説明

生薬の抽出エキスとそれを有効成分とする皮膚外用剤

【課題】 生薬の抽出エキス、生薬の抽出エキスの製造方法および得られた生薬の抽出エキスを有効成分とする光老化抑制皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】 オウゴン、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジから選ばれる生薬の乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出し生薬の抽出エキスが得られる。得られたオウゴンの抽出エキスはそれ自体で、またはカイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジからの抽出エキスと併用して光老化抑制皮膚外用剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生薬の抽出エキスとその抽出方法に関する。また本発明は生薬の抽出エキスを有効成分とする皮膚外用剤にも関する。更に具体的には本発明は光老化抑制作用を有する安全な生薬抽出エキスを有効成分とする皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日常の生活の中で人体は紫外線の曝露を受けている。皮膚に影響する紫外線には、UV−A(長波長紫外線)とUV−B(中波長紫外線)があり、UV−Aは真皮まで浸透して肌の張りを保つコラーゲンやエラスチン繊維を損傷する酵素を増加させることにより、コラーゲン繊維を切断し、エラスチン繊維を変質させる。このため皮膚は弾力を失いしわやたるみが発生する。UV−Bは真皮には届かないが、表皮のメラニン細胞を活性化して日焼け(サンバーン)や表皮細胞の遺伝子を傷つけシミ、そばかすの原因となる。また、紫外線を浴びた表皮に活性酸素や過酸化脂質等が発生すると、これらが炎症を引き起こしたり、皮膚組織に大きなダメージを与えたりする。さらに、これらの炎症や皮膚ダメージは、荒れ肌を引き起こし、影響が真皮に及んだ場合、繊維芽細胞が損傷を受け、その結果コラーゲン繊維、エラスチン繊維の再生機能が破壊され、しわやたるみの要因となる。光老化とはこのような紫外線の影響による回復困難な肌のダメージをいう。光老化の程度は紫外線照射の累積量に左右されるためそれまでの生活環境、習慣によって個人差はあるものの、長年にわたる紫外線の照射が、肌の老化を促進する。若い頃に紫外線で生じた遺伝子の傷が修復されないまま細胞に蓄積されると、皮膚ガンを誘引するなど年を重ねてから悪影響を及ぼすこともある。
【0003】
この様な肌の光老化トラブルを予防改善する目的で、従来、天然由来のα−トコフェロール、アスコルビン酸等の様々な抗酸化剤が用いられている(特許文献1、2)が、紫外線曝露に起因する肌トラブルの予防改善効果は十分とはいえず、植物から抽出した様々な抗酸化性物質の化粧品、医薬品等への配合の試み(特許文献3、4、5、6、7)は、その原料調達の困難さから生産量が限られていることや、製造原価が高い等、実質的に有効量を配合することが困難であった。また、オウゴンエキス中の有用成分であるバイカレインを高濃度含有するエキスを得る方法として、オウゴンの刻みに水を加えた後、70℃以下の条件の下でオウゴン分解酵素による前処理を行い、バイカリンをバイカレインに変化させ、極性溶媒で抽出する方法が提案されているが(特許文献8)、抽出エキスを更に効率よく得る手段が望まれていた。
【特許文献1】特開平8−268862号公報
【特許文献2】特開2001−508809号公報
【特許文献3】特開平9−175988号公報
【特許文献4】特開平10−158143号公報
【特許文献5】特開2002−104924号公報
【特許文献6】特開2002−293738号公報
【特許文献7】特開2003−192528号公報
【特許文献8】特開昭63−27435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生薬を加圧湿熱処理し、次いで溶媒抽出することによって、紫外線に起因する皮膚の光老化トラブルの予防改善効果に優れた生薬エキスを高収率で得ることを目的とし、併せてこのようにして得られた生薬エキスの優れた皮膚の光老化トラブルの予防改善効果に基づいて、安全で且つ安価な光老化抑制皮膚外用剤を提供する事を目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは皮膚の安全で安価な光老化抑制皮膚外用剤開発を目的に鋭意検討した結果、オウゴン、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジから選ばれる生薬の乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気下での加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出することにより、極めて高収量で生薬の抽出エキスが得られること、このようにして得られたオウゴン抽出エキスは優れた光老化抑制能を有すること、そして意外にもこのオウゴン抽出エキスに、他の生薬からの抽出エキス、例えば整腸剤として従来知られていたゲンノショウコからの抽出エキスを併用すると光老化抑制効果が劇的に高まることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち本発明は、オウゴン、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジから選ばれる生薬の乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出して得られる、生薬の抽出エキスに関する。
【0007】
また本発明は、オウゴン、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジから選ばれる生薬の乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出する、生薬の抽出エキスの製造方法にも関する。
【0008】
また本発明は、オウゴンの乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出して得られる、オウゴンの抽出エキスに関する。
【0009】
そしてまた本発明は、オウゴンの乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出する、オウゴンの抽出エキスの製造方法に関する。
【0010】
更に本発明は、オウゴンの乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出して得られる、オウゴンの抽出エキスを有効成分として含む光老化抑制皮膚外用剤に関する。
【0011】
更にまた本発明は、オウゴンの乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出して得られる、オウゴンの抽出エキスに加え、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の抽出エキスを含む光老化抑制皮膚外用剤にも関する。
ここで併用するカイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジの各生薬から得られた抽出エキスは、105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気下での加圧湿熱処理工程とその後の溶媒抽出工程の2段階処理による抽出エキスであっても、加圧湿熱処理工程を採らない従来公知の抽出方法による抽出エキスであっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光老化抑制皮膚外用剤によれば、皮膚の光老化を予防し、ハリ、弾力のある若々しい肌の状態の維持が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で、オウゴン抽出エキスは105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気下での加圧湿熱処理と、その後の溶媒抽出の2段階処理による抽出エキスを用いる。
【0014】
ここで、オウゴンとは宿根草のシソ科コガネバナの周皮を取り除いた根を乾燥したもので、消炎、抗炎症、収斂、保湿、細胞賦活、抗アレルギー、抗菌、ニキビ予防などの作用があるとされている。その主成分はオーゴニン、バイカリン等の多価フェノールのフラボン配糖体であるフラボノイドであり、バイカリンは生体内で酵素によりバイカレインとグルクロン酸に分解される。医薬等に特に有用なのはバイカレインで、バイカレインを多く含むエキスが珍重されている。
【0015】
(飽和水蒸気雰囲気下での加圧湿熱処理工程)
生薬乾燥品を必要に応じて細断、破砕し、加圧湿熱処理器に収容して、飽和水蒸気雰囲気下での加圧湿熱処理を行う。加熱湿圧処理器は特に限定されないが、オートクレーブが好適であり、105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下、好ましくは110℃(42.0kPaG)以上130℃(168.9kPaG)以下、更に好ましくは115℃(67.8kPaG)以上125℃(130.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気下、10〜600分間、好ましくは30〜180分間の加圧湿熱処理を行うことにより、細胞壁が破壊され、抽出効率が高まるのは勿論のこと、飽和水蒸気による加水分解反応が起こり、抽出エキス中の抗酸化性を有する成分の含有比率が高くなる。加圧湿熱処理の処理温度が高く処理時間が長くなるほど溶剤抽出時における抽出エキス量は多くなるが、135℃を超えた、又は600分を超えた加圧湿熱処理を行っても、135℃での、又は600時間での加圧湿熱処理を行った場合の溶剤抽出量に比べてその増加量は少なく、加圧湿熱処理温度が105℃未満、又は処理時間が10分未満場合、溶媒抽出において十分な抽出量を確保することはできない。
【0016】
(溶媒による生薬エキスの抽出工程)
本発明において、加圧湿熱処理工程に続いて行われる溶媒抽出工程で用いられる抽出溶媒は、通常植物材料からの溶媒抽出に用いられる公知の抽出溶媒がいずれも使用可能である。抽出溶媒としては、比較的極性の高い溶媒を用いると、高濃度の抽出物を得ることができる。このような溶媒として、水、低級1価アルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等)、低級アルキルエステル(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)の比較的極性の高い有機溶剤が挙げられ、その中から1種又は2種以上の混合溶媒を用いることができる。特に好適なものとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブチレングリコール、又はこれらの水溶液が挙げられる。
【0017】
溶媒による抽出は公知の方法に従って行うことができる。例えば、水、水溶性有機溶媒又はこれらの混合溶媒を抽出溶媒として用いた場合、抽出原料に対して重量比で1〜50倍、好ましくは5〜20倍の抽出溶媒量で、かつ抽出溶媒の沸点より低い温度条件下で、0.1〜50時間、好ましくは5〜24時間抽出することができる。抽出処理は静置状態で行っても良いが、より効率的に抽出を行うには適度に攪拌させるのが望ましい。なお、抽出残渣に対して、加圧湿熱処理工程と溶剤抽出工程もしくは溶剤抽出工程のみを繰り返して再抽出処理を行い、この抽出操作を数回繰り返しても良い。本発明の生薬抽出エキスは、このまま皮膚外用剤に配合して良く、減圧濃縮等公知の適当な方法により溶媒を除去し、濃縮または乾固させたものを配合しても良い。また、抽出したものを他の有機溶媒等により再抽出したものを用いても良い。さらに、抽出物を公知の分画手段や精製手段により分画、精製することにより得られる画分を用いることもできる。
【0018】
加圧湿熱処理工程と溶媒抽出工程の2段階処理で得られたオウゴン抽出エキスでは、溶媒抽出のみで得られた抽出エキスに比べ、オウゴンの細胞壁破壊による抽出量増加はもちろん、加圧湿熱処理時の加水分解により、抽出エキス中のバイカリンの構成比率が増大する。この抽出エキスは、抗酸化性、繊維芽細胞の紫外線損傷抑制性、抗炎症性に優れ、光老化抑制剤原料として有効に用いることができる。
【0019】
光老化抑制剤原料として加圧湿熱処理工程と溶媒抽出工程の2段階処理で得られたオウゴン抽出エキスが有効であるが、該オウゴン抽出エキスにカイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の抽出エキス併用することで、光老化抑制効果を更に高めることができる。ここでオウゴン抽出エキスと併用するカイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジからの各抽出エキスは、加圧湿熱処理工程と溶媒抽出工程の2段階処理で得られた抽出エキスであっても、加圧湿熱処理工程を採らない従来の公知の抽出方法、例えば溶媒抽出によって得られた抽出エキスであっても、光老化抑制作用について優れた相乗効果を発揮するが、加圧湿熱処理工程および溶媒抽出工程の2段階処理で得られた抽出エキスの方が、より効果的な光老化抑制作用を得ることができる。また、飽和水蒸気による加圧湿熱処理は生薬エキスを実質的に無菌状態とするため、この方法による抽出エキスは化粧品、医薬品原料に特に好適に用いることができる。
【0020】
ここで、カイカとは落葉高木のマメ科のエンジュ蕾を干したものをいう。カイカに含まれるルチンは毛細血管の強化、血管の補強作用が知られている。カッコンとはマメ科クズの根を取り、成型したものをいい発汗解熱作用がある。ギムネマ・シルベスタとは、インド原産のガガイモ科に属する植物で、その有効成分であるギムネマ酸には肥満、糖尿病を抑制する効果が知られている。ゲンノショウコとは、フウロソウ科に属する植物で、根を除き全草を乾燥したもので整腸止瀉薬としての作用が、シャゼンソウとは、オオバコ科オオバコの全草を乾燥したもので利尿、止血、鎮咳作用が、ビンロウジとは、ヤシ科ビンロウの成熟種子の乾燥したもので瀉下、殺虫作用が知られている。
【0021】
本発明の生薬抽出エキスは、光老化抑制成分として各種の医薬品、医薬部外品、化粧料等に配合し、皮膚外用剤とすることができる。皮膚外用剤の剤型としては特に制限されず、軟膏、ローション、乳液、クリーム、パック、顆粒、パップ剤、スプレー等任意の剤型とすることができる。化粧料としては、光老化による肌改善を目的とする皮膚化粧料が好ましく、化粧水、乳液、美容液、保湿クリーム等の基礎化粧料、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼けオイル、カーマインローション等のサンケア商品、ファンデーション、アイライナー、マスカラ、アイカラー、チークカラー、口紅などのメイクアップ化粧料、洗顔料、ボディーシャンプー等の洗浄料、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアクリーム、ヘアオイル、整髪剤などの毛髪用化粧料、入浴剤、防臭制汗剤など種々の用途に使用することができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明に係る生薬抽出エキスの皮膚外用剤への配合量は、目的、対象とするものにより異なるが、不揮発分換算で0.00001〜5.0質量%、好ましくは0.001〜1.0質量%が良い。0.0001質量%未満では十分な効果が発揮され難く、5.0質量%を超えて添加しても効果の差は少なく経済的ではない。
【0023】
また、本発明の皮膚外用剤には必要に応じ、その効果を損なわない範囲で、通常用いられる他の各種成分を組み合わせて配合することができる。例えば化粧料の場合には、油分、各種ビタミン剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、香料、色素、顔料、金属イオン封鎖剤、美白剤、抗炎症剤、収れん剤、清涼化剤、抗ヒスタミン剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤等である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明を詳説するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例に示す%は、特に指定しない限り質量%を意味する。
製造例1
オウゴンの刻み20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いオウゴンエキス1とした。
【0025】
製造例2
オウゴンの刻み20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いオウゴンエキス2とした。
【0026】
製造例3
オウゴンの刻み20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いオウゴンエキス3とした。
【0027】
製造例4
カイカ20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いカイカエキス1とした。
【0028】
製造例5
カイカ20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いカイカエキス2とした。
【0029】
製造例6
カイカ20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いカイカエキス3とした。
【0030】
製造例7
カッコン20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いカッコンエキス1とした。
【0031】
製造例8
カッコン20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いカッコンエキス2とした。
【0032】
製造例9
カッコン20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いカッコンエキス3とした。
【0033】
製造例10
ギムネマ・シルベスタの刻み20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いギムネマ・シルベスタエキス1とした。
【0034】
製造例11
ギムネマ・シルベスタの刻み20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いギムネマ・シルベスタエキス2とした。
【0035】
製造例12
ギムネマ・シルベスタの刻み20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いギムネマ・シルベスタエキス3とした。
【0036】
製造例13
ゲンノショウコの刻み20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いゲンノショウコエキス1とした。
【0037】
製造例14
ゲンノショウコの刻み20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いゲンノショウコエキス2をとした。
【0038】
製造例15
ゲンノショウコの刻み20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いゲンノショウコエキス3とした。
【0039】
製造例16
シャゼンソウの刻み20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いシャゼンソウエキス1とした。
【0040】
製造例17
シャゼンソウの刻み20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いシャゼンソウエキス2とした。
【0041】
製造例18
シャゼンソウの刻み20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いシャゼンソウエキス3とした。
【0042】
製造例19
ビンロウジの刻み20gを、(株)平山製作所製、高圧蒸気滅菌器、HV−85にて120℃、30分間加圧湿熱処理を行った。冷却後、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いビンロウジエキス1とした。
【0043】
製造例20
ビンロウジの刻み20gを、60mlの50%エタノールにて、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いビンロウジエキス2とした。
【0044】
製造例21
ビンロウジの刻み20gに30mlの水を加え60℃で6時間加温後、エタノール30mlを更に加え、60℃で12時間溶媒抽出を行った。冷却後濾過を行いビンロウジエキス3とした。
【0045】
試験例1 不揮発分の測定
エキスの抽出効率を比較するため、製造例1〜21で得られた各エキス5gをガラス製シャーレに採取し、105℃、3時間の絶乾後の不揮発分を測定した。
【表1】

【0046】
試験例2 オウゴン抽出エキス不揮発分中のバイカレイン濃度
試験例1で得られたオウゴン抽出エキス不揮発分中のバイカレイン濃度を高速液体クロマト法により求めた。
カラム:HRC−ODS(40℃:島津製作所製)
検出器:SPD−M10A(268nm:島津製作所製)
移動相:30%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
流速 :1ml/分
標品 : Baicalein,98%(Aldrich)
【0047】
【表2】

【0048】
試験例3 抽出エキスの抗酸化性
試験管に、0.05Mの炭酸ナトリウムを2.3ml、3mMのキサンチンを0.1ml、3mMのEDTAを0.1ml、0.15%のアルブミンを0.1ml、0.75mMのニトロブルーテトラゾリウムを0.1ml、不揮発分換算で0.3mg/mlとなるように50%エタノールで調整した製造例1〜14の抽出エキスを0.1ml採取し、25℃で10分間振とうした後、0.1u/mlのキサンチンオキシダーゼ0.1mlを加え更に20分間振とうし、反応を行った。終了後、直ちに6mMの塩化銅0.1mlを加え反応を停止させ、反応液の570nmにおける吸光度(O.D.)から還元抑制率を算出した。対照には、キサンチンオキシダーゼを加えず同様の操作を行い、反応終了後、塩化銅を加え、更にキサンチンオキシダーゼを加えた。また、ブランクには50%エタノールを用いた。
【数1】

【0049】
【表3】

【0050】
試験例4 繊維芽細胞の紫外線損傷抑制
繊維芽細胞の紫外線損傷抑制をMTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニル テトラゾリウム ブロミド)による生存率より求めた。ヒューマンサイエンス振興財団より入手のTIG−113(PDL=33)を48wellマルチプレートに10×104cells播種し、培地(EMEM−FBS 0.5%含)を250μl加え2日間培養した。培地交換を行い、不揮発分換算で0.025%となるように50%エタノールで調整した製造例1〜14の抽出エキス(複合系の場合もトータル濃度は同一、配合比率=1:1)20μlを加え37℃インキュベーター内で1時間培養後、フィリップス製紫外線低圧水銀ランプPL−S 9W/01にて10分間紫外線を照射させ、再度37℃インキュベーター内で24時間培養した。培養後、PBS(−)250μlにて1回洗浄を行い、MTT0.5mg/mlを培地に溶解したものを250μl加え、37℃インキュベーター内で3時間染色を行った。染色後、PBS(−)250μlにて1回洗浄を行い、0.4%塩酸を含有するイソプロピルアルコール溶液500μlにて抽出し、570nmにおける吸光度(O.D.)を測定した。なお、ブランクには50%エタノール、紫外線未照射のコントロールには50%エタノールを添加し、ブランクに対する細胞生存率を下記式より求めた。又、アスコルビン酸を陽性対照として比較した。(各試料の測定回数は3回で、細胞生存率はその平均値を求めた。)
【数2】

【0051】
試験例5 乳酸脱水素酵素(LDH)の測定
皮膚の細胞は紫外線による損傷を受けると、細胞内Ca濃度が上昇し、乳酸脱水素酵素(LDH)、プロスタグランジンE2(PGE2)などの細胞内包物を放出するとされる。紫外線による損傷の程度が大きいと、細胞は壊死し、その結果炎症性の反応を惹起し、更なる皮膚障害を引き起こすとが知られており、LDHを測定することで炎症の強弱が判別できる。試験例4の紫外線照射後24時間培養した培養液を試料として、液中のLDHを測定した。試験管に0.1Mリン酸緩衝液(pH=7)を2.65ml、23mMのピルビン酸を0.1ml、12mMのβ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド・2Na(NADH)を0.05ml、試験例4の試料を0.2ml採取し、25℃における吸光度(340nm)を5分間計測してΔE/min算出し、下記式よりLDHを求めた。ここで、NADHの340nmにおけるモル吸光係数εを6.3(cm2/μmol)とした。
【0052】
【数3】

ここで、V:総液量(ml)
ε:NADHのモル吸光係数(cm2/μmol)
l:セル長(cm)
v:検体量(ml)
ΔE/min:1分間あたりの吸光度変化
【表4】

【0053】
抽出エキス濃度は溶剤抽出工程のみでの抽出方法、60℃の水のよる前処理を行う方法、加圧湿熱処理工程と溶剤抽出工程の2段階処理による抽出方法の順に高くなる。試験例3〜試験例5については、最も濃度が低い溶剤抽出工程のみでの抽出エキスと、最も濃度が高い加圧湿熱処理工程と溶剤抽出工程の2段階処理での抽出エキスの効果を比較しているが、試験例3の抗酸化では今回試験した生薬全てについて、加圧湿熱処理工程と溶剤抽出工程の2段階処理による抽出エキスの方が溶剤抽出工程のみでの抽出エキスに比べ、高い値を示している。ここで使用量は不揮発分換算して調整しているため、オウゴンだけでなく、他の生薬についても加圧湿熱処理処理により変換された生成物がこの効果に寄与しているものと思われる。本発明の加圧湿熱処理工程と溶剤抽出工程の2段階処理にて抽出されたオウゴンエキス1は、溶媒抽出工程のみでのオウゴンエキス2に比べ、細胞生存率、LDHともによい値を示している。本発明によるオウゴン抽出エキスに、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジの抽出エキスを併用することで細胞生存率、LDHの値に顕著な相乗効果が認められ、溶剤抽出工程のみによる抽出エキスより加圧湿熱処理工程の2段階処理による抽出エキス併用の方がよりよい効果を示している。
以下に、本発明の処方例を示す。
【0054】
処方例
(A)ヒドロキシエチルセルロース(2%水溶液) 12.0 質量%
キサンタンガム(2%水溶液) 2.0 質量%
精製水 残余
(B)水酸化レシチン 0.3 質量%
1,3−ブチレングリコール 6.0 質量%
グリセリン 4.0 質量%
ポリエチレングリコール 2.0
メチルパラベン 適量
(C)本発明の抽出エキス(1%溶液) 3.0 質量%
ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 5.0 質量%
クエン酸(5%水溶液) 2.8 質量%
クエン酸ナトリウム(5%水溶液) 2.2 質量%
【0055】
(B)成分を50℃に加熱し、メチルパラベンを溶解した後、常温に戻す。その他の成分は常温で撹拌等により均一とする。(A)成分を撹拌しながら、(B)成分、(C)成分の順に加え、均一に混合する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
加圧湿熱処理工程および溶媒抽出工程の2段階処理により高収率で得られた光老化抑制効果の強いオウゴン抽出エキスを含む本発明の光老化抑制外用剤を使用することで、皮膚の光老化を予防し、ハリ、弾力のある若々しい肌の状態の維持が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オウゴン、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジから選ばれる生薬の乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出して得られる、生薬の抽出エキス。
【請求項2】
極性溶媒として水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールである低級1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールである多価アルコール、酢酸メチル、酢酸エチルである低級アルキルエステル、アセトン、メチルエチルケトンであるケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテルであるエーテルまたはこれらの極性溶媒の任意の混合物を用いて得られる請求項1に記載の生薬の抽出エキス。
【請求項3】
オウゴン、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウおよびビンロウジから選ばれる生薬の乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出する、生薬の抽出エキスの製造方法。
【請求項4】
極性溶媒として水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールである低級1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールである多価アルコール、酢酸メチル、酢酸エチルである低級アルキルエステル、アセトン、メチルエチルケトンであるケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテルであるエーテルまたはこれらの極性溶媒の任意の混合物を用いる請求項3に記載の生薬の抽出エキスの製造方法。
【請求項5】
オウゴンの乾燥品を、加圧湿熱処理器内で105℃(19.5kPaG)以上135℃(211.8kPaG)以下の飽和水蒸気雰囲気で加圧湿熱処理し、次いで極性溶媒を用いる溶媒抽出の2段階処理により抽出して得られる、オウゴン抽出エキスを有効成分として含む光老化抑制皮膚外用剤。
【請求項6】
オウゴン抽出エキスが、極性溶媒として水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールである低級1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールである多価アルコール、酢酸メチル、酢酸エチルである低級アルキルエステル、アセトン、メチルエチルケトンであるケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテルであるエーテルまたはこれらの極性溶媒の任意の混合物を用いて得られたものである請求項5に記載の光老化抑制皮膚外用剤。
【請求項7】
請求項5に記載のオウゴン抽出エキスに加え、カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の抽出エキスを含む光老化抑制皮膚外用剤。
【請求項8】
カイカ、カッコン、ギムネマ・シルベスタ、ゲンノショウコ、シャゼンソウ、ビンロウジの抽出エキスが請求項1に記載の生薬の抽出エキスである請求項7に記載の光老化抑制皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−143833(P2009−143833A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321519(P2007−321519)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【出願人】(507408763)
【Fターム(参考)】