説明

生化学分析機器

分析機器は、データネットワークを介して互いに接続された複数のモジュールを備え、それぞれのモジュールは、試料の生化学分析を行なうように動作可能な分析装置を備える。それぞれのモジュールは、分析装置の動作を制御する制御部を備える。共通の生化学分析を行なうためのクラスターとして動作する任意数のモジュールを選択するために、制御部はアドレス指定可能である。制御部は、モジュールによって生成された出力データから導出された性能測定値に基づいて、グローバル性能目標を満たすために必要である、それぞれのモジュールの分析装置における動作を求めるために、共通の生化学分析の実行中に繰り返し、データネットワークを介して通信する。このようにして対話するモジュールとして機器を構成することによって、スケール変更可能な分析機器が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1及び第2の態様は、ポリヌクレオチドのシーケンシング、及び/又は、生化学分析の結果を表す複数の並列チャネルの出力データを生み出す、ナノポアを用いた生化学分析などの、試料の生化学分析を行なうための機器に関する。本発明の第3の態様は、ポリヌクレオチドのシーケンシングなどの、ナノポアを用いた試料の生化学分析における動作に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の第1及び第2の態様に関しては、複数の並列チャネルの出力データを生み出す多くの種類の生化学分析がある。このような生化学分析を自動化方式で行なう機器が知られており、これらの機器は、生化学分析に固有である大量の出力データを得る際の効率をもたらす。
【0003】
単に例として、複数の並列チャネルの出力データを生み出すこのような種類の生化学分析の1つは、DNAシーケンシングである。概して、従来のDNAシーケンシング機器及び実験室用機器は、機器がスタンドアローン・デバイスとして動作するモデルに基づいている。通常、機器は、あらかじめ決められた終了条件による限られた時間の中で1つの計測タスクを実行する。本発明者らは、この設計モデルを「モノリシック」と述べる場合がある。
【0004】
例として、DNAシーケンシングは、本来高いスループットの実験技術である。実験は多種多様なデータサイズと時間に及び、生み出されるデータは、非常に複雑で不均一であり、下流における徹底した処理を要する。DNAシーケンシングをめぐる研究の性質が、機器システムである分析のコアをブラックボックスの計測デバイスとして扱うことを困難にしている。スケールアップとスケールダウンの両方が可能な、DNAシーケンシングに向けたスケーラブル・システムに対する必要性が高まっている。これは、より多くの様々なものを、すべて安く、迅速に、また効果的にシーケンシングするための、最近の市場需要によって駆り立てられている。したがって、シーケンシング・システムは、異なるワークフローにも対応し、様々な種類とサイズからなる試料をユースケースに応じてパイプライン化することができる必要がある。これは、効率的に、また経済的になされることが望ましい。基板に関連する計測アーチファクト、又は基板がどのように用意されたかが、機器における効率的な処理を頓挫させ、余分な停止時間、又は不用の試薬をまねくべきではない。効率的なファクトリーベースのシーケンシング・プロセスを運用することができる研究所は、低コストで高スループットの適用分野で優位を占めることになる。しかし、これらの要求は、実現することが困難である。
【0005】
現行のモノリシックDNAシーケンシング機器は、様々なスケールで分析するようにスケール変更することが困難である。これらの機器は、非常に大規模なファクトリーベースの運転に適合するように設計することはできないが、同時に、小規模プロジェクトにおける熟練していない研究所スタッフにはアクセス可能でありうる。概して、現行のDNAシーケンシング機器に対するスケーラビリティは、1台の機器によって行なわれる単一分析の実行中に機器が生成することができるデータの量を増やすことによってもたらされる。しかし、モジュール性とフレキシビリティは制限されており、スケーラビリティを実現するためには、ユーザーは、基板を分解して、ラベルを加えることによってそれらの基板を個々にアドレス指定可能にし、またシーケンサーの反応チャンバを分解する手段に訴える必要がある。どちらの場合にも、アーチファクトが導入され、機器自体の完全な再設計をせずにモジュール性についてどれくらいのスケールが達成されうるかに関しては、本質的な限界がある。すなわち、モノリシック機器の基本設計には、現実世界のワークフローにおける要求に対処する能力を妨げる、組み込みリソースの限界がある。
【0006】
多くのDNAシーケンシング機器では、個々の鎖、又は、制限された長さのDNAにおけるクローン的に増幅したコロニーが、面又はビーズ(bead)に集められる。通常、この面/ビーズのアレイが、試薬がそれらのアレイを横切って通過できるようにするフローセルにおかれ、それによって、DNAの解読を可能にする様々な種類の化学反応が加えられる。多くの機器における生化学分析プロセスでは、段階的で周期的な化学反応が用いられ、次に、実験中のDNAの解読を可能にする化学的に標識のつけられた蛍光プローブの取り込み、アニーリング、又は除去を検出するための撮像段階が用いられる。
【0007】
塩基同定段階の間、多くのシステムでは、高解像度の撮像デバイスによって、連続したタイル状アレイの画像としてフローセル面全体の写真が撮られる。いくつかの技術では、単一領域が非常に高速に撮像され、塩基が非同期的に取り込まれる際に化学反応サイクルがリアルタイムで検出される。
【0008】
概して、同期的な化学反応ベースのシステムにおける連続的な撮像の場合、撮像ステップ全体によって大幅な時間がとられ、一般に、ユーザーがデータを取得してそのデータを分析することが可能となる前に、あらかじめ設定された数の化学反応サイクル、又は、あらかじめ設定された運転時間を完了させ、それによって、実験が成功して十分に有用な情報が得られたかどうかを判断する必要がある。一般に、分析に続いてのみ、ユーザーは、実験が成功したかどうかを判断することができ、成功した場合には、全く新しい分析用の運転が行なわれる必要があり、これは、必要な品質の十分なデータが集められるまで繰り返される。多くの場合、それぞれの運転には、試薬の値段によって導き出される固定コストがかかる。したがって、成功の代価は、結果が出るまでの時間と同様に、前もって判断するのが困難である。
【0009】
多くの機器の場合、1回の運転は、少なくとも数日、又はしばしば数週間かかり、一般にデータの切り捨て、又はそれどころかデータすべての損失を引き起こす、実験中における機器による障害の可能性が相当にある。運転当たりの出力の高さは、より多くのDNA分子をフローセルに詰めることによって達成されうるが、これはデバイスの分解能と速度/感度に依存して撮像時間を増やす傾向があり、正味のスループットについて改善が限られることになる。例えば、Helicos BioSciencesという会社は、2つのフローセルに付けられた600〜800MのDNA断片を有するHeliscopeと呼ばれる機器を販売しており、Illuminaという会社は、80M〜100MのDNA断片に対するGenome Analyserと呼ばれる機器を販売している。比較すると、Genome Analyserでは塩基当たり1〜2時間かかるのに比べて、Heliscopeでは、鎖ごとに新しい塩基を取り込んで撮像するのに約6時間かかる。したがって、2つの機器は、異なるスケールのタスクに対してそれぞれ最も良く適合している。
【0010】
このような機器のこれらのベンダーは、ある試料における大規模なデータ出力をユーザーが必ずしも求めていないことを理解しているが、それは、大規模なデータ出力によって、モジュール性、フレキシビリティ、及び有用性が実質的に低下するためであり、試料当たりのデータ出力が付随して低下したとしても、フローセル当たり2つ以上の試料をユーザーが測定することを可能とするために、一般には、個々にアドレス指定可能な部分(例えば、Genome Analyserの場合にはフローセル上に8つのサブチャネル、すなわち「レーン」、Heliscopeの場合にはフローセル当たり25個のサブチャネル)に表面領域が物理的に分割されている。このような領域の1つは、少なくとも250MbのDNA配列を依然として生み出すことになり、それによって小規模なゲノムを含む試料について大規模なオーバー・サンプリングを起こし、例えば、0.5Mbにおける典型的なバクテリアが、少なくとも500回カバーされることになる。この例は、ユーザーに対する時間とコストの両方に関して、機器と試薬について効率の悪い利用を例示している。
【0011】
ユーザーにとっては、既存の計測設備で経験するさらなる問題の1つは、DNA/試料のいかにわずかな断片/鎖のシーケンシングが必要とされるかに関わらず、スループットが、フローセル面全体にわたる測定のサイクル時間と結びついている点である。現行の機器は、1つだけの処理部(カメラ/フローセル面)を有しており、それぞれの試料を測定するタスクを、ユーザーに対する所望の出力を与えるように十分に分割することができない。
【0012】
ユーザーに対するさらなる問題は、ユーザーが、運転における成功が保証されるかどうか前もってわからない状態で、ユーザーの結果を達成するために表面全体にわたる試薬のコストを払う必要があるだけでなく、機器の初期投資における減価償却のために、処理部の時間に対してもコストを払う必要がある点である。
【0013】
さらに複雑になっている問題の具体例は、生化学分析プロセス中に、それぞれの利用可能な断片に塩基が均一に加えられず(例えば、いくつかの断片は、Cに対してAである不均一な量を偶然有し、繰り返しのホモポリマーから構成されることになる)、必ずしも均一な精度で測定されるとは限らない(クラスターの脱位相(dephasing)、フローセルにおける焦点の合わない領域(out−of−focus area)、酵素/ポリメラーゼの破壊、バックグラウンド信号の増大)。このことは、フローセルにおける一部の領域が他の領域より多くのデータを生成することを意味するが、単一の処理部の性質によって、単一の処理部は、有用で高品質な情報を生み出す領域を最大にするか、又は十分なデータをもたらすことのない領域に的を絞るように適応することができない。
【0014】
要約すると、既存のシステムは、定められた期間の間、したがってコストに対して動作するが、一定数の塩基に対する情報を可変の測定品質でユーザーにもたらす。ユーザーにとって関心のある適用範囲が与えられた様々なDNAシーケンシングの実験を行なう場合、そのユーザーに対する最終的な結果は、時間とコストにおいて極めて効率が悪い。これは、ユーザーが所与のクラスのシーケンシング・デバイスに基づくプロジェクトで複数の試料を並列に分析しようとする場合には、特に効率が悪い。
【0015】
例示のための例としてDNAシーケンシング機器が説明されたが、複数の並列チャネルにおける大量の出力データを生み出す広範な生化学分析用の機器を設計する際には、同じような性質の問題が生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO−2009/077734
【特許文献2】米国特許出願第61/170,729号
【特許文献3】WO2008/102120
【特許文献4】WO−2008/102121
【特許文献5】WO−1997/020203
【特許文献6】WO−2008/042018
【特許文献7】WO 2007/127327
【特許文献8】WO−00/79257
【特許文献9】WO−00/78668
【特許文献10】米国特許第5368712号
【特許文献11】WO−01/59453
【特許文献12】WO−99/05167
【特許文献13】米国特許第6,426,231号
【特許文献14】米国特許第6,927,070号
【特許文献15】WO2009044170
【特許文献16】WO−03/095669
【特許文献17】WO−2007/057668
【特許文献18】米国特許第5,795,782号
【特許文献19】EP−1,956,367
【特許文献20】米国特許第6,015,714号
【特許文献21】米国特許第7,189,503号
【特許文献22】米国特許第6,627,067号
【特許文献23】EP−1,192,453
【特許文献24】WO−89/03432
【特許文献25】米国特許第4,962,037号
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【特許文献27】英国特許出願第0812693.0号
【特許文献28】国際出願第PCT/GB09/001690号
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【特許文献30】英国特許出願第0812697.1号
【特許文献31】米国特許出願第61/078695号
【特許文献32】US−2009/0167288
【特許文献33】WO−03/003446
【特許文献34】米国特許第7,258,838号
【特許文献35】WO−2005/000732
【特許文献36】WO−2004/077503
【特許文献37】WO−2005/035437
【特許文献38】WO−2005/061373
【特許文献39】WO−01/59684
【特許文献40】WO−03/000920
【特許文献41】WO−2005/017025
【特許文献42】WO−2009/045472
【特許文献43】WO−2005/000739
【特許文献44】WO−2005/124888
【特許文献45】WO−2007/084163
【特許文献46】WO−2006/028508
【特許文献47】米国特許第6,413,792号
【特許文献48】米国特許第7,001,792号
【特許文献49】米国特許第6,355,420号
【特許文献50】WO−98/35012
【特許文献51】米国特許第7,170,050号
【特許文献52】米国特許第7,476,503号
【特許文献53】米国特許第7,329,492号
【特許文献54】WO−2008/076406
【非特許文献】
【0017】
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【非特許文献30】Eid et al., ”Real−Time DNA Sequencing from Single Polymerase Molecules”, Science 323: 133−138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の第1及び第2の態様は、生化学分析を行なうための機器をスケール変更する際に、これらの課題のいくつかを軽減することを目的とする。
【0019】
本発明の第3の態様に関しては、近年、ナノポアを用いた試料の生化学分析における際立った発展が見られる。ナノポアは、電気的な絶縁層における小さい孔であり、両親媒性膜の中に導入されたタンパク質ポア又はチャネルなどによって形成することができる。ナノポアでは、両親媒性膜を通り、分析物との相互作用に基づいてナノポアによって変調され、それによってナノポアが生化学分析を実現できるようにするイオンの流れが可能となる。様々な種類のナノポアと、それらを用いる分析装置が、様々な種類の生化学分析用に開発されている。商用的な対象である一例は、ナノポアをDNAなどのポリヌクレオチドのシーケンシングに利用することである。ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なう分析装置の一例は、WO−2009/077734に開示されている。
【0020】
したがって、ナノポアは、商用規模の生化学分析用のプラットフォームにおける可能性を提供する。しかし、このような場合、スループットを最大にし、生化学分析を行なうコストを最小にするために、装置における試料の効率的な取り扱いを実現することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様によれば、生化学分析を行なうための分析機器が提供され、この分析機器は複数のモジュールを含み、
それぞれのモジュールは、試料の生化学分析を行なうように動作可能な分析装置を備え、このモジュールは、生化学分析の結果を表す、少なくとも1つのチャネルにおける出力データを生成するように構成されており、モジュールの動作は、モジュールの性能を変更するように制御可能であり、
分析機器は、共通の生化学分析を行なうために任意数のモジュールをクラスターとして選択する入力を受けるように構成され、また、共通の生化学分析に対するグローバル性能目標を表す入力を受けるように構成された制御システムをさらに備え、この制御システムは、共通の生化学分析を行なうためにクラスターのモジュールの動作を制御するように構成されており、
制御システムは、共通の生化学分析の実行中に少なくとも一度、モジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールにおける性能測定値を求めるように構成されており、制御システムは、(a)すべてのモジュールについて求められた性能測定値と、グローバル性能目標とに基づいて、クラスターのモジュールの動作における制御を変更し、且つ/又は、(b)すべてのモジュールについて求められた性能測定値に基づいて、達成可能となっていないグローバル性能目標に応じて救済措置をとるように構成されている。
【0022】
DNAシーケンシングの場合に、既存のモノリシック機器と同様の単一機器を有するユーザーに代わって、ユーザーは、並列化されたモジュールのグループを意のままに有し、このような任意数のモジュールを、共通の生化学分析を行なうことが可能な大規模な機器にグループ化することができる。したがって、この機器は、この機器が複数のモジュールを備え、それぞれのモジュールが、試料の生化学分析を行なうことができる分析装置を備えているという意味で物理的に並列化されている。これらのモジュールは同一であってもよいが、同一である必要はない。このように、このような任意数のモジュール全体にわたって共通の生化学分析を行なうことができる。これは、一般に、その性質によって様々な量のリソースを必要とする場合がある生化学分析を行なうのに適した数のモジュールが選択されうるという点で、スケーラビリティを提供する。クラスターの大きさと有用性は、選択される任意数の個々のモジュールに応じたものである。モジュールの設計と、カプセル化された機能とによって、それらのモジュールは、外部の制御システム又はゲートウェイ・コンピュータを参照して、単一の動作ユニットとしてリニアにスケール変更されうる。このスケーラビリティによって効率向上がもたらされるが、これは、目下のタスク用に適切な数のモジュールを選択することができ、それによって他のモジュールを他のタスク用に開放することができるためである。
【0023】
このような任意数の物理的モジュールが、運転され、アドレス指定され、また単一の論理デバイスとして扱われうる。しかし、この論理デバイスの大きさと有用性は、ユーザーがアンサンブル(すなわち、「クラスター」)に構築した任意数の個々のモジュールに応じたものである。
【0024】
同様に重要なことには、個々のモジュールは、ユーザー(又は、ソフトウェア)がアドレス指定することができ、離れているがアンサンブルと同じコアタスクを実行するスタンドアローンのユニットとして動作することができる。それらのモジュールを個々に、又は大規模なグループの中で運転するための、モジュールにおけるさらなる変更は必要とならない。
【0025】
さらに、単にモジュール数のスケーラビリティによる効率向上を超えた効率向上が達成されるが、これは、個々のモジュールにおける動作も知的に並列化することができるためである。これは、以下のように、それぞれのモジュールの分析装置における、独立した制御に向けた能力を利用する。モジュールによって生成された出力データから、それぞれのモジュールの性能測定値が求められる。これらの性能測定値は、ユーザー入力、又は、実行中の生化学分析に対して記憶されたデータなどの入力によって設定されるグローバル性能目標を満たすように、モジュールの動作を制御するためのベースとして用いられる。このような性能目標及び性能測定値は、出力データを生成する時間、出力データの量、及び/又は、出力データの品質でもよい。この決定は、共通の生化学分析の実行中に、少なくとも一度、又は好ましくは繰り返し、又はさらに連続して行なわれる。
【0026】
個々のモジュールの分析装置の動作における制御は、グローバル性能目標を満たすように、モジュールからなるクラスターに対する性能測定値に基づいて変更されうる。通常、それぞれのモジュールの性能は、様々な要因に基づいて変化しうるため、それぞれのモジュールの動作におけるこの制御によって、機器における性能全体が、グローバル性能目標を満たすように管理されうる。このことは、クラスターにおける個々のモジュールについてより良好な利用がなされるため、効率向上をもたらす。
【0027】
付加的又は代替的に、達成可能となっていないグローバル性能目標に応じて救済措置をとることができる。例えば、共通の生化学分析を行なうモジュールの数を増やすこと、ユーザーに通知する出力を生成すること、又はそれどころか、生化学分析を終了することなどの、様々な救済措置が可能である。このことは、クラスターにおける個々のモジュールについてより良好な利用がなされるため、効率向上をもたらす。例えば、追加のモジュールを用いることによって目標を満たすことが可能となり、さもなければ目標を満たすことが損なわれるか、又は、分析を終了してモジュールを他の生化学分析用に開放することになる。
【0028】
例えば、機器は、出力データの量と品質をリアルタイムに測定し、また、時間効率とコスト効率を最大にするためにユーザーによって設定されたグローバル性能目標に応じてそれに適応するための動的フレキシビリティを提供することができる。さらに、このような機器は、必要に応じて、任意のモジュールにおける生化学分析の性能を変更することができる。制御されうるこのようなパラメータの例には、分析装置の温度、例えば電気的、光学的な生化学分析におけるパラメータ、流体パラメータ、又は、出力データにおけるサンプリング特性が含まれる。電気パラメータの例は、バイアス電圧及びバイアス電流である。流体パラメータの例は、流量、試料の追加、試料の除去、緩衝剤の変更、試薬の追加又は除去、ナノポアの追加又は除去、二重層の取り替え、及び、システムのリフレッシュである。サンプリング特性の例は、サンプルレート、増幅器のリセット時間、及び、帯域幅、ゲイン、積分器のキャパシタンスなどの増幅器の設定である。これら及び他のパラメータの変化によって、出力データの量、品質、及び速度の変更などの、性能の変更が可能となる。例えば、十分なデータが収集された場合に分析を終了することが可能であり、又は、ユーザーの実験要件に従って既に十分なデータを生成したリソースを試料から開放して、十分なデータをさらに生成する必要のある、実験における試料に集中させることが可能である。
【0029】
例えば、生化学分析が、試料におけるポリヌクレオチドのシーケンシングである場合、機器は、例えば、定められた数の塩基がシーケンシングされるまでか、広範なバックグランドの中における病原体の検出、血漿DNAにおけるがん変異の検出などの特定の配列が検出されるまでか、極めて希少量のポリヌクレオチドの測定を可能とする非常に長い期間か、又は、ユーザーへの案内をせずに最適性能における分析のパイプラインを提供するなどの、多くの様々な方法で動作することができる。
【0030】
このような知的でモジュール式のシーケンシング機器によって、実験装置と試料における効率的なパイプライン化を実現するための、ワークフローの根本的な見直しが可能となる。ワークフローは、プライオリティ、時間、コスト、及び、全体的な結果に関して最適化することができる。これは、従来のモノリシック機器に比べて著しい効率向上をもたらす。
【0031】
さらに、本発明の第1の態様によれば、このような生化学分析装置を形成するために他のモジュールに接続することが可能な、離れている単一のモジュールを提供することができ、又は、分析装置の動作に関して対応する方法を提供することができる。
【0032】
有利には、これらのモジュールは、データネットワークに接続することができ、例えばピア・ツー・ピアベースでネットワークを介して互いに接続することを可能にする。これによって、制御システムが、通信と制御を容易にするデータネットワークをうまく利用することが可能となる。
【0033】
制御システムは、ネットワークに接続された独立したデバイスの中に実装することができるが、有利には、制御システムは、そのモジュールの動作を制御するように動作可能な制御部を、それぞれのモジュールの中に備える。この場合、制御部は、共通の生化学分析を行なうためにクラスターとして動作する任意数のモジュールを選択する上記入力を提供するために、また、共通の生化学分析に対するグローバル性能目標を表す上記ユーザー入力を提供するために、データネットワークを介してアドレス指定可能であってもよい。例えば、これは、データネットワークに接続されたコンピュータに対して、データネットワークを介して、例えばウェブブラウザを用いてユーザーインタフェースを提供するように構成されている制御部によって実現することができる。次に、クラスターのモジュールにおける制御部は、共通の生化学分析を行なうためにそれぞれのモジュールの動作を制御する。
【0034】
モジュールにおける制御部への、制御システムのこのような分割によって、モジュール自体が、単にネットワークへのモジュールの接続に基づき、単一の機器としてアドレス指定されて動作できるようになる。大規模なグループのモジュールは、より多くの任意数のモジュールにおける、生化学分析のインタフェースを可能とするように管理することができるが、これは単純に、ネットワーク・インタフェースによって、クラスターへの単一コマンドの同時発行が可能となるためである。同様に、モジュールからなる任意のクラスターからのフィードバック及びデータが、単一のモジュールからの出力同様に、照合され、論理的にフォーマットされ、アドレス指定されてもよい。この動作効率はパイプライン化として表すことができ、上流における試料の調製と、下流における出力データの分析に良い影響を与える場合がある。したがって、下地(substrate)から分析までの、研究室におけるワークフロー全体は、下地又は分析がいかに複雑、又は、不均一になる必要があっても、より効率的に行なうことができる。また、モジュールに制御部を設けることは、個々のモジュールが、アドレス指定されてスタンドアローン・ユニットとして動作し、離れているがクラスターと同じコアタスクを実行する能力を有することを意味する。したがって、それぞれのモジュールが個々に、又は、大規模なグループの中で動作するための、モジュールにおけるさらなる変更は必要とならない。
【0035】
クラスターのモジュールにおける対応する制御部は、それぞれのモジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールに対する性能測定値を導出し、さらなる制御に対する決定のベースを作るためにデータネットワークを介してその性能測定値を伝えるように構成することができる。モジュールの中でローカルに性能測定値を導出することによって、制御を行なうために性能測定値を共有することだけが必要となる。このことは、制御を容易にし、データの流れにおけるボトルネックを低減するが、これは、性能測定値が、出力データよりはるかに少ない量のデータを要するためである。
【0036】
クラスターのモジュールにおける制御部は、さらなる動作を制御することに関して決定するために、データネットワークを介して通信するように構成されていてもよい。これは、モジュールのそれぞれに制御部を設けることによって制御システムが実施されるという利点を有する。したがって、モジュールからなるグループは、いかなる追加の制御システムの提供も必要とせずに、モジュールをデータネットワークに単に接続することによって動作することができる。
【0037】
有利には、制御システムは、グローバル性能目標に基づいてモジュールごとのローカル性能目標を求めるように構成されており、それぞれのモジュールにおける制御部は、そのモジュールのローカル性能目標に基づいてそのモジュールの動作を制御するように構成されている。このように、制御システムは、クラスターのモジュールの動作における制御を変更するために、求められた性能測定値とグローバル性能目標に基づいてローカル性能目標を変更することができる。
【0038】
ローカル性能目標の決定を分散させる様々な方法がある。
【0039】
第1の実施形態では、この決定は、すべての制御部の中で行なうことができ、例えば、それぞれの制御部が、そのモジュールのローカル性能目標を決定する。これは、性能測定値を導出すると共に必要な動作を決定する制御部によって行なわれる処理の負荷共有を可能とする。また、これは、単一のゲートウェイ・システム、又は、ボトルネックのあるコンピュータシステムを回避することによって、動作と管理におけるスケーラビリティも可能にする。
【0040】
第2の実施形態では、この決定は、制御部の1つ(又は、サブセット)で行なうことができる。これは、単一の制御部(又は、クラスターにおける制御部のサブセット)にローカル性能目標の決定を集中させ、それによって、その制御部における処理負担が増えるが、決定を行なうのに必要な処理が簡単になる可能性がある。
【0041】
第3の実施形態では、この決定は、同様にデータネットワークに接続された別の統合制御部で行なうことができる。これは、ローカル性能目標の決定を別の統合制御部に集中させ、それによって、モジュールの制御部における処理負担が低減する。これは、追加の統合制御部を必要とする負担があるが、決定を行なうために必要な処理を簡単にする点で有利となる場合がある。
【0042】
概して、機器は、例えば、ポリマー、又は、より具体的にはポリヌクレオチドである、試料における分子の分析などの、任意の種類の生化学分析を行なうためのものでもよい。
【0043】
有利な一例では、この生化学分析は、試料におけるポリヌクレオチドのシーケンシングであり、それにより、出力データは、ポリヌクレオチドの配列を表す配列データを含む。
【0044】
別の有利な例では、分析装置は、複数のナノポアを支持することができ、ナノポアを用いて、例えば、出力データが導出される、それぞれのナノポアの両端における電気信号を生成する電極を用いて、試料の生化学分析を行なうように動作可能である。この場合、ここでも同様に、生化学分析はポリヌクレオチドのシーケンシングでもよいが、ナノポアは、他の種類の生化学分析を行なうために同様に用いることもできる。
【0045】
本発明の第2の態様は、具体的には、電極が、それぞれのナノポアの両端における電気信号を生成するために用いられ、信号処理回路が、その電気信号から、複数の並列チャネルにおける出力データを生成するために用いられる、ナノポアを用いた試料の生化学分析を行なうための機器に関する。この種類の機器は、例えばWO−2009/077734より公知である。しかし、出力データを生成する際に機器の効率を最適化することは、依然として望ましい。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、生化学分析を行なうためのモジュールが提供され、このモジュールは、
複数のナノポアを支持することができ、ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能であり、それぞれのナノポアの両端における電気信号を生成するように構成された電極を備える分析装置と、
生化学分析の結果を表す、複数の並列チャネルにおける出力データを、上記電極から生成された電気信号から生成するように構成された信号処理回路と
を備え、
このモジュールは、このモジュールの性能を変更するように制御可能であり、性能目標に基づいてそのモジュールの動作を制御するように動作可能な制御部をさらに備える。
【0047】
このようなモジュールは、生化学分析からの出力データの生成における効率向上をもたらすが、これは、性能目標に基づいてモジュールの動作が制御されるためである。このような性能目標及び性能測定値は、出力データを生成する時間、出力データの量、及び/又は、出力データの品質でもよい。
【0048】
制御部は、生化学分析の実行中に少なくとも一度、生化学分析の性能測定値を求め、また、性能目標を満たすためにその性能測定値に基づいてモジュールの動作における制御を変更するように構成することができる。これは、生化学分析からの出力データの生成における効率向上をもたらすが、これは、モジュールの動作が次にように知的に制御されるためである。制御部は、モジュールによって生成された出力データから性能測定値を求め、性能目標を満たすためにその性能測定値に基づいて生化学分析の実験パラメータを変更する。この決定及び制御は、生化学分析の実行中に繰り返し行なわれてもよく、又は、それどころか連続的に行なわれてもよい。変更することができる実験パラメータの例には、分析装置の温度、生化学分析の電気パラメータ、又は、出力データのサンプリング特性が含まれる。これら及び他の実験パラメータの変化によって、出力データの量、品質、及び速度の変更などの、性能の変更が可能になる。通常、モジュールの性能は様々な要因に基づいて変化しうるため、この動的な動作制御によって、目標を満たすために機器の性能全体が効果的に管理されうる。これによって効率向上がもたらされる。
【0049】
例えば、生化学分析が、試料におけるポリヌクレオチドのシーケンシングである場合、機器は、例えば、定められた数の塩基がシーケンシングされるまでか、広範なバックグランドの中における病原体の検出、血漿DNAにおけるがん変異の検出などの特定の配列が検出されるまでか、極めて希少量のポリヌクレオチドの測定を可能とする非常に長い期間か、又は、ユーザーへの案内をせずに最適性能における分析のパイプラインを提供するなどの、多くの様々な方法で動作することができる。
【0050】
米国特許出願第61/170,729号では、物理的現象を感知する方法が開示されており、この方法は、対応する電極を含むセンサ素子のアレイを備えるセンサデバイスを提供するステップであって、それぞれのセンサ素子が、変更可能な性能で、物理的現象に応じた電気信号を電極の所で出力するように構成されている、ステップと、センサ素子の1つからの電気信号をそれぞれが増幅することができる複数の検出チャネルを備える検出回路を設けるステップであって、そのアレイにおけるセンサ素子の数が検出チャネルの数より多い、ステップと、対応するセンサ素子に検出チャネルを選択的に接続することができるスイッチ構成部を設けるステップと、検出チャネルから出力された増幅された電気信号に基づいて、許容可能な性能を有するそれぞれのセンサ素子に検出チャネルを選択的に接続するためにスイッチ構成部を制御するステップとを含む。本発明の第2の態様は、米国特許出願第61/170,729号に開示されている方法を適宜除くことができる。
【0051】
必要に応じて、本発明の第2の態様によるモジュールは、本発明の第1の態様に従って共通の生化学分析を実行するために、クラスターの一部として動作可能であってもよい。
【0052】
概して、モジュールは、ナノポアを用いて任意の種類の生化学分析を行なうためのものでもよい。有利な一例では、この生化学分析は、試料におけるポリヌクレオチドのシーケンシングであり、そのため、出力データは、ポリヌクレオチドの配列を表す配列データを含む。
【0053】
本発明の第3の態様によれば、電子回路部、及び、この電子回路部に取り外し可能に取り付けることができるカートリッジを備える、生化学分析を行なうためのモジュールが提供され、
このカートリッジは、
複数のナノポアを支持することができ、ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能であり、それぞれのナノポアの両端における電極構成部を備えるセンサデバイスと、
試料を入れるための少なくとも1つのコンテナと、
生化学分析を行なうために材料を保持するための少なくとも1つのリザーバと、
少なくとも1つのコンテナからの試料、及び、少なくとも1つのリザーバからの材料をセンサデバイスに制御可能に供給するように構成された流体系と
を備え、
電子回路部にカートリッジが取り付けられた時にそれぞれのナノポアの両端における電極構成部に接続されるように構成されたドライブ回路及び信号処理回路を電子回路部が含み、ドライブ回路は、生化学分析を行なうためのドライブ信号を生成するように構成されており、信号処理回路は、それぞれのナノポアの両端における電極構成部から生成された電気信号から、生化学分析の結果を表す出力データを生成するように構成されている。
【0054】
モジュールは、ドライブ回路及び信号処理回路を含む電子回路部とは別に、生化学分析を行なうために必要な部品と材料をカートリッジの中にカプセル化する構造を有する。特に、このモジュールは、必要な材料を保持するための少なくとも1つのリザーバと、適切な制御のもとで材料をセンサデバイスに供給することができる流体系と共に、ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能なセンサデバイスを組み込んでいる。カートリッジは電子回路部に取り外し可能に取り付けることができるため、さらなる試料の分析における動作に向けてカートリッジの取り替えが可能となる。このことは、生化学分析における効率的な動作を可能にする。
【0055】
次に、添付図面を参照して本発明の実施例を非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】生化学分析機器の概略図である。
【図2】生化学分析機器におけるモジュールの斜視図である。
【図3】モジュールにおいて取り替え可能なカートリッジの斜視図である。
【図4】カートリッジにおけるセンサデバイスの一部の断面図である。
【図5】PCBに実装されたセンサデバイスの上面斜視図である。
【図6】PCBに実装されたセンサデバイスの底面斜視図である。
【図7】モジュールの斜視図である。
【図8】モジュールにおける電気回路の概略図である。
【図9】制御部の概略図である。
【図10】検出チャネルの図である。
【図11】代替構造を有するカートリッジにおける上からの斜視図である。
【図12】取り付けられているウェル・プレートを示す、図11のカートリッジにおける下からの斜視図である。
【図13】分離されているウェル・プレートを示す、図11のカートリッジにおける下からの斜視図である。
【図14】ウェル・プレート部分における断面斜視図である。
【図15】バルブを組み込んでいるバルブ・アセンブリにおける上からの斜視図である。
【図16】バルブを組み込んでいるバルブ・アセンブリにおける下からの斜視図である。
【図17】バルブ・アセンブリの断面図である。
【図18】バルブのステータのまわりの、バルブ・アセンブリにおける本体の上からの部分平面図である。
【図19】バルブのロータにおける下からの平面図である。
【図20】バルブ・アセンブリにおける本体、及びウェル・プレートにおけるウェルの部分断面図である。
【図21】バルブ・アセンブリの第2プレートにおける下からの平面図である。
【図22】モータを含むバルブ・アセンブリの斜視図である。
【図23】機器の制御プロセスにおけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
まず、両親媒性膜の中で支えられるタンパク質ポアの形態であるナノポアを用いて生化学分析を行なうための機器を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0058】
機器1は、データネットワーク3にそれぞれ接続された複数のモジュール2から形成されている。この例では、ネットワーク3は、ケーブル4によってネットワーク・スイッチ5に接続されているそれぞれのモジュール2によって、従来のローカル・エリア・ネットワークとして形成されている。一般に、モジュール2は、無線ネットワーク、広域ネットワーク、及びインターネットを含む任意の種類のデータネットワークに接続されていてもよい。
【0059】
さらにネットワーク3には、NASなどの任意の種類の記憶デバイス6と、モジュール2をアドレス指定するために用いられ、HTTPブラウザを有する従来のコンピュータでもよい外部コンピュータ7とが取り付けられていてもよい。
【0060】
機器1におけるネットワーク化された構成により、位置的要件に応じて、特定の場所に、例えば、小規模な研究施設におけるわずかな数のモジュール2か、又はさらには単一のモジュール2から、商用のシーケンシング・センターにおける大群のモジュール2に至るまで、任意数のモジュール2を設けることができる。
【0061】
次に、個々のモジュール2を説明する。
【0062】
図2に示されているように、モジュール2は、モジュール2のハウジング11において取り替え可能なカートリッジ10を有する。このカートリッジ10は、次に説明されるように、生化学分析を行なうための分析装置を形成する。カートリッジ10は、図3及び図10に示されている2つの代替構造を有する。
【0063】
カートリッジ10は、成形プラスチックなどから形成された本体37を備える。カートリッジ10の本体37は、センサデバイス14を搭載しており、このセンサデバイスは、参照によって本明細書に組み込まれているWO−2009/077734に詳しく説明されているような装置である。本明細書における教示の大部分に限定されることなく、センサデバイス14は、図4における断面に示されている構造を有しており、この構造は、複数のウェル(well)21が内部に形成された本体20を含み、それぞれのウェル21は、それぞれのウェル21の中に配置されたウェル電極22を有するくぼみである。データ収集率を最適化するために多数のウェル21が設けられている。一般に、任意数のウェル21があってもよいが、図4には数個のウェル21だけが示されている。一例では、ウェルの数は256個又は1024個であるが、1桁、2桁、又は、3桁を上まわっていてもよい。本体20は、本体20の上に広がっているカバー23によって覆われており、チャンバ24を画定するために中空となっており、チャンバ24の中にそれぞれのウェル21が開いている。チャンバ23の中には共通電極25が配置されている。
【0064】
センサデバイス14は、脂質二重層などの両親媒性膜26をそれぞれのウェル21に渡って形成し、また、タンパク質ポアであるナノポアを両親媒性膜26の中に挿入するように調製される。この調製は、WO−2009/077734に詳しく記載されている技術と材料を用いて実現されるが、次のように要約することができる。チャンバ24の中に水溶液が導入されて、ウェル21の中の水溶液をチャンバ24の中の残りの部分の水溶液から分離する、それぞれのウェル21に渡る両親媒性膜26が形成される。タンパク質ポアは、例えば、水溶液がチャンバ24の中に導入される前か後に水溶液の中に導入されるか、又は、チャンバ24の内部表面に堆積することによって、水溶液の中に供給される。タンパク質ポアは、その水溶液から両親媒性膜26の中に自然に入る。
【0065】
タンパク質ポアはナノポアの例であり、生化学分析を行なうために次のように用いることができる。任意である所与のウェル21に関しては、両親媒性膜26が形成され、両親媒性膜26の中にタンパク質ポアが入ると、ウェル21は、分子化合物とタンパク質ポアの間の確率的な物理イベントである相互作用を感知するセンサ素子として用いることができるが、それは、両親媒性膜26の両端における出力電気信号が、この相互作用が両親媒性膜26における特性変化を引き起こすという点で、これらの相互作用に依存しているためである。例えば、一般に、タンパク質ポアと、特定の分子化合物(分析物)との間に相互作用が起こることになり、その相互作用は、タンパク質ポアを通るイオンの流れを変調して、ポアを通る電流の特性変化をもたらす。分子化合物は、DNA塩基など、分子であってもよく、又は、分子の一部であってもよい。このように、この相互作用は、それぞれの両親媒性膜26の中にあるタンパク質ポアの両端における電気信号の特徴的なイベントとして現れる。
【0066】
センサデバイス14の性質に関するさらなる詳細、及び、センサデバイス14によって行なわれる生化学分析は、本明細書の最後に向けて以下で説明される。
【0067】
電気信号は、ウェル電極22と共通電極25の間の信号として検出することができ、その後で、生化学分析の結果を表す出力データを生成するために分析することができる。異なるウェル21の両親媒性膜26におけるタンパク質ポアからは、それぞれが別チャネルの出力データをもたらす別の電気信号が得られる。
【0068】
広範な種類の生化学分析を行なうことができる。このような生化学分析の1つは、ポリヌクレオチドのシーケンシングである。この場合、電気信号は、異なる塩基ごとに異なって変調され、それによって塩基の識別が可能となる。
【0069】
カートリッジ10の本体37は、生化学分析を行なうために必要な部品と材料をカプセル化しており、センサデバイス14を自動的に調製することができる。この目的で、カートリッジ10は、緩衝液、脂質、(溶液中の)タンパク質ポア、(必要に応じて)前処理剤、及び試料などの、十分な量の必要な材料を含むリザーバ30を搭載しており、それによって、分析装置における数多くの「リフレッシュ」が可能である。したがって、カートリッジ10は、生化学分析に必要なすべての試薬と他の材料が存在しており、それらを試料の調製に使用することができるという点で完全に自己完結型である。カートリッジ10は、センサデバイス14からの廃棄物を処分するための廃棄物リザーバ35を搭載している。この廃棄物リザーバ35は、図11に示されているが、図3の構造では本体37の下にあるため、図3では見えない。
【0070】
また、カートリッジ10の本体37は、リザーバ30からセンサデバイス14に流体を供給するための流体系31を搭載している。この流体系31は、供給チャネル32と、リザーバ30からセンサデバイス14に流体をポンプで送るための吸入口ポンプ33とを含む。さらに、流体系31は、流体を処分するための廃棄物リザーバ35に接続された排出口チャネル36を介してセンサデバイス14の外に流体をポンプで送るための出力ポンプ34を含む。ポンプ33及び34は、必要な量及び流速に応じた(例えば、Hamilton Company、 Via Crusch 8、 Bonaduz、 GR、 Switzerlandから供給されるCH−7402などの)シリンジ・ポンプでもよい。
【0071】
また、流体系は、リザーバ30に接続された吸入口ポンプ33と出力ポンプ34との間において、供給チャネル32に配置されたセレクタ・バルブ45を含む。このセレクタ・バルブ45は、センサデバイス14を、リザーバ30又は廃棄物リザーバ35に選択的に接続する。廃棄物リザーバ35は大気に開放されている。
【0072】
リザーバ30の1つは脂質を保持しており、流体系31は、他の材料と同様に脂質をセンサデバイス14に供給する。脂質を供給するための代替形態として、流体系31の供給チャネル32が、脂質を保持している脂質アセンブリを介してセンサデバイス14につながっており、それによって、センサデバイス14に流れ込む流体が、脂質を取り込み、その脂質をセンサデバイス14に導入してもよい。
【0073】
したがって、上記のように、ポンプ33及び34は、流体の流れを制御するよう動作して、それぞれのウェル21に渡る両親媒性膜26を形成して、タンパク質ポアであるナノポアを両親媒性膜26に挿入するようにセンサデバイス14を調製することができる。
【0074】
図3の構造では、カートリッジ10の本体37は、試料を入れるためのコンテナ44を搭載している。使用時には、カートリッジ10がモジュール2に装填される前に、試料がコンテナ44に導入される。センサデバイス14の調製後、生化学分析を行なうためにコンテナ44からセンサデバイス14に試料を供給するように流体系31が制御される。
【0075】
図11の構造では、カートリッジ10は、以下のように複数の試料を入れることができる。図12に示されているように、カートリッジ10の本体37は、ウェル・プレート100の取り付けを可能とするように構成されている。特に、本体37は、本体37の下面から突き出ている一対のクリップ101を有しており、そのクリップ101にウェル・プレート100を図13における矢印の方向に押しつけることによって、ウェル・プレート100をクリップ101に取り付けることができる。
【0076】
図14に示されているように、ウェル・プレート100は標準的な構造のものであり、ウェル・プレート100の平らな上部面103を開ける複数のウェル102を形成している。この例では、ウェル・プレート100は、96個のウェル102を有しているが、一般に任意数のウェル102を有することができる。ウェル102は、それぞれの試料を入れるためのコンテナとして使用される。使用時には、ウェル・プレート102がカートリッジ10に取り付けられる前、及び、カートリッジ10がモジュール2に装填される前に、それぞれのウェル102に試料が導入される。ウェル・プレート102には、もともと効率の良い、公知のプレートベースの並列操作技法を用いて試料を充填することができる。ウェル・プレート100は、カートリッジ10の本体37とは別の部品であるため、取り付け前に簡単に充填され、それによってウェル102の充填が容易となる。より一般的には、ウェルでもよく、又は閉じたコンテナでもよい複数のコンテナを備える他の任意の種類のコンテナ部品とウェル・プレート100を取り替えることによって、同様の利点が達成されうる。
【0077】
試料の導入後、ウェル・プレート100をカートリッジ10の中にカプセル化するために、ウェル・プレート100は、平らな上部面103が本体37に押しつけられた状態で、カートリッジ10に取り付けられる。次に、カートリッジ10は、モジュール2に装填される。
【0078】
流体系31は、バルブ110を用いて試料をウェル102からセンサデバイス14に選択的に供給するように構成されている。バルブ110は、ロータリー・バルブであり、次に説明される。
【0079】
バルブ110は、カートリッジ10の本体37の中に組み込まれた、図15から図21に示されているバルブ・アセンブリ111の中に形成されている。
【0080】
バルブ110は、ステータ112及びロータ113を備える。ステータ112は、第1プレート121、第2プレート122、及び第3プレート123によって形成された本体120に設けられており、これらのプレートは、第1プレート121と第2プレート122の間のインタフェース接触面124、及び、第1プレート122と第2プレート123の間のインタフェース接触面125によって互いに固定されている。
【0081】
ロータ113は、回転軸Rのまわりを回転するためにステータ112の上に回転可能に取り付けられている。ステータ112の中に形成されたベアリング・リセス(bearing recess)115に取り付けられるベアリング・スタブ(bearing stub)114を含むロータ113によって、回転用の取り付けのためのベアリングが提供される。特に、ベアリング・スタブ114は、ベアリング・スタブ114の端部と第1シート121との間にクリアランスを設けるように選択された長さを有する。第2シート122は、ベアリング・リセス115のまわりに、第1シート121及びステータ113に向かって突き出ている環状ボス126を有し、第2シート123は、環状ボス126が嵌合する円形孔127を有する。
【0082】
さらに、ステータ112に形成され、ステータ112、特に、第3プレート123から円形孔127の外側に突き出ている環状壁118の内側に乗っている、円筒形外側面117を有する円板部分116を備えるロータ113によって、回転用の取り付けのためのベアリングが提供される。或いは、円板部分116と環状壁118の間にすき間があってもよい。
【0083】
ステータ112及びロータ113は、回転軸Rに垂直に広がっている環状のインタフェース接触面130を有しており、このインタフェース接触面130は次のように設けられる。ロータ113の接触面130は、円板部分116の下面によって形成される。円板部分116の下面は、回転軸Rに垂直に広がっており、第2プレート122の環状ボス126に部分的に重なると共に、孔127の外側にある第3プレート123にも部分的に重なっている。したがって、ステータ112の接触面130は、第2プレート122における環状ボス126の上面と、第3プレート123の上面との、互いに同一平面にある隣接部分によって形成される。
【0084】
ステータ112及びロータ113のインタフェース接触面130のシーリングは、ステータ112とロータ113の間に回転軸Rに沿う負荷をかけることによって容易となる。これは、ロータ113をステータ112に逆らって片寄らせるために以下のように構成されたバイアス構成によって実現される。クランプ・リング131がステータ113に取り付けられ、特に、環状壁118にねじ留めされる。皿ばね132がクランプ・リング131とロータ112の間に配置され、クランプ・リング131及びロータ112とかみ合う。皿ばね132は、ステータ112とロータ113の間の弾性バイアスを提供するが、別の種類の弾性バイアス素子と取り替えられてもよい。
【0085】
ステータ112の接触面130は、図18に示されているように構成されている。図18は、クランプ・リング131がない状態におけるステータ112の平面図である。特に、複数の吸入口ポート133がステータ112の接触面130に形成されており、これらの吸入口ポート133は、回転軸Rのまわりに円形状に配置されている。吸入口ポート133は、図18の最下部の位置におけるすき間部分を除き、間隔が等しく空けられている。特に、これらの吸入口ポート133は、ロータ113の接触面130と対向する、第2プレート122における環状ボス126の上部面に形成されている。
【0086】
また、ステータ112の接触面130には収集チャンバ134が形成されている。収集チャンバ134は、ロータ113の接触面130に対向する、第3プレート122の上部面における溝として形成されている。収集チャンバ134は、回転軸Rのまわりで吸入口ポート133の外側に円環状に延びており、吸入口ポート133と角度によって位置合わせされる。すなわち、すき間が、回転軸Rのまわりで、吸入口ポート133のすき間と角度によって位置合わせされている。
【0087】
ステータ112は、収集チャンバ134の下部面に形成されていることによって収集チャンバ134と連通している排出口ポート135をさらに含む。
【0088】
ロータ113には、ロータ113の接触面130における溝として形成された通路136が設けられている。この通路136は、吸入口ポート133の位置から収集チャンバ135の位置まで半径方向に延びている。したがって、通路136は、ロータ113の回転位置に応じて、任意である1つの吸入口ポート133と連通することができる。ロータ113の回転によって、異なる吸入口ポート133の選択が可能となる。通路136が吸入口ポート133と連通するすべての回転位置において収集チャンバ134が吸入口ポート133と角度によって位置合わせされるため、通路136は収集チャンバ134とも連通し、それによって選択された吸入口ポート133が排出口ポート135に接続される。したがって、ロータ136の回転によって、個々の吸入口ポート133が排出口ポート135に選択的に接続される。
【0089】
ロータ133が吸入口ポート133のすき間部分及び収集チャンバ134のすき間部分に位置合わせされている場合、通路136は、ステータ112の接触面130に押しつけられて閉じられるため、バルブ110を閉じている。しかし、代替形態としては、すき間部分を省くために吸入口ポート133がつなげられてもよく、それによって、吸入口ポートは完全な環状に配置され、バルブ110は閉じられることがない。
【0090】
ステータ112の接触面130に収集チャンバ134を形成することに対する代替形態として、同様の動作は、通路136の中に開いている、ロータ113の接触面130における溝として、収集チャンバ134を代替的に形成することによって実現することもできる。
【0091】
ロータ112の位置決めを可能とするため、ステータ112の接触面130には、吸入口ポート133と同じピッチである円形アレイのピット137があり、ロータ113の接触面130にはこれらのピット137に嵌まる突起部分(pip)138がある。突起部分138は、ロータ112の回転時にピット137の外に押し出されてもよいが、この突起部分138は、それぞれが、それぞれの対応する吸入口ポート133と連通して通路136を配置する、段をつけられた回転位置にロータ112の回転位置を保持するように位置合わせされるか、又は、吸入口ポート133のすき間部分と収集チャンバ134のすき間部分の上に通路136を配置する、段をつけられた回転位置の1つにロータ112の回転位置を保持するように位置合わせされる。
【0092】
バルブ110の大きさは、吸入口ポート133を互いにできるだけ近くに配置することによって最小となるが、小さい環の部分のまわりに吸入口ポート133が延びるように吸入口ポート133のすき間部分のサイズを増やすことによって、同じ動作を実現することができる。この場合には、それに応じて、収集チャンバ134の長さは短くなり、環の短い部分に延びることが可能である。
【0093】
本体120は、次のように、ウェル・プレート100のウェル102を吸入口ポート133に接続するチャネルを画定する。
【0094】
第1プレート121は、カートリッジ10の下面において、ウェル・プレート100が取り付けられる位置に配置されており、また、外側に突き出ているノズル140のアレイを有する。ノズル140のアレイは、ウェル・プレート100のウェル102と位置合わせするためにそれらのウェル102と同じ間隔を有する。そのため、ウェル・プレート100がカートリッジ10に取り付けられると、それぞれのノズル140は、図20に示されているように、対応するウェルの中に突き出る。それぞれのノズル140は、スルーホール141を含む。スルーホール141は、ノズル140と第1プレート121を貫通して第1プレート121の接触面124まで延びてウェル102に対するチャネルの一部を形成する。
【0095】
ノズル140は、ノズル140の端部がウェル102内の試料142の表面より下に沈む十分な距離だけウェル102の中に延びている。このようにして、試料142は、ノズル140を効果的に閉じ込めている。このことによって、ウェル・プレート100と第1プレート121の間の気密封止に対する必要性が回避される。
【0096】
第2プレート122の接触面124には、それぞれのウェル102に対するチャネルの一部を形成する一組の溝143が形成されている。それぞれの溝143は、ノズル140と第1プレート121を貫通して延びているスルーホール141と、一方の端部において連通している。図20に示されているように、溝143は、ノズル140からステータ112まで延びており、特に、排出口ポート133から、第2プレート122の反対側における環状ボス126まで延びている。チャネルの残り部分は、第2プレート122の接触面124におけるそれぞれの溝144から、第2プレート122の環状ボス126を貫通して、対応する吸入口ポート133まで延びているホール144によって形成されている。
【0097】
また、本体120は、排出口ポート135につながっているチャネルも次のように画定している。第3プレート123は、図17に点線の輪郭線の中で示されているスルーホール145を有する。スルーホール145は、排出口ポート135から第3プレート123を貫通して第3プレート123の接触面125まで延びてチャネルの一部を形成する。このチャネルの残り部分は、スルーホール145から離れて延びる、第3プレートの接触面125における溝146によって形成されている。図17に示されているように、溝146は、バルブ110の回転位置によって選択されたウェル102からの試料を、バルブ110を介してセンサデバイス14にポンプで送るように動作可能な投与ポンプ147まで延びている。
【0098】
第1プレート121、第2プレート122、及び第3プレート123は、接触面124の間、及び接触面125の間に画定されたチャネルのためのシーリングを可能とする任意の好適な材料から形成することができる。好適な材料には、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PC(ポリカーボネート)、又はCOC(環状オレフィン共重合体)が含まれる。第1プレート121、第2プレート122、及び第3プレート123は、超音波溶接、レーザー溶接、又は接着などの任意の好適な技術によってシーリングすることができる。PMMAは、PMMAの拡散接合を用いることができため特に効果的である。第1プレート121、第2プレート122、及び第3プレート123は、射出成形されてもよい。
【0099】
同様に、ロータ113は、シーリングと、回転に対して十分に低い摩擦とを可能とする任意の好適な材料から形成することができる。好適な材料の1つは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であり、PTFEは、圧縮を可能とするエラストマー(例えば、シリコーン)から作られた断面を備えて、機械加工することが可能である。PTFEは、回転に必要なトルクを下げることができ、良好なシーリング特性を有する。エラストマーは、ロータ112が固定されてもなお回転することを可能にする。或いは、ロータ113は、FEP(フッ化エチレンプロピレン)又はUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)などの、射出成形可能な材料から作られてもよい。
【0100】
バルブ110は、カートリッジ10における使用に限定されず、他の用途に使用されてもよい。バルブ110は、排出口ポート135から吸入口ポート133への、反対方向における流れに使用されてもよいため、より一般には、吸入口ポート133は第1のポートと呼ばれてもよく、排出口ポート135は第2のポートと呼ばれてもよい。バルブ110は、低量の流体を扱うための小型素子として特に適しており、その場合、吸入口ポート133、通路136,収集チャンバ134、及び排出口ポート135は、10mm以下の断面積、好ましくは1mm以下の断面積を有する。
【0101】
ロータ113は、図22に示されているモータ150によって作動する。ロータ113は、ロータ113から上方に突き出ている結合素子152を有し、この結合素子152には、ギア・ホイール153を搭載しているドライブ・シャフト151が嵌合している。モータ151は、出力シャフト154を有する。出力シャフト154は、ドライブ・シャフト151、またそれによってロータ113の回転を駆動するように、ギア・ホイール153と係合する軸歯形(gear profile)155を実装している。また、ドライブ・シャフト151は、エンコーダ・ホイール156を搭載しており、エンコーダ・ホイール156の位置はセンサ157によって感知される。モータ150は、センサ157の出力に基づいて駆動され、ロータ113が所望の吸入口ポート133を選択するように回転することを可能にする。
【0102】
流体系31は、連続的な試料に対する生化学分析を順次行なうように制御される。センサデバイス14が調製され、次に、流体系31が、試料をウェル102の1つからセンサデバイス14に供給するように制御される。生化学分析が行なわれた後、センサデバイス14は、試料を取り除くために空にされて洗われる。次に、センサデバイス14が再度調製され、バルブ110のロータ112を回転させることによって次のウェル102から試料を供給するように流体系31が制御される。
【0103】
次に、図11の構造を有するカートリッジ10を用いる方法に関する具体例を説明する。用いられる材料は、WO−2009/077734に詳しく記載されている材料である。
【0104】
まず、両親媒性分子に対する親和性を高めるために、ウェル21を取り囲んでいるセンサデバイス14の本体20の表面を修飾する前処理コーティングが施される。必要な量の前処理剤は疎水性の流体であり、本体20とウェル21を覆っているチャンバ24を充填するために、通常、有機溶剤である有機物質が、供給チャネル32によって吸入口ポンプ33によりリザーバ30から引き出されて供給される。余分な材料は廃棄物リザーバ35に排出される。
【0105】
余分な前処理剤を排出するため、様々な構成のカートリッジ10を用いることができる。一例は、吸入口ポンプ33によって、供給チャネル32とチャンバ24を通るガス流を加えて、流体を、排出口チャネル36を通して廃棄物リザーバ35に移すことである。或いは、前処理剤は、必要な量の前処理剤の背後のガスによって吸入口ポンプ33から供給されてもよく、余分な量の前処理剤は、単一の動作で、チャンバ24を通って排出口チャネル36に入り、排出口チャネル36から廃棄物リザーバ35へ排出される。ガスは、最後の前処理コーティングが達成されるまで、流体系からの溶剤の蒸気を流すためにチャンバ24を通って流れ続ける。さらなる変形例では、この最後のステップは、ガス流又は本体20の加温によってより迅速に達成されてもよい。
【0106】
前処理コーティングを施した後、両親媒性分子を含む水溶液が、ウェル21を覆うように本体20に渡って流される。本体20とウェル21を覆っているチャンバ24を充填するために、必要な量の水溶液が適切なリザーバ30から引き出され、供給チャネル32によって吸入口ポンプ33により供給される。
【0107】
両親媒性膜26の形成は、両親媒性分子によって直接行なわれる。又は、この形成は、最後にリセス・ウェル21を覆う前に、水溶液が少なくとも一度リセス・ウェル21を覆い、その覆いを取り除くマルチパス技術(multi−pass technique)が施される場合には改善される。両親媒性分子を含む水溶液は、リザーバ30から直接引き出されてもよく、又は、上記の手法の代わりに、両親媒性分子を含む水溶液は、水溶液を、供給チャネル32の流路における脂質アセンブリを通してチャンバ24に送ることによって作られてもよい。
【0108】
第1の例では、溶液空気界面のマルチパスは、チャンバ24における流れを逆にすることによって達成されてもよい。リザーバ30への流れ、及びリザーバ30からの流れは、セレクタ・バルブ45の動作によって止められ、また、排出口ポンプ34の動作によって、両親媒性分子を含む溶液が、供給チャネル32を通ってチャンバ24から引き出され、空気が、排出口チャネル36から廃棄物リザーバ35に引き抜かれる。排出口ポンプ34の方向が逆にされて、溶液は、溶液で満たされているウェル21の向こう側に戻される。
【0109】
両親媒性膜26の形成は、抵抗のバリアと、測定電流の低下とをもたらす形成部に電位が加えられたときに電極22と25の間に結果として生じる電気信号をモニタすることによって観察することができる。両親媒性膜26が形成できない場合、水溶液空気界面の別のパスを行なうことは容易なことである。
【0110】
或いは、第2の例では、溶液空気界面のマルチパスは、溶液供給の際に空気スラグを含むことによって単一方向の流れにより達成することができる。この第2の例では、両親媒性分子を含む水溶液は、リザーバ30から吸入口ポンプ33の中に引き出され、次に逆流防止バルブの動作によって、供給チャネル32にポンプで送られる。空気スラグは、セレクタ・バルブ45の位置を変更して両親媒性分子の水溶液を止め、また別の吸入口ポンプ33の動作によって、(廃棄物リザーバ35が大気に開放されていることから)廃棄物リザーバ35からの溶液の後ろで、必要量の空気をチャネル内に導入することによって形成されてもよい。セレクタ・バルブ45は前の位置に戻され、さらなる両親媒性分子の水溶液が順方向にポンプで送られる。吸入口ポンプ33は、供給チャネル32を通してチャンバ24まで順方向に、また排出口チャネル36を通して廃棄物リザーバ35に溶液を移動させるため、空気スラグを含む両親媒性分子の水溶液のストリームは、ウェル21の上を通される。このプロセスは、所望数のパスを達成するように繰り返される。
【0111】
余分な両親媒性分子は、吸入口ポンプ33の動作によってリザーバ30からの水溶性緩衝液を流すことにより、チャンバ24から取り除かれる。複数の量の水溶性緩衝液が、廃棄物リザーバ35への供給に向けて、チャンバ24を介して排出口チャネル36に通される。
【0112】
センサデバイス14の調製は、吸入口ポンプ33の動作によるリザーバ30から、層26を覆うチャンバへの、アルファ・ヘモリシン又はその変異体などの膜タンパク質を含む水溶液の流れによって完了し、その流れは、膜タンパク質が一定時間後に両親媒性分子の層26の中に自然に入ることを可能にする。
【0113】
代替手法では、膜タンパク質は乾燥して取り込まれてもよい。この場合には、結果として生じる溶液を層26の上のチャンバに流すために、吸入口ポンプ33を用いる前に、膜タンパク質を再水和するために用いられるセレクタ・バルブ45の位置を変更することによって、供給チャネル32を介した吸入口ポンプ33により、水溶液を適切なリザーバ30から、乾燥した形態の膜タンパク質を含む第2のリザーバ30に送ることができる。
【0114】
層26への挿入プロセスは、イオン伝導の増加と測定電流の増加をもたらす挿入物に電位が加えられたときに電極22と25の間に結果として生じる電気信号をモニタすることによって観察することができる。
【0115】
挿入期間が終わると、膜タンパク質を含む水溶液は、吸入口ポンプ33の動作によるリザーバ30からの水溶性緩衝液の洗い流しによって、供給チャネル32及びチャンバ24から取り除かれる。複数の量の水溶性緩衝液が、廃棄物リザーバ35への供給に向けて、チャンバ24を介して排出口チャネル36に通される。
【0116】
センサデバイス14の調製が完了するとすぐに、ウェル・プレート100に含まれている試料の分析が開始できる。ロータリー・バルブ110は、流体が第1の吸入口ポート133と接触できるように構成されている。セレクタ・バルブ45は、流体リザーバ30からの流れを止めるように位置決めされ、排出口ポンプ34は、試料ウェル102から試料材料を引き出すように動作する。ロータリー・バルブ110は、流れを供給チャネル32の方に向け、センサ系における膜の層26を覆うようチャンバ26を充填するために再度位置決めされる。分析が完了すると、セレクタ・バルブ45は、次の試料の汚染を防ぐために、吸入口ポンプ33からの水溶性緩衝液の流れが、試料を、供給チャネル32、ロータリー・バルブ110、及びチャンバ24から、排出口チャネル36を通して廃棄物リザーバ35に、複数の量の緩衝液によって洗い流せるように位置決めされる。
【0117】
セレクタ・バルブ45は、流体リザーバ30からの流れを止めるように位置決めされ、バルブ110は、ウェル・プレート100における次の試料ウェル102への流体接続を行なうために再度位置決めされる。このプロセスは、すべての試料に対して繰り返される。
【0118】
すべての試料が分析された後は、どのカートリッジ10も処分することができる。或いは、ウェル・プレート100は独立した部品であるため、ウェル・プレート100を取り外して処分し、未使用の試料を装填した新しいウェル・プレート100と取り替えることができる。使い捨て部品としてのウェル・プレート100のこのような使用によって、カートリッジ10の再利用が可能となる。
【0119】
センサデバイス14は、プリント回路基板(PCB)38に搭載されたチップの中に形成され、PCB38に電気的に接続されている。PCB38の電気接点は、センサデバイス14との電気接続を行なうエッジ・コネクタ・パッドとして構成されている。カートリッジ10がモジュール2に挿入されると、接点部39は、以下に説明される、モジュール2における電気回路の残り部分に対する電気接続を行なう。センサデバイス14及びPCB38に対する3つの代替設計は以下の通りである。
【0120】
図5及び図6に示されている可能な第1の設計では、センサデバイス14は、シリコン上に作られたウェルに埋め込まれた電極のアレイとして、WO−2009/077734に開示されているように形成され、ウェルは、シリコンの上面における好適な不活性層の中に作られ、電気接続部は、スルー・ウェーハ・ビア、PCB38に接合されたソルダー・バンプを用いてシリコン基板の底部の所に作られる。PCBは、PCB38の反対側に同様に接合された2つの(又は、一般に任意数の)特定用途向け集積回路(ASIC)40に対して同等数の接続部を提供する。ASIC40は、以下に説明される、モジュール2の電気回路における部品のいくつかを含む。ASIC40は、デジタル出力を提供するための増幅器、サンプリング回路、及びアナログ−デジタルコンバータ(ADC)などの、センサデバイス14からの電気信号を処理するための処理回路における部品を含むことができる。デジタル出力は、低電圧差動信号方式(LVDS)などの好適なインタフェースを用いて接点部39から供給されて、デジタル出力がセンサデバイス14から出力されることが可能となる。或いは、出力信号は、増幅されたアナログの形態で提供され、モジュールの中にADCが設けられてもよい。また、ASIC40は、電流計測のサンプルレート(1Hzから100kHz)、積分用のキャパシタ、ビット分解能、印加バイアス電圧などを含む機能パラメータの設定と監視のために、例えば接点部を介して電力を受け、コマンドを制御する制御回路におけるいくつかの部品を含むこともできる。
【0121】
可能な第2の設計は、シリコン上に作られ、PCB38に実装され、接点部39にワイヤボンディングされた簡単な電極アレイチップとしてセンサデバイス14を形成することである。この接続部は、一連のディスクリート・チャネルとして電気回路に接続するか、又は、適切なASICを用いて電気回路に接続することができる。このようなASICは、例えば、アレイ化電極測定デバイスとしてFLIR Systemsより提供されている(FLIR ISC9717などの)従来の電子的な読み出しチップでもよい。
【0122】
可能な第3の設計は、センサデバイス14とASIC40を、PCB38に実装された1つのデバイスとして作ることである。
【0123】
次に、物理的レイアウトを示すためにハウジング11が取り外された状態におけるモジュール2を示す図7を参照して、モジュール2の構成を説明する。モジュール2は、PCIデータ収集モジュール52によって互いに接続された内部ボード50及び組み込みコンピュータ51を含み、これらは共に、以下に説明される電気回路を備える。内部ボード50は、モジュール2への挿入時にカートリッジ10の接点部39と接触する。
【0124】
組み込みコンピュータ51は、従来のコンピュータでもよく、処理部と記憶部を含む。組み込みコンピュータ51は、モジュール2がネットワーク3に接続することを可能にし、それによって、モジュール2をスタンドアローンのネットワーク・デバイスに変え、さらに、以下に説明されるように、複数のモジュール2がクラスターとして運転され、管理され、また制御されることを可能にする「かぎ(hook)」を提供するネットワーク・インタフェース53を含む。例えば、組み込みコンピュータ51は、規模を縮小したオペレーティング・システム(例えば、リナックス(登録商標))、及び、以下に説明される様々な機能を実行するアプリケーションを動作させることができる。このような組み込みシステム用のすべてがそろった開発キットが市販されている。
【0125】
モジュール2は、カートリッジ10をモジュール2に自動的に装填し、また、モジュール2からカートリッジ10を自動的に取り出すための装填装置54を含む。この装填装置54は、例えば高精度のステッピング・モータによって駆動される独自開発の装置でもよい。
【0126】
また、モジュール2は、以下に説明されるようにモジュール2の様々な部品を制御する、内部ボード50に実装されたマイクロコントローラ58及びFPGA72を含む。
【0127】
また、モジュール2は、内部ボード50に実装され、流体系31を制御する流体作動部60を含む。
【0128】
さらに、モジュール2は、カートリッジ10、特にセンサデバイス14の温度を制御するように配置された温度制御素子42を備える。この温度制御素子42は、32ワットのシングルステージ熱電モジュール(例えば、Ferrotec Corp、 33 Constitution Drive、 Bedford NH 03110 USA − 部品番号 9500/071/060B)などの、例えばペルチエ温度コントローラでもよい。温度制御素子42は、例えばカートリッジ10の下に実装されていてもよく、そのため図7では見えない。温度制御素子42は、主にカートリッジ10によって形成された分析装置の部品と考えられてもよく、或いは、カートリッジ10に実装されていてもよい。
【0129】
最後に、モジュール2は、基本的な動作ステータス情報を表示するためのディスプレイ55、モジュール2の様々な部品に電力を供給するための電源56、及び、モジュール2を冷却するためのクーラー・アセンブリ57を含む。
【0130】
次に、図8及び図9を参照して、内部ボード50及び組み込みコンピュータ51によって提供される電気回路を説明する。この電気回路は、2つの主要機能、すなわち、信号処理機能と制御機能を有しており、それによって、モジュール2用の信号処理回路と制御部の両方として働く。
【0131】
信号処理機能は、内部ボード50と組み込みコンピュータ51に分散しており、以下のように提供される。
【0132】
センサデバイス14は、カートリッジ10のPCB38におけるASIC40の中に形成され、またASIC40に対する制御インタフェースによって制御されるスイッチ構成部62に接続されている。このスイッチ構成部62は、信号処理機能に属する検出チャネル65に提供するために、センサデバイス14のウェル電極22を、対応する接点に選択的に接続するように構成されており、ウェル21の数は検出チャネルより多い。スイッチ構成部62は、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許出願第61/170,729号に詳しく記載されているように構成され、また動作する。
【0133】
或いは、スイッチ構成部62は、センサデバイス14と検出チャネル65の間におけるスタンドアローンの機能ブロックとしてASIC40とは別に設けられて制御されてもよく、また、検出チャネル65は、FLIR Systemsより提供されている(FLIR ISC9717などの)読み出しチップの中に設けられてもよい。
【0134】
ASIC40は、ウェル電極26の1つからの電気信号を増幅するために、図10に示されているようにそれぞれ配置された検出チャネル65のアレイを提供する。したがって、検出チャネル65は、対象となる相互反応によって引き起こされる特性変化を検出するために、十分な分解能で非常に小さい電流を増幅するように設計されている。さらに、検出チャネル65は、このようなそれぞれの相互反応を検出するのに必要な時間分可能を提供するために、十分に高い帯域幅で設計されている。したがって、これらの制約によって、感度の良い高価な部品が必要となる。
【0135】
検出チャネル65は、電荷増幅器66を含み、電荷増幅器66は、電荷増幅器66の反転入力と、電荷増幅器66の出力部との間を接続しているキャパシタ67によって積分増幅器として構成されている。この電荷増幅器66は、ウェル21から電荷増幅器66に供給される電流を積分して、連続した積分期間に供給された電荷を表す出力を提供する。積分期間は一定の持続時間であるため、出力信号は電流を表し、その持続時間は、電荷増幅器66に接続されているウェル21に生じるイベントをモニタするのに十分な分解能をもたらすように十分に短い。電荷増幅器66の出力は、ローパスフィルタ68とプログラマブル・ゲイン段69を介してサンプル・ホールド段70に供給され、サンプル・ホールド段70は、電荷増幅器66からの出力信号をサンプリングして、サンプリングされた電流信号を生成するように動作する。この出力電流信号はADC71に供給されてデジタル信号に変換される。それぞれの検出チャネル65からのデジタル信号が、ASIC40から出力される。
【0136】
ASIC40から出力されるデジタル信号は、カートリッジ2のPCB38から接点部39を介して、モジュール2の内部ボード50に設けられたフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)72に供給される。このFPGA72は、PCIデータ収集モジュール52を介した組み込みコンピュータ51への供給の前に、それぞれの検出チャネル65からのデジタル信号を緩衝するように配置されたバッファを含む。
【0137】
代替構成では、検出チャネルからのデジタル出力は、モジュール2の内部ボード50に配置された読み出しチップから提供され、FPGA72に供給される。
【0138】
組み込みコンピュータ51は、それぞれの検出チャネル65からのデジタル電流信号を以下のように処理するために以下のように構成されている。PCIデータ収集モジュール52は、FPGA72から、デジタル電流信号がデジタルデータとして記憶される組み込みコンピュータ51への、デジタル電流信号の転送を制御する。
【0139】
したがって、組み込みコンピュータ51に記憶されているデジタルデータは、対応するウェルの両親媒性膜26におけるナノポアに対するそれぞれのウェル電極22によって測定された電流である、それぞれの検出チャネル65からの測定された電気信号を表す信号データである生の出力データである。それぞれのナノポアからの電流は、測定された電気信号のチャネルにおけるものである。この生の出力データは、それぞれのチャネルに対するパイプライン74を含む処理モジュール73によって処理される。この処理モジュール73は、組み込みコンピュータ51で実行されるソフトウェアによって実施される。
【0140】
処理モジュール73におけるそれぞれのパイプライン74で行なわれる信号処理の性質は以下の通りである。パイプライン74は、測定された電気信号を表す生の出力データを処理して、対応するチャネルに対する生化学分析の結果を表す出力データを生成する。上記で説明されたように、ナノポアと試料の相互作用によって、識別可能なイベントである、電流の特性変化が引き起こされる。例えば、ナノポアを通過する分析物は、特有の量だけ電流を低下させることができる。したがって、パイプライン74は、これらのイベントを検出し、これらのイベントを表すイベントデータである出力データを生成する。このような処理の例は、参照によって本明細書に組み込まれているWO2008/102120に開示されている。最も単純な場合には、イベントデータである出力データは、イベントが起きたことだけを表すことができるが、より一般には、イベントの大きさ及び時間などのイベントに関する他の情報を含む。
【0141】
さらに、このパイプラインはイベントを分類することができ、出力データはイベントの分類を表すことができる。例えば、ナノポアは、試料における様々な分析物によって異なり、また、電気信号における異なる変調を引き起こす相互作用を起こすことができる。この場合、パイプライン74は、変調された電気信号に基づいて分析物を分類する。この例は、ナノポアがポリヌクレオチドの塩基による相互作用を起こすことができ、この相互作用において、それぞれの塩基が電気信号を異なって変調することである。例えば、ナノポアを通過する塩基は、その塩基を特徴づける量だけ電流を低下させることができる。この場合、パイプライン74は、電気信号の変調から塩基を同定することによってイベントを分類する。このように、生化学分析は、試料におけるポリヌクレオチドのシーケンシングであり、結果として生じる出力データは、ポリヌクレオチドの配列を表す配列データである。これは、「ベース・コーリング(base calling)」と呼ばれることがある。
【0142】
さらに、パイプライン74は、生化学分析の結果を表す出力データの品質を表す品質データである出力データを生成する。これは、イベントの検出及び/又は分類が間違っている確率を表す場合がある。
【0143】
出力データは、任意の好適なフォーマットで表されてもよい。ポリヌクレオチドのシーケンシングの場合、配列データと品質データである出力データは、ヌクレオチドの配列用の従来のテキストベースのフォーマットと、それに関連する品質スコアとである、FASTQフォーマットで表されてもよい。
【0144】
すべての出力データは組み込みコンピュータ51に記憶され、さらに出力データの一部又はすべては、ネットワーク3を介して転送されて、記憶デバイス6に記憶されてもよい。通常、これには、イベントの分類を表す出力データ(例えば、配列データ)と品質データが少なくとも含まれるが、これは、測定された電気信号を表す生の出力データに比べて比較的少ない量のデータであるためである。さらに、ユーザーの要求に応じて、イベントデータ、及び/又は、それぞれのナノポアの両端における測定された電気信号を表す生のデータである出力データが転送されて記憶されてもよい。
【0145】
また、処理モジュール73は、生化学分析自体のパラメータを表す品質管理メトリクスを導出して記憶することもできる。
【0146】
パイプライン74によって行なわれる様々な信号処理は、組み込みコンピュータ51にデータが転送される前に内部ボード50で行なわれてもよい。この手法は、多数のチャネルに特有の使い方に属するものであり、FPGA72は、この種類のタスクに特に適合しうる。
【0147】
次に、モジュール2の動作を制御するように構成されている制御機能部を説明する。この制御機能部は、内部ボード50と組み込みコンピュータ51に分散しており、以下のように提供される。
【0148】
制御機能部は、内部ボード50に設けられた、Cortex M3マイクロコントローラなどのコントローラ58を含む。このコントローラ58は、分析装置13におけるすべての部品の動作を制御する。コントローラ58は、標準的なプロトコルによって、また低レベルのデバイス・ドライバを介して、コマンドを、流体系31のポンプ33及び34、並びに、データを前もって読む他の部品に送るように構成されている。ステータス情報は、ドライバから得られたエラーコードに基づいて記憶される。
【0149】
コントローラ58は、それ自体、組み込みコンピュータ51上で実行されるソフトウェアによって組み込みコンピュータ51に実装されている制御モジュール80によって制御される。この制御モジュール80は、RS232インタフェース81を介してコントローラ58と通信する。制御モジュール80は、モジュール2の制御部を構成するために制御モジュール80とコントローラ58が一緒に動作するように、以下の通りコントローラ58を制御する。
【0150】
コントローラ58は、カートリッジ10を装填し、またそのカートリッジ10を取り出すために装填装置54を制御する。装填時には、コントローラ58は、接点部39と内部ボード50の間に適切な電気的接触がなされていることを検出する。
【0151】
コントローラ58は、流体系31を制御してセンサデバイス14を調製するために流体作動部60を制御する。
【0152】
この調製の間、制御モジュール80は、調製が正しく行なわれていることを検出するために、例えば参照によって本明細書に組み込まれているWO−2008/102120に開示されている分析技術を用いて、センサデバイス14から出力された電気信号をモニタすることができる。通常、制御モジュール80は、運転の開始時にどのウェル22が正しくセットアップされたかを判断することになる。これは、二重層の品質、電極の品質、ポアによる占有率、また、試料の検出後にナノポアが活性状態であるかどうかさえ感知することを含む場合がある。
【0153】
このモニタリングに基づいて、コントローラ58は、米国特許出願第61/170729号に詳しく開示されている方法によって、許容可能な性能を有する、センサデバイス14のウェル22におけるウェル電極26に検出チャネル65を接続するようスイッチ構成部62にさせるために、スイッチング・コントローラ63を制御する。
【0154】
ポリヌクレオチドのシーケンシングの場合、制御モジュール80は、エキソヌクレアーゼ酵素、シクロデキストリンアダプタの付加など、DNAを処理して測定するために必要とされる場合のある、ナノポアに対する任意の修飾があること、又は、それらの状態も感知することができる。
【0155】
コントローラは、以下の実験パラメータを設定する。
【0156】
コントローラ58は、バイアス電圧を共通電極25に供給するバイアス電圧源59を制御する。このようにして、コントローラ58は、それぞれのナノポアの両端におけるバイアス電圧を制御する。コントローラ58は、分析装置13の温度を変更するために温度制御素子42を制御する。コントローラ58は、サンプリングレート、キャパシタ67の積分期間及びリセット期間、並びに、結果として生じる信号の分解能などのサンプリング特性を変更するためにASIC40の動作を制御することができる。
【0157】
コントローラ58は、上記の制御機能、及び他の実験パラメータをFPGA72を介して実行してもよい。特に、ASIC40の制御は、FPGA72を介して行なわれる。
【0158】
センサデバイス14が正しく調製されると、コントローラ58は、試料を導入して生化学分析を行なうように分析装置13を制御する。次に、分析を表す出力データを生成するために、センサデバイス13から電気信号が出力され、その電気信号が処理モジュール73によって処理されことによって、生化学分析が行なわれる。
【0159】
以下でさらに説明されるように、制御モジュール80は、以下で説明される入力に基づいて導出されるローカル性能目標を有する。このローカル性能目標は、モジュール2の動作に対する所望性能を表す。この性能目標は、生化学分析の要求に応じて、出力データが生成される上限時間、生成される出力データの量、又は、生成される出力データの品質における任意の組み合わせに関しうる。
【0160】
動作の間、制御モジュール80は、生化学分析における性能測定値を出力データから求めるが、これらの性能測定値はローカル性能目標と同じ性質のものであり、すなわち、出力データが生成される上限時間、生成される出力データの量、又は、生成される出力データの品質である。制御モジュール80は、性能測定値に基づいて、性能目標を満たすために分析装置13を制御するようにコントローラ58を制御する。これは、分析装置における動作の開始及び終了、並びに/又は、動作パラメータの変更によって行なわれる。ローカル性能目標を満たすために、コントローラ58は、データ収集の速度及び品質について影響を与える以下の動作パラメータを制御する。
1)分析装置13の温度を変更する温度制御素子42。例えばナノポアを介して塩基を順次供給する酵素をシーケンシングする場合、温度制御素子42は、例えば、ナノポアを通る分子の運動速度、及び/又は、酵素による処理速度を変更することによって、センサデバイス14で行なわれる生化学分析に影響を与える。一般に、温度の上昇はデータ収集率を上げるが品質を低下させ、この逆も同様である。
2)それぞれのナノポアの両端におけるバイアス電圧を変更するバイアス電圧源59。これは、性能に影響を与える、生化学分析における電気的パラメータであり、速度及び品質を変えるために変更することができ、又は、特定の分析物に対する高品質測定に的を絞るためにナノポアを「微調整」するのに使用されうる。
3)サンプリングレート、キャパシタ67の積分期間及びリセット期間、並びに、結果として生じる信号の分解能などのサンプリング特性を変更するASIC40の動作。これらは、出力データの量と品質に影響を与える。一般に、サンプリングレートの増加は実際のイベントを逃す機会を減らすが、それぞれの観測されたイベントにおける不十分な測定品質の原因となるノイズを増やし、この逆も同様である。
【0161】
ローカル性能目標を満たすために、コントローラ58はさらに、分析装置13の動作を例えば以下のように制御する。
4)それぞれのナノポアの両端におけるバイアス電圧を変更するバイアス電圧源59。これは、性能に影響を与える、生化学分析の電気的パラメータである。
5)検出チャネル65に電気信号が供給されるナノポアを変更するためにスイッチ構成部62を制御する。
6)ナノポアが全くないか、又はいくらかはある両親媒性膜26の機能アレイにさらなるナノポアを付加するために、より多くの流体を加える。
7)センサデバイス14が全体として不十分な計測を行なっている場合に、より多くの試料を加える。
8)ある試料に対する計測要件が満たされた場合に別の試料を加えること。
9)個々のナノポアに電流が流れない場合にナノポアを「アンブロック(unblock)」するために、逆バイアス電位を加える。
10)チップにおけるグローバルの故障設定に達した場合、又は、測定される新しい試料が導入される前に必要である場合、又は、試料を測定するために別の種類のナノポアが必要である場合、すべての両親媒性膜26を破壊するのに十分なバイアス電位を加え、次に分析装置13を再度調製することによって分析装置13をリセットする。
【0162】
ポリヌクレオチドのシーケンシングの場合、分析装置13は、実際の試料の中に加えられるコントロールDNAを含む場合がある。このことによって、個々のナノポアにおけるステータスの品質モニタリングが可能となる。また、コントロール試料の追加によって得られるデータは、平行して進む、実際のDNA試料から作り出されるデータを処理するために用いられるアルゴリズムを調整し、また改良するために用いることもできる。
【0163】
また、制御モジュール80は、例えば可変レベルのデータ処理を行なうパイプライン74を制御するために、信号処理機能を制御することもできる。
【0164】
制御モジュール80は、生化学装置の間に繰り返し、通常は連続的に、性能測定値の決定と動作の制御を行なう。このようにして、単一モジュール2の動作は、モジュール2がより効率的に利用されることによって、リアルタイムに最適化されうる。生化学分析が完了したことを制御モジュール80が性能測定値から判断すると、制御モジュール80は、生化学分析を終了するようにコントローラ58を制御し、またカートリッジ2を取り出すように装填装置54を制御する。次にモジュール2は新しいカートリッジ2を挿入する準備ができるが、これは、ユーザーのグローバル要件を満たすために機器によって行なわれる1つ又は一連の実験に対するワークフローのパイプライン全体の一部として、自動化された手順によって行なわれてもよい。
【0165】
上記で説明された方法では、それぞれのモジュール2は、他のモジュール2から独立して生化学分析を行なうことができるスタンドアローン・デバイスである。次に、モジュール2からなるクラスターが、共通の生化学分析を行なうために共通の機器1としてどのように動作するかを説明する。これは、ネットワーク・インタフェース53を介してネットワーク3に互いに接続されているモジュール2からなるクラスターによって実現される。概略すると、モジュール2は、広く用いられた「アプライアンス」モデルに続く自己認識ネットワーク・デバイスとしてネットワーク3に接続する。したがって、モジュール2は、データサービス及び通信サービスを実施することができる。構成及びプロトコルは、制御モジュール80の一部として記憶され、実行される。それぞれのモジュール2は、任意である他のモジュール2に対して、データ及びサービス用のクライアントとして動作可能であると共に、データ及びサービス用のサーバとしても動作可能である。したがって、任意数のモジュール2は、互いにクラスター化されて大規模な論理上の機器1になることができる。
【0166】
また、モジュール2は、それぞれのモジュール2からの一貫したデータ品質、すなわち出力データに対するフィルタリング・ルールと、共有の出力場所と、同名の基板(substrate)から共有の保存場所への衝突のないデータの同時出力とを可能にする、動的に決められるキャリブレーション基準などの他の情報を共有するために通信することもできる。
【0167】
それぞれのモジュール2は、グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)及び統合/制御のアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)を提供するウェブサービスモジュール82を含む。
【0168】
GUIは、ネットワーク3を介して外部コンピュータ7に提供され、外部コンピュータ7上で表示される。例えば、GUIは、従来のブラウザで見ることを可能にする標準HTTPポートにおけるHTTP、又は、任意の他のフォーマットで提供されてもよい。ユーザーは、表示されるGUIを見ることができ、また、モジュール2に対するユーザー入力を行なうために、GUIを用いる標準プロトコル(例えば、HTTP)を用いてこのウェブサービスに接続することができる。GUIは、モジュール2の制御、パラメータの入力を可能とし、ステータスを示し、またデータなどをグラフ表示する一連のウェブページでもよい。ユーザーは、選択したモジュール2のステータスを見ることができ、このインタフェースを介してそのモジュール2にコマンドを送ることができる。この同じサービスは、すべてのモジュール2上で動作し、同じように接続されうる。GUIは、コマンドラインなどの任意の他の好適なインタフェースと取り替えられてもよい。
【0169】
APIは、モジュールが互いと対話することを可能にする。
【0170】
GUIによって、ユーザーは、共通の生化学分析を行なうクラスターとして動作させるように任意数のモジュール2を選択するために、モジュール2をアドレス指定することが可能となる。それぞれのモジュールはGUIを提供するため、任意のモジュール2がユーザーによってアクセスされ、複数のモジュール2を選択するために使用されうる。これは、APIに、クラスターにおけるすべてのモジュール2に1つのコマンドを送らせ、それらのモジュール2がアドレス指定されていることを知らせる。クラスター用に選択されたモジュール2は、制御モジュール80とユーザーの両方に対して、共通の生化学分析を行なうクラスターとしてニーモニックのようにそれらのモジュール2を識別する「ネームスペース」と呼ばれる一時的で任意のラベルを与えられる。
【0171】
さらにGUIによって、ユーザーは、機器1に対するグローバル性能目標を表す入力を与えることが可能となる。或いは、グローバル性能目標を表す入力は、機器1によって導出されてもよく、例えば、異なる種類の生化学分析に対するグローバル性能目標が記憶されたテーブルから取り出されてもよい。
【0172】
このグローバル性能目標は、ローカル性能目標と同じ性質のものであり、すなわち、生化学分析に対するユーザーの要求に応じて、出力データが生成される上限時間、生成される出力データの量、又は、生成される出力データの品質における任意の組み合わせである。グローバル性能目標は、完全に定義されていてもよく、又は、一部は未定義のままでもよい。例えば、特定品質における特定量のデータを生成するための要件が、品質と量の目標を設定する一方で、時間目標を未設定のままにすることによって定義される。例えば、モジュールのグローバル性能目標は、測定されるすべての塩基にわたって、例えば1000分の1未満の最小の平均エラー率である、データ品質における最小の要求レベルで、例えば6時間である所与の期間で、20倍を上まわって当該試料をカバーする(すなわち、オーバーサンプル)のに十分なデータを収集することである場合がある。
【0173】
次に、分析される試料のアリコートを用いてカートリッジ10が調製され、クラスターのモジュール2に装填される。このステップはユーザーによって行なわれてもよい。或いは、このステップは、例えばカートリッジ10の自動位置合わせを可能にするセンサを有するモジュール2によって、ある程度自動化されてもよい。次に、クラスターのモジュール2に分析の開始を指示するコマンドが出される。
【0174】
高度なシステムでは、分析される試料を有するカートリッジ10の調製、及び/又は、モジュール2へのカートリッジ10の装填は自動化されてもよい。
【0175】
別の代替形態では、カートリッジ10は、複数の試料を連続又は時分割多重で管理及び処理する機構であって、例えば、センサチップ14によって処理される複数の試料を連続して格納するウェル・プレート100を用いる、図11に示されている構造を有する機構を含む。この場合、それぞれのモジュール2は、それぞれのモジュール2に装填されたカートリッジ10を制御して、選択されたウェル102からの試料を処理する。モジュール2のソフトウェアは、どの試料がどのウェル102におけるものであるかを認識するために、例えばユーザー入力を受けることによって、ユーザーによって設定される。このことは、試料の管理に対して1レイヤの情報を加える。クラスターにおける他のすべての動作は同じままであり、それぞれのカートリッジ2に試料のマッピングがあることを想定するより、クラスターにおける他のすべての動作によって、どの試料がプレート100の所与のウェル102から処理されているかも協調によって考慮されることが支援される。したがって、この協調は、カートリッジ2ごとの試料より、プレート100ごとの試料のレベルで行なわれる。新しいカートリッジ2が挿入されると、制御モジュール80は、ユーザーによってロードされた試料ウェル・テーブルを参照する。また、これは、参照用キーとしてカートリッジ2に設けられた内部バーコードを用いて中央のデータベースからアクセスされてもよい(プレートと試料の情報は、ウェル・プレート100がカートリッジ2に取り付けられた時に、ユーザーによって、このカートリッジと関連づけられている)。
【0176】
クラスターのモジュール2は、それらのモジュール2が協調していることを「認識」しており、それらの制御モジュール80は、機器1全体に対する制御システムを一緒に提供するように、以下のように通信し、対話する。
【0177】
図23には制御プロセスが示されている。
【0178】
ステップS1では、グローバル性能目標90に基づいて、グローバル性能目標90を互いに満たす、機器1におけるモジュール2ごとのローカル性能目標91が求められる。ステップS1は、クラスターにおけるすべてのモジュール2に対して実行されるグローバルな決定である。最初は、グローバル性能目標90だけに基づいてステップS1が実行されるが、以下に説明されるように、以降では、S1は、それぞれのモジュール2の出力データ92から得られる、クラスターのそれぞれのモジュール2における性能測定値93に基づいてさらに実行される。
【0179】
ステップS2では、クラスターにおけるそれぞれのモジュール2に対するローカル制御プロセスが実行され、このローカル制御プロセスは、そのモジュール2に対するローカル性能目標91に基づいて実行される。図23では、このような4つのローカル制御プロセスが例示によって示されているが、通常は、モジュール2と同じ数のローカル制御プロセスがある。ローカル性能目標91は、それぞれの対応するモジュール2から要求される動作を効果的に示しており、ステップS2では、それぞれのモジュール2は、必要な動作を行なうためにローカル性能目標91に従って動作し、それによってモジュール2は、共通の生化学分析を一緒に行なう。
【0180】
ステップS2は、それ自体、以下のプロセスを含む。
【0181】
ステップS3では、ローカル性能目標91に基づいて、分析装置13の動作が上記の方法、すなわち、分析装置における動作の開始及び終了、並びに/又は、動作パラメータの変更によって制御される。
【0182】
まず、ステップS3は、グローバル性能目標90だけに基づいて行なわれる。しかし、動作が開始すると出力データ92が導出される。それぞれのモジュール2に対するステップS2におけるローカル制御プロセスの一部として、ステップS3では、上記で説明したように、出力データ94から性能測定値93が導出される。次に、それぞれのモジュール2に対するステップS2のローカル制御プロセスでは、性能測定値93、並びにローカル性能目標91に基づいてステップS3が実行される。このようにして、それぞれのモジュール2における動作の制御は、実際にモジュール2によって実現されている性能測定値91に基づいて変更される。ステップS3で行なわれる制御は、出力データ92から得られる性能測定値93のフィードバックによってこのように、生化学分析の実行中に繰り返し、通常は連続的に更新される。
【0183】
さらに、生化学分析の実行中に少なくとも一度、クラスターにおけるすべてのモジュール2からの性能測定値93が、ステップS1にフィードバックされる。次に、ステップS1では、すべてのモジュール2からの性能測定値93とグローバル性能目標90に基づいて、グローバル性能目標を満たすために必要な場合には、ローカル性能目標91が変更される。次に、それぞれのモジュール2は、更新されたローカル性能目標91に従ってステップS3で動作する。ローカル性能目標91の更新は、それぞれの対応するモジュール2に必要な動作が変更されたことを効果的に示す。更新されたローカル性能目標91に従う制御モジュール80の管理下にあるモジュール2の動作は、グローバル性能目標90を満たすために、モジュール2における必要な動作に変わる。
【0184】
ローカル性能目標を変更するためのステップS1におけるこのような更新は、必要に応じて少なくとも一度行なわれるが、好ましくは繰り返し行なわれ、好ましくは周期的に行なわれ、また好ましくは、通常は少なくとも一桁、生化学分析の周期よりはるかに長く、また通常は少なくとも一桁、ステップS3におけるモジュールの動作の制御が更新される周期よりはるかに長い間隔で行なわれる。更新の頻度が増えるとモジュール2の管理が改善されるが、このことは、組み込みコンピュータ51とネットワーク3の占有リソースを犠牲にし、また、この改善は、間隔が生化学分析におけるイベントに固有の間隔に近づくにつれて低下する。通常、この間隔は、1分から5分のオーダーであってもよいが、モジュール2の管理は、より長い間隔、例えば数時間のオーダーの間隔でも依然として効果的である。しかし、生化学の利益の間に一度更新を行なうことですら、モノリシック装置に比べて有利である。
【0185】
ステップS1において、ローカル性能目標91の設定又は更新を試みる場合、グローバル性能目標90を満たすために必要なモジュール2のローカル性能目標91が達成できないために、必要な動作が達成できない可能性がある。このことに対処するために、制御モジュール80は、これがその場合であるかどうかを判断して救済措置をとるように構成されている。様々な救済措置が可能である。
【0186】
救済措置の種類の1つは、共通の生化学分析を行なうために用いられる、クラスターにおけるモジュール2の数を増やすことである。このことによって、グローバル性能目標90を満たすことが可能となる。これを実現するために、制御モジュール80は、ユーザーに通知する出力を生成することができる。それに応じ、ユーザーは、GUIを用いて、クラスターの一部を形成するために1つ又は複数の追加モジュール2をアドレス指定し、カートリッジ10への試料の導入、及び、1つ又は複数の追加モジュール2のそれぞれへのカートリッジの装填を含む、もとのモジュールと同じ方法でそれらの追加モジュール2を設定することができる。或いは、これらの任意のステップが自動化されてもよい。
【0187】
別の種類の救済措置は、クラスターのモジュール2を制御して生化学分析を完全に終了することである。これによって、グローバル性能目標90が満たされない可能性がある場合に、別の生化学分析のためにモジュール2が開放される。
【0188】
ステップS1及びS3における決定は、任意の好適な計算方法の実行であってもよい。最も簡単な手法は、組み込みコンピュータ51に記憶されており、所与のシナリオで実行される、不測事態の参照用テーブルを用いることである。例えば、このようなシナリオの1つは、実行ノード下にある1台のために特定の組の性能基準を満たすことができないことであってもよく、その1台に対する救済措置は、他のノードがデータ収集率を上げることでありうる。データを分析し、決定を導き出すために、ソフトウェアでコード化された、プログラムに基づいた単純なロジックを用いることができる。より複雑な他の方法には、データの特定パターンにおけるファジー認識、及び、学習後のニューラルネットワークなどによる応答の生成などが含まれうる。
【0189】
次に、図23に示されている制御プロセスにおける様々なステップが実施される場合について説明する。
【0190】
ステップS2は、そのモジュール2のローカル性能目標91に基づいて実行され、出力データ92からの性能測定値93の計算を必要とする、それぞれのモジュール2に対するローカル制御プロセスである。したがって、有利には、それぞれのモジュール2の制御モジュール80は、その制御モジュール80自体のモジュールに対してステップS2のローカル制御プロセスを実行する。このようにして、ステップS3における動作の制御、及び、性能測定値93の決定は、いかなるデータもネットワークを介して送信することを必要とせず、モジュール2の中でローカルに行なわれうる。これは、モジュール2の数を伴う、制御プロセスのスケーラビリティを支援する。それぞれのモジュール2は、ステップS2のローカル制御プロセスを独立して実行するため、ステップS2のローカル制御プロセスを実施するのに必要な、ネットワーク3を介するデータ転送の負担を増やすことなく、任意数のモジュール2をクラスターに含めることができる。また、このことによって、それぞれの制御モジュール80が制御モジュール80自体の処理を行なうために、ステップ2の処理負荷がモジュール2間で効果的に共有される。
【0191】
基本的に、ステップS3又はステップS4は、1つ又は複数のモジュール2に対して外部的に、すなわち、異なるモジュール2、又は、ネットワーク3に接続されたさらなるコンピュータの中で実施することができる。ステップS4を外部的に実行するためには、性能測定値93が導出される出力データをネットワーク3を介して送信することが必要になる。同様に、ステップS3を外部的に実行するためには、モジュール2の性能測定値94及び制御信号をネットワーク3を介して送信することが必要になる。これは、特に、制御がステップS3で頻繁に変更されると、ネットワークにおける負担を増やすことになる。ネットワーク3及び外部処理における任意の現実的な実施の場合、これは、データ転送と処理のどちらか又は両方に関してボトルネックを生み出すことになる。このようなボトルネックは、クラスターに組み込まれうるモジュール2の数を事実上制限することによってスケーラビリティを低下させることになる。
【0192】
ステップS1が実施される場合には、フレキシビリティのレベルが高まる。ステップS1は、考慮されるモジュール2すべての性能測定値94を要し、それによって、ステップS1が性能測定値94に基づいて実行されるように、ネットワーク2を介する何らかのデータ転送が必要となる。しかし、性能測定値94と、制御モジュール80同士の間のやり取りを行なうためのメッセージとである、転送に必要なデータの量は比較的小さい。これは、出力データ自体よりはるかに少ない量のデータを要する。例えば、性能測定値は、それぞれの測定値を表すだけで、ほんの一握りであるが、配列データである出力データの量は大きくなり、イベントデータである出力データの量は、配列データより通常は1桁大きく、また、測定信号を表す出力データの量は、イベントデータより通常は1桁大きい。さらに、モジュールの動作における制御がステップS3で更新される周期よりもはるかに長い周期でステップ1が更新されるため、ネットワーク3を介して転送されることをデータが要する頻度は低く、それによってさらに、ステップS2がモジュール2の外部で実施される場合より、ネットワーク3の負担ははるかに軽くなる。
【0193】
第1の実施形態では、ステップS1の処理は、クラスターにおけるモジュール2の制御モジュール80の間で共有される。この場合、制御モジュール2は互いと協調してステップS1を実行して、合わせてグローバル性能目標90を満たす、機器1におけるモジュール2ごとのローカル性能目標91を求める。これは、繰り返しのプロセスによって達成されうる。それぞれの制御モジュール80は、その制御モジュール80自体の、提案されるローカル性能目標を導出し、次にそれをクラスターにおける他のモジュール2に伝える。提案されたローカル性能目標を他のすべてのモジュール80から受信すると、それぞれの制御モジュール80は、グローバル性能目標が満たされるかどうかを判断し、必要に応じて、制御モジュール80自体の提案されたローカル性能目標を修正する。このプロセスは、ローカル性能目標が承諾されるまで繰り返される。
【0194】
ステップS1が最初に実行される場合、これはグローバル性能目標90だけに基づいて行なわれるが、それはまだ出力データが生成されてないためである。次に、必要に応じてそれぞれのモジュール2のローカル性能目標を更新するためにステップS1が実行される場合には、ステップS1は、それぞれのモジュール2における制御モジュール80によってそのモジュール2に対して導出された性能測定値94に基づいて実行される。このため、制御モジュール80は、ネットワーク3を介して性能測定値94を互いに伝える。このようにして、制御モジュール80は、生化学分析を最も効率的に完了するために、性能測定値94を互いにアクティブに報告する。それぞれのモジュール2は、モジュール2自体の決定に到ることができる。次に、決定は、それぞれのモジュール2にある参照用テーブルの中にコード化されうる。次に、それぞれのモジュール2は、ウェブサービスを介して、そのモジュール2の決定を他のモジュール2に送信し、それによって、それぞれのモジュール2は次に、他のモジュール2のテーブルを、提案された応答として記憶する。2つ以上が信号で伝えられると、提案された動作コースを選択するために、このテーブルを照合して単純な多数決を適用することができる。
【0195】
このように、それぞれのモジュール2における制御モジュール80は、ユーザー入力なしに必要な計算と決定を行なうことができるが、これらの制御モジュール80は、同じことを協力して集合的に行なうこともできる。これらの制御モジュール80は、個々の内部決定を共有することもでき、全体的な結果については、個々の内部決定を上まわるレベルで、共同の決定を集合的に行なうこともできる。このようにして、統合/制御APIは、研究室のワークフローを最適化するために、クラスターのモジュール2全体にわたる決定を統合する。
【0196】
このように、機器1を構成するクラスターにおけるモジュール2は、共通の生化学分析から複数チャネルの出力データを生成する。モジュールは、その出力データの一貫したフィルタリング、正規化、及び集計を可能とするために統合レイヤ(図示せず)を適宜含むことができる。ポリヌクレオチドのシーケンシングの場合、モジュール2は、単一の試料に対するシーケンシング分析を、協力して同時に高スループットで行なうように制御されてもよく、それによって、それぞれのモジュール2は、フローセルベースの光学測定におけるDNAシーケンシング機器のサブチャネル又は「レーン」に相当するものとなる。
【0197】
この第1の実施形態は、モジュール2の数を伴う、制御プロセスのスケーラビリティを支援する。それぞれのモジュール2は、等しくステップS1に寄与し、それによって処理負荷が等しく共有され、単一のモジュール2における処理負荷は、クラスターのモジュール2の数が増えた分だけ最小限に増加する。クラスターのモジュール2の数の増加によって、ネットワークによって送信されるデータ量は、単にモジュール2の数に比例して増える。基本的には、これによって任意である所与の現実的なネットワーク3に対するクラスターの大きさが結果的に制限されることになるが、データの量が比較的少ないため、実際には多数のモジュールを取り込むことができる。
【0198】
この第1の実施形態では、それぞれのモジュール2が決定プロセスに加わると、これによって処理負荷が共有され、また、それらのモジュール2すべてが決定のための能力を有しているため、これは、機器1がモジュール2の任意の組み合わせから形成されうるという利点を有する。しかし、決定は異なる方法により共有される。
【0199】
第2の実施形態では、他のモジュール2から伝えられた性能測定値94に基づいて、クラスターにおけるすべてのモジュール2のローカル性能目標91を決定するために、ステップS1の処理は、マスターとして働くモジュール2のただ1つの制御モジュール80によって、又は、モジュール2のサブセットにおける制御モジュール80によって行なわれる。これは、ネットワーク3を介して送信される、性能測定値を表すデータを依然として要し、マスターとして働くモジュール2の処理負担を増やす。理想的には、任意のモジュール2が、マスターとして働く能力を有しており、それによって、マスターは、クラスターとしてアドレス指定されたどのモジュール2からでも任意に選択される。或いは、特別なモジュール2だけがマスターとして働くことができるが、これは、アドレス指定されているすべてのクラスターにおいて、モジュール2の1つを選択することをユーザーに要するという欠点を有する。
【0200】
第3の実施形態では、ステップS1の処理は、ローカル性能目標における決定を行なうために統合制御ユニットとして働く、外部コンピュータ7、又は、動作可能な分析装置13を有さないダミー・モジュール2などの、ネットワーク3に接続されているさらなるコンピュータによって行なわれる。この場合、このさらなるコンピュータは、制御システム全体の一部となり、性能測定値は、決定のベースをなすために、モジュール2からさらなるコンピュータに伝えられる。しかし、好適にプログラムされたさらなるコンピュータに対する要件は、それ自体、離れているモジュール2が、制御を行なうのに不十分であるという意味で不利である。他方では、この実施形態は、モジュール2自体の処理要件を低減させる。
【0201】
さらなる入れ子レベルのフィードバックに向けた別の代替形態が、図23に示されている制御プロセスに導入されている。図23では、2つのレベルにおける性能測定値94のフィードバックがあり、この2つのレベルは、第1に、単一のモジュールに対するステップS2のローカル制御プロセスにおけるレベルであるものと、第2に、クラスター全体におけるレベルであるものとである。クラスターのモジュール2を分割して、クラスターにおける全体数のモジュール2のそれぞれのサブセットである、モジュール2の論理グループとすることによって、さらなるレベルが導入されてもよい。それぞれの論理グループに対する性能目標と性能測定値は、上記で説明したように、個々のモジュール2に対するローカル性能目標及び性能測定値と同様に得られる。図23に示されている制御プロセスのステップS1は、フィードバックの追加レベルを含むように修正される。すなわち、最も高いレベルでは、グループ性能目標は、それぞれのグループのグローバル性能目標と性能測定値に基づいて求められる。次のレベルでは、それぞれのグループに対する別グループの制御プロセスにおいて、そのグループにおけるそれぞれのモジュール2のローカル性能目標が、そのグループにおけるそれぞれのモジュール2のグループ性能目標及び性能測定値に基づいて求められる。同様に、グループにおけるそれぞれのモジュール2の性能測定値から、グループ全体における性能測定値が求められる。一般に、例えばグループをサブグループに分割することによって、任意数の入れ子レベルのフィードバックを用いることができる。
【0202】
この場合、上記で説明されたように、ステップS1に対する任意の実施形態を用いて、さらなるレベルのフィードバックを行なうことができる。
【0203】
この代替形態は、制御プロセスの複雑さを増やすが、共通の生化学分析の性質、及び/又は、様々なネットワーク構造に制御プロセスが適合しうるという利点を有する。異なるレベルの制御プロセスは、ネットワーク3における負担の必然的な低下と共に、機器1における異なる要素において実施されてもよく、異なる周期で更新されてもよい。例えば、グループは、グループ全体に対するグループ性能目標を参照して有利に制御される共通の生化学分析の同じ部分を実行するモジュール2のグループでもよい。或いは、グループは、例えばインターネットによって相互接続されたそれぞれのローカル・ネットワークに接続されたモジュール2のグループでもよく、その場合、ローカル・ネットワーク間のデータの流れは、ローカル・ネットワークに取り付けられた任意の個々のグループにおける制御に影響を及ぼすことなく低減する。
【0204】
次に、モジュール2がネットワーク3に接続し、ピア・ツー・ピアベースで通信する方法を説明する。一般的に言えば、低い更新頻度が許容可能であるため、性能管理のために自動化された決定を本来容易にする、モジュール2同士の状態データの交換は、「結果整合性」に基づいて行なわれる。
【0205】
モジュール2は、ユニバーサル・プラグ・アンド・プレイ(UPnP)又はZeroconf(又は、Bonjour)などのサービス・ディスカバリー・プロトコルを用いて互いに識別することができる。
【0206】
提案されたローカル性能目標及び性能測定値などのメタデータは、CouchDB(HTTP、JSON)、Tokyo Cabinet、又はMemcacheDBなどの様々な種類の分散データベース技術を用いて伝えることができる。
【0207】
或いは、ディスカバリー及びメタデータの伝送は、一般に、ネットワーク・ブロードキャスト、ネットワーク・マルチキャスト、The Spread Toolkit、ActiveMQ、RabbitMQ、又は、メッセージ・キューなどのメッセージング技術を用いて実現することができる。
【0208】
可能な1つの実施形態は、ユーザー・データグラム・プロトコル(UDP)を用いてビーコン・パケットのネットワーク・ブロードキャストを実施するために、publisher、subscriber、又は、pub+sub modeで動作する1つのperl scriptを用いることであり、それぞれのビーコン・パケットは、エンコードされたJSON(プレーンテキストのジャバスクリプト・オブジェクト・ノーテイション)データを含んでいる。それぞれのモジュール2は、モジュール2自体のディテールをブロードキャストし、また他をリッスンするノードとして働く。受信されたビーコン・パケットは、デコードされ、モジュール名でハッシュ・キーがかけられたものなどの、内部のメモリ内データ構造体に組み込まれる。これは簡単であるという利点を有しており、ビーコン・パケットは、ピアネーム(デフォルトではホストネーム)、ピア時間、及びシステム性能&状態データを最小量含む。次に、モジュール2は、他のモジュール2から受信したデータを含む、モジュール2のデータ構造体全体を再送信する。UDPパケットが信頼できず、ビーコン・パケットの送信は保証されないため、この再送信によって、モジュール2が他のモジュール2からデータを受信する可能性が向上する。ビーコン・パケットは、クラスターにおけるすべてのモジュール2に対するデータを含むことができるため、モジュール2は、モジュール2からであると称する外部データを取り込むことはない。
【0209】
UDPパケットは、サブセットの最大転送単位(MTU)まで最も効率的である。デフォルトでは、これは約1500バイトである。(例えば、一般的なgzip/LZWを用いる)ペイロードの圧縮は、転送サイズをMTUより少なく維持するために有用でありうる。固定のビーコン周波数の場合、クラスターにおけるモジュール2の数が増えるにつれて、ネットワーク・パケットの衝突、及び、輻輳を引き起こす再送信、及び、帯域幅の損失のリスクがはるかに高まる。これは、アクティブなモジュール2の数に反比例する動的なビーコン周波数を用いることによって対処することができる。
【0210】
機器1の利点は、分析装置13自体のモジュール化と、個々のモジュール2の動作が知的に並列化されることによって、モノリシック機器に比べて効率向上が達成されることである。ユーザーは、並列化されたグループのモジュール2を意のままに有し、実行することが望まれている共通の生化学分析の要件を満たすために、このような任意数のモジュールからなるクラスターを大規模な機器1にグループ化することができる。このスケーラビリティによって、単一機器の能力によって制約されることなく、様々な複雑さの生化学分析を実行することが可能となる。同様に、モジュール2の動作を制御することによって、グローバル目標を満たすようにモジュール2の性能が最適化される。これらの両方の要因によって効率向上がもたらされるが、これは、個々のモジュール2における望ましい利用がなされ、他のタスクを行なうように他のモジュール2を効果的に開放するためである。
【0211】
例えば、少数のモジュール2、又は、それどころか1つのモジュール2を、低スループットの用途に用いることができ、また、大規模のクラスターを、例えばヒトゲノムのシーケンシングである大規模なシーケンシング・プロジェクトなどの、大規模な並列用の用途に用いることができる。これは、機器の利用における効率向上をもたらす、ワークフローの管理を可能とする。シーケンシングの具体例では、結果として得られるワークフローは、現行のモノリシックDNAシーケンシング機器に関する課題を克服し、高スループットが要求される大規模なゲノム・シーケンシング・プロジェクトを実施するユーザーのニーズを満たし、一方では、比較的小規模であるが高度に繰り返される計画、若しくは不均一な計画、又は、まさに小規模な実験を行なう中間の研究所のニーズにも適応する。
【0212】
・ ヒトゲノムの再シーケンシング/アセンブリ
・ 低カバレッジのメチル化、又は、がんの再構成
・ 遺伝子発現などの、高度に繰り返される短い読み出しの実験
・ 少ない試料、又は混合細胞集団を用いる単一分子分析
などの様々な種類の分析を行なうために、様々な数のモジュール2を用いる機器1を適用することができる。
【0213】
次に、効率が得られる状況に関するいくつかの具体例を説明する。
1)ユーザーは、単一の試料からDNAを測定するために10台のモジュール2からなるクラスターを設定する。ユーザーは、必要な試料材料を提供するために、10個のアリコートの試料がそれぞれのモジュール2に加えられるように実験を設定し、ユーザーの好ましい設定(例えば、完了時間、データ品質など)を選択した後、実験を開始する。1台のモジュール2は不良のチップを有しており、データをほとんど報告していない。ユーザーが特定の時間に実験の終了を要求したため、クラスターにおける他の9台のモジュール2は、その目標を満たすために、それぞれのナノポアの処理速度を上げるための温度の自動操作によって、それらのモジュール2のシーケンシング速度を上げる。この動的再調整がなければ、実験は、設定された時間枠の中で終了することになるが、その実験は、ユーザーが期待したデータより少ないデータを生成し、ユーザーの成果及び実験全体の結果を妥協させることになる可能性がある。
2)別の例では、ユーザーは、単一の試料を測定するために8台のモジュール2からなるクラスターを作り、その試料は、ここでも同様に8台のモジュールにわたって等分されている。8台のモジュール2のうちの4台は、非常に低いデータ品質を報告しており、他の4台は、ユーザーによって要求されているあらかじめ指定された性能パラメータ(例えば、測定の出力と品質)のために補償することができない。したがって、不良のモジュール2は、それらの運転を終了し、オペレータに電子メールを送って、何がなぜなされたかを報告し、それによって、オペレータが、ユーザーに対する最小の時間ロス、又は最小のコストで試料の別のアリコートを用いて不良のモジュール2の中の同じチップにおけるナノポアのリフレッシュを可能にするか、又は、別の組の4つのチップを即座に装填することができるようにし、それによって、いかなる時間ロスも最小となる。この例では、運転の早期に欠陥を検出することができ、また、その試料について完了するための時間の蓄えがなくなる前に追加のチップを装填することができ、それによってプロジェクトが救済されることになる。比較すると、ユーザーがIlluminaのGenome Analyserで同じ実験を行なっているとすると、8本の「レーン」のうちの4本は、低品質のデータ生成の原因となる欠陥を有することになり、ユーザーは、単にすべての実験を早期に終了して、その時点までにすべてのレーンにわたって生成されたすべてのデータを失うか、又は、運転の完了を許可して、最終的には期待量のほぼ半分の高品質データを有するだけであるが、完全に機能的な実験と同じコストと時間がかかることになる。
3)上記のシナリオの続きとして、別の有用な状況が起こりうる。当該ユーザーの研究所は、設置された8台だけのモジュール2を有しており、故障した4台は開放されている。しかし、別の緊急プロジェクトが、システムにおける運転を待っている。次に、オペレータは、残りのモジュール2における元のプロジェクトの完了により多くの時間を認め、開放された4台のモジュール2を用いて、待機プロジェクトをできるだけ好都合に処理する決定行なうことができる。このように、リソースは、研究室のプライオリティにグローバルに適応しうる。
4)ユーザーは、試料、又は試料のアレイについて実験を行なって、それらの試料における特別な結果を調べることを望んでいる。したがって、ユーザーは、(例えば、正確なDNAの配列モチーフである)特定のデータが一度観察されるか、又は特定の回数まで1つ又は複数の試料における実験プロセスが継続することを指定可能である。特に、すべてのデータ・セットが分析されると、データは、実験において見込みのある成功全体に対するマーカー又はプロキシとして用いることが可能になる。例えば、ユーザーが要する調査に十分な、試料全体にわたるトータル・カバレッジ(オーバー・サンプリングの程度)を確実なものとするために、ゲノムの特定領域におけるあるレベルのカバレッジが、DNA断片の同じライブラリを用いて、以前のシーケンシングの運転からわかる。モジュール2からなるクラスターでは、このような調査は、モジュール2全体にわたって共有されてもよく、必要な種類の十分なデータが観察されると、これは、加わっているモジュール2の一部又はすべてに対する終了条件を設定するために用いることができる。実験成果に至る時間とコストのこの最適化は、現行のDNAシーケンシング機器で行なうことはできない。
5)ユーザーは、あらかじめ指定された高い品質でDNA試料を分析するように、モジュール2からなるクラスターに対する要件を設定している。実験中に、モジュール2は、ユーザーが期待した量より多いデータを収集するが、十分に高い品質ではない。必要な品質目標に早く到達するために、モジュール2は、スループットを犠牲にしても(所与のデータ量はすでに達成されている)、データ品質を改善するためにモジュール2の分析条件を集合的に調整する。例えば、動作温度を下げることによって、DNAの塩基は、それぞれのナノポアを平均してよりゆっくりと通過し、それによって、塩基当たりのより多くの分析時間が可能となり、それによって、ナノポア当たりのデータ出力は低下するが、塩基測定の品質は向上する。代替的に、又は並行して、それぞれのナノポアを通って流れる電流が測定されるペースが変更されて、速いサンプリング又は遅いサンプリングになってもよく、それによって、信号対雑音特性と、ナノポアを通る塩基の速度とに依存して、データ品質である特定の側面が向上しうる。
6)実験中に、クラスターにおけるモジュール2の1台が突発的なハードウェアの故障に遭遇し、安全にシャットダウンして、実験データの損失を引き起こしている(ただし、故障時までにモジュール2によって生成されたすべてのデータは使用可能であり、それらのデータは、既に専用の記憶領域に送られている)。残りすべてのモジュール2は、必要なデータ出力におけるあらかじめ設定されたユーザーのニーズをユーザーの介入なしに満たすために、それらのモジュール2の予定の実験時間枠を増やすことによって対応する。さらに、システムは、代替商品を注文するためにメーカーに自動メッセージを送る。ユーザーの実験とワークフローに対して最小限の中断が生じた。
【0214】
例えば図11の構造に関するようにカートリッジ2が複数の試料を処理可能である場合、満たすことのできるグローバル性能目標の例は以下の通りである。
1)試料が、協調しているクラスターのノードにおけるプレート100上で処理されている。ユーザーは、特定量のデータが必要であることを指定している。この試料は別のプレート100にあり、別のクラスターノードでも処理されている。モジュール2は、先に説明されたように協調する。
2)1に示されているシナリオが用いられるが、この場合、第2のプレートにある第2の試料は低品質のものである。モジュール2は、試料の別のインスタンスがモジュール2のプレート100にあるかどうか調べるために内部的に記憶されたプレート−試料テーブルを調べ、インスタンスがある場合には、そのバルブをリセットして、劣化した試料よりこの試料を使うことによって性能目標に対応し、協調が継続する。
3)別の例では、10台のモジュール2が、同じ試料のプレート100を処理しており、それらのモジュール2を通じて動作している。ユーザーは、まだ処理されていない自身の試料のうちの1つのプライオリティを変更する。次に、クラスターのモジュール2のいくつかは、それらのバルブをリセットして、その試料のデータを定刻に届けるためにその試料に移る。クラスターにおける残りのモジュール2は、元の試料に対する処理を続け、温度を変更することによって処理速度を上げる。
4)別の例では、モジュール2からなるクラスターは、同じプレートを処理している。モジュール2が開始する前に、モジュール2は、バルブ110を設定してウェル102に進み、そこで少しの試料をとって短時間運転を行なう。これにより、モジュール2は共に、それぞれの試料(又は、ウェル102)から生じる、見込みのあるデータ品質、及び、データ量をあらかじめ計算する。次に、モジュール2は共に、必要な品質と量のデータをあらかじめ設定されたプライオリティに沿うそれぞれのユーザーに届けるために、試料を処理するのに最適な順序を計算する。ウェル102が空であることがわかった場合、又は、目標を満たすには試料が低品質すぎる場合には、クラスターは、役に立たない試料を取り替え、未使用のプレートを用意する必要があることをユーザーに通知する。
【0215】
成功への鍵は、十分な、時にはあらかじめ設定された終了条件を、個々に、また、協力して決定するためのモジュール2の能力である。これによって、必要な品質における過少であるデータも、過多であるデータも生成されないことが確実なものとなる。このようにして、システムにおける十分な利用が達成され、過剰な場合に「低品質の(slack)」データは生成されない。出力又は品質におけるあらゆる欠陥を調整するために全体的に余分な運転が事後に行なわれる必要はない。この全体的な方法によって、試料とデータが、スループット、品質、及びコストを最適化するシーケンシングのワークフロー全体を通じて効率的にパイプライン化されうる。どのようなハイエンドの研究所の場合でも、これは、通常そうであるように、出力データが常に予測可能であるとは限らない場合は特に、固定のデータ出力で固定の運転回数だけ動作するシステムに比べて効率において数倍の改善を達成することができる。
【0216】
上記の動作すべてが、それぞれのモジュール2内で共有される特定の制御の実施によって可能となり、また実行される点に留意されたい。さらに、モジュール2は、独立して、またそれ以上に、運転されうるが、上記のシナリオすべてを1台のモジュール2で実施することができるとは限らない点に留意されたい。内部の最適化を行なうことはできるが、数台のモジュール2にまたがる最適化を行なうことはできない。
【0217】
次に、例(1)における機器の動作をより詳細に説明する。
【0218】
この場合、機器1は、DNAのシーケンシングに用いられる。これは、塩基G、C、A、及びTに相当する、少なくとも4つの可能な分析物を検出することを意味する。10台のモジュール2が用いられており、それらは、処理のために同じ試料を与えられている。ユーザーは、12ギガベース(109)のデータが1日に必要であり、このうち、記録される塩基の100%がQ20以上の品質スコアを有する(すなわち、塩基は、100のうち1未満が間違っている確率を有する)ことを要求している。データの量と品質は、DNA試料が分析される際にユーザーが遺伝因子(例えば、ユーザーが探している突然変異体)を発見できることがほぼ確実となるように選ばれている。これらの基準は、先の経験論、又は何らかの状況から導き出されてもよい。
【0219】
ユーザーは、好適な場所に少なくとも10台のモジュール2を有しており、それぞれのモジュール2の中にある組み込みコンピュータ51のネットワーク・アドレスを知っている。ユーザーは、所与の実験に適切な方法で、モジュール2のDNA試料を調製する。これがヒトゲノムのシーケンシングである場合、ユーザーは、好適な既製機器を用いてDNAの試料をランダムに切断することができる。
【0220】
ユーザーは、見込みのあるスループット(単位時間当たりのデータ)に基づいて、この試料用に10台のモジュール2を使用することを決めている。試料は、モジュール2に装填される10個のカートリッジ10に導入される。モジュール2は、カートリッジ10を一意に識別する、それぞれのカートリッジ10のバーコード又はRFIDを自動的に読んで、カートリッジ10のIDを記憶することができる。
【0221】
モジュール2は、クラスターにおける他のモジュール2を同定し、ハンドシェイクを送り、他のモジュール2に関する基本情報を受信する。次に、この情報はGUIによって表示される。この例では、ユーザーは、このネットワークに20台のモジュール2を見ることができるが、ユーザーは、ユーザーの試料を含んで装填されているカートリッジ10を有する10台だけに関心をもっている。これらは、名前、アドレス、ステータス、位置などによってGUIを介して同定され、それらのすべては、ベースとなっているウェブサービスから照合される。このようにして、任意の他のモジュール2を管理するために任意のモジュール2を利用することができ、他のコンピュータは必要とならない。したがって、ゲーウェイ・システムを経由する動作におけるボトルネックを有することなくリニアにスケール変更できる方法で、任意数のモジュール2を接続し、管理し、また動作させることができる。
【0222】
次に、ユーザーは、対象となっている10台のモジュール2をGUIを介してアドレス指定する。GUIの要素によって、割り当てられる名前(例えば、「Human」)が許可される。同じGUIによって、この集まりだけにアドレス指定されるコマンドが許可され、集合体として扱われることになるこれらのモジュール2から戻される任意のデータと、モジュール2からなる任意の他のクラスターから別に戻される任意のデータとが許可される。また、ユーザーは、実験中の試料に関する他の情報を直接注力することができ、又は、プロセス全体を外部のデータベース・システムにリンクすることができる。
【0223】
ユーザーは、次に、GUIを介して、12ギガベースであるQ20+のDNA配列データが収集されるまでモジュール2が運転されることになることを、モジュール2からなる「Human」クラスターに告げる。また、モジュール2は、モジュール2が同じ試料に対して動作することを告げられる。それぞれのモジュール2における制御モジュール80は、これらのコマンドを実行して、どれくらいのデータが収集されており、品質はどうであるかなどの性能測定値を記憶する。様々なユースケースに対して他のメトリクスが有用な場合がある。この制御モジュール80は、モジュール2のデータとステータスをリアルタイム、又は、ほぼリアルタイムでモニタし、決定を行なうことができる。この場合、制御モジュール80は、その制御モジュール80が「Human」と呼ばれるグループに属していることと、そのグループ全体が12GbであるQ20データにおける協調の目標を有することを記憶している。これは、モジュール2の名前、生成されたデータ、目標データ、及び、品質などを示す、このプロセスにおけるメモリの中のテーブルとして単に内部的に記憶されていてもよく、又は、例えば表1のように、より永久的な記憶装置に記憶されていてもよい。
【0224】
【表1】

【0225】
表1に示されているように、グループ「Human」におけるそれぞれのモジュール2は、このテーブル(データ構造体)を共有している。モジュール2の動作における標準的な部分は、モジュール2内部のウェブサービス82を介してブロードキャストされることになり、このテーブルのコピーは、他のモジュール2に一定の間隔で送られ、それによって他のモジュール2を同期させる。次に、それぞれのモジュール2は、他のモジュール2のステータスを調べ、「Output」列の集計、「Group Target」列に対する合計の比較などの、あらかじめスケジュールされた動作をいつでも行なうことができる。任意の個々のモジュール2、又は、モジュール2の出力の合計が、ユーザーによって設定された時間要件を満たすように目標に向かっているかどうかを示す実行時間列に対して、所与の品質におけるデータ生成速度が、別の計算によって挿入されうる。それぞれのモジュール2は、そのモジュール2の制御モジュール80の中にコード化されるこれらの計算値を有しており、それぞれのモジュール2は、モジュール2における共有され、同期したステータス・データ・テーブルに基づいて周期的に計算を行なう。このような多数の計算値が制御モジュール80の中に符号化されており、この単純な例以外の他のユースケースをカバーする。6時間後には、生成されたデータの量が目標を満たすように軌道にのっていないことがわかり、それぞれのモジュール2は、内部的にこのことに気づく。加わっているモジュール2の1台が、不十分に動作しているようである。これは、任意数の理由による可能性があるが、オンボードの診断情報は、いかなる障害も示していない。
【0226】
次に、モジュール2は、上記で説明されたように、モジュール2の目標を満たすために、モジュール2が有する情報に基づいて決定を行なう。この場合、すべてのモジュール2から選ばれる動作コースは、機能しているモジュール2の出力を増やすことである。このテーブルは一致するものであった。この結果を内部的に集計して、モジュール2は、次に、目標を達成するためにどれくらいの追加データが必要となるか計算する必要がある。これらのモジュール2は、これらのモジュール2のそれぞれが単位時間につきどれだけのデータを生成しているかを既に内部的に知っており、また、モジュール2がどれくらい生成しているかを他のモジュール2からも得ている。選択された動作コース(すなわち、ソフトウェア機能)に関連したあらかじめコード化されたロジックを用いて、次にモジュール2は、目標を満たすために、増やすのに必要なモジュール2自体の出力の量を計算する。最も簡単なアルゴリズムでは、それぞれのモジュール2は、ある割合における少ない増加分を提案し、これを他のモジュール2に送信する。次に、それぞれのモジュール2は、その内部テーブルを用いて、集計と目標成果に基づいてこれがどのような効果を有するか計算する。このプロセスは、目標が達せられることをモジュール2のすべてがそれらの内部テーブルによって示すまで繰り返される。より高度な代替形態では、低出力のモジュール2が、良好な出力を有するモジュール2より大きい提唱された増加分、したがって「負荷共有」にする。ここでも同様に、同じデータ共有、次に、共有される計算、次に、結果の共有、次に、コミュニティによる採決が用いられて、モジュール2が集合的な動作コースを選択することを可能にする。
【0227】
この例では、表2に示されているように、一部のモジュール2(3台だけが図示されている)が、弱っているモジュール2を補うために、1日当たり1Gbから1日当たり1.4Gbに、モジュール2のローカル性能目標を上げるように内部テーブルが更新されている。他に変更がなければ、グループ全体の合計出力が時間と品質の目標を満たすことになることが計算によって示される。このように、モジュール2は、集合的な目標を満たすために他のモジュール2からのフィードバックによって、モジュール2の内部ロジックを調整している。
【0228】
【表2】

【0229】
このことがなされると、個々のモジュール2は次に、集合的な決定を内部の救済措置に移す必要がある。これを行なうためのロジックは、制御モジュール80の中にコード化されている。例えば、ヌクレオチドがDNAの鎖から切断されてナノポアの中に通される速度を制御するために、シーケンサーの温度を用いることができる。これは、温度が高く上がりすぎると、観測されるデータの品質をわずかに低下させる場合があるが(以下参照)、上記のステップで説明された基本手順によって、このことが検出されて品質の低下を補正しようとする。この場合には、救済措置は、塩基における高いスループットである。したがって、制御モジュール80は、好適なファンクション・コールとしてのコマンドを、又は、フォーマット化された文字列を通信ソケットに送ることによるRPCコールを、内部ボード50のマイクロコントローラ58に送る。このコマンドは、マイクロコントローラ58に、分析装置13の温度を変更するように指示する。これは、温度制御素子42を制御しているデバイス・ドライバにさらなるコマンドが送られることによって実施されてもよい。この部品の「設定」温度は、おそらく参照用テーブルから導出される増加分であって、単位時間当たりの塩基の数を所望量だけ増やすように期待される増加分だけ上げられる。温度制御素子42は、より低く冷却することによって対応し、カートリッジ10のボード上にあるセンサは、所望レベルに対する温度変化を感知する。この情報、記録値、任意のエラーコードなどが、次にそれを記録する制御モジュール80に返され、救済措置が無事にとられる。
【0230】
制御モジュール80は、データがASIC40から転送され、処理モジュール73によって処理される際に、データからの塩基と品質スコアの記録とカウントを常に行なっている。このプロセスが継続し、内部テーブルが更新され、結果は、グループにおける他のモジュール2に送信される。すべてが良好であり、全体としての機器1は、グローバル性能目標を達成するように軌道にのっている。次に、さらなる措置がとられる必要がない場合、他のシナリオが探られる。これらのシナリオは、同じ基本的なデータフローに従うが、制御モジュール80によってアクセス可能な、ソフトウェアモジュール内にコード化された特定のロジックを有することになる。例えば、ここでの措置が、温度を調整した後に時間要件と品質要件を満たすことができない場合、モジュール2は、(実行時に記録された)ユーザーにメッセージを送って、目標を満たすために複数の追加モジュール2が必要であることの指示を決定してもよい。このことは、ユーザーが、他の、おそらく使用されていないモジュール2に仕事を割り当て直し、同じ試料を有する追加のカートリッジ10を上記の方法で挿入し、それらのモジュール2が集合的動作に加わることができるように、それらのモジュール2をクラスターに加えることを可能にする。
【0231】
コアとなる方法は、モジュール2全体にわたる集合的な決定を可能とすることである。モジュール2は、単独で動作する能力をそれぞれ有しているが、ステータスに関する内部のデータ構造体を共有し、それらを更新し続けることも可能である。これらのモジュール2は、一度一体化され、協調システムであるクラスターにつながれると、この構造体に対応する記憶されたプロトコル、及び/又は、この構造体を変更する記憶されたプロトコルを実行することができる。このプロトコルは、モジュール2同士の間の通信を可能とするだけでなく、モジュール2がモジュール2の動作を変更し、その変更を他のモジュール2と協調させることを可能とする、少なくとも1つの組み込みコンピュータ上で動作する、あらかじめコード化されたロジックの実行を開始する。
【0232】
モジュール2は、機器1のモジュール2に共通の生化学分析を行なうように協調する。それぞれのモジュール2で行なわれるそれぞれの生化学分析は、同じであってもよく、又は異なっていてもよく、大まかに言えば、すべての分析に対してグローバル性能基準を設定することができるという意味においてのみ「共通」である必要がある。典型的な例は、同じ試料である異なるアリコート、又は、異なるが、おそらく何らかの方法に関連する、例えば所与の集団からサンプルされた試料に対して行なわれる、同じ分析となるように、それぞれのモジュール2で行なわれる生化学分析に対するものである。典型的な別の例は、同じ試料である異なるアリコート、又は、異なるが、おそらく関連する試料に対して行なわれる、異なるが関連する種類の分析となるように、それぞれのモジュール2で行なわれる生化学分析に対するものである。
【0233】
実施されうる生化学分析の性質に関連するさらなる詳細は以下の通りである。以降の段落は、参照によってすべて組み込まれている複数のドキュメントを参照する。
【0234】
上記の分析装置13は、両親媒性膜26によって支持されているタンパク質ポアの形態であるナノポアを用いて生化学分析を行なうことができる。
【0235】
両親媒性膜26の性質は以下の通りである。両親媒性系の場合、膜26は通常、脂質分子、又は、脂質分子の類似物から構成されており、自然発生のもの(例えば、ホスファチジルコリン)であるか、又は合成のもの(例えば、DPhPC、ジフィタノイルホスファチジルコリン)である。1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)などの非天然の脂質類似物が用いられてもよい。両親媒性膜は、単一種又は混合種から構成されてもよい。脂肪酸、脂肪族アルコール、コレステロール(又は、同様の派生物)などの添加物が、膜の動きを調節するために用いられてもよい。両親媒性膜は、膜を横切るイオンの流れに対して、高い抵抗のバリアをもたらす。本発明に適用可能な両親媒性膜のさらなる詳細は、WO−2008/102121、WO−2008/102120、及びWO−2009/077734で提供されている。
【0236】
分析装置13では、両親媒性膜26はウェル22に渡って形成されるが、分析装置13は、以下を含む他の方法で両親媒性膜を支持するように構成することもできる。電気的にアドレス指定可能な両親媒性膜の形成は、複数の公知の技法によって実現することができる。これらは、1つ又は複数の電極の上に組み込まれ、2つ以上の電極間のディバイダーを提供する膜、又は、二重層に分割することができる。電極に取り付けられる膜は、両親媒性種の二重層又は単層でもよく、直接的な電流測定、又は、インピーダンス分析を用いることができ、それらの例は、Kohli et al. Biomacromolecules. 2006;7(12):3327−35、Andersson et al.,Langmuir. 2007;23(6):2924−7、及び、WO−1997/020203に開示されている。2つ以上の電極を分割する膜は、限定されないが、折り重ね(例えば、Montal et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1972, 69(12),3561−3566)、先端の含浸(例えば、Coronado et al., Biophys. J. 1983, 43, 231−236)、液適(Holden et al., J Am Chem Soc. 2007; 129(27):8650−5、及び、Heron et al, Mol Biosyst. 2008;4(12):1191−208)、ガラス支持(例えば、WO−2008/042018)、ゲル支持(例えば、WO−2008/102120)、ゲルのカプセル化(例えば、WO 2007/127327)、並びに、つながれた多孔質支持(例えば、Schmitt et al., Biophys J. 2006;91(6):2163−71)を含む複数の方法で形成することができる。
【0237】
ナノポアは、両親媒性膜26に導入されるタンパク質ポア又はチャネルによって形成される。このタンパク質ポア又はチャネルは、天然又は合成のタンパク質でもよく、例は、WO−00/79257、WO−00/78668、米国特許第5368712号、WO−1997/20203、及び、Holden et al., Nat Chem Biol.;2 (6):314−8に開示されている。天然のポア及びチャネルは、タンパク質の膜がかかっている部分が、アルファ・へモリシン(例えば、Song et al., Science. 1996;274(5294): 1859−66)、OmpG(例えば、Chen et al., Proc Natl Acad Sci U S A.2008; 105(17):6272−7)、OmpF(例えば、Schmitt et al., Biophys J. 2006;91(6):2163−71)、又は、MsPA(例えば、Butler et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2008; 105(52):20647−52)などのベータ・バレルを含む構造を含むことができる。或いは、タンパク質の膜がかかっている部分は、カリウム・チャネル(例えば、Holden et al., Nat Chem Biol.;2 (6):314−8)、(Syeda et al., J Am Chem Soc. 2008 ; 130(46): 15543−8)などのアルファ・ヘリックスからなっていてもよい。このポア又はチャネルは、所望のナノポアの動作を提供するために化学的又は遺伝学的に修飾された自然発生のタンパク質でもよい。化学的に修飾されたタンパク質ポアの例は、WO−01/59453で提供されており、遺伝学的に修飾されたタンパク質ポアの例は、WO−99/05167で提供されている。さらなるコントロールと、より的を絞った分析物の検出を可能とするために、システムにアダプタを加えることもでき、この例は、米国特許第6,426,231号、米国特許第6,927,070号、及び、WO2009044170に開示されている。
【0238】
ナノポアによって、両親媒性膜26を横切って移動するイオンの流れが可能となる。イオンの流れは、分析物との相互作用に基づいてポアによって変調され、それによって、ナノポアが生化学分析を行なうことが可能となる。例えば、米国特許第6,426,231号、米国特許第6,927,070号、米国特許第6,426,231号、米国特許第6,927,070号、WO−99/05167、WO−03/095669、WO−2007/057668、WO1997020203、Clarke et al. Nat Nanotechnol. 2009;4(4):265−270、及び Stoddart et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(19):7702−7707において、生化学分析のベースとして用いられているこのような変調に関する多くの例がある。
【0239】
分析装置13は、DNA及びRNAを含み、また、自然発生及び合成のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドのシーケンシングにナノポアを用いることができる。この分析装置13は、DNAの一本鎖がナノポアを通過するときに単一のナノポアの両端における電気信号の変化における測定値を一般に利用する、迅速でコスト効果の高い方法で配列情報を導出するために提案されている様々な技術を適用することができる。このような技術は、限定されないが、ハイブリダイゼーションによるナノポア支援のシーケンシング、鎖シーケンシング、及び、エキソヌクレアーゼ−ナノポア・シーケンシング(例えば、D.Branton et al, Nature Biotechnology 26(10),p1 −8 (2009))を含む。この技術は、(修飾又は未修飾の)不活性ポリマーとしてナノポアを通過するポリヌクレオチド、又は、(例えば、米国特許第5,795,782号、EP−1,956,367、米国特許第6,015,714号、米国特許第7,189,503号、米国特許第6,627,067号、EP−1,192,453、WO−89/03432、米国特許第4,962,037号、WO−2007/057668、(英国特許出願第0812693.0号、及び、米国特許出願第61/078687号に対応する)国際出願第PCT/GB09/001690号、及び、(英国特許出願第0812697.1号、及び、米国特許出願第61/078695号に対応する)国際出願第PCT/GB09/001679号に開示されている技術を用いて)ヌクレオチド構成成分又は塩基に切断されたポリヌクレオチドを必要とする場合がある。
【0240】
概して、本発明は、ナノポアが挿入されている絶縁膜の両側に2つの電極を設けることによってナノポアにおける測定を実現する任意の装置に適用することができる。イオン溶液に浸されると、電極間のバイアス電位は、外部電気回路によって電流として測定することができる、ナノポアを通るイオンの流れをドライブすることになる。DNAがナノポアを通過すると、この電流は十分な分解能で変化し、例えば、Clarke et al. Nat Nanotechnol. 2009;4(4):265−270、(英国特許出願第0812693.0号、及び、米国特許出願第61/078687号に対応する)国際特許出願第PCT/GB09/001690号、及び、D. Stoddart, PNAS doi 10.1073/pnas.0901054106, April 2009で開示されているように、これらの変化から構成塩基を識別することができる。
【0241】
さらに、本発明は、アレイにおけるそれぞれのナノポアの一方の側にアドレス指定可能な電極を個々に設けることによってナノポアのアレイが同じ試料を測定し、それぞれのナノポアが、他方の側において、試料中における共通電極、又は、同等数のアドレス指定可能な電極に接続されている、任意の装置に適用することができる。次に、外部回路は、アレイにおけるそれぞれのナノポアへの塩基追加の同期をせずに、アレイにおけるそれぞれの、また、すべてのナノポアを通過するDNAの測定を行なうことができ、言い換えれば、それぞれのナノポアは、例えば、US−2009/0167288、WO−2009/077734、及び、米国特許出願第61/170,729号に開示されているように、DNA一本鎖を互いに独立して自由に処理することができる。それぞれのナノポアは、一本鎖を処理すると、次の鎖の処理も自由に開始することができる。
【0242】
ナノポアベースの分析における利点の1つは、十分に機能するナノポアによって、測定の品質が時間につれて変化しないことであり、言い換えれば、塩基同定の精度は、シーケンシングの開始時において、実験の所定の制約を受ける以降の任意の時点における精度と同じである。このことによって、それぞれのセンサが、同じ試料、又は複数の試料に対する複数の分析を、時間にわたって順次、一定の平均的な品質で行なうことが可能となる。
【0243】
ポリヌクレオチドのシーケンシングの他、ナノポアは、限定されないが、診断(例えば、Howorka et al., Nat Biotechnol. 2001;19(7):636−9)、タンパク質の検出(例えば、Cheley et al., Chembiochem. 2006;7(12): 1923−7、及び、Shim et al., J Phys Chem B. 2008; 112(28):8354−60)、薬物分子の検出(例えば、Kang et al., J Am Chem Soc. 2006; 128(33): 10684−5)、イオンチャネルのスクリーニング(例えば、Syeda et al., J Am Chem Soc. 2008 Nov 19; 130(46):15543−8)、防御(例えば、Wu et al., J Am Chem Soc. 2008; 130(21):6813−9、及び、Guan et al., Chembiochem. 2005;6(10):1875−81)、及び、ポリマー(例えば、Gu et al., Biophys. J. 2000; 79, 1967−1975、Movileanu et al., Biophys. J. 2005; 89, 1030−1045、及び、Maglia et al., Proc Natl Acad Sci U S A.. USA 2008; 105, 19720−19725)を含む多様な範囲の他の生化学分析に適用することができる。
【0244】
さらに、本発明は、固体膜の中にナノポアが設けられる分析装置に適用することもできる。この場合、ナノポアは、固体材料から形成された膜の中の物理的な孔である。このような膜は、特に安定性と大きさに関して、流体又は半流体層と比べて多くの利点を有する。元々の概念は、DNA(例えば、WO− 00/79257、及び、WO 00/78668)などのポリマーを試験するために、ハーバード大学の研究者らによって提案された。それ以来、この研究は、本発明に適用されうる以下の技術、すなわち、製造方法(例えば、WO−03/003446、米国特許第7,258,838号、WO−2005/000732、WO−2004/077503、WO−2005/035437、WO−2005/061373)、データ収集及び評価(例えば、WO−01/59684、WO−03/000920、WO−2005/017025、及び、WO−2009/045472)、ナノチューブの組み込み(例えば、WO−2005/000739、WO−2005/124888、WO−2007/084163)、分子モータの付加(例えば、WO−2006/028508)、ナノポア構造体の中に埋め込まれた電界効果トランジスタ又は類似物の利用(例えば、米国特許第6,413,792号、米国特許第7,001,792号)、ナノポア又はナノチャネルによって相互作用する蛍光プローブの検出(例えば、米国特許第6,355,420号、WO−98/35012)、蛍光プローブがナノポアの位置を変える際に、蛍光プローブの標的基質(target substrate)から取り除かれる蛍光プローブの照明及び検出(例えば、US−2009−0029477)を含むように拡張した。分析装置では質量分析さえ用いることができ、例えば、対象となるポリマーがナノポア又はチャネルを通過する際、そのポリマーにおけるモノマーが切断され、イオン化され、次に質量分析を用いて分析される。
【0245】
さらに、本発明は、例えば、実験中のポリヌクレオチドの解読を可能にする化学的に標識のつけられた蛍光プローブの組み込み、アニーリング、又は除去を検出するための撮像段階の前段における、段階的で周期的な化学反応を用いる、ナノポア以外の技術、ゼロモード導波路におけるDNAポリメラーゼの活動度の測定(例えば、Levene et al., “Zero−Mode Waveguides for Single−Molecule Analysis at High Concentrations”, Science 299:682−686、Eid et al., “Real−Time DNA Sequencing from Single Polymerase Molecules”, Science 323: 133−138、米国特許第7,170,050号、米国特許第7,476,503号)を含む、DNA処理酵素の活動度をリアルタイムで測定する技術、ポリメラーゼ、及び、組み込まれたDNA塩基の両方に設けられた好適な化学基の間における蛍光発光移動(例えば、米国特許第7,329,492号)によってもたらされるエネルギー放出を、例えば、活性化した量子ドット(quantum dot)の存在下で、蛍光基を含む新しく合成された鎖の中に組み込まれたDNA塩基が励起される、そのDNAに作用するポリメラーゼにつけられた、活性化した量子ドットを用いて測定する技術、又は、新しい鎖の中にDNA塩基が組み込まれる際に化学的活性度を推測するためにイオンの局所変化(例えば、pH)を測定するイオン感応性FETを用いる技術(例えば、WO−2008/076406)を用いてポリヌクレオチドのシーケンシングを行なうように構成された分析装置にも適用することができる。
【0246】
また、本発明は、ナノポアを用いない他の種類の生化学分析を行なうように構成された分析装置にも適用することができ、この分析装置のいくつかの例は以下の通りである。さらに本発明は、限定されないが、
1)イオンチャネルのスクリーニング、
2)リアルタイムのDNA増幅(PCR、RCA、NASBA)、
3)
a.グルコースオキシダーゼ
b.G結合タンパク質レセプタ
c.蛍光タンパク質の遺伝子活性化
を含む、反応物質又は生成物の変化を測定することによる酵素活性度、
4)標的分子に対するリガンド(例えば、化学的阻害剤に対するタンパク質)の動的結合を含む、表面プラズモン共鳴がモニタされる反応、
5)トランスクリプトーム解析又は感染症同定のためのDNAマイクロアレイ、
6)試料又は溶液中のタンパク質を測定するための抗体アレイチップ、又は、
7)蛍光又は電磁気による読み出しによって、基質、標的、リガンドなどに対するタンパク質の相互作用におけるキネティクス(kinetics)をモニタするタンパク質結合アレイチップ
を含む、ナノポアを用いない他の種類の生化学分析を行なうように構成された分析機器に適用することもできる。
【0247】
それぞれの場合において、温度、実験時間、読み出しのサンプリングレート、光強度又は電位レベル、pH又はイオン強度を含む、実験に向けたユーザーのグローバル要件を満たすために様々な実験パラメータを変更することが可能である。
【0248】
分析は化学的評価又は生物学的評価でもよく、バイオマーカー確認調査、臨床試験、及び、高スループットのスクリーニングを行なうために用いることができる。これらの試験は、(吸収、蛍光、放射分析法、光散乱、粒子分析、質量分析による)溶離液における分析物の検出と共に、クロマトグラフィー(HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、FPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィー)、フラッシュ・クロマトグラフィー)、若しくは、免疫学的検定の実施、又は、直接質量分析法(MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)、APCI(大気圧化学電離)、四極子(単数及び複数)によるESI(電気スプレー電離)イオン化、飛行時間(time−of−flight)、イオントラップ検出)の使用を必要とする場合がある。免疫学的検定には、ELISA(酵素免疫測定法)、側方流動試験、放射免疫測定法、磁気免疫学的検定、又は、免疫蛍光分析法が含まれる。
【0249】
これらの試験及び分析は、ダウン症候群、ゲノム全般にわたる関連研究、組織及び動物すべてに対する薬物動態及び薬力学に関する調査、スポーツにおける薬物試験、環境マトリクス(排水、汚染水など)における微生物用の試験、処理水におけるホルモン及び成長因子のための試験などの場合に用いることができる。
【0250】
分析は、バイオマーカーの確認調査に適用することができる。本発明によって、非常に多くの試料が迅速に、また容易に分析されることが可能となる。例えば、バイオマーカーの検出における現行プロセスは、確認ステップによって妨げられており、言い換えれば、候補マーカーが一度見つかると、対象となっている組織において変化したレベルを統計的に確認するために多くの試料が試験される必要がある。したがって、それぞれのマーカーに対する分析を開発する必要がある。本発明のシステムは、DNA、RNA、タンパク質、又は小分子などのすべての分析物に対して単一の読み出しを行い、分析を展開する段階を削減する。
【0251】
分析は、臨床試験と、ELISAの代用とに適用することができる。病院又はクリニックにおける試験用に試料が提出されると、試験手順によって質量分析法又はELISAが必要とされる可能性が非常に高い。これらの両方は、本発明のシステムによって取って代わられる可能性がある。本発明のシステムに基づく好適な試験の開発は、スループットにおける大規模な増加と、試料の調製時間及び取り扱いにおける節減をもたらすことになる。これは、成長因子などの巨大タンパク質、インシュリンなどのペプチド、又は、乱用薬物若しくは処方薬などの小分子に適用されることになる。
【0252】
分析は、高スループットのスクリーニングに適用することができる。本発明のシステムによって、任意の定量的なスクリーニングを行なうことができる。したがって、結果としてペプチド又は小分子をもたらす分析(例えば、プロテアーゼの分析)が、高スループットのスクリーニングに現在用いられている場合、本発明は、スループットを増やし、試料の処理時間及び調製時間を削減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路部、及び、前記電子回路部に取り外し可能に取り付けることができるカートリッジを備える、生化学分析を行なうためのモジュールであって、
前記カートリッジが、
複数のナノポアを支持することができ、前記ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能であり、それぞれのナノポアの両端における電極構成部を備えるセンサデバイスと、
試料を入れるための少なくとも1つのコンテナと、
前記生化学分析を行なうための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバと、
前記少なくとも1つのコンテナからの試料、及び、前記少なくとも1つのリザーバからの材料を前記センサデバイスに制御可能に供給するように構成された流体系と
を備え、
前記電子回路部に前記カートリッジが取り付けられたときに、それぞれのナノポアの両端における前記電極構成部に接続されるように構成されたドライブ回路及び信号処理回路を前記電子回路部が含み、前記ドライブ回路が、前記生化学分析を行なうためのドライブ信号を生成するように構成されており、前記信号処理回路が、それぞれのナノポアの両端における前記電極構成部から生成された電気信号から、前記生化学分析の結果を表す出力データを生成するように構成されている、モジュール。
【請求項2】
複数のモジュールを備える、生化学分析を行なうための分析機器であって、
それぞれのモジュールが、試料の生化学分析を行なうように動作可能な分析装置を備え、前記モジュールが、前記生化学分析の結果を表す、少なくとも1つのチャネルにおける出力データを生成するように構成されており、前記モジュールの動作が、前記モジュールの性能を変更するように制御可能であり、
前記分析機器が、共通の生化学分析を行なうために任意数のモジュールをクラスターとして選択する入力を受けるように構成され、また、前記共通の生化学分析に対するグローバル性能目標を表す入力を受けるように構成された制御システムをさらに備え、前記制御システムが、前記共通の生化学分析を行なうために前記クラスターのモジュールの動作を制御するように構成されており、
前記制御システムが、前記共通の生化学分析の実行中に少なくとも一度、前記モジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールにおける性能測定値を求めるように構成されており、前記制御システムが、(a)すべてのモジュールについて求められた性能測定値と、前記グローバル性能目標とに基づいて、前記クラスターのモジュールの動作における制御を変更し、且つ/又は、(b)すべてのモジュールについて求められた性能測定値に基づいて、達成可能となっていない前記グローバル性能目標に応じて救済措置をとるように構成されている、分析機器。
【請求項3】
前記モジュールが、データネットワークに接続可能であり、前記データネットワークを介して互いに接続することを可能にする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御システムが、それぞれのモジュールの中に制御部を備え、前記制御部が、そのモジュールの動作を制御するように動作可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
任意数のモジュールをクラスターとして選択する前記入力を提供し、また、グローバル性能目標を表す前記入力を提供するためにユーザーが前記制御部のアドレス指定をすることを可能にするユーザーインタフェースを、前記データネットワークに接続されたコンピュータに前記データネットワークを介して提供するように前記制御部が構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御システムが、前記グローバル性能目標に基づいてそれぞれのモジュールに対するローカル性能目標を求めるように構成されており、それぞれのモジュールにおける前記制御部が、そのモジュールのローカル性能目標に基づいてそのモジュールの動作を制御するように構成されている、請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
それぞれの制御部が、そのモジュールのローカル性能目標を満たすために、そのモジュールに対して求められた性能測定値に基づいて前記モジュールの動作における制御を変更するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記クラスターのモジュールにおけるそれぞれの制御部が、それぞれのモジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールに対する前記性能測定値を求めるように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御システムが、前記クラスターのモジュールの動作における制御を変更するために、求められた性能測定値と、前記グローバル性能目標とに基づいて前記ローカル性能目標を変更するように構成されている、請求項6から8までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記クラスターのモジュールにおけるそれぞれの制御部が、それぞれのモジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールに対する前記性能測定値を求め、前記性能測定値を前記データネットワークを介して伝えるように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記クラスターのモジュールのうちの少なくとも1つにおける制御部が、前記データネットワークを介して伝えられた前記求められた性能測定値に基づいて前記ローカル性能目標を変更するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記クラスターのモジュールすべてにおける制御部が、前記データネットワークを介して伝えられた前記求められた性能測定値に基づいて前記ローカル性能目標を変更するために協調するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記クラスターのモジュールにおける制御部が、ピア・ツー・ピアベースで協調するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記クラスターのそれぞれのモジュールにおける制御部が、前記クラスターのモジュールにおける他の制御部から前記データネットワークを介して伝えられたモジュールすべての性能測定値に基づいて、前記それぞれのモジュールの前記ローカル性能目標を変更するように構成されている、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記モジュールの1つ又はサブセットにおける制御部が、他のモジュールの制御部から前記データネットワークを介して伝えられたモジュールすべての前記性能測定値に基づいて、前記クラスターにおけるモジュールすべてのローカル性能目標を変更するように構成されており、前記制御部の前記1つ又は前記サブセットが、変更されたローカル性能目標を前記クラスターの他のモジュールにおける制御部に伝えるように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御システムが、前記ネットワークに接続された統合制御部をさらに備え、
前記統合制御部が、前記モジュールの制御部から前記データネットワークを介して伝えられたモジュールすべての前記性能測定値に基づいて、前記クラスターにおけるモジュールすべてのローカル性能目標を変更し、前記変更されたローカル性能目標をそれぞれの制御部に伝えるように構成されており、前記それぞれの制御部が、前記変更されたローカル性能目標に応じて前記クラスターのモジュールの動作における制御を変更するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記性能測定値及びグローバル性能目標が、
出力データが生成される上限時間、
生成される出力データの量、又は、
生成される出力データの品質
のうちの少なくとも1つを表す、請求項1から16までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御システムが、前記モジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールの性能測定値を、前記共通の生化学分析の間に繰り返し求めるように構成されている、請求項1から17までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御システムが、(a)すべてのモジュールについて求められた性能測定値と、前記グローバル性能目標とに基づいて、前記クラスターのモジュールの動作における制御を変更し、(b)すべてのモジュールについて求められた性能測定値に基づいて、達成可能となっていない前記グローバル性能目標に応じて救済措置をとるように構成されている、請求項1から18までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記救済措置が、前記共通の生化学分析を行なうモジュールの数を増やすことである、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記救済措置が、前記共通の生化学分析を行なうためにさらなるモジュールが必要であることをユーザーに示すための出力を生成することを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記生化学分析が、試料における分子の分析である、請求項1から21までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記分子がポリマーである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記ポリマーがポリヌクレオチドである、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記生化学分析が前記ポリヌクレオチドのシーケンシングであり、前記出力データが、前記ポリヌクレオチドの配列を表す出力配列データである、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記分析装置が、複数のナノポアを支持することができ、前記ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能である、請求項1から25までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記分析装置が、それぞれのナノポアの両端における電気信号を生成するように構成された電極を備え、前記モジュールが、前記電極から生成された電気信号から前記出力データを生成するように構成された信号処理回路を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記制御システムが、
前記分析装置の温度、
前記生化学分析の電気パラメータ、
前記分析装置の流体パラメータ、又は、
前記出力データのサンプリング特性
のうちの少なくとも1つを変更することによって前記クラスターのモジュールにおける動作を変更するように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記信号処理回路が、それぞれのナノポアの両端における電気信号から、前記ナノポアの所で生じているイベントを検出し、それらのイベントを表す出力データを生成するように構成されている、請求項26から28までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
データネットワークを介して他のモジュールに接続可能な、生化学分析を行なうためのモジュールであって、
前記モジュールが、試料の生化学分析を行なうように動作可能な分析装置を備え、前記モジュールが、前記生化学分析の結果を示す、少なくとも1つのチャネルにおける出力データを生成するように構成されており、前記モジュールの動作が、前記モジュールの性能を変更するように制御可能であり、
前記モジュールが、前記モジュールの動作を制御するように動作可能な制御部を備え、前記制御部が、共通の生化学分析を行なうために、モジュールを、クラスターとしての任意数のモジュールの1つとして選択する入力を提供し、また前記共通の生化学分析に対するグローバル性能目標を表す入力を提供するために、前記制御部が前記データネットワークを介してアドレス指定可能であり、前記制御部が、前記共通の生化学分析を行なうために、前記入力に応じて前記モジュールの動作を制御するように構成されており、
前記制御部が、前記共通の生化学分析の実行中に少なくとも一度、前記モジュールによって生成された出力データから前記モジュールの性能測定値を求め、前記性能測定値を前記データネットワークを介して伝えるように構成されており、
(a)すべてのモジュールについて求められた性能測定値と、前記グローバル性能目標とに基づいて、前記クラスターのモジュールの動作における制御を変更し、且つ/又は、(b)すべてのモジュールについて求められた性能測定値に基づいて、達成可能となっていない前記グローバル性能目標に応じて救済措置をとるために、前記制御部が、前記クラスターの他のモジュールにおける制御部と前記データネットワークを介して通信するように構成されている、モジュール。
【請求項31】
生化学分析を行なうために分析機器を動作させる方法であって、前記分析機器が複数のモジュールを備え、それぞれのモジュールが、試料の生化学分析を行なうように動作可能な分析装置を備え、前記モジュールが、前記生化学分析の結果を表す、少なくとも1つのチャネルにおける出力データを生成するように構成されており、前記モジュールの動作が、前記モジュールの性能を変更するように制御可能であり、
共通の生化学分析を行なうために任意数のモジュールをクラスターとして選択するステップと、
前記共通の生化学分析に対するグローバル性能目標を入力するステップと、
前記共通の生化学分析を行なうために前記クラスターのモジュールにおける動作を制御するステップと、
前記共通の生化学分析の実行中に少なくとも一度、前記モジュールによって生成された出力データからそれぞれのモジュールの性能測定値を求め、(a)すべてのモジュールについて求められた性能測定値と、前記グローバル性能目標とに基づいて、前記クラスターのモジュールの動作における制御を変更するステップ、及び/又は、(b)前記すべてのモジュールについて求められた性能測定値に基づいて、達成可能となっていない前記グローバル性能目標に応じて救済措置をとるステップと
を含む、方法。
【請求項32】
生化学分析を行なうためのモジュールであって、
複数のナノポアを支持することができ、前記ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能であり、それぞれのナノポアの両端における電気信号を生成するように構成された電極を備える分析装置と、
前記電極から生成された電気信号から、前記生化学分析の結果を表す、複数の並列チャネルにおける出力データを生成するように構成された信号処理回路と
を備え、
前記モジュールが、前記モジュールの性能を変更するように制御可能であり、また、性能目標に基づいて前記モジュールの動作を制御するように動作可能な制御部をさらに備える、モジュール。
【請求項33】
前記制御部が、前記生化学分析の実行中に少なくとも一度、前記生化学分析の性能測定値を求め、前記性能目標を満たすために前記性能測定値に基づいて前記モジュールの動作における制御を変更するように構成されている、請求項32に記載のモジュール。
【請求項34】
前記性能測定値及び性能目標が、
出力データが生成される上限時間、
生成される出力データの量、又は、
生成される出力データの品質
のうちの少なくとも1つを表す、請求項33に記載のモジュール。
【請求項35】
前記制御部が、
前記分析装置の温度、
前記生化学分析の電気パラメータ、
前記分析装置の流体パラメータ、又は、
前記出力データのサンプリング特性
のうちの少なくとも1つを制御することによって前記クラスターのモジュールにおける動作を制御するように構成されている、請求項32から34までのいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項36】
前記生化学分析が、試料における分子の分析である、請求項32から35までに記載のシステム。
【請求項37】
前記分子がポリマーである、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記ポリマーがポリヌクレオチドである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記生化学分析が前記試料におけるポリヌクレオチドのシーケンシングであり、前記出力データが、前記ポリヌクレオチドの配列を表す出力配列データを含む、請求項38に記載のモジュール。
【請求項40】
前記信号処理回路が、それぞれのナノポアの両端における電気信号から、前記ナノポアの所で生じているイベントを検出し、それらのイベントを表す出力データを生成するように構成されている、請求項32から39までのいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項41】
前記分析装置が、両親媒性膜を形成し、また前記分析装置において複数のナノポアを支持することができる、請求項32から40までのいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項42】
前記制御部が、前記共通の生化学分析の間に繰り返し、前記生化学分析の性能測定値を求め、前記性能測定値に基づいて前記モジュールの動作を変更するように構成されている、請求項32から41までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記分析装置が、前記分析装置の性能を変更するように制御可能であり、前記制御部が、前記分析装置の動作を制御するように動作可能である、請求項1から42までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記信号処理回路が、前記分析装置の性能を変更するように制御可能であり、前記制御部が、前記信号処理回路の動作を制御するように動作可能である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記信号処理回路が、それぞれが前記ナノポアの1つの両端からの電気信号を増幅することができる複数の検出チャネルを備え、前記分析装置が、検出チャネルの数より多い数のナノポアを支持することができ、
前記モジュールが、それぞれのナノポアの両端における電気信号を受けるために前記検出チャネルを選択的に接続することができるスイッチ構成部を備え、
前記制御部が、許容可能な性能を有するそれぞれのセンサ素子に前記検出チャネルを選択的に接続するためのスイッチ構成部を、前記検出チャネルから出力された増幅された電気信号に基づいて制御することによって前記クラスターのモジュールにおける動作を変更するように構成されている
場合を除く、請求項32から44までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
生化学分析を行なうためのモジュールを動作させる方法であって、前記モジュールが、複数のナノポアを支持することができ、また前記ナノポアを用いて試料の生化学分析を行なうように動作可能な分析装置を備え、前記分析装置が、それぞれのナノポアの両端における電気信号を生成するように構成された電極と、前記電極から生成された電気信号から、前記生化学分析の結果を表す、複数のチャネルにおける出力データを生成するように構成された信号処理回路とを備え、
生化学分析を行なうために前記モジュールの動作を制御するステップと、
前記生化学分析の実行中に少なくとも一度、前記生化学分析の性能測定値を求め、前記性能目標を満たすために前記性能測定値に基づいて前記モジュールの動作を変更するステップと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図23】
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【公表番号】特表2013−512447(P2013−512447A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541570(P2012−541570)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002206
【国際公開番号】WO2011/067559
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(511252899)オックスフォード ナノポール テクノロジーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】