説明

生物学的液体のための回路を提供するための方法および得られた回路

【課題】生物学的液体のための回路であって、きわめて簡潔であり、使い勝手がよく、信頼できる回路を提供すること。
【解決手段】この方法は、バッグをシェル(13、14)の間に締め付け、膨張用コネクタを介して膨張剤を注入することによってパイプ(12)を形成するステップを含む。この回路は、バッグ(126)およびプレス(10)を備えており、プレス(10)が、上記バッグをバッグのフィルム(25、26)の間にパイプ(12)か形成された状態にて締め付ける2つのシェル(13、14)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的液体のための回路であって、特には、これに限られるわけではないが、モノクローナル抗体、ワクチン、または組み換えたんぱく質などといった生成物を得るためにバイオ医薬品液を精製するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品液が、一般的には、バイオリアクタ内での培養によって得られ、その後に純度、濃度、ウイルスの不在、などといった必要な特性を得るために処理されなければならないことは、知られている。
【0003】
これらの処理は、これまでのところ、ステンレス鋼製のパイプおよび他の部品(タンクおよびフィルタハウジングなど)を備える専用の設備において実行されているが、実際の処理の前後に、比較的面倒な作業、特には使用後の清掃の作業が必要である。
【0004】
代案として、ここ数年においては、これらの処理が、液体と接触する部品が使い捨ての部品である設備において実行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/057030号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2008 003 823号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2006 059 459号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/057274号明細書
【特許文献5】英国特許出願公開第2448858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような使い捨ての部品は、清掃作業の回避という利点を有しているが、必要とされる安全性の水準をもたらすために、そのような部品を備える設備の実現においては、比較的複雑な選択、組み立て、および検証の作業が必要になる。
【0007】
これは、パイプおよび他の回路部品(コネクタ、バルブ、など)の数が多い場合、および/または動作圧力が高い場合に、特に当てはまる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、生物学的液体のための回路であって、きわめて簡潔であり、使い勝手がよく、信頼できる回路を提供することを目的とする。
【0009】
この目的のため、本発明は、複数のコネクタと、上記コネクタの間で液体を経路付けするためのネットワークと、を備える生物学的液体のための回路を提供するための方法であって:
2枚の可撓フィルムを、閉じられた輪郭を画定するシールによって貼り合わせて備えており、上記経路ネットワークのコネクタおよび膨張用コネクタを、上記輪郭の内側および外側に開くように備えるバッグを得るステップと、
2つのシェルを備えるプレスを得るステップであって、上記バッグと協働し、前記シェルの間に上記バッグを締め付けて上記膨張用コネクタを介して膨張剤を注入することによって、上記フィルムの間に上記経路ネットワークのパイプを形成するように構成されたステップと、
上記バッグを上記シェルの間に締め付けて上記膨張用コネクタを介して膨張剤を注入することによって、上記パイプを形成するステップとを含んでおり、
上記バッグおよび上記プレスが、少なくとも1つの上記パイプが少なくとも一部分が専ら上記プレスとの協働によって画定される輪郭を有するように選択されていることを特徴とする方法を提供する。
【0010】
本発明による方法によってもたらされる回路においては、流体を経路付けるネットワークのパイプが、使用されるバッグの初期の状態において、あらかじめ形成されてはおらず、あるいはいずれにしても、完全に前もって形成されることがない。対照的に、少なくとも1つのパイプが、少なくとも一部分が専らプレスとの協働によって画定される輪郭を有している。
【0011】
使用されるバッグに、初期の状態において、経路ネットワークのコネクタが、閉じた輪郭を有するシールによって囲まれたバッグ内の同じ空間へと開いている。
【0012】
膨張用のコネクタが同じ空間へと開いているということゆえ、このコネクタによって膨張剤を注入することで、この膨張剤が残りのコネクタによって逃げ出すことができないという条件で、この空間を膨張させることができる。
【0013】
この膨張のおかげで、フィルムを、一部分(パイプを成形すべく機能する部分)が凹まされているシェルを含む当接面へと押し付けることができる。
【0014】
バッグをシェルの間に締め付けることで、パイプを縁取っているフィルム間の当接領域を、液体を漏らさぬようにすることができる。
【0015】
後述されるように、膨張を、バッグの締め付けよりも前に、バッグを締め付けた後に、あるいは一部をバッグの締め付けよりも前に、一部をバッグの締め付けの後に実行することができる。
【0016】
シェルの間のバッグの締め付けおよび膨張コネクタによる膨張剤の注入のステップが実行されたならば、回路を、すぐに使用することができる。
【0017】
これを、例えば、経路ネットワークのコネクタを塞いでいる栓(そのような栓が、膨張剤によるパイプの膨張を可能にするために使用されている場合)を取り除き、これらのコネクタを液体の種々の容器(処理対象の液体の供給容器および処理後の液体の収集容器など)へと接続することによって、実行することができる。容器との接続は、単純な配管によって行うことおよび/または例えばポンプを備えるより複雑な回路の一部分によって行うことができる。
【0018】
当然ながら、使用時に、バッグはシェルの間に締め付けられたままである。
【0019】
本発明による方法において、あらかじめの組み立てが必須である従来からの管一式およびコネクタを用意するステップは、存在しない。
【0020】
本発明による方法によって得られる回路は、バッグから形成されることによってもたらされる一体性、バッグの使い捨て性、ならびにシェルの剛性および強度を同時に提供する。
【0021】
さらに、回路の使用時にバッグを締め付けるシェルによる回路のパイプの成形するということが、パイプを別途の製造用金型において前もって成形する解決策に比べて、バッグの製造の簡略化という利点、および回路の使用時にバッグのフィルムに望ましくない応力(製造用の金型と回路用のプレスのシェルとの間の製造公差に関係する成形の相違に起因して存在しうる)が加わる危険を取り除くという利点をもたらす。
【0022】
本発明による方法の好ましい特徴によれば:
上記膨張用コネクタが、上記経路ネットワークのコネクタとは別であり、
上記膨張剤が、気体であり、
上記パイプを形成する上記ステップが、上記バッグを上記シェルの間に締め付けるステップの前に、膨張剤を注入するステップを含んでおり、および/または
膨張剤を注入する上記ステップに、上記バッグを2つのシェルの各々のすぐ近くに位置する上記プレスを予備的に閉じるステップが先行する。
【0023】
本発明は、第2の態様によれば、上述の方法によって得られる回路に関する。
【0024】
したがって、本発明は、複数のコネクタと、上記コネクタの間で液体を経路付けするためのネットワークと、を備えており、上述の方法によって得ることができる生物学的液体のための回路であって:
2枚の可撓フィルムを、閉じられた輪郭を画定するシールによって貼り合わせて備えており、上記経路ネットワークのコネクタおよび膨張用コネクタを、上記輪郭の内側および外側に開くように備えるバッグ、および
上記バッグを、上記フィルムの間に上記液体を経路付けするためのネットワークのパイプが膨張剤によって膨張させられて形成された状態で締め付けている2つのシェルを備えるプレスを備え、
少なくとも1つの上記パイプが、少なくとも一部分が専ら上記プレスとの協働によって画定された輪郭を有していることを特徴とする回路を提供する。
【0025】
好ましい特徴によれば:
上記シェルの各々が、上記パイプの各々のための成形チャネルを備え、
上記成形チャネルの各々が、半円形の断面であり、
少なくとも1つの上記シェルが、上記パイプの各々のための成形チャネルを備えており、上記成形チャネルの各々が、各側において、上記フィルムを上記パイプに沿って互いに押し付けるように機能するビードのネットワークの各々のビードを収容する溝によって縁取られており、
少なくとも1つの上記シェルが、上記フィルムを上記パイプに沿って溶接するための手段を備えており、
回路が、上記バッグ内に囲まれた少なくとも1つのフィルタを備えており、
少なくとも1つの上記シェルが、上記パイプのピンチ弁の少なくとも1つのアクチュエータを備えており、および/または
少なくとも1つの上記シェルが、物理化学的な値の少なくとも1つのセンサを備える。
【0026】
次に、本発明の開示を、添付の図面を参照して例示的(本発明を限定するものではない)なものとして以下に提示される実施形態の詳細な説明によって続ける。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による回路を得ることを可能にするプレスおよびバッグの第1の実施形態の図であり、バッグがプレスの下部シェルに載せられている。
【図2】図1と同様の図であるが、プレスのシェルがバッグを締め付けており、回路がすぐに使用できる状態にある。
【図3】抵抗がバッグの2枚のフィルムの溶接のために設けられているプレスの第1の実施形態の変種について、図1と同様の図である。
【図4】本発明による回路を実現可能にするプレスの第2の実施形態のシェルの比較的詳細な斜視図である。
【図5】すぐに使用することができる状態にある上記回路のバッグの斜視図である。
【図6】図4および図5に示したシェルおよびバッグが得られる回路の図である。
【図7】図4の下部シェルの斜視図であり、バッグと当接するように意図された面が示されている。
【図8】バッグと当接するように意図された図4の下部シェルの面の溝に配置されるべく用意されたビードのネットワークの斜視図を示している。
【図9】図4の上部シェルの斜視図であり、バッグと当接するように意図された面が示されている。
【図10】図4に示した下部シェルの変種の斜視図、液体を経路付けするためのネットワークを実現するため、およびバッグのコネクタを収容するための凹所のみが示されている(バルブおよびセンサのための穴や、位置決め用のボスおよび空洞などといった他の詳細は、簡単化のため図示されていない)。
【図11】図7に示した下部シェルの変種の平面図であり、液体を経路付けするためのネットワークを実現するため、およびバッグのコネクタを収容するための凹所のみが示されている(バルブおよびセンサのための穴や、位置決め用のボスおよび空洞などといった他の詳細は、簡単化のため図示されていない)。
【図12】図11の左側に見ることができる面からの側面図である。
【図13】図11のXIII−XIIIにおける断面図である。
【図14】図10と同様の図であるが、上部シェルについての図である。
【図15】図11と同様の図であるが、上部シェルについての図である。
【図16】図12と同様の図であるが、上部シェルについての図である。
【図17】図15のXVII−XVIIにおける断面図である。
【図18】図15のXVIII−XVIIIにおける断面図である。
【図19】図18においてXIXによって特定される細部の拡大である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2に示したプレス10およびバッグ11が、生物学的液体を処理するための回路であって、複数の液体用コネクタ(それらコネクタは、図示されていないが、図5のバッグ111のコネクタ40A−40Eと同様である)と、それらのコネクタの間で液体を経路付けするためのネットワークとを備える回路を得ることを可能にする。このネットワークのパイプ12のいくつかを、図2に見ることができる。
【0029】
プレス10は、2つのシェル13および14を備える。
【0030】
シェル13および14は、それぞれ剛な材料からなる中実なブロックで形成されている。ここでは、シェル13および14が、ステンレス鋼からなっており、各々がおおむね平行六面体の形状である。
【0031】
シェル13は、ここでは平面である基準表面15と、表面15へと凹まされた複数のチャネル16とを有している。
【0032】
同じやり方で、シェル14は、ここでは平面である基準表面17と、表面17に対して凹まされたチャネル18とを有しており、表面15および17が類似した寸法であって、チャネル18の配置が、チャネル16の配置の鏡像である。
【0033】
チャネル16および18は、半円形の断面である。
【0034】
したがって、各々がおおむね管状である空洞のネットワークを画定すべく、チャネル16および18の互いの位置を合わせつつ、表面15および17を互いに当接させることができる。
【0035】
シェル13および14に加え、プレス10は、ピンチ弁のアクチュエータ20および物理化学的な値(例えば、圧力または温度)のセンサ21を、ここではシェル14に埋め込んで備える。
【0036】
各々のアクチュエータ20が、シェル14へと取り付けられた本体22、および作動位置と引き込み位置とをとることができる可動フィンガを備える。作動位置において、可動フィンガは、チャネル18のうちの1つから突き出す。
【0037】
各々のセンサ21は、チャネル18に位置を合わせてシェル14へと取り付けられた本体23を備えており、本体23の遠位端が、チャネル18の中へと開いている。
【0038】
バッグ11は、閉じた輪郭を画定するシール27によって互いに貼り付けられた2枚の可撓フィルム25および26を備える。
【0039】
ここで、各々のフィルム25および26は、本出願の出願人が提供しているPureFlex(TM)フィルムである。これは、4つの層、すなわち液体との接触のための材料を形成する超低密度ポリエチレン(ULDPE)の層、気体に対するバリアを形成するエチレンおよびビニルアルコールの共重合体(EVOH)、エチレンおよび酢酸ビニルの共重合体(EVA)の層、および外側層を形成する超低密度ポリエチレン(ULDPE)の層を内側から外側へと備える共押し出しフィルムである。
【0040】
シール27は、フィルム25および26の外周に形成された溶接ビードである。
【0041】
フィルム25および26ならびに液体のためのコネクタに加え、バッグ11は、気体物質のためのコネクタ(図示されていないが、図5のバッグ111のコネクタ41と同様である)を備える。
【0042】
バッグ11の寸法は、シェル13および14の基準表面15および17の寸法に一致している。
【0043】
バッグ11は、バッグ11の一方の面をシェル13の面30(この面が、表面15およびチャネル16を有している)に当接させ、バッグ11の他方の面をシェル14の面31(この面が、表面17およびチャネル18を有している)に当接させた状態で、シェル13および14によって締め付けられるように意図されている。
【0044】
図1は、シェル13および14の間の所定の位置に配置されたバッグ11を示しており、ここでは、バッグ11が面30に載せられ、シェル14はバッグから離れている。
【0045】
次いで、シェル14が、シェル13および14をお互いに対して押し付けることなく、表面17がバッグ11に接触または実質的に接触するまで、シェル13に向かって動かされる(予備閉鎖位置)。
【0046】
次いで、バッグ11が膨張させられる。液体用のコネクタが塞がれ、気体物質が、この目的のために設けられたコネクタによって注入される。
【0047】
バッグ11の膨張の結果として、フィルム25および26が、それぞれシェル13の面30およびシェル14の面31に一致する。
【0048】
次いで、プレス10が閉じられ、シェル13および14が、バッグ11を挟みつつお互いに対して強く押し付けられる(バッグ11がシェル13および14の間で締め付けられる閉鎖位置)。
【0049】
その結果、フィルム25および26が、チャネル16および18の位置も含めて面30および31へと押し付けられ、チャネル16および18において、図2に示される通りパイプ12を形成する。
【0050】
プレス10およびバッグ11は、次に生物学的液体を処理するための回路であって、すぐに使用することができる回路を形成する。
【0051】
各々のアクチュエータ20によって、パイプ12をアクチュエータの可動フィンガとシェル13との間に挟んで、この位置における流体の通過を許可または阻止することができる。
【0052】
センサ21の遠位端(検出端)が、パイプ12に接している。各々のセンサ21によって、当該センサの遠位端が接しているパイプ12を流れている液体の物理化学的特性(例えば、温度または圧力)を、流体に実際に触れることなく知ることができる。そのようなセンサは知られており、例えばバッグの外表面を介して圧力を測定する圧力センサが挙げられる。
【0053】
プレス10およびバッグ11によって形成された回路において処理される生物学的液体を、汚染から保護しなければならない場合、バッグ11において、各々の液体用のコネクタおよび気体物質用のコネクタの所定位置に閉鎖栓が設けられ、バッグ11が、例えばガンマ線によって殺菌される。バッグ11の内部に注入される気体物質は、浄化される。例えば、気体物質は、膨張用コネクタへと接続された疎水フィルタ(Millipore社から入手できるAERVENT(R)など)によって浄化された圧縮空気である。
【0054】
図3は、シェル13がシェル13’によって置き換えられたプレス10の変種10’を示しており、シェル13’は、パイプ12の境界を恒久的なものにすべくフィルム25および26をそれぞれのパイプ12の両側において溶接するための電気抵抗などの加熱装置35を備える点を除き、シェル13と同一である。当然ながら、溶接は、プレスが閉じられた状態で実行される。
【0055】
次に、図4から図9の助けによって、本発明による回路を得るためのプレスおよびバッグの第2の実施形態を説明する。
【0056】
類似する部分に関しては、図1および図2における参照番号と同じ参照番号が、100を加算してそのまま使用されている。
【0057】
プレス10または10’(図1から図3)においては、アクチュエータ20およびセンサ21が同じシェルに備えられている一方で、図4から図9の実施形態のプレス10においては、アクチュエータ120Aから120Gが一方のシェル(ここでは、シェル114)に備えられ、センサ121Aから121Dが、他方のシェル(ここでは、シェル113)に備えられている。
【0058】
図5にさらに詳しく見ることができる通り、バッグ111は、液体用の5つのコネクタ40Aから40E、および気体物質のための1つのコネクタ41を備える。
【0059】
バッグ111の初期状態においては、パイプ112Aから112Fのいずれも形成されていない。したがって、コネクタ40Aから40Eの各々は、プレス110によるバッグ111の成型時に液体経路付け用のネットワークパイプに組み合わせられることがない唯一のコネクタであるコネクタ41のように見えている。
【0060】
バッグ111を形成するフィルム125および126は、それぞれ矩形であって、同じ寸法である。フィルム125および126は、外周のシール127によって互いに貼り合わせられている。シール127は、ここでは、角を除いてフィルムの辺に平行に延びている溶接ビードの形態の溶接部である(角においては、溶接部の内側境界が斜めである)。各々の角に、ここでは溶接部127によって囲まれた直角三角形の輪郭を有する開口42が形成されている。
【0061】
液体用のコネクタ40Aから40Eおよび気体物質用のコネクタ41がすべて、溶接部127によって画定された閉じた輪郭の内側および外側において開いていることに、注目できる。
【0062】
溶接部127によって画定された輪郭の内側において、バッグ111は、所定の位置においてフィルム125および126の間に配置された2つのフィルタ43および44を囲んでいる。各々のフィルタ43および44は、ここでは溶接によってこれらのフィルムへと貼り付けられている。
【0063】
バッグ111の初期状態において、フィルタ43および44は、液体のためのパイプへの接続の位置の各々に、パイプとの整合のための端部ピースを備える。
【0064】
フィルタ43および44を収容するために、各々のシェル113および114は、対応する空洞(シェル113の空洞43A、44A、およびシェル114の空洞43B、44B)を有している。
【0065】
シェル113のチャネル116Aから116Fおよびシェル114のチャネル118Aから118Fが、バッグ111にパイプ112Aから112Fをそれぞれ形作るために設けられている。
【0066】
チャネル116Aから116Fおよび118Aから118Fの各々は、該当する端部(複数可)に、コネクタ40Aから40Eのうちの1つまたはフィルタ43および44の端部ピースのうちの1つを収容することができる。
【0067】
コネクタ41を収容するために、シェル113および114は、それぞれ空洞41Aおよび41Bを備える。
【0068】
チャネル116Aから116Fの各々、ならびに空洞43Aおよび44Aの各々は、両側において、溝50Aから50Eによって縁取られており、溝50Aから50Eが、図8に示されているビードのネットワーク51のそれぞれのビード52Aから52Eを収容するように機能する。
【0069】
ネットワーク51のそれぞれのビード52Aから52Eは、ネットワーク51のビードの各々が基準表面115から突き出すよう、溝50Aから50Eの深さよりもわずかに厚い。
【0070】
したがって、フィルム125および126は、シェル113および114がバッグ111を締め付けるときに、チャネル116Aから116F、118Aから118Fの各々に沿い、さらには空洞43A、44A、43B、および44Bに沿って、ネットワーク51のビードとシェル114の表面117との間に挟まれる。
【0071】
これにより、パイプ112Aから112Fをきわめて精密に画定でき、これらのパイプに沿ってフィルム125および126の間に流体液密性を保証することができる。
【0072】
変種として、ビード52Aから52Eは、挟み付けの機能を有するだけでなく、パイプ112Aから112Fの境界を恒久的なものにすべくフィルム125および126の溶接を可能にする加熱装置(ここでは、電気抵抗)の役割も果たす。
【0073】
プレス10の閉鎖状態においてシェル113および114がお互いに対して正しく位置するように保証するために、シェル113の各々の角に、ボス55(ここでは、バッグ111の開口42の形状と同様の直角三角形の輪郭)が設けられる一方で、シェル114の対応する位置には、ボス55の形状に相補的な形状の空洞56が設けられる。
【0074】
バッグ111を適切に位置させるために、作業者は、フィルタ43および44を空洞43Aおよび44Aに係合させるとともに、4つのボス55の各々をバッグ111の対応する開口42に係合させるように注意を払う。
【0075】
プレス110によるバッグ111の成形が、プレス10によるバッグ11の成形と同様に実行される。
【0076】
ひとたびバッグ111がシェル113および114の間に締め付けられると、プレス110およびバッグ111によって形成された回路を、すぐに使用することができる。
【0077】
図7において、センサ121Aから121Dの遠位端をパイプ112A(センサ121Aおよび121B)、パイプ112D(センサ121C)、およびパイプ112E(センサ121D)にそれぞれ接触させることができる穴57Aから57Dを見て取ることができることに、注目できる。
【0078】
同様に、図9においては、アクチュエータ120Aから120Gのフィンガによるパイプ112A(アクチュエータ120Aおよび120B)、パイプ112B(アクチュエータ120C)、パイプ112D(アクチュエータ120D)、パイプ112E(アクチュエータ120Eおよび120G)、およびパイプ112F(アクチュエータ120F)のそれぞれの締め付けを可能にする穴58Aから58Gを見て取ることができる。
【0079】
図6は、プレス110およびバッグ111によってもたらされる回路59を図式的に示している。この回路において、バルブ60Aから60Gが、それぞれのアクチュエータ120Aから120Gによって、該当のアクチュエータのフィンガによって挟み付けることができるパイプの部位と、フィンガによって挟まれたときのパイプが当接するシェル113の部位とによって、形成されている。
【0080】
図示の例では、コネクタ41を通して気体物質を注入することによるバッグ111の膨張が、コネクタ40Aから40Eの各々が栓によって塞がれるということによって、可能にされている。
【0081】
回路59を使用するためには、それらの栓が取り除かれ、コネクタ40Aから40Eが、生物学的液体を処理するための設備(回路59は、この設備の一部を構成するように意図されている)の残りの部分へと接続される。
【0082】
回路59において、フィルタ43は、ここでは接線方向流フィルタ(TFF)であり、フィルタ44が、最終フィルタである。
【0083】
コネクタ40Aは、供給ポンプの送出側へと接続されるように設けられ、コネクタ40Bは、移送ポンプの送出側へと接続されるように設けられ、コネクタ40Cは、供給バッグのコネクタへと接続されるように設けられ(供給バッグのもう1つのコネクタは、供給ポンプの入り口側へと接続される)、コネクタ40Dは、ドレインへと接続されるように設けられ、コネクタ40Eは、処理済みの液体を集めるためのバッグへと接続されるように設けられる。
【0084】
コネクタ40Bは、処理対象の液体を、パイプ112Eと、コネクタ40Cへと接続された供給バッグと、供給ポンプ(入り口側が、供給バッグのもう1つのコネクタへと接続され、送出側が、コネクタ40Aへと接続されている)と、パイプ112Aと、フィルタ43とによって形成されるループへと注入するように機能する。
【0085】
処理対象の液体がコネクタ40Bによって注入されると、バルブ60Eおよび60Aを除くすべてのバルブが開かれる。
【0086】
ひとたび処理対象の生成物が供給バッグへと移されると、バルブ60Fおよび60Cが閉じられる一方で、残りのバルブが開かれ、処理対象の液体を上述のループに流すよう、供給ポンプが作動させられる。
【0087】
フィルタ43への通過において、処理対象の生成物が精製され、ろ液がパイプ112Dへと通過し、その後にドレインへと排出される一方で、残留物は、パイプ112Eへと通過する。
【0088】
液体がループにおいて充分に循環させられ、必要な純度および濃度の特性が得られたとき、バルブ60Bを閉鎖位置へと移行させ、バルブ60Cを開放位置へと移行させることによって、処理済みの液体をフィルタ44(液体に最終的なろ過を加える)を通ってコネクタ40Eへと到達させることで、コネクタ40Eへと接続された収集バッグへの排出が実行される。
【0089】
回路59が、上述の動作に加え、パイプ112Aから112Fによって形成される経路ネットワーク、およびネットワークにさまざまな構成をとらせることができるバルブ60から60Gのおかげで、さまざまな他の動作も実行できることに、注目することができる。
【0090】
センサ121Aから121Bは、ここではすべて圧力センサである。センサによって、設備の正しい動作を確認することができ、特には過剰な圧力の発生を検出(センサ121A)でき、フィルタ43の適切な動作を保証(センサ121Bから121D)することができる。
【0091】
図10から図19は、シェル113および114の変種を示しており、ビード52Aから52Eのネットワーク51のための溝50Aから50Eが、シェル113にではなくてシェル114に設けられている一方で、チャネル116Aから116F(シェル113)および118Aから118F(シェル114)の経路が、特にはパイプ121Aから112Eの長さを最小限にするために、わずかに異なる配置を有している。
【0092】
図において、シェル13、13’、または113’が、シェル14または114の下方にある。結果として、本明細書においては、シェルをそれぞれ下部シェルおよび上部シェルと称することもある。しかしながら、この配置についていかなる強制も存在せず、対照的に、例えばシェル14、114がシェル13、13’、113の下方であり、あるいは2つのシェルが水平にではなくて垂直に配置されるなど、シェル13、13’、113および14、114が別の配置を有してもよい。
【0093】
上述した例では、バッグが、シェルの間で締め付けられる前に膨張させられる。図示されていない一変種においては、バッグが、膨張させられる前に、まずシェルの間に締め付けられる。当然ながら、この変種においては、フィルム25、125および26、126などが、シェルの凹んだ表面に一致するように拡大される。図示されていないさらに別の変種においては、バッグが、シェルの間に締め付けられる前に途中まで膨張させられ、シェルの間に締め付けられた後で、最終的に膨張させられる。
【0094】
図示されていないいくつかの変種においては:
回路が、例えばフィルタを有するループ(流体を濃縮するために、ろ液がループから排出され、残留物がループ内に残される)に備えられるリザーバや、液体の物理化学的な値(Phなど)を安定させることができるバッファリザーバなど、所定の量の液体を収容することができるリザーバをさらに備えており、
シェルが、一体的である代わりに、回路の種々の部位を画定すべく組み合わせられる一式のモジュール式の部材によって形成され、モジュール式の部材には、好ましくはお互いに対して正しく配置されるように保証するためのマークまたはタグが設けられ、マークまたはタグは、例えば参照番号または符号の記入ならびに/あるいはRFIDタグなどの無線の手段であり、
シェルが、例えばアルミニウム、プラスチック、セラミック、または木材など、ステンレス鋼以外の材料からなり、
シェルによって構成されるパイプ用の成形チャネルが、例えば一方のシェルのみにチャネルが形成される一方で、他方のシェルではバッグとの接触面が完全に平らであり、および/またはチャネルが半円形以外の断面(例えば、楕円形またはU字形の断面)であるなど、別の構成を有しており、
シェルに取り付けられる補足の装置が、別の配置を有し、ピンチ弁のためのアクチュエータまたは物理化学的な値(圧力、Ph、または温度など)のセンサと異なり、あるいはそもそも省略され、
バッグ11または111などのフィルムが、例えば生物学的液体に適合した複数の層からなる別のフィルム(Hyclone industries社のHyQ(R)CX5−14フィルムや、Lonza社のPlatinum UltraPackフィルム)など、PureFlex(TM)フィルム以外の材料からなり、
大気圧よりも高い圧力の膨張剤の注入作業が、バッグ11または111などの面の接触しているシェルの面による吸引、およびその後に生じるバッグへの空気の単なる進入に相当する膨張剤の注入によって置き換えられ、および/または膨張剤の注入が、シェルにおける吸引と大気圧よりも高い圧力の膨張剤の注入とを同時に行うことによって実行され(当然ながら、シェルによる吸引は、シェルに真空源へと接続されるチャネルが存在し、それらチャネルがバッグと接触するように設けられた面に開いていることによって、実行される)、
コネクタ41などによって注入される膨張剤が、例えば水または他の液体膨張剤など、気体物質とは異なり、および/または2つ以上の膨張コネクタが存在するか、または膨張コネクタが省略されて、膨張剤が経路ネットワークのコネクタのうちの1つによって注入され、
バッグ11または111などのパイプが、バッグの初期の状態においてまったく存在しないのではなく、あらかじめ途中まで形成されており、および/または
形成される回路が、回路59とは異なっており、例えばクロマトグラフィ作業を実行するために、例えばパイプ、コネクタ、およびフィルタの数が異なっている(例えば、フィルタが1つだけであるいはまったく存在しない、など)。
【0095】
他にも多数の変種が、状況に応じて可能であり、この点に関し、本発明が説明および図示した例には限られないことに、注意すべきである。
【符号の説明】
【0096】
10、10’、110 プレス
11、111 バッグ
12、112A、112B、112C、112D、112F パイプ
13、13’、113 シェル(下部シェル)
14、114 シェル(上部シェル)
15、115 (シェル13、113の)表面
16、18、116A、116B、116C、116D、116E、116F、118A、118B、118C、118D、118E、118F チャネル
17、117 (シェル14、114の)表面
20、120A、120B、120C、120D、120E、120F、120G アクチュエータ
21、121A、121B、121C、121D センサ
22 (アクチュエータ20の)本体
23 (センサ21の)本体
25、26、125、126 フィルム
27、127 シール
30 (シェル13の)面
31 (シェル14の)面
35 加熱装置
40A、40B、40C、40D、40E コネクタ
41 (膨張用の)コネクタ
41A、41B、43A、43B、44A、44B、56 空洞
42 開口
43、44 フィルタ
50A、50B、50C、50D、50E 溝
51 ビードのネットワーク
52A、52B、52C、52C、52D、52E ビード
55 ボス
57A、57B、57C、57D、58A、58B、58C、58D、58E、58F、58G 穴
59 回路
60A、60B、60C、60D、60F、60G バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコネクタと、前記コネクタの間で液体を経路付けするためのネットワークと、を備える生物学的液体のための回路を提供するための方法であって、
2枚の可撓フィルム(25、26、125、126)を、閉じられた輪郭を画定するシール(27、127)によって貼り合わせて備えており、前記経路ネットワークのコネクタ(40A−40E)および膨張用コネクタ(41)を、前記輪郭の内側および外側に開くように備えるバッグ(11、111)を得るステップと、
2つのシェル(13、14、13’、14、113、114)を備えるプレス(10、10’、110)を得るステップであって、前記バッグ(11、111)と協働し、前記シェルの間に前記バッグ(11、111)を締め付けて前記膨張用コネクタ(41)を介して膨張剤を注入することによって、前記フィルム(25、26、125、126)の間に前記経路ネットワークのパイプ(12、112A−112F)を形成するように構成されるステップと、
前記バッグ(11、111)を前記シェル(13、14、13’、14、113、114)の間に締め付けて前記膨張用コネクタ(41)を介して膨張剤を注入することによって、前記パイプ(12、112A−112F)を形成するステップとを含み、
前記バッグ(11、111)および前記プレス(10、10’、110)が、少なくとも1つの前記パイプ(12、112A−112F)が少なくとも一部分が専ら前記プレス(10、10’、110)との協働によって画定される輪郭を有するように選択されていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記膨張用コネクタ(41)が、前記経路ネットワークのコネクタ(40A−40E)とは別であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膨張剤が、気体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パイプ(12、112A−112F)を形成する前記ステップが、前記バッグ(11、111)を前記シェル(13、14、13’、14、113、14)の間に締め付けるステップの前に、膨張剤を注入するステップを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
膨張剤を注入する前記ステップに、前記バッグを2つのシェル(13、14、13’、14、113、114)の各々のすぐ近くに位置する前記プレス(10’、10、110)を予備的に閉じるステップが先行することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数のコネクタと、前記コネクタの間で液体を経路付けするためのネットワークと、を備えており、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる生物学的液体のための回路であって、
2枚の可撓フィルム(25、26、125、126)を、閉じられた輪郭を画定するシール(27、127)によって貼り合わせて備えており、前記経路ネットワークのコネクタ(40A−40E)および膨張用コネクタ(41)を、前記輪郭の内側および外側に開くように備えるバッグ(11、111)と、
前記バッグ(11、111)を、前記フィルム(25、26、125、126)の間に液体を経路付けするための前記ネットワークのパイプ(12、112A−112F)が膨張剤によって膨張させられて形成された状態で締め付けている2つのシェル(13、14、13’、14、113、114)を備えるプレス(10、10’、110)とを備え、
少なくとも1つの前記パイプ(12、112A−112F)が、少なくとも一部分が専ら前記プレス(10、10’、110)との協働によって画定された輪郭を有していることを特徴とする、回路。
【請求項7】
前記シェル(13、14、13’、14、113、114)の各々が、前記パイプ(12、112A−112F)の各々のための成形チャネル(16、18、116A−116F、118A−118F)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の回路。
【請求項8】
前記成形チャネル(116、118、116A−116F、118A−118F)の各々が、半円形の断面であることを特徴とする、請求項7に記載の回路。
【請求項9】
少なくとも1つの前記シェル(113、114)が、前記パイプ(112A−112F)の各々のための成形チャネル(116A−116F、118A−118F)を備え、
前記成形チャネル(116A−116F、118A−118F)の各々が、各側において、前記フィルム(125、126)を前記パイプ(112A−112F)に沿って互いに押し付けるように機能するビードのネットワーク(51)の各々のビード(52A−52E)を収容する溝(50A−50E)によって縁取られていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の回路。
【請求項10】
少なくとも1つの前記シェル(13、113、114)が、前記フィルム(25、26、125、126)を前記パイプ(12、112A−112F)に沿って溶接するための手段(35、51)を備えることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の回路。
【請求項11】
前記バッグ(111)内に囲まれた少なくとも1つのフィルタ(43、44)を備えることを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載の回路。
【請求項12】
少なくとも1つの前記シェル(14、114)が、前記パイプ(12、112A−112F)のピンチ弁の少なくとも1つのアクチュエータ(20、120A−120G)を備えることを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の回路。
【請求項13】
少なくとも1つの前記シェル(14、113)が、物理化学的な値の少なくとも1つのセンサ(21、121A−121D)を備えることを特徴とする、請求項6から12のいずれか一項に記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−167413(P2010−167413A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−905(P2010−905)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】