説明

生分解プラスチックの分解方法。

【課題】生分解プラスチックに有機性廃棄物のほか油脂またはアルコールを混合して、低温下でも生分解プラスチックを分解処理できるようにした。
【解決手段】生分解プラスチック31が10重量部及び有機性廃棄物32が10乃至500重量部に対して、油脂33またはアルコール34が1乃至10重量部混合して、所定時間経過させることによって、生分解プラスチックを分解させる。この有機性廃棄物32は、処理前の有機性廃棄物32が100重量部に対して、処理後の分解廃棄物35が10乃至1000重量部混合される。油脂33またはアルコール34が、生分解プラスチックを分解する微生物の栄養になって、低温下で活動を停止していた微生物を活性化させる。これにより、低温下でも生分解プラスチックを分解処理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解プラスチックの分解方法及び装置(含む施設)に関し、特に生分解プラスチックが分解しにくいときに分解を促進させる方法及び装置(含む施設)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような生分解プラスチックの分解では、生分解プラスチックに対して有機性廃棄物を混合して分解させることが考えられている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−249474号公報
【特許文献2】特開平9−249475号公報
【特許文献3】特開2003−183093公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような有機性廃棄物を混ぜた生分解プラスチックの分解方法では、気温の下がる冬場では生分解プラスチックをほとんど分解させることができなかったし、北方または極地などの寒冷地でも生分解プラスチックをほとんど分解させることができなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、気温が下がった状況でも、暖房などを必要とせず、生分解プラスチックを簡便で安価に分解出来る方法または装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、生分解プラスチックと、有機性廃棄物と、油脂またはアルコールとを混合して、所定時間経過させることによって、上記生分解プラスチックを分解させる。
【発明の効果】
【0007】
これにより、油脂またはアルコールが、生分解プラスチック及び有機性廃棄物の混合物の発酵分解温度を上昇させ、これにより、生分解プラスチックを分解できる温度まで上昇させることができ、気温の低い環境でも生分解プラスチックを確実に分解できる。
【0008】
実験では、一日の平均気温10度以下の環境で、生分解プラスチックを有機性廃棄物の中に混合した場合、3か月経過しても生分解プラスチックに分解の兆候は見られなかった。しかし、油脂またはアルコールを混合すると、3日乃至10日ほどで生分解プラスチックが細かい小片にバラバラに分離分割され、5日乃至30日ほどで元の形状を識別できない土壌に近い状態まで完全に分解できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)有機性廃棄物の発酵堆肥化装置(施設)
図1乃至図3は、生分解プラスチックの発酵分解堆肥化装置(施設)の外観及び断面を示す。この発酵分解堆肥化装置(施設)つまり発酵槽1の敷地の大きさは幅及び奥行きは、数十メートル乃至百数十メートル、場合によって数百メートルであり、通常は屋外に設置される。しかし、屋内に設置されてもよい。
【0010】
この設置個所の周囲は畑でかまわない。しかし、設置個所の周囲は、田んぼ、牧場、森林、山林、山、山間、河川付近、河川敷、湖沼付近などでもよい。この設置個所は水平で平坦な箇所である。しかし斜面でもよいし、凹凸のある面でもよい。また設置個所の周囲には日照及び風をさえぎるものが無いほうがよい。混合物14の水分の蒸発(乾燥)に支障が生じるからである。しかし、分解までの時間がかかるものの、日照及び風をさえぎるものがあってもよい。
【0011】
上記敷地に対して多数の支柱2が地中から立設されている。この支柱2は幅方向に数メートル乃至十数メートル間隔、例えば12メートル間隔で立設され、奥行き方向で数メートル間隔、例えば5〜6メートル間隔で立設される。この支柱2の下端の地中には建築用ブロックまたはコンクリートの土台が配置されている。
【0012】
これら多数の支柱2の内、いちばん外側の支柱2の外側に沿って防水壁(防水性シート)7が地面に立設され、幾分地中に埋め込まれている。この防水壁(防水性シート)7は、側面の防水性シートとしての役割もあり、発酵槽1の周囲の地表より高く延出され、これにより発酵槽1の周囲の地表から雨水/地下水/雪水/霜水/霧水/露水/水/水分が流れ込む/浸水する/浸入する/入り込むことを防ぐことができ、混合物14の水分の蒸発(乾燥)が妨害されることがなくなる。
【0013】
図2の例では、この防水壁7の内側にさらにもう1つ防水壁7が立設されている。むろん、内側の防水壁7又は4外側の防水壁7は省略されてもよい。このように防水壁7を二重にすれば、通気シート10等から降り込んだ雨水/露/霧/雪などを二重の防水壁7の間に貯め込んで排水することができる。これにより、混合物14に上記雨水などが染み込んで、混合物14から汚水が流出したりまたは飛散したりすることがなくなり、環境上も優れているし、また、混合物14の水分の蒸発(乾燥)が妨害されることがなくなる。
【0014】
この防水壁(防水性シート)7の内側は、数十センチメートル例えば40センチメートルの深さに掘り起こされ、底面の防水性シート11がほぼ水平に敷かれ、この底面の防水性シート11の周縁はほぼ直角に上方へ折り曲げられ、側面の防水性シート12となっている。これら底面の防水性シート11及び側面の防水性シート12の中には、通常の土壌13が数十センチメートル例えば40センチメートルの厚さに積層されている。この通常の土壌13の上には混合物14が、数十センチメートル例えば20センチメートルの厚さに積層されている。
【0015】
これにより、底面の防水性シート11がほぼ水平に敷かれ、当該底面の防水性シート11の周縁にて側面の防水性シート12がほぼ垂直状に設けられ、この側面の防水性シート12と底面の防水性シート11とは防水が保たれるように連結されていることになる。これら底面の防水性シート11及び側面の防水性シート12の防水/防雨/防雪/防霜/防霧/防露の機能によって、上記発酵槽1の中の土壌13及び混合物14に、周りの土壌及び地下の土壌から、雨水/地下水/雪水/霜水/霧水/露水/水/水分が流れ込む/浸水する/浸入する/入り込むことを防ぐことができ、混合物14の水分の蒸発(乾燥)が妨害されることがなくなる。
【0016】
そして、この混合物14の厚さは上記通常の土壌13の厚さより薄い。これにより、混合物14に対して、通常の土壌13の中の好気性発酵菌が十分に行き渡り、好気性発酵が十分に行われ、悪臭、汚水の発生を防止できる。このように通常の土壌13を好気性発酵に使用するから、籾殻、大鋸屑(おがくず)、その他の増量剤を混ぜる必要はなくなる。またコンクリートの上に混合物14を積層した場合に比べ、通常の土壌13の上に混合物14を積層すると、好気性発酵菌の増加速度が速く、この結果、好気性発酵の速度が速くなり、混合物14を迅速に分解/堆肥化できる。
【0017】
上記混合物14の厚さは上記通常の土壌13の厚さと同じまたは厚くてもよい。この場合は、好気性発酵菌の増加速度が遅くなり、この結果、好気性発酵の速度が遅くなるが、最終的には混合物14を分解/堆肥化できる。
【0018】
上記通常の土壌13は、畑の土、牧場の土、田の土、山の土、山林の土、森林の土、河川の土、湖沼池の土、本件発酵堆肥化方法/装置/施設によって混合物14を分解堆肥化した土であってもよい。上記混合物14は、後述するように、生分解プラスチック31、有機性廃棄物32及び油脂33またはアルコール34が混合されたものである。
【0019】
上記各支柱2の上端には奥行き方向及び幅方向に奥行き梁3及び幅梁4が掛け渡されている。この奥行き梁3の間隔は上記12メートル間隔となっており、これら奥行き梁3それぞれに湾曲したアーチ状の屋根壁支持棒5が幅方向に多数掛け渡され、蒲鉾状の屋根が形成される。この屋根壁支持棒5のうち、発酵槽1のいちばん外側の端は延長され、上記防水壁7に連結されている。これら屋根壁支持棒5は奥行き方向に延びる奥行き支持棒6に連結され固定されている。この奥行き支持棒6は発酵槽1の屋根部分のほか、発酵槽1のいちばん外側の壁にも設けられている。
【0020】
これら屋根壁支持棒5及び奥行き支持棒6の上には光透過性及び防水性のビニルシート8が覆われ被せられている。このビニルシート8は1枚または複数枚が雨漏りをしないように重ねられて被せられている。このビニルシート8の上には固定針金(固定紐または固定ロープ)9が掛け渡されて押さえつけられ、ちょうど上記屋根壁支持棒5の中間で屋根壁支持棒5に平行に掛け渡されて、端は防水壁7の外側の奥行き支持棒6に連結固定されるとともに、上記奥行き梁3にも連結固定されている。これにより、ビニルシート8が屋根壁支持棒5及び奥行き支持棒6に対して押さえつけられ固定されている。
【0021】
このようなビニルシート8の屋根は、光透過性及び防水性であって、上記底面の防水性シート及び側面の防水性シートの中に雨水などの水分が入るのを防止するとともに、上記有機性廃棄物に対して太陽光などの自然光を当てさせることができる。この然光は太陽からの直接の太陽光、雲の隙間から地表に到達する太陽光、雲を通過してくる太陽光、またはこれらの太陽光の反射光若しくは媒体を通過した太陽光である。
【0022】
このように発酵堆肥化装置/施設の屋根が防水性であるため、屋根は防水/防雨/防雪/防霜/防霧/防露の機能を有し、発酵槽1の中に雨水/地下水/雪水/霜水/霧水/露水/水/水分が流れ込む/浸水する/浸入する/入り込むことを防ぐことができ、混合物14の水分の蒸発(乾燥)が妨害されることがなくなる。
【0023】
またこのように発酵堆肥化装置/施設の屋根が光透過性であるため、積層された混合物14に対して光を当てることができ、これにより混合物14の水分の蒸発(乾燥)を促すことができる。また、混合物14に光を当てることにより、好気性発酵菌の増加を促し、好気性発酵の速度を上げることができる。なお、分解速度は遅くなるが、場合によって、この光を当てないで分解させることも可能である。
【0024】
これら多数の支柱2の内、いちばん外側の支柱2の外側に沿って、側面には、網状の通気シート10が取り付けられ、施設/装置の側面が網状の通気シート10で覆われている。この施設/装置の側面に沿って延びる網状の通気シート10の上縁は上記上方の奥行き支持棒6に固定され、通気シート10の下縁は上記下方の防水壁7の外側の奥行き支持棒6に固定されている。この通気シート10の外側にも上記固定針金(固定紐または固定ロープ)9が掛け渡され押さえつけられて、通気シート10が屋根壁支持棒5及び奥行き支持棒6に対して押さえつけられ固定されている。
【0025】
この通気シート10の上縁は上記ビニルシート8の下縁の内側に入り込み、この通気シート10の下縁は上記防水壁7の外側に出ている。したがって、屋根のビニルシート8に降り注いだ雨水などは通気シート10に伝わって流れることがなくなり、また風などによって通気シート10に当たった雨水が防水壁7の内側に流れ込むことがなくなる。しがって、発酵槽1の中に、雨水/地下水/雪水/霜水/霧水/露水/水/水分が流れ込む/浸水する/浸入する/入り込むことを防ぐことができ、混合物14の水分の蒸発(乾燥)が妨害されることがなくなる。
【0026】
このような通気シート10は、上記屋根のビニルシート8の周縁と上記側面の防水性シート12または防水壁7との間に設けられた通気部の役目を果たす。このような通気シート10によって、上記発酵槽1の中の混合物14または土壌13と外気との換気を行うことができるし、自然風が発酵槽1の中に入り込み、混合物14の水分の蒸発(乾燥)と、好気性発酵をより促進することができる。この結果、扇風機や換気装置を設けなくても済む。
【0027】
このような通気シート10は、網体であるから、通気/換気を行うとともに、上記混合物14に対して太陽光などの自然光を当てさせることができる。またこのように通気シート10は、網状で光透過性があるため、積層された混合物14に対して光を当てることができ、これにより混合物14の水分の蒸発(乾燥)を促すことができる。また、混合物14に光を当てることにより、好気性発酵菌の増加を促し、好気性発酵の速度を上げることができる。
【0028】
上記発酵堆肥化装置/施設の正面には出入り口15が設けられ、ダンプカー/トラックなどによって、混合物14が搬入される。この出入り口15の部分の通気シート10は別体とされ、巻き上げ棒によって巻き上げられ、ダンプカー/トラックの出入りに支障がないようになっている。また、上記奥行き梁3の上の上記ビニルシート8の凹んだ溝の上には排水樋20が設けられ、ビニルシート8の上に降った雨水などが排水される。
【0029】
図3に示すように、蒲鉾形の各屋根の間の谷間には上述のように排水樋20が固定されている。この排水樋20の下には上記ビニルシート8及び固定針金(固定紐または固定ロープ)9が挟み込みまたは排水樋20の重みによって押さえつけられている。
【0030】
以上のように、防水性及び光透過性のビニルシート8の屋根、底面及び側面の防水性シート11、12及び光回透過性及び通気性のある通気シート10などによって、防水/防雨/防雪/防霜/防霧/防露の機能が発揮され、発酵槽1内の混合物14に雨水/地下水/雪水/霜水/霧水/露水/水/水分が流れ込む/浸水する/浸入する/入り込むのを防止でき、混合物14に上記雨水などが染み込んで、混合物14から汚水が流出したりまたは飛散したりすることがなくなり、環境上も優れているし、また、上述したように、混合物14の水分の蒸発/乾燥が妨害されることがなくなる。
【0031】
(2)混合物14の混合成分
上述のように、混合物14は、生分解プラスチック31、有機性廃棄物32及び油脂33またはアルコール34が混合されたものであり、混合されて所定時間経過させることによって、生分解プラスチック31が発酵/分解/堆肥化/処理される(以下「分解処理」という)。
【0032】
この有機性廃棄物32は、家畜または人間の糞尿、牛糞、豚糞、鳥糞、家庭または工場からの生ごみ、食品性ごみ、植物または動物の廃棄物また排泄物、生物の死骸である。この混合物14には、さらに、有機性廃棄物32には、上述の発酵/分解/堆肥化/処理された処理済みの分解廃棄物35、既に発酵されているが原形を止めている一次発酵物、堆肥または通常の土壌(土)13が混合される。
【0033】
この一次発酵物は、上記家畜または人間の糞尿、牛糞、豚糞、鳥糞、家庭または工場からの生ごみ、食品性ごみ、植物または動物の廃棄物また排泄物、生物の死骸が途中まで発酵分解されて、未だに原形を止めている発酵物をいう。このような一次発酵物を加えると、発酵速度が早くなり、生分解プラスチック31は、より速く分解される。この理由は、生分解プラスチック31を分解する微生物/バクテリア/糸状菌にとって、このような一次発酵物は有効な栄養源になるためと考えられる。
【0034】
上記生分解プラスチック31は、土の中の微生物/バクテリア/糸状菌などによって分解処理されて土などになるプラスチックであり、トウモロコシなどのデンプンなどを原料としたポリ乳酸などが原材料となっている。
【0035】
この生分解プラスチック31は、電気製品の外ケースなどの可撓性のない硬質プラスチックまたはゴミ袋または食品容器などの可撓性のある軟質プラスチックなどがある。この生分解プラスチック31は、混合にあたって、細かく裁断されてもよいが、裁断されなくてもよい。実験では裁断してもしなくても分解時間に差は出なかった。
【0036】
上記油脂33は、脂肪酸のグリセリンエステルであり、動物性または植物性で、主成分は飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸で、常温で固体/脂肪または液体/脂肪油である。固体より液体の方が混合し易いので、油脂33は液体が望ましい。この油脂33は、食用のものであり、せっけん、ろうそく、潤滑油、薬用、ペイント、ワニス、印刷インキは除外されるが、含めてもよい。
【0037】
上記アルコール34は、炭化水素の水素原子を水酸基で置換した化合物であって、エチルアルコール、メチルアルコール等である。このような油脂33または/及びアルコール34を上記混合物に混合すると、混合物14の発酵温度が上昇して、生分解プラスチック31が分解される、または分解速度が速くなる。
【0038】
この油脂33または/及びアルコール34を加えるのは、通常は一日の平均気温が約12度乃至約8度以下、例えば10度以下、5度以下または氷点下以下になったときに加えられる。このような低温環境では、上記生分解プラスチック31はなかなか分解しないが、油脂33または/及びアルコール34を加えて混合物14の発酵温度を上げると、生分解プラスチック31は分解して堆肥化される。なお、この油脂33または/及びアルコール34を加えるのは、一日の平均気温が約12度乃至約8度以上のときでも可能であり、このような場合には、生分解プラスチック31の分解/堆肥化速度が速くなる。
【0039】
この混合物14においては、上記生分解プラスチック31が10重量部に対して、上記有機性廃棄物32が10乃至500重量部、望ましくは50乃至250重量部、より望ましくは約100重量部混合される。上記油脂33またはアルコール34は、上記生分解プラスチック31が10重量部に対して、1乃至10重量部、望ましくは2.5乃至7.5重量部、より望ましくは約5重量部混合される。
【0040】
さらに、上記有機性廃棄物32は、上述の分解処理前の有機性廃棄物31が100重量部に対して、当該分解処理後の分解廃棄物35、一次発酵物、堆肥または通常の土壌(土)13が10乃至1000重量部、望ましくは50乃至500重量部、より望ましくは100乃至200重量部混合される。
【0041】
このような分解廃棄物35、堆肥または通常の土壌(土)13には、微生物/バクテリア/糸状菌そのものまたはその萌芽・胞子などが大量に混合されている。したがって、混合物14に、籾殻、大鋸屑、その他の増量剤を混ぜなくても済み、生分解プラスチック31を簡便で安価に分解/堆肥化できる。
【0042】
上記分解処理前の有機性廃棄物32は、生ごみまたは食品性ごみ10重量部に対して、牛糞等の家畜糞20乃至80重量部、望ましくは30乃至60重量部、より望ましくは40重量部混合される。この生ごみまたは食品性ごみに油脂が含まれている場合には、これに応じて上記油脂33の混合量は減らされる。
【0043】
このような油脂33は、油脂を含んだ白土(はくど)等で代用可能である。この白土は酸性白土ともいい、主成分はモンモリロナイトとケイ酸ゲルなどであり、油脂を含んでいる。上記生ごみまたは食品性ごみは、若干ながら発酵/分解処理されたものでもよい。
【0044】
上記液体の油脂33またはアルコール34は噴霧器などを使って、混合物14に噴霧されてかき混ぜられる。また、固体の油脂33は、細かく裁断されて、混合物14にかき混ぜられる。
【0045】
(3)混合物14の掘り起こし落下
図4は、発酵槽1の中に設置される小型のパワーショベルカー16を示す。このパワーショベルカー16によって、積層された混合物14が掘り起こされ落下される。この場合、パワーショベルカー16のバケット17の中に混合物14が取り込まれ、0.5メートル乃至3メートルの高さ例えば1.5メートルの高さまで持ち上げられ、バケット17が少しずつ徐々に切り換えされ、バケット17の中の混合物14が、数回例えば5回に分けて落下される。
【0046】
図5はバケット17の傾きをコントロールするバケットレバー18であり、このバケットレバー18には当該バケットレバー18を間欠的に動くように許容する間欠プレート19が設けられている。この間欠プレート19によって、バケットレバー18を間欠的に動かすことができ、バケット17の中の混合物14が、数回に分けて順次落下される。
【0047】
この混合物14の掘り起こし落下によって、混合物14の表面の浅い部分と深い部分とが入れ替わって切り返しができ、混合物14が十分に撹拌され、混合物14が優しく揉みほぐされ、混合物14の中に空気が十分に混入され、混合物14の中の空気が均一かつ十分に入れ替わる。これにより混合物14の水分がよく蒸発(乾燥)し、好気性発酵を十分に行わせることができる。
【0048】
落下の高さは0.5メートル乃至5メートルであり、望ましくは1メートル乃至3メートルの高さであり、より望ましくは1.5メートル乃至2メートルである。落下の高さが高いほど、混合物14がより十分に撹拌され、混合物14がより優しく揉みほぐされ、混合物14の中に空気がより十分に混入され、混合物14の中の空気がより均一かつ十分に入れ替わる。しかし、落下の高さが高いほど掘り起こし落下の作業は難しくなる。
【0049】
図8は、混合物14の水分含有量と重さとに対する落下に費やすべき時間の変化を示す。上記落下/切り返し/撹拌/揉みほぐし、特に落下にあたっては、上記混合物14は、5キログラム以上の混合物14につき、3秒以上をかけてゆっくりと徐々に落下される。望ましくは、5kgの混合物14で3秒乃至5秒望ましくは約4秒、10kgの混合物14で3秒乃至6秒望ましくは約4.5秒、15kgの混合物14で3秒乃至7秒望ましくは約5秒、20kg以上の混合物14で3秒乃至8秒望ましくは5.5秒、30kg以上の混合物14で3秒乃至9秒望ましくは6秒、40kg以上の混合物14で3秒乃至10秒望ましくは7秒、5kg以下の混合物14で3秒乃至4秒望ましくは約3.5秒である。
【0050】
これにより、混合物14の中に空気がさらに十分に混入され、混合物14の中の空気がさらに均一かつ十分に入れ替わる。むろん、落下させる時間は10秒以上でもよいし、3秒以下でもよい。例えば5キログラム以上の混合物14につき、2.5秒以上、2秒以上、1.5秒以上をかけてゆっくりと徐々に落下されてもよい。
【0051】
このように落下時間に幅があるのは、混合物14の水分含有量によって落下時間を変更しなくてはならないためである。水分含有量が多いほど、落下時間は長くなり、水分含有量が少ないほど、落下時間は短くなる。また、混合物14の量が多いほど、落下時間は長くなり、混合物14の量が少ないほど、落下時間は短くなる。
【0052】
また、混合物14は複数回に分けて分割落下され、この分割落下回数は、数回、望ましくは4〜6回、より望ましくは5回である。混合物14の分割落下回数が多いほど、混合物14がより十分に撹拌され、混合物14がより優しく揉みほぐされ、混合物14の中に空気がより十分に混入され、混合物14の中の空気がより均一かつ十分に入れ替わる。しかし、落下の回数が多いほど落下の作業は難しくなる。
【0053】
このように落下回数に幅があるのは、混合物14の水分含有量によって落下回数を変更しなくてはならないためである。水分含有量が多いほど、落下回数は多くなり、水分含有量が少ないほど、落下回数は少なくなる。また、混合物14の量が多いほど、落下回数は多くなり、混合物14の量が少ないほど、落下回数は少なくなる。
【0054】
上記掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしにあたっては、混合物14を揺らしながら、振りながら、揺動させながらまたは振動させながら、落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしされる。この場合、パワーショベルカー16のバケット17を支えるアームが揺動または振動される。これにより、混合物14の中に空気がさらに十分に混入され、混合物14の中の空気がさらに均一かつ十分に入れ替わる。
【0055】
このような混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしは、所定日数ごとまたは所定時間ごとに行われる。例えば、このような掘り起こし落下は、1日乃至30日ごと、望ましくは3日乃至20日ごと、より望ましくは5日乃至10日ごと、さらに望ましくは7日ごとに行われる。しかし、実験では30日間掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしを行わなくても、好気性発酵及び生分解プラスチック31の分解処理は可能であった。
【0056】
また、上記掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしは、一日の中では比較的気温の高い正午から午後2時付近、比較的湿度の低い午後1時から午後3時付近、または太陽光線の光量が多い正午ごろの時間帯に行われる。さらに、上記掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしは、雨天、降雪、霧、霜のある日よりは、曇天の日に行われ、さらに曇天の日よりは快晴の日に行われる。混合物14の乾燥がより促されるからである。
【0057】
上記掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしによって、混合物14の水分は蒸発(乾燥)し、これにより混合物14の水分は70重量%以下となり、この結果、汚水の流出または飛散がなく、しかも好気性発酵が可能となり、この好気性発酵によって悪臭が発生しなくなる。
【0058】
上記分解前/堆肥化前の混合物14の水分は95重量%乃至85重量%例えば90重量%であり、分解前/堆肥化前の混合物14は流動性を有していて、ゾル状またはゲル状である。上記掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしによって、混合物14の水分が70重量%ないし60重量%以下になると、好気性発酵が始まる。
【0059】
この好気性発酵によって有機物から無機物への発酵分解が進み、炭酸ガスと水分が分離され、この好気性発酵による発熱によって、水分はさらに蒸発(乾燥)する。水分が少なくなると、有機物も無機物に分解される。分解後/堆肥化後の混合物14の水分は70重量%乃至10重量%例えば32.5重量%となる。水分が32.5重量%付近になると、これ以上水分の蒸発(乾燥)及び好気性発酵はあまり進まなくなる。むろん、太陽光線が当たり続ければさらに水分の蒸発(乾燥)は進む。
【0060】
上記好気性発酵によって混合物14の温度(発酵温度)は、通常70度以上、低くても60度以上となり、PHは8乃至8.5となって、上述のように水分蒸発/乾燥が進むし、生分解プラスチック31が分解処理される。
【0061】
なお、上記パワーショベルカー16の無限軌道(キャタピラ)はゴム製でもよいが、金属製が望ましい。金属製であれば、混合物14の上をパワーショベルカー16がスリップする(滑る)ことがなくなる。
【0062】
(4)生分解プラスチック31の分解処理の実験
図9は、生分解プラスチック31の分解処理の実験結果を示す。生分解プラスチック31を地表に放置しただけであると、いつまでたっても生分解プラスチック31は分解処理されず、原形を止めたままとなる。これは一日の平均気温が10度以下例えば15度でも10度以上例えば5度でも同じである。
【0063】
これに対して、一日の平均気温が10度以上例えば15度のとき、生分解プラスチック31を10重量部に対して上記有機性廃棄物32を50重量部、分解廃棄物35を50重量部混合すると、掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしを行わなかった場合、30日ほどで生分解プラスチック31は分解処理された。
【0064】
掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしを行う回数を増やしていくと、この30日は短くなる。しかし、この場合、一日の平均気温が10度以下例えば5度になると、いつまでたっても生分解プラスチック31は分解処理されず、原形を止めたままとなる。
【0065】
これに対して、一日の平均気温が10度以下例えば5度のとき、生分解プラスチック31を10重量部に対して上記有機性廃棄物32を50重量部、分解廃棄物35を50重量部、油脂33またはアルコール34を10重量部混合すると、掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしを行わなかった場合、20日ほどで生分解プラスチック31は分解処理された。
【0066】
掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしを行う回数を増やしていくと、この20日は短くなる。また、この場合、一日の平均気温が10度以上例えば15度になると、この20日は短くなり、だいたいにおいて10日ほどで分解される。したがって、一日の平均気温が8乃至12度以下例えば10度以下のときには、生分解プラスチック31は分解処理されないが、油脂33またはアルコール34を加えると、分解処理されることになる。
【0067】
一日の平均気温が10度以下のときには、微生物/バクテリア/糸状菌は活動を停止すると考えられる。このような油脂34及びアルコール34は、生分解プラスチック31を分解する微生物/バクテリア/糸状菌の栄養になり、その活動を再開させ活性化させると考えられる。この場合、アルコール34よりは油脂34の方が望ましい。上記生分解プラスチック31が分解処理されると、細かい細片に分離分割され、最終的には粉状になって土/土壌と同じようなものになる。
【0068】
(5)混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの間隔日数
図6は、平均気温または平均湿度の変化に対する、混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの間隔日数を示す。この平均気温または平均湿度は、1日当たりのもの、午前中当たりのもの、午後当たりのもの、日中当たりのもの、夜間当たりのもの、2日当たりのもの、3日当たりのもの、4日当たりのもの、5日当たりのもの、6日当たりのもの、1週間あたりのものなどどのようなものでもよい。以下も同じである。
【0069】
これによれば、混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの間隔日数は、分解/堆肥化時の平均気温または平均湿度の変化に応じて変化する。すなわち、混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの間隔日数は、分解/堆肥化時の平均気温が高くなるほど短くなり、逆に平均気温が低くなるほど長くなる。また、混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの間隔日数は、分解/堆肥化時の平均湿度が低くなるほど短くなり、逆に平均湿度が高くなるほど長くなる。
【0070】
(6)生分解プラスチック31の分解処理所要日数
図7は、平均気温または平均湿度の変化に対する、生分解プラスチック31の分解処理所要日数を示す。これによれば、生分解プラスチック31の分解処理所要日数は、分解処理時の平均気温または平均湿度の変化に応じて変化する。すなわち、生分解プラスチック31の分解処理所要日数は、分解処理時の平均気温が高くなるほど短くなり、逆に平均気温が低くなるほど長くなる。また、混合物14の分解処理所要日数は、分解処理時の平均湿度が低くなるほど短くなり、逆に平均湿度が高くなるほど長くなる。
【0071】
図7の例によれば、平均気温30℃乃至24℃及び平均湿度50%乃至70%で2週間乃至3週間で生分解プラスチック31は分解処理される。平均気温24℃乃至18℃及び平均湿度50%乃至70%で3乃至4週間で混合物14は分解処理される。平均気温18℃乃至12℃及び平均湿度50%乃至70%で4乃至5週間で混合物14は分解処理される。平均気温12℃乃至6℃及び平均湿度50%乃至70%で5乃至6週間で混合物14は分解処理される。平均気温6℃乃至0℃及び平均湿度50%乃至70%で6乃至7週間で混合物14は分解処理される。
【0072】
そして、この図7の特性は、平均湿度が低くなるほど、混合物14の分解処理所要日数は短くなる。また、この図7の特性は、平均湿度が高くなるほど、混合物14の分解処理所要日数は長くなる。一方、上述したように、混合物14の分解処理所要日数は、分解処理時の平均気温が高くなるほど短くなり、分解処理時の平均湿度が低くなるほど短くなる。これらを総合すると、混合物14の1回の分解処理における上記掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの合計回数は、平均気温または平均湿度の変化にかかわらず、7回乃至10回のほぼ一定回数となる。
【0073】
(7)他の実施の形態
本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしにあたっては、混合物14ばかりでなく、通常の土壌13までも巻き込んで掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしをしてもよい。
【0074】
上記防水壁7は、防水できれば、プレート、シート、カバーなどの形態でもよく、材質は木材、合成樹脂、金属などでもよい。この防水壁7は、側面の防止性シート12が延出されたものでもよい。屋根のビニルシート8は、透明ガラス、透明アクリル樹脂、透明合成樹脂などの透明体、半透明体または光透過性のない材質でもよい。通気シート10は、網状のほか、メッシュ状、縦簾状、横簾状、透明ガラスの鎧戸状、透明アクリル樹脂の鎧戸状、透明合成樹脂の鎧戸状などの通気性のある透明体または通気性のある半透明体、光透過性のない材質の鎧戸状など、通気性があればどのようなものでもよい。発酵槽1の形状は方形状のほか、円形、三角形、その他の多角形、直線及び/または曲線で囲まれた形状でもよい。
【0075】
上記パワーショベルカー16は、パワーリフト、フォークリフト、スクリューミキサなどでもよく、混合物14を掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしできれば、移動式、設置固定式いずれでもよい。例えば、自動的に掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしをさせる機械でもよく、この機械はバケットの多数付いた無限軌道を備え、混合物14を自動的に所定の高さまで掘り起こし、自動的にゆっくりと徐々に落下させ、自動的に発酵槽1の中を移動し、上記図6の間隔日数ごとに、この掘り起こし落下の作業を行う。さらに、上記防水壁7と側面の防水性シート12との間に万が一入り込んだ雨水等を排出する排水路を設けてもよい。
【0076】
(7)他の発明の効果
[1]生分解プラスチックと、有機性廃棄物と、油脂またはアルコールとを混合して、所定時間経過させることによって、上記生分解プラスチックを分解させることを特徴とする生分解プラスチックの分解方法。一日の平均気温が低くなって生分解プラスチックを分解処理できなくなったときでも、油脂またはアルコールによって生分解プラスチックを分解処理できる。
【0077】
[2]上記有機性廃棄物は、家畜または人間の糞尿、牛糞、豚糞、鳥糞、家庭または工場からの生ごみ、食品性ごみ、植物または動物の廃棄物また排泄物、生物の死骸であり、 さらに、上記有機性廃棄物は、請求項1の方法によって既に発酵されて分解され堆肥化された処理済みの分解廃棄物、既に発酵されているが原形を止めている一次発酵物、若しくは堆肥または土が混合されることを特徴とする請求項1記載の生分解プラスチックの分解方法。これにより、このような廃棄物を有効に再利用できる。処理済みの分解廃棄物/堆肥または土/土壌の中の微生物の萌芽などを有効に利用できる。
【0078】
[3]上記油脂またはアルコールは一日の平均気温が約12度乃至約8度以下になったときに加えられ、これにより発酵温度が上昇して、生分解プラスチックが分解され、 上記油脂は、脂肪酸のグリセリンエステルであり、動物性または植物性で、常温で固体/脂肪または液体/脂肪油であり、食用のものであり、 上記アルコールは、炭化水素の水素原子を水酸基で置換した化合物であって、エチルアルコール、メチルアルコール等であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解プラスチックの分解方法。一日の平均気温が8度乃至12度以下になって生分解プラスチックを分解処理できなくなったときでも、油脂またはアルコールによって生分解プラスチックを分解処理できる。
【0079】
[4]上記生分解プラスチックが10重量部に対して、上記有機性廃棄物が10乃至500重量部、上記油脂またはアルコールが1乃至10重量部混合され、 さらに、この有機性廃棄物は、請求項1の方法による処理前の有機性廃棄物が100重量部に対して、請求項1の方法による処理後の分解廃棄物が10乃至1000重量部混合されたものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の生分解プラスチックの分解方法。この配合割合により、生分解プラスチックを最も早く分解処理できる。
【0080】
[5]掘り起こし落下装置を使って、上記混合された生分解プラスチック、有機性廃棄物及び油脂またはアルコールの混合物を掘り起こし、0.5メートル乃至3メートルの高さまで持ち上げ、持ち上げた混合物を、5キログラム以上の混合物につき、3秒以上をかけてゆっくりと徐々に落下させ、これらの掘り起こし落下を所定日数ごとまたは所定時間ごとに行って、当該混合物を撹拌し、これにより好気性発酵を行わせ、 この掘り起こし落下によって、当該混合物の水分は蒸発し、これにより混合物の水分は70重量%以下となり、この結果、汚水の流出または飛散がなく、しかも好気性発酵が可能となり、この好気性発酵によって悪臭が発生せず、 上記処理前の混合物の水分は95重量%乃至85重量%であり、処理前の混合物は流動性を有するゾル状またはゲル状であり、処理後の混合物の水分は70重量%乃至10重量%であり、処理後の混合物は好気性発酵によって無機物に分解されており、 上記掘り起こし落下は、1日乃至15日に1回行われることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の生分解プラスチックの分解方法。
【0081】
これにより、混合物の水分は蒸発(乾燥)し、これにより混合物の水分は70重量%以下となり、この結果、汚水の流出または飛散がなく、しかも好気性発酵が可能となり、この好気性発酵によって悪臭が発生しない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアに十分に空気/酸素が供給される。
【0082】
[6]積層された生分解プラスチックを含む混合物を掘り起こし、0.5メートル乃至3メートルの高さまで持ち上げ、持ち上げた混合物14を、5キログラム以上の混合物につき、3秒以上をかけてゆっくりと徐々に落下させ、これらの掘り起こし落下を所定日数ごとまたは所定時間ごとに行って、混合物を撹拌させ、これにより好気性発酵行わせる。
【0083】
したがって、掘り起こし落下させるという非常に簡単な操作で、混合物の水分を蒸発(乾燥)させ、これにより汚水の流出または飛散がなくなり、この結果、好気性発酵が可能とされ、悪臭の発生を防止することができる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアに十分に空気/酸素が供給される。
【0084】
[7]生分解プラスチックを含む混合物の発酵堆肥化分解処理装置(施設)は、防水/防雨/防雪/防霜/防霧/防露の機能によって、雨水/地下水/雪水/霜水/霧水/露水/水/水分が流れ込む/浸水する/浸入する/入り込むことを防ぐことができ、混合物14の水分の蒸発(乾燥)が妨害されることがなくなる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアに水が過剰に与えられてしまうことがない。
【0085】
[8]底面の防水性シートがほぼ水平に敷かれ、当該底面の防水性シートの周縁にて側面の防水性シートがほぼ垂直状に設けられ、この側面の防水性シートと底面の防水性シートとは防水が保たれるように連結され、底面の防水性シートの上及び側面の防水性シートの中に通常の土壌が数十センチメートルの厚さで積層され、これら底面の防水性シート及び側面の防水性シートによって内部の上記土壌に水分が入るのを防止する発酵槽に対して、上記通常の土壌の上に生分解プラスチック及び家畜の糞尿などの混合物が数十センチメートルの厚さで積層し、しかもこの生分解プラスチックを含む混合物の厚さは上記通常の土壌の厚さより薄いものであり、 上記発酵槽の上に設置された光透過性及び防水性の屋根によって、上記底面の防水性シート及び側面の防水性シートの中に雨水などの水分が入るのを防止するとともに、上記生分解プラスチックを含む混合物に対して太陽光などの自然光を当てさせ、 上記屋根の周縁と上記側面の防水性シートとの間に設けられた通気部によって、上記発酵槽と外気との換気を行う。
【0086】
したがって、籾殻、大鋸屑、その他の増量剤を混ぜなくても済み、生分解プラスチックを含む混合物を簡便で安価に分解処理できる等の効果を奏する。 また、生分解プラスチックを含む混合物の発酵堆肥化のための施設も、底面及び側面の防水性シート、通常の土壌、光透過性及び防水性の屋根、通気部、混合物を掘り起こし落下させる機構(ショベルカー)だけで済み、施設も簡便かつ安価で済む等の効果を奏する。 さらに、この混合物の発酵堆肥化方法は屋外でも行うことができ、作業性も向上し、環境上も優れている。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアに水が過剰に与えられてしまうことがない。
【0087】
[9]上記通気部は網体であって、通気/換気を行うとともに、上記生分解プラスチックを含む混合物に対して太陽光などの自然光を当てさせるものである。これにより、混合物に自然風が当たり、外気との換気を行うことができ、混合物に自然光が当たって、混合物の水分を早く蒸発(乾燥)させることができ、扇風機/換気装置などが不要になる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を減少させることができる。
【0088】
[10]側面の防水性シートは、発酵槽の周囲の地表より高く延出され、これにより発酵槽の周囲の地表から雨水などの水が浸入するのを防ぐ。これにより、生分解プラスチックを含む混合物の水分蒸発(乾燥)に支障が生じない。
【0089】
[11]上記自然光は太陽からの直接の太陽光、雲の隙間から地表に到達する太陽光、雲を通過してくる太陽光、またはこれらの太陽光の反射光若しくは媒体を通過した太陽光である。これにより混合物14の乾燥を安価に行え、好気性発酵を促すことができる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を減少させることができる。
【0090】
[12]上記生分解プラスチックを含む混合物には有機性廃棄物が含まれ、この有機性廃棄物は、家畜または人間の糞尿、牛糞、豚糞、鳥糞、家庭または工場からの生ごみ、食品性ごみ、植物または動物の廃棄物また排泄物、生物の死骸である。これにより、このような廃棄物を有効に再利用出る。
【0091】
[13]上記掘り起こし落下によって、混合物の水分は蒸発(乾燥)し、これにより混合物の水分は70重量%以下となり、この結果、汚水の流出または飛散がなく、しかも好気性発酵が可能となり、この好気性発酵によって悪臭が発生しない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を減少させることができる。
【0092】
[14]上記堆肥化前の混合物の水分は95重量%乃至85重量%であり、堆肥化前の混合物14は流動性を有するゾル状またはゲル状であり、堆肥化後の混合物の水分は70重量%乃至10重量%であり、堆肥化後の混合物は好気性発酵によって無機物に分解される。分解処理されれば水分が少ないので分解処理された混合物の運搬に便利である。
【0093】
[15]上記掘り起こし落下は、一日の中では比較的気温の高い、比較的湿度の低いまたは太陽光線の光量が多い時間帯に行われる。これにより、混合物の水分をより早く蒸発(乾燥)させることができる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0094】
[16]上記混合物の落下において、混合物の水分含有量が多いほど、落下時間は長くなり、水分含有量が少ないほど、落下時間は短くなり、また、混合物の量が多いほど、落下時間は長くなり、混合物の量が少ないほど、落下時間は短くなる。これにより、そのときの混合物の水分含有量/重さにあった最適な空気混入を行うことができ、最も短い時間で作業できる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0095】
[17]上記混合物の落下において、混合物は数回に分けて落下される。これにより、混合物の中に空気がさらに十分に混入され、混合物の中の空気がさらに均一かつ十分に入れ替わる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0096】
[18]混合物の水分含有量が多いほど、落下回数は多くなり、水分含有量が少ないほど、落下回数は少なくなり、また、混合物の量が多いほど、落下回数は多くなり、混合物の量が少ないほど、落下回数は少なくなる。これにより、そのときの混合物の水分含有量/重さにあった最適な空気混入を行うことができ、最も短い時間で作業できる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0097】
[19]上記掘り起こし落下にあたっては、混合物を揺らしながら、振りながら、揺動させながらまたは振動させながら、掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしされる。これにより、混合物の中に空気がさらに十分に混入され、混合物の中の空気がさらに均一かつ十分に入れ替わる。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0098】
[20]上記掘り起こし落下は、1日乃至30ごと、望ましくは3日乃至20日ごと、より望ましくは5日乃至10日ごとら、望ましくは7日ごとに行われる。これにより、混合物の水分蒸発(乾燥)/好気性発酵が断絶することなく程良い状態で継続され、しかも掘り起こし落下を余分に無駄に行ってしまうことがない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0099】
[21]平均気温または平均湿度の変化に応じて、上記掘り起こし落下の間隔日数は変動する。これにより、混合物の水分蒸発(乾燥)/好気性発酵が断絶することなく、平均気温または平均湿度に対して最適な状態で継続され、しかも掘り起こし落下を余分に無駄に行ってしまうことがない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0100】
[22]上記混合物の1回の分解処理における上記掘り起こし落下の合計回数は、平均気温または平均湿度の変化にかかわらずほぼ一定である。これにより、混合物の水分蒸発(乾燥)/好気性発酵が断絶することなく、平均気温または平均湿度に対して最適な状態で継続され、しかも掘り起こし落下を余分に無駄に行ってしまうことがない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0101】
[23]上記混合物の堆肥化は有機物から無機物への分解であり、平均気温30℃乃至24℃及び平均湿度50%乃至70%で2週間乃至3週間で分解処理され、平均気温24℃乃至18℃及び平均湿度50%乃至70%で3乃至4週間で分解処理され、平均気温18℃乃至12℃及び平均湿度50%乃至70%で4乃至5週間で分解処理され、平均気温12℃乃至6℃及び平均湿度50%乃至70%で5乃至6週間で分解処理され、平均気温6℃乃至0℃及び平均湿度50%乃至70%で6乃至7週間で分解処理される。これにより、混合物の水分蒸発(乾燥)/好気性発酵が断絶することなく、平均気温または平均湿度に対して最適な状態で継続され、しかも掘り起こし落下を余分に無駄に行ってしまうことがない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【0102】
[24]平均気温または平均湿度の変化に応じて分解処理の所要日数は変動するものである。これにより、混合物の水分蒸発(乾燥)/好気性発酵が断絶することなく、平均気温または平均湿度に対して最適な状態で継続され、しかも掘り起こし落下を余分に無駄に行ってしまうことがない。また、生分解プラスチックを分解する糸状菌等の微生物/バクテリアへの余分な水分を効率的に減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
生分解プラスチックに有機性廃棄物のほか油脂またはアルコールを混合して、低温下でも生分解プラスチックを分解処理できるようにした。生分解プラスチック31が10重量部及び有機性廃棄物32が10乃至500重量部に対して、油脂33またはアルコール34が1乃至10重量部混合して、所定時間経過させることによって、生分解プラスチックを分解させる。この有機性廃棄物32は、処理前の有機性廃棄物32が100重量部に対して、処理後の分解廃棄物35が10乃至1000重量部混合される。油脂33またはアルコール34が、生分解プラスチックを分解する微生物の栄養になって、低温下で活動を停止していた微生物を活性化させる。これにより、低温下でも生分解プラスチックを分解処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】生分解プラスチック31及び混合物14の分解処理装置/施設の外観を示す。
【図2】生分解プラスチック31及び混合物14の分解処理装置/施設の部分断面を示す。
【図3】生分解プラスチック31及び混合物14の分解処理装置/施設の部分断面を示す。
【図4】生分解プラスチック31及び混合物14の分解処理装置/施設の中に設置されたパワーショベルカー16を示す。
【図5】バケット17の傾きをコントロールするバケットレバー18及びこのバケットレバー18を間欠的に動くように許容する間欠プレート19を示す。
【図6】平均気温または平均湿度の変化に対する、混合物14の掘り起こし落下/切り返し/撹拌/揉みほぐしの間隔日数を示す。
【図7】平均気温または平均湿度の変化に対する、生分解プラスチック31の分解処理の所要日数を示す。
【図8】混合物14の水分含有量と重さとに対する、混合物14の落下に費やすべき時間の変化を示す。
【図9】生分解プラスチック31の分解処理の実験結果を示す。
【符号の説明】
【0105】
1…発酵槽、2…支柱、
3…奥行き梁、4…幅梁、
5…屋根壁支持棒、6…奥行き支持棒、
7…防水壁、8…ビニルシート(屋根)、
9…固定針金(固定紐または固定ロープ)、
10…通気シート(通気部)、
11…底面の防水性シート、12…側面の防水性シート、
13…通常の土壌、14…混合物、
15…出入り口、16…パワーショベルカー、
17…バケット、18…バケットレバー、
19…間欠プレート、20…排水樋、
31…生分解プラスチック、32…混合物14、
33…油脂、34…アルコール、35…分解廃棄物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解プラスチックと、有機性廃棄物と、油脂またはアルコールとを混合して、所定時間経過させることによって、上記生分解プラスチックを分解させることを特徴とする生分解プラスチックの分解方法。
【請求項2】
上記有機性廃棄物は、家畜または人間の糞尿、牛糞、豚糞、鳥糞、家庭または工場からの生ごみ、食品性ごみ、植物または動物の廃棄物また排泄物、生物の死骸であり、
さらに、上記有機性廃棄物は、請求項1の方法によって既に発酵されて分解され堆肥化された処理済みの分解廃棄物、既に発酵されているが原形を止めている一次発酵物、若しくは堆肥または土が混合されることを特徴とする請求項1記載の生分解プラスチックの分解方法。
【請求項3】
上記油脂またはアルコールは一日の平均気温が約12度乃至約8度以下になったときに加えられ、これにより発酵温度が上昇して、生分解プラスチックが分解され、
上記油脂は、脂肪酸のグリセリンエステルであり、動物性または植物性で、常温で固体/脂肪または液体/脂肪油であり、食用のものであり、
上記アルコールは、炭化水素の水素原子を水酸基で置換した化合物であって、エチルアルコール、メチルアルコール等であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解プラスチックの分解方法。
【請求項4】
上記生分解プラスチックが10重量部に対して、上記有機性廃棄物が10乃至500重量部、上記油脂またはアルコールが1乃至10重量部混合され、
さらに、この有機性廃棄物は、請求項1の方法による処理前の有機性廃棄物が100重量部に対して、請求項1の方法による処理後の分解廃棄物が10乃至1000重量部混合されたものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の生分解プラスチックの分解方法。
【請求項5】
掘り起こし落下装置を使って、上記混合された生分解プラスチック、有機性廃棄物及び油脂またはアルコールの混合物を掘り起こし、0.5メートル乃至3メートルの高さまで持ち上げ、持ち上げた混合物を、5キログラム以上の混合物につき、3秒以上をかけてゆっくりと徐々に落下させ、これらの掘り起こし落下を所定日数ごとまたは所定時間ごとに行って、当該混合物を撹拌し、これにより好気性発酵を行わせ、
この掘り起こし落下によって、当該混合物の水分は蒸発し、これにより混合物の水分は70重量%以下となり、この結果、汚水の流出または飛散がなく、しかも好気性発酵が可能となり、この好気性発酵によって悪臭が発生せず、
上記処理前の混合物の水分は95重量%乃至85重量%であり、処理前の混合物は流動性を有するゾル状またはゲル状であり、処理後の混合物の水分は70重量%乃至10重量%であり、処理後の混合物は好気性発酵によって無機物に分解されており、
上記掘り起こし落下は、1日乃至15日に1回行われることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の生分解プラスチックの分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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