説明

産業用ロボットの故障検出手段

【課題】
タッチパネルおよびキースイッチの動作異常を的確にかつ迅速に判定できるようにするとともに、操作者の判断ミスを引き起こすことなく、かつ本体装置の暴走を未然に防止したり、逆に誤って入力された座標位置やキー情報判定の誤操作を阻止する。また、詳細な情報に基づいて早期に異常を検出するようにする。
【解決手段】
ソフトウェア起動時にタッチパネルおよびキースイッチの状態を一定時間チェックし、操作できる画面が表示される前に一定時間以上の入力があれば異常と判断し、作業者に早期に知らせ、誤操作などを未然に防止することを備えたシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット全体の制御を行うティーチングペンダントに備わるタッチパネルの異常検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムは、ロボットと、該ロボットを制御するロボット制御装置及び該ロボット制御装置に接続されて、作業者の操作で動作、作業プログラムの作成及び編集又はロボットシステムの諸設定をおこなうティーチングペンダントで構成されている。
このティーチングペンダントには、ロボットで行なう作業手順である作業プログラムの表示や位置や入出力などの表示をおこなうLCDパネル等の表示装置が備わり、作業者の操作入力をし易くするためにLCDパネルにはタッチパネルを備えるものが増えている。
【0003】
このタッチパネルが搭載されている装置の異常時の検出方法は、従来から知られている技術であり、例えば下記の特許文献1がある。
特許文献1は、図7から図9に示すようにアナログ式のタッチパネル210は、表示画面216と略同一形状でガラス板のような絶縁性を有し且つ所定強度を備えた基板224に対し、柔軟性を有する透明シートからなる操作板226を図示しないスペーサを介して重ね合わせることにより、基板224と操作板226とを微小な間隙228を設けて接近可能に配置している。
また、基板224と操作板226との対向面上には、所定の抵抗値を有する抵抗膜からなる座標検知用の第1電極230および第2電極232を略全面に亘って配設するとともに、座標位置検知手段220を備えることにより、操作板226に対する押圧指示座標が検出できるようにしている。
【0004】
さらに、座標位置検知手段220は、基板224側に備えた第2電極232の両端に対して、図9に示すオンオフスイッチ236・238および切替スイッチ240を介して左右方向に基準電圧Voを印加した状態で、操作板226上の第1電極230を介して接触位置の電圧をA/Dコンバータ242によりデジタル値に変換して取り出す。するとその電圧値Vxは、第2電極232の横方向に印加された基準電圧Voを第1電極230との接触位置で分圧した値に一致するので、基準電圧Voと検出電圧Vxの分圧比と第2電極232の横方向長さから、例えば操作板226の左縁を原点としたX軸方向の座標が、演算部256における演算処理により求まる。
Y軸方向座標については、他方のオンオフスイッチ236a・238aをオンするとともに、上記した場合とは逆に切替スイッチ240を切り替える。すると、第1電極230側に対して図23における上下方向に基準電圧Voが印加されるので、第2電極232側からA/Dコンバータ242aを介して検知電圧Vyを取り出すことにより、例えば操作板226の上縁を原点としたY軸方向の座標が演算により求まるのである。
【0005】
上記構成に加え、操作板226の表側に位置する操作面218上に更に電極層244を設けるとともに、その電極層244を操作時期検知用の電極として利用した操作時期検知手段248を備えたことが提案されている。
【特許文献1】特開2000−112660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の技術では、操作時期信号が入力さされないときに座標位置信号が入力されるとエラーを検出しているが、タッチパネルを検出するハードウェア装置側で溶着したときは操作時期信号が入力され、かつタッチパネルが押されたことになり座標位置が入力されるので、作業者に故障していることが通知できない。
工場の生産ラインで使用するような装置にあっては、そのタッチパネルの誤動作時における対応の遅れが莫大な損失をもたらし、又は人命に危険を及ぼすことさえある。
そこで、本発明の目的は、タッチパネルおよびキーボードの動作不良等を作業者がティーチングペンダントを操作する前に通知することにより、タッチパネルの異常時における対応が的確かつ迅速に行える故障検出手段を備えたシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、ロボットの操作を行うティーチングペンダントと、前記ティーチングペンダントおよびマニピュレータが接続されたロボット全体の制御を行うロボット制御装置を備えたロボットシステムであって、前記ティーチングペンダントは、表示装置と、タッチパネルからの入力検出手段と、電源投入時に前記タッチパネルの異常検出手段と、を備え、前記異常検出手段は、前記タッチパネルの操作座標位置が所定時間連続して入力される場合はタッチパネルの異常と判定することを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記タッチパネルの異常検出手段は、前記電源投入時に代えて、前記ロボットの教示を行なう教示モードへ移行したときに、タッチパネルの異常判定を行なうことを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記タッチパネルの異常検出手段は、前記電源投入時に代えて、前記タッチパネルの異常判定を常時おこなうことを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、前記タッチパネルの異常検出手段は、前記タッチパネルの異常判定に加えて、前記表示手段に異常メッセージを表示することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1乃至4に記載の発明によると、タッチパネルの動作異常が的確かつ迅速に判定でき、それを表示するので、交換などの対策を早急に行なうことができ、作業者の安全性も確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
以下本発明にかかるタッチパネルの異常検出手段を、産業用ロボットで使用するティーチングペンダントでの実施例に基づいて説明するが、これに限らずタッチパネルをデータ入力手段として備えた汎用あるいは専用の各種のデータ処理装置に対しても略同様に実施できることは勿論である。また、本実施例では、タッチパネルの座標位置をアナログ式に検出する例を示したが、マトリックス状に備えた電極でデジタル式に検出するものなど、座標位置の検出方法は任意のものに変更しても実施できる。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図6を用いて説明する。
図1は、本発明のティーチングペンダントの概略構成を示す図である。ティーチングペンダント1の構成は、画面データを表示する表示部2、作業者が画面を変更したりまたはロボットなどを操作する入力部にはタッチパネル4およびキーボード5が備えてある。さらに、データのバックアップが容易にできるように外部記憶装置3、異常などの状態を知らせるLED6が装備されているものもある。
【0011】
次に、ティーチングペンダント1の内部構成を図2に示す。11はティーチングペンダント自体の制御を行うCPU、14はロボット制御装置(図示せず)と通信を行うための通信部、12はCPUが解釈し動作するためのソフトウェアおよびOSなどが格納されている読み書き可能なFLASHメモリ、13はCPU11が処理を行うためのデータを一時的に格納する読み書き可能なメモリであるRAMである。また、前記図1で記述したように、表示部2、外部記憶装置3、タッチパネル4、キーボード5およびLED6も併せて装備されている。
【0012】
次にタッチパネルの構成および検出手段について図3を用いて説明する。
タッチパネル4はアナログ式のものであって、表示部2の表示画面上に密着して配置するとともに、タッチペン23または指先(図示せず)を使用してタッチパネル4の操作面上における任意位置を押圧指示すると、その押圧点に対応する座標がタッチパネルコントローラ22により解析され、その解析結果に基づいた座標データがCPU11に入力される。
【0013】
アナログ式のタッチパネル4は、透明導電膜26(ITO:インジウム酸化物で作られた膜)
をフィルム24とガラス板27の間に向かい合う形で配置する。そして、タッチしていない状態では、微小なスペーサにより2枚の透明導電膜26は抵触していないので、電流は流れない。フィルム24面をタッチすると圧力によりタッチした部分のフィルム24がたわみ、ガラス板27の透明導電膜26と接触し電流が流れ、ガラス板27とフィルム面24それぞれの透明導電膜26の抵抗による分圧比を測定することによりタッチした位置(=座標)をタッチパネルコントローラ22が検出しCPU11に伝える。CPU11は、FLASHメモリ12に格納されているソフトウェアにOSを介して伝え、ソフトウェアは押された位置に対応した画面情報をCPU11および液晶表示コントローラ21を介して表示部2に表示する。
【0014】
以下に本発明を実施する手順について、図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップ101では、ロボット制御装置(図示せず)と通信を行うための初期化処理およびティーチングペンダント1内のRAM13のクリア処理などを実行する。次にステップ102でタッチパネル異常検出手段に使用するタイマカウンタおよびタッチフラグをクリアする。そして、ステップ103では、タッチパネルの座標位置データを読み込み、RAM13に格納後、ステップ104では、一定時間経過したかどうかチェックし、一定時間経過していればステップ111へ、処理時間内であればステップ105へ移る。なお、一定時間の設定についてはソフトウェア内部でタイマ値を固定に持つか、あるいはタイマ値を汎用的に変更できるようにパラメータなどで管理する手段もある。
【0015】
ステップ105では、ステップ103で読み込んだ座標位置が入力されていれば、ステップ106でタッチフラグを「1」に設定するが、座標位置が入力されていなければステップ107でタッチフラグを「0」に設定する。ステップ108では、タッチフラグの状態を判定し、タッチフラグが「1」ならステップ109でタイマカウンタをインクリメント(+1加算)するが、ステップ108でタッチフラグが「0」ならステップ110でタイマカウンタをゼロクリアする。そして、ステップ103に移行し、一定時間経過するまで座標位置の入力があるかどうかをチェックする。
【0016】
ステップ111では、タイマカウンタの値が一定時間に到達していたらタッチパネルのどこかの部分が溶着していると判断し、ステップ112で図5のエラーメッセージを表示し作業者に異常であることを伝えるが、タイマカウンタの値が一定時間に到達していなければ異常ないと判断し、ステップ124でロボット動作処理(教示、再生処理)に移る。なお、図5についての説明は後述する。
【0017】
次に異常を検出したときに作業者に伝える手段を図5を用いて説明する。
タッチパネルの異常を検出すると図5のタッチパネル異常検出メッセージ45を表示し、作業者にタッチパネル4が異常であることを伝える。また、LED6を点灯表示させ作業者に知らせることも可能である。異常メッセージ表示画面において詳細ボタン46にキーボード5内にある矢印キーでカーソルを移動させ、キーボード5内のエンタキーを押すと、タッチパネル溶着47箇所の詳細を確認できる。ただし、図6で示すようにタッチパネルの異常を検出するときは、作業者が指先48で押したときに、座標の検出位置が変わるので、そのときは異常と判断しないように処理する。
【0018】
さらに、タッチパネルの異常検出においては、作業者が表示部2を長時間タッチすることは通常ありえないので、オンライン処理に移行してからも一定時間、連続でしかも同じ座標値が入力されれば、異常と判断できる。これにより、作業者の判断ミスを引き起こすことなく、かつ本体装置の暴走を未然に防止できることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
タッチパネルおよびキースイッチの動作異常を的確にかつ迅速に判定できるようにするとともに、操作者の判断ミスを引き起こすことなく、かつ本体装置の暴走を未然に防止でき、産業用ロボットとして産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のティーチングペンダントの構成図
【図2】本発明のティーチングペンダント内部の構成図
【図3】本発明のタッチパネル装置における詳細な構成図
【図4】本発明のタッチパネルおよびキーボードの異常検出フローチャート図
【図5】本発明のタッチパネル異常検出の表示例を示す図
【図6】本発明のタッチパネル装置の操作方法を示す図
【図7】従来構成のタッチパネル装置の概略構成図
【図8】従来構成のタッチパネル装置の詳細構成図
【図9】従来構成のタッチパネル装置における座標検知手段の具体的な構成を示す図
【符号の説明】
【0021】
1 ティーチングペンダント
2 表示部
3 外部記憶装置
4 タッチパネル
5 キーボード
6 LED
11 CPU
12 FLASHメモリ
13 RAM
14 通信部
21 液晶表示コントローラ
22 タッチパネルコントローラ
23 タッチペン
24 フィルム
25 ドットスペース
26 透明導電膜
27 ガラス板
41 タッチパネル異常検出メッセージ
42 詳細ボタン
43 タッチパネル溶着部
45 キースイッチ異常メッセージ
46 詳細ボタン
47 キースイッチ溶着部
48 指先
210 タッチパネル
212 タッチパネル検知回路
214 ディスプレイ
216 表示画面
218 操作面
219 映像表示回路
220 座標位置検出回路
222 データ処理回路
224 基板
226 操作板
228 微少な間隔(操作板間の)
230 第1電極
232 第2電極
236 オンオフスイッチ
238 オンオフスイッチ
240 切り替えスイッチ
242 A/Dコンバータ
244 電極層
248 操作時期検知手段
250 座標位置信号
252 操作時期信号
254 動作状態判定手段
256 演算部
258 指先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの操作を行うティーチングペンダントと、前記ティーチングペンダントおよびマニピュレータが接続されたロボット全体の制御を行うロボット制御装置を備えたロボットシステムであって、
前記ティーチングペンダントは、表示装置と、タッチパネルからの入力検出手段と、電源投入時に前記タッチパネルの異常検出手段と、を備え、
前記異常検出手段は、前記タッチパネルの操作座標位置が所定時間連続して入力される場合はタッチパネルの異常と判定することを特徴とするタッチパネル故障検出装置。
【請求項2】
前記タッチパネルの異常検出手段は、前記電源投入時に代えて、前記ロボットの教示を行なう教示モードへ移行したときに、タッチパネルの異常判定を行なうことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル故障検出装置。
【請求項3】
前記タッチパネルの異常検出手段は、前記電源投入時に代えて、前記タッチパネルの異常判定を常時おこなうことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル故障検出装置。
【請求項4】
前記タッチパネルの異常検出手段は、前記タッチパネルの異常判定に加えて、前記表示手段に異常メッセージを表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のタッチパネル故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−176162(P2009−176162A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15540(P2008−15540)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】