説明

生理学的にバランスのとれたイオン化された酸性溶液、および創傷治癒における使用方法

本発明は、生理学的にバランスのとれた酸性溶液を提供する。典型的には、該溶液は、無機塩の混合物を含有する溶液の化学反応によるかまたは電解によって製造されて、生理学的にバランスのとれた溶液を与える。本発明はまた、該溶液の使用方法に関し、例えば特殊な絆創膏を含み、このものは該溶液または場合により他の局所的に適用される物質と組み合わせて使用することができる。無機塩および場合により鉱物の混合物を用いて、電解質濃度および等張性状態の体液の混合物を最小とする。該溶液は、典型的にリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、および他のカチオンの1ハライド塩を含む。典型的に、該ハライドは、フルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨードであって、そして最も典型的には、クロリドである。本発明の典型的な電解された溶液は、pHが約2〜約5の範囲内であり、酸化還元電位は約+600mV〜+1200mVの範囲内であり、そして次亜塩素酸濃度は約10ppm〜約200ppmの範囲内である。該溶液は、殺菌性、殺真菌性、および殺胞子性の性質を有する。本発明の組成物は、非毒性であり、抗菌性質を有し、そして抗菌性質が望まれるいずれかの使用法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国特許出願10/000,919(2001年11月2日出願)の一部継続出願であり、そしてこのものは米国特許出願09/482,159(2002年1月12日出願)の分割出願であって、これらは共に本明細書の一部を構成する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、創傷の治癒および他の使用法(抗菌性質が望まれる)において有用な、生理学的にバランスのとれたイオン化された酸性溶液に関する。該イオン化された溶液は電解によって製造され得る(すなわち、このものは電解溶液である)か、あるいは他の方法(例えば、化学的な方法または物理学的な方法を含む)によって、製造され得る。該溶液はまた、インシチュで製造され得る。加えて、本発明は、様々な利用法で(例えば、該溶液、または他の溶液もしくは局所適用物質と組み合わせて使用することができる特殊な絆創膏)、本発明の溶液を用いる使用方法論に関する。
【0003】
(背景技術)
様々な電解された酸性の塩溶液、それらの性質、およびそれらの使用については当該分野において記載されている。いくつかの例を下記に示す。
【0004】
Morrowによる米国特許第5,622,848号(1997年4月22日発行)は、微生物感染症のインビボおよびインビトロ処置のための殺菌性溶液を開示する。該溶液は、調節された量のオゾンおよび活性塩素種を含有する電解された生理食塩水を含む。ここで、オゾンの含有量は約5〜約100mg/Lの間であり、該活性塩素種の含有量は約5〜約300ppmであって、そしてpHの範囲は7.2〜7.6である。該活性塩素種とは、塩素選択電極によって測定される遊離な塩素、次亜塩素酸、および次亜塩素酸イオンを含む。該溶液は、1%以下の生理食塩水の溶液を目的の活性成分を得るのに十分な条件下で電解させることによって調製する。該溶液は、等張性生理食塩水濃度で使用することが好ましく、このものは高張性生理食塩水を用いて調節することができる。該溶液を、感染した全血、血球、または血漿のインビトロ処置において用いて混入を減少させることができ、そしてこのものは、HIV、肝炎、並びに他のウイルス、細菌および真菌の病原体(agent)に感染した液体の処理に使用することができる。該溶液はまた、同様な目的で温血動物(例えば、ヒトを含む)に静脈内注射または他の方法によって投与することもできる。
【0005】
MaraisによるPCT公開番号WO9934652号(1999年7月8日公開)は、電気化学的に活性化された次亜塩素酸ナトリウムがない灌注(irrigate)媒質を用いて、歯根管の間の細菌および他の微生物の増殖を減少させることを開示している。アニオンおよびカチオン含有の溶液は、10% NaCl水溶液の電解によって得る。該アニオン含有の溶液は、pHが約2〜約7であって、酸化還元電位(ORP)が約+1170mVで使用する。該カチオン含有の溶液は、pHが約7〜13であって、ORPが約−980mVで使用する。
【0006】
X. W. Liらによる(Chinese J. Epidem., 17 (2), 95-98頁, 1996)は、電解された酸化水の殺菌性の効果の予備的研究について報告している。電解された酸化水は、黄色ブドウ球菌および大腸菌を約15秒以内に完全に殺し、一方で、枯草菌の全ての胞子を完全に殺すのに10分間を必要とすることが分かっている。HBsAgの抗原性を破壊するのに、30秒間を要した。電解された酸化水の酸化還元電位の値およびpH値は、気密で光のない条件下、室温で3週間保存した場合には有意に変化しなかった。
【0007】
Iwasawaら(J. Jap. Assoc. Infec. Diseases, 70 (9), 915-922頁, 1996)は、酸性の電解水が黄色ブドウ球菌、S.エピデルミディス(epidermidis)および緑膿菌に及ぼす殺菌効果について評価した。pHが5.0〜約6.0では、50mg/Lのクロリドを含有する酸性水に曝露直後に、3つの菌株は殺された。6時間開口して放置後に、該クロリド濃度は変化しなかったと報告されている。pHが2.67〜約2.80で、クロリドの濃度が5mg/Lの場合には殺菌効果が観察され、そして6時間開口して放置後には、80%のクロリドが残っていると報告されている。
【0008】
H. Tanakaら(J. Hosp. Infect., 34(1), 43-49頁, 1996)は、超酸化水の抗菌活性について報告している。超酸化水は、「高酸化還元電位を有する、強酸で無色の溶液である。30ppmの活性な塩素濃度を有する溶液は、少量の塩を電解機中で水道水と混合することによって製造される」と記載されている。超酸化水の抗菌活性を、メチシリン感受性の黄色ブドウ球菌、セラチア・マルケセンス(Serratia marcescens)、大腸菌、緑膿菌、およびブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)について調べた。細菌の数は、超酸化水中に10秒間インキュベート後に、検出限度以下にまで減少した。超酸化水の抗菌活性は、80%エタノールの場合と同程度であったが、0.1%クロロヘキシジンおよび0.02%ポビドンヨードの場合よりも優れていた。
【0009】
Y. Inoueら(Artificial Organs, 21 (1), 28-31頁, 1997)は、腹膜炎および腹腔内の化膿の処置における電解された強酸の水性洗浄液の使用について報告している。腹膜炎および化膿の洗浄は電解された強酸の水溶液を用いて行なって、腹膜炎および腹腔内の化膿を有する7患者を処置した。該7患者における灌注期間は9〜12日間に及び、微生物に陰性な状態ヘの変換が3〜7日間以内に観察された。該筆者らは、該溶液を「活性酸素および活性塩素を含み、レドックス電位を有する酸性水」であって、且つ50ppm以下の活性塩素濃度を有すると、記載している。
【0010】
S. Sekiyaら(Artificial Organs, 21 (1), 32-38頁, 1997)は、用いる感染性皮膚欠損症および潰瘍の処置における、電解した強酸溶液の使用について報告している。該電解された強酸水溶液を臨床的に用いる療法は、感染性の潰瘍の処置において有効であることが分かった。Sekiyaらは、強い水溶液(ESAAS)について、「水および少量の塩をカチオン輸送フィルターを用いて電解することによって得られる」と記載している。
【0011】
H. Hayashiら(Artificial Organs, 21 (1), 39-42頁, 1997)は、心臓血管手術後の縦隔炎の処置における、電解された強酸水溶液(ESAAS)の使用について報告している。Hayashiらは、ESAASについて「塩化ナトリウム溶液の電解によって得られる。(...)ESAASは、陽極および陰極を隔てるイオン交換膜を用いて塩化ナトリウム溶液を電解することによって得る。少量の塩化ナトリウムを水に加えて、電解を促進し、そして溶解したクロリドの濃度を増加させる」と記載している。pHが2.7以下であり、Clが30ppm以上であり、ORPが1100以上であり、そしてOが20ppm以上溶解した溶液が開示されている。縦隔創傷を開いたままとし、1日に1回〜3回ESAASを用いて灌注し、感染を根絶した。肉芽組織の十分な増殖が、処置した全ての患者について観察され、ESAASに起因し得る有害な影響の証拠は全くなかった。
【0012】
N. Tanakaら(Artificial Organs, 23 (4), 303-309頁, 1999年4月)は、電解された強酸の水溶液を用いて、血液透析装置の洗浄および消毒について報告している。該溶液は細菌性の内毒素を直接的に失活させることが知られ、このものは通常の消毒方法よりも経済的であることが分かっている。「該電解された強酸の水溶液は「強酸水」であることが開示されており、このものはポリエステル横隔膜によって仕切られたセル中で500〜1000ppmの塩(純度が99%以上のNaCl)を含有する水道水を電解することによって得る。そのものは、pHが2.3〜2.7の酸性であり、酸化還元電位が1,000mV以上であり、利用可能な塩素は10〜50ppmである」。
【0013】
J. B. Selkonら(J. Hosp. Infec., 41 (1), 59-70頁、1999年1月)は、内視鏡の消毒のための新規な超酸化水、STERILOX(登録商標)(Sterilox Medical Limited, 85 E Milton Park, Abingdon, Oxon OX 14 4RY, UK)の抗菌活性を評価した。この超酸化水は、「使用時では、被覆されたチタン電極を9アンプで生理食塩水の溶液が通過することによって生成する。得られた該生成物は、pHが5.0〜6.5であり、そして酸化還元電位は950mV以上である」と記載されている。STERILOX(登録商標)の抗菌活性を、結核菌、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセラーレ、マイコバクテリウム・ケロネイ(cheronae)、大腸菌(これは、0157タイプを含む)、エンテロコッカス・フェカーリス、緑濃菌、枯草菌、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、2型ポリオウイルス、およびヒト免疫不全症ウイルスHIV−1について試験した。清潔な条件下で新しく調製したSTERILOX(登録商標)は、全てのこれら微生物に対して高活性であり、2分以下で5log10(99.999%)以上の低下を示すことを見出した。
【0014】
Sterilox Technologies International Limited社へ譲渡された米国特許第6,296,744号は、液体媒質の電気化学的な処理のための装置(これにより、減菌溶液の製造が可能となる)、並びに毒性の有機物質および他の不純物からの液体媒質の汚染除去および精製が可能となる)を開示している。該プロセスは、平均的な塩分が0.1〜1.0g/Lであって、クロリド濃度が50mg/Lである溶液を使用し、そして該プロセスは、500〜1000mAの電流、および10〜12ボルトの電位差を用いて実施する。該特許はまた、陽極処理水についての最適pHパラメータは6〜7であって、陰極処理水については8〜9であることを開示する。しかしながら、該特許は更に、減菌溶液、消毒剤、汚染除去剤、漂白剤、洗浄剤、または抗真菌性および抗ウイルス性作用を有する薬物として使用される、pHが4.5〜7.5の間である活性塩素の溶液を得ることを提案された目的とする装置を開示する。
【0015】
K. S. Venikitanarayananら(Appl. & Env. Microbiol., 65 (9), 4276-4279頁, 1999年9月)は、大腸菌O157: H7、腸炎菌、およびリステリア・モノサイトゲネスの失活についての、電解された酸化水の効力を評価した。大腸菌O157: H7、腸炎菌、またはリステリア・モノサイトゲネスの5つの菌株の混合物を、様々な温度で様々な期間にわたって電解された酸化水中で播種した。該電解された酸化水は、約12重量%のNaClを含有する生理食塩水の塩基溶液から得る。0.1%の塩、10〜80ppmのCl、および2.7以下のpHを有する電解された酸化水、並びに73〜86ppmのCl、および2.38〜2.48のpHを有する電解された酸化水もまた、記載されている。4℃および23℃で5分間曝露させる場合には、処置試料における全ての3病原体の個体群は約7log CFU/mLだけ低下し、10分間曝露することによって完全に失活することが報告されている。3病原体のレベルの7log CFU/mL以上の低下は、45℃で1分間、または35℃で2分間インキュベートした処置試料において生じることが報告されている。
【0016】
(発明の概要)
本発明は、安定な生理学的にバランスのとれた非細胞毒性のイオン化された酸性溶液、およびそれらの使用についての方法論に関する。本発明はまた、該溶液または他の局所適用物質と組合わせて使用することができる特殊な絆創膏を含めた、本発明の溶液の利用方法にも関する。該イオン化された溶液は、電解によって製造され得る。本発明の別の態様において、該溶液は、化学的な方法(例えば、合成を含む)または機械的な方法(例えば、混合)によって製造されるか、あるいはインシチュで製造される。
【0017】
新規な生理学的にバランスのとれた溶液は最近、同時出願である米国特許出願09/482,159(2000年1月12日出願)(これは、WO 01/54704 A1(2001年8月2日公開)に対応する)(これらは、本明細書の一部を構成する)中に開示されている。
【0018】
本発明の組成物は、生理学的にバランスのとれた形態での無機塩を用いて製造し得る。該無機塩を用いて、電解質濃度および等張状態の細胞外体液の混合物を模倣する。該溶液は典型的に、ナトリウム、カリウム、カルシウム、および他のカチオンのハライド塩を含む、該ハライドは典型的に、フルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨードであり、最も典型的にはクロリドである。一部分は、塩分の濃度、pH、および該活性塩素の濃度は、それらが特異的な性質の組成物を与えるものとする。
【0019】
本発明の溶液は、1個の無機塩を用いて製造することができて、該水溶液中の該塩の最初の濃度が約0.4〜約1.0%のものを得ることができる。該ハライド含有の塩は、リチウムハライド、ナトリウムハライド、カリウムハライド、マグネシウムハライド、カルシウムハライド、亜鉛ハライド、セシウムハライド、ルビジウムハライド、およびバリウムハライドからなる群から選ばれ得る。該無機塩はまた例えば、NaBr、NaI、NaF、LiBr、LiCl、LiI、MgI、MgBr、KI、KCl、KBrなどを含み得るが、これらに限定されない。該無機塩は、金属ハライド(例えば、クロリド含有塩)であり得て、ここで、該クロリド含有塩は、LiCl、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、およびZnClからなる群から選ばれる。本発明の1態様において、該水溶液において使用する最初の塩濃度は、約0.4〜約0.9%である。
【0020】
本発明の別の態様において、該無機塩は、濃度が約0.4〜約1.0%のNaClである塩化ナトリウムであって、このものは、通常または等張姓の生理食塩水の溶液の完全な強さの約10分の4から該完全な強さよりもわずかに高い。Parker's McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms(S. P. Parker編、5版)によれば、「通常の生理食塩水」、「生理学的な生理食塩水」、「生理学的な塩溶液」とは、「100ミリリットル中に塩化ナトリウム(0.9g)を含有する、精製水中の塩化ナトリウムの溶液(これは、体液と等張である)」と定義する。異なる塩(例えば、リチウムハライド、カリウムハライドなど)の場合、等張性溶液を調製するための該溶液中の該塩の濃度は、本発明の溶液の所望する浸透圧モル濃度を保つ目的で、水溶液中の塩化ナトリウムの濃度とは異なってもよい。本発明の更に別の態様において、水溶液中の塩化ナトリウムは、濃度が約0.4〜約0.9%である。
【0021】
本発明の1態様において、我々は、安定で生理学的にバランスのとれた、非細胞毒性の酸性溶液を含有する組成物を製造した。ここで、例えば電解による製造前の出発溶液は、ハライドを含有する塩の全濃度が約0.4g/L〜約16g/L(約4g/L〜約10g/Lの範囲であることがより好ましく;約4g/L〜約9g/Lの範囲であることが最も好ましい)であることを含む。該溶液は場合により、鉱物を含み得る。該溶液は、pHを約2〜約5の範囲内に調節され、酸化還元電位が約+600mV〜約+1200mVの範囲内であり、そして、該溶液は、全活性ハロゲン濃度が約0.1〜約1000ppm(約10〜約200ppmが好ましく、約40〜約190ppmが最も好ましい)である。本発明の1態様において、該活性ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選ばれる。本発明の別の態様において、該ハロゲンは塩素である。
【0022】
本発明の生理学的にバランスのとれた酸性の組成物を製造するのに使用する出発溶液は、ハライド含有の塩を含み得る。該塩は、リチウムハライド、ナトリウムハライド、カリウムハライド、マグネシウムハライド、カルシウムハライド、亜鉛ハライド、セシウムハライド、ルビジウムハライド、およびバリウムハライドからなる群から選ばれる。本発明の溶液の塩の組成物は、生理学的にバランスのとれた溶液に対して濃度があまりにも低いかまたはあまりにも高い塩含有量は細胞に損傷を与え得るので、生理学的にバランスがとれている。該用語「出発溶液」とは、いずれかの反応または該溶液の電解前に加えられる塩組成物を含有する溶液と定義する。
【0023】
本発明の別の態様において、ハライド含有の塩、並びに場合により鉱物を含有する出発溶液を、電解によって酸性水に変換する。該電解されたハライド含有の溶液は、典型的な酸化還元電位(ORP)が約+600〜約+1200mVである。該電解された塩素を含有する溶液のpHは、典型的には約5以下にまで低下し、pHが少なくとも約2だけの場合には、そのことにより、殺ウイルス性、殺菌性、殺真菌性、および殺胞子性の性質を与える。典型的には、該塩は、電解中にイオン化されるハライド含有の塩の形態で供給される。これらの生理学的にバランスのとれたハライド含有の塩は、リチウムハライド、ナトリウムハライド、カリウムハライド、マグネシウムハライド、亜鉛ハライド、リチウムハライド、バリウムハライド、セシウムハライド、およびルビジウムハライドからなる群から選ばれる。これらの生理学的にバランスのとれたハライド含有の塩は、リチウムハライド、ナトリウムハライド、カリウムハライド、マグネシウムハライド、亜鉛ハライド、リチウムハライド、およびバリウムハライドからなる群から選ばれることが好ましい。該塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、または塩化亜鉛から選ばれることが最も好ましい。
【0024】
本発明の別の態様において、該電解溶液の製造のための出発溶液は、少なくとも1つの金属ハライド塩を含む。1つ以上の金属ハライドが存在する場合には、該塩は相互に同じかまたは異なる濃度で存在し得る。
【0025】
本発明の1つの例示的な溶液において、電解された溶液の製造のための出発溶液は、濃度が約4.0g/L〜約9.9g/Lの範囲で存在するナトリウムハライドを含む。本発明の1態様において、該ハライドはクロリドである。
【0026】
該溶液の製造のために特に好ましい出発溶液は、濃度が約0.4g/L〜約14g/Lの範囲で存在する塩化ナトリウムを含む。
【0027】
本発明の1態様において、本発明の溶液は、該出発塩溶液を、所望する組成物を与えるのに十分な条件下で電解を行なうことによる電解によって製造することができる。
【0028】
本発明の別の態様において、該塩含有の酸性溶液は、化学的な方法(例えば、化学的な合成法を含む)または物理学的な方法(例えば、該溶液の構成成分の撹拌)によって、製造することができる。別の態様において、該溶液は、それを直接的に適用するかまたは使用する場所でインシチュで製造する。インシチュでの該溶液の製造方法を、以下に提示する。
【0029】
本発明の酸性溶液は、次亜ハロゲン酸(hypohalous acid)を含み、そして他の構成成分中、ヒドロキシルフリーラジカル、酸素、およびオゾンを含み得る。これらの構成成分は、創傷治癒、並びに組織の修復および再生に関連する生理学的なシステムに関与する同一の酸化剤のいくつかを含む。例えば、次亜塩素酸は、炎症、損傷、および創傷の部位で好中球によって産生される主要な殺菌性物質である。
【0030】
本発明の溶液は生理学的にバランスがとれているので、感染した創傷に適用した場合に、それらは、治癒のプロセスを実質的に増大する。本発明の水溶液の抗菌性質については、多数の生物(例えば、大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌、乳酸菌、酵母菌、バンコマイシン耐性腸球菌、カビ、および胞子(炭疽菌の胞子を含む))について調べた。特に、本発明の溶液を用いて、炭疽菌(Baccilus anthracis)の3つの異なる菌株を処置するのに成功した。バンコマイシン耐性の細菌、MRSAおよびその他は、本発明の溶液によって容易に破壊される。本発明の溶液は浸透圧的にバランスがとれており、環境的に優しく、そして最小の細胞毒性を有する。例えば、ウサギの眼では細胞毒性は全く観察されず、今日まで行なわれたインビトロでの細胞毒性研究でも観察されていない。
【0031】
本発明の溶液をヒト皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト、線維芽細胞、およびメラニン細胞)にインビトロ研究で適用する場合には、そのものは十分に耐性であって、そして最小の細胞毒性は減菌生理食塩水の溶液のものに匹敵する。本発明の溶液をまた、ドレーズ(Draize)試験を用いてウサギの眼にインビボ研究において適用し、このことは、該眼を被験溶液に曝露後に、眼の解剖学的なおよび生理学的な変化の直接的な観察を与える。比較研究において、ウサギに、生理食塩水(15眼)または本発明の溶液(15眼)のいずれかをランダムにおよび二重盲検様式で与えた。各眼には、8時間毎に0.1mLの溶液を与え、そして様々な時点での観察を集めた。該処理した眼を、眼の刺激作用について観察した。細胞毒性の指標は、該研究の両方のアームにおいて0であった。生理食塩水および本発明の溶液を用いて処理したウサギは、両方の処置において同様に耐性であったが、いずれの刺激応答をも示さなかった。本発明の等張性溶液は、生物学的な組織に対して非毒性であって、且つ生理食塩水の溶液に匹敵することが分かった。
【0032】
本発明の溶液は、以下の安定性の性質を有する。該溶液を約4℃で約25ヶ月の期間、容器または保存媒質中に保存後の該溶液は、保存前に新たに製造した溶液のORP(酸化還元電位)の90%程度であって、約99.9%以下(約95%程度であって、約99.9%以下であることが好ましく;約97.5%程度であって、約99.9%以下であることが最も好ましい)である酸化還元電位の測定値を有するが、該溶液の曝露の10〜60秒後に微生物の活性の低下が5logまでに保持されることが測定された。
【0033】
本発明の方法に従って媒質中で製造されそして保存される該安定な溶液は、保存の媒質の性質、保存の温度、および該容器または媒質が開口されていたかどうかに応じて、安定性または有効期間の性質を延長する。例えば、該溶液は、該容器を予め開口しないかあるいは保存後に使用する場合には、室温で保存する場合に少なくとも24時間、新たに製造した溶液のORPの95%程度のORPを有し得る。1態様において、本発明の安定な溶液は、ガス気密な封した容器中に保存することができ、このことにより更に、該溶液の安定性の性質は延長される。加えて、本発明の溶液は、該溶液を室温以上で保存する場合よりも室温以下で保存する場合には、より長い保存の有効期間を有する。「室温」とは、本明細書中、20〜25℃の間と定義する。
【0034】
本明細書中で定義する、該溶液の「安定性」または「安定な溶液」とは、本発明の溶液が、溶液に曝露の10〜60秒後に、微生物の活性の5logまでの低下を保持することを意味する。
【0035】
本発明の該溶液の相対的な安定性はまた、活性ハライドの存在についてのヨウ素滴定から測定され得る。
【0036】
本発明の溶液は、以下の細胞毒性の低下を有する。本発明の溶液をヒトの皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト、線維芽細胞、およびメラニン細胞)にインビボ研究において適用する場合に、そのものは十分に耐性であって、そして非実質的な細胞毒性が、Tripan Blue intergen検出法およびプロチェック細胞生存率アッセイ(pro check cell viability assay)を用いて測定された。別の態様において、本発明の溶液は、減菌生理食塩水の溶液のものに匹敵する最小の細胞毒性を示す。
【0037】
本発明中で与えるいずれかの理論によって関連付けられるものではないが、本発明の溶液の最小の細胞毒性は、本明細書中に開示する通り、溶液中のOClの濃度に依存すると考える。
【0038】
本発明の組成物は非毒性であって、そして抗菌性質を有する理由で、抗菌性質が所望されるいずれの使用方法において有用である。それらの使用方法としては、例えば創傷、火傷および癌種炎の処置;灌注;組織部位の洗浄(例えば、手術前または後);眼科的な使用法(例えば、コンタクトレンズ洗浄溶液として、または眼手術の前、その間もしくは後の眼の灌注);皮膚科学的な使用法;乾癬;および、当該分野の当業者にとって容易に明らかな多数の使用法を含むが、これらに限定されない。同様な使用方法で使用される多くの他の無機ハライド溶液とは違って、本発明の組成物は副作用が最小限から全くない。例えば、ウサギの眼におけるドレーズ試験の場合には、他の防腐性の溶液と比較して、本発明の生理学的にバランスのとれた安定な酸性溶液は、生理食塩水の溶液と同様な様式で機能する。
【0039】
別のドレーズ試験の場合には、ウサギの眼を本発明の溶液を用いて処理し、そして眼科用グレードのベタジン(Alcon Co., TX社製;5%濃度)と比較した。各眼に該溶液(0.1mL)を8時間毎に与え、そして様々な時点での観察を記録した。該ドレーズ方法は、被験溶液に該眼を曝露後の、眼の解剖学的なおよび生理学的な変化の直接的な観察を与える。本発明の溶液を用いて処置したウサギは、いずれかの刺激作用の兆候を有さずに、該処置に対して耐性であって、一方で、眼科用グレードのベタジンを用いて処置したウサギは、該処置に対して耐性ではなく、そして有意なレベルの発赤(redness)、眼の刺激および不快感を示した。
【0040】
本発明の組成物は、本明細書中に以下に記載の通り、様々な利用法(例えば、絆創膏または創傷用包帯を含む)に導入することができる。該生理学的にバランスのとれた酸性溶液を、本明細書に以下に記載の通り、創傷処置プロトコールにおいて特別に設計した絆創膏と組み合わせて使用することができる。該特殊な絆創膏は開口部または「窓」を含み、そこから局所的な処置物質(例えば、本発明の溶液)を適用することができる。
【0041】
本明細書中、容器中にパッケージされた本発明の組成物を含有する製品をも開示する。本発明の組成物と接触する該容器の表面は、酸化剤と反応しない物質から構成される。
【0042】
(発明の詳細な記載)
生理学的にバランスのとれた酸性溶液;該溶液の製造において使用する方法および装置;並びに、該溶液の使用方法(例えば、該溶液または他の局所適用処置物質を投与するための特殊な絆創膏についての記載を含む)を、本明細書中に記載する。該溶液について推奨されるパッケージをも開示する。
【0043】
1.本発明の組成物
本発明は、生理学的にバランスのとれた酸性溶液に関する。このものは、1ハライド含有の塩の全濃度が、約0.014〜0.547 osmolの浸透圧モル濃度の範囲である(約0.123〜0.376 osmolの範囲であることがより好ましく;約0.137〜0.342 osmolの範囲であることが最も好ましい)ことを含む出発溶液から得ることができる。場合により、最終的な使用方法に応じて、鉱物を加えることができる。
【0044】
電解を行なう前の典型的な出発溶液は、例えば1クロリド含有の塩を含み得るが、これに限定されるものではない。ここで、該クロリド含有塩は、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化セシウム、塩化ルビジウム、および塩化バリウムからなる群から選ばれる。
【0045】
溶液を製造するために使用する該出発溶液において使用可能な様々な塩素含有の塩についての代表的な濃度の範囲を、以下の表1中に提示する。
【表1】

【0046】
浸透圧モル濃度の定義:非解離性溶質の1M溶液は、1 Osmolである(該溶液は、リットル当たり6.023×10E23の粒子を含む)。解離性塩の溶液は、nOsmolであり、ここで、nは1分子当たりに生成するイオン数である。従って、0.03MのKCl溶液は、0.06 Osmolである(Irwin H. Segelによる、Biochemical Calculations, 2版. John Wiley & Sonsによって出版, New York.)。浸透圧モル濃度は生理学的な研究において考慮されることが多く、ここで、組織または細胞は、水の取り込みまたは放出を防止するために、細胞質と同じ浸透圧モル濃度の溶液中でバッチしなければいけない。血漿は、0.308 Osmolである。従って、0.308 OsmolのNaCl溶液(0.154M)中に懸濁した赤血球は、収縮もしないしまた膨張もしない。該0.154MのNaCl溶液は、赤血球に関して等張性であると言える(Irwin H. Segelらによる)。
【0047】
表1中に記載する出発溶液から製造する生理学的にバランスのとれた酸性溶液の性質を、以下の表2中に提示する。
【表2】

【0048】
II.生理学的にバランスのとれた、電解された酸性の創傷治癒用溶液を製造するための装置および方法
本発明の生理学的にバランスのとれた酸性溶液は、電解を用いて製造する。水の電解は、水素イオンを還元して水素ガスを得て、水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを得る方法である。
【0049】
本明細書に記載する創傷治癒の溶液は、SUNTRON(登録商標)MWB−2モデル電解装置(Koshin Co. Ltd.製, 京都, 日本)を用いて製造した。等価な創傷治癒の溶液は、SUPER OXSEED LABO(登録商標)電解装置(ARV Co.製, 日本)を用いて製造することができる。
【0050】
図1は、生理学的にバランスのとれた、電解された酸性の創傷治癒溶液を製造する際の電解装置の一般的な図である。SUNTRON(登録商標)MWB−2モデル電解槽を参照すると、電解装置1は、第1のコンパートメント2および第2のコンパートメント3を有し、その各々は約3Lの容量を有する。コンパートメント2および3は、半透膜4によって仕切られている。第1のコンパートメント2には、陽極5が存在する。第1のコンパートメント2では、強酸溶液6が生成する。第2のコンパートメント3には、陰極7が存在する。コンパートメント3では、アルカリ性溶液8が生成する。電極5および7を動力源9に接続して、このことにより0.9A、100Vの電流が生じる。ふた10は、電解装置が周囲の周囲の空気11によって汚染されることを防ぐ。
【0051】
塩化ナトリウム(13.5g;非ヨウ素酸塩(Non-iodated), Morton製)を蒸留水(2.5L)に加えて、5.38g/Lまたは0.538%の溶液を得た。該溶液(2.5L)を第1のコンパートメント2に入れ、該溶液(2.5L)を第2のコンパートメント3に入れた。図1に示す動力源9を起動し、該動力を15分間作動させた。外部から熱を加えたりまた熱を全く除くことなく、該電解を室温で行なった(約25℃〜30℃)。
【0052】
塩溶液により、電流が電極間を通ることが可能となり、電解プロセスが促進される。電解プロセスに影響を及ぼすのに必要な塩の量は、最小限である。下式に示す通り、電解プロセスの間、ハライド塩(例えば、塩化ナトリウム)はイオン形態である。
【化1】

【0053】
生理食塩水の電解反応の間に、ナトリウムイオンは負に荷電した電極に誘引され、アルカリ側の水酸化物イオンと均衡する。クロリドイオンは、陽極に運搬される。次いで、下式に示す通り、クロリドイオンは酸化反応を受けて、このことにより少量の塩素ガスを生成し、このものは直ちに消費されて次亜塩素酸を形成する。
【化2】

【0054】
生理食塩水中のクロリドイオンは、HClO、ClOまたはClのいずれかの形態である。これらのイオン間のバランスは、溶液のpHによって大きく影響を受ける。いずれかの理論によって関連付けられるものではないが、HClOまたはClOイオンは有効な減菌剤であって、HClOはClOよりも10倍以上有効である。酸性のpHでは、ほとんどのClOイオンはHClOの形態である。
【0055】
電解を受ける他のハライド塩もまた、同様なイオン化のプロセスに関与する。このことは、当該分野でよく知られ、また報告されている。
【0056】
本発明の典型的な生理学的にバランスのとれた酸性溶液は例えば、塩化ナトリウムの濃度が約0.5g〜9.9g/Lの範囲を有する。
【0057】
本発明の1態様において、該溶液中の次亜塩素酸(HOX)の濃度は約0.1〜約1,000ppmであり、約1〜約750ppmであることがより好ましく、そして約5〜約500ppmであることが最も好ましい。
【0058】
本発明の1態様において、本発明の生理学的にバランスのとれた電解された酸性溶液は、ナトリウムカチオンの濃度が約0.01g/L〜約7g/Lの範囲を有する。
【0059】
本発明に記載の出発物質を用いて製造した、典型的な生理学的にバランスのとれた電解された酸性溶液は、pHが低く(約2〜約5)、HClO濃度が約0.1ppm〜約1000ppmである。本発明の1態様において、該溶液のpHは、2.4〜5.0である。この化学品の組み合わせにより、本発明の電解された酸性の生理食塩水の溶液は優れた殺菌能力およびその安定性の性質の延長を得る。加えて、該溶液は、室温で少なくとも3ヶ月間保存した場合に、なお安定で且つ活性であることを特徴とする。
【0060】
本発明の典型的に生理学的にバランスのとれた溶液は、酸化還元電位(ORP)が約+600mV〜約+1200mVであることを特徴とする。
【0061】
標準的な電解装置(本明細書において名前を挙げた装置を含む)を、上記の通り本発明の電解された塩溶液の製造において使用することができる。
【0062】
III.生理学的にバランスのとれた酸性溶液を製造するための化学反応
次亜塩素酸の水溶液の製造のための様々な化学反応が、当該分野において知られる。例えば、The Merck Index, Tenth Edition M. Windholz, Ed., Merck & Co., Rahway, USA, 1983および本明細書中に引用する文献を参照。本発明の溶液の製造のための方法のより一般的であって非限定的な例を、以下の反応式中に提示する。
【化3】

【0063】
本発明の水溶液の製造のための方法の非限定的な例は、以下の通り提示する。
【化4】

【0064】
本発明の目的の溶液の生成における、該溶液の製造のための上記の各代表的な方法において、該溶液のpHは水溶液のpHを調節するための当該分野において知られる標準的な方法を用いて、目的のpHに調節することができる。
【0065】
本発明の1態様において、本発明の安定な生理学的にバランスのとれた水溶液の組成物を与えるであろう反応物の相対的な濃度は、使用する反応物の性質および種類に従って変わり、目的の溶液を得る。例えば、本発明の溶液を含有する塩の濃度は、表1中に開示する濃度範囲を含み得る。
【0066】
本発明の1態様において、該本発明の安定で生理学的にバランスのとれた水溶液はまた、該溶液を用いる直前に適当な出発化学品を混合することによって、製造することができる。
【0067】
本発明の別の態様において、本発明の安定で生理学的にバランスのとれた水溶液はまた、使用する直前にインシチュで化学品を混合することによって製造することができる。インシチュでの該出発物質の混合は、当該分野における様々な公知の方法を用いて実施することができる。例えば、本発明の組成物の製造のための出発物質または試薬は、ガラスベッド、アンプルなどの中に別々に保存するか、容器に入れるか、または包含することができ、そして該試薬は、該試薬を容器に入れた個々の容器またはベッドを放出しそして該溶液を使用する目的部位で反応することを許容する際には、混合することができる。該試薬をガラスベッド、アンプルなどの中に包含する場合には、該溶液の反応性成分の放出を可能とする一方で、個々の容器を結合しまたはホールドする手段を得て、目的の処置部位での該容器の放出を防止することができる。
【0068】
製造後に、本発明の溶液は、使用するために保存しなければいけない。パッケージの方法および物質は、該溶液の有用な有効期間を保ちそして延ばすのに非常に重要である。例えば、該溶液と接触する容器の表面は、酸化剤と反応しない傾向である物質から構成されるべきである。
【0069】
我々は、多数の異なる容器の物質を評価し、驚くべきことにガラスと接触する表面は該溶液の長期間の強度(作用強度)を保存するが、通常、プラスチック表面は役に立たないことを発見した。例えば、米国薬局方,XXIII(1995)によって確立されたタイプIIIの要求およびその補足である「661章」, 「Chemical Rsistance-Glass Container」を満たす、石灰ナトリウム(soda lime)で被覆された化学的に耐性な琥珀ガラスのボトル(1Lまたは500mL)(Lawson Mardon Wheaton製, Millville, Nj 08332)は本発明の生理学的にバランスのとれた溶液についての優れた保存容器となるが、これに限定されない。これらのボトルはまた、USP(661)章の「Light Transmission」によって確立された光防護の要求(これは、ある場合に有用であり得る)をも満足する。該ボトルのキャップはフェノールから工作し、ライナー面(liner facing)をテフロン(登録商標)(PTFE)製とし、このものはキャップを封するのに役立ち、ボトル中に周囲の空気が流れ込むのを防止する。このボトルは、AllPak Corp., Bridgeville, PAから入手する。
【0070】
同じ製造主(AllPak Corp.)によって製造されたものであるが、琥珀色の着色がない白(透明)ガラスのボトルもまた、該溶液の安定性を保つのに十分に機能する。本発明の1態様において、該溶液の保存容器のガス気密シーリングは、該溶液の安定性の性質を保存しまたは伸ばす。保存、シーリング、および使用後の該容器の再シーリングのために使用するガス気密シーリング方法は、当該分野において知られる方法を含み得て、例えば気密性スクリューキャップ、気密性のフタ、化学的な耐性のO−リングもしくはガスケットを有するキャップもしくはフタの使用;シーリングテープ(例えば、電気的なテープ)の使用;または、該容器の気密性のシーリングもしくは再シーリングについて当該分野において知られる関連方法を挙げられる。
【表3】

【0071】
該溶液のpHおよびORPに及ぼす保存の影響
我々は、表2および3を参照する通り、pHおよび様々な物質から製造されたボトル中での酸化還元電位(ORP)の観点で、上記の溶液の有効期間の研究を行った。新しく調製した溶液は、4種類のボトル、すなわち琥珀色ガラス;白色(透明)ガラス;高密度ポリエチレン(HDPE);およびテフロン(登録商標)中で3ヶ月間保存した。本発明の該溶液の安定性および活性はまた、UV分光法を用いて活性ハロゲン濃度を測定することによって測定することができる。活性クロリドを含有する溶液の場合には、本発明の溶液の安定性および活性はまた、ヨード滴定法またはUV分光法を用いて活性塩素を測定することによって測定することができる。
【0072】
5〜10日の間隔にわたるある時点で、認識した(known)アリコートを吸引して該pHおよびORPを測定した。13個のアリコートを該試験期間中に採取し、そして各アリコートを該pHおよび該ORPについて測定した。出発pHが2.8の場合には、琥珀色ガラス、白色ガラス、HDPE、およびテフロン中に保存した溶液は、変化を伴うことなく、75日以上の期間にわたってpHを2.8に保った。出発ORP値が1175〜1180の場合には、琥珀色ガラス、白色ガラス、HDPE、およびテフロン中に保存した溶液は、該ORPの有意な低下を伴うことなく、75日以上の期間にわたってORPが1150〜1175の間を保った。
【0073】
本発明の溶液の安定性は、患者による使用について実用的であろうパッケージの異なる形態を用いて研究した。以下の試料Aは、テフロン−ラインスクリューキャップ(Teflon-lined screw caps)を用いて、9個の1回使用琥珀色ボトル(30mL)中にパッケージされそしてガス気密性を確実とするためにテープを用いて封した、溶液である。試料Bは、250mLの琥珀色ガラスボトル中にパッケージされた同じ溶液であって、そして試料Cは250mLのプラスチック性ボトル中にパッケージされた同じ溶液である。
【0074】
該実験のはじめに、遊離塩素の濃度を測定した。毎日(2日の週末を除く)、以下の方法を使用した。
1.その日の始めに、250mLのボトルを2分間、開口し、次いで閉じた。
2.その日の最後に、250mLのボトルを開口し、20mLの試料を吸引し、そして、該ボトルを2分後に閉じた。該20mLの試料を、遊離の塩素濃度について試験した。
その日の最後に、30mLのボトルの1つを開口し、そして遊離塩素の濃度について試験した。次いで、該ボトルは廃棄した。
【表4】

【0075】
1日に2回、2分間の250mLボトルの開口は正常な患者の使用のパターンを反映し、ここで、該患者は彼らの創傷上の包帯を交換し、そして該溶液を1日に2回適用した。
【0076】
驚くべきことに、遊離塩素、従って次亜塩素酸の濃度は、記載する通り、より大きなボトルを繰り返して開口した場合には、該実験の期間中、非常に有意に低下し;一方で、該1回使用ボトル(30mL)は、それらの濃度を許容レベル内に保つことが観察された。このことは、本発明の該溶液の各使用は、複数回開口されていないボトル由来(1回使用ボトル由来が好ましい)であるべきであることを示す。
【0077】
1態様において、本発明の溶液は、1回使用容器中に保存することができる。別の態様において、本発明の溶液は、様々な異なるサイズ、配置で、且つ本明細書中に開示する目的の使用方法に適当な異なる容量を有する、1回使用容器中で保存することができる。いくつかの使用方法において、例えば、本発明の溶液は、1回使用の30mLで、場合により廃棄可能な容器中で保存することができる。
【0078】
実験方法
500mLの三角フラスコ中に、NaCl(4.344g)を入れた。このものに、蒸留水(450mL)を加え、続いて0.6%のNaOCl(VWR International製)(1.6ml)、および1モル濃度の塩酸(3.7mL)を加えた。この溶液を500mLのメスフラスコに移し、次いで十分な蒸留水を加えて、500mLの印に達した。ORP、pH、および全ての利用可能な塩素を測定し、そして記録した。
【0079】
目的のpH範囲を得るために、硫酸が該溶液中に最初に存在する場合には、pHの調節は全く必要がない。その他、該pHは、水溶液のpHを増大しまたは低下することについて当該分野で知られる標準的な方法を用いて、目的の範囲に調節することができる。
【0080】
1例において、本発明の生理学的にバランスのとれた酸性溶液をガラスボトル中に保存する場合には、該組成物は室温で少なくとも90日間、安定であることが分かった。
【0081】
抗菌活性
本発明の溶液(このものは、9g/LのNaCl、170ppmの次亜塩素酸を含有し、pH 3.0およびORP 1175を有する)の抗菌性効力を、微生物(これは、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・ニガー、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcos pnemonea)、MRSA、VRE、枯草菌、パシラス・セレウス(Bacillis ceruis)、バシラス・トランゲンシス(Baccilus thorangensis)、炭疽菌、緑濃菌、大腸菌、黄色ぶどう球菌、リステリア・モノサイトゲネシス菌10403野生型、カタラーゼ欠損突然変異リステリア・モノサイトゲネスLM1370、クロカビ(胞子)、ペニシリウム・オブラタム(Penicillium oblatum)(胞子)、乳酸かん菌、および大腸菌0157: H7を含む)について試験した。本発明の溶液に10〜60秒曝露後に、微生物の活性の5logまでの低下が得られた。
【0082】
抗菌性質:
本発明の溶液は、微生物(例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母菌、真菌、および胞子(バシラスを形成する)(例えば、異なる炭疽菌の菌株を含む)を含む)の処置において有用であった。該溶液は、試験する全ての微生物に対して明白な抗菌性作用を発揮することを見出した。
【0083】
眼および皮膚の刺激作用
眼の刺激作用の実験方法:
本発明の溶液を、「the International Organization for Standardization 10993: Biological Evaluation of Medical Devices, Part 10: Tests for Irritation and Sensitization」の要件に基づいて、一次的な眼の刺激作用について評価した。
【0084】
本発明の溶液(0.1mLの用量)を、スクリーニングのウサギの右眼の下結膜のう中に点滴し、そして、まぶたを1秒間静かに閉じた。反対の眼に、対照コントロールとして機能するように、スポンサー毎に0.9%塩化ナトリウム(USP)(0.1mL)を投与させた。処置後に、該動物はそのゲージに戻した。投与の1、24、48および72時間後に、各ウサギの被験眼を眼の刺激について補助的な光源を用いて検査した。この研究の条件下で、本発明の溶液は、該ウサギの眼の組織に対して刺激的であるとは見なされなかった。
【0085】
皮膚の刺激作用の実験方法
本発明の溶液はまた、「International Organization for Standardization 10993: Biological Evaluation of Medical Devices, Part 10: Tests for Irritation and Sensitization」の要件に基づいて、一次的な皮膚刺激作用について評価した。
【0086】
皮膚の刺激の累積研究において、2個の無傷の皮膚部位および2個の擦過された皮膚部位を、6動物の各々の背中の皮膚上に調製した。次いで、本発明の溶液(0.5mL)を、各動物の1つの無傷の皮膚部位および1つの擦過された皮膚部位に5日間にわたって、1日当たり4時間適用し;蒸留水(0.5mL)をコントロールとして、各動物の第2の無傷の皮膚部位および第2の擦過された皮膚部位に同じ期間にわたって適用した。皮膚の刺激の累積的な影響は、蒸留水と比較して、本発明の溶液の適用部位においては全く見られなかった。
【0087】
我々は、本発明の溶液の抗菌性質、並びに眼および皮膚の刺激作用に関するこれらの溶液の挙動を研究し、そして以下の結果を見出した:
本発明の溶液の皮膚の刺激作用の指標は、減菌生理食塩水と比較して0であった。
本発明の溶液の眼の刺激作用の指標もまた、減菌生理食塩水と比較して0であった。
【0088】
IV.本発明の組成物を用いる方法
本発明の安定で生理学的にバランスのとれた非細胞毒性のイオン化された酸性溶液の適用は、創傷治癒のプロセスを著しく助けることが実証された。本発明の酸性の塩溶液の抗菌性質とは、微生物が混入したいずれかの創傷の治癒プロセスを増大させることである。本発明の組成物は、特異的に機能して、より速く治癒するのに必要な創傷にとっての抗菌環境を保ち、表層の感染症に関係する通常の合併症を伴わない。加えて、該溶液は局所的な細菌の制御および慢性的な創傷の湿り気を与える。
【0089】
本発明の酸性の塩溶液の使用は、通常の薬物療法および局所適用処置に応答しなかった、深い創傷を有する多数の患者を治癒する手段であった。1態様において、本発明は、様々な医学的疾患の処置(例えば、創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムおよび関連疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、からなる群から選ばれる)のための方法を提供し、ここで、該方法は、処置が必要とされる部位に本発明の溶液を適用することによって、本発明の溶液を使用することを含む。本発明の溶液を用いて処置することができるバイオフィルムとしては例えば、総説の項目「Is there a role for quorum signals in bacterial biofilms?」(S. KjellebergおよびS. Molinによる, PMID: 12057677(MEDLINE用にインデックスされたPubMed)」中に引用されているものを含む。
【0090】
本発明の生理学的にバランスのとれた溶液は、細菌の負荷を低下させて、結果、創傷の治癒を改善する際に有効であり得る。慢性の創傷を有するヒト患者におけるこれまでの製品の開発研究は、先行技術の溶液と比較して、溶液が十分に耐性であって、創傷組織の肉芽形成を改善し、創傷清拭の必要性を低下し、そして患者はそれらの処置の間に痛みが少ないと報告されていることを示唆している。加えて、これまでの製品の開発の研究は、溶液を、感染しそして一般に移植片の外科的な置換術を必要とする人工皮膚移植片を有する患者に適用する場合に、該感染が除去され、そして該移植片は保存されることを示唆している。
【0091】
本発明の好ましい組成物を用いてヒトの被験者を処置することに関する3つの最近の症例研究を以下に示す。これらの症例研究において、酸性の塩溶液は表2中の溶液について記載するものと本質的に同じであった。この組成物は血漿に匹敵する浸透圧モル濃度を与える。該創傷は本発明の組成物を用いて絶えず湿り気を保ち、そしてワセリンガーゼを用いて被覆して溶液の蒸発を防止した。
【0092】
症例研究1
患者は70歳の女性であり、激しい静脈の浮腫、リンパ節浮腫、および肥満症の長い病歴を有する。該患者の血管の供給は正常であった。該患者は右下肢に2年前に皮膚浮腫を発症した。引き続いて、第2の浮腫を外側の右肢に発症した。該潰瘍を予め多数の方法を用いて処置した。該方法としては、例えば創傷清拭、抗生物質、局所用溶液(例えば、BETADINE(登録商標)(Purdue Frederick, Norwalk, Connecticut);SILVADINE(登録商標)(BASF Corporation, Mt. Olive, New Jersey);ELASE(登録商標)(Fujisawa Co., Deerfield, Illinois)、およびFURACIN(登録商標)(Roberts Pharmaceutical Corp., Meridian Center, Illinois)を含む。例えば、BETADINE(登録商標)とは、創傷において外部的に使用する防腐性洗浄剤であり、このものは広範囲な抗菌薬として使用されるヨウ素含有の製品である。SILVADINE(登録商標)とは、1%銀スルファジアジン抗菌薬を含有する軟質の白色クリーム剤であり、このものは洗浄および創傷清拭後に創傷に適用される。ELASE(登録商標)は、循環が乏しい創傷における創傷清拭薬として使用されて、死んだ組織を破壊して健康な組織を無傷で残す、酵素学的な散剤またはクリーム剤である。FURACIN(登録商標)とは、通常表層の感染を引き起こす病原体に対して使用されるニトロフラゾンの広範囲な抗菌クリーム剤である。創傷の治癒におけるこれらの薬物の使用は、目的の結果を与えなかった。
【0093】
バイオプシーは、良性の潰瘍形成および肉芽形成組織を示した。壊疽性膿皮症(Pyodermo Gangrenosum)の可能性を考えた。これらの激しい壊死潰瘍の初期の測定値は、130×180mm、および98×125mmであった。処置としては、例えばベッド療養、創傷清拭(debridement)、抗生物質、並びに水和および局所的な細菌の制御のための本発明の組成物の局所適用を含む。10日以内に、該潰瘍は縮れた(crisp)赤色肉芽形成組織でほとんど完全に覆われ、そして痛みは消えた。14日以内に、裂けた厚い皮膚移植片が該創傷を閉じた。患者は8日後に退院することができた。処置の開始の2ヶ月後以内に、該潰瘍は完全に治癒され、該患者は痛みがなくなった。
【0094】
症例研究2
患者は50歳の男性であり、血栓静脈炎、肺かん栓症、および肥満症の病歴を有していた。患者は、両方のそ径(groin)において感染性血腫性の潰瘍を、および両方の肢において両側静脈潰瘍を数ヶ月間患った。該患者は、抗トロンビンIII欠損症を有しており、クマジン処置(coumadinized)をおこなった。例えば、抗トロンビンIIIとは正常な血漿および細胞外部位からなるタンパク質であり、時間依存性の不可逆反応においてトロンビンを失活させ、抗凝固性活性ヘのヘパリンの補助因子として機能する。抗トロンビンIIIはまた、ある疾患プロセス、すなわち肝臓疾患においてある凝固因子が生じ、または遺伝性であり得ることを示す。クマジン処置とは、結晶性のワルファリンタブまたはヘパリンI.V.抗凝固薬を用いて血栓症を有する患者を処置し、更に血小板塞栓を防止することを意味する。COUMADINE(登録商標)は、DuPont(登録商標)Pharmaceuticals, Wilmington, Delwareによって製造される。最近、患者のそ径部において出血したために、該患者は右肢において大きく深い潰瘍(測定値は、140×90mm)を、および左肢においてより表層の潰瘍(50×50mm、および60×60mm)を発症した。感染した壊死脂肪の第1の壊死組織切除後に、該培養物はバンコマイシン耐性の腸球菌の存在を示した。本発明の組成物の局所適用からなる処置を開始した。感染性疾患の療法指導は、更なる抗生物質の処置を全く推奨しなかった。本発明の組成物に浸漬したスポンジからなる局所用包帯を創傷に詰め、該患者をベッド療養させた。末端の静脈潰瘍はかなり速く治癒され、2つ以上の壊死組織切除を要したのみであった。左そ径部潰瘍を削り取り、該詰め物を本発明の組成物に浸しながら、更に開放することを要した。次いで、該患者は治癒し始め、良性の肉芽形成組織が形成し、表皮の被覆は右そ径部の潰瘍の90%であった。左そ径部の潰瘍は削り取るために壊死組織切除を要したが、抗生物質なしで治癒が開始した。
【0095】
症例研究3
患者は57歳の男性であり、両方の肢および足首における再発性の潰瘍を4年間患っている。局所的な創傷の療法は最初に静脈を凝固させ、局所的な創傷療法を用いることによって開始した。UNNA(登録商標)ブーツ(boots)は患者の潰瘍の増大を引き起こし、次いでより激しくなった。例えば、UNNA(登録商標)ブーツは、保護処置として酸化亜鉛クリーム剤上に適用する弾性で接着性の包帯である。UNNA(登録商標)ブーツとは、ガーゼおよびUNNA(登録商標)ペースト(非硬化性の酸化亜鉛ペーストに含浸されていない100%軟質綿ガーゼ)の層からなる下方末端のブーツ様包帯である。UNNA(登録商標)ペーストの製造主は、Glenwood, Inc.(Tenalty, New Jersey)である。患者は、浮腫の制御のためにJOBST(登録商標)ポンプを用いた。このポンプは間欠的な家庭の使用のために設計され、膨らませることのできる含気性の装置と接続する。該装置は典型的に前もってセットして、90秒間の膨張および30秒間の収縮を交替する。JOBST(登録商標)ポンプの製造主は、Nutech(San Antonio, Texas)である。
【0096】
我々が患者を試験した時点では、患者の創傷の測定値は、33×65×2mm、17×25×2mm、および5×9×2mmであった。生理的な評価により、肢への優れた脈動性の流入が立証され;従って、有意な浮腫が存在するために、該創傷は静脈性の潰瘍として診断された。患者は、圧迫療法および創傷清拭を開始し;同時に下肢部について培養し;存在する細菌が凝固酵素陰性であるメチシリン耐性のブドウ球菌、およびバンコマイシン感受性の腸球菌であることを見出した。患者はまた、ヘモフィルス、および多菌感染症の場合に培養される類ジフテリアをも有していた。該患者は数ヶ月間、持続的な非治癒性の感染症を有していた。該感染症は、典型的な抗生物質処置に対して耐性であった。該感染症は、CIPROFLOXACIN(登録商標)、およびBACTRIM DS(登録商標)に対してだけ感受性であった。CIPROFLOXACIN(登録商標)は広範囲の抗菌性抗生物質であり、Miles Pharmaceutical, West Haven, Connecticutで製造されており、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して活性であり、このものは典型的に皮膚、骨および関節の感染症を処置するのに使用される。BACTRIM DS(登録商標)はRoche of Nutley, New Jerseyによって製造される。BACTRIM DS(登録商標)はスルホンアミド抗生物質であり、このものは典型的に尿管感染症を処置するのに使用され、また大腸菌、プロテウス種、およびニューモシスティス肺炎の感染症を処置するのに使用される。該患者はCIPROFLOXACIN(登録商標)を開始し、次いでこのものを中断し、次いでBACTRIM DS(登録商標)を開始した。患者は、局所的な創傷清拭を行なった。
【0097】
上記の処置後、有意な改善は見られなかったが、本発明の組成物の局所的な適用を、細菌の制御および水和のために開始した。該感染症は、本発明の組成物を用いる処置の開始後、直ちに制御され、そして該創傷はかなり速く治癒が始まった。患者は現在2つの潰瘍の治癒を示しており、最終的な測定値は、右肢の内側および外側の足首にそれぞれ、7×41mmおよび7×11mmであった。
【0098】
経口療法
本発明の生理学的にバランスのとれた電解された酸性溶液を用いて、患部をすすぐことによって癌腫病炎(口角びらん)または口唇ヘルペスを処置した。該溶液を1日に3〜4回、毎回2〜3回の適用で口唇ヘルペスに浸漬し、該溶液を口唇ヘルペスに20〜30秒間接触させた状態に置くことによって使用することができる。該溶液は、歯科および口腔の衛生用の口すすぎ液として、および感染症を制御するために使用することもできる。この場合に、該溶液を、咽頭感染と闘うための含そう溶液として使用することができる。該溶液は、より具体的な領域のために綿塗布で補助して適用することができる。該溶液を患者の要求および症状に従って、1日に1回または数回使用することができる。
【0099】
眼科療法
本発明の生理学的にバランスのとれた酸性溶液を、異物を除去するために、または眼をすすいだりもしくは灌注するために、生理食塩水の溶液に置き代えて使用することができる。眼および周囲の組織を消毒するために手術の前後に局所適用することもできる。ウサギの眼における我々の研究により、ウサギの眼に適用した場合には生理食塩水の溶液と同じく安全であり、そして典型的に手術前に使用される眼科用グレードのBETADINE(登録商標)(5%)と比較して、毒性のないことを見出した。該溶液を患者の要求および症状に従って、1日に1回または数回使用することができる。該溶液を必要に応じて眼に直接的に点滴することによって適用することができる。そのものは、ガーゼを浸漬し、該飽和ガーゼを眼に1分間または数分間適用することによって、使用することができる。該飽和ガーゼを用いて静かにぬぐうことによって、眼を洗浄するのに使用することもできる。該溶液をまた小さい眼洗浄機に注ぎ、次いで該洗浄機を眼洗浄機上で反転させ、まぶたを開き、数回閉じることもできる。
【0100】
本発明の安定で生理学的にバランスのとれた酸性溶液は、眼の消毒または汚染除去の処置のために使用することができる。加えて、そのものは、新生児の眼の消毒における硝酸銀への置換物として使用することができる。読者は、本発明の溶液が多数の異なる種類の創傷(例えば、糖尿病の潰瘍、壊疽、静脈潰瘍、臥位潰瘍、圧迫潰瘍、咬合が原因の潰瘍を含むが、これらに限定されない)の処置において適用を有することを知るであろう。本発明の組成物はまた、例えば歯科、歯周部および眼科の操作中の灌注溶液として有用であり得る。本発明の組成物はまた、組織部位の手術前後の洗浄のために、そして癌腫病炎の処置のための含そう溶液として使用することもできる。加えて、該溶液中に含まれるHOClは、創傷治癒プロセスにとって必須の増殖因子を刺激しまたは増大し得る。例えば、消毒および増殖因子の刺激を望む場合には、該溶液について多数の他の利用法における使用を見出すことができる。
【0101】
皮膚消毒のための溶液の使用方法:
本発明の溶液はまた、感染した皮膚を処置するのに使用することができる。感染の医学的な兆候を示す患者の皮膚に、本発明の溶液は、感染した皮膚の領域に直接に適用することができる。当該分野において知られる標準的な適用方法を用いて該感染した皮膚上への該溶液の少なくとも1回の適用後の、該溶液の消毒性質は注目することができる。
【0102】
肺感染症における病原体の減少:
本発明の溶液は、肺感染症における病原体の減少のために使用することができる。例えば、様々なウイルス感染症または細菌感染症は、本発明の溶液を用いて有効に処置することができる。本発明の溶液を用いて有効に処置することができる感染症としては例えば、肺中に存在する炭疽菌胞子、肺中の肺炎の原因となる細菌(例えば、連鎖球菌など)を含むが、これらに限定されない。
【0103】
小児科における眼を洗浄するための本発明の溶液の使用方法:
本発明の溶液は、成人科および小児科において眼を洗浄するために使用することができる。例えば、様々なウイルス感染症、細菌感染症、または病原性の病原体を、本発明の溶液を用いて有効に処置することができる。本発明の溶液を用いて処置するのに成功する病原性の病原体としては例えば、トラコーマ病原体、淋病、並びに他のウイルス感染症を含むが、これらに限定されない。
【0104】
婦人科における本発明の溶液の使用法:
本発明の溶液は、婦人科における感染症(例えば、尿路感染症など)の処置のために使用することができる。例えば、様々な微生物、酵母菌(例えば、モニリア属、カンジダ・アルビカンスなど)、細菌感染症、HSV−2、または他の病原性の病原体は、本発明の溶液を用いて有効に処置することができる。場合により、本発明の溶液の適用は、婦人科の感染症の処置のための他の薬物療法と合わせて使用することができる。
【0105】
創傷療法の方法:
持続性の非治癒性の創傷を患っている患者は、本発明の生理学的にバランスのとれた酸性溶液を用いて毎日の基準で、典型的には1日に約2回処置すべきである。感染を制御し、創傷治癒の機構を助けるために、本発明の溶液(例えば、全活性塩素の濃度が約180ppmであって、そしてpHが2.5を有し得る)を生理食塩水の溶液に置き代えて使用することができる。本発明の溶液を、以下の通り使用することができる;ガーゼ物質もしくはガーゼパッドを十分な溶液に予め浸漬してそれを飽和とし、次いで、過剰な溶液を除くためにしぼませる。このことにより、反応しそして本発明の溶液の効力を低下するガーゼ中に存在する種を除去する。この操作の後に該ガーゼを湿らせるが、ずぶぬれにはしない。次いで、更なる溶液を適用して該ガーゼを完全に湿らせ、このものを直ちに創傷に適用する。別法として、該ガーゼを該創傷に適用し、次いで更なる溶液を適用する。典型的には、該創傷部位を、該溶液で浸漬したガーゼを用いて詰め、そして場合により、ワセリンガーゼを該詰めた創傷の上に適用して、湿り気を保ち、微生物が混入しないようにすることができる。次いで、該創傷部位を、当該分野で標準的である創傷用包帯を用いて包む。該溶液を用いて、それを創傷部位に直接的に注ぐことによって創傷を洗浄して、機械的な方法によっていずれかの壊死組織を除去することができ、そしてその物はまた洗浄剤または灌注剤としても使用することができる。
【0106】
該患者はまた「創傷治療キット」(NovaCal製)をも用いることができ、このことにより患者は包帯を除去する必要なしに、創傷部位の上ヘ本発明の溶液を定期的に注ぐことが可能となる。このキットは、使用の容易さ、携帯性を与え、そして創傷の曝露を著しく低下させる。該創傷治療キットは、本発明の溶液を含有するパッケージおよび絆創膏用物質を含む。該キットは、本発明の溶液を含有するパッケージ、および該溶液と組み合わせて使用するための特殊な絆創膏を含む。該特殊な絆創膏は、創傷を処置する間に、創傷の周囲の皮膚の乾燥を保つ。更に、該絆創膏は医務局または病院で適用することができ、患者は家庭で治療を続けることができる。このものは、医師の指示の下で家庭で適用しそして使用することができ;または、小さな損傷の場合には、該創傷治療キットを患者だけによる「一般用大衆」処置として使用することができる。
【0107】
本発明の別の態様において、本発明の溶液は、個々の1回使用容器中に該溶液を含むようにパッケージすることができる。該1回使用容器を、例えば包帯の1回交換またはそれと同等での適用として使用することができる。本発明の1回使用容器は、本発明中に開示する特殊な絆創膏と組み合わせて使用することができる。本発明の別の態様において、創傷治癒キットは、本発明の溶液の1回使用容器を、本明細書中に開示する様々な適用法のための特殊な絆創膏と合わせて含み得る。
【0108】
IV.創傷治療キットの説明
該創傷治療キットは、絆創膏物質および本発明の溶液のパッケージを含む。該パッケージ物質は本明細書において上記の通り、非反応性(溶液に対して)の表面の種類を与えることが好ましい。加えて、該絆創膏物質は該創傷部位を乾燥から防止するための酸素透過性の絆創膏用物質からなる特別に設計された創傷用「絆創膏」を含むことが好ましい。図2A〜2Cおよび図3は、それぞれ絆創膏、および創傷表層での絆創膏の使用を記載し、そして例示するものである。該絆創膏をより詳細に以下記載する。該キットはまた、ガーゼまたは創傷をパッケージするための同様な物質をも含み、該溶液および絆創膏と組み合わせて使用することができる。
【0109】
V.特殊な絆創膏についての記載
本発明の特殊な絆創膏は、開口部(これは、「窓」とも記載され、これから本発明の溶液または他の局所的な物質を指標に従って必要な時に定期的に適用することができる)を含む。該包帯は露(dew)/湿り気のセンサー、電気伝導性のセンサー(これは、イオンの含有量を測定する)、または他の絆創膏の性質のセンサー(これは、創傷の処置に関連する絆創膏の状態の指標を示す)を含む。例えば、露/湿り気の指示物質(これは、絆創膏溶液の含有量が低い時には、着色の指標を示す)、またはシグナル生成デバイス(例えば、音の指示物質または電気的シグナル出力指示物質)(これは、処置溶液のイオン含有量が低く、その結果絆創膏はもはや十分に有効ではない場合)を含むが、これらに限定されない。
【0110】
本発明の絆創膏の1態様を図2A〜2Cに示す。絆創膏200は、外側部分201(これは、1次的な接着面202を有する)、内側部分210(これは、持ち上げ用の持ち上げフラップ205を含み、該205は2次的な接着面207、持ち上げ用のタブ204(これは、フラップ205の持ち上げを助ける)、およびヒンジ206を有する)を含む。場合により、該絆創膏は露/湿り気インジメーター208または電気的に伝導性のセンサー(該センサーは、シグナル発生機と接合することができ、このものは絆創膏200の内側部分201中の位置を占める)を有する。図2Bは、空気透過性絆創膏200の断面図を示す。図中、持ち上げ用フラップ205、および持ち上げ用のタブ204がいくらか持ち上げられた位置にあり、そのために絆創膏200を貫く窓開口部203を与える、ことを示す。2次的な接着面部分207を絆創膏200の上部の表面209の上方に持ち上げる。図2Cは、空気透過性絆創膏200の断面図を示す。持ち上げ用フラップ205、およびその下方の位置に持ち上げ用フラップ204を有し、このものは接着面207によって絆創膏200の表面209に固定される。当該分野の当業者は、同様な方法で該絆創膏の機能および用途を達成するであろう多数の同じようなデザインを構築することができ、それらのデザインは本発明に含まれることと考える。
【0111】
図3は、皮下創傷303に適用された図2A〜2Cに示す種類の空気透過性絆創膏200の断面図300である。該皮下組織304を詰め物用物質306(例えば、ガーゼ)(このものは、酸化体との反応性を低下させまたは排除するように処置し、次いで本発明の生理学的にバランスのとれた電解された酸性溶液308に浸漬する)を用いて詰める。該絆創膏200を、1次的な接着面202によって皮膚表面302に接着させる。絆創膏持ち上げ用フラップ205をタブ204により持ち上げて、望む時に更なる溶液308の適用のために、詰め物用物質306に曝露させることができる。露/湿り気インジケーター(示さない)または電気的に伝導性のインジケーター(示さない)を用いて、溶液308を加える適当な時期を示すことができる。
【0112】
本発明の絆創膏の別の態様においては、窓は、該絆創膏と非持続的に接触するヒンジを有し得て、そしてこのものは、当該分野において知られる様々な接合方法または取り付け方法によって、該絆創膏に除去可能に取り付けたりまたは固定することができる。該接合方法または取り付け方法としては例えば、Velcro装置、除去可能な接着部または留め用(tacking)表面を含むが、これらに限定されない。本発明の該絆創膏における除去可能な窓は、完全に外部の絆創膏で置き代える必要がなく、該窓の交換または置換が可能である。
【0113】
本発明の絆創膏の別の1態様においては、様々な大きさおよび配置の個々の絆創膏を供することができ、そしてこれを、該絆創膏に適応することができる、ある大きさおよび配置の対応する脱離可能な窓と別々に販売することができる。場合により、該窓が該絆創膏と適当に重なって、その結果、該窓が該創傷を十分に覆いそして該絆創膏との重なり表面を有し、その結果、該窓が該絆創膏に安定に取り付けることができるように、該窓を設計する。
【0114】
包帯を完全に取り除くことなく、患者が創傷または創傷詰め物の上に該溶液を注ぐことを可能とすることによって、絆創膏は患者に使用の容易さを与える。より複雑な形の絆創膏(例えば、追跡装置と接合することができる電気的に伝導性のセンサーを有する絆創膏)は、病院の設定において特に有用である。
【0115】
本発明の絆創膏の別の態様において、可変の大きさ、輪郭および形状の絆創膏を、可変の大きさ、寸法および配置の1つ以上の窓の予め穿孔した外形を用いて予め製作することができ、その結果、該絆創膏は、該創傷の大きさ、形状および配置に適合しまたはカスタムフィットすることができる。該絆創膏を、可変の大きさ、形状および輪郭について設計することができ、そのことにより、身体の具体的な解剖学的な寸法に適応するように製造することができる。特別に設計された絆創膏を必要とし得る身体の領域としては例えば、様々な関節、肘、膝、手指および足指、並びに平らでない表面または曲線を有するヒトの解剖学における他の場所を含む。
【0116】
該絆創膏の穿孔処理により、保険介護者または患者が一般的に製造された穿孔処理の絆創膏を使用することが可能となり、これにより、該創傷の大きさ、形状、または配置にカスタム的に一致する窓を画定しまたは輪郭を描いた穿孔処理に沿って切るかまたは裂くことによって、該絆創膏の内部の窓を手動で除去することができる。加えて、該穿孔処理により、様々な大きさおよび寸法の創傷に適用するために1絆創膏の適用が可能となり、そして医局および供給者は、様々な大きさおよび配置の創傷に適応することができる小さな多数の中間の大きさの絆創膏だけをストックすることが可能となる。
【0117】
本発明の1態様において、
(a)約10ppm〜約200pmの濃度を有する次亜ハロゲン酸(HOX)の酸性溶液;(b)約0.4g/L〜約20.4g/Lであるハライド含有の塩であって、該溶液はpHが約2〜約5の範囲を有し;(c)該溶液に曝露後に微生物の活性の5logまでの低下を保つのに少なくとも十分な次亜ハロゲン酸濃度を有する、室温で少なくとも3ヶ月間保存した溶液;を含有する、安定で水性の生理学的にバランスのとれたイオン化された溶液を提供する。
【0118】
本発明の別の態様において、該溶液は更に、室温での最初の酸化還元電位(ORP)が約+600mV〜約1200mVの範囲であって、そして室温で3ヵ月後でのORPが最初のORPの約90〜97.5%程度の範囲であることを特徴とする。
【0119】
別の態様において、次亜ハロゲン酸は、HOBr、HOI、HOCl、およびHOFからなる群から選ばれる、溶液を提供する。本発明の更に別の態様において、次亜ハロゲン酸の濃度は、約40〜約190ppmである。
【0120】
本発明の更に別の態様において、ハライド含有の塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セシウム、ルビジウム、およびバリウムのハライドからなる群から選ばれる要素である。本発明の更に別の態様において、該溶液は、pHが約2.4〜約5.0の範囲であって、そしてハライド含有の塩は単一の塩である。
【0121】
本発明の更に別の態様において、溶液の次亜ハロゲン酸濃度は、ヨウ素滴定またはUV分光法によって測定される。
【0122】
本発明の別の態様において、創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムもしくはバイオフィルムを生む他の疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、からなる群から選ばれる様々な医学的疾患の処置方法を提供し、ここで、該方法は、該溶液を処置が必要とされる部位に適用することによって本発明の溶液を使用することを含む。
【0123】
本発明の別の態様において、(a)約10ppm〜約200pmの濃度を有する次亜塩素酸(HOCl)の酸性溶液;(b)約0.4g/L〜約16g/Lであるクロリド含有の塩であって、該溶液はpHが約2〜約5の範囲を有し;(c)該溶液に曝露後に微生物の活性の5logまでの低下を保つのに少なくとも十分な次亜塩素酸濃度を有する、室温で少なくとも3ヶ月間保存した溶液;を含有する、安定で水性の生理学的にバランスのとれたイオン化された溶液を提供する。
【0124】
別の態様において、該溶液は、室温での最初の酸化還元電位(ORP)が約+600mV〜約1200mVの範囲であって、そして室温で少なくとも3ヵ月後でのORPが最初のORPの約90〜97.5%程度の範囲であること、そして、次亜塩素酸濃度は約40〜約190ppmであることを特徴とする。
【0125】
本発明の別の態様において、該溶液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セシウム、ルビジウム、およびバリウムのクロリドからなる群から選ばれるクロリド含有の塩を提供し、そして1態様において、クロリド含有塩は単一の塩である。別の態様において、クロリド含有塩は塩化ナトリウムである溶液を提供する。
【0126】
別の態様において、pHは約2.4〜約5.0の範囲である、本発明の溶液を提供する。
【0127】
別の態様において、塩化ナトリウムの濃度は約4g/L〜約9g/Lである、溶液を提供する。
【0128】
別の態様において、OClおよびHOClの合計に対するOClのモル比率の範囲は20℃で、約0〜約0.26%である、溶液を提供する。
【0129】
別の態様において、該溶液の次亜塩素酸濃度は、ヨウ素滴定およびUV分光法によって測定される、溶液を提供する。
【0130】
本発明の更なる態様において、創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムもしくはバイオフィルムを生む他の疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、からなる群から選ばれる様々な医学的疾患の処置方法を提供し、ここで、該方法は、該溶液を処置が必要とされる部位に適用することによって本発明の溶液を使用することを含む。
【0131】
別の更なる態様において、溶液は、化学的な方法(例えば、化学的合成法を含む)、機械的な方法(例えば、混合、電解)によって製造するか、あるいはインシチュで製造する、本発明の溶液の製造方法を提供する。
【0132】
別の更なる態様において、ハライド含有の塩の溶液は、電解によって酸性溶液に変換され、そして該溶液のpHは約2〜約5にまで調節される、溶液を提供する。
【0133】
1態様において、該溶液は、以下の反応式:
【化5】

を含有する化学的合成法によって製造され;
ここで、溶液中のNaOClの濃度は約2.5mmol/Lであり、HClの濃度は約7.4mmol/Lであり、そして得られる溶液は目的のpHに調節される。
【0134】
別の態様において、溶液は、化学品を混合することによってインシチュで製造して、処置が必要な組織の部位での、安定で水性の生理学的にバランスのとれた非細胞毒性のイオン化された溶液を得る。
【0135】
1態様において、該療法を必要とする患者を、本発明の水溶液を含有する安定で生理学的にバランスのとれた酸性の組成物の有効量を用いて処置することによる、創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムもしくはバイオフィルムを生む他の疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、またはそれらの組み合わせのための方法を提供する。
【0136】
更に別の態様において、a)損傷組織の領域を曝露し;b)該溶液を損傷組織に適用し;c)該溶液を用いて損傷組織を灌注し;そして、d)該溶液を用いて組織を洗浄しまたは処置する;ことを含む、創傷治癒を促進するための方法を提供する。
【0137】
従って、本発明の開示の観点で当該分野の当業者は特許請求の主題と一致するまでそれらの実施態様を拡張することができるので、上記の好ましい実施態様は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、要素2および3として、図1に示す2つのコンパートメントを有する電解装置の断面図を示す。コンパートメント2および3は、半透膜4によって仕切られている。正極5はコンパートメント2に位置しており、ここでは強酸溶液6が生成する。負極7はコンパートメント3に位置しており、ここではアルカリ性溶液が生成する。電極5および7は動力源9と接続しており、このために電流が半透膜を流れる。フタ10は、電解装置1を周囲の空気11から独立であるように保つ。
【図2A】図2Aは、空気透過性絆創膏200の上面図を示す。このものは、1次的な接着面202を有する外側部分201、および2次的な接着面207、持ち上げ用のタブ204(これは、フラップ205の持ち上げを助ける)、ヒンジ206、および露/湿り気のインジケーター(または、本明細書中、以下に記載する他のセンサー/インジケーター208)を含む。
【図2B】図2Bは、空気透過性絆創膏200の側面図を示す。図中、持ち上げ用フラップ205および持ち上げ用タブ204がいくらか持ち上げられた位置にあり、このために絆創膏200を貫く窓の開口部203を得る、ことを示す。2次的な接着面207部は、絆創膏200の上部の表面209の上方に持ち上げられる。
【図2C】図2Cは、空気透過性絆創膏200の断面図を示す。図中、持ち上げ用フラップ205およびその下方の位置にある持ち上げ用フラップ204を有し、そして2次的な接着面207部によって絆創膏200の上部の表面209に固定される。
【図3】図3は、皮下創傷303上に適用された、図2A〜図2Cに示す種類の空気透過性絆創膏200の断面図300を示す。皮下組織304に、本発明の生理学的にバランスのとれた電解された酸性溶液308中に浸漬したガーゼ306を詰める。該絆創膏200を、1次的な接着面202によって皮膚表面302に接着させる。露/湿り気インジケーター(示さない)または他の感知/表示のデバイス(示さない)がガーゼ306の低レベルの湿り気を示した時に、絆創膏持ち上げ用フラップ205をタブ204によって持ち上げて、更なる溶液308の適用のためにガーゼ306を曝露させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約10ppm〜約200pmの濃度を有する次亜ハロゲン酸(HOX)の酸性溶液;
(b)約0.4g/L〜約20.4g/Lであるハライド含有の塩であって、該溶液はpHが約2〜約5の範囲を有し;
(c)該溶液に曝露後に微生物の活性の5logまでの低下を保つのに少なくとも十分な次亜ハロゲン酸濃度を有する、室温で少なくとも3ヶ月間保存した溶液;
を含有する、安定で水性の生理学的にバランスのとれたイオン化された溶液。
【請求項2】
更に、室温での最初の酸化還元電位(ORP)が約+600mV〜約1200mVの範囲であって、そして室温で3ヵ月後でのORPが最初のORPの約90〜97.5%程度の範囲であることを特徴とする、請求項1記載の溶液。
【請求項3】
次亜ハロゲン酸は、HOBr、HOI、HOCl、およびHOFからなる群から選ばれる、請求項1記載の溶液。
【請求項4】
次亜ハロゲン酸の濃度は、約40〜約190ppmである、請求項1記載の溶液。
【請求項5】
ハライド含有の塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セシウム、ルビジウム、およびバリウムのハライドからなる群から選ばれる、請求項1記載の溶液。
【請求項6】
pHが約2.4〜約5.0の範囲である、請求項1記載の溶液。
【請求項7】
ハライド含有の塩は単一の塩である、請求項1記載の溶液。
【請求項8】
溶液の次亜ハロゲン酸濃度は、ヨウ素滴定またはUV分光法によって測定される、請求項1記載の溶液。
【請求項9】
創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムもしくはバイオフィルムを生む他の疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、からなる群から選ばれる様々な医学的疾患の処置方法であって、該溶液を処置が必要とされる部位に適用することによって請求項1記載の溶液を使用することを含む、該方法。
【請求項10】
(a)約10ppm〜約200pmの濃度を有する次亜塩素酸(HOCl)の酸性溶液;
(b)約0.4g/L〜約16g/Lであるクロリド含有の塩であって、該溶液はpHが約2〜約5の範囲を有し;
(c)該溶液に曝露後に微生物の活性の5logまでの低下を保つのに少なくとも十分な次亜塩素酸濃度を有する、室温で少なくとも3ヶ月間保存した溶液;
を含有する、安定で水性の生理学的にバランスのとれたイオン化された溶液。
【請求項11】
更に、室温での最初の酸化還元電位(ORP)が約+600mV〜約1200mVの範囲であって、そして室温で少なくとも3ヵ月後でのORPが最初のORPの約90〜97.5%程度の範囲であることを特徴とする、請求項10記載の溶液。
【請求項12】
次亜塩素酸濃度は、約40〜約190ppmである、請求項10記載の溶液。
【請求項13】
クロリド含有の塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セシウム、ルビジウム、およびバリウムのクロリドからなる群から選ばれる、請求項10記載の溶液。
【請求項14】
クロリド含有塩は単一の塩である、請求項10記載の溶液。
【請求項15】
pHは約2.4〜約5.0の範囲である、請求項10記載の溶液。
【請求項16】
クロリド含有塩は塩化ナトリウムである、請求項13記載の溶液。
【請求項17】
塩化ナトリウムの濃度は、約4g/L〜約9g/Lである、請求項16記載の溶液。
【請求項18】
OClおよびHOClの合計に対するOClのモル比率の範囲は20℃で、約0〜約0.26%である、請求項16記載の溶液。
【請求項19】
該溶液の次亜塩素酸濃度は、ヨウ素滴定およびUV分光法によって測定される、請求項10記載の溶液。
【請求項20】
創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムもしくはバイオフィルムを生む他の疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、からなる群から選ばれる様々な医学的疾患の処置方法であって、該溶液を処置が必要とされる部位に適用することによって請求項10記載の溶液を使用することを含む、該方法。
【請求項21】
該溶液は、化学的な方法(例えば、化学的合成法を含む)、機械的な方法(例えば、混合、電解)によって製造するか、あるいはインシチュで製造する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の溶液の製造方法。
【請求項22】
ハライド含有の塩の溶液は、電解によって酸性溶液に変換される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
該溶液のpHは、約2〜約5にまで調節される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
該溶液は、以下の反応式:
【化1】

を含む化学的合成法によって製造される、請求項21記載の方法であって
ここで、溶液中のNaOClの濃度は約2.5mmol/Lであり、HClの濃度は約7.4mmol/Lであり、そして得られる溶液は目的のpHに調節される、該方法。
【請求項25】
該溶液は、化学品を混合することによってインシチュで製造して、処置が必要な組織の部位での、安定で水性の生理学的にバランスのとれた非細胞毒性のイオン化された溶液を得る、請求項21記載の方法。
【請求項26】
創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、経口消毒、抗真菌性療法、眼科適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器における感染性負荷の減少、自家もしくは人口の組織移植における細菌性負荷の減少、経口消毒抗真菌性療法、のう胞性線維症についてのバイオフィルムもしくはバイオフィルムを生む他の疾患の処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生、またはそれらの組み合わせのための方法であって、
該療法を必要とする患者を、請求項1記載の水溶液を含有する安定で生理学的にバランスのとれた酸性の組成物の有効量を用いて処置することによる、該方法。
【請求項27】
a)損傷組織の領域を曝露し;
b)該溶液を損傷組織に適用し;
c)該溶液を用いて損傷組織を灌注し;そして、
d)該溶液を用いて組織を洗浄しまたは処置する;
ことを含む、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505516(P2006−505516A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525999(P2004−525999)
【出願日】平成15年6月16日(2003.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/019126
【国際公開番号】WO2004/012748
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
VELCRO
【出願人】(302058613)ノバカル・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】