説明

生産管理データ生成方法、プログラムおよび生産管理データ編集装置

【課題】既存のシステムの変更を行うことなく新たに生産管理装置を導入することを目的とする。
【解決手段】複数の機器における情報の送受信を仲介する生産管理装置2における情報を生成する生産管理データ編集装置1において、生産管理データ編集装置1が、機器間で送受信される、TCP/IPに従ったメッセージパケットを、宛先に関係なく取得し、取得したメッセージパケットをメッセージに復元した後、宛先・種別定義データベース106を基に、メッセージを種別分けし、メッセージ構成定義データベース109に基づいて、データ毎にメッセージを分割し、メッセージ構成定義データベース109に基づいて、分割したメッセージを生産管理装置2における情報のフォーマットに再構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産管理データ生成方法、プログラムおよび生産管理データ編集装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、ビジネスコンピュータと、プロセス制御コンピュータと、現場製作機器によって、製鉄所内にある管理対象物のシステム的な管理が実施されている。ここで、ビジネスコンピュータは、営業情報や、原価情報や、生産高などを中心に受注から出荷までを管理する機能を有する。また、プロセス制御コンピュータは、製鋼工場や圧延工場などの工場単位に、工場に存在する製作機器をコントロールし、原料から半製品、半製品から製品の製作を管理する機能を有している。そして、現場製作機器は、溶解や、圧延といった加工作業で実際の製品を製作する機能を有している。
【0003】
このような管理の実現のため、ビジネスコンピュータとプロセス制御コンピュータはネットワークで接続され、またプロセス制御コンピュータと現場製作機器も、ネットワークで接続されている。これらの機器はネットワークを経由して、お互いが管理する製造指示や生産実績を通知し合うことで、相互の管理に必要な情報を交換している。
さらに、近年、大手製鉄所においては、多品種短納期対応や、在庫管理に伴う管理コスト低減のため、横断的な工程管理や、在庫管理、または品質管理の実現を目指している。
【0004】
この実現には、膨大な営業情報などを扱うことが可能なビジネスコンピュータや、高速な設備制御が可能なプロセス制御コンピュータや、特定の機器を対象とする現場製作機器を必要とする。それぞれの特性上の理由から、ビジネスコンピュータとプロセス制御コンピュータの中間位置に、ネットワークで接続する形で、生産管理装置を配置することで、きめ細かな生産管理に対応している。ここで、生産管理装置は、ビジネスコンピュータと、プロセス制御コンピュータとの仲介を行い、現在行われている作業が、どの工場で、どの工程であるかなどの進捗状況を管理する機能を有している。
しかし、中小製鉄所においては、生産管理装置の導入に関わるコスト負担や、既存システムに改修を加えることによるリスク増加の問題が、生産管理装置の導入を困難なものにしている。
【0005】
特許文献1には、半導体製造工場において、半導体製造装置のプロセス性能や健常性を管理する目的で、特定のホストコンピュータと1台で構成される半導体製造装置の間にデータ収集装置を配置するデータ収集装置、データ収集方法が開示されている。
特許文献1に記載の技術は、ホストコンピュータと半導体製造装置間を流れるデータのみを収集対象とし、ホストコンピュータや半導体製造装置ともSECS(SEMI Equipment Communications Standard)通信を使用した接続で、その接続関係を必須にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−64798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生産管理装置の導入に当たっては、製品受注に伴う発注情報や、出荷に伴う出荷情報、生産状況などにおいて、独立した複数工場から構成される製鉄所全般の、横断的な製造情報や生産実績情報、設備稼動状況情報などが必要となる。
これらの情報収集には、上位に位置するビジネスコンピュータや、下位に位置する多数のプロセス制御コンピュータ、現場に設置する現場製作機器に対して物理的なネットワークで接続するとともに、各コンピュータに通信プログラムをインストール・実行することよって、生産管理装置内に構築される通信プログラムとデータの送受信を実施する必要がある。
このため、生産管理装置の導入に当たっては、生産管理装置自身の製作コストの他に、各コンピュータにおけるソフトウェアの改修作業コストも発生し、導入コストが高額になるといった問題がある。
また、これら多数のコンピュータは、開発メーカ、導入年代、通信方式などが異なるため、技術的な問題も多く、導入リスクを高めるといった問題もある。
【0008】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、既存のシステムの変更を行うことなく新たに生産管理装置を導入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、複数の機器における情報であるメッセージの送受信を仲介する生産管理装置における情報を生成する生産管理データ編集装置による生産管理データ生成方法であって、前記生産管理データ編集装置は、記憶部に、前記メッセージの種別に関する情報である種別情報と、前記メッセージのフォーマットに関するメッセージフォーマット情報と、前記生産管理装置におけるフォーマットに関する生産管理装置フォーマット情報と、を有しており、前記生産管理データ編集装置が、前記機器間で送受信される、通信プロトコルに従ったメッセージを、宛先に関係なく収集し、前記種別情報を基に、前記メッセージを種別分けし、前記メッセージフォーマット情報に基づいて、データ毎に前記メッセージを分割し、前記生産管理装置フォーマット情報に基づいて、前記分割したメッセージを前記生産管理装置における情報のフォーマットに再構成することを特徴とする。
その他の解決手段については、実施形態中で適宜説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存のシステムの変更を行うことなく新たに生産管理装置を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る生産管理システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態で用いるパケットメッセージのフォーマット例を示す図でる。
【図3】本実施形態に係るメッセージ収集処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係るメッセージ復元処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係るメッセージ抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る宛先・種別定義データベースの構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るメッセージ分割・登録処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係るメッセージ構成定義データベースの構成例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る生産管理用メッセージ構成・送信処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では製鉄所を想定して説明を行うが、これに限らず、他の製品における製造管理に適用してもよい。
【0013】
《構成》
図1は、本実施形態に係る生産管理システムの構成例を示す図である。
生産管理システム10において、ビジネスコンピュータ3は、上位ネットワーク6を介して、プロセス制御コンピュータ4と接続している。
上位ネットワーク6には、イーサネット(登録商標)によるネットワークなどが相当する。この上位ネットワーク6では、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によるソケット通信を使用して、ビジネスコンピュータ3と各プロセス制御コンピュータ4が一対一で接続されており、ビジネスコンピュータ3とプロセス制御コンピュータ4間のデータ送受信を実現している。なお、図1において太実線の矢印は、送信元・宛先間におけるパケットメッセージ8の通信を示し、破線矢印は生産管理データ編集装置1へ向かうパケットメッセージ8の通信を示している。
また、プロセス制御コンピュータ4は、下位ネットワーク7を介して、現場製作機器5と接続している。下位ネットワーク7には、イーサネット(登録情報)などによるネットワークが相当する。この下位ネットワーク7では、TCP/IPによるソケット通信を使用して、プロセス制御コンピュータ4と各現場製作機器5がそれぞれ一対一で接続されおり、プロセス制御コンピュータ4と各現場製作機器5間のデータ送受信を実現している。
TCP/IPのソケット通信では、パケットメッセージ8によって、データがそれぞれの機器間を行き来している。なお、上位ネットワーク6をWAN(Wide Area Network)とし、下位ネットワーク7をLAN(Local Area Network)としてもよい。
【0014】
生産管理データ編集装置1は、イーサーネットケーブルを用いることによって上位ネットワーク6や、下位ネットワーク7と接続している。しかしながら、生産管理データ編集装置1は、ビジネスコンピュータ3とプロセス制御コンピュータ4、プロセス制御コンピュータ4と現場製作機器5のように、他の装置とTCP/IPのソケット通信によって接続しているわけではなく、上位ネットワーク6や下位ネットワーク7への物理的な接続だけとする。
【0015】
生産管理データ編集装置1は、LANカードなどであるパケット受信部(メッセージ収集部)101と、パケットメッセージ収集部(メッセージ収集部)102と、パケット保管メモリ装置103と、メッセージ復元部104と、宛先・種別定義データベース(種別情報)106と、メッセージ抽出部(メッセージ種別部)107と、メッセージ構成定義データベース(メッセージフォーマット情報、生産管理装置フォーマット情報)109と、メッセージ分割・登録部(メッセージ分割部)110と、メッセージ再構成部112とを有している。
パケット受信部101は、到達したすべてのパケットメッセージ8を、宛先に関係なく(宛先が生産管理データ編集装置1でなくても)とりこむよう予め設定されている。
パケットメッセージ収集部102は、パケット受信部101がとりこんだパケットメッセージ8をパケット保管メモリ装置103に保存する機能を有する。
パケット保管メモリ装置103は、パケットメッセージ収集部102が収集したパケットメッセージ8を一時保存する機能を有する。
メッセージ復元部104は、パケット保管メモリ装置103に格納されているTCP/IPで定めれられたサイズに分割されているパケットメッセージ8を結合することによって、メッセージとして復元し、復元したメッセージをメッセージ保管ファイル105として一時保存する機能を有する。
【0016】
メッセージ抽出部107は、メッセージ保管ファイル105に保存されているメッセージのうち、宛先・種別定義データベース106で定義されている生産管理装置2で必要なメッセージだけを抽出し、抽出メッセージ保管ファイル108として一時保存する機能を有する。
メッセージ分割・登録部110は、抽出メッセージ保管ファイル108で保管されている生産管理装置2で必要とするメッセージについて、メッセージ構成定義データベース109で定義する情報に基づき、メッセージを構成するデータに分割する。そして、メッセージ分割・登録部110は、そのデータを意味のあるまとまりとなるように、後記するキー情報による紐付けを取りながら生産管理データファイル111として一時保存する機能を有する。
【0017】
メッセージ再構成部112は、生産管理データファイル111で管理されているキー情報によって紐付けられたデータに対して、メッセージ構成定義データベース109の登録情報(後記)で定義する情報に基づき、生産管理装置2が使用可能なデータ形式である生産管理用メッセージ113となるように、データを再構成する機能を有する。
【0018】
生産管理データ編集装置1で作成した生産管理用メッセージ113は、新規に導入設置する生産管理装置2の中で実行されているアプリケーションプログラム群201に引き渡され、アプリケーションプログラム群201は、この生産管理用メッセージ113を用いて当該製鉄所で必要とする生産管理を行う。
【0019】
このように、生産管理データ編集装置1は、上位ネットワーク6や下位ネットワーク7上を流れるパケットメッセージ8を、ビジネスコンピュータ3やプロセス制御コンピュータ4や、現場製作機器5に影響を与えることなく収集し、生産管理装置2が必要とする情報に構成し、生産管理装置2に引き渡すことを目的とするものである。
【0020】
各部102,104,107,110,112は、図示しないROM(Read Only Memory)や、HD(Hard Disk)に格納されたプログラムが、RAM(Random Access Memory)に展開され、CPU(Central Processing Unit)によって実行されることによって具現化する。
【0021】
《パケットメッセージ》
図2は、本実施形態で用いるパケットメッセージのフォーマット例を示す図でる。
パケットメッセージ8は、発信元アドレス、宛先アドレス、データのサイズ、識別番号、分割順番および実際のデータが格納されているデータ部などを有している。
発信元アドレスは、パケットメッセージ8の発信元の装置を特定するための情報である。宛先アドレスは、パケットメッセージ8の受信先装置を特定するための情報である。サイズは、パケットメッセージ8のデータサイズである。識別番号は、パケットメッセージ8に含まれるメッセージを識別するための情報であり、分割順番は、パケットメッセージ8が何番目のパケットであるかを示す情報である。パケットメッセージ8は、もともと1つだったメッセージがTCP/IPなどで規定されるサイズに分割されることで発生するため、元のメッセージを特定するための識別番号や、その順番を規定する分割順番などによって、分割されたパケットメッセージ8が元のメッセージに戻ることを可能とする情報が含まれている。
【0022】
例で示すパケットメッセージ8は、発信元がビジネスコンピュータ3であり、宛先が製鋼プロセスコンピュータであり、識別番号が「35C9h」であるメッセージは、サイズが1024(byte)の1番目データ(1/2)、およびサイズが568(byte)の2番目のデータ(2/2)の2つに分割されている。
【0023】
《フローチャート》
次に、図1を参照しつつ、図3〜図9に沿って生産管理データ編集装置1の処理を説明する。各処理は個々のプロセスとして実行されており、生産管理データ編集装置1の電源がONとなると処理が開始され、電源がOFFされると処理が終了する。
【0024】
(メッセージ収集処理)
図3は、本実施形態に係るメッセージ収集処理の流れを示すフローチャートである。
パケットメッセージ収集部102は、上位ネットワーク6や下位ネットワーク7に接続しているパケット受信部101にパケットメッセージ8が到着しているか否かを常に監視している(S101)。
到着していなければ(S101→No)、パケットメッセージ収集部102はステップS101へ処理を戻す。
到着していれば(S101→Yes)、パケットメッセージ収集部102は到着したパケットメッセージ8をパケット受信部101から収集し、パケット保管メモリ装置103に書き込み(S102)、ステップS101へ処理を戻す。
パケット保管メモリ装置103は、短時間でのデータ読み書きができる装置とし、書き込みに関する時間を最短として、すぐにステップS101の監視状態に復帰でき、さらに、複数のパケットメッセージ8を保管することができるようバッファリング機能を有しているものとする。
【0025】
(メッセージ復元処理)
図4は、本実施形態に係るメッセージ復元処理の流れを示すフローチャートである。
メッセージ復元部104は、パケット保管メモリ装置103に新規にパケットメッセージ8が追加されたか否かを常に監視している(S201)。
追加を検知できない場合(S201→No)、メッセージ復元部104はステップS201へ処理を戻す。
追加を検知した場合(S201→Yes)、メッセージ復元部104は分割された状態で収集されているパケットメッセージ8に含まれる管理情報(識別番号、分割順番)を使って、パケットメッセージ8を結合し、元のメッセージに復元する(S202)。
そして、メッセージ復元部104は復元したメッセージをメッセージ保管ファイル105に書き込み(S203)、ステップS201へ処理を戻す。なお、メッセージ保管ファイル105は、複数のメッセージを保管することができるようバッファリング機能を有する。また、復元されたメッセージは、図2に示すパケットメッセージ8の情報のうち、送信元アドレス、宛先アドレス、識別番号およびデータ部を有する。
【0026】
(メッセージ抽出処理)
図5は、本実施形態に係るメッセージ抽出処理の流れを示すフローチャートである。
メッセージ抽出部107は、メッセージ保管ファイル105に新規にメッセージが追加されたか否かを監視している(S301)。
追加を検知できなかった場合(S301→No)、メッセージ抽出部107はステップS301へ処理を戻す。
【0027】
追加を検知した場合(S301→Yes)、メッセージ抽出部107はメッセージ保管ファイル105からメッセージを読み出すと、読み出したメッセージの発信元アドレスと宛先アドレスが、宛先・種別定義データベース106に登録されている否かを判定する(S302)。
【0028】
ここで、図6を参照して、宛先・種別定義データベースの構成について説明する。
宛先・種別定義データベース106は、図4で復元されたメッセージが生産管理装置2に必要なメッセージであるか否かを判定するための情報が格納されている。
宛先・種別定義データベース106には、No.、発信元アドレス、宛先アドレス、種別および要否の各情報が格納されている。種別は、メッセージの種別である。要否は、該当するメッセージが必要であるか否かを示すものであり、例えば、No.1の情報では、発信元がビジネスコンピュータ3であり、宛先が製鋼プロセス制御コンピュータ4であり、種別が指示メッセージであるメッセージは必要なメッセージである。また、No.5の情報のように、発信元が倉庫プロセス制御コンピュータ4であり、宛先がビジネスコンピュータ3であり、種別が出勤者メッセージであるメッセージは不要なメッセージである。
メッセージ抽出部107は、発信元アドレスと宛先アドレス、種別が宛先・種別定義データベース106に登録されているメッセージでも、要否データが不要(×)である場合や、発信元アドレスと宛先アドレス、種別が宛先・種別定義データベース106に登録されていないメッセージの場合、当該メッセージは生産管理装置2に不要なメッセージと判断し、メッセージ抽出部107はこのメッセージを破棄する。
【0029】
なお、要否の情報は省略することが可能であり、この場合、不要なメッセージの情報は宛先・種別定義データベース106に格納しないこととなる。
【0030】
図5のステップS302において、読み出したメッセージの発信元アドレスと宛先アドレスが、宛先・種別定義データベース106に登録されていない場合(S302→No)、前記したようにメッセージ抽出部107は、そのメッセージを破棄して(S305)、ステップS301へ処理を戻す。
読み出したメッセージの発信元アドレスと宛先アドレスが、宛先・種別定義データベース106に登録されている場合(S302→Yes)、メッセージ抽出部107は読み出したメッセージの種別が、宛先・種別定義データベース106に登録されているか否かを判定する(S303)。
種別毎にメッセージのフォーマットが定められており、図示しない種別とフォーマットの対応情報が記憶装置に格納されている。メッセージ抽出部107はこの種別とフォーマットの対応情報と、復元したメッセージのフォーマット形式とを比較することによって種別を特定する。
【0031】
特定した種別が、宛先・種別定義データベース106に登録されている種別と一致しない場合(S303→No)、メッセージ抽出部107は、そのメッセージを破棄して(S305)、ステップS301へ処理を戻す。
特定した種別が、宛先・種別定義データベース106に登録されている種別と一致する場合(S303→Yes)、メッセージ抽出部107はこのメッセージを抽出メッセージ保管ファイル108に書き込み(S304)、ステップS301へ処理を戻す。
例えば、復元したメッセージにおいて、100項目のデータがあっても、生産管理装置2において、そのうちの10項目しか必要としなければ、メッセージ抽出部107は、その10項目だけを抽出して生産管理データファイル111へ保管する。
なお、抽出メッセージ保管ファイル108は、複数のメッセージを保管することができるようバッファリング機能を有している。
【0032】
(メッセージ分割・登録処理)
図7は、本実施形態に係るメッセージ分割・登録処理の流れを示すフローチャートである。
メッセージ分割・登録部110は、抽出メッセージ保管ファイル108に新規メッセージが追加されたか否かを監視している(S401)。
追加を検知できなかった場合(S401→No)、メッセージ分割・登録部110はステップS401へ処理を戻す。
追加を検知した場合(S401→Yes)、メッセージ分割・登録部110は抽出メッセージ保管ファイル108からメッセージを読み出すと、読み出したメッセージを、メッセージ構成定義データベース109の定義内容に従い、データ単位に分割する(S402)。
【0033】
ここで、図8を参照して、メッセージ構成定義データベースの構成について説明する。
メッセージ構成定義データベース109は、発信元・宛先・種別毎にメッセージのデータフォーマットが格納されている。
メッセージ構成定義データベース109は、項目名称と、分割情報(メッセージフォーマット情報)と、登録情報(生産管理装置フォーマット情報)から構成されている。
分割情報では、メッセージの中で当該データが位置する場所を特定できるようにするための位置や、バイト数や、データ型が定義されており、さらに当該項目がキー情報であるか否かを区別するための項目が定義されている。
項目名称は、分割情報で示される情報が何の情報であるのかを示している。位置は、該当する情報がメッセージの先頭から何バイト目で始まっているのを示し、バイト数は、該当する情報のデータサイズをバイト数で示したものである。また、データ型には「Char(文字型)」や、「Long(符号付倍長整数型)」などのデータの型が定義される。
キー情報は、分割したメッセージを生産管理装置2で使用する情報に再構成する際に、リンク付けの基となるキー情報であるか否かを示している。
【0034】
図8の例では、発信元がビジネスコンピュータ3であり、宛先が製鋼プロセスコンピュータである指示メッセージの情報が格納されている。図8によると、この情報は先頭から8バイトがチャージ番号(Char型)に相当する情報であり、このチャージ番号はキー情報でもある。そして、チャージ番号に続いて、10バイトが製造規格番号(Char型)である。以下、製鉄原料の投入量(4バイト、Long型)、鉄鋼製品の予定出鋼量と続く。
登録情報については、ステップS403の処理で後記する。
【0035】
図7のステップS402の後、メッセージ分割・登録部110は、分割されたメッセージのデータを、リンクキーで指定されるキー情報に紐付けて、生産管理データファイル111に書き込み(S403)、ステップS401へ処理を戻す。生産管理データファイル111は、複数の管理データがキー情報による結合を持った状態で保管することができるよう、リレーショナルデータベースとしての機能を有する。
【0036】
(生産管理用メッセージ構成・送信処理)
図9は、本実施形態に係る生産管理用メッセージ構成・送信処理の流れを示すフローチャートである。
メッセージ再構成部112は、生産管理データファイル111を検索して、生産管理データファイル111に、生産管理用メッセージ113が必要とするキー情報ごとのデータが揃っているかを監視している(S501)。この監視は、例えば、メッセージ再構成部112が、メッセージ構成定義データベース109の登録情報における登録順を参照して必要なデータが揃っているか否かを判定する。
【0037】
必要とするデータが揃っていない場合(S501→No)、メッセージ再構成部112はステップS501へ処理を戻す。
必要とするデータが揃っている場合(S501→Yes)、メッセージ再構成部112は図8に示すメッセージ構成定義データベース109の登録情報を基に、生産管理データファイル111のデータを再構成して、生産管理用メッセージ113を構成し、生産管理装置2へ送信する(S502)。
【0038】
図8に示すように、メッセージ構成定義データベース109の登録情報には、登録先と、登録順と、リンクキーの情報とから構成されている。
また、登録情報は、後記するステップS403で使用する情報が定義されており、図7のステップS402において分割されたデータの登録先を、その登録先と登録順で定義し、さらに、どのキー情報とリンクさせるかといった情報を定義している。
登録先は、生産管理用メッセージ113のメッセージ名に相当する情報である。登録順は、生産管理用メッセージ113内において、該当する情報が登録される順番である。リンクキーは、該当する情報が、どの情報に紐付けられて生産管理データファイル111に格納されているかを示す情報である。
このようにすることで、生産管理データファイル111の中で、リレーショナル関係が自動的に取れるようにする。このとき、データを登録するためには、事前にキー情報となる項目が当該テーブルに登録されている必要があるため、データの登録順番については、キー情報となる項目が1番目になるように定義する。
【0039】
図9のステップS502で送信された生産管理用メッセージ113を受信した生産管理装置2は、アプリケーションプログラム群201を起動・実行し(S503)、受信した生産管理用メッセージ113に従って処理を行う。
ステップS502で生産管理用メッセージ113を送信すると、メッセージ再構成部112は、生産管理用メッセージ113に使用したキー情報に紐付く全てのデータを、生産管理データファイル111から削除し(S504)、ステップS501へ処理を戻す。
なお、メッセージ再構成部112が起動するアプリケーションプログラム群201は、生産管理装置2を実現するためのソフトウェアであり、本発明に含まれるものではない。
【0040】
《まとめ》
本実施形態による生産管理データ編集装置1は、パケット受信部101まで到達したパケットメッセージ8をすべて収集することによって、ビジネスコンピュータ3や多数のプロセス制御コンピュータ4、多数の現場製作機器5からの情報を、それらのコンピュータのソフトウェアに改修を加えることなく、情報収集することを可能にするものである。
また、本実施形態による生産管理データ編集装置1は、無作為に収集したネットワーク上を流れるパケットメッセージ8に対し、分割される前の状態に復元するとともに、宛先・種別定義データベース106に登録する判定情報を使用することで、生産管理装置2に必要なメッセージのみを抽出することを可能とするものである。
【0041】
さらに、本実施形態による生産管理データ編集装置1は、生産管理装置2に必要な情報として抽出したメッセージに対し、様々なルールで構成され、異なるフォーマットとなっているメッセージを、メッセージ構成定義データベース109に登録する定義情報を使うことで、意味のあるまとまりであるデータに分割するものである。そして、本実施形態による生産管理データ編集装置1は、この分割したデータについても、生産管理装置2における必要・不要を判断した上で選抜し、さらに生産管理装置2で必要とするフォーマットの生産管理用メッセージ113に編集することで、生産管理装置2を構成するアプリケーションプログラム群201が、必要なだけの情報を伝えることを可能とするものである。
【0042】
本実施形態によれば、ビジネスコンピュータ3や、多数のプロセス制御コンピュータ4や現場製作機器5で構成される工場(製鉄所)の生産を管理するコンピュータシステム群に対し、より綿密な生産状況をリアルタイムに管理することができる生産管理装置2の導入が、ビジネスコンピュータ3や、プロセス制御コンピュータ4、現場製作機器5に対して、ソフトウェアの改修を加えることなく可能となる。
また、生産管理装置2のアプリケーションプログラム群201が必要とするデータについても、多数のシステム間で送受信される異なるフォーマットのパケットメッセージ8から自動的に編集することを可能とし、生産管理装置2の導入にかかるコストについても低減を図ることができる。
【0043】
つまり、ビジネスコンピュータ3や、プロセス制御コンピュータ4や、現場製作機器5が接続するネットワークに、本実施形態における生産管理データ編集装置1を接続するだけで、ビジネスコンピュータ3や、プロセス制御コンピュータ4、現場製作機器5におけるソフトウェアの改修や、データ収集のための負荷を与えることなく、新規に構築する生産管理装置2で使用するデータ収集が可能となる。
また、新規に構築する生産管理装置2に、既存システムであるビジネスコンピュータ3やプロセス制御コンピュータ4、現場製作機器5に、データ転送用ソフトウェアの増設が不要となるため、既存システムに対するソフトウェア増設作業で発生する、不具合を起因とする誤動作発生のリスクや、ソフトウェア開発のためのコスト発生が排除できる。
さらに、既設システムとのソフトウェア的な結合を疎とすることで、新規に構築する生産管理装置2が既存システムに与える影響を減少させることが可能となり、開発環境やテスト環境の構築も容易になるメリットが得られる。
そして、新規に生産管理装置2を構築する際、操業中のデータを採取しながら開発やテストが実施できるため、ソフトウェアの生産性向上にも大きな効果が得られる。
【符号の説明】
【0044】
1 生産管理データ編集装置
2 生産管理装置
3 ビジネスコンピュータ(機器)
4 プロセス制御コンピュータ(機器)
5 現場製作機器(機器)
8 パケットメッセージ
101 パケット受信部(メッセージ収集部)
102 パケットメッセージ収集部(メッセージ収集部)
103 パケット保管メモリ装置
104 メッセージ復元部
105 メッセージ保管ファイル
106 宛先・種別定義データベース(種別情報)
107 メッセージ抽出部(メッセージ種別部)
108 抽出メッセージ保管ファイル
109 メッセージ構成定義データベース(メッセージフォーマット情報、生産管理装置フォーマット情報)
110 メッセージ分割・登録部(メッセージ分割部)
111 生産管理データファイル
112 メッセージ再構成部
113 生産管理用メッセージ
201 アプリケーションプログラム群



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器における情報であるメッセージの送受信を仲介する生産管理装置における情報を生成する生産管理データ編集装置による生産管理データ生成方法であって、
前記生産管理データ編集装置は、
記憶部に、前記メッセージの種別に関する情報である種別情報と、前記メッセージのフォーマットに関するメッセージフォーマット情報と、前記生産管理装置におけるフォーマットに関する生産管理装置フォーマット情報と、を有しており、
前記生産管理データ編集装置が、
前記機器間で送受信される、通信プロトコルに従ったメッセージを、宛先に関係なく収集し、
前記種別情報を基に、前記メッセージを種別分けし、
前記メッセージフォーマット情報に基づいて、データ毎に前記メッセージを分割し、
前記生産管理装置フォーマット情報に基づいて、前記分割したメッセージを前記生産管理装置における情報のフォーマットに再構成する
ことを特徴とする生産管理データ生成方法。
【請求項2】
前記通信プロトコルはTCP/IPであり、
前記メッセージは、パケットに分割されており、
前記生産管理データ編集装置が、
前記パケットを結合することによって、メッセージを復元する
ことを特徴とする請求項1に記載の生産管理データ生成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生産管理データ生成方法を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
複数の機器における情報であるメッセージの送受信を仲介する生産管理装置における情報を生成する生産管理データ編集装置であって、
記憶部に、前記メッセージの種別に関する情報である種別情報と、前記メッセージのフォーマットに関するメッセージフォーマット情報と、前記生産管理装置におけるフォーマットに関する生産管理装置フォーマット情報と、を有しており、
前記機器間で送受信される、通信プロトコルに従ったメッセージを、宛先に関係なく収集するメッセージ収集部と、
前記種別情報を基に、前記メッセージを種別分けするメッセージ種別部と、
前記メッセージフォーマット情報に基づいて、データ毎に前記メッセージを分割するメッセージ分割部と、
前記生産管理装置フォーマット情報に基づいて、前記分割したメッセージを前記生産管理装置における情報のフォーマットに再構成するメッセージ再構成部と、
を有することを特徴とする生産管理データ編集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−54100(P2011−54100A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204782(P2009−204782)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】