説明

生物学的医療用発泡物品

本発明は、ポリマー分散液を創傷上に噴霧することによって得られる、創傷のための生物学的医療用発泡物品に関する。このポリマー分散液は、このポリマー分散液を創傷の表面上に噴霧した場合に創傷の3次元形状に適合する、3次元成形体に変形され、正確な適合方法で創傷の表面を覆うことに加えて、創傷が深さ方向に完全に手当てされることを保証する。本発明の生物学的医療用発泡物品は、慢性的創傷の処置に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを創傷の上に噴霧することによって形成される創傷領域のための生物学的医療用(biomedical)発泡物品に関する。創傷表面の上に噴霧されるポリマーは、創傷の空間的形状に適合する3次元体を形成し、同時に創傷表面を保護するのみならず、完全で正確に適合した創傷の詰め物を深さ方向ならびに他の方向において保証し、同時に高度な吸湿性を有している。本発明の生物学的医療用発泡物品は、慢性的創傷の処置に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
慢性的創傷は、2−3週間の生理学的治療時間以内において上皮で覆われない創傷である。群を抜いて多い慢性的創傷は、褥瘡性潰瘍(慢性的圧力により起こる。)、脚の慢性的静脈性潰瘍(慢性的静脈機能不全により起こる。)および糖尿病性潰瘍(脈管障害および神経障害により起こる。)である。
【0003】
慢性的創傷の標準的処置は、さまざまな創傷接触材料を使用する「湿潤創傷治療」の原則に従う。湿潤創傷処置の典型的な材料が、結合した繊維質不織繊維形態で創傷上に置かれて最適な創傷被覆を得、湿潤創傷環境を維持することによって、創傷の治療を促進する。
【0004】
しかしながら、在来の処置方法を慢性的創傷に拡大適用するのは、在来の創傷接触材料が単に創傷表面を覆っているだけで、創傷を3次元的にパックしていない(特に深さ方向にパックしていない)ので、浸出液取扱いに関して欠失をもたらし、感染のリスクを高めるだけでなく創傷端部の解離リスクも高める。
【0005】
例えば、空洞式創傷の場合に創傷詰め物が存在しないと浸出液が創傷の底に溜まり創傷の治療を妨げるのみならず、創傷端部の健康な組織を柔らかくしてしまい、最終的には解離させてしまう。過剰な浸出液の存在は、さらに感染の発生を高める。
【0006】
EP171268B1は、多孔性袋の中に含有された吸収材料の複数の片を含む創傷の包帯法について開示している。しかしながら、かかる創傷包帯法は、深さ方向および他の方向に正確に適合した創傷詰め物を常にはもたらさないという欠点がある。さらに、かかる創傷包帯法は取扱いが複雑で、無菌状態を維持するのが難しいこともある。
【0007】
DE3638379は、室温硬化に基づき、創傷の輪郭に適合できる弾力性のあるポリシロキサン発泡体材料を提供する2成分ポリ有機シロキサン組成物の医療創傷包帯法を開示している。しかしながら、この様にして形成されたポリシロキサン発泡体材料は、高度に吸湿性ではないので、多量の創傷流体を分泌する創傷に使用することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、創傷接触材料の形状が創傷の面積および深さに適合していることによって、多くの慢性的創傷に典型的であるしばしば深いおよび/または複雑な創傷の形状に最適に適合する、新規の創傷接触材料の必要性が存在する。さらに、かかる創傷接触材料は、適用が簡単で衛生的でなければならず、好ましくは抗菌性、苦痛軽減および/または創傷治療促進の効果を生み出すものでなければならない。さらに重要な性質は、急速に硬化することであり創傷接触材料を形成する材料の部分に対して十分に液体吸収性(吸水性)であることである。
【0009】
有効に使用するための必要条件は、生物学的医療用発泡物品が、5分以下、好ましくは2分以下、より好ましくは1分以下、最も好ましくは30秒未満において急速に硬化すること(すなわち、粘度の感覚的モニタリングによって測定して、液体ポリマーが固体発泡物品に固化すること)である。
【0010】
さらなる必要条件は、(DIN EN13726−1Part3.2に基づき測定して)100から2500%、好ましくは100%から2000%、より好ましくは100から1500%および最も好ましくは300から1500%の生理食塩水吸収性および(DIN EN13726−2Part3.2に基づき測定して)24時間当たり2000から12000g/m、好ましくは24時間当たり3000から10000g/m、より好ましくは24時間当たり3000から5000g/mの水蒸気透過速度である。これは、発泡体が少なくともいくらかの開放孔含有量を有していることを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、この目的は以下に説明する本発明の生物学的医療用発泡物品によって達成されることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
したがって、本発明は第1態様において、少なくともいくらかの開放孔含有量を有し、液体形態から固体発泡体部品に硬化するのに、5分以上、好ましくは2分以上、より好ましくは1分以上を必要としなく、最も好ましくは30秒未満であることを必要条件とする多孔性材料を含む生物学的医療用発泡物品を提供する。
【0013】
かかる生物学的医療用発泡物品は、(DIN EN13726−2Part3.2に基づき測定して)100から2500%、より好ましくは100%から2000%、さらにより好ましくは100から1500%および特に300から1500%の生理食塩水吸収性をさらに有していることが好ましい。
【0014】
さらに、かかる生物学的医療用発泡物品は、(DIN EN13726−2Part3.2に基づき測定して)24時間当たり2000から12000g/m、好ましくは24時間当たり3000から10000g/m、最も好ましくは24時間当たりの3000から5000g/mの水蒸気透過速度を加えて有していることが好ましい。
【0015】
本発明は、少なくとも1つのイオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンおよびまた少なくとも1つの凝固剤およびまた場合により広域抗生物質、防腐剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗病原性ペプチド、局部麻酔薬、非ステロイド性抗炎症剤、アヘン剤および収斂剤、創傷治療剤、顆粒促進活性剤からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む組成物を基質上に噴霧することによって得られる生物学的医療用発泡物品を提供する。
【0016】
1つまたは複数の創傷部位を有する動物またはヒトの皮膚が好ましい基質である。
【0017】
噴霧を適用することによる利点は、特に製品取扱いに存在する。滅菌噴霧剤からの既製の溶液を適用することによって、在来の方法の材料を開梱し、所定の寸法に切断し取り付けることを取り除くことができる。すなわち、適用を患者自身でも実施することができ、包帯交換の作業を迅速化し、包帯交換の際に人が直接創傷に触れることを削除できるのでより衛生的である。
【0018】
連続相としての水性媒体を有するイオン性ポリマーの分散液が好ましい。
【0019】
上記の種類の適切なイオン性ポリマーの分散液は、例えば、イオン性ゴムラテックスの分散液、イオン性ポリウレタンの分散液、イオン性(メタ)アクリレートコポリマーの分散液、並びに、炭水化物(例えば、セルロース誘導体、例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸コハク酸セルロース(CAS)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、加えてキチン、ヒアルロナン、デキストリン、セルロースまたは澱粉)に基づく天然に依存するバイオポリマーおよびまたさらなる天然に存在するバイオポリマー(例えばリグニンまたはカゼイン)の分散液などである。
【0020】
適切な(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくは40重量%から95重量%のフリーラジカル的に重合されたアクリル酸またはメタアクリル酸のC−からC−アルキルエステルから形成される(メタ)アクリレートコポリマーであり、アルキル基中にアニオン性基を有する5重量%から60重量%の(メタ)アクリレートモノマーを含有する。(メタ)アクリレートコポリマーは、フリーラジカル的に重合されたアクリル酸またはメタアクリル酸のCからC−アルキルエステルの、40重量%から100重量%、好ましくは45重量%から99重量%、特に85重量%から95重量%までの範囲からなり、アルキル基中にアニオン性基を有している(メタ)アクリレートモノマーを0重量%から60重量%、好ましくは1重量%から55重量%、特に5重量%から15重量%含むことができる。
【0021】
一般に、言及した割合の合計は100重量%である。しかしながら、0重量%から10重量%、例えば1重量%から5重量%の少量のビニル的に共重合できるモノマー、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルアクリレートを、機能障害または基本的性質の変更をもたらすことなく、さらに付加的に含めることもできる。
【0022】
好ましいイオン性ポリマーの分散液は、水性イオン性ポリウレタンの分散液、脂肪族ポリウレタンの分散液およびまたポリウレタンハイブリットのエマルジョンである。特に好ましいポリマー分散液は、水性アニオン性親水性ポリウレタンの分散液である。
【0023】
特に非常に好ましいのは、以下により得られるアニオン性親水性ポリウレタンの水性分散液である。これは、
A)イソシアネート官能性プレポリマー(このイソシアネート官能性ポリマーは、
A1)有機ポリイソシアネート、
A2)400から8000g/モルの範囲、好ましくは400から6000g/モルの範囲、より好ましくは600から3000g/モルの範囲の数平均分子量および1.5から6の範囲、好ましくは1.8から3の範囲、より好ましくは1.9から2.1の範囲のOH官能価を有するポリマーポリオール、および
A3)場合によって、62から399g/モルの範囲の分子量を有するヒドロキシル官能性化合物、および
A4)場合によって、イソシアネート反応性、アニオン性または潜在的にアニオン性および/または場合によって非イオン性の親水性付与剤から調製されるものである。)、ならびに
B)これらの遊離NCO基(この遊離NCO基は、次いで、全体的にまたは部分的に、
B1)場合によって、32から400g/モルの範囲の分子量を有するアミノ官能性化合物と、および
B2)イソシアネート反応性、好ましくはアミノ官能性、アニオン性または潜在的にアニオン性の親水性付与剤と反応させられる。)により、
鎖延長により得られ得るアニオン性ポリウレタンの水性分散液であり、および、プレポリマーが、ステップB)の前、ステップB)の間またはステップB)の後に水中に分散させれ、存在する潜在的にイオン性基のいずれもが、中和剤との部分的なまたは完全な反応によってイオン形態に転換させる。
【0024】
アニオン性親水性付与を達成するために、A4)および/またはB2)は、アミノ、ヒドロキシルまたはチオール基などの少なくとも1つのNCO反応基を有し、−COOまたは−SOまたは−PO2−をアニオン性基として、あるいはこれらの完全にまたは部分的にプロトン化した酸形態を潜在的にアニオン性基として加えて有する親水性付与剤を使用しなければならない。
【0025】
好ましい水性、アニオン性ポリウレタン分散液(I)は、低度の親水性アニオン性基を、固体樹脂100g当たり好ましくは0.1から15ミリ当量有している。
【0026】
良好な沈降安定性を達成するために、特定のポリウレタン分散液の数平均粒径は、レーザー相関分光法で測定して、好ましくは750nm未満、より好ましくは500nm未満である。
【0027】
成分A1)の化合物のNCO基の、成分A2)からA4)の化合物のNCO反応基(アミノ、ヒドロキシルまたはチオール基など)に対する比が1.05から3.5の範囲、好ましくは1.2から3.0の範囲、より好ましくは1.3から2.5の範囲にてNCO官能性プレポリマーを調製する。
【0028】
段階B)におけるアミノ官能性化合物は、これら化合物のイソシアネート反応性アミノ基の、プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する当量比が、40から150%の範囲、好ましくは50と125%の間、より好ましくは60と120%の間である量が使用される。
【0029】
成分A1)のための適切なポリイソシアネートには、良く知られているNCO官能価が2以上の芳香族、アラリファチック、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートが含まれる。
【0030】
かかる適切なポリイソシアネートの例は、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体のビス(4,4’−イソシアネートシクロヘキシル)メタンまたは所望の任意の異性体含有量のこれらの混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2’−および/または2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−および/または1,4−ビス(2−イソシアネートプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン(XDI)ならびにまたC−Cアルキル基を有するアルキル2,6−ジイソシアネートヘキサネート(リシンジイソシアネート)である。
【0031】
上述のポリイソシアネートに加えて、ウレットジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の改質ジイソシアネート、同様に分子当たり2超のNCO基を有する非改質ポリイソシアネート、例えば、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートを比例的に使用することが可能である。
【0032】
上述の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、独占的に、脂肪族的におよび/または脂環式的に付着されたイソシアネート基を有し、混合物に関して平均NCO官能価が2から4の範囲、好ましくは2から2.6の範囲、より好ましくは2から2.4であることが好ましい。
【0033】
A1)のために、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体のビス(4,4’−イソシアネートシクロヘキシル)メタンおよびこれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0034】
A2)は、400から8000g/モル、好ましくは400から6000g/モル、より好ましくは600から3000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有するポリマーポリオールを使用する。これらは、1.5から6の範囲の、より好ましくは1.8から3の範囲の、最も好ましくは1.9から2.1の範囲のOH官能価を有していることが好ましい。
【0035】
かかるポリマーポリオールは、良く知られたポリウレタン被覆技術のポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオールである。これらは、A2)において個別にまたは所望の任意の互いの混合物において使用することができる。
【0036】
かかるポリエステルポリオールは、ジ−およびまた場合によってトリ−およびテトラオール、ジ−およびまた場合によってトリ−およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンから形成される良く知られた重縮合体である。ポリエステルを調製するために、遊離ポリカルボン酸の代わりに低級アルコールの対応するポリカルボキシル無水物または対応するポリカルボキシルエステルを使用することも可能である。
【0037】
適切なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、また1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(1,3)、ブタンジオール(1,4)、ヘキサンジオール(1,6)および異性体、ネオペンチルグリコールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートであり、その内ヘキサンジオール(1,6)および異性体、ネオペンチルグリコールおよびネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートが好ましい。これらに加えて、トリメチロールプロパンなどのポリオール、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用することも可能である。
【0038】
有用なジカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テトラフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸および/または2,2−ジメチルコハク酸が含まれる。対応する無水物もまた酸の供給源として使用することができる。
【0039】
エステル化するポリオールの平均官能価が2超の場合、さらに安息香酸およびヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸も同様に使用することができる。
【0040】
好ましい酸は、上述の種類の脂肪族または芳香族の酸である。アジピン酸、イソフタル酸および場合によってトリメリット酸が特に好ましい。
【0041】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールの調製において反応参加物として有用な、ヒドロキシカルボン酸には、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などが含まれる。適切なラクトンには、カプロラクトン、ブチロラクトンおよびホモログが含まれる。カプロラクトンが好ましい。
【0042】
A2)は、またヒドロキシル含有ポリカーボネート400から8000g/モルの範囲、好ましくは600から3000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有するポリカーボネートジオールを利用する。これらは、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンなどの炭酸誘導体を、ポリオール、好ましくはジオールと反応させることによって得られる。
【0043】
かかるジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールAおよび上述の種類のラクトン改質ジオールである。
【0044】
ポリカーボネートジオールは、40重量%から100重量%のヘキサンジオールを含有していることが好ましく、ヘキサンジオールは、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体であることが好ましい。かかるヘキサンジオール誘導体は、ヘキサンジオールに基づき、エステルまたは他の基ならびに末端OH基を有している。かかる誘導体は、ヘキサンジオールの過剰なカプロラクトンとの反応またはヘキサンジオールそれ自体のエーテル化によって得られ、ジ−またはトリへキシレングリコールを形成する。
【0045】
純粋なポリカーボネートに代わってまたはこれに加えて、ポリエーテル−ポリカーボネートジオールをA2)において使用することができる。
【0046】
ヒドロキシル−含有ポリカーボネートは、直線構造であることが好ましい。
【0047】
A2)は、同様にポリエーテルポリオールを利用することもできる。
【0048】
有用なポリエーテルポリオールには、例えば、良く知られたポリウレタン化学の、カチオン性開環を用いたテトラヒドロフランの重合によって得られるポリテトラメチレングリコールポリエーテルが含まれる。
【0049】
有用なポリエーテルポリオールは、同様にスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンの二または多官能開始分子への良く知られた付加生成物を含む。またエチレンオキシドの二または多官能開始分子への少なくとも比例添加に基づくポリエーテルポリオールは、成分A4)(非イオン性親水性付与剤)として使用することができる。
【0050】
有用な開始分子には、全ての従来技術の化合物、例えば、水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチルプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,4−ブタンジオールが含まれる。好ましい開始分子は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールおよびブチルジグリコールである。
【0051】
ポリウレタン分散液(I)の特に好ましい実施形態は、成分A2)としてポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物を含有し、この混合物におけるポリカーボネートポリオールの割合は、20重量%から80重量%の範囲であり、この混合物におけるポリテトラメチレングリコールポリオールの割合は、80重量%から20重量%の範囲である。ポリテトラメチレングリコールポリオールに関して30重量%から75重量%の割合、ポリカーボネートポリオールに関して25重量%から70重量%の割合が好ましい。ポリテトラメチレングリコールポリオールに関して35重量%から70重量%の割合、ポリカーボネートポリオールに関して30重量%から65重量%の割合が特に好ましい。但し、ポリカーボネートおよびポリテトラメチレングリコールポリオールに関する重量パーセントの合計が100%であり、ポリカーボネートおよびポリテトラメチレングリコールポリオールの合計に占める成分A2)の割合が、少なくとも50重量%、好ましくは60重量%、より好ましくは70重量%であることを条件とする。
【0052】
成分A3)の化合物は、62および400g/モルの分子量を有する。
【0053】
A3)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA、(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールおよびまたこれら互いの所望の混合物など、20個までの炭素原子を有する特定の分子量範囲のポリオールを利用することもできる。
【0054】
また適切なのは、α−ヒドロキシルブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、β−ヒドロキシエチルアジペートまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テトラフタレートなどの特定の分子量範囲のエステルジオールである。
【0055】
A3)は、さらに単官能イソシアネート反応性ヒドロキシル含有化合物を利用することもできる。かかる単官能化合物の例は、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノールである。
【0056】
成分A3)のための好ましい化合物は、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよびトリメチロールプロパンである。
【0057】
成分A4)のためのアニオン性または潜在的にアニオン性な親水性付与化合物は、ヒドロキシル基などの少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する任意の化合物であり、およびまた例えば−COO、SO、−PO(O(ここでMは例えば金属カチオン、H、NH、NHR(ここでRはそれぞれの存在ごとにC−C12−アルキル、C−C−シクロアルキルおよび/またはC−C−ヒドロキシアルキルであることもできる。))などの少なくとも1つの官能基を有する任意の化合物であり、この官能基はpH依存性解離平衡の水性媒体との相互作用に加わり、これによって負のまたは中性の電荷を有することができる。有用なアニオン性または潜在的にアニオン性な親水性付与化合物には、モノ−およびジヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジヒドロキシスルホン酸、同様にモノ−およびジヒドロキシホスホン酸およびこれらの塩が含まれる。かかるアニオン性または潜在的にアニオン性な親水性付与剤の例は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバル酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸およびDE−A2446440、5−9頁、式I−IIIにおいて記載されているような2−ブテンジオールおよびNaHSOから形成されるプロポキシル化された付加物である。成分A4)のための好ましいアニオン性または潜在的にアニオン性な親水性付与剤は、カルボキシレートまたはカルボキシル基および/またはスルホネート基を有する上述の種類の親水性付与剤である。
【0058】
特に好ましいアニオン性または潜在的にアニオン性の親水性付与剤は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸およびヒドロキシピバル酸およびこれらの塩など、イオン性または潜在的イオン性基としてカルボキシレートまたはカルボキシル基を含有する親水性付与剤である。
【0059】
成分A4)のための有用な非イオン性親水性付与化合物には、例えば、少なくとも1つのヒドロキシルまたはアミノ基、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するポリオキシアルキレンエーテルが含まれる。
【0060】
例は、分子当たり平均で5から70、好ましくは7から55のエチレンオキシド単位を含有し、適切な開始分子のアルコキシル化による在来の方法で入手できるモノヒドロキシ官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである。(例えば、Ullmanns Encyclopadie der technischen Chemie、第4版、19巻、Verlag Chemie、Weinheim 31−38頁に記載されている。)。
【0061】
これらは、純粋なポリエチレンオキシドエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドエーテルのいずれかであり、存在する全てのアルキレンオキシドに対して少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%のエチレンオキシド単位を含有している。
【0062】
上述の種類の好ましいポリエチレンオキシドエーテルは、単官能の混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルであり、40から100モル%のエチレンオキシド単位および0から60モル%のプロピレンオキシド単位を有している。
【0063】
成分A4)のための好ましい非イオン性親水性付与化合物には、適切な開始剤へのアルキレンオキシドのブロック様の添加によって調製されるブロック(コ)ポリマーである上述の種類の親水性付与化合物が含まれる。
【0064】
かかる非イオン性親水性付与剤のための有用な開始分子には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、異性体のペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノールなどの飽和モノアルコール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体のメチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、モノアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイン酸アルコールなどの不飽和アルコール、フェノールなどの芳香族アルコール、異性体のクレゾールまたはメトキシフェノール、ベンジルアルコールなどのアラリファチックアルコール、アニスアルコールまたはシンナミルアルコール、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンなどの第2級アミン、またモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾールなどの複素環第2級アミンが含まれる。好ましい開始分子は、上述の種類の飽和モノアルコールである。ジエチレングリコールモノブチルエーテルまたはn−ブタノールを開始分子として使用することが特に好ましい。
【0065】
アルコキシル化反応のための有用なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらは所望の順序のいずれでも、またはアルコキシル化反応において混合剤として使用することができる。
【0066】
成分B1)は、1,2−エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、などのジ−またはポリアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレン−トリアミン、トリアミノノナン、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミンおよび4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンおよび/またはジメチルエチレンジアミンの異性体混合物を使用することもできる。ヒドラジンおよびまたアジポヒドラジドなどのヒドラジドを使用することは可能ではあるが、好ましくない。
【0067】
成分B1)は、第1級アミノ基のみならず第2級アミノ基をも有する化合物、またはアミノ基(第1級または第2級)のみならずOH基をまた有する化合物をさらに利用することができる。これらの例は、ジエタノールアミン、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミンなどのアルカノールアミンなどの第1級/第2級アミンである。
【0068】
成分B1)は、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、またはこれらの適切な置換誘導体、ジプライマリーアミンおよびモノカルボン酸から形成されたアミド−アミン、ジプライマリーアミンのモノケチム、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンなどの第1級/第4級アミンなど、単官能イソシアネート反応性アミン化合物をさらに使用することができる。
【0069】
成分B1)のための好ましい化合物は、1,2−エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタンおよびイソホロンジアミンである。
【0070】
成分B2)のためのアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与化合物は、少なくとも1つのイソシアネート反応性基、好ましくはアミノ基を有し、また例えば−COO、SO、−PO(O(ここでMは例えば金属カチオン、H、NH、NHR(ここでRはそれぞれの存在ごとにC−C12−アルキル、C−C−シクロアルキルおよび/またはC−C−ヒドロキシアルキル基であることもできる。))などの少なくとも1つの官能基を有する任意の化合物であり、これはpH依存性解離平衡の水性媒体との相互作用に加わり、これによって負のまたは中性の電荷を有することができる。
【0071】
有用なアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与化合物は、モノ−およびジアミノカルボン酸、モノ−およびジアミノスルホン酸、またモノ−およびジアミノホスホン酸およびこれらの塩である。かかるアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤の例は、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸、エチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5−ジアミノ安息香酸およびIPDAとアクリル酸の付加生成物(EP−A0916647、実施例1)である。さらにアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤として、WO−A01/88006からのシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)を使用することも可能である。
【0072】
成分B2)のための好ましいアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤は、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩などのカルボキシレートまたはカルボキシル基および/またはスルホネート基を有する上述の種類の親水性付与剤またはIPDAとアクリル酸の付加生成物(EP−A09I6647、実施例1)である。
【0073】
アニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤と非イオン性親水性付与剤との混合物も使用することができる。
【0074】
特定のポリウレタン分散液を生成する好ましい実施形態は、A1)からA4)およびB1)からB2)の成分を以下の量使用する(個別の量は、常に合算して100重量%となる。)。
成分A1)を5重量%から40重量%、
A2)を55重量%から90重量%、
成分A3)とB1)の合計を0.5重量%から20重量%、
成分A4)とB2)の合計を、A4)および/またはB2)からのアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤が、成分A1)からA4)およびB1)からB2)の総量に対して0.1重量%から5重量%使用されている状態において、0.1重量%から25重量%。
【0075】
特定のポリウレタン分散液を生成する特に好ましい実施形態は、A1)からA4)およびB1)からB2)の成分を以下の量使用する(個別の量は、常に合算して100重量%となる。)。
成分A1)を5重量%から35重量%、
成分A2)を60重量%から90重量%、
成分A3)とB1)の合計を0.5重量%から15重量%、
成分A4)とB2)の合計を、A4)および/またはB2)からのアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤が、成分A1)からA4)およびB1)からB2)の総量に対して0.2重量%から4重量%使用されている状態において、0.1重量%から15重量%。
【0076】
特定のポリウレタン分散液を生成する非常に特に好ましい実施形態は、A1)からA4)およびB1)からB2)の成分を以下の量使用する(個別の量は、常に合算して100重量%となる。)。
成分A1)を10重量%から30重量%、
A2)を65重量%から85重量%、
成分A3)とB1)の合計を0.5重量%から14重量%、
成分A4)とB2)の合計を、A4)および/またはB2)からのアニオン性または潜在的アニオン性の親水性付与剤が、成分A1)からA4)およびB1)からB2)の総量に対して0.5重量%から3重量%使用されている状態において、0.1重量%から13.5重量%。
【0077】
アニオン性親水性付与ポリウレタン分散液(I)の生産は、1段または複数段において均一相中で、または複数段反応の場合には一部を分散相中で実施することができる。A1)からA4)の重合付加を完全にまたは部分的に行った後、分散、乳化または溶解段階を実施する。その後、適切な場合には、分散相においてさらなる重合付加または改質を行う。
【0078】
例えば、プレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法などの従来技術を使用することができる。アセトン法が好ましい。
【0079】
アセトン法による生産は、典型的に構成成分A2)からA4)およびポリイソシアネート成分A1)を初期装荷として全体的にまたは部分的に導入し、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを生産し、場合によって水混和性ではあるがイソシアネートに対して不活性な溶媒で希釈し、50からI20℃の範囲の温度に加熱することを含む。イソシアネート添加反応は、ポリウレタン化学において知られている触媒を使用して促進することができる。
【0080】
有用な溶媒には、アセトン、2−ブタノンなどの常套的な脂肪族、ケト官能性溶媒が含まれ、これらは製造工程の丁度開始時に加えるだけでなく、場合によって部分に分けて後で加えることもできる。アセトンおよび2−ブタノンが好ましい。
【0081】
キシレン、トルエン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エーテルまたはエステル単位を有する溶媒などの他の溶媒が、追加として使用することができまたは全体的にもしくは部分的に留去することができまたはN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンの場合には完全に分散液に残存させることができる。但し、常套的な脂肪族、ケト官能性溶媒は別として、いかなる他の溶媒も使用しないことが好ましい。
【0082】
その後、反応の開始時に加えられなかったA1)からA4)の任意の構成成分が加えられる。
【0083】
A1)からA4)からのポリウレタンプレポリマーの生成において、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する物質比は、1.05から3.5の範囲、好ましくは1.2から3.0の範囲、より好ましくは1.3から2.5の範囲である。
【0084】
プレポリマーを形成するための成分A1)からA4)の反応は、部分的にまたは完全に達成することができるが、完全に達成することが好ましい。この方法で、溶媒を使用せずにまたは溶液中において、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーが得られる。
【0085】
潜在的アニオン性基のアニオン性基への部分的または完全な転換を達成するための中性化段階は、例えば1から12個の、好ましくは1から6個の炭素原子を、より好ましくは2から3個の炭素原子を各アルキル基内に有するトリアルキルアミンなどの第3級アミンなどの塩基または対応するヒドロキシドなどのアルカリ金属塩基を利用する。
【0086】
これらの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルホリン、メチルジイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。アルキル基は、ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合のように、例えばヒドロキシル基を有することもできる。適切な場合には、有用な中和剤はアンモニア水溶液、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの無機塩基をさらに含む。
【0087】
アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンならびにまた水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが特に好ましい。
【0088】
塩基は、中和される酸基の物質量の50および125モル%、好ましくは70と100モル%の間の物質量で使用される。中和は、中和剤を分散液の水中に含めることによって分散段階と同時に達成することができる。
【0089】
その後、さらなる処理段階において、この処理段階が既に行われていないまたはある程度しか行われていない場合、得られたプレポリマーはアセトンまたは2−ブタノンなどの脂肪酸ケトンの助けを借りて溶解する。
【0090】
段階B)の鎖延長において、NHおよび/またはNH官能性成分は、部分的にまたは完全に、未だ残存しているプレポリマーのイソシアネート基と反応させる。鎖延長/停止は、水中への分散の前に行うことが好ましい。
【0091】
鎖停止は、典型的にメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル−(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジンまたはこれらの適切な置換誘導体、ジプライマリーアミンおよびモノカルボン酸から形成されたアミド−アミン、ジプライマリーアミンのモノケチム、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンなどの第1級/第3級アミンなどのイソシアネート反応性基を有するアミンB1)を用いて実施される。
【0092】
部分的または完全な鎖延長が、B2)の定義に適合するアニオン性または潜在的アニオン性親水性付与剤を用いてNHまたはNH基で実施される場合、プレポリマーの鎖延長は、分散の前に実施することが好ましい。
【0093】
本発明の方法おいて、アミン成分B1)およびB2)は、場合によって水または溶媒希釈の形態で、個別にまたは混合物にて使用され、原則としていかなる順番の添加も可能である。
【0094】
水または有機溶媒を希釈剤として使用する場合、B)において使用される鎖延長成分の希釈剤含有量は、好ましくは70重量%から95重量%の範囲である。
【0095】
分散は、鎖延長に続いて実施することが好ましい。分散のため溶解し鎖延長したポリウレタンポリマーは、適切な場合、例えば激しく撹拌して実質的に剪断するまたは反対に分散水を鎖延長したポリウレタンポリマー溶液に撹拌しながら入れるかのいずれかによって、分散水に導入される。水を、溶解し鎖延長したポリウレタンポリマーに加えることが好ましい。
【0096】
分散段階の後でも未だ分散液に存在する溶媒は、次いで通常蒸留によって除去される。分散段階中の除去もまた可能である。
【0097】
ポリウレタン分散液(I)における有機溶媒の残存水準は、全分散液に対して典型的には1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。
【0098】
本発明に対して本質的であるポリウレタン分散液(I)のpHは、典型的に9.0未満、好ましくは8.5未満、より好ましくは8.0未満、最も好ましくは6.0から7.5の範囲である。
【0099】
ポリウレタン分散液(I)の固体含有量は、40重量%から70重量%の範囲、好ましくは50重量%から65重量%の範囲、より好ましくは55重量%から65重量%の範囲である。
【0100】
ポリマー分散または乳化のために適した実際に使用された特定の凝固剤は、文献から知られており、これらは当業者になじみのものである。
【0101】
凝固剤(II)は、典型的に少なくとも2つのカチオン性基を含有する任意の有機化合物、好ましくは、ポリ[2−(N,N,N−トリメチルアミノ)エチルアクリレート]、ポリエチレンイミン、ポリ[N−(ジメチルアミノメチル)アクリルアミド]、置換アクリルアミド、置換メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジンまたは4−ビニルピリジンの塩のカチオン性ホモポリマーまたはコポリマーなど、従来技術における周知の任意のカチオン性凝固および沈澱剤とすることができる。
【0102】
好ましいカチオン性凝固剤(II)は、一般式(2)、より好ましくは一般式(1)と(2)の構造単位を含むアクリルアミドコポリマーである。
【0103】
【化2】

式中、
Rは、C=O、−COO(CH−または−COO(CH−であり、
は、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩素イオンである。
【0104】
凝固剤(II)は、500,000から50,000,000g/モルの範囲の数平均分子量を有していることが好ましい。
【0105】
かかる凝固剤(II)は、Praestol(登録商標)(Degussa Stockhausen、Krefeld、ドイツ)の商標名の下で、活性化スラッジのための凝固剤として市販されている。Praestol(登録商標)型の好ましい凝固剤は、Praestol(登録商標)K111L、K122L、K133L、BC270L、K144L、K166L、BC55L、185K、187K、190K、K222L、K232L、K233L、K234L、K255L、K332L、K333L、K334L、E125、E150およびまたこれらの混合物である。Praestol(登録商標)185K、187Kおよび190K、同様にこれらの混合物は、とりわけ好ましい凝固剤である。
【0106】
凝固剤におけるモノマー、特にアクリレートモノマーおよびアクリルアミドモノマーの残留水準は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.025重量%未満である。
【0107】
凝固剤は、固体形態または水溶液あるいは分散液として使用することができる。水性の分散液または溶液として使用することが好ましい。
【0108】
ポリウレタン分散液(I)および凝固剤(II)に加えて、補助的および付加的物質(III)も使用することができる。
【0109】
かかる補助的および付加的物質(III)は、発泡成形剤および安定剤などの発泡助剤、増粘剤またはチキソトロープ剤、酸化防止剤、光安定剤、乳化剤、可塑剤、顔料、充填剤および/または流動制御剤である。
【0110】
発泡成形剤および安定剤などの発泡助剤を、補助的および付加的物質(III)として含むことが好ましい。有用な発泡助剤には、脂肪酸アミド、スルホスクシンアミドヒドロカルビルサルフェートもしくはスルホネートまたは脂肪酸塩などの市販の化合物が含まれ、この場合親油性基は12から24個の炭素原子を含有していることが好ましい。
【0111】
好ましい発泡助剤は、12から22個の炭素原子をヒドロカルビル基中に有するアルカンスルホネートまたはアルカン硫酸塩、14から24個の炭素原子をヒドロカルビル基中に有するアルキルベンゼンスルホネートまたはアルキルベンゼン硫酸塩、または12から24個の炭素原子を有する脂肪酸アミドまたは脂肪酸塩である。
【0112】
かかる脂肪酸アミドは、モノ−またはジ(C−C−アルカノール)アミンに基づくことが好ましい。脂肪酸塩は、例えばアルカリ金属塩、アミン塩または非置換アンモニウム塩とすることもできる。
【0113】
かかる脂肪酸誘導体は、典型的に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ベヘン酸もしくはアラキン酸、ココナッツ脂肪酸、タロイモ脂肪酸、大豆脂肪酸などの脂肪酸およびこれらの水素化生成物に基づく。
【0114】
特に好ましい発泡助剤は、スルホスクシンアミドおよびステアリン酸アンモニウムの混合物であり、これらは好ましくは20重量%から60重量%、より好ましくは30重量%から50重量%のステアリン酸アンモニウムおよび好ましくは80重量%から40重量%、より好ましくは70重量%から50重量%のスルホスクシンアミドを含有する。
【0115】
デキストリンの誘導体、澱粉またはセルロースの誘導体など市販の増粘剤を使用することができ、例は、セルロースエーテルまたはヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸に基づく有機性全合成増粘剤、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリレート化合物またはポリウレタン(結合性増粘剤)およびまたベントナイトまたはシリカなどの無機増粘剤である。
【0116】
本発明にとって必須である組成物は、好ましくはないが原則として、またブロック化されていないポリイソシアネートなどの架橋剤、アミドホルムアルデヒド樹脂およびアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂およびケトン樹脂を含むことができ、これらの例は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、カルバミックエステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂またはアニリン樹脂である。
【0117】
本発明にとって必須である組成物は、乾燥物質基準で、80から99.5重量部の分散液(I)、0.5から5重量部のカチオン性凝固剤(II)、0から10重量部の発泡助剤、0から10重量部の架橋剤および0重量%から10重量%の増粘剤を通常含有する。
【0118】
本発明にとって必須である組成物は、乾燥物質基準で、85から97重量部の分散液(I)、0.75から4重量部のカチオン性凝固剤(II)、0.5から6重量部の発泡助剤、0から5重量部の架橋剤および0重量%から5重量%の増粘剤を含有することが好ましい。
【0119】
本発明にとって必須である組成物は、乾燥物質基準で、89から97重量部の分散液(I)、0.75から3重量部のカチオン性凝固剤(II)、0.5から5重量部の発泡助剤、0から4重量部の架橋剤および0から4重量部の増粘剤を含有することがより好ましい。
【0120】
本発明にとって必須である組成物において、成分(I)、(II)および適切な場合の(III)に加えて、他の水性結合剤もまた使用することができる。かかる水性結合剤は、例えばポリエステル、ポリアクリレート、ポリエポキシまたは他のポリウレタンポリマーで構成される。同様に、例えばEP−A−O753531に記載されているような放射線硬化結合剤との組合せも使用可能である。ポリビニルアセテート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリビニルクロリド、ポリアクリレートなど他のアニオン性または非イオン性分散液およびコポリマー分散液を使用することもさらに可能である。
【0121】
本発明の方法における泡立ては、高速回転における組成物の機械的撹拌、または吹込みガスの減圧によって達成される。
【0122】
機械的泡立ては、いずれかの所望の機械的撹拌、混合および分散技法によって達成することができる。一般に空気が導入されるが、窒素および他のガスも同様にこの目的のために使用することができる。
【0123】
かくして得られた発泡体は、泡立ての途中またはこれの直後に、基材に適用されまたは鋳型に導入され乾燥される。
【0124】
基材への適用は、例えば、注入またはブレード塗工によって行うことができるが、他の在来の技法もまた可能である。間での乾燥による多層の適用も、基本的に可能である。
【0125】
泡に対する満足できる乾燥速度が、ヒトまたは動物の傷ついた組織が問題を生じないように、20℃の低い温度において観察される。しかしながら、より迅速な乾燥および泡の固定のためには、30℃を超える温度を使用することが好ましい。しかしながら、乾燥温度は、さもなければとりわけ望ましくない泡の黄変が生じ得るので、200℃、好ましくは150℃、より好ましくは130℃を超えてはならない。2段階以上での乾燥も同様に可能である。
【0126】
本発明により使用するポリマー分散液またはエマルジョンは、生理学的に活性な構成成分の有効量を、追加して含有させまたは追加することもできる。本発明の生物学的医療用発泡物品は、例えば局所麻酔薬、酵素、抗菌薬または抗真菌活性あるいはホルモン化合物を含むこともできる。
【0127】
本発明により使用するポリマー分散液またはエマルジョンは、防腐剤、増殖因子、プロテアーゼ阻害剤および非ステロイド性抗炎症剤/アヘン剤の群から選択される少なくとも1つの活性成分を含んでいることが好ましい。
【0128】
本発明の生物学的医療用発泡物品は、皮膚創傷の処置、特に糖尿病性、静脈性、褥瘡性創傷などの慢性的創傷ならびに火傷および急性創傷、特に最小急性創傷にとりわけ有用である。
【0129】
これらは、深さ方向ならびに他の方向における完全で正確に適合した創傷の詰めを保証し、迅速な硬化および良好な液体の吸収を示しおよび取扱いが簡単である。
【実施例】
【0130】
別段の指示がない限り、全ての百分率は重量基準である。
【0131】
固体含有率は、DIN−EN ISO3251により測定した。
【0132】
NCO含有量は、別段の説明がない限り、DIN−EN ISO11909により容量的に測定した。
【0133】
物質および使用した略語
ジアミノスルホネート:NH−CHCH−NH−CHCH−SONa(水中45%)
Desmophen(登録商標)C2200:ポリカーボネートポリオール、OH数56mgKOH/g、数平均分子量2000g/モル(Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)
PolyTHF(登録商標)2000:ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH数56mgKOH/g、数平均分子量2000g/モル(BASF AG、Ludwigshafen、ドイツ)
PolyTHF(登録商標)1000:ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH数112mgKOH/g、数平均分子量1000g/モル(BASF AG、Ludwigshafen、ドイツ)
LB25ポリエーテル:エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく単官能ポリエーテル、数平均分子量2250g/モル、OH数25mgKOH/g(Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)
Stokal(登録商標)STA:ステアリン酸アンモニウムに基づく発泡助剤、活性物質含有量30%(Bozzetto GmbH、Krefeld、ドイツ)
Stokal(登録商標)SR:コハク酸エステルに基づく発泡助剤、活性物質含有量約34%(Bozzetto GmbH、Krefeld、ドイツ)
Simulsol(登録商標)SL26:ドデシルアルコールに基づくアルキルポリグリコシド、水中約52%(Seppic GmbH、Cologne、ドイツ)
Praestol(登録商標)185K:式(1)および(2)の構造を含むカチオン性凝固助剤、固体含有量25重量%(Degussa AG、ドイツ)。
【0134】
ポリウレタン分散液(I)の平均粒径(平均数が報告される。)の測定は、レーザー相関分光法(機器:Malvern Zetasizer1000、Malver Inst.Limited製)を用いて実施した。
【0135】
実施例1
ポリウレタン分散液1
PolyTHF(登録商標)2000の987.0g、PolyTHF(登録商標)1000の375.4g、Desmophen(登録商標)C2200の761.3gおよびLB25のポリエーテル44.3gを、標準的撹拌装置において70℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート237.0gおよびイソホロンジイソシアネート313.2gの混合物を、70℃において5分間の間に加え、混合物を120℃において、理論的NCO値に達するかまたは実際のNCO値が理論的NCO値の少し下に達するまで撹拌した。既製のプレポリマーを、アセトン4830gを用いて溶解し、工程中、50℃に冷却し、その後、計量したエチレンジアミン溶液25.1g、イソホロンジアミン116.5g、ジアミノスルホネート61.7gおよび水1030gと10分間にわたって混合した。この混合物を次に10分間撹拌した。次いで水1250gを加えることによって分散液を形成した。これを次に減圧下蒸留によって溶媒を除去した。
【0136】
得られた白色分散液は、以下の性質を有していた。
固体含有量:61%
粒径(LKS):312nm
粘度(粘度計、23℃):241mPas
pH(23℃):6.02。
【0137】
実施例2
ポリウレタン分散液2
PolyTHF(登録商標)2000の223.7g、PolyTHF(登録商標)1000の85.1g、Desmophen(登録商標)C2200の172.6gおよびLB25のポリエーテル10.0gを、標準的撹拌装置において70℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート53.7gおよびイソホロンジイソシアネート71.0gの混合物を、70℃において5分間の間に加え、混合物を120℃において、理論的NCO値に達するかまたは実際のNCO値が理論的NCO値の少し下に達するまで撹拌した。既製のプレポリマーを、アセトン1005gを用いて溶解し、工程中、50℃に冷却し、その後、計量したエチレンジアミン溶液5.70g、イソホロンジアミン26.4g、ジアミノスルホネート9.18gおよび水249.2gと10分間にわたって混合した。この混合物を次に10分間撹拌した。次いで水216gを加えることによって分散液を形成した。これを次に減圧下蒸留によって溶媒を除去した。
【0138】
得られた白色分散液は、以下の性質を有していた。
固体含有量:63%
粒径(LKS):495nm
粘度(粘度計、23℃):133mPas
pH(23℃):6.92。
【0139】
実施例3
ポリウレタン分散液3
PolyTHF(登録商標)2000の987.0g、PolyTHF(登録商標)1000の375.4g、Desmophen(登録商標)C2200の761.3gおよびLB25のポリエーテル44.3gを、標準的撹拌装置において70℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート237.0gおよびイソホロンジイソシアネート313.2gの混合物を、70℃において5分間の間に加え、混合物を120℃において、理論的NCO値に達するかまたは実際のNCO値が理論的NCO値の少し下に達するまで撹拌した。既製のプレポリマーを、アセトン4830gを用いて溶解し、工程中、50℃に冷却し、その後、計量した1,4−ジアミノブタン溶液36.9g、イソホロンジアミン116.5g、ジアミノスルホネート61.7gおよび水1076gと10分間にわたって混合した。この混合物を次に10分間撹拌した。次いで水1210gを加えることによって分散液を形成した。これを次に減圧下蒸留によって溶媒を除去した。
【0140】
得られた白色分散液は、以下の性質を有していた。
固体含有量:59%
粒径(LKS):350nm
粘度(粘度計、23℃):126mPas
pH(23℃):7.07。
【0141】
実施例4
ポリウレタン分散液4
PolyTHF(登録商標)2000の201.3g、PolyTHF(登録商標)1000の76.6g、Desmophen(登録商標)C2200の155.3g、1,4−ブタンジオール2.50gおよびLB25のポリエーテル10.0gを、標準的撹拌装置において70℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート53.7gおよびイソホロンジイソシアネート71.0gの混合物を、70℃において5分間の間に加え、混合物を120℃において、理論的NCO値に達するかまたは実際のNCO値が理論的NCO値の少し下に達するまで撹拌した。既製のプレポリマーを、アセトン1010gを用いて溶解し、工程中、50℃に冷却し、その後、計量したエチレンジアミン溶液5.70g、イソホロンジアミン26.4g、ジアミノスルホネート14.0gおよび水250gと10分間にわたって混合した。この混合物を次に10分間撹拌した。次いで水243gを加えることによって分散液を形成した。これを次に減圧下蒸留によって溶媒を除去した。
【0142】
得られた白色分散液は、以下の性質を有していた。
固体含有量:62%
粒径(LKS):566nm
粘度(粘度計、23℃):57mPas
pH(23℃):6.64。
【0143】
実施例5
ポリウレタン分散液5
PolyTHF(登録商標)2000の201.3g、PolyTHF(登録商標)1000の76.6g、Desmophen(登録商標)C2200の155.3g、トリメチロールプロパン2.50gおよびLB25のポリエーテル10.0gを、標準的撹拌装置において70℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート53.7gおよびイソホロンジイソシアネート71.0gの混合物を、70℃において5分間の間に加え、混合物を120℃において、理論的NCO値に達するかまたは実際のNCO値が理論的NCO値の少し下に達するまで撹拌した。既製のプレポリマーを、アセトン1010gを用いて溶解し、工程中、50℃に冷却し、その後、計量したエチレンジアミン溶液5.70g、イソホロンジアミン26.4g、ジアミノスルホネート14.0gおよび水250gと10分間にわたって混合した。この混合物を次に10分間撹拌した。次いで水293gを加えることによって分散液を形成した。これを次に減圧下蒸留によって溶媒を除去した。
【0144】
得られた白色分散液は、以下の性質を有していた。
固体含有量:56%
粒径(LKS):440nm
粘度(粘度計、23℃):84mPas
pH(23℃):6.91。
【0145】
実施例6
ポリウレタン分散液6
PolyTHF(登録商標)2000の1072g、PolyTHF(登録商標)1000の407.6g、Desmophen(登録商標)C2200の827g、およびLB25のポリエーテル48.1gを、標準的撹拌装置において70℃に加熱した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート257.4gおよびイソホロンジイソシアネート340gの混合物を、70℃において5分間の間に加え、混合物を120℃において、理論的NCO値に達するかまたは実際のNCO値が理論的NCO値の少し下に達するまで撹拌した。既製のプレポリマーを、アセトン4820gを用いて溶解し、工程中、50℃に冷却し、その後、計量したエチレンジアミン溶液27.3g、イソホロンジアミン126.5g、ジアミノスルホネート67.0gおよび水1090gと10分間にわたって混合した。この混合物を次に10分間撹拌した。次いで水1180gを加えることによって分散液を形成した。これを次に減圧下蒸留によって溶媒を除去した。
【0146】
得られた白色分散液は、以下の性質を有していた。
固体含有量:60%
粒径(LKS):312nm
粘度(粘度計、23℃):286mPas
pH(23℃):7.15。
【0147】
実施例7−12
実施例1−6のポリウレタン分散液から生成された発泡体
実施例1−6に記述されているように生成されたポリウレタン分散液の表1の量を、表1に示す発泡助剤と混合して、市販の手動撹拌器(曲がったワイヤーで撹拌する。)によって、1リットルの泡容積に泡立てた。撹拌を継続しながら、得られた泡は最終的にPraestol(登録商標)185Kを添加することで凝固した。凝固によって泡容積は不変に保たれた(粘度が若干増加した。)。その後、ブレード塗工セットを用いて、泡をシリコーン被覆ペーパー上に表1に報告されているギャップ高さに掻き落とした。同様に、表1は説明したように生成された泡の乾燥条件を列挙している。良好な機械的性質と孔の微細構造を有するクリーンな白色の泡が、例外なく得られた。
【0148】
【表1】

【0149】
表2から認識できるように、全ての泡は、非常に迅速な水の吸収、高い生理食塩水吸収性(「自由膨張吸水性」)、非常に高い気化水分透過速度(MVTR)、同様に特に湿性貯蔵後の良好な機械的強度を示した。
【0150】
【表2】

【0151】
実施例13
実施例2により調製したポリウレタン分散液54gを、Simulsol(登録商標)SL26の1.37gと混合した。この混合物を適切な2成分エアゾールカンのチャンバーに導入した。他のチャンバーは、Praestol(登録商標)185Kの1.69gを充填した。成分は、最終的にi−ブタン/プロパン/n−ブタンの混合物の発泡剤6gと混合した。噴霧し(約1cmの湿潤フィルム厚さ)、周囲条件で乾燥した後、クリーンな白色の細かなセルの泡が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性材料を含み、この多孔性材料は、少なくともいくらかの開放孔含有量を有し、液体形態から固体発泡物品へ硬化されるのに5分以上を必要としない、生物学的医療用発泡物品。
【請求項2】
100から2500%の生理食塩水吸収性をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項3】
24時間当たり2000から12000g/mの水蒸気透過速度をさらに有することを特徴とする、請求項1または2に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項4】
少なくとも1つのイオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンおよびまた少なくとも1つの凝固剤を含む組成物を、直接皮膚上に、特に創傷上に噴霧することによって得られ得る生物学的医療用発泡物品。
【請求項5】
イオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンが、イオン性ゴムラテックスの分散液、イオン性ポリウレタンの分散液、イオン性(メタ)アクリレートコポリマーの分散液、並びに、炭水化物(例えば、セルロース誘導体、例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸コハク酸セルロース(CAS)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、加えてキチン、ヒアルロナン、デキストリン、セルロースまたは澱粉)に基づく天然に存在するバイオポリマーのおよびまたさらなる天然に存在するバイオポリマー(例えば、リグニンまたはカゼイン)の分散液から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項6】
イオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンが、水性ポリウレタンの分散液、脂肪族ポリウレタンの分散液およびポリウレタンハイブリッドのエマルジョンから選択されることを特徴とする、請求項4または5に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項7】
イオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンが、水性のアニオン性親水性ポリウレタンの分散液であることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項8】
イオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンが、
A)イソシアネート官能性プレポリマー(このイソシアネート官能性プレポリマーは、
A1)有機ポリイソシアネート、
A2)400から8000g/モルの範囲、好ましくは400から6000g/モルの範囲、より好ましくは600から3000g/モルの範囲の数平均分子量および1.5から6の範囲、好ましくは1.8から3の範囲、より好ましくは1.9から2.1の範囲のOH官能価を有するポリマーポリオール、および
A3)場合によって、62から399g/モルの範囲の分子量を有するヒドロキシル官能性化合物、および
A4)場合によって、イソシアネート反応性、アニオン性または潜在的にアニオン性および/または場合によって非イオン性の親水性付与剤から調製されるものである。)、ならびに
B)これらの遊離NCO基(この遊離NCO基は、次いで、全体的にまたは部分的に、
B1)場合によって、32から400g/モルの範囲の分子量を有するアミノ官能性化合物と、および
B2)イソシアネート反応性、好ましくはアミノ官能性、アニオン性または潜在的にアニオン性の親水性付与剤と反応させられる。)
により、
鎖延長により得られ得るアニオン性ポリウレタンの水性分散液であること、および、プレポリマーが、ステップB)の前、ステップB)の間またはステップB)の後に水中に分散されること、存在する潜在的にイオン性基のいずれもが、中和剤との部分的なまたは完全な反応によってイオン形態に転換させられることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項9】
アニオン性親水性付与ポリウレタンの水性分散液(I)が、A1)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体のビス(4,4’−イソシアネートシクロヘキシル)メタンおよびまたにこれらの混合物の使用において、ならびにA2)ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレングリコールポリオールの混合物の使用において調製され、ポリカーボネートおよびポリテトラメチレングリコールポリエーテルポリオールの合計によって導かれる成分A2)の割合が少なくとも70重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項10】
カチオン性凝固剤(II)が、一般式(1)および(2)の構造単位
【化1】

[式中、
Rは、C=O、−COO(CHまたは−COO(CHであり、
は、ハロゲン化物イオンである。]
を含むアクリルアミドコポリマーであることを特徴とする、請求項8または9に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項11】
イオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンが、防腐剤、増殖因子、プロテアーゼ阻害剤および非ステロイド性抗炎症剤/アヘン剤からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分をさらに含むことを特徴とする、請求項4から10のいずれか一項に記載の生物学的医療用発泡物品。
【請求項12】
少なくとも1つのイオン性ポリマーの分散液またはエマルジョンおよびまた少なくとも1つの凝固剤およびまた場合によって、防腐剤、増殖因子、プロテアーゼ阻害剤および非ステロイド性抗炎症剤/アヘン剤からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分を含む組成物を皮膚上に、特に創傷上に直接噴霧することを含む、請求項4から11のいずれか一項に記載の生物学的医療用発泡物品を製造する方法。

【公表番号】特表2009−533335(P2009−533335A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503489(P2009−503489)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003077
【国際公開番号】WO2007/115781
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(507051259)バイエル・イノベーシヨン・ゲー・エム・ベー・ハー (5)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】