説明

生分解性エアクリーナー用濾材

【課題】 塵埃の捕集効率が高く濾過寿命も長く、且つ生分解性を有し、しかも保形性と耐水性に優れた生分解性エアクリーナー用濾材を提供する。
【解決手段】 短繊維からなる粗層と、長繊維からなる緻密層とが積層されてなる生分解性エアクリーナー用濾材であって、各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなり、前記構成繊維を絡合することにより、各層は一体化されており、且つ前記構成繊維は合成生分解性樹脂によって結合されている生分解性エアクリーナー用濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナー用濾材、主として自動車等のエアクリーナーに用いられる濾材に関し、特には生分解性を有し、且つ耐水性に優れた生分解性エアクリーナー用濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエアクリーナーは、外気中の塵埃を充分に捕集した後で、清浄化空気をエンジンルームに導入するために用いられる濾材であり、塵埃の捕集効率を高くするばかりでなく塵埃保持量を大きくして濾過寿命を長くすることが求められている。このようなエアクリーナー用濾材としては、従来より、粗密構造を有する不織布からなる濾材が適用されており、例えば特許文献1に記載される、疎水性繊維を主体とし、低密度の繊維構造体からなる外層と、親水性繊維を主体とし、高密度の繊維構造体からなる中間層と、高密度の湿式不織布からなる内層とを含み、前記の各層がポリエステル系樹脂で含浸されているエアクリーナー用濾材が知られている。しかし、このようなエアクリーナー用濾材は使用後には、焼却処理や埋め立て処理により廃棄されることから、例えば焼却中に焼却炉を傷めたり、有害ガスを発生したり、COガスの発生により環境への負荷が増加するなどの問題があった。また、埋め立て処理においても、多数の自動車から廃棄されることを考慮すると、大きな量になり、埋め立て地の不足という問題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献2には、生分解性の素材を用いたフィルタエレメントが提案されている。このフィルタエレメントは、濾過体と型枠又は端板とを備えており、この濾過体は、シート状の生分解性不織布から成る少なくとも2層構造のろ材を、略波板状に成形した有孔補強材間に挟装して成ることが記載されている。しかし、このフィルタエレメントに用いられている2層構造のろ材は、シート状の2枚の生分解性不織布が重ねられているだけであり、一体化した構造ではないために、2種類のろ材の生産を行ない、しかも重ねる工程が必要となり手間がかかりコストも高くなるという問題があった。また、ろ材の保形性に乏しく、有孔補強材間に挟装しなければならないという問題もあった。また、上流層としてジュート繊維である天然素材が用いられており、水分の吸収により強度が低下するなどの耐水性に劣るという問題もあった。
【0004】
【特許文献1】特開平06−343809号公報
【特許文献2】特開2002−66242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、塵埃の捕集効率が高く濾過寿命も長く、且つ生分解性を有し、しかも保形性と耐水性に優れた生分解性エアクリーナー用濾材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、短繊維からなる粗層と、長繊維からなる緻密層とが積層されてなる生分解性エアクリーナー用濾材であって、各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなり、前記構成繊維を絡合することにより、各層は一体化されており、且つ前記構成繊維は合成生分解性樹脂によって結合されていることを特徴とする生分解性エアクリーナー用濾材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、塵埃の捕集効率が高く濾過寿命も長く、且つ生分解性を有し、しかも保形性と耐水性に優れた生分解性エアクリーナー用濾材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の生分解性エアクリーナー用濾材は、短繊維からなる粗層と、長繊維からなる緻密層とが積層されてなり、各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなる生分解性エアクリーナー用濾材である。具体的には、例えば合成生分解性繊維の短繊維からなる繊維ウエブと、スパンボンド法などによって形成された合成生分解性繊維からなる長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布とを積層し、次いで短繊維側よりニードルパンチなどの絡合手段によって、各層の構成繊維を絡合すると共に各層を一体化し、次いで合成生分解性樹脂等の分散液を含浸することにより構成繊維間を結合させて得ることができる。
【0009】
また、本発明の生分解性エアクリーナー用濾材は、好ましくは、前記粗層が表面粗層と中間粗層とからなり、前記表面粗層と、前記中間粗層と、前記緻密層とがこの順に積層されてなる生分解性エアクリーナー用濾材である。具体的には、例えば合成生分解性繊維の短繊維からなる繊維ウエブと、前記短繊維よりも平均繊度の小さな合成生分解性繊維の短繊維からなる繊維ウエブと、スパンボンド法などによって形成された合成生分解性繊維からなる長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布とをこの順に積層し、次いで短繊維側よりニードルパンチなどの絡合手段によって、各層の構成繊維を絡合すると共に各層を一体化し、次いで合成生分解性樹脂等の分散液を含浸することにより構成繊維間を結合させて得ることができる。
【0010】
前記合成生分解性繊維の短繊維からなる繊維ウエブは、前記粗層に相当し、例えば平均繊維長が好ましくは10〜100mm、より好ましくは20〜80mmで、捲縮数5〜30個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機やエアレイ装置などを使用して、繊維ウエブに形成して得ることができる。また、前記粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維の平均繊度は、好ましくは0.5〜33デシテックス、より好ましくは1.1〜22デシテックス、更に好ましくは1.7〜11デシテックスである。また、前記表面粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維の平均繊度は、好ましくは1.1〜33デシテックス、より好ましくは1.7〜22デシテックス、更に好ましくは3.3〜11デシテックスである。また、前記中間粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維の平均繊度は、好ましくは0.5〜22デシテックス、より好ましくは1.1〜7.7デシテックス、更に好ましくは1.7〜5.5デシテックスである。
【0011】
また、前記中間粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維の平均繊度は、前記表面粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維の平均繊度よりも小さいことが好ましい。小さくすることにより、表面粗層、中間粗層、緻密層の順に密度勾配を設けることができるので、塵埃の捕集効率を高くすると共に濾過寿命を長くすることができる。なお、本発明において、各層の密度とは、各層または不織布などの繊維構造物における平均孔径が小さいことを密度が高いといい、繊維構造物における平均孔径が大きいことを密度が低いということとする。したがって、密度は、繊維構造物の面密度(g/m)と厚さ(mm)と平均繊度(デシテックス)とに、依存する。なお、繊維構造物における平均孔径φは、下記の(式1)〜(式3)より求めることができる。
【0012】
(式1)

ただし、aは格子間距離、ρは不織布の密度、Lは繊維1g当たりの繊維長(=1×10cm/平均デシテックス)、cは格子を構成する1本の辺の長さ(=1cm)。
【0013】
上記の式では、不織布を1cmの規則的な3次元格子状の立方体と仮定して格子間距離aを求めている。ここで、ρLは不織布1cm当たりに含まれる繊維の全長であり、これを格子を構成する1本の辺の長さ(=1cm)で割ると、3次元格子を構成する辺の本数が出る。辺は縦、横、高さの3方向にあるので3で割ると1方向の辺の数が得られる。この辺の数は立方体の一面に表れる格子の交差点の数と一致するので、この数の平方根は立方体の一辺に存在する交差点の数となる。そして、この交差点の数から1を引くと、一辺に存在する格子間隔の数が得られる。1cmの立方体を仮定しているので、一辺の長さ1cmを格子間隔の数で割ることで、格子間距離aが求まる。
【0014】
(式2)
πr=(a−d)
ただし、rは孔の半径、aは格子間距離、dは繊維直径。
この式は、不織布に形成される孔の面積πrと、上記の式で求めた格子間距離aから繊維直径dを引いた長さを一辺とする正方形の面積(a−d)とが一致すると仮定して導いたもので、この式を誘導した下記の(式3)から平均孔径φが求まる。なお、異なる繊維径が複数ある場合には、繊維直径は繊維の平均密度と、繊維の平均デシテックスとから求めた繊維平均直径を用いるものとする。
【0015】
(式3)

【0016】
前述の長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布は、前記緻密層に相当し、例えばスパンボンド法などによる繊維ウエブ又は不織布を適用することができる。この不織布は、例えばスパンボンド法による繊維ウエブに部分的に熱融着加工を施した不織布が適用可能であり、部分的な熱融着加工としては、融着面積が5〜30%、好ましくは10〜25%であることが好ましい。具体的には、例えば直径又は1辺が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmの円形又は方形の融着部分が10〜70個/cmの割合で、好ましくは20〜50個/cmの割合で、等間隔に点在していることが好ましい。部分的に熱融着加工されていると、不織布の厚さが少なくなり、繊維構造が緻密となる効果がある。なお融着面積が30%を超えると、圧力損失が大きくなり濾過寿命が短くなる場合があり、融着面積が5%未満であると、繊維構造が緻密となる効果が得られなくなる場合がある。また、この部分的な熱融着加工は、後ほど施される絡合処理によって熱融着部分が剥離するような弱い熱融着加工とすることも可能である。
【0017】
また、前述の長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布は、例えば長繊維が一方向又は略一方向に配列された第1および第2のシートが、これらの繊維の配列方向が互いに交差するように積層されてなる交差不織布を適用することができる。この交差不織布としては、例えば、特開2002−155463号公報に開示される直交積層不織布、特開2002−327366号公報に開示される割繊維不織布、または特開平10−204767号公報や特公平3−36948号公報に開示される縦延伸不織布などを適用することができる。なお、長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布としては、圧力損失などを考慮すると、スパンボンド法などによる繊維ウエブ又は不織布がより好ましい。
【0018】
前述の長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布は、前記緻密層に相当するが、含まれる合成生分解性繊維は連続した繊維又はフィラメントであり、熱収縮加工などによる捲縮処理が施されていない繊維が好ましい。捲縮処理が施されていないことによって、繊維層の厚さが少なくなり、緻密な構造とすることができる。また、前記緻密層に相当する繊維ウエブ又は不織布中の長繊維の平均繊度は、好ましくは0.5〜17デシテックス、より好ましくは1.1〜7.7デシテックス、更に好ましくは1.7〜5.5デシテックスである。また、前記長繊維の平均繊度は、粗層および/または中間粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維の平均繊度よりも小さいことが好ましい。小さくすることにより、粗層、緻密層の順に、好ましくは表面粗層、中間粗層、緻密層の順に密度勾配を設けることができるので、塵埃の捕集効率を高くすると共に濾過寿命を長くすることができる。
【0019】
また、前記粗層に相当する繊維ウエブ中の短繊維および前記緻密層に相当する繊維ウエブ又は不織布の繊維に着色されていることも可能であり、例えば粗層の色が灰色または黒であり、緻密層の色が白色(無着色)であることにより、緻密層の変色の程度により塵埃の付着の程度を確認することが可能となり、生分解性エアクリーナー用濾材の交換を行なったり、交換時期を推定することが可能である。
【0020】
本発明では、粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブと、緻密層に相当する長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布とを積層し、次いでニードルパンチや水流絡合などの絡合手段によって、各層の構成繊維を絡合すると共に各層を一体化し、次いで合成生分解性樹脂等により構成繊維間を結合させて本発明の構造を得ることができる。また、本発明では、好ましくは、表面粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブと、中間粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブと、緻密層に相当する長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布とをこの順に積層し、次いでニードルパンチや水流絡合などの絡合手段によって、各層の構成繊維を絡合すると共に各層を一体化し、次いで合成生分解性樹脂等により構成繊維間を結合させて本発明の構造を得ることができる。
【0021】
前記絡合手段としては、各層の繊維を確実に絡合させ、各層を確実に一体化させる上で、ニードルパンチが優れる。より具体的には、例えば針密度20〜100本/cmで、針深さ2〜10mmの条件で、粗層側又は緻密層側から針を打ち込み、次に反対側から針を打ち込み、更に反対側から針を打ち込む工程を必要に応じて繰り返す方法を適用できる。このようにして、緻密層に相当する長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布に、粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブの繊維が打ち込まれることによって、長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布の密度がより高くなる。
【0022】
また、合成生分解性樹脂等の接着剤により構成繊維間を結合させる方法としては、合成生分解性樹脂のエマルジョンなどの分散液に含浸した後、乾燥させる方法が適用できる。このように、構成繊維を絡合することにより、各層を一体化させた後に、この構成繊維を合成生分解性樹脂のエマルジョンなどの分散液に含浸した後、乾燥させることによって、密度の高い層ほど多くの分散液が付着しやすく、付着した分、繊維構造物の平均孔径は小さくなるので、ますます密度勾配がつきやすくなる。また、緻密層においては、ますます強度が強くなり、剛軟性が向上して、合成生分解性エアクリーナー用濾材全体の剛軟性が向上する。そして、合成生分解性樹脂からなるエアクリーナー用濾材であっても、剛軟性が高く、且つ耐水性にも優れるという効果を得ることができる。
【0023】
本発明では、粗層および緻密層の各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなる。この合成生分解性繊維は、生分解性の繊維形成性合成樹脂成分からなる繊維である限り、特に限定されず、生分解性樹脂成分としては、例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸など)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、β−ヒドロキシ酪酸−βヒドロキシ吉草酸共重合体など)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−ε−カプロラクトンなど)、ポリアルキレンジカルボキシレート(例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体など)、ポリビニルアルコール類、ビニルアルコールの共重合体を挙げることができる。このように、本発明では、粗層および緻密層の各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなるので、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿およびパルプ繊維などの天然繊維とは異なり、耐水性に優れるという特性がある。
【0024】
前記生分解性樹脂成分の中でも、ポリ乳酸系樹脂は、二酸化炭素と水に分解できるばかりでなく、原料である澱粉は、トウモロコシなど農作物の廃棄部分や、廃紙、生ごみなどから抽出でき、廃棄物を有効活用できるため、地球環境に対する負荷の少ない点で好ましい。
【0025】
前記合成生分解性繊維の態様としては、(1)合成生分解性繊維が1つの樹脂成分のみからなる態様、(2)1つ以上の樹脂成分(好適には生分解性樹脂成分)を融着成分(生分解性樹脂成分)で被覆した態様(芯鞘型又は海島型など)、又は1つ以上の樹脂成分(好適には生分解性樹脂成分)と融着成分(生分解性樹脂成分)とを隣り合わせに配置した態様(サイドバイサイド型など)などが適用可能である。この融着成分の融点は、非融着成分の融点よりも20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましく、40℃以上低いことが更に好ましい。なお、本発明における融点は、示差熱量計を用い、昇温温度20℃/分で、室温から昇温して得られる融解吸収曲線の極値を与える温度をいう。より具体的には、例えば、生分解性繊維の融着成分がポリ−ε−カプロラクトンからなる場合には、生分解性繊維の形状維持成分(非融着成分)はポリブチレンサクシネート、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、或いはポリ−L−乳酸などからなり、生分解性繊維の融着成分がポリブチレンサクシネートからなる場合には、生分解性繊維の形状維持成分(非融着成分)はポリ(β−ヒドロキシ酪酸)又はポリ−L−乳酸などからなることが可能である。
【0026】
前記合成生分解性繊維として前記(2)の複合繊維を用いることにより、各層の構成繊維を結合することが可能であり、さらに前述の「合成生分解性樹脂のエマルジョンなどの分散液に含浸した後、乾燥させる方法」と併用することも可能である。
【0027】
なお、本発明では、粗層および緻密層の各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなるが、生分解性エアクリーナー用濾材としての特性を失わない範囲である限り、粗層および緻密層の各層の構成繊維は、機能向上のため合成生分解性繊維以外の他の繊維を含むことが可能であり、このような他の繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維およびポリビニルアルコール繊維などの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿およびパルプ繊維などの天然繊維を挙げることができる。他の繊維の混入比率は、生分解性エアクリーナー用濾材としての特性を失わない範囲に留めるべきであり、粗層および緻密層の各層の構成繊維の各層ごとの全質量に対して30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0028】
本発明では、各層の構成繊維を結合する接着剤としての前記合成生分解性樹脂は、生分解性の合成樹脂を含む接着剤である限り、特に限定されず、例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸など)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、β−ヒドロキシ酪酸−βヒドロキシ吉草酸共重合体など)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−ε−カプロラクトンなど)、ポリアルキレンジカルボキシレート(例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体など)、ポリビニルアルコール類、ビニルアルコールの共重合体を挙げることができる。
【0029】
なお、前記合成生分解性樹脂からなる接着剤には、接着性としての特性および生分解性エアクリーナー用濾材としての特性を失わない範囲である限り、分散剤などの他の薬剤を含むことも可能である。
【0030】
本発明では、前記粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブの面密度は40〜160g/mが好ましく、60〜140g/mがより好ましく、80〜120g/mが更に好ましい。また、前記表面粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブの面密度は20〜80g/mが好ましく、30〜70g/mがより好ましく、40〜60g/mが更に好ましい。また、前記中間粗層に相当する短繊維からなる繊維ウエブの面密度は20〜80g/mが好ましく、30〜70g/mがより好ましく、40〜60g/mが更に好ましい。また、前記緻密層に相当する長繊維からなる繊維ウエブ又は不織布の面密度は20〜80g/mが好ましく、30〜70g/mがより好ましく、40〜60g/mが更に好ましい。また、構成繊維を結合している接着剤としての合成生分解性樹脂の面密度は20〜80g/mが好ましく、30〜70g/mがより好ましく、40〜60g/mが更に好ましい。また、本発明の生分解性エアクリーナー用濾材の面密度は120〜280g/mが好ましく、150〜260g/mがより好ましく、170〜240g/mが更に好ましい。120g/m未満であると塵埃の捕集効率が低くなり過ぎ、濾過寿命も短くなるという問題があり、280g/mを超えると塵埃の捕集効率は高いものの、通風時の圧力損失が高くなってしまい、濾過寿命が短くなるという問題がある。
【0031】
また、本発明の生分解性エアクリーナー用濾材の厚さは1.0〜3.5mmが好ましく、1.5〜3.0mmがより好ましく、1.7〜2.8mmが更に好ましい。なお、厚さは、JIS L1085−1998(不織布しん地試験方法)に規定される、6.1.2A法により得られる厚さとする。また、本発明の生分解性エアクリーナー用濾材の通気性に関しては、JIS L1096−1999(一般織物試験方法)に規定される、8.27.1A法(フラジール形法)により得られる空気量を通気度とすると、通気度が30〜150cc/sec/cmであることが好ましく、40〜100cc/sec/cmであることがより好ましい。また、本発明の生分解性エアクリーナー用濾材の剛軟性に関しては、JIS L1096−1999(一般織物試験方法)に規定される、8.19.1A法(45°カンチレバー法)により得られる剛軟度が120mm以上であることが好ましく、170mm以上であることがより好ましく、220mm以上であることが更に好ましい。剛軟度が120mm未満であると、エアクリーナーとするためプリーツを形成してもプリーツの保形性に劣り、使用中に風圧によって変形するという問題がある。
【0032】
以上説明したように、本発明によって、塵埃の捕集効率が高く濾過寿命も長く、且つ生分解性を有し、しかも保形性と耐水性に優れた生分解性エアクリーナー用濾材を提供することが可能となった。
【0033】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
繊度2.2デシテックスのポリ乳酸繊維からなる、面密度50g/mのスパンボンド不織布を準備した。このスパンボンド不織布には、エンボスロールにて部分的に熱融着加工がされており、直径約0.8mmの円形の融着部分が36個/cmの割合で等間隔に点在していた。
次いで、このスパンボンド不織布の上に、中間粗層に相当する繊維ウエブとして、ポリ乳酸繊維(繊度3.3デシテックス×繊維長51mm)からなるステープル繊維50質量%及びポリ乳酸繊維(繊度6.6デシテックス×繊維長51mm)からなるステープル繊維50質量%を混合して、カード機により開繊して繊維方向を45°に交差させて得られた短繊維ウエブを積層した。
次いで、この積層ウエブの上に、表面粗層に相当する繊維ウエブとして、ポリ乳酸繊維(繊度3.3デシテックス×繊維長51mm)からなるステープル繊維をカード機により開繊して繊維方向を45°に交差させて得られた短繊維ウエブを積層した。
次いで、この積層ウエブの短繊維ウエブ側より、オルガン社製の40S番の針を用いて、針密度50本/cmで、針深さ8mmの条件で、ニードルパンチ加工を施した。次いで、このニードルパンチ加工を施したシートを反転して、この積層ウエブのスパンボンド不織布側より、再びオルガン社製の40S番の針を用いて、針密度50本/cmで、針深さ6mmの条件で、ニードルパンチ加工を施した。次いで、このニードルパンチ加工を施したシートを再び反転して、この積層ウエブの短繊維ウエブ側より、再びオルガン社製の40S番の針を用いて、針密度50本/cmで、針深さ4mmの条件で、ニードルパンチ加工を施した。
次いで、ポリブチレンサクシネート樹脂のエマルジョン液に界面活性剤と水とを加えた分散液を準備して、この分散液を用いて、一対のマングルにより搾りながら、前述の得られたパンチシートに、泡立て含浸加工を施した後、乾燥して、生分解性エアクリーナー用濾材を得た。なお、この含浸加工により付与された、接着剤としてのポリブチレンサクシネート樹脂は、乾燥後の固形分の面密度が50g/mであった。
得られた生分解性エアクリーナー用濾材は、面密度が200g/mであり、厚さは2.0mmであり、通気度が50cc/sec/cmであり、カンチレバー法によるタテ方向または生産方向の剛軟度が280mmであった。また、この生分解性エアクリーナー用濾材は、このような構造を有するため、塵埃の捕集効率が高く濾過寿命も長く、且つ生分解性を有し、しかも保形性と耐水性に優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維からなる粗層と、長繊維からなる緻密層とが積層されてなる生分解性エアクリーナー用濾材であって、各層の構成繊維は合成生分解性繊維からなり、前記構成繊維を絡合することにより、各層は一体化されており、且つ前記構成繊維は合成生分解性樹脂によって結合されていることを特徴とする生分解性エアクリーナー用濾材。
【請求項2】
前記粗層が表面粗層と中間粗層とからなり、前記表面粗層と、前記中間粗層と、前記緻密層とがこの順に積層されてなる請求項1に記載の生分解性エアクリーナー用濾材。
【請求項3】
45°カンチレバー法による剛軟度が120mm以上である請求項1または2に記載の生分解性エアクリーナー用濾材。
【請求項4】
フラジール形法による通気度が30〜150cc/sec/cmである請求項1〜3の何れかに記載の生分解性エアクリーナー用濾材。

【公開番号】特開2007−105685(P2007−105685A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301137(P2005−301137)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】