説明

生体試料の連続分析

生体試料中の複数の標的をプローブするための方法を提供する。この方法には、複数の標的を含有する試料を提供する工程、試料中に存在する1以上の標的へ、酵素へ連結した結合剤を有する少なくとも1つのプローブを結合させる工程、及び結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程が含まれる。この方法には、蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程、及び蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに実質的に不活性化する酸化剤を含有する溶液を該試料へ適用する工程が含まれる。この方法には、先の工程の試料中に存在する1以上の標的へ、酵素へ連結した結合剤を有する少なくとも1つのプローブを結合させる工程、結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程;及び蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。本明細書に開示する方法は、単一の試料中の複数の標的に関する情報を導くための結合、観測、及び酸化の工程の複数反復も提供する。関連するキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2006年11月16日に出願された、「Sequential Analysis of Biological Samples(生体試料の連続分析)」と題する、米国特許出願番号11/560,599の一部継続出願である。
【0002】
[0002] 本明細書に開示するのは、特に、生体試料における複数の生体標的の存在、非存在、濃度、及び/又は空間分布を識別するために、生体試料を連続的に分析するための方法である。
【背景技術】
【0003】
[0003] 生物学及び医学においては、生体試料中の様々な標的を観測するために、様々な方法を使用することができる。例えば、組織学的切片や他の細胞学的調製物中のタンパク質の分析は、組織化学、免疫組織化学(IHC)、又は免疫蛍光法の技術を使用して実施してよい。生体試料中のタンパク質の分析は、固体状態のイムノアッセイを使用して、例えば、ウェスタンブロットの技術を使用して実施してもよい。
【0004】
[0004] 現行の技術の多くは、単一の試料において、一度にごくわずかな標的しか検出し得ない(検出可能な標的の数が蛍光ベースの検出システムによって制限される、IHC又は蛍光ベースのウェスタンブロットのように)。標的のさらなる分析には、供給源からの追加の生体試料の使用が必要とされる場合があり、生体試料中の複数の生体標的の存在、非存在、濃度、及び/又は空間分布のような、標的の相対的特性を決定する能力が制限される。さらに、ある事例では、限られた量の試料しか分析に利用できない場合もあれば、個々の試料にさらなる分析が求められる場合もある。従って、個々の試料を反復的に分析することが可能な方法、薬剤、及びデバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
[0005] いくつかの態様では、生体試料中の複数の標的をプローブする方法を提供する。この方法には、複数の標的を含有する試料を提供する工程、試料中に存在する1以上の標的へ、酵素へ連結した結合剤を有する少なくとも1つのプローブを結合させる工程、及び結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程が含まれる。この方法には、蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程、及び蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに実質的に不活性化する酸化剤を含有する溶液をその試料へ適用する工程が含まれる。この方法には、先の工程の試料中に存在する1以上の標的へ、酵素へ連結した結合剤を有する少なくとも1つのプローブを結合させる工程、結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程;及び蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。この結合、観測、及び酸化の方法は、反復的に繰り返してよい。
【0006】
[0006] いくつかの態様において、この方法には、複数の標的を含有する試料を提供する工程、試料中に存在する1以上の標的へ、ペルオキシダーゼへ連結した結合剤を有する少なくとも1つのプローブを結合させる工程、及び結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結したペルオキシダーゼ基質と反応させる工程が含まれる。この方法には、蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程、及び蛍光シグナルジェネレータとペルオキシダーゼをともに実質的に不活性化する酸化剤を含有する溶液を該試料へ適用する工程が含まれる。この方法には、先の工程の試料中に存在する1以上の標的へ、ペルオキシダーゼへ連結した結合剤を有する少なくとも1つのプローブを結合させる工程、結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結したペルオキシダーゼ基質と反応させる工程;及び、蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。この結合、観測、及び酸化の方法は、反復的に繰り返してよい。
【0007】
[0007] いくつかの態様では、生体試料中の複数の標的の検出のためのキットを提供する。このキットには、酵素へ連結した結合剤を有する複数のプローブと蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質が含まれる。酸化剤は、試料へ適用されるときに、蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに実質的に不活性化する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】[0008] 図1は、10分及び15分後の試料1の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図2】[0009] 図2は、試料1、2、及び3の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図3】[0010] 図3は、30分及び140分後の試料4の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図4】[0011] 図4は、20分、60分、及び210分後の試料5の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図5】[0012] 図5は、12分及び16分後の試料6の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図6】[0013] 図6は、22分、70分、及び210分後の試料8の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図7】[0014] 図7は、試料9A、10A、及び11Aの吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図8】[0015] 図8は、試料9B及び10Bの吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図9】[0016] 図9は、試料12A及び12Bの吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図10】[0017] 図10は、試料13、14、及び15の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図11】[0018] 図11は、試料16及び17の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。
【図12】[0019] 図12は、試料18A(シグナル修飾前)及び試料18B(シグナル修飾後)の顕微鏡写真を(10倍の倍率で)示す。
【図13】[0020] 図13は、試料19A(シグナル修飾前)及び試料19B(シグナル修飾後)の顕微鏡写真を(10倍の倍率で)示す。
【図14】[0021] 図14は、試料20A(シグナル修飾前)及び試料20B(シグナル修飾後)の顕微鏡写真を示す。
【図15】[0022] 図15は、試料21A及び21B(シグナル修飾前)と試料21C(シグナル修飾後)の顕微鏡写真を示す。
【図16】[0023] 図16は、試料22A及び22B(シグナル修飾前)と試料22C(シグナル修飾後)の顕微鏡写真を示す。
【図17】[0024] 図17は、試料23A〜Eの顕微鏡写真を示す。
【図18】[0025] 図18は、試料24A(シグナル修飾前)及び試料24B(シグナル修飾後)の顕微鏡写真を示す。
【図19】[0026] 図19は、試料25A(Cy3及びCy5チャネル)、試料25B(Cy3及びCy5チャネル)、及び試料25C〜25Jの顕微鏡写真を示す。
【図20】[0027] 図20は、試料26A〜Hの顕微鏡写真を示す。
【図21】[0028] 図21は、試料27A〜Cの顕微鏡写真を示す。
【図22】[0029] 図22は、実施例20の撮像における各サイクルのバックグラウンドの平均ピクセル強度のプロットを示す。
【図23】[0030] 図23は、試料28A〜C及び29A〜Cの顕微鏡写真の間の比較を示す。
【図24】[0031] 図24は、試料30A〜Dの顕微鏡写真を示す。
【図25】[0032] 図25は、試料30C〜Fの顕微鏡写真を示す。
【図26】[0033] 図26は、試料30C及び30Dの各サイクルのバックグラウンドの平均ピクセル強度のプロットを示す。
【図27】[0034] 図27は、試料31A、31B、及び31Cの顕微鏡写真を示す。
【図28】[0035] 図28は、試料32A、32B、及び32Cの顕微鏡写真を示す。
【図29】[0036] 図29は、試料33、34、35、及び36の顕微鏡写真を示す。
【図30】[0037] 図30は、試料37、38、39及び40のドットブロットを示す。
【図31】[0038] 図31は、試料37、38、39及び40のドットの相対シグナル強度の棒グラフを示す。
【図32】[0039] 図32は、Cy3及びCy5のスペクトルの時間プロフィールを示す。
【図33】[0040] 図33は、異なるH2O2濃度についてCy3吸光度値を時間の関数として示す。
【図34】[0041] 図34は、異なるフルオロフォアについて吸光度値を時間の関数として示す。
【図35】[0042] 図35は、H2O2についてQD655吸光度値を時間の関数として示す。
【図36】[0043] 図36は、H2O2を使用するフルオレセインについて吸光度スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0044] 請求項にかかる発明の主題をより明瞭かつ簡潔に記載して説明するために、以下の記載と付帯の特許請求の範囲に使用する特定の用語について以下の定義を提供する。
【0010】
[0045] 単数形の「a」「an」及び「the」には、文脈が明瞭に他のことを指定しなければ、複数の指示対象が含まれる。本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるような近似化の用語は、それが関連する基本機能に変化をもたらさない許容範囲で変動し得るあらゆる定量表現を修飾するために適用してよい。従って、「約」のような用語によって修飾される数値は、特定される正確な数値へ限定してはならない。他に示さなければ、本明細書と特許請求の範囲に使用される、成分の量、分子量のような特性、反応条件、等を表すすべての数字は、すべての事例において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されたい。従って、反対のことを示さなければ、以下の明細書及び付帯の特許請求の範囲において示す数的変数は、本発明によって入手されることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。最低限でも、それぞれの数的変数は、少なくとも報告される有効数字の数に照らして通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0011】
諸定義
[0046] 請求項にかかる発明の主題をより明瞭かつ簡潔に記載して説明するために、以下の記載と付帯の特許請求の範囲に使用する特定の用語について以下の定義を提供する。
【0012】
[0047] 本明細書に使用するように、用語「抗体」は、別の分子の特別な空間的構造及び極性構造へ特異的に結合して、それによりそれと相補的であると定義される免疫グロブリンを意味する。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよく、宿主の免疫化と血清の採取といった当該技術分野でよく知られている技術によって(ポリクローナル)、又は継続したハイブリッド細胞系を調製して分泌タンパク質を採取することによって(モノクローナル)、又は少なくとも天然抗体の特異的結合に必要とされるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列又はその変異型をクローニングして発現させることによって調製してよい。抗体には、完全な免疫グロブリン又はその断片が含まれてよく、その免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3、IgMのような様々なクラス及びアイソタイプが含まれる。機能性の抗体断片には、全長抗体に類似したアフィニティーでの結合を保持することが可能な抗体の部分(例えば、Fab、Fv及びF(ab')2、又はFab')が含まれてよい。さらに、免疫グロブリン又はその断片の凝集体、ポリマー、及び共役体(conjugates)も、特定分子への結合アフィニティーが実質的に維持されている限りにおいて、適宜使用してよい。
【0013】
[0048] 本明細書に使用する場合、用語「結合剤」は、生体試料中の1以上の標的へ結合し得る分子を意味する。結合剤は、標的へ特異的に結合することができる。好適な結合剤には、天然又は修飾ペプチド、タンパク質(例、抗体、親和体(affibodies)、又はアプタマー)、核酸(例、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又はアプタマー);多糖(例、レクチン、糖類)、脂質、酵素、酵素基質又は阻害剤、リガンド、受容体、抗原、又はハプテンの1以上が含まれてよい。好適な結合剤は、分析すべき試料と検出に利用可能な標的に依存して選択してよい。例えば、試料中の標的にリガンドが含まれて結合剤に受容体を含めても、標的に受容体が含まれて結合剤にリガンドが含まれてもよい。同様に、標的に抗原が含まれて結合剤に抗体又は抗体断片が含まれても、その逆であってもよい。いくつかの態様では、標的に核酸が含まれて結合剤に相補的な核酸が含まれてよい。いくつかの態様では、標的と結合剤の両方に、互いへ結合することが可能なタンパク質が含まれてよい。
【0014】
[0049] 本明細書に使用する場合、用語「生体試料」は、生体対象より入手される試料を意味して、in vivo又はin vitroで入手される生体組織又は体液を起源とする試料が含まれる。そのような試料は、限定されないが、ヒトが含まれる哺乳動物より単離される、体液(例、血液、血漿、血清、又は尿)、臓器、組織、画分、及び細胞であり得る。生体試料には、組織が含まれる生体試料の切片(例、臓器又は組織の切片部分)も含まれてよい。生体試料には、生体試料からの抽出物、例えば、生体液(例、血液又は尿)からの抗原も含まれてよい。
【0015】
[0050] 生体試料は、原核生物起源でも真核生物起源(例、昆虫、原生動物、鳥類、魚類、爬虫類)でもよい。いくつかの態様において、生体試料は、哺乳動物(例、ラット、マウス、ウシ、イヌ、ロバ、モルモット、又はウサギ)である。ある態様において、生体試料は、霊長動物(例えば、チンパンジー、又はヒト)起源である。
【0016】
[0051] 本明細書に使用する場合、用語「対照プローブ」は、結合剤がシグナルジェネレータ又は直接染色することが可能なシグナルジェネレータへ連結された薬剤であって、それによりシグナルジェネレータが、蛍光プローブを不活性化するために利用する酸化剤の溶液との接触後に少なくとも80パーセントのシグナルを保持するものを意味する。対照プローブ中の好適なシグナルジェネレータは、酸化剤と接触したときに、または実質的には酸化されず、実質的には不活性化されない。シグナルジェネレータの好適な例には、放射活性標識又は非酸化フルオロフォア(例、DAPI)が含まれてよい。
【0017】
[0052] 本明細書に使用する場合、用語「酵素」は、基質の化学反応を触媒することができるタンパク分子を意味する。いくつかの態様において、好適な酵素は、基質の化学反応を触媒して、試料中に存在する受容体(例、フェノール基)又は試料が結合する固体支持体へ結合し得る反応産物を生成する。受容体は、外因性(即ち、試料又は固体支持体へ外的に付着する受容体)であっても、内因性(試料又は固体支持体にもともと存在する受容体)であってもよい。好適な酵素の例には、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ、ホスファターゼ、エステラーゼ、及びグリコシダーゼが含まれる。好適な酵素の具体例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、リパーゼ、及びグルコースオキシダーゼが含まれる。
【0018】
[0053] 本明細書に使用する場合、用語「酵素基質」は、酵素によって化学的に触媒されて反応産物を生成する化学化合物を意味する。いくつかの態様において、反応産物は、試料中に存在する受容体又は試料が結合している固体支持体へ結合することが可能である。いくつかの態様において、本発明の方法に利用される酵素基質には、非発色性又は非化学発光性の基質が含まれてよい。酵素基質へは、シグナルジェネレータを標識として付けてよい。
【0019】
[0054] 本明細書に使用する場合、用語「フルオロフォア」又は「蛍光シグナルジェネレータ」は、特別な波長の光への曝露により励起されるときに、異なる波長で光を放出する化学化合物を意味する。フルオロフォアは、その発光プロフィール又は「色」によって記載される場合がある。緑色のフルオロフォア(例えばCy3、FITC、及びオレゴングリーン)は、概して515〜540ナノメートルの範囲の波長でのその発光を特徴とする場合がある。赤色のフルオロフォア(例えば、テキサスレッド、Cy5、及びテトラメチルローダミン)は、概して590〜690ナノメートルの範囲の波長でのその発光を特徴とする場合がある。フルオロフォアの例には、限定されないが、4-アセトアミド-4'-イソチオシアナートスチルベン-2,2'-ジスルホン酸、アクリジン、アクリジン及びアクリジンイソチオシアネートの誘導体、5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5-ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、ブリリアントイエロー、クマリン、クマリン誘導体、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151)、シアノシン;4',6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、5',5”-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド)、7-ジエチルアミノ-3-(4'-イソチオシアナートフェニル)-4-メチルクマリン、4,4'-ジイソチオシアナートジヒドロ-スチルベン-2,2'-ジスルホン酸、4,4'-ジイソチオシアナートスチルベン-2,2'-ジスルホン酸、5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド)、エオジン、エオジンイソチオシアネートのようなエオジンの誘導体、エリスロシン、エリスロシンB及びイソチオシアン酸エリスロシンのようなエリスロシンの誘導体;エチジウム;フルオレセインと5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、QFITC(XRITC)のような誘導体;フルオレスカミン誘導体(アミンとの反応時に蛍光);IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローズアニリン;フェノールレッド、B-フィコエリスリン;o-フタルジアルデヒド誘導体(アミンとの反応時に蛍光);ピレンとピレン、ピレンブチレート、及びスクシンイミジル1-ピレンブチレートのような誘導体;リアクティブレッド4(Cibacron. RTM. ブリリアントレッド3B-A)、ローダミンと6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)のような誘導体;リボフラビン;ロゾール酸とランタニドキレート誘導体、量子ドット、シアニン、ピレリウム(pyrelium)色素、及びスクアライン(squaraine)が含まれる。
【0020】
[0055] 本明細書に使用する場合、用語「in situ」は、一般に、ある事象が元の場所で、例えば、無傷の臓器又は組織において、又は臓器又は組織の代表的なセグメントにおいて起こることを意味する。いくつかの態様において、標的のin situ分析は、生物、臓器、組織試料、又は細胞培養物が含まれる、多様な供給源に由来する細胞で実施してよい。in situ分析は、標的がその起源の部位から移されるときに失われる可能性がある文脈(contextual)情報を提供する。従って、標的のin situ分析は、細胞膜が完全に無傷であるか又は一部無傷であって、標的結合プローブが細胞の内部に残っている場合の、全細胞又は組織試料の内部に位置する標的結合プローブの分析について記載する。さらに、本明細書に開示する方法を利用して、固定されているか又は固定されていない細胞又は組織試料において標的をin situ分析することができる。
【0021】
[0056] 本明細書に使用する場合、用語「ペルオキシダーゼ」は、電子ドナーとともに酵素基質の酸化反応を触媒する酵素群を意味する。ペルオキシダーゼ酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、シトクロムCペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、又は大豆ペルオキシダーゼが含まれる。
【0022】
[0057] 本明細書に使用する場合、用語「ペルオキシダーゼ基質」は、ペルオキシダーゼによって化学的に触媒されて反応産物を生成する化学化合物を意味する。いくつかの態様において、本発明の方法に利用されるペルオキシダーゼ基質には、非発色性又は非化学発光性の基質が含まれてよい。ペルオキシダーゼ基質へは、蛍光シグナルジェネレータを標識として付けてよい。
【0023】
[0058] 本明細書に使用する場合、用語「プローブ」は、結合剤とシグナルジェネレータ又は酵素のような標識を有する薬剤を意味する。いくつかの態様において、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、単一の実体において具体化される。結合剤と標識は、直接的に(例、結合剤へ取り込まれた蛍光分子を介して)又は間接的に(例、切断部位が含まれる場合がある、リンカーを介して)結合してよく、生体試料へ単一工程で適用してよい。代わりの態様において、結合剤と標識は、別個の実体(例、標的へ結合することが可能な一次抗体と、その一次抗体へ結合することが可能な、酵素又はシグナルジェネレータ-で標識された二次抗体)において具体化される。結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)が別々な実体であるとき、それらは、生体試料へ単一の工程又は複数の工程で適用してよい。本明細書に使用する場合、用語「蛍光プローブ」は、結合剤が蛍光シグナルジェネレータへ連結した薬剤を意味する。
【0024】
[0059] 本明細書に使用する場合、用語「シグナルジェネレータ」は、1以上の検出技術(例、分光分析、熱量測定、分光学、又は目視検査)を使用して検出可能なシグナルを提供することが可能な分子を意味する。検出可能シグナルの好適な例には、光シグナル、及び電気シグナル、又は放射活性シグナルが含まれてよい。シグナルジェネレータの例には、発色団、フルオロフォア、ラマン活性タグ、又は放射活性標識の1以上が含まれる。上記に述べたように、プローブに関しては、いくつかの態様において、シグナルジェネレータと結合剤が単一の実体に存在してよい(例、蛍光標識付きの標的結合タンパク質)。あるいは、結合剤とシグナルジェネレータは、試料への導入前又は導入時に互いに会合する、別個の実体(例、受容体タンパク質と、その特別な受容体タンパク質に対する標識抗体)であってよい。
【0025】
[0060] 本明細書に使用する場合、用語「固体支持体」は、生体試料中に存在する標的をその上で固定化して、その後で本明細書に開示する方法により検出し得る物品を意味する。標的は、固体支持体上に、物理的な吸着により、共有結合形成により、又はそれらの組合せにより固定化してよい。固体支持体には、ポリマー、ガラス、又は金属材料が含まれてよい。固体支持体の例には、膜、マイクロタイタープレート、ビーズ、フィルター、検査片、スライド、カバースリップ、及び試験管が含まれる。
【0026】
[0061] 本明細書に使用する場合、用語「特異的結合」は、他の分子への実質的に乏しい認識に比較される、2つの異なる分子の一方の他方に対する特異的な認識を意味する。分子は、その表面上又は空洞中に、静電的相互作用、水素結合、又は疎水性相互作用の1以上より起こる2分子間の特異的な認識を生じる領域を有する場合がある。特異的結合の例には、限定されないが、抗体-抗原相互作用、酵素-基質相互作用、ポリヌクレオチド相互作用、等が含まれる。いくつかの態様において、結合剤分子は、約6〜約8のpHと約0℃〜約37℃に及ぶ温度のような周囲条件の下で、標的に対して約105 M-1以上の固有の平衡結合定数(KA)を有する可能性がある。
【0027】
[0062] 本明細書に使用する場合、用語「標的」は、生体試料中に存在するときに検出され得る、生体試料の成分を意味する。標的は、それに対して天然に存在する特異的結合剤(例、抗体)が存在するか、又はそれに対して特異的結合剤(例、低分子結合剤又はアプタマー)を製造することができる、どの物質でもよい。一般に、結合剤は、標的の1以上の別個の化学部分又は標的の三次元構造成分(例、ペプチドフォールディングより生じる3D構造)を介して標的へ結合してよい。標的には、天然又は修飾ペプチド、タンパク質(例、抗体、親和体、又はアプタマー)、核酸(例、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又はアプタマー);多糖(例、レクチン又は糖)、脂質、酵素、酵素基質、リガンド、受容体、抗原、又はハプテンの1以上が含まれてよい。いくつかの態様において、標的には、タンパク質又は核酸が含まれてよい。
【0028】
[0063] 本発明には、分析物検出、組織化学、免疫組織化学、又は免疫蛍光法のような、分析、診断、又は予後の応用に適用可能な方法に概して関する態様が含まれる。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、組織化学、免疫染色、免疫組織化学、イムノアッセイ、又は免疫蛍光法に特に適用可能であり得る。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、免疫ブロッティング技術、例えば、ウェスタンブロット、又は酵素結合免疫吸着法(ELISA)のようなイムノアッセイに特に適用可能であり得る。
【0029】
[0064] 開示する方法は、単一の生体試料における複数の標的の検出に概して関する。いくつかの態様では、単一の生体試料中の複数の標的を、同じ検出チャネルを使用して検出する方法を開示する。標的は、懸濁状態の細胞の表面上、細胞塗抹標本の表面上、組織切片の表面上、DNAマイクロアレイの表面上、タンパク質マイクロアレイの表面上、又は固体支持体(ゲル、ブロット、ガラススライド、ビーズ、又はELISAプレートのような)の表面上に存在してよい。
【0030】
[0065] 本明細書に開示する方法は、生体試料の完全性に対してほとんど又はまったく影響せずに、同じ生体試料中の複数の標的の検出を可能にし得る。同じ生体試料において標的を検出することにより、生体試料中の標的に関する空間情報をさらに提供することができる。本明細書に開示する方法は、限られた量の生体試料しか分析に利用可能でなく、同じ試料を複数の分析のために処理しなければならない場合の分析応用にも適用可能であり得る。本明細書に開示する方法はまた、プローブと標的を実質的に離脱させずに、固体状態の試料(例、組織切片)又は固体支持体へ付着した試料(例、ブロット)の複数の分析を促進することができる。さらに、試料中の異なる標的の検出に同じ検出チャネルを利用してよく、複数の標的の分析への化学的要求性をより少なくすることを可能にする。本方法は、分解可能なシグナルの限界のために同時に検出可能な標的の数が制限される場合がある検出方法に基づいた分析をさらに促進する可能性がある。例えば、蛍光ベースの検出を使用すると、同時に検出し得る標的の数は、その励起光及び発光の波長特性に基づけば約4の蛍光シグナルしか分解可能でないので、約4へ限定される場合がある。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、蛍光ベースの検出システムを使用して、4より多い標的の検出を可能にし得る。
【0031】
[0066] いくつかの態様において、生体試料中の複数の標的を検出する方法には、生体試料中の標的の連続検出が含まれる。この方法には、一般に、生体試料中の第一標的を検出する工程、第一標的からのシグナルを、化学剤を使用して修飾する工程、及び生体試料中の第二標的を検出する工程が含まれる。この方法には、第二標的からのシグナルの修飾に続いて生体試料中の第三標的を検出する工程を繰り返すこと、等をさらに含めてよい。
【0032】
[0067] いくつかの態様において、本方法には、生体試料を第一プローブと接触させる工程と、第一プローブを第一標的へ物理的に結合させる工程が含まれる。本方法には、第一プローブからの第一シグナルを観測する工程がさらに含まれる。化学剤をプローブへ適用して、第一シグナルを修飾する。本方法には、生体試料を第二プローブと接触させて第二プローブを生体試料中の第二標的へ物理的に結合させる工程に続いて、第二プローブからの第二シグナルを観測する工程がさらに含まれる。
【0033】
[0068] 他の態様において、本方法には、複数の標的を含有する試料を提供する工程と、結合剤が酵素へ連結した少なくとも1つのプローブを試料中に存在する1以上の標的へ結合させる工程が含まれる。本方法には、結合したプローブを蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程と、蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに実質的に不活性化する酸化剤が含まれる溶液を試料へ適用する。本方法には、結合剤が酵素へ連結した少なくとも1つの後続プローブを、試料中に存在する1以上の標的へ結合させる工程がさらに含まれる。本方法には、結合したプローブを蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程と、蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。
【0034】
[0069] なお他の態様において、本方法には、固体支持体へ付着した複数の標的を含有する生体試料を提供する工程と、少なくとも1つの蛍光プローブを試料中に存在する1以上の標的へ結合させる工程が含まれる。本方法には、結合した蛍光プローブからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。結合した蛍光プローブを、蛍光プローブを実質的に不活性化する酸化剤で酸化する。本方法には、少なくとも1つの後続の蛍光プローブを試料中に存在する1以上の標的へ結合させることに続いて、後続の結合した蛍光プローブからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。
【0035】
[0070] なお他の態様において、本方法には、固体支持体へ付着した複数の標的を含有する生体試料を提供する工程と、少なくとも1つの蛍光プローブを試料中に存在する1以上の標的へ結合させる工程が含まれる。本方法には、少なくとも1つの対照プローブを試料中の1以上の標的へ結合する工程がさらに含まれる。本方法には、結合した蛍光プローブからのシグナルと対照プローブからの対照シグナルを観測する工程がさらに含まれる。結合した蛍光プローブを、蛍光プローブを実質的に不活性化して対照プローブは不活性化しない酸化剤で酸化する。本方法には、少なくとも1つの後続の蛍光プローブを試料中に存在する1以上の標的へ結合させることに続いて、後続の結合した蛍光プローブからのシグナルを観測する工程がさらに含まれる。
【0036】
生体試料
[0071] 本発明の1つの態様による生体試料は、固体又は液体であってよい。生体試料の好適な例には、限定されないが、培養物、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳、リンパ液、痰、精液、尿、糞、涙液、唾液、注射針吸引物、皮膚の外部部分、気道、腸管、及び尿生殖路、腫瘍、臓器、細胞培養物又は細胞培養成分、又は固体組織切片が含まれてよい。いくつかの態様において、生体試料は、そのまま、即ち、目的の標的の採取及び/又は単離なしに分析してよい。代わりの態様において、標的の採取及び単離は、分析に先立って実施してよい。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、生体試料のin vitro分析に特に適している場合がある。
【0037】
[0072] 生体試料には、限定されないが、凍結又は染色されているかまたは他のやり方で処理されているといった、その物理状態にかかわらず、上記の試料のいずれも含まれてよい。いくつかの態様において、生体試料には、保存剤、抗凝固薬、緩衝液、固定剤、栄養素、抗生物質、等のような、天然の試料と天然では混ざらない化合物が含まれてよい。
【0038】
[0073] いくつかの態様において、生体試料には、組織試料、全細胞、細胞成分、サイトスピン、又は細胞塗抹標本が含まれてよい。いくつかの態様において、生体試料には、組織試料が本質的に含まれる。組織試料には、類似の機能を有し得る、生体対象の組織より入手される類似の細胞の集合が含まれてよい。いくつかの態様において、組織試料には、ヒトの組織より入手される類似の細胞の集合が含まれてよい。ヒト組織の好適な例には、限定されないが、(1)上皮;(2)血管、骨、及び軟骨が含まれる結合組織;(3)筋肉組織;及び(4)神経組織が含まれる。組織試料の供給源は、新鮮、凍結、及び/又は保存された臓器又は組織試料又は生検又は吸引物より入手される固体組織;血液又はあらゆる血液成分;脳脊髄液、羊水、腹膜液、又は間質液のような体液;又は、対象の妊娠期又は発生期のあらゆる時点からの細胞であってよい。いくつかの態様において、組織試料には、初代又は培養の細胞又は細胞系が含まれてよい。
【0039】
[0074] いくつかの態様において、生体試料には、健康又は病気の組織試料からの組織切片(例、結腸、乳房組織、前立腺からの組織切片)が含まれる。組織切片には、組織試料の単一部分又は切片、例えば、組織試料より切断した組織又は細胞の薄片が含まれてよい。いくつかの態様では、本明細書に開示する方法を、少なくとも2つの(形態学又は分子のレベルで)異なる標的に関する組織試料の同じ切片の分析に使用し得るならば、組織試料の複数の切片を取って分析へ処してよい。いくつかの態様では、組織試料の同じ切片を少なくとも4つの(形態学又は分子のレベルで)異なる標的に関して分析し得る。いくつかの態様では、組織試料の同じ切片を4より多い(形態学又は分子のレベルで)異なる標的に関して分析し得る。いくつかの態様では、組織試料の同じ切片を形態学レベルと分子レベルの両方で分析し得る。
【0040】
[0075] 組織切片は、生体試料として利用するならば、約100マイクロメートル未満である範囲、約50マイクロメートル未満である範囲、約25マイクロメートル未満である範囲、又は約10マイクロメートル未満である範囲の厚さを有してよい。
【0041】
[0076] いくつかの態様では、生体試料又は生体試料中の標的を固体支持体へ付着させてよい。固体支持体には、マイクロアレイ(例、DNA又はRNAマイクロアレイ)、ゲル、ブロット、ガラススライド、ビーズ、又はELISAプレートが含まれてよい。いくつかの態様では、生体試料又は生体試料中の標的を、ナイロン、ニトロセルロース、及びポリビニリデンジフルオリドより選択される膜へ付着させてよい。いくつかの態様において、固体支持体には、ポリスチレン、ポリカーボネート、及びポリプロピレンより選択されるプラスチック表面が含まれてよい。
【0042】
標的
[0077] 標的は、生体試料の表面に存在しても(例えば、組織切片の表面上の抗原)、試料のバルクに存在してもよい(例えば、緩衝溶液中の抗体)。いくつかの態様において、標的は、生体試料の表面に本来は存在していない場合があり、標的を表面上で利用可能にするように生体試料を処理しなければならない場合がある(例、抗原復帰、酵素消化、エピトープ回復、又はブロッキング)。いくつかの態様において、標的は、血液、血漿、血清、又は尿のような体液に存在してよい。いくつかの他の態様において、標的は、組織中に、細胞表面か又は細胞内部のいずれかで固定してよい。
【0043】
[0078] 分析すべき標的の適格性は、生体試料に求められる分析の種類及び特質により決定してよい。いくつかの態様において、標的は、生体試料中の分析物の存在又は非存在に関する情報を提供する場合がある。別の態様において、標的は、生体試料の状態に関する情報を提供する場合がある。例えば、生体試料に組織試料が含まれるならば、本明細書に開示する方法を使用して、異なる種類の細胞又は組織を比較すること、異なる発生段階を比較すること、疾患又は異常の存在を検出すること、又は疾患又は異常の種類を決定することに役立ち得る標的を検出することができる。
【0044】
[0079] 標的には、ペプチド、タンパク質(例、抗体、親和体、又はアプタマー)、核酸(例、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又はアプタマー);多糖(例、レクチン又は糖)、脂質、酵素、酵素基質、リガンド、受容体、抗原、又はハプテンの1以上が含まれてよい。いくつかの態様において、標的には、本質的に、タンパク質又は核酸が含まれてよい。上記の標的の1以上が特定の細胞に特徴的である場合もあれば、他の標的が特定の疾患又は状態に関連する場合もある。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法を使用して検出及び分析し得る標的には、限定されないが、予後標的、ホルモン又はホルモン受容体標的、リンパ球様標的、腫瘍標的、細胞周期関連標的、神経組織及び腫瘍の標的、又はクラスター分化標的が含まれてよい。
【0045】
[0080] 予後標的の好適な例には、ガラクトシルトランスフェラーゼII、ニューロン特異的エノラーゼ、プロトンATPアーゼ-2、又は酸ホスファターゼのような酵素標的が含まれてよい。
【0046】
[0081] ホルモン又はホルモン受容体標的の好適な例には、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、gC1q-R/p33補体受容体、IL-2受容体、p75神経栄養因子受容体、PTH受容体、甲状腺ホルモン受容体、又はインスリン受容体が含まれてよい。
【0047】
[0082] リンパ球様標的の好適な例には、α-1-アンチキモトリプシン、α-1-アンチトリプシン、B細胞標的、bcl-2、bcl-6、Bリンパ球抗原36 kD、BM1(骨髄性の標的)、BM2(骨髄性の標的)、ガレクチン-3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、HLAクラスII(DR)抗原、ヒト好中球デフェンシン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、κ軽鎖、κ軽鎖、λ軽鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージ標的、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化リンパ腫キナーゼ、形質細胞標的、分泌性白血球プロテアーゼ阻害剤、T細胞抗原受容体(JOVI1)、T細胞抗原受容体(JOVI3)、ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ、又は非クラスターB細胞標的が含まれてよい。
【0048】
[0083] 腫瘍標的の好適な例には、αフェトプロテイン、アポリポタンパク質D、BAG-1(RAP46タンパク質)、CA19-9(シアリル lewisa)、CA50(癌関連ムチン抗原)、CA125(卵巣癌抗原)、CA242(腫瘍関連ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラステリン(アポリポタンパク質J)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異抗原、グロス嚢胞症体液タンパク質(gross cystic disease fluid protein)-15、肝細胞特異抗原、ヘレグリン、ヒト胃ムチン、ヒト乳脂肪球、MAGE-1、マトリクスメタロプロテイナーゼ、メランA、メラノーマ標的(HMB45)、メソセリン、メタロチオネイン、小眼球症転写因子(MITF)、Muc-1コア糖タンパク質、Muc-1糖タンパク質、Muc-2糖タンパク質、Muc-5AC糖タンパク質、Muc-6糖タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、Myf-3(横紋筋肉腫標的)、Myf-4(横紋筋肉腫標的)、MyoD1(横紋筋肉腫標的)、ミオグロブリン、nm23タンパク質、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺インヒビンペプチド、PTEN、腎細胞癌標的、小腸ムチン抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子-1、マトリクスメタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質-1、ビリン、又はフォン・ウィルブラント因子が含まれてよい。
【0049】
[0084] 細胞周期関連標的の好適な例には、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子-1、bcl-w、bcl-x、ブロモデオキシウリジン、CAK(cdk-活性化キナーゼ)、細胞アポトーシス感受性タンパク質(CAS)、カスパーゼ2、カスパーゼ8、CPP32(カスパーゼ-3)、CPP32(カスパーゼ-3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNA断片化因子(N末端)、Fas(CD95)、Fas結合デスドメインタンパク質、Fasリガンド、Fen-1、IPO-38、Mcl-1、ミニ染色体維持タンパク質、ミスマッチ修復タンパク質(MSH2)、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ、増殖細胞核内抗原、p16タンパク質、p27タンパク質、p34cdc2、p57タンパク質(Kip2)、p105タンパク質、Stat1α、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIα、トポイソメラーゼIIIα、又はトポイソメラーゼIIβが含まれてよい。
【0050】
[0085] 神経組織及び腫瘍の標的の好適な例には、αBクリスタリン、αインターネキシン、αシヌクレイン、アミロイド前駆体タンパク質、βアミロイド、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼ、興奮性アミノ酸トランスポーター1、GAP43、グリア線維性酸性タンパク質、グルタミン酸受容体2、ミエリン塩基性タンパク質、神経成長因子受容体(gp75)、神経芽細胞腫標的、神経フィラメント68 kD、神経フィラメント160 kD、神経フィラメント200 kD、ニューロン特異エノラーゼ、ニコチン性アセチルコリン受容体α4、ニコチン性アセチルコリン受容体β2、ペリフェリン、タンパク遺伝子産物9、S-100タンパク質、セロトニン、SNAP-25、シナプシンI、シナプトフィシン、tau、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、又はユビキチンが含まれてよい。
【0051】
[0086] クラスター分化標的の好適な例には、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8α、CD8β、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、及びTCRζが含まれてよい。
【0052】
[0087] 他の好適な予後標的には、中心体タンパク質-F(CENP-F)、ジアンチン(giantin)、インボルクリン、ラミンA及びC(XB10)、LAP-70、ムチン、核膜孔複合タンパク質、p180ラメラ体タンパク質、ran、r、カテプシンD、Ps2タンパク質、Her2-neu、P53、S100、上皮標的抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNA、又はKi67が含まれてよい。
【0053】
プローブ
[0088] いくつかの態様では、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)を直接的に(即ち、リンカーなしに)互いへ連結させてよい。他の態様では、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)を、リンカーを介して互いへ連結させてよい。本明細書に使用する場合、「連結させる」は、一般に、あらゆる物理化学的な手段によって互いへ安定的に結合した2つの実体(例えば、結合剤とシグナルジェネレータ)に言及する。この連結の特質は、それがいずれの実体の有効性も実質的には損なわないというようなものであり得る。結合剤と標識は、共有結合性又は非共有結合性の相互作用により互いに連結してよい。非共有結合性相互作用には、限定されないが、疎水性相互作用、イオン性相互作用、水素結合相互作用、高アフィニティー相互作用(ビオチン-アビジン又はビオチン-ストレプトアビジン複合化のような)、又は他のアフィニティー相互作用が含まれてよい。
【0054】
[0089] リンカーには、非共有結合又は共有結合形成により生成される、連結する構造又は配列の形態が含まれてよい。いくつかの態様において、リンカーは、化学的に安定であってよく、即ち、化学剤の存在下でその完全性を維持することができる。いくつかの態様において、リンカーは、化学剤の存在下に解離させる、切断する、又は加水分解することが可能であり得る化学剤に感受性があってよい。リンカーの好適な例には、ジスルフィド結合(例、SPDP又はSMPT)、pH感受性の構造/配列、還元剤の存在下で還元され得る構造/配列、酸化剤の存在下で酸化され得る構造/配列、又は化学剤の存在下で容易に操作(解離、切断、又は加水分解)し得る他のあらゆる化学的又は物理的な結合が含まれてよい。
【0055】
[0090] いくつかの態様では、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)を、好適な条件の下で反応して連結を形成することが可能な官能基を介して互いへ化学的に連結させてよい。官能基の組合せの好適な例には、限定されないが、アミンエステルとアミン又はアニリン;アシルアジドとアミン又はアニリン;ハロゲン化アシルとアミン、アニリン、アルコール、又はフェノール;アシルニトリルとアルコール又はフェノール;アルデヒドとアミン又はアニリン;ハロゲン化アルキルとアミン、アニリン、アルコール、フェノール、又はチオール;アルキルスルホネートとチオール、アルコール、又はフェノール;無水物とアルコール、フェノール、アミン、又はアニリン;ハロゲン化アリールとチオール;アジリジンとチオール又はチオエーテル;カルボン酸とアミン、アニリン、アルコール、又はハロゲン化アルキル;ジアゾアルカンとカルボン酸;エポキシドとチオール;ハロアセトアミドとチオール;ハロトリアジンとアミン、アニリン、又はフェノール;ヒドラジンとアルデヒド又はケトン;ヒドロキシアミンとアルデヒド又はケトン;イミドエステルとアミン又はアニリン;イソシアネートとアミン又はアニリン;及び、イソチオシアネートとアミン又はアニリンが含まれてよい。上記の官能基対の一方の官能基が結合剤に存在していて、対応の官能基がシグナルジェネレータ又は酵素に存在してよい。例えば、結合剤にカルボン酸が含まれて、シグナルジェネレータ又は酵素にアミン、アニリン、アルコール、又はハロゲン化アシルが含まれてよく、その逆であってもよい。結合剤とシグナルジェネレータ又は酵素の間の共役化(conjugation)は、この場合、アミド又はエステル連結の形成によってもたらすことができる。
【0056】
[0091] いくつかの態様において、結合剤は、シグナルジェネレータ(例えば、結合剤がタンパク質であるならば、合成の間に、検出可能な標識アミノ酸配列を使用して)又は酵素(例えば、結合剤が酵素であるならば)で内在的に標識してよい。内在的に標識される結合剤は、検出されるために、別のシグナルジェネレータも酵素も必要としない場合がある。むしろ、内在的な標識は、プローブを検出可能にするのに十分であり得る。代わりの態様では、結合剤へ特異的なシグナルジェネレータ又は酵素を結合させることによってそれを標識してよい(即ち、外因的に標識する)。
【0057】
[0092] いくつかの態様において、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、単一の実体において具体化される。代わりの態様において、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、別個の実体において具体化される(例えば、標的へ結合することが可能な一次抗体と、その一次抗体へ結合することが可能な、酵素又はシグナルジェネレータで標識した二次抗体、又は標的へ結合することが可能なハプテン標識一次抗体と、そのハプテン標識一次抗体へ結合することが可能な、酵素又はシグナルジェネレータで標識した抗ハプテン抗体)。結合剤とシグナルジェネレータ又は酵素が別々の実体であるとき、それらを生体試料へ単一の工程又は複数の工程で適用してよい。いくつかの態様において、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、別々の実体であり、生体試料への適用前に予め付けて、生体試料へ単一の工程で適用する。なお他の態様において、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、別々の実体であり、生体試料へ独立して適用して、適用後に組み合わせる。
【0058】
結合剤
[0093] 本明細書に開示する方法は、特異的なやり方で標的へ物理的に結合する結合剤の使用に関わる。いくつかの態様において、結合剤は、標的へ十分な特異性をもって結合してよく、即ち、結合剤は、他のあらゆる分子へ結合するより大きなアフィニティーで標的へ結合してよい。いくつかの態様において、結合剤は、他の分子へ結合してよいが、その結合は、その非特異的結合がバックグラウンドレベルであるか又はその付近であり得るようなものであろう。いくつかの態様において、目的の標的への結合剤のアフィニティーは、他の分子へのそのアフィニティーの少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、又はそれ以上である範囲にあり得る。いくつかの態様では、アフィニティーの差が最大である結合剤を利用してよいが、それらは、その標的への最大アフィニティーのものでなくてもよい。
【0059】
[0094] いくつかの態様では、標的と結合剤の間の結合が物理的な結合によって影響を受ける場合がある。物理的な結合には、非共有結合性相互作用を使用してもたらされる結合が含まれてよい。非共有結合性相互作用には、限定されないが、疎水性相互作用、イオン性相互作用、水素結合相互作用、又はアフィニティー相互作用(ビオチン-アビジン又はビオチン-ストレプトアビジン複合体化のような)が含まれてよい。いくつかの態様において、標的と結合剤は、その表面上又は空洞中に、物理的な結合をもたらすその2者間の特異的な認識を生じる領域を有する場合がある。いくつかの態様では、それらの分子形状の一部の相互フィットに基づいて、結合剤が生体標的へ結合してよい。
【0060】
[0095] 結合剤とその対応標的は、結合対とみなしてよく、その非限定的な例には、抗原/抗体、抗原/抗体断片、又はハプテン/抗ハプテンのような免疫型の結合対;ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、葉酸/葉酸結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、レクチン/特定の炭水化物、酵素/酵素、酵素/基質、酵素/基質類似体、酵素/偽基質(酵素活性により触媒され得ない基質類似体)、酵素/補因子、酵素/調節剤、酵素/阻害剤、又はビタミンB12/内因子のような非免疫型の結合対が含まれる。結合対の他の好適な例には、相補的な核酸断片(DNA配列、RNA配列、LNA配列、及びPNA配列が含まれる);プロテインA/抗体;プロテインG/抗体;核酸/核酸結合タンパク質;又は、ポリヌクレオチド/ポリヌクレオチド結合タンパク質が含まれてよい。
【0061】
[0096] いくつかの態様において、結合剤は、配列又は構造に特異的な結合剤であってよく、ここで結合剤によって認識されて結合される、標的の配列又は構造はその標的に十分に特有であり得る。
【0062】
[0097] いくつかの態様において、結合剤は、構造特異的であってよく、標的の一次、二次、又は三次構造を認識することができる。標的の一次構造には、その原子組成のそれらの原子を連結する化学結合(立体化学が含まれる)の詳細、例えば、タンパク質のアミノ酸の線状配置の種類及び特質が含まれてよい。標的の二次構造は、生体分子のセグメントの全般的な三次元形態を意味する場合があり、例えば、タンパク質では、二次構造が、離れたアミノ酸が互いに近接することを生じ得る、ペプチド「骨格」鎖の様々なコンホメーションへの折り畳みを意味する場合がある。二次構造の好適な例には、限定されないが、αらせん、βプリーツシート、又はランダムコイルが含まれてよい。標的の三次構造は、その全体的な三次元構造であり得る。標的の四次構造は、1以上の他の標的又は巨大分子とのその非共有結合性相互作用(タンパク質相互作用のような)により形成される構造であり得る。四次構造の例は、ヘモグロビンとなる4つのグロビンタンパク質サブユニットによって形成される構造であり得る。本発明の態様による結合剤は、上記構造のいずれにも特異的であってよい。
【0063】
[0098] 構造特異的な結合剤の例には、タンパク質標的へ結合し得るタンパク質特異的な分子が含まれてよい。好適なタンパク質特異的な分子の例には、抗体及び抗体断片、核酸(例えば、タンパク質標的を認識するアプタマー)、又はタンパク質基質(非触媒可能)が含まれてよい。
【0064】
[0099] いくつかの態様において、標的には抗原が含まれてよく、結合剤には抗体が含まれてよい。好適な抗体には、それらが標的抗原へ特異的に結合する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、又は抗体断片が含まれてよい。
【0065】
[0100] いくつかの態様において、生体試料には、細胞又は組織試料が含まれてよく、本明細書に開示する方法を免疫組織化学(IHC)に利用してよい。免疫化学は、抗体ベースの結合剤への標的抗原の結合に関わる場合があり、組織又は細胞に関する情報(例えば、病的な細胞対正常な細胞)を提供する。本明細書に開示する方法に結合剤として適した抗体(と対応の疾患/病的細胞)の例には、限定されないが、抗エストロゲン受容体抗体(乳癌)、抗プロゲステロン受容体抗体(乳癌)、抗p53抗体(複数の癌)、抗Her-2/neu抗体(複数の癌)、抗EGFR抗体(表皮増殖因子、複数の癌)、抗カテプシンD抗体(乳癌と他の癌)、抗Bcl-2抗体(アポトーシス細胞)、抗E-カドヘリン抗体、抗CA125抗体(卵巣癌と他の癌)、抗CA15-3抗体(乳癌)、抗CA19-9抗体(結腸癌)、抗c-erbB-2抗体、抗P-糖タンパク質抗体(MDR、多剤抵抗性)、抗CEA抗体(癌胎児性抗原)、抗網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)抗体、抗rasオネオプロテイン(oneoprotein)(p21)抗体、抗ルイスX(CD15とも呼ばれる)抗体、抗Ki-67抗体(細胞増殖)、抗PCNA(複数の癌)抗体、抗CD3抗体(T細胞)、抗CD4抗体(ヘルパーT細胞)、抗CD5抗体(T細胞)、抗CD7抗体(胸腺細胞、未熟T細胞、NKキラー細胞)、抗CD8抗体(サプレッサーT細胞)、抗CD9/p24抗体(ALL)、抗CD10(CALLAとも呼ばれる)抗体(一般的な急性リンパ球性白血病)、抗CD11c抗体(単球、顆粒球、AML)、抗CD13抗体(骨髄単球細胞、AML)、抗CD14抗体(成熟単球、顆粒球)、抗CD15抗体(ホジキン病)、抗CD19抗体(B細胞)、抗CD20抗体(B細胞)、抗CD22抗体(B細胞)、抗CD23抗体(活性化B細胞、CLL)、抗CD30抗体(活性化T細胞及びB細胞、ホジキン病)、抗CD31抗体(血管新生マーカー)、抗CD33抗体(骨髄細胞、AML)、抗CD34抗体(内皮幹細胞、間質性腫瘍)、抗CD35抗体(樹状細胞)、抗CD38抗体(血漿細胞、活性化T細胞、B細胞、及び骨髄細胞)、抗CD41抗体(血小板、巨核球)、抗LCA/CD45抗体(白血球共通抗原)、抗CD45RO抗体(ヘルパー、インデューサーT細胞)、抗CD45RA抗体(B細胞)、抗CD39、CD100抗体、抗CD95/Fas抗体(アポトーシス)、抗CD99抗体(ユーイング肉腫マーカー、MIC2遺伝子産物)、抗CD106抗体(VCAM-1;活性化内皮細胞)、抗ユビキチン抗体(アルツハイマー病)、抗CD71(トランスフェリン受容体)抗体、抗c-myc(腫瘍タンパク質及びハプテン)抗体、抗サイトケラチン(トランスフェリン受容体)抗体、抗ビメンチン(内皮細胞)抗体(B細胞及びT細胞)、抗HPVタンパク質(ヒト乳頭腫ウイルス)抗体、抗κ軽鎖抗体(B細胞)、抗λ軽鎖抗体(B細胞)、抗メラノソーム(HMB45)抗体(メラノーマ)、抗前立腺特異抗原(PSA)抗体(前立腺癌)、抗S-100抗体(メラノーマ、唾液、グリア細胞)、抗tau抗原抗体(アルツハイマー病)、抗フィブリン抗体(上皮細胞)、抗ケラチン抗体、抗サイトケラチン抗体(腫瘍)、抗α-カテニン(細胞膜)、又は抗Tn-抗原抗体(結腸癌、腺癌、及び膵臓癌)が含まれる。
【0066】
[0101] 好適な抗体の他の具体例には、限定されないが、抗増殖細胞核内抗原、クローンpc10(シグマアルドリッチ、P8825);抗平滑筋αアクチン(SmA)、クローン1A4(シグマ、A2547);ウサギ抗βカテニン(シグマ、C2206);マウス抗パンサイトケラチン、クローンPCK-26(シグマ、C1801);マウス抗エストロゲン受容体α、クローン1D5(DAKO、M7047);βカテニン抗体、クローン15B8(シグマ、C7738);ヤギ抗ビメンチン(シグマ、V4630);サイクル(cycle)アンドロゲン受容体クローンAR441(DAKO、M3562);フォン・ウィルブラント因子7、ケラチン5、ケラチン8/18、e-カドヘリン、Her2/neu、エストロゲン受容体、p53、プロゲステロン受容体、βカテニン;ロバ抗マウス(Jackson Immunoresearch, 715-166-150)又はロバ抗ウサギ(Jackson Immunoresearch, 711-166-152)が含まれてよい。
【0067】
[0102] いくつかの態様において、結合剤は、配列特異的であり得る。配列特異的な結合剤には核酸が含まれてよく、その結合剤は、標的中のヌクレオチド又はその誘導体の特別な線状配置を認識することが可能であり得る。いくつかの態様において、線状配置には、結合剤中の対応する相補的なヌクレオチドへそれぞれ結合し得る、連続したヌクレオチド又はその誘導体が含まれてよい。代わりの態様において、対応する相補的な残基をプローブ上に有し得ない、1、2、又はそれ以上のヌクレオチドがあり得るので、この配列は、連続していなくてもよい。核酸ベースの結合剤の好適な例には、限定されないが、DNA又はRNAのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが含まれてよい。いくつかの態様において、好適な核酸には、ジオキシゲニンdCTP、ビオチンdcTP、7-アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン、又はウリジンのような核酸類似体が含まれてよい。
【0068】
[0103] ある態様では、結合剤と標的の両方に核酸が含まれる場合がある。いくつかの態様において、核酸ベースの結合剤は、核酸標的とワトソン・クリック結合を形成してよい。別の態様において、核酸結合剤は、核酸標的とフーグスティーン結合を形成して、それにより三重鎖を形成してよい。フーグスティーン結合によって結合する核酸結合剤は、核酸標的の主溝に入る場合があり、そこに位置する塩基とハイブリダイズする。上記の結合剤の好適な例には、核酸の副溝及び主溝を認識して結合する分子(例えば、ある形態の抗生物質)が含まれてよい。ある態様において、核酸結合剤は、核酸標的とワトソン・クリックとフーグスティーンの両方の結合を形成してよい(例えば、ビスPNAプローブは、核酸に対してワトソン・クリックとフーグスティーンの両方の結合が可能である)。
【0069】
[0104] 核酸結合剤の長さは、結合の特異性を決定する場合もある。結合剤と核酸標的の間の単一のミスマッチのエネルギーコストは、より長い配列よりもより短い配列で相対的に高い場合がある。いくつかの態様において、より長いプローブの方がミスマッチに対してより修正可能であり、条件に応じて核酸へ結合し続けることができるので、より小さい核酸結合剤のハイブリダイゼーションは、より長い核酸プローブのハイブリダイゼーションより特異的であり得る。ある態様において、より短い結合剤は、所与の温度及び塩濃度でより低い結合安定性を明示する場合がある。この場合は、より高い安定性を明示して短い配列へ結合し得る結合剤を利用してよい(例えば、ビスPNA)。いくつかの態様において、核酸結合剤は、約4ヌクレオチド〜約12ヌクレオチド、約12ヌクレオチド〜約25ヌクレオチド、約25ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド、約50ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、約100ヌクレオチド〜約250ヌクレオチド、約250ヌクレオチド〜約500ヌクレオチド、又は約500ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチドの範囲の長さを有してよい。いくつかの態様において、核酸結合剤は、約1000ヌクレオチドより大きい範囲の長さを有してよい。核酸結合剤の長さに関わらず、結合剤のすべてのヌクレオチド残基が、核酸標的中の相補的なヌクレオチドへハイブリダイズしなくてもよい。例えば、結合剤に長さ50ヌクレオチド残基が含まれてもよく、そしてこのヌクレオチド残基の25だけが核酸標的へハイブリダイズしてよい。いくつかの態様において、ハイブリダイズし得るヌクレオチド残基は、互いと連続していてよい。核酸結合剤は、一本鎖であっても、二次構造が含まれてもよい。いくつかの態様では、生体試料に細胞又は組織試料が含まれる場合があり、核酸結合剤を使用して、生体試料をin situハイブリダイゼーション(ISH)へ使用してよい。いくつかの態様では、組織試料を免疫組織化学(IHC)に加えてin situハイブリダイゼーションへ処して、試料より所望の情報を入手することができる。
【0070】
[0105] 結合剤の種類と標的に関わらず、結合剤と標的の間の結合の特異性は、結合条件に依存して影響を受ける場合もある(例えば、相補的な核酸の場合のハイブリダイゼーション条件)。好適な結合条件は、pH、温度、又は塩濃度の1以上の調節により実現してよい。
【0071】
[0106] 結合剤は、内在的に標識(結合剤の合成の間に付けるシグナルジェネレータ又は酵素)、又は外在的に標識(後の工程の間に付けるシグナルジェネレータ又は酵素)してよい。例えば、タンパク質ベースの結合剤では、標識アミノ酸を利用することによって、内在的に標識される結合剤を製造することができる。同様に、伸長する核酸へシグナルジェネレータ標識ヌクレオチドを直接取り込む方法を使用して、内在的に標識される核酸を合成してよい。いくつかの態様では、シグナルジェネレータ又は酵素をより後の段階で取り込み得るようなやり方で、結合剤を合成してよい。例えば、この後期の標識化は、活性アミノ基又はチオール基の核酸又はペプチド鎖への導入による、化学的な手段によって達成してよい。いくつかの態様では、タンパク質(例えば、抗体)又は核酸(例えば、DNA)のような結合剤を、適正な化学を使用して、直接的に化学標識してよい。
【0072】
[0107] いくつかの態様では、より大きな特異性、又はある態様ではシグナルの増幅を提供する、結合剤の組合せを使用してよい。このように、いくつかの態様では、結合剤のサンドイッチを使用してよく、ここで第一結合剤は、標的へ結合して二次結合を提供するのに役立ってよく、ここで二次結合剤には、標識が含まれても含まれてなくてもよく、それは(求められるならば)三次結合をさらに提供してよく、ここで三次結合メンバーには、標識が含まれてよい。
【0073】
[0108] 結合剤の組合せの好適な例には、一次抗体-二次抗体、相補的な核酸、又は他のリガンド-受容体対(ビオチン-ストレプトアビジンのような)が含まれてよい。好適な結合剤対のいくつかの具体例には、c-mycエピトープのある組換え発現タンパク質へのマウス抗myc;His-Tagエピトープのある組換えタンパク質へのマウス抗HisG、エピトープ-タグのある組換えタンパク質へのマウス抗xpress、ヤギIgG一次分子へのウサギ抗ヤギ、核酸への相補的な核酸配列;チオレドキシン融合タンパク質へのマウス抗チオ、融合タンパク質へのウサギ抗GFP、α-D-ガラクトースへのジャカリン;並びに、炭水化物結合タンパク質、糖、ニッケル連結(couple)マトリクス、又はヘパリンへのメリビオースが含まれてよい。
【0074】
[0109] いくつかの態様では、一次抗体と二次抗体の組合せを結合剤として使用してよい。一次抗体は、標的の特異的領域へ結合することが可能であり得て、二次抗体は、一次抗体へ結合することが可能であり得る。二次抗体は、一次抗体への結合前にシグナルジェネレータ又は酵素へ付けてよく、また、より後の工程で、シグナルジェネレータ又は酵素へ結合することが可能であり得る。代わりの態様では、一次抗体と特異的結合リガンド-受容体の対(ビオチン-ストレプトアビジンのような)を使用してよい。一次抗体をこの対の一方のメンバー(例えば、ビオチン)へ付けてよく、他のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)をシグナルジェネレータ又は酵素で標識してよい。二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン、又はビオチンは、互いに独立して、シグナルジェネレータ又は酵素で標識してよい。
【0075】
[0110] いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、免疫染色法に利用してよく、一次抗体を使用して、標的タンパク質へ特異的に結合させてよい。二次抗体を使用して一次抗体へ特異的に結合させてよく、それにより、もしあれば、一次抗体と後続の試薬(例えば、シグナルジェネレータ又は酵素)の間に架橋を形成する。例えば、一次抗体は、マウスIgG(マウスにおいて創出される抗体)であってよく、対応する二次抗体は、マウスIgG中のある領域へ結合することか可能な領域を有するヤギ抗マウス(ヤギにおいて創出される抗体)であってよい。
【0076】
[0111] いくつかの態様において、シグナル増幅は、いくつかの二次抗体が一次抗体上のエピトープへ結合し得るときに、得ることができる。免疫染色法において、一次抗体は、この方法に使用する第一抗体であってよく、二次抗体は、この方法に使用する二次抗体であってよい。いくつかの態様において、一次抗体は、免疫染色法において使用する唯一の抗体であってよい。
【0077】
シグナルジェネレータ
[0112] 本明細書に開示する方法に適したシグナルジェネレータの種類は、行われる分析の特質、使用するエネルギー源及び検出器の種類、利用する酸化剤の種類、結合剤の種類、標的の種類、又は結合剤とシグナルジェネレータの間の付着の形式(例、切断可能又は非切断可能)が含まれる、様々な要因に依存する場合がある。
【0078】
[0113] 好適なシグナルジェネレータには、検出可能なシグナルを提供することが可能な分子又は化合物が含まれてよい。シグナルジェネレータは、エネルギー源又は電流との相互作用に続いて、特徴的なシグナルを提供することができる。エネルギー源には、電磁放射線源と蛍光励起光源が含まれてよい。電磁放射線源は、可視光、赤外線、及び紫外線が含まれるあらゆる波長の電磁エネルギーを提供することが可能であり得る。電磁放射線は、直接光源の形態であっても、ドナーフルオロフォアのような発光性化合物によって放出されてもよい。蛍光励起源は、ある源に蛍光を発生させることが可能であっても、光子放出を生じてもよい(即ち、電磁放射線、有向電場(directed electricfield)、温度、物理的接触、又は機械的な崩壊)。好適なシグナルジェネレータは、光学測定(例えば、蛍光)、電気伝導度、又は放射活性が含まれる、多様な方法によって検出されることが可能なシグナルを提供し得る。好適なシグナルジェネレータは、例えば、発光、エネルギー受容、蛍光発生、放射活性、又は消光性であってよい。
【0079】
[0114] 好適なシグナルジェネレータは、それが結合する成分、例えば、結合剤と立体的及び化学的に適合可能であり得る。付言すると、好適なシグナルジェネレータは、結合剤の標的への結合に干渉し得ず、結合剤の結合特異性に影響を及ぼしてもならない。好適なシグナルジェネレータは、有機又は無機の性質であり得る。いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、化学的性質のもの、ペプチド性のもの、又は核酸性のものであり得る。
【0080】
[0115] 好適なシグナルジェネレータは、直接的に検出可能であり得る。直接的に検出可能な部分は、例えば、別のより低い特徴的な波長の光による励起に続いて特別な波長の光を放出する、及び/又は特別な波長の吸収する蛍光標識のような、シグナルを放出するその能力によって直接的に検出し得るものであってよい。
【0081】
[0116] 本明細書に開示する方法に適したシグナルジェネレータは、化学剤の適用時の操作に従ってよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、酸化剤への曝露時に化学的に破壊されることが可能であり得る。化学的な破壊には、シグナルジェネレータの完全な崩壊、又はシグナルジェネレータのシグナル発生成分の修飾が含まれてよい。シグナル発生成分の修飾には、シグナル発生特性の修飾をもたらし得る、あらゆる化学修飾(付加、置換、又は除去のような)が含まれてよい。例えば、共役したシグナルジェネレータの脱共役化は、シグナルジェネレータの発色特性の破壊をもたらす場合がある。同様に、蛍光シグナルジェネレータ上の蛍光阻害性官能基の置換は、その蛍光特性の修飾をもたらす場合がある。いくつかの態様では、提供する方法において、特定の化学剤による不活性化に対して実質的に抵抗性の1以上のシグナルジェネレータを対照プローブとして使用してよい。
【0082】
[0117] いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、発光性分子、放射性同位元素(例、P32又はH314C、125I及び131I)、光学密度又は電子密度マーカー、ラマン活性タグ、電子スピン共鳴分子(例えば、ニトロキシルラジカルのような)、電荷移動分子(即ち、電荷変換分子)、半導体ナノ結晶、半導体ナノ粒子、コロイド金ナノ結晶、ミクロビーズ、磁気ビーズ、常磁性粒子、又は量子ドットより選択してよい。
【0083】
[0118] いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、発光性分子が含まれてよい。発光性分子は、特定の波長の光での照射に応答して光を放出することができる。発光性分子は、発光(励起時の材料による電磁放射線の非発熱放出)、リン光(放射線の吸収の結果としての遅延した発光)、化学発光(化学反応による発光)、蛍光、又は偏光蛍光を介して光を吸収及び放出することが可能であり得る。
【0084】
[0119] いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、本質的にフルオロフォアが含まれてよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、本質的に、例えば、免疫組織化学分析における抗体へ付けたフルオロフォアが含まれてよい。一次抗体へ共役化し得る好適なフルオロフォアには、限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、VECTOR Red、ELF(酵素標識蛍光)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、Calcein、Calcein-AM、CRYPTOFLUOR、Orange(42 kDa)、Tangerine(35 kDa)、Gold(31 kDa)、Red(42 kDa)、Crimson(40 kDa)、BHMP、BHDMAP、Br-Oregon、Lucifer Yellow、Alexa色素ファミリー、N-[6-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY、ボロンジピロメテンジフルオリド、Oregon Green、MITOTRACKER Red、フィコエリスリン、フィコビリプロテインBPE(240 kDa)、RPE(240 kDa)、CPC(264 kDa)、APC(104 kDa)、Spectrum Blue、Spectrum Aqua、Spectrum Green、Spectrum Gold、Spectrum Orange、Spectrum Red、Infra-Red(IR)色素、サイクリックGDP-リボース(cGDPR)、Calcofluor White、Lissamine、Umbelliferone、Tyrosine、又はTryptophanが含まれる。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、本質的に、シアニン色素が含まれてよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、本質的に、1以上のCy3色素、Cy5色素、又はCy7色素が含まれてよい。
【0085】
[0120] いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、FRET対の一部であり得る。FRET対には、互いに近傍に位置しているときに、FRETを受けて検出可能なシグナルを発生又は消失させることが可能である2つのフルオロフォアが含まれる。いくつかのドナーの例には、Alexa488、Alexa546、BODIPY493、Oyster556、Fluor(FAM)、Cy3、又はTTR(Tamra)が含まれてよい。いくつかのアクセプタの例には、Cy5、Alexa594、Alexa647、又はOyster656が含まれてよい。
【0086】
[0121] 上記に記載のように、上記分子の1以上をシグナルジェネレータとして使用してよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータの1以上は、化学的な破壊に従わなくてよく、切断可能なリンカーを利用して、シグナルジェネレータと結合剤を結び付けてよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータの1以上は、シグナル破壊に従ってよく、シグナルジェネレータには、本質的に、化学的に破壊されることが可能な分子が含まれてよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、酸化剤によって化学的に破壊されることが可能なフルオロフォアが含まれてよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、本質的に、酸化剤によって化学的に破壊されることが可能なシアニン、クマリン、BODIPY、ATTO658、又はATTO634が含まれてよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、破壊されるか又は消光されることが可能な1以上のCy3色素、Cy5色素、又はCy7色素が含まれてよい。
【0087】
酵素と酵素基質
[0122] いくつかの態様において、プローブには、酵素へ連結した結合剤が含まれてよい。いくつかの態様において、好適な酵素は、基質の化学反応を触媒して、試料中に存在する受容体(例、フェノール基)又は試料が結合している固体支持体へ結合し得る反応産物を作製する。受容体は、外因性(即ち、試料又は固体支持体へ外在的に付着する受容体)又は内因性(試料又は固体支持体に内在的に存在する受容体)であり得る。単一の酵素が基質の化学反応を触媒して、標的近くの複数のシグナルジェネレータへシグナルを共有結合させることができるとき、シグナル増幅が生じ得る。
【0088】
[0123] いくつかの態様において、好適な酵素は、酸化剤によって不活性化されることが可能であってもよい。好適な酵素の例には、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ、ホスファターゼ、エステラーゼ、及びグリコシダーゼが含まれる。好適な酵素の具体例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、リパーゼ、及びグルコースオキシダーゼが含まれる。いくつかの態様において、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、シトクロムCペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、及び大豆ペルオキシダーゼより選択されるペルオキシダーゼである。
【0089】
[0124] いくつかの態様では、結合剤と酵素を、単一の実体、例えば、標的へ結合することが可能で、そして同様に基質の化学反応を触媒することが可能なタンパク質分子に具体化してよい。他の態様では、結合剤と酵素を別々の実体に具体化してよく、共有結合形成によるか又はリガンド-受容体共役対(例、ビオチン-ストレプトアビジン)を使用することによって連結してよい。
【0090】
[0125] 酵素基質は、利用する酵素と試料中又は固体支持体上の結合に利用可能な標的に依存して選択してよい。例えば、HRPが酵素として含まれる態様では、基質に置換フェノール(例、チラミン)が含まれてよい。HRPのチラミンへの反応は、生体試料の表面タンパク質に存在する電子が豊富な部分(チロシン又はトリプトファンのような)又はフェノール基のような内因性受容体へ結合し得る、活性化フェノール性基質を作製することができる。3-メチル-2-ベンゾチアゾリノン塩酸塩(MBTH)をHRP酵素とともに基質として利用し得る、代わりの態様では、その基質と反応させる前に、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド(DMAB)のような外因性受容体を固体支持体又は生体試料へ付着させてよい。
【0091】
[0126] いくつかの態様では、酵素との反応の後で酵素基質を脱リン酸化してよい。脱リン酸化された反応産物は、試料又は固体支持体中の内因性又は外因性受容体(例、抗体)へ結合することが可能であり得る。例えば、酵素にアルカリホスファターゼ(AP)が含まれてよく、基質に、NADP、置換ホスフェート(例、ニトロフェニルホスフェート)、又はリン酸化ビオチンが含まれてよい。従って、受容体には、NAD結合タンパク質、脱リン酸化反応産物への抗体(例、抗ニトロフェノール)、アビジン、又はストレプトアビジンが含まれてよい。
【0092】
[0127] いくつかの態様では、酵素にβ-ガラクトシダーゼが含まれてよく、基質にフルオレセイン又はクマリンのβ-ガラクトピラノシル-グリコシドが含まれてよい。受容体には、脱グリコシル化部分への抗体(例、抗フルオレセイン又は抗クマリン)が含まれてよい。いくつかの態様では、HRP/APのような複数の酵素の組合せを酵素として使用してよい。基質には、リン酸化置換フェノール(例えば、チロシンホスフェート)が含まれてよく、これをHRPと反応させる前にAPにより脱リン酸化して、フェノール基又は電子が豊富な部分ベースの受容体へ結合することが可能な反応産物を作製することができる。
【0093】
[0128] 酵素基質の反応産物は、検出可能なシグナルを提供していることがさらに可能であり得る。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法に利用される酵素基質には、非発色性又は非化学発光性の基質を含んでよく、即ち、酵素と酵素基質の反応は、それ自身で検出可能なシグナルを生じなくてもよい。本明細書に開示する方法に利用される酵素基質には、外在性のシグナルジェネレータ(例、フルオロフォア)を標識として含まれてよい。シグナルジェネレータと酵素基質は、直接的に(例、蛍光標識付きの酵素基質)又は間接的に(例、リガンド-受容体共役対を介して)結合してよい。いくつかの態様では、基質には、保護化官能基(例、スルフヒドリル基)が含まれてよい。活性化基質の受容体への結合の後で、官能基は、脱保護してよく、チオール反応基(例、マレインイミド又はヨードアセチル)を有するシグナルジェネレータを使用して、シグナルジェネレータへの共役化を行ってよい。
【0094】
[0129] いくつかの態様において、プローブには、西洋ワサビペルオキシダーゼが含まれてよく、基質は、置換フェノール類(例、チラミン)より選択される。いくつかの態様において、西洋ワサビペルオキシダーゼは、活性化フェノール性基質が、試料又は試料が結合している固体支持体に存在するフェノール基へ共有結合することを引き起こす。いくつかの態様において、プローブには、HRPへ連結した結合剤が含まれてよく、基質には、フルオロフォアへ連結したチラミンが含まれてよい。
【0095】
化学剤
[0130] 化学剤には、シグナルジェネレータ、酵素、又はシグナルジェネレータと結合剤又は酵素基質の間の切断可能リンカー(存在するならば)を修飾することが可能な1以上の化学物質が含まれてよい。化学剤は、固体、溶液、ゲル、又は懸濁液の形態の試料と接触させてよい。
【0096】
[0131] いくつかの態様において、化学剤には、酸化剤、例えば、活性酸素種、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、過酸化水素、又はオゾンが含まれてよい。いくつかの態様において、化学剤には、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、ジクロム酸ナトリウム、臭素水溶液、ヨウ素-ヨウ化カリウム、又はt-ブチル過酸化水素が含まれてよい。
【0097】
[0132] 本明細書に開示する方法では、化学剤へのシグナルジェネレータ、酵素、結合剤、標的、又は生体試料の感受性に依存して、上記化学剤の1以上を使用してよい。いくつかの態様では、結合剤、標的、及び生体試料の完全性に本質的には影響を及ぼさない化学剤を利用してよい。いくつかの態様では、結合剤と標的の間の結合の特異性に影響を及ぼさない化学剤を利用してよい。
【0098】
[0133] 2以上(4まで)のシグナルジェネレータを同時に利用し得るいくつかの態様において、化学剤は、1以上のシグナルジェネレータを選択的に修飾することが可能であり得る。異なるシグナルジェネレータの化学剤に対する感受性は、シグナルジェネレータの濃度、温度、又はpHに一部依存する場合がある。例えば、2つの異なるフルオロフォアは、酸化剤の濃度に依存して、酸化剤への異なる感受性を有する場合がある。
【0099】
[0134] いくつかの態様において、化学剤には、本質的に、酸化剤が含まれてよい。他の態様において、化学剤には、本質的に、酸化剤の塩基性溶液が含まれてよい。いくつかの具体的な態様において、塩基性溶液は、pHを約8〜約10の範囲に有してよい。いくつかの態様において、塩基性溶液(例、重炭酸ナトリウム)は、約10のpHを有してよい。
【0100】
[0135] 好適な酸化剤は、過酸化物、過ヨウ素酸ナトリウム、又はオゾンより選択してよい。いくつかの態様において、好適な酸化剤には、過酸化物又は過酸化物の供給源が含まれてよく、塩基性溶液には、過酸化水素が含まれてよい。過酸化水素の塩基性溶液中の濃度は、予め決定された時間で蛍光シグナルジェネレータを実質的に酸化するように選択してよい。いくつかの態様において、過酸化水素の塩基性溶液中の濃度は、蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに所与の時間のうちに実質的に不活性化するように選択してよい。過酸化水素の塩基性溶液中の濃度は、試料、標的、結合剤の完全性又は標的-結合剤の特異性が維持され得るように選択してよい。
【0101】
[0136] いくつかの態様において、塩基性溶液には、過酸化水素が約0.5容量パーセント〜約5容量パーセントの範囲、約1容量パーセント〜約4容量パーセントの範囲、又は約1.5容量パーセント〜約3.5容量パーセントの範囲にある量で含まれてよい。いくつかの具体的な態様において、塩基性溶液には、過酸化水素が約3容量パーセントの範囲にある量で含まれてよい。
【0102】
[0137] いくつかの態様において、塩基性溶液には、結合剤、標的、又は結合剤と標的の両方を試料より離脱させる、還元剤又は界面活性剤のような試薬が含まれない場合がある。
【0103】
生体試料を連続的に分析して、プローブを接触及び結合させること
[0138] 生体試料をプローブと接触させて、プローブを生体試料中の標的へ結合させることができる。いくつかの態様において、標的は、プローブとの結合のために容易には接近可能でない場合があり、生体試料をさらに処理して、標的とプローブ中の結合剤との間の結合を、例えば、抗原復帰、酵素消化、エピトープ回復、又はブロッキングを介して促進してよい。
【0104】
[0139] いくつかの態様では、プローブを溶液の形態の生体試料と接触させてよい。いくつかの態様において、プローブには、標識(蛍光シグナルジェネレータ又は酵素)へ連結した結合剤が含まれてよい。結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、単一の分子において具体化されてよく、プローブ溶液を単一の工程で適用してよい。あるいは、結合剤と標識(シグナルジェネレータ又は酵素)は、別個の実体でよく、プローブ溶液を単一の工程又は複数の工程で適用してよい。すべての態様において、試料中の1以上の標的へ対照プローブをさらに結合させてよい。
【0105】
[0140] 結合剤、標的、そしてこの両者の結合の特質に依存して、十分な接触時間を適用してよい。いくつかの態様では、生体試料中の標的がすべて結合されることを確実にするために、過剰なプローブ分子(従って、結合剤分子)を利用してよい。この結合作用に十分な時間を提供した後で、試料を洗浄溶液(例えば、適切な緩衝溶液)と接触させて、あらゆる非結合プローブを洗い流すことができる。使用するプローブの濃度及び種類に依存して、生体試料を、同じか又は異なる洗浄溶液が各工程で利用される、いくつかの洗浄工程へ処してよい。
【0106】
[0141] いくつかの態様では、第一の結合工程において、生体試料を1より多いプローブと接触させてよい。複数のプローブは、生体試料中の異なる標的へ結合することが可能であり得る。例えば、生体試料には、2つの標的:標的1及び標的2が含まれてよく、この場合は、2組のプローブ:プローブ1(標的1へ結合することが可能な結合剤1を有する)とプローブ2(標的2へ結合することが可能な結合剤2を有する)を使用してよい。複数のプローブは、生体試料と同時に(例えば、単一の混合物として)又は連続的に(例えば、プローブ1を生体試料と接触させて、あらゆる非結合プローブ1を除去する洗浄工程を続けて、プローブ2を生体試料と接触させることを続ける、等)接触させてよい。
【0107】
[0142] 標的へ同時に結合され得るプローブの数は、利用する検出の種類、即ち、達成可能なスペクトル分解に依存する場合がある。例えば、蛍光ベースのシグナルジェネレータでは、開示する方法に従って、4つの異なるプローブ(4つのスペクトル分解可能な蛍光シグナルを提供する)を利用してよい。複数の蛍光シグナルジェネレータに関連する、「スペクトル分解可能」は、シグナルジェネレータの蛍光放出バンドが十分に区別できる、即ち、それぞれのシグナルジェネレータが付いた結合剤が、それぞれのシグナルジェネレータにより産生される蛍光シグナルに基づいて、標準の光検出システムを使用して識別し得るように、十分に非重複性であることを示す。
【0108】
[0143] いくつかの態様では、第一の結合工程において、生体試料を4又は4未満のプローブと本質的に接触させてよい。酵素ベースのプローブを利用する態様では、標的へ同時に結合され得るプローブの数は、異なる酵素とその利用可能な対応基質の数にも依存する場合がある。
【0109】
[0144] いくつかの態様において、生体試料には、全細胞、組織試料が含まれてよいか、又は生体試料は、マイクロアレイ、ゲル、又は膜へ付着させてよい。いくつかの態様において、生体試料には、組織試料が含まれてよい。組織試料は、限定されないが、外科的切除、吸引、又は生検が含まれる、多様な手順により入手してよい。組織は、新鮮であっても、凍結していてもよい。いくつかの態様において、組織試料は、パラフィンに固定して包埋してよい。組織試料は、固定するか、又は他のやり方で慣用の方法論によって保存してよく;固定剤の選択は、組織を組織学的に染色するか又は他のやり方で分析するべき目的によって決定してよい。固定化の長さは、組織試料の大きさと使用する固定剤に依存してよい。例えば、組織試料を固定又は保存するために、中性の緩衝化ホルマリン、ブアン固定液(Bouin's)、又はパラホルムアルデヒドを使用してよい。
【0110】
[0145] いくつかの態様において、組織試料は、初めに固定してから、上昇系列のアルコールで脱水し、組織試料を切断し得るようにパラフィン又は他の切片化媒体に浸透させて包埋してよい。代わりの態様では、組織試料を切断して、その後で固定してよい。いくつかの態様では、組織試料をパラフィンに包埋して処理してよい。使用し得るパラフィンの例には、限定されないが、パラプラスト(Paraplast)、Broloid、及びTissuemayが含まれる。組織試料を包埋したならば、試料をミクロトームにより、約3ミクロン〜約5ミクロンの範囲の厚さを有し得る切片へ切断してよい。ひとたび切断したならば、切片は、接着剤を使用してスライドへ付着させてよい。スライド接着剤の例には、限定されないが、シラン、ゼラチン、ポリ-L-リジンが含まれてよい。複数の態様において、パラフィンを包埋材料として使用するならば、組織切片は、脱パラフィン化して、水に再水和させることができる。組織切片は、例えば、有機剤(キシレン、又は下降系列のアルコールのような)を使用することによって、脱パラフィン化することができる。
【0111】
[0146] いくつかの態様では、上記に述べた試料調製手順とは別に、免疫組織化学の前、間、又は後で、組織切片をさらなる処理へ処してよい。例えば、いくつかの態様において、組織切片は、組織切片のクエン酸緩衝液中の加熱のような、エピトープ回復法へ処してよい。いくつかの態様では、あらゆる非特異的結合を最小化するために、組織切片をブロッキング工程へ処してもよい。
【0112】
[0147] いくつかの態様では、生体試料又は生体試料の一部、又は生体試料中に存在する標的を、DNAマイクロアレイの表面、タンパク質マイクロアレイの表面、又は固体支持体(ゲル、ブロット、ガラススライド、ビーズ、又はELISAプレートのような)の表面に付着させてよい。いくつかの態様では、生体試料中に存在する標的を固体支持体の表面に付着させてよい。生体試料中の標的は、物理的な結合形成により、共有結合形成により、又はその両者により固体支持体に付着させてよい。
【0113】
[0148] いくつかの態様では、本明細書に開示する方法を使用して、生体試料中の標的を膜へ付着させて、連続的にプローブしてよい。いくつかの態様では、生体試料中を膜と接触させる前に、その試料中の標的を処理してよい。例えば、組織試料中のタンパク質標的をプローブするための方法に関わる態様では、組織ホモジェネート又は抽出物の生体試料より標的タンパク質を抽出する工程が含まれてよい。はじめに、固体組織又は全細胞を、ブレンダー(より多量の試料用)を使用して、ホモジェナイザー(より少量用)を使用して、又は超音波処理によって機械的に破砕してよい。濾過及び遠心分離の技術を使用して、様々な細胞区画及びオルガネラを分離することができる。細胞の溶解を促進してタンパク質を可溶化するために、界面活性剤、塩、及び緩衝液も利用してよい。同様に、核酸をプローブする方法に関わる態様では、例えば制限エンドヌクレアーゼ(DNA用)を使用してDNA又はRNA断片を調製する工程が含まれてよい。
【0114】
[0149] いくつかの態様では、生体試料より抽出される標的をゲル電気泳動によってさらに分離してよい。標的の分離は、等電点(pI)、分子量、電荷、又はこれら因子の組合せによってよい。分離の特質は、試料の処理とゲルの性質に依存する場合がある。好適なゲルは、ポリアクリルアミドゲル、SDS-ポリアクリルアミドゲル、又はアガロースゲルより選択してよい。
【0115】
[0150] 好適な膜は、膜が非特異的な標的結合特性を有するように選択してよい。いくつかの態様において、好適な膜は、フッ化ポリビニリデン膜、ニトロセルロース膜、又はナイロン膜より選択してよい。いくつかの態様において、好適な膜は、その膜が複数のプロービングに対して実質的に安定であり得るように選択してよい。タンパク質プローブを使用する標的のプロービングに関わる態様では、タンパク質プローブのその膜への非特異的結合を防ぐために、ブロッキング溶液を使用して膜をブロックしてよい。DNA断片のプロービングに関わる態様では、DNAのゲルから膜へのより効率的な移動を促進するために、DNAゲルを希HCl溶液又はアルカリ溶液で処理してよい。
【0116】
[0151] いくつかの態様では、標的を膜へ(例えば、DNA標的をニトロセルロース膜へ)共有結合させるために、膜を約60℃〜約100℃の範囲の温度へ処してよい。いくつかの態様では、標的を膜へ(例えば、DNA標的をナイロン膜へ)共有結合させるために、膜を紫外線放射へ曝露してよい。いくつかの態様では、膜にブロットする前に、生体試料中の標的を電気泳動により分離させなくてよく、例えば、ドットブロット技術において、膜上で直接プローブしてよい。
【0117】
[0152] 組織試料又は膜の調製に続いて、プローブ溶液(例、標識抗体溶液)を組織切片又は膜と、十分な時間の間、結合剤の標的(例、抗原)への結合に適した条件の下で接触させてよい。先に記載したように、2つの検出法:直接法又は間接法を使用してよい。直接的な検出では、シグナルジェネレータ標識一次抗体(例、フルオロフォア標識一次抗体又は酵素標識一次抗体)を組織試料又は膜中の抗原とインキュベートしてよく、それは、さらなる抗体相互作用なしに可視化することができる。間接的な検出では、非共役一次抗体を抗原とインキュベートしてよく、次いで標識二次抗体を一次抗体へ結合させてよい。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るので、シグナル増幅が起こる場合がある。いくつかの態様では、2以上(最大で4)の一次抗体(標識又は非標識)を組織試料と接触させてよい。次いで、非標識抗体を対応の標識二次抗体と接触させてよい。代わりの態様では、一次抗体と特異的結合リガンド-受容体対(ビオチン-ストレプトアビジンのような)を使用してよい。一次抗体をこの対の一方のメンバー(例えば、ビオチン)へ付けて、他のメンバー(例えば、ストレプトアビジン)をシグナルジェネレータ又は酵素で標識してよい。二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン、又はビオチンは、それぞれ独立して、シグナルジェネレータ又は酵素で標識してよい。
【0118】
[0153] 一次抗体又は二次抗体を酵素標識へ共役し得る態様では、抗原の可視化を提供するために、蛍光シグナルジェネレータ連結基質を加えてよい。いくつかの態様において、基質と蛍光シグナルジェネレータは、単一の分子において具体化されてよく、単一の工程で適用してよい。他の態様において、基質と蛍光シグナルジェネレータは、別個の実体であってよく、単一の工程又は複数の工程で適用してよい。
【0119】
[0154] 結合剤へ連結した酵素は、基質と反応して基質の化学反応を触媒して、生体試料又はその試料が結合している固体支持体へ蛍光シグナルジェネレータ連結基質を共有結合させることができる。いくつかの態様において、酵素には西洋ワサビペルオキシダーゼが含まれてよく、基質にはチラミンが含まれてよい。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のチラミン基質との反応は、試料又はその試料が結合している固体支持体に存在するフェノール基へチラミン基質が共有結合することを引き起こし得る。酵素-基質複合体を利用する態様では、1つの酵素が複数の基質分子を触媒し得るので、シグナル増幅が達成される場合がある。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、間接検出法を使用して(例、一次-二次抗体を使用する)、HRP-チラミドシグナル増幅法を使用して、又は両者の組合せ(例、間接的なHRP-チラミドシグナル増幅法)を使用して、少量の標的を検出するために利用することができる。本明細書に開示する方法へのシグナル増幅技術の取込みと、対応して、取り込まれるシグナル増幅技術の種類は、特定の標的に必要とされる感度とプロトコールに関わる工程の数に依存する場合がある。
【0120】
プローブからのシグナルの観測
[0155] シグナルジェネレータからのシグナルは、検出システムを使用して検出することができる。使用する検出システムの特質は、使用するシグナルジェネレータの特質に依存してよい。検出システムには、電子スピン共鳴(ESR)検出システム、電荷結合素子(CCD)検出システム(例、放射性同位元素用)、蛍光検出システム、電気的検出システム、写真フィルム検出システム、化学発光検出システム、酵素検出システム、原子間力顕微鏡(AFM)検出システム(ミクロビーズの検出用)、走査型トンネル顕微鏡(STM)検出システム(ミクロビーズの検出用)、光学的検出システム、近接場検出システム、又は全内部反射(TIR)検出システムが含まれてよい。
【0121】
[0156] 上記技術の1以上を使用して、シグナルジェネレータ(結合剤と連結するか又は酵素基質と連結した)からのシグナルの1以上の特徴を観測することができる。いくつかの態様では、上記技術の1以上を使用して、シグナル強度、シグナル波長、シグナル位置、シグナル頻度、又はシグナルシフトを決定することができる。いくつかの態様では、シグナルの1以上の上記特徴を観測、測定、及び記録することができる。
【0122】
[0157] いくつかの態様において、シグナルジェネレータ(結合剤と連結又は酵素基質と連結した)にはフルオロフォアが含まれてよく、蛍光検出システムを使用して、蛍光波長又は蛍光強度を決定することができる。いくつかの態様では、シグナルをin situで観測してよく、即ち、生体試料中の標的へ結合剤を介して会合したシグナルジェネレータより、シグナルを直接観測してよい。いくつかの態様では、シグナルジェネレータからのシグナルを生体試料の内部で分析してよく、別のアレイベース検出システムの必要性をなくすことができる。
【0123】
[0158] いくつかの態様において、シグナルを観測することには、生体試料の画像をキャプチャーすることが含まれてよい。いくつかの態様では、本明細書に開示する方法に従って、撮像デバイスへ連結した顕微鏡を検出システムとして使用してよい。いくつかの態様では、シグナルジェネレータ(フルオロフォアのような)を励起して、得られるシグナル(蛍光シグナルのような)をデジタルシグナル(例えば、デジタル化画像)の形態で観測及び記録してよい。適正な蛍光フィルターを使用して、試料中で結合している様々なシグナルジェネレータ(もし存在すれば)について、同じ手順を繰り返してよい。
【0124】
化学剤を適用したシグナルの修飾
[0159] 化学剤を試料へ適用して、シグナルを修飾してよい。いくつかの態様において、シグナル修飾には、シグナルの特徴の変化、例えば、シグナルの強度の減少、シグナルピークのシフト、共鳴周波数の変化、又はシグナル除去をもたらすシグナルジェネレータの切断(除去)の1以上が含まれてよい。いくつかの態様では、化学剤を適用して、蛍光シグナルジェネレータと酵素(利用すれば)を実質的に不活性化することによって、シグナルを修飾してよい。いくつかの態様において、化学剤には、蛍光シグナルジェネレータを実質的に酸化し得る、酸化剤が含まれてよい。いくつかの態様では、化学剤を適用して、切断可能連結を実質的に酸化してシグナルジェネレータを切り離すことによって、シグナルを修飾してよい。
【0125】
[0160] いくつかの態様において、化学剤は、溶液の形態であってよく、試料は、この化学剤溶液と予め決定された時間の間接触させてよい。いくつかの態様において、化学剤は、酸化剤を有する塩基性溶液であってよい。塩基性溶液の濃度と接触時間は、所望されるシグナル修飾の種類に依存してよい。いくつかの態様では、化学剤溶液を試料と接触させてよく、酸化工程を30分未満の間実施してよい。いくつかの態様では、酸化工程を15分未満の間実施してよい。いくつかの態様では、酸化工程を約30秒〜約15分の間実施してよい。いくつかの態様では、酸化工程を約5分間実施してよい。いくつかの態様にでは、酸化工程を室温で実施してよい。
【0126】
[0161] いくつかの態様において、塩基性溶液の接触条件は、結合剤、標的、生体試料、及び結合剤と標的の間の結合が影響を受けないように選択してよい。いくつかの態様において、酸化剤は、シグナルジェネレータと酵素(利用するならば)だけに影響を及ぼしてよく、その酸化剤は、標的/結合剤の結合や結合剤の完全性に影響を及ぼしてはならない。従って、例示すれば、結合剤には、一次抗体又は一次抗体/二次抗体の組合せが含まれてよい。本明細書に開示する方法による酸化剤は、シグナルジェネレータにのみ影響を及ぼしてよく、一次抗体又は一次抗体/二次抗体の組合せは、本質的に影響を受けないままである。いくつかの態様において、結合剤(一次抗体又は一次抗体/二次抗体の組合せのような)は、試料を酸化剤と接触させた後で、生体試料中の標的へ結合したままであり得る。
【0127】
[0162] いくつかの態様において、結合剤は、試料を酸化剤と接触させた後で、生体試料中の標的へ結合したままであってよく、結合剤の完全性は、本質的に影響を受けないままであり得る(例えば、抗体は、化学剤の存在下で、実質的には変性も溶出もし得ない)。いくつかの態様では、酸化剤の試料への適用後、25パーセント未満の結合剤が生体試料中の標的より離脱してよい。いくつかの態様では、酸化剤の試料への適用後、20パーセント未満、15パーセント未満、10パーセント未満、又は5パーセント未満の結合剤が生体試料中の標的より離脱してよい。
【0128】
[0163] いくつかの態様では、試料を酸化剤と接触させた後でシグナルの特徴を観測して、シグナル修飾の有効性を決定することができる。例えば、酸化剤の適用前に色を観測してよく、その色は、酸化剤の適用後は存在しないかもしれない。別の例では、蛍光シグナルジェネレータからの蛍光強度を、酸化剤との接触前と酸化剤との接触後に観測してよい。いくつかの態様では、シグナル強度の所定量の減少をシグナル修飾として参照する場合がある。いくつかの態様では、シグナルの修飾が、約50パーセントより大きい範囲の量のシグナル強度の減少を意味する場合がある。いくつかの態様では、シグナルの修飾が、約60パーセントより大きい範囲の量のシグナル強度の減少を意味する場合がある。いくつかの態様では、シグナルの修飾が、約80パーセントより大きい範囲の量のシグナル強度の減少を意味する場合がある。
【0129】
試料と後続のプローブとの接触と、後続の標的への結合
[0164] 生体試料又は固体支持体へ結合した試料は、第一プローブについて上記に記載した1以上の手順を使用して、後続のプローブと接触させてよい。後続のプローブは、先の工程で結合した標的と異なる標的へ結合することが可能であり得る。先のプローブ接触工程において複数のプローブを生体試料と接触させ得る態様において、後続のプローブは、先のプローブセットにより結合される標的とは異なる標的へ結合することが可能であり得る。いくつかの態様では、後続のプローブ接触工程において、生体試料を複数のプローブと接触させてよい。酵素へ連結した結合剤をプローブとして利用し得る態様では、結合工程に、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と酵素の反応に関わる反応工程がさらに含まれてよい。
【0130】
[0165] いくつかの態様において、異なる結合工程に使用するシグナルジェネレータ(例、蛍光シグナルジェネレータ)は、同じである、即ち、同じ検出チャネルにおいて検出可能であってよい。異なる結合工程において同じシグナルジェネレータを利用する方法は、限られた数の検出チャネルが利用可能であるとき、複数の標的の検出を可能にし得る。いくつかの態様では、第一の結合工程においてプローブのセット(2〜4のプローブ)を利用し得る場合、後続のプローブには、先の結合工程と同じシグナルジェネレータが含まれてよい。例えば、第一の結合工程には、Cy3、Cy5、及びCy7が共役した異なる結合剤が含まれてよい。いくつかの態様では、後続の結合工程にも同じ色素のセット、即ち、Cy3、Cy5、及びCy7が含まれてよい。
【0131】
[0166] いくつかの態様において、異なる結合工程に使用するシグナルジェネレータ(例、蛍光シグナルジェネレータ)は、異なっている、即ち、異なる検出チャネルにおいて独立して検出可能であってよい。例えば、いくつかの態様において、第一プローブには、蛍光放出波長を緑色の領域に有するCy3色素が含まれてよく、後続のプローブには、蛍光放出波長を赤色の領域に有するCy7色素が含まれてよい。
【0132】
[0167] 結合剤が連結した酵素をプローブとして利用する態様において、異なる結合工程及び反応工程に利用する酵素と基質は、同じであってよい。試料を後続の酵素へ結合する前に先の酵素を酸化剤により不活性化して、先の酵素の後続の基質との交差反応を防ぐことができる。例えば、第一の結合工程及び反応工程には、HRPへ連結した結合剤と第一フルオロフォアへ連結したチラミンが含まれてよい。酸化工程には、フルオロフォアを実質的に酸化する工程とHRPを実質的に不活性化する工程が関与してよい。いくつかの態様では、酸化工程と不活性化工程が同時に起きてよい。いくつかの態様では、酸化工程と不活性化工程が連続的に起きてよい。酸化工程と不活性化工程の後で、試料は、HRPへ連結した後続の結合剤と接触させてよく、これを第二フルオロフォアへ連結したチラミンとさらに反応させてよい。同様に、後続の結合工程と反応工程は、それぞれの結合工程と反応工程に酸化工程及び不活性化工程が続く、多反復のHRP-チラミンを酵素基質複合体として使用して、作用されてよい。第一フルオロフォアと後続のフルオロフォアは、検出に利用可能な検出チャネルの数に依存して、同じでも異なってもよい。
【0133】
[0168] いくつかの態様において、第一の結合工程には、プローブのセット(例、2〜4のプローブ)(各プローブには、異なる標的へ結合することが可能な結合剤が含まれる)と、異なる基質の化学反応を触媒することが可能な各酵素が含まれてよい。例えば、1つの態様において、第一プローブセットには、HRPへ連結した結合剤1とAPへ連結した結合剤2が含まれてよい。反応工程には、Cy3へ連結したチラミン及びCy7へ連結したNADPと試料を接触させることが含まれてよい。酵素のその対応基質との反応とシグナルを観測することに続き、好適な酸化剤の添加によってシアニン色素を酸化して、酵素を不活性化してよい。後続のプロービング工程には、結合剤-酵素及び基質-フルオロフォアの対の同じセット、又は結合剤-酵素及び基質-フルオロフォアの対の異なるセットが含まれてよい。複数のプローブと基質-シグナルジェネレータを生体試料と同時に(例えば、単一の混合物として)接触させても、連続的に接触(例えば、プローブ1を生体試料と接触させ、洗浄工程を行ってあらゆる非結合プローブ1を除去し、その後プローブ2を生体試料と接触させる等を行うことができる)させてもよい。
【0134】
後続プローブからの後続シグナルの観測
[0169] 上記に記載の1以上の検出方法を使用して、後続のシグナルジェネレータ(後続のプローブに存在する)からの後続(例、第二、第三、等)シグナルの1以上の特徴を観測することができる。いくつかの態様では、上記技術の1以上を使用して、シグナル強度、シグナル波長、シグナル位置、シグナル頻度、又はシグナルシフトを決定することができる。第一シグナルと同様に、入手した後続シグナル(例えば、蛍光シグナル)は、デジタルシグナル(例えば、デジタル化画像)の形態で記録してよい。いくつかの態様において、後続シグナルを観測することには、生体試料の光学像をキャプチャーすることも含まれてよい。
【0135】
接触工程、結合工程、及び観測工程の反復
[0170] いくつかの態様では、試料を後続(例、第二、第三、等)のプローブと接触させた後で、シグナルジェネレータの酸化と後続のプローブ投与を複数回繰り返してよい。いくつかの態様では、第二プローブからの第二シグナルを観測した後で、生体試料を酸化剤と接触させて、第二プローブからのシグナルを修飾してよい。さらに、第三プローブをこの生体試料と接触させてよく、ここで第三プローブは、第一及び第二プローブと異なる標的へ結合することが可能であり得る。同様に、第三プローブからのシグナルを観測し、続いてそのシグナルを修飾する酸化剤を適用してよい。この結合、観測、及び酸化の工程は、さらなる標的へ結合することが可能なn番目のプローブを使用して、反復的に複数回繰り返してよく、多様なプローブ及び/又はシグナルジェネレータを使用して、多様な標的についての情報をユーザーに提供する。酵素へ連結した結合剤をプローブとして利用し得る態様では、結合工程に、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と酵素の反応が関与する反応工程がさらに含まれてよい。いくつかの態様では、この酸化、結合、反応(適用可能であれば)、及び観測の工程を1回以上繰り返してよい。いくつかの態様では、この酸化、結合、反応(適用可能であれば)、及び観測の工程を少なくとも5回、少なくとも10回、又は少なくとも20回繰り返してよい。
【0136】
[0171] いくつかの態様では、プローブの系列を生体試料と連続的に接触させて、生体試料の多重化(multiplexed)分析を得ることができる。いくつかの態様では、プローブセット(1つのセットには、最大4のプローブが含まれる)の系列を生体試料と連続的に接触させて、生体試料の多重化分析を得ることができる。多重化分析は、一般に、同じ検出機序を使用する、生体試料中の複数の標的の分析を意味する。
【0137】
試料と1以上の形態染色剤との接触
[0172] いくつかの態様において、生体試料には、細胞又は組織が含まれてよく、試料は、第一プローブ又は後続プローブとの接触工程の前、間、又は後に形態染色剤と接触させてよい。形態染色剤には、細胞型又は疾患状態の同定を促進するために、異なる細胞成分を染色し得る色素が含まれてよい。いくつかの態様において、形態染色剤は、プローブ中のシグナルジェネレータから容易に識別可能であってよく、即ち、染色剤は、プローブからのシグナルと重なる可能性があるシグナルを放出し得ない。例えば、蛍光形態染色剤では、形態染色剤からのシグナルは、プローブに使用するフルオロフォアと同じ波長において自己蛍光を発し得ない。
【0138】
[0173] 形態染色剤は、上記工程のどの1工程の前、間、又は後でも生体試料と接触させてよい。いくつかの態様では、第一プローブの接触工程と同時に形態染色剤を生体試料と接触させてよい。いくつかの態様では、試料を化学剤と接触させる工程の前、そして第一プローブを標的へ結合させる工程の後に、形態染色剤を生体試料と接触させてよい。いくつかの態様では、試料を化学剤と接触させてシグナルを修飾する工程の後に、形態染色剤を生体試料と接触させてよい。いくつかの態様では、第二プローブの接触工程と同時に形態染色剤を生体試料と接触させてよい。いくつかの態様では、第二プローブを標的へ結合させる工程の後に、生体試料を形態染色剤と接触させてよい。いくつかの態様では、シグナルジェネレータからの蛍光シグナルに対して形態染色剤がバックグラウンドノイズを生じる可能性がある場合、形態染色剤は、プロービング、酸化、及び再プロービングの工程の後で、生体試料と接触させてよい。例えば、H&Eのような形態染色剤は、本明細書に開示する方法に従って、連続的に撮像して記録することができる。
【0139】
[0174] いくつかの態様では、形態染色剤として、発色団、フルオロフォア、又は酵素/酵素基質を使用してよい。形態染色剤として使用し得る発色団(とその標的細胞、細胞内コンパートメント、又は細胞コンパートメント)の好適な例には、限定されないが、エオジン(アルカリ性の細胞成分、細胞質)、ヘマトキシリン(核酸)、オレンジG(赤血球、膵臓、及び下垂体細胞)、ライトグリーンSF(コラーゲン)、ロマノフスキー・ギムザ(細胞の形態全般)、メイグリュンワルド(血液細胞)、ブルー対比染色(Trevigen)、エチルグリーン(CAS)(アミロイド)、フォイルゲン-ナフトールイエローS(DNA)、ギムザ(様々な細胞コンパートメントを分別的に染色する)、メチルグリーン(アミロイド)、ピロニン(核酸)、ナフトール-イエロー(赤血球細胞)、ニュートラルレッド(核)、パパニコラウ染色剤(ヘマトキシリン、エオジンY、オレンジG、及びビスマルクブラウン混合液の混合物(細胞の形態全般))、レッド対比染色B(Trevigen)、レッド対比染色C(Trevigen)、シリウスレッド(アミロイド)、フォイルゲン試薬(パラローズアニリン)(DNA)、ガロシアニンクロム明礬(DNA)、ガロシアニンクロム明礬-ナフトールイエローS(DNA)、メチルグリーン-ピロニンY(DNA)、チオニン-フォイルゲン試薬(DNA)、アクリジンオレンジ(DNA)、メチレンブルー(RNA及びDNA)、トルイジンブルー(RNA及びDNA)、アルシアンブルー(炭水化物)、ルテニウムレッド(炭水化物)、スーダンブラック(脂質)、スーダンIV(脂質)、オイルレッド-O(脂質)、ワンギーソントリクローム染色剤(酸性フクシン及びピクリン酸の混合物)(筋肉細胞)、マッソントリクローム染色剤(ヘマトキシリン、酸性フクシン、及びライトグリーンの混合物)(コラーゲン、細胞質、核小体を分別的に染色する)、アルデヒドフクシン(エラスチン線維)、又はワイゲルト染色剤(細網線維とコラーゲン線維を差別化する)が含まれてよい。
【0140】
[0175] 好適な蛍光形態染色剤(とその標的細胞、細胞内コンパートメント、又は適用可能であれば、細胞コンパートメント)の例には、限定されないが、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(核酸)、エオジン(アルカリ性の細胞成分、細胞質)、ヘキスト33258及びヘキスト33342(2つのビスベンズイミド)(核酸)、ヨウ化プロピジウム(核酸)、スペクトルオレンジ(核酸)、スペクトルグリーン(核酸)、キナクリン(核酸)、フルオレセイン-ファロイジン(アクチン線維)、クロモマイシンA3(核酸)、アクリフラビン-フォイルゲン反応液(核酸)、オーラミンO-フォイルゲン反応液(核酸)、臭化エチジウム(核酸)、ニッスル染色剤(ニューロン)、POPO、BOBO、YOYO、及びTOTO、その他のような高アフィニティーDNAフルオロフォア、並びに、ヒストンのようなDNA結合タンパク質へ融合した緑色蛍光タンパク質、ACMA、キナクリン、及びアクリジンオレンジが含まれてよい。
【0141】
[0176] 好適な酵素(とその主要な細胞部位又は活性)の例には、限定されないが、ATPアーゼ(筋肉線維)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(ミトコンドリア)、シトクロムcオキシダーゼ(ミトコンドリア)、ホスホリラーゼ(ミトコンドリア)、ホスホフルクトキナーゼ(ミトコンドリア)、アセチルコリンエステラーゼ(神経細胞)、ラクターゼ(小腸)、酸性ホスファターゼ(リソソーム)、ロイシンアミノペプチダーゼ(肝細胞)、デヒドロゲナーゼ(ミトコンドリア)、ミオアデニル酸(myodenylate)デアミナーゼ(筋肉細胞)、NADHジアホラーゼ(赤血球)、及びスクラーゼ(小腸)が含まれてよい。
【0142】
[0177] いくつかの態様において、形態染色剤は、酸化剤に対して安定であり得る、即ち、形態染色剤のシグナル発生特性は、酸化剤によって実質的には影響を受け得ない。いくつかの態様では、生体試料をプローブと形態染色剤で同時に染色し得る場合、プローブからのシグナルを修飾するための酸化剤の適用は、形態染色剤からのシグナルを修飾しなくてよい。いくつかの態様では、分子情報(反復的なプロービング工程を介して得られる)と形態情報(形態染色を介して得られる)を同時記録するための対照として形態染色剤を使用してよい。
【0143】
試料と1以上の対照プローブとの接触
[0178] いくつかの態様では、対照プローブを生体試料中の1以上の標的へ結合させてよい。いくつかの態様では、対照プローブを第一プローブ接触工程と同時に標的へ結合させてよい。いくつかの態様では、対照プローブを第一プローブと同時に生体試料へ適用してよい。いくつかの態様では、対照プローブを連続的に、即ち、第一プローブの適用の前又は後に、しかし酸化剤の適用前に生体試料へ適用してよい。
【0144】
[0179] 対照プローブには、酸化剤に対して安定であるシグナルジェネレータが含まれてよいか、又はシグナルジェネレータのシグナル発生特性は、酸化剤と接触したときに、実質的には影響を受けない。シグナルジェネレータには、酸化剤に対して安定である放射性同位元素、又は酸化剤に対して安定であるフルオロフォアが含まれてよい。好適な放射性同位元素には、P32又はH314C、125I又は131Iが含まれてよい。好適なフルオロフォアには、DAPIが含まれてよい。
【0145】
[0180] いくつかの態様では、好適なシグナルジェネレータを結合剤へ連結させて、対照プローブを作製してよい。例えば、放射活性標識を抗体へ連結させて対照プローブを作製してよく、この抗体は、生体試料中に存在する1以上の標的抗原へ結合することができる。他の態様において、好適なシグナルジェネレータは、試料中の1以上の標的へ結合することが可能であり、さらに、酸化剤の存在時に安定である検出可能なシグナルを提供することも可能であり得る。例えば、好適な対照プローブは、DAPIであってよく、これは、試料中の核酸へ結合することが可能であり、酸化剤に対して安定である蛍光シグナルを提供することも可能である。
【0146】
[0181] いくつかの態様では、本明細書に開示する方法に対照プローブを利用して、反復の染色工程に対する標的の安定性の指標を提供してよい。例えば、対照プローブを試料中の既知標的へ結合させて、その対照からのシグナルを観測して定量することができる。このとき、反復染色工程の間に対照シグナルをモニタリングして、標的又は結合剤の酸化剤に対する安定性の指標を提供してよい。いくつかの態様では、対照シグナルの定量的な測定値(例えば、シグナル強度)をモニタリングして、反復プロービング工程の後で試料中に存在する標的の量を定量することができる。
【0147】
[0182] いくつかの態様では、対照プローブを利用して、目的の試料の定量的な情報、例えば、試料中の標的の濃度、又は試料中の標的の分子量を入手することができる。例えば、対照標的(既知の濃度又は既知の分子量を有する)を、ブロッティング技術において、目的の試料と同時にロードしてよい。対照プローブを対照標的へ結合させて、対照シグナルを観測してよい。次いで、下記に記載の方法を使用して、対照シグナルを、目的の試料より観測されるシグナルと相関させることができる。
【0148】
[0183] いくつかの態様では、本明細書に開示する方法に対照プローブを利用して、複数の分子情報(反復的なプロービング工程を介して得られる)と形態情報(例えば、DAPIを使用して得られる)の同時記録を提供することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法には、複数の蛍光像の明視野形態像(例えば、H&Eを使用して得られる)との同時記録が含まれてよい。いくつかの態様において、反復プロービング工程に利用するプローブは、H&E像で記録するために使用し得る、共通のコンパートメント情報を全く有さなくてよい。DAPI核染色のような対照プローブを利用して、明視野像においてヘマトキシリンで染色される核を蛍光像とともに同時記録することができる。蛍光像と明視野像は、2つのカテゴリー:強度ベースの技術と特性ベースの技術にグループ分けし得る、画像記録アルゴリズムを使用して同時記録することができる。
【0149】
第一シグナルと後続のシグナルとの相関
[0184] いくつかの態様では、第一シグナル、後続シグナル、又は第一シグナル及び後続シグナルを分析して、生体試料に関する情報を得ることができる。例えば、いくつかの態様では、第一シグナルの存在又は非存在が第一標的(第一結合剤へ結合することが可能な)の生体試料における存在又は非存在を示す場合がある。同様に、第二シグナルの存在又は非存在は、第二標的(生体試料中の第二結合剤へ結合することが可能な)の生体試料における存在又は非存在を示す場合がある。複数のプローブを使用して複数の標的を分析し得る態様において、特定のシグナルの存在又は非存在は、対応する標的の生体試料中の存在又は非存在を示す場合がある。
【0150】
[0185] いくつかの態様において、観測工程には、試料中の少なくとも1つの標的の定量的測定が含まれてよい。いくつかの態様では、シグナルの強度値(例えば、蛍光強度)を測定してよく、生体試料中の標的の量へ相関させることができる。較正基準を使用して、標的の量とシグナル強度の間の相関性を決定することができる。ある態様では、第一及び第二のシグナルの強度値を測定して、それぞれの標的量へ相関させてよい。いくつかの態様では、2つのシグナル強度を比較することによって、第一標的及び第二標的の(それぞれに対するか又は対照に対する)相対量を確定することができる。同様に、複数のプローブを使用して複数の標的を分析し得る場合、異なるシグナル強度を測定することによって、異なる標的の生体試料中の相対量を決定することができる。いくつかの態様では、1以上の対照試料を上記に記載のように使用してよい。シグナルの試料中の存在又は非存在(目的の生体試料の対照に対する)を観測することによって、生体試料に関する情報を入手することができる。例えば、病的な組織試料を正常な組織試料に対して比較することによって、病的組織試料中に存在する標的に関する情報を入手することができる。同様に、試料(即ち、目的の試料と1以上の対照)の間でシグナル強度を比較することによって、試料中の標的の発現に関する情報を入手することができる。
【0151】
[0186] いくつかの態様において、観測工程には、試料中の少なくとも2つの標的を共局在化すること(co-localizing)が含まれる。試料中の標的を共局在化するための方法は、そのいずれも参照により本明細書に組み込まれる、「System and Methods for Analyzing Images of Tissue Samples(組織試料の画像を解析するためのシステム及び方法)」と題する米国特許出願第11/686,649号(2007年3月15日出願);「System and Method for Co-Registering Multi-Channel Images of Tissue Micro Array(組織マイクロアレイのマルチチャネル画像を同時記録するためのシステム及び方法)」と題する米国特許出願第11/500028号(2006年8月7日出願);「System and Methods for Scoring Images of Tissue Micro Array(組織マイクロアレイの画像をスコア化するためのシステム及び方法)」と題する米国特許出願第11/606582号(2006年11月30日出願)、及び「Automated Segmentation of Image Structures(画像構造の自動セグメンテーション)」と題する米国特許出願第11/680063号(2007年2月28日出願)に記載されている。
【0152】
[0187] いくつかの態様では、生体試料中のシグナルの位置を観測することができる。いくつかの態様では、形態染色を使用して、生体シグナル中のシグナルの局在化を観測することができる。いくつかの態様では、2以上のシグナルの相対位置を観測することができる。シグナルの位置を生体試料中の標的の位置へ相関させてよく、生体試料中の異なる標的の局在化に関する情報が提供される。いくつかの態様では、シグナルの強度値とシグナルの位置を相関させて、生体試料中の異なる標的の局在化に関する情報を入手することができる。例えば、ある種の標的は、核と比べて細胞質においてより多く発現されている場合があり、またその逆もある。いくつかの態様では、2以上シグナルの位置及び強度値を比較することによって、標的の相対的な局在化に関する情報を得ることができる。
【0153】
[0188] ブロッティング技術を利用する態様において、観測工程には、シグナルのブロット上の位置を観測することが含まれてよい。次いで、ブロット中のシグナルの位置を試料とともにゲルにロードした較正基準と相関させて、異なるバンド中の標的の分子量に関する情報を入手することができる。いくつかの態様では、シグナルのブロット上の位置を、例えば2D-PAGEにおいて、標的の分子量や標的の等電点へ相関させることができる。いくつかの態様では、ウェスタンブロットにおいて対照プローブを使用してアクチン又はチューブリンのような構造タンパク質をプローブして、試料中の標的の量を定量することができる。
【0154】
[0189] いくつかの態様では、コンピュータ支援手段を使用して、先の観測工程又は相関工程の1以上を実施してよい。シグナルジェネレータからのシグナル(複数)をデジタル画像(複数)の形式で保存し得る態様では、画像(複数)についてのコンピュータ支援解析を行うことができる。いくつかの態様では、コンピュータ支援された重ね合わせを使用して画像(例、プローブ(複数)からのシグナルと形態染色)を重ねて、生体試料の完全な情報、例えば、位相及び相関性の情報を入手することができる。
【0155】
[0190] いくつかの態様では、上記の1以上を自動化してよく、自動化システムを使用して実施してよい。いくつかの態様では、自動化システムを使用して、すべての工程を実施してよい。
【0156】
[0191] 本明細書に開示する方法は、生物学と医学における分析、診断、及び治療応用に応用を見出す可能性がある。いくつかの態様において、本明細書に開示する方法は、組織化学、特に、免疫組織化学に応用を見出す可能性がある。本明細書に記載の方法による、患者からの細胞又は組織試料の分析は、診断的に(例えば、特定の疾患を有する患者、特定の毒素へ曝された患者、又は特定の療法又は臓器移植へ十分応答している患者を確定するために)、そして予後的に(例えば、特定の疾患を発症する可能性のある患者、特定の療法へ十分応答する可能性のある患者、又は特定の臓器移植を受け入れる可能性のある患者を確定するために)利用してよい。本明細書に開示する方法は、同じ生体試料からの複数(例、潜在的には、無限の数)の標的(例、疾患マーカー)の正確で信頼し得る分析を促進する可能性がある。
【実施例】
【0157】
実施例1 過酸化水素を使用する、DAPIに影響しない、シアニン色素の選択的酸化
[0192] 1容量の1 M重炭酸ナトリウム、3容量の水、及び1容量の30パーセント(v/v)過酸化水素を混合することによって、過酸化水素(H2O2)の溶液を重炭酸ナトリウム緩衝液において調製した。過酸化水素との混合に先立って、水酸化ナトリウムを使用して、重炭酸ナトリウムのpHをpH10へ調整した。
【0158】
[0193] シアニン色素:Cy3、Cy5、及びCy7の3つの別々の水溶液を約2μMの濃度で調製した。シアニン色素溶液のアリコートをH2O2溶液のアリコートと混合して、約3容量パーセントH2O2と1マイクロモル濃度(1μM)シアニン色素の最終濃度の試料溶液(試料1(Cy3)、2(Cy5)、及び3(Cy7))を調製した。1μMシアニン色素の水溶液(H2O2なし)を対照として使用した。
【0159】
[0194] シアニン色素の酸化反応を、この色素の吸光度スペクトルを紫外線/可視光(UV/Vis)分光光度計で時間の関数として測定することによってモニタリングした。図1は、試料1の吸光度スペクトルを、10分及び15分の持続時間の後で、波長の関数として示す。この吸光度の値は、対照と比較したときに、かなり減少した。図2は、試料1、2、及び3の吸光度の値を波長の関数として示す。試料1、2及び3の吸光度は、H2O2による色素の化学破壊を示す時間の持続の後で、0へ低下した。試料1、2及び3の持続時間は、異なる色素で異なっていて:試料1で19分、試料2で15分、そして試料3で3分であった。
【0160】
[0195] 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の水溶液を約57μMの濃度で調製した。DAPI溶液のアリコートをH2O2溶液のアリコートと混合して、約3容量パーセントH2O2と10μg/mL DAPIの最終濃度の溶液(試料4)を調製した。10μg/mLのDAPI水溶液(H2O2を含まない)を対照として使用した。
【0161】
[0196] DAPIの酸化反応を、試料4の吸光度スペクトルを時間の関数として測定することによってモニタリングした。図3は、試料4の吸光度スペクトルを、30分及び140分の持続時間の後で、波長の関数として示す。試料4の吸光度値は、140分の時間の後でもさして変動せず、対照と同じ範囲にあって、DAPIに対するH2O2の有意な効果がないことを明示した。
【0162】
実施例2 過ヨウ素酸ナトリウムを使用する、DAPIに影響しない、シアニン色素の選択的酸化
[0197] 過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)の0.2 M溶液を0.1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に混合することによって、NaIO4の溶液を調製した。シアニン色素(Cy3、Cy5、及びCy7)の3つの別々の水溶液を約2μMの濃度で調製した。シアニン色素溶液のアリコートをNaIO4溶液のアリコートと混合して、約1μM NaIO4と1μMシアニン色素の最終濃度の溶液(試料5(Cy3)、6(Cy5)、及び7(Cy7))を調製した。1μMシアニン色素水溶液(NaIO4を含まない)を対照として使用した。
【0163】
[0198] シアニン色素の酸化反応を、この色素の吸光度スペクトルを紫外線/可視光(UV/Vis)分光光度計で時間の関数として測定することによってモニタリングした。図4は、試料5の吸光度スペクトルを、20分、60分、及び210分の持続時間の後で、波長の関数として示す。この吸光度の値は、対照と比較したときに、時間の関数として減少した。試料5では、210分後に、吸光度の完全な消失を観測した。図5は、試料6の吸光度スペクトルを、12分及び16分の持続時間の後で、波長の関数として示す。この吸光度の値は、対照と比較したときに、時間の関数として減少した。16分後に、吸光度の完全な消失が速やかに観測された。
【0164】
[0199] 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の水溶液を約57μMの濃度で調製した。DAPI溶液のアリコートをNaIO4溶液のアリコートと混合して、約0.1 M NaIO4と10μg/mL DAPIの最終濃度の溶液(試料8)を調製した。10μg/mLのDAPI水溶液(NaIO4を含まない)を対照として使用した。
【0165】
[0200] DAPIの酸化反応を、試料8の吸光度スペクトルを時間の関数として測定することによってモニタリングした。図6は、試料8の吸光度スペクトルを、22分、70分、及び210分の持続時間の後で、波長の関数として示す。試料8の吸光度値は、210分の時間の後でもさして変動せず、対照と比較したときに、DAPIの有意な量が無傷なままであった。
【0166】
実施例3 水酸化ナトリウム塩基を使用する、DAPIに影響しない、シアニン色素の選択的破壊
[0201] NaOH溶液を0.1 Mと1 Mの濃度で調製した。シアニン色素、Cy3、Cy5、及びCy7の3つの別々の水溶液を2μMの濃度で調製した。シアニン色素溶液のアリコートを2つの異なる濃度のNaOHのNaOH溶液:0.1 M NaOH(試料9A、10A、及び11A)と1 M NaOH(試料9B、10B、及び11B)のアリコートと混合した。1μMシアニン色素水溶液(NaOHを含まない)を対照として使用した。
【0167】
[0202] 試料の吸光度スペクトルを時間の関数として測定することによって色素の塩基による破壊をモニタリングした。図7は、試料9A、10A、及び11Aの吸光度スペクトルを、5分未満の持続時間の後で、波長の関数として示す。試料9Aの吸光度値は、さして変動せず、対照と比較したときに、Cy3の有意な量が無傷なままであった。0.1 M NaOHを使用すると、試料10Aは、Cy5色素の20パーセント分解を示し、一方試料11Aは、Cy7色素の70パーセント分解を示した。図8は、試料9B及び10Bの吸光度スペクトルを、5分未満の持続期間の後で、波長の関数として示す。1 M NaOHを使用すると、試料9Bは、Cy3色素の50パーセント分解を示し、一方試料10Bは、Cy5色素の80パーセント分解を示した。
【0168】
[0203] 4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の水溶液を約57μMの濃度で調製した。DAPI溶液のアリコートを2つの異なる濃度のNaOH溶液:0.1 M NaOH(試料12A)及び1 M NaOH(試料12B)のアリコートと混合した。10μg/mLのDAPI色素水溶液(NaOHを含まない)を対照として使用した。試料12A及び12Bの吸光度スペクトルを時間の関数として測定することによってDAPIの塩基による破壊をモニタリングした。図9は、試料12A及び12Bの吸光度スペクトルを波長の関数として示す。この試料の吸光度値はさして変動せず、対照と比較したときに、DAPIの有意な量が無傷なままであった。
【0169】
実施例4 Cy3に影響しない、Cy5及びCy7色素の選択的破壊
[0204] トリス[2-カルボキシエチル]-ホスフィン塩酸塩(TCEP.HCl)を1 M-重炭酸ナトリウム緩衝液(最終pH7.7)に混合することによって、求核試薬の5パーセント(w/v)溶液を調製した。シアニン色素、Cy3、Cy5、及びCy7の3つの別々の水溶液を約2μMの濃度で調製した。シアニン色素溶液のアリコートをTCEP.HCl溶液のアリコートと混合して、試料13(Cy3)、14(Cy5)、及び15(Cy7)を調製した。1μMシアニン色素水溶液(TCEP.HClを含まない)を対照として使用した。
【0170】
[0205] 試料の吸光度スペクトルを時間の関数として測定することによって色素の破壊をモニタリングした。図10は、試料13、14、及び15の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。試料13の吸光度値はさして変動せず、60分の持続時間の後で対照と比較したときに、Cy3の有意な量が無傷なままであった。試料14及び15は、0.5分の持続時間の後で、Cy5及びCy7色素の有意な分解を示した。
【0171】
実施例5 Cy3に影響しない、Cy7色素の選択的破壊
[0206] 過酸化水素(H2O2)の6%(v/v)溶液を0.8×PBS(最終pH6.6)に混合することによって、H2O2の溶液をリン酸緩衝化生理食塩水溶液(PBS)において調製した。シアニン色素、Cy3及びCy7の2つの別々の水溶液を約2μMの濃度で調製した。シアニン色素溶液のアリコートをH2O2溶液のアリコートと混合して、試料16(Cy3)及び17(Cy7)を調製した。1μMシアニン色素水溶液(H2O2を含まない)を対照として使用した。
【0172】
[0207] 試料の吸光度スペクトルを時間の関数として測定することによって色素の破壊をモニタリングした。図11は、試料16及び17の吸光度スペクトルを波長の関数として示す。試料16の吸光度値はさして変動せず、60分の持続時間の後で対照と比較したときに、Cy3の有意な量が無傷なままであった。試料17は、60分の持続時間の後で、Cy7色素の有意な分解を示した。
【0173】
[0208] 以下の実施例6〜21は、それに従って組織試料の多重撮像を行う、本発明の態様を例示する。染色工程、撮像工程、フルオロフォアを化学的に破壊する工程、再染色工程、撮像工程、及び上記工程を繰り返す工程によって、多重染色を得る。
【0174】
実施例6 染色用組織試料の調製
[0209] パラフィンに包埋した組織スライドとしてヒト成人の組織試料を入手した。この組織試料には、結腸(Biochain、T2234090)、正常乳房組織(Biochain、T2234086)、前立腺癌(Biochain、T2235201-1)、結腸腺癌(Biochain、T2235090-1)、乳房組織マイクロアレイ(Imgenex、IMH367、p61)、乳房TMA(Imgenex、IMH367、p32)、及び正常前立腺(Biochain、T2234201)のスライドが含まれた。ヒト成人組織のパラフィン包埋スライドを免疫組織化学プロトコールへ処して、それらを染色用に調製した。このプロトコールには、脱パラフィン、再水和、インキュベーション、及び洗浄が含まれた。脱パラフィンは、スライドを Histochoice(又はトルエン)で10分間、頻繁に振り混ぜながら洗浄することによって行った。脱パラフィンの後で、スライドをエタノール溶液で洗浄することによって、組織試料を再水和した。洗浄は、濃度を減少させた3つの異なるエタノール溶液で行った。使用するエタノールの濃度は、90容量%、70容量%、及び50容量%であった。次いで、このスライドをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄した。組織の膜透過化は、0.1重量パーセント溶液のTriton TX-100でスライドを洗浄することによって行った。抗原回復には、pH6.0のクエン酸緩衝液(Vector Unmasking 溶液)を使用した。このスライドを圧力容器において緩衝液へ15分間曝して、その後室温で20分間冷却した。次いで、このスライドを、PBSと900μLの3容量パーセントウシ血清アルブミン(BSA)で、37℃で45分間洗浄することによって、非特異的結合に対してブロッキングした。二次抗体(任意選択)での染色のために、このスライドを、二次抗体宿主種からの100μLの血清でもブロッキングした。
【0175】
実施例7 抗体の色素との共役化
[0210] 以下の手順に従って、色素共役抗体を調製した。共役化と染色に使用する抗体には、抗増殖細胞核内抗原、クローンpc10(シグマアルドリッチ、P8825);抗平滑筋αアクチン(SmA)、クローン1A4(シグマ、A2547);ウサギ抗βカテニン(シグマ、C2206);マウス抗パンサイトケラチン、クローンPCK-26(シグマ、C1801);マウス抗エストロゲン受容体α、クローン1D5(DAKO、M7047);βカテニン抗体、クローン15B8(シグマ、C7738);ヤギ抗ビメンチン(シグマ、V4630);サイクル(cycle)アンドロゲン受容体クローンAR441(DAKO、M3562);フォン・ウィルブラント因子VII、ケラチン5、ケラチン8/18、e-カドヘリン、Her2/neu、エストロゲン受容体、p53、プロゲステロン受容体、βカテニン;ロバ抗マウス(Jackson Immunoresearch, 715-166-150);及び、ロバ抗ウサギ(Jackson Immunoresearch, 711-166-152)が含まれた。
【0176】
[0211] ミクロンYM-10スピンカラムを250 mLのPBSで湿らせて、このカラムを15分間スピンした。この湿ったカラムへ500 mLの抗体(200μg/mL)をピペット注入した。このカラムを11000 rpm、4℃で30分間スピンした。次いで、濃縮した抗体/タンパク質を新しいチューブへ移して30秒間スピンして、濃縮タンパク質を取り出した。次いで、この濃縮抗体溶液とカップリング緩衝溶液を混合した。カップリング緩衝溶液には1 M炭酸ナトリウム(8〜9の間のpH)が含まれて、100μLの抗体溶液につきこの緩衝液の5μLを使用した。この抗体及び緩衝液の溶液を0.01〜0.1ミリグラムのシアニン色素へ加えた。色素は、抗体とインキュベートすることに先立って、DMSOにおいて10〜20 mg/mLの濃度へ復元した。得られた溶液をピペット操作によって徹底的に混合して、チューブをスピンすることによって、生じる泡を除去した。この溶液をフォイルで覆って、室温で約30〜45分の間インキュベートした。インキュベーションの後で、この溶液をYM-10スピンカラムへ加えて、4℃、11000 rpmで30分間スピンした。この溶液をPBSで洗浄し、スピンして、非共役の色素又は抗体を除去した。次いで、この色素共役抗体溶液を50パーセントグリセロールで希釈して、フリーザーにおいて-20℃で保存した。
【0177】
実施例8 組織の色素での染色及び撮像
[0212] 実施例6で調製したスライドを、実施例7で調製した色素共役抗体とともにインキュベートした。インキュベーションは、3パーセントBSAにおいて37℃で45分間行った。インキュベーション後、スライドを何回ものPBS洗浄へ処した。二次抗体を使用するときは、スライドをBSA中で二次抗体と37℃で45分間インキュベートした。インキュベーション後、スライドを何回ものPBS洗浄へ処した。一次抗体又は二次抗体を染色したスライドを形態染色剤、DAPIで対比染色して、カバースリップを施した。
【0178】
[0213] カバースリップを施したスライドを、カメラを使用して撮像した。使用するカメラは、ライカ(Leica)DMRA2蛍光顕微鏡に搭載したモノクロームライカ(Leica)DFC 350FXモノクローム高解像カメラであった。使用する倍率は、他に述べなければ、20倍であった。画像獲得の後で、カバースリップを外してスライドをPBSで洗浄して、シグナル破壊に備えた。
【0179】
実施例9 色素破壊、染色、及び撮像
[0214] NaOH溶液とH2O2溶液をシグナル破壊に使用した。500μLの50容量パーセントNaOHと49.5 mLのPBSを使用して、NaOH溶液を調製した。NaOH溶液の最終pHは、11.9〜12.5付近であった。10 mLの0.5 M炭酸ナトリウム(pH10)、5 mLの30容量パーセントH2O2、及び35 mLの水を混合することによって、H2O2溶液を調製した。穏やかに振り混ぜながら、スライドをNaOH又はH2O2溶液中に15分間入れた。15分後、このスライドをPBSで再び洗浄し、カバースリップを施し、色素破壊の効力をチェックするために再び撮像する(任意選択)か、又は再染色して撮像した。実施例8に記載の方法を使用して、再染色及び再撮像の工程を行った。撮像に続き、スライドをシグナル破壊、染色、及び撮像のサイクルへ処して、この方法を複数の回数繰り返した。1〜9の異なる抗体を使用して、組織試料を撮像した。シアニン系列で撮像後、スライドは、形態染色剤のH&Eで任意選択的に染色及び撮像した。
【0180】
実施例10 正常結腸組織の単一チャネル染色と撮像に続く、NaOHを使用するシグナル破壊
[0215] 正常結腸のスライドを一次抗体マウス抗増殖細胞核内抗原(PCNA)クローン、pc10で染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで検出して、試料18Aを作製した。試料18Aを撮像してから、NaOH溶液で処理して試料18Bを作製し、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。図12は、試料18A(色素破壊前)と試料18B(色素破壊後)の顕微鏡写真を(10倍率で)示す。NaOHでの処理の後で、Cy3からのシグナルは、ほとんど又はまったく残っていなかった。
【0181】
実施例11 正常結腸組織の単一チャネル染色と撮像に続く、NaOHを使用するシグナル破壊
[0216] 正常結腸のスライドを一次抗体マウス抗平滑筋αアクチン(SmA)クローン1A4で染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで検出して、試料19Aを作製した。試料19Aを撮像してから、NaOH溶液で処理して試料19Bを作製し、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。図13は、試料19A(色素破壊前)と試料19B(色素破壊後)の顕微鏡写真を(10倍率で)示す。NaOHでの処理後、Cy3からのシグナルの少量が残った。
【0182】
実施例12 NaOHを使用する、正常乳房組織の2チャネル染色及び撮像
[0217] 正常乳房組織を一次抗体SmAで染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで検出し、DAPIで対比染色して、試料20Aを作製した。試料20Aを撮像してからNaOH溶液で処理して試料20Bを作製し、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。試料20Bを一次抗体ウサギ抗βカテニンで再染色し、Cy3共役抗ウサギで検出して、試料20Cを作製した。試料20Cを撮像してからH&Eで対比染色して、試料20Dを作製して再び撮像した。
【0183】
[0218] 図14は、試料20A(色素破壊前)と試料20B(色素破壊後)の顕微鏡写真を示す。NaOHでの処理の後で、Cy3からのシグナルは、ほとんど又はまったく残っておらず、DAPIだけが観測された。試料20Cの顕微鏡写真は、同じCy3チャネルでの撮像が異なる抗体での染色によって可能であることを示した。H&Eでのさらなる染色によって、組織に関する形態学的情報を得た(試料20D)。
【0184】
実施例13 NaOHを使用する、前立腺癌組織の2チャネル染色及び撮像
[0219] 前立腺癌組織を一次抗体マウス抗パンサイトケラチンクローン、PCK-26で染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで検出して、試料21Aを作製した。試料21Aを撮像してから、DAPIで対比染色して、試料21Bを作製した。試料21Bを撮像してからNaOH溶液で処理して試料21Cを作製して、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。試料21Cを一次抗体SmAで再染色し、Cy3共役抗ウサギで検出して、試料21Dを作製して再び撮像した。
【0185】
[0220] 図15は、色素破壊前の試料21A(Cyeチャネル)及び試料21B(DAPIチャネル)と、色素破壊後の試料21C(Cyeチャネル)の顕微鏡写真を示す。NaOHでの処理の後で、Cy3からのシグナルは、ほとんど又はまったく残っておらず(21C)、DAPIだけが観測された(示さず)。試料21Dの顕微鏡写真は、同じCy3チャネルでの撮像が異なる抗体での染色によって可能であることを示した。
【0186】
実施例14 NaOHを使用する、結腸腺癌の2チャネル染色及び撮像
[0221] 結腸腺癌のスライドを一次抗体マウス抗パンサイトケラチンクローン、PCK-26で染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで検出して、試料22Aを作製した。試料22Aを撮像してから、DAPIで対比染色して、試料22Bを作製した。試料22Bを撮像してからNaOH溶液で処理して試料22Cを作製して、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。試料22Cを一次抗体SmAで再染色し、Cy3共役抗ウサギで検出して、試料22Dを作製して再び撮像した。
【0187】
[0222] 図16は、色素破壊前の試料22A(Cyeチャネル)及び試料22B(DAPIチャネル)と、色素破壊後の試料22Cの顕微鏡写真を示す。NaOHでの処理の後で、Cy3からのシグナルは、ほとんど又はまったく残っておらず(22D)、DAPIだけが観測された(示さず)。試料22Dの顕微鏡写真は、同じCy3チャネルでの撮像が異なる抗体での染色によって可能であることを示した。DAPIで染色することによって、この組織に関する核内の情報を入手した(試料22B)。
【0188】
実施例15 NaOHを使用する、ベースライン測定を用いた、乳房組織マイクロアレイの2チャネル染色及び撮像
[0223] 乳房組織マイクロアレイ(試料23A)をDAPI及びCy3チャネルで撮像して、この組織からの自己蛍光を測定した。次いで、試料23AをDAPIで染色して試料23Bを作製し、撮像してからNaOHで処理して試料23Cを作製して、再び撮像した。試料23Aを一次抗体マウス抗エストロゲン受容体αクローン1D5でも染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで検出して、試料23Dを作製した。試料23Dを撮像してからNaOH溶液で処理して試料23Eを作製し、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。
【0189】
[0224] 図17は、試料23A〜Eの顕微鏡写真を示す。試料23C及び23Eの顕微鏡写真を試料23Aで観測される自己蛍光(ベースライン)と比較した。いずれの試料もシグナル低下を示した。DAPI染色試料は、おそらくはDAPIが結合する核酸の破壊による、シグナル低下を示した。
【0190】
実施例16 NaOHを使用する、乳房TMAの3チャネル染色及び撮像
[0225] 乳房試料を一次抗体マウス抗パンサイトケラチンクローンPCK-26で染色し、Cy3共役ロバ抗マウスで可視化して検出して試料24Aを作製して、DAPIで対比染色して(示さず)、撮像した。次いで、試料24AをNaOH溶液で処理してCy3シグナルを除去し(示さず)、一方、DAPIシグナルを保持して試料24Bを作製して、図18の試料24Bに示すように撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。試料24BをCy3直接共役βカテニン抗体で再染色して試料24Cを作製して、再び撮像した。この試料を再びNaOHで処理し、Cy3直接共役SmA抗体で標識して試料24Dを作製して、再び撮像した。得られる画像を記録し、擬似着色し、重ね合わせて(試料24E)、発現抗原についての空間的な情報を得た。試料24DをH&Eでさらに染色して、試料24Fを作製した。
【0191】
[0226] 図18は、試料24A(色素破壊前のCy3チャネル)と試料24B(色素破壊後のDAPIチャネル)の顕微鏡写真を示す。NaOHでの処理の後で、Cy3からのシグナルは、ほとんど又はまったく残っておらず、DAPIだけが観測された。試料24C及び24Dの顕微鏡写真は、同じCy3チャネルでの撮像が異なる抗体での染色によって可能であることを示した。H&Eでの染色によって、この組織に関する形態学的情報を得た(試料24F)。
【0192】
実施例17 NaOHを使用する、正常前立腺の12チャネル染色及び撮像
[0227] 染色に先立って画像を撮り、各チャネルから生じる自己蛍光を基準化した。正常前立腺スライドを2つの一次抗体:ヤギ抗ビメンチン及びマウス抗パンサイトケラチンのカクテルで染色した。この2つの一次抗体を二次抗体:Cy3共役ロバ抗ヤギ及びCy5共役ロバ抗マウスの第二カクテルで検出して、試料25AのCy3及びCy5をそれぞれ作製した。試料25Aを撮像してから、NaOH溶液で処理した。次いで、この組織を2つの一次抗体:ウサギ抗αカテニン(これは、Cy3共役二次抗体で後に検出する)とCy5共役抗アンドロゲン受容体で連続的に染色して、試料25B(それぞれ、25B-Cy3と25B-Cy5)を作製した。撮像に続き、試料をNaOH溶液で処理し、7種のCy直接共役抗体を使用して、染色-撮像-NaOH処理-染色の工程を続けた(試料25C〜25I)。使用する抗体は:平滑筋αアクチン、βカテニン、パンカドヘリン、フォン・ウィルブランド因子VII、ケラチン5、ケラチン8/18、及びe-カドヘリンであった。各染色工程には、DAPIでの対比染色が含まれた(試料25J)。
【0193】
[0228] 図19は、試料25A(Cy3及びCy5チャネル)、試料25B(Cy3及びCy5チャネル)、及び試料25C〜25Jの顕微鏡写真を示す。図19は、同じCy3チャネルでの多重撮像が異なる抗体での染色によって可能であることを示した。12チャネル多重撮像は、Cy3チャネルである9種のチャネルで可能であった。
【0194】
実施例18 H2O2を使用する、正常前立腺の4チャネル染色及び撮像
[0229] 染色に先だって画像を撮り、各チャネルから生じる自己蛍光を基準化した。正常前立腺のスライドをCy3直接共役抗パンカドヘリンで染色して、試料26Aを作製した。このスライドを撮像してH2O2で処理し(試料26B)、Cy3共役抗ビメンチンで再染色し(試料26C)、H2O2で処理し(試料26D)、Cy3共役抗パンサイトケラチンで再染色し(試料26E)、H2O2で処理し(試料26F)、Cy3共役抗SmAで再染色して(試料26G)、H2O2で処理した(試料26H)。
【0195】
[0230] 図20は、試料26A〜Gの顕微鏡写真を示す。図20は、同じCy3チャネルでの多重撮像が異なる抗体で染色して、H2O2を使用してシグナルを破壊することによって可能であったことを示す。
【0196】
実施例19 NaOHを使用する豊富なタンパク質の染色後の残存染色
[0231] 正常前立腺(試料27A)をCy3チャネルで撮像して、この組織からの自己蛍光を測定した。次いで、試料27AをCy3共役抗SmAで染色して試料27Bを作製し、撮像してからNaOHで処理して試料27Cを作製して、再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。図21は、試料27A〜Cの顕微鏡写真を示す。NaOH処理の後で、試料27Cに示す残存染色を観測した。
【0197】
[0232] 実施例17に記載する12チャネル多重撮像の間には、残存染色の数値もモニタリングした。Gimp2.2を使用して、それぞれのバックグラウンドとNaOH処理画像について平均ピクセル強度を収集して、作表した。図22は、撮像における各サイクルのバックグラウンドの平均ピクセル強度のプロット、並びに染色前にバップグラウンドがどのように見えたかの小画像を示す。サイクル4では、残存染色強度の大きなスパイクがSmAとして観測されて、サイクル3では、豊富に発現されるタンパク質が染色された。
【0198】
実施例20 NaOH及びH2O2処理を使用する豊富なタンパク質の染色後の残存染色
[0233] 2つの前立腺のスライドをCy3直接共役SmAで染色した(試料28A及び28B、左パネル)。いずれのスライドにも同一の前処理工程、濃度、抗原回復を与えて、唯一の違いは、シグナル破壊の方法であった:方法1は、NaOHで行って(試料28C)、もう一方の方法は、H2O2で行った(試料28D)。この他に2つの前立腺のスライドをCy3直接共役パンカドヘリンで染色した(試料29A及び29B、右パネル)。いずれのスライドにも同一の前処理工程、濃度、抗原回復を与えて、唯一の違いは、シグナル破壊の方法であった:方法1は、NaOHで行って(試料29C)、もう一方の方法は、H2O2で行った(試料29D)。
【0199】
[0234] 図23は、SmA及びパンカドヘリンの染色及びシグナル除去の1対1の顕微鏡写真を示す。H2O2は、NaOHと比較するとき、SmAとパンカドヘリンの両方でより効率的な色素除去を示した。
【0200】
実施例21 NaOH及びH2O2処理を使用する豊富なタンパク質の多重サイクル染色後の残存染色
[0235] 2つの前立腺のスライドをCy3直接共役パンカドヘリンで染色した(試料30A及び30B)。両方のスライドに、抗原回復が含まれる同一の前処理工程を与えて、唯一の違いは、シグナル破壊の方法であった;方法1は、NaOHで行って、もう一方の方法は、H2O2で行った。このスライドを9回の擬似染色-及び-シグナル破壊サイクルへ処した後にCy3共役パンサイトケラチンで染色して、図24の試料30C及び試料30Dを作製した。
【0201】
[0236] 図24は、第一サイクルのパンカドヘリン染色からの染色を、各染色後にNaOH又はH2O2を使用してシグナルを破壊する、パンサイトケラチンの第9サイクルと比較する。図25は、バックグラウンドを、第一サイクルにおける色素除去後(試料30E及び30F)と9サイクルのNaOH又はH2O2処理後(試料30C及び30D)で比較する。H2O2(試料30D、図25)は、第9工程後のNaOH(試料30C、図25)と比較するとき、パンケラチンのより効率的な色素除去を示した。図26は、NaOH又はH2O2スライドについての各サイクルのバックグラウンドの平均ピクセル強度のプロットである。図26のプロットが示すように、H2O2スライドのバックグラウンドは、最初のベースライン後の各サイクルで、有意により小さかった。
【0202】
実施例22 化学剤に対する抗体安定性
[0237] 結腸組織のスライドを一次抗体ウサギ抗βカテニンで染色して、Cy3共役ロバ抗ウサギ二次抗体で検出して、試料31Aを作製した。試料31Aを撮像してからNaOH溶液で処理して試料31Bを作製し、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。試料31BをCy3共役抗ウサギ二次抗体で再染色して試料31Cを作製して、再び撮像した。図27は、試料31A〜Cの顕微鏡写真を示す。図27は、NaOH処理の後で、一次抗体が試料へ結合したままであることを示す。
【0203】
[0238] 結腸組織のスライドを一次抗体マウス抗PCNAで染色して、Cy3共役ロバ抗マウス二次抗体で検出して、試料32Aを作製した。試料32Aを撮像してからNaOH溶液で処理して試料32Cを作製し、これを再び撮像した。本明細書の実施例8及び9に記載の手順に従って、染色、撮像、及び色素破壊の工程を実施した。試料32BをCy3共役抗マウス二次抗体で再染色して試料32Cを作製して、再び撮像した。図28は、NaOHでの処理の後で、一次抗体が依然として試料へ結合していることを示す。
【0204】
[0239] 以下の実施例23〜26は、それに従って酵素基質-フルオロフォア共役体を使用して組織試料の多重撮像を行う、本発明の態様を例示する。染色工程、撮像工程、フルオロフォアを化学的に破壊する工程、再染色工程、撮像工程、及び上記工程を繰り返す工程によって、多重染色を得る。
【0205】
実施例23 抗体の酵素との共役化
[0240] 使用する抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素へ直接共役したウサギ抗β-カテニン、マウス抗ケラチン5、及びHRP抗体へ共役したロバ抗マウスであった。HRP酵素の基質は、Cy5共役チラミド基質であった。
【0206】
実施例24 組織のHRPでの染色及び撮像
[0241] 実施例6のように調製したスライドを実施例23で調製したHRP共役抗β-カテニン抗体とインキュベートした。一次抗体インキュベーションは、3パーセントBSAにおいて37℃で45分間行った。インキュベーション後、スライドを何回ものPBS洗浄へ処した。このHRP染色スライドを、PBS/0.1%Triton X-100においてCy5共役チラミド基質とともに10分間インキュベートした。インキュベーション後、スライドを何回ものPBS洗浄へ処した。次いで、Cy5チラミド基質をZeiss Axio Imagerで撮像した。使用する倍率は、他に述べなければ、20倍であった。図29は、β-カテニンについて染色後の試料33の顕微鏡写真を示す。画像獲得の後で、スライドをPBSで洗浄して、シグナル破壊に備えた。
【0207】
実施例25 シグナルの修飾、染色、及び撮像
[0242] シグナル破壊にH2O2溶液を使用した。10 mLの0.5 M炭酸ナトリウム(pH10)、5 mLの30容量パーセントH2O2、及び35 mLの水を混合することによって、H2O2溶液を調製した。穏やかに振り混ぜながら、スライドをH2O2溶液中に15分間入れた。15分後、このスライドをPBSで再び洗浄し(試料34)、カバースリップを施し、再び撮像して、色素破壊の効力をチェックした。この再撮像工程は、実施例24において上記に記載した方法を使用して行った。図29は、シグナル修飾後の試料34の顕微鏡写真を示し、シグナル破壊後のシグナルの実質的な除去を示す。次いで、試料34をCy5-チラミドと再インキュベートして、HRP酵素の残存活性を定量して、上記のように撮像した。図29は、試料35の顕微鏡写真およびさらなるCy5が無いことを示し、HRP酵素はH2O2溶液によって化学的に不活性化されて、それによりさらなる酵素基質反応が起こらない。
【0208】
実施例26 組織の色素での再染色及び再撮像
[0243] 実施例25からのスライド(試料35)をマウス抗ケラチン5抗体とインキュベートした。このインキュベーションは、3パーセントBSAにおいて37℃で45分間行った。インキュベーション後、スライドを何回ものPBS洗浄へ処した。次いで、ケラチン5抗体を、BSA中のHRP共役ロバ抗マウス抗体で、37℃で45分間検出した。このHRP染色スライドを実施例25のようにCy5共役チラミド基質とインキュベートした。インキュベーション後、スライドを何回ものPBS洗浄へ処した。このCy5再染色スライド(試料36)を形態染色剤、DAPIで対比染色して、カバースリップを施した。カバースリップを施したスライドを、実施例24において上記に記載の方法を使用して再撮像した。図29は、k5タンパク質について染色後の試料36の顕微鏡写真を示す。
【0209】
[0244] 以下の実施例27〜31は、それに従ってドットブロットの多重撮像を行う、本発明の態様を例示する。染色工程、撮像工程、フルオロフォアを化学的に破壊する工程、再染色工程、撮像工程、及び上記工程を繰り返す工程によって、多重染色を得る。
【0210】
実施例27 標的のブロット上での固定化
[0245] 標的タンパク質、β-カテニンペプチド(シグマ、26561-1ロットR1078-005)、及びCEA抗原をフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に3つの異なる濃度:1マイクログラム、100ナノグラム、及び10ナノグラムでスポットした。このブロットを、1×TBS-T(トリス緩衝化生理食塩水Tween20緩衝液)中5%ミルクを室温で1時間使用してブロッキング
した。
【0211】
実施例28 β-カテニンの染色とブロットの撮像
[0246] 実施例27で調製したブロットを一次抗体、ウサギ抗β-カテニン抗体(シグマ、C7738)とインキュベートした。インキュベーションは、抗体の1:200希釈で、1×TBS-T中1パーセントミルクを室温(RT)で1時間使用して行った。インキュベーション後、ブロットを何回もの洗浄へ処した。次いで、このブロットを、1:500希釈で、1×TBS-T中1パーセントミルクを室温(RT)で1時間使用して、色素共役二次抗体ロバ抗ウサギCy5(実施例6のように調製する)とインキュベートした。インキュベーション後、このブロット(試料37)を1×TBS-Tで洗浄した。このブロット(試料37)の画像を、Cy5チャネルと450 Vの電圧設定を使用するTyphoon Imager(GE Healthcare)でキャプチャーした。図30は、試料37の画像を示す。図30に示すように、β-カテニン標的タンパク質の3つの異なる濃度について、様々なシグナル強度のスポットが観測される。
【0212】
実施例29 色素破壊と撮像
[0247] シグナル破壊にH2O2溶液を使用した。10 mLの0.5 M炭酸ナトリウム(pH10)、5 mLの30容量パーセントH2O2、及び35 mLの水を混合することによって、H2O2溶液を調製した。実施例28で調製したブロットを、穏やかに振り混ぜながら、H2O2溶液中に室温で15分間入れた。15分後、このブロットを、1×TBS-Tを5分間使用して3回洗浄して、試料38を作製した。このブロット(試料38)を再撮像して、ブロットの画像を、Cy5チャネルと450 Vの電圧設定を使用するTyphoon Imager(GE Healthcare)でキャプチャーした。図30は、試料38の画像を示す。図30に示すように、色素破壊工程の後ではスポットが観測されず、Cy5の実質的に完全な破壊を示した。
【0213】
実施例30 CEA抗原の染色とブロットの撮像
[0248] 実施例29からのブロットを一次抗体、マウス抗CEA抗体とインキュベートした。インキュベーションは、1:200希釈で、1×TBS-T中1パーセントミルクを室温(RT)で1時間使用して行った。インキュベーション後、ブロットを何回もの洗浄へ処した。次いで、このブロットを、1:500希釈で、1×TBS-T中1パーセントミルクを室温(RT)で1時間使用して、色素共役二次抗体ロバ抗マウスCy5(実施例6において調製)とインキュベートした。インキュベーション後、このブロット(試料39)を何回もの洗浄へ処した。このブロット(試料39)の画像を、Cy5チャネルと450 Vの電圧設定を使用するTyphoonでキャプチャーした。図30は、試料39の画像を示す。図30に示すように、CEA抗原の3つの異なる濃度について、可変のシグナル強度のスポットが観測される。本実施例は、単一のシグナルジェネレータを使用して、2つの異なる標的を検出し得ることを例示する。
【0214】
実施例31 シグナルの各工程後の定量化
[0249] 試料37、38、39、及び40についてさらに分析して、各ペプチドについて検出される3つのスポットのシグナルを定量した(図30に、分析に選択した領域の代表例を示し、図30では、4〜9と番号付けた四角により領域を強調する)。図30に示すように、各試料からの各ペプチドスポットのシグナルを3つのバックグラウンドスポット、1、2、及び3の平均に対して正規化した。図31は、試料37、38、39、及び40のスポットの相対シグナル強度のプロットであり、シグナル強度が色素破壊工程の後で10分の1に低下することを示す(試料38)。
【0215】
[0250] 以下の実施例32〜34は、それによりプローブ(一次抗体)を固体支持体より有意に離脱させずにフルオロフォアを酸化剤によって破壊する、本発明の態様を例示する。
【0216】
実施例32 細胞培養物の調製
[0251] Alexa488、BODIPY FL C5(D6184)、ヒドロキシクマリン(H1193)は、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)より入手し;ATTO495、ATTO635、及びATTO655は、ATTO-TEC(ジーゲン、ドイツ)より入手し;DY-734-NHSは、Dyomics(イェナ、ドイツ)より入手し;フルオレセインカダベリンは、Biotium 社(カリフォルニア州ヘイワード)より入手した。ヤギ抗マウスIgG-Cy3とヤギ抗マウスIgG-Cy5は、Jackson ImmunoResearch Laboratories 社(ペンシルベニア州ウェストグローブ)より入手した。DPBSとPBSは、Invitrogen より入手し;16%PFAは、Electron Microscopy Sciences(ペンシルヴェニア州ハットフィールド)より入手した。ヤギ血清は、Vector Laboratories(カリフォルニア州バーリンゲーム)より入手した。他の試薬は、いずれもシグマ(ミズーリ州セントルイス)より入手した。
【0217】
[0252] 癌胎児性抗原(CEA)を発現するLS174T細胞(ATCC、CL-188)を、10%FBSを補充したEMEM(ATCC、カタログ番号30-2003)において培養した。細胞を37℃及び5%CO2でインキュベートした。90%集密時にそれらを96ウェルプレートへ継代培養するか又は播種して、さらに2日間増殖を続けた。
【0218】
[0253] 96ウェルプレート上の集密細胞をDPBS(カルシウム含む)で2回濯いでから、2%PFA(最終濃度)を加えて、細胞を10分間固定して、PBS中0.1%Triton X-100を5分間使用する透過化を続けた。次に、細胞をブロッキング緩衝液(10%ヤギ血清+3%BSA)において室温で1時間インキュベートした。ブロッキング工程の直後にマウス抗CEA(最終濃度:3%BSA中10μg/ml)を加えて、一晩インキュベートした。
【0219】
実施例33 一次抗体を酸化剤と接触させること
[0254] 一次抗体に対する酸化剤の効果を検討するために、様々な酸化剤溶液(表1に記載する)をプレートの半分へ30分間加えてから、PBSで徹底的に濯いだ。利用する酸化試薬は、過酸化水素、臭素水溶液、過マンガン酸カリウム、ジクロム酸ナトリウム、I2/KI溶液、過酸化t-ブチル、及びt-ブチル過酸化水素であった。プレートの他の半分は、並行してPBSインキュベーション及び洗浄をした対照として使用して、酸化剤溶液は適用しなかった。プローブに対する塩基の効果を検査するために、NaOH、水性DBU(ジアゾビシクロ-ウンデセン)、及び水性ブチルアミンのような、様々な塩基もプレートと接触させた。対照剤としてPBSを適用した。
【0220】
[0255] すべてのウェルを50μl/ウェルのヤギ抗マウスIgG-Cy3又はヤギ抗マウスIgG-Cy5(1:200希釈)とともにインキュベートした。Gemini M5分光光度計(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)を使用して、プレート全体をスキャンした。各ウェルにおいて全部で5つのスポットをスキャンしてから平均化して、各ウェルにつき1つの読取りを得た。Cy3色素では、励起波長544 nm、発光580 nm、及びカットオフ570 nmで蛍光を読み取った。Cy5では、励起640 nm、発光675 nm、及びカットオフ665 nmであった。
【0221】
[0256] 表1は、縦列2(Cy3)及び4(Cy5)に示すように、一次抗体への酸化剤の適用後に測定した蛍光値を示す。表中の数値は、正規化した蛍光強度、即ち、酸化剤と接触させたウェルについて測定した蛍光強度の、対照ウェル(酸化溶液を適用しない)について測定した蛍光強度に対する比を100倍したものである。故に、100%に近い数値は、酸化溶液が、その対照(酸化溶液を適用しない)と比較するときに、一次抗体に対して効果がないことを意味する。
【0222】
[0257] 表1は、一次抗体に対してほとんど効果がない(P>0.1)酸化剤(例、H2O2)がある一方で、一次抗体が実質的に影響を受けないように、酸化剤の濃度を変化させてよい場合がある(例、I2/KIの場合)ことを示す。利用した塩基(NaOHとブチルアミン)は、利用した多様な濃度の全域で一次抗体の実質的な破壊を示した。PBSは、一次抗体に対する効果を示さなかった。
【0223】
実施例34 フルオロフォアを酸化剤と接触させること
[0258] フルオロフォア標識細胞に対する酸化剤の効果を検討するために、様々な酸化剤溶液(表1に記載する)を様々な横行(プレートの対照部分)へ30分間加えた。実施例33に記載のように、徹底した洗浄の後で、プレートを再び読み取った。
【0224】
表1は、ある酸化剤(例、H2O2)が一次抗体に対してほとんど効果を及ぼさないが、シアニン色素に対しては蛍光特性の実質的な消失をもたらすことを示す。表1に報告するデータは、蛍光シグナル破壊がH2O2溶液では高いpHでよりよく奏効したことをさらに示す。ここに記載されるように、他の場合では、一次抗体は実質的に影響を受けないが、シアニン色素は影響を受けるように、酸化剤の濃度を変化させることができる(例、I2/KIの場合)。利用した塩基(NaOHとブチルアミン)は、シアニン色素からのシグナルの実質的な消失を明示したが、これは、一次抗体の塩基による破壊(又は離脱)によるのかもしれない。PBSは、一次抗体とシアニン色素に対する効果を何も示さなかった。
【0225】
【表1】

【0226】
実施例35 色素-退色スペクトルの測定
[0259] 光学密度(O.D.)を使用しして、色素破壊をモニタリングした。10μlの色素を等量の酸化溶液と混合してから、この混合溶液の2μlをND-1000分光光度計(NanoDrop Technologies 社、デラウェア州ウィルミントン)へロードした。200 nm〜750 nmに及ぶフル・スペクトルで光学密度(O.D.)を読み取った。動態試験用に、0、5分、15分、及び30分の時点で測定値を取った。
【0227】
実施例36 Cy3及びCy5のH2O2での破壊の動態試験
[0260] 色素破壊の動態を試験するために、実施例36に記載の方法を使用して、過酸化水素(1.5%H2O2、pH10)を酸化剤として使用し、Cy3とCy5を代表的な色素として使用した。色素-酸化溶液混合物の蛍光スペクトルを30分の時間の間モニタリングした。図32は、Cy3及びCy5のスペクトルの時間プロフィールを示す。色素破壊を示す、O.D.の速やかな減少を観測した。いずれの場合でも、1.5%H2O2中15分のインキュベーションにより、色素をほとんど破壊することができた。ピーク励起時のO.D.値は、Cy3とCy5の両方で15分後に2%まで低下した。
【0228】
実施例37 Cy3退色に対するH2O2濃度の効果
[0261] 0〜1.5%のH2O2濃度の範囲を試験して、実施例35に記載の方法を使用して、吸光度スペクトルを30分にわたりモニタリングした。H2O2溶液のpHは、10に保った。Cy3を色素として使用して、吸光度をそのピーク波長の550 nmで記録した。図33に示すように、0.1%H2O2を除いて他のすべてのH2O2濃度はきわめて似た結果を示し、15分以内に色素吸光度を5%までほとんど低下させた。0.5%、1%、及び1.5%の濃度での処理の間には、統計学的有意差がない(P>0.1)。
【0229】
実施例38 様々なフルオロフォアに対するH2O2の効果
[0262] 実施例35に記載の方法を使用して、一団の蛍光色素を、異なるフルオロフォアに対するH2O2(3%H2O2、pH10)の効果について試験した。吸光度スペクトルを30分にわたりモニタリングして、吸光度値を図34に示す。ここに示すデータは、時間0でのO.D.に対して正規化した、色素の最大吸光度波長でのO.D.値である。光退色に対する感受性がきわめて強いフルオレセインは、この酸化法に対して、相対的に安定していた。ATTO496とAlexa488も、他の色素と比較した場合、この酸化剤に対してさほど感受性が強くなかった。図34は、これらの色素がH2O2を使用して破壊され得ることを示す。
【0230】
実施例39 量子ドット(QD655)に対するH2O2の効果
[0263] 実施例36に記載の方法を使用して、ある範囲のH2O2濃度(20倍〜2000倍希釈)を試験して、吸光度スペクトルを30分にわたりモニタリングした。H2O2溶液のpHは、10に保った。この吸光度値をQD655の溶液の対照試料と様々な濃度(20倍〜2000倍希釈)で比較した。
【0231】
[0264] Qドット655ヤギF(ab')2抗マウスIgG共役体(1μM)溶液を0.775 M重炭酸ナトリウム溶液(pH10へ調整した)で10倍、100倍、又は1000倍に希釈した。各溶液へ等量の6%過酸化水素を加えた。それぞれの100μlアリコートを同一3検体で96ウェルマイクロタイタープレートに入れた。過酸化物を含めないが水で同じ最終濃度へ希釈した試料を対照として使用した。2倍希釈した重炭酸塩溶液をバックグラウンド対照として使用した。以下の変数:励起350 nm、発光655 nm、及び自動カットオフ630 nmを使用して、spectromax M2プレートリーダーで蛍光を経時的に測定した。最低の濃度では、蛍光の99%低下は5分後に達成された。30分以内には、すべての過酸化物試料の蛍光が99.5%より多く低下した。対照試料の蛍光は、ほとんど無傷であった(最低濃度の試料において>93%であり、最高濃度試料においてほぼ99%)。
【0232】
[0265] 重炭酸塩緩衝液(pH10)中3パーセント過酸化水素を使用して、シグナルを破壊した。この吸光度値をQD655の溶液の対照試料と様々な濃度(20倍〜2000倍希釈)で比較した。図35に示すように、Qドットのすべての濃度で、蛍光は、5分以内に対照値の6%未満まで低下した。
【0233】
実施例40 フルオレセインに対するヒドロキシルラジカルの効果
[0266] 試料41(FAM-CAD、H2O2、及びH2O(1:1:1)、42(FAM-CAD、H2O2、及びFeCl3(1:1:1))、43(FAM-CAD、H2O、及びFeCl3(1:1:1))、44(FAM-CAD及びH2O(1:2))について、異なる酸化剤条件を使用して、フルオレセイン色素、FAMカダベリン(「FAM-CAD」)の吸光度スペクトルを測定した。フルオレセイン-カダベリンの溶液を9%過酸化水素と2%FeCl3水溶液と1:1:1の容量比で混合した。この混合物をそのまま5分間静置させた。FeCl3の添加がpHを強酸性へ変化させて、フルオレセインスペクトルが酸性条件の下で異なることが知られているので、UV/VISスペクトル測定に先立って、1 N NaOHの添加により溶液を塩基性にし、濾過して、そのスペクトルを記録した。過酸化水素を水に置き換えること、又はFeCl3溶液を水に置き換えることのいずれか以外は同様に処理した溶液を対照として使用した。FeCl3と過酸化水素をともに水に置き換えた溶液も、別の対照として使用した。過酸化物の存在下で、泡の形成のためにスペクトルはややノイズがあって、ベースラインが上昇するが、スペクトルは、対照試料が影響を受けないのに対して、試験試料では、ほとんどすべてのフルオレセインが破壊されることを明瞭に示した。図36に示すように、試料42では5分後に吸光度が著しく低下して、酸化剤を利用してヒドロキシルラジカルを創出することによってフルオレセインが破壊され得ることを示した。
【0234】
[0267] 本発明は、その精神又は本質的な特徴より逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化することができる。故に、前記の態様は、すべての点において、本明細書に記載の本発明を限定するのではなくて例示するものであるとみなすべきである。従って、本発明の範囲は、上記の記載ではなく付随する特許請求の範囲により示されて、それ故に特許請求の範囲の同等性の意味及び範囲内に入るすべての変更は、そこに含まれると企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の複数の標的をプローブする方法であって:
(a)複数の標的を含有する試料を提供する工程;
(b)試料中に存在する1以上の標的へ、酵素へ連結した結合剤を含んでなる少なくとも1つのプローブを結合させる工程;
(c)結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程;
(d)工程(c)の蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程;
(e)蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに実質的に不活性化する酸化剤を含んでなる溶液を工程(c)の試料へ適用する工程;
(f)工程(e)の試料中に存在する1以上の標的へ、酵素へ連結した結合剤を含んでなる少なくとも1つのプローブを結合させる工程;
(g)結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質と反応させる工程;
(h)工程(g)の蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程;
を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
工程(e)における溶液が塩基性溶液である、請求項1の方法。
【請求項3】
塩基性溶液が約10のpHを有する、請求項2の方法。
【請求項4】
塩基性溶液が還元剤も界面活性剤も含有しない、請求項2の方法。
【請求項5】
酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、及びグルコースオキシダーゼより選択される、請求項1の方法。
【請求項6】
酸化剤が、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、ジクロム酸ナトリウム、臭素水溶液、ヨウ素-ヨウ化カリウム、及びt-ブチル過酸化水素より選択される、請求項1の方法。
【請求項7】
蛍光シグナルジェネレータがシアニン色素を含む、請求項1の方法。
【請求項8】
試料が全細胞又は組織切片を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
試料がタンパク質又は核酸を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
工程(e)〜(h)を1回以上繰り返す、請求項1の方法。
【請求項11】
工程(e)〜(h)を少なくとも5回、少なくとも10回、又は少なくとも20回繰り返す、請求項1の方法。
【請求項12】
酸化工程(e)を約30分未満の間実施する、請求項1の方法。
【請求項13】
酸化工程(e)を約30秒〜約15分の間実施する、請求項1の方法。
【請求項14】
酸化工程(e)を室温で実施する、請求項1の方法。
【請求項15】
観測する工程(d)、工程(h)、又は工程(d)及び(h)が、試料中の少なくとも2つの標的を共局在化することを含む、請求項1の方法。
【請求項16】
観測する工程(d)、工程(h)、又は工程(d)及び(h)が、試料中の少なくとも1つの標的の定量的測定を含む、請求項1の方法。
【請求項17】
観測する工程(d)、工程(h)、又は工程(d)及び(h)において観測されるシグナルの1以上の強度値を測定することをさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項18】
強度値を試料中に存在する標的の量と相関させることをさらに含んでなる、請求項17の方法。
【請求項19】
工程(c)における蛍光シグナルジェネレータが工程(g)における蛍光シグナルジェネレータと同一である、請求項1の方法。
【請求項20】
工程(c)における蛍光シグナルジェネレータが工程(g)における蛍光シグナルジェネレータとは異なるものである、請求項1の方法。
【請求項21】
工程(d)及び工程(h)において観測されるシグナルが単一の検出チャネルにおいてともに検出可能である、請求項1の方法。
【請求項22】
工程(d)又は工程(h)において観測されるシグナルが異なる検出チャネルにおいて独立的に検出可能である、請求項1の方法。
【請求項23】
生体試料中の複数の標的をプローブする方法であって:
(a)複数の標的を含有する試料を提供する工程;
(b)試料中に存在する1以上の標的へ、ペルオキシダーゼへ連結した結合剤を含んでなる少なくとも1つのプローブを結合させる工程;
(c)結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結したペルオキシダーゼ基質と反応させる工程;
(d)工程(c)の蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程;
(e)蛍光シグナルジェネレータとペルオキシダーゼをともに実質的に不活性化する酸化剤を含んでなる溶液を工程(c)の試料へ適用する工程;
(f)工程(e)の試料中に存在する1以上の標的へ、ペルオキシダーゼへ連結した結合剤を含んでなる少なくとも1つのプローブを結合させる工程;
(g)結合したプローブを、蛍光シグナルジェネレータへ連結したペルオキシダーゼ基質と反応させる工程;
(h)工程(g)の蛍光シグナルジェネレータからのシグナルを観測する工程;
を含んでなる、前記方法。
【請求項24】
ペルオキシダーゼが、試料中又は試料が結合している固体支持体中に存在するフェノール性基へペルオキシダーゼ基質が共有結合することを引き起こす、請求項23の方法。
【請求項25】
生体試料中の複数の標的をプローブするためのキットであって:
酵素へ連結した結合剤を含んでなる複数のプローブ;及び
蛍光シグナルジェネレータへ連結した酵素基質;
を含んでなり、ここで酸化剤は、試料へ適用されるときに、蛍光シグナルジェネレータと酵素をともに実質的に不活性化する、前記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図22】
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【図26】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−520989(P2010−520989A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537355(P2009−537355)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/084786
【国際公開番号】WO2008/133728
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】