説明

生産指示システム

【課題】複数の生産ラインにより生産を行うときに、製品の生産能力が低下することを防ぎ、生産ラインの能力を最大限に活用できる生産指示システムを提供すること。
【解決手段】生産計画に基づいて複数の生産ラインにより生産を行うときに、ある生産ラインにおいて生産する生産品を他の生産ラインに配分する生産指示システム1であって、各生産ラインにおける生産品の生産順序と生産タクトとが格納されたライン情報データベース21と、各生産ラインについて生産状況を検知する検知部11と、所定数の生産品のうち前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を、ライン情報データベース21に格納された情報に基づいて演算する配分数演算部32とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の生産ラインにより生産を行うときに用いる生産指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の生産ラインを有する生産工程において、生産ラインの能力を最大に活用すべく、生産計画を立案する方法が多く存在する。このような方法のひとつとして、共通ラインとこれに続く複数ラインとからなる生産ラインで生産するとき、共通ラインで流れてきた仕掛品を複数ラインのうち所定のラインで生産するように生産を指示する方法が提案されている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
ところで、複数の生産ラインを有する生産工程において製品を製造するときに、例えば、製品の各部品を個々の生産ラインでそれぞれ生産し、その後、生産された各部品を組み立てスペースで組み立てることにより、製品が生産されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−36996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような生産方式の場合、例えば、生産された各部品を仕分けスペースに一旦仮置きし、その後、組み立てスペースで組み立てることにより、製品が生産される。この場合、全ての部品が揃うまで組み立てスペースで製品として組み立てることができない。生産された各部品は一旦仕分けスペースに仮置きされるが、仕分けスペースの許容量には限界があり、例えば、各生産ラインでの生産スピードにずれが生じると仕分けスペースに仮置きできない生産済部品が存在することになる。よって、組み立て作業が一時中断したりラインを停止したりせざるを得なくなることで製品の生産能力が低下する虞があり、これでは生産ラインの能力を最大限に活用できているとはいえない。
【0006】
また、特許文献1に記載の方法では、共通ラインに流れてきた仕掛品を、共通ラインに続く複数ラインに分配することについては考慮されているものの、製品を複数ラインで生産した後のことまで考慮されているとは言えず、上記課題を解決することは困難である。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、複数の生産ラインにより生産を行うときに、製品の生産能力が低下することを防ぎ、生産ラインの能力を最大限に活用できる生産指示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、生産計画に基づいて複数の生産ラインにより生産を行うときに、ある生産ラインにおいて生産する生産品を他の生産ラインに配分する生産指示システムであって、各生産ラインにおける生産品の生産順序と生産タクトとが格納されたライン情報データベースと、各生産ラインについて生産状況を検知する検知部と、所定数の生産品のうち前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を、前記ライン情報データベースに格納された情報に基づいて演算する配分数演算部とを備える構成とする。
【0009】
また、前記配分数演算部は、前記ライン情報データベースに格納された情報に基づいて各生産ラインにおいて前記所定数の生産品を生産するために必要な生産タクトを生産順序に従って順列し、前記ある生産ラインについては、生産品の生産順序に従って生産タクトを積算し、前記他の生産ラインについては、生産品の生産順序の逆順に従って生産タクトを積算し、前記ある生産ラインと前記他の生産ラインとについて積算された生産タクトの差が最小となる生産順序に基づいて前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を演算することが好ましい。
【0010】
また、前記検知部が検知する情報に基づいて前記ある生産ラインと前記他の生産ラインとの進捗差が所定数に達したことを判断する判断部とをさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、前記検知部が検知する情報に基づいて前記進捗差が所定数となる時間を予め演算する到達時間演算部をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、前記配分数演算部は、前記判断部において前記進捗差が所定数であると判断したときに、所定数の生産品のうち前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を、前記ライン情報データベースに格納された情報に基づいて演算することが好ましい。
【0013】
また、前記生産ラインが2ラインであり各生産ラインにより各部品を生産することで複数の部品を有する製品を生産するときに、第1の生産ラインで生産する部品を第2の生産ラインにて生産するように配分する生産指示システムであって、前記判断部は、前記検知部が検知する情報に基づいて第1の生産ラインの生産済み品数と第2の生産ラインの生産済み品数との差分を判断し、前記配分数演算部は、前記差分が所定数に達したときに、第1の生産ラインにて生産する前記差分の部品のうち第2の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を演算することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生産優先順位判断システムは、生産状況が先行している生産ラインへ生産状況が遅延している生産ラインで生産予定の製品を配分する配分数を演算する配分数演算部を備えることで、生産ライン間での生産状況の進捗差を少なくすることができる。そのため、複数の生産ラインの生産能力が低下することを防止することができ、生産能力を最大限に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る生産指示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る生産指示システムを用いて行う一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る生産指示システムに備わるライン情報データベースに格納された生産計画の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る生産指示システムの処理過程におけるライン情報の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る生産指示システムを用いて行う一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、以下の各実施形態で用いられる生産指示システム1の構成を示すブロック図である。
【0018】
本発明の生産指示システム1は、生産状況を検知する検知部11と、生産ラインに関するライン情報データベース21と、生産指示情報を決定する生産指示部30と、所定の生産状況となる時間を予め演算する到達時間演算部41とを備える。また、生産指示部30は、生産の進捗状況を判断する判断部31と、生産ラインへ配分する生産品数を演算する配分数演算部32とを有する。以下、各構成を詳細に説明する。
【0019】
検知部11は、生産ラインに流れてくる製品についての情報を読み取ることで生産状況を検知する。本実施形態では、例えば、製品情報が格納されたタグが製品に貼付されており、検知部11は、タグに格納された情報を読み取ることで生産ラインに流れてくる製品についての情報を読み取ることができる。そして、検知部11から生産指示部30へ読み取った情報が転送される。
【0020】
ライン情報データベース21は、少なくとも各生産ラインにおいて生産する製品についての生産順序と所定の生産ラインにおいて製品を生産するのに要する時間(生産タクト)との情報が格納されている。
【0021】
判断部31は、検知部11から転送された生産状況情報とライン情報データベース21に格納された情報とを基に、ある生産ラインと他の生産ラインとの進捗差が所定数nであるかを判断する。なお、所定数nは、ユーザが設定するもので、図示しない入力部によりユーザが入力することで決定される。例えば、仕分けスペースの許容量を考慮し、ユーザが所望の所定数nを設定することができる。
【0022】
配分数演算部32は、判断部31においてある生産ラインと他の生産ラインとの進捗差が所定数nであると判断された場合や、ある生産ラインと他の生産ラインとの進捗差が所定数nでないときであっても到達時間演算部41の演算結果に基づいて配分するとユーザが決定した場合などに機能する。ここで、下記の配分数演算部32の説明は、ある生産ラインにおいて生産するべきである製品を他の生産ラインにて生産するように振り分けるときを例として説明する。なお、配分数演算部32が機能する場合とは、この例示する場合に限られることはない。
【0023】
まず、配分数演算部32は、ライン情報データベース21に基づき、ある生産ラインにおいて生産するべき所定数nに対応する製品を他の生産ラインにて生産する場合に要する生産タクトを演算する(演算結果A)。このとき、各製品について要する生産タクトがそれぞれ演算される。なお、所定数nに対応する製品とは、ある生産ラインにおいて、配分数演算部32が演算開始するときに生産されている製品の次に生産される計画となっている製品から数えて所定数分(1、2、・・・、n−1、n番目)の製品のことをいう。
【0024】
そして、配分数演算部32は、ある生産ラインについては、ライン情報データベース21に格納された情報に基づいて、生産順序に沿って順に(1、2、・・・、n−1、n番目)所定数nに対応する製品に要する生産タクトを積算し積算タクトとする(演算結果B)。このとき、各製品について要する生産タクトがそれぞれ演算される。つまり、ある生産ラインにおいてk番目に生産される計画となっている製品については、1番目からk番目のk個の生産タクトを積算することで演算される。
【0025】
一方、他の生産ラインについては、上述の演算した結果(演算結果A)に基づいて、生産順序とは逆順(n、n−1、・・・、2、1番目)に沿って所定数nに対応する製品に要する生産タクトを、配分数演算部32は積算し積算タクトとする(演算結果C)。このとき、各製品に対応する生産タクトがそれぞれ演算される。つまり、ある生産ラインにおいてk番目に生産される計画となっている製品については、k番目からn番目のn−k+1個の生産タクトを積算することで演算される。
【0026】
そして、配分数演算部32は、演算結果Bと演算結果Cとに基づいて、生産順序がk番目の製品のある生産ラインの積算タクトと、n−k個を積算して求められる生産順序がk+1番目の製品の他の生産ラインの積算タクトとの差をそれぞれ演算する(演算結果D)。例えば、生産順序が1番目に対応する製品のある生産ラインの積算タクトと、n−1個を積算して求められる生産順序が2番目に対応する製品の他の生産ラインの積算タクトとの差を演算する。そして、この演算結果Dで得られた値の絶対値を積算タクトの差とする。
【0027】
そして、配分数演算部32は、得られた積算タクトの差が最小となるkの値を求め、ある生産ラインで生産するべき製品のうち他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を決定する。つまり、1からk番目までの製品をある生産ラインでそのまま生産し、k+1番目からn番目までの製品を他の生産ラインで生産するように配分するという生産指示内容を、配分数演算部32は決定する。なお、決定された生産指示内容は図示しない出力部に表示されることでユーザは知ることができる。
【0028】
到達時間演算部41は、検知部11から転送された生産状況情報とライン情報データベース21に格納された情報とを基に、ある生産ラインと他の生産ラインとの進捗差が所定数nとなる時間を演算する(演算結果E)。そして、演算結果Eを生産指示部30へ転送する。
【0029】
以下、具体的事例を用いて本発明の実施形態に係る生産指示システム1の一連の処理について説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態の生産指示システム1を用いて行う一連の処理について、図2を用いて説明する。なお、以下では、データベースをDBと表記することもある。また、本実施形態では、到達時間演算部41を有していなくてもよい。
【0031】
本実施形態では、生産ラインとして、ラインA及びラインBの2ラインを備え、各生産ラインにより部品a及び部品bを生産することにより、部品a及び部品bを構成部品に含む製品αmを生産する場合を例示する。なお、本実施形態では、ラインAとラインBとの進捗差が11となったら配分数を演算する場合、つまり所定数n=11と設定する場合である。
【0032】
図2は、本実施形態の生産指示システム1を用いて行う一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【0033】
ステップS101において、ライン情報DB21に格納された情報に基づき、ラインA及びラインBそれぞれにおいて部品a及び部品bを生産する。なお、図3は、ライン情報DB21に格納されている生産計画の概念図である。図3の生産計画では、ラインA及びラインBにおいてα1からα100までの100個の製品を生産する計画となっており、生産順序1番目から順に各生産ラインにおいて製品αmを構成する部品a(αm)及び部品b(αm)を生産する計画となっている。
【0034】
ステップS102において、検知部11がラインA及びラインBそれぞれの生産状況を検知する。例えば、現在、ラインAにおいて生産しているのは生産順序k番目の部品a(αk)であり、ラインBにおいて生産しているのは生産順序k’番目の部品b(αk')であることを検知する。
【0035】
本実施形態では、ラインAの生産状況が生産順序31番目のa(α31)であり、ラインBの生産状況が生産順序20番目のb(α20)であることを検知部11が検知する。
【0036】
ステップS103において、まず、ステップS102で検知部11が検知した生産状況が生産指示部30へ転送される。そして、判断部31は、ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達したかどうかを判断する。ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達していると判断されたときには、ステップS104へ処理が移行する。ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達していないと判断されたときには再びステップS102及びステップS103の処理が行われる。
【0037】
本実施形態では、判断部31は、ステップS102から転送された情報により生産状況が先行しているラインAと生産状況が遅延しているラインBとの進捗差が11であると判断し、よって所定数n=11に達していると判断する。
【0038】
ステップS104において、配分数演算部32は、生産状況が遅延しているラインBにて生産される計画となっている製品のうち、生産状況が先行しているラインAへ配分する製品を演算する。本実施形態では、ラインBの現在の生産状況は生産順序20番目のb(α20)であることにより、生産順序21番目のb(α21)から生産順序31番目のb(α31)の11個の製品のうちラインAへ配分する製品を、配分数演算部32は演算することとなる。
【0039】
まず、ライン情報DB21の情報を基に、生産順序21番目のb(α21)から生産順序31番目のb(α31)の11個の製品をラインBにより生産するのに要する時間(生産タクト)が抽出される(図4(a))。
【0040】
そして、ライン情報DB21の情報を基に、生産順序21番目のb(α21)から生産順序31番目のb(α31)の11個の製品をラインAにより生産するのに要する時間が演算される(図4(b))。
【0041】
そして、配分数演算部32は、抽出及び演算された結果に基づき各ラインにより生産順序21番目のb(α21)から生産順序31番目のb(α31)の11個の製品を生産するのに要する時間を積算し、各生産順序に対応する積算タクトを演算する。生産状況が遅延しているラインBについては、生産順序21番目のb(α21)から生産順序31番目のb(α31)まで順に生産タクトが積算される。よって、本実施形態においてラインBについては、例えば、生産順序21番目の積算タクトとしてb(α21)の生産タクトである20が、生産順序22番目の積算タクトとしてb(α21)、b(α22)の各生産タクトを積算した35がそれぞれ演算される。一方、生産状況が先行しているラインAについては、生産順序の逆順である31番目のb(α31)から生産順序21番目のb(α21)まで順に生産タクトが積算される。よって、本実施形態においてラインAについては、例えば、生産順序31番目の積算タクトとしてb(α31)の生産タクトである10が、生産順序30番目の積算タクトとしてb(α31)、b(α30)の各生産タクトを積算した30がそれぞれ演算される(図4(c))。
【0042】
そして、配分数演算部32は、各ラインについて得られた積算タクトに基づき、各生産順序に対応するラインAの積算タクトとラインBの積算タクトとの差を演算し、その絶対値を積算タクトの差とする(図4(d))。なお、生産順序k番目の積算タクトの差とは、生産状況が遅延しているラインBにおける生産順序k番目の積算タクトと生産状況が先行しているラインAにおける生産順序k+1番目の積算タクトとの差の絶対値を求めることにより演算される。本実施形態では、例えば、生産順序21番目の積算タクトの差としてラインBにおける生産順序21番目の積算タクト20とラインAにおける生産順序22番目の積算タクト200との差の絶対値180が演算される。また、生産順序22番目の積算タクトの差としてラインBにおける生産順序22番目の積算タクト35とラインAにおける生産順序23番目の積算タクト180との差の絶対値145が演算される。
【0043】
そして、演算された積算タクトの差が最小となる生産順序に対応する製品を、生産状況が遅延しているラインBにおいて生産し、その他の製品を、生産状況が先行しているラインAにおいて生産するように配分するという生産指示内容を決定する。本実施形態では、生産順序26番目の積算タクトの差が7であり最小となるため、生産順序27番目のb(α27)から生産順序31番目のb(α31)の5個の製品を生産状況が先行しているラインAにおいて生産するように配分するという生産指示内容を決定する。つまり、ラインAにおいて生産順序27番目のb(α27)から生産順序31番目のb(α31)の5個の製品を、ラインBにおいて生産順序21番目のb(α21)から生産順序26番目のb(α26)の6個の製品をそれぞれ生産するという生産指示内容が決定されることとなる。なお、ステップS104にて得られた演算結果は、図示しない出力部に表示されることでユーザは知ることができる。
【0044】
そして、ステップS105において、ユーザは、ラインAにおいて生産順序27番目のb(α27)から生産順序31番目のb(α31)の5個の製品を生産できるように配分する。なお、配分するのは、本実施形態のようにユーザが行ってもよいし、ユーザが行わず自動的に配分されるようになしてもよい。
【0045】
このように、本実施形態の生産指示システム1によれば、生産状況が先行している生産ラインへ生産状況が遅延している生産ラインで生産予定の製品を配分する配分数を演算する配分数演算部32を備えることで、生産ライン間での生産状況の進捗差を少なくすることができる。そのため、例えば、生産ライン間での生産状況の進捗差が大きいときに考えられる、生産を一時中断したり生産ラインを停止したりしなければならないことによる生産能力の低下を防止することができる。よって、複数の生産ラインで生産する能力を最大限に活用することができる。
【0046】
また、配分数演算部32は、生産状況が遅延している生産ラインは生産品の生産順序に従い、生産状況が先行している生産ラインは生産品の生産順序の逆順に従いそれぞれ生産タクトを積算し前記配分数を演算することで、配分するときに時間のロスを防ぐことができる。つまり、生産状況が遅延している生産ラインでの生産は当初の予定通りに進むようにし、生産状況が先行している生産ラインでの生産を遅延している所定数に対応する製品の後半を配分するものとすることができる。
【0047】
以下に述べる実施形態では、上述した第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳しい説明を省略し、相違する構成について詳述する。
【0048】
(第2の実施形態)
本実施形態の生産指示システム1を用いて行う一連の処理について、図5を用いて説明する。
【0049】
本実施形態では、生産ラインとして、ラインA及びラインBの2ラインを備え、各生産ラインにより部品a及び部品bを生産することにより、部品a及び部品bを構成部品に含む製品αmを生産する場合を例示する。なお、本実施形態では、ラインAとラインBとの進捗差が11となったら配分数を演算する場合、つまり所定数n=11と設定する場合である。また、ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達する前に、到達時間演算部41により、ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達する時刻を予測する場合である。
【0050】
図5は、本実施形態の生産指示システム1を用いて行う一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【0051】
ステップS201において、ステップS101と同様に、ライン情報DB21に格納された情報に基づき、ラインA及びラインBそれぞれにおいて部品a及び部品bを生産する。
【0052】
ステップS202において、ステップS102と同様に、検知部11がラインA及びラインBそれぞれの生産状況を検知する。
【0053】
ステップS203において、到達時間演算部41が、ラインAとラインBとの生産状況の進捗差が所定数n=11に達する時間を演算する。なお、演算結果は、図示しない出力部に表示されることでユーザは知ることができる。
【0054】
本実施形態では、生産状況が先行しているのはラインAで生産状況が遅延しているのはラインBであり、現時点から30分後にラインAとラインBとの生産状況の進捗差が所定数n=11となると演算される。そして、現時点から30分後の生産状況は、ラインAでは生産順序31番目のa(α31)を生産され、ラインBでは生産順序20番目のb(α20)が生産されている状況であることが併せて演算される。
【0055】
ステップS204において、ユーザが、ステップS203において演算された結果に基づいて、生産状況が遅延しているラインBで生産する製品を生産状況が先行しているラインAへ配分するかどうかを決定する。ユーザが、ステップS203において演算された結果に基づいて生産する製品を配分すると決定したときは、ステップS207へ処理が移行される。一方、ユーザが、ステップS203において演算された結果に基づいて生産する製品配分しないと決定したときは、ステップS205へ処理が移行される。
【0056】
本実施形態では、ステップS204にて、演算された結果に基づいて生産する製品を配分すると決定されたため、ステップS207へ処理が移行される。
【0057】
ステップS204から移行されたステップS207において、配分数演算部32が、ステップS203にて演算された結果に基づいて、ラインBにて生産される計画となっている製品のうち、ラインAへ配分する製品を演算する。つまり、ラインBの30分後の生産状況は生産順序20番目のb(α20)であることにより、生産順序21番目のb(α21)から生産順序31番目のb(α31)の11個の製品のうちラインAへ配分する製品を、配分数演算部32は演算することとなる。
【0058】
そして、その後はステップS104と同様に演算される。その結果、ラインAにおいて生産順序27番目のb(α27)から生産順序31番目のb(α31)の5個の製品を、ラインBにおいて生産順序21番目のb(α21)から生産順序26番目のb(α26)の6個の製品をそれぞれ生産するという生産指示内容が配分数演算部32により決定されることとなる。
【0059】
そして、ステップS208において、ユーザは、ラインAにおいて生産順序27番目のb(α27)から生産順序31番目のb(α31)の5個の製品を生産できるように配分する。
【0060】
なお、ステップS204において、演算された結果に基づいて生産する製品を配分しないとユーザが決定し、ステップS205へ処理が移行されたときは、ステップS103と同様に、まず、検知部11が検知した生産状況が生産指示部30へ転送される。そして、判断部31は、ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達したかどうかを判断する。ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達していると判断されたときには、ステップS206へ処理が移行する。ラインAとラインBとの進捗差が所定数n=11に達していないと判断されたときには再びステップS202からステップS204の処理が行われる。
【0061】
そして、ステップS205から移行されたステップS206において、ステップS104と同様に、配分数演算部32は、生産状況が遅延しているラインBにて生産される計画となっている製品のうち、生産状況が先行しているラインAへ配分する製品を演算する。そして、ステップS208へ処理が移行される。
【0062】
このように、本実施形態の生産指示システム1によれば、生産状況が先行している生産ラインと遅延している生産ラインとの進捗差が所定数nとなる時間を演算する到達時間演算部41を備えているため、進捗差が所定数nとなる時間を予め演算することができる。そのため、予め配分数を知ることができ、配分のための準備をできるため、配分に要する時間のロスの発生を防止することができる。また、到達時間演算部41の結果に基づいて配分しない場合であっても、進捗差が所定数nとなる時間を予め演算することができるため、生産状況が先行している生産ラインに配分すべき時間を予め知ることができる。よって、生産状況が先行している生産ラインに配分するときに、予め配分の準備ができるため、配分に要する時間のロスの発生を防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について具体的事例を挙げて説明したが、本発明は、上記構成に限られることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では、生産ラインが2ラインの場合を列挙したが、例えば、複数の生産ラインのうち2ラインを選び出すことにより、3ライン以上の複数の生産ラインを有する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 生産指示システム
11 検知部
21 ライン情報データベース
30 生産指示部
31 判断部
32 配分数演算部
41 到達時間演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産計画に基づいて複数の生産ラインにより生産を行うときに、ある生産ラインにおいて生産する生産品を他の生産ラインに配分する生産指示システムであって、
各生産ラインにおける生産品の生産順序と生産タクトとが格納されたライン情報データベースと、
各生産ラインについて生産状況を検知する検知部と、
所定数の生産品のうち前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を、前記ライン情報データベースに格納された情報に基づいて演算する配分数演算部とを備える生産指示システム。
【請求項2】
前記配分数演算部は、前記ライン情報データベースに格納された情報に基づいて各生産ラインにおいて前記所定数の生産品を生産するために必要な生産タクトを生産順序に従って順列し、
前記ある生産ラインについては、生産品の生産順序に従って生産タクトを積算し、前記他の生産ラインについては、生産品の生産順序の逆順に従って生産タクトを積算し、前記ある生産ラインと前記他の生産ラインとについて積算された生産タクトの差が最小となる生産順序に基づいて前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を演算することを特徴とする請求項1に記載の生産指示システム。
【請求項3】
前記検知部が検知する情報に基づいて前記ある生産ラインと前記他の生産ラインとの進捗差が所定数に達したことを判断する判断部とをさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生産指示システム。
【請求項4】
前記検知部が検知する情報に基づいて前記進捗差が所定数となる時間を予め演算する到達時間演算部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の生産指示システム。
【請求項5】
前記配分数演算部は、前記判断部において前記進捗差が所定数であると判断したときに、所定数の生産品のうち前記他の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を、前記ライン情報データベースに格納された情報に基づいて演算することを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の生産指示システム。
【請求項6】
前記生産ラインが2ラインであり各生産ラインにより各部品を生産することで複数の部品を有する製品を生産するときに、第1の生産ラインで生産する部品を第2の生産ラインにて生産するように配分する生産指示システムであって、
前記判断部は、前記検知部が検知する情報に基づいて第1の生産ラインの生産済み品数と第2の生産ラインの生産済み品数との差分を判断し、
前記配分数演算部は、前記差分が所定数に達したときに、第1の生産ラインにて生産する前記差分の部品のうち第2の生産ラインにて生産するように配分する生産品数を演算することを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の生産指示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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