説明

生体認証装置

【課題】小型かつ簡易な構成で、生体認証および位置検出を複合的に実現することが可能な生体認証装置を提供する。
【解決手段】生体認証装置1は、近赤外光源10、カバーガラス11、マイクロレンズアレイ12、受光素子13、画像処理部14、認証部15、位置検出部16、光源駆動部181、受光素子駆動部182および制御部19から構成される。カバーガラス上方の生体2へ向けて、近赤外光源10から光が照射されると、生体2を照射する光は、マイクロレンズアレイ12により集光されたのち、受光素子13で受光される。これにより、生体2の受光データが取得され、この受光データに基づいて、画像処理部14では視差画像データが生成される。上記視差画像データに基づいて、認証部15では生体認証、位置検出部16では位置検出がそれぞれ行われる。同一の光源および検出光学系により生体認証および位置検出がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子を用いた生体認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体部位における構造物を撮像対象とする撮像装置は、生体認証装置などに利用されている。このような撮像装置は、それ自体の厚みが大きいため、応用機器において、その外部に設置されたり、光学系と検出系とがそれぞれ独立して設けられる(特許文献1,2参照)ことが多い。ところが、近年、様々な機器の小型化や薄型化が進むに連れて、また製造面やデザイン面における制約などによって、上記生体認証装置についても小型化、薄型化が要求され、機器の内部に搭載されることが望まれている。
【0003】
そこで、小型のモジュールとして、指の静脈パターンを用いて生体の認証を行う指静脈認証装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の指静脈認証装置では、近赤外光を発する光源を受光素子(イメージセンサ)の両端側に配置して指を下方から照明し、指の内部における散乱光を受光するようになっている。このとき、近赤外光は静脈内のヘモグロビンにより吸収されるため、散乱光を受光することにより静脈パターンが検出される。この他にも、屈折率分散型レンズアレイを用いることにより薄型化を実現した指紋認証装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−312748号公報
【特許文献2】特開2006−181296号公報
【特許文献3】特開2005−323892号公報
【特許文献4】特開平10−289304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、例えば携帯電話機などの各種機器では、タッチパッドやタッチパネルを搭載したものが実用化されている。これらのタッチパッドやタッチパネルは、指先やペン(スタイラス)などの位置を検出することにより入力を可能にするものであり、位置検出手段としては、例えば感圧方式や静電方式による各種位置センサが用いられている。
【0006】
また最近では、機器の多様化に伴って、これらタッチパネル等による位置検出機能を複合的に組み合わせた生体認証装置の開発が望まれている。しかしながら、一つの機器内にタッチパネルと生体認証装置との両者を搭載しようとすると、全体の構成が複雑になると共に大型化し、特に携帯電話機などの小型の機器へ対応することが困難になるという問題があった。また、特にタッチパネルと生体認証装置とを両立する照明手段については、その構造や配置が困難であった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型かつ簡易な構成で、生体の認証および物体の位置検出を複合的に実現することが可能な生体認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体認証装置は、物体へ向けて光を照射する光源と、物体からの光を集光するマイクロレンズアレイ部と、マイクロレンズアレイ部において集光された光に基づいて、物体の受光データを取得する受光素子と、受光素子で取得された受光データに基づき、物体の位置を検出する位置検出部と、物体が生体である場合に、受光素子で取得された受光データに基づき、生体の認証を行う認証部とを備えたものである。
【0009】
本発明の生体認証装置では、光源から物体へ照射された光は、マイクロレンズアレイ部で集光されたのち、受光素子によって受光される。これにより、物体の受光データが取得される。このようにして取得された受光データに基づいて、位置検出部では物体の位置が検出される一方、認証部では、物体が生体である場合にその生体の認証が行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体認証装置によれば、光源から物体に向けて照射された光を、マイクロレンズアレイ部により集光したのち、受光素子において受光することで受光データを取得することができる。この受光データに基づいて、認証部により生体の認証を行うだけでなく、位置検出部により物体の位置を検出するようにしたので、各種位置センサを別途設ける必要がない。よって、小型かつ簡易な構成で、生体認証および位置検出を複合的に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る生体認証装置の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示した生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。
【図3】図1の受光素子で取得された受光データについて説明するための図である。
【図4】図1の受光素子で取得された受光データの2次元構成を表す模式図である。
【図5】(A)図は実際の指の撮像画像、(B),(C)図は(A)図から得られた視差画像である。
【図6】図1に示した位置検出部における位置検出動作を説明するための視差画像である。
【図7】変形例1に係る生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。
【図8】変形例2に係る生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。
【図9】変形例3に係る生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。
【図10】適用例1に係る携帯電話機の概略構成を表す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。
【図12】適用例2に係る携帯電話機の概略構成を表す斜視図である。
【図13】図12に示した携帯電話機の他の使用例を表すものである。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る生体認証装置の全体構成を表す図である。
【図15】図14に示した生体認証装置の上面構成を表す模式図である。
【図16】図14の生体認証装置において、位置検出時および認証時に対応する指の配置を表す図である。
【図17】図14の生体認証装置における機能判定処理および光源出力変更処理の流れ図である。
【図18】変形例4に係る生体認証装置の上面構成を表す模式図である。
【図19】図18の生体認証装置において、位置検出時および認証時に対応する指の配置を表す図である。
【図20】図18の生体認証装置における機能判定処理および光源出力変更処理の流れ図である。
【図21】変形例5に係る携帯電話機の概略構成を表す図である。
【図22】図21の携帯電話機における機能切り替え処理および光源出力変更処理の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体認証装置(生体認証装置1)の全体構成を表すものである。図2(A)は、生体認証装置1の要部構成を表す断面模式図であり、図2(B)は生体認証装置1を上面からみた模式図である。この生体認証装置1は、撮像対象物である生体(例えば、指先)2の認証結果データDout1を出力すると共に、生体
2の位置データDout2を出力するものである。生体認証装置1は、近赤外光源10、カ
バーガラス11、マイクロレンズアレイ12、受光素子13、画像処理部14、認証部15、位置検出部16、光源駆動部181、受光素子駆動部182および制御部19から構成されている。
【0014】
近赤外光源10は、撮像対象物である生体2へ向けて、近赤外領域の光(以下、単に近赤外光という)を照射する光源である。この近赤外光源10は、例えば図2(B)に示したように、カバーガラス11、マイクロレンズアレイ12および受光素子13が設けられた矩形状の撮像領域Sの対向するY軸方向の2辺に沿って複数(図2(B)では各3つ)配置されている。近赤外光源10は、例えばLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)などにより構成されている。なお、近赤外光とは、例えば700nm〜1200nm程度の波長領域の光である。このような波長領域の光を用いた場合、生体に対する透過率と、生体内の還元ヘモグロビン(静脈)への吸収率との兼ね合いより、生体2の静脈認証を行う場合において、光利用効率をより高めることができる。
【0015】
カバーガラス11は、生体認証装置1内部を保護すると共に、生体2との接点となる部分である。
【0016】
マイクロレンズアレイ12は、複数のマイクロレンズがマトリクス状に配列してなり、カバーガラス11の下方に配置されている。各マイクロレンズは、撮像対象物である生体2の撮像レンズとして機能するものである。
【0017】
受光素子13は、マイクロレンズアレイ12の各マイクロレンズにより集光された光に基づき、受光データを取得するものである。この受光素子13は、マイクロレンズアレイ12の焦点面に配置され、一つのマイクロレンズに対して、複数の画素が割り当てられるようになっている。受光素子13は、例えば、マトリクス状に配列された複数の受光画素よりなり、例えば複数のCCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)などにより構成されている。本実施の形態では、この受光素子13が、撮像領域Sの全面に渡って設けられている。
【0018】
画像処理部14は、制御部19からの制御に応じて、受光素子13で得られた受光データに対して所定の画像処理を施すことにより、生体2の画像処理データを生成し、認証部15および位置検出部16へそれぞれ出力するものである。なお、認証部15および位置検出部16へ出力する画像処理データはそれぞれ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、画像処理部14、ならびに後述する認証部15、位置検出部16および制御部19は、例えばマイクロコンピュータなどにより構成される。
【0019】
認証部15は、制御部19からの制御に応じて、画像処理部14から入力される画像処理データのパターンと、図示しないパターン保持部に保持されている生体認証パターンとを比較することにより、生体2の認証(本実施の形態では、静脈認証)を行うものである。パターン保持部は、予め生体を撮像して得られた生体認証パターンが保持される部分であり、不揮発性の記録素子(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)など)により構成される。認証部15により得られた結果は、認
証結果データDout1として外部へ出力されるようになっている。
【0020】
位置検出部16は、制御部19からの制御に応じて、画像処理部14から入力される画像処理データに基づいて、生体2の位置(x,y,z)を検出するものである。位置検出部16により検出された位置情報は、位置データDout2として外部へ出力されるように
なっている。
【0021】
光源駆動部181は、制御部19からの制御に応じて、近赤外光源10の発光駆動を行うものである。受光素子駆動部182は、制御部19からの制御に応じて、受光素子13の撮像駆動(受光駆動)を行うものである。
【0022】
制御部19は、画像処理部14、認証部15、光源駆動部181および受光素子駆動部182の動作を適宜制御するものである。
【0023】
次に、上記生体認証装置1の作用、効果について説明する。
【0024】
生体認証装置1では、カバーガラス11に生体(例えば、指先)2が接触または近接していると、光源駆動部181の駆動動作により、近赤外光源10から光Loutが出射され
る。生体2に照射された光は、マイクロレンズアレイ12によって集光されたのち、受光素子13において受光される。これにより、受光素子13において、生体2の受光データが取得され、この受光データは、画像処理部14へ出力される。
【0025】
ここで、図3〜図4を参照して、画像処理部14の具体的な動作について説明する。但し、図3は、生体2の側から受光素子13に到達するまでの光路を模式的に表すものである。図4(A)は、受光素子13で得られた受光データD0の2次元構成を模式的に表すものである。図4(B),(C)はそれぞれ、受光データD0に基づいて生成した視差画像データDL,DRの2次元構成を模式的に表すものである。
【0026】
画像処理部14では、入力された受光データに基づいて、左右2つの視差画像が生成される。ここで、上記受光素子13では、図3に示したように、マイクロレンズごとに受光領域12Dが形成され、各受光光線はその進行方向についての情報を保持した状態で受光される。また、各受光領域12D同士の間で互いに同一の位置に配置された画素における画素データは、同一の進行方向についての情報を含んでいる。画像処置部14では、受光領域12Dで受光される光線のうち、少なくとも2つの光線、例えば光軸Zに対して左右方向からそれぞれ入射する光線LL,LRについての視差画像が生成される。
【0027】
具体的には、まず、受光データD0において、光線LLが受光された画素データP1(図4(A)中において、各受光領域12D同士の間で互いに同一の位置(黒色部分)の画素における画素データ)が、受光領域12Dごとにそれぞれ抽出されたのち、これらの抽出した画素データP1同士が合成される(図4(B))。同様にして、光線LRに対応する画素データP2(図4(A)中の斜線部分)が、受光領域12Dごとにそれぞれ抽出されたのち、これらの抽出した画素データP2同士が合成される(図4(C))。これにより、左右の視差画像データDL,DRが生成される。図5(A)に、実際の撮像画像、図5(B),(C)に、図5(A)の撮像画像から生成した視差画像を示す。
【0028】
上記のようにして生成された視差画像データDL,DRは、必要に応じて他の画像処理、例えば欠陥補正処理やノイズ低減処理などが施されることにより、画像処理データとして、認証部15および位置検出部16へ出力される。
【0029】
認証部15では、入力された画像処理データに基づく静脈パターンと、予め保持された認証用パターンとが比較され、静脈認証がなされる。これにより、生体認証処理が終了し、その結果が認証結果Dout1として外部へ出力される。
【0030】
一方、位置検出部16では、入力された画像処理データに基づいて、生体2の位置(x,y,z)が検出される。例えば、生体2の位置(x、y)については、1枚の生体2の視差画像データに対してエッジ検出処理を施すことにより検出される。他方、生体2のz成分(高さ)については、例えば次のような手法により特定される。すなわち、画像処理データに対応する左右の視差画像データDL,DRの相関に基づいて、2視差の画像内の生体画像の位相差が算出され、その位相差に基づいて生体2のZ方向の位置(図2の高さH)が特定される。ここで、図6(A)〜(C)に、高さHをそれぞれ、0mm、5mm、10mmとした場合の左右の視差画像を示す。このように、左右の視差画像間の生体2の位相差(Δδ1,Δδ2,Δδ3)が、例えばエッジ検出処理によって検出される。この
とき、生体2の高さが小さくなると、すなわち生体2がカバーガラス11に近づくにつれて、生体2の2枚の視差画像間における位相差が小さくなる(Δδ3>Δδ2>Δδ1)。
よって、左右の視差画像の相関に基づいて生体2の位相差を検出することにより、生体2のz成分が特定される。また、これにより、例えば、z=0の状態、すなわち生体2がカバーガラス11に接触した状態が検出可能となる。
【0031】
また、水平面内(XY平面内)における生体2の動きについては、次のようにして検出される。例えば、経時的に生体2の複数の視差画像データを生成し、これら複数の視差画像データのそれぞれに対してエッジ検出処理を施し、生体2の移動量を算出することにより、生体2の動きが検出される。
【0032】
このようにして位置検出部16において検出された生体2の位置(x、y、z)についての情報は、位置データDout2として、外部へ出力される。
【0033】
以上のように本実施の形態では、光源10から生体2に照射された光をマイクロレンズアレイ12によって集光したのち、受光素子13で受光することにより受光データを取得する。画像処理部14は、取得した受光データに基づいて、左右の視差画像データDL,DRを生成し、画像処理データとして認証部15および位置検出部16へそれぞれ出力する。このようにして供給された画像処理データに基づいて、認証部15では生体2の認証を行い、位置検出部16では生体2の位置を検出する。すなわち、認証部15による認証と、位置検出部16による位置検出とを、同一の光源、および同一の検出光学系(マイクロレンズアレイ12および受光素子13)を用いて行うようにしたので、例えば感圧方式や静電方式などの各種位置センサを別途設けることなく、生体認証機能と位置検出機能とを両立させることができる。よって、小型かつ簡易な構成で、生体認証および位置検出を複合的に実現することが可能となる。また特に、生体認証および位置検出のための照明手段が共通化されることで、低コスト化となる。
【0034】
また、生体の静脈を利用して認証を行うことにより、指紋を利用する場合に比べて、高セキュリティとなる。これは、静脈が指の内部の構造物であるため、成長や外傷などによって変化しにくく、また偽造されにくいという性質を有するからである。
【0035】
ところで、一般に、認証に必要な静脈パターンを取得するためには、指紋パターンを利用する場合に比べて大きな撮像面積、例えば30mm×15mm程度の面積を確保する必要がある。このため、静脈を利用した生体認証装置を、タッチパネルやタッチパッドに併設する場合には、これらのタッチパネルやタッチパッドの分のスペースに加え、上記静脈認証のための撮像スペースを確保する必要があり、装置全体が大型化してしまう。
【0036】
これに対し、本実施の形態では、生体認証装置1が小型かつ簡易な構成において生体認証機能および位置検出機能の両方を有している。このため、詳細は後述するが、タッチパネルなどの分のスペースと、生体認証用の撮像スペースとを、それぞれ独立して設ける必要がない。従って、静脈認証を利用しつつ、タッチパネルなどとしても機能させる場合に、装置全体の大型化を抑制することができる。よって、小型かつ高セキュリティの生体認証装置を実現することができる。
【0037】
(変形例1)
図7は、上記第1の実施の形態の変形例1に係る生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。本変形例では、光源および受光素子の構成以外は、上記第1の実施の形態の生体認証装置1と同様の構成となっている。よって、上記生体認証装置1と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0038】
本変形例では、マイクロレンズアレイ12の下方に、受光素子25と、バックライト24とが配置されている。バックライト24は、近赤外光と、可視領域の光(以下、単に可視光という)、例えば白色光とを発する光源であり、例えば、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp;冷陰極管)やLEDなどを複数配列して構成されている。受光素子25は、上述の受光素子13と同様に、マイクロレンズアレイ12の焦点面に設けられ、CCDなどにより構成されている。この受光素子25とマイクロレンズアレイ12との間には、受光素子25への迷光などの入射を防ぐ遮光部25−1が設けられている。但し、本変形例では、受光素子25は、透明基板250の一部領域(受光領域25A)にのみ設けられており、受光素子25が設けられていない領域が、バックライト24からの光を上方へ透過させる透過領域25Bとなっている。
【0039】
このような構成により、バックライト24から発せられた光L1は、透明基板250の透過領域25Bを透過して、カバーガラス11の上方へ出射される。この光L1によって生体2が照射されると、その光がマイクロレンズアレイ12によって集光されたのち、受光素子25において受光される。このようにして、生体2の受光データが取得され、この受光データに基づいて、上記生体認証装置1と同様に、認証部15では生体2の認証が行われ、位置検出部16では生体2の位置が検出される。よって、上記生体認証装置1と同等の効果を得ることができる。
【0040】
上記のように、生体2を照射するための光源の形状や配置は特に限定されない。また、上記実施の形態および本変形例では、光源として、近赤外光源10もしくは白色光および近赤外光を発するバックライト24を例に挙げて説明したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、生体認証として指紋を利用した認証を行う場合には、少なくとも可視光を発する光源を用いればよい。
【0041】
なお、透明基板250上の受光領域25Aの数、面積、形状などは特に限定されるものではない。また、一つの受光領域25Aが、一つの画素によって構成されていてもよいし、複数の画素を含んで構成されていてもよい。更には、受光領域25Aにおいて、各マイクロレンズに割り当てられる画素数も特に限定されない。但し、画像処理部14において左右2つの視差画像データを生成するために、一つのマイクロレンズに対して少なくとも2つの画素が割り当てられるようになっている。
【0042】
(変形例2)
図8は、上記第1の実施の形態の変形例2に係る生体認証装置の要部構成を表す断面模式図である。本変形例では、上記第1の実施の形態で用いた近赤外光源10と、変形例1で用いたバックライト24の両方が設けられていること以外は、上記第1の実施の形態および変形例と同様の構成となっている。但し、近赤外光源10は生体認証用、バックライト24は位置検出用としてそれぞれ機能するようになっている。
【0043】
これにより、生体認証の際には、近赤外光源10からの近赤外光を用いて認証用の受光データを生成する一方、位置検出の際には、バックライト24からの光を用いて位置検出用の受光データを生成することができる。このようにして生成された生体認証用もしくは位置検出用の受光データは、上述した第1の実施の形態の画像処理部14に供給される。画像処理部14では、上記と同様の手法により、左右の視差画像データDR,DLが生成される。そして、生成された視差画像データDR,DLは、認証部15もしくは位置検出部16に供給され、上記と同様の手法により生体認証もしくは位置検出が行われる。
【0044】
このように、生体2を照射するための光源を、生体認証用と位置検出用とでそれぞれ別個に設けてもよい。この場合、光源は別々に設置することになるが、同一の検出光学系(マイクロレンズアレイ12および受光素子25)により生体認証と位置検出とを行うことができるため、上記とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0045】
(変形例3)
図9は、上記第1の実施の形態の変形例3に係る生体認証装置を上面(カバーガラス11の側)からみた模式図である。本変形例では、光源の構成以外は、上記第1の実施の形態に係る生体認証装置1と同様の構成となっている。本変形例では、生体認証用の近赤外光源10が、撮像領域Sの矩形状の4辺のうち対向するY軸方向の2辺に沿って複数(本変形例では3つずつ)配置され、対向するX軸方向の2辺に沿って位置検出用の可視光源28が複数(本変形例では3つずつ)配置されている。可視光源28は、例えば可視光を発するLEDなどにより構成されている。このような構成において、受光素子13は、上記変形例2と同様にして、生体認証の際には、近赤外光を照射して認証用の受光データを取得する一方、位置検出の際には、可視光を照射して位置検出用の受光データを取得する。
【0046】
このように、生体認証用の近赤外光源10と位置検出用の可視光源28とをそれぞれ、生体認証装置上方の同一面上に配置してもよい。これにより、上記第1の実施の形態の生体認証装置とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本変形例では、位置検出用の光源として可視光を発する可視光源28を用いているが、これに限定されず、近赤外光を発する光源を用いるようにしてもよい。
【0048】
(適用例1)
図10は、上記第1の実施の形態の適用例1に係る携帯電話機3の概略構成を表すものである。携帯電話機3は、折り畳み式の筐体(第1筐体20および第2筐体21)を備えており、第1筐体20には、画像表示を行う表示パネル22が設けられている。一方、第2筐体21には、入力操作を行うための操作部23と、上記生体認証装置1が設けられている。但し、生体認証装置1は、その上面(カバーガラス11)が第2筐体21の表面に露出するように、携帯電話機3に搭載されている。
【0049】
本適用例では、生体認証装置1が搭載されていることにより、この生体認証装置1を、例えばユーザの指先の位置(動きを含む)に応じて入力が行われるタッチパッドとして機能させることができる。具体的には、指先が接触したこと(z=0)を検出することにより、クリック動作による入力が可能となる。更に、経時的に指先の接触する頻度を測定することにより、ダブルクリック動作による入力も可能である。また、指先の動き、すなわち位置(x,y)の変化を経時的に検出することにより、マウスポインタとして機能させることも可能である。
【0050】
また、ログインやパスワード代用、決済処理などを実行させるためのファンクション入力を行うこともできる。すなわち、生体認証装置1では、指の判別を行うことが可能であるため、例えば検出する指の順番に応じて、上記のような特定の処理を実行するように予め登録しておくことにより、ファンクション入力が可能となる。例えば、右手の人指し指、右手の中指の順に検出された場合に、「アドレス帳を開く」というような処理を実行するように登録することができる。
【0051】
なお、生体認証装置1が適用される機器としては、上記携帯電話機に限られず、例えばノート型PC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)などの各種モバイル機器
へ適用可能である。
【0052】
[第2の実施の形態]
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る生体認証装置(生体認証装置4)の要部構成を表す断面模式図である。生体認証装置4は、上記生体認証装置1における生体認証機能および位置検出機能に加え、さらに画像表示機能を有するものである。以下では、上記第1の実施の形態および上記変形例の生体認証装置と同様の構成要素については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
生体認証装置4では、マイクロレンズアレイ12の下方において、表示部30および受光部31が同一面内に設けられている。受光部31とマイクロレンズアレイ12との間には、受光部31への迷光などの入射を防ぐ遮光部25−1が設置されている。受光部31は、例えば複数の受光画素が配列してなり、上述の受光素子13と同様の機能を有している。受光部31および表示部30の下方には、バックライト24が配置されている。
【0054】
表示部30は、図形や文字などの画像を表示するための表示素子であり、複数の表示画素がマトリクス状に配置されたLCD(Liquid Crystal Display)により構成されている。表示部30は、液晶セル302と、一対の偏光子301,302と、カラーフィルタ304とを含んで構成され、バックライト24から発せられた光を変調することにより、カバーガラス11の上方へ向けて表示光L2を出射するものである。この表示光L2は、可視光と近赤外光とを含んでいる。
【0055】
液晶セル302は、一対の透明基板(図示せず)と、これら一対の透明基板の間に配置された液晶層(図示せず)とを含んで構成されている。この液晶セル302は、画像データに基づいて透明基板間に印加される電圧に応じて、バックライト24からの入射光を変調するものである。
【0056】
偏光子301は、バックライト24と液晶セル302との間において、液晶セル302に対応する領域に配置されている。偏光子303は、液晶セル302とマイクロレンズアレイ12との間において、液晶セル302に対応する領域に配置されている。
【0057】
カラーフィルタ304は、液晶セル302および偏光子303を透過したバックライトからの光のうち、自己の発光色に対応する波長領域の光(例えば、赤色光、緑色光または青色光)と、非可視光領域の光(例えば、近赤外光)とを選択的に透過させるものである。
【0058】
次に、上記のような生体認証装置4の作用、効果について説明する。
【0059】
生体認証装置4では、バックライト24からの光に基づいて、表示部30では画像表示のための表示光L2(可視光および近赤外光を含む)が生成され、表示光L2がカバーガラス11の上方へ向けて出射される。このとき、カバーガラス11上に、例えば指などの生体2が接触または近接していると、表示光L2が生体2へ向けて照射される。生体2へ照射された光は、マイクロレンズアレイ12によって集光されたのち、受光部31によって受光される。これにより、生体2の受光データが取得される。このようにして取得された受光データに基づいて、上述の第1の実施の形態と同様に、画像処理部14において画像処理データ(視差画像データDL,DR)が生成され、この画像処理データに基づいて、認証部15もしくは位置検出部16において、それぞれ生体認証もしくは位置検出が行われる。よって、生体認証、位置検出および画像表示を複合的に実現することが可能となる。
【0060】
(適用例2)
図12は、上記第2の実施の形態の適用例2に係る携帯電話機5の概略構成を表すものである。携帯電話機5は、折り畳み式の筐体(第1筐体40および第2筐体41)を備えており、第1筐体40には、上記生体認証装置4が設けられ、第2筐体41には、入力操作を行うための操作部42が設けられている。但し、生体認証装置4は、その上面(カバーガラス11)が第1筐体40の表面に露出するように、携帯電話機5に搭載されている。
【0061】
本適用例では、上記生体認証装置5が搭載されていることにより、カバーガラス11上に画像を表示すると同時に、ユーザの指先の位置に応じて入力を行うことが可能となる。すなわち、生体認証装置5をタッチパネルとしても機能させることができる。例えば、上記第1の実施の形態に係る適用例1のタッチパッドと同様の手法を用いることにより、表示される内容や、画像の表示場所等に対応付けて、クリック動作、ダブルクリック動作およびマウスポインタ動作などによる入力を行うことが可能となる。
【0062】
なお、位置を検出する対象は、生体2に限らず、他の物体、例えば図13に示したようなスタイラス6であってもよい。この場合も、上述した画像処理部14による画像処理により、左右の視差画像データを生成して、これらの間の位相差を検出することにより、その位置(x,y,z)を検出することができる。これにより、スタイラス6を用いた入力も可能となる。
【0063】
[第3の実施の形態]
図14は、本発明の第3の実施の形態に係る生体認証装置(生体認証装置7)の全体構成を表すものである。図15は、生体認証装置7を上面からみた模式図である。生体認証装置7は、上記第1の実施の形態の生体認証装置1と同様、生体2の認証あるいは位置検出を行うものであり、タッチパッドに適用されるものである。但し、生体認証装置7は、生体2の認証機能および位置検出機能のどちらを発現させるかを、自動で(具体的には指の配置によって)判別し、これらの機能の切り替えを行うものである。
【0064】
生体認証装置7は、上記第1の実施の形態の生体認証装置1と同様、カバーガラス11、マイクロレンズアレイ12、受光素子13、画像処理部14、認証部15、位置検出部16、光源駆動部181、受光素子駆動部182および制御部19を備えている。撮像領域Sの両側には、生体2を照明するための光源50が設けられている。以下、上記第1の実施の形態の生体認証装置1と同様の構成要素については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
光源50は、例えば複数のLEDを配列してなるものであり、近赤外光源であってもよいし、白色光等を発する可視光源であってもよい。但し、生体認証を、静脈を利用して行う場合には近赤外光源とし、指紋を利用して行う場合には可視光源とすることが望ましい。
【0066】
光源駆動部181は、上記第1の実施の形態と同様、光源50の発光駆動を行うものである。但し、本実施の形態では、制御部19の制御(制御信号DL)に応じて、この光源50の出射光量(光源出力)を変更可能に駆動するものである。具体的には、位置検出用の光源出力(光量a1)と認証用の光源出力(光量a2)とを、発現させる機能に応じて切り替える駆動を行う。尚、位置検出用の光量a1は、生体2の位置を検出するのに必要十分な光量であり、認証用の光量a2は生体2の静脈パターンを取得することが可能な光量である。ここで、位置検出に際しては、生体2の表面を照らし、他の領域と区別可能な程度に生体2の外形を浮かび上がらせることができれば十分であるため、光量a1は比較的少なくて済む。一方、認証に際しては、生体2の内部を照らし、静脈の形状を捉える必要があるため、光量a2は比較的多くなる(a1<a2)。
【0067】
受光素子駆動部182は、上記第1の実施の形態で説明したように、受光素子13の撮像駆動(受光駆動)を行うものである。但し、本実施の形態において、受光素子駆動部182は、受光素子13内(撮像領域S内)の特定領域、例えば領域Sa,Sb,Scにおける画素データを選択的に読み出すように受光素子13を駆動可能となっている。
【0068】
これらの領域Sa,Sb,Scは、例えば矩形状の撮像領域Sの長手方向における両端部および中央部にそれぞれ設けられている。尚、上記特定領域の数や面積、位置等は特に限定されないが、領域Sa,Sb,Scのように、撮像領域Sにおける長手方向に沿って複数設けられていることが望ましい。詳細は後述するが、撮像領域Sに対する指の配置によって、位置検出機能および認証機能の判別を行うためである。
【0069】
画像処理部14は、上記第1の実施の形態で説明したように、受光データに対して所定の画像処理を施すものである。但し、本実施の形態では、この画像処理部14が、撮像領域S内の領域Sa,Sb,Scの各画素データに基づいて所定の演算処理を行うと共に、その演算結果に基づいて位置検出機能および認証機能のどちらを発現させるかどうかの判定を行う。画像処理部14における機能判定結果(判定結果データDM)は、制御部19へ出力される。尚、ここでは、画像処理部14が、本発明における「機能判定部」を含んでいる。
【0070】
制御部19は、上記第1の実施の形態で説明したように、画像処理部14、認証部15、光源駆動部181および受光素子駆動部182の動作を適宜制御するものである。但し、本実施の形態では、この制御部19が、画像処理部14から入力される判定結果データDMに基づいて、認証部15および位置検出部16を切り替えて制御すると共に、光源50の出力を変更するように光源駆動部181の制御を行う。
【0071】
次に、本実施の形態の作用、効果について、図14〜図17を参照して説明する。
【0072】
本実施の形態では、上記第1の実施の形態と同様、生体2に照射された光は、マイクロレンズアレイ12によって集光されたのち、受光素子13において受光される。これにより、受光素子13において生体2の受光データが取得され、取得された受光データは、画像処理部14へ出力される。画像処理部14は、この受光データに対して上述したような画像処理を施すことにより、画像処理データを生成し、この画像処理データを認証部15あるいは位置検出部16へ出力する。これにより、認証部15は生体の認証を行い、位置検出部16は、生体2の位置検出を行う。
【0073】
但し、本実施の形態では、上記のような画像処理データの生成に先立ち、画像処理部14が、認証機能および位置検出機能のどちらを発現させるかの判定を行う。そして、この判定結果に基づいて、制御部19が認証機能あるいは位置検出機能を発現させると共に、この発現機能に応じて光源駆動部181が光源50の出力を変更する駆動を行う。以下、この機能判定処理および光源出力変更処理について説明する。
【0074】
図16(A)は位置検出機能発現時における生体2の配置、図16(B)は、認証機能発現時における生体2の配置を模式的に表したものである。画像処理部14は、撮像領域Sに対し、その矩形状の長手方向と生体2(指)の長手方向が交差するように、生体2が配置された場合には、位置検出機能を発現させると判定する。一方、撮像領域Sに対し、その矩形状の長手方向に生体2(指)の長手方向が沿うように、生体2が配置された場合には、認証機能を発現させると判定する。
【0075】
具体的には、次のようにして機能判定を行い、光源出力を変更する。即ち図17に示したように、まず光源駆動部181が光源50を点灯させる(ステップS11)。この際、光源50の出射光量は、生体2の位置検出用の光量a1とする。この光源50の点灯により、受光素子13は、受光素子駆動部182の駆動制御に基づいて、撮像領域S内の特定の領域Sa,Sb,Scにおいて画素データを取得する。取得された各画素データは、画像処理部14へ出力される。
【0076】
画像処理部14は、領域Sa,Sb,Scのそれぞれの領域毎に、画素データの平均値(画素値Ra,Rb,Rc)を算出し、この画素値Ra,Rb,Rcを予め設定した閾値Iと比較する(ステップS12)。この結果、画素値Ra,Rb,Rcの全てが閾値I以上の場合(ステップS12:Y)には、生体2が図16(B)に示したような配置にあると推定し、認証機能を発現させると判定する。一方、画素値Ra,Rb,Rcのうち1つでも閾値I未満のものがある場合(ステップS12のN)には、生体2が例えば図16(A)に示したような配置にあると推定し、位置検出機能を発現させると判定する。これらの判定結果は、判定結果データDMとして、制御部19へ出力される。
【0077】
認証機能を発現させる判定がなされた場合、光源駆動部181は、制御部19の制御に基づいて、光源50の出力を切り替え、位置検出用の光量a1から認証用の光量a2に変更する(ステップS13)。また、受光素子駆動部182は、受光素子13を駆動して受光データを取得する。画像処理部14は、この光量a2に基づく受光データに対して上述した画像処理を施すことにより、光量a2に基づく画像処理データD1を生成し、この画像処理データD1を認証部15へ出力する。認証部15は、入力された画像処理データD1と所定の認証パターンとを比較する。このとき、画像処理データD1に基づいて、認証の可否を判断し(ステップS14)、正常に認証が完了するまで、光源50の出力を維持する(ステップS14:Y)。正常に認証が完了した場合には(ステップS14:N)、認証部15における認証動作を終了し、ステップS11へ戻る。認証結果は、認証結果Dout1として外部へ出力される。
【0078】
位置検出機能を発現させる判定がなされた場合、光源50の出力(光量a1)を保持したまま、受光データを取得する。画像処理部14は、この光量a1に基づく受光データに対して上述した画像処理を施すことにより光量a1に基づく画像処理データD2を生成し、この画像処理データD2を位置検出部16へ出力する。位置検出部16は、入力された画像処理データD2に基づいて、上記第1の実施の形態と同様の手法により、生体2の位置(x,y,z)を検出する。続いて、領域Sa,Sb,Scの各領域における、画素値Ra,Rb,Rcを算出し、一定期間内に画素値Ra,Rb,Rcに変化がないかどうかを判断し(ステップS15)、変化がある場合には(ステップS15:N)、ステップS11へ戻る。画素値Ra,Rb,Rcに変化がない場合には(ステップS15:Y)、光源駆動部181が光源50を消灯させて位置検出処理終了となる。位置(x、y、z)についての情報は、位置データDout2として、外部へ出力される。
【0079】
以上のように本実施の形態では、光源50から生体2に照射された光に基づいて受光データを取得し、画像処理部14において、この受光データに所定の画像処理を施し、画像処理データD1,D2を生成する。生成した画像処理データD1,D2を認証部15および位置検出部16へ出力することにより、認証部15では生体2の認証を行い、位置検出部16では生体2の位置を検出することができる。よって、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、撮像領域S内において特定の領域Sa,Sb,Scを設けることにより、画像処理部14において、各領域の画素値Ra,Rb,Rcに基づいて生体2がどのような向きで配置されているかを判断することができる。ここで、位置検出時と認証時とにおいては、生体2が配置される向きが異なるため、この向きの違いを利用することにより、位置検出機能と認証機能とのどちらを発現させるかについての判定を行うことができる。また、これにより、位置検出時と認証機能時とにおいて、光源50の出力をそれぞれ最適な出力に変更(設定)することができる。位置検出時と認証時とにおいては、各動作に必要な光量が異なるため、発現する機能に応じて光源50の出力を変更することにより、光量の無駄をなくし、省電力化を実現できる。よって、特に携帯電話機や薄型ノートパソコン等の省電力化が強く望まれている機器に搭載されるモジュールとして好適なものとなる。
【0081】
(変形例4)
図18は、上記第3の実施の形態の変形例(変形例4)に係る生体認証装置(生体認証装置8)を上面(カバーガラス11の側)からみた模式図である。生体認証装置8は、カバーガラス11の両側に光源50を備えており、この光源50よりも更に外側(撮像領域Sの外側)にフォトセンサ51が設けられている。フォトセンサ51としては、例えば、受光素子単体、あるいは発光素子と受光素子とが近接して配置されることにより高さ方向からの生体2の接近を検知するフォトリフレクタ等が用いられる。この生体認証装置8は、図示はしないが、上記第3の実施の形態と同様、マイクロレンズアレイ12、受光素子13、画像処理部14、認証部15、位置検出部16、光源駆動部181、受光素子駆動部182および制御部19を備えている。尚、上記第3の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0082】
本変形例においても、上記第3の実施の形態と同様、撮像領域S内に特定の領域Sa,Sb,Scが設けられている。また、受光素子駆動部182が、これらの領域Sa,Sb,Scにおいて、画素データを選択的に取得するように受光素子13を駆動可能であると共に、画像処理部14が発現機能を判定する。また、生体2が、図19(A)に示したような配置である場合には位置検出機能、図19(B)に示したような配置である場合には、認証機能を発現させると判定する。
【0083】
但し、本変形例では、発現機能の判定に際し、領域Sa,Sb,Scにおける画素値Ra,Rb,Rcではなく、フォトセンサ51からの出力を用いる点において上記第3の実施の形態と異なっている。本変形例では、具体的には、次のようにして機能判定を行い、光源出力を変更する。即ち図20に示したように、まず光源駆動部181が光源50を点灯させる(ステップS21)。この際、光源50の出射光量は、位置検出用の光量a1とする。この光量a1に基づくフォトセンサ51の出力値Fa,Fbを、予め設定した閾値IIと比較する(ステップS22)。その結果、出力値Fa,Fbの双方供、閾値II以上の場合(ステップS22:Y)には、生体2が図19(B)に示したような配置にあると推定し、認証機能を発現させると判定する。一方、出力値Fa,Fbのどちらか一方あるいは両方が閾値II未満である場合(ステップS22:N)には、生体2が例えば図19(A)に示したような配置にあると推定し、位置検出機能を発現させると判定する。これらの判定結果は、判定結果データDMとして、制御部19へ出力される。
【0084】
認証機能を発現させる判定がなされた場合、上記第3の実施の形態と同様、光源50の出力を切り替え、位置検出用の光量a1から認証用の光量a2に変更する(ステップS23)。また、画像処理部14は、光量a2に基づく画像処理データD1を生成し、この画像処理データD1を認証部15へ出力する。認証部15は、画像処理データD1に基づいて、認証の可否を判断し(ステップS24)、正常に認証が完了するまで、光源50の出力を維持する(ステップS24:Y)。正常に認証が完了した場合には(ステップS24:N)、認証部15における認証動作を終了し、ステップS21へ戻る。認証結果は、認証結果Dout1として外部へ出力される。
【0085】
位置検出機能を発現させる判定がなされた場合、上記第3の実施の形態と同様、光源50の出力(光量a1)を保持したまま、受光データを取得する。画像処理部14は、光量a1に基づく画像処理データD2を生成し、この画像処理データD2を位置検出部16へ出力する。位置検出部16は、画像処理データD2に基づいて、生体2の位置(x,y,z)を検出する。続いて、領域Sa,Sb,Scにおける画素値Ra,Rb,Rcを算出し、一定期間内に画素値Ra,Rb,Rcに変化がないかどうかを判断し(ステップS25)、変化がある場合には(ステップS25:N)、ステップS21へ戻る。画素値Ra,Rb,Rcに変化がない場合には(ステップS25:Y)、光源駆動部181が光源50を消灯させて位置検出処理終了となる。位置(x、y、z)についての情報は、位置データDout2として、外部へ出力される。
【0086】
以上のように、変形例4では、撮像領域Sの外側にフォトセンサ51を別途設けることにより、このフォトセンサ51からの出力値Fa,Fbに基づいて生体2がどのような向きで配置されているかを判断することができる。このため、上記第3の実施の形態と同様、位置検出機能と認証機能とのどちらを発現させるかについての判定を行うことができる。また、各機能発現時において、光源50の出力をそれぞれ最適な出力に変更(設定)することができるため、省電力化を実現できる。よって、上記第3の実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、このように機能判定専用のセンサを設けることにより、より精密な判定が可能となる。
【0087】
尚、上記変形例4では、光源50よりも外側に2つのフォトセンサ51を設けた構成を例に挙げたが、フォトセンサはどちらか一方の側にのみ設けるようにしてもよい。また、機能判定時において、フォトセンサ51からの出力値だけでなく、画素値Ra,Rb,Rcを用いるようにしてもよい。
【0088】
(変形例5)
図21は、上記第3の実施の形態の変形例(変形例5)に係る生体認証装置(生体認証装置9A)を備えた携帯電話機9の概略構成を表すものである。携帯電話機9は、上記適用例1に係る携帯電話機3と同様、折り畳み式の筐体(第1筐体20および第2筐体21)を備えており、第1筐体20には、画像表示を行う表示パネル22が設けられている。第2筐体21には、操作部23と生体認証装置9Aが設けられている。生体認証装置9Aは、その上面(カバーガラス11)が第2筐体21の表面に露出するように携帯電話機9に搭載されており、タッチパッドとして機能している。
【0089】
生体認証装置9Aは、カバーガラス11の両側に光源50を備えると共に、図示はしないが、上記第3の実施の形態と同様、マイクロレンズアレイ12、受光素子13、画像処理部14、認証部15、位置検出部16、光源駆動部181、受光素子駆動部182および制御部19を備えている。尚、上記第3の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0090】
本変形例においても、上記第3の実施の形態と同様、撮像領域S内に特定の領域Sa,Sb,Scが設けられている。また、受光素子駆動部182が、これらの領域Sa,Sb,Scにおいて、画素データを選択的に取得するように受光素子13を駆動可能となっている。
【0091】
但し、本変形例では、発現機能を上記第3の実施の形態のように生体2の配置によって判定するのではなく、外部からの指令、例えばユーザからの選択信号によって任意に設定する点で上記第3の実施の形態と異なっている。そして、ユーザの判断により選択された機能に応じて、光源駆動部181は、光源50の出力を変更する。具体的には、次のようにして機能決定を行い、光源出力を変更する。即ち図22に示したように、まず表示パネル22をON状態とし、表示パネル22に、認証機能選択用のアイコンIaを表示する(ステップS31)。続いて、光源駆動部181が光源50を点灯させる(ステップS32)。このような状況下において、ユーザによりアイコンIaが選択された(タッチされた)場合(ステップS33:Y)には、認証機能を発現させる。ユーザによりアイコンIaが選択されなかった(タッチされなかった)場合(ステップS33:N)には、位置検出機能を発現させる。
【0092】
認証機能を発現させる場合には、上記第3の実施の形態と同様、光源50の出力を切り替え、位置検出用の光量a1から認証用の光量a2に変更する(ステップS34)。また、画像処理部14は、光量a2に基づく画像処理データD1を生成し、この画像処理データD1を認証部15へ出力する。認証部15は、画像処理データD1に基づいて、認証の可否を判断し(ステップS35)、正常に認証が完了するまで、光源50の出力を維持する(ステップS35:Y)。正常に認証が完了した場合には(ステップS35:N)、認証部15における認証動作を終了し、ステップS32へ戻る。認証結果は、認証結果Dout1として外部へ出力される。
【0093】
位置検出機能を発現させる場合には、上記第3の実施の形態と同様、光源50の出力(光量a1)を保持したまま、受光データを取得する。画像処理部14は、光量a1に基づく画像処理データD2を生成し、この画像処理データD2を位置検出部16へ出力する。位置検出部16は、画像処理データD2に基づいて、生体2の位置(x,y,z)を検出する。続いて、領域Sa,Sb,Scにおける画素値Ra,Rb,Rcを算出し、一定期間内に画素値Ra,Rb,Rcに変化がないかどうかを判断し(ステップS36)、変化がある場合には(ステップS36:N)、ステップS32へ戻る。画素値Ra,Rb,Rcに変化がない場合には(ステップS36:Y)、光源駆動部181が光源50を消灯させて位置検出処理終了となる。位置(x、y、z)についての情報は、位置データDout2として、外部へ出力される。
【0094】
以上のように、変形例5では、例えば表示パネル22に認証機能選択用のアイコンIaを表示し、このアイコンIaを用いてユーザが発現機能を選択することができる。また、選択された機能に応じて、光源50の出力をそれぞれ最適な出力に変更(設定)することができるため、省電力化を実現できる。よって、上記第3の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0095】
尚、上記変形例5では、認証機能を選択させるための手段として、表示パネル22へ表示されたアイコンを例に挙げて説明したが、選択手段はこのようなアイコンに限定されず、操作部23等に別途設けられたボタンやスイッチであってもよい。
【0096】
また、上記第3の実施の形態および変形例4,5では、生体2の配置された向きに基づいて発現機能の判定を行うようにしたが、これに限らず、生体2の撮像領域S上の動きに基づいて、発現機能の判定を行うようにしてもよい。例えば、撮像領域Sを長手方向に沿って指でなぞると、画素値Ra,Rb,Rcに経時的な変化が生じる。このため、画素値Ra,Rb,Rcにおける変化を検出することにより、上記のような指の動きがあった場合に認証機能を発現させる、といった判定を行うことも可能である。
【0097】
更に、上記第3の実施の形態および変形例4,5では、生体認証装置の適用例としてタッチパッドを例に挙げたが、上記第2の実施の形態で説明したような表示機能付きのタッチパネルにも適用可能である。
【0098】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、画像処理部14において、受光データD0に基づいて、左右2つの視差画像データを生成するようにしたが、生成する視差画像データは2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、受光データD0から抽出する画素データは、各マイクロレンズの受光領域12Dにおいて、いずれの画素における画素データであってもよい。但し、左方向および右方向からの基線長を、できるだけ長く取れるような領域にそれぞれ配置された画素の画素データを抽出することが望ましい。上述したように、各視差画像同士の相関に基づいて、生体2の位相差を検出するためである。
【0099】
また、上記実施の形態等では、受光素子13で得られた受光データD0に基づいて、画像処理部14において画像処理データ(視差画像データ)を生成して認証部15および位置検出部16の両方に入力するようにしたが、上記視差画像データは、少なくとも位置検出部16へ入力されればよい。すなわち、認証部15には、受光素子13で得られた受光データを、画像処理部14による画像処理を施さずに直接入力し、この受光データの撮像パターンに基づいて認証を行うようにしてもよい。あるいは、受光素子で取得された受光データに、画像処理部14においてノイズ低減処理などの他の画像処理のみを施したものを入力して認証を行うようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態等において、受光素子、受光領域もしくは受光部の光入射側に、近赤外光を選択的に透過させるIR透過フィルタを設けるようにしてもよい。これにより、撮像画像の静脈パターンを精度良く取得し易くなる。
【0101】
また、生体2の内部を照明することにより少なくとも静脈の認証が可能なのであれば、認証に用いる光としては、必ずしも近赤外光でなくてもよい。なお、静脈認証に関しては指の静脈に限らず、手のひら静脈や、指および手のひらの両方を撮像して認証に用いるようにしてもよい。
【0102】
さらに、上記実施の形態等では、表示素子の一例として液晶素子を挙げて説明したが、他の表示素子、例えば有機または無機のEL(Electro Luminescence)素子などの自発光素子を用いてもよい。但し、上記自発光素子を用いる場合には、バックライトは特に設けなくともよい。
【符号の説明】
【0103】
1,4…生体認証装置、3,5…携帯電話機、10…近赤外光源,11…カバーガラス、12…マイクロレンズアレイ、13,25…受光素子、14…画像処理部、15…認証部、16…位置検出部、19…制御部、24…バックライト、28…白色光源、2…生体(指)、D0…受光データ、Dout1…認証結果データ、Dout2…位置データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体へ向けて、光を照射する光源と、
前記物体からの光を集光するマイクロレンズアレイ部と、
前記マイクロレンズアレイ部において集光された光に基づいて、前記物体の受光データを取得する受光素子と、
前記受光素子で取得された受光データに基づき、前記物体の位置を検出する位置検出部と、
前記物体が生体である場合に、前記受光素子で取得された受光データに基づき、前記生体の認証を行う認証部と
を備えた生体認証装置。
【請求項2】
前記位置検出部による位置検出機能および前記認証部による認証機能のうち、発現させる機能に応じて、前記光源の出力を変更する光源駆動部を備えた
請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記位置検出機能を発現させる場合には、前記光源駆動部は前記光源の出力を第1の光源出力に設定し、
前記認証機能を発現させる場合には、前記光源駆動部は前記光源の出力を前記第1の光源出力よりも大きな第2の光源出力に設定する
請求項2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記位置検出機能および前記認証機能のうちのどちらを発現させるかの機能判定を行う機能判定部を備えた
請求項3に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記機能判定部は、前記受光素子における互いに異なる複数の領域の画素データに基づいて前記機能判定を行う
請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記受光素子に対応する受光領域よりも外側に他の受光素子が更に設けられ、
前記機能判定部は、前記他の受光素子からの出力値に基づいて、前記機能判定を行う
請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項7】
外部指令に応じて入力された信号に基づいて、前記位置検出機能および前記認証機能のうちのどちらか一方の機能を発現させる
請求項3に記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記受光データに基づいて画像処理を行う画像処理部を備え、
前記画像処理部は、前記受光データのうち、各マイクロレンズの撮像領域同士の間で、互いに同一の位置の画素における画素データをそれぞれ抽出し、合成することにより、複数の視差画像データを生成する
請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項9】
前記位置検出部は、
前記複数の視差画像データ同士の位相差に基づいて、前記物体の位置を検出する
請求項8に記載の生体認証装置。
【請求項10】
前記光源は、近赤外領域の光を発する
請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項11】
前記物体へ向けて、可視領域の光を照射する他の光源を備え、
前記受光素子は、前記他の光源による可視領域の光に基づいて第1の受光データを取得する一方、前記光源による近赤外領域の光に基づいて第2の受光データを取得し、
前記位置検出部は、前記第1の受光データに基づいて前記物体の位置を検出する一方、前記認証部は、前記第2の受光データに基づいて前記生体の認証を行う
請求項10に記載の生体認証装置。
【請求項12】
前記位置検出部により検出された位置に応じて情報の入力が行われるタッチパッドとして機能する
請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項13】
前記受光素子と同一面内に、表示用の画像データに基づいて表示光を出射する表示素子
を備えた請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項14】
前記光源は、前記受光素子および前記表示素子の下方に配置され、
前記表示素子は、前記光源からの光を用いて前記表示光を出射する
請求項13に記載の生体認証装置。
【請求項15】
画像表示を行うと共に、前記位置検出部により検出された位置に応じて情報の入力が行われるタッチパネルとして機能する
請求項13に記載の生体認証装置。
【請求項16】
前記光源は、可視領域および近赤外領域の光を発する
請求項13に記載の生体認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−61639(P2010−61639A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146189(P2009−146189)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】