生体認証装置及び生体認証方法
【課題】生体認証装置において、不規則な指紋入力がなされた場合でも誤照合の発生頻度を下げ指紋認証利用者の利便性を向上を実現する。
【解決手段】登録生体データを格納する記憶部と、生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部にて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の第1生体特徴データとを照合する第1認証部と、登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の第2生体特徴データとを照合する第2認証部と、前記第1認証部と前記第2認証部にて照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することで、第1認証部と第2認証部の認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定部とを備えている。
【解決手段】登録生体データを格納する記憶部と、生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部にて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の第1生体特徴データとを照合する第1認証部と、登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の第2生体特徴データとを照合する第2認証部と、前記第1認証部と前記第2認証部にて照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することで、第1認証部と第2認証部の認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定部とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、登録生体情報と入力された生体情報を照合して本人認証を行なう生体認証装置及び生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、指紋または掌紋などの生体情報を表した生体画像を使用して、装置またはシステムの利用者を認証する生体認証技術が開発されている。そのような生体認証技術を利用した生体認証装置は、例えば、生体認証装置を使用しようとする利用者の生体情報を表す生体画像を入力生体画像として取得する。そして生体認証装置は、入力生体画像に表された利用者の入力生体情報を、登録生体画像に表された、予め登録された登録利用者の登録生体情報と照合する。生体認証装置は、照合処理の結果に基づいて、入力生体情報と登録生体情報が一致すると判定した場合、その利用者を正当な権限を有する登録利用者として認証する。そして生体認証装置は、認証された利用者が生体認証装置または生体認証装置と接続された他の装置の使用を許可する。
【0003】
指紋、掌紋等の認証には、特徴点方式、パターンマッチング方式、周波数方式など複数の認証方式が存在する。
【0004】
特徴点方式は、指紋隆線の端点や分岐点からなる特徴点の位置や方向、指紋特徴点間の関係などを用いて認証を行なう手法である。具体的には、例えば特徴点の接続関係を用いる手法や、特徴点間の隆線数を用いる手法などがある。パターンマッチング方式は、指紋の画像情報あるいは形状に基づく符号化情報を用いる認証方式であり、このパターンマッチング方式についても種々の技術が提案されている。周波数方式は、指紋の画像の周波数解析に基づく符号化情報を用いる認証方式である。
【0005】
より多くの利用者が生体認証機能を利用可能にする場合には他人受け入れ率を低くし、且つ本人拒否率を低減する為に複数の認証方式を組み合わせたハイブリッド認証方式により本人認証を行なう技術が提案されている。
【0006】
ハイブリッド認証方式では、一般に各認証方式による認証結果に基づいて、AND(論理積)あるいはOR(論理和)で結合して最終的な認証結果が決定される。
【0007】
一般に、AND結合の場合には、全ての認証方式で認証成功(OK)となる必要があるため、他人受入率(他人を誤って本人として受け入れる確率)低くする効果が見込まれる。反対にOR結合の場合には、いずれかの認証方式で認証成功(OK)と判定されればよいため、本人受入率(本人を誤って拒否する確率)高くする効果が見込まれる。
【0008】
例えば、特許文献1では、認証方式としてパターンマッチング方式と特徴点方式のそれぞれで照合を行い、その照合結果をOR結合することにより、何れか一方の方式で認証が成功すれば認証成功とすることで、本人受入率(本人を誤って拒否する確率)高くする方式が提案されている。
【0009】
また、特許文献2では、特徴点方式とパターンマッチング方式を条件付でOR結合する方式が提案されている。(図1参照)特許文献2の認証処理としては、前段に認証速度の速い特徴点方式、後段に高性能だが処理速度の遅いパターンマッチング方式を配置し、前段の照合結果に応じて、後段を実施するか判定し、高性能な処理が必要のないユーザに対しては前段で終了することにより処理時間を短縮しつつ他人受入率(他人を誤って本人として受け入れる確率)低くする方式が提案されている。
【特許文献1】特開2004−192633号公報
【特許文献2】特開2006−107340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
指紋認証の運用ケースが増えるにつれ、運用条件も多様化している。具体的には、ユーザ数の多い大規模な認証システムでは、セキュリティ(他人受入率)を重視されるため、指紋入力時の指紋の取得範囲により厳しい制限(広い取得面積、指紋中心など特徴的な領域の取得)が必要とされる。制限のある入力例を図2に示す。図2(a)は渦型、図2(b)は流れ型、図2(c)は波形をそれぞれ表しており、それぞれ指紋の中心位置に十字の印を付与している。
【0011】
高齢者や子供など習熟が困難な利用者、指の関節が曲がっていてまっすぐに指の伸ばせない利用者、無意識に指紋を入力していて入力する位置が定まらない利用者では、指紋の入力が不規則(ラフ)になり、指紋の取得範囲が狭くなる場合がある。不規則(ラフ)な入力例を図3に示す。図3では図2(a)の渦型を例にとって取得される指紋の例を示している。図3(a)は指の先端側のみが入力され例、図3(b)は指の根元側のみが入力された例、図3(c)は指の右側のみが入力された例を示しており、図3(a)〜(c)のそれぞれには図2(a)の指紋中心に対応する位置に十字の印を付与している。
【0012】
図3(a)〜(c)の例では指紋の取得範囲が狭く、十字の印で示される指紋中心など特徴的な領域の取得ができておらず指紋の再入力が必要となる。あるいはそのまま認証に使用した場合には本人拒否率が増加する。など利用者にとっての利便性が損なわれることが問題となる。
【0013】
したがって、セキュリティを重視する運用において、指紋入力時の取得範囲が狭くなるような不規則(ラフ)な入力をした場合でも、認証システムの利用者の利便性を高めることが課題となる。
【0014】
よって、不規則(ラフ)な指紋が入力された場合、以下の対応が必要となる。
【0015】
図2(a)〜(c)に示される制限のある入力の場合には、認証時に予め登録データと照合データの指紋中心位置を用いて位置合せできるため、その後の処理では探索範囲を縮小できる。しかしながら、図3(a)〜(c)の様な不規則(ラフ)な入力では指紋中心等の特徴が明確に写っていないため、探索範囲を拡大して比較照合する必要がある。
【0016】
また、指の先端側の指紋パターンは、紋様が異なっていても類似している。図4には各指紋紋様における指の先端側の入力例を示している。図4(a)は渦型、図4(b)は流れ型、図4(c)は波型をそれぞれ示している。各型の指先端側だけを比較するとよく似た形状であり、パターンマッチング方式では、類似度のスコアが大きくなる傾向がある。
【0017】
更に、部分的に取得された小領域の指紋から取得される特徴点は少なく、小領域の少ない特徴点で登録指紋データと比較する事により類似度のスコアが大きくなり、他人受け入れ率(誤認証の確立)が高くなることも予測される。
【0018】
よって、不規則(ラフ)に指紋を入力して指紋の一部の領域が取得された場合でも誤照合の発生頻度を低減する必要がある。
【0019】
このよう指紋の一部の領域のみが入力された場合でも誤照合減らし、利用者の利便性を向上させるという課題について前述の特許文献1及び特許文献2には何ら開示されておらず解決できていない。
【0020】
本発明は、前述の課題を解決するもので、不規則な指紋入力がなされた場合でも誤照合の発生頻度を下げ指紋認証利用者の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の認証装置は、登録生体データを格納する記憶部と、生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部にて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の1つである第1生体特徴データとを比較照合する第1認証部と、前記登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の前記第1生体特徴データとは異なる第2生体特徴データと比較照合する第2認証部と、前記第1認証部と前記第2認証部のそれぞれについて、照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することにより、前記第1認証部と前記第2認証部での認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0022】
以上の構成により本願の生体認証装置は、入力生体情報と登録生体情報の認証結果だけではなく、入力生体情報と登録生体情報の位置合わせ結果を評価し、認証が成功との判定の場合でも位置合わせの結果を評価し認証の信頼性が高いかを判断し、信頼性が低いと判断される場合は認証成功としないため、確実に誤照合発生を低減できる効果を奏する。
【0023】
また、位置合わせ結果信頼性か高い場合は認証成功とする事で、再入力を減らし利用者の利便性を向上させる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本明細書に開示された生体認証装置または生体認証方法を適用したコンピュータについて説明する。
【0025】
実施形態による生体認証装置または生体認証方法を適用したコンピュータは、コンピュータを利用しようとする利用者がコンピュータにログインする際、利用者の生体情報を入力生体情報として取得する。そしてこのコンピュータは、入力生体情報を、コンピュータに予め登録された利用者のうち、利用者により入力された識別情報に対応する登録利用者の登録生体情報と照合する。このコンピュータは、照合処理の結果に基づいて、入力生体情報と登録生体情報が一致する判定した場合、利用者を登録利用者として認証する。そしてこのコンピュータは、認証された利用者がそのコンピュータにログインすることを許可する。
【0026】
ここで、このコンピュータは、センサにより利用者の生体情報を取得する。そしてこのコンピュータは、入力生体情報と登録生体情報の類似度合いを表す照合スコアを算出して、利用者を本人と認証するか否かを判定する。
【0027】
なお、本実施形態では、コンピュータは生体認証の対象となる生体情報として指紋を利用する。しかしながら、指紋認証だけではなく、イメージデータ等空間情報を利用した生体認証技術に対して適用可能である。
【0028】
図5は、生体認証処理を実行するコンピュータの概略構成図を示す。図5に示されるように、このコンピュータは、入力部1と、表示部2と、生体情報取得部3と、記憶部4と、処理部5と、各部を接続するパス6とを有する。本構成における生体認証処理は、利用者がログインしようとするときに、利用者の指紋を表す指紋画像を用いて生体認証処理を実行する。そしてこの生体認証装置は、生体認証処理の結果、利用者がコンピュータに予めと登録された登録利用者のいずれかであるとして認証した場合、ログイン処理を実行する。そしてコンピュータは、その利用者がコンピュータを使用することを許可する。
【0029】
以下に各構成の詳細を説明する。
【0030】
入力部1は、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパッドなどの入力デバイスを有する。そして入力部1は、利用者がコマンド、データなどを入力するために使用される。また入力部1は、利用者の識別情報をコンピュータに入力するための識別情報入力部として機能する。なお、利用者の識別は、例えば、英数字または記号を含む文字列または利用者の氏名とすることができる。入力部1を介して入力されたコマンド、データ、あるいは利用者の識別情報は、処理部5へ渡される。
【0031】
表示部2は、例えば、液晶ディスプレイまたはCRTモニタなどの表示装置を有する。そして表示部2は、入力部を介してコンピュータに入力されたコマンド、データもしくは利用者の識別情報、または、処理部により実行されたアプリケーションに関連する各種情報などを表示する。
【0032】
生体情報取得部3は、コンピュータに正規の利用者が登録されるときに、生体認証処理の基準となる、その利用者の指紋を表す登録指紋画像を生成する。また生体情報取得部3は、利用者がコンピュータにログインしようとするときに、その利用者の指紋を表す入力指紋画像を生成する。そのために、生体情報取得部3は、例えば、スイープ式の指紋センサを有する。この指紋センサは、例えば、光学式、静電容量式、電界式または感熱式の何れかの方式を採用したセンサとすることができる。また生体情報取得部3は、エリアセンサを利用する、何れかの接触式の指紋センサを有してもよい。そして生体情報取得部3は、生成した指紋画像を処理部5へ渡す。なお、入力部1と生体情報取得部3は、一体的に形成されていてもよい。
【0033】
利用者が入力部1を介してログインを求める操作を行うと、コンピュータは、例えば、表示部2に、利用者の識別情報を入力することを促すメッセージと、生体情報取得部3に指を載せることを促すメッセージとを表示させる。コンピュータは、生体情報取得部3を介して利用者の入力指紋画像を取得すると、その入力指紋画像と入力部1を介して入力された利用者の識別情報と関連付ける。また利用者が入力部を介してコンピュータに登録する操作を行うと、コンピュータは、例えば、表示部2に、利用者の識別情報を入力することを促すメッセージと、生体情報取得部3に指を載せることを促すメッセージとを表示させる。コンピュータは、生体情報取得部3を介して利用者の登録指紋画像を取得すると、その登録指紋画像と入力部1を介して入力された利用者の識別情報とを関連付ける。
【0034】
記憶部4は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、または光ディスク装置のうちの少なくとも何れか一つを有する。そして記憶部4は、コンピュータで使用されるアプリケーションプログラム、少なくとも一人の登録利用者の識別情報及び個人設定情報、各種のデータ等を記憶する。また記憶部4は、生体認証処理を実行するためのプログラムを記憶する。さらに記憶部4は、登録利用者それぞれについて、登録利用者の特定の指の指紋を表す登録特徴データを記憶する。
【0035】
処理部5は、1個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして処理部5は、入力部1を介して入力されたコマンドまたは各種のアプリケーションを実行する。また処理部5は、コンピュータに対する利用者のログイン及びログアウト、利用者の登録などの処理を実行する。ここで処理部5は、入力部1を介して利用者からコンピュータへのログイン処理を実行することが要求されると、生体情報取得部3から取得した、その利用者の指紋が表された入力指紋画像を用いた生体認証処理を実行する。また処理部5は、入力部1を介して利用者からコンピュータへの登録処理を実行することが要求されると、生体情報取得部3から取得した、その利用者の指紋画像を処理して得られたデータを登録生体データとして記憶部4に保存する。
【0036】
図6は、本発明における生体認証処理を実行するために実現される機能を示す処理部5の機能ブロック図である。処理部5は、生体特徴データ生成部51と、第1認証部52と、第2認証部53と、矛盾可能性検出部54と、認証制御部55と、認証結果比較判定部56とを備える。処理部5が備えるこれらの各部は、処理部5が有するプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、処理部5が備えるこれらの各部は、ファームウェアとしてコンピュータ上で実装されてもよい。さらに、処理部5は、ログイン処理あるいはログアウト処理を実行するモジュールおよび各種アプリケーションを実行するためのモジュールを有してもよい。しかし、ログイン処理あるいはログアウト処理を実行するモジュールなど、図6に示された各部以外のモジュールは、生体認証処理に直接関係しないため、ここでは図6に示された各部についてのみ説明する。
【0037】
図7は、本発明における認証処理手順を示す。
【0038】
認証開始に生体情報取得部3により利用者の指紋画像を取得する。(S101)
生体特徴データ生成部51は、生体情報取得部3により取得された利用者の1つの指紋画像から、第1認証部および第2認証部のそれぞれで認証に用いられる異なる複数の入力生体特徴データを生成する。(S102)
すなわち、予め登録された登録生体データおよび生体特徴データ生成部51で生成された入力生体特徴データは、処理部5が備える認証部に対応した入力生体特徴データから構成される。入力生体特徴データとしては、特徴点(指紋の隆線の端点や分岐点の位置や方向など)、隆線パターン(画像そのもの、任意の画像処理を施した画像など)や周波数情報などがある。例えば、照合処理で特徴点方式が用いられる場合、隆線の分岐点及び端点をマニューシャ(特徴点)として抽出する。隆線の分岐点及び端点を入力指紋画像から抽出するために、例えば、局所閾値法を用いて、入力指紋画像を2値化する。次に、2値化された入力指紋画像に対して細線化処理を行う。その後、複数のマスクパターンを用いて細線化された入力指紋画像の部分領域を走査することにより、何れかのマスクパターンと一致するときの、入力指紋画像上の位置を検出する。検出された位置の中心画素を、特徴点として抽出する。なお、マスクパターンは、例えば、3×3画素で表され、隆線の分岐点または端点に対応する2値パターンを持つ。さらに、抽出された特徴点の位置、及びその特徴点近傍の隆線方向を、特徴点を表す情報として求める。なお、特徴点近傍の隆線方向を求めるために、隆線方向を求める公知の何れかの方法を利用することができる。なお、隆線の端点または分岐点を特徴点として求める公知の他の方法を用いて、入力指紋画像及び登録指紋画像から特徴点を抽出してもよい。一方、照合処理にパターンマッチング方式が用いられた場合、取得された指紋画像全体あるいは所定の領域を切り取った画像を入力生体特徴データとして取得する。
【0039】
以降、記憶部に登録された登録生体情報を予め登録された登録生体データと称し、生体特徴データ生成部51で生成される特徴データを入力生体特徴データと称する。
【0040】
続いて、第1認証部52は、利用者の予め登録された登録生体データを記憶部から取得し、入力生体特徴データと予め登録された登録生体データを比較照合して照合スコアおよびその照合スコアにおける登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を算出する。(S103)
算出された照合スコアを予め設定された照合判定閾値と比較することにより、認証の成功/失敗を判定する。(S104)
第1認証部52では、特徴点方式等の処理負荷の小さい方式が望ましい。特徴点方式の例として、予め登録された登録生体データの任意の特徴点を、第1の基準特徴点として選択する。また、入力生体特徴データの特徴点のうちの一つを第2の基準特徴点として選択する。そして、第2の基準特徴点を第1の基準特徴点と一致させるように、入力生体特徴データを平行移動させる。その後、入力生体特徴データを回転させながら、予め登録された登録生体データの特徴点と一致する入力生体特徴データの特徴点の個数を求める。第1の基準特徴点と第2の基準特徴点の組み合わせを変えつつ、上記の処理を繰り返して、予め登録された登録生体データの特徴点と一致する入力生体特徴データの特徴点の個数の最大値を求める。最後に、その個数の最大値を、入力生体特徴データから抽出された特徴点の総数で割った値を照合スコアとして求める。したがって、この場合、照合スコアは0〜1の値を持ち、入力生体特徴データと予め登録された登録生体データの類似度合いが高い程、照合スコアの値は1に近づく。なお、予め登録された登録生体データの特徴点と一致する入力生体特徴データの特徴点を検出するために、入力生体特徴データの着目特徴点の位置から所定範囲内に、予め登録された登録生体データの特徴点が存在するか否か調べる。ここで、所定範囲は、例えば、隣接する2本の隆線の平均間隔に相当する値とすることができる。着目特徴点の位置から所定範囲内に、予め登録された登録生体データの特徴点が存在する場合、それら特徴点近傍の隆線方向の角度差を求める。そして隆線方向の角度差の絶対値が所定角度範囲内に含まれる場合、その予め登録された登録生体データの特徴点を、入力生体特徴データの着目特徴点と一致すると判定する。なお所定角度範囲は、着目特徴点近傍の隆線方向と対応する予め登録された登録生体データの特徴点近傍の隆線方向とが一致しているとみなせる許容限界に対応する値であり、例えば、10度とすることができる。なお、着目特徴点の位置から所定範囲内に、着目特徴点と同じ種類の予め登録された登録生体データの特徴点が存在する場合にのみ、入力生体特徴データの着目する特徴点と一致する予め登録された登録生体データの特徴点が存在すると判定してもよい。また、入力生体特徴データの部分領域の特徴点と一致する予め登録された登録生体データの特徴点の個数を求める公知の他の方法を利用してもよい。
【0041】
位置合わせ結果として、具体的には予め登録された登録生体データと入力生体特徴データを重ね合わせ、重なりあった部位同士の照合スコアが最も高くなる状態で、それぞれのデータの基準位置同士の座標差ベクトル(dx、dy)を算出する。(S105)
矛盾可能性検出部54は、第1認証部で認証を行った結果、認証成功となった場合に実行される。第1認証部の予め登録された登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を用いて、その認証結果の矛盾可能性を検出する。(S106)
具体的には、第1認証部で出力した座標差ベクトル(dx1、dy1)のノルムを算出し、所定の閾値以上であった場合に矛盾発生の可能性があると判定する。矛盾可能性検出部の判定結果の例として、矛盾発生の可能性が低い例を図8に、矛盾発生の可能性が高い例を図9に示す。図8および図9では、それぞれ(a)登録生体データ、(b)入力生体特徴データ、(c)登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を示している。図8および図9において、画像領域全体の重心を登録生体データおよび入力生体特徴データの基準位置とし、座標差ベクトルをも求める際に利用する。図8及び図9中に登録生体データの重心に実線の十字マークを、入力生体特徴データの重心に点線の十字マークをそれぞれ付与している。
【0042】
図8(a)の登録生体データの重心と図8(b)の入力生体特徴データの重心を図8(c)のように重ねた場合の重心距離を座標差ベクトル(dx1、dy1)のノルムとして算出する。図9も図8と同様に登録生体データの重心と入力生体特徴データの重心の間の距離を座標差ベクトル(dx1、dy1)のノルムとして算出する。
【0043】
閾値の例として、指紋画像の画像サイズが300×300ピクセル、解像度が500dpiであった場合、座標差ベクトルのノルムが100ピクセル以上であった場合に矛盾可能性が高いと判定する。
【0044】
認証制御部55は、矛盾可能性検出部により、第1認証部による認証結果に矛盾が生じやすいと判定された場合に、第2認証部での認証を実施する。反対に矛盾が生じやすいと判定されなかった場合には、第2認証部は実行せずに認証成功で終了とする。(S106:NO)
第2認証部53は、第1認証部52と同様に、入力生体特徴データと登録生体データを比較照合して、認証の成功/失敗を判定する。同様に、座標差ベクトル(dx2、dy2)を出力する。(S107)
ただし、第1認証部と異なる特性を持った方式とする。例えば、パターンマッチング方式、周波数方式とする。パターンマッチング方式が用いられた場合の例を示す。入力生体特徴データの画像情報と予め登録された登録生体データの画像情報の相対的な位置を様々に変えつつ、下記の式を用いて、入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報との間の相関値c(i、j)を算出する。
【0045】
【数1】
【0046】
ここで、I(x、y)は、入力生体特徴データの画像情報に含まれる、水平座標x、垂直座標yの画素の画素値を表す。またT(x-i、y-j)は、登録生体データの画像情報に含まれる、水平座標(x-i)、垂直座標(y-j)の画素の画素値を表す。また、Iavは、入力生体特徴データの画像情報に含まれる画素の平均画素値であり、Tavは、登録生体データの画像情報に含まれる画素の平均画素値である。なお、i及びjは、それぞれ、入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報の水平方向及び垂直方向のずれ量を表す。さらにc(i、j)は、入力生体特徴データの画像情報が、登録生体データの画像情報に対して水平方向にi画素かつ垂直方向にj画素ずれているときの相関値を表す。この相関値c(i、j)は、-1〜1の間に含まれる値をとり得る。入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報とが完全に一致している場合、相関値c(i、j)は1となる。一方、入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報とが完全に反転している場合、相関値c(i、j)は-1となる。
【0047】
認証結果比較判定部56は、第1認証部と第2認証部が共に本人と認証された場合(S108)に、登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を比較(S109)し、互いの位置合せ結果に矛盾があれば認証結果を棄却して他人と判定し、反対に矛盾がなければ認証結果を採用して本人と判定する。(S110)
具体的には、第1認証部の座標差ベクトル(dx1、dy1)と第2認証部の座標差ベクトル(dx2、dy2)との差のノルムを算出する。算出したノルムが所定の閾値以上であった場合に、明らかに第1認証部と第2認証部が異なる位置で認証したとみなし、照合結果に矛盾が生じていると判定する。各認証部の位置合せ結果が異なる例を図10に示す。
【0048】
図10(a)は第1認証部の照合結果の例を示しており、実線の矩形領域が登録生体データのデータ領域を示し、実線の網かけ領域が登録生体データを表している。また、点線の矩形領域が入力生体特徴データのデータ領域を示し、点線の斜線領域が入力生体特徴データを表している。図10(b)は第2認証部の照合結果の例を示している。また、点線の矩形領域が入力生体特徴データのデータ領域を示し、点線の斜線領域が入力生体特徴データを表している。図10(a)の例では第1認証部52での認証結果、登録生体データの上側領域で入力生体特徴データと認証ができたことを表しており、登録生体データと入力生体特徴データの重心を表す十字の印間の距離が座標差ベクトル(dx1、dy1)として検出される。図10(b)の例では第2認証部53での認証結果、登録生体データの中央領域で入力生体特徴データと認証ができたことを表しており、登録生体データと入力生体特徴データの重心を表す十字の印間の距離が座標差ベクトル(dx2、dy2)として検出される。第1認証部52で検出された座標差ベクトル(dx1、dy1)と、第2認証部53で検出された座標差ベクトル(dx2、dy2)の差のノルムを算出することで、第1認証部52での照合位置と第2認証部53照合位置との位置のズレが判断可能となる。即ち、上記の説明の通り、算出したノルムが所定の閾値以上であった場合に、明らかに第1認証部と第2認証部が異なる位置で認証したとみなし、照合結果に矛盾が生じていると判定する。
【0049】
閾値の例として、指紋画像の画像サイズが300×300ピクセル、解像度が500dpiであった場合、座標差ベクトルのノルムが50ピクセル以上であった場合に矛盾可能性が高いと判定する。
【0050】
認証結果比較判定部56にて、矛盾可能性検出部54の判定結果に基づき、ノルムが大きい場合に各認証部52,53の照合スコアを減少させて認証されにくくする。例えば,図11に照合スコアを減ずるための重みテーブルの例を示す。判定結果に基づいて,各認証の照合スコアに乗じる重みを切り替えることにより,矛盾可能性が高ければ照合スコアが減少される。それにより,矛盾可能性が高い場合に,認証されにくくなり,他人受入の低減が期待できる。また、別な例として、図12に照合スコアを照合レベルに量子化するための閾値テーブルの例を示す。図12では,照合スコアは0〜100の範囲に含まれる値をとり,類似度合いが高くなるにつれて100に近づく。各認証部の照合スコアに応じて,図12の閾値により変換される照合レベルを決める。例えば,照合スコアが65だった場合,矛盾可能性が高ければ照合レベルは3に変換され,反対に低ければ4に変換される。すなわち,矛盾可能性が高い場合には,照合レベルは低く変換される。変換された照合レベルは,予め決められた照合閾値レベルと比較され,認証の成功/失敗が判定される。以上の手順により,矛盾可能性が高い(ノルムが大きい)場合に,認証されにくくなり,他人受入の低減が期待できる。なお,図12の閾値テーブルは第1認証部および第2認証部の両方で用いることを想定しているが,認証部ごとに閾値テーブルを設けてもよい。
【0051】
さらに、図7の処理手順では、第1認証部52にて認証成功となった場合にのみ、矛盾可能性検出部54を実行するが、別の実施形態として、照合判定閾値とは別な閾値を設けて、矛盾可能性検出部54の実行を制御してもよい。その場合、0<実施判定閾値<照合判定閾値とする。第1認証部52にて認証成功とならないが、ある程度の高い照合スコアが算出されていた(本人と判定できないがある程度の類似性は示している)場合に、矛盾可能性を検出する。認証制御部55では、矛盾が生じやすいと判定された場合には、認証失敗と判定して終了する。反対に、矛盾が生じやすいと判定されなかった場合には、本人と判定される可能性があるとみなして第2認証部53で認証を行なう。認証結果比較判定部56では、第2認証部53にて本人と認証された場合に、第1認証部52と第2認証部53の位置合せ結果を比較し、互いの位置合せ結果に矛盾があれば、第2認証部の認証結果を棄却して他人と判定し、反対に矛盾がなければ第2認証部の認証結果を採用して本人と判定する。それにより、第1認証部52と第2認証部53の位置合せ結果に矛盾がない場合には、第1認証部52と第2認証部53の認証結果のOR結合による認証性能の向上が期待できる。
【0052】
なお、実施形態では、2種類の認証部を用いた例について説明したが、3種以上の認証部を備えてもよく、矛盾可能性検出部の判定結果に基づいて、認証制御部が実行する認証部の種類と数を切り替えることも考えられる。矛盾可能性が高ければ高いほど、実行する認証部の数を増やすことにより、位置合せ結果の矛盾の有無を厳しく判定することができ、その結果として、他人による誤照合の発生頻度を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】は、既存のハイブリット認証の例を示す概略構成図である。
【図2】は、制限のある入力例を説明する図である。
【図3】は、不規則な入力例を説明する図である。
【図4】は、各指紋紋様における指の先端側の入力例を説明する図である。
【図5】は、本発明による生体認証処理を実行するコンピュータの概略構成図である。
【図6】は、本発明の機能ブロック図である。
【図7】は、本発明における認証処理手順を示す図である。
【図8】は、矛盾可能性検出部の判定結果の例1を示す図である。
【図9】は、矛盾可能性検出部の判定結果の例2を示す図である。
【図10】は、各認証部の位置合せ結果が異なる例を示す図である。
【図11】は、照合スコアを変換するための重みテーブルを示す図である。
【図12】は、照合スコアを照合レベルに変換するための閾値テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 入力部
2 表示部
3 生体情報取得部
4 記憶部
5 処理部
6 バス
51 生体特徴データ生成部
52 第1認証部
53 第2認証部
54 矛盾可能性検出部
55 認証制御部
56 認証結果比較判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、登録生体情報と入力された生体情報を照合して本人認証を行なう生体認証装置及び生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、指紋または掌紋などの生体情報を表した生体画像を使用して、装置またはシステムの利用者を認証する生体認証技術が開発されている。そのような生体認証技術を利用した生体認証装置は、例えば、生体認証装置を使用しようとする利用者の生体情報を表す生体画像を入力生体画像として取得する。そして生体認証装置は、入力生体画像に表された利用者の入力生体情報を、登録生体画像に表された、予め登録された登録利用者の登録生体情報と照合する。生体認証装置は、照合処理の結果に基づいて、入力生体情報と登録生体情報が一致すると判定した場合、その利用者を正当な権限を有する登録利用者として認証する。そして生体認証装置は、認証された利用者が生体認証装置または生体認証装置と接続された他の装置の使用を許可する。
【0003】
指紋、掌紋等の認証には、特徴点方式、パターンマッチング方式、周波数方式など複数の認証方式が存在する。
【0004】
特徴点方式は、指紋隆線の端点や分岐点からなる特徴点の位置や方向、指紋特徴点間の関係などを用いて認証を行なう手法である。具体的には、例えば特徴点の接続関係を用いる手法や、特徴点間の隆線数を用いる手法などがある。パターンマッチング方式は、指紋の画像情報あるいは形状に基づく符号化情報を用いる認証方式であり、このパターンマッチング方式についても種々の技術が提案されている。周波数方式は、指紋の画像の周波数解析に基づく符号化情報を用いる認証方式である。
【0005】
より多くの利用者が生体認証機能を利用可能にする場合には他人受け入れ率を低くし、且つ本人拒否率を低減する為に複数の認証方式を組み合わせたハイブリッド認証方式により本人認証を行なう技術が提案されている。
【0006】
ハイブリッド認証方式では、一般に各認証方式による認証結果に基づいて、AND(論理積)あるいはOR(論理和)で結合して最終的な認証結果が決定される。
【0007】
一般に、AND結合の場合には、全ての認証方式で認証成功(OK)となる必要があるため、他人受入率(他人を誤って本人として受け入れる確率)低くする効果が見込まれる。反対にOR結合の場合には、いずれかの認証方式で認証成功(OK)と判定されればよいため、本人受入率(本人を誤って拒否する確率)高くする効果が見込まれる。
【0008】
例えば、特許文献1では、認証方式としてパターンマッチング方式と特徴点方式のそれぞれで照合を行い、その照合結果をOR結合することにより、何れか一方の方式で認証が成功すれば認証成功とすることで、本人受入率(本人を誤って拒否する確率)高くする方式が提案されている。
【0009】
また、特許文献2では、特徴点方式とパターンマッチング方式を条件付でOR結合する方式が提案されている。(図1参照)特許文献2の認証処理としては、前段に認証速度の速い特徴点方式、後段に高性能だが処理速度の遅いパターンマッチング方式を配置し、前段の照合結果に応じて、後段を実施するか判定し、高性能な処理が必要のないユーザに対しては前段で終了することにより処理時間を短縮しつつ他人受入率(他人を誤って本人として受け入れる確率)低くする方式が提案されている。
【特許文献1】特開2004−192633号公報
【特許文献2】特開2006−107340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
指紋認証の運用ケースが増えるにつれ、運用条件も多様化している。具体的には、ユーザ数の多い大規模な認証システムでは、セキュリティ(他人受入率)を重視されるため、指紋入力時の指紋の取得範囲により厳しい制限(広い取得面積、指紋中心など特徴的な領域の取得)が必要とされる。制限のある入力例を図2に示す。図2(a)は渦型、図2(b)は流れ型、図2(c)は波形をそれぞれ表しており、それぞれ指紋の中心位置に十字の印を付与している。
【0011】
高齢者や子供など習熟が困難な利用者、指の関節が曲がっていてまっすぐに指の伸ばせない利用者、無意識に指紋を入力していて入力する位置が定まらない利用者では、指紋の入力が不規則(ラフ)になり、指紋の取得範囲が狭くなる場合がある。不規則(ラフ)な入力例を図3に示す。図3では図2(a)の渦型を例にとって取得される指紋の例を示している。図3(a)は指の先端側のみが入力され例、図3(b)は指の根元側のみが入力された例、図3(c)は指の右側のみが入力された例を示しており、図3(a)〜(c)のそれぞれには図2(a)の指紋中心に対応する位置に十字の印を付与している。
【0012】
図3(a)〜(c)の例では指紋の取得範囲が狭く、十字の印で示される指紋中心など特徴的な領域の取得ができておらず指紋の再入力が必要となる。あるいはそのまま認証に使用した場合には本人拒否率が増加する。など利用者にとっての利便性が損なわれることが問題となる。
【0013】
したがって、セキュリティを重視する運用において、指紋入力時の取得範囲が狭くなるような不規則(ラフ)な入力をした場合でも、認証システムの利用者の利便性を高めることが課題となる。
【0014】
よって、不規則(ラフ)な指紋が入力された場合、以下の対応が必要となる。
【0015】
図2(a)〜(c)に示される制限のある入力の場合には、認証時に予め登録データと照合データの指紋中心位置を用いて位置合せできるため、その後の処理では探索範囲を縮小できる。しかしながら、図3(a)〜(c)の様な不規則(ラフ)な入力では指紋中心等の特徴が明確に写っていないため、探索範囲を拡大して比較照合する必要がある。
【0016】
また、指の先端側の指紋パターンは、紋様が異なっていても類似している。図4には各指紋紋様における指の先端側の入力例を示している。図4(a)は渦型、図4(b)は流れ型、図4(c)は波型をそれぞれ示している。各型の指先端側だけを比較するとよく似た形状であり、パターンマッチング方式では、類似度のスコアが大きくなる傾向がある。
【0017】
更に、部分的に取得された小領域の指紋から取得される特徴点は少なく、小領域の少ない特徴点で登録指紋データと比較する事により類似度のスコアが大きくなり、他人受け入れ率(誤認証の確立)が高くなることも予測される。
【0018】
よって、不規則(ラフ)に指紋を入力して指紋の一部の領域が取得された場合でも誤照合の発生頻度を低減する必要がある。
【0019】
このよう指紋の一部の領域のみが入力された場合でも誤照合減らし、利用者の利便性を向上させるという課題について前述の特許文献1及び特許文献2には何ら開示されておらず解決できていない。
【0020】
本発明は、前述の課題を解決するもので、不規則な指紋入力がなされた場合でも誤照合の発生頻度を下げ指紋認証利用者の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の認証装置は、登録生体データを格納する記憶部と、生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部にて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の1つである第1生体特徴データとを比較照合する第1認証部と、前記登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の前記第1生体特徴データとは異なる第2生体特徴データと比較照合する第2認証部と、前記第1認証部と前記第2認証部のそれぞれについて、照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することにより、前記第1認証部と前記第2認証部での認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0022】
以上の構成により本願の生体認証装置は、入力生体情報と登録生体情報の認証結果だけではなく、入力生体情報と登録生体情報の位置合わせ結果を評価し、認証が成功との判定の場合でも位置合わせの結果を評価し認証の信頼性が高いかを判断し、信頼性が低いと判断される場合は認証成功としないため、確実に誤照合発生を低減できる効果を奏する。
【0023】
また、位置合わせ結果信頼性か高い場合は認証成功とする事で、再入力を減らし利用者の利便性を向上させる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本明細書に開示された生体認証装置または生体認証方法を適用したコンピュータについて説明する。
【0025】
実施形態による生体認証装置または生体認証方法を適用したコンピュータは、コンピュータを利用しようとする利用者がコンピュータにログインする際、利用者の生体情報を入力生体情報として取得する。そしてこのコンピュータは、入力生体情報を、コンピュータに予め登録された利用者のうち、利用者により入力された識別情報に対応する登録利用者の登録生体情報と照合する。このコンピュータは、照合処理の結果に基づいて、入力生体情報と登録生体情報が一致する判定した場合、利用者を登録利用者として認証する。そしてこのコンピュータは、認証された利用者がそのコンピュータにログインすることを許可する。
【0026】
ここで、このコンピュータは、センサにより利用者の生体情報を取得する。そしてこのコンピュータは、入力生体情報と登録生体情報の類似度合いを表す照合スコアを算出して、利用者を本人と認証するか否かを判定する。
【0027】
なお、本実施形態では、コンピュータは生体認証の対象となる生体情報として指紋を利用する。しかしながら、指紋認証だけではなく、イメージデータ等空間情報を利用した生体認証技術に対して適用可能である。
【0028】
図5は、生体認証処理を実行するコンピュータの概略構成図を示す。図5に示されるように、このコンピュータは、入力部1と、表示部2と、生体情報取得部3と、記憶部4と、処理部5と、各部を接続するパス6とを有する。本構成における生体認証処理は、利用者がログインしようとするときに、利用者の指紋を表す指紋画像を用いて生体認証処理を実行する。そしてこの生体認証装置は、生体認証処理の結果、利用者がコンピュータに予めと登録された登録利用者のいずれかであるとして認証した場合、ログイン処理を実行する。そしてコンピュータは、その利用者がコンピュータを使用することを許可する。
【0029】
以下に各構成の詳細を説明する。
【0030】
入力部1は、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパッドなどの入力デバイスを有する。そして入力部1は、利用者がコマンド、データなどを入力するために使用される。また入力部1は、利用者の識別情報をコンピュータに入力するための識別情報入力部として機能する。なお、利用者の識別は、例えば、英数字または記号を含む文字列または利用者の氏名とすることができる。入力部1を介して入力されたコマンド、データ、あるいは利用者の識別情報は、処理部5へ渡される。
【0031】
表示部2は、例えば、液晶ディスプレイまたはCRTモニタなどの表示装置を有する。そして表示部2は、入力部を介してコンピュータに入力されたコマンド、データもしくは利用者の識別情報、または、処理部により実行されたアプリケーションに関連する各種情報などを表示する。
【0032】
生体情報取得部3は、コンピュータに正規の利用者が登録されるときに、生体認証処理の基準となる、その利用者の指紋を表す登録指紋画像を生成する。また生体情報取得部3は、利用者がコンピュータにログインしようとするときに、その利用者の指紋を表す入力指紋画像を生成する。そのために、生体情報取得部3は、例えば、スイープ式の指紋センサを有する。この指紋センサは、例えば、光学式、静電容量式、電界式または感熱式の何れかの方式を採用したセンサとすることができる。また生体情報取得部3は、エリアセンサを利用する、何れかの接触式の指紋センサを有してもよい。そして生体情報取得部3は、生成した指紋画像を処理部5へ渡す。なお、入力部1と生体情報取得部3は、一体的に形成されていてもよい。
【0033】
利用者が入力部1を介してログインを求める操作を行うと、コンピュータは、例えば、表示部2に、利用者の識別情報を入力することを促すメッセージと、生体情報取得部3に指を載せることを促すメッセージとを表示させる。コンピュータは、生体情報取得部3を介して利用者の入力指紋画像を取得すると、その入力指紋画像と入力部1を介して入力された利用者の識別情報と関連付ける。また利用者が入力部を介してコンピュータに登録する操作を行うと、コンピュータは、例えば、表示部2に、利用者の識別情報を入力することを促すメッセージと、生体情報取得部3に指を載せることを促すメッセージとを表示させる。コンピュータは、生体情報取得部3を介して利用者の登録指紋画像を取得すると、その登録指紋画像と入力部1を介して入力された利用者の識別情報とを関連付ける。
【0034】
記憶部4は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、または光ディスク装置のうちの少なくとも何れか一つを有する。そして記憶部4は、コンピュータで使用されるアプリケーションプログラム、少なくとも一人の登録利用者の識別情報及び個人設定情報、各種のデータ等を記憶する。また記憶部4は、生体認証処理を実行するためのプログラムを記憶する。さらに記憶部4は、登録利用者それぞれについて、登録利用者の特定の指の指紋を表す登録特徴データを記憶する。
【0035】
処理部5は、1個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして処理部5は、入力部1を介して入力されたコマンドまたは各種のアプリケーションを実行する。また処理部5は、コンピュータに対する利用者のログイン及びログアウト、利用者の登録などの処理を実行する。ここで処理部5は、入力部1を介して利用者からコンピュータへのログイン処理を実行することが要求されると、生体情報取得部3から取得した、その利用者の指紋が表された入力指紋画像を用いた生体認証処理を実行する。また処理部5は、入力部1を介して利用者からコンピュータへの登録処理を実行することが要求されると、生体情報取得部3から取得した、その利用者の指紋画像を処理して得られたデータを登録生体データとして記憶部4に保存する。
【0036】
図6は、本発明における生体認証処理を実行するために実現される機能を示す処理部5の機能ブロック図である。処理部5は、生体特徴データ生成部51と、第1認証部52と、第2認証部53と、矛盾可能性検出部54と、認証制御部55と、認証結果比較判定部56とを備える。処理部5が備えるこれらの各部は、処理部5が有するプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、処理部5が備えるこれらの各部は、ファームウェアとしてコンピュータ上で実装されてもよい。さらに、処理部5は、ログイン処理あるいはログアウト処理を実行するモジュールおよび各種アプリケーションを実行するためのモジュールを有してもよい。しかし、ログイン処理あるいはログアウト処理を実行するモジュールなど、図6に示された各部以外のモジュールは、生体認証処理に直接関係しないため、ここでは図6に示された各部についてのみ説明する。
【0037】
図7は、本発明における認証処理手順を示す。
【0038】
認証開始に生体情報取得部3により利用者の指紋画像を取得する。(S101)
生体特徴データ生成部51は、生体情報取得部3により取得された利用者の1つの指紋画像から、第1認証部および第2認証部のそれぞれで認証に用いられる異なる複数の入力生体特徴データを生成する。(S102)
すなわち、予め登録された登録生体データおよび生体特徴データ生成部51で生成された入力生体特徴データは、処理部5が備える認証部に対応した入力生体特徴データから構成される。入力生体特徴データとしては、特徴点(指紋の隆線の端点や分岐点の位置や方向など)、隆線パターン(画像そのもの、任意の画像処理を施した画像など)や周波数情報などがある。例えば、照合処理で特徴点方式が用いられる場合、隆線の分岐点及び端点をマニューシャ(特徴点)として抽出する。隆線の分岐点及び端点を入力指紋画像から抽出するために、例えば、局所閾値法を用いて、入力指紋画像を2値化する。次に、2値化された入力指紋画像に対して細線化処理を行う。その後、複数のマスクパターンを用いて細線化された入力指紋画像の部分領域を走査することにより、何れかのマスクパターンと一致するときの、入力指紋画像上の位置を検出する。検出された位置の中心画素を、特徴点として抽出する。なお、マスクパターンは、例えば、3×3画素で表され、隆線の分岐点または端点に対応する2値パターンを持つ。さらに、抽出された特徴点の位置、及びその特徴点近傍の隆線方向を、特徴点を表す情報として求める。なお、特徴点近傍の隆線方向を求めるために、隆線方向を求める公知の何れかの方法を利用することができる。なお、隆線の端点または分岐点を特徴点として求める公知の他の方法を用いて、入力指紋画像及び登録指紋画像から特徴点を抽出してもよい。一方、照合処理にパターンマッチング方式が用いられた場合、取得された指紋画像全体あるいは所定の領域を切り取った画像を入力生体特徴データとして取得する。
【0039】
以降、記憶部に登録された登録生体情報を予め登録された登録生体データと称し、生体特徴データ生成部51で生成される特徴データを入力生体特徴データと称する。
【0040】
続いて、第1認証部52は、利用者の予め登録された登録生体データを記憶部から取得し、入力生体特徴データと予め登録された登録生体データを比較照合して照合スコアおよびその照合スコアにおける登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を算出する。(S103)
算出された照合スコアを予め設定された照合判定閾値と比較することにより、認証の成功/失敗を判定する。(S104)
第1認証部52では、特徴点方式等の処理負荷の小さい方式が望ましい。特徴点方式の例として、予め登録された登録生体データの任意の特徴点を、第1の基準特徴点として選択する。また、入力生体特徴データの特徴点のうちの一つを第2の基準特徴点として選択する。そして、第2の基準特徴点を第1の基準特徴点と一致させるように、入力生体特徴データを平行移動させる。その後、入力生体特徴データを回転させながら、予め登録された登録生体データの特徴点と一致する入力生体特徴データの特徴点の個数を求める。第1の基準特徴点と第2の基準特徴点の組み合わせを変えつつ、上記の処理を繰り返して、予め登録された登録生体データの特徴点と一致する入力生体特徴データの特徴点の個数の最大値を求める。最後に、その個数の最大値を、入力生体特徴データから抽出された特徴点の総数で割った値を照合スコアとして求める。したがって、この場合、照合スコアは0〜1の値を持ち、入力生体特徴データと予め登録された登録生体データの類似度合いが高い程、照合スコアの値は1に近づく。なお、予め登録された登録生体データの特徴点と一致する入力生体特徴データの特徴点を検出するために、入力生体特徴データの着目特徴点の位置から所定範囲内に、予め登録された登録生体データの特徴点が存在するか否か調べる。ここで、所定範囲は、例えば、隣接する2本の隆線の平均間隔に相当する値とすることができる。着目特徴点の位置から所定範囲内に、予め登録された登録生体データの特徴点が存在する場合、それら特徴点近傍の隆線方向の角度差を求める。そして隆線方向の角度差の絶対値が所定角度範囲内に含まれる場合、その予め登録された登録生体データの特徴点を、入力生体特徴データの着目特徴点と一致すると判定する。なお所定角度範囲は、着目特徴点近傍の隆線方向と対応する予め登録された登録生体データの特徴点近傍の隆線方向とが一致しているとみなせる許容限界に対応する値であり、例えば、10度とすることができる。なお、着目特徴点の位置から所定範囲内に、着目特徴点と同じ種類の予め登録された登録生体データの特徴点が存在する場合にのみ、入力生体特徴データの着目する特徴点と一致する予め登録された登録生体データの特徴点が存在すると判定してもよい。また、入力生体特徴データの部分領域の特徴点と一致する予め登録された登録生体データの特徴点の個数を求める公知の他の方法を利用してもよい。
【0041】
位置合わせ結果として、具体的には予め登録された登録生体データと入力生体特徴データを重ね合わせ、重なりあった部位同士の照合スコアが最も高くなる状態で、それぞれのデータの基準位置同士の座標差ベクトル(dx、dy)を算出する。(S105)
矛盾可能性検出部54は、第1認証部で認証を行った結果、認証成功となった場合に実行される。第1認証部の予め登録された登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を用いて、その認証結果の矛盾可能性を検出する。(S106)
具体的には、第1認証部で出力した座標差ベクトル(dx1、dy1)のノルムを算出し、所定の閾値以上であった場合に矛盾発生の可能性があると判定する。矛盾可能性検出部の判定結果の例として、矛盾発生の可能性が低い例を図8に、矛盾発生の可能性が高い例を図9に示す。図8および図9では、それぞれ(a)登録生体データ、(b)入力生体特徴データ、(c)登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を示している。図8および図9において、画像領域全体の重心を登録生体データおよび入力生体特徴データの基準位置とし、座標差ベクトルをも求める際に利用する。図8及び図9中に登録生体データの重心に実線の十字マークを、入力生体特徴データの重心に点線の十字マークをそれぞれ付与している。
【0042】
図8(a)の登録生体データの重心と図8(b)の入力生体特徴データの重心を図8(c)のように重ねた場合の重心距離を座標差ベクトル(dx1、dy1)のノルムとして算出する。図9も図8と同様に登録生体データの重心と入力生体特徴データの重心の間の距離を座標差ベクトル(dx1、dy1)のノルムとして算出する。
【0043】
閾値の例として、指紋画像の画像サイズが300×300ピクセル、解像度が500dpiであった場合、座標差ベクトルのノルムが100ピクセル以上であった場合に矛盾可能性が高いと判定する。
【0044】
認証制御部55は、矛盾可能性検出部により、第1認証部による認証結果に矛盾が生じやすいと判定された場合に、第2認証部での認証を実施する。反対に矛盾が生じやすいと判定されなかった場合には、第2認証部は実行せずに認証成功で終了とする。(S106:NO)
第2認証部53は、第1認証部52と同様に、入力生体特徴データと登録生体データを比較照合して、認証の成功/失敗を判定する。同様に、座標差ベクトル(dx2、dy2)を出力する。(S107)
ただし、第1認証部と異なる特性を持った方式とする。例えば、パターンマッチング方式、周波数方式とする。パターンマッチング方式が用いられた場合の例を示す。入力生体特徴データの画像情報と予め登録された登録生体データの画像情報の相対的な位置を様々に変えつつ、下記の式を用いて、入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報との間の相関値c(i、j)を算出する。
【0045】
【数1】
【0046】
ここで、I(x、y)は、入力生体特徴データの画像情報に含まれる、水平座標x、垂直座標yの画素の画素値を表す。またT(x-i、y-j)は、登録生体データの画像情報に含まれる、水平座標(x-i)、垂直座標(y-j)の画素の画素値を表す。また、Iavは、入力生体特徴データの画像情報に含まれる画素の平均画素値であり、Tavは、登録生体データの画像情報に含まれる画素の平均画素値である。なお、i及びjは、それぞれ、入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報の水平方向及び垂直方向のずれ量を表す。さらにc(i、j)は、入力生体特徴データの画像情報が、登録生体データの画像情報に対して水平方向にi画素かつ垂直方向にj画素ずれているときの相関値を表す。この相関値c(i、j)は、-1〜1の間に含まれる値をとり得る。入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報とが完全に一致している場合、相関値c(i、j)は1となる。一方、入力生体特徴データの画像情報と登録生体データの画像情報とが完全に反転している場合、相関値c(i、j)は-1となる。
【0047】
認証結果比較判定部56は、第1認証部と第2認証部が共に本人と認証された場合(S108)に、登録生体データと入力生体特徴データとの位置合せ結果を比較(S109)し、互いの位置合せ結果に矛盾があれば認証結果を棄却して他人と判定し、反対に矛盾がなければ認証結果を採用して本人と判定する。(S110)
具体的には、第1認証部の座標差ベクトル(dx1、dy1)と第2認証部の座標差ベクトル(dx2、dy2)との差のノルムを算出する。算出したノルムが所定の閾値以上であった場合に、明らかに第1認証部と第2認証部が異なる位置で認証したとみなし、照合結果に矛盾が生じていると判定する。各認証部の位置合せ結果が異なる例を図10に示す。
【0048】
図10(a)は第1認証部の照合結果の例を示しており、実線の矩形領域が登録生体データのデータ領域を示し、実線の網かけ領域が登録生体データを表している。また、点線の矩形領域が入力生体特徴データのデータ領域を示し、点線の斜線領域が入力生体特徴データを表している。図10(b)は第2認証部の照合結果の例を示している。また、点線の矩形領域が入力生体特徴データのデータ領域を示し、点線の斜線領域が入力生体特徴データを表している。図10(a)の例では第1認証部52での認証結果、登録生体データの上側領域で入力生体特徴データと認証ができたことを表しており、登録生体データと入力生体特徴データの重心を表す十字の印間の距離が座標差ベクトル(dx1、dy1)として検出される。図10(b)の例では第2認証部53での認証結果、登録生体データの中央領域で入力生体特徴データと認証ができたことを表しており、登録生体データと入力生体特徴データの重心を表す十字の印間の距離が座標差ベクトル(dx2、dy2)として検出される。第1認証部52で検出された座標差ベクトル(dx1、dy1)と、第2認証部53で検出された座標差ベクトル(dx2、dy2)の差のノルムを算出することで、第1認証部52での照合位置と第2認証部53照合位置との位置のズレが判断可能となる。即ち、上記の説明の通り、算出したノルムが所定の閾値以上であった場合に、明らかに第1認証部と第2認証部が異なる位置で認証したとみなし、照合結果に矛盾が生じていると判定する。
【0049】
閾値の例として、指紋画像の画像サイズが300×300ピクセル、解像度が500dpiであった場合、座標差ベクトルのノルムが50ピクセル以上であった場合に矛盾可能性が高いと判定する。
【0050】
認証結果比較判定部56にて、矛盾可能性検出部54の判定結果に基づき、ノルムが大きい場合に各認証部52,53の照合スコアを減少させて認証されにくくする。例えば,図11に照合スコアを減ずるための重みテーブルの例を示す。判定結果に基づいて,各認証の照合スコアに乗じる重みを切り替えることにより,矛盾可能性が高ければ照合スコアが減少される。それにより,矛盾可能性が高い場合に,認証されにくくなり,他人受入の低減が期待できる。また、別な例として、図12に照合スコアを照合レベルに量子化するための閾値テーブルの例を示す。図12では,照合スコアは0〜100の範囲に含まれる値をとり,類似度合いが高くなるにつれて100に近づく。各認証部の照合スコアに応じて,図12の閾値により変換される照合レベルを決める。例えば,照合スコアが65だった場合,矛盾可能性が高ければ照合レベルは3に変換され,反対に低ければ4に変換される。すなわち,矛盾可能性が高い場合には,照合レベルは低く変換される。変換された照合レベルは,予め決められた照合閾値レベルと比較され,認証の成功/失敗が判定される。以上の手順により,矛盾可能性が高い(ノルムが大きい)場合に,認証されにくくなり,他人受入の低減が期待できる。なお,図12の閾値テーブルは第1認証部および第2認証部の両方で用いることを想定しているが,認証部ごとに閾値テーブルを設けてもよい。
【0051】
さらに、図7の処理手順では、第1認証部52にて認証成功となった場合にのみ、矛盾可能性検出部54を実行するが、別の実施形態として、照合判定閾値とは別な閾値を設けて、矛盾可能性検出部54の実行を制御してもよい。その場合、0<実施判定閾値<照合判定閾値とする。第1認証部52にて認証成功とならないが、ある程度の高い照合スコアが算出されていた(本人と判定できないがある程度の類似性は示している)場合に、矛盾可能性を検出する。認証制御部55では、矛盾が生じやすいと判定された場合には、認証失敗と判定して終了する。反対に、矛盾が生じやすいと判定されなかった場合には、本人と判定される可能性があるとみなして第2認証部53で認証を行なう。認証結果比較判定部56では、第2認証部53にて本人と認証された場合に、第1認証部52と第2認証部53の位置合せ結果を比較し、互いの位置合せ結果に矛盾があれば、第2認証部の認証結果を棄却して他人と判定し、反対に矛盾がなければ第2認証部の認証結果を採用して本人と判定する。それにより、第1認証部52と第2認証部53の位置合せ結果に矛盾がない場合には、第1認証部52と第2認証部53の認証結果のOR結合による認証性能の向上が期待できる。
【0052】
なお、実施形態では、2種類の認証部を用いた例について説明したが、3種以上の認証部を備えてもよく、矛盾可能性検出部の判定結果に基づいて、認証制御部が実行する認証部の種類と数を切り替えることも考えられる。矛盾可能性が高ければ高いほど、実行する認証部の数を増やすことにより、位置合せ結果の矛盾の有無を厳しく判定することができ、その結果として、他人による誤照合の発生頻度を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】は、既存のハイブリット認証の例を示す概略構成図である。
【図2】は、制限のある入力例を説明する図である。
【図3】は、不規則な入力例を説明する図である。
【図4】は、各指紋紋様における指の先端側の入力例を説明する図である。
【図5】は、本発明による生体認証処理を実行するコンピュータの概略構成図である。
【図6】は、本発明の機能ブロック図である。
【図7】は、本発明における認証処理手順を示す図である。
【図8】は、矛盾可能性検出部の判定結果の例1を示す図である。
【図9】は、矛盾可能性検出部の判定結果の例2を示す図である。
【図10】は、各認証部の位置合せ結果が異なる例を示す図である。
【図11】は、照合スコアを変換するための重みテーブルを示す図である。
【図12】は、照合スコアを照合レベルに変換するための閾値テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 入力部
2 表示部
3 生体情報取得部
4 記憶部
5 処理部
6 バス
51 生体特徴データ生成部
52 第1認証部
53 第2認証部
54 矛盾可能性検出部
55 認証制御部
56 認証結果比較判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
登録生体データを格納する記憶部と、
生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部にて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、
登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の1つである第1生体特徴データとを比較照合する第1認証部と、
前記登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の前記第1生体特徴データとは異なる第2生体特徴データと比較照合する第2認証部と、
前記第1認証部と前記第2認証部のそれぞれについて、認証結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することにより、前記第1認証部と前記第2認証部での認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定部を備え、
前記第1認証部と前記第2認証部の両認証結果が共に成功であった場合に認証結果比較判定部の判定結果で矛盾がなければ第1及び第2認証部の認証結果を採用することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体認証装置において、
前記第1認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し第1認証部の認証結果の矛盾可能性を検出する矛盾可能性検出部と、
前記矛盾可能性検出部にて、矛盾が生じやすいと判定された場合に前記第2認証部での認証を行なう認証制御部と、
を備えることを特徴とする生体認証装置。
【請求項3】
前記矛盾可能性検出部は、前記第1認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて登録生体データと生体特徴データのそれぞれの基準位置間の座標差ベクトルを用いて矛盾可能性を評価することを特徴とする請求項2記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記認証結果比較判定部は、前記第1認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて登録生体データと生体特徴データのそれぞれの基準位置間の第1座標差ベクトルと、前記第2認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて登録生体データと生体特徴データのそれぞれの基準位置間の第2座標差ベクトルを用いて、第1認証部と第2認証部の認証結果に矛盾がないか判定することを特徴とする請求項1又は請求項記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記認証結果比較判定部は、前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを変換するための重みを格納したテーブルを備え、
前記矛盾可能性検出部により矛盾可能性ありと判定された場合に、前記テーブルに基づいて前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを減少させることを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の生体認証装置
【請求項6】
前記認証結果比較判定部は、前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを照合レベルに量子化するための閾値を格納したテーブルを備え、
前記矛盾可能性検出部により矛盾可能性ありと判定された場合に,前記テーブルに基づいて前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを低いレベルに変換することを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項7】
予め登録された登録生体データを格納する記憶部と、
生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部にて取得された生体情報から、生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、
登録生体データと生体特徴データ生成部にて生成された生体特徴データとを比較照合する第1認証部と、
前記第1認証部にて照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて矛盾可能性を評価する矛盾可能性検出部を備え、
前記第1認証部の認証結果が成功の時、前記矛盾可能性検出部の評価結果で矛盾可能性があると判定された場合は第1認証部の認証結果のみで認証成功としないことを特徴とする生体認証装置。
【請求項8】
生体情報を取得する生体情報取得ステップ
前記生体情報取得ステップにて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成ステップと、
予め登録された登録生体データと前記生体特徴データ生成ステップにて生成された複数の生体特徴データの内の1つである第1生体特徴データとを比較照合する第1認証ステップと、
前記予め登録された登録生体データと前記生体特徴データ生成ステップにて生成された複数の生体特徴データの内の前記第1生体特徴データとは異なる第2生体特徴データと比較照合する第2認証ステップと、
前記第1認証ステップと前記第2認証ステップのそれぞれについて、照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することにより、前記第1認証ステップと前記第2認証ステップでの認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定ステップと、
を備えることを特徴とする生体認証方法。
【請求項1】
登録生体データを格納する記憶部と、
生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部にて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、
登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の1つである第1生体特徴データとを比較照合する第1認証部と、
前記登録生体データと前記生体特徴データ生成部にて生成された複数の生体特徴データの内の前記第1生体特徴データとは異なる第2生体特徴データと比較照合する第2認証部と、
前記第1認証部と前記第2認証部のそれぞれについて、認証結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することにより、前記第1認証部と前記第2認証部での認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定部を備え、
前記第1認証部と前記第2認証部の両認証結果が共に成功であった場合に認証結果比較判定部の判定結果で矛盾がなければ第1及び第2認証部の認証結果を採用することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体認証装置において、
前記第1認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し第1認証部の認証結果の矛盾可能性を検出する矛盾可能性検出部と、
前記矛盾可能性検出部にて、矛盾が生じやすいと判定された場合に前記第2認証部での認証を行なう認証制御部と、
を備えることを特徴とする生体認証装置。
【請求項3】
前記矛盾可能性検出部は、前記第1認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて登録生体データと生体特徴データのそれぞれの基準位置間の座標差ベクトルを用いて矛盾可能性を評価することを特徴とする請求項2記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記認証結果比較判定部は、前記第1認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて登録生体データと生体特徴データのそれぞれの基準位置間の第1座標差ベクトルと、前記第2認証部で認証結果を得たときの登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて登録生体データと生体特徴データのそれぞれの基準位置間の第2座標差ベクトルを用いて、第1認証部と第2認証部の認証結果に矛盾がないか判定することを特徴とする請求項1又は請求項記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記認証結果比較判定部は、前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを変換するための重みを格納したテーブルを備え、
前記矛盾可能性検出部により矛盾可能性ありと判定された場合に、前記テーブルに基づいて前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを減少させることを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の生体認証装置
【請求項6】
前記認証結果比較判定部は、前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを照合レベルに量子化するための閾値を格納したテーブルを備え、
前記矛盾可能性検出部により矛盾可能性ありと判定された場合に,前記テーブルに基づいて前記第1認証部及び第2認証部の照合スコアを低いレベルに変換することを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項7】
予め登録された登録生体データを格納する記憶部と、
生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部にて取得された生体情報から、生体特徴データを生成する生体特徴データ生成部と、
登録生体データと生体特徴データ生成部にて生成された生体特徴データとを比較照合する第1認証部と、
前記第1認証部にて照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係に基づいて矛盾可能性を評価する矛盾可能性検出部を備え、
前記第1認証部の認証結果が成功の時、前記矛盾可能性検出部の評価結果で矛盾可能性があると判定された場合は第1認証部の認証結果のみで認証成功としないことを特徴とする生体認証装置。
【請求項8】
生体情報を取得する生体情報取得ステップ
前記生体情報取得ステップにて取得された1つの生体情報から特性の異なる認証に用いる複数の生体特徴データを生成する生体特徴データ生成ステップと、
予め登録された登録生体データと前記生体特徴データ生成ステップにて生成された複数の生体特徴データの内の1つである第1生体特徴データとを比較照合する第1認証ステップと、
前記予め登録された登録生体データと前記生体特徴データ生成ステップにて生成された複数の生体特徴データの内の前記第1生体特徴データとは異なる第2生体特徴データと比較照合する第2認証ステップと、
前記第1認証ステップと前記第2認証ステップのそれぞれについて、照合結果を得た時の登録生体データと生体特徴データとの位置関係を取得し比較することにより、前記第1認証ステップと前記第2認証ステップでの認証に矛盾がないかを判定する認証結果比較判定ステップと、
を備えることを特徴とする生体認証方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−76369(P2011−76369A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227140(P2009−227140)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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