったり眠っていたりしたら座席の背景色を青色にすればよい。
【0041】
道路を走行中の複数の車での利用としては、複数の運転者の生体情報を計測し、解析結果を自身の車の制御に用いたり、他者の車に危険情報を与えたりすればよい。また、車の動きと運転者の眠気などの分布から信号・カーナビなどで交通制御を行うこともできる。
【0042】
フィードバックは、各被験者個人に行っても良いし、また、条件が近い人全員にフィードバックするようにしてもよい。例えば、教室において、概ね窓側の生徒の集中度が低い場合は、窓側の生徒全員にフィードバックすればよい。
【0043】
フィードバック情報を、舞台上の演者や教師の前のモニタ上に同様に表示することにより、舞台上の演者や教師は自分のパフォーマンスを客観的に評価でき、観客や生徒の状況に応じて適宜修正をすることができる。
【実施例3】
【0044】
図8に、本発明の実施例3の生体計測システムの概略を示す。
【0045】
情報の伝達は、国内の各地域により、または、世界の各国により異なると予測される。また、一つの出来事に対しても、その反応は、国内の各地域により、あるいは、国により異なると予想される。
【0046】
本実施例は、計測端末100をインターネットに接続し、それぞれの被験者300の生体情報をインターネットを介して収集し、解析・表示するようにしたものである。
【0047】
図9に、実施例3の生体計測システムの概略構成を示す。それぞれの被験者300の計測端末100はパーソナルコンピュータ等を介してインターネット網600に接続されており、各被験者の生体情報は、インターネット網600を通じて集中制御装置200に集められる。本実施例において、位置情報は、例えば計測端末にGPS装置を設けて、生体情報とともに、送っても良い。或いは、ネットワークアクセスによってルータの位置から位置情報を得ても良いし、ネットワークから非計測者が地図情報から位置情報を指定しても良い。本実施例においても、計測端末は、更に、脳波計、脳磁場計、心臓機能計測手段、または筋肉運動検出手段を備えても良い。
【0048】
被験者は、地域ごとに、或いは国ごとに、代表的な被験者を決めておいても良いし、また、地域或いは国で、複数の被験者の平均を求め、平均値をその地域あるいはその国の生体情報としてもよい。
【0049】
図10に、実施例3の計測結果の表示例を示す。左上の図(a)は、眠気やリラックスに関連する脳波アルファ波を示す図、右上の図(b)は、睡眠レベルに関連する脳波を示す図、左下の図(c)は、興奮・安静度などに関連する心拍数やLF/HFなどを示す図、右下の図(d)は、言語野の活動に関連する第2言語の活動状況を示す図とした模式図である。例えば図のように、各指標をその値に応じて、地域ごとに或いは国毎に、濃淡を変えて表示しても良いし、或いは、面積を変えたり、色調を変えて表示しても良い。
【0050】
本実施例によれば、国内の各地域や国毎の、情報の伝達の違いや、反応の違いなどを計測することができる。
【0051】
また、所定時間毎に賦活度などの指標を求め、時間を進行させて表示することにより、時間の進行に伴う変化を一目で観測することができる。
例えば、インターネットの配信情報を視聴し始めた瞬間あるいは天災を時間原点として世界中で生体情報をマップ表示することで地域・文化の差、視聴などが観測できるようになる。例えば、YouTubeなど動画配信サイトである動画が配信されたのち、地球上の位置によってその反応は異なる可能性が高い。こういった、生体反応の違いはマーケティングなどに活用することが可能である。
また、緯度や季節ごとの日照時間は大きく異なる。そのため、光対する反応はその地域に住む人によって異なる。こういった、地域の自然状況によって変わる、生体反応の違いをマクロに解析することは、学術的にも重要であるが、マーケティングなどへの活用できる。
また、世界の中である事象に対して似たような反応、あるいは、反対の反応を示す人を検索してコミュニケーションをとる、などコミュニケーション開始のきっかけに活用できる。
【0052】
本発明によれば、多人数の脳活動や生体情報の同時計測と、時間と空間を共有する個人間の脳活動や様々な生体情報を計測することと、その個人の位置情報を連結させることにより、生体情報と位置情報に基づく個人・観測者・社会へのさまざまなフィードバックが可能となる。
多数の人間が集まる(実空間・仮想空間とも)環境下において、例えば、個人の生体情報に基づき本人へ臨場感や任意の感情を引き起こすような映画や演奏芸会場用のシステム、そのような会場において演者がこれまで見えなかった鑑賞者の反応(空間的な分布)をモニタするなどが実現できる。また、インターネット上で脳活動を含む生体情報の実時間データを、地球上の位置情報共に観測することにより、地域や文化の差による事象に対する反応が評価できる。その結果、マーケティングや社会科学的な研究、エンターテイメント、コミュニケーション手段に活用できる。
【符号の説明】
【0053】
31 光源
32 光源駆動部
33 導波路
34 光検出器
35 増幅器
36 アナログ−デジタル変換器
37 制御部
38 入出力部
39 照射点
40 検出点
41 入力部
42 記憶部
43 解析部
44 表示データ作成部
45 表示部
46 入力手段
48 被験者位置測定手段
49 賦活度算出部
51 フィードバック信号作成部
52 五感情報呈示部
100 計測端末
200 集中制御装置
300 被験者
400 劇場
500 LAN
600 インターネット網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳の特定の部位に光を照射し、通過光を検出して、前記被験者の脳活動信号を得る生体光計測装置を備え、前記脳活動信号を生体情報として集中制御装置へ出力する計測端末と、
複数の前記計測端末から、複数の被験者の生体情報を入力して、解析・表示する前記集中制御装置を備えた生体計測システムにおいて、
被験者の位置情報を得る被験者位置測定手段を備え、
前記集中制御装置は、それぞれの被験者の生体情報の解析結果と、それぞれの被験者の位置情報とを関連付けて表示するように構成したことを特徴とする生体計測システム。
【請求項2】
請求項1記載の生体計測システムにおいて、
前記集中制御装置は、表示画面上において、被験者の位置に対応する位置に、それぞれの被験者の生体情報の解析結果を、色の濃淡を変えて、または色の色調を変えて、または面積を変えて一覧表示するようにしたことを特徴とする生体計測システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の生体計測システムにおいて、
前記生体光計測装置は、脳の複数の部位の脳活動信号を得ることを特徴とする生体計測システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載の生体計測システムにおいて、
前記計測端末は、更に、脳波計、脳磁場計、心臓機能計測手段、または筋肉運動検出手段を備えることを特徴とする生体計測システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載の生体計測システムにおいて、
前記被験者位置測定手段は、カメラ撮影手段、室内位置検出システム、またはGPS装置であることを特徴とする生体計測システム。
【請求項6】
請求項1記載の生体計測システムにおいて、
前記集中制御装置は、それぞれの被験者の生体情報から、所定時間毎に賦活度などの指標を求め、時間を進行させて表示するように構成したことを特徴とする生体計測システム。
【請求項7】
請求項6記載の生体計測システムにおいて、
前記集中制御装置は、所定時間毎に指標を求める際に、時間原点を絶対時刻にする、または、イベントのタイミングとすることを特徴とする生体計測システム。
【請求項8】
請求項1記載の生体計測システムにおいて、更に、
被験者の五感に作用する五感情報呈示または五感情報刺激装置を備え、
前記集中制御装置は、前記被験者の生体情報の解析結果に応じて前記五感情報呈示または五感情報刺激装置を動作させるフィードバック信号を作成することを特徴とする生体計測システム。
【請求項9】
請求項8記載の生体計測システムにおいて、
前記五感情報呈示装置は、ランプ等の視覚情報発生手段、スピーカ等の音響情報発生手段、または振動発生手段であることを特徴とする生体計測システム。
【請求項10】
請求項8記載の生体計測システムにおいて、
前記五感情報刺激装置は、経頭蓋磁気刺激装置であることを特徴とする生体計測システム。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか一つに記載の生体計測システムにおいて、
単数の被験者の生体情報に基づいて、単数または複数の被験者に対してフィードバックを行うことを特徴とする生体光計測システム。
【請求項12】
請求項8〜10の何れか一つに記載の生体計測システムにおいて、
複数の被験者の生体情報に基づいて、単数または複数の被験者に対してフィードバックを行うことを特徴とする生体光計測システム。
【請求項13】
インターネット網と、
被験者の脳の特定の部位に光を照射し、通過光を検出して、前記被験者の脳活動信号を得る生体光計測装置を備え、前記インターネット網を介して、前記脳活動信号を生体情報として集中制御装置へ出力する計測端末と、
複数の前記計測端末から、前記インターネット網を介して、複数の被験者の生体情報を入力して、解析・表示する前記集中制御装置を備えた生体計測システムにおいて、
被験者の位置情報を得る被験者位置測定手段を備え、
前記集中制御装置は、それぞれの被験者の生体情報の解析結果と、それぞれの被験者の位置情報とを関連付けて表示するように構成したことを特徴とする生体計測システム。
【請求項14】
請求項13記載の生体計測システムにおいて、
前記集中制御装置は、表示画面上において、被験者の位置に対応する位置に、それぞれの被験者の生体情報の解析結果を、色の濃淡を変えて、または色の色調を変えて、または面積を変えて一覧表示するようにしたことを特徴とする生体計測システム。
【請求項15】
請求項13または請求項14記載の生体計測システムにおいて、
前記生体光計測装置は、脳の複数の部位の脳活動信号を得ることを特徴とする生体計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−17734(P2013−17734A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154929(P2011−154929)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】