説明

生物学的利用可能なレベルが増大した第四級アンモニウム抗菌剤を含む口腔ケア組成物類

治療用すすぎ剤、特に口内すすぎ剤類を包含する口腔ケア組成物類、及び有意に増強された抗菌活性を提供し、それによって口腔の細菌を低減し及び全体的口腔衛生を促進するための使用が開示されている。本発明の組成物は、生物学的利用可能な濃度が増大された陽イオン性抗菌剤類、特に塩化セチルピリジニウム(CPC)のような第四級アンモニウム化合物類を供給するために配合され、並びに歯垢、虫歯、歯肉炎、歯周病及び息の悪臭を包含する口腔の疾患又は症状の予防又は治療に有用である。本発明の組成物は、陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤類(これらは第四級アンモニウム化合物の生物学的利用能に、及びしたがってその抗菌効力に、マイナスの影響があることが見出された)を本質的に含まないように処方される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用すすぎ剤、特に口内すすぎ剤類を包含する口腔ケア組成物類、並びに有意に増強された抗菌活性を提供し、それによって口腔細菌を低減し及び全体的口腔衛生を促進するための使用方法に関する。本発明の組成物は、高度に生物学的利用可能な及び有効な陽イオン性抗菌剤類、特に塩化セチルピリジニウム(CPC)のような第四級アンモニウム化合物類を供給するために配合され、並びに歯垢、虫歯、歯肉炎、歯周病及び息の悪臭を包含する口腔の疾患及び症状の予防又は治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
歯垢は、細菌、上皮細胞、白血球、マクロファージ及びその他の口腔の滲出物の混合マトリクスである。細菌は、歯垢マトリクスのおよそ4分の3を構成する。いかなる所与の歯垢の試料も、400種類を超える異なる微生物を含有する可能性がある。この混合物には、好気性及び嫌気性細菌の両方、真菌及び原生動物が含まれる。ウイルスもまた歯の歯垢の試料中に見出された。
【0003】
有機体と口腔の滲出物のこのマトリクスは拡張を続け、近接する他の増殖する歯垢と合体する。細菌は、口腔内に見出されるスクロースからレバン類及びグルカン類を合成し、微生物にエネルギーを提供する。これらのグルカン類、レバン類及び微生物は、歯垢の連続的増殖のための粘着性の骨格を形成する。
【0004】
歯垢で発見される細菌は、酸類、酵素類及び毒素類を分泌することができ、これが虫歯、口臭及び歯周病を引き起こし得る。
【0005】
歯周病(「歯肉疾患」)は、歯肉及び下にあって歯を支持する歯槽骨を攻撃するこれらの疾患を記述するために使用される広い用語である。該疾患は、ヒト及びイヌ科動物を包含する多数の種の恒温動物に存在し、及び疾患の段階若しくは状況又は患者の年齢によって互いに変動する種々の症候群を示す一連の疾患を包含する。前記用語は、いかなる炎症性疾患にも使用され、これは当初は辺縁歯肉領域で発生し、歯槽骨に影響する場合がある。歯周病は歯周組織に影響し、これは歯を取り囲む組織(即ち、歯周靭帯、歯肉、及び歯槽骨)を被覆及び支持する。2つの一般的な歯周病は、歯肉炎(歯肉の炎症)及び歯周炎(歯槽骨の進行性吸収による歯周靭帯の炎症、歯の可動性の増大、及び進行段階での歯の喪失)である。炎症と退行性症状との組み合わせは、複雑性歯周炎という用語で表される。種々の態様の歯周病に使用されるその他の用語は、「若年性歯周炎」、「急性壊死性潰瘍性歯肉炎」、及び「歯槽膿漏」である。
【0006】
歯周病は、次の症状の1つ以上が関与してもよい:歯肉の炎症、歯周ポケットの形成、該歯周ポケットからの出血及び/又は排膿、歯槽骨の吸収、歯のぐらつき及び歯の喪失。歯周病は一般に、細菌によって引き起こされる/関連すると考えられており、細菌は一般に歯の表面上及び歯周ポケット内に生成する歯垢内に存在する。それ故、歯周病を治療するための既知の方法は、抗菌剤類及び/又は抗炎症薬類の使用を包含することが多い。
【0007】
歯周病は成人の歯の喪失の主原因である。歯周病による歯の喪失は35歳で始まる重大な問題であるが、15歳まででも、およそ5人に4人はすでに歯肉炎があり、10人に4人は歯周炎があると推定される。すすぎ用歯磨剤での歯のブラッシングによって達成されるような良好な口腔衛生は、歯周病の発生を低減する場合があるが、必ずしもその発生を予防または排除しない。これは、微生物類が歯周病の開始及び進行のいずれにも寄与するからである。それ故、歯周病の予防又は治療のため、これらの微生物類を単純な機械的すすぎ以外の何らかの手段によって抑制しなければならない。この目的に向けて、治療用歯磨剤類、うがい薬類、及び歯周病の治療方法の開発を目指した大量の研究が行われ、これらは微生物類の抑制に有効である。
【0008】
口腔の悪臭は、口臭又は臭い息としても知られる。米国で2〜9千万人に口臭があると大まかに推定される。この症状の原因は、口の中の嫌気性細菌、特にグラム陰性嫌気性細菌の存在によると一般に考えられている。これらの細菌は、口又は息の悪臭を発生することが知られている揮発性イオウ化合物類(VSC’s)を発生する。口臭は舌の後部背面からだけでなく歯周ポケットからも生じることも当該技術分野において認識されている。さらに、歯肉炎又は歯周病のある人は崩壊した上皮細胞類からの口臭が増える場合がある。上皮細胞類は、炎症が存在する場合、より速く代謝回転する。したがって、より多くの死亡した上皮細胞類が口腔内に残存し、悪臭化合物類へと分解する。
【0009】
口腔細菌叢及び口臭を低減又は排除するためにCPCのような第四級アンモニウム抗菌剤類を含む口内すすぎ剤類の使用することが、しばらくの間認められてきた。過去の開示の例としては、次のものが挙げられる:米国特許第6,440,395号(リビン(Libin));米国特許第6,355,229号(アダミー(Adamy));米国特許第6,344,184号(ローラ(Rolla));米国特許第6,117,417号(ウイックス(Wicks)ら);米国特許第5,980,925号(ジャンパニ(Jampani)ら);米国特許第5,948,390号(ネルソン(Nelson)ら);米国特許第5,686,063号及び米国特許第5,681,549号(いずれもマクラフリン(McLaughlin)ら);米国特許第5,560,906号(スコダリ(Scodari)ら);米国特許第5,407,664号及び米国特許第5,292,527号(いずれもコノパ(Konopa));米国特許第5,405,604号(ホール(Hall));米国特許第5,374,418号及び米国特許第5,370,865号(いずれもヤマギシ(Yamagishi)ら)、米国特許第5,286,479号(ガーリッヒ(Garlich)ら);米国特許第5,525,330号;第5,256,396号;第5,158,763号;第4,370,314号;第4,339,430号;第4,273,759号;第4,224,309号;第4,188,372号;第4,137,303号;第4,123,512号;第4,118,476号;第4,118,475号;第4,118,474号;第4,118,473号;第4,118,472号;第4,110,429号;第4,102,993号;第4,100,270号;第4,089,880号;第4,080,441号;第4,042,679号;及び第3,864,472号並びにPCT国際公開特許WO03/075865(すべてコルゲート・パルモリブ(Colgate Palmolive)に譲渡);米国特許第4,994,262号(シャルボンニュー(Charbonneau)ら);米国特許第4,959,204号;第4,663,154号及び第4,472,373号(すべてライアン(Ryan));米国特許第4 4,325,939号(シャー(Shah));米国特許第4,323,
551号(パーラン・ジュニア(Parran,Jr.));PCT国際公開特許WO96/15770、WO94/27566及びWO94/18939(すべてワーナー・ランバート(Warner-Lambert)に譲渡);PCT国際公開特許WO00/44338(バイオグローブ・テック(Bioglobe Tech.,Inc.)に譲渡)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CPCのような第四級アンモニウム抗菌剤類は口内すすぎ剤に古くから使用されてきたが、増強された抗菌活性を、増大されたユーザー受入れと共に提供する追加処方の必要がなお存在する。本発明は、生物学的利用可能なレベルが増大した第四級アンモニウム抗菌剤及びしたがって改善された効力を提供する口内すすぎ剤組成物に関する。当該組成物は、陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤類を本質的に含まないよう処方される。界面活性剤類は、通常、口腔ケア組成物中の着香油のような非水溶性添加剤類の分散を達成するために用いられる。本発明者は、第四級アンモニウム抗菌剤類を含有する組成物類におけるこのような界面活性剤の存在がその活性を大幅に阻害できることを発見した。具体的には、界面活性剤の使用は生物学的利用可能な抗菌剤の量を低減することが発見され、したがって許容できる殺菌効力の達成に有害である。本発明の口内すすぎ剤組成物類は、それ故、このような陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤類を本質的に含まないように処方され、その結果組成物の殺菌効力が増強され、同時に驚くべきことに外観が美しい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は口腔ケア組成物類、特に治療用すすぎ剤、特に口内すすぎ剤であって、
(a)安全且つ有効な量、好ましくは最小限の有効量の、口腔の疾患及び症状の治療又は予防に好適な1つ以上の第四級アンモニウム抗菌剤と、
(b)大部分の水と組成物の約5重量%〜約30重量%のグリセリンのような多価アルコール保湿剤とを含む製薬上許容できる液体キャリア、
とを含み、当該組成物が陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤を本質的に含まず、及び当該組成物が少なくとも324ppmの生物学的利用可能な第四級アンモニウム抗菌剤を供給する、前記口腔ケア組成物に関する。
【0012】
組成物は、エチルアルコール並びにポリプロピレングリコール、ブチレングリコール及びポリエチレングリコールのような有機溶媒類(これらは通常着香油のような非水溶性構成成分のキャリアとして用いられる)も本質的に含まなくてもよい。ある実施形態において、第四級アンモニウム抗菌剤は塩化セチルピリジニウムを含む。
【0013】
本発明はさらに、ヒト又はその他の動物被験体における、上記組成物を被験体の口腔に適用することによる、歯肉炎、歯垢、歯周病、及び/又は息の悪臭のような口腔の疾患及び症状の治療又は予防のための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する特許請求の範囲でまとめられるが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【0015】
本明細書で使用される全てのパーセント及び割合は、特定の口腔ケア組成物の重量による。すべての測定は、特に指定しない限り25℃で行われる。
【0016】
本明細書では、「含む」とは、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び他の成分を加えることができることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」という用語を包含する。
【0017】
「口腔ケア組成物」とは、通常の使用過程では、特定の治療剤の全身投与の目的で意図的に嚥下されず、むしろ、口腔の活性を目的として実質的にすべての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持される製品を意味する。本発明の口腔ケア組成物は、口内すすぎ剤(又はうがい薬)、口内スプレー又は歯科用溶液の形態であってもよい。
【0018】
「口腔の疾患又は症状」は、本明細書で使用する時、歯周病、歯肉炎、歯周炎、歯周症、成人及び若年性歯周炎、並びにその他の口腔内組織の炎症症状を包含する口腔の疾患、加えて、虫歯、壊死性潰瘍性歯肉炎、及び口又は息の悪臭のようなその他の症状を意味する。具体的には、歯槽感染、歯膿瘍(例えば、顎の蜂窩織炎、顎の骨髄炎)、急性壊死性潰瘍性歯肉炎(即ち、バンサン感染(Vincent’s infection))、感染性口内炎(即ち、頬側粘膜の急性炎症)、及びノーマ(即ち、壊疽性口内炎又は水癌)も包含される。口腔及び歯科感染は、ファインゴールド(Finegold)著、ヒト疾患における嫌気性細菌(Anaerobic Bacteria in Human Diseases)、第4章、78〜104頁、及び第6章115〜154頁(アカデミック・プレス(Academic Press,Inc.)、ニューヨーク、1977年)により完全に開示されている。本発明の組成物及び治療方法は、歯垢、虫歯、歯周病(歯肉炎及び/又は歯周炎)及び息の悪臭の治療又は予防に特に有効である。
【0019】
「安全且つ有効な量」とは、本明細書で使用するとき、健全な医学/歯学的判断の範囲内で、治療すべき状態を著しく(よい方向に)改変するために十分多いが、深刻な副作用を回避するために十分に少ない(適当な損益の比である)、第四級アンモニウム抗菌剤のような活性剤の量を意味する。第四級アンモニウム抗菌剤の安全且つ有効な量は、治療されている特定の症状、治療されている患者の年齢及び身体条件、症状の重篤度、治療の期間、併用治療の性質、使用される特定の第四級アンモニウム化合物、及びそれによって第四級アンモニウム抗菌剤が適用される特定のビヒクルにより変わることになる。
【0020】
本発明は、ヒト又はその他の動物において、塩化セチルピリジニウムのような1つ以上の第四級アンモニウム抗菌剤を安全且つ有効な量で含む口内すすぎ剤組成物を局所に適用することによって、虫歯、歯垢、歯肉炎、歯周病及び息の悪臭を包含する口腔の疾患を治療又は予防する組成物及び方法に関する。本発明の口内すすぎ剤組成物は、陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤類(これらは第四級アンモニウム抗菌剤の生物学的利用能に、及びしたがって殺菌効力に、マイナスの影響があることが見出された)を本質的に含まないように処方される。第四級アンモニウム抗菌剤の生物学的利用性をより大きくすることによって、いまや、活性剤の濃度が非常に低い効果的な組成物を処方することが可能である。第四級アンモニウム抗菌剤類は、効果的であるが、特に効力を提供するために用いられる濃度で不快な味を付与すること及び歯の染色又は変色を引き起こすことが知られていることから、これは重要である。このような低濃度を使用することによって、不快な味及び歯の染色を生じる傾向のいずれもが防止されるであろう。本発明の組成物は、したがって、第四級アンモニウム抗菌剤類に関連するマイナスの観点に対処するために当該技術分野において使用されてきた染色防止及び味覚隠蔽添加剤を必要としない場合がある。さらに、第四級アンモニウム剤の増強された抗菌活性により、本発明の組成物は防腐剤を必要としない場合がある。存在する場合、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸又はパラベンのような防腐剤が使用されてもよい。
【0021】
口腔感染を治療するための本発明の組成物の増強された抗菌効力は、口腔の全体的健康の促進に加え、全身健康の促進に有益であると考えられる。口腔の疾患及び感染の治療のため及び全身又は身体全体の健康促進のための組成物は、PCT国際公開特許WO02/02128;PCT国際公開特許WO02/02096;PCT国際公開特許WO02/02063;及びUS2003/0206874として公開された、(本発明の譲受人に)共に譲渡された出願に開示されている。口腔感染が全身感染を招き得ることは、いまや確立されている。細菌は、口から血流中に入り、体の他の部分に広がって、ヒトの健康を危険に曝し得る。最近の研究で、歯周感染は、心臓疾患、糖尿病、呼吸器疾患及び早期の低体重児出産を包含する多数の深刻な症状の発生に寄与する場合があることが明らかになった。慢性的な歯周感染は、アテローム性動脈硬化症及び血栓塞栓を開始及び悪化する場合がある細菌毒素類及び炎症性サイトカイン類の生物学的負荷を発生することが明らかになった。加えて、既知の歯周病原体、ポルフィロモナス・ジンジバリスが動脈硬化性歯垢から単離された。歯周病は、重大な菌血症のエピソードを誘発することも明らかにされており、心筋梗塞及び脳卒中のような血栓塞栓発症は菌血症に続いて起こりうる。歯周病に関連する細菌、ストレプトコッカス・サングイス及びポルフィロモナス・ジンジバリスは、血小板にこれらの細菌との接触と同時に凝集を引き起こすことが実証された。得られる細菌に誘発された血小板凝集体は、急性心筋梗塞又は脳卒中の原因となる塞栓を形成しうる。
【0022】
増強された抗菌効力を有する本組成物類の使用は、病原性口腔細菌、関連する細菌性毒素及び内毒素の血流への広がり、並びに結果として生じる炎症性サイトカイン及びこれらの口腔病原体類によって促される媒介物を有効に阻害し、それによって、ヒト及びその他の動物において心臓疾患のような全身性疾患の発生に寄与する病原要因を低減すると考えられている。全身性疾患の病原要因を低減することによって、このような疾患が発生するリスクも低減され、被験体の全体的な全身健康がよりよくなる。
【0023】
本組成物は、殺菌効力、即ち、歯垢、虫歯、歯肉炎、及び歯周病のような口腔の局所治療可能な感染及び疾患を引き起こす微生物を死滅させる、及び/又は微生物の代謝を改変する、及び/又は微生物の成長を抑制する効果を提供するための必須成分として第四級アンモニウム抗菌剤を包含する。
【0024】
本発明の組成物に使用される抗菌第四級アンモニウム化合物類としては、第四級窒素上の1又は2個の置換基の炭素鎖長(典型的にはアルキル基)が約8〜約20個、典型的には約10〜約18個の炭素原子であり、残りの置換基(典型的にはアルキル又はベンジル基)がそれより少ない数の炭素原子、例えば約1〜約7個の炭素原子、典型的にはメチル又はエチル基を有するものが挙げられる。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、臭化ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチトイルステアリルアンモニウム(benzyl dimethoylstearyl ammonium chloride)、塩化セチルピリジニウム、第四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化メチルベンゼトニウムは、典型的な第四級アンモニウム抗細菌剤の代表例である。その他の化合物は、米国特許第4,206,215号(ベイリー(Bailey)、1980年6月3日発行)に開示されているようなビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカン類である。ピリジニウム化合物類は好ましい第四級アンモニウム化合物類であり、特に好ましいのは、セチルピリジニウム、又はテトラデシルピリジニウムのハロゲン化物塩類(即ち、塩化物、臭化物、フッ化物及びヨウ化物)である。最も好ましいのは塩化セチルピリジニウムである。第四級アンモニウム抗菌剤類は、組成物の少なくとも約0.035重量%、典型的には約0.045重量%〜約1.0重量%又は約0.05重量%〜約0.10重量%の濃度で本発明に包含される。
【0025】
主題発明の組成物の第2の必須成分は、大部分の水と保湿剤とを含む製薬上許容できる液体キャリアである。保湿剤は、口への湿った感覚を組成物に与える機能、及び特定の保湿剤類では、所望の甘い香味を付与する機能を果たす。保湿剤は、純粋な保湿剤に基づき、一般に約5重量%〜約30重量%、又は特定の実施形態において組成物の約7重量%〜約25重量%含まれる。主題発明の組成物への使用に好適な保湿剤類としては、グリセリンのような食用多価アルコール類が挙げられる。
【0026】
商業的に好適な口腔組成物の調製に用いる水は、好ましくは、イオン含量が少なく、有機不純物を含むべきでない。水は、一般に、本明細書の組成物の約60重量%〜約95重量%、典型的には約75重量%〜約93重量%含まれる。この水の量には、添加される遊離水に加えて、保湿剤など他の物質と共に導入される水を包含する。
【0027】
口内すすぎ剤組成物のため、組成物のpHは約pH3.0〜約pH10.0の範囲をとってもよい。多数の実施形態において、組成物のpHは約5.0〜約8.0である。本組成物のpHは、緩衝剤の使用を通じて調整されてもよい。緩衝剤は、本明細書で使用する時、組成物のpHを約pH3.0〜約pH10.0の範囲に調整するために使用できる剤を指す。緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、本発明の組成物の約0.5重量%〜約10重量%の濃度で投与され得る。
【0028】
本発明の口内すすぎ剤組成物類は、審美的理由から望ましくは透明である。本明細書で使用する時、「透明」は、無色を意味するのでなく、目視で検知した時に可視光線を散乱するのに十分な大きさの粒子が実質的に存在しないことを意味する。
【0029】
本発明の組成物は、陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤類(これらは第四級アンモニウム抗菌剤の生物学的利用能に、及びしたがって殺菌効力に、マイナスの影響があることが見出された)を本質的に含まない。本明細書で使用する時、「陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤類を本質的に含まない」は、当該組成物が第四級アンモニウム抗菌剤の活性を実質的に損なわないような量の界面活性剤しか含まなくてもよいことを意味する。一般に、これは組成物が組成物の約0.1重量%未満の全界面活性剤を含有することを意味する。好ましくは、組成物は、0.05%未満、より好ましくは0.01%未満、最も好ましくは0%の陰イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含有する。好ましくは、組成物は約0.1%未満、より好ましくは0.06%未満の非イオン性界面活性剤を含有する。組成物中に存在する場合、好ましい非イオン性界面活性剤類としては、ポロキサマー類(プルロニック(Pluronic)の商標名で販売)が挙げられる。その他の好適な非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエトキシレート類、アルキルフェノール類のポリエチレンオキシド縮合物類、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物類、長鎖第三級アミンオキシド類、長鎖第三級ホスフィンオキシド類、長鎖ジアルキルスルホキシド類、ソルビタンエステル類(トゥイーンズ(Tweens)の商標名で販売)、並びにこのような物質の混合物が挙げられる。存在する場合、使用してもよい両性界面活性剤としては、ベタイン類、具体的にはコカミドプロピルベタインが挙げられる。存在する場合、好適な陰イオン性界面活性剤としては、アルキルラジカルに8〜20個の炭素原子を有するアルキルスルフェート類の水溶性塩類(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8〜20個の炭素原子を有する脂肪酸類のスルホン化モノグリセリド類の水溶性塩類が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類の陰イオン性界面活性剤の例である。他の好適な陰イオン性界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなサルコシネート類、タウレート類、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0030】
好ましくは、本組成物はエチルアルコールも本質的に含まず、それによって、アルコール依存症の人、妊婦、並びに医学的及び健康問題、若しくは心理的、社会的及び職業関連の理由からアルコールを使用できない又は使用すべきでない人による安全な使用に適している。例えば、多数の人々がアルコールへの耐性がなく、及びアルコールを含有するうがい薬組成物の使用を避けなければならない。さらに、幼児、妊婦、及び高齢者は、大量のアルコールを摂取した時に健康リスクの影響をきわめて受けやすい。一般に、アルコール中毒の回復は、アルコールとの口での接触並びに特定の宗教的信条のある人物を避けなければならない。口渇症候群にかかっている又は特定の薬剤を使用している人も、アルコールが口組織から水分を除去し口渇症候群又は感覚を悪化する傾向があることから、アルコールを含有するうがい薬組成物類(alcohol containing mouthwash compositions)を避けることを好む場合が多い。本質的にアルコールなしで配合することは、アルコールに付随する「焼ける」感覚を排除することによって製品の味にいくらかの利点も提供する場合がある。
【0031】
(口内すすぎ剤における第四級アンモニウム抗菌剤類の作用機構及び生物学的利用能)
うがい薬処方類における第四級アンモニウム抗菌剤類の生物学的利用能及び生物活性の評価においては、生体外ディスク・リテンション・アッセイ(Disk Retention Assay)(DRA)を、薬剤の生物学的利用能の推定に使用でき、加えてエクスビボの歯垢糖分解再生モデル(Plaque Glycolysis and Regrowth Model)(PGRM)を生物活性の評価に使用できる(S.J.ハンターリンデール(Hunter-Rinderle)ら、「生体外ディスク・リテンション及びエクスビボ歯垢糖分解法を用いた塩化セチルピリジニウム含有うがい薬の評価(Evaluation of Cetylpyridinium Chloride-Containing Mouthwashes Using In Vitro Disk Retention and Ex Vivo Plaque Glycolysis Methods)」、J.Clin.Den.1997年、8;107〜113頁)。これらの検査は、提案されたOTCモノグラフ(米国官報(Federal Register)第68巻、第103号、パート356、「店頭販売の人体用口腔ヘルスケア薬剤製品;抗歯肉炎/抗歯垢薬剤製品;モノグラフの確立:提案規則(Oral Health Care Drug Products For Over-The-Counter Human Use;Antigingivitis/Antiplaque Drug Products;Establishment of a Monograph: Proposed Rules)」)で使用が推奨されている。
【0032】
塩化セチルピリジニウムを第四級アンモニウム抗菌剤として使用した検査の結果を以下に詳述する。
【0033】
塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinum chloride)(CPC)は、脂肪族鎖(C=16)を有する第四級アンモニウム化合物であり、陽イオン性界面活性剤に分類される(米国薬局方(The United States Pharmacopeia)−23、米国医薬品集(The National Formulary)18、329頁、1995年)。それ自体、正に帯電した親水性領域と疎水性領域との両方を有する。CPCは、多数の口内細菌に対する抗菌活性を有することが証明された(R.N.スミス(Smith)ら、「塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジンジグルコネート及びオクテニジンジヒドロクロリドによる口内細菌間の属間共凝集の阻害(Inhibition of Intergeneric Co-aggregation Among Oral Bacteria by Cetylpyridinium Chloride,Chlorhexidine Digluconate and Octenidine Dihydrochloride)」、歯周研究誌(J.of Periodontal Research)、1991年、26:422〜429頁)。CPCの作用機構は、この正に帯電した分子が、細菌細胞壁上の負に帯電した部位と相互作用する能力に依存する。
【0034】
生理学的条件下で、細菌細胞は正味の負電荷を保有する。細菌がCPCに曝露した時、細菌表面の負に帯電した基に関連する正に帯電した親水基が、CPCの疎水性部分の細胞膜との相互作用を可能にし、その結果細胞構成成分の漏出、細菌代謝の撹乱(disruption)、細胞成長の阻害及び細胞の死滅を生じる(A.A.シャイエ(Scheie)、「現在知られているクロロヘキシジン以外の抗歯垢剤の作用様式(Modes of Action of Currently Known Chemical Antiplaque Agents Other Than Chlorhexidine)」、J.Dent.Res.、1989年、68:1606〜1616頁、;R.N.スミス(Smith)ら、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジンジグルコネート及びオクテニジンジヒドロクロリドによる口内細菌間の属間共凝集の阻害(Inhibition of Intergeneric Co-aggregation Among Oral Bacteria by Cetylpyridinium Chloride, Chlorhexidine Digluconate and Octenidine Dihydrochloride)」、J.Period.Res.、1991年、26:422〜429頁;J.J.メリアノス(Merianos)、「第四級アンモニウム抗菌化合物(Quaternary Ammonium Antimicrobial Compounds)」、消毒、滅菌及び保存(Disinfection,Sterilization and Preservation)、1991年、S.S.ブロック(Block)編、第4版、225〜255頁)。
【0035】
CPCの抗菌活性に重要なのは、細菌及び粘膜表面への付着促進へのその正に帯電した親水性領域の利用可能性である。示すように、細菌表面への付着はCPC曝露中の細胞分解を達成するために必要であり、口腔粘膜表面への結合は治療中及び治療後のCPC貯蔵所の確立を助ける。一般的な賦形剤類、特に市販口腔ケア処方類に添加される界面活性剤類は、CPCの抗菌活性を大幅に減少し又は完全に中和さえする(S.ジェンキンス(Jenkins)ら、「いくつかの口内すすぎ剤製品の唾液細菌数に対する影響の大きさ及び持続時間(The Magnitude and Duration of the Effects of Some Mouthrinse Products on Salivary Bacteria Counts)」、臨床歯周病学誌(J.Clin.Periodontol.)、1994年、21:474〜485頁;M.ペーダー(Pader)、「うがい薬処方(Mouthwash Formulation)」、口腔衛生製品及び実務(Oral Hygiene Products and Practice)、化粧品科学技術シリーズ(Cosmetic Science and Technology Series)、1988年、489〜516頁)。CPCの活性低下の度合いは、CPC処方に添加する賦形剤の選択及び濃度によって決まる。
【0036】
CPC生物学的利用能及び生物活性の評価においては、DRA及びPGRM検査が使用される。本発明の第四級アンモニウム化合物類を包含する適切な抗菌剤の分類内で、DRA及びPGRM試験は、このような活性物質類を含有する口腔ケア処方での治療による臨床結果、例えば、歯垢及び歯肉炎評点の変化との広い相関関係が得られることが実証された。
【0037】
(DRA性能試験方法)
この方法は、臨床的効力に必要な「遊離の」(「結合していない」)又は「生物学的利用可能な」CPCの濃度を定量的に決定するため、約0.03%〜約0.1%のCPCを含有する口内すすぎ剤処方類を分析するための性能検査として設計されている。DRA検査は、未希釈の口内すすぎ剤試料の濾過中に、標準化されたセルロースフィルターディスクに「結合」するCPCの量を測定する。「生物学的利用可能な」CPCは濾過中にセルロース繊維上のヒドロキシル基に結合するが、口内すすぎ剤構成成分との相互作用を通じて「生物学的利用不可能」(又は「結合した」)となったCPCは濾紙を単に通過し、即ち、化合物上の正電荷が負に帯電したセルロースディスクへの結合にもはや利用できない。この方法で、DRA試験は、口内すすぎ剤の使用中に細菌及び粘膜表面への結合に利用可能なCPCの量の予測を提供する。CPC利用可能性のDRA測定値は、生体外の微生物学的検査及び生体内の細菌死滅試験の結果と正の相関関係がある。歴史的に、セルロース繊維は薬活性物質の生物活性を同様に監視するため、他の用途に使用されてきた(「乳製品(Dairy Products)」、化学分析化学者協会公式分析法(Official Methods of Analysis of the Association of Chemical Analytical Chemists)、第13版、1980年、16章:256頁)。
【0038】
「生物学的利用可能な」CPCは、セルロースディスクに結合又は吸着されたCPCの量である。これは、標準化されたセルロースディスクへの曝露の前後で口内すすぎ剤中のCPC濃度の差を測定することによって決定される。該方法は、バリデーションされ、許容可能な確度、精度、及び選択性で行われることが証明された。この試験のより詳細な説明を以下に示す。
【0039】
(PGRM試験方法)
PGRM(歯垢糖分解再生モデル)は、一夜の新規歯垢バイオフィルムの糖分解反応に対する一般化作用を包含する広範な抗菌活性を有する抗歯垢及び抗歯肉炎剤の生体内治療的生物活性を評価するために使用される。当該モデルは、歯垢が口内バイオフィルムとして臨床条件と同様に新規に処置されることから、歯垢の局所処置が生体外で発生することを確実とするよう特異的に設計されている。モデルは、すすぎ剤曝露の後、処置した歯垢試料を時間感覚をあけて試料採取することができ、それによって処置後の抗菌剤の活性保持を評価することができる。最後に、該モデルは、処置比較のための内部対照として役立てるため、被験体から採取した未処置の歯垢試料を使用する。該方法は原則として、生存/死滅細菌個体群、処置されたバイオフィルムの再生又はマトリックス再生産能力及び処置されたバイオフィルムの代謝活性の評価を包含する、局所処方のその場(in situ)での抗歯垢/抗菌影響の複数の分析的特性決定が可能である。該試験の糖分解部分は、媒地緩衝剤中でのpH低下として又は生産された酸類の評価によって容易に検査される、処置されたバイオフィルム細菌が食事性の糖を摂取及び代謝して酸性最終生成物を生産する能力を評価する。該試験の酸部分は、処方活性を評価するための、便利で、特異的及び敏感な標的を提供し、これは主に処方の変動の同等性の確立、及びしたがって臨床的有効性の検証に関係する。重要なことに、該検査は、類似の臨床結果を有する数点の製品の臨床的な歯肉炎及び出血評点との強力な相関関係が示された。
【0040】
明らかに、PGRM酸還元部分を生物学的同等性のマーカーとして使用するには、抗菌剤がこれに関して強力な特性を示すことが重要であり、これはCPCに当てはまる。抗菌組成物、細菌再生活性、エキソポリサッカライド合成、揮発性イオウ発生、ペプチド異化作用のような別の効力エンドポイントもPGRM試験に適用できるが、該検査の一般的な酸代謝活性はCPCの一般的処方スクリーニングに最も容易に適する。
【0041】
(「活性な」(生物学的利用可能な)及び「不活化された」(生物学的利用不可能な)CPCを含有する口内すすぎ剤処方の有効性基準及びDRA性能試験)
約0.035〜約0.1%のCPCを含む口内すすぎ剤処方は、検査結果が、生物学的利用可能なCPCの濃度が≧324ppmであることを示した場合、DRA試験に合格する。例えば、0.05%のCPCを72%の生物学的利用能で含む処方は360ppmのCPCを提供する。≧324ppmという生物学的利用可能な濃度のCPCを含有する製品の試験は、プラスの臨床(抗歯肉炎、抗歯垢)結果を実証する。最終製品のCPC生物学的利用能の決定は、それが作用部位での付着に利用できる活性物質の量(濃度)を容易に定義することから、製品性能にとって重要である。正に帯電した(陽イオン性の)親水性領域は抗菌活性にきわめて重要であることから、この陽イオン性基の活性を減少する又は当該基と競争するいかなる処方構成成分も製品を不活性化する場合がある。
【0042】
界面活性剤の添加が口内すすぎ剤処方中のCPCの生物学的利用能に与えるマイナスの影響は、下に示すように、異なる濃度のポロキサマー非イオン性界面活性剤の試験の結果で実証される。0.1%以上の界面活性剤の濃度を使用すると、許容不可能な生物学的利用能のCPCが得られる。望ましくは、0.05%のCPCを含有する処方は、少なくとも約324ppmの生物学的利用可能なCPCを供給するために、少なくとも約65%の生物学的利用能を有する。0.04%のような、より低濃度のCPCを含有する処方は、効力のために最低限必要な生物学的利用可能なCPCの濃度を供給するために少なくとも約81%の生物学的利用能を有する必要がある。
【表1】

【0043】
(製薬上許容できる賦形剤)
「製薬上許容できる賦形剤」又は「製薬上許容できる口腔キャリア」は、本明細書で使用する時、局所経口投与に適した1つ以上の混和性のある希釈剤又は添加剤を意味する。本明細書で使用する時、「混和性のある」とは、組成物の構成成分が、組成物の安定性及び/又は有効性を実質的に減少させるような様式で相互作用することなしに混合され得ることを意味する。
【0044】
本発明のキャリア又は賦形剤は、通常の及び従来の口内すすぎ剤及び口内スプレーの構成成分、例えば、米国特許第3,988,433号(ベネディクト(Benedict))(例えば、水、着香剤及び甘味剤等)を包含することができる。本発明の組成物の調製に適したキャリアは、当該技術分野において周知である。それは、味、価格、貯蔵安定性等のような二次的考察に応じて選択される。口内すすぎ剤及び口内スプレーの構成成分は、典型的には、水(約60%〜約95%)、エタノール(約0%〜約30%)、保湿剤(約5%〜約30%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.01%〜約3%)、及び着色剤(約0.001%〜約0.5%)のうち1つ以上を包含する。このような口内すすぎ剤及び口内スプレーはまた、虫歯予防剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)、又は抗結石剤(約0.1%〜約3%)の1つ以上を包含してもよい。
【0045】
主題発明の別の好ましい組成物は歯科用溶液である。歯科用溶液の構成成分は、一般に、水及び保湿剤(約90%〜約99%)、増粘剤(0%〜約5%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、及び甘味剤(約0.1%〜約3%)のうち1つ以上を包含する。
【0046】
本発明の組成物に包含されてもよいキャリア又は口腔ケア賦形剤の種類には、特定の非限定例とともに、次のものが挙げられる。
【0047】
(フッ化物イオン)
本発明の組成物は、遊離フッ化物イオンも組み込んでもよい。好ましい遊離フッ化物イオンは、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化インジウム、およびモノフルオロリン酸ナトリウムにより提供されることができる。最も好ましい遊離フッ化物イオンは、フッ化ナトリウム供給源である。1960年7月26日にノリス(Norris)らに発行された米国特許第2,946,725号及び1972年7月18日にウィダー(Widder)らに発行された米国特許第3,678,154号は、このような塩類並びにその他を開示している。本組成物は、約50ppm〜約3500ppm、好ましくは約500ppm〜約3000ppmの遊離フッ化物イオンを含有することができる。
【0048】
(着香剤および甘味剤)
本組成物には着香剤も加えることができる。好適な着香剤としては、ウインターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブの芽の油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、オランダセリ油、オキサノン(oxanone)、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、CGAとして知られるシンナムアルデヒドグリセロールアセタール、及びこれらの混合物が挙げられる。着香剤類は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0049】
使用できる甘味剤としては、スクロース、グルコース、サッカリン、ブドウ糖、果糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルト−ス、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム及びシクラメート塩、特にシクラメートナトリウム及びサッカリンナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。組成物は、これらの試剤を組成物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.01重量%〜約1重量%含有するのが好ましい。
【0050】
本発明の組成物では、任意成分として、着香剤及び甘味剤に加え、冷却剤、唾液分泌剤、加温剤及び局部麻酔剤を使用することができる。これらの剤は組成物中に、組成物の約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の濃度で存在する。
【0051】
冷却剤は、様々な物質のいかなるものであることもできる。このような物質としては、カルボキサミド類、メントール、ケタール類、ジオール類、及びこれらの混合物が挙げられる。本組成物に好ましい冷却剤は、「WS−3」として商業的に既知であるN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、「WS−23」として既知であるN,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、及びこれらの混合物などの、パラメンタンカルボキシアミド剤である。追加の好ましい冷却剤は、メンソール、高砂(Takasago)製のTK−10として既知である3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、ハーマン・アンド・ライマー(Haarmann and Reimer)製のMGAとして既知であるメントングリセロールアセタール、及びハーマン・アンド・ライマー製のフレスコラト(Frescolat)(登録商標)として既知であるメンチルラクテートから成る群から選択される。本明細書で使用する時、メントール及びメンチルという用語には、これらの化合物の右旋性異性体及び左旋性異性体、並びにこれらのラセミ混合物が包含される。TK−10は米国特許第4,459,425号(アマノ(Amano)ら、1984年7月10日発行)に記載されている。WS−3及び他の剤は、米国特許第4,136,163号(ワトソン(Watson)ら、1979年1月23日発行)に記載されている。
【0052】
本発明の唾液分泌剤としては、高砂(Takasago)製のジャンブ(Jambu)(登録商標)が挙げられる。加温剤としては、トウガラシ、及びベンジルニコチネートのようなニコチネートエステル類が挙げられる。局部麻酔剤としては、ベンゾカイン、リドカイン、クローブの芽の油、及びエタノールが挙げられる。
【0053】
(抗結石剤)
本組成物は、ピロホスフェート塩から提供されるピロホスフェートのような抗結石剤も含んでもよい。本組成物に有用なピロリンホスフェート塩としては、ピロリン酸二アルカリ金属塩類、ピロリン酸四アルカリ金属塩類、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい種は、水和並びに無水和の形態の、二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)である。主に溶解したピロホスフェートを含む組成物とは、少なくとも1つのピロホスフェートイオン供給源が、少なくとも約1.0%の遊離ピロホスフェートイオンを提供するのに十分な量である組成物を指す。遊離ピロホスフェートイオン類の量は、約1%〜約15%、好ましくは約1.5%〜約10%、最も好ましくは約2%〜約6%であってもよい。ピロホスフェート塩類は、カーク&オスマー(Kirk & Othmer)、工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)、第3版、第17巻、ワイリーインターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)、(1982年)に、より詳細に記載されている。
【0054】
ピロホスフェート塩の代わりに又はピロホスフェート塩と組み合わせて用いられる任意の剤としては、例えば米国特許第4,627,977号(ガファー(Gaffar)ら)に記載されているような、ポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー類(例えば、ガントレツ(Gantrez))を含む合成アニオン性ポリマー類として既知の物質などが挙げられ、並びに、例えばポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリホスフェート類(例えば、トリポリリン酸;ヘキサメタホスフェート)、ジホスホネート類(例えば、EHDP;AHP)、ポリペプチド類(ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸など)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
(追加の活性剤)
特定の形態の治療において、同じデリバリーシステムの治療薬の組み合わせが最適な影響を得るために有用な場合があることが認識されている。それ故、例えば、本組成物類は、他の抗菌/抗歯垢剤類、バイオフィルム阻害剤類、抗炎症剤類(シクロオキシゲナーゼ阻害物質類及びリポキシゲナーゼ阻害物質類を包含する)、H2−拮抗物質類、メタロプロテイナーゼ阻害物質類、サイトカイン受容体拮抗物質類、リポ多糖錯化剤類、組織成長因子類、免疫活性化剤類、細胞酸化還元調整剤類(酸化防止剤)、鎮痛剤類、ホルモン類、ビタミン類、及びミネラル類のような追加の剤を含んでもよい。
【0056】
任意に存在してもよいその他の抗菌抗歯垢剤類としては、これらに限定されるものではないが、トリクロサン、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール(メルクインデックス(The Merck Index)、第11版(1989年)、1529頁(エントリーNo.9573)米国特許第3,506,720号、及び欧州特許出願第0,251,591号(ビーチャム・グループ(Beecham Group,PLC)、1988年1月7日発行)に記載);チモール及びメントール、クロルヘキシジン(メルクインデックス(Merck Index)、No.2090)、アレキシジン(メルクインデックス(Merck Index)、No.222)のような精油類;ヘキセチジン(メルクインデックス(Merck Index)、No.4624);サンギナリン(メルクインデックス(Merck Index)、No.8320);サリチルアニリド(メルクインデックス(Merck Index)、No.8299);オクテニジン;デルモピノール、オクタピノール、及びその他のピペリジノ誘導体類;ナイアシン製剤類;亜鉛/スズイオン供給源;オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、及びメトロニダゾールのような抗生物質類;並びに上記抗菌抗歯垢剤類の類似物類及び塩類が挙げられる。存在する場合、追加の抗菌性坑歯垢剤は、一般に、組成物の約0.1重量%〜約5重量%含まれる。
【0057】
抗炎症剤も、本発明の口腔用組成物に含まれてもよい。そのような剤には、これらに限られないが、アスピリン、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、アスピリン、ケトプロフェン、ピロキシカム及びメクロフェナム酸、並びにこれらの混合物などの、非ステロイド系抗炎症剤が挙げられる。存在する場合には、抗炎症剤は一般に、本発明の組成物の約0.001重量%〜約5重量%含まれる。ケトロラクは、米国特許第5,626,838号(1997年5月6日発行)に記載されている。
【0058】
本発明は、米国特許第5,294,433号(シンガー(Singer)ら、1994年3月15日発行)に開示されている化合物を含めた、選択的H−2拮抗剤も任意に含んでよい。
【0059】
栄養素は、口腔の状態を改善させることがあり、本発明の口腔ケア組成物に包含されてもよい。栄養素には、ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、経腸栄養補給剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
本発明の組成物に包含することができるミネラルには、カルシウム、リン、フッ化物、亜鉛、マンガン、カリウム及びこれらの混合物が挙げられる。これらのミネラルは、ドラッグ・ファクツ・アンド・コンパリソンズ(Drug Facts and Comparisons)(ルーズリーフ式薬物情報サービス)、ウォルターズ・クルエル・カンパニー(Wolters Kluer Company)、(ミズーリ州セントルイス)(版権)1997年、10〜17頁に開示されている。
【0061】
その他の栄養素類及びビタミン類は、ミネラル類と共に包含されるか又は別に使用されることができる。例としては、α−トコフェロール(ビタミンE);補酵素Q10;ピロロキノリンキノン(pyrroloquinoneline quinone)(PQQ);ビタミンA、C及びD;リボフラビン、チアミン、ナイアシン及びナイアシンアミド、パントテン酸塩、ピリドキシン、葉酸、シアノコバラミン及びビオチンのようなBビタミン類;N−アセチルシステイン;バイオフラボノイド類;並びにこれらの混合物が挙げられる。このような栄養素類及びビタミン類は、ドラッグ・ファクツ・アンド・コンパリソンズ(Drug Facts and Comparisons)(ルーズリーフ式薬物情報サービス)、ウォルターズ・クルエル・カンパニー(Wolters Kluer Company)、(ミズーリ州セントルイス)(版権)1997年、3〜10頁に開示されている。
【0062】
(組成物の使用)
第四級アンモニウム抗菌剤を含む本組成物の安全且つ有効な量が、上記の口腔の疾患又は症状の治療又は予防のため、数種類の従来方法で、口腔組織、歯肉組織、及び/又は歯の表面に接触するように口腔に局所適用されてもよい。例えば、歯肉又は粘膜組織を溶液(例えば、口内すすぎ剤又は口内スプレー)ですすいでもよい。
【0063】
息の悪臭の排除又は減少に関して、本発明の組成物及び方法は、例えば約3時間以上、好ましくは約8〜12時間の長時間持続する息の保護を提供する。
【0064】
多数の実施形態において、口内すすぎ剤及び口内スプレー組成物類は、好ましくは、組成物の少なくとも約0.035重量%、典型的には約0.045重量%〜約1.0重量%及び約0.05重量%〜約0.10重量%の塩化セチルピリジニウム(CPC)を活性抗菌構成成分として含む。息の悪臭を包含する口腔の疾患又は症状の治療方法(並びに長時間持続する息の保護)については、安全且つ有効な量のCPC組成物を、例えば口内すすぎ剤で少なくとも約10秒又は少なくとも約20秒から、好ましくは約30秒から約60秒までの間すすぐことによって、歯肉/粘膜組織及び/又は歯に適用する。該方法は、このような接触に続いて、組成物の大部分の喀出を伴う。このような接触の頻度は、好ましくは、1週間当たり約1回から1日当たり約4回まで、典型的には1週間当たり約3回から1日当たり約3回まで、及び好ましくは1日当たり約1回から1日当たり約2回までであってもよい。このような治療の期間は、典型的には約1日から一生涯の範囲である。特定の口腔ケアの疾患又は状態では、治療の期間は、治療する口腔の疾患又は状態の重症度、使用する特定の送達形態、及び患者の治療に対する反応によって異なる。歯周病の治療のためのような、歯周ポケットへの提供が望ましい場合、口内すすぎ剤を注射器又は水注入装置を使用して歯周ポケットに供給することができる。これらの装置は当業者に既知である。この種の装置としては、テレダイン・コーポレーション(Teledyne Corporation)の「ウオーターピック(Water Pik)」が挙げられる。注水後、被験体は口内の口内すすぎ剤を、背側舌(dorsal tongue)及びその他の歯肉及び粘膜表面も覆うようにグチュグチュとすすぐことができる。本組成物は、練り歯磨き、非研磨性ジェル、トゥースジェル等のような他の口腔ケア製品と共に使用してもよい。
【0065】
以下の非限定的な実施例により、本発明の範囲内の好ましい実施形態についてさらに説明する。本発明の範囲から逸脱することなく、これらの例の多くの変形形態が可能である。特に指定しない限り、本明細書で使用される割合は全て組成物の重量によるものである。
【実施例】
【0066】
以下の口腔ケア口内すすぎ処方類は、以下を混合することによって従来方法によって作製される:
【表2】

【0067】
本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)安全且つ有効な量の1つ又は混合物の第四級アンモニウム抗菌剤と
(b)大部分の水と組成物の5重量%〜30重量%の多価アルコール保湿剤とを含む製薬上許容できる液体キャリア、
とを含む口腔ケア口内すすぎ剤組成物であって、当該組成物が陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤を本質的に含まず、及び当該組成物が少なくとも324ppmの生物学的利用可能な第四級アンモニウム抗菌剤を供給することを含む、前記口腔ケア口内すすぎ剤組成物。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム抗菌剤が、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、臭化ドミフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の口内すすぎ剤組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記組成物の少なくとも0.035重量%、好ましくは0.045重量%〜1重量%の塩化セチルピリジニウムを含む、請求項2に記載の口内すすぎ剤組成物。
【請求項4】
前記組成物の7重量%〜25重量%のグリセリン保湿剤を含む、請求項2又は3に記載の口内すすぎ剤組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記組成物の0重量%〜30重量%のエチルアルコールをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の口内すすぎ剤組成物。
【請求項6】
前記組成物が、追加の口腔ケア活性剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の口内すすぎ剤組成物。
【請求項7】
前記追加の口腔ケア活性剤が、前記組成物の0.1重量%〜5重量%の濃度の抗菌/抗歯垢剤である、請求項6に記載の口内すすぎ剤組成物。
【請求項8】
歯垢、虫歯、歯周病、歯肉炎、及び息の悪臭の治療又は予防のための口腔ケア組成物の製造における1つ又は混合物の第四級アンモニウム抗菌剤の使用であって、当該組成物が、大部分の水と前記組成物の5重量%〜30重量%の多価アルコール保湿剤とを含む製薬上許容できる液体キャリアを含み、当該組成物が陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤を本質的に含まず並びに当該組成物が少なくとも324ppmの生物学的利用可能な第四級アンモニウム抗菌剤を供給する、前記第四級アンモニウム抗菌剤の使用。
【請求項9】
前記組成物が、追加の口腔ケア活性剤をさらに含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物中の前記追加の口腔ケア活性剤が、前記組成物の0.1重量%〜5重量%の濃度の抗菌/抗歯垢剤を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、前記組成物の少なくとも0.035重量%から、好ましくは0.045重量%から1重量%までの塩化セチルピリジニウムを含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−518828(P2007−518828A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551528(P2006−551528)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/002917
【国際公開番号】WO2005/072693
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】