説明

生体試料を分析するための分析システム及びコンピュータによって実行される方法

【課題】試料齢に応じて特定の分析のための試料の使用可能性を自動的に前もって予測するための手段をユーザーに提供する。
【解決手段】分析要求(112)の受信に応答して、分析要求(112)中に指示された試料に対して分析を実施することから得られた結果が有効であるどうかを決定するように動作可能な決定ユニット(109)とを含み、この決定が、試料に割り当てられたメタ情報(126)を検索することにより、そしてメタ情報(126)に対して少なくとも1つの条件を適用することにより実施され、そして、適用される少なくとも1つの条件が、少なくとも、試料齢が試料に対する有効な分析を可能にするかどうかに関する条件を含み、そして条件集合の条件が試料によって満たされた場合に、決定ユニット(109)が、指示された試料に対して実施される分析が有効な結果を戻すであろうという決定を戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料、例えば体液を分析するための分析システム及びコンピュータによって実行される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料の管理は、操作ステップが数多くあり、また各作業ステップの実施に先立って考慮しなければならない手順上及び安全上の側面が数多くあるため、極めて複雑である。現在のところ、これらの作業ステップの多くは手作業によって実施され、その結果、試料処理ワークフローが長引き、誤った分析結果が出るリスクが増大する。ラボ関係者が、感染性のおそれのある生体試料内容物とうっかり接触するリスクもこれと関連して言及されるべきである。
【0003】
生体試料、例えば組織、血液、唾液又は尿試料は、病院又は診療所で医療関係者によって患者から日常的に採取されている。これらは種々の分析のために使用される。分析は、例えば、血液又はその他の試料のグルコース、Fe2+、ヘマトクリット、クレアチニン又は白血球のレベルを決定する研究手法である。これらの分析から得られた濃度値は、疾患を診断する上で重要な助けとなり、患者の健康状態の重要な指標となる。
【0004】
普通、患者又は実験動物から採取された試料は、複数の分析に十分な材料を提供する。このことは、分析に失敗するか又は他の理由で分析を繰り返さなければならない場合、例えば、医師が追加の診断試験を必要と考える場合に、患者が二度目に来院して、追加の血液試料を提供する必要はないことを保証する。これらの理由から、生体試料は普通、アリコート化され、そして生体試料の安定性及び保存寿命をできる限り延長する条件下で保存される。試料のアリコート化は、分析のために直接に使用することができる小体積の試料をもたらす。
【0005】
生体試料の保存寿命を延長する保存条件は普通、低温レベル、例えば冷蔵庫内の凍結温度を数℃上回る温度、又は冷凍庫によって提供されるような、これよりも低い温度を含む。
【0006】
特定の分析、例えば患者の血液試料のグルコース・レベルを決定する分析を試料に対して実施しなければならない場合、その患者の血液試料又は血液試料のアリコートを保存装置から、分析が行われることになっている生物医学アナライザに移さなければならない。分析によって生じた結果は医療関係者に戻され、そして例えば、患者の健康状態を決定するために、又は患者に対する治療又は投薬の効果をモニタリングするために用いられる。
【0007】
目下のところ、上述の作業の多くは手作業で行わなければならない。血液試料は、ラボの専門家(lab professional)によってアリコート化してより少量の試料にされ、そして試料調製の日時、及び試料を特定の患者と関連付けるのを可能にする識別子、例えばバーコード・ラベル又は試料上に書かれた手書きの患者番号及びサンプリング時間で、手作業によってラベリングされる。試料は保存装置に手作業によって移される。例えば患者の血液中の特定の分析物を決定するために、分析が既に保存されている試料に対して行われるようになっている場合には、ラボ関係者は、保存装置内の適切な試料を手作業で識別し、試料のキャップを外し、あるいはその他の方法で前処理し、そしてアナライザにこれを移さなければならない。
【0008】
前記シナリオに従った場合には多数のエラー源が存在する。すなわち、ラボ関係者(lab personnel)は、試料に誤ったラベリングを行ったかもしれず、保存装置から分析のために異なる患者に属する誤った試料を取り出したかもしれず、又はその試料の保存期間が有効な分析結果を保証するには余りにも長いにもかかわらず分析のためにその試料を使用したかもしれない。加えて、試料が感染性疾患の患者に由来するものであったかもしれないため、人間と生体試料とのそれぞれの相互作用を安全性のリスクとして考えることもできる。
【0009】
特定の分析を適用するには余りにも古い試料を使用することは、致命的な結果をもたらすことがある。すなわち、得られた分析結果が試料齢に起因して間違っている場合、患者の不適切な診断又は治療を招く誤った分析結果が得られるおそれがある。従ってラボ関係者は、保存条件から考えて試料が保存期間内にあるならばその試料に対する有効な分析結果の検索がまだ可能であること、またそうでないならば、前記試料が分析のために使用されないことを何とかして保証しなければならない。
【0010】
従って、目下のところ、試料は所定の期間、例えば1週間又は2週間後に、又は経験則を適用したそれぞれの個々のラボ作業者(lab worker)の決定に従って廃棄される。前記経験則に従って生体試料を廃棄することで、保存された全ての試料を分析のために使用できること、及び分析の有効性が試料齢によって不都合に影響されないことが保証される。このような「解決策」は、いくつかの顕著な欠点と結び付いている。すなわち、分析による有効な結果の検索をまだ可能にする試料の最大限に可能な保存期間は、保存長さにだけ依存するのではなく、試料タイプ(血液、尿)及び実施されるべき分析の種類(キャラクタライズされるべき分析物のタイプ及び特性、例えばグルコース、乳酸又はトロポニン−T)にも依存する。それを過ぎると試料が或る分析にとっては余りにも古くなるような一定の保存期間後に試料を廃棄することは、或る他の種類の分析のためにまだ使用できる試料を廃棄することにつながるおそれがある。このような解決策は、他のタイプの分析のために使用できたかもしれない試料が廃棄され、そして必要に応じて患者から試料をさらに採取しなければならないので、最適なものと考えることはできない。これらの結果はコストを増大させる。その理由は、患者が、新しい試料、例えば血液試料が採取される病院に追加の予約をとらなければならないからであり、またいくつかの分析のためにまだ使用できたかもしれない試料を廃棄することにより必要量より多くの廃棄物がもたらされるからであり、そしてラボ関係者が新しい試料のサンプリング、前処理及び保存を伴う追加の作業を負うからである。一定の期間後に試料を手作業で廃棄することは、極めて多くの時間を費やす。すなわち、大抵の生物医学ラボラトリでは、毎日数多くの試料を患者から採取し、ラベリングし、そして適宜に保存する。ラボラトリの監督者がラボ関係者に、試料齢が最長7日であることを要求する分析に古い試料を使用できないことを保証するために、1週間を上回る古さの全ての試料を廃棄するように指示する場合、ラボ関係者は、例えば1週間に一度金曜日毎に、保存された全ての試料の齢をチェックすることがある。或る週の月曜日に患者から採取された試料が、同じ週の金曜日に実施される試料齢の手作業によるチェック中には廃棄されないという問題が生じる。試料齢の次回の手作業によるチェックは次の週の金曜日に行われるので、次の週の火曜日、水曜日又は木曜日に古い試料に対して分析を行うように分析要求が出され、間違った分析結果が生じるおそれがある。このシナリオが起きないことを保証するために、試料齢の手作業による検査は、試料の最長保存時間よりも著しく頻繁に、例えば毎日行わなければならない。別の解決策は、試料に対する個々の分析要求毎に各試料の試料齢を手作業でチェックすることである。上記両解決策が、多くの生物医学ラボラトリにおける現在行われている方法であるが、しかし両方とも多くの時間を費やし、間違いを招きやすい。
【0011】
生物医学的研究に関連する分析には、生体試料又は試料の分析物のパラメータをキャラクタライズするための技術的手法がある。試料のパラメータの特徴は例えば、人間又は実験動物に由来する生体試料中の種々のサイズの特定のタンパク質、代謝産物、イオン、又は分子の濃度の決定を含む。収集された情報は、例えば生物又は特定の組織に対する薬物投与の影響を評価するために使用することができる。更なる分析が、試料又は試料中に含まれる分析物の光学的、電気化学的、又はその他のパラメータを決定することもある。
【0012】
上述の作業のうちのいくつかを自動化するための手段をラボ当業者に提供する、生体試料をin vitro分析する種々のアナライザが公知である。米国特許第000004801429号明細書には、示差走査熱量計を使用して評価するために複数の試料を自動的に取り扱う試料取り扱い装置が開示されている一方、欧州特許第000000801308号明細書には、試料ラックを自動的に搬送するための方法及び自動アナライザが紹介されている。例えば米国特許出願公開第2008/0168850号明細書には、試薬容器の開封から試薬の劣化までの所定の期間にわたって、使用されるそれぞれ試薬を保存する。試薬は、試料の分析物を検出するか又はその他の形でキャラクタライズするために分析に際して使用される物質である。前記特許出願によるアナライザは、試薬セットに対応する較正曲線係数が、同じ製造番号を有するアナライザの別の試薬セットに適用可能か否かを、試薬容器開封から試薬の使用期限までの所定の期間に基づいて判断する。欧州特許第1959257号明細書に開示された自動アナライザは、分析中に試薬不足が生じた場合に、分析をストップせずに分析中に試薬を交換するように動作可能である。試薬は、試薬保存ユニットから試薬交換メカニズムに移される。次いで、試薬交換メカニズムは、試薬が交換されるように動かされる。
【0013】
引用された特許出願明細書は、生体試料の分析過程連鎖のいくつかの単独ステップ、例えば分析のために必要とされる試薬を配分する仕事を自動化して改善し、この場合、使用期限、試薬容器の開封、又はアナライザの試薬ロット内でまだ使用可能な試薬量を考慮に入れる。引用された特許出願明細書は、生体試料の安定性がしばしば、試薬の使用期限よりもはるかに緊急を要する(time-critical)という事実に対処してはいない。種々の緩衝剤及び検出試薬が1か月又は数年間の保存寿命を有し得るのに対して、生体試料の保存寿命は、しばしばかなり短い。生体試料及び試料に対して行われるべき分析如何では、試料に対して分析を行うことができる時間窓は、最適な条件下にあるとして2〜3日間であることがしばしば測定されている。
【0014】
従来技術のシステムは、試料が尚も分析にかけられるか否かという問題に対し、生体試料の保存寿命の影響を考慮することはできない。具体的には、これらのシステムは、試料に対して分析を実施するために最大限許容し得る保存寿命が、保存時間に依存するだけでなく、試料に対して実施されるべき分析のタイプにも依存するという問題には対処していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、それぞれの独立請求項で主張されているような、生体試料を分析するための分析システム及びコンピュータによって実行される方法を提供する。本発明の実施態様は従属請求項に記載されている。
【0016】
本発明の実施態様は、試料齢に応じて特定の分析のための試料の使用可能性を自動的に前もって予測するための手段をユーザーに提供するので、特に有利である。さらに有利なのは、試料齢及び試料の実際の保存条件に応じて、特定の分析のための試料の使用可能性を決定するように動作可能である、本発明の更なる実施態様によって提供される特徴である。生体試料の保存条件、例えば保存温度、光度、湿度、又はその他の保存パラメータは、試料に対する特定タイプの分析の適用可能性に重要な影響を及ぼす。試料の保存条件は、ラボ当業者によって想定されるほどには一定ではないことがある。例えば、試料を保存する冷凍庫又は冷蔵庫のドアが長時間にわたって多数回又は数回にわたって開かれた場合、あるいは、ラボラトリ従業員が冷凍庫又は冷蔵庫のドアを適切に閉めるのを忘れた場合、あるいは、装置が数時間停電した場合、実際の保存条件は、最適な保存条件から著しく逸脱し、結果として潜在的に、本当は廃棄されるべきであった試料を分析のために使用するおそれがある。保存条件は、本発明の前記実施態様によれば、自動的にモニタリングされ、そして試料に対して実施される分析が有効な結果を出すかどうかの予測のために、試料齢に加えて用いられる。
【0017】
本発明の実施態様によって解決される更なる課題は、試料の処理連鎖に沿った保存条件の文書化が、従来技術に従った場合、断片的であるという事実である。冷却装置がその中に保存されている試料を、試料を保存する全期間にわたって正しい温度にしておく場合でも、試料が前記温度のもとで一定に確かに保存されたという保証はない。複数の分析を1つの試料に対して行わなければならない場合には、ラボ関係者は冷却装置から、分析が実施される作業台又はアナライザに試料を繰り返し移し、そして分析完了後、その試料を保存装置に戻さなければならない。良く知られているように、実際には、保存装置に対する試料の出し入れの前記作業からラボ作業者が注意をそらされる数多くの状況が存在する。このような状況とは、例えば至急の電話、平行して進んでいるラボラトリ処置、及び処理の失敗に起因するラボラトリ関係者による緊急の介入を必要とするラボラトリ処置などである。このような状況では、試料は適切な冷却を施されることなしに、長時間にわたって作業台上に置かれることがある。このような状況は通常文書化されないので、かなりの時間にわたって冷却連鎖が中断されたのに起因して前記試料が分析のためにもはや使用できないにもかかわらず、別の人物が前記試料を分析のために使用するおそれがある。前記試料から得られた分析結果は、無効となることがあり、そして医療専門家による誤った診断及び決定を招くおそれがある。本発明の実施態様は、試料を分析ユニットにローディングすることから始まり、その後試料がアナライザ及び保存ユニットに自動的に移され、この保存ユニットで試料の保存条件が自動的にモニタリングされるという、試料の処理連鎖を文書化する。更なる実施態様によれば、保存ユニットに対する試料のローディング及びアンローディングの時点が自動的に文書化され、結果としてそれぞれの個々の試料の処理連鎖が完全に文書化される。
【0018】
本発明の更なる実施態様はこれに加えて、試料中の特定の分析物をキャラクタライズする分析が有効な結果をまだもたらすか否かという問題に対しても影響を及ぼす試料タイプをチェックする。頻繁に分析される生体試料タイプは血液試料、血清試料又は尿試料であるが、しかし数多くの分析及び手順が、他の試料タイプ、例えば唾液又は組織試料に基づいて存在する。
【0019】
本発明の実施態様によれば、少なくとも1つのアナライザを含む、生体試料を分析するための分析システムが提供される。アナライザは、生体試料、例えば体液を分析するように構成されている。本発明の実施態様に応じて、アナライザは、唯1つの特定の種類の分析を実施できるようになっていてもよく、或いは1つ又は複数の異なる種類の生体試料に対して数多くの異なる種類の分析を実施できるようになっていてもよい。分析は、試料の分析物のキャラクタリゼーション、又は分光的、形態的、又は光学的特性、例えば不透明度又は蛍光性のキャラクタリゼーション、及び電気生理学的特性又は浸透圧特性の決定を含む。加えて、分析は試料中の分析物、例えばタンパク質、代謝産物、イオン又は有機又は無機分子の検出、及び試料中の前記分析物の濃度又は別の特徴の決定を含んでいてもよい。アナライザは、本発明の実施態様によれば、1つの特定の分析又は複数の分析を自動的に実施するように動作可能である。分析の自動的な実施は、分析物を検出又はキャラクタライズするのに必要な、又は被検出試料の光学的又は生化学的特性を明らかにするのに必要な1つ又は複数の反応物を添加することを含んでよい。1つ又は複数の反応物を添加する結果、反応物と分析物とが反応し、これにより、アナライザによって検出することができるパラメータの変化、例えば色の変化、又は不透明度の変化などが生じることがある。生じ得る反応は、例えば、共有化学結合、水素ブリッジ、イオン結合又は弱い相互作用の形成又は分解を含む。
【0020】
本発明の別の実施態様によれば、アナライザは試料の特性を測定し、そして検査される特性に対応する少なくとも1つの測定値を検索することができる。特性は、生化学的、物理的、光学的、分光的、浸透圧的、形態的、又は電気的特性から成る群から選ばれる。
【0021】
本発明の実施態様による分析システムはさらに、分析システム内にローディングされる試料の固有識別子を受信するように動作可能なレシーバを含む。固有識別子は管上のバーコード・ラベル、RFIDチップ、又はその識別子の固有の識別及び自動認識を保証する任意のその他のラベルであることが可能である。本発明の実施態様によっては、試料が収容されたラックに取り付けられた固有ラック識別子と、このラック内部の試料の位置とを組み合わせることにより、例えばラックの行及び列を表す値を組み合わせることにより、試料を固有に識別することができる。値の組み合わせ4/7は、例えば、試料が第4列第7行に配置されていることを示す。
【0022】
本発明の更なる実施態様によれば、試料上のバーコードは、試料が由来する患者に対して固有なのであって、試料に対して固有なのではない。ラック上の特定の位置における試料を表す固有試料識別子は、この実施態様の場合、試料に関するバーコード情報及び試料が分析システムの保存ユニット内にローディングされた時点を示す時間情報に従って、試料が由来する患者又は実験動物に対応する固有識別子を組み合わせることによって、形成される。特定の事象の日時を示すデータ値を以下では、「タイムスタンプ」とも称する。前記実施態様が必要とするのは、2つの試料が分析システム内に同時にローディングされないこと、そしてレシーバが同時にラック内の試料の位置を検出し、患者特異的バーコード・ラベル及びタイムスタンプから形成されたその固有識別子によって場所を特定できることを保証することである。
【0023】
本発明の実施態様による分析システムはさらに、アナライザのためのコントローラを含む。コントローラは、分析システムの他の構成要素、決定ユニット又はデータ・マネージャからの要求を受信することができ、特定の試料に対する分析を実施し、そしてアナライザに開始命令を送信することにより分析を開始することができる。加えて、コントローラは作業中、アナライザから検索された分析結果を、分析要求が発せられたシステム構成要素に戻す。本発明の更なる実施態様によれば、コントローラには、モニターが接続されており、且つ/又は、入力ユニットが接続されているので、アナライザのコントローラとのユーザーの相互作用が可能である。
【0024】
本発明の実施態様による分析システムはさらに、分析要求を受信するためのインターフェイスを含んでおり、分析要求は少なくとも、分析されようとする試料の固有試料識別子に関する情報を含んでいる。分析システムのアナライザが複数の異なる分析を実施することができる場合、要求はさらに、要求中に指示された試料に対してアナライザによってどのような種類の分析を実施するべきかに関する情報を含むことを必要とされる。
【0025】
「分析」とは、生体試料又は試料成分の化学組成の研究及び/又は種々の化学的、物理的、又は光学的特性のキャラクタリゼーションである。典型的には、1つの特定の物質である分析物が、分析中にキャラクタライズされる。分析物のキャラクタリゼーションは、分析物を試料中でそもそも検出できるかどうかの決定を含む、分析物の濃度の決定を含んでいてよい。キャラクタリゼーションは、細胞又は組織の幾何学的特徴、又は形態学特性の決定、生物、例えば病原菌、原生動物、又は試料中に残された痕跡の検出、光学及び分光パラメータ、例えば試料の不透明度、分子的、生物学的、及び遺伝学的特徴、例えばDNA又はRNA配列の存在の検出、特定のタンパク質又は代謝物のキャラクタリゼーション、及び化学的特徴、例えばイオン、有機及び無機分子の濃度の決定を含んでいてよい。生物医学的アナライザの典型的な使用事例シナリオによれば、キャラクタライズされるべき分析物は、イオン及び分子であり、そして決定されるべき特徴は、生体試料中、例えば血液又は尿試料中の前記分析物の濃度である。
【0026】
「アナライザ」という用語は、生物学的試料、例えば血液、尿又は唾液試料に対して1つ又は複数の分析を実施するように動作可能な装置を意味する。アナライザは、少なくとも1つの試料をコンパートメント内にローディングし、分析は、種々の化学的、生物学的、物理学的、光学的又はその他の技術手法を介して、試料又は試料の成分のパラメータを決定するために実施される。試料成分、例えば分子、イオン、及びタンパク質などは、以下では「分析物」と称する。アナライザは、前記パラメータを測定し、そして分析された試料の固有識別子と関連して分析結果を戻すか又は記憶するように動作することができる。
【0027】
本明細書に使用される「分析結果」という表現は、アナライザによって実施される分析の結果を記述する任意のデータ、典型的に測定データを含む。アナライザによって戻される可能な分析結果のリストの一例としては、試料中の分析物の濃度、試料中の分析物の存在(検出レベルを上回る濃度に相当)を示すデジタル(イエス又はノー)結果、光学的パラメータ、DNA又はRNA配列、タンパク質又は代謝物の質量分析及び種々のタイプの化学的パラメータから得られたデータが挙げられる。分析結果は、分析がそれに対して実施された試料の固有識別子を含むか又はこれと関連付けられている。
【0028】
「分析を適用することができる」又は「試料が分析のために使用可能である」及び同等の表現は、分析を特定の試料に対して物理的に実施できるか否かという点に言及するものではない。試料が乾き切っていない限り、又はその他の形で長い保存時間によって深刻な物理的影響を及ぼされているのではない限り、分析の物理的実施は、いずれの場合にも可能と考えることができる。むしろ、前記及び同等の表現は、試料に対して実施された分析が有効な結果をもたらすか否かということを意味する。有効な結果は、医学的に有用である結果であり、これは、その結果に基づいて引き出された医学的結論が、分析結果に対する試料齢の影響によって無効化されないことを意味する。有効な結果は、試料、試薬及び適用された分析手順の物理学的、生化学的、光学的、生化学的又は同等のパラメータに依存し、この場合前記パラメータは、分析時には、患者又は実験動物からの試料採取直後に存在する試料のパラメータから大きく逸脱していない。生化学的分析から戻された有効な結果は、同じ濃度及び組成の分析物を含む異なる試料のものと再現可能に同じである。例えば、検出されるべき分析物が2〜3日間の保存後に劣化するという理由から、保存時間又は保存条件が分析結果に影響を及ぼす場合、試料は分析のためにもはや使用するべきではない。なぜならば、このような試料に対して実施される分析の結果は、患者の健康状態又は分析中に決定されるべき他の生物医学的パラメータには対応しない試料の保存時間及び状態に左右されることになるからである。従って、分析を試料に対して適用できるか否かという論点は、分析の物理的な実施可能性を意味するのではなく、試料の分析によって検索される結果がまだ有効であり、しかも特定の試料の特性、例えば試料齢から考えて医学的に有用であるか否かという論点を意味する。
【0029】
本発明の実施態様による分析システムはさらに、「メタ情報」を各試料に割り当てるための一組のプログラム・インストラクションを含んでいる。
【0030】
「メタ情報」という用語は、診断及び生物医学的分析との関連では、試料又は試料が由来する生物の特徴をキャラクタライズする任意の種類の情報を意味する。メタ情報は、少なくとも時点情報、例えば生体試料が患者から採取された日時又は試料が分析システム内にローディングされた時点を含む。メタ情報は加えて、事例関連データを含んでいてよい。事例関連データは、試料が由来する患者のデータ、例えば患者、診断、及び患者の病歴、患者の名前又はサンプリング条件である。メタ情報は加えて、試料の保存及び分析に関連して重要であり得る、そして試料の調製及び処理に生物医学的に関連し得るパラメータ、例えば試料のタイプ、試料の量、試料が含まれる容器又は管のタイプ、試料がキャッピング又は脱キャッピングされているかどうかに関する情報、などを含んでいてもよい。メタ情報の内容は、患者データの安全性を保証する国固有の法的規則に依存していてもよい。本発明の好ましい実施態様によれば、メタ情報はサンプリング後、記憶媒体、例えばリレーショナル・データベースに記憶される。メタ情報は固有試料識別子、例えばバーコード、又は患者ID及び試料IDの組み合わせと関連して記憶される。「関連して記憶」という用語は、特定の試料に対応するメタデータを、固有識別子だけを踏まえて、また試料の他の固有の特徴をも踏まえて検索できることを保証するように情報が記憶されることを意味する。
【0031】
試料のメタ情報は、本発明の更なる実施態様によれば、保存情報、例えば試料がサンプリング時から保存されている試料保存ユニット内部の温度又は湿度を含むこともできる。保存条件は、試料に対する特定の分析が有効な結果を戻すか否かの点に関して重要な影響を及ぼす。なぜならば、冷却連鎖の中断又はその他の不適切な保存状態が試料を、その試料の通常の保存期間が切れる遙かに前に、特定の分析のために採用不能にすることがあるからである。
【0032】
本発明の更なる実施態様によれば、分析システムは、試料を前処理するための前処理ユニットを含む。前処理は、試料のアリコート化、試料の脱キャッピング及びキャッピングを含む。特定の試料が目下、キャッピング又は脱キャッピングされているかの情報は、試料のメタ情報に加えられ、そして記憶媒体に記憶される。
【0033】
本発明の実施態様による分析システムはさらに、アナライザによって分析を実施するために使用可能であるように試料によって満たされるべき条件集合を記憶するためのデータ記憶構成要素、例えばデータベースを含む。データ記憶構成要素は、本発明の実施態様に応じて、分析システムの一体部分であってよく、或いは、外部の別個のコンピュータ(例えばPC又は専門のデータベース・サーバ)上にホスティングされていてもよい。分析システムの一体部分であるデータ記憶構成要素の内容は、本発明の実施態様によれば、同じデータ記憶装置又は分析システムの一体部分である更なるデータ記憶装置にインストールされた分析システム固有のソフトウェア・プログラム内に組み込まれる。本発明の更なる実施態様によれば、一体化された又は外部のデータ記憶構成要素に記憶されたデータは、分析システムを操作するラボラトリ又は病院のミドルウェア内に組み込まれる。本発明の更なる実施態様によれば、一体化された又は外部のデータ記憶構成要素に記憶されたデータは、前記ラボラトリ又は病院のLIS内に組み込まれる。LIS内への組み込みは特に有利である。なぜならば、LISはラボラトリ又は病院の他の分析サービス又はITサービスとの組み合わせにおいて前記データ記憶装置を組み込み、そしてデータ記憶装置内に記憶されたデータを前記サービスとの組み合わせにおいて、多数の種々異なるユーザ、例えば患者の健康状態を決定するための分析を要求する医師、医療研究者、又はラボラトリ関係者に利用可能にすることができるからである。
【0034】
「分析を実施するために使用可能」である試料は、特定の時間にわたって、そして試料に対して特定の分析を実施することにより得られる結果が有効であることを保証する特定の保存条件下で保存された試料である。条件集合のそれぞれが、少なくとも、試料のメタデータの時点情報に対する条件を含む。本発明の1実施態様によれば、時点情報は試料の日時である。本発明の更なる実施態様によれば、時点情報は、試料を分析システム又は保存ユニット内にローディングした日時、又は試料の調製及び処理の文脈において重要な同等の時点である。詳細な説明の項で後で説明するように、本発明による分析システムには複数の実施態様が存在し、実施態様によっては唯1つのデバイス内部に全ての関連システム構成要素を含まれるのに対して、他の実施態様は複数の別個のデバイスを含む。
【0035】
本発明の更なる実施態様によれば、分析システムは試料ローディング・ユニットを含む。分析システムに対する試料のローディング及びアンローディングは、前記試料ローディング・ユニットによって自動的に行われる。
【0036】
「決定ユニット」は、試料に対して特定の分析を実施することから得られる結果が有効な、すなわち医学的に有用な結果を戻すかどうかを決定するソフトウェア・プログラムである。決定ユニットは、例えば分析要求を受信することによって始動される。分析要求は、特定の生体試料に対して特定の分析を実施することの要求である。その試料から得られる分析結果が有効となるかどうかを決定するために、決定ユニットは、要求された試料に割り当てられたメタ情報を検索し、そして要求された試料のメタ情報に対して条件を適用する。試料のメタ情報は、保存時間及び試料関連データ又は事例関連データの条件を含んでいてよい。適用される条件は、要求された分析を表すデータ・オブジェクトと関連して記憶された条件集合から選ばれる。
【0037】
特定の分析を表すデータ・オブジェクトは以下に「分析試験」と称する。前記データ・オブジェクトは、揮発性及び/又は不揮発性メモリ内に記憶することができ、そして処理装置、例えばPCによって処理することができる。条件集合の条件が試料のメタデータによって満たされる場合には、決定ユニットは、要求された分析を要求された試料に対して実施できるという決定を戻し、有効な結果を戻すことになる。本発明の実施態様に応じて、決定ユニットは、前記決定作業を実施するための、コンピュータで解釈可能なインストラクションを含み、そしてソフトウェアのモジュール・ピースとして又はその他のソフトウェア・プログラムの一体部分、例えば分析システムを管理するためのプログラムの一部として実施することができる。決定ユニットは、ラボラトリーのミドルウェア又はLISのプログラム・モジュールの一部として実行することもできる。ソフトウェアの前記モジュール・ピース又は一体化ピースは、分析システムの一体部分であるコンピュータ可読記憶媒体にインストールすることができる。更なる実施態様によれば、決定ユニットは、分析システムの外部に位置していて、ラボラトリー又は病院のIT基盤の一部であるPC又はサーバにインストールされる。決定ユニットの機能は、分析システムの内部データ記憶装置にインストールされた分析システムを管理するためのソフトウェア・プログラム内に組み込むことができる。本発明の更なる実施態様によれば、分析システムの機能は付加的に又は代替的に、分析システムを実行する病院又はラボラトリのミドルウェア又はLIS内に組み込むことができる。決定ユニットがどこにインストールされるか、またこれがソフトウェアの固有部分として実行されるのか又は他のソフトウェア・プログラムの一部として実行されるのかとは無関係に、決定ユニットは、分析システムを実行するインスタンスのLIS又はミドルウェアとして、より高次のソフトウェア・システム内に機能上組み込むことができる。
【0038】
本発明の実施態様に応じて、試料齢を計算するために使用される時点情報を、サンプリング時(例えばラボ関係者の手によって)、又は分析システム内への試料のローディング時及び/又は分析システムに含まれる保存ユニットへの試料のローディング時に導き出すことができる。前記時点が数分だけしか互いに離れていないことを条件として、これらの時点全てを使用して、試料齢を決定することができる。従って試料メタ情報の時点情報は、試料齢を示す任意の時点を表す。
【0039】
時点情報に対する条件は、試料のメタ情報の時点情報が現時点よりも30日超過ぎている場合、試料が「特定の分析を実施するためには使用不能」とみなされるべき、tいう条件であってもよい。現時点とは、前記条件が特定の試料に対して満たされるか否かを決定ユニットが決定する時点である。
【0040】
本発明の1実施態様によれば、分析システムは、それぞれの条件集合が特定の分析に対応する、1つ又は複数の条件集合を含む。各条件集合は、特定の分析タイプを表す、コンピュータで解釈可能なデータ・オブジェクトである分析試験と関連して記憶される。各条件集合は少なくとも、最長試料齢に対する条件を含む。各試料のメタ情報中の時点情報は、試料齢を計算するために、決定ユニットによって使用される。分析要求が特定の試料に対する特定の分析の実施を要求すると、決定ユニットは、要求された分析に対応する条件集合を検索し、要求中に指示された試料のメタ情報を検索し、そして試料のメタ情報の時点情報と現時点とを比較することにより試料齢を計算する。分析システムによって裏付けられる各分析タイプは、1つの分析試験に対応し、この分析試験は、分析試験データ・オブジェクトに対応する分析が有効な結果を戻すことを保証するために、試料によって満たされるべき条件集合と関連して記憶されている。決定ユニットは、分析に対応する条件集合中の試料齢に対する条件中に指示された、特定の分析に対応する最長試料齢を、計算された試料齢と比較する。試料が条件によって許されるよりも古い場合、決定ユニットは、要求された分析のために試料をもはや使用できないことを決定する。試料齢が最長試料齢を超えない場合、決定ユニットは、試料に対する分析の実施が有効な結果を戻すことを決定し、そして分析を開始することになる。時点情報に対して条件を適用する目的は、特定の種類の分析に対する有効な結果を試料齢から考えて期待できる場合にだけ、分析が試料に対して実施されることを保証することである。
【0041】
特定の種類の分析を適用する可能性に対する試料齢の影響について、2つの独立した心臓マーカーのレベルを決定する2つの分析によって説明する。両分析は臨床診断において一般に実施されている。分析は、人間の血清試料中のNT−proBNP及びトロポニンTの濃度を決定する。NT−proBNPは心肺適合のマーカーであり、そして例えば閉塞性睡眠時無呼吸又は心不全の患者を診断するために使用される。トロポニンTは、やはり腎移植受容者における死亡を示す心筋障害のための更なる心臓マーカーである。両方の種類の分析のために使用される血清は、2〜8℃の温度で保存されなければならない。分析の実施後に有効な結果をまだ保証する血清試料の最長保存時間は、トロポニンTレベル分析の場合には1日であり、そしてNT−proBNPの血清レベルを決定する分析のためには6日である。
【0042】
従って、NT−proBNP分析に対応する第1条件集合は、試料が「血清」タイプであることを求める、試料タイプに対する条件、及び試料齢が6日を超えないことを求める、試料齢に対する条件を含む。血清中のNT−proBNTPレベルを決定する分析を表すデータオブジェクトが、本発明の1実施態様によれば、分析識別子677とともにデータベース内に記憶される。試料齢は、決定ユニットが決定を下す時点との組み合わせにおいて、時点パラメータによって決定される。本発明の実施態様に応じて、時点情報はサンプリング日時、試料を分析システム内又は保存ユニット内にローディングする時点であってよい。
時点情報は、試料齢を示す任意の時点であってよい。
【0043】
トロポニンT分析に対応する第2条件集合は、「血清」であるという試料タイプに対する条件、及び1日を超えないという試料齢に対する条件を含む。前記実施態様によれば、血清試料中のトロポニンTレベルを決定する分析に対応する分析試験(データ・オブジェクト)は、識別子58に割り当てられたデータベースに記憶される。
【0044】
第3の分析タイプに対応する第3条件集合は、尿試料が12日よりも古くないことを条件として、尿試料中のトロポニンTレベルを決定する。前記分析に対応する分析試験は、識別子899と関連して前記データベースに記憶される。
【0045】
前記3つの分析に対応する3つの条件集合は次のものを含む:
【表1】

【0046】
試料タイプに関する情報は、本発明の1実施態様によれば、試料のメタ情報中に記憶される。特定の分析のための試料の最長保存期間に関する知識は、前記実施態様によれば、条件集合中に記憶される。他の実施態様によれば、前記条件はより一般的に実施されてもよく、特定の分析と前記分析のための試料の最長保存時間との関連が、別個のデータベース・テーブル又は別個のデータ構造内に記憶されてよい。
【0047】
同じ分析物又は分析物の試料特性を異なる反応物又は異なる分析方法でキャラクタライズする数多くの異なる化学分析が、アナライザによって裏付けられる場合もある。分析物によっては、処置及び使用される試薬のコストに関して、分析処置の持続時間に関して、又は検索された結果の質(定量及び定性測定の質:診断試験の擬陽性及び擬陰性の率)に関して異なる数多くの試験手順が利用可能である。本発明の更なる実施態様によれば、安価な信頼性の低い試験が先ず全ての試料に対して適用され、そして高価な分析が、最初の分析結果が陽性であった試料に対してだけ繰り返される。血液試料中の特定の分析物をキャラクタライズするためにアナライザによって2つの異なる分析が裏付けられる場合、つまり、安価ではあるが高い擬陽性率が妨げとなる分析を表す分析試験44、及び高価ではあるがしかし信頼性が高い分析を表す分析試験342によって裏付けられる場合、条件集合の構造は、前に挙げた条件集合から逸脱しない。
【表2】

【0048】
条件集合を記憶するための記憶構成要素は、本発明の好ましい実施態様によれば、リレーショナル・データベースとして実行することができ、この場合、条件集合がテーブル内に記憶される。リレーショナル・データベースを使用することの利点は、条件集合を追加の条件集合で容易に補足することができ、そしてソフトウェアの再コンパイル又はハードウェアの構成要素を交換することなしに、既存の条件集合の改変も可能であることである。本発明の他の実施態様によれば、条件は非リレーショナル・データベースに含まれ、又はソフトウェア・プログラム内又はファームウェアの一片内にハード・コードされる。本発明の更なる実施態様によれば、分析システムはさらに、前記データ記憶構成要素内の条件集合を改変し補足するために、グラフィカル・ユーザ・インターフェイスをユーザに提供する。
【0049】
本発明の更なる実施態様によれば、条件集合はまた、或る特定の試験にとって重要な、患者の病歴に対する条件を含む。例えば、PCRに基づいてボレリア菌感染の疑いを検証するための診断試験は、極めて感受性が高く、現時点のボレリア菌感染と何年も前に治癒した感染とを区別することができない。患者の病歴から、患者が人生の中でかつてボレリア菌に感染したことが判っているならば、この種類の分析は、潜在的に存在する急性感染から過去の感染の残りを区別することができないので、行われない。さらに事例関連データを考察する実施態様の条件集合は加えて、患者の病歴に対する条件をも含む。分析「ボレリア菌PCR」がID87を有する分析試験によって表されるならば、そして検証されるボレリア菌感染が患者の試料メタ情報の事例データ中にコードされるならば(メタ_情報_コード225)、対応する条件集合は次のものを含む:
【表3】

【0050】
本発明の好ましい実施態様によれば、分析システムは加えて、以下に保存パラメータと称する定義済の条件下で生体試料を保存するための保存ユニットを含む。前記保存パラメータの一例としては、特定の温度、特定の湿度、特定の光度、又は空気組成(例えばO、窒素、又はCO濃度によって示される)が挙げられる。更なる実施態様による保存ユニットは、加えて内蔵式の補足的な保存構成要素、例えば、中に保存された生体試料を連続的又は断続的に旋回、振盪、回転又はその他の形で運動させるシェーカ又はロータを含むことにより、細胞又は試料のその他の成分を浮遊状態に保つこともできる。保存ユニットは、本発明の更なる実施態様によれば、保存ユニットに対して自動的にローディング及びアンローディングするためのユニットと連携している。保存ユニットは、技術的手段、例えば光、湿度、又は温度のためのセンサを含んでおり、これらの技術的手段は、1つ又は2つ以上の保存パラメータをモニタリングする。保存ユニットが、保存時間中に生体試料を運動させるか又はその他の形式で処理するための補s足的な保存構成要素を含む場合、技術的手段の作業と関連する技術的パラメータを、追加の保存パラメータとしてモニタリングして記憶することもできる。
【0051】
本発明の更なる実施態様によれば、前記装置の回転速度及び振盪インターバルは、連続的にモニタリングされ、そして、前記パラメータで保存ユニット内に保存された試料の固有識別子と関連して、データ記憶装置に記憶される。従って、固有試料識別子と関連する保存パラメータは、試料が保存ユニット内にローディングされた時点で始まる、特定の試料の完全な保存履歴を明らかにする。例えば、保存ユニットの冷却装置が故障した場合には、モニタリングされた保存パラメータがそのままの状態を表すので、予定の状態からのこのような逸脱がモニタリングされ、そして分析システムが前記パラメータ下で保存された試料に対する分析要求を受信したら、決定ユニットによって自動的にこのような逸脱を考慮に入れることができる。長時間にわたるシェーカの故障が、特定の分析によって得られる結果の有効性にとって不都合になる場合、連続的な、中断のない振盪過程を必要とする前記分析を表す分析試験と関連して記憶された条件集合に、追加の条件を加えることにより、断片的な振盪履歴を有する試料が分析のために使用されないことが保証される。
【0052】
従って、保存パラメータをモニタリングするためのセンサを有する保存ユニットをさらに含む本発明のいくつかの実施態様の条件集合は、加えて、試料の保存パラメータに関する条件をも含む。例えば、試料が3時間以上にわたって室温で保存されると、尿試料が特定の分析16にとって不適切になる場合、保存_条件_67を、「試料が3時間以上にわたって室温で保存されていない」という条件として定義することもできる。冷却装置が故障し、そして尿試料が3時間にわたって室温で保存されたことになる場合、条件集合7は、前記試料に対する分析試験16を実施するための分析要求を拒絶することになる。分析試験16は、要求された分析を表すデータオブジェクトである。
【表4】

【0053】
本発明の更なる実施態様は、生体試料を保存するための保存ユニットを含んでいる。保存ユニットは、保存状態を連続的にモニタリングし、そして保存ユニット内に保存された試料の固有識別子と関連して前記条件をデータ記憶媒体に記憶するように動作可能である。本発明の前記実施態様のうちのいくつかによって構成された条件集合は、これに加えて、前記例で説明したように、分析要求中に指示された生体試料の保存パラメータに対する条件を含んでいる。試料保存条件の評価は、いくつかの追加の計算ステップを伴うことができる。これらの計算ステップは条件のタイプ、及び影響を与えられる保存パラメータに依存する。本発明の好ましい実施態様によれば、計算ステップは、データベース・クエリー、例えばSQLクエリーとして実行される。本発明の更なる実施態様によれば、計算ステップは、保存ユニットを制御するソフトウェア又はファームウェア・モジュール内にハード・コードされる。
【0054】
以下に、保存パラメータ「温度」に基づく条件67の計算例を示す。条件67は、前記試料の保存温度が、試料の全保存寿命中、3時間よりも長い時間にわたって、室温(20℃)よりも高くてはならないことを求める。本発明の1実施態様によれば、保存ユニットは、保存ユニット内部の1つの温度値をモニタリングして1分毎に記憶媒体、例えばリレーショナル・データベースに記憶する。記憶媒体は、モニタリングされた保存パラメータと時間情報とを含み、時間情報は、それぞれの保存パラメータが測定され記憶された日時を示す。加えて、各試料と関連して、試料が保存ユニット内にローディングされるか、又は保存ユニットからアンローディングされるときにはいつでも追加の保存パラメータとして、タイムスタンプが記憶されている。タイムスタンプは、現在の日時に関する情報を含む。決定ユニットが試料の保存温度に関する条件67が満たされているかどうかをチェックするその時に、決定ユニットは、保存ユニット内に指示された試料が保存されている間にモニタリングされた温度値を先ず決定する。特定の試料にとって重要な温度値だけが検索される。このことは、試料が保存ユニットにローディングされた時点と、試料が保存ユニットからアンローディングされた時点との間に存在する測定時間と関連する温度値だけに対処するSQLクエリーを形成することにより達成される。2日間にわたって保存ユニット内に保存された試料の温度保存パラメータは、前記実施態様によれば、2x24x60=2880のエントリを含み、各エントリは、特定の時点における保存ユニット内部の測定温度値を表す。前記試料に対する分析要求が決定ユニットによって受信される場合、決定ユニットは、保存ユニットの全ての保存パラメータを記憶している記憶媒体にアクセスする。保存パラメータ・データベースに対して実施されるSQLクエリーは、試料が保存ユニット内に保存されていた時間窓内で測定された全ての温度エントリを先ず検索することができる。次のステップにおいて、20℃(室温)以上の温度値を有する温度エントリの数がカウントされる。20℃以上の温度値を有する検出された温度エントリーの数が180(3時間は180分である)を上回る場合、特定の分析のための温度保存パラメータに関する条件は満たされておらず、そして対応試料は、条件_67が試料によって満たされることを必要とするその試料に対して分析を有効に実施するには不適切であると考えられる。
【0055】
試料のローディング及びアンローディングに対応するタイムスタンプ情報を介した保存パラメータの測定中に、保存ユニット内に保存された試料に対して保存パラメータを関連付けることは、本発明の1つの可能な実施態様にすぎない。試料と保存パラメータとの上記関連付けは有益である。それというのも、保存パラメータは、単一の試料毎に一回記憶されればよく、複数回記憶される必要がないからである。しかし、本発明の他の実施態様は、種々の実地の理由から、前記実施スキームから逸脱することがある。保存パラメータの測定中に保存ユニット内に保存された試料(又はそれぞれの固有識別子)に保存パラメータを割り当て得ることが保証される限り、他の実施アプローチも可能であり、本発明の思想及び範囲を満たす。
【0056】
本発明の更なる実施態様による分析システムは、特定の試料に対する分析要求の受信に応答して、指示された試料に対して実施される、要求された分析が有効な結果をもたらすかどうかを決定するための決定ユニットを含む。アナライザが唯1つの種類の分析を裏付ける場合、要求される分析は、必ずしも分析要求内で明確に指定される必要はない。アナライザが数多くの異なる種類の分析を裏付ける場合には、分析の要求される種類は、分析要求内で指定されなければならない。決定ユニットは、分析要求を受信すると以下のステップを実施する:
1. 試料識別子を決定し、そして妥当ならば、分析要求に従って実施されるべき分析を表す分析試験を決定する。
2. 固有試料識別子から考えて試料のメタ情報を検索する。メタ情報は、メタ情報が記憶されている記憶媒体から読み取ることができる。メタ情報は、時点情報に加えて、試料のタイプに関する情報を含んでいてよい。
3. 試料のメタ情報内に含まれる時点情報と現在の日時との間の期間を計算する。この期間は試料齢を表す。好ましい実施態様によれば、時点情報は、試料調製時、分析装置への試料のローディング時、又は保存ユニットへの試料のローディング時を表す。前記実施態様による試料の計算される期間は、僅かに異なって測定された試料齢を表す。
4. 条件集合を含む記憶媒体にアクセスする。
5. 分析されるべき試料の保存パラメータ及びメタ情報、例えば試料齢、試料タイプ、保存温度、患者の病歴が、要求された分析の種類に対応する条件集合の条件を満たすかどうかを評価する。対応する条件集合が満たされている場合には、決定ユニットによる評価の結果はポジティブである。すなわち、要求された分析が、指示された試料に対して実施されると、有効な結果を期待することができる。
6. 決定ユニットがポジティブの結果を戻した場合には、決定ユニットは、分析のコントローラへ命令を出し、コントローラがアナライザを始動させるようにする。アナライザは次のステップで、試料に対して分析を実施し、そしてその結果をコントローラに戻す。
7. 要求された分析が、要求された試料に対して実施できないと決定した場合(有効な結果を信頼性高く期待することができない)、決定ユニットは、要求された分析を実施することができないというメッセージを戻す。メッセージは、試料によって満たされなかった条件を含む。
【0057】
保存条件をモニタリングするためのインターバルが1分間ではなく2分間である場合、特定の条件の有効性をチェックするコンピュータ処置、例えばSQLクエリーは、相応に適応されなければならない。
【0058】
本発明の更なる実施態様によれば、条件集合を含むデータ記憶装置は、メタ情報を含むデータ記憶装置、及び試料の保存パラメータを含むデータ記憶装置とは物理的(別のハードウェア構成要素によって提供される)又は論理的(別のデータベース又はデータ記憶構造によって提供される)に区別される。本発明の1実施態様によれば、保存ユニットは、試料の保存条件を記憶するためのそれ自体のデータベースを含んでいる。前記データベースは、本発明の実施態様に応じて、LISによって提供されたユーザ・インターフェイスを介して、又は、分析システム及びラボラトリ内で使用されるIT基盤の他のハードウェア又はソフトウェア構成要素を介して、アクセス可能である。
【0059】
本発明の更なる実施態様によれば、試料の保存パラメータ及びメタ情報は、唯1つの記憶媒体内に含まれていてよい。更なる実施態様によれば、前記記憶媒体は、加えて条件集合を含むこともできる。本発明の好ましい実施態様によれば、条件集合、試料メタ情報、及び保存パラメータは、リレーショナル・データベース、例えばOracle、MySQL又はPostgreSQL データベースに記憶される。本発明の更なる実施態様によれば、決定ユニット内の評価過程のために必要とされる前記データ、条件及びアルゴリズムは、決定ユニットのソフトウェア又はファームウェア内にハード・コードされる。
【0060】
本発明の種々の実施態様が存在し、実施態様によっては、試料齢を計算するための時点情報として、試料が分析システム内にローディングされた時点を用いるものがある。本発明の他の実施態様によれば、サンプリング時点、又は試料が保存ユニット内にローディングされた時点が、試料齢を計算するために用いられる。
【0061】
特定の分析のために試料を使用できるか否かを評価するために決定ユニットによって使用される条件集合は、試料のために利用できるだけの多くの情報を考慮に入れ、情報を決定ユニットによってチェックすることを保証するために、好適に選択された条件集合を含んでいなければならない。保存ユニットによってモニタリングされた保存パラメータは、保存された試料及び保存ユニットのタイプに応じて変化することもある。本発明のアナライザは、実施態様によっては唯1つの分析タイプを裏付けるのに対して、分析システムの他の実施態様は、複数の異なる分析を裏付けるアナライザを含む。ラボラトリのワークフローは数多く複数であるので、条件及び規則の集合は、例えば分析システムに含まれるアナライザ及び保存ユニットのタイプに応じて異なることがある。保存パラメータが利用可能ではあるがしかし、特定の分析にとっては重要でない場合、対応条件集合は、その特定の保存パラメータのための条件を含む必要はなく、又は条件が、計画された分析を決して妨害しないように定義されてもよい。各条件集合の複雑さ及び内容は、保存ユニットによって提供される保存パラメータ、及び特定の保存条件に基づいて検出されるべき特定の分析物の感受性に依存する。例えば、ほとんどの分析は、細菌又は他の生物による生体材料の劣化を防ぐために、試料が低温で保存されることを必要とする。分析物によっては日光に曝されると劣化するおそれがあるので、これらの分析物のレベルを検出する分析の際には、保存ユニットの光度は重要なパラメータである。
【0062】
更なる実施態様によれば、保存ユニット、アナライザ及び前処理ユニットは、搬送ラインを含む唯1つのブロック・デバイスの構成要素である。搬送ラインは、それに沿って試料が分析システムの1つのユニットから他のユニットへ、例えば保存ユニットからアナライザへ、またその逆に搬送されるラインである。本発明の実施態様によっては、試料はこの搬送ラインに沿って完全に自動的に搬送される。試料の保存パラメータ、及び試料が分析システム及び保存ユニットに対してローディング及びアンローディングされる時点をモニタリングすることと組み合わせてこのような自動化を行うことの目的は、試料の全過程連鎖中の全ての関連条件を完全に文書化することである。このような自動化及びモニタリングは、試料の手作業による取り扱いとは異なり、試料を分析システムにローディングするステップで始まる全過程連鎖が、その試料に関して文書化されることを保証する。保存ユニットからアナライザへ、そしてその逆方向の試料の移動は、医療当業者、例えば医師が試験を繰り返すか又は追加の試験を試料に対して実施すると決めるかどうかに応じて、一回又は複数回行われてよい。典型的には、試料が分析システムの1構成要素から次の構成要素へ至るまでの途中にある期間は分単位で測定することができるのに対して、試料保存時間は数日から数ヶ月又は数年である。前記実施態様のアナライザ及び保存ユニットは冷却されるのに対して、分析システム構成要素間で試料が交換される分析システムの搬送ラインの温度は室温である。このように、数分間にわたる搬送ライン分析システムの条件の影響は、保存ユニット内の保存パラメータの影響と比較すると取るに足らないものと考えることができる。
【0063】
本発明の好ましい実施態様によれば、1つ又は複数の試料が分析システム内にローディングされる。試料が分析システム内にローディングされた時点は、試料の固有識別子と関連して記憶媒体に記憶される。実施されるべき分析に応じて、試料は前処理ユニット内に先ずローディングされてよく、ここでアナライザ内の特定の分析のために試料を調製する目的でキャッピング又は脱キャッピング、アリコート化、又は他の形の処理を施される。次いで、試料に対して第1の分析が実施される。本発明の好ましい実施態様によれば、アナライザは、分析実施に適した温度であると同時に、分析された試料の長い保存寿命を保証する温度に冷却される。分析完了後、試料は搬送ラインを介してアナライザから保存ユニットに移される。本発明の実施態様によっては、試料は、アナライザから保存ユニットへ戻る途中で前処理ユニット内にローディングされ、この場所で保存のために前処理(例えばキャッピング)される。保存ユニットは、試料が保存ユニット内にローディングされた時点及び日付(タイムスタンプ)を検出し、そして前記タイムスタンプを、ローディングされた試料の固有識別子と関連して記憶する。タイムスタンプは、記憶装置のソフトウェア構成要素によって、又は記憶装置に日時情報を提供するクロック機能を備えた別個の装置から受け取ることができる。
【0064】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記移動ステップは、各試料の処理パイプラインの完全な文書化を保証するために、分析システムによって全自動式に実施されることに注目することが重要である。
【0065】
保存ユニットに保存された試料を、今や、1つ又は複数の分析のために要求することができる。例えば、医師は第1の分析の結果に基づいて、分析を繰り返すべきであるか、又は別の追加の分析を実施するべきであることを決めたならば、医師は分析システムに分析要求を送信することができる。要求は、決定構成要素によって受信される。決定ユニットは、分析要求中に指示された固有試料識別子と関連して記憶されたメタ情報及び保存パラメータを読み取る。加えて、決定ユニットは、要求された分析に対応する条件集合を読み取る。決定ユニットは、要求された分析に対応する条件集合の全ての条件が、メタ情報内及び試料の保存パラメータ内に指定されたパラメータによって満たされているか否かをチェックする。全ての条件が満たされている場合、決定ユニットは、保存ユニットからのそれぞれの試料のアンローディング、アナライザへの試料の移動、及び試料に対する特定の分析の実施を開始する。この第2の分析の完了後、試料は保存ユニットに戻される。保存ユニット内への試料のローディングのタイムスタンプが再び認識され、そして試料の固有識別子と関連して記憶される。任意には、分析の前後に前処理ステップが試料を処理していてもよく、例えば分析前にキャップを除去し、そして分析後にキャップを付加していてもよい。
【0066】
本発明の実施態様の具体的な利点は、特定の試料及び特定の分析に対する要求が有効な結果をもたらすことを期待できるか否かを前もって決定する可能性がユーザに提供されることである。決定ユニットは、条件集合、試料のメタ情報、具体的には試料齢を示す時点情報、及び保存パラメータを使用することにより、要求された分析が特定の試料に関する有効な結果を戻すか否かを予測する。システムが、特定の分析と関連する条件集合の1つ又は2つ以上の条件が試料によって満たされないことを決定した場合、分析は実施されない。決定ユニットは分析を実施しない理由に関する情報、例えば試料があまりにも古かったという理由、又は保存条件が不適切であったという理由を含むメッセージを戻す。ユーザは次いで、新しい試料を取り出すか、この試料に対してまだ適用できるかもしれない他の分析のために試料を保存するか、試料を廃棄するか、又はこのメッセージにもかかわらず分析を実施するかを決めることができる。この試料は、患者の健康状態の診断に関係ない分析のために、例えばテスト又はトレーニングの目的で、まだ使用できる場合がある。
【0067】
試料が特定の分析のために使用可能であるかどうかを決定ユニットによって自動的に決めることは、ラボラトリの作業を軽減し、コストを削減する。すなわちラボ関係者は、試料を特定の分析のためにまだ使用できるか否かとは無関係に、所定の期間後に全ての試料を廃棄する必要はない。保存パラメータをモニタリングすること、及び決定ユニットにより前記パラメータを考慮に入れることは、前記目的のための更なる有益な態様である。保存パラメータの自動的なモニタリングは、試料の指定された保存パラメータからの逸脱を検出することを保証する。
【0068】
本発明の実施態様はコストを軽減する助けとなる。なぜならば特定の試料に対する要求された分析が、分析要求中に指示された試料の保存時間及び条件から考えて有効な結果を戻さないであろうことを、決定ユニットが検出したならば、要求された分析は実施されないからである。このような情報は従来技術の知識に従えば、ラボ関係者によって検討されることはなく、又は2、3日後又は数週間後にラボ関係者が試料を廃棄するという点においてのみ検討された。廃棄が結果的に行われなかった場合、又は保存条件がラボ関係者の認識なしに、最適保存条件から著しく逸脱した場合、期限切れ試料に対して分析が行われてしまったかもしれない。前記の事例では、分析実施後、得られた結果が明らかに間違っている場合にのみ、間違った分析結果を検出することができる。分析結果は間違っているものの、間違いが明らかなものではなかった場合には、誤った分析結果に基づいて患者に対する診断及び治療も誤ったものになってしまったおそれがある。
【0069】
本発明の実施態様は、前記エラー源を回避するのを助け、そしてモニタリングされたサンプリング処理パイプラインを提供することにより、生体試料の取り扱い、管理及び分析に必要な時間及び労力を軽減するのを助ける。すなわち、分析システムの決定ユニット内の決定ロジックが、特定の試料に対して、要求された分析を適用し得ることを保証する。
【0070】
本発明による分析システムの目的は、試料の取り扱い及び分析のワークフローを最適化すること、及び、生体試料に関して得られた分析結果の質及び信頼性を改善することである。本発明の実施態様は、大企業、病院、及び中小ラボラトリにおける生物医学的診断の文脈において用いることができるが、しかし、薬理学及び生物医学的な研究又は法医学の文脈において用いることもできる。従って、本発明の実施態様は、分析システムのサイズ、アナライザによって裏付けられる分析の数及びタイプ、システムが取り扱い保存することができる試料管のタイプ及び数、前処理ユニットの存在、及び、分析システムが適応しているラボラトリの要件に依存する更なる細部に関して変化する。
【0071】
本発明の更なる実施態様によれば、決定ユニットの作業及び条件集合は、保存ユニット内に保存された生体試料の齢を決定する、例えば1時間毎又は毎日実施される自動評価を可能にするように改変することができる。前記評価において、ラボラトリの要件又は分析システムによって実施されるべき分析に応じて、一定期間、例えば1週間又は2、3日よりも古い全ての試料が廃棄される。この実施態様は、数多くの異なる分析及び対応する利用可能な有効期限に関して試料齢を予め評価することを必要としない、唯1種類の分析を実施する分析システムにとって特に有利である。それぞれの自動評価処置が行われると、少なくとも試料の保存状態がチェックされ、理想的な保存状態からの逸脱が検出される。著しい逸脱が検出される場合、具体的には冷却連鎖の中断が検出されると、試料を、これらに対する分析を実施するためにもはや使用するべきではないという警告がラボ関係者に戻される。更なる実施態様によれば、決定ユニットは、前記所定の期間よりも古い全ての試料、又は有効な分析結果を保証するのに不適切な保存状況下で保存された試料の自動的な廃棄を開始する。更なる実施態様によれば、追加の条件、例えば事例関連データが、それぞれの自動評価過程実施時にさらにチェックされてよい。
【0072】
ラボラトリの要件に応じて、特定の分析のための試料の使用可能性を、その齢、その保存条件、及び更なるパラメータから考えて決定する決定ユニットの決定ロジックを、下記種々異なるハードウェア環境内に組み込むことができる:
・ 本発明の1実施態様によれば、決定ユニットは、分析後試料保存システムの一部であってよい。分析後試料保存システムは、異なるタイプの種々の生体試料を保存する装置である。分析システムの1実施態様によれば、分析後システムは、27,000個の試料のための保存ユニットを含む。保存条件はモニタリングされ、そして分析後システム内に含まれる記憶媒体に自動的に記憶される。分析後保存ユニットは、LISに接続することができる。分析後保存ユニットに記憶された保存パラメータ及び試料の識別子は、LISを介してアクセスし、そしてLIS内に組み込むことができる。システムは1時間当たり最大400個の試料を保存ユニット内にローディングすることができる。
【0073】
・ 更なる実施態様によれば、分析後保存ユニットは、病院のラボラトリのイントラネットに接続され、そして病院のIT基盤/ミドルウェア内に組み込まれる。イントラネット又はLISとのデータ交換は、HL7プロトコルを介して実施される。分析後システムは別個のRocheアナライザに接続することができる。
【0074】
分析後保存ユニットと別個のRocheアナライザとは、組み合わされた状態で、試料のワークフローを自動的に管理してモニタリングするための完全分析システムを形成する。本発明の更なる実施態様によれば、保存ユニットと分析ユニットとの間の試料の交換は、手作業によって、すなわちラボ関係者によって達成される。本発明のこの実施態様は、完全にモニタリングされ制御された試料ワークフローという利点を欠いているものの、保存条件をモニタリングし、試料の保存時間を自動的に決定し、そして特定の種類の分析のための試料の使用可能性について自動的に決定するという利点をなおも含んでいる。決定ユニットは、保存ユニット内の特定の試料に対する分析要求が出された場合、要求された分析が有効な結果をまだもたらすか否かを決定する。
【0075】
・ 本発明の更なる実施態様によれば、決定ユニットはアナライザの一部であり、アナライザは保存ユニットに接続可能である。前述のように、本発明のそれぞれの実施態様に応じて、アナライザとサンプラとの間の完全にモニタリングされ自動化された試料処理パイプラインが可能であり、また半自動式の試料取り扱いも可能である。決定ユニットは、試料の保存パラメータ及び保存時間から考えて特定の試料の分析が行われるべきか否かを、アナライザによって受信された分析要求について決定する。
【0076】
・ 本発明の更なる実施態様によれば、決定ユニットは、アナライザの一部でも保存ユニットの一部でもなく、例えば、病院又はラボラトリのイントラネットに接続されたサーバ上に記憶されたソフトウェアの別個の独立した部分である。決定ユニットは、ここではWork Area Manager (WAM)と呼ばれるソフトの一部である。決定ユニットは、独立したソフトウェア・モジュールであってよく、又はそれぞれのラボラトリのIT基盤の中央ラボ・データ管理システム及びミドルウェアの一部であってもよい。前記実施態様によれば、決定ユニットは、ラボラトリ・ミドルウェア・システムを介して送信された特定の試料に対する全ての分析要求に関して、要求された試料の保存時間及び更なる保存パラメータ及びメタ情報から考えて分析が実施されるべきか否かを決定する。
【0077】
・ 更なる実施態様によれば、決定ユニットはまた、例えば病院又はラボラトリのイントラネットに接続されたサーバ上に記憶されたソフトウェアの別個の独立した部分である。前記シナリオに基づく決定ユニット・ソフトウェアは、病院又はラボラトリのLaboratory Information System LIS内に組み込まれる。前記実施態様によれば、決定ユニットは、LISによって管理される試料に対する全ての分析要求に関して、要求された試料の保存時間及び更なる保存パラメータ及びメタ情報から考えて分析が実施されるべきか否かを決定する。決定ユニットの場所とは無関係に、決定ユニットが記憶媒体にアクセスすることができ、この記憶媒体には、特定の試料の固有識別子と関連する保存パラメータ及びメタ情報が記憶されていることが保証されなければならない。決定ユニットはまた、条件集合を含む記憶媒体にアクセスできることが必要である。本発明の実施態様に応じて、試料メタ情報、保存パラメータ、及び条件集合のための記憶媒体は、異なるハードウェア・モジュール内に配置された別個の保存ユニット、例えば別個のデータベースであってよい。本発明の他の実施態様、具体的には決定ユニットがLISの一体部分である実施態様によれば、データ・レポジトリの全て又はいくつかは分析システムのハードウェア構成要素(例えば保存ユニット又はアナライザ)から接続解離されてよく、そして別個のデータベース・サーバに含まれてよい。
【0078】
本発明の実施態様によれば、物理的ネットワーク、例えばEthernet(登録商標)が、分析要求、分析結果、及び決定ユニットによって送信されるメッセージを伝送するために利用される。別個のインターフェイスを、種々の種類のデータの伝送のためのネットワーク伝送プロトコルの論理層上で実行することができる。例えば、試料識別子及び要求の伝送のためにHL7インターフェイスを使用することにより、試料識別子、及び試料識別子によって識別された試料に対して特定の分析を実施するための要求を、データ・マネージャ・アプリケーション・プログラムから、要求された分析を実施することになっているアナライザのアナライザ制御コンピュータへ伝送する。
【0079】
本発明の実施態様を、図面を参照しながら、より詳細に一例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の分析システムの1実施態様を示すブロック・ダイアグラムである。
【図2】図2は、本発明の方法の1実施態様を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の分析システムの更なる実施態様を示すブロック・ダイアグラムである。
【図4a】図4aは、本発明の分析システムの更なる実施態様を示すブロック・ダイアグラムである。
【図4b】図4bは、本発明の分析システムの更なる実施態様を示す図である。
【図5】図5は、本発明の分析システムの更なる実施態様を示すブロック・ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、本発明の分析システムの実施態様を示している。分析システムは、生体試料に対して複数の異なる分析を実施するように動作可能なアナライザ106を含んでいる。アナライザ106は、コントローラ105によって制御される。コントローラ105はアナライザに命令を送信するように働くことができ(図面では矢印で示されている)、これにより分析開始をトリガする。システムはさらに前処理ユニット104を含んでおり、前処理ユニット104内で、試料が保存及び分析のために調製される。図示の実施態様によれば、試料はキャッピングされた状態で保存ユニット107に保存される。保存ユニットは、保存パラメータをモニタリングするための1つ又は2つ以上のセンサ125、例えば温度計と、測定された保存パラメータ123を、データ記憶装置119内の測定時点を示すタイムスタンプと関連して記憶するための、この実施態様ではリレーショナル・データベースとを含む。システムはさらに決定ユニット109を含んでおり、決定ユニット109は、条件集合124を含有するデータベース120からデータを読み取るように、データベース119から特定の試料に対応する保存パラメータを読み取るように、そして特定の試料に対応するメタ情報126をデータベース118から読み取るように動作可能である。分析システムはさらに、分析要求を受信するためのインターフェイス122を含んでおり、分析要求は、固有試料識別子を介して分析されるべき試料、及び実施されるべき分析を指示する。唯1つの分析を実施するように動作可能なアナライザを含む本発明の他の実施態様の場合、分析要求は、アナライザ106によって実施されるべき分析の種類を指示するデータを必ずしも含まなくてよい。
【0082】
システムはさらに、試料メタ情報126を記憶するデータベース118を含む。メタ情報は少なくとも時点情報114を含む。図示の実施態様による時点情報は、試料100が分析システム102内にローディングされた日付及び時点(タイムスタンプ)、及びレシーバによって読み取られるそのラベルを示す。他の実施態様によれば、時点情報114は、試料が保存ユニット107内にローディングされた、又は患者から採取された時点を示す。前記2つの実施態様によれば、時点情報は、試料のローディング時に保存ユニットの構成要素によって自動的に決定することができ、或いは、患者からの試料の採取時にラボ当業者によって手動で決定することができ、そして時間情報を、LISによって提供されたGUIを介して試料のメタ情報に加えることができる。
【0083】
図示の実施態様によれば、固有試料識別子101はバーコードであり、バーコードは試料100にとって固有のものであり、そして試料タイプ(血液、尿)及び患者番号を示す。バーコードは、システムの更なる構成要素である、固有試料識別子のレシーバ103によって読み取られる。このレシーバ103は、分析システム内にローディングされた試料のバーコードを読み取るように動作可能である。図示の実施態様によれば、一組のプログラム・インストラクション108は、試料の識別子が構成要素103によって読み取られた現在の日時を受信する。プログラム・インストラクション108はこの時点情報を試料100の固有識別子に割り当て、そしてこの情報をデータベース118に記憶する。各試料100の試料メタ情報126は少なくとも前記時点情報114を含んでいるが、しかし加えて、患者に関する更なる情報及び患者の病歴(事例データ116)、及び試料タイプに関する情報115を含んでいてもよい。
【0084】
試料のラックをローディングする本発明の更なる実施態様(図示せず)によれば、固有試料識別子のレシーバ103は実際に、固有試料ラック識別子、例えばラック・バーコード・ラベルを読み取り、そしてラック識別子と固有試料位置とを含む複合固有識別子を生成するために、ラック内の試料の位置を使用する。データベース120内に記憶された条件集合124は、特定の分析のために使用可能であると決定ユニット109によって考えられるように試料によって満たされなければならない条件である。各条件集合は少なくとも、試料の時点情報114に対する条件を含み、そしてアナライザ106によって裏付けられた1つの特定の分析に対応する。特定の分析のための各条件集合は加えて、更なるパラメータに対する条件、例えば試料の保存パラメータ、又は試料に関連する事例データに対する条件を含んでいてよい。保存ユニット107内の試料の保存中にモニタリングされている試料メタ情報126及び保存パラメータは、試料の固有識別子と関連してデータベースに記憶される。
【0085】
「関連して (in association)」という表現は、例えばデータベース・テーブル内の外部キー及び適切なSQLクエリーに基づいて、メタ情報及び保存データを特定の試料に割り当てることが可能であることを意味する。試料メタ情報126及び保存パラメータ123を固有試料識別子101を介して特定の試料100に割り当てることが、図1の2つの破線によって示されている。分析システムはさらに、分析要求を受信するためにインターフェイス122を含んでいる。インターフェイスはタッチスクリーン・モニタであってよい。タッチスクリーン・モニタは分析システムの一体部分であり、そしてラボ関係者がアナライザ・システムの一体的なハードウェア構成要素を介して分析要求を直接に指定するのを可能にする。加えて、分析システムは、ネットワーク、例えば病院のイントラネットを介して分析システムに接続されたコンピュータにインストールされたデータ・マネージャ・アプリケーション・プログラムを介して、システムに遠くからアクセスするためのインターフェイスを含む。分析要求112は、データ・マネージャ・アプリケーション・プログラムを介して前記コンピュータ上で定義することができる。次いで、分析要求112は分析システムのネットワーク及び適切なハードウェア・インターフェイス、例えばEthernet(登録商標)カード(図示せず)を介して、分析システム102のマシン−マシン・インターフェイスに送信される。
【0086】
更なる実施態様によれば、分析要求112は、分析システムのマシン−マシン・インターフェイスと相互操作可能なラボラトリLISのソフトウェア内で特定されてよい。便宜上、そして図1を理解しやすくするために、マン−マシン・インターフェイス、例えばタッチスクリーン・モニター、及びマシン−マシン・インターフェイス、典型的にはアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)は、分析要求を受信するための「インターフェイス」112としてひとまとめにする。図示の実施態様のインターフェイスは加えて、分析要求を出すインスタンス、例えばタッチスクリーンに要求を入力した人間、又はラボラトリのLISのリモート・コンピュータ上のコンピュータ・プログラムにメッセージを戻すことができる。メッセージは、要求された分析を実施することができるか否か、そしてネガティブな結果の場合には、なぜ分析を要求された通り実施することができなかったかを示すデータを含む。
【0087】
以下に、試料の処理及び分析の典型的なワークフローを提示する。
【0088】
試料100は分析システム102内にローディングされる。ローディング過程中、試料の固有識別子101は構成要素103によって読み取られる。分析システムの構成要素108は、現時点のタイムスタンプを、試料の受信された固有識別子に割り当てる。構成要素103は加えて、試料のバーコード・ラベルから追加の情報、例えば試料のタイプを読み取っている場合があり、或いは、患者データを含むデータベースから患者の病歴に関する追加の情報を読み取っている場合もある(図示せず)。
【0089】
試料を分析システム内にローディングした時のタイプスタンプを含む、集められたメタ情報は、システム構成要素108によってデータベース118に記憶される。メタ情報は、これを対応試料の固有識別子に関連させ得ることを保証するように記憶される。試料は次のステップで、必要な場合には前処理ユニットに移され、ここで分析のために脱キャッピングされる。本発明の他の実施態様では、前処理ユニットがない場合がある。次いで、試料はアナライザ106に移され、そして第1の分析が実施される。決定ユニット109は、第1の分析の実施の前に、分析がこの試料に対して有効な結果をもたらすか否かについて問い合わされている場合がある。試料が分析システム内にローディングされたばかりなので、試料齢を示すタイムスタンプはこのシナリオによれば、分析システムへの試料のローディングの直前に試料が患者から導出されたという条件で、分析を実施できることを保証することになる。従って、決定ユニットは、本発明の他の実施態様によれば、第1の分析を実施できるか否かを決定するように要求される必要はない。
【0090】
第1の分析がアナライザ106内で実施された後、試料は前処理ユニットに戻され、この場所でキャップが試料に保存のために付加される。ここでもまた、このキャッピング・ステップの実施は、いずれの場合にも強制的ではなく、本発明の他の実施態様では行われない場合がある。
【0091】
最後に、試料は保存ユニット107に移され、保存ユニット内にローディングされる。ここでもまた、試料が保存ユニット107内にローディングされた時点を示すタイムスタンプが受け取られ、固有試料識別子と関連してデータベース119に記憶される。試料が保存ユニットからアンローディングされる場合、再びタイムスタンプが受け取られ、試料の識別子と関連して記憶される。図面では「保存パラメータをモニタリングするためのセンサ」125としてひとまとめにした1つ又は複数のセンサは、保存ユニット(107)内部の保存パラメータ、例えば温度、酸素濃度、又は湿度を、そしてさらに追加の技術的パラメータ、例えばシェーカの回転速度をも連続的に(例えば1分毎)モニタリングする。検索された保存パラメータはデータベース119に記憶される。特定の温度のそれぞれの値は、パラメータ測定の日時と関連して記憶される。
【0092】
保存パラメータとタイムスタンプ情報とを関連付けることは、保存ユニット107に対する試料のローディング及びアンローディングのタイムスタンプ情報と組み合わせて、保存ユニット107内に保存された各試料毎に、特定の試料にとって重要な保存パラメータを検索できることを保証する。医師が患者の第1の分析の結果を評価し、そして分析を繰り返すか、又は例えば第1の診断を検証するために、第2の異なる分析をその試料に対して行うべきであるという結論に達した場合には、医師はインターフェイス122を介して、分析要求112を分析システムに出すことができる。患者を扱う医師は典型的には病院の診断部門では働かないので、前記使用事例シナリオによれば、医師は職場のコンピュータから分析要求を出すことになる。前記コンピュータは、病院のLISを介して、又は病院のミドルウェアを介して、マシン−マシン・インターフェイス122に接続されている。
【0093】
別の使用事例シナリオによれば、ラボ作業者が、第2の分析を特定の試料に対して行うことを決定する。このシナリオによれば、ラボ作業者は、マン−マシン・インタフェイス122、例えば分析システムの一部であるタッチスクリーン・モニターを介して分析要求を分析システムに直接に入力することができる。分析要求は、分析が実施されるべき試料を示すデータ、例えば試料101の固有識別子、及び実施されるべき分析のタイプを示すデータを含む。分析要求は、インターフェイス122によって受信され、決定ユニット109に進められる。決定ユニットは、指示された試料識別子及び分析を要求から抽出し、そして指示された試料に対応する追加のデータ、例えばメタ情報126をデータベース118から、そして試料の保存パラメータ123をデータベース119から読み取る。加えて、決定ユニット109は、分析要求中に指示された分析に対応するデータベース120内に記憶された情報集合124から条件集合を読み取る。
【0094】
本発明の他の実施態様は、唯1つの分析タイプを裏付けるアナライザ106を含む。このような分析システムの場合、分析のタイプは必ずしも、アナライザによって裏付けられた唯1つの分析として分析要求中に指示されなくてもよい。全ての必要なデータを検索された後、決定ユニットは、全ての条件が満たされているか否かをチェックする。具体的には、決定ユニット109は、(時点情報114及び検査過程の現時点を用いて決定ユニットによって計算された)試料齢が、試料に対して実施される、要求された分析が有効な結果を戻すのをまだ可能にするか否かをチェックする。加えて、要求された分析にとって重要である理由から前記分析のための条件集合内に含まれる保存パラメータに対する条件をチェックすることにより、保存パラメータが例えば所要の最適保存温度又は所要の酸素レベルから著しくは逸脱していないことを保証する。メタ情報内に指示された試料タイプ115が、要求された分析タイプに対応するかどうかもチェックされる(血液試料に対して実施されるように適応された分析は、尿試料に対して実施されるとおそらく失敗する)。要求された分析のための条件集合が、事例データ、例えば患者の病歴、患者の年齢などに対する条件をも含む場合、これらの条件もまた、決定ユニット109によってチェックされる。チェックされた全ての条件が満たされている場合、決定ユニットは、保存ユニットからの要求された試料のアンローディング、脱キャッピングのための前処理ユニットへの移動、及びアナライザ106への移動を開始する。
【0095】
決定ユニットは、要求された試料に対する要求された分析を開始する命令を、コントローラに送信する。分析完了後、試料は保存ユニット107内に戻され、この場所で、保存ユニットに試料をローディングすると、再びタイムスタンプが受け取られる。1つ又は複数の条件が試料によって満たされない場合には、決定ユニットは、試料によって満たされなかった条件を示すメッセージを、インターフェイス122を介して戻す。
【0096】
試料が決定ユニットによって、要求された分析の実施にとって不適切であると考えられた場合には、ユーザは、決定ユニットによって戻されたネガティブな結果にかかわらず、要求された分析を開始するという選択肢を取ることもできる。例えばテスト又はトレーニングの目的で、このような試料は使用可能であることもあるが、このような種類の試料に関して戻された結果は、診断、又は患者の健康にとって重要な他の決定のための根拠として使用することはできない。
【0097】
図2には、本発明の更なる実施態様に基づく、試料の処理及び分析の他の可能なワークフローが記載されている。図2に示されたワークフローについて、図1に示された分析システム構成要素を参照しながら説明する。ステップ201において、試料100を分析システム102内にローディングする。実際には、サンプル・ラックの形で複数の試料をローディングすることもできるが、しかしワークフローはその態様によって影響を及ぼされることはない。次のステップ202において、試料の固有識別子が、例えばバーコード・リーダ、又はバーコード・ラベルを読み取るRFIDチップ・リーダ、又は試料に取り付けられたRFIDチップによって受信される。
【0098】
本発明の実施態様に応じて、固有識別子は、ラックにとって又は特定の患者にとって固有ではあるが、しかし試料及び追加の情報、例えばラック内部の試料の位置にとっては固有ではないバーコードから成っていてよい。ステップ203において、メタ情報を試料に割り当て、そしてステップ204においてデータ記憶装置に記憶する。具体的には、メタ情報は、試料を分析システム内にローディングする時点を示す時点情報を含む。メタ情報123は、試料タイプ及び事例データに関する情報を含んでいてもよい。分析システム内にローディングされた試料は、図示の実施態様によれば、ステップ205において前処理ユニット104内で前処理される。前処理ユニット及びステップ205は、本発明の他の実施態様では存在しなくてもよい。
【0099】
図2に記載された本発明の実施態様によれば、試料は第1の分析のためにすぐには使用されず、保存ユニット107に移される。ステップ206において、試料を保存ユニット内にローディングする。このステップは、本発明の実施態様によっては、保存パラメータを試料に後で割り当てることができるように、試料を保存ユニット内にローディングした時点のタイムスタンプを受け取ることを含む。1つ又は複数の保存パラメータ、例えば保存ユニット内部の温度が、例えば1分毎に保存パラメータを測定することにより、連続的にモニタリングされる(ステップ207)。検索される保存パラメータは、ステップ208において、データ記憶装置に記憶される。本発明の実施態様によっては、保存パラメータは、それぞれのパラメータの測定時点を示すタイムスタンプ情報と関連付けられる。
【0100】
保存時間中にモニタリングされた保存パラメータに特定の試料を関連付けることは、他の実施態様によれば、タイムスタンプ情報に基づいてはおらず、例えば試料識別子だけに基づいている。従って、タイムスタンプ情報を各保存パラメータと関連付け、そして保存ユニットに対する試料のローディング及びアンローディングのタイムスタンプを決定して記憶することは、保存パラメータを試料に割り当てるための技術的に有利な解決手段である。しかしながら前記解決手段は、唯一可能な実施形態というわけではない。本発明の他の実施態様は、各保存パラメータ測定値を特定の識別子に割り当てることができる。この識別子は、生体試料の識別子と関連して記憶される。
【0101】
特定の試料100を示す分析要求が、ステップ212でインターフェイス122によって受信された場合、要求は決定ユニット109に進められる。決定ユニット109はステップ213において、要求内に指示された試料が、要求された分析を実施するために使用可能であるか否かを決定する(前記試料に対する分析は、有効な結果を戻すことが必要とされる)。ステップ213は、試料メタ情報を検索するステップ(ステップ215)、要求された試料の保存時間中に保存ユニットによってモニタリングされた保存パラメータを検索するステップ(ステップ220)、及び要求された分析に対応する条件集合を検索するステップ(ステップ216)を含む。決定ユニットは、試料と関連するデータ、具体的にはメタ情報123の時点情報によって指示された試料齢が、要求された分析の条件集合の要件、具体的には試料齢が特定の分析の最長試料齢を超えてはならないという要件を満たすか否かをチェックする。要求された試料に対して実施される、要求された分析の決定は有効であると期待することができると、決定ユニットが決定した場合(決定217)、決定ユニットは、ステップ218において、要求された試料の保存ユニットからのアンローディング、及びアナライザ内での要求された分析の実施を開始する。決定217がネガティブである場合、試料によって満たされなかった条件を示すメッセージがインターフェイス122に戻される。
【0102】
図3は、本発明の更なる実施態様による分析システムを示している。分析システムは2つの別個のデバイスから成っている。デバイス301はコントローラ105を含むアナライザである。第2のデバイス302は、固有試料識別子を受信するためのレシーバ構成要素103を含む分析後ユニット、及びこの識別子にメタ情報を割り当てるためのプログラム・インストラクション108である。メタ情報は、時点情報、例えば分析後ユニット302内への試料のローディング時点を示すタイムスタンプ情報を含む。プログラム・インストラクション108は加えて、試料メタ情報と関連して固有試料識別子を記憶装置118に記憶するように働くこともできる。分析後システムはさらに、前処理ユニット104と保存ユニット107とを含んでいる。この記憶装置内部の記憶パラメータは連続的に測定され、そしてデータベース119に記憶される。加えて、分析後ユニット302は、データベース120内の数多くの条件集合124を含んでいる。各条件集合は、特定の分析に対応し、そして、試料に対して実施されるそれぞれの分析の結果が有効であることを保証するために特定試料によって実施されなければならない条件を含んでいる。それぞれの条件は少なくとも、試料齢を示す時点情報に対する情報を含んでいる。黒い線305は、組み合わされた状態で完全な分析システム102を形成するデバイス301及び302を繋ぐ試料移動ラインの一部を示している。本発明の実施態様に応じて、デバイス301及び302は、分析後ユニット302から分析デバイス301へ、そしてその逆方向に試料を全自動式に移動するように接続可能であってよい。決定ユニットが、要求された試料に対して分析を実施できるというポジティブな結果を戻した場合、試料は保存ユニットからアンローディングされ、そして全自動式に移動ライン305に沿って移動され、そして戻される。
【0103】
本発明の他の実施態様によれば、両デバイスはこれらが異なる供給元から購入されたという理由から完全には接続できないことがある。これらの実施態様の場合、分析後ユニット302に設けられたマン−マシン・インターフェイス122、例えばタッチスクリーン・モニタ内に表示されたポジティブなメッセージを読み取り、要求された試料を分析ユニット301に移し、そして分析完了後、試料を分析後ユニット及びその保存ユニット107に戻すために人間が必要となることがある。
【0104】
図4aは、分析システム102の全ての関連システム構成要素が唯1つのデバイス401内部に含まれている、本発明の更なる実施態様を示している。図3及び4の太線は、追加の要素を示しているのではなく、単に、分析システムの構成要素を唯1つのデバイス内又は異なるデバイス内に含み得ることを示しているにすぎない。図4aに示された実施態様によれば、全過程連鎖及び試料の取り扱いは、試料を1つのシステム構成要素から次の構成要素へ移すために人間を必要とすることなしに、全自動式に実施される。
【0105】
図4bは、図4aに記載された分析システムを外部から写実図の形態で示している。マン−マシン・インターフェイス420は、多関節アーム421を介して分析システムに接続されたタッチスクリーン・モニター423として具体化されている。符号431は、図4aの保存ユニット107に相当する、冷蔵庫433を含む保存ユニットである。
【0106】
ラック取り扱い区分427は、窓を備えたいくつかの外壁から成るハウジングを有しているので、作業者は、ラック取り扱い装置の機能を直接的に見渡すことができる。ラック取り扱い区分427は、外壁のうちの1つに設けられた開口部424を含んでいる。開口部424を通して一次ラックを保存検索モジュール430内に挿入することができる。開口部424は一次ラック取り扱い領域に通じており、一次ラック取り扱い領域は少なくとも1つのロボット・アーム422を含んでいる(図4bにおいて窓の1つを通して見ることができる)。試料は、保存検索モジュール430を介して、保存ユニットに対して自動的にローディング及びアンローディングすることができる。保存検索モジュール430は試料ローディング・ユニットとして作用する。ラック取り扱い区分はさらに、引き出し428,429を含んでおり、これらの引き出しを通して、空にされた一次ラックを保存検索モジュールから取り出すことができる。さらに、ラック取り扱い区分は、管キャップのためのフィーダ・タンク426を備えたキャッピング・ステーション425を含んでおり、フィーダ・タンク426とキャッピング・ステーション425とは一緒に、前処理ユニットを形成する。
【0107】
図5は、病院のIT基盤の一部、例えばミドルウェア又はLISである、遠隔位置にインストールされたソフトウェア構成要素を介してアクセスされる本発明の更なる実施態様を示す。インターフェース505はマシン−マシン・インターフェイスであり、ネットワーク530を介してユーザによって指定された分析要求303を受信する。ユーザは、要求を指定して出すためにデータ・マネージャ・アプリケーション・プログラムを使用する。データ・マネージャ・プログラムはコンピュータ又は端末502にインストールされ、LISの一部又は病院のIT基盤の一部である。決定ユニットは、コンピュータ、例えばサーバ504にインストールされたソフトウェアの一部である。データ・マネージャ・アプリケーション・プログラムと決定ユニット109との間のデータの交換は、HL7インターフェイス及びXMLに基づく。インターフェイス505は、試料識別子を含む分析要求112を、リモート・コンピュータ502によって実行されるデータ・マネージャ・アプリケーション・プログラムから、コンピュータ504上で動作する決定ユニット109へ伝送するために、また、決定ユニット109の検査結果を記述するメッセージ303をデータ・マネージャ・アプリケーション・プログラムに戻すために使用することができる。決定ユニットと、IT基盤分析の部分としては示されていない分析システム507の構成要素、例えばアナライザのコントローラとの交信は、符号506によって参照される。図5に示された本発明の実施態様は、LISシステム内に含まれていない、図1に示された分析システムの残りの構成要素を含んでいる。データベース118〜120は、図3又は4aに示された装置内部に配置されていてよく、或いは、図6に示されたLISの一部である別個のコンピュータ上にホスティングされていてもよい。本発明の更なる実施態様によれば、全てのデータベース118〜120内に記憶されたデータは、唯1つのデータベース内部に記憶されている。
【0108】
HL7インターフェイスを使用して伝送された要求は、データ・マネージャ・アプリケーション・プログラムから決定ユニット109へXML文書を用いて伝送された追加のコントロール・データによって補足されてよい。同様に、HL7インターフェイスを介して伝送された結果データも、結果文脈データ (result context data)を含有するXML文書によって補足することができる。HL7インターフェイスを介した交信及びXML文書の交換は、同期又は非同期であってよい。
【0109】
特定の実施態様を参照しながら本発明をここで説明してきたが、言うまでもなく、これらの実施態様は本発明の原理及び用途の一例を示したものにすぎない。従って、例示の実施態様に数多くの改変を加え得ること、そして添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の思想及び範囲を逸脱することなしに、他の変更形を考え出し得ることが明らかである。
【符号の説明】
【0110】
100 試料
101 固有試料識別子
102 分析システム
103 固有試料識別子のレシーバ
104 前処理ユニット
105 コントローラ
106 アナライザ
107 保存ユニット
108 一組のプログラム・インストラクション
109 決定ユニット
110 ステップ
111 ステップ
112 分析要求
113 ステップ
114 時点情報
115 試料タイプに関するデータ
116 事例データ
118 データ記憶装置
119 データ記憶装置
120 データ記憶装置
122 分析要求を受信するためのインターフェイス
123 保存パラメータ
124 条件集合
125 保存パラメータをモニタリングするためのセンサ
126 試料メタ情報
200〜216 ステップ
217 決定
218 ステップ
300 ステップ
301 デバイス
302 デバイス
303 メッセージ
305 搬送ライン
400 ステップ
401 ステップ
402 ステップ
403 ステップ
404 ステップ
420 マン−マシン・インターフェイス
421 多関節アーム
422 ロボット・アーム
423 タッチスクリーン・モニター
424 開口部
425 フィーダ・タンク426を備えたキャッピング・ステーション
426 管キャップのためのフィーダ・タンク
427 ラック取り扱い区分
428 引き出し
429 引き出し
430 保存検索モジュール
431 保存ユニット
432 廃棄ユニット
433 冷蔵庫
501 IT基盤、例えばミドルウェア又はLIS
502 コンピュータ又は端末
503 ネットワーク
504 サーバ
505 インターフェイス
506 データ交換決定ユニット−分析システムの他の構成要素
507 分析システムの構成要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を分析するための分析システム(102)であって:
分析を実施するための少なくとも1つのアナライザ(106)であって、生体試料(100)の分析物の特性をキャラクタライズするように、そしてキャラクタリゼーションの結果として少なくとも1つの測定値を獲得するように動作することができるアナライザ;
固有試料識別子を受信するように働くことができるレシーバ(103)であって、該固有試料識別子(101)のそれぞれ1つが生体試料のうちの1つを識別する、レシーバ;
各試料識別子(101)に、少なくとも試料齢を示す時点情報(114)を含むメタ情報(126)を割り当てるためであって、且つ、受信されたそれぞれの識別子と、その割り当てられた試料メタ情報とを記憶するための一組のプログラム・インストラクション(108);
条件集合(124)を記憶するための記憶構成要素(120)であって、各条件集合が分析試験に対応しており、そして該アナライザによって前記分析試験を実施するために使用可能であるように試料によって満たされるべき少なくとも1つの条件を含んでおり、それぞれの前記条件集合は、該試料齢のための少なくとも1つの条件を含んでいる、記憶構成要素;
分析要求(112)を受信するためのインターフェイス(122)であって、該分析要求(112)が少なくとも、分析されるべき1つの試料と、実施されるべき少なくとも1つの分析試験とを指示する、インターフェイス;
該分析要求(112)の受信に応答して、該分析要求(112)中に指示された試料に対して分析を実施することから得られることになる結果が有効となるかどうかを決定するように働くことができる決定ユニット(109)であって、この決定が、該試料に割り当てられたメタ情報(126)を検索することにより、そして該メタ情報(126)に対して該少なくとも1つの条件を適用することにより実施され、そして、該適用される少なくとも1つの条件が、少なくとも、該試料齢が該試料に対する有効な分析を可能にするかどうかに関する条件を含み、そして該条件集合の条件が該指示された試料によって満たされる場合に、該指示された試料に対して実施されるべき分析が有効な結果を戻すであろうという決定を戻す決定ユニット;
該試料が使用可能であることが決定された場合、該試料を使用して分析を実施するために該アナライザ(106)を始動させるように動作することができるコントローラ(105);
を備えた分析システム。
【請求項2】
該時点情報が該生体試料のサンプリング日時、又は該分析システムへの生体試料のローディング日時である、請求項1に記載の分析システム(102)。
【請求項3】
該アナライザ(106)が、複数の異なる分析を実施するように働くことができ、該複数の分析のそれぞれが、少なくとも1つの観点で全ての他の分析とは異なっており、該観点は、使用される反応物、使用される生体試料のタイプ、キャラクタライズされる分析物のタイプ、適用される分析手順、及びキャラクタライズされる特性から成る群から選択され;
該受信された分析要求(112)がさらに、該試料に対して実施されるべき分析を指示し;
該決定ユニット(109)が、該分析要求(112)の受信に応答して、該分析要求(112)中に指示された試料に対して、該分析要求(112)中に指示された分析を実施することから得られる結果が有効であるかどうかを決定するように働くことができ、この決定が、該試料に割り当てられたメタ情報(126)を検索すること、該分析要求(112)中に指示された分析に対応する条件集合を検索すること、そして該検索された条件集合のうちの少なくとも1つの条件を該メタ情報に対して適用することにより実施され、そして適用された該少なくとも1つの条件が、該試料に対する有効な分析を実施できるか否かを決定する、
請求項1又は2に記載の分析システム(102)。
【請求項4】
さらに:
生体試料を保存するための保存ユニット(107)と;
該保存ユニット内部の1つ又は2つ以上の保存パラメータをモニタリングするための少なくとも1つのセンサ(125)と;
該1つ又は2つ以上の保存パラメータを、保存されている該生体試料のそれぞれに割り当てるための一組のプログラム・インストラクションであって、該保存パラメータは、該保存ユニットの温度、該保存ユニット内部の湿度、該保存されている試料の生化学的、物理的、及び光学的特性、及び該保存ユニットの技術的及び物理的パラメータから成る群から選択される、プログラム・インストラクションとを含み、
分析試験に割り当てられた少なくとも1つの条件集合が、該分析要求(112)中に指示された該試料の保存パラメータのための少なくとも1つの条件を含み、そして該決定ユニット(109)が、該分析要求(112)中に指示された該生体試料が該分析を実施するために使用可能であるかどうかを決定するために、該保存パラメータのための条件を使用するように動作可能である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の分析システム(102)。
【請求項5】
該保存ユニット(107)内部で測定された保存パラメータが、該パラメータが測定された日時の情報と関連して記憶され、そして該分析システムがさらに:
− 該保存ユニット(107)内への試料のローディング日時、及び該保存ユニットからの試料のアンローディング日時を決定するための構成要素を含み、
− 該保存ユニット(107)に対する該試料のローディング及びアンローディングの日時が、該試料の固有識別子(101)と関連して記憶される、
請求項4に記載の分析システム(102)。
【請求項6】
生体試料を保存及び分析のために前処理する前処理ユニット(104)であって、該前処理が、該試料のキャッピング又は脱キャピング、該試料のアリコートの作成、化学的又は生物学的物質の添加、該試料の希釈、該試料の分画、及び該試料の濃縮から成る群から選択される、前処理ユニット、をさらに含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の分析システム(102)。
【請求項7】
該メタ情報(126)がさらに、該生体試料のタイプ(115)に関するデータを含み、
そして、少なくとも1つの条件集合が、該生体試料のタイプのための少なくとも1つの条件を含む、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の分析システム(102)。
【請求項8】
該メタ情報(126)がさらに、事例関連データであって、患者を識別するためのデータ、患者の病歴、患者の健康関連パラメータ、及び生体試料の調製に関連するデータから成る群から選択される事例関連データ、を含み、
そして該少なくとも1つの条件集合が、該事例関連データのパラメータのための少なくとも1つの条件を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の分析システム(102)。
【請求項9】
生体試料を分析するための、コンピュータで実行される方法であって:
− ローディングされた1つ又は複数の生体試料の固有識別子(101)を受信し;
− 該1つ又は2つ以上の生体試料のそれぞれにメタ情報(126)を割り当て;
− 該生体試料の固有識別子(101)に割り当てられたメタ情報(126)を記憶し;
− 分析されるべき該生体試料、及び該生体試料に対して実施されるべき分析試験を指示する分析要求(112)を受信し;
− 該分析要求(112)の受信に応答して、該分析要求(112)中に指示された生体試料が、
・ 該指示された生体試料の固有識別子(101)と関連して記憶されたメタ情報(126)を検索すること、
・ 少なくとも、要求された分析と関連する条件集合を、記憶媒体から検索すること、
・ 該指示された生体試料のメタ情報(126)に対する該検索された条件集合の条件が満たされるかどうかをチェックすること
によって、該分析を実施するために使用可能であるかどうかを決定し、該条件集合の条件は、該生体試料に対して該要求された分析を実施するために使用可能であるように生体試料(100)によって満たされなければならず、
− 前ステップの結果に基づいて、該指示された生体試料が、該要求された分析のために使用可能であるならば、アナライザ(106)によって該生体試料に対して該要求された分析を実施すること、
を含み、
該メタ情報(126)が少なくとも、該生体試料齢を示す時点情報を含んでおり、そして該条件が少なくとも、該試料齢が該生体試料に対する有効な分析を可能にするかどうかに関する条件を含む、
生体試料を分析するための、コンピュータで実行される方法。
【請求項10】
さらに、
− 1つ又は複数の生体試料を該分析システムにローディングするための命令を、該分析システムの試料ローディング・ユニットに送信し、
− 該試料ローディング・ユニットによって該試料を該分析システム内に自動的にローディングする、
開始ステップを含む、請求項9に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項11】
さらに、
− 該1つ又は複数の生体試料を保存ユニットにローディングし、
− 温度、湿度、光度、空気組成、モニタリングされた生化学的、物理的、又は光学的な試料パラメータ、及び保存ユニット(107)及び補足的な保存構成要素の技術的パラメータから成る群から選択された、該保存ユニット内部の保存パラメータをモニタリングし、
− 保存された該1つ又は複数の生体試料の該固有識別子(101)と関連する1又は2つ以上の保存パラメータを記憶媒体に記憶し、
− 該生体試料の使用可能性の決定から戻された結果が、要求された分析のための該生体試料の使用可能性を示したならば、分析のため、そして該生体試料を該アナライザに移すために、該指示された生体試料を該保存ユニット(107)からアンローディングする
ことを含み、
− 該要求された分析のための条件集合は、該生体試料の保存パラメータに対する少なくとも1つの条件を含み、そして該分析要求(112)中に指示された生体試料が、該要求された分析を実施するために使用可能であるかどうかの決定がさらに、該生体試料の保存パラメータに対する該少なくとも1つの条件が該生体試料によって満たされるかどうかをチェックすることを含む、
請求項10に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項12】
該保存ユニット(107)から受信された保存パラメータが:
− 生体試料が該保存ユニット(107)内にローディングされたときの日時を決定し、そして該ローディングされた生体試料の固有識別子(101)と関連してこの時間情報を記憶し、
− 該保存パラメータの測定日時に関する情報と関連して少なくとも1つの保存パラメータを記録し、
− 生体試料が該保存ユニットからアンローディングされたときの日時を決定し、そして該アンローディングされた生体試料の固有識別子(101)と関連してこの時間情報を記憶し、
− 該生体試料を該保存ユニット(107)内にローディングする瞬間と、該生体試料を該保存ユニットからアンローディングする瞬間とによって定義される時間間隔内で記録された保存パラメータを、該分析要求(112)中に指示された生体試料に割り当てる
ことによって特定の生体試料と関連して記憶される、請求項11に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項13】
さらに:
− 該識別された生体試料のそれぞれにメタ情報(126)を割り当てた後、生体試料を前処理することを含み、
該前処理が、該試料のキャッピング又は脱キャピング、該試料のアリコートの作成、化学的又は生物学的物質の添加、該試料の希釈、該試料の分画、及び該試料の濃縮から成る群から選択される、
請求項10から12のいずれか1項に記載のコンピュータで実行される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−133476(P2011−133476A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−281789(P2010−281789)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】