説明

生物学的水処理装置

【課題】被処理水の水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量の抑制を両立可能な生物学的水処理装置を提供する。
【解決手段】第1の生物学的水処理装置11は、活性汚泥が溜められた生物反応槽13と、散気部15と、送気用ブロワ17と、酸化還元電位計19と、N2O量相関値取得部21と、曝気量補正量記憶部23と、第1の曝気量制御部25と、を備える。N2O量相関値取得部21は、生物反応槽13内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得する。曝気量補正量記憶部23は、N2O生成量に対する適正な曝気量補正量に係る第1の関係表を記憶する。第1の曝気量制御部25は、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する曝気部15,17の曝気量に係る適正補正量を用いて補正した曝気量を制御目標として、曝気部15,17の曝気量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水などの被処理水を浄化する水処理装置に係り、特に、酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥と呼ばれる微生物のはたらきにより、被処理水中のアンモニア性窒素を硝酸性窒素に生物学的に分解する生物学的水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水などの被処理水を浄化するために水処理装置が用いられる。かかる水処理装置の例として、酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥と呼ばれる微生物のはたらきにより、被処理水中のアンモニア性窒素を硝酸性窒素に生物学的に分解する生物学的水処理装置が知られている。こうした生物学的水処理装置では、被処理水中に含まれる窒素成分は、アンモニア性窒素(NH4 −N)を硝酸性窒素(NO3 −N)に酸化する硝化反応と、硝酸性窒素を窒素ガスに還元する脱窒反応とにより除去される。
【0003】
被処理水を浄化する過程で起こる硝化反応では、副生成物として亜酸化窒素(N2O)が生じることが知られている。最近、亜酸化窒素(N2O)と、温室効果との因果関係が明らかになっている。亜酸化窒素(N2O)は、二酸化炭素(CO2)に比べておよそ300倍の温室効果を有する。このため、亜酸化窒素(N2O)は、地球温暖化を助長する物質として、その排出量の削減が求められている。
【0004】
被処理水の浄化過程で生じる亜酸化窒素(N2O)が大気中へ拡散されることを抑制するために、特許文献1には、硝化反応に伴って生じる亜酸化窒素(N2O)の濃度をN2O計により測定し、その測定結果に基づき、生物反応槽の曝気量を制御する亜酸化窒素抑制方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−94665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る亜酸化窒素抑制技術では、被処理水の水質悪化を招くおそれがあった。その理由は以下の通りである。すなわち、特許文献1に係る亜酸化窒素抑制技術では、亜酸化窒素(N2O)の濃度が高い場合は曝気量を減少させる制御が行われる。曝気量を減少させると亜酸化窒素(N2O)の濃度を低く抑えることができるからである。このように曝気量を減少させる制御が行われると、硝化反応の進行が抑制される。硝化反応は酸化により促進される化学反応だからである。こうして硝化反応の進行が抑制されると、被処理水中のアンモニア性窒素はなかなか減らない。その結果、特許文献1に係る亜酸化窒素抑制技術では、被処理水の水質悪化を招くおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、被処理水の水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量の抑制を両立可能な生物学的水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生物学的水処理装置は、酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥のはたらきにより、被処理水中のアンモニア性窒素(NH4 −N)を硝酸性窒素(NO3 −N)に生物学的に分解する生物学的水処理装置であって、前記被処理水と共に前記活性汚泥が溜められた生物反応槽と、前記生物反応槽内において曝気を行う曝気部と、前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得するN2O量相関値取得部と、前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する前記曝気部の曝気量に係る適正補正量の関係を記憶する曝気量補正量記憶部と、前記曝気部の曝気量を制御する曝気量制御部と、を備える。
前記曝気量制御部は、前記N2O量相関値取得部で取得された前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、前記曝気量補正量記憶部の記憶内容とに基づいて、前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する前記曝気部の曝気量に係る適正補正量を求めると共に、この曝気量に係る適正補正量を用いて補正した曝気量を制御目標として前記曝気部の曝気量を制御する、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被処理水の水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量の抑制を両立可能な生物学的水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置の機能ブロック図である。
【図2】生物反応槽内で硝化反応が進行してゆく過程における酸化還元電位(ORP)に対する亜酸化窒素(N2O)の生成量特性を表す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置の動作説明に供するフローチャート図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置の機能ブロック図である。
【図5】生物反応槽内で硝化反応が進行してゆく過程における酸化還元電位(ORP)に対する硝化率特性を表す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置の動作説明に供するフローチャート図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置の機能ブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置の動作説明に供するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
(第1の生物学的水処理装置11の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11の機能ブロック図である。図2は、生物反応槽13内で硝化反応が進行してゆく過程における酸化還元電位(ORP:Oxidation-reduction Potential)に対する亜酸化窒素(N2O)の生成量特性を表す図である。本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11は、図1に示すように、被処理水Wと共に活性汚泥(不図示)が溜められた生物反応槽13と、散気部15と、送気用ブロワ17と、酸化還元電位計19と、N2O量相関値取得部21と、曝気量補正量記憶部23と、第1の曝気量制御部25と、を備えて構成されている。
【0012】
活性汚泥は、微生物の凝集した粒径0.1〜1.0mm前後の塊(フロック)であり、数十種類の微生物を含む。活性汚泥は、一般に、被処理水W中に浮遊した状態で存在する。第1の生物学的水処理装置11は、酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥のはたらきにより、被処理水W中のアンモニア性窒素(NH4 −N)を硝酸性窒素(NO3 −N)に生物学的に酸化分解する。こうした窒素形態の変化を硝化反応と呼ぶ。
【0013】
生物反応槽13の上流側には、不図示の最初沈殿池が設けられている。最初沈殿池では、家庭や工場等から排出された下水が流入し、ゴミや砂などの比較的大きい異物が沈降除去される。最初沈殿池において異物が除去された一次処理水は、所定の流速をもって、定常的または間欠的に、生物反応槽13へと流入する。生物反応槽13では、前記した硝化反応の他に、硝酸性窒素(NO3 −N)を窒素ガスに還元する脱窒反応が行われる。ただし、この脱窒反応は、生物反応槽13のうち嫌気槽(不図示)において行われる。
【0014】
生物反応槽13の下流側には、不図示の最終沈殿池が設けられている。最終沈殿池には、下水および活性汚泥が混合された二次処理水が、オーバーフロー式に生物反応槽13から流出する。最終沈殿池では、活性汚泥が重力によって沈降する。図示していないが,活性汚泥の一部は生物反応槽13に返送汚泥として戻される。最終沈殿池の上澄み液は、通常、塩素やオゾン等による殺菌処理が施された後に、河川や海などに放流される。
【0015】
生物反応槽13の底部には、図1に示すように、散気部15が設けられている。散気部15は、空気導管16を介して送気用ブロワ17に連通接続されている。送気用ブロワ17によって空気導管16を介して送られた空気は、散気管15に設けられた不図示の小孔を介して微少な気泡の粒の状態で散気されるようになっている。これにより、生物反応槽13内の下水および活性汚泥からなる混合液には、撹拌および酸素の供給がなされる。こうして供給された酸素は、生物反応槽13を好気性環境にするのに役立つ。なお、散気部15および送気用ブロワ17は、本発明の“曝気部”として機能する。
【0016】
生物反応槽13内に一時的に溜められた被処理水Wには、図1に示すように、酸化還元電位(以下、“ORP”と省略する。)を計測するORP計19のプローブ19aが浸漬されている。生物反応槽13内におけるプローブ19aの設置位置は、被処理水Wの流通経路のうち下流側が好ましい。被処理水Wの流通経路のうち下流側では、その上流側と比べて、硝化反応の進行状況をよく反映した計測値が得られるからである。
【0017】
ORP計19によって計測されたORP検出値は、第1の生物学的水処理装置11において、亜酸化窒素(N2O)の相関値として取り扱うことができる。その理由は、図2に示すように、生物反応槽13内で硝化反応が進行している場合において、ORP検出値と、亜酸化窒素(N2O)の量とは、所定の相関関係があるからである。なお、ORP計19によって計測されたORP検出値は、被処理水Wの温度変化に応じた補正後の値を採用するのが好ましい。ORP検出値は、被処理水Wの温度変化に応じた誤差を生じるからである。
【0018】
第1の生物学的水処理装置11において亜酸化窒素(N2O)の相関値として取り扱われるORP検出値は、図1に示すように、N2O量相関値取得部21に与えられる。N2O量相関値取得部21は、生物反応槽13内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得する機能を有する。具体的には、例えば、N2O量相関値取得部21は、ORP検出値そのものを亜酸化窒素(N2O)の量として取り扱ってもよいし、ORP値とN2O量との対照表を用いて、ORP検出値をN2O量に換算した値として取り扱ってもよい。また、ORP値をN2O量に換算するための関係式を用いて、ORP検出値をN2O量に換算した値として取り扱ってもよい。
【0019】
曝気量補正量記憶部23は、次の(表1)に示すように、単位時間あたりのN2O生成量に対する適正な曝気量補正量に係る第1の関係表を記憶している。この第1の関係表では、単位時間あたりのN2O生成量[g/h]を5段階に分けて、各段階毎に、相互に異なる適正な曝気量補正量[%]をそれぞれ対応づけて記述している。すなわち、第1の関係表には、N2O生成量:(10>)[g/h]に対して曝気量補正量:5[%]が、N2O生成量:(10〜20)[g/h]に対して曝気量補正量:2[%]が、N2O生成量:(20〜30)[g/h]に対して曝気量補正量:0[%]が、N2O生成量:(30〜50)[g/h]に対して曝気量補正量:−2[%]が、N2O生成量:(50<)[g/h]に対して曝気量補正量:−5[%]が、それぞれ対応づけて記述されている。
【表1】

【0020】
要するに、第1の関係表では、N2O生成量が少ない場合は、硝化反応の促進が足りないものとみなして曝気量を増大させる補正を行い、N2O生成量が多い場合は、硝化反応の促進が過剰になされているものとみなして曝気量を減少させる補正を行い、N2O生成量が適正な場合は、硝化反応の促進が適切になされているものとみなして曝気量をそのまま維持させる(補正なし)といったように、第1の曝気量制御部25が制御対象とする曝気量を、N2O生成量の多少に応じて補正させることを狙っている。
【0021】
第1の曝気量制御部25は、曝気量補正量演算部27を備える。曝気量補正量演算部27は、N2O量相関値取得部21で取得された亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、曝気量補正量記憶部23の記憶内容とに基づいて、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する曝気部15,17の曝気量に係る適正補正量を求める。第1の曝気量制御部25は、この曝気量に係る適正補正量を用いて補正した曝気量を制御目標として、曝気部(散気部15および送気用ブロワ17;以下では、“曝気部15,17”と省略する。)の曝気量を制御するように動作する。
【0022】
(本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11の動作)
次に、本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11の動作について、図面を参照して説明する。図3は、本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11の動作説明に供するフローチャート図である。
【0023】
第1の生物学的水処理装置11の動作説明に先立って、本発明において前提となる事実関係を明らかにしておく。下水処理における亜酸化窒素(N2O)の生成条件の一つに硝化反応の進行が挙げられる。生物反応槽13内の被処理水W中に含まれるアンモニア性窒素(NH4 −N)は、活性汚泥のはたらきによる硝化反応によって、亜硝酸性窒素(NO2 −N)を経て硝酸性窒素(NO3 −N)に酸化される。亜酸化窒素(N2O)は、硝化反応の副生成物として生成される。硝化反応は酸化反応である。このため、酸素の供給量を制御すれば、その反応量(亜酸化窒素(N2O)の生成量)を制御することができる。
【0024】
具体的には、曝気量を増加させると酸素の供給量は増加し、硝化反応の進行が促進される。この場合、硝化反応の副生成物である亜酸化窒素(N2O)の生成量は増加する。一方、曝気量を減少させると酸素の供給量は減少し、硝化反応の進行が抑制される。この場合、硝化反応の副生成物である亜酸化窒素(N2O)の生成量は減少する。本第1実施形態では、こうした曝気量と亜酸化窒素(N2O)の生成量との因果関係を利用することによって、被処理水Wの水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量抑制との両立を図っている。
【0025】
なお、本第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11では、次に述べるように、基準となる曝気量を予め設定しておき、設定された曝気量を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正するように動作する。ここで、基準となる曝気量を設定するにあたっては、いくつかの方式がある。すなわち、曝気量を所定の固定値に設定する曝気量固定制御方式と、被処理水Wの流量に比例して曝気量を可変制御する流量比例制御方式と、生物反応槽13内の溶存酸素(DO)を一定に維持するように曝気量を制御するDO一定制御方式と、がそれである。次に述べる動作説明では、前記したいずれかの方式により決定された曝気量に対して、亜酸化窒素(N2O)の量に応じた補正が行われるものとする。
【0026】
図3に示すステップS11において、第1の曝気量制御部25は、最新の(現在の)曝気量を取得する。第1の曝気量制御部25は、送気用ブロワ17に対して曝気量指令信号を発行することにより、曝気部15,17の曝気量を制御している。従って、第1の曝気量制御部25は、自らが発行する曝気量指令信号を参照することによって、最新の(現在の)曝気量を取得することができる。
【0027】
ステップS12において、N2O量相関値取得部21は、ORP計19によるORP検出値をサンプリングする。このサンプリングは、例えば、所定の周期に従って行ってもよいし、ORP検出値を用いる所要のタイミングで不定期に行ってもよい。
【0028】
ステップS13において、N2O量相関値取得部21は、ステップS12でサンプリングしたORP検出値を、ORP値とN2O量との対照表を用いて、N2O量の相関値に換算する。こうして取得したN2O量の相関値の情報は、第1の曝気量制御部25に送られる。
【0029】
ステップS14において、第1の曝気量制御部25の曝気量補正量演算部27は、N2O量相関値取得部21で取得された亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、曝気量補正量記憶部23の記憶内容とに基づいて、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する曝気部15,17の曝気量に係る適正補正量を求める。
【0030】
ステップS15において、第1の曝気量制御部25は、ステップS14で求めた曝気量に係る適正補正量を用いて補正した曝気量を制御目標として、曝気部15,17の曝気量を制御する。こうした曝気量制御を実行した後、第1の曝気量制御部25は、処理の流れをステップS11へと戻し、以下の処理を行わせる。
【0031】
(本発明の第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11の作用効果)
第1の生物学的水処理装置11によれば、亜酸化窒素(N2O)の測定値に基づいて生物反応槽13の曝気量を制御する従来技術と比較して、次に述べる有利な作用効果を奏する。すなわち、第1の曝気量制御部25は、選択された制御方式に従って適宜設定された曝気量を、N2O生成量の多少に応じて段階的に増減補正する。このため、硝化反応の適切な進行促進が図られる。その結果、生物反応槽13内で起こる硝化反応の進行程度を表す硝化率が適正化される。従って、第1の生物学的水処理装置11によれば、被処理水Wの水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量抑制を両立することができる。また、下水処理場などの水処理施設から排出されるCO2 量を削減することができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31について、図面を参照して説明する。
(本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31の構成)
図4は、本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31の機能ブロック図である。図5は、生物反応槽13内で硝化反応が進行してゆく過程における酸化還元電位(ORP)に対する硝化率特性を表す図である。なお、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31は、第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11と比べて、一部の構成要素が共通している。このため、これら両者間において共通の機能部には共通の符号を付し、その重複した説明を省略して、両者の相違点に注目して説明を進める。
【0033】
第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11と、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31との相違点は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態に係る第1の生物学的水処理装置11では、基準となる曝気量を予め設定しておき、設定された曝気量を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正するようにしている。
これに対し、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31では、目標となる硝化率を予め設定しておき、設定された硝化率を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正するようにしている。
【0034】
前記した相違点に由来して、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31は、図4に示すように、硝化率相関値取得部33と、硝化率補正量記憶部35と、目標硝化率記憶部37と、第2の曝気量制御部39と、を備えて構成される。
【0035】
硝化率相関値取得部33は、生物反応槽13内で起こる硝化反応の進行程度を表す硝化率の相関値を取得する機能を有する。ORP計19によって計測されたORP検出値は、第2の生物学的水処理装置31において、硝化率の相関値として取り扱うことができる。その理由は、図5に示すように、生物反応槽13内で硝化反応が進行している場合において、ORP検出値と硝化率とは、所定の相関関係があるからである。要するに、ORP値は、硝化反応の進行状態を表す間接的な指標となる。
【0036】
具体的には、硝化率相関値取得部33は、例えば、ORP検出値そのものを硝化率の相関値として取り扱ってもよいし、ORP値と硝化率との対照表を用いて、ORP検出値を硝化率に換算した値として取り扱ってもよい。また、ORP値を硝化率に換算するための関係式を用いて、ORP検出値を硝化率に換算した値として取り扱ってもよい。
【0037】
硝化率補正量記憶部35は、次の(表2)に示すように、単位時間あたりのN2O生成量に対する適正な硝化率補正量に係る第2の関係表を記憶している。この第2の関係表では、単位時間あたりのN2O生成量[g/h]を5段階に分けて、各段階毎に、相互に異なる適正な硝化率補正量[%]をそれぞれ対応づけて記述している。すなわち、第1の関係表には、N2O生成量:(10>)[g/h]に対して硝化率補正量:10[%]が、N2O生成量:(10〜20)[g/h]に対して硝化率補正量:5[%]が、N2O生成量:(20〜30)[g/h]に対して硝化率補正量:0[%]が、N2O生成量:(30〜50)[g/h]に対して硝化率補正量:−5[%]が、N2O生成量:(50<)[g/h]に対して硝化率補正量:−10[%]が、それぞれ対応づけて記述されている。
【表2】

【0038】
要するに、第2の関係表では、N2O生成量が少ない場合は、硝化反応の促進が足りないものとみなして硝化率を増大させる補正を行い、N2O生成量が多い場合は、硝化反応の促進が過剰になされているものとみなして硝化率を減少させる補正を行い、N2O生成量が適正な場合は、硝化反応の促進が適切になされているものとみなして硝化率をそのまま維持させる(補正なし)といったように、第2の曝気量制御部39が見かけ上の制御対象(実質的な制御対象は曝気量)とする硝化率を、N2O生成量の多少に応じて補正させることを狙っている。
【0039】
目標硝化率記憶部37は、後記する補正によって時々刻々と変化する目標硝化率のうち最新のものを記憶保持している。第2の曝気量制御部39は、硝化率補正量演算部41と、目標硝化率演算部43とを備える。硝化率補正量演算部41は、N2O量相関値取得部21で取得された亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、硝化率補正量記憶部35の記憶内容とに基づいて、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する硝化率に係る適正補正量を求める。
【0040】
目標硝化率演算部43は、目標硝化率記憶部37に記憶されている現在の(最新の)目標硝化率と、硝化率補正量演算部41で求められた硝化率に係る適正補正量とに基づいて、補正後の目標硝化率を求める。第2の曝気量制御部39は、目標硝化率演算部43で求められた補正後の目標硝化率を制御目標として、曝気部(散気部15および送気用ブロワ17;以下では、“曝気部15,17”と省略する。)の曝気量を制御するように動作する。
【0041】
(本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31の動作)
次に、本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31の動作について、図面を参照して説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31の動作説明に供するフローチャート図である。
【0042】
なお、本第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31では、次に述べるように、目標硝化率を予め設定しておき、設定された目標硝化率を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正するように動作する。ここで、目標硝化率を設定するにあたっては、いくつかの方式がある。すなわち、目標硝化率を所定の固定値に設定する目標硝化率固定制御方式と、生物反応槽13内の溶存酸素(DO)を一定に維持するように目標硝化率を制御するDO一定制御方式と、などがそれである。次に述べる動作説明では、前記したいずれかの方式により決定された目標硝化率に対して、亜酸化窒素(N2O)の量に応じた補正が行われるものとする。
【0043】
図6に示すステップS21において、第2の曝気量制御部39は、目標硝化率記憶部37から最新の(現在の)目標硝化率を取得する。
【0044】
ステップS22において、N2O量相関値取得部21は、ORP計19によるORP検出値をサンプリングする。このサンプリングは、例えば、所定の周期に従って行ってもよいし、ORP検出値を用いる所要のタイミングで不定期に行ってもよい。
【0045】
ステップS23において、N2O量相関値取得部21は、ステップS22でサンプリングしたORP検出値を、ORP値とN2O量との関係表を用いて、N2O量の相関値に換算する。こうして取得したN2O量の相関値は、第2の曝気量制御部39の硝化率補正量演算部41に送られる。
【0046】
ステップS24において、硝化率相関値取得部33は、ステップS22でサンプリングしたORP検出値を、ORP値を硝化率に換算するための関係式を用いて、硝化率の相関値に換算する。こうして取得した硝化率の相関値は、第2の曝気量制御部39に送られる。
【0047】
ステップS25において、第2の曝気量制御部39の硝化率補正量演算部41は、N2O量相関値取得部21で取得された亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、硝化率補正量記憶部35の記憶内容とに基づいて、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する硝化率に係る適正補正量を求める。
【0048】
ステップS26において、第2の曝気量制御部39の目標硝化率演算部43は、目標硝化率記憶部37に記憶されている現在の(最新の)目標硝化率と、ステップS25で求められた硝化率に係る適正補正量とに基づいて、補正後の目標硝化率を求める。
【0049】
ステップS27において、第2の曝気量制御部39は、目標硝化率演算部43で求められた補正後の目標硝化率を制御目標として、ステップS24で取得した硝化率の相関値を補正後の目標硝化率に追従させることを考慮して、曝気部15,17の曝気量を制御する。こうした曝気量制御を実行した後、第2の曝気量制御部39は、処理の流れをステップS21へと戻し、以下の処理を行わせる。
【0050】
(本発明の第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31の作用効果)
第2の生物学的水処理装置31によれば、第2の曝気量制御部39は、選択された制御方式に従って適宜設定された目標硝化率を、N2O生成量の多少に応じて段階的に増減補正する。このため、硝化反応における硝化率の適正化が図られる。従って、第2の生物学的水処理装置31によれば、第1の生物学的水処理装置11と同様に、被処理水Wの水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量抑制を両立することができる。また、下水処理場などの水処理施設から排出されるCO2 量を削減することができる。
【0051】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置31について、図面を参照して説明する。
(本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51の構成)
図7は、本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51の機能ブロック図である。なお、第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51は、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31と比べて、一部の構成要素が共通している。このため、これら両者間において共通の機能部には共通の符号を付し、その重複した説明を省略して、両者の相違点に注目して説明を進める。
【0052】
第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31と、第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51との相違点は、次のとおりである。すなわち、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31では、目標となる硝化率を予め設定しておき、設定された硝化率を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正するようにしている。
【0053】
これに対し、第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51では、目標となる硝化率を予め設定しておき、設定された硝化率を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正する点は同じであるが、目標硝化率の補正タイミングを、亜酸化窒素(N2O)の量が許容できる上限値を超えた(許容範囲を逸脱した)タイミングと同期させている点が、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31と相違している。
【0054】
前記した相違点に由来して、第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51は、N2O量許容値記憶部53と、第3の曝気量制御部55と、を備えて構成される。
【0055】
N2O量許容値記憶部53は、亜酸化窒素(N2O)の量に係る許容値を記憶している。亜酸化窒素(N2O)の量に係る許容値としては、許容できる亜酸化窒素(N2O)の量の上限値、または、許容できる亜酸化窒素(N2O)の量の下限値および上限値の組み合わせからなる許容範囲のうちいずれかを採用すればよい。
【0056】
第3の曝気量制御部55は、図5に示す硝化率補正量演算部41および目標硝化率演算部43の他に、ORP設定値演算部57を備える。硝化率補正量演算部41は、N2O量相関値取得部21で取得された亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、硝化率補正量記憶部35の記憶内容とに基づいて、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する硝化率に係る適正補正量を求める。目標硝化率演算部43は、目標硝化率記憶部37に記憶されている現在の(最新の)目標硝化率と、硝化率補正量演算部41で求められた硝化率に係る適正補正量とに基づいて、補正後の目標硝化率を求める。
【0057】
ORP設定値演算部57は、目標硝化率演算部43で求められた補正後の目標硝化率と、図5に示すORP値に対応する硝化率を換算するための関係式(ORP設定値演算部57に与えられている。)とに基づいて、補正後の目標硝化率に対応するORP値を求め、こうして求めたORP値をORP設定値とする。ここで、ORP設定値とは、目標消化率をORP値に換算した値である。第3の曝気量制御部55は、ORP設定値演算部57で求められた補正後の目標硝化率に対応するORP設定値を制御目標として、ORP計19により計測されたORP検出値21aをORP設定値に追従させることを考慮して、曝気部(散気部15および送気用ブロワ17;以下では、“曝気部15,17”と省略する。)の曝気量を制御するように動作する。
【0058】
(本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51の動作)
次に、本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51の動作について、図面を参照して説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51の動作説明に供するフローチャート図である。
【0059】
なお、本第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51では、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31と同様に、目標硝化率を予め設定しておき、設定された目標硝化率を、亜酸化窒素(N2O)の量に応じて段階的に補正するように動作する。また、目標硝化率の設定態様についても、第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31と同じである。
【0060】
図8に示すステップS31において、第3の曝気量制御部55は、目標硝化率記憶部37から最新の(現在の)目標硝化率を取得する。
【0061】
ステップS32において、N2O量相関値取得部21は、ORP計19によるORP検出値21aをサンプリングする。このサンプリングは、例えば、所定の周期に従って行ってもよいし、ORP検出値21aを用いる所要のタイミングで不定期に行ってもよい。
【0062】
ステップS33において、N2O量相関値取得部21は、ステップS22でサンプリングしたORP検出値21aを、ORP値とN2O量との関係表を用いて、N2O量の相関値に換算する。こうして取得したN2O量の相関値は、第3の曝気量制御部55に送られる。
【0063】
ステップS34において、第3の曝気量制御部55は、ステップS33で取得したN2O量の相関値と、N2O量許容値記憶部53に記憶されている、許容できる亜酸化窒素(N2O)の量の上限値とに基づいて、N2O量が許容値の上限を超えているか否かを判定する。
【0064】
ステップS34の判定の結果、N2O量が許容値の上限を超えていない場合、第3の曝気量制御部55は、処理の流れをステップS31へと戻し、以下の処理を実行させる。
【0065】
一方、ステップS34の判定の結果、N2O量が許容値の上限を超えている場合、第3の曝気量制御部55は、処理の流れを次のステップS35へと進ませる。
【0066】
ステップS35において、第3の曝気量制御部55の硝化率補正量演算部41は、ステップS33で取得した亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、硝化率補正量記憶部35の記憶内容とに基づいて、亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する硝化率に係る適正補正量を求める。
【0067】
ステップS36において、第3の曝気量制御部55の目標硝化率演算部43は、目標硝化率記憶部37に記憶されている現在の(最新の)目標硝化率と、ステップS35で求められた硝化率に係る適正補正量とに基づいて、補正後の目標硝化率を求める。
【0068】
ステップS37において、第3の曝気量制御部55のORP設定値演算部57は、ステップS36で求められた補正後の目標硝化率と、ORP値に対応する硝化率を換算するための関係式とに基づいて、補正後の目標硝化率に対応するORP値を求め、こうして求めたORP値をORP設定値とする。次のステップS38では、ORP検出値21aを現在の硝化率に、ORP設定値を目標硝化率に、それぞれ置き換えて取り扱うことができる。こうした置き換えは、ORPに対応する硝化率を換算するための関係式が介在することによって実現することができる。
【0069】
ステップS38において、第3の曝気量制御部55は、ステップS37で求められた補正後の目標硝化率に対応するORP設定値を制御目標として、ORP計19により計測されたORP検出値21aをORP設定値に追従させることを考慮して、曝気部15,17の曝気量を制御する。こうした曝気量制御を実行した後、第3の曝気量制御部55は、処理の流れをステップS31へと戻し、以下の処理を行わせる。
【0070】
(本発明の第3実施形態に係る第3の生物学的水処理装置51の作用効果)
第3の生物学的水処理装置51によれば、第3の曝気量制御部55は、選択された制御方式に従って適宜設定された目標硝化率を、N2O生成量の多少に応じて段階的に増減補正する。また、目標硝化率の補正タイミングを、亜酸化窒素(N2O)の量が許容できる上限値を超えた(許容範囲を逸脱した)タイミングと同期させるようにしたので、適切なタイミングをもって、硝化反応における硝化率の適正化が図られる。従って、第3の生物学的水処理装置51によれば、第2の生物学的水処理装置31と同様に、被処理水Wの水質の維持と亜酸化窒素(N2O)の生成量抑制を両立することができる。また、下水処理場などの水処理施設から排出されるCO2 量を削減することができる。
【0071】
[その他の実施形態]
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化例を示したものである。従って、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0072】
例えば、本第1〜第3実施形態に係る第1〜第3の生物学的水処理装置11,31,51において、N2O量相関値取得部21は、生物反応槽13内に設けられた酸化還元電位(ORP)計の検出値に基づき亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得する態様を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、生物反応槽13内に設けられた亜酸化窒素(N2O)計、アンモニア濃度計、または、硝酸性窒素濃度計のうちいずれかの検出値に基づき亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得するN2O量相関値取得部21の態様も、本発明の技術的範囲の射程に包含される。
【0073】
なお、本発明でいう“生物反応槽13内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値”とは、亜酸化窒素(N2O)の量として取り扱うことのできるすべての値を含む趣旨である。具体的には、“生物反応槽13内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値”には、前記した酸化還元電位(ORP)計、アンモニア濃度計、または、硝酸性窒素濃度計のうちいずれかの検出値に基づき取得したものの他、N2O計により計測されたN2O濃度値を含む。N2O計により計測されたN2O濃度値は、単位容積(または、容積を一定とした場合の単位時間)当たりのN2Oの量であり、これは、生物反応槽13内(単位容積当たり)の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に他ならないからである。
【0074】
また、本第2実施形態に係る第2の生物学的水処理装置31において、硝化率相関値取得部23は、生物反応槽13内に設けられた酸化還元電位(ORP)計の検出値に基づき硝化率の相関値を取得する態様を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、生物反応槽13内に設けられたアンモニア濃度計、硝酸性窒素濃度計、または、溶存酸素濃度計のうちいずれかの検出値に基づき硝化率の相関値を取得する硝化率相関値取得部23の態様も、本発明の技術的範囲の射程に包含される。
【0075】
最後に、本発明は、活性汚泥を用いた生物学的水処理であれば、標準活性汚泥法、嫌気−好気法、嫌気−無酸素−好気法などのあらゆる水処理方式に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
11 第1の生物学的水処理装置
13 生物反応槽
15 散気部(曝気部)
17 送気用ブロワ(曝気部)
19 酸化還元電位(ORP)計
21 N2O量相関値取得部
23 曝気量補正量記憶部
25 第1の曝気量制御部
27 曝気量補正量演算部
31 第2の生物学的水処理装置
33 硝化率相関値取得部
35 硝化率補正量記憶部
37 目標硝化率記憶部
39 第2の曝気量制御部
41 硝化率補正量演算部
43 目標硝化率演算部
51 第3の生物学的水処理装置
53 N2O量許容値記憶部
55 第3の曝気量制御部
57 ORP設定値演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥のはたらきにより、被処理水中のアンモニア性窒素(NH4 −N)を硝酸性窒素(NO3 −N)に生物学的に分解する生物学的水処理装置であって、
前記被処理水と共に前記活性汚泥が溜められた生物反応槽と、
前記生物反応槽内において曝気を行う曝気部と、
前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得するN2O量相関値取得部と、
前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する前記曝気部の曝気量に係る適正補正量の関係を記憶する曝気量補正量記憶部と、
前記曝気部の曝気量を制御する曝気量制御部と、
を備え、
前記曝気量制御部は、前記N2O量相関値取得部で取得された前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、前記曝気量補正量記憶部の記憶内容とに基づいて、前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する前記曝気部の曝気量に係る適正補正量を求めると共に、この曝気量に係る適正補正量を用いて補正した曝気量を制御目標として前記曝気部の曝気量を制御する、
ことを特徴とする生物学的水処理装置。
【請求項2】
酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥のはたらきにより、被処理水中のアンモニア性窒素(NH4 −N)を硝酸性窒素(NO3 −N)に生物学的に分解する生物学的水処理装置であって、
前記被処理水と共に前記活性汚泥が溜められた生物反応槽と、
前記生物反応槽内において曝気を行う曝気部と、
前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得するN2O量相関値取得部と、
前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する、前記生物反応槽内で起こる硝化反応の進行程度を表す硝化率に係る適正補正量の関係を記憶する硝化率補正量記憶部と、
前記曝気部の曝気量を制御する曝気量制御部と、
を備え、
前記曝気量制御部は、前記N2O量相関値取得部で取得された前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値と、前記硝化率補正量記憶部の記憶内容とに基づいて、前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値に対応する前記硝化率に係る適正補正量を求めると共に、この硝化率に係る適正補正量を用いて補正した硝化率を制御目標として前記曝気部の曝気量を制御する、
ことを特徴とする生物学的水処理装置。
【請求項3】
酸素が溶存している好気性環境に置かれた活性汚泥のはたらきにより、被処理水中のアンモニア性窒素(NH4 −N)を硝酸性窒素(NO3 −N)に生物学的に分解する生物学的水処理装置であって、
前記被処理水と共に前記活性汚泥が溜められた生物反応槽と、
前記生物反応槽内において曝気を行う曝気部と、
前記生物反応槽内の亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得するN2O量相関値取得部と、
前記生物反応槽内で起こる硝化反応の進行程度を表す硝化率の目標である目標硝化率を記憶する目標硝化率記憶部と、
前記N2O量相関値取得部で取得された前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値が、予め設定された亜酸化窒素(N2O)の量の許容値を超えた場合に、前記目標硝化率記憶部に記憶された目標硝化率について、前記相関値が前記許容値内に収まる前記目標硝化率の補正値を演算する硝化率補正値演算部と、
前記硝化率補正値演算部で演算された前記目標硝化率の補正値を用いて前記曝気部の曝気量を制御する曝気量制御部と、
を備えることを特徴とする生物学的水処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の生物学的水処理装置であって、
前記N2O量相関値取得部は、前記生物反応槽内に設けられた酸化還元電位計の検出値に基づき前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得する、
ことを特徴とする生物学的水処理装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の生物学的水処理装置であって、
前記N2O量相関値取得部は、前記生物反応槽内に設けられた亜酸化窒素(N2O)計、アンモニア濃度計、または、硝酸性窒素濃度計のうちいずれかの検出値に基づき前記亜酸化窒素(N2O)の量の相関値を取得する、
ことを特徴とする生物学的水処理装置。
【請求項6】
請求項2に記載の生物学的水処理装置であって、
前記硝化率相関値取得部23は、前記生物反応槽内に設けられた酸化還元電位計、アンモニア濃度計、硝酸性窒素濃度計、または、溶存酸素濃度計のうちいずれかの検出値に基づき前記硝化率の相関値を取得する、
ことを特徴とする生物学的水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate