説明

生体電位のワイヤレス伝送のためのシステムおよび方法

本発明は、共振回路の後方散乱を直接変調することによる、低レベルの生体電気信号およびバイオセンサ信号のワイヤレスバイオテレメトリに関する。アナログ生体電気またはバイオセンサ波形データを表すように、共振周波数および無線周波数後方散乱の振幅を比例的にシフトする、バラクタダイオードなどの電圧可変コンデンサを含む共振回路に、低レベルの電気アナログまたはディジタル信号が直接印加される。共振回路を無線周波数源で強力に駆動することによって、パラメトリックプロセスによって生体信号レベルを増幅し、さらなる増幅を行うことなく低ミリボルトおよびマイクロボルトレベルの信号を遠隔測定するために十分な感度を供給するように電圧可変容量を生じ得る。デバイスの特徴は、その簡潔さであり、デバイスのサイズおよび電力消費を低減する同じ可変容量回路によって、低レベルセンサ信号の変調および前置増幅の両方を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年5月4日に出願された「Systems and Methods for Wireless Transmission of Biopotentials」という発明の名称の米国仮特許出願第60/916,152号の優先権を主張し、同出願を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
1.技術分野
本発明は、一般に、生物医学工学に関し、特に、生体電気信号のワイヤレス検出および通信のためのシステムならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連出願の記載
医師および研究者にとって、心臓、脳、および神経系の機能に関する情報を載せた電気波形は有用である。これらの電気信号は、本来、電圧が低ミリボルトおよび数十マイクロボルトの範囲である点が特有である。電気信号は、高インピーダンス生体電位電極を使用して、医学および電気生理学研究において記録される。このような信号を生体内から生体外へ伝えるために身体侵襲性のワイヤを使用することは、ワイヤを皮膚に通すためにワイヤが感染部位になり、破損するという他の実際的な問題を生じてしまうため望ましくない。したがって、本発明者らは、生体内から生じた低レベルの生体電気信号からの振幅および波形情報をワイヤレスに検出し、リモートベースステーションの受信機へ伝送するためのシステムおよび方法の必要性を認識した。
【0004】
望ましくは、完全に人体内に入れて遠隔で読み取り値を得る、pH、圧力、および温度、オスモル濃度などを計るための新世代の小型生化学ならびに生物物理学センサが利用可能になりつつある。これらのデバイスの到来を受けて改めて、本発明者らは、身体の外部とワイヤレスに信号を通信する必要性を見出した。
【0005】
生体信号の検出および伝送に典型的に使用される電気回路では、生体内に埋め込まれる種々のタイプの変調送信機および発振器回路に適するように、高入力インピーダンス前置増幅器を使用して信号レベルを増強する必要があった。使用条件として、人体内に埋め込まれたバイオテレメトリデバイスでは、電池を使用せずに、回路の要求に電力供給するために入力RFエネルギーが整流される受動的または誘導的な電力供給技術を使用する。本技術では、比較的複雑な回路が必要であり、結果的に、侵襲を最小限に抑えた生体内への埋め込みに望ましいものと比較すると、より大きな容積を占めてしまう。本技術に関して公知のバイオテレメトリデバイスの容積は、立方センチメートルオーダーであり、デバイスを埋め込むために侵襲手術の技術が要求される。
【0006】
本発明者らは、注射針の内腔を通して体内に導入または注射できる程度に小型のデバイスを使用して、生体電気波形を遠隔測定することが望ましいことを認識した。残念ながら、このように小型のサイズにテレメトリ回路のサイズを縮小するには諸問題が存在した。問題の原因は数々あるが、そのほとんどが、インピーダンス変換、前置増幅、および生体電気信号の無線周波数信号への変調に必要とされる回路が複雑化することによる。現時点での最先端技術は、高インピーダンス生体電極に対応するために、従来の半導体FETおよびトランジスタ増幅器を使用し、小型ではあるが、他の点では従来の種々の無線送信機の搬送波に、これらの増幅信号を変調することからなる。これらの回路では、通例、増幅器および発振器回路に電力を供給するために、外部RF源からの電力を整流する方法が必要となる。総合的に、結果として、低レベルの電気信号のワイヤレステレメトリでは、著しいシリコンチップサイズを示す回路が要求され、このサイズは望ましくない程に大きく、さらには、人体へ導入するための手術も必要となる。
【0007】
以上のことから、本発明者らは、超小型サイズのデバイスを実現し、侵襲性を最小限に抑えた受動的なデザインの生体電気信号およびバイオセンサ信号をワイヤレスで遠隔測定するアプローチを考案した。本発明の例示的な態様において、非常に小さなパッケージサイズおよび最小限に抑えられた侵襲性に適した非常に単純な回路のアプローチで、インピーダンス変換、変調、および無線伝送の機能を与える受動共振回路アプローチを用いて、生体電気信号およびバイオセンサ信号をワイヤレスで遠隔測定できる。本発明は、RFID技術として公知の分野の技術に関するが、この技術と同一のものではない。
【0008】
RFIDとして広く知られている通信技術は、共振回路の特性に基づいたものであり、電気共振回路は、同調する近くの送信機周波数から電力を吸収する。この技術の考察は、K. Finkenzellerが著書RF ID Handbook(John Wiley and Sons Inc. New York, USA)において記述しており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。これは、誘導回路の相互結合およびリモートユニットからベースユニットへの反射インピーダンスの変化の概念を伴うプロセスである。反射インピーダンスの変動は、ベースユニット送信機の電気負荷の変化と同等である。これは、送信機の共振回路にかかる電圧変化をモニタすることによって登録される。この電圧は、典型的に、リモート共振回路への電力伝送の増大に伴い低下し、これは、リモートユニットがベースユニットと周波数共振状態にあるときにのみ起こる。このようにして、非共振状態があれば、反射インピーダンス変化が起こらないため、特定の周波数に同調した回路の存在が識別され得る。
【0009】
反射インピーダンスのプロセスは、ベース送信機とリモートユニットとの間の結合がほとんど誘導性である場合、約30MHzをほぼ下回る周波数で起こる。約30MHzを上回り、マイクロ波周波数領域内の高い周波数で使用されることが多いこのプロセスの変形例が、後方散乱アプローチとして公知である。リモート共振システムは高周波数送信機からRFエネルギーを共振吸収し、リモート受信機にRF強度の変化を確認させるエネルギーを再放射するようにモデル化される。ベースユニットで検出されたRF後方散乱強度のこの変化は、送信周波数に同調する共振回路が局所的に存在することを表し、回路の識別となる。
【0010】
この通信アプローチの変形例では、Fischerらの米国特許第7,158,010号に開示されているように、ダイオードの可変容量が位相変調を生じるように、共振回路に組み込まれた可変容量ダイオードを使用することを含む。また、バラクタダイオードを使用すると、Finkenzellerによって(既出の文献中に)記載されているように、基本波の高調波が放出される。これらの高調波は、検出可能であり、信号情報のために復調可能であるが、伝送された周波数基本波とは異なる周波数で行われるという点で有用である。これにより、ベースユニット送信機から放出される基本周波数からの競合または干渉がないため、再放射された信号の検出が容易になる。
【0011】
このアプローチのより高度な変形例は、反射インピーダンスまたは後方散乱効率を時変するように、リモート回路の共振周波数を変調する論理回路を使用することによって、ディジタル情報を通信することである。論理回路によって制御される回路のオン・オフ共振は、回路または論理メモリに格納された情報を固有に識別するディジタル情報をベースユニットに通信し得る。ディジタル論理回路そのものは、一体のバッテリによって電力供給され得、または、リモート回路がベースユニットに近ければ(典型的には1デシメートル未満内)、入力RFエネルギーを整流し、論理回路に電力を供給するために使用することができる。
【0012】
この先行技術は、ワイヤレス方法による格納されたディジタル情報の識別および伝送に関し、この技術が無電池および自己出力という局面を備えていることから、医療記録、銀行および商取引の保存、ならびに同様の目的で、スモールカードおよび読み取りやすいフォーマットを使用できる。動物を識別するための小さなガラス製カプセルに入ったディジタルRFIDデバイスが周知である。
【0013】
しかしながら、アナログ情報を伝送するための共振結合技術には、使用の可能性を探る余地がまだある。圧力または温度などの測定パラメータは、通例、圧力によりコンデンサ極板間隔などの物理パラメータが変化することによって、共振回路の同調に直接影響し、ひいては、反射インピーダンスまたは後方散乱をアナログ比例して変調し得るセンサが公知である。また、典型的な高インピーダンスを変換し、受動共振回路の変調が生じ得る点まで信号レベルを増強するために、センサおよび低レベル生体電位とともに増幅器を使用してきたハイブリッド技術がある。例えば、1986年、Toweは、高インピーダンス前置増幅器を使用して1ミリボルトECGを約500ミリボルトに増強した後、トランジスタに信号を適用して同調回路の共振を振幅比例で変調することによって、心電図(ECG)テレメトリの共振結合方法を実証した。次いでアナログ信号は、リモートベースステーションで回復され得る。しかしながら、前置増幅器には、内蔵増幅器に電力供給するためのバッテリが必要になる問題があったため、バッテリの寿命を上げるために受動共振結合の局面しか使用していなかった。
【0014】
ネルンスト式のpH電極などのある種の生化学センサから生じた電気信号は、低いミリボルトレベルと、典型的に、約10メガオームを超える非常に高いインピーダンス源の両方である。受動共振回路技術を用いた小型センサからのこれらの種類の信号を遠隔測定するには、現時点での最先端技術では、他のコンポーネントおよび前置増幅器の回路インピーダンスを整合させるために、バッファ前置増幅器を使用する必要がある。これらは空間を占め、増幅器のオンチップdc電源が要求される。これには、デバイスサイズおよび複雑性が増大するという問題があり、人体への侵襲性を最小に抑えるためには望ましくない。
【0015】
以上のことから、本発明の目的は、生体電気信号およびバイオセンサ信号が単純な共振回路システムによって生成されたRF後方散乱をより直接的かつ簡単に変調できるようにするために、生体電気信号およびバイオセンサ信号の前置増幅ならびにインピーダンス変換の問題を回避するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、生体電気またはバイオセンサからの低レベルアナログ信号に、外部無線周波数源から生じるRFのRF後方散乱の振幅を変調させる、システムおよび方法を提供する。これにより、回路からの前記後方散乱は、遠隔で検出され、変調信号を回復させるために復調される。印加された無線周波数信号の後方散乱変調は、図1に示すように、電圧可変容量、インダクタンス、および分離チョークまたはレジスタから構成された回路内の電圧可変容量に前記アナログ信号を印加する方法によって生じる。
【0017】
ある態様は、インダクタンスおよび可変容量を供給するように構成された電子回路を備える装置を備える。電子回路は、励起信号およびアナログセンサ信号を受信するように構成されてもよく、生体信号に応答して変動する共振周波数を有してもよい。電子回路は、励起信号および生体信号を受信すると応答信号を送信するように構成されてもよく、アナログ信号の特性が、応答信号を測定することによって決定され得る。
【0018】
ある態様において、生体信号は、化学センサ、生化学センサ、磁気センサ、電磁気センサ、生理センサ、および機械センサからなる群より選択さるセンサによって発生され得る。特定の態様において、電子回路は、応答信号をワイヤレス伝送するように構成されてもよい。アナログ信号の特性は、アナログ信号の振幅および/またはアナログ信号の周波数であってもよい。
【0019】
ある態様において、生体信号は、生体電位によって発生される。特定の態様において、励起信号は、無線周波数信号である。励起信号は、ある態様において、ディジタル論理信号であってもよい。ある態様において、電子回路は、分離レジスタを備える。電子回路は、特定の態様において、インビボの生体信号を受信するように構成されてもよい。電子回路は、被験者の皮下に埋め込まれるように構成されてもよい。電子回路は、針を使って被験者に埋め込まれるように構成されてもよく、特定の態様において、1ミリメートルの注射針の内腔を通るように構成されてもよい。
【0020】
ある態様において、電子回路は、被験者の皮膚表面上に配置されるように構成される。特定の態様において、電子回路は、等価直列容量を形成するために背中合わせに結合させた1対のバラクタダイオードを備える。ある態様はまた、電子回路にアナログセンサ信号が印加されていないとき、電子回路の共振周波数と同等の周波数で励起信号を放出するように構成されたリモート励振器を備えてもよい。特定の態様において、励起信号は、30MHz〜10GHzの周波数を有し、ある態様において、励起信号は、100MHz〜3GHzの周波数を有する。特定の態様において、励起信号は、電子回路に0.5〜5.0ボルトの電圧を誘導する。
【0021】
ある態様はまた、生体電位を測定するように構成された電子回路を設ける工程;励起信号を電子回路に供給する工程;生体電位を有する生体信号を発生し、生体信号を電子回路に伝送する工程;電子回路から応答信号を伝送する工程;および生体信号の特性を決定するために、応答信号を測定する工程;を備える、生体特性の測定方法を備えてもよい。ある態様において、電子回路が可変共振周波数を備える。特定の態様において、電子回路は、インダクタンスおよび可変容量を供給するように構成される。ある態様において、電子回路は、電子回路に生体信号が伝送されない場合、ベース共振周波数を備え、励起信号は、ベース共振周波数で供給される。
【0022】
特定の態様において、生体信号は、化学センサ、生化学センサ、磁気センサ、電磁気センサ、生理センサ、および機械センサからなる群より選択されるセンサによって発生される。ある態様において、生体信号の特性は、生体信号の振幅および/または周波数である。ある態様は被験者に針で電子回路を埋め込む工程を備え、特定の態様において、針は中空であってもよい。
【0023】
ある態様は、アナログセンサ信号が電子回路に印加されていないとき、電子回路の共振周波数と同等の周波数で励起信号を発信するためにリモート励振器を使用する工程を備える。ある態様において、励起信号は、30MHz〜10GHzの周波数を有し、特定の態様において、励起信号は、100MHz〜3GHzの周波数を有する。
【0024】
ある態様は、電圧可変容量性リアクタンスが、共振回路を形成するインダクタンスに結合されるようにデバイスを構成する電子コンポーネント装置であって、この回路に印加される高インピーダンス生体電気またはバイオセンサ源からの低レベルアナログ電位が、前記容量性リアクタンスを変動させ、アナログ波形包絡線の振幅に比例して前記回路の共振を変化させる装置を備える。
【0025】
特定の態様において、容量性リアクタンスは、少なくとも1つの電子コンポーネントによって与えられる。ある態様において、電子コンポーネントは、バラクタダイオードである。特定の場合、容量性リアクタンスは、p-n接合容量によって与えられる。
【0026】
ある態様が、アセンブリが、無線励振器信号を着脱可能に後方散乱するとともに、前記無線励振器のリモート検出可能な無線高調波を発生させるのに十分な信号が、前記インダクタンスに誘導されるように、コンポーネントシステムの共振周波数に同調させたリモート無線励振器を備えるようにさらに規定されてもよい。
【0027】
ある態様が、後方散乱信号を検出し復調する無線受信機を備えるようにさらに規定されてもよく、復調プロセスは、同技術に従い、このような方法が、元の変調信号を再現するために、直接変換復調、AM、FM、または位相復調を含んでもよい。
【0028】
特定の態様が、請求項45のデバイスを使用する方法を備え、共振回路を形成するインダクタンスと組み合わせた時変容量性リアクタンスを有するデバイスにより、パラメトリック増幅の原理に従って、電気信号変調のパラメトリック増幅が生じるのに十分な振幅の、ポンプ信号として公知の印加された無線励振器信号によって電圧可変容量性リアクタンスが電気的に駆動され、次に、増幅プロセスが、変調信号に対するデバイスの感度を実質的に高める方法を備える。
【0029】
ある態様が、電気オフセット電位で生体電気またはバイオセンサ入力信号を合計する方法によって、可変容量の適切な電気動作点に必要なバイアス電圧を発生する方法を備えてもよく、オフセット電位が、生体電気信号を検出するために使用される2つの生体電位電極を構成する異種の金属によって発生する従来の小型オンデバイスバッテリによって発生されてもよく、前記バイアス電圧が、異種の半電池電位差を有する電極金属を使用することで自然に生じる。特定の態様において、デバイスは、人体内に埋め込まれ、心臓、脳、および神経系から生じる生体電気信号を遠隔測定するための生体電位電極に接続される。ある態様において、デバイスは、生化学センサまたは物理センサに接続され、センサからの信号が、ベースステーションにワイヤレス伝送される。特定の態様において、デバイスは、癲癇などの生体電気性質の神経疾患を診断および検出する目的で、脳の電気活動の機能をモニタするために使用される。ある場合において、デバイスは、心臓リズムおよび電気的機能性を制御するデバイス制御の目的で、心臓の生体電気活動をモニタするために、心臓内または心臓に配置される。
【0030】
例示的な態様において、バラクタダイオードなどの電圧可変容量デバイスが、約100kHzを下回る周波数範囲で電気信号に対して望ましい高入力インピーダンスを呈する。これにより、電気信号を出力する生体電位電極またはセンサにかかる負荷が最小限に抑えられる。
【0031】
本発明の別の特徴である感度が高いという点と、増幅器をデバイスから省くことができる点は、数値的に高い値での変化が小さくても、ヘルツ単位では大きな変化であるため、電圧可変コンデンサに印加される比較的小さな電圧(ごくわずかな変化しか生じないが)を、比較的高感度に検出できるからである。例示的な態様において、復調器械はヘルツに対して直接的に感度が良い。これにより、前置増幅を行わなくても、小さな生体電気信号およびセンサ信号に対する感度を高くすることができる。
【0032】
本発明者らは、潜在的に埋め込み可能なマイクロバイオテレメトリシステムのサイズの縮小および能力の向上の面で著しい技術的進歩を遂げた。本明細書において発明者らが目指すものは、注射針を通して体内に簡単に挿入されることで、日常的に個人の健康状態をモニタリング可能にする、長きにわたり予見されてきた埋め込み型バイオセンサの開発を進めることである。ある態様は、血液および他の体液用の高度なセンサの開発に向けた研究の土台として、心臓および組織の生化学性質をモニタしてもよい。埋め込み型バイオセンサを軍事的に利用する可能性も非常に高い。バイオセンサは、兵士の生理的状態の即時判定、バイオハザード暴露の発症前警告、戦場での迅速な医療診断を与え、毒物暴露の血液検出指標後に解毒薬を投与する薬物送達システムの重要部品であり得る。ある態様は、1ミリメートル以下のサイズの実用的なマイクロバイオチップを備えてもよい。本発明者らは、ECGおよびpH埋め込み型バイオセンサの製造につながる事業を提案する。身体および血液の生理学的状態をモニタし、遠隔測定してローカルまたはリモート読み出しする埋め込み型マイクロチップは、多くの医療用途において有益な場合がある。このようなマイクロデバイスは、人体の状態を判定する際、速度、精度、および感度の面で変革をもたらす可能性を秘めたものとして広く認識されている。埋め込み型マイクロセンサは、血液および臓器の機能をモニタする迅速かつ高度に用途に合わせた方法を提供し得る。
【0033】
本発明者らは、最小の外傷で体内に導入可能なサイズに近く、注射針を用いて日常的に行うことができるというアプローチで、受動バイオテレメトリデバイスの試作品を作製してきた。バイオテレメトリシステムは、ミリボルトオーダーの信号に対しても非常に感度が高いため、心電図の遠隔測定は容易に可能である。埋め込み範囲はかなり限定されており、デバイスのデザインおよびサイズに依存する。この範囲は、体内から身に着ける受信機へ伝送するのに十分なものであり、この受信機は、一般に、埋め込み型バイオセンサの上部の位置に瞬間的に保持されるか、または身に付けられる。外部デバイスは、電力供給およびセンサ信号の検出の両方を行う。バイオセンサ信号は、従来の技術を用いてネットワーク化され得る個人的な読み取りデバイスに中継されてもよい。
【0034】
本発明者らは、ECGおよび組織pHなどのパラメータを通して身体状態を最初にモニタする種類のバイオセンサの開発を提案する。本発明者らが予備データを有するバイオセンサには2つのタイプがあり:(1)心電計-皮膚電極を配置せずにハンドヘルドデバイスで心臓の瞬時モニタが可能なように、腕または胸部の皮膚下に導入;および(2)pH-生理学的状態の高感度モニタリングを含む。十分に高い精度で測定された血液および組織pHは、感染、疲労、生理学的ショックの前兆、および有害物への暴露の診断前指標の高感度指標である。
【0035】
ある態様はまた、バイオテレメトリシステムに対して公知の原理を結び付けるプロセスによって、さらなる種類のセンサを備えてもよい。これらは、例えば:(1)オスモル濃度-血液および組織のオスモル濃度は、血糖値との関係性が強いため重要な項目、を含む。また、オスモル濃度は、脱水症およびストレスのレベルも反映する;他には、(2)温度-過度の太陽暴露不足、感染、または過剰努力の指標;(3)血圧-身体状態および/または神経ストレスの度合いの一般的な指標;(4)化学的性質-ホルモンを含む潜在的に多数のものがある血液および組織の化学的性質;および(5)生体電気活動-マイクロボルトレベルの感度での脳および神経機能の指標を含む。
【0036】
ある特定の態様において、本発明者らは、これらのチップには、兵士の身体状態および生理状態を迅速に判定し、場合によっては、発症前感染または毒物暴露を検出する際の特定の用途があると信じている。兵士が負傷した場合、本発明者らの想定としては、医療従事者が、埋め込み型マイクロチップ上にハンドヘルドリーダを置き、即座に、電極印加なしに、兵士のECGを記録し、血液pHに反映される生理学的ショックの電位を判定することが可能になる。埋め込み型のマイクロセンサには、感染物質または化学物質への発症前暴露を示し、解毒剤を投与するための個人用薬物送達システムの作動させる可能性がある。
【0037】
センサ情報は、例えば:(1)心臓ECGをモニタし、他の神経電気波形を潜在的に送信;(2)血液化学に及ぼす影響により、兵士の負傷程度を判定;(3)負傷後に生理学的ショックに陥る可能性;(4)生物学的感染または危険物質への発症前応答の表示;(5)兵士の作戦即応性レベルおよび疲労レベルの決定を行うために使用され得る。ある態様において、本発明者らは、新しい種類の埋め込み型マイクロバイオセンサを提案する。
【0038】
準備作業中に、開発された数多くの異なる様々なサイズおよびレンジのバイオテレメトリの試作品が開発されてきた。これらは、デシメートルオーダーのレンジを有する約6平方mmの試作版から、数センチメートルのレンジを有する1mm×3mm長さの試作版まで様々である。デバイスのうち最小のものは、皮下組織に導入され、血管付近に位置付けられ、または、適度なサイズの導入器を使用して、任意の特定の臓器または体内組織付近に設置され得る。
【0039】
本発明者らは、位相感知受信機のデザインと組み合わせて、高周波数で動作する再放射パラメトリック増幅器技術を用いて、新しいバイオテレメトリアプローチを開発した。パラメトリック効果デバイスは、増幅、周波数アップコンバージョンおよびダウンコンバージョン、およびマイクロ波周波数での発振器に対する時変リアクタンスの使用に基づく。パラメトリックデバイスは、dc源から信号周波数へ電力を移送する標準的な増幅器とは対照的に、RFポンプ周波数から信号周波数へ電力を移送する。ManleyおよびRoweは、パラメトリック増幅器に関する標準的な参考文献を公表した。図4は、1.5cmアンテナを用いてこのアプローチを使用することによって、0.5メートルの距離で遠隔測定したセンサテスト信号として使用されたECGを示す。
【0040】
この研究において認識された重大な点は、ある条件下でのRFポンプパラメトリック増幅器が、わずかなコンポーネントで実質的なゲイン(>20)しか呈さず、非常に小さな電気信号によって振幅変調および移送変調された信号を最放射する。3つの別個のコンポーネントを備えるパラメトリックベースのテレメトリ回路は、多くの顕著な有益な電気特性を呈する。これらは、マイクロボルトレベルの信号、高入力インピーダンス(>107Ω)、およびdcからメガヘルツレンジのアナログ帯域幅に対して増幅していない高感度を含む。高入力インピーダンスは、本質的に、デバイスを高い安定性の電位差計による測定に必要なタイプの電位計-増幅器にするため、特に着目される。
【0041】
ある態様において、各マイクロテレメトリデバイスは、単純なインダクタの修正により、100MHz〜3GHzの範囲の任意の搬送周波数で容易に動作する可能性を有する。多数の同時センサチャネルの手段として、複数の搬送周波数を使用することが可能である。既存の態様では、現在、約30マイクロボルト程度に低い電圧で生体波形を遠隔測定し得る。
【0042】
これらのマイクロチップは、アンテナ直径の約20〜30倍のレンジ(この場合、約5cmレンジ)を有し、電源は不要である。これは、身体を通って表面に身に着けている表示器までの短い距離の伝送には十分である。本発明者らは、電力消費が最小の超低電力の着用バイオテレメトリ励振器-受信機を想定しており;例えば、手首でのディスプレイまたは服の上に着用する可撓性ディスプレイである。このシステムはまた、他のグループによって開発段階にある制服および衣服の布地に織り込まれたアンテナをうまく利用してもよい。
【0043】
マイクロテレメトリシステムの高入力インピーダンスは、電位差センサとの直接的なインタフェースになり得る。図5は、小さなガラスpH電極からpH信号を伝送するために、マイクロテレメトリシステムの使用を示す予備データである。pH電極をキャリブレーション緩衝液に浸漬し、マイクロテレメトリシステムの入力に電気的に接続した。リモート受信機は、0.5メートルループして離れた場所で受信し、変化するpHを記録した。pH信号が比較的大きいため(数百ミリボルト)、わずかに非線形であるが、グラフは、さらなる前置増幅がなくても、テレメトリシステムが高インピーダンス電極との直接のインタフェースになり得ることを示す。
【0044】
本発明者らは、ある態様が、着目する他の生化学に適用を拡大する可能性を残したまま、局所組織または血液pHを感知するように、電位差計の技術を取り入れる。ある例示的な態様において、pH電極を作るには、貴金属の薄膜をコーティングし、pH感受性ガラス、二酸化シリコン、窒化シリコン、および時には、それら2つの層を1ミクロン厚みのわずかだけ堆積する。
【0045】
本発明の態様は、生物学的な炎症反応を最小限に抑え、組織への溶け込みがよく、湿気の浸透に抵抗性のある生体適合性材料でパッケージングされてもよい。特定の態様において、ガラスおよびセラミックパッケージまたは様々な封入ポリマーが使用されてもよい。
【0046】
1つの態様において、電子コンポーネントの装置が、電圧可変容量性リアクタンスが共振回路を形成するインダクタンスに結合されるようなデバイスを構成する。この回路に印加された高インピーダンスの生体電気またはバイオセンサ源からの低レベルのアナログ電位は、前記容量性リアクタンスを変更し、したがって、アナログ波形包絡線の振幅に比例して前記回路の共振を変化させる。例えば、容量性リアクタンスは、バラクタダイオードなどの電子コンポーネントによって供給され得る。さらに、またはあるいは、容量性リアクタンスは、p-n接合容量によって与えられる。
【0047】
別の態様において、装置が、アセンブリが無線励振器信号を着脱可能に後方散乱するとともに、前記無線励振器のリモート検出可能な無線高調波を発生させるのに十分な信号が、前記インダクタンスに誘導されるように、コンポーネントシステムの共振周波数に同調させたリモート無線励振器と組み合わせて上述したようなデバイスを備える。後方散乱信号を検出および復調するために、この装置に無線受信機が組み合わされてもよい。復調プロセスは、元の変調信号を再現するように、例えば、直接変換復調、AM、FM、または位相復調を使用して実行されてもよい。
【0048】
さらなる別の態様において、共振回路を形成するインダクタンスと組み合わせた時変容量性リアクタンスを有するデバイスにより、電気信号変調のパラメトリック増幅が生じるのに十分な振幅の、ポンプ信号として公知の印加された無線励振器信号によって電圧可変容量性リアクタンスが電気的に駆動される。次に、この増幅プロセスは、変調信号に対するデバイスの感度を実質的に高める。
【0049】
さらなる別の態様において、方法は電気オフセット電位で生体電気またはバイオセンサ入力信号を合計することによって、可変容量の適切な電気動作点に必要なバイアス電圧を発生する工程を備える。このオフセット電位は、従来の小型オンデバイスバッテリによって、または生体電気信号を検出するために使用される2つの生体電位電極を構成する異種の金属によって発生されてもよい。前記バイアス電圧は、異種の半電池電位差を有する電極金属を使用することで自然に生じる。
【0050】
別の態様において、デバイスが人体内に埋め込まれ、心臓、脳、および神経系から生じる生体電気信号を遠隔測定するための生体電位電極に接続される。このようにして、デバイスは、癲癇などの生体電気性質の神経疾患を診断および検出する目的で、脳の電気活動の機能をモニタするために使用されてもよい。デバイスは、心臓リズムおよび電気的機能性を制御するデバイス制御の目的で、心臓の生体電気活動をモニタするために、心臓内または心臓に配置されてもよい。さらに、またはあるいは、デバイスは、生化学センサまたは物理センサに接続されてもよく、センサからの信号が、ベースステーションにワイヤレス伝送される。
【0051】
本発明の目的は、パラメトリック増幅の方法を採用することによって、印加されたアナログ信号により達成された後方散乱変調の感度を高める方法を提供することである。これは、適用される無線周波数源の周波数で、比較的大きな周期的変化を電圧可変容量が受けるようにする方法によって達成される。この方法は、30MHz〜10GHzの範囲、好ましくは、100MHz〜3GHzの範囲の印加無線周波数信号により前記共振回路を駆動することによって達成されることで、無線周波数の範囲で0.5ボルト〜5ボルトの値の範囲の電圧が、回路インダクタンスに誘導される。この方法により、バラクタダイオードなどの電圧可変容量デバイスは、可変容量に適用される結果的に得られるアナログ信号変調が、共振回路によるパラメトリック増幅プロセスによって増大するのに十分な変化を受ける。
【0052】
前記共振回路のパラメトリックゲインは、無線励振器の振幅レベルに依存し、ひいては、前記可変容量の基準値の変動に依存する。ゲインは、共振回路の自己発振の不安定さおよびその傾向を回避するために、1よりわずかに大きく、10までの範囲のものであることが望ましく、好ましくは、5〜8の範囲のものであり得る。この方法によって、信号は、およそ0.5ボルトより低いRF駆動レベルで生じるものよりも、遠隔で検出された復調信号により大きな変化を生じる。
【0053】
別の態様において、本発明は、前記電圧可変容量にかかる電気的に配置された0〜1ボルトの範囲のバイアス電圧レベルを採用してもよい。このバイアス電圧レベルは、構築および製造に際して要求されるように、ある種のバラクタダイオードのように電圧可変容量の動作点を確立する際に有用な場合もある。このバイアス電圧レベルは、電気化学者らに公知のように、生体電位電極として使用されている2つの異種の金属のオフセット電位を使用して便宜上得られてもよく、または電極と直列の小さなバッテリによって得られてもよい。
【0054】
このシステムの特徴は、インピーダンス変換、前置増幅、ならびにRF後方散乱の変調が、いくつかの電気コンポーネントを含む比較的単純な回路によって実行され得ることである。
【0055】
このシステムの別の特徴は、電気生理学者らおよび神経工学技術者らによって一般に採用されているように、低い数十マイクロボルトのレンジで心臓、脳、および神経系の神経インタフェースで使用される電極から生体電位を遠隔測定するために十分な感度を有することである。
【0056】
本発明の別の特徴は、直流レベルから数百キロヘルツ〜メガヘルツの範囲の非常に幅広い信号帯域幅を有し得ることである。
【0057】
本発明の別の特徴は、このデバイスでは、低レベル信号の振幅を増強するのに普通必要とされる従来の増幅器に電流を供給するために、印加RFエネルギーを直流に変換する必要がないことである。
【0058】
本発明の別の特徴は、生体電気およびバイオセンサのアナログ信号レベルが、RF後方散乱および従来のRF後方散乱復調技術によって回復されたそれらの波形で変調可能なことである。
【0059】
このシステムの別の特徴は、電気的に単純であるため、手術ではなく、医療用途で一般に使用されているような小さな針の内腔を通して人体内にデバイスを埋め込むことができる程度にまで、リモートユニットのサイズを小さくできるため、このような導入の傷跡を最小限にとどめられることである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
以下の図面は、本明細書の一部をなすものであり、本発明のある局面をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書に提示された特定の態様の詳細な説明と組み合わせて、同図面の1つまたは複数を参照しながらより深く理解され得る。
【0061】
【図1】受動バイテレメトリシステムの略図である。V1は、生体電位またはバイオセンサから生じた入力信号をモデル化したものである。R1は、分離抵抗であり、D1およびD2は、可変容量として使用される背中合わせに接続されたバラクタダイオードを表す。L1は、共振回路を形成するインダクタであり、アンテナとしても働く。
【図2】図1の回路に印加されたテスト10KHz電気信号レベル(単位ミリボルト)から得られ、265MHzの無線励振器周波数を有する復元された振幅レベルのグラフである。
【図3】V1として1ミリボルト500KHzの変調信号を使用した、図1の回路からの後方散乱信号のスペクトル分析ディスプレイである。スペクトル分析器の出力は、搬送波の両側で+/-500KHzで予測AM側波帯の出現により達成可能な広い帯域幅を示す。
【図4】被験者の胸部領域に適用された生体電位電極から生じた体表面ECG信号を入力信号V1として使用し、図1に示す回路を用いて0.5メートルの距離で遠隔測定を行った際に、身体表面電極によって検出された1mV ECG波形である。
【図5】図1におけるV1として接続し、4、7、および10の変化するpH緩衝キャリブレーション溶液にさらした市販のpH電極から生じた復調信号レベルのグラフである。
【図6】潜在的に注射可能なワイヤレスpHセンサの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
本発明は、リモートユニットとベースステーションとの間で情報を伝達するために、同調された電気共振回路の結合を使用する無線通信デバイスの分野に関する。1つの態様において、リモートユニットは、バッテリがなく、入力無線周波数搬送波からの電力需要を導き出す電気的に受動的なデザインのものである。これにより、小型サイズおよび潜在的に長寿命の生体電位通信デバイスを製造することができる。バッテリが実装されていないため、人体や他の生物に埋め込まれる小型の物理または化学センサからの生体電気およびセンサデータのワイヤレステレメトリなどの目的にも適する。
【0063】
本発明のある態様は、電圧可変容量で構成された共振回路に印加された小さな電圧が、共振周波数のわずかな割合の量だけ共振周波数をシフトするという原理を用いる。UHFおよびマイクロ波領域における高い動作周波数で、絶対周波数の変化は、比較的大きな数値のヘルツであるため、従来の周波数復調技術によって感度良く復調される。
【0064】
本発明の第2の局面は、共振回路を形成するインダクタとともに電圧可変コンデンサの回路構成によって生じるパラメトリック増幅によって、低レベル電気信号を前置増幅する局面である。時変容量に信号電圧が印加されるように配設された時変容量は、パラメトリック増幅プロセスによって増幅される。この増幅は、印加されたRF搬送波の後方散乱変調と同時に生じる。このようにして、最小の電気回路とともに同一の時変容量を使用することによって、増幅および変調の2つのプロセスが同時に達成される。
【0065】
本発明の別の局面は、高インピーダンス生体電極ならびに高インピーダンス生化学および生物物理センサなどのソースから生じた電気信号を変調するための高入力ポートインピーダンスを与えるように、可変容量デバイスを使用した回路デザインである。パラメトリックデバイスのこのように高い入力ポートインピーダンスは、電力消費インピーダンス整合増幅器または回路を必要とすることなく、高い抵抗の生体電極およびバイオセンサを共振回路に直接接続できるために有益である。これにより、通常では、高インピーダンスの信号源と整合することが要求される従来のFETおよびトランジスタ緩衝増幅器を使用するよりもさらに回路が単純化される。
【0066】
本発明の別の局面は、広い帯域幅のテレメトリシステムのデザインである。この特徴は、変調前に従来のFETまたはトランジスタ回路を使用して、帯域幅をこれらの従来の回路のものに制限するのではなく、電圧可変コンデンサに直接信号を印加する変調方法によって得られる。
【0067】
本発明の別の特徴は、通常のFET増幅器、RF電力変換回路、および現在の技術において多くの場合がそうであるようなアナログからディジタルへの変換要求と比較すると、部品数を大幅に減らせることで、集積回路のデザインの現在の技術と比較すると、リモートユニット回路を著しく小型化可能なことである。
【0068】
商業メーカーからのコンポーネントを使用して、1mmの注射針の内腔を通り、外部に身に付けた受信機で生体電位を遠隔測定するのに十分なレンジを有するフォームファクタを達成可能である。単純な回路を繰り返し、各回路の周波数をシフトする単純なプロセスによって、マルチチャネル動作を達成することが可能である。
【0069】
例示的な電気回路
最も単純であるが、機能的かつ事例的な構成において、テレメトリデバイスは、共振回路を形成するために、半ブリッジ構成の1対のバラクタダイオードおよび小型インダクタを採用する。外部RF励振器がエネルギーをこのシステムに吐出した後、回路は異なる高調波周波数で再放射する。生体電位電極などの高インピーダンス源または小型化学もしくは物理センサから生じる電気信号が、信号源による共振回路の負荷を防止するために、分離レジスタまたは誘導チョークを通って電圧可変コンデンサに適用される。
【0070】
インダクタンスおよび可変容量のコンポーネント値によって規定された動作周波数は、インダクタおよび電圧可変容量を適切に選択することで、望ましくは、約100MHzを超え、数GHzマイクロ波レンジに及ぶ周波数であるが、これに限定されるわけではない幅広いレンジになり得る。
【0071】
電気コンポーネントのこのアセンブリは、誘導性-容量性(LC)共振回路の単純な構造を利用するワイヤレスバイオテレメトリデバイスである。電圧可変回路要素がバラクタダイオードである典型的な構成において、等価直列容量を形成するように背中合わせに接続される。このp-n接合容量は、Microwave Associates(Massachusetts, USA)により製造されたMA4ST2000シリーズなどのメーカーからのデータシートに一般的に見られるような、典型的に、1〜10ボルトの印加電圧で、2〜10pFなどの広範囲にわたって制御され得る。
【0072】
図1は、この回路の構成を示す。例えば、V1で示すミリボルトおよびマイクロボルトオーダーの生体電位信号は、分離レジスタR1を通ってバラクタD1およびD2にわたって配置される。直列バラクタは、約100MHzを超えることが好ましい周波数に対して共振回路を形成するために、インダクタンスL1と組み合わせたものである。この回路は、飽和前にダイオードおよびインダクタに数ボルトと同程度を誘導する外部のリモートRFポンプ源によって電気的に励起される。同時に、共振回路に印加された小さな電圧V1は、直列ダイオードのベースライン容量を変動させ、ひいては、システムの基本共振周波数を変動する。
【0073】
ポンプ周波数の高次高調波は、ダイオードの非線形応答の原理に従って、この回路のダイオード-インダクタから自然に放射され、これらの高調波は、インダクタから空間を通って外向きに伝播する。これらの放射高調波は、変調信号V1の作用により周波数がわずかにシフトされる。変調源による絶対周波数変動は、高調波の数と同じファクタで乗算され、高次高調波で周波数シフトを検出することによって、V1の変化に対する全体的な感度が上がる。
【0074】
直接変換、スーパーヘテロダイン、FM、およびスロープ検出AM復調方式などの一般的な無線通信方法により、放射高調波の検出および周波数復調が生じ得る。
【0075】
バラクタにかかる電圧の変化は、基本共振と放射高調波の両方の周波数に影響する。マイクロボルトレベルの信号でも、従来の無線復調技術を用いることで、遠隔検出可能な程度までバラクタダイオードの容量を変調できる。動作周波数は、デバイスの小さなループアンテナをより効率的に使用してコンパクトなサイズになるように、UHF帯およびGHz帯のものが望ましい。バラクタベースのL-C回路は、固有共振周波数に同調可能である。これにより、固有の動作チャネルが得られ、重なり合っていない周波数帯に同調したバラクタ回路のアレイによって、マルチチャネルデザインが可能になる。
【0076】
パラメトリック増幅
本発明は、生体電極またはバイオセンサからの低レベルのマイクロボルトレベル信号に対する感度を増強するために、信号をパラメトリック増幅するプロセスを採用する。理論上、パラメトリック増幅器は、無限入力抵抗と、ジョンソン雑音がないことの両方を有するため、ノイズのない増幅方法であることは、長い間、公知であった。パラメトリック増幅器は、時変回路パラメータ、通常、ゲインを与える容量に依存する。パラメトリック増幅器の機能は、数学的に厳密な研究分野であり、本出願の読者は、例えば、MatthaeiらおよびSardらによる参考文献を参照されたい。
【0077】
従来のパラメトリック増幅器は、バラクタダイオードの接合をAC駆動することによる時変容量を採用している。ダイオードの接合に印加された電気信号の振幅は、接合容量の値が電気ポンプ信号によって変化させられると増大し得る。所与の信号電荷Qに対して、V=Q/Cであるため、コンデンサにかかる電位Vは、Cが下がれば大きな値に増大する。本発明のシステムにおいて、バラクタダイオードまたは同様のボルト可変デバイスの接合容量は、ACポンプ電圧によって駆動される。時変コンデンサに印加された生体電位は、ベース容量をシフトするため、共振回路を形成する関連する誘導ループの電流の流れを変調する。
【0078】
RF励起信号の振幅により、バラクタダイオードが励起周波数で容量を著しく変化させると、印加信号V1のパラメトリック増幅が行われる。本発明により、信号周波数は、RF周波数に変換される。RF周波数振幅および周波数変調は、バラクタダイオードが印加されたRF励起によって容量が大きく偏位しない場合に達成されるものよりも比較的大きい。
【0079】
図2は、図1の回路にソースV1として印加された1ミリボルトの正弦波によって生じた遠隔検出された包絡線振幅変調のレベルを示す。
【0080】
図3は、信号源V1として使用される1ミリボルト500kHzのテスト信号とともに、後方散乱信号の遠隔検出されたスペクトルを示す。この実施例において、システムの帯域幅は、数キロヘルツよりかなり大きくなると見なされ、これは、埋め込み型ワイヤレステレメトリシステムをターゲットにした従来の回路デザインで典型的に達成され、広い帯域幅のディジタルデータも伝送してもよいことを示す。
【0081】
図4は、人間の胸部に取り付けられた2つの銀、塩化銀表面電極、および図1においてV1として使用されているほぼ1mVの検出されたECG生体電位を用いた遠隔復調された信号を示す。
【0082】
図5は、化学者らには周知であり、信号源V1として接続された従来のデザインの市販(VWR Inc.)の1/2”ガラスpH電極バルブを使用して得られた遠隔復調された信号を示す。pH4、7、および10でpHキャリブレーション溶液に電極をさらした。pHセンサ電極から安定したdcレベルを検出するために、復調器は、直接変換同期復調方式を使用した。
【0083】
図6は、潜在的に注射可能なワイヤレスpHセンサ100の略図を示す。センサ100は、pH感応電極10、および基準電極20を備える。センサ100は、マイクロテレメトリセクション30をさらに備える。特定の態様において、マイクロテレメトリセクション30の長さLは、およそ3mmである。ある態様において、センサ100の直径は、およそ1mm以下である。その結果、センサ100は、14、16、または18ゲージ針の内腔を通って注入されてもよい。
【0084】
本発明のある態様は、「Wireless Implantable Micro-Biosensors」(DARPA BAA03-02を考慮して提出)というタイトルの白書に記載されており、同内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0085】
本開示は、様々な修正例および別の形態に適応可能であるが、特定の態様は、本明細書において例として示され記述したものである。しかしながら、本開示が、開示された特定の形態に限定されることを意図したものではないことを理解されたい。本開示は、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本開示の精神および範囲内のすべての修正例、等価物、および代替例に及ぶ。さらに、開示された装置および方法の異なる局面は、様々な組み合わせ、および/または独立して利用されてもよい。以上のことから、本発明は、本明細書に示した組み合わせのみに限定されるものではなく、他の組み合わせを含んでもよい。
【0086】
参考文献
以下の参考文献が参照により組み入れられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路が、励起信号およびアナログセンサ信号を受信するように構成され、
電子回路が、生体信号に応答して変動する共振周波数を有し、
電子回路が、励起信号および生体信号を受信すると、応答信号を伝送するように構成され、
アナログ信号の特性が、応答信号を測定することによって決定され得る、
インダクタンスおよび可変容量を提供するように構成された電子回路を備える装置。
【請求項2】
生体信号が、化学センサ、生化学センサ、磁気センサ、電磁気センサ、生理センサ、および機械センサからなる群より選択されるセンサによって発生される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
電子回路が、応答信号をワイヤレス伝送するように構成される、請求項1記載の装置。
【請求項4】
アナログ信号の特性がアナログ信号の振幅である、請求項1記載の装置。
【請求項5】
アナログ信号の特性がアナログ信号の周波数である、請求項1記載の装置。
【請求項6】
生体信号が生体電位によって発生される、請求項1記載の装置。
【請求項7】
励起信号が無線周波数信号である、請求項1記載の装置。
【請求項8】
励起信号がディジタル論理信号である、請求項1記載の装置。
【請求項9】
電子回路が分離レジスタをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項10】
電子回路が、インビボで生体信号を受信するように構成される、請求項1記載の装置。
【請求項11】
電子回路が、被験者の皮下に埋め込まれるように構成される、請求項10記載の装置。
【請求項12】
電子回路が、被験者の体内に針で挿入されるように構成される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
電子回路が、1ミリメートルの注射針の内腔を通るように構成される、請求項11記載の装置。
【請求項14】
電子回路が、被験者の皮膚表面に配置されるように構成される、請求項10記載の装置。
【請求項15】
電子回路が、等価直列容量を形成するように背中合わせに結合された1対のバラクタダイオードを備える、請求項1記載の装置。
【請求項16】
電子回路にアナログセンサ信号が印加されていないときに電子回路の共振周波数と同等の周波数で励起信号を発信するように構成されたリモート励振器をさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項17】
励起信号が30MHz〜10GHzの周波数を有する、請求項1記載の装置。
【請求項18】
励起信号が100MHz〜3GHzの周波数を有する、請求項1記載の装置。
【請求項19】
励起信号が電子回路に0.5〜5.0ボルトの電圧を誘導する、請求項1記載の装置。
【請求項20】
生体電位を測定するように構成された電子回路を提供する工程;
励起信号を電子回路に提供する工程;
生体電位を有する生体信号を発生し、生体信号を電子回路に伝送する工程;
電子回路から応答信号を伝送する工程;および
生体信号の特性を決定するために、応答信号を測定する工程;
を備える、生体特性の測定方法。
【請求項21】
電子回路が可変共振周波数を備える、請求項20記載の方法。
【請求項22】
電子回路が、インダクタンスおよび可変容量を提供するように構成される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
電子回路に生体信号が伝送されない場合に電子回路がベース共振周波数を備え、励起信号がベース共振周波数で提供される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
生体信号が、化学センサ、生化学センサ、磁気センサ、電磁気センサ、生理センサ、および機械センサからなる群より選択されるセンサによって発生される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
生体信号の特性が生体信号の振幅である、請求項20記載の方法。
【請求項26】
生体信号の特性が生体信号の周波数である、請求項20記載の方法。
【請求項27】
電子回路が応答信号をワイヤレス伝送する、請求項20記載の方法。
【請求項28】
励起信号が無線周波数信号である、請求項20記載の方法。
【請求項29】
電子回路が分離レジスタをさらに備える、請求項20記載の方法。
【請求項30】
電子回路がインビボで生体信号を受信する、請求項20記載の方法。
【請求項31】
電子回路を被験者の皮下に埋め込む工程をさらに備える、請求項30記載の方法。
【請求項32】
被験者に針で電子回路を埋め込む工程をさらに備える、請求項31記載の方法。
【請求項33】
針が中空の針である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
電子回路が、1ミリメートルの注射針の内腔を通るように構成される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
被験者の皮膚表面上に電子回路を配置する工程をさらに備える、請求項30記載の方法。
【請求項36】
電子回路が、等価直列容量を形成するために背中合わせに結合された1対のバラクタダイオードを備える、請求項20記載の方法。
【請求項37】
アナログセンサ信号が電子回路に印加されていないときに電子回路の共振周波数と同等の周波数で励起信号を発信するためのリモート励振器を使用する工程をさらに備える、請求項20記載の方法。
【請求項38】
励起信号が30MHz〜10GHzの周波数を有する、請求項20記載の方法。
【請求項39】
励起信号が100MHz〜3GHzの周波数を有する、請求項20記載の方法。
【請求項40】
励起信号が電子回路に0.5〜5.0ボルトの電圧を誘導する、請求項20記載の方法。
【請求項41】
回路に印加される高インピーダンス生体電気またはバイオセンサ源からの低レベルアナログ電位が、容量性リアクタンスを変動させ、そしてアナログ波形包絡線の振幅に比例して該回路の共振を変化させる、共振回路を形成するインダクタンスに電圧可変容量性リアクタンスが結合されるようにデバイスを構成する電子コンポーネント装置。
【請求項42】
容量性リアクタンスが、少なくとも1つの電子コンポーネントによって提供される、請求項41記載のデバイス。
【請求項43】
電子コンポーネントがバラクタダイオードである、請求項42記載のデバイス。
【請求項44】
容量性リアクタンスがp-n接合容量によって提供される、請求項41記載のデバイス。
【請求項45】
アセンブリが、無線励振器信号を検出可能に後方散乱するとともに、該無線励振器のリモート検出可能な無線高調波を発生させる、前記インダクタンスにおいて十分な信号が誘導されるようにコンポーネントシステムの共振周波数に同調させたリモート無線励振器を備えるようにさらに規定された、請求項41記載のデバイス。
【請求項46】
後方散乱信号を検出および復調する無線受信機を備えるようにさらに規定され、復調プロセスが同技術に従い、このような方法が、元の変調信号を再現するための直接変換復調、AM、FM、または位相復調を含んでもよい、請求項45記載のデバイス。
【請求項47】
共振回路を形成するインダクタンスと組み合わせた時変容量性リアクタンスを有するデバイスがパラメトリック増幅の原理に従って電気信号変調のパラメトリック増幅を生じるのに十分な振幅の、ポンプ信号として公知の印加された無線励振器信号によって電圧可変容量性リアクタンスが電気的に駆動され、次に、増幅プロセスが、変調信号に対するデバイスの感度を実質的に高める、請求項45記載のデバイスを使用する方法。
【請求項48】
生体電気信号を検出するために使用される2つの生体電位電極を構成する異種の金属によって発生される従来の小型オンデバイスバッテリによってオフセット電位が発生されてもよく、異種の半電池電位を有する電極金属を使用することで自然にバイアス電圧が生じる、電気オフセット電位で生体電気またはバイオセンサ入力信号を合計する方法によって、可変容量の適切な電気動作点に必要なバイアス電圧を発生する方法。
【請求項49】
心臓、脳、および神経系から生じる生体電気信号を遠隔測定するために、デバイスが人体内に埋め込まれ、生体電位電極に接続される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
デバイスが生化学センサまたは物理センサに接続され、センサからの信号がベースステーションにワイヤレス伝送される、請求項48記載の方法。
【請求項51】
デバイスが、癲癇などの生体電気性質の神経疾患を診断および検出する目的で、脳の電気活動の機能をモニタするために使用される、請求項48記載の方法。
【請求項52】
心臓リズムおよび電気的機能性を制御するデバイスを制御する目的で、心臓の生体電気活動をモニタするためのデバイスが心臓内または心臓上に配置される、請求項48記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−525901(P2010−525901A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506680(P2010−506680)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062450
【国際公開番号】WO2008/137703
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509110714)アリゾナ ボード オブ リージェンツ フォー アンド オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】