説明

生存期間及び健康寿命を増加させるための組成物及び方法

本明細書において、植物であるダイコンソウの化合物、抽出物、及び活性画分、並びに寿命及び生存能力を増加させるため、又は糖尿病、炎症、創傷治癒、褥瘡、及び眼疾患を含む、種々の医学的状態を予防する、若しくは治療するための方法を開示する。本明細書に提供される化合物は、開示された方法おいて有用である、薬学的組成物及び薬物へ製剤化することができる。また、薬学的製剤及び薬物を調製する際の本化合物及び抽出物の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は2009年6月12日に出願された米国特許仮出願第61/186,709号及び2009年6月17日に出願された米国特許仮出願第61/187,905号の優先権を主張するものであり、その内容全体が、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の説明は、読み手の理解を助けるために提供されるものである。提供される情報又は引用される参考文献のいずれも、本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
長寿は長い間、最も注目されている科学分野のうちの1つであるが、依然としてよく理解されていない研究分野である。批判的かつ科学的に述べると、人々は、どのように老化を測定するかということを知らない。老化は、単に年代的であるのではない。老年期において活発かつ機敏である人々もいる一方で、中年期までに、老齢疾病−心臓疾病、高血圧症、脳卒中、糖尿病、癌、アルツハイマー病、及び認知症−に罹患する人々もいる。
【0004】
ほぼ世界のいかなる場所における人口も急速に高齢化しているということは、意見が一致している。65歳以上の人々の割合は、2005年の7%から、2050年には16%に増加している。高齢者の数は、1950年以降、すでに3倍になっており、2050年までに再び3倍になり、15億人が65歳以上となる。生存期間/健康寿命に対する優勢なプラスの効果を有する単一遺伝子突然変異の模索を伴う老化研究は、成功を収めていない。老化は、全身の変性劣化であり、恐らく、単一の遺伝子又は系における変化によるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
限られた細胞分裂の現象は、最初にLeonard Hayflickによって観察され、これは現在、Hayflick限界と称される。細胞分裂の間、DNAの複製は、染色体の末端まで継続することができない。テロメアは、染色体の末端における反復DNAの領域であり、これは、染色体の末端を劣化から保護する。テロメアがない場合、細胞は、それらの染色体の末端、及びそれらの複製の間、それらが含有する必要な情報を喪失するであろう。テロメアは、細胞分裂の間に消費される染色体の末端を封鎖する、使い捨ての緩衝剤として作用し、酵素であるテロメラーゼによって補充される。テロメラーゼは、TTAGGG反復を付加することによって、染色体の3’末端を補充することが可能である(Autexier C et al. 2006, Collins K et al. 2006)。
【0006】
テロメラーゼの一時的な活性化を介する、又は延命のための遺伝子治療による、ある重要な細胞におけるテロメアの延長が、長い間、提唱されてきた。線虫種であるシノラブディス・エレガンスを用いた研究は、テロメアの延長と、より長い生存期間との間に相関関係があることを示している。より長いテロメアを有する線虫は、通常の線虫よりも約20パーセント長い、平均で24日生存した(Artandi SE et al. 2000)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、とりわけ、細胞培養系において細胞の寿命を増進する、ダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)に関する。本発明者は、驚くべきことに、OEGJで処理された実験動物からの培養物及び組織における細胞が、有意に増加したテロメラーゼ活性を示すことを認めた。動物モデルにおけるOEGJのさらなる研究は、増加された生存期間を示した。理論に制限されることは望まないが、Atk1、Bcl2、VEGF、及びNFкBといった、生存を増進する遺伝子のアップレギュレーション、並びにテロメラーゼ活性は、実験動物の増進された生存及び寿命に対する、根底にある機構である。
【0008】
一部の実施形態において、本発明は、薬学的組成物の使用と、寿命及び再生を増進するための方法とに関する。特に、本発明は、本発明を抗老化、並びに健康な生存期間及び寿命の大幅な増進のために使用することができるように、哺乳類対象において、活力を増進し、テロメラーゼの活性を刺激するための薬学的組成物及び方法に関する。
【0009】
一態様において、本開示は、それを必要とする対象において、寿命及び生活の質を増進するための方法を提供し、本方法は、対象に有効量のOEGJを投与することを含む。一実施形態において、抽出物の投与は、テロメラーゼ、並びにAkt1、Bcl2、EGF、VEGF、及びNFкBから成る群より選択される1つ以上の細胞生存因子の発現を刺激する。一実施形態において、抽出物の投与は、抽出物を投与されていない対象と比較して、生存期間又は生活の質を増加させる。一実施形態において、対象はヒトである。
【0010】
一実施形態において、有機抽出物はエタノール抽出物である。一実施形態において、有機抽出物はメタノール抽出物である。一実施形態において、抽出物は経口投与される。一実施形態において、抽出物は皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注入により投与される。一実施形態において、抽出物は、約0.01mg/kg/日〜約10000mg/kg/日の量で投与される。一実施形態において、有効量の抽出物は、抽出物と、そのための好適な担体又は賦形剤とを含む、薬学的製剤の形態にある。
【0011】
別の態様において、本開示は、有効量のOEGJと、薬学的に許容可能な担体とを含む、対象において寿命及び生活の質を増進するための薬学的組成物を提供する。
【0012】
別の態様において、本開示は、それを必要とする対象において、糖尿病を予防又は治療するための方法を提供し、本方法は、対象に有効量のOEGJを投与することを含む。
【0013】
別の態様において、本開示は、それを必要とする対象において、眼疾病若しくは眼の状態を予防又は治療するための方法を提供し、本方法は、対象に有効量のOEGJを投与することを含む。
【0014】
別の態様において、本開示は、それを必要とする対象において、炎症を治療するための方法を提供し、本方法は、対象に有効量のOEGJを投与することを含む。
【0015】
別の態様において、本開示は、創傷を有する対象において、創傷の治癒を促進するための方法を提供し、本方法は、対象に有効量のOEGJを投与することを含む。一実施形態において、創傷は、褥瘡である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、OEGJが、C. elegansにおいて、生存能力又は平均余命を増進することを示す。野生型N2 C. elegansを、強制空気インキュベータにおいて、大腸菌株OP50を線条接種したNG寒天プレート上で成長させた。試験群内のL1のN2線虫を、OEGJ(150μg/ml)で処理し、対照群における線虫を同等の溶媒で処理した。OEGJで処理された線虫の生存能力を試験するために、培養温度を、最高27℃まで増加させた。Ct−7(7日間27℃での未処理の対照群におけるN2線虫)では、線虫の一部が死亡し、一部が依然として生存したが、若齢線虫は観察されなかった。OEGJ−7(7日間同一条件でのOEGJで処理された線虫)では、ほとんどの線虫が死亡せず、興味深いことに、多くの若齢線虫が観察された。Ct−14(27℃でのインキュベーションの14日後)では、未処理の対照群における全てのN2線虫が死亡した。OEGJ−14(27℃でのインキュベーションの14日後)では、成体線虫の多くが死亡したが、多くの若齢線虫は、OEGJで処理された試料において、依然として生存していたことが観察された。
【0017】
【図2】図2はN2 C. elegansの生存期間/健康寿命に対するOEGJ処理の効果を示す。Ct(未処理の対照N2線虫)。Tr(OEGJで処理された線虫)。ほぼ全てのチェックポイントで、OEGJで処理された群において、未処理群の線虫よりも多くの生きた線虫が観察されたことが示された。未処理群の全ての線虫が、38日目で死亡した。しかしながら、OEGJで処理された群の線虫のうちの約5%は、依然として生存していた。OEGJで処理された群の残りの線虫は、未処理の対照線虫よりも約10%長い、42日目で死亡した。
【0018】
【図3】図3はdaf−2 C. elegansの生存期間/健康寿命に対するOEGJ処理の効果を示す。Ct(未処理の対照daf−2線虫)。Tr(OEGJで処理された線虫)。ほぼ全ての観察ポイントで、OEGJで処理された群において、未処理群の線虫よりも多くの生きた線虫が観察されたことを認めた。未処理の対照群では、約5%の線虫が、56日目で生存したままであったが、OEGJで処理された群の線虫の約10%は生存していた。
【0019】
【図4】図4はdaf−16 C. elegansの生存期間/健康寿命に対するOEGJ処理の効果を示す。Ct(未処理の対照daf−16線虫)。Tr(OEGJで処理されたdaf−16線虫)。未処理の対照群における約77%の線虫が12日目に死亡した。比較すると、OEGJで処理された群の約50%の線虫が、12日目に生存していることが認められた。即ち、未処理の群において、OEGJで処理された線虫よりも約27%多い線虫が死亡し、健康寿命が、OEGJ処理によって有意に増加されることを示す。
【0020】
【図5】図5は20℃でのL1に同調され、20℃で成長させたdaf−2 C. elegansの生存期間/健康寿命に対するOEGJ処理の効果を示す。Ct(未処理の対照daf−2線虫)。Tr(OEGJで処理された線虫)。OEGJで処理された群における線虫のうちの約58%は、21日目に生存したままであった。比較すると、未処理の対照群における線虫のうちの約58%は、21日目に死亡した。全てのチェックポイントで、OEGJで処理された群において、未処理の対照線虫よりも約5〜15%多い線虫が生存しており、増加された健康寿命及び生存期間を示す。
【0021】
【図6】図6はOEGJ処理が、心臓におけるmTERT発現のアップレギュレーションを誘導することを示す。Ctr(未処理のマウスの対照心臓からのmTERTシグナル)。OEGJ−1−4(OEGJで処理されたマウスの心臓からのmTERTシグナルを示す)。mTERTの陽性シグナルが、4つ全てのOEGJで処理された心臓試料において観察され、未処理の対照試料(Ctr)よりも約24.8-13.27倍高いmTERT発現を示す。
【0022】
【図7】図7はOEGJ処理が、SAMP10マウスの脳における新生血管形成を誘導することを示す。a、有意により多くの(15〜25%)血管(円)が、OEGJで処理されたマウスの海馬領域周辺で観察された。b、一方、より少ない血管が、未処理の対照マウスの海馬領域で認められた(円)。c、より多くの(15〜25%)血管が、OEGJで処理されたマウスにおいて前頭葉の皮質領域で観察された(円)。d、より少ない血管が、未処理の対照動物の同一の領域において認められた(円)。
【0023】
【図8】図8はOEGJ処理は、SAMP10マウスにおいて、神経再生を誘導することを示す。a、未処理の対照マウスの海馬領域においては、正のKi67シグナルはほとんど観察されなかった。b、顆粒細胞の核の形状を有する、いくつかの暗褐色のKi67陽性シグナル(円で囲まれている)が、OEGJで処理された動物における海馬のDG領域の内縁において認められ、神経再生を示す。c、未処理の対照マウスの前頭葉の皮質領域において、Ki67陽性シグナルはほとんど認められなかった。d、ニューロンの形状を有するいくつかのKi67陽性シグナル(赤い円)が、OEGJで処理されたマウスにおける前頭葉の皮質領域において同定された。
【発明を実施するための形態】
【0024】
種々の態様において、本発明は、寿命を増加させるため、及び種々の医学的状態を予防又は治療するための、化合物、抽出物、並びに方法を提供する。本明細書に説明される化合物は、開示された方法おいて有用である薬学的組成物及び医薬に製剤化することができる。また、薬学的製剤及び医薬を調製する際の化合物及び抽出物の使用も提供される。
【0025】
本発明の十分な理解を提供するために、本発明のある態様、様式、実施形態、変化、及び特徴が、種々の段階で詳細に、以下に説明されていることを理解されたい。文脈において明記されない限り、以下に説明されるとおり、以下の用語が全体を通して使用される。
【0026】
本明細書で使用する時、対象又は対象への薬物又は薬剤の「投与」には、その意図される機能を行うために化合物を対象に導入する、又は送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、若しくは皮下)、直腸内、又は局所的を含む、任意の好適な経路によって実行することができる。投与には、自己投与及び他者による投与が含まれる。説明される医学的状態の治療又は予防の種々の様式は、「実質的」を意味することが意図され、これは、完全な治療又は予防だけでなくそれに満たないものを含み、何らかの生物学的に、若しくは医学的に関連する結果が達成される。
【0027】
本明細書で使用する時、組成物の「有効量」、又は「薬学的有効量」、又は「治療的有効量」という用語は、所望の治療及び/若しくは予防効果を達成するのに十分な量、例えば、治療される疾病に関連する症状の予防又は減少をもたらす量である。対象に投与される本発明の組成物の量は、疾病の種類及び重篤度、並びに健康全般、年齢、性別、体重、及び薬物耐性といった個人の特徴に依存する。また、疾病の程度、重篤度、及び種類にも依存する。当業者は、これらの要因及び他の要因に依存して、適切な用量を決定することができる。本発明の組成物を、1つ以上の追加の治療化合物との組み合わせで投与することもできる。
【0028】
本発明において使用される「OEGJ」という略語は、特定の表示を伴わなければ、以下に説明される有機溶媒による、植物であるダイコンソウの抽出物を意味する。
【0029】
本明細書で使用する時、「寿命」という用語は、動物の生存期間を指す。このため、寿命は、動物の生存期間における年数を指す。一部の実施形態において、本発明の組成物を投与される対象に関して、「増加された寿命」という用語は、組成物を投与される、疾病に罹患していない動物の生存期間が、組成物を投与されない、別の疾病に罹患していない動物に対して増加されることを意味する。一部の実施形態において、動物の寿命は、組成物を投与されない、疾病に罹患していない動物と比較して、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、又は少なくとも10年増加される。一部の実施形態において、動物の寿命は、組成物を投与されない、疾病に罹患していない動物と比較して、少なくとも1年、しかしながら、10年以下、5年以下、又は4年以下増加される。
【0030】
本明細書で使用する時、「治療する」又は「治療」又は「緩和」という用語は、治療療法及び予防若しくは防止対策の両方を意味し、目的は、標的病態又は疾患を防止する又は鈍化(減少)させることである。本発明の方法に従って、治療剤を受けた後、対象が、特定の疾病若しくは状態の1つ以上の兆候及び症状の観察可能及び/又は測定可能な低減若しくは非存在を示す場合、対象は、疾患に対して成功裏に「治療される」。
【0031】
本明細書で使用する時、疾患又は状態の「予防」又は「予防する」とは、統計試料において、未処理の対照試料に対して、処理された試料における疾患又は状態の発生を低減する、又は未処理の対照試料に対して、疾患又は状態の1つ以上の症状の発症を遅延する、若しくは重篤度を低減する化合物を指す。
【0032】
本明細書で使用する時、「対象」という用語は、ヒトであるが、動物、例えば、家庭動物(例えば、イヌ、ネコ等)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット等)であることも可能であるような、哺乳類を指す。
【0033】
本発明の組成物
本発明は、ダイコンソウ及びセンカクソウ(キンミズヒキとしても知られる)を含む、多様な植物からの抽出物及び化合物、並びにかかる化合物の誘導体で、対象において、寿命を増加させる方法を提供する。
【0034】
一部の実施形態において、本化合物は、植物全体、抽出物、例えば、ダイコンソウ又はセンカクソウの有機抽出物である。特定の実施形態において、本化合物はダイコンソウのメタノール/エタノール抽出物、又はその活性画分である。一部の実施形態において、本化合物はダイコンソウの抽出物の画分である。
【0035】
本発明は、ダイコンソウを含む多様な植物からの薬物及び/又は抽出物、及び化合物、並びにかかる化合物の誘導体で、対象における寿命を増加させる方法を提供する。一部の実施形態において、薬物は、抽出物、例えば、ダイコンソウの有機抽出物である。特定の実施形態において、薬物はダイコンソウのメタノール/エタノール抽出物、又はその活性画分である。
【0036】
ダイコンソウの有機抽出物の調製
ダイコンソウからの有機抽出物を調製する方法が提供される。本方法は、(a)C1−C4アルコールから成る群より選択されるアルコールで、ダイコンソウの植物を抽出するステップを含む。このステップは、室温で、3〜6回、典型的には5回、繰り返されてもよい。ステップ(a)を行う前に、植物材料は、粉末化されるか、小片に切断されてもよい。C1−C4アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、及びter−ブタノールが挙げられる。典型的に、アルコールは、抽出されるダイコンソウの量の質量で1〜10倍添加される。
【0037】
本方法は、(b)ステップ(a)から得られた抽出物を乾燥粉末へと乾燥させるステップと、(c)続いてステップ(b)から得られた粉末をC6アルカン、EtOAc、及びC1−C4アルコールから成る群より選択されるアルコールで抽出するステップとをさらに含んでもよい。C6アルカンとしては、例えば、シクロヘキサン、n−ヘキサン、及びネオ−ヘキサン等を含む、6個の炭素原子を有する、環状及び非環状アルカンが挙げられる。C1−C4アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、及びter−ブタノールが挙げられる。使用される有機溶媒の量は、典型的に、さらに抽出される粉末量の質量の1〜10倍である。
【0038】
また、上に記載の方法は、その中の不溶性粉末を除去するように抽出物を濾過することを含んでもよい。乾燥させるステップは、減圧下で、室温よりも高い温度、例えば50℃で完了されてもよい。
【0039】
OEGJを精製するために、本方法は、粉末をクロマトグラフィカラムに適用するステップと、カラムを、C1−C4アルコールから成る群より選択されるアルコールの濃度を増加させながら、水溶液で溶出するステップと、をさらに含んでもよい。例えば、Sephadex又は逆相カラムを使用してもよい。使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、及びter−ブタノールから成る群より選択される、いずれのものであってもよい。
【0040】
NMR分析によって、OEGJは典型的に、主に、ゲミンA、B、C、D、E、及びFを含むタンニン、並びに2−ヒドロキシオレアノール酸、2−ヒドロキシウルソル酸(hydroxylursolic)、2,19−ジヒドロキシ−ウルソル酸、2−α,19−α−ジヒドロキシ−3−オキソ−12−ウルスエン−28−オイック酸、ウルソル酸、ピメリン酸、マスリニン酸、オイスカフ酸、トルメント酸、トルメント酸の28−β−D−グルコシドを含む、トリテルペンを含有することが認められている。
【0041】
一実施形態において、本発明の抽出物、画分、及び化合物は、以下の段階を含む粗植物材料から、水を使用する、及び/又は有機溶媒の抽出によって得られる。
1.全体を処理、例えば浸漬/浸出、超音波、又はマイクロ波に供することによる、水及び/又は有機溶媒(複数を含む)の植物材料への添加による、抽出。
2.石油エーテル、ヘキサン、又はクロロホルム型の溶媒を使用した抽出段階の前又は後の脱脂。
3.任意で、酢酸エチル又はエチルエーテル型の有機溶媒によって回収される抽出物の追加抽出。
4.任意で、得られた粗抽出物の濃縮、及び、所望される場合、その凍結乾燥。
【0042】
一態様によれば、実現されることが可能である、富化を考慮すると、粗抽出物は、クロマトグラフィによる精製段階に供されてもよい。一実施形態において、遠心分配クロマトグラフィ(CPC)が使用される。この技術は、特に、A.P. FOUCAULT, Ed., Centrifugal Partition Chromatography, Chromatographic Science Series, Marcel Dekker Inc., 1995, 68、又はW.D. CONWAY, Ed., Countercurrent Chromatography apparatus theory and applications, VCH Publishers Inc., 1990によって説明されている。CPCは、2つ以上の溶媒又は溶液の混合物によって調製される、2つの非混和性の液相間での溶質の分配に基づく。2つの相のうちの1つは、遠心力によって静止したまま保持される。選択される溶媒、それらの比率、及び流量は、CPCカラム内の静止相の安定性、及び実際の圧力の両方に密接に依存する。
【0043】
したがって、当業者は、所望の精製された抽出物の性質に依存して、最も適切な溶媒又は複数の溶媒を選択するであろう。このため、粗抽出物及び富化された画分が、その結果、利用可能であり、大部分の構成物質として、OEGJからの同定された化合物のいずれをも含有する。これらの異なる抽出物、即ち粗製又は富化された抽出物もまた、本発明の範囲内に含まれる。追加の分離段階の実施は、1つ以上の化合物で富化されたこれらの抽出物の単離を可能にする。これらの分離は、求められる分離に好適である比率に従って、適切な溶媒の混合物を使用して、粗抽出物から富化された画分、又は粗抽出物自体において、行うことができる。
【0044】
生存期間又は健康寿命を増加させるための方法及び組成物
本発明は、OEGJが、重要な細胞、例えばニューロン及び心筋細胞を虚血及びストレスから保護することによって、それらの生存能力を増進しただけでなく、細胞生存因子、例えばAkt1、Bcl2、EGF、VEGF、NFкB、及びテロメラーゼの発現をアップレギュレーションしたという発見に基づく。さらに、本発明者は、OEGJが、重要な虚血性臓器、例えば心臓及び脳における新生血管形成を促進し、損傷した心臓及び脳において、心筋細胞及び神経再生を刺激することができるということを発見した。これらの実験から導出された肯定的推測を考えると、OEGJは、効果的に老化を予防する、又はさらにはある程度、逆行させることができ、生存期間若しくは生活の質を増進することができる。
【0045】
概して、本発明は、老化関連の生理的疾患の改善、及び哺乳類における生存期間の延長、並びに老齢哺乳類の生活の質の改善のための方法に関する。一態様によると、本発明は、それを必要とする対象において、寿命を増加させる、及び/又は活力を増進する方法を提供し、これは、対象に有効量の本明細書において説明される化合物、組成物、画分、若しくは抽出物を投与することを含む。一部の実施形態において、ダイコンソウのメタノール/エタノール抽出物、その活性画分、及び単離された化合物は、処理された細胞/組織において、テロメラーゼの活性を有意に増加させ、哺乳類対象の生存期間を著しく増加させる。本明細書において説明される薬物は、新生哺乳類対象の活力及び生存能力を有意に増加させすることができる。処理された哺乳類対象は、より活発であり、有意により健康であると思われる。処理された哺乳類対象の生命を脅かすストレスに耐える能力もまた、未処理の対照対象と比較して、有意に増加される。
【0046】
一態様において、寿命を増加させるため、及び/又は生活の質を増進するための方法は、それを必要とする哺乳類に、ダイコンソウ及びセンカクソウを含む多様な植物からの薬物、画分、及び/又は抽出物、及び化合物、並びにかかる化合物の誘導体を投与することを含む。
【0047】
別の態様において、寿命を増加させる、及び/又は生活の質を増進するための薬物は、1つ以上の賦形剤、担体、若しくは充填剤を含有する薬学的組成物の一部である。一実施形態において、薬学的組成物は、単位用量形態にパッケージ化される。単位用量形態は、対象において、寿命を増加させること、並びに/又は活力及び生存能力を増進することを誘導する際に有効である。
【0048】
本発明の種々の実施形態において、本発明の薬物(抽出物、画分、及び化合物)の効果、並びにその投与が、哺乳類対象の寿命を増加させること、及び/又は生活の質を増加させることに適応されるかどうかを判断するために、好適なインビトロ又はインビボのアッセイが行われる。一部の実施形態において、インビトロのモデルを使用して、対象に対する薬物の効果を評価する。好適なモデルには、C. elegansが、試験薬物に加えて、致死温度の27℃に曝露される、ストレス抵抗性アッセイが含まれるが、これに限定されない。生命体における、ストレス抵抗性を調節する際の薬物の効果を調査し、好適な対照と比較する。
【0049】
一部の実施形態において、寿命のインビボのモデルを使用して、対象に対する薬物の効果を評価する。好適なモデルには、年齢同調C. elegans線虫を調製し、試験薬物で補充した寒天上で成長させる、生存期間アッセイが含まれる。別のモデルは、単一クロトー遺伝子突然変異が、複数の老化関連疾患をもたらす、短い生存期間のマウスである。動物対象における、老化関連疾患を調節する際の薬物の効果を調査し、好適な対照と比較する。
【0050】
一実施形態において、本発明は、細胞を、本発明の植物抽出物、活性画分、及び/若しくは化合物と接触させることによって、ストレスに対する細胞の抵抗性を増加させるため、又は細胞のアポトーシスを防止するための方法を提供する。
【0051】
本明細書において説明される方法は、細胞、特に一次細胞(即ち、生命体、例えば、ヒトから得られる細胞)を、細胞培養物において生存したまま保持することができる時間量を増加させるように使用することができる。胚幹(ES)細胞及び多能性細胞、並びにそれらから分化された細胞もまた、細胞、又はその子孫を培養物中に長期間保持するように、本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物で処理することができる。かかる細胞はまた、対象への移植のため、例えば、生体外修飾後に使用することができる。
【0052】
糖尿病
別の態様において、本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物は、代謝疾患、例えばインスリン抵抗性、前糖尿病状態、I型及びII型糖尿病、並びに/若しくはそれらの合併症を治療又は予防するために使用されてもよい。
【0053】
糖尿病は、身体が十分なインスリンを産生することができないか、又はインスリンを利用する能力が減少しているかのいずれかにより、ある人物が高い血糖値を有する、代謝疾患を指す。膵臓で産生されるインスリンは、細胞レベルでブドウ糖をエネルギーに変換するホルモンである。ブドウ糖は、筋肉及び他の組織における細胞のためのエネルギーの主要形態であるため、我々の健康に不可欠である。しかしながら、高血糖としても知られる状態である、血液中の異常に高値のブドウ糖は、失明、腎不全、冠状動脈性心臓疾病、脳卒中、及び切断といった、急性及び慢性血管疾病合併症につながる(Pankaj, 2007)。
【0054】
1型及び2型糖尿病は、糖尿病のう2つの最も一般的な形態である。小児期又は青年期に最も一般的に認められる、1型糖尿病は、主に、同様にインスリン欠乏をもたらす、膵臓内のランゲルハンス島内のインスリン産生β細胞の喪失によるものである。β細胞に対するT細胞媒介性自己免疫反応は、1型糖尿病における、主要な根底にある機構である。全ての糖尿病症例の90%を占める2型糖尿病は、主に、インスリン抵抗性及びβ細胞機能障害に起因する(Lin & Sun, 2010)。1型糖尿病とは反対に、2型糖尿病患者におけるインスリン値は、特に初期において、身体がインスリン抵抗性を補償しようとするため、非常に高い。しかしながら、疾病が進行すると、正常なインスリン値よりも高い値でさえも、インスリン抵抗性により、正常な値の血漿ブドウ糖を保持することができず、肝グルコース産生を増加させる。疾病の経過とともに、恐らく、β細胞機能における進行性劣化、及び加速されたβ細胞アポトーシスに起因する、インスリン産生の減少は、疾病状態をさらに悪化させる(Wajchenberg BL, 2007)。
【0055】
我々の最近の研究では、OEGJが、筋肉、心臓、及び脳において、新たな血管の成長を有意に促進することができることを示している。OEGJ誘導性の血管新生及び筋肉再生の両方は、体内のブドウ糖消費を促進し、糖尿病患者におけるより低い血糖値につながる。さらに、心臓、脳、及び筋肉において認められるOEGJ誘導性の細胞再生が膵臓にも存在する場合、OEGJ処理は、β細胞の喪失を補償し得る。したがって、本明細書において説明される植物、抽出物、画分、及び/又は化合物の投与は、糖尿病患者に対する治療に効果を提供することができる。
【0056】
例示的な実施形態において、本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/若しくは化合物は、糖尿病を治療する、又は予防するための併用療法として、投与されてもよい。例えば、1つ以上の本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物は、1つ以上の抗糖尿病薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例示的な抗糖尿病薬剤としては、例えば、アルドースレダクターゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ1B阻害剤、ジペプチジルプロテアーゼ阻害剤、インスリン(経口投与可能なインスリン調製物を含む)、インスリン模倣剤、メトホルミン、アカルボース、トログリタゾン、ロサグリタゾン、ピオグリタゾン、若しくはGW−1929といったペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γ)リガンド、スルホニル尿素、グリパジド、グリブリド、又はクロルプロパミドが挙げられ、第1及び第2の化合物の量は、治療効果をもたらす。他の抗糖尿病薬剤としては、グルコシダーゼ阻害剤、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、インスリン、PPARα/ガンマ、デュアルアゴニスト、メグリチニド、及びαP2阻害剤が挙げられる。例示的な実施形態において、抗糖尿病薬剤は、例えば、NovartisのLAF237(NVP DPP728; 1−[[[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチル]アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリ−ジン)、又はMerckのMK−04301(例えば、Hughes et al., Biochemistry 38: 11597−603 (1999)を参照されたい)といった、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV又はDPP−IV)阻害剤であってもよい。
【0057】
炎症性疾病、創傷治癒、及び褥瘡
他の態様において、本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物は、炎症に関連する疾病又は疾患を治療する、又は予防するために使用することができる。本発明の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物は、炎症の発症前、炎症の開始時、又は開始後に投与することができる。予防的に使用される時、本化合物は、好ましくは、いかなる炎症性反応又は症状にも先立って提供される。本化合物の投与は、炎症性反応又は症状を予防する、又は軽減することができる。
【0058】
炎症は、身体が感染、損傷、又は刺激に反応することによる、複雑な生物学的過程である(Medzhitov, 2008)。炎症は、身体を、細菌、ウイルス、及び寄生虫といった、種々の疾病を引き起こす異物から保護するための防御機構である。急性炎症は、創傷及び感染を治癒するための必須条件であるが、免疫系が異物を取り除くことができないことによる、慢性炎症としても知られる長期の炎症は、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、ぜんそく、及び炎症性腸疾病を含む、多くの疾病につながり得る(Ku et al., 2009; Hamid & Tulic, 2009; Kaser et al., 2010)。最近、慢性炎症と、中枢神経系疾病、癌、及び心臓発作との間の関連が提唱されている(Kang & McGavern, 2009; Grivennikov et al., 2010)。世界中で何百万人をも苦しめている、慢性炎症性疾病は、治療することが困難であり、治療のための薬剤は、依然として存在していない。慢性炎症性疾病を治療するために使用される多くの薬剤は、胃出血、糖尿病、及び高血圧を含む、重篤な副作用を有する傾向がある。
【0059】
ある実施形態において、本発明の1つ以上の植物、抽出物、活性画分、及び/又は化合物は、単独で、又は炎症を治療する、若しくは予防するために有用な他の化合物と組み合わせて服用されてもよい。例示的な抗炎症性薬剤としては、例えば、ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、6α−メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、又はデキサメタゾン)、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAIDS(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、トルメチン、イブプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、ナブメトン、ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトドラク、又はニメスリド)が挙げられる。別の実施形態において、他の治療剤は、抗生物質(例えば、バンコマイシン、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフィキシム、リファンピンメトロニダゾール、ドキシサイクリン、又はストレプトマイシン)である。別の実施形態において、他の治療剤は、PDE4阻害剤(例えば、ロフルミラスト又はロリプラム)である。別の実施形態において、他の治療剤は、抗ヒスタミン(例えば、シクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジン、又はジフェンヒドラミン)である。別の実施形態において、他の治療剤は、抗マラリア剤(例えば、アルテミシニン、アルテムエーテル、アルテスナート、リン酸クロロキン、塩酸メフロキン、ドキシサイクリンヒクレート、塩酸プログアニル、アトバクオン、又はハロファントリン)である。一実施形態において、他の治療剤は、ドロトレコギンアルファである。
【0060】
創傷治癒は、身体が自身を修復し、細胞構造及び組織層を回復させる、偶発的損傷又は外科的介入後の、複雑かつ動的な過程である。通常の創傷治癒には、炎症性段階、増殖段階、及び再構築段階の3つの段階がある(Stadelmann et al., 1998)。増殖段階における血管新生は、創傷治癒に不可欠である。血管新生の間、新たな血管が血管内皮細胞によって形成される。
【0061】
床擦れ又は圧迫性潰瘍としても知られる褥瘡は、ほとんど軽減されない圧力に起因する病変である(Bluestein D & Javaheri A, 2008)。それらは、身体のいかなる部分にも影響を及ぼし得るが、褥瘡はほとんどが、膝、足首、及び肘、特に臀部、腰部、及び踵上の皮膚といった、骨性又は軟骨性領域上の身体部分に認められる。褥瘡を発症する危険性が高い者は、麻痺している者、又は介助なしでは体位を変更することができない者である。褥瘡は、早期に発見されない場合、致命的となり得、先進国における、主な医原性の死亡原因のうちの1つである。褥瘡は、持続的な圧迫が、脆弱な身体部分への血行を遮断する時に発症する。罹患組織は、不十分な血液供給により、最終的に死亡する。したがって、血流を改善することができる薬剤が、褥瘡を治療する際に有用であろう。
【0062】
眼疾患
本発明の一態様は、患者に、治療用量の本発明の植物、抽出物、活性画分、若しくは化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、若しくは代謝誘導体を投与することによって、白内障及び老眼を含む眼疾患を阻害する、低減する、ないしは治療するための方法である。
【0063】
一部の実施形態において、OEGJは、ある眼疾患、特に、白内障及び老眼といった、老化関連及び変性眼疾患を治療する際に有効である。白内障は、目の水晶体内の不透明又は混濁した領域である。その大きさ及び位置に依存して、白内障は、若干不透明から完全な失明へと正常な視力に支障を来す。老化関連白内障は、白内障の最も一般的な種類であり、65から74歳の人々の60%、及び75から85歳の人々の91%に影響を及ぼす。世界保健機関(World Health Organization)によると、老化関連白内障は、世界中の失明の約50%に関与し、55歳以上の人々の間での視力喪失の主な原因である(Asbell et al., 2005)。水晶体タンパク質の変性及びクラスタ化は、白内障の根底にある原因であると考えられる。一方、老眼もまた、目の水晶体が、進行的にその柔軟性を喪失し、老化に伴って近くの物体に焦点を合わせることが困難になる、老化関連の目の状態である(Charman, 2008)。
【0064】
本発明の別の態様は、かかる治療を必要とする対象に、治療用量の本発明の植物、抽出物、活性画分、又は化合物を投与することによって、白内障、老眼等を含む、老化関連眼疾病の阻害及び予防的治療を含む治療である。
【0065】
一実施形態において、併用投薬計画は、眼疾患、若しくはこれらの状態に関連する二次的状態の治療又は予防のための薬物又は化合物を含んでもよい。このため、併用投薬計画は、本発明の1つ以上の植物、抽出物、活性画分、又は化合物、及び眼疾患の治療のための1つ以上の治療剤を含んでもよい。例えば、本発明の1つ以上の植物、抽出物、活性画分、又は化合物は、有効量の1つ以上の薬剤と組み合わせることができる。
【0066】
薬学的組成物の調製及び用量
本発明の種々の実施形態において、対象における、本発明の薬物(抽出物、画分、及び化合物)の効果、並びにその投与が、罹患している疾病又は医学的状態の治療に適応されるかどうかを判断するために、好適なインビトロ又はインビボのアッセイが行われる。これらのアッセイの実施例は、特定の疾病又は医学的治療に関連して、上に説明される。
【0067】
典型的に、本発明の組成物の有効量は、治療又は予防効果を達成するために十分な、1日体重1キログラム当たり約0.000001mgから1日体重1キログラム当たり約10,000mgの範囲である。好適には、用量は、1日体重1キログラム当たり約0.0001から1日体重1キログラム当たり約2,000mgの範囲である。例示的な治療計画は、1日に1度又は1週間に1度又は1ヶ月に1度の投与を必要とする。本薬剤は、通常、複数回投与される。1回の用量間の間隔は、毎日、毎週、毎月、又は毎年とすることができる。代替的に、本薬物は、徐放性製剤として投与することができ、これは、より頻度の少ない投与が必要とされる。用量及び頻度は、対象における薬物の半減期に依存して変更される。投与の用量及び頻度は、治療が予防的であるか、又は治療的であるかに応じて変更することができる。予防的用途では、長期間にわたり、比較的低頻度の間隔で比較的低用量が投与される。一部の対象は、生涯継続して治療を受ける。治療用途では、疾病の進行が低減する又は終了するまで、好ましくは対象が疾病の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量を必要とすることもある。その後、患者は予防的療法の投与が可能になる。
【0068】
毒性。好適には、本明細書に説明される薬剤の有効量(例えば、用量)は、対象に実質的な毒性を引き起こすことなく、治療利益を提供する。本明細書に説明される薬物の毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的処置により、例えばLD50(母集団の50%に致死的な用量)又はLD100(母集団の100%に致死的な用量)を判断することによって、判断される。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用に有毒ではない用量範囲を製剤化する際に使用することができる。本明細書に説明される薬物の用量は、好ましくは、毒性がほとんど無いか、又は全く無い有効量を含む血中濃度の範囲内である。用量は、採用される投与形態及び利用される投与経路に依存して、この範囲内で変更することができる。正確な配合、投与経路、及び用量は、対象の状態を考慮し、個々の医師によって選択することができる。例えば、 Fingl et al., In: The Pharmacological Basis of Therapeutics. 1 (1975)を参照されたい。
【0069】
本発明の方法によれば、薬物は、投与に好適な薬学的組成物中に組み込むことができる。一部の実施形態において、本薬学的組成物は、対象への投与に好適な形態の、ダイコンソウの精製された、又は実質的に精製された抽出物、及び薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。他の実施形態において、本薬学的組成物は、部分的に、投与される特定の組成物によって、並びに、本組成物を投与するために使用される特定の方法によって判断される、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。したがって、組成物を投与するための薬学的組成物の多種多様な好適な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA 18th ed., 1990を参照されたい)。本薬学的組成物は、一般的に、無菌で、実質的に等張で、かつ全ての米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)の製造管理及び品質管理に関する基準(Good Manufacturing Practice(GMP))の基準に全面的に従い製剤化される。
【0070】
「薬学的に許容可能な」、「生理学的に耐性のある」、及びその文法的変形は、これらの用語が組成物、担体、希釈剤、及び試薬を指す場合、交換可能に使用され、その材料が、組成物の投与を禁止するほどの望ましくない生理学的効果の生成を伴わずに、対象に投与することが可能であることを表す。例えば、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、一般的に、安全であり、非毒性であり、望ましい、薬学的組成物を調製する際に有用である賦形剤を意味し、家畜への使用、並びにヒトの製薬学的使用に許容可能である賦形剤を含む。かかる賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合、ガス状とすることができる。「薬学的に許容可能な塩及びエステル」は、薬学的に許容可能であり、所望の薬理学的特性を有する、塩及びエステルを意味する。かかる塩としては、薬剤内に存在する酸性プロトンが、無機又は有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩が挙げられる。好適な無機塩としては、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム、並びにアルミニウムと共に形成されるものが挙げられる。好適な有機塩としては、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等といった有機塩基と共に形成されるものが挙げられる。また、かかる塩としては、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)、及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びにメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸といった、アルカン及びアレーンスルホン酸)と共に形成される酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容可能なエステルとしては、薬剤内に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ、及びホスホノキシ基、例えば、C1-6アルキルエステルから形成されるエステルが挙げられる。2つの酸性基が存在する時、薬学的に許容可能な塩又はエステルは、一酸単塩若しくはエステル、又は複塩若しくはエステルであることが可能であり、同様に、3つ以上の酸性基が存在する場合、かかる基の一部又は全てを、塩化又はエステル化することができる。本発明において名称が挙げられる薬剤は、非塩化若しくは非エステル化形態、又は塩化及び/若しくはエステル化形態で存在することが可能であり、かかる薬剤の呼称は、原物(非塩化及び非エステル化)化合物、並びにその薬学的に許容可能な塩及びエステルの両方を含むことが意図される。また、本発明において名称が挙げられるある薬剤は、2つ以上の立体異性形態で存在することが可能であり、かかる薬剤の呼称は、全ての単一の立体異性体、及びかかる立体異性体の全ての混合物(ラセミ体であるか、ないしは非ラセミ体であるかに関わらず)を含むことが意図される。当業者であれば、本発明の特定の薬物及び組成物の投与の適切なタイミング、順番、及び用量を判断することは困難ではない。
【0071】
かかる担体又は希釈剤の好適な例としては、水、食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及び5%のヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム及び固定油といった非水性ビヒクルも使用されてもよい。薬学的活性物質のためのかかる媒体及び化合物の使用は、当該技術分野において公知である。任意の簡便な媒体又は化合物が本薬剤と適合しない場合を除き、組成物におけるその使用が企図される。補足活性化合物もまた、本組成物中に組み込むことができる。
【0072】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。本発明の組成物は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内経路によって、又は吸入剤として、投与することができる。本薬剤は、任意に、種々の疾病を治療する際に少なくとも部分的に有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0073】
非経口、内皮、又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液には、以下の成分が含まれる:無菌希釈剤、例えば注入用の水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコロール、グリセリン、ポリピレングリコロール、又は他の合成溶媒;抗菌化合物、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば酢酸、クエン酸、又はリン酸;及び等張性の調節のための化合物、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムといった、酸又は塩基で調節することができる。非経口調製物は、ガラス又はプラスチックでできたアンプル、使い捨て注射器、又は反復投与バイアルに封入することができる。
【0074】
注入可能な使用に好適な薬学的組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)、又は無菌注入可能溶液若しくは分散液の即時調製のための分散液及び無菌粉末を含む。静脈内投与に関して、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parisippany、NJ)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合、組成物は無菌でなくてはならず、容易に注射針通過ができる程度の液体であるべきである。本組成物は、製造及び保管条件下で安定し、細菌及び菌類といった微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、並びにその好適な混合物を含有する、溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンといったコーティングの使用、分散液の場合に必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の阻止は、種々の抗菌及び抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールにより達成することができる。多くの場合、本組成物中に等張化合物、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールといった多価アルコール類、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅延する化合物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによって、注入可能な組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0075】
無菌の注入可能な溶液は、上に列挙された成分の1つ又は組み合わせを有する適切な溶媒に、必要とされる量の薬剤を組み込むことによって調製することができ、必要に応じて、その後、濾過殺菌することができる。一般的に、分散液は、結合剤を、塩基性分散媒体及び上に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む無菌のビヒクルへ組み込むことによって調製される。無菌の注入可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、調製の方法は、活性成分と、以前に無菌濾過されたその溶液からの任意の追加の望ましい成分との粉末が得られる、真空乾燥及びフリーズドライである。本発明の薬剤は、活性成分の持続又はパルス放出を可能にする様態において製剤化することができる、蓄積注射又は埋込み調製物の形態で投与することができる。
【0076】
一般的に、経口組成物は、不活性の希釈剤又は食用の担体を含む。これらは、ゼラチンカプセルに封入することができるか、又は錠剤に圧縮することができる。経口治療投与のために、結合剤は、賦形剤と合体し、錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で使用することができる。また、経口組成物はマウスウォッシュとして使用するための液体担体を使用して調製することもでき、液体担体内の化合物は、経口適用され、すすぎ、吐く、又は飲み下される。薬学的に適合性のある結合化合物、及び/又は補助材料を、本組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分いずれか、又は同類の性質の化合物を含有することができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、若しくはゼラチンといった結合剤、デンプン若しくはラクトースといった賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、若しくはトウモロコシデンプンといった崩壊化合物、ステアリン酸マグネシウム若しくはステロテスといった潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素といった流動促進剤、スクロース若しくはサッカリンといった甘味化合物、又はペパーミント、サルチル酸メチル、若しくはオレンジ香味料といった風味化合物。
【0077】
一実施形態において、本薬物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む、放出制御製剤といった身体からの急速な排出に対して本薬剤を保護する担体とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸といった、生分解性、生体適合ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製する方法は、当業者には明らかであろう。また、材料は、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals, Incから商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で、感染細胞に標的化されたリポソームを含む)を薬学的に許容可能な担体として使用することもできる。これらは、当業者に既知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に説明される方法に従って調製することができる。
【0078】
実施例
本技術は、以下の実施例によってさらに説明されるが、いかようにも限定として解釈されるべきではない。
【0079】
実施例1生存能力及びテロメラーゼ活性を増進するための天然化合物を含む組成物の同定。
テロメラーゼの活性を増進する化合物の組成を同定するように、植物構成物質をスクリーニングするために、バイオアッセイに誘導される戦略を使用した。植物抽出物のスクリーニングの間、ダイコンソウからの有機抽出物(OEGJ)は、生存能力及びテロメラーゼ活性を有意に増進することが同定された。簡潔に述べると、安徽省から収集された10kgの乾燥ダイコンソウを小片に切断し、これに、室温で6日間、90%メタノール/エタノール(10倍の容量)を浸出させた。抽出物をエレクトロスプレーして、褐色粉末を得た。
【0080】
抽出物(150μg/ml)を間充織幹細胞培養物に適用した時、OEGJ処理は、低酸素症といったストレスに対して、生存能力を促進し得ることが認められた。RT−PCR分析は、Akt1、Bcl2、VEGF、EGF、及びNFκBといった細胞生存関連遺伝子のうちの一部が、アップレギュレーションされたことを示した。したがって、OEGJは、以下の研究においてさらに試験された。
【0081】
実施例2−培養された心筋細胞の生存能力の増進。
細胞分裂、分化、老化、及び死亡を含む、細胞機能は、数多くの細胞シグナル伝達経路によって制御される。一部の疾病の発症は、これらの細胞機能、特に、細胞の老化及び細胞死にも依存し、その確率は、老化に伴って増加する。例えば、アポトーシスによる心筋細胞の喪失は、心不全につながり、抗アポトーシス(生存)シグナルのダウンレギュレーション、又はプロアポトーシスシグナルの過剰発現は、疾病発症に密接に関与する。
【0082】
まず、我々は、OEGJが、培養された心筋細胞において、生存能力を増進し得るか、又は細胞死を予防し得るかどうかを試験した。培養された心筋細胞を、環境室におけるインキュベーションによって、低酸素に供した。室の酸素濃度は、24時間10mmHgに維持された。低酸素の開始から低酸素の終了までのOEGJ処理は、未処理の対照筋細胞と比較して、Akt1、Bcl2、EGF、VEGF、NFкBといった一部の生存因子の発現を有意に増加させ、低酸素に対する細胞死を有意に予防することが示された。アポトーシス細胞の数は、未処理の対照筋細胞において、持続的低酸素に伴って増加した。一方、OEGJ処理は、細胞の生存能力を増加させ、アポトーシス細胞の数を減少させた(P<0.01)。
【0083】
実施例3−OEGJは、C.elegansにおける生存を増加させた。
OEGJが、C. elegansにおいて、生存能力又は平均余命を増進するかどうかを試験するために、野生型N2 C.elegansを使用した。 C. elegansを、漂白することによって同調化し、寒天プレート上で2つの群に分割した。プレートは、60mmのトップコーティングされた皿であった(固体形態の約10mlの培地)。線虫を、温度を±0.5℃に維持する強制空気インキュベータにおいて、大腸菌株OP50を線条接種したNG寒天プレート上で成長させた。約500匹の線虫/皿をOEGJ(150μg/ml、一皿上に600μlの薬物溶液を各々フード内で空気乾燥)で処理し、対照群の線虫を同等の溶媒で処理した。C. elegans株N2は、20℃から25℃の間で、C. elegansの野生型株において、耐久型幼虫形成を誘導することができる。25℃から26℃以上は、C. elegansにとって致死温度である。OEGJで処理された線虫の生存能力を試験するために、培養温度は、最高27℃まで増加させた。7日目及び14日目に写真を撮った(写真を撮る時、線虫は、20℃で曝露された)。
【0084】
27℃で7日間の未処理の対照群におけるN2線虫のインキュベーション後、線虫のうちの一部が死亡した一方で、それらの一部は依然として生存していたことが認められたが、若齢線虫は観察されなかった(図1:Ct−7)。一方、同一条件下で7日間インキュベートされた、OEGJで処理された線虫において、死亡した線虫はほとんどおらず、より興味深いことに、多くの若齢線虫が観察された(図1:OEGJ−7)。さらに、27℃でのインキュベーションの14日後、未処理の対照群の全てのN2線虫が死亡した(図1:Ct−14)。対照的に、OEGJで処理された群において、成体線虫の多くが死亡したが、かなり多くの若齢線虫が依然として生存していることが観察された(図1:OEGJ−14)。これらの結果は、厳しい致死温度環境は、N2線虫を不妊にするだけでなく、全ての線虫を2週以内に殺滅することを示した。一方、OEGJ処理は、線虫の生存能力をそれらの致死温度環境で増進するだけでなく、それらの子孫を出生する能力を保持した。
【0085】
OEGJは、C. elegansにおける平均健康寿命を増加させた。OEGJが細胞生存関連遺伝子のアップレギュレーションを刺激し、線虫における生存能力を増進したかどうかをする試験するために、野生型N2のC.elegans、daf−2及びdaf−16変異体を、それぞれ、漂白することによって同調化し、寒天プレート上で2つの群に分割した。daf−2遺伝子は、線虫C. elegansにおけるインスリン様受容体をコード化する。daf−2における突然変異は、線虫の生存期間を倍にすることが示されている(Jennie B. et al., 1995; J. Apfeld & C. Kenyon, 1998)。その遺伝子は、生殖発生、老化、酸化ストレスへの抵抗性、熱耐性、低酸素への抵抗性、さらには細菌性病原体への抵抗性も調整することが知られている(M.S Gami & C.A. Wolkow, 2006)。daf−2は、線虫における唯一のインスリン/IGF−1様受容体である。インスリン/IGF−1様シグナル伝達は、線虫からヒトまで保存されている。daf−2は、リン酸化反応系を介して、フォークヘッド転写因子daf−16を負に調整するように作用する。研究では、daf−16が、daf−2依存性の生存期間延長及び耐久型形成に必要とされることを明らかとなった。リン酸化されない場合、daf−16は活発であり、核内に存在する。daf−16は、C. elegansの老化の速度及び平均生存期間、並びにその近縁の進化的同類の判断の際に重要な役割を担う(S.T. Henderson & T.E. Johnson, 2001)。daf−16は、ヒトを含む、多くの他の動物において認められる。daf−16は、老化、免疫、及びストレスへの反応に関与する生物学的過程を導出する、遺伝子群の一部である。
【0086】
15℃の同調させたN2のL1、daf−2及びdaf−16線虫(約500匹の線虫/皿)を、温度を±0.5℃に維持する強制空気インキュベータにおいて、大腸菌株OP50を線条接種したNG寒天プレート上で、20℃で成長させた。試験群の線虫をOEGJ(150μg/ml、一皿上に600μlの薬剤溶液を各々フード内で空気乾燥)で処理し、対照群の線虫を同等の溶媒で処理した。別の例外的実験も、daf−2のL1を20℃で同調させ、それらを20℃で成長させることであった。
【0087】
図2に示されるように、ほぼ全てのチェックポイントで、OEGJで処理された群において、未処理の群の線虫と比較して、より多くの生存する線虫が観察された。未処理群の全ての線虫が、38日目で死亡した。しかしながら、OEGJで処理された群の線虫のうちの約5%は、依然として生存していた(図2)。OEGJで処理された群の残りの線虫は、42日目で死亡し、平均生存期間は、未処理の対照線虫よりも約10%長かった。
【0088】
野生型線虫よりもほぼ倍の生存期間を有する、daf−2変異体C. elegansの生存期間に対するOEGJ処理の効果を試験するために、daf−2線虫をOEGJで試験した。ほぼ全ての観察ポイントで、OEGJで処理された群において、未処理群の線虫と比較して、より多くの生きた線虫が認められたことが示された(図3)。未処理の対照群では、約5%の線虫が、56日目で生存したままであったが、OEGJで処理された群の線虫のうちの約10%は生存していた(図3)。
【0089】
有意に短い生存期間を有する線虫に対するOEGJ処理の効果をさらに試験するために、daf−16変異体C. elegansを使用した。未処理の対照群における約77%の線虫が、12日目に死亡したことが認められた(図4)。比較すると、OEGJで処理された群の約50%の線虫が、12日目に生存していることが認められた(図4)。未処理群において、OEGJで処理された群よりも約27%多い線虫が死亡し、健康寿命が、OEGJ処理によって有意に増加されることを示す。
【0090】
異なる条件におけるdaf−2 C. elegansの生存期間に対するOEGJ処理の効果をなおさらに試験するために、daf−2線虫を20℃で同調させ、かつ成長させた。OEGJで処理された群における線虫のうちの約58%は、21日目に生存したままであったことが認められた(図5)。比較すると、未処理の対照群における線虫のうちの約58%は、21日目に死亡した(図5)。全てのチェックポイントで、OEGJで処理された群において、約5〜15%多い線虫が生存したままであり、増加された健康寿命及び生存期間を示す。
【0091】
実施例4−OEGJ処理は、マウスにおいて、長寿を誘導し、テロメラーゼの活性を増加させた。
クンミン(KM)マウスの生存期間は、通常の給餌では、通常582.5±177.73日である。KMマウス(n=16)を、無作為に2つの群に分割した。試験群のマウス(n=9、6ヶ月齢)に、OEGJ(それらの飼料に200mg/kg/毎日)を2ヶ月間与えた。6ヶ月齢の対照群のマウス(n=7)に、スクロース(それらの飼料に200mg/kg/毎日)を同一期間与えた。次いで、マウスを、12時間の明暗サイクルでの環境制御された条件に収容した。全ての動物には、自由に、標準的な齧歯類ペレット飼料及び水を与えた。
【0092】
TERT(テロメラーゼ逆転写酵素)は、テロメラーゼの触媒サブユニットである。TaqMan(登録商標)蛍光法に基づくRT−PCRを使用して、あらゆるmTERT(マウスTERT)mRNAコピー数を定量化した。PCRの延長期の間、プローブを標的配列にハイブリダイズさせ、次いで、Taqポリメラーゼの5’から3’エクソヌクレアーゼ活性により開裂させた。レポータの蛍光シグナルの増加は、特異的PCR生成物の量に比例しており、極めて正確かつ再現可能な定量化を提供する。蛍光閾値に到達するPCRサイクルの数は、サイクル閾値(Ct)であった。各試料に対するCt値は、入力cDNAの初期量の対数に比例した。標準曲線上に不明な試料のCt値をプロットすることによって、試料内の標的配列の量が算出され得る。RNA入力、RNAの質、及び逆転写酵素の効率における試料間相違に対して、mTERTのmRNA発現を正規化するために、ハウスキーピング遺伝子GAPDHを増幅した。各標準曲線により、GAPDH及びmTERTのコピー数をそれぞれ測定した。mTERT及びGAPDHのコピー数間の比率は、各試料に対する正規化されたmTERTを表し、他の試料のそれと比較され得る(Artandi SE et al.2000)。
【0093】
OEGJで処理された群からの4匹のマウス、及び未処理の対照群からの2匹のマウスを、OEGJの投与の2ヶ月後に殺処理した。全てのRNAは、Trizol(Invitrogen)を使用してそれぞれ心臓から調製した。実験のための正の対照として、GC1細胞株を使用した。製造元の説明書に従って、Superscript II(Invitrogen)を用いて、ランダムヘキサマーで逆転写を行った。リアルタイムPCRは、2つの希釈物に対して、2通りに、BioRad MJ Mini Real Time PCR上で行われた。各mRNA試料に関し、Tert発現は、GAPDHのmRNA含有量によって補正された。プログラムは、50℃で2分の初期インキュベーション、その後、95℃で10分、そして95℃で15秒、68℃で2分15秒、95℃で15秒、63℃で20秒、95℃で15秒の40サイクルであった。各サイクルにおいて、生成物の融点を測定した。PCRでは、Tert遺伝子に対して特異的な一組のプライマを採用した。
【0094】
結果は、18s及びGAPDH内在性対照の陽性シグナルが、全ての試料において観察されたことを示した。mTERTの陽性シグナルが、4つ全てのOEGJで処理された心臓試料及びGC1細胞において観察された。未処理の対照心臓試料においては、mTERT発現は、非常に低い、又はほとんど無かった。4つ全ての処理された試料は、未処理の対照試料よりも約24.8-13.27倍高いmTERT発現を示した(図6)。この結果の表示は、OEGJ処理によるTERT発現の制御された誘導の可能性を提供した。
【0095】
細胞生存遺伝子及びTERTの増進された発現が、延長された生存期間に翻訳されるかどうかを試験するために、我々は、上記のOEGJで処理されたマウスを用いて実験を継続した。処理されたマウスの活量はより活発であり、有意により健康であると思われたことが認められた。処理されたマウスの生命を脅かすストレスへの耐力もまた、未処理の対照動物のそれと比較して、有意に増進された。したがって、5匹の残りのOEGJで処理されたマウスの平均生存期間は、平均で763±108日であった。一方、残りの5匹の未処理のマウスの生存期間は、平均で610±158日であった。要約すると、OEGJで処理されたマウスは、未処理の対照よりも17〜25%長い生存期間を示した(図6)。
【0096】
実施例5−老化促進マウスにおける老化関連疾患のOEGJによって誘導される改善。
老化促進マウス(SAM)株は、老化促進及び老化関連疾患の新規のマウスモデルとして、京都大学老化生物学分野において構築された。本研究においては、短命のマウス(SAMP10)が使用された。SAMP10マウスは、促進老化を示す。SAMP10における最も特徴的な老化関連の変化は、特に、大脳の前頭部、前頭、頭頂、側頭、及び後頭大脳皮質における、脳萎縮である。これらの領域における大型ニューロンは、典型的に、老化したSAMP10において収縮する、及び/又は消滅する(Shimada et al, 1992)。全てのこれらの特徴的な病理学的表現型は、老齢のヒトにおいてしばしば観察される、老化関連疾患に類似している。SAMP10マウスは、333日の平均生存期間を有する(Takeda et al, 1991)。
【0097】
SAMP10マウスが4ヶ月齢である時、試験群におけるマウス(n=16)を、4週間毎日、胃内投与によって、OEGJ(H2O懸濁液で400mg/kg/日)で治療した。未処理の対照群におけるマウス(n=16)は、同等に水で投与した。治療終了の1ヶ月後、マウスが6ヶ月齢の時、Morris水迷路(1.8M)を使用して、両群の全てのマウスにおける空間学習及び記憶能力を評価した。動物を、1日5回、4日間訓練した。典型的に、プラットフォームを見つけ出す際に費やされた時間を使用して、プラットフォームの位置に関する、マウスの学習能力及び記憶の強度を評価した。逃避潜時としても知られる、隠れたプラットフォームを見つけ出す前に費やされた時間を記録した。OEGJで処理されたSAMP10マウスは、未処理のマウスと比較して、有意に短い逃避潜時を呈したことが示された(P<0.001).
【0098】
4週間のOEGJ処理の後、実験マウスの脳血流(CBF)を、東芝製超音波スキャナの12MHzリニアプローブで検討した。OEGJの血管拡張効果の可能性を除外するために、4週間のOEGJ処理の後、OEGJ処理の2週間後にCBFを測定した。3回の反復測定の平均を、CBFとして採用した。OEGJで処理されたマウスにおけるCBFは、未処理の対照マウスにおけるCBFよりも平均で15%高いことが認められた。興味深いことに、OEGJマウスにおける脳の正味質量は、マウスが水迷路試験後に殺処理される時までに、未処理のマウスの脳の正味質量よりも平均で約15%重かった。さらに、未処理のマウスにおける血圧は、約135mmHgであり、これは、通常のマウスの血圧よりも約13%高かった。相対的に、OEGJで処理されたSAMP10マウスの血圧は、未処理の対応物の血圧よりも約10%低かった。これらの結果は、脳への有意により多くの血流が達成され得るように、OEGJ処理が、細動脈又は微小血管の末梢抵抗が低減したマウスの脳における新たな側副血管形成を誘導したことを示唆する。
【0099】
OEGJで処理された動物における増加されたCBFに関する物理的基礎を確認するために、CBF測定後に殺処理された実験マウスからの脳を取り出し、ホルマリンに固定し、パラフィンに埋め込んだ。薄片(5μm)を各スライドから切断し、H&E染料で染色した。前頭葉の皮質内、及び海馬領域周辺の血管の数を計数することによって、血管密度を組織学切片上で測定した。各切片内の全ての血管を計数するために、前頭葉又は海馬内の6つの無作為な重複しない高倍率視野(HPF)(40×)を使用した。各HPFにおける血管の数を平均化し、HPF毎の血管の数として表した。血管の計数は、二人の調査員によって、目視によらない方法で行った。
【0100】
血管計数の結果は、未処理の対照マウスにおいて、血管の数が、前頭葉の皮質の領域で約68.6±16.3/HPFであり、海馬の領域周辺で46.8±13.2/HPFであることを示した(図7)。一方、OEGJで処理されたマウスにおいて、血管の数は、前頭葉の皮質領域で約83.8±12.9/HPFであり、海馬領域周辺で61.7±11.2/HPFである(図7)。
【0101】
脳における微小循環のOEGJ処理によって誘導される改善が、損傷した、又は死亡したニューロンを置き換えるように、神経の再生を生じるかどうかを調査するために、実験マウスから得られた脳の各スライドから薄片(5μm)を切り取り、Ki67に対する特異的抗体で免疫組織化学的に染色した。切片の顕微鏡検査において、OEGJ処理が、皮質及び海馬の領域における新たな血管の成長を促進させただけでなく、これらの領域における神経再生も誘導したことが認められた(図8)。一方、未処理の対照脳においては、脳における新たな側副血管の成長も、新たな神経細胞の再生も、同定されなかった(図8)。新たに再生されたニューロン様細胞を、Ki67に対して特異的な抗体で陽性染色し(図8)、それらが、新たに再生された神経細胞であることを示した。
【0102】
要約すると、これらの観察は、OEGJ治療が、SAMマウスの脳における新たな側副血管の大幅な成長を刺激して、改善されたCBFをもたらすだけでなく、前頭葉と海馬領域の皮質で神経再生を誘導した。これは、学習と認知能力、及び水迷路の探査試験で大幅にパフォーマンスを向上させるための物理的な基礎を担当することがある。要約すると、OEGJが、細胞が生存し、機能する、微小循環の再構成を刺激すること、及び損傷した、又は死亡した、ニューロン又は心筋細胞といった重要な細胞を、新たに再生されたニューロン又は心筋細胞と置き換えることによって、老化過程の進行を低減することができるか、さらには老化を逆行させることさえもできると思われる。したがって、本発明の組成物は、寿命及び生活の質を増進するために使用することができる。
【0103】
実施例6糖尿病
上述の論拠に基づき、糖尿病の治療のためにOEGJを使用することの可能性を、救援治療に基づき、糖尿病において試験した。59歳男性は、治療の1年前の痔の手術を受ける前に、最初に糖尿病と診断された。当時の男性の血糖値は、24.0mmol/Lであった。男性は、1週間インスリン治療を受け、糖尿病薬の服用を開始した(Diamicron 80mg、毎朝空腹状態下で2錠)。男性の投薬中の6ヶ月間の平均血糖値は、9.97mmol/Lであった。男性は、Daimicronと併用してOEGJの経口服用(1.8g/日)を開始し、男性のOEGJ治療の2ヶ月間の平均血糖値は、7.90mmol/Lに低下した。男性の平均血糖値は、男性が2ヶ月間、OEGJ治療を中断した後でさえ、同様の値(8.06mmol/L)を保持した。
【0104】
実施例7−炎症性疾病、創傷治癒、及び褥瘡
上述の治療効果に基づくと、OEGJは、慢性炎症性疾病、創傷、及び褥瘡を治療する際に有用であるはずである。したがって、我々は、救援治療に基づき、慢性炎症性疾病、創傷、及び褥瘡の治療のために、OEGJを使用することの可能性を試験した。
【0105】
上海出身の女性患者は、約2年前に複数回の脳発作(脳卒中)を起こした。女性が約8ヶ月前に別の脳発作を起こした後、女性は完全に言葉、及び全ての身体能力を喪失した。女性は、いかなる事象に対するいかなる積極的反応も喪失し、筋肉の硬直を伴った、完全な植物状態の患者と思われた。数ヶ月後、女性は、検査時、臀部に深い褥瘡(直径16〜18cm及び深さ10〜12cm)を発症していた。状況をさらに悪化させたものは、患者が多剤耐性黄色ブドウ球菌にも感染していたことである。人々は、女性がこの重篤な褥瘡及び感染から女性の生命を喪失することを心配した。死亡した、及び腐敗した組織の外科的壊死組織切除後、女性は、OEGJを投与された(経口投与、2グラム/日)。OEGJ投薬の1間週後、女性の褥瘡は、非常に素早く治癒し始めた。開いた創傷は、より小さくなり、次第に浅くなった。OEGJによる2ヶ月の治療は、女性の深い褥瘡を完全に治癒した。患者が薬物の服用を中止した時、女性の褥瘡の治癒の速度は、減速された。患者がOEGJ治療を再開した後、褥瘡の治癒の速度は、加速された。
【0106】
実施例8−眼疾患
上述の論拠に基づき、救援治療に基づき、患者において、OEGJが老化関連及び変性眼疾患を治療する際に有用であり得る可能性を試験した。
【0107】
80歳女性は、4年前に白内障の症状を示し始めた。女性の視力は悪化しており、眼鏡を用いても、テレビの画像がはっきりと見えなかった。女性は、1ヶ月間、経口投与によって、OEGJ(2g/日)を服用した。3ヶ月後、女性は、眼鏡なしでも困難なく、テレビを見ることができると主張した。また、女性は、雑誌及び本もよく読めた。
【0108】
78歳男性は、霧視を伴う、1年にわたる重篤な白内障と診断され、最終的に失明した。白内障手術の後、男性の視力はいくらか回復した。しかしながら、2週間後、再び、男性は完全に視力を喪失した。白内障手術の3ヶ月後、男性は、2ヶ月間、OEGJ(1.5g/日)で経口治療された。OEGJ治療後、男性は、個人をはっきりと識別することができ、歩行中、1人で歩くことができた。男性は、野菜畑で小さな物体(長さ3cm及び直径0.3)を識別することさえできた。
【0109】
48歳女性は、8年間以上、老眼により読書用眼鏡を着用していた。8ヶ月前、女性は、コンピュータ上の内容がはっきり見えるように、より度の強い読書用眼鏡を着用しなければならなかった。OEGJ(0.5g/日)の経口投与の1ヶ月後、女性は、眼鏡なしでもコンピュータ上の記事を読むことができた。
【0110】
48歳男性は、約4年前に老眼による視力問題を訴え始めた。読書用眼鏡なしでは、男性は、男性の身分証明書の詳細がはっきりと見えなかった。2ヶ月間のOEGJ(2g/日)の経口投与後、男性は、男性の読書用眼鏡なしで、男性の身分証明書を困難なく読むことができた。
【0111】
眼疾患に罹患する人々を治療する際の、OEGJの上述の複数の治療効果、及びOEGJの有望な効果に基づき、我々は、OEGJが、目の組織及び細胞の生存ミクロ微環境を大幅に改善する、老化による不十分な血液供給の実質的な改善を有意に促進することによって、その効果を発揮し得るということを提唱する。白内障の場合、目の血流を増加させることによって、OEGJは、水晶体上のタンパク質のクラスタ化を予防する、及び/又は減速させることに役立ち得、かつ水晶体上の既存のタンパク質クラスタを分解する際に有用であり得る。老眼の場合、ミクロ環境のOEGJによって誘導される改善は、水晶体の弾力性を保持するため、及び水晶体の屈曲及び強化に関与する毛様体筋の強度を増進するために、有益であり得る。この概念に一致して、OEGJは、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、及び眼虚血症候群といった、他の眼疾患を治療するためにも有用であり得る。
【0112】
特定の実施形態を例解し、説明してきたが、以下の請求項に定義されるとおり、当該技術分野における通常の技術に従って、その広範な態様において、本技術から逸脱することなく、改変及び修正を行うことができることを理解されたい。
【0113】
本開示は、本出願において説明される特定の実施形態に関して限定されない。当業者には明らかであるように、その精神及び範囲を逸脱することなく、多くの修正及び変更を行うことができる。本明細書において列挙される方法及び装置に加えて、本開示の範囲内にある機能的に同等の方法及び装置は、前述の説明から、当業者には明らかであろう。かかる修正及び変更は、添付の請求項の範囲内であることが意図される。本開示は、添付の請求項が権利付与される全ての範囲の同等物とともに、かかる請求項の用語によってのみ限定される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物系に限定されず、これらは、当然のことながら変更することができることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定されることを意図したものではないこともまた理解されたい。
【0114】
加えて、本開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、本開示もそれによって、マーカッシュ群の個々のメンバ又は下位メンバに関して説明されることを認識するであろう。
【0115】
当業者によって理解されるように、あらゆる目的のために、特に書面による説明を提供する観点から、本明細書において開示される全ての範囲は、あらゆる可能な部分的範囲、及びその部分的範囲の組み合わせも含む。いずれの列記された範囲も、同一の範囲が、少なくとも同等の1/2、1/3、1/4、1/5、1/10等に分解されることを十分に説明及び可能にするものとして、容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書において論述される各範囲は、下1/3、中1/3、上1/3等に容易に分割することができる。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「を上回る」、「未満」等といった全ての言語は、記載される数を含み、論述される部分的範囲に実質的に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個体メンバを含む。このため、例えば、1〜3単位を有する基は、1、2、又は3単位を有する基を指す。同様に、1〜5単位を有する基は、1、2、3、4、又は5単位を有する基等を指す。
【0116】
本明細書において、種々の態様及び実施形態を開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書において開示される種々の態様及び実施形態は、例解のためのものに過ぎず、限定することを意図せず、真の範囲及び精神は、以下の請求項によって示される。

参考文献

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
寿命、生存能力、及び生活の質の増進を必要とする対象において、寿命、生存能力、及び生活の質を増進するための方法であって、前記方法は、前記対象に有効量のダイコンソウの有機抽出物(OEGJ)を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記抽出物が、テロメラーゼ並びにAkt1、Bcl2、EGF、VEGF、及びNFкBから成る群より選択される1つ以上の細胞生存因子の発現を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出物が、前記抽出物を投与されていない対象と比較して、生存期間又は生活の質を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機抽出物がエタノール抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機抽出物がメタノール抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対象がヒトである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出物が経口投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出物が、皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注入によって投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出物が、0.01mg/kg/日から2000mg/kg/日の量で投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量の前記抽出物が、前記抽出物と薬学的に許容可能な担体とを含む製剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有効量のダイコンソウの有機抽出物と薬学的に許容可能な担体とを含む、対象において、寿命、生存能力、及び生活の質を増進するための薬学的組成物。
【請求項12】
前記有機抽出物がエタノール抽出物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機抽出物がメタノール抽出物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
糖尿病の予防又は治療を必要とする対象において、糖尿病を予防又は治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に有効量のダイコンソウの有機抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
眼疾病若しくは眼の状態の予防又は治療を必要とする対象において、眼疾病若しくは眼の状態を予防又は治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に有効量のダイコンソウの有機抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
炎症の治療を必要とする対象において、炎症を治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に有効量のダイコンソウの有機抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項17】
創傷を有する対象において、創傷の治癒を促進するための方法であって、前記方法が、前記対象に有効量のダイコンソウの有機抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記創傷が褥瘡である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−529488(P2012−529488A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514554(P2012−514554)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001426
【国際公開番号】WO2010/143065
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300536)ジェネレックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】