説明

生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製

糖から1,3−プロパンジオールを合成するために遺伝子組み換えされた培養大腸菌の発酵培地からの1,3−プロパンジオールの精製方法が提供される。基本的な方法は、好ましくは蒸留手順中に生成物の化学的還元を含んで、発酵培地生成物流れの濾過、イオン交換および蒸留を伴う。また、1,3−プロパンジオールの高度に精製された組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1,3−プロパンジオールを合成することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法に関する。さらに、本発明は実質的に精製された1,3−プロパンジオールを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール1,3−プロパンジオール(PDO)は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルおよび環状化合物をはじめとする様々なポリマーの生産に有用なモノマーである。ポリマーは究極的には繊維、フィルム、コーティング、複合材料、溶剤、不凍液、コポリエステルおよび他の付加価値用途に使用される。
【0003】
1,3−プロパンジオールは合成でまたは発酵によって生産されてもよい。1,3−プロパンジオールを生み出すための様々な化学ルートが公知である。例えば、1,3−プロパンジオールは、1)ホスフィン、水、一酸化炭素、水素および酸の存在下での触媒上の酸化エチレン、2)アクロレインの接触溶液相水和、引き続く還元、または3)一酸化炭素および水素の存在下での周期表のVIII族からの原子を有する触媒上で反応させられる炭化水素(グリセロール)から生み出されてもよい。
【0004】
発酵によって生物学的に生産される1,3−プロパンジオールは米国特許第5,686,276号明細書、同第6,358,716号明細書、および同第6,136,576号明細書においてをはじめとして公知であり、それらは、グルコースまたは他の糖のような安価な炭素源を使用して発酵中に1,3−プロパンジオールを合成することができる組み換え技術によって作られた細菌を用いる方法を開示している。
【0005】
1,3−プロパンジオールを生産するための合成および発酵ルートの両方とも、このモノマーから製造されたポリマーの品質を危うくし得る残留物質を生み出す。特に、発酵によって生産された1,3−プロパンジオールは、ポリオールで、そして究極的にはそれから製造されたポリマーで色および臭気態様に寄与する残留有機不純物を含有する。
【0006】
Fisherらは、国際公開第00/24918号パンフレットで、ポリオール生産微生物によって生み出された培養物からのポリオール製品の精製方法を開示している。該方法は、タンパク性物質の除去または不活性化と組み合わせて、微生物を殺すまたは分離することなしの微生物細胞分離を含む前処理操作を用いる。その次の精製工程は、イオン交換クロマトグラフィー、活性炭処理、蒸発濃縮、沈殿および結晶化をはじめとするさらなる処理と共に、フロス浮選または凝集、引き続く吸収/吸着のような方法を用いるタンパク性物質のさらなる除去または不活性化を含む。Fisher方法論の第一目標は、精製ポリオールが食品グレード製品での使用に好適であるようにタンパク性異物を無視できるレベルより下まで除去することにある。
【0007】
Georgeらは、米国特許第5,034,134号明細書で、エチレングリコール生成物流れを好適な半透膜と接触させることによる、エチレングリコール生成物流れからの不純物、特に脂肪族有機酸の分離方法を開示している。該方法の第一目標は、ポリエステルの製造に好適な精製エチルグリコールモノマーを製造するためにUV吸収分子およびUV吸収前駆体を除去することにある。
【0008】
逆浸透下で流体を半透膜と接触させることによる、不凍液、伝熱流体、解氷剤、滑剤、油圧油、冷却剤、溶剤および吸収剤のような作動流体からのモノエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールおよび1,3−プロパンジオールのような低級グリコールの再生方法がGeorgeら、米国特許第5,194,159号明細書に開示されている。
【0009】
Haasら、米国特許第5,334,778号明細書は、固定床または懸濁水素化触媒の存在下で3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから製造された1,3−プロパンジオールの生産方法であって、精製1,3−プロパンジオールの残留カルボニル含有率が500ppmより下であると開示されている方法を開示している。
【0010】
重金属成分、油および有機異物を除去するための多価アルコール水溶液の処理方法が米国特許第5,510,036号明細書、Woyciesjesらに開示されており、ここで、該方法は水溶液の一連のpH調節と様々な沈殿剤、凝集剤または凝固剤の添加とを含む。沈殿した異物は、濾過手段、場合により引き続きイオン交換工程を用いて水溶液から除去される。
【0011】
Haaら、米国特許第6,232,512 B1号明細書は、アルコール含有反応混合物中のアセタールまたはケタールの含有率の低減方法に関する。該方法は、約6.5〜7.0のpHでトリクル−ベッド反応器で、Pdおよび/またはRu活性炭触媒を用いる1,3−ジオキソ構造の環式アセタールまたはケタールを含有する反応混合物の水素化を含む。
【0012】
1,3−プロパンジオール−ベースのポリエステルの製造方法は、Kelseyら、米国特許第6,245,879 B1号明細書に開示されている。該方法は、テレフタル酸とモル過剰の1,3−プロパンジオールとを先ず重合させてポリトリメチレンテレフタレートを製造する工程を伴い、ここで、過剰の1,3−プロパンジオールは、pH調節およびさらなる蒸留によって反応の留出物から回収される。回収された1,3−プロパンジオールは次に、テレフタル酸とのさらなる反応のために元の重合反応流れにリサイクルされる。場合により、反応流れはさらに水素化ホウ素化合物で処理することができる。
【0013】
Andersonら、国際公開第01/25467A1号パンフレットは、エネルギー源、無機窒素源、リン酸塩およびビオチン、ならびにアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属から選択された少なくとも1つの金属を含有する発酵媒体を開示している。開示された媒体は、発酵法によるポリカルボン酸、ポリオールおよびポリヒドロキシ酸の合成をサポートすることにつながると述べられている。
【0014】
Sirkar,A.K.に付与された米国特許第4,380,678号明細書は、アルドースのポリオールへの変換の多段階法を開示している。該方法は先ず、pHをアルカリ性条件に調節しながら、高活性ニッケル触媒を用いる固定床反応でアルドースを接触水素化する。生じたアルジトールは次に、第2段階固定床反応で接触水素化分解される。反応生成物は分離工程で回収され、未変換の重質アルジトールは、さらなる水素化分解のために第2段階固定床ゾーンにリサイクルすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
かかる生物学的方法によって得ることができる十分な純度のモノマーが有用な高品質ポリマーを製造できるように、高度に精製された生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを発酵培地から効率良く、かつ、経済的に得る方法を求める要求が当該技術に存在する。布、および他の用途向けに使用されるポリマーへの重合を含むジオールのある種の最終使用のために、生物源または化学源をはじめとする任意の源から誘導された1,3−プロパンジオールの高度に精製された組成物を得るさらなる必要性が当該技術に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、a)発酵培地を濾過にかける工程と、b)工程aの生成物を、アニオンおよびカチオン分子が除去されるイオン交換精製にかける工程と、c)工程bの生成物を少なくとも2つの蒸留塔を含む蒸留手順にかける工程であって、前記蒸留塔の1つが1,3−プロパンジオールの沸点を超える沸点を有する分子を除去し、前記蒸留塔の他が1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する分子を除去する工程とを含む方法に関する。
【0017】
好ましい態様では、本発明はさらに、1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、a)発酵培地を、有機体の細胞バイオマスが発酵培地から除去されるセラミック交差流精密濾過にかける工程と、b)工程aの生成物を、約5000ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去される限外濾過にかける工程と、c)工程bの生成物を、約200ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去される、渦巻形ポリマー膜を用いるナノ濾過にかける工程と、d)工程cの生成物を、各シリーズが工程cの生成物を強酸性カチオン交換、引き続き弱塩基性アニオン交換樹脂に曝すことを含む、2シリーズのイオン交換手順にかける工程と、e)工程dの生成物中の水の量を蒸発によって減らす工程と、f)工程eの生成物を、強塩基性アニオン交換樹脂と混合された強いカチオン交換樹脂を含む樹脂組成物に生成物を曝すことによって混合イオン交換手順にかける工程と、g)工程fの生成物を、1,3−プロパンジオールの沸点を超える沸点を有する化合物が1つの蒸留塔で除去され、1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する化合物が他の蒸留塔で除去される一連の2回の蒸留にかける工程と、h)工程gの生成物を水素化反応にかける工程と、i)工程hの生成物を、1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点を超える沸点を有する化合物が除去され、もう1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する化合物が除去される一連の2回の蒸留にかける工程とを含む方法に関する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、組成物中約400ppm未満、好ましくは約300ppm未満、最も好ましくは約150ppm未満の全有機不純物の濃度を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、次の特性の少なくとも1つの有する1,3−プロパンジオールを含む組成物に関する:1)220nmで約0.200未満の、および250nmで約0.075未満の、および275nmで約0.075未満の紫外吸収、または2)約0.15未満のL***「b*」色値および275nmで約0.075未満の吸光度を有する組成物、または3)約10ppm未満の過酸化物組成、または4)約400ppm未満の全有機不純物の濃度。
【0020】
本発明のさらなる態様は、組成物中約400ppm未満、好ましくは300ppm未満、最も好ましくは約150ppm未満の全有機不純物の濃度を有する1,3−プロパンジオールを含む組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本開示内に引用されるすべての参考文献は全体を参照により本明細書に援用される。
【0022】
本発明の態様は、精製された生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを、1,3−プロパンジオールを合成することができる有機体の発酵培地から得るための方法を提供する。本方法は多くの工程を含み、その幾つかは順次実施されなければならず、かつ、その幾つかは変わる順番で実施されてもよい。本出願で用いられる用語は次の定義に合致するものとする。
【0023】
用語1,3−プロパンジオール、1,3−プロパン ジオール、3G、プロパンジオール、ポリオール、およびPDOはすべて本開示内では同義的に用いられる。
【0024】
「実質的に精製された」は、本発明の方法によって製造される、生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを記載するために出願人らによって用いられるところでは、次の特性の少なくとも1つを有する1,3−プロパンジオールを含む組成物を意味する:1)220nmで約0.200未満の、および250nmで約0.075未満の、および275nmで約0.075未満の紫外吸収、または2)約0.15未満のL***「b*」色値および270nmで約0.075未満の吸光度を有する組成物、または3)約10ppm未満の過酸化物組成、または4)約400ppm未満の全有機不純物の濃度。
【0025】
「生物学的に生産された」は、1,3−プロパンジオールが、特に細菌、酵母、真菌類および他の微生物の菌株をはじめとする、1つもしくはそれ以上の生体の種または菌株によって合成されることを意味する。本発明の精製方法は、例えば、米国特許第5,686,276号明細書に開示されているように、出願人らによって以前に開示された遺伝子組み換え大腸菌(Escherichia coli(E.coli))によって生み出された発酵培地の使用をベースとして実証されてきた。しかしながら、1,3−プロパンジオールを生物学的に生産するために他の単一有機体、または有機体の組合せが開発できるであろうこと、および本明細書に開示される方法がかかる有機体の発酵培地中へ生産された1,3−プロパンジオールを効果的に実質的に精製するであろうことが考えられる。
【0026】
出願人らによって本明細書に開示される精製方法は、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールおよびビスフェノールAをはじめとする、1,3−プロパンジオール以外のグリコールを効果的に精製できることがさらに考えられる。
【0027】
「発酵」は、バイオ触媒の使用によって生成物への基質と他の栄養物との反応を触媒するシステムを意味する。バイオ触媒は、酵素的に活性である完全有機体、単離酵素、またはそれらの組合せもしくは成分であり得る。「バイオ触媒」は、生成物への基質と他の栄養物との化学反応を開始するまたはその速度を修正する。
【0028】
「b*」値は、CIE L***測定ASTM D6290によって定義されるような分光光度的に測定される「黄青測定値」である。
【0029】
特に明記しない限り、すべての百分率、部、比などは重量による。商標は大文字で示される。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられる時、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲上限または好ましい値と任意の範囲下限または好ましい値との任意のペアから形成される全範囲を具体的に開示するとして理解されるべきである。
【0030】
精製プロセスの一般的説明
一般的な本発明方法は、1,3−プロパンジオールを商業的に存続できるレベルで合成することができる有機体の発酵培地からのこの化合物の精製に関する。本発明を開示する目的のために、出願人らは、出願人らによって開発され以前に開示された遺伝子組み換え大腸菌を用いるプロパンジオールへのグルコースの発酵を記載するであろう。
【0031】
一般的な発酵法は、例えば、商業コーン工場から入手可能な部分加水分解コーンスターチのような、任意の数の商業的に入手可能な炭水化物基質を利用することができる。遺伝子組み換え大腸菌は、成長、代謝エネルギーおよび1,3−プロパンジオールの生産のためにこの基質を代謝することができる。発酵方法論は当該技術で周知であり、バッチ式、連続または半連続様式で実施することができる。最終サイクル発酵内容物は、微生物バイオマスの除去およびジオール生成物のさらなる精製の前に微生物を殺すために外部熱交換器で場合により加熱される。
【0032】
出願人らの一般的方法の好ましいバージョンは下に記載される:
1.濾過
濾過は、細胞バイオマス、微粒子および高分子量異物を発酵媒体から除去するための、出願人らの方法で用いられる最初の工程である。濾過の多数の方法がユーザーによって利用され得る。出願人らによって採用される好ましい方法は、次の通り、3工程濾過手順を利用する。
【0033】
材料を先ず、例えば、セラミックエレメントを用いて精密濾過してバイオマスを除去することができる。
【0034】
精密濾過された培地を次に、約5000ダルトン(Dalton)を超える分子量を有する化合物を除去する限外濾過工程にかけることができる。
【0035】
限外濾過された培地を次に、約200〜400ダルトンを超える化合物、例えば、高分子量糖および塩を除去するために膜エレメントを利用するナノ濾過システムにさらにかけることができる。
【0036】
上記の濾過からの洗浄された保留物は乾燥し、埋め立てることができる。
【0037】
2.イオン交換
プロパンジオールと他の発酵副生成物とを含有する濾過培地は次に、好ましくは、一連の別個のイオン交換精製工程を用いるイオン交換精製にかけられる。先ず、例えば、培地は強酸性カチオン交換樹脂に曝され、引き続き弱塩基性アニオン交換樹脂に曝される。このシリーズは好ましくは1度だけ繰り返される。
【0038】
好ましい実施形態では、培地は次に場合により、培地中の水の量を約25%未満まで減らす目的のために蒸発工程にかけられる。
【0039】
培地は次に、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを含む混合樹脂組成物を用いる混合イオン交換手順に曝すことができる。
【0040】
3.蒸留
次に、精製法は、1,3−プロパンジオールの沸点より高いおよびそれ未満の沸点を有する汚染物質を除去するために行われる。例えば、4つの塔を用いる好ましい蒸留法を用いることができる。先ず、蒸留塔は追加の水を除去し、オーバーヘッド水流れは廃棄処分され、塔の塔底液を第2蒸留塔へ供給することができ、そこで重質不純物、主としてグリセロールおよび残留糖が除去される。
【0041】
本発明の特に好ましい一実施形態では、この第2塔からのオーバーヘッドは次に場合により、沸点の近い不純物をその後の蒸留塔で分離することができる化合物へ変換する、例えば水素化反応器による化学的還元にかけることができる。さらに、ジオールの最終用途にとって問題のある特性を持った有機不純物はより問題の少ない化学種へ還元される。
【0042】
第3蒸留塔は次に軽質不純物オーバーヘッドを除去することができ、それからの塔底液は最終の第4塔に送られ、そこで精製製品が貯蔵のためにオーバーヘッドで取り出される。この第4塔からの塔底液は場合により精製系統の第2塔にリサイクルすることができる。
【0043】
4つの全蒸留塔は、望ましくない反応および生成物分解を最小限にするべく運転温度を下げるために減圧下で運転することができる。
【0044】
最終蒸留塔の生成物は精製1,3−プロパンジオールを含むであろう。
【0045】
これらの工程のそれぞれは、今、下でさらに具体的に説明されるであろう。
【0046】
精密濾過
発酵培地からの1,3−プロパンジオールの分離では、発酵原料からのバイオマスを除去することが先ず望ましい。細胞バイオマスのような微粒子物質および液体媒体からの微粒子物質を除去するために幾つかの周知の方法、例えば遠心分離または濾過手順の変形が当該技術で公知である。好ましい第1工程は、精密濾過、例えば、セラミックエレメントを用いる交差流精密濾過である。セラミックエレメント精密濾過は、発酵培地からのバイオマス分離をはじめとする、多数の商業規模用途を持った定評のある技術である。セラミックエレメント交差流精密濾過は、商業セットで多数の特有の利点を提供する。
【0047】
好ましい精密濾過システムは、好ましくはステンレススチール・ハウジングに収納されているセラミックエレメントよりなる。エレメントは、幾つかの膜層で被覆されている粗い多孔性のセラミック支持体よりなる。実際の濾過を成し遂げる好ましい最終膜層は、セラミックエレメント中のチャネルの表面に施されている薄いセラミック層(約0.5〜2.0ミクロン厚さ)である。これらの膜は、例えば、Membraflow Corporation、独国Aalenに本部を置く企業から商業的に入手可能である。膜支持体は、高度に透過性であり、かつ、非常に強いマクロ多孔性構造のアルファ・アルミナよりなる。支持体は、濾過されるべき液体がそれを通って高速で流れる平行のチャネルを有する。濾液、すなわち透過液は、それらのチャネルの表層である膜を通って流れる。透過液は次に支持体を通って、エレメントを適所に保持するハウジング中へ流れる。それはハウジングからヘッダーシステム中へ集められ、収集タンク中へ流れ込む。場合により、濾別される固形分(保留物)を含有する流れは、チャネルからヘッダー中へ通過し、そこで、それは供給物と混合され、リサイクルすることができる。
【0048】
精密濾過フラックスに対する温度の影響は重要であることが分かった。10°Fほどに小さい差がシステム・フラックス速度に影響を及ぼし、より高い温度はフラックスを増加させる。温度は165°F以上に維持されるべきである。上限最大値は装置の限界および培地への色の寄与に依存する。
【0049】
製造業者によって推奨されるように、およびユーザーの個々のプロセス・パラメーターに従って精密濾過フィルターをきれいにすることが必要であろう。
【0050】
限外濾過
バイオマスおよび細胞デブリの除去の後で、および濾液のナノ濾過前に中間濾過工程が望ましいかもしれない。この工程の目的は、ナノ濾過工程が効率良く、かつ、効果的であるように、かなり高分子量の異物を除去することにある。多くの中間濾過方法が利用可能であるが、出願人らによって選択された好ましいシステムの限外濾過は、おおよそ60psiの圧力下で、おおよそ5000ダルトンの分子量カットオフの膜濾過を含む。
【0051】
ナノ濾過
発酵培地の精密濾過および限外濾過が完了した時、培地は本質的に不溶性物質なしである。さらなる精製および蒸留の前に実用的である限り多くの不純物を除去することがナノ濾過工程の意図である。この時点での主な不純物は、残留する糖類、タンパク質、媒体塩、ならびに有機酸のアンモニア塩、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、およびUV吸収体をはじめとする発酵によって生み出された成分である。これらの不純物の大部分を除去するための出願人らの好ましい方法は、渦巻形膜を用いるナノ濾過である。出願人らの好ましいナノ濾過は、成分を分離するためのその方法として強く帯電した分子をも排除するサイズ選択性ポリマー膜を使用する。今の有機体での出願人らのデータに基づき、残留する糖類およびタンパク質のほぼ100%がナノ濾過透過液から除去され得るし、460nm(可視域)でのUV吸収体は膜によって93%排除され、イオン成分は、二価カチオンが90%排除され、そして弱い有機酸がおおよそ33%排除されて全体で40〜60%排除され得る。正味電荷がほとんどないかまたは何もない、より小さい分子量成分(プロパンジオールおよびグリセロールのような)は、膜を完全に通過する。これらの分離を成し遂げるためには、膜間圧力差は、塩濃度の差によって加えられる浸透圧より大きくなければならない。出願人らは、この圧力差は200psi〜600psiの範囲であることができ、より高い圧力はより高いフラックス速度を与えるが、通常より速い膜汚れをもたらすことを見いだした。
【0052】
出願人らによって好まれるポリマー膜は、操作性能の点で正および負の面の両方を有する。正の面を見ると、膜は損傷なくpHの大きな変動に対処することができる。しかしながら、分子量カットオフ(それ以上の分子が排除される平均サイズ)がpHと共に変化するであろうことは言及されるべきである。生成物流れがより酸性であればあるほど、カットオフは小さくなる。別の正の側面は、膜がセラミックに比べて比較的安価であることである。これは、それらのより短い寿命(6ヶ月対5〜10年)によって幾分相殺される。ポリマー膜についての温度上限は、150°Fの典型的な上限のセラミックエレメントのそれよりかなり下である。この上限は製造業者に依存し、より低いものであり得る。ポリマー膜は、漂白剤のような塩化物または他の酸化剤に曝らされることはできない。さらに、膜は、鉄のような溶解した金属から不可逆な膜汚れを受ける。膜汚れは、鉄がプロセス流れよりもむしろ洗浄水中に存在する時に、はるかにより一般的である。
【0053】
エレメントは、例えば、Osmotics Desalから商業的に入手可能である。好ましくは、本工程で使用されるエレメントはおおよそ200〜400ダルトンの分子量カットオフを有する。
【0054】
イオン交換
濾過工程の後、培地中の主な残留する非プロパンジオール成分はグリセロール、1,2,4−ブタントリオール、弱いイオン、およびUV吸収体である。イオン交換は、これらの異物をさらに除去するために出願人らの発明で用いられる次の工程である。幾つかの一般的イオン交換方法論が精製の技術で周知である。イオンおよびUV吸収体を除去するために出願人らによって用いられる好ましい技術は、スチレン−ジビニルベンゼンベースの樹脂を用いるイオン交換である。出願人らは、塩の除去が熱応力にさらされた時に製品の色安定性を高めると考える。
【0055】
蒸留前に実用的である限り多くの不純物をナノ濾過された培地から除去することがイオン交換法の意図である。主な標的不純物は、ナノ濾過によって除去されなかった弱いイオンとできる限り多くの残留するUV吸収体とである。これを成し遂げるために、ビーズの表面に結合した水素を培地中のカチオンと、水酸化イオンを培地中のアニオンと交換するイオン交換樹脂が用いられる。これは、水素および水酸化イオンが、培地中のイオンのより強い電荷を好む樹脂によって非常に弱く保持されているために起こる。樹脂のイオン交換容量に加えて、樹脂の孔は、あるサイズ範囲の分子が吸収され、保持されることを可能にする。ナノ濾過後の培地中に存在するUV吸収体のほとんどがこの範囲に入る。
【0056】
当該技術で周知であるように、いったん樹脂上の利用可能なサイトすべてが交換されたイオンを有すると、樹脂は使い果たされ、「再生され」なければならない。これは、カチオン床を通して酸を、そしてアニオン床を通して苛性アルカリをポンプ送液することによって行われる。酸中の高濃度の水素イオンは、より高い電荷イオンに対する引力を圧倒し、それらを解放させる。これらのカチオンは酸アニオン(このケースでは塩化物)の塩として放出される。同じことがアニオン樹脂についても真実であり、培地アニオンを水酸化物で置換し、それらをナトリウム塩として放出する。交換サイトの再活性化に加えて、樹脂によって吸収された分子は再生剤によって置換され、塩廃棄物と共に放出される。定期的に、樹脂は、吸収された成分をパージするのを助けるためにクロス−再生によって膨張させられる。クロス−再生は、通常の再生の前に化学薬品を逆にすること(カチオンに対して苛性アルカリおよびアニオンに対して酸)によって行われる。
【0057】
樹脂は、多くのサイトが不可逆的に汚されて容量を許容限界より下に下げるようになるまで、コンスタントに循環させることができる。使い尽くされた樹脂は新樹脂と置換され、サイクルは再開される。樹脂寿命はしばしば、個々の適用によって変化するサイクル数の観点から記載される。ユーザー仕様は、容易に商業的に入手可能である樹脂に添付されるであろう。
【0058】
プロパンジオール精製を成し遂げることが分かった最も有効な、コスト重視の方法には、次の順序:強酸性カチオン(SAC)、弱塩基性アニオン(WBA)、強酸性カチオン(SAC)、弱塩基性アニオン(WBA)で配置構成された一連のイオン交換カラム、ならびに強酸性カチオンと強塩基性アニオン(SBA)との混合物よりなる「混床」(下記)が含まれる。これは、混床ポリッシュ(Mixed Bed Polish)のCACA配置と呼ばれる。蒸発工程(下記)は場合により培地を混床に加える前に起こる。
【0059】
好ましくは、第1「ペア」の強カチオン/弱アニオンカラムが大部分の不純物除去に最も効率良く作用するであろう。水素イオンがカチオン樹脂によって解放されるので、培地はそれがカチオンカラムを通過するにつれて非常に酸性になる。供給物のイオン負荷が本発明者らの発酵培地のように高い時、培地は再生条件によく似るほど十分に酸性になり、どの程度純粋に生成物が一カチオン通路から外へ出ることができるかを制限する。培地が第1アニオンカラムを通過するにつれて、解放された水酸化物がカチオンカラムからの水素イオンを中和して水を生成する。これは、それがそれほど迅速には再生条件によく似ないので、第1アニオンカラムにより多くの塩分解を行わせる。第1アニオンからの放出物は強塩基性のはずである。第1ペアの自己限定性のせいで、高度に純粋な生成物を得るためには第2ペアが好ましい。さらに、2つのペアを直列に有することによって、それは第1ペアがその全容量を再生前に利用することを可能にする。第1ペアが使い果たされた時、供給は第2ペアへと切り替えられ、再生ペアがそのシリーズで次のものとして弁で調節される。
【0060】
蒸発
発酵からの1,3−プロパンジオールの精製に関して好ましい実施形態では、生成物流れは蒸留前に約90%水分から約20%水分へ濃縮される。コスト上の理由のために、この濃縮工程を最終イオン交換混床工程の前に行うことが特に好ましい。除去されるべき水は、発酵、精密濾過透析濾過、ナノ濾過透析濾過、イオン交換清浄化(sweeten off)、および上流システムの洗浄から組み込まれた任意の水に由来する。液体中の水含有率を減らす多くの方法が公知である。好ましい一技術は機械再圧縮(MR)エバポレーターである。
【0061】
出願人らは、蒸留への最良供給物の1つがUV吸光度および可視色プロフィールによって測定されるように低温蒸発によって生み出されることを学んだ。精製法の早期には、可視褐色が比較的高いレベルのUV吸光度と共に蒸発生成物中にあるであろう。蒸発真空システムでの改善は、より高い減圧でエバポレーター中の温度を下げることと蒸発時間の減少とによって460nmでの吸光度をゼロまで低くすることができる。
【0062】
商業的に有効な蒸発システムのデザインへの1つの鍵は、生成物が達成すると見越される最高温度である。出願人らのデータは、155°Fという最高温度が安全であり、たとえ長時間(24時間以下)維持されたとしても260nmでのUV吸光度を有意に高めないであろうことを示唆する。しかしながら、出願人らのデータはまた、かなりのUV吸光度が長時間にわたる190°Fという温度で生み出されることをも示唆する。
【0063】
時間−温度問題をさらに複雑にすることに、蒸発後の蒸留工程はかなりの長さの時間より高い温度(230〜300°F)でさえ動作する。蒸留供給物品質のいかなる改善も最終製品品質に重要ではない可能性がある。このように、蒸発装置のデザインは最終製品品質への正味影響に基づかなければならない。おおよそ190°Fというより高い温度限界が好ましいが、この値は、様々な最終製品品質規格を達成するためにユーザーによって変えることができる。
【0064】
機械再圧縮エバポレーターの原理は、大きなブロワーまたはファンを用いて(減圧下かわずかな圧力下かのいずれかの)フラッシュ分離器を出た蒸気を再圧縮することである。蒸気を再圧縮することによって、蒸気の温度は上昇する。このより熱い蒸気は次に、さらなる蒸発のための原動力としてスチームの代わりに使用される。システムは非常にエネルギー効率が良く、蒸発水のポンド当たり75BTUほどに低いエネルギー使用をしばしば達成する(組み合わされた馬力および予熱スチーム)。
【0065】
好ましいケースでは、真空システムが選択され、最終段階から離れて2段階凝縮器が用いられるであろう。第1凝縮器は、ボイルオフしたいかなるPDOも回収し、リサイクルするようにデザインされるであろう。第2凝縮器は残りの蒸気を凝縮させる。エバポレーターを離れた凝縮物からの熱は、熱回収熱交換器で回収されるか、または熱水が必要とされるところで使用されるであろう。
【0066】
混合イオン交換でのポリッシュ
発酵培地をイオン交換に、例えば上記のようにCACAシステムの4つのイオン交換カラムに、および場合により蒸発にかけた後、さらに、強塩基性アニオンにかけることが最高精製のために好ましい。このように、強塩基性混床ポリッシュカラムを追加することによって、出願人らは、低い運転コスト方法を維持しながら可能な限り最良な品質を得ている。混床カラムはその名称が暗示する通りである。カチオンおよびアニオン樹脂は、それらの個々の交換容量にマッチするような割合で一緒に混合される。樹脂を混合することによって、床を通って流れる生成物のpHはカラムの長さの全体にわたって中性のままである。これは最大交換を可能にするのみならず、それはまた極端なpHによって引き起こされる化学反応の可能性をも減らす。これらの反応は通常UV吸収体をもたらし、混床カラムは蒸発および蒸留前の最終ポリッシャーとしての機能を果たす。混床の再生は、樹脂が水での清浄化の後で化学薬品を導入する前に先ず分離されなければならないという点でユニークである。再生は好ましくは樹脂床に水を上向きに流してより軽いアニオン樹脂をカラムの最上部に追いやることによって行うことができる。いったん分離されると、苛性アルカリがカラムの最上部へ、そして酸が底部へポンプ送液される。廃棄塩流れはカラムの中間で一緒になり、中心ヘッダーによって抜き出される。樹脂は化学薬品と同じ方向にリンスされ、次にカラムの底部から空気をバブリングすることによって再混合される。その時カラムは再び生成物のために準備完了である。混床ポリッシュは、不純物を濃縮して除去の可能性を高めるために蒸発工程の後に好ましくは置くことができる。さらに、蒸発によって生み出されたUV吸収体は、蒸留前に樹脂によって部分的に除去することができる。
【0067】
イオン交換システムのサイジングは、2つの事柄、圧力降下および所望のサイクル時間に通常依存する。供給物流量および粘度が供給圧を標的限界(おおよそ50psig)より下に保つためにカラムに必要とされる断面積および許容床深さを決定するであろう。樹脂のサイクル時間は、適切な清浄化、再生、およびリンスに十分な時間を可能にしなければならない。生成物に依存して、水、生成物、および化学薬品がサイクルのそれぞれの工程中に樹脂ビーズ中へおよびその中から外へ移行するのに幾らかの時間を要する。これらのタイムリミットは樹脂製造業者によって明示されている。様々な仕様のイオン交換樹脂が多くの製造業者から商業的に入手可能である。
【0068】
蒸留
蒸留は出願人らの方法での最終工程である。蒸留技術の多くの変形および方法論が当該技術で周知である。出願人らの好ましいシステムは、生物学的に生産されたPDO法の発酵および中間分離工程からの部分精製生成物を精製するための4つの塔よりなる蒸留系統を含む。蒸留は、それらの沸点差によって不純物を除去することにより生成物を精製するために用いられる、十分に特徴づけられた、容易に利用可能な技術である。水、グリセロール、右旋性ブドウ糖、ならびに他の低沸点物および高沸点物をはじめとする、多くの不純物が蒸留系統前のPDO生成物供給物中に存在するであろう。これらの不純物の幾つかは、高温で分解しまたは反応し、重合した最終製品に色問題を引き起こし得る。蒸留は、より低い温度で生成物からのこれらの不純物の分離を可能にし、塔で起こる望ましくない反応を最小限にする。また、好ましい実施形態では、最高純度の1,3−プロパンジオールを生産するために、水素化のような化学的還元工程(下を参照されたい)が場合により最終蒸留塔の前に挿入される。出願人らの最も好ましいスキームには、化学的還元、好ましくは水素化が塔2と塔3との間で起こる状態で、4つの蒸留塔が含まれる。例えば、このスキームでは、塔2オーバーヘッドは水素化反応システムに送ることができ、そこで色不純物はNi/シリカ−アルミナ触媒上で水素と反応し、アルコールのような軽質不純物に変換される。これらの不純物は次に塔3オーバーヘッドとして精製系統から除去される。水素化で、ユーザーは塔2をより高い塔底温度でおよびより低いパージで運転することができる。というのは、不純物を除去するために塔2パージの代わりに水素化反応器を当てにすることができるからである。好ましい化学的還元または水素化工程は、全体を参照により本明細書によって援用される、「発酵で生産された1,3−プロパンジオールの水素化(Hydrogenation of Fermentatively−Produced 1,3−propanediol)」という表題の、出願人らにより共同所有され、同時に出願された別の出願、米国特許出願第60/468,212号明細書の主題である。
【0069】
一般に、出願人らの好ましい蒸留系統は、4つの真空蒸留塔および塔2と3との間の水素化反応器システムよりなる。蒸留系統の目的は、前のイオン交換工程からの粗生成物から規格内PDOを蒸留することにある。蒸発工程が用いられた場合には約20%水を含有する粗生成物が供給タンクに貯蔵され、そこからそれは塔1にポンプ送液される。粗生成物中の水は塔1でオーバーヘッドとして除去される。塔2では、グリセロール、糖および他の高沸点物がPDOから分離され、塔2塔底液としてシステムからパージされる。塔2からの留出物は化学的還元工程、例えば、水素化反応器システムによって処理され、そこで色形成不純物はより容易に分離される低沸点物に変換することができる。塔3は次に低沸点物と塔1におよび塔での副反応に由来する残留水とを除去する。塔3からの塔底生成物は塔4に供給され、そこで最終精留が行われて個々のユーザーの製品規格に適合するべく留出物のUV値を低下させる。
【0070】
塔1(水塔)
塔1は充填蒸留塔であり、その目的は、供給物からの水をオーバーヘッドとして除去すること、および塔底液中の水を1000ppm未満まで低下させることにある。塔は好ましくは減圧下で運転され、塔頂での圧力は約55mmHg Aに維持され、そのようにしてオーバーヘッド水は冷却塔水で凝縮させることができる。冷却水が外殻側を通って循環されながら、オーバーヘッド蒸気は塔1凝縮器の管側で凝縮する。凝縮物、主として水は、重力により還流ドラムに送ることができる。塔底での温度をできる限り低く保つために塔の全域にわたって低い圧力降下を有することが好ましい。流下薄膜リボイラーを用いてリボイラーでのホールドアップ時間を、それ故に塔の底部での望ましくない反応を最小限にすることができる。スチーム(200psig)をリボイラーに供給して必要な沸騰を提供し、塔の底部での温度を約145℃に制御することができる。塔の塔底液は塔2にポンプ送液される。
【0071】
塔2(重質分塔)
塔2もまた充填塔であり、その目的は、重質不純物、主としてグリセロール、糖および発酵に由来するまたは塔での望ましくない反応によって生成した他の不純物を除去することにある。塔1におけるように、分解および副反応を減らすために塔底での温度および液体ホールドアップをできる限り低く保つことが重要である。流下薄膜リボイラーをここでもまた用いることができる。塔底での温度は約165℃に制御される。グリセロール、PDOおよび高沸点物よりなる塔塔底液は貯蔵タンクにパージされる。99%より多いPDOを含有するオーバーヘッド蒸気は凝縮され、還流ドラムに集められる。塔に還流されないオーバーヘッドは水素化反応器システムに送ることができる。塔は20mmHg Aでおよび塔頂にて約120℃で運転される。この塔はまた、粗供給物と共に入ってくる硫黄の約85%を除去することもできる。
【0072】
化学的還元
PDO流れに残留する異物の化学的還元は、特にそれが最終段階の蒸留の前に起こる場合に最終不純物を除去するために有用である。化学的還元法には、生成物流れ中のPDO分子中に残された二重結合を除去することができる任意の方法が含まれる。例えば、水素化および水素化ホウ素ナトリウム法が当該技術で特によく知られている。
【0073】
接触水素化、出願人らの好ましい方法は、触媒の存在下での化合物の水素との反応である。この反応は、残っている有機化合物を還元し、広範囲に及ぶ適用性および実験の簡単さという利点を提供し、こうして多くの化学プロセスのために用いられる。例えば、水素化は、クラフトパルプ工場工程の廃水流れからのある種の製品の生産で色の原因となる化合物を除去するために用いられてきた(Ghoreishiら著、「パルプ工場廃水中の発色団のキャラクタリゼーションおよび還元(Characterization and Reduction of Chromophores in Pulp Mill Effluents)」、Sci Iran.、4(1997−3)、131−138ページ)。様々な物質が水素化触媒にとって毒であり、最も一般に遭遇するものは水銀、二価硫黄化合物、および、より少ない程度でアミンである(H.O.House、近代合成反応(Modern Synthetic Reactions)、第2版、W.A.Benjamin:Menlo Park、CA.、1972年、1−15ページ)。
【0074】
本方法は、触媒の存在下でPDO含有混合物を水素ガスと接触させることを伴い、それはポリオールの色を改善し、混合物のpHを上げ、硫黄を減らすであろう。これらの変化は多種多様な用途においてPDOの改善された性能につながる。
【0075】
1,3−プロパンジオールを発酵生産した後に水素化工程を導入することの利点は、色形成ボディを除去することによる最終ポリマーの固有粘度(IV)と「色」指数とのより良好なコントロールを得ることである。処理された1,3−プロパンジオールおよびそのオリゴマーは「無色」属性を示すのみならず、該モノマーの少なくとも1つの繰り返し単位を有する、かかる構成要素から製造されたポリマー材料もまた減少した「黄色指数」または減少した色を示す。最も好ましい形態では、バイオ−ベースのPDOおよび/またはオリゴマーについては、水素化工程は最終蒸留工程と一体化される。
【0076】
用語「色」および「カラーボディ」とは、おおよそ400〜800nmの波長を用いて、そして純水と比べて、可視光の範囲で分光比色計を用いて定量化することができる可視色の存在を意味する。PDO中の色前駆体はこの範囲では目に見えないが、PDO中で重合後に色に寄与する。重合条件は色生成の性質に重要な影響を及ぼし得る。関係のある条件の例には、用いられる温度、触媒および触媒の量が挙げられる。理論により縛られることを望まないが、本発明者らは、色前駆体には、オレフィン結合、アセタールおよび他のカルボニル化合物、過酸化物などを含む微量の不純物が含まれると考える。これらの不純物の少なくとも幾つかは、UV分光分析法、または過酸化物滴定のような方法によって検出されるかもしれない。
【0077】
「色指数」は、物質または化合物の電磁放射線吸収性の分析基準に関する。
【0078】
「水素化反応器」は、シェーカーチューブ、バッチ式オートクレーブ、スラリー反応器、アップフロー充填床、および細流充填床反応器を含むがそれらに限定されない、文献で知られている公知の化学反応器の任意のものを意味する。
【0079】
水素化は、PDOを水素化触媒の存在下で、高温および高圧で水素と接触させることによって達成することができる。触媒は周期表のVIII族の元素よりなることができる。より具体的には、様々な助触媒ありまたはなしで、次の金属:Ni、Co、Ru、Rh、Pd、IrおよびPtの任意のものもまた本目的のための有効な触媒である。クロム酸銅のような様々な混合酸化物は色除去に有効な触媒である。水素化触媒は当該技術で公知であり、S.Nishimuru著、「有機合成のための不均一系接触水素化ハンドブック(Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis)」、John Wiley(2001年)に広くカバーされている。
【0080】
触媒は多孔性金属構造体であっても基材に担持されていてもよい。触媒担体は炭素、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、チタニア−アルミナ、粘土、アルミノシリケート、カルシウム、バリウムの水に不溶性塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、それらの配合物およびそれらの組合せのような、当該技術で公知の任意の担体材料からのものであることができよう。
【0081】
触媒は、微粉から顆粒、タブレット、ペレット、押出物または他の構造化担体までに及ぶ、様々な形状またはサイズを有してもよい。金属触媒および担体は、パラジウム/炭素、パラジウム/炭酸カルシウム、パラジウム/硫酸バリウム、パラジウム/アルミナ、パラジウム/チタニア、白金/炭素、白金/アルミナ、白金/シリカ、イリジウム/シリカ、イリジウム/炭素、イリジウム/アルミナ、ロジウム/炭素、ロジウム/シリカ、ロジウム/アルミナ、ニッケル/炭素、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ、レニウム/炭素、レニウム/シリカ、レニウム/アルミナ、ルテニウム/炭素、ルテニウム/アルミナおよびルテニウム/シリカよりなる群から選択される。好ましい触媒の例は、RANEY触媒(他の触媒活性金属でドープされていてもよい)またはシリカ−アルミナに担持された押出物の形にあってもよいニッケルである。
【0082】
水素化は、当該技術で公知の様々な気体−/液体−/固体−接触反応器で実施されてもよい。これらの反応器はバッチ、セミバッチ、およびフロー様式で動作してもよい。工業的に有利な反応器は、液体および気体がアップフローまたはダウンフロー(細流床)運転様式で、並流でまたは向流で流れる触媒の充填床を用いる。
【0083】
水素化工程で、色化合物およびそれらの前駆体の転化率は、触媒との接触時間に依存する。接触時間はバッチ操作では滞留時間で、流通型反応器では空間速度(LHSV=液空間速度)で表される。
【0084】
温度もまた、色または色前駆体化合物の転化率に影響を及ぼす。転化率は、アレニウス法則(Arrhenius Law)に従って温度と共に指数関数的に増大する。しかしながら、色は様々な発色団の組合せ効果の尺度であるので、かつ、色はUV放射線の吸収によって測定され、濃度の対数関数として表されるので、温度への色の全体的依存性は、一般的なアレニウス型から外れ、直線関係に近づく。接触時間と温度との適切な組合せは25℃ほどに低い温度で所望の色改善を達成することができる。25〜200℃の範囲の温度が色を低下させることができる。しかしながら、より高い温度では、ポリオール(具体的には1,3−プロパンジオール)の水素化分解が始まり、より軽質のアルコール(エタノールおよびプロパノール)およびジオキサンを生み出し、ポリオールの収量損失をもたらす。140〜150℃より上の温度で、収量損失は有意になる。有効な色低下は25〜200℃の範囲で達成することができるが、好ましい温度範囲は80〜130℃である。
【0085】
水素消費量は一般に非常に低く、粗ポリオール中に存在する不純物のレベルに依存する。一般に、水素消費量は、粗液体中の水素溶解度の範囲内である。温度および接触時間の適切な選択で、十分な転化率は、大気圧よりわずかに上で達成することができる。このレベルより上では、圧力の追加増加は色除去の程度に最小限の影響を及ぼす。色低下は、周囲〜1000psigの圧力で達成することができ、200〜400psigが圧力の好ましい範囲である。
【0086】
水素対ポリオール供給速度の比は、化学量論的な必要レベルの水素より上では転化率に顕著な影響を及ぼさない。有効な色低下は、粗PDOのグラム当たり0.05〜100sccで達成することができる。好ましい範囲は0.5〜2scc/gである。
【0087】
粗PDO溶液のUVスペクトルの変動は、PDOを生み出した方法に、ならびに生産後および水素化前段階で用いられた精製工程の有効性にも依存する。色低下の程度は、粗PDO溶液の初期色レベルに依存する。粗PDO溶液における所与の色レベルについて、所望の色低下は、水素化に好適な運転条件を選択することによって達成することができる。
【0088】
最終蒸留
好ましくは、水素化のような化学的還元の後に、生成物流れは今追加不純物のさらなる除去のために最終蒸留にかけることができる。
【0089】
蒸留塔3(中間塔)
出願人らの最も好ましい実施形態における塔3の目的は、水とさらなる軽質不純物とをPDO生成物から蒸留除去することにある。軽質不純物および水は塔1塔底液に、塔2での副反応に、および化学的還元手順に由来する。PDOに同伴した軽質不純物および水は焼却による処分のために貯蔵タンクに塔オーバーヘッドとしてパージされる。塔塔底液は塔4に送られる。塔3は好ましくは塔頂で約35mmHg Aで、および塔底で約145℃で動作する。塔3の塔頂温度は、水および軽質不純物の濃度に依存して、好ましくは約130℃である。
【0090】
蒸留塔4(製品塔)
この最終塔の目的は、最終精留を提供して規格内PDO製品を生産することにある。軽質不純物が塔3で除去された後、残っている重質不純物が塔4の塔底セクションに除去される。オーバーヘッド蒸気は凝縮され、還流ドラムに集められる。還流ドラムポンプは、凝縮物の幾らかを還流としてポンプ送液して塔に戻し、残りは最終製品として熱交換器を通して送られて塔1供給物を加熱する。製品は次に製品貯蔵タンクに送ることができる。留出物のUV吸光度は、オンラインUV分析器によって連続的にモニターすることができる。重質不純物を含有する塔底液は、塔2の塔底セクションにリサイクルすることができる。塔は好ましくは塔頂で約45mmHg Aで、および塔底で約145℃で動作する。
【0091】
真空システム
一般の真空システムを好ましくはすべての蒸留塔のために用いることができる。後部復水器付きスチームジェットと、液体リング真空ポンプよりなる第2段階とよりなる2段階システムを用いることができる。選択される真空システムに関して幾つかの選択肢がユーザーのために存在する。第1段階がスチームジェットの代わりに空気エダクターまたはブロアーであり、第2段階が液体リングの代わりに乾式スクリューポンプであってもよい2段階を用いることができる。真空システムからの非凝縮性蒸気は、大気排出規定に適合するために大気に排出される前に排出口スクラバーに送ることができる。
【0092】
最終製品品質は、蒸留塔の分離性能によってのみならず、塔内で起こる多数の化学反応によっても影響を受け、これらの反応は完全に理解され、特徴づけられ、または定量化されているわけではない。原則として、これらの反応を制御する3つの要因は、化学物質濃度、温度、および液体容量(または滞留時間)である。化学物質濃度は、塔そのもの中の条件によって、および分離セクションによって生み出される粗供給物品質(従って、粗供給物品質規格の必要性)によって支配される。温度は塔内の濃度および圧力によって支配されるので、塔圧力は温度をできる限り低く保つために選ばれてきた(15〜55mmHg)。特に温度が最高であるカラムベースでの、液体ホールドアップは重要なデザイン変数であり、操作性および乱れ排除を犠牲にすることなく可能な程度まで最小化されるべきである(例えば、塔リボイラーポンプは塔供給物の突然の損失後などにも依然として機能しなければならない)。ベース液体ホールドアップを減らすための一方法は、フル塔径より狭くすることである。これがどの程度行われるかにかかわらず、カラムベース・レベル測定それ自体がベース容量のほんのある部分だけでなく、その全範囲をカバーすべきであることが重要である。
【0093】
1,3−プロパンジオールの純度キャラクタリゼーション
出願人らの方法から出てくる精製製品は、高度に精製された1,3−プロパンジオールであろう。純度のレベルは多数の異なる方法で特徴づけることができる。例えば、汚染有機不純物の残留レベルの測定は有用な一手段である。出願人らの方法は、約400ppm未満、好ましくは約300ppm未満、最も好ましくは約150ppm未満の全有機異物純度レベルを達成することができる。用語ppm全有機純度は、ガスクロマトグラフィによって測定されるように百万当たりの部レベルの炭素含有化合物(1,3−プロパンジオール以外の)を意味する。
【0094】
精製製品はまた、様々な波長での紫外光吸光度のような、多数の他のパラメーターを用いて特徴づけることもできる。波長220nm、240nmおよび270nmが組成物の純度レベルを測定する際に有用であることが分かった。出願人らの方法は、220nmでのUV吸収が約0.200未満であり、240nmで約0.075未満であり、270nmで約0.075未満である、純度レベルを達成することができる。
【0095】
精製1,3−プロパンジオールでの約0.15未満のb*色値(CIE L***)もまた出願人らの方法によって成し遂げられる。
【0096】
そして最後に、1,3−プロパンジオール組成物の純度は過酸化物のレベルを測定することによって有意義に評価できることが分かった。出願人らの方法は、約10ppm未満の過酸化物の濃度を有する精製1,3−プロパンジオールの組成物を達成する。
【0097】
出願人らは、本発明の方法が、その好ましい様式で、生物学的に生産されたおよび化学的に製造された組成物をはじめとする任意の源から1,3−プロパンジオールの高度に精製された組成物を生産するであろうと考える。
【実施例】
【0098】
本発明は次の実施例でさらに明示される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示のみの目的で与えられる。上記議論およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特性を確認することができ、かつ、その精神および範囲から逸脱することなしに、本発明の様々な変更および修正を行ってそれを様々な用法および条件に適合させることができる。
【0099】
実施例#1
好気性の流加発酵による1,3−プロパンジオールの生産
遺伝子組み換え大腸菌生産有機体(米国特許第号5,686,276号明細書を参照されたい)を含有する凍結バイアルを、栄養素に富む寒天平板上へ分離のために条痕付けした。分離した小さなコロニーを条痕板から選び、500mLの2YT媒体を含有する2Lバッフル付き振盪フラスコ中へ入れた。次にフラスコを34℃および350RPMで10時間培養して0.3gDCW(乾燥細胞重量)/Lのバイオマス濃度を得た。シード・フラスコを用いてシード発酵槽に接種した。
【0100】
シード発酵槽は、1500Lの総容量のステンレススチールASME完全真空定格の、空気スパージ圧力容器である。シード発酵槽を水道水と媒体成分とで685Lの初期容量に満たした。シード発酵槽媒体レシピについては下の表1を参照されたい。媒体を混合するとすぐに、シード発酵槽を直接スチーム注入によってその場滅菌する。媒体を121℃で60分間滅菌する。滅菌後に発酵槽を運転条件:6.8pH、33℃、5psig背圧、および25g/Lの初期右旋性ブドウ糖濃度にする。発酵槽が運転条件になるとすぐに、1Lの脱イオン水に溶解した50gのスペクチノマイシン二塩酸塩(Spectinomycin Dihydrochloride)(Sigma Aldrichを通して購入した)を、0.22μ定格滅菌膜フィルターを通してシード発酵槽中へ濾過滅菌する。
【0101】
スペクチノマイシン二塩酸塩を加えた後、この節で先に参照した振盪フラスコで発酵槽に接種した。シード・サイクルの間中pHを無水アンモニアの添加で6.8に維持し、溶存酸素(DO)を飽和に対して15%に維持し、そして温度を33℃に維持する。発酵槽中の右旋性ブドウ糖濃度が10g/Lに達するとすぐに、炭水化物供給を開始して5〜10g/Lの右旋性ブドウ糖濃度を維持する。シード発酵槽が6gDCW/Lに達するとすぐに、それを生産タンク中へ移す。


【0102】
表1: シ−ドおよび生産発酵槽媒体レシピ

【0103】
生産発酵槽は、13,000Lの総容量のステンレススチールASME完全真空定格の、空気スパージ圧力容器である。生産発酵槽を水道水と媒体レシピとの5645Lの初期容量まで満たし、媒体レシピはシード発酵槽と同じものであり、上の表1で参照される。生産発酵槽媒体を直接スチーム注入でその場滅菌し、121℃で60分間保持する。滅菌後に発酵槽を運転条件:6.8pH、33℃、5psig背圧、および10g/Lの初期右旋性ブドウ糖濃度にする。発酵槽が運転条件になるとすぐに、2Lの脱イオン水に溶解した250gのスペクチノマイシン二塩酸塩(Sigma Aldrichを通して購入した)を、0.22μ定格滅菌膜フィルターを通して生産発酵槽中へ濾過滅菌する。
【0104】
抗生物質の添加後に、空気圧を用いてシードを生産発酵槽中へ吹き入れる。接種直後に、炭水化物フィードを開始し、5〜15g/Lの生産発酵槽中の右旋性ブドウ糖濃度を維持するために制御する。生産サイクルの間中、無水アンモニアを使用してpHを6.8に維持し、DOを飽和に対して10%に制御し、そして温度を33℃に維持する。
【0105】
接種の1時間後に、10Lの脱イオン水に溶解した、1gボーラスの結晶性ビタミンB12(Roche Vitamins Inc.によって供給された)を、0.22μ定格滅菌膜フィルターを通して生産発酵槽中へ濾過滅菌する。B12溶液を20Lステンレススチール圧力定格容器に加える。次に溶液を、ステンレススチール容器を空気で加圧することによって滅菌フィルター通過させる。バイオマス濃度が4.5DCW/Lに達するとすぐに、上記と同様に調製した第2の11gボーラスのビタミンB12を生産発酵槽中へ投薬する。
【0106】
生産発酵サイクルは接種後40〜45時間内に完了する。生産サイクルが完了した後、バイオ触媒を場合により発酵槽中への生スチーム注入によって不活性化させることができる。発酵槽の温度を75℃で45分間保持して生育できる有機体のlog−6減少を確実にすることができる。場合による不活性化工程の後、培地を濾過へ送って粗PDO精製工程を始める。
【0107】
発酵サイクルの間中、YSI(登録商標)2700選択生化学分析器(Select Biochemistry Analyzer)を用いて発酵培地のグラブ・サンプル中の右旋性ブドウ糖濃度を測定する。バイオマス濃度を、発酵の間中、ThermoSpectronic Spectronic 20D+Spectrophotometerを用いて測定する。培地中のPDO濃度は、発酵の間中HPLCを用いて測定することができる。
【0108】
実施例#2
発酵培地の精密濾過
精密濾過設備は、流加式に運転される一段の2モジュール直列濾過装置である。例えば、実施例#1からの発酵培地を精密濾過供給タンクからスキッドへポンプ送液し、次に膜ループ内を再循環させる。透過液を連続的に中間貯蔵タンクへ転送し、保留物を精密濾過供給タンクへ再循環して戻す。設置された膜モジュールは50nm細孔サイズ、4mmルーメンMembraflowセラミックエレメント(モデル#22M374R−50、それぞれ10.34m2)である。PDO発酵培地を165°Fでスキッドに供給し、65psiシステム圧(38〜45psi TMPモジュール#1、27〜37psi TMPモジュール#2)に維持した。濃度分極層を最小にするために、セラミック膜を横切る再循環流れを5m/秒交差流速度(〜900gpm)に持続した。保留物戻しライン上の流量調節弁は、精密濾過供給タンクに戻るコンセントレートの流量を10gpmに制限し、それによってシステム背圧を生み出す。入口供給物および出口透過液ライン上の流量合計器間の差を用いて、目標の12倍の体積濃度比(VCR)をモニターし、制御した。精密濾過はより大きなバイオマスおよび不溶性物質をPDO発酵培地から分離し、従って溶液中に懸濁したより大きな高分子の生成物流れを浄化する。表2は精密濾過操作を表す。
【0109】
表2: 精密濾過操作

【0110】
現行のPDO生産有機体は、15〜20%(18〜20LMH)の標準偏差で108LMHの精密濾過中平均フラックスを実証した。培地濃縮の早期段階で精密濾過中フラックスの急速な下落があり、初期培地の濃度が2倍になる時、フラックスの50%下落がある。フラックスのこの急速な下落は、目標の12倍VCRが達成されるにつれて和らぎ、そして全体濃度にわたってフラックスの85〜90%損失が一貫して観察される。VCR−フラックス・プロフィール・データの一貫性は、精密濾過フラックスが膜の表面上の濃縮ゲル層によって制御されることを示唆する(表3)。









【0111】
表3: 精密濾過 - VCR対フラックス関係

【0112】
実施例#3
限外濾過
本実施例では、段階につき(それぞれ5.4m2の)Koch 3838 HFK328−VYT(5,000NMWCO)限外濾過膜を装備した連続3段階GEA Filtration(モデル U パイロットプラント)装置を用いて、例えば、実施例#2で生み出されたPDO精密濾過透過液を限外濾過した。限外濾過設備は一定圧、60psiで供給され、15倍に濃縮した。濃度は、最終膜段階の後に置かれた流量調節弁によって調節し、入口供給物流れから比例的に増加させた。15倍保持率を達成するために濃度比を入口供給物流れの6.67%に維持した。入口熱交換器および3つの中間冷却器を用いて、システム温度を140°Fに制御した。各エレメントにわたる膜透過圧を、再循環ステージポンプによって65psiに維持した。フラックスを測定するために透過液流量を各個々の段階の後に測定し、透過液品質をHPLC、GPCおよび窒素分析(Nitrogen Analysis)(Antek)で測定した。表4は、全体的濾過だけでなく個々の濾過段階の操作性能を実証する。表5は、限外濾過膜を通したPDO培地の分離を示す。
【0113】
表4: 限外濾過操作







【0114】
表5: 分離特性

【0115】
多段階は、より低い培地濃度でのより良好なフラックス利用を可能にする。PDO限外濾過供給物がシステムによって濃縮するにつれて、フラックスは増加する濃度と共に下落する。スキッドを出る最終コンセントレートは元の供給物より〜15倍濃縮されているが、全体的なフラックス性能は、その最低のフラックス濃度によって決定されるよりもむしろ3段階にわたって平均化される。限外濾過はナノ濾過の前濾過工程の役目を果たす。タンパク質は、ナノ濾過膜にとって不可逆的汚染剤であり、それ故に限外濾過が粗タンパク質(タンパク質およびアミノ酸)の72%を除去して、より後の下流はより少ない制限で動作すべきである。限外濾過保留物の分子量分析は、保持されたタンパク質がおおよそ12,000ダルトンの平均分子量を有すること、および膜によるその排除が完全であることを明らかにした。何の他の培地成分も有意に排除されない。
【0116】
実施例#4
ナノ濾過
本実施例では、段階につき1つ(それぞれ4.8m2)のKoch TFC3838 SR3(180NMWCO)ナノ濾過膜付き連続3段階GEA Filtration装置(モデル U パイロットプラント)を用いて、例えば、実施例#3のPDO限外濾過透過液をナノ濾過した。ナノ濾過スキッドへの供給物を一定の200psiに維持し、システムの濃縮を20倍に制御した。保留物流れを、入口供給物流れの5%に比例するコンセントレート流れ制御弁によって比例的に減らした。入口熱交換器および3つの中間冷却器を用いて、温度を120°Fで一定に保持した。各エレメントにわたる膜透過圧を、再循環ステージポンプによって205psiに維持した。フラックスを測定するために透過液流量を各個々の段階の後に測定し、透過液品質をHPLC、UV/VisおよびIPC(誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy))技術で分析的に測定した。表6は、全体的および個々の濾過段階の操作性能を実証する。表7は、ナノ濾過膜を通したPDO培地の分離を示す。
【0117】
表6: ナノ濾過操作






【0118】
表7: ナノ濾過分離特性

【0119】
ナノ濾過を出る最終コンセントレートは初期供給物より20倍濃縮され、全体的フラックス性能は個々の段階の平均である。限外濾過前処理で、ナノ濾過膜は、個々の段階のフラックスおよび濃縮係数が実験の間ずっと一定に保持されるように汚染なしを実証した。
【0120】
透過液流れでの可視色の90%低下に加えて、PDOプロセスの主な同定および未同定不純物のすべてがナノ濾過によって除去される。イオン交換ロードで減らされた糖および塩の減少ならびにUVの低下は、蒸留への負担を軽くし、最終製品品質を改善することが示されてきた。
【0121】
実施例#5
イオン交換
本実施例では、例えば、実施例#4のナノ濾過透過PDO培地を、カチオン−アニオン、カチオン−アニオン配置構成のイオン交換によってバッチ処理する。カチオンセルのそれぞれは、6ft3のDowex 88強酸性カチオン樹脂を装填した1.5ft直径×8ft高さカラムよりなり、それぞれのアニオンセルは2つの1.5ft直径×8ft高さカラムを含み、12ft3(カラム当たり6ft3)のDowex(登録商標)77弱塩基性アニオン樹脂を装填している。ナノ濾過した培地(34meq/L)を、破過が10時間後に起こる状態で、115°Fで4.5gpmでイオン交換に供給する。表8はイオン交換操作を実証し、表9は一般成分プロフィールを表す。イオン交換からの最終プロセス流れを、pH、導電率、UV/Visおよび屈折率によって分析し、生成物サンプルをHPLCおよびIPC(誘導結合プラズマ発光分光分析法)で分析した。















【0122】
表8: イオン交換操作

【0123】
表9: イオン交換成分プロフィ−ル

【0124】
破過は、250uS/cmより大きい導電率または0.5ABUより大きいUV吸光度(270nmでの)を有する生成物の通過で起こる。本実施例については、破過は第2セットのアニオンカラムから溶出するUV成分の結果として起こる。イオン交換セルは、全体的イオン化学種が依然として98%除去されるようにイオン除去に十分なサイズである。イオン交換の容量は、UV寄与体を吸収する樹脂能力によって決定される。破過すると、UV/Vis色および導電率は両方とも95%を超える分だけ低下してしまった。鉱物化学種だけでなくUV成分の除去も、さらなる下流に送られる異物および汚染物を減らす。
【0125】
実施例#6
蒸発
例えば、実施例#5におけるような、CACAイオン交換を出る生成物流れは、10〜13%乾燥固形分含有率で出てくるし、80%に至るまでのさらなる濃縮を必要とする。本実施例では、イオン交換生成物を、流加蒸発で11%から85%乾燥固形分に蒸発させる。供給物を外部供給タンクからエバポレーターへ導き、蒸発装置の再循環ループ中へポンプ送液する。再循環ループは、1000#スチーム/時で、平板型熱交換器を通して、次に27mmHg減圧および170°F蒸気温度下の高められた気体−液体分離器上へ供給する。分離器は、蒸発生成物をエバポレーター供給タンクへ戻すのに十分な水頭を提供するために高められている。エバポレーター供給タンク中の材料の乾燥固形分内容物を、標的濃度が達成されるまでエバポレーターを通して再循環させる。蒸発流れのその場サンプリングを較正した屈折率測定によって行い、後分析をKarl Fischer水分分析およびUV/Visで行う。表10は、蒸発が起こるにつれてのPDO生成物分析を示す。UV/Vis分析のすべてを共通の5%乾燥固形分で行った。水分はKarl Fischerで測定し、次に基準濃度に希釈した。
【0126】
表10: 蒸発結果

【0127】
本実施例についての完全蒸発は完了するのに16時間を要し、その期間中に生成物流れは無色透明から暗カラメル色になった。蒸発結果は、長い滞留蒸発の間に何の二次反応も起こらず、結果として、初期供給原料の濃縮だけで、何の追加のUVまたは可視色も単位操作の間に発生しないことを示唆した。
【0128】
実施例#7
混合イオン交換
本実施例では、混床ポリッシングを、例えば、実施例#6に従って生み出された83%乾燥固形分エバポレーター生成物流れについて行う。蒸発は追加の色を生み出さないが、それは除去を依然として必要とする残留色成分を濃縮する。蒸発PDO生成物流れ(200ガロン)を、残留塩および色の除去のために強酸性カチオン交換樹脂(Dowex 88)と強塩基性アニオン樹脂(Dowex 22)との40−60混合物に供給した。混床は、6ft3混床樹脂を含有する1ft直径×5ft高さカラムであり、それに、冷却された(80°F)蒸発3G流れを1.5gpmで供給する。表11および12は混床ポリッシング容量を実証する。
【0129】
表11: 混床ポリッシング色除去

【0130】
表12: 混床ポリッシング・イオン交換

【0131】
CACAイオン交換と同じように、混床は蒸発生成物流れの色成分を吸収する容量を有する。可視色は深カラメル色からほぼ無色透明溶液へ劇的に改善され、UV寄与体もまたかなり除去される。カラムのイオン交換容量は供給物のイオン負荷を十分に超えているので、混床を出る生成物は何の測定可能な導電率も持たず、生成物のpHにわずかな塩基性シフトがある。
【0132】
実施例#8
水素化
化学的還元の第一の目的は、バイオ−PDOから製造されたポリマー、具体的にはPDOポリマー中の色を減らすことにある。ポリマー色はL***尺度によって測定される。b*<1のポリマーは、ほとんどのポリマー用途向けに許容される色を有すると考えられる。判定基準がPDOの品質をポリマーの色と関係づけるために策定された。270nmでのUV吸収がPDO品質および最終ポリマーの色の妥当な指標であると特定された。UVスペクトルを通常1:5希釈比で集め、希釈数のままで報告する。0.1より下の270nmUVのメートル法色は許容されるPDOポリマー品質をもたらすであろうと考えられる。
【0133】
PDOの色は精製への供給物の組成と精製工程での処理条件とに関係しているように思われる。精製への供給物は水、グリセロールおよび他の重質分(糖のような)を含有する。次の表13は、代表的な蒸発培地の糖組成を示す。ナノ濾過工程を含む本発明の分離スキームはかなりの量のこれらの糖を除去するが、糖の幾らかは培地中に留まり、精製系列中へ入り得る。
【0134】
表13: 軽質分蒸発発酵培地中の未発酵糖
HPAE-PADによる炭水化物


表13: 軽質分蒸発発酵培地中の未発酵糖
HPAE-PADによる炭水化物(続き)

【0135】
これらの糖は、熱処理中に色形成を引き起こすと考えられる。窒素環境中1%マルトースでドープされた「化学的に製造された」Wesseling PDOの熱処理において、製品の色レベルは130℃より下の温度では低いことが観察された。しかしながら、150℃より上では、幅広いバンドがおよそ230nmおよびその上270nm〜290nmのUVで観察される。これらの色化合物のほとんどはPDOの前にまたはそれと一緒に蒸留する。色の増加には、処理製品の同時に起こるpHの低下が随伴する。
【0136】
本発明の蒸留精製法は熱処理を必要とする。4蒸留塔法が好ましい。塔1は主として水の低減を目指し、水はオーバーヘッドで除去される。塔2はグリセロールおよび糖のような重質成分をPDOから分離する。塔3および4は残留軽質および重質化合物を除去し、要求される特性を有する製品を生み出す。出願人らは、色形成体がアルデヒド、ケトン、およびフラン誘導体に帰因すると信じている。この信念は、色を低下させるための幾つかの技術の評価につながった。10以上の異なる技術を試験した。炭素への吸着および水素化が最も見込みのある代替案であった。他の技術はすべて部分的に有効であり、それらは最初は色を低下させたが、さらに処理すると、もっと望ましくない不純物を生み出した。
【0137】
一般に、水素化のための材料および方法は当該技術でよく知られている。次に来る実施例では、細粉、顆粒および押出物触媒を用いてバッチ、セミバッチおよびフロー様式で動作してもよいシェーカーチューブ、オートクレーブおよびアップフロー固定床管型反応器を用いた。
【0138】
PDO色品質は、UV/Vis分光光度計によって測定した。UV分析はすべて水での20%希釈でHP 8453 UV/Vis分光光度計を用いて行い、そのようなものとして報告した。PDO中の不純物はガスクロマトグラフィで測定した。すべてのGC分析は、7673シリーズ自動注入器、5973N質量選択検出器(Mass Selective Detector)、HP−INNOWaxポリエチレングリコール・キャピラリーカラム、30m長さ、250マイクロメートル直径、0.25マイクロメートル膜厚を用いるAgilent 6890ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph)で行った。初期温度は100℃であり、それを10℃/分速度で193℃まで、引き続き40℃/分で250℃まで昇温し、12分間保持した。
【0139】
硫黄はPerkin−Elmer 3300RL誘導結合プラズマ(ICP)分析器によって分析した。ポリオールの酸性度はBeckman Model 350 pHメーターで分析した。pHは2方法:ニートおよび水での50/50希釈で測定する。
【0140】
一般プロトコル
先に精製した1,3−プロパンジオール(PDO)を出発原料として使用した。PDOは右旋性ブドウ糖から出発する発酵法で製造し、精密濾過、ナノ濾過、イオン交換、蒸発、噴霧乾燥、炭素吸着、クロマトグラフ分離、および様々な段階の蒸留を含むがそれらに限定されない様々な工程で精製した。発酵法の要素と各ケースで用いた特定の精製工程とに依存して、次の実施例で使用する粗PDO溶液は様々な不純物を含有した。実施例の各セットは、発酵および/または前クリーニング法の異なる組合せによって製造したPDOを使用し、ケースA、B、およびCと称される。
【0141】
ケースA.水性混合物の4段階蒸留後の水素化工程の使用
このシリーズの実施例(8)(1〜9)では、濾過、吸着、イオン交換および蒸発、引き続く4段階の蒸留という様々な工程で精製したPDO溶液を水素化への供給物として使用した。この供給物のGC分析は、面積カウントの0.13%より上を占める、22より多い未知の不純物を示した。粗供給物のUV/Visスペクトルは、極大がおよそ200、220、および270〜280nmの3つの幅広い吸収バンドを有した。
【0142】
実施例#(8)1〜(8)8
これらの実施例では、ケースAに記載されたPDOを、表1にまとめた様々な運転条件でRANEY2400ニッケル・スラリー触媒(CrおよびFe助触媒のNi)を使ってシェーカーチューブ中で水素化した。すべてのケースで、200gのPDOを適切な量の触媒と共に400mLステンレススチール・シェーカーチューブ中に入れた。シェーカーチューブを窒素でパージし、指定の温度に加熱し、指定圧力まで水素で加圧した。反応器を指定時間振盪し続け、次に冷却し、脱圧した。水素化された生成物の品質を、上記のようにGCおよびUV/VISで測定した。表14は、280nmでのUV吸収の低下を示す。
【0143】
表14−実施例8(1)〜8(8)の条件および結果

【0144】
色除去は温度、接触時間および触媒の量で改善される。実施例(8)1で、水素化は、粗PDO溶液中の22の不純物のうち9つを完全に除去し、5つの濃度を下げ、6つの新たな化合物を形成し、3つの既存不純物の濃度を上げた。形成された不純物は、PDOよりはるかに軽いか、はるかに重いかのどちらかであり、それ故に蒸留によって容易に除去することができた。これらの化合物をそれらの示された保持時間と共に表15に示す。実施例8(2)〜8(8)で、運転条件の厳しさに依存して、同じ程度ではないが、同様な不純物の変化が観察された。


























【0145】
表15−水素化時のPDOの不純物の変化
実施例(8)1
水素化における組成変化

【0146】
実施例#(8)9
実施例(8)1〜(8)8のシェーカーチューブ試験の後、実施例8(1)からの11.8kgのPDO溶液を、24gのRANEY2400ニッケル・スラリー触媒と共に5ガロン・オートクレーブ反応器に装入した。混合物を400psigおよび120℃で4時間水素化した。本プロセスを3回繰り返し、生成物を一緒にし、2つのパイロット規模蒸留塔で蒸留して軽質分および重質分を除去した。最終製品は0.3AUより下のUV−270を有した。この精製したPDOを重合させて0.33のb−色の明らかに無色であるポリ−トリメチレン−テレフタレートを形成した。この水素化および蒸留工程なしのPDOは1.2より上のb−色のポリマーを生み出した。水素化前のPDOのpHは4.6であり、水素化後にpHは6.8まで改善された。
【0147】
ケースB.粗1,3−プロパンジオール(蒸留前)での発明の使用
プロセス簡略化として、もっと粗の1,3−プロパンジオールを第2シリーズの試験で使用した。この1,3−プロパンジオールもまた、右旋性ブドウ糖から出発して、上記の発酵法で製造し、濾過、イオン交換、および蒸発の様々な工程で精製したが、4つの代わりにたった2つの蒸留塔で蒸留した。この供給物のGC分析は、面積カウントの約1%を占める、40より多い未知の不純物を示した。UV/Vis吸収は、20%に希釈後にそのUV−270吸収が3.4AUであるように、非常に強かった。
【0148】
実施例#(8)10
上記ケースBに記載された12.5kgの粗PDO溶液を、52gのRANEYニッケル・スラリー触媒と共に5ガロン・オートクレーブ反応器に装入した。混合物を400psigで、120℃で1時間、引き続き130℃で4時間水素化した。3つの追加バッチを同様に水素化し、生成物を一緒にし、2つのパイロット規模蒸留塔で蒸留して軽質分および重質分を除去した。最終製品は0.1AUより下のUV−270を有した。この精製した1,3−プロパンジオールを重合させて0.88のb−色の明らかに無色のポリ−トリメチレン−テレフタレートを形成した。水素化前のPDOのpHは4.7であり、水素化後にpHは6.6まで改善された。
【0149】
ケースC.修正および改善された前精製の1,3−プロパンジオールでの発明の使用
発酵および精製プロセス条件の変化によって、改善された品質の幾つかの粗PDO溶液が得られた。これらのPDO溶液を様々な条件下でアップフロー充填床反応器中で水素化した。反応器は直径3/4インチ、長さ20インチのステンレススチール−ジャケット付き反応器であった。ジャケット中の熱油流れは、反応器で一定温度を維持した。反応器に、不活性充填材の2層間に所望長さの担持触媒を充填した。PDOおよび水素は所望の圧力で底部から反応器中へ入った。それらはアップフロー様式で反応器を通過し、反応器の下流の分離器で分離した。市販の顆粒RANEYニッケル(CrおよびFe助触媒のNi)およびアルミナ−シリカに担持されたニッケル触媒を使用して、50〜60%Niを含有する市販のニッケル/シリカ−アルミナ触媒をはじめとする様々な触媒を試験した。
【0150】
実施例#(8)11〜(8)20
これらの実施例では、ケースCとして記載されたPDOを、様々な運転条件で3つの市販触媒で水素化した。各実施例の運転条件および結果を表16に示す。色除去は、温度および接触時間の増加または空間速度の減少と共に改善される。圧力は色除去に最小の影響を及ぼす。硫黄はそれが測定されたすべてのケースで完全に除去され、生成物のpHは酸性からより中性範囲へ改善された。














【0151】
表16

【0152】
実施例#9
純度キャラクタリゼーション
下のチャートで、本発明の方法によって精製した生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを、幾つかの純度態様で、化学的に生産された1,3−プロパンジオールの2つの別個の商業的に得られる調製物と比較する。
【0153】
表17

【0154】
純度態様の典型的なプロフィールを、本発明の方法によって精製した生物学的に生産された1,3−プロパンジオールのサンプルについて下に提供する。









【0155】
表18

【0156】
全有機不純物の単位ppmは、水素炎イオン化検出器のガスクロマトグラフで測定されるように、1,3−プロパンジオール以外の、最終調製物中の全有機化合物の百万部当たりの部を意味する。結果をピーク面積によって報告する。水素炎イオン化検出器は水に対して感受性がないので、全不純物は全面積%の合計(1,3−プロパンジオールを含む)に対する比率で表したすべての非1,3−プロパンジオール有機ピーク(面積%)の合計である。用語「有機物質」または「有機不純物」は、炭素を含有する異物を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、
(a)発酵培地を濾過にかける工程と、
(b)工程aの生成物を、アニオンおよびカチオン分子が除去されるイオン交換精製にかける工程と、
(c)工程bの生成物を少なくとも2つの蒸留塔を含む蒸留手順にかける工程であって、前記蒸留塔の1つが1,3−プロパンジオールの沸点を超える沸点を有する分子を除去し、そして前記蒸留塔の他が1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する分子を除去する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程bの生成物を化学的還元にかける工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学的還元が水素化およびヒドロホウ素化よりなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学的還元が水素化である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
発酵培地が蒸発工程にかけられることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸発工程が工程b中に行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程aの濾過工程が2つ以上の別個の濾過手順を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程aの濾過工程が第1および第2の濾過手順を含み、前記第1濾過手順が0.2ミクロンより大きいサイズを有する分子を除去することを含む精密濾過に発酵培地をかけることを含み、そして前記第2濾過手順が約200ダルトン(Dalton)より大きい分子量を有する分子を除去することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程aの濾過工程が第1、第2および第3の濾過手順を含み、前記第1濾過手順が0.2ミクロンより大きいサイズを有する分子を除去することを含む精密濾過に発酵培地をかけることを含み、前記第2濾過手順が約5000ダルトンより大きい分子量を有する分子を除去することを含む限外濾過に発酵培地をかけることを含み、そして前記第3濾過手順が約200〜400ダルトンより大きい分子量を有する分子を除去することを含むナノ濾過に発酵培地をかけることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程bのイオン交換工程が2つ以上の別個のイオン交換手順を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程bのイオン交換工程が工程aの生成物を、各シリーズの手順が生成物を強酸性カチオン交換樹脂に曝すこと、引き続き弱イオン交換樹脂への曝露を含む1つもしくはそれ以上のシリーズのイオン交換手順にかけることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程bのイオン交換工程が工程aの生成物を、各シリーズが生成物を強酸性カチオン交換樹脂に曝すこと、引き続き生成物を弱イオン交換樹脂に曝すことを含む2シリーズのイオン交換手順にかけることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程bのイオン交換工程が生成物を強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂との混合物を含む混合イオン交換組成物にかけることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程bが工程aの生成物を、各シリーズが生成物を強酸性カチオン交換樹脂に曝すこと、引き続き生成物を弱イオン交換樹脂に曝すこと;引き続き蒸発工程;引き続き生成物を強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂との混合物を含む混合イオン交換樹脂組成物にかけることを含む2シリーズのイオン交換手順にかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、
(a)発酵培地を濾過にかける工程と、
(b)工程aの生成物を、アニオンおよびカチオン分子が除去されるイオン交換精製にかける工程と、
(c)工程bの生成物を化学的還元手順にかける工程と、
(d)工程cの生成物を、1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する化合物が除去され、そしてもう1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点を超える沸点を有する化合物が除去される少なくとも2回の蒸留にかける工程と
を含む方法。
【請求項16】
工程cの前記化学的還元手順がヒドロホウ素化および水素化への曝露よりなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的還元手順が水素化である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、
(a)発酵培地を、有機体の細胞バイオマスが発酵培地から除去される精密濾過にかける工程と、
(b)工程aの生成物を、約200〜400ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去されるナノ濾過にかける工程と、
(c)工程bの生成物を、各シリーズが工程cの生成物を強酸性カチオン交換、引き続き弱塩基性アニオン交換樹脂に曝すことを含む、一連のイオン交換手順にかける工程と、
(d)工程cの生成物を、強塩基性アニオン交換樹脂と混合された強いカチオン交換樹脂を含む樹脂組成物に生成物を曝すことによって混合イオン交換手順にかける工程と、
(e)工程dの生成物を化学的還元手順にかける工程と、
(f)工程eの生成物を、1,3−プロパンジオールの沸点より下のおよび1,3−プロパンジオールの沸点より上の沸点を有する工程eの生成物中に残留する化合物が除去される一連の蒸留にかける工程と
を含む方法。
【請求項19】
1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、
(a)発酵培地を、有機体の細胞バイオマスが発酵培地から除去される精密濾過にかける工程と、
(b)工程aの生成物を、約5000ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去される限外濾過にかける工程と、
(c)工程bの生成物を、約200〜400ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去されるナノ濾過にかける工程と、
(d)工程cの生成物を、各シリーズが工程cの生成物を強酸性カチオン交換、引き続き弱塩基性アニオン交換樹脂に曝すことを含む、2シリーズのイオン交換手順にかける工程と、
(e)工程dの生成物中の水の量を蒸発によって減らす工程と、
(f)工程eの生成物を、強塩基性アニオン交換樹脂と混合された強いカチオン交換樹脂を含む樹脂組成物に生成物を曝すことによって混合イオン交換手順にかける工程と、
(g)工程fの生成物を、1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点を超える沸点を有する化合物が除去され、そしてもう1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する化合物が除去される2回の蒸留にかける工程と、
(h)工程gの生成物を化学的還元反応にかける工程と、
(i)工程hの生成物を、1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より上の沸点を有するさらなる化合物が除去され、そしてもう1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有するさらなる化合物が除去される2回の蒸留にかける工程と
を含む方法。
【請求項20】
1,3−プロパンジオールを生産することができる有機体の発酵培地からの生物学的に生産された1,3−プロパンジオールの精製方法であって、
(a)発酵培地を、有機体の細胞バイオマスが発酵培地から除去されるセラミック交差流精密濾過にかける工程と、
(b)工程aの生成物を、約5000ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去される限外濾過にかける工程と、
(c)工程bの生成物を、約200〜400ダルトンより大きい分子量を有する分子が除去される渦巻形ポリマー膜を用いるナノ濾過にかける工程と、
(d)工程cの生成物を、各シリーズが工程cの生成物を強酸性カチオン交換、引き続き弱塩基性アニオン交換樹脂に曝すことを含む、2シリーズのイオン交換手順にかける工程と、
(e)工程dの生成物中の水の量を蒸発によって減らす工程と、
(f)工程eの生成物を、強塩基性アニオン交換樹脂と混合された強いカチオン交換樹脂を含む樹脂組成物に生成物を曝すことによって混合イオン交換手順にかける工程と、
(g)工程fの生成物を、1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より上の沸点を有する化合物が除去され、そしてもう1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する化合物が除去される2回の蒸留にかける工程と、
(h)工程gの生成物を水素化反応にかける工程と、
(i)工程hの生成物を、1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より上の沸点を有する化合物が除去され、そしてもう1回の蒸留で1,3−プロパンジオールの沸点より下の沸点を有する化合物が除去される2回の蒸留にかける工程と
を含む方法。
【請求項21】
請求項2〜20のいずれか1項に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項22】
220nmで約0.200未満のおよび250nmで約0.075未満のおよび275nmで約0.075未満の紫外吸収を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項23】
約0.15未満の「b」色値および275nmで約0.050未満の吸光度を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項24】
約10ppm未満の過酸化物濃度を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項25】
組成物中に約400ppm未満の全有機不純物の濃度を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項26】
組成物中約300ppm未満の全有機不純物の濃度を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項27】
組成物中約150ppm未満の全有機不純物の濃度を有する生物学的に生産された1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項28】
組成物中約400ppm未満の全有機不純物の濃度を有する1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項29】
組成物中約300ppm未満の全有機不純物の濃度を有する1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項30】
組成物中約150ppm未満の全有機不純物の濃度を有する1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項31】
約10ppm未満の過酸化物の濃度を有する1,3−プロパンジオールを含む組成物。
【請求項32】
約10ppm未満のカルボニル基の濃度を有する1,3−プロパンジオールを含む組成物。

【公表番号】特表2007−502325(P2007−502325A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532802(P2006−532802)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/014043
【国際公開番号】WO2004/101479
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(505410597)テイト アンド ライル イングレディエンツ アメリカス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】