説明

生分解性撚糸、生分解性撚糸の製造方法及び生分解性撚糸を用いた農作物用ネット

【課題】
土壌中における堆肥化が早く、農作物の蔓葉を保持するのに充分な強度を有する生分解性撚糸、生分解性撚糸の製造方法及び生分解性撚糸を用いた農作物用ネットを提供することにある。
【解決手段】
土壌中において分解する生分解性撚糸において、綿繊維に対して竹を原料とする竹セルロース繊維を5重量%〜30重量%を混紡した混紡糸を撚った撚糸であり、綿繊維の綿番手が0.5番〜2番で繊維長が25mm〜35mmで、竹セルロース繊維の繊度が0.8デシテックス〜1.7デシテックスで繊維長が32mm〜42mmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌中において分解する生分解性撚糸、生分解性撚糸の製造方法及び生分解性撚糸を用いた農作物用ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農作物の蔓を絡ませつつ保持して蔓葉の成長を促す農作物用ネットが用いられている。この農作物用ネットの糸として、従来から合成樹脂製(ポリエチレン製)のネットが用いられている。しかしながら、合成樹脂製の農作物用ネットは、産業廃棄物であり、また農作物の収穫後に蔓葉が絡みついた状態のままでは焼却処分できないことから、一定期間土壌中で蔓葉を腐熟化させて除去し、その後、産業廃棄物として焼却処分している。
【0003】
従来の合成樹脂製の農作物用ネットの課題を解決するために、生分解性繊維からなるネットや、綿のみを用いたネットが、提案されている。生分解性繊維を用いたものとしては、例えば特許文献1に示されるようなものがある。特許文献1の生分解性繊維を用いた農作物用ネット(植物誘引ネット)は、生分解性繊維として、ポリ乳酸系モノフィラメントを用い、ポリ乳酸系モノフィラメントの相対粘度を適宜定めることで、生分解性を有し、充分な強度を有し、扱いやすさも兼ね備えたものとしている。
【0004】
また、綿のみを用いたネットとしては、例えば特許文献2に示されるようなものがある。特許文献2の綿のみを用いた農作物用ネット(長芋用のネット)は、綿繊維を紐又は糸状に撚り合わせ、撚り合わせた紐又は糸を用いている。この長芋用のネットは、長芋の蔓及び枝葉等をネットから引き剥がすことなく他の堆肥材料と一緒に有機堆肥として利用できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−337116号公報
【特許文献2】特許第3342247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の合成樹脂製(ポリエチレン製)のネットは、農作物の収穫後の処分に困る一方、ポリ乳酸系モノフィラメントを用いた生分解性繊維を用いたネットは、堆肥化が可能なものの、堆肥化に1年以上の時間を要してしまい、必要に応じて産業廃棄物としての処分しているのが実情である。
【0007】
また、綿のみを用いた農作物用ネットは、堆肥化は可能であるものの強度を充分に確保することが困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、土壌中における堆肥化が早く、農作物の蔓葉を保持するのに充分な強度を有する生分解性撚糸、生分解性撚糸の製造方法及び生分解性撚糸を用いた農作物用ネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の生分解性撚糸は、綿繊維に対して竹を原料とする竹セルロース繊維を5重量%〜30重量%を混紡した混紡糸を撚った撚糸であることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の生分解性撚糸は、綿繊維の綿番手が0.5番〜2番で繊維長が25mm〜35mmで、竹セルロース繊維の繊度が0.8デシテックス〜1.7デシテックスで繊維長が32mm〜42mmであることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の生分解性撚糸は、混紡糸を6本〜24本撚って、繊度を3000デシテックス〜5600デシテックスとしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の生分解性撚糸は、混紡糸を2本〜12本撚って第1の撚糸とし、さらに第1の撚糸を3本〜6本撚ったことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の生分解性撚糸の製造方法は、綿繊維に対して竹を原料とする竹セルロース繊維を5重量%〜30重量%を混紡して混紡糸とし、1本の混紡糸を撚り、撚った混紡糸の2本〜12本を撚って第1の撚糸とし、第1の撚糸の3本〜6本を撚ることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の生分解性撚糸の製造方法は、綿繊維の綿番手が0.5番〜2番で繊維長が25mm〜35mmで、竹セルロース繊維の繊度が0.8デシテックス〜1.7デシテックスで繊維長が32mm〜42mmであることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の生分解性撚糸を用いた農作物用ネットは、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の生分解性撚糸を用いてなることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の生分解性撚糸を用いた農作物用ネットは、請求項5又は請求項6記載の方法で製造された生分解性撚糸を用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
特許請求の範囲の発明によれば、土壌中における堆肥化が早く、農作物の蔓葉を保持するのに充分な強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本実施の形態における農作物用ネットは、長芋、キュウリ、さやえんどう、ゴウヤ等の蔓が伸びる農作物の蔓を絡ませつつ保持して蔓葉の成長を促すものである。
【0019】
農作物用ネットは、生分解性撚糸を使用して作られている。本実施例における生分解性撚糸は、綿繊維と竹を原料とする竹セルロール繊維とを混紡した混紡糸を撚った撚糸である。生分解性撚糸は、綿繊維に対して竹セルロール繊維を5重量%〜30重量%を混紡した混紡糸を撚った撚糸である。生分解性撚糸の元となる混紡糸における綿繊維は、綿番手が0.5番〜2番相当の太さを有し、繊維長が25mm〜35mmである。また、竹セルロース繊維は、繊度が0.8デシテックス〜1.7デシテックスで、繊維長が32mm〜42mmである。
【0020】
尚、竹セルロール繊維は、例えば、ビスコース法で製造されたレーヨンである。このビスコース法では、竹の植物原料をアルカリ(苛性ソーダ)及び二硫化炭素と反応させてアルカリ水溶液中に溶解し、これを口金から硫酸水溶液中に押しだし、引き延ばして繊維素(セルロース)を凝固・再生して製造される。
【0021】
生分解性撚糸の製造方法としては、まず、上述の綿繊維と竹セルロース繊維とを混紡して混紡糸とし、1本の混紡糸を撚る。そして、撚った混紡糸の2本〜12本を撚って第1の撚糸とし、さらに第1の撚糸の3本〜6本を撚る。結果として、生分解性撚糸は、混紡糸を6本〜24本撚ったもので、繊度が3000デシテックス〜5600デシテックスになっている。
【0022】
より具体的な混紡糸の撚り方は、1本の混紡糸を撚り数480T/M〜800T/Mで撚り、そして、撚った混紡糸の2本〜12本を撚り数280T/M〜700T/Mで撚って第1の撚糸とする。さらに、第1の撚糸の3本〜6本を撚り数100T/M〜400T/Mで撚るようにする。
【0023】
以上のような本実施例の生分解性撚糸は、土壌中における堆肥化が早く、農作物の蔓葉を保持するのに充分な強度を有している。具体的には、生分解性撚糸の引張強度は、直線強力で約80N以上、結節強力で約60N以上である。また、本実施例の生分解性撚糸を用いた農作物用ネットを長芋の作付け用として用い、使用後の農作物用ネットを長芋の蔓葉が絡まった状態で一体として放置した場合、約半年の期間で生分解性撚糸及び蔓葉が原形をとどめないまでに腐敗が進み、堆肥化される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明によれば、土壌中における堆肥化が早く、農作物の蔓葉を保持するのに充分な強度を有する生分解性撚糸、生分解性撚糸の製造方法及び生分解性撚糸を用いた農作物用ネットを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中において分解する生分解性撚糸において、
綿繊維に対して竹を原料とする竹セルロース繊維を5重量%〜30重量%を混紡した混紡糸を撚った撚糸であることを特徴とする生分解性撚糸。
【請求項2】
前記綿繊維の綿番手が0.5番〜2番で繊維長が25mm〜35mmで、
前記竹セルロース繊維の繊度が0.8デシテックス〜1.7デシテックスで繊維長が32mm〜42mmであることを特徴とする請求項1記載の生分解性撚糸。
【請求項3】
前記混紡糸を6本〜24本撚って、繊度を3000デシテックス〜5600デシテックスとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生分解性撚糸。
【請求項4】
前記混紡糸を2本〜12本撚って第1の撚糸とし、さらに該第1の撚糸を3本〜6本撚ったことを特徴とする請求項3記載の生分解性撚糸。
【請求項5】
土壌中において分解する生分解性撚糸の製造方法において、
綿繊維に対して竹を原料とする竹セルロース繊維を5重量%〜30重量%を混紡して混紡糸とし、
1本の該混紡糸を撚り、
該撚った混紡糸の2本〜12本を撚って第1の撚糸とし、
該第1の撚糸の3本〜6本を撚ることを特徴とする生分解性撚糸の製造方法。
【請求項6】
前記綿繊維の綿番手が0.5番〜2番で繊維長が25mm〜35mmで、
前記竹セルロース繊維の繊度が0.8デシテックス〜1.7デシテックスで繊維長が32mm〜42mmであることを特徴とする請求項5記載の生分解性撚糸の製造方法。
【請求項7】
農作物の蔓を絡ませて保持するための生分解性撚糸を用いた農作物用ネットにおいて、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の生分解性撚糸を用いてなることを特徴とする生分解性撚糸を用いた農作物用ネット。
【請求項8】
農作物の蔓を絡ませて保持するための生分解性撚糸を用いた農作物用ネットにおいて、
請求項5又は請求項6記載の方法で製造された生分解性撚糸を用いてなることを特徴とする生分解性撚糸を用いた農作物用ネット。

【公開番号】特開2012−224954(P2012−224954A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93012(P2011−93012)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(503353896)山弥織物株式会社 (1)
【Fターム(参考)】