説明

生物薬剤学用のプラスチック圧力容器及びその方法

本明細書に記述されるのは、生物学的薬剤用途のための成形されたプラスチック圧力容器、及びその方法である。この成形されたプラスチック圧力容器は、少なくとも500インチ(3226cm)の表面積を有し、ポリフェニレンオキサイドポリマーと、少なくとも1つの酸化防止剤と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
大きい表面積を有する生物薬剤学用の成形されたプラスチック圧力容器について記述する。その成形されたプラスチック圧力容器の作製方法及び使用方法について記述する。
【背景技術】
【0002】
生物学的処理のための濾過は、従来、ステンレススチール容器内に置かれた縦に積み上げられたフィルター要素を用いて行われてきた。典型的には、ステンレススチール容器はシステム圧力を封じ込める役割を果たす。フィルター要素は通常、装置基部に接続された長い中央マンドレルの上に置かれるので、フィルター要素を装置に組立てること及びその装置を解体することが難しい場合がある。それらのカートリッジは濡れると重くなる傾向があるので、とりわけ製品の使用後に、オーバーヘッド操作されるリフト装置が必要とされる場合がある。また、このプロセスでは処理後の残留液が封じ込められず、生物学的に有害な液体に使用者を曝露する可能性があるため、面倒なプロセスでもある。加えて、クロスコンタミネーション曝露を排除するために、使用後に装置を完全に洗浄することも必要である。これは時間、労力、(環境にやさしくない)洗浄剤を要するものであり、設備が十分に洗浄されない場合は多くの材料間のクロスコンタミネーションの可能性がある。少なくともこれらの理由から、当該工業は、処理液に触れた全ての成分を廃棄することを可能にする完全に使い捨ての製品(例えばポリマー系の製品)の使用に移行してきた。例えば、使い捨ての濾過システムは米国仮特許出願第61/256643号(Bryanら)及び米国特許出願刊行物第2005/0279695号(Straefferら)に記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化学的耐性があり、構造的に十分であり、溶接可能であり、オートクレーブで処理可能であり、許容可能な抽出特性及び濾過特性を有し、所望により審美的に許容可能な、生物学的薬剤用途で使用できる成形されたプラスチック圧力容器を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本開示は、生物学的薬剤用途(biopharmaceutical application)のための成形されたプラスチック圧力容器を提供し、この容器は、ポリフェニレンオキサイドと、少なくとも1つの酸化防止剤と、を含み、この成形されたプラスチック圧力容器は少なくとも500インチ(3226cm2)の表面積を有する。
【0005】
いくつかの実施形態で、この生物学的薬剤用途のための成形されたプラスチック圧力容器は、更に、白色着色剤を含む。
【0006】
いくつかの実施形態で、この生物学的薬剤用途のための成形されたプラスチック圧力容器は、更に、ポリスチレンを含む。
【0007】
いくつかの実施形態で、生物学的薬剤マトリックスの濾過方法が開示され、この方法は、本明細書に開示される成形された圧力容器を提供する工程であって、成形された圧力容器が濾過媒体を含む工程と、その濾過媒体を通して生物学的薬剤の流体を濾過する工程と、を含む。
【0008】
別の態様で、生物学的薬剤用途のための成形されたプラスチック圧力容器の作製方法が開示され、この方法は、少なくとも500インチ(3226cm)の表面積を有する空洞を備える成形型を、ポリフェニレンオキサイドと少なくとも1つの酸化防止剤とを含む溶融混合物と接触させる工程と、成形されたプラスチック圧力容器を形成するためにその溶融混合物を冷却する工程と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、成形されたプラスチック圧力容器が、同一のプロセスにおいて溶融混合物に酸化防止剤を含めずに作製された成形品ほどの黄変を呈さない。
【0010】
上記の概要は、各実施形態を説明することを目的とするものではない。本発明の1以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。他の特徴、目的、及び利点は、説明文及び「特許請求の範囲」から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】生物学的薬剤用途で使用される容器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用するとき、用語
「a」、「an」、及び「the」は、互換可能なものとして使用され、1つ以上を意味し、
「及び/又は」は、一方又は両方の記述された事例が起こる場合があることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
【0013】
また本明細書においては、端点によって表わされている範囲には、その範囲内に含まれている全ての数値が含まれている(例えば、1〜10の範囲には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0014】
また本明細書においては、「少なくとも1」には、1以上の全ての数値が含まれている(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100などが含まれる)。
【0015】
濾過技術において、流体の濾過及び/又は純化を行う装置を作るために、濾過媒体を支持及び封入するシェルを積み重ねることは既知である。これらのシェル及び装置は設計及び動作において異なる。本明細書で使用する用語を定義するために、図1に、流体を濾過するのに使用する装置10を示す。装置10は、流体が入る入口22及び流体が出る出口24を備える。この装置は成形されたプラスチック圧力容器を備える。一実施形態で、複数の成形されたプラスチック圧力容器を図1のように積み重ねる。装置10は、オプションのハウジング20内に封じ込められた成形されたプラスチック圧力容器30a、30b、30c...30nを含む。成形されたプラスチック圧力容器は、流体を濾過するのに使用される1つのフィルター要素を備える。一実施形態で、成形されたプラスチック圧力容器は複数のフィルター要素を含む。例えば、図1の成形されたプラスチック圧力容器30bは、3つのフィルター要素40、41、42を含む。一実施形態で、フィルター要素は同じである。別の実施形態で、フィルター要素は異なる。図1は、例示のみを目的とし、本開示を不当に制限するのに使用されてはならない。例えば、図示されていないが、フィルター要素はレンズ状のフィルターであってもよく、及び/又は入口及び出口は装置に共に位置づけられてもよい。
【0016】
フィルター要素(例えばフィルター媒体)は、フィルター要素の表面上に粗い粒子が保持されるスクリーニング効果を有するだけでなく、とりわけ、フィルター材料内の空隙に保持される微細な粒子のためのデプス効果もまた有する。使用される材料のタイプに依存して、これらのフィルター要素は、例えば、吸収効果を有してもよく、又は、純粋に機械的な濾過効果を超える別の方法で、濾過されていない流体と相互作用してもよい。更に、特定の用途のために表面を後に処置して、乾燥及び湿った状態で繊維状粒子が外れるのを防ぐことができる。フィルター活性材は当業者には既知であり、例えば、パーライト、珪藻土、繊維状材料、並びに活性炭ポリビニルピロリジン及びポリビニルピロリジン−ヨウ素物質のような吸着剤を含む。約50〜80体積%の空隙率を有する多孔質構造のフィルター要素は、比較的脆弱である可能性がある。
【0017】
本開示は、フィルター媒体の機械的支持及び補強のために使用される成形されたプラスチック圧力容器を目的とする。成形されたプラスチック圧力容器の例としては、3M Purification Inc.(ミネソタ州St.Paul)の「ZETA PLUS ENCAPSULATED SYSTEM」、Millipore Corp.(マサチューセッツ州Billerica)の「MILLISTAK+ POD DISPOSABLE DEPTH FILTER SYSTEM」、及びPall Corp.(ニューヨーク州Port Washington)の「STAX DISPOSABLE DEPTH FILTER SYSTEM」を含む、市販の濾過装置が挙げられる。
【0018】
本明細書に開示されている成形されたプラスチック圧力容器は、腐食性材料に対する耐性があり、構造的に十分であり、溶接可能であり、オートクレーブで処理可能であり、許容可能な抽出特性及び濾過特性を有し、所望により審美的にも許容可能である。
【0019】
本開示の成形されたプラスチック圧力容器は、ポリフェニレンオキサイド(PPO、ポリフェニレンエーテルとも呼ばれる)を含む高分子組成物を含む。ポリフェニレンオキサイドは直鎖非晶質ポリマーである。ポリフェニレンオキサイドはフェノール化合物(例えば、2,6−ジメチルフェノール)の酸化結合によって形成され得る。このポリマーを例えばポリアミド、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、又はポリオレフィンのような他のポリマーと配合して熱可塑性樹脂を作製することができる。代表的なポリオレフィンとしては、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの組合せが挙げられる。概して、ポリマー配合物は、総じて存在するポリマー100重量部当たり、最低1、2、4、5、10、20、25、30、40、又はより適切に言えば50重量部のポリフェニレンオキサイド、最高50、60、70、75、80、90、95、又はより適切に言えば99重量部のポリフェニレンオキサイドを含む。
【0020】
市販のポリフェニレンオキサイド配合物は、例えば、SABIC Innovation Plastics Holdings(オンタリオ州Brampton)の「NORYL GFN」又は「NORYL PPX」(商品名)、Asahi Kasei(ミシガン州Fowlerville)の「XYRON」(商品名)、及びBASF Corp.(ニュージャージー州Florham Park)の「LURANYL」(商品名)として入手可能である。
【0021】
とりわけ有用なのは、修飾ポリフェニレンオキサイドと呼ばれる熱可塑性樹脂を形成する、ポリフェニレンオキサイドポリマーとポリスチレンとの配合物を含む高分子組成物である。これらの修飾ポリフェニレンオキサイドは溶接可能かつオートクレーブ処理可能であることが示されている。更に、修飾ポリフェニレンオキサイドは、濾過前及び濾過後の消毒のための、生物学的薬剤用途に使用され得る腐食性溶液のような薬品への曝露に耐えることが示されている。
【0022】
圧力容器に構造的支持をもたらすために、補強充填剤をこの高分子組成物に添加することができる。補強を付与するのに十分な量の補強充填剤を、例えばアルミニウム、鉄、又はニッケルのような金属、及び例えば炭素フィラメント、ケイ酸塩、チタン酸カリウム、チタン酸塩ウィスカー、及びガラス粒子のような非金属に使用することができる。代表的なガラス粒子としては、フレーク、繊維(又はウィスカー)、バブル、及びビードが挙げられる。ガラスは、(「E」ガラスとして既知の)ほとんど重曹を含まないライム−アルミニウムホウケイ酸塩、又は(「C」ガラスとして既知の)低重曹ガラスを含むことができる。補強充填剤は最低5、10、15、20、25、又はより適切に言えば30重量%、最高20、25、30、40、50、又はより適切に言えば60重量%の量で添加することができる。
【0023】
この高分子組成物は、プロセス性、又は完成品の機械的又は化学的特性を改善するために他のモノマー又は充填剤を含んでもよい。充填剤は、例えば、タルク、マイカ、粘土、マグネシウム水酸化物、チタン酸カリウム、炭素(繊維又は粒子)、炭酸カルシウムなど、当該技術分野で既知のものを含む。充填剤の量は、存在するポリマーの総重量に基づいて最低1、2、5、10、20、30、40又はより適切に言えば50重量%、最高10、15、20、25、30、40、60、80、又はより適切に言えば100重量%を添加することができる。
【0024】
いくつかの実施形態で、この組成物は難燃剤を含有しないか、又は0.01パーセント未満の難燃剤を含有し、一方、他の実施形態で、この組成物は例えばハロゲン化されていない若しくはハロゲン化された化合物のような難燃剤を含む。代表的なハロゲン化された化合物としては、塩化及び臭化リン酸塩(例えば臭化リン酸エステル、ポリ臭化リン酸アリールなど)が挙げられる。
【0025】
典型的には、天然色(黄色〜茶色)、黒色、青色、及び灰色の市販の修飾ポリフェニレンオキサイド樹脂が入手可能である。本明細書に開示する成形品は生物学的薬剤用途(例えばクリーンルーム、優良製造所基準(GMP)施設など)で使用されるので、審美的に快い構成要素が望ましい。したがって、この高分子組成物には不透明の白色着色剤を添加する場合がある。代表的な白色着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、及びタルクが挙げられる。これらの白色着色剤は、存在するポリマーの総重量に基づいて2、4、5、6、8、10、又はより適切に言えば20重量%を超えない量で高分子組成物に添加される。
【0026】
白色着色剤を用いた修飾ポリフェニレンオキサイドの成形の際、得られる物品が黄変を有することが発見された。このため、黄変を抑制するために成形工程前に高分子組成物に酸化防止剤を添加した。代表的な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、亜リン酸塩、チオエステル、及びアミンが挙げられる。
【0027】
代表的なヒンダードフェノールとしては、一般にBHTとして既知の2,6,ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(Shell Chemical Co.が「Ionol」(商品名)として市販している);4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール;テトラキス[メチレン3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;ステアリル−3−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド;N,N’−ビス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシル−フェニルプロピオニル)ヒドラジン;及びトリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Ciba−Geigy Corp.(ニュージャージー州Dover Township)が市販する「IRGANOX 1010」(商品名)、「IRGANOX 1076」(商品名)、「IRGANOX 1098」(商品名)、「IGANOX MD−1024」(商品名)、「IGANOX 3114」(商品名));2,4,6−トリス−(3’−5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン;2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール;4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン;ペンタエリスリトール;テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];トコフェロール(例えばビタミンE)、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0028】
代表的なリン酸塩としては、トリ−(2,4−ジタートブチルフェニル)ホスフェート、及びビス(2,4−ジタートブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Chemtura Corp.(コネチカット州Middlebury)から「ALKANOX 240」及び「ULTRANOX 626」(商品名)で市販されている);トリス(ノニルフェニルホスフェート)及びジステアリルペンタエリシトールジホスファイト;及びそれらの組合せが挙げられる。
【0029】
代表的なチオエステルとしては、ジラウリルチオジプロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネート(Ciba−Geigy Corp.から「IRGANOX PS800」及び「IRGANOX PS802」の商品名で市販されている);ジミリスチルチオジプロピオネート;チオジプロピオン酸、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0030】
代表的なアミンとしては、ブチル化オクチル化ジフェニルアミン;ノニル化ジフェニルアミン;(Ciba−Geigy Corp.から「IRGANOX L−57」及び「IRGANOX L−67」の商品名で市販されている);4,4’−ジオクチルジフェニルアミン;(ThermoFisher Scientific(マサチューセッツ州Waltham)から「VANOX−12」の商品名で市販されている);ジクミレート化ジフェニルアミン;(「PERMANAX CD」の商品名で市販されている);及びそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
一実施形態で、酸化防止剤が配合されてもよく、例えば、ヒンダードフェノールをリン酸塩と混合してもよい(例えば、カテコール−2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール−ホスファイト)及び/又はアルキルアミン(例えばジメチルオクタデシルアミン)。
【0032】
酸化防止剤は、CIEカラースペース及びASTM E313−98による黄色度指数(YI)計算値によって判定される黄変を防ぐのに十分な量で、ポリフェニレンオキサイドを含む高分子組成物に添加される。一実施形態で、添加される酸化防止剤の量は、ポリマーの総重量に基づいて最低0.5、1、2、4、5、6、又はより適切に言えば8重量%であり、最高2、4、5、6、8、10、又はより適切に言えば12重量%である。一実施形態で、本開示の、成形されたプラスチック圧力容が、同一のプロセスにおいて溶融混合物に酸化防止剤を含めずに作製された成形品ほどの黄変を呈さない。例えば、同一のプロセスで製造された2つの成形品において、1つの溶融混合物が少なくとも1つの酸化防止剤を含み、もう一方の成形混合物が酸化防止剤を含まない場合、それらのYIの差は、0.3、0.5、1.0、1.5、2、2.5、又はより適切に言えば3である。
【0033】
これらの高分子組成物は、当該技術分野で既知の、例えば射出成形プロセスである成形プロセスを用いて成形される。他の代表的な成形方法としては、熱成形、トランスファー成形、回転成形、反応射出成形、圧縮成形、液鋳、選択的なレーザー焼結、及びステレオリソグラフィーが挙げられる。
【0034】
別の実施形態では、酸化防止剤に加えて又は酸化防止剤の代わりに、ポリフェニレンオキサイドの成形工程の前に成形型を不活性ガスでパージすることによって、審美的に快い成形プラスチック圧力容器を形成することができる。
【0035】
アルゴン、ヘリウム、又は窒素のような不活性ガスを使用することができる。当業者に既知の技法を用いて不活性ガスを成形型内に導入して、成形型チャンバから空気及び酸素を排気する。
【0036】
例えば、成形型チャンバにベントを通して不活性ガスを供給して、成形型を予め加熱する際に空気を排気することができる。不活性ガスは、圧力によって成形型内に送り込むか、真空によって成形型に引き込む。規定時間にかけて不活性ガスを成形型に流通させて、実質的に全ての空気及び酸素を成形型チャンバから排気する。排気後、その排気された成形型チャンバに溶融ポリフェニレンオキサイド樹脂を導入し、次いで、硬化する。
【0037】
当業者には既知のように、成形型チャンバは、ベントを備えてもよく、これらのベントは排気された空気及び/又は酸素の排出を可能にし、後に、成形型チャンバを充填するときに溶融樹脂が成形型チャンバを充填する際の不活性ガスの排出を可能にする。圧力を使用する場合、不活性ガスを1〜2000psi(パウンド/平方インチ)(1380kPa)の圧力で導入することができるが、圧力が低いほど使用されるガスが少なくなるので、1〜20psi(6.8〜138kPa)が好ましい。真空を使用する場合、空気及び酸素を成形型チャンバから排気するのに十分な真空の範囲は15inHg(水銀(インチ))(50.8kPa)〜約29inHg(98.2kPa)であり得る。
【0038】
これらの成形されたプラスチック圧力容器を生物学的薬剤用途に使用して、不純物を取り除くこと、又は特定の検体(1つ又は複数)を分離することができる。代表的な用途としては、哺乳類細胞培養集菌の浄化、細菌、酵母菌、及びインセスト細胞溶解物の浄化、宿主細胞タンパク質の除去、ウィルス及びDNAの縮小、タンパク質集合体の除去、及び内毒素の除去が挙げられる。
【0039】
上述のように、成形されたプラスチック圧力容器を使用して、フィルター媒体に機械的支持及び補強をもたらす。概して、成形されたプラスチック圧力容器は、米国特許第4,783,262号(Ostreicherら)に開示されているもののように、スポーク状に中枢から外向きに放射状に延びる複数のリブを備えるが、任意のリブ形状を使用して、容器を通る流体の流れを妨害せず、効果的にフィルター媒体を支持することができる。成形されたプラスチック圧力容器の成形されたポリマーは実質的に無孔である(すなわち、流体は概して、成形されたプラスチック圧力容器の修飾ポリフェニレンオキサイドを通って漏れない)。
【0040】
一実施形態で、成形されたプラスチック圧力容器を使用して、多量の生物学的薬剤流体を濾過する。これらの流体は高体積の固体を含有するので、典型的には、濾過媒体は大きい表面積を有する。本開示の成形されたプラスチック圧力容器は、最低2581、3226、3871、4839、又は場合によっては6452cm(400、500、600、750、又はより適切に言えば1000インチ);最高6452、12903、25807、38710、又はより適切に言えば51613cm(1000、2000、4000、6000、又はより適切に言えば8000インチ)の表面積を有する。
【0041】
本明細書に開示した成形されたプラスチック圧力容器は、例えばフィルター厚紙、紙、タイル、又は布地である平坦な材料で作製されたフィルター媒体を封入することができる。成形されたプラスチック圧力容器は、デプス濾過システムに使用することができる。デプス濾過システムは、媒体の表面だけでなく媒体全体に粒子を保持するフィルター媒体であるデプスフィルター(有機及び/又は無機の繊維状及び/又は顆粒状物質を含む)を備える。デプス濾過システムは、高い粒子量を含む液体を詰まらせずに濾過する能力のために、生物学的薬剤用途において一般に使用される。
【0042】
本開示の一実施形態で、デプスフィルターは、デプス濾過システムを形成するために、本明細書に開示した成形された圧力容器の内部に配置される。次いで、生物学的薬剤流体(例えば上記のようなもの)を、当該技術分野で既知の技法(例えば、背圧、重力、遠心力など)を用いてこのデプス濾過システムに通して、生物学的薬剤流体を濾過(又は純化)することができる。
【実施例】
【0043】
本開示の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に例示するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、全ての百分率、割合及び比は、特に指示しない限り重量による。
【0044】
【表1】

【0045】
射出成形型1
CNC加工、EDM、研削のような異なる機械加工方法を用いて、420ステンレススチール製の射出成形型を作製し、手で研磨した。この成形型を使用して、例えば米国仮特許出願第61/256,643号(Bryanら)の図9及び10に開示されているものと類似の圧力容器を製造した。この成形型の空洞は約6,450cm(1000インチ)の表面積及び約1,606cm(98インチ)の容積を有する。
【0046】
射出成形型2
CNC加工、EDM、研削のような異なる機械加工方法を用いて、420ステンレススチール製の射出成形型を作製し、手で研磨した。この成形型を使用して、高さ11.1mm(0.440インチ)、最大壁厚4.8mm(0.190インチ)を有する直径8.3cm(3.28インチ)のOリングリテーナを製造した。この成形型の空洞は約90cm(13,9インチ)の表面積及び約8cm(0.5インチ)の容積を有する。
【0047】
測色法
2、及び比較実施例A(すなわち3)の場合は、成形されたプラスチック圧力容器から比較的平坦な試料を切り取り、成形されたOリングリテーナをそのまま使用した。色度計は、X−Rite USA(ミシガン州Grand Rapids)から「X−RITE SP64」の商品名で市販されている球形測色計/色度計を使用した。使用する直前に、この測色計を再較正した(白色基準及び黒色基準にゼロを合わせた)。正反射除外(SPEX)反射率データを収集し、10度観測器及び4mmスポットサイズとともにCIE Source D65を用いてASTM E313−98にしたがってYIを報告し、また、Lカラースペース値も報告した。結果を表2に示す。
【0048】
実施例1〜5及び比較実施例A(Comp.Ex.A)
PPO及び酸化防止剤は、表1(表中、kgはキログラム、gはグラム、lbはパウンド)に記載のように乾燥配合した。乾燥配合した材料を610トンToyo射出成形機(マサチューセッツ州ShrewsburyのPlastixs LLCから市販で入手可能)内に配置し、約299℃(570°F)に加熱した。溶融樹脂を、予め82℃(180°F)に加熱した射出成形型1に射出した。溶融ポリマーで成形型を充填後、成形型を通って循環する水を使用して成形型及び成形品を冷却した。冷却後、成形型を開き、成形品を成形型から手で取り出し、平らな台上において室温まで冷却した。得られた成形品を目視観察し、上述の測色法にしたがって試験した。結果を以下の表1に記載する。
【0049】
比較実施例B(Comp.Ex.B)
PPOを射出成形機(Van Dorn製の610トンDemag射出成形機)内に配置し、299℃(570°F)に加熱した。毎秒3インチ(毎秒7.6センチメートル)の速度で溶融樹脂を射出成形型2に射出した。溶融ポリマーで成形型を充填後、成形型を水で93℃(200°F)に冷却した。冷却後、成形型を開き、プラスチック内貼りされたビン内に成形品を出し、室温に冷却した。得られた成形品を目視観察し、上述の測色法にしたがって試験した。結果を以下の表1で報告する。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
上記表1及び2に示したように、比較実施例Bは白色の外観であったが、定量的試験の結果、いくらか黄色を呈していることが示された。比較実施例Aは、成形品の表面全体にかけて明らかに黄色の斑点が視認された。表1に示したように、実施例1〜5の高分子組成物への酸化防止剤の添加は、YI値の低減を助け、場合によっては、得られる物品の色をより均一にした。
【0053】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明に予測可能な改変及び変更を行いうることは当業者には明らかであろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的薬剤用途のための成形されたプラスチック圧力容器であって、
ポリフェニレンオキサイドと、
少なくとも1つの酸化防止剤と、を含み、
前記成形されたプラスチック圧力容器が、少なくとも500インチ(3226cm)の表面積を有する、成形されたプラスチック圧力容器。
【請求項2】
ポリスチレンを更に含む、請求項1に記載の成形されたプラスチック圧力容器。
【請求項3】
白色着色剤を更に含む、請求項1又は2に記載の成形されたプラスチック圧力容器。
【請求項4】
ガラス粒子を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形されたプラスチック圧力容器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの酸化防止剤が、ASTM E313−98による黄色度指数によって判定される黄変を防ぐのに十分な量で添加される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形されたプラスチック圧力容器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの酸化防止剤が、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸、及びそれらの組合せの1つから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形されたプラスチック圧力容器。
【請求項7】
生物学的薬剤マトリックスを濾過する方法であって、
前記成形された圧力容器がフィルター要素を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形された圧力容器を提供する工程と、
前記フィルター要素を通して生物学的薬剤流体を濾過する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
生物学的薬剤用途のための成形されたプラスチック圧力容器を作製する方法であって、
少なくとも500インチ(3226cm)の表面積を有する空洞を備える成形型を、ポリフェニレンオキサイドと、少なくとも1つの酸化防止剤と、を含む溶融混合物と接触させる工程と、
前記溶融混合物を冷却して、前記成形されたプラスチック容器を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項9】
前記成形されたプラスチック圧力容器が、同一のプロセスにおいて前記溶融混合物に酸化防止剤を含めずに作製された成形品ほどの黄変を呈さない、請求項8に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−514508(P2013−514508A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544488(P2012−544488)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/044842
【国際公開番号】WO2011/084176
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】