説明

生理的又は水性の液体中の被分析物濃度を定量するための被分析物検査システム

所定距離で互いに対向した第1・第2表面を持ち、両表面にはほぼ合同に整列された高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域を形成する2つの実質的に等しい模様が付与され、高表面エネルギー領域は少なくとも2つの検出領域を有する試料分配システムを作り、第1・第2の表面の検出領域には電気化学的検出手段の作用・参照電極の2つの対応する模様が付与される、生理的試料液体中の少なくとも1つの被分析物濃度を定量する被分析物検査素子である。被分析物検査素子の内部に含まれた試料分配システムは、生理的液体を検出領域に導くための壁や木立や導管に似ており、機械的及び/又は構造的特徴がなく、簡単な費用効率が高い信頼性のある製造工程を可能とする。組み込まれたキャリブレーション手順により、本発明の被分析物検査システムは、血液型、ヘマトクリットレベル、温度などに関係なく、信頼性のある結果を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、生理的液体、例えば血液に含まれる、被分析物、例えばグルコースの定量分析の分野に関するものである。より詳細には、本発明は、被分析物検査システム、及び生理的又は水性の液体中の被分析物の定量分析検査方法を提供するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
生理的試料中の被分析物濃度の定量は、多くの病気の診断や治療に重要な役割を演じる。被分析物としては、例えば血液、血漿、尿、又は唾液中のグルコース、コレステロール、遊離脂肪酸、中性脂肪、タンパク質、ケトン、フェニルアラニン、酵素、抗体、又はペプチドが挙げられる。
【0003】
全血試料中のグルコースの測定は、特に一般的な課題である。糖尿病は視力障害や腎不全やその他の重篤な医学的結果を導く危険な生理的合併症の原因となるからである。厳密な治療及び病気の管理のみが、運動や食事制限や薬物療法を調整しなくてもこれらの合併症のリスクを最小化する。一部の患者は血液中のグルコース濃度を1日3回以上の測定頻度で、検査しなければならない。これらの患者は臨床医や病院と同じように、長期に亘る糖尿病の合併症を回避するための処置体制を調整するために正確、確実、かつ理想的には安価な方法を必要としている。
【0004】
糖尿病に関する認識の高まり及び自己監視と自己処置との容認は適切な装置の利用可能性に依存し、個人的利用のため及び同様に検査の注意ポイントのための装置及び方法を多数開発させる。消耗性でない選択のための見本として、妊娠、排卵、血液凝固、ケトン及びコレステロールの検査を利用できるが、自己監視の分野で最も顕著なものは毛細管血液においてグルコースが検出できることである。
【0005】
典型的には、生理液体試料、例えば毛細管血液は、被分析物の濃度評価のために検査ストリップに適用される。検査ストリップは通常測定装置と連動して使用される。測定装置は、ストリップが光度検出用に設計されている場合には光の反射率及び/又は透過率を測定し、ストリップが電気活性な化合物の検出用に設計されている場合には、電流のような、いくつかの電気的特性を測定する。
【0006】
過去2年間以上、電気化学的バイオセンサーは、診断関連市場においてますます顕著になっており、反射測光システムを超えるいくつかの利点を患者に与える。主な相違点は、反射測光システムに基づく膜の頂部への充填と比較して、試料の適用をより簡便にした検査ストリップの毛細管に充填するという特徴点である。さらに、測定セルはストリップの先端部に位置させることができ、それゆえ、検査進行中、血液試料は測定装置(計器)に直接接触しない。その結果、装置を清潔に保ち、衛生学的に計器への血液の汚染を回避できる。
【0007】
今日まで、多種多様の電気化学的バイオセンサー用ストリップが開発されている。典型的な電気化学的バイオセンサーが米国特許第5,288,636号明細書に開示されており、これは作用電極と計測器/参照電極とを含む。酵素と酸化還元媒介物と緩衝液とを含む試薬が作用電極の表面に配置される。酵素は当該酵素の基質に関与する反応を触媒する能力を有するものである。また、酸化還元媒介物は電子を伝達する能力を有し、酵素と作用電極との間を移動する。測定される被分析物を含む試料液体が試薬に添加されると、被分析物を酸化し酸化還元媒介物を還元する反応が起こる。この反応後、又は反応中、電極間に電位差が加えられる。還元型媒介物の電解酸化により生じる電流が測定され、これは試料中の被分析物の総量に相関する。
【0008】
典型的な実施形態では、電気化学的システムは支持壁により囲まれた支持部材上の2つの電極からなる。支持壁は空洞を形成するためのものであり、空洞は毛細管作用により充填される十分小さな空洞(米国特許第4,900,424号明細書、Birth et al.,1987)、又は拡散もしくは網目層の助けを備えた空洞(米国特許第5,628,890号明細書、Carter et al.,1997)である。
【0009】
被分析物ストリップの大規模製造における原料及び工程の多様性に起因して、1つのバッチと次のバッチ間の適切なストリップ対ストリップの再現性は保証されない。従って、全ての公知のシステムは検査ストリップが必要であり、その検査ストリップは製造工程の間にキャリブレーションされなければならない。このキャリブレーション情報は、手動又は自動の手段による計測器に使用時までに提供される。前者の場合、ユーザーは、検査ストリップのロットごとに附属している数字のキャリブレーション情報を入力しなければならない。後者の場合、情報は、バー、色、又はデジタル暗号形態でストリップにコード化されている。従って、このタイプのキャリブレーション情報は、製造時までには検査ストリップの機能上の特徴を表すが、それは2年後かもしれない使用時までに検査ストリップの特徴を変えるかも知れないものであるか、又は変えないかもしれないものである。
【0010】
さらに、測定手順は生理的試料液体中の他の可変性因子により妨害される可能性がある。全血分析における典型的な問題は、赤血球レベルの変動であり、これは試料中の真の被分析物濃度を反映していない可能性のある結果を導く。
【0011】
国際公開第EP/2004002284は、光度検出のための乾燥試薬検査ストリップ、及び標準物質添加法を用いたキャリブレーションシステムを組み込んだ生理的液体中の被分析物の定量を開示している。
【0012】
しかしながら、今日まで、電気化学的検出及び生理的液体中の被分析物の定量に適しており、組み込まれたキャリブレーションと品質管理手段とを備えた被分析物検査システムは存在しない。
【0013】
従って、本発明の目的は、製造工程の変動や被験試料自身の変動因子により生じる可能性のある変動を明らかにして補正する、組み込まれたキャリブレーション手段と、生理的試料液体中の被分析物濃度を測定するための電気化学的検出手段とを備えた被分析物検査システムを提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、多数かつ複雑な製造ステップを必要とせず、それゆえ安価であり、血中グルコースや他の重要な生理的パラメータの自己監視において患者を支援する製品として使いやすい電気化学的被分析物検査素子のための製造工程を提供することである。
【0015】
〔発明の概要〕
本発明は、血液、血清、血漿、唾液、尿、間質及び/又は細胞内液のような生理的液体中の、グルコース、コレステロール、遊離脂肪酸、中性脂肪、タンパク質、ケトン、フェニルアラニン、又は酵素のような被分析物の濃度を定量するための素子、及び乾燥試薬検査ストリップにおける電気化学的検出手段を備え、キャリブレーション及び品質管理手段を組み込んだ装置を提供する。
本発明の被分析物検査素子の製造は、検査ストリップの安価な製造を可能とする少数の単純な製造ステップのみを必要とする。
【0016】
組み込まれたキャリブレーション手順によって、本発明の被分析物検査システムは、血液型、ヘマトクリットレベル、温度などに関係なく、信頼性のある結果を提供する。加えて、製造のばらつきも同様に、組み込まれたキャリブレーション手順により補正される。さらに、活性成分の経時変化が検出可能であり、かつ補正及び/又は記録され得るので、適切な保存条件下における製品保存期限が延長され得る。
【0017】
本発明は、所定の距離で互いに対向した第1及び第2の表面を持ち、前記2つの表面には、ほぼ合同に整列された、高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域を形成する、実質的に等しい模様が付与され、高表面エネルギー領域を有する領域は、少なくとも2つの検出領域を有する試料分配システムを作り、第1及び第2の表面の検出領域には電気化学的検出手段の作用及び参照電極の2つの対応する模様が付与されることで特徴付けられる、生理的試料液体中の少なくとも1つの被分析物濃度を定量するための被分析物検査素子を提供する。
【0018】
被分析物検査素子の内部に含まれた試料分配システムは、生理的液体を検出領域に導くための壁や木立(grove)や導管に似ている機械的な及び/又は構造的な特徴がないため、簡単で費用効率が高く信頼性のある製造工程をもたらす。
【0019】
別の局面において、本発明は、以下の工程を有する本発明の被分析物検査素子の製造方法を提供する。
【0020】
第1表面を持つ第1層上に作用電極の模様を付与する工程、
第2表面を持つ第2層上に参照電極の対応する模様を付与する工程、
第1表面を持つ第1層上に高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域を生成する工程、
第2表面を持つ第2層上に高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域の対応する模様を生成する工程、ここで、高表面エネルギー領域はn個設定された検出領域を備える親水性試料分配システムを形成し、nは2より大きい整数であり、作用及び参照電極は、親水性試料分配システムのn個の所定の検出領域の底部に位置する、
第1表面のn個の検出領域(6a)上に触媒製剤を被覆する工程、ここで、触媒製剤は電気化学的検出手段を用いる生理的液体試料中の被分析物濃度の検出を促進する、
第2表面のn個の検出領域上にn個のキャリブレーション製剤を被覆する工程、ここで、n個のキャリブレーション製剤はm個のブランク製剤及び異なるレベルのキャリブレーション化合物を有するn−m個の製剤で構成され、mは少なくとも1かつn>mの整数であり、被分析物と同一、又は、実質的に等しく、生理的液体試料中の被分析物のように、触媒製剤において同じ化学反応を誘発し得る、
基層及びカバー層の第1及び第2表面上の高表面エネルギー領域により形成された試料分配システムのための空洞を提供する切れ目を有する中心層の対向する部位に、第1及び第2表面の層を付与する工程。
【0021】
当該被分析物検査素子は、種々のキャリブレーション手順に適した実施形態や異なる被分析物及び電気化学的検出方法に適合した実施形態など、いくつかの実施形態で説明される。当該被分析物検査素子を、単一の測定に用いられる検査ストリップ、又は数回の測定のための基本ユニットを提供する被分析物検査ディスクや被分析物検査弾帯のようなより複雑な構成に簡単に組み込むことができる。
【0022】
本発明の他の特徴及び優位性、並びにその好ましい実施形態は、添付図面を参照した以下の説明で明白になるだろう。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、検査ストリップの形状で提供された本発明の被分析物検査素子の1実施形態の斜視図である。
【0024】
図2は、図1の素子の異なる層を別々に示した分解斜視図である。
【0025】
図3は、一連の基層及びカバー層上の異なる層の一連のコーティングを示す図である。
【0026】
図4は、被分析物検査素子の試料分配システムの検出領域の断面図である。
【0027】
図5のa〜dは、ストリップ形状の被分析物検査素子の連続的なウエブ製造工程のステップを示す図である。
【0028】
図6は、異なる模様の経路及び異なるキャリブレーション方法に適合した検出領域を有する試料分配システムの異なる実施形態を示す図である。
【0029】
図7は、標準物質添加法を用いた試料被分析物濃度の計算を示すグラフである。
【0030】
図8は、算出した結果及びキャリブレーションデータのための検証方法を示すグラフである。
【0031】
図9は、計測器を有する、本発明の検査ストリップの典型的な応用例を示す図である。
【0032】
図10は、挿入された被分析物検査ストリップを備えた被分析物検査システムが患者の指先から毛細血液の試料を受け取る準備ができていることを示す図である。
【0033】
図11は、被分析物検査ディスクの構成を示す図である。
【0034】
図12は、被分析物検査ストリップと比較した被分析物検査ディスクを示す図である。
【0035】
図13は、組み込まれた被分析物検査ディスクを有する被分析物検査システムを示す図である。
【0036】
図14は、左手及び右手で取り扱う様式の被分析物検査ストリップを有する被分析物検査システムを示す図である。
【0037】
図15は、被分析物検査弾帯及び積み重ねを構築するための折り畳まれた弾帯を示す図である。
【0038】
図4に示される層はノンスケールであり、特に層(6)、(14)、(18)及び(19)の厚さは大部分誇張している。
【0039】
〔発明の詳細な記載〕
図1は、基層(2)、当該基層(2)を覆っている中心層(3)、及び当該中心層(3)を覆っているカバー層(4)を備えた検査ストリップ(1)の形状の本発明の被分析物検査素子を示す図である。図2に示すように、上記中心層(3)は、上記基層(2)及び上記カバー層(4)とともに窪んだ空洞を形成するように切れ目(5)を有している。上記空洞では、被分析物検査素子の一面に位置する試料添加領域(9)に接続された試料分配システム(6)が設けられる。上記試料添加領域(9)はユーザーインターフェースとしての役割があり、試料を簡便に添加することができるように被分析物検査素子の主要な一面から伸張している凸型の突出(10)によって形成されていることが好ましい。生理的液体が試料分配システム内に分配されている間に、空気を排出することができるように、被分析物検査素子の2番目に主要な一面において試料添加領域(9)の反対側には、通気孔(図示せず)が設けられている。
【0040】
加えて、上記被分析物検査素子(1)には、例えば、異なる被分析物を定量するため、いくつかの被分析物検査素子を識別するのに役に立つ登録の特長になるもの(7)が備えられている。この手段により、複合被分析物計測器を用いて、特定の被分析物を定量するために必要とされるストリップ挿入物(strip insertion)にある選択可能なパラメータを有する特別なプログラム又は手順を実施することができる。図1の多層構造の構成を分解して表した図2に示されているように、基層(2)は、電気化学的検出手段の接点(11)、導電性抵抗路、及び作用電極(8)のための基板が備えられた第1表面(2a)が備えられている。また、カバー層(4)は、電気化学的検出手段の接点(11’)、導電性抵抗路、及び対応する参照電極(8’)のための基板が備えられた第2表面(4a)が備えられている。
【0041】
さらに、上記基層(2)の第1表面(2a)には、試料分配システムの第1部を形成している第1親水性模様(6)が備えられている。当該第1親水性模様(6)は、試料分配システム内の試料液体に対する親水性の「案内素子」としての機能と、上記作用電極(8)を上記電気化学検出手段に接続する導線に対する電気的な絶縁としての機能とを有する疎水性絶縁層(14)に囲まれている。また、上記カバー層(4)の第2表面(4a)には、試料分配システムの第2部を形成する対応する親水性の模様(6’)が備えられている。上記親水性模様(6’)は、試料液体に対する親水性の案内素子としての機能と、上記対応する参照電極(8’)を上記導線に接続する電気的な絶縁としての機能とを有する疎水性絶縁層(14)に囲まれている。
【0042】
上記試料分配システムの高表面エネルギー領域に形成されている上記親水性模様(6、6’)には、被分析物検出領域(6a、6a’)及び試料経路(6b、6b’)が所定の数含まれている(図3参照)。上記被分析物検出領域(6a、6a’)及び試料経路(6b、6b’)は、多層構造の構成の組み立ての大部分の適合を正しく合わせて位置あわせをされる。さらに、上記作用電極(8)及び参照電極(8’)は、基層及びカバー層に形成された親水性の模様(6、6’)によって設置された試料分配システムの検出領域(6a、6a’)において適合される。
【0043】
基層及びカバー層は、基層(2)の第1表面(2a)及びカバー層(4)の第2表面(4a)の間と、電極システム(8)及び電極システム(8’)の間との距離を規定する中心層(3)によって隔離されている。上記中心層(3)は、どちらか一方の面を接着層で被覆された薄層のポリマーフィルムを備えていてもよいし、上記基層(2)の第1表面(2a)及び上記カバー層4の第2表面(4a)の間で所望の空間を提供する印刷された層又はその他の層によって実現されていてもよい。
【0044】
上記中心層(3)は切れ目(5)を有しており、基層(2)の第1表面(2a)及びカバー層(4)の第2表面(4a)と一緒に窪んだ空洞を形成する。基層(2)の第1表面(2a)及びカバー層(4)の第2表面(4a)にそれぞれ備えられた疎水性絶縁層(14、14’)の試料分配システムは、基層(2)の第1表面(2a)、カバー層(4)の第2表面(4a)及び上記中心層(3)の切れ目(5)によって作製される空洞に位置する。上記窪んだ空洞は、上記試料分配システムよりも実質的に大きく設計されていることが好ましい。機能被分析物検査素子内に添加された試料液体は、親水性模様(6、6’)によって形成された試料分配システムの疎水性経路(高表面エネルギー領域)を通って測定容器(measurement chamber)内に入る。基層(2)の第1表面(2a)及びカバー層(4)の第2表面(4a)の間の試料分配システムの所定の検出領域(6a、6a’)(図3参照)及び所定の流路(6b、6b’)にある疎水性絶縁層(14)及び(14’)(低表面エネルギーの領域)によって閉じ込められる(束縛される)。従って、試料は被分析物検査素子の空洞に完全に満たされることはない。それゆえ、複数の作用電極を有していても0.5μL以下の非常に少量の試料容量を用いることができる。
【0045】
中心層に切れ目(5)を備えるのは、親水性模様(6、6’)によって形成される試料分配システムのための空洞を作成することが目的であるため、当該中心層(3)に備えられた切れ目(5)は、傘形状、長方形形状又は円形状のような異なる形状でよい。中心層(3)に備えられた切れ目(5)は、親水性模様(6、6’)によって形成された試料分配システムの大きさに影響を及ぼすことはない。それゆえ、所要の試料容量に影響を及ぼすことや、所要の試料容量を変えることはない。試料分配システムの模様(6、6’)と比べて、上記空洞の形状はかなり単純であり、そのため単純な穴あけ機を適用することやレジストレーション精度の必要性がより少なく迅速な処理を行うことができる。
【0046】
さらに、上記中心層3には、第1陥凹部(12)を設けられており、上記基層にある上記作用電極(8a)の接点(11)が露出される。また、上記中心層3には、第2陥凹部(13)を設けられており、上記カバー層にある上記参照電極(8a’)の接点(11’)が露出される。
【0047】
図3は、本発明の被分析物検査素子の好ましい実施形態の製造工程を示す図である。列(a)に示すように、第1工程は、第1表面(2a)を備える基層(2)及び第2表面(4a)を備えるカバー層(4)の調製である。当該基層及びカバー層は、一般的には固体ポリマーフィルムによって形成されている。被分析物検査システムの適切な機能には必須ではないが、1実施形態において、患者が被分析物検査ストリップの被分析物検査素子の中身を観察することができるので、基板として透明のポリマーフィルムを選択することが有利である。
【0048】
この製造工程に続いて、列(b)に示すように、電極と導電性抵抗路とが装着される。図3によれば、本発明の実施形態において、電気化学検出手段の作用電極(8)は、基層(2)の第1表面(2a)上に装着され、電気化学検出手段の対応する参照電極(8’)は、カバー層(4)の第2表面(4a)上に装着される。しかし当然のことながら、電気化学検出手段の作用電極(8)は、カバー層(4)の第2表面(4a)上に装着され、電気化学検出手段の対応する参照電極(8’)は、基層の第1表面(2a)上に装着される。さらに、全て又はいくつかの参照電極を互いに電気的に接続することが可能である。
【0049】
この工程に採用することのできる、抵抗路及び電極の導電性模様を製造するためのいくつかの科学技術が技術(art)において知られ、産業に用いられている。当該技術の適切なものとしては、炭素又は貴金属インクのスクリーン印刷、所要の回路構造のレーザーパターニングないしはフォトリソグラフィックパターニングが続いて行われる、炭素ないしは貴金属の物理的ないしは化学的真空蒸着、又は、適合性表面への貴金属の化学的蒸着である。例えば、金、パラジウム、及びプラチナを真空蒸着工程を行うことによって製造された清浄貴金属構造は、再現性と信頼性のある電気化学手段に最も適している。本実施形態では、素子はMYLAR(登録商標)又はMELINEX(登録商標)のような、金又は最も好ましくはパラジウムが被覆されたポリエステル基板により形成されていることが好ましい。所要の回路構造は、YAGレーザーにより金属層を除去することによって製造されていることが好ましい。レーザーの長波長(1064nM)を用いることにより、ポリマーフィルムを傷つけることなく、主として金属を蒸発することができる。それゆえ、非常に効率のよい構造化工程を実施することができ、焼けたプラスチック粒子で金属層が汚染されることを避けることができる。
【0050】
列(c)に示すように、上記回路構造が完成した後、基層(2)の第1表面(2a)及びカバー層(4)の第2表面(4a)に、試料液体によって濡らすことができる、高表面エネルギー領域を表している同等の親水性模様(6、6’)が備えられる。上記親水性模様(6、6’)は、電極(8、8’)が試料分配システムの検出領域(6a、6a’)と適合するような態様で設けられる。列(d)に示すように、基層及びカバー層は、導電性回路部分を絶縁すること、電極と接触パッドとだけを露出すること、及び試料液体を試料分配システムの疎水性部位に制限することという2つの目的を提供する、疎水性絶縁層(14、14‘)を印刷することによって調製される。さらに、疎水性のインクは、所望の色、情報の書かれた文章、又は製品の商標により被分析物検査システムを装飾するのに用いられる。これらの印刷工程には、フレキソ印刷を用いて実施されるのが最も好ましい。しかしながら、グラビア印刷、リトグラフ、オフセット印刷、インクジェット又は固体インク印刷のようなその他の印刷又は被覆工程も、親水性層及び疎水性層を設けるために適している。一方、固体インク印刷技術は、個体インク自身のワックス特性のため疎水性模様を設けるのに理想的に適している。
【0051】
フレキソ印刷によって、輪転機による高分解能印刷を行うことでき、高速製造が支援される。ポリマーフィルム基板上に印刷する確立された技術があり包装産業に広く用いられている。粘性の低いインクを用いることにより、薄さを実現することができ、約2〜4μlの被覆でさえ実現することができるため好ましい。4色フレキソ印刷印刷機の運用が実践に確立され、運用上に問題はない。しかしながら、溶媒に基づく硬化インク又はUV硬化インクが、被分析物検査ストリップの製造に用いることができるが、電子線(EB)硬化インクがより好ましい。これらのインクは機械的要因及び化学的要因に最も耐性が高く、検出器の化学的性質に影響を与える揮発性の有機溶媒及び光開始材を有さず任意で色素を有するポリマーを100%を含んでいる。性能特性におけるこれらの肯定的な利益は、架橋ポリマーフィルムを形成するため、及び表面に浸透するための電子の能力によるものである。
【0052】
EB硬化に用いられるインクは、アクリルモノマー及びアクリルオリゴマーのポリマー性能を利用している。アクリルの化学性質は、現代用いられているインクにとって非常に重要である(6J.T. Kunjappu. ‘The Emergence of Polyacrylates in Ink Chemistry,’ Ink World, February, 1999, p.40)。もっとも単純なアクリル化合物の構造は、下記の化学式で示されたアクリル酸である。
【0053】
【化1】

【0054】
アクリル部分にある2重結合は、電子と相互作用している間に開列する(開始)。そして、高分子量ポリマーを生成する連鎖を形成するその他のモノマーに作用するフリーラジカルを形成する(増殖)。上述したように、被覆に開始剤を残すことなく放射線はそれ自身がフリーラジカルを生成するので、ポリマー化を誘導する放射線は、外部開始材を必要としない。
【0055】
2−フェノキシエチルアクリル酸塩(2−phenoxyethyl acrylate)、及びイソオクチルアクリル酸塩(isooctyl acrylate)のような単純なアクリルから、ビスフェノールA エポキシアクリル酸塩(bisphenol A epoxy acrylate)及びポリエステル/ポリエステルアクリル酸塩(polyester/polyester acrylates)のようなプリポリマーの範囲の多様なアクリルモノマーを、EB硬化に利用することができる(R. Golden. J. Coating Technol., 69 (1997), p. 83)。この硬化技術により設計工程を複雑にするその他のインクによって要求される硬化システム及び溶媒の必要性のない所望の化学的及び物理的特性に焦点の当てられた「機能性のあるインク」の設計が可能になる。
【0056】
親水性機能を有するインクによって、たとえば、ポリアルコール、フィコール、ポリエチレン、アクリル酸化物誘導体、ビニルピロリドン、及びその他の架橋親水性ポリマーを幅広く選択することが可能になる。特に興味深いものは、有機修飾ポリシロキサンの架橋のある化学種である有機修飾シリコンアクリル酸塩である。一般的な疎水性インクは、イソオクチルアクリル酸塩、ドデシルアクリル酸塩、部分的にフッ化している炭素鎖を有するスチレン誘導体又はスチレンシステムのような疎水性機能を有する、モノマー、オリゴマー及びプレポリマーを含む。
【0057】
所要の導電性、親水性及び疎水性の被覆を全て有する基層及びカバー層の完成後、被分析物検査素子の触媒製剤及びキャリブレーション製剤は、所定の領域(6a、6a’)に設けられる。図3に示す検査素子の実施形態において、第1表面の検出領域(6a、6a、6a)は、酵素及び媒介物を含む触媒製剤により被覆される。一方、1つの検出領域(6c)は被覆されない。対応する検出領域(6a’)、(6a’)及び(6a’)は、キャリブレーション製剤により被覆される。例えば、(6a’)及び(6a’)のような検出領域の2つは、異なる濃度のキャリブレーション化合物を含むキャリブレーション製剤により被覆されている。一方、例えば、(6a’)のような第三の検出領域に被覆された製剤は、キャリブレーション化合物を含んでいない。また、検出領域(6c)は、バックグラウンドを評価するために被覆されていない。
【0058】
図4は、キャリブレーション製剤(19)により被覆されカバー層4上に設けられた試料分配システムの第2部分に形成された親水性層(6a’)ならびに対応する参照電極(8’)、及び酵素−媒介物−層(18)により被覆され、基層(2)上に設けられた試料分配システムの第1部分の親水性層(6a)ならびに作用電極(8)を示す試料分配システムの検出領域を示す断面図である。試料液体(20)は、親水性層(6a)及び(6a’)によって形成された高表面エネルギー領域を濡ら試料分配システム、疎水性絶縁層(14、14’)によって形成された試料分配システム内に閉じ込められる。
【0059】
触媒製剤及びキャリブレーション製剤の蒸着の精度が非常に重要であり、被分析物検査システムの性能を規定するものである。両方の製剤は高い精密性のあるインクジェットシステム又は圧電印字ヘッドを用いて設けられていることが好ましい。インクは、水及び触媒化合物又はキャリブレーション化合物を主に含んでおり、温度が少し上昇することにより乾燥する。これらインクの主たる特徴は、試料を添加した後に、被分析物検査システムの疎水性領域の性能を落とすことなく化学組成を迅速に再構成することである。
【0060】
本発明のための適切な触媒製剤は、非反応性基剤、電子移動成分(媒介物)、及び酵素又はプロモーターとしての酵素連合(enzyme combination)に基づいている。当該非反応性基剤は、インクジェット印刷、酵素安定化、及び検出領域の表面への固定に適している必要があるキャリアーを備える。100mL中の典型的な組成を下記に記す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
触媒製剤は、検出される被分析物に依存する。グルコースを定量する場合は、グルコースオキシダーゼ(GOD)及び一般的な媒介物としてヘキサシアノ鉄酸塩カリウム(III)を含んでいてもよい。選択された媒介物は、その他の添加物(application)、又は仮に異なる酵素及び被分析物が検査に用いられた場合に、変更されてよい。頻繁に用いられる媒介物システムの例として、ヘキサシアノ鉄酸塩カリウム(III)(potassium hexacyanoferrate(III))、テトラシアノ−p−キノリンージーメタン(TCNQ、tetracyano-p-quinone-di-methane)、メチルビオロゲン(MV2+、methylviologen)、テトラチアフルバレン(TTF、tetrathiafulavlene)、N−メチルフェンジニウム(NMP+、N-methylphenzinium)、1、1’−ジメチルフェロセン、ルテニウム(III)ヘキサアミン(ruthenium(III)hexamine)、オスミウムビビリジン(osmium bipyridine)、フェロセン(ferrocene)及びそれらの誘導体をあげることができる。
【0064】
酵素及び媒介物が異なることにより、非反応性基剤のpHを調節することも必要である。その代わりのものとして、ヘキサシアノ鉄酸塩カリウム(III)を、GODの代わりにグルコース脱水素酵素ピロール−キノリンーキノン(GDH−PQQ)に用いてもよい。グルコース脱水素酵素(GDH)酵素の検出器は、酸素に対する感度は低下しているが、ガラクトース及びマルトースに対する高い交差反応を有するGOD酵素の検出器と類似した性能を示す。
【0065】
キャリブレーション製剤に適したインクは、所要の濃度でキャリブレーション化合物を有する非反応性基剤を含んでいる。第二表面(4a)の所定の検出領域(6a)に被覆されているキャリブレーション製剤(19)に含まれているキャリブレーション化合物は、被分析物と理想的又は実質的に同一であり、生理的液体における被分析物としての触媒製剤において同じ化学反応を誘発できることが好ましい。その結果、生理的液体の興味のある被分析物がグルコースの場合、キャリブレーション化合物もグルコースであることが好ましい。
【0066】
印刷工程及び被覆工程が全て完了した後、2つの方法で品物は組み立てられる。一つ目では、3つの分離層が整列される。すなわち、中心層は基層上に配置され、カバー層の装着によりラミネーション加工が完了する。基層及びカバー層のx、yの厳重な位置合わせは、被分析物検査素子の機能に関する非常に重要な作業である、もしこの位置合わせが一定のレベルに達しない場合は、試料分配システムは適切に機能しない。位置合わせの許容範囲は、優れた性能を達成するためには、親水性経路の幅の+/−5%以内であるべきである。50〜80μmの好ましい厚みの両面接着テープである中心層の装着は、材料に対する親水性経路の大きさに比べて比較的大きい切れ目を有しているのでより要求が低い。
【0067】
その代わりのものとして、特別な印刷工程が用いられ、50〜80μmのインク糊が備えられた中心層が実現する。電子ビーム硬化インクが、硬化工程の間のインクの縮小が最も小さいので、当該中心層の構築に最も好ましい。高品質な接着テープの厚みの多様性と比較して、当該印刷工程は、中心層の厚みにより高い多様性を生じる結果となる。
【0068】
位置合わせは、1分間に10メートルを上限として基板が数メートル進行する連続性生産ラインを特に必要とする。基板の拡大及びウェブ張力によってx方向(ウェブの方向)における位置合わせが、ウェブの移動に垂直な方向であるy方向よりも困難になる。図5は、この問題に対する解決策を示す図である。ここでは、カバー層及び基層は、一つの基板上に印刷されている。それゆえ、所定の検出領域及び試料分配システムの流路の位置は、互いに相対的に固定されており、材料の拡大及びウェブ張力の影響をうけない。
【0069】
図5aに示すように、連続したウェブの製造工程の第1の製造段階では、試料分配システムの親水性模様(6a、6a’)と電気化学的検出手段の作用電極(8)及び参照電極(8’)との模様は、基層及びカバー層を形成する一つのウェブ基板44に印刷される。図5aに示すように、試料分配システム(6a、6a’)は、ウェブ基板(44)に対して互いに対向するように配置され、試料添加領域が後に形成される領域に連結される。
【0070】
他の実施形態においては、第1表面及び第2表面の1つに、試料分配システムを作成する親水性模様(6)/疎水性模様(14)が備えられている。好ましい実施形態においては、第1表面及び第2表面のどちらか1つに、試料分配システムを作成する親水性模様(6)/疎水性模様(14)が備えられ、対応する表面には疎水性領域に囲まれている均一な模様の親水性画素が備えられていることが好ましい。その結果、第1表面の親水性模様(6)及び疎水性模様(14)と、第2表面の同等の親水性模様(6’)及び疎水性模様(14’)との位置を合わせを行う必要性をなくし、準疎水性特性及び準親水性特性(両親媒性特性)を有する表面を作成することができる。そのような両親媒性表面の性質は、親水性画素の幾何学模様及び親水性領域と疎水性領域との間の総合比によって簡単に設計される。開示されている発明において、上記両親媒性特性、すなわち、親水性領域と疎水性領域との間のそれぞれの比は、仮に反対側の表面が親水性特性を備えた場合に限り、試料液体は、親水性画素から親水性画素まで進行するように設計される。仮に反対側の表面に疎水性特性が備えられていれば、被分析物検査素子の毛細管の隙間にある液体の移動が止まる。このメカニズムにより、上述した方法によって第1表面及び第2表面に備えられた試料分配システムの対応する模様の正確な位置あわせを厳密に要求することなく機能性のある被分析物検査素子を形成することができる。しかしながら、第1表面及び第2表面の両方には、高表面エネルギー及び低表面エネルギーの同等の模様が備えられており、試料分配システムの親水性経路の試料液体の迅速で正確な分配を実現することができる。
【0071】
点線(46)は、被分析物検査ストリップを今後分離するための切り取り線を示し、点線(45)は、ウェブ基板の将来の折り目を示す。
【0072】
作用電極及び参照電極の模様を印刷した後、試料分配システム及び疎水性絶縁層の親水性模様と、試料分配システムの検出領域(6a、6a’)とは、触媒製剤及びキャリブレーション製剤により被覆される。例えば被分析物検査素子の第1表面を表す、ウェブ基板(44)の低部の検出領域(6a)は酵素及び媒介物を含む触媒製剤により被覆される。被分析物検査素子の第2表面を表す、ウェブ基板(44)の上部の検出領域(6a’)は、異なるレベルのキャリブレーション化合物を含むキャリブレーション製剤により被覆される。キャリブレーション製剤の1つ(。例えば、(6’a)の位置)は、キャリブレーション化合物を含まず、検出工程において生理的液体の読み取りを伝える。
【0073】
図5bに示されているように、連続製造のスキーマ(schema)のための製造工程における許容範囲を十分与えられるように、大きな切れ目(5)が中心層に備えられているので、基層(2)及びカバー層間の空間を提供する中心層の位置合わせをする作業の重要性は低下する。中心層(47)が印刷されている場合、その印刷は被分析物検査素子のフレキソ印刷による印刷を行っている間、最後の工程として適用される。印刷された中心層(47)に基層及びカバー層を結合させる様々な結合方法を利用することができる。熱融着、レーザー結合、又は超音波溶接が最も好ましい。その代わりのものとして、両面接着テープを形成されている追加層(47)を追加して、当該追加層(47)が例えば基層(2)の表面(2a)等の1つの表面をラミネートされてもよい。
【0074】
基層及びカバー層の第1表面及び第2表面の間の距離を規定する中心層(47)には、試料分配システム6及び電極の接点(11、11’)を露出する切れ目(5)、(12)及び(13)が備えられており、最終組み立て工程の後被分析物検査素子において試料分配システムのための空洞を作成する。
【0075】
図5c及び図5dは、被分析物検査素子の最終組み立てを示す図である。図5cに示すように例えば折り畳みアイロン(folding iron)を用いることと、図5dに示すようにサンドイッチ形のウェブ基板を作成することにより、ウェブ基板の低部にある折り目45に沿ってウェブ基板44の上半分を折り畳むことにより被分析物検査素子を組み立てる。その後、輪転機を用いることによって中心層、基層及びカバー層の間を密接に結合させることができる。
【0076】
最終的に、ラミネートされたウェブは、穴を開けるか又は切断されて製品の所望の形状になる。一方、線(46)は、分離工程の前のウェブ上に最終的な被分析物検査ストリップの1例となる形状を投影している。図5に示すように調製法を用いて、基板の上部は、ウェブのx方向における位置あわせを緩める危険性なく下部に折り畳まれ、単一のシート工程と比較して試料分配システムを形成するための第1表面及び第2表面の正確な位置あわせのより簡便な方法を提供する。
【0077】
好ましい実施形態の被分析物検査素子に含まれる試料分配システムに必要な容量としては、約0.5μL〜1.0μLであり、1検出領域当たり約100nL〜150nLである。しかし、上記試料分配システムの容量は、中心層の厚みと同様に備えられる所定の検出領域の数、及び様々な設計を伴って変化することは当業者にとって明白である。
【0078】
図6は、異なる試料分配システムの様々な模様を示す図である。図6にあるセルAIは、1次キャリブレーションに適した単純な試料分配システムの場合である。図6のカラムAは、バックグラウンド補正のない試料分配システムの主な図を示している。また、カラムBは、バックグラウンド補正のある試料分配システムの図を示している。カラムCは、隣接する図を用いてもたらされる多項キャリブレーション方程式の最も高い次数を示している。カラム中のnは、各表面上の所定の検出領域の最小の数と、必要とされるそれぞれの測定数とを示している。各図の文字は、バックグラウンド補正(c)、試料(1)、及びキャリブレーション化合物の量を増加と関連するキャリブレーション領域(2、3、4、5、6)を示している。最も単純なキャリブレーションは、測定値と被分析物の濃度との関係が正確に比例している1次方程式で表される。一般的な被分析物検査素子のキャリブレーションは、異なるキャリブレーション領域に提供されている試料液体に知られているキャリブレーション化合物を添加することによる標準添加法を用いた後、一次キャリブレーション方程式又は、単調な非一次キャリブレーション方程式の計算を行うことによってなされる。
【0079】
図7は、場合Iについてのより詳細な説明である。キャリブレーションのモデル又は次数(カラムC)は、選択された被分析物及び備えられている化学検出に最適なものである必要がある、それゆえ4次モデルに従う化学反応に1次キャリブレーションモデルを適用することや、その反対を行う可能性がなくなる。1次キャリブレーションのために5つの標準を添加するために設計された被分析物検査素子を用いることは従前通り可能であるが、標準の量が多くなると、二つの標準に基づく1次キャリブレーションと比較して、相関係数、標準偏差、及び標準誤差の観点からより重要な意義を有する統計的検証とより正確な測定とを行うことが可能になる。
【0080】
さらに試料の測定及び標準の測定を繰り返すことも可能である。それゆえ列IVに示した実施形態においては生理的液体の1つの特定の試料のために2つの独立した一次キャリブレーションを実施することが可能である。
【0081】
その代わりのものとして、仮に選択された化学検出が妨害問題を発生せず、反応遊離体及びいつの反応の生成物が他の反応に参加しないのであれば、同じセットの所定の検出領域を有する多被分析物システムを実現することが可能である。さらに酸化還元活性反応生成物を2つの異なる電極に独立に定量することができる。この検出模式図では、第2生成物を観察するためのより高いポテンシャルに測定機器が切り替わる前に、低いポテンシャルで反応する生成物を最初に定量する。このように、分析は、上述した場合と比較してより時間を必要とする連続した方法で実行されなければならない。
【0082】
nは2よりも大きい整数であり、被分析物検査素子がn個の定量でなされる場合は、第1表面(2a)にあるn個の検出領域(6a)の全ては、触媒製剤(酵素−媒介物−層18)により被覆されている。一方、第2表面(4a)にあるn個の所定の検出領域(6a’)は、mは少なくとも1よりも大きい整数でかつn>mであり、キャリブレーション化合物又は被分析物及びm個のブランク部位で被覆されている。換言すれば、試料分配システムのn個の検出領域のうちの少なくとも1つは、キャリブレーション化合物を含んでいない。
【0083】
生理的液体が試料添加領域に添加され、毛細管現象により所定の検出領域に分配された後、被分析物、当該被分析物と同一であってもよいキャリブレーション化合物、酵素及び媒介物の混合物を形成する第2表面(4a)のn個の所定の検出領域(6a’)上にあるn個のキャリブレーション製剤と同様に第1表面(2a)のn個の所定の検出領域(6a)にある触媒製剤を分解する。これらのn個の高表面エネルギーの混合物を用いて、電気化学的に検出できる化学種の濃度は、異なるキャリブレーション化合物のレベルに加えて被分析物の未知のレベルに比例して変化する。それゆえ、電気化学的検出手段によってn個の結果を定量することができ、被分析物濃度を算出することができる。所定の検出領域に設けられている触媒製剤及びキャリブレーション製剤は、生理的液体又はその他の水溶性溶液に迅速に溶けることが好ましい。互いに対向した検出領域に設けられている両方の製剤は成分の迅速な拡散を促進するために接近した位置にあるので、検出領域に含まれている全ての化学成分を迅速に反応させることができ、被分析物の濃度の電気化学的定量を迅速に処理することができる。
【0084】
試料分配システムには2より多い検出領域が配置され、少なくとも2つ以上の検出領域には知られているがレベルの異なるキャリブレーション化合物が含まれているので、処理工程において被分析物検査素子の生理的液体を用いて実行されたn個の測定値から被分析物の濃度を算出することが可能である。
【0085】
図7は、分析化学の様々な分野において用いられた公知のキャリブレーション技術であり、初めに電気化学的検出のための乾燥試薬検査ストリップに用いられ、今日では広く広まっている(integrate)、線形標準添加法による試料にある被分析物の濃度の典型的な算出を示す図である。この例では、試料分配システムは、3つの被分析物検出領域を含み、2つは異なる所定のキャリブレーション化合物により被覆されている。生理的液体を試料分配システムに添加した後、触媒反応が被分析物検出領域で起こり、電気化学的検出手段により、第1レベルのキャリブレーション化合物を有する検出領域に位置した試料によって生じた電流等の第1電気化学的信号(21a)を測定する。この検出領域の読み出し値は、初めのキャリブレーション化合物と被分析物の濃度とを合わせた濃度に比例する信号を表す。平行して、第2電気化学的信号(21b)が、第2キャリブレーション化合物と被分析物の濃度とを合わせた濃度に比例する信号を表す第2レベルのキャリブレーション化合物を有する検出領域に位置した試料によって生じる。さらに、第3電気化学的信号(21c)が、未知の被分析物濃度の試料のみ含まれている検出領域において測定される。
【0086】
電気化学的信号と被分析物の濃度との間には線形相関があるので、被分析物検査システムの処理手段は、上記例におけるキャリブレーション方程式y=c+cxに関する係数測定の線形回帰分析によって算出することができる。生理的液体試料の被分析物の濃度は前記キャリブレーション方程式の零点(y=0)(22)である。
【0087】
適用されうるキャリブレーション方程式は一般的には、下記の形式で表される。なお、y=f(電気化学測定の結果)、x=f(キャリブレーション化合物の濃度)、n(繰り返し測定又はバックグラウンド測定を除いた測定数)である。
【0088】
【数1】

【0089】
この多項方程式の形式は、図6に示されているnの値とともに、前記図の試料分配システムの様々な設計のための最も利用できるキャリブレーションモデルの構成要素を提供する。yとxの値は、検出手段によって生じた生データの予備処理をするための機能によって算出されたデータを表してもよい。
【0090】
本発明において、図6の試料分配システムの設計は限定されないということは議論から明らかである。当業者は、提供された情報とともに6よい大きいnを有するシステムを設計することが可能である。
【0091】
線形及び非線形の標準物質添加法についての詳細は、Frankら(Anal.Chem., Vol.50, No.9, August 1978)及びSaxbergら(Anal.Chem., Vol.51, No.7, June 1979)により紹介されている。
【0092】
図3に記載の本発明の被分析物検査素子の好ましい実施形態は、触媒化合物を含みキャリブレーション化合物を含まない1つの検出領域(それぞれ(6a)及び(6’a))、触媒化合物と第1の濃度のキャリブレーション化合物とを含む1つの検出領域(それぞれ(6a)及び(6’a))、触媒化合物と第2の濃度のキャリブレーション化合物とを含む(それぞれ(6a)及び(6’a))1つの検出領域、及びバックグラウンド吸収のための1つの検出領域(それぞれ(6c)及び(6’c))を備えるように設計されている。キャリブレーション化合物と触媒化合物とのいずれをも含まない最後の検出領域により、試料のバックグラウンド吸収を測定し、キャリブレーション処理中にそれを考慮することを可能とする。
【0093】
図8は、算出した結果及びキャリブレーションデータのための、前もってプログラムされた検証方法を示すものであり、有効かつ正しい測定のための「検証ウインドウ」(23b)を規定することにより測定結果の有効性が検証される。この方法により、被分析物検査システムは全てのデータを有効かつ有益な濃度範囲、例えば30〜600mg/dlグルコースの範囲に、並びに、電気化学信号を電極の材質、媒介物、電位、及び電極領域に依存して典型的に0と5μAの間の有効な範囲に制限することができる。同様に、処理手段は傾き及び切片、又はより一般的な係数であるc〜c(n−1)を有効な範囲に制限することができ、これは非線形の多項式に特に有益である。検証ウインドウ(23b)の境界線内の検量線(23a)に一致する有効な測定の集団は図8の(24a)〜(24c)に示されている。
【0094】
統計的評価及び線形回帰分析による結果の検証は、なおさら有効である。キャリブレーションの質は、相関係数r及び信頼区間により判断でき、それゆえ、もし相関係数が予めプログラムされた閾値を割り込めば、被分析物検査システムは測定結果の表示を拒絶され得る。あるいは、処理手段は算出された信頼区間に基づく結果の許容又は濃度範囲を計算できる。これらの方法は、患者に提供される結果の質を越える高い制御を可能にするものであり、今日では、洗練された高価な検査室の方法及び装置からのみ使用され、知られている。患者/使用者にとって、特に入院中という場面では、測定時の品質保証要求権はなおさら重要である。
【0095】
図9は被分析物検査システムへの被分析物検査ストリップの挿入を示している。好ましい実施形態において、被分析物検査ストリップは、試料添加領域(9)がある被分析物検査ストリップの一方の主たる側面に位置する外側かつ凹面の延長部を持つ。この特徴は、図10に示されるように患者の腕や指からの毛細血液試料の添加を容易にさせる。
【0096】
本発明のもう一つの実施形態では、図11に示されるように、複数の被分析物検査素子が、外側に面する試料添加領域(9)を備えた被分析物検査ディスク(29)を形成するために中心点を取り巻いて対称に配置されている。図11aに示した当該被分析物検査ディスク(29)は、9個の本発明の被分析物検査素子(1)を含有する。図11bの分解図に示したように、被分析物検査ディスク(29)は、最上層(30)及び底層(31)から構成されるディスクカバー又はスリーブにより覆われている。
【0097】
スリーブの最上層(30)及び底層(31)の内側には、被分析物検査素子が使用されカートリッジシステム内部に移送された後に過剰な血液を捕らえるための吸湿層(32)が設けられている。ディスクカバーの最上層(30)及び底層(31)は、お互いに合同に配置され、使用中の被分析物検査素子を露出するため、及び、使用者がディスクを正しい向きに挿入することを補助するための光窓25を形成しているという、画期的なものである。光窓(25)に隣接したディスクカバー最上層(30)及びディスクカバー底層(31)の外周領域には、ディスクの被分析物検査素子の試料添加領域(9)を露出させるための2つの凹部(26)がある。被分析物検査素子の作用電極システムへの接点(28a)及び接点(28a)と反対側の部位に付与される参照電極システムへの接点(28’a)(図示せず)は、計測器にそれらを露出するためディスクの内側端に並べられる。好ましくは、検査ディスク(29)には、さらに登録ノッチ(33)が付与され、これは当該ディスク(29)の内側端に同様に配置されてもよい。測定手順の間、現時点で被分析物定量用に使用されている被分析物検査素子のみが、図11cに示されるように、凹部(26)により露出される。被分析物検査ディスク(29)は、新しい被分析物検査素子を必要な位置に持ってくるために、その中心点の周囲を回転させることができる。
【0098】
被分析物検査ディスクにより、比較的狭い面積に複数の被分析物検査素子を配置することができる。被分析物検査ストリップに含まれる同じ数の被分析物検査素子はもっと広い面積を必要とし、それゆえ、図12に示した、被分析物検査ディスクと被分析物検査ストリップとのサイズの比較のように、はるかに実用的である。被分析物検査ディスクの単位面積(34)は9個の被分析物検査素子を含むが、同一の面積(35)は、3個の被分析物検査ストリップに組み込まれた、たった3個の被分析物検査素子を収容するに過ぎない。しかしながら、検査ストリップのサイズを小さくすることは、より小さなストリップの扱いが、患者にとって難しくなり、より非実用的になるという問題に起因して、得策ではない。
【0099】
図13a及び図13bは、計測器に含まれる被分析物検査ディスクを示す図であり、試料添加領域(9)も、計測器筺体(36)から突出している。
【0100】
被分析物検査ストリップだけでなく被分析物検査ディスクに対しても、測定機器(被分析物検査システム)に、図14に示すように左側取り扱い形態及び右側取り扱い形態を適用することが可能である。図14aによれば、左側取り扱い形態が望まれているときは、被分析物検査ストリップ7は下側から計測器に挿入され、生理的液体を受けるための試料添加領域9は、上記計測器筺体から突出している。測定が完了した後、被分析物の濃度は、被分析物検査システム表示部(37)に表示される。同様に、図14bによれば、右側取り扱い形態は、表示部において表示された内容が180°回転することにより逆の操作形態に上記被分析物検査システムの表示部(37)を適用することにより実現される。
【0101】
図15は、コンパクトな態様をしている被分析物検査素子を配置するための別の可能性を示す図である。本実施形態においては、上記被分析物検査素子は、試料添加領域(9)から外側に延長した被分析物検査弾帯(43)を形成するために並んで配置されている。上記弾帯において、2つの被分析物検査素子間の領域には、打ち抜き穴又は破断線(42)が設けられており、被分析物検査弾帯(43)から単一の被分析物検査素子(40)を分離することができる。打ち抜き穴又は破断線(42)に沿って互い違いに折り畳まれることにより、小さい容器に簡便に格納することができ、被分析物検査弾帯(43)にある単一の被分析物検査素子(40)をより簡便に分配することができる、被分析物検査機器弾帯堆積物(stack)(41)を形成することができる。
【0102】
本発明の被分析物検査素子はディスク又はストリップの形式で生産され、印刷、金型打ち抜き、及び積層の技術における普通の技量を用いる工程により簡単に作製できる。被分析物検査素子の設計は、簡単かつ費用効率が高く、好ましくは連続性の必要がない、製造工程を可能とする。
【0103】
組み込まれたキャリブレーション手順及び検証方法により、本発明の被分析物検査システムは、異なる血液型やヘマトクリットレベルなどの内因性の妨害因子を補正することにより、また同様に、ビタミンCや医薬品による栄養補給のような外因性の妨害因子を補正することにより、信頼性のある結果を提供する。さもなければ、このような妨害因子は測定結果に影響を及ぼし、変えてしまうであろう。被分析物検査システムのキャリブレーションは測定と並行して行われるので、実際の測定時の温度のような異なる環境要因は、定量された結果の正確性に対して少しも重要でない。さらに、中心層の厚みのばらつきのような製造変動は、酵素やメイディエーターのような化学的又は生化学的物質の分解と同様に、組み込まれたキャリブレーション手順により補正される。酵素活性の減少は、内部のキャリブレーションにより検出可能で、製品保存期限の延長をもたらす程度に補正され得る。これは、グルコース酸化酵素より分解しやすい生体触媒を必要とする診断システムに、特に有利である。
【0104】
本発明は、製造工程に過剰な要求がない乾燥試薬検査素子の中に、電気化学的検出手段を有するキャリブレーション及び品質管理手段を組み込んでいるが、試料分析時のストリップ性能の密接な制御を組み合わせたキャリブレーション及び品質管理手順において使用者の介入の必要性を排除した被分析物検査システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】検査ストリップの形状で提供された本発明の被分析物検査素子の1実施形態の斜視図である。
【図2】図1の素子の異なる層を別々に示した分解斜視図である。
【図3】一連の基層及びカバー層上の異なる層の一連のコーティングを示す図である。
【図4】被分析物検査素子の試料分配システムの検出領域の断面図である。
【図5】a〜dはストリップ形状の被分析物検査素子の連続的なウエブ製造工程のステップを示す図である。
【図6】異なる模様の経路及び異なるキャリブレーション方法に適合した検出領域を有する試料分配システムの異なる実施形態を示す図である。
【図7】標準物質添加法を用いた試料被分析物濃度の計算を示すグラフである。
【図8】算出した結果及びキャリブレーションデータのための検証方法を示すグラフである。
【図9】計測器を有する、本発明の検査ストリップの典型的な応用例を示す図である。
【図10】挿入された被分析物検査ストリップを備えた被分析物検査システムが患者の指先から毛細血液の試料を受け取る準備ができていることを示す図である。
【図11】被分析物検査ディスクの構成を示す図である。
【図12】被分析物検査ストリップと比較した被分析物検査ディスクを示す図である。
【図13】組み込まれた被分析物検査ディスクを有する被分析物検査システムを示す図である。
【図14】左手及び右手で取り扱う様式の被分析物検査ストリップを有する被分析物検査システムを示す図である。
【図15】被分析物検査弾帯及び積み重ねを構築するための折り畳まれた弾帯を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の距離で互いに対向した第1の表面(2a)及び第2の表面(4a)を持ち、
前記2つの表面には、ほぼ合同に整列された、高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域を形成する、実質的に等しい模様が付与され、
高表面エネルギー領域(6、6’)は、少なくとも2つの検出領域(6a、6’a)を有する試料分配システムを作り、該2つの検出領域(6a、6’a)は、第1の表面(2a)の検出領域(6a)には作用電極(8a)が付与され、第2の表面(4a)の検出領域(6’a)には電気化学的検出手段の対応する参照電極(8’a)が付与されていることにより特徴付けられる、
生理的又は水性の試料液体中の少なくとも1つの被分析物濃度を定量するための被分析物検査素子。
【請求項2】
第1及び第2表面間の距離は、第1及び第2表面(2a、4a)を持つ基層(2)及びカバー層(4)の間に配置される中心層(3)により決定される、請求項1に記載の被分析物検査素子。
【請求項3】
中心層(3)は、基層及びカバー層(2、4)の第1及び第2表面(2a、4a)と共に窪んだ空洞を形成するための切れ目を有し、前記切れ目は、第1及び第2表面(2a、4a)上の高表面エネルギー領域(6、6’)により形成された試料分配システムより大きい、請求項2に記載の被分析物検査素子。
【請求項4】
前記高表面エネルギー領域(6、6’)は、第1及び第2表面(2a、4a)上に適用された水に不溶な親水性組成物により作られている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被分析物検査素子。
【請求項5】
前記第1及び第2表面(2a、4a)上の高表面エネルギー領域(6、6’)は、低表面エネルギーを持つ領域を与える疎水性の絶縁層(14、14’)により制限されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被分析物検査素子。
【請求項6】
前記第1表面(2a)の作用電極(8a)を覆っているn個の所定の検出領域(6a)は、生理的液体中の被分析物の電気化学的検出を促進する触媒製剤で被覆され、及び
前記第2表面(4a)の参照電極(8’a)を覆っているn個の所定の検出領域(6’a)は、m個のブランク製剤及び異なるレベルのキャリブレーション化合物を有するn−m個の製剤で構成されているn個のキャリブレーション製剤で被覆され、ここで、nは2より大きい整数であり、mは1又は1より大きい整数であり、かつn>mである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被分析物検査素子。
【請求項7】
さらに、検出領域(6c)は、触媒作用の化合物及びキャリブレーション化合物のどちらも含まず、バックグラウンド信号の測定を可能としている、請求項6に記載の被分析物検査素子。
【請求項8】
第2表面(4a)のn−m個の所定の検出領域(6’a)上に被覆されたキャリブレーション製剤に含まれる前記キャリブレーション化合物は、被分析物と同一、又は、実質的に等しく、生理的液体試料中の被分析物のように、触媒製剤において同じ化学反応を誘発し得る、請求項6に記載の被分析物検査素子。
【請求項9】
キャリブレーション化合物がグルコースである、請求項8に記載の被分析物検査素子。
【請求項10】
触媒製剤は、反応性の成分として、被分析物、及び/又は補酵素、及び電極の表面で電気化学的信号を生成する媒介物の触媒反応若しくは非触媒反応を起こすプロモーターを含む、請求項6に記載の被分析物検査素子。
【請求項11】
プロモーターは、脱水素酵素、リン酸化酵素、酸化酵素、脱リン酸酵素、還元酵素及び/又は転移酵素からなる群より選択された酵素である、請求項10に記載の被分析物検査素子。
【請求項12】
プロモーターは、グルコースに対して特異的な酵素である、請求項11に記載の被分析物検査素子。
【請求項13】
被分析物濃度を定量するための媒介物は、ヘキサシアノ鉄酸塩カリウム(III)、テトラシアノ−p−キノリンージーメタン(TCNQ)、メチルビオロゲン(MV2)、テトラチアフルバレン(TTF)、N−メチルフェンジニウム(NMP)、ルテニウム(III)ヘキサアミン、オスミウムビビリジン、フェロセン、又はこれらの誘導体からなる群より選択される、請求項10に記載の被分析物検査素子。
【請求項14】
ストリップの形状で提供される請求項1〜13のいずれか1項に記載の被分析物検査素子であって、試料添加領域(9)は、末端の凸面及び当該被分析物検査ストリップの片側の外側延長部(10)に位置している、被分析物検査素子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の被分析物検査素子を複数含む被分析物検査配列であって、外側に面する試料添加領域(9)を備えた被分析物検査ディスク(29)を形成するために中心点を取り巻いて対称に複数の被分析物検査素子が配置された、被分析物検査配列。
【請求項16】
請求項1〜14の少なくともいずれか1項に記載の被分析物検査素子を複数含む被分析物検査配列であって、試料添加領域(9)を形成する外側延長部を備えた被分析物検査弾帯(43)を形成するために直線状に複数の被分析物検査素子が配置された、被分析物検査配列。
【請求項17】
以下の工程を包含する、被分析物検査素子の作製方法。
第1表面(2a)を持つ第1層(2)上に作用電極(8)の模様を付与する工程、
第2表面(4a)を持つ第2層(4)上に参照電極(8’)の対応する模様を付与する工程、
第1表面(2a)上に高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域を生成する工程、
第2表面(4a)上に高表面エネルギー領域及び低表面エネルギー領域の対応する模様を生成する工程、ここで、高表面エネルギー領域(6、6’)はn個の所望の検出領域(6a、6’a)を備える親水性試料分配システムを形成し、nは2より大きい整数であり、作用及び参照電極(8、8’)は、親水性試料分配システムのn個の所望の検出領域(6a、6’a)の底部に位置する、
第1表面のn個の検出領域(6a)上に触媒製剤を被覆する工程、ここで、触媒製剤は電気化学的検出手段を用いる生理的液体試料中の被分析物濃度の検出を促進する、
第2表面のn個の検出領域(6’a)上にn個のキャリブレーション製剤を被覆する工程、ここで、n個のキャリブレーション製剤はm個のブランク製剤及び異なるレベルのキャリブレーション化合物を有するn−m個の製剤で構成され、mは少なくとも1かつn>mの整数であり、被分析物と同一、又は、実質的に等しく、生理的液体試料中の被分析物のように、触媒製剤において同じ化学反応を誘発し得る、
第1及び第2層(2、4)の第1及び第2表面(2a、4a)上の高表面エネルギー領域(6、6’)により形成された試料分配システムのための空洞を提供する切れ目を有する中心層(3)の対向する部位に、第1及び第2表面の層を付与する工程
【請求項18】
前記高表面エネルギー領域(6、6’)は、第1及び第2表面(2a、4a)上に水に不溶な親水性組成物を適用することにより作られている、請求項17に記載の被分析物検査素子の作製方法。
【請求項19】
前記低表面エネルギー領域は、高表面エネルギー領域(6、6’)を取り囲む電気的絶縁層(14、14’)を形成している第1及び第2表面(2a、4a)上に疎水性組成物を適用することにより作られている、請求項17及び18のいずれか1項に記載の被分析物検査素子の作製方法。
【請求項20】
親水性及び/又は疎水性組成物は、フレキソ印刷、リトグラフ、グラビア印刷、固体インクコーティング法、又はインクジェット印刷の手段により第1及び第2表面上にプリントされている、請求項18及び19のいずれか1項に記載の被分析物検査素子の作製方法。
【請求項21】
触媒及び/又はキャリブレーション組成物は、第1及び第2表面の検出領域(6a、6’a)にインクジェット印刷又はマイクロディスペンシングによりコーティングされている、請求項17〜20のいずれか1項に記載の被分析物検査素子の作製方法。
【請求項22】
基層(2)及びカバー層(4)は1つの可撓性基材から形成され、設定された検出領域(6’a、6a)を備えた試料分配システムを形成する親水性の模様(6、6’)、並びに前記第1表面(2a)及び第2表面(4a)の対応する作用及び参照電極(8、8’)がほぼ合同になるよう整列及び登録される態様で中心層(3)を取り囲むために、長軸方向の中央の折れ目(45)に沿って折り畳まれる、請求項17〜21のいずれか1項に記載の被分析物検査素子の作製方法。
【請求項23】
以下を有する生理的又は水性の試料液体中の被分析物濃度を定量するための被分析物検査システム。
請求項1〜16のいずれか1項に記載の被分析物検査素子又は被分析物検査配列、ここで、第1表面(2a)のn個設定された検出領域(6a)は生理的液体中の被分析物の検出を促進する触媒製剤でコーティングされており、第2表面(4a)のn個設定された検出領域(6’a)はm個のブランク製剤及び異なるレベルのキャリブレーション化合物を有するn−m個の製剤で構成されたn個のキャリブレーション製剤でコーティングされており、nは2より大きい整数であり、mは1又は1より大きい整数であり、かつn>mである、
2n個設定された検出領域に設けられ、2n個設定された検出領域からn個の結果が得られる、生理的試料の電気化学的信号を検出するための電気化学的検出手段、
n個の測定値から利用できる多項のキャリブレーション式の全てのキャリブレーション係数を以下の式に従って計算するための処理手段、
【数1】

及び、計算されたキャリブレーション式のキャリブレーション係数の質を認証するための1つの回帰係数
【請求項24】
生理的又は水性の試料液体中の少なくとも1つの被分析物濃度を定量するための方法であって、以下を包含する方法。
検出及び処理手段に被分析物検査素子を連結する、
所定の距離で互いに対向した第1の表面(2a)及び第2の表面(4a)を持つ被分析物検査素子に生理的試料を添加する、ここで、前記2つの表面は、各々に作用電極(8a)が被せられている少なくとも2つの検出領域(6a)、及び各々に参照電極(8’a)が被せられている少なくとも2つの検出領域(6’a)を備えた試料分配システムを作るためにほぼ合同に整列された、高表面エネルギーの領域を形成する、実質的に等しい模様(6、6’)を与える、
異なる検出領域で生成される信号を検出する、
生理的試料中の被分析物の総量を定量するための信号を関連付ける
【請求項25】
所定の距離で互いに対向した第1の表面及び第2の表面を持ち、
第1及び第2の表面の1つには親水性/疎水性の模様が付与され、対応する表面には疎水性領域に取り囲まれた親水性画素の同構造の模様が付与され、そのため半親水性及び半疎水性の特徴を持つ表面を作り、当該親水性及び半親水性領域は少なくとも2つの検出領域を備えた試料分配システムを作り、第1表面の検出領域には作用電極が与えられ、第2表面の検出領域には電気化学的検出手段の対応する参照電極(8’a)が与えられる、
生理的又は水性の試料液体中の少なくとも1つの被分析物濃度を定量するための被分析物検査素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−509406(P2008−509406A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525175(P2007−525175)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009113
【国際公開番号】WO2006/015615
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507047517)エゴメディカル テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】