説明

産業用ロボット

【課題】本発明は、簡単に手首部フランジ面の傾きが調整できる産業用ロボットを提供することを目的とする。
【解決手段】固定ベース2に一端を固定された旋回ヘッド3と、前記旋回ヘッド3に連結された下部アーム4と、前記下部アーム4に連結された上部アーム5と、前記上部アーム5の先端に手首部6を備え、4自由度を有し、前記旋回ヘッド2に連結された第1の補助リンク7の他方端と一端が連結された第2の補助リンク8の他方端と前記手首部6の間に長さ方向に分割連結された第3の補助リンク9を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに関し、パレタイズ作業に使用するパレタイズ用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンボ−ルや袋詰めされた物品をパレットへ積み付けるようなパレタイズ作業に使用する4自由度の産業用ロボットにおいては、補助リンクをもちいた平行四辺形リンク式の産業用ロボットが提供されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−792号公報(第2−3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような平行四辺形リンク式の産業用ロボットでは、その用途上、手首部フランジ面がパレタイズ作業時、常に大地に対して平行な状態で動作しなければならない。しかしながらロボットを据え付けた架台自身の大地に対する傾きおよび各部ロボットを構成するア−ム部品の寸法誤差、組付け精度の誤差から前記フランジ面が大地に対して平行ではなく、傾いてしまうという問題点があった。
また、従来の形態では、その傾きを調整する機構がなく、傾きをなくすためにはア−ム部品を交換するといった必要があり、メンテナンス性に問題があった。
ここで、物品を把持するハンドと締結するフランジ面の間にシムを挿入して大地に対する平行度を確保するといった対策も考えられる。しかしながらこのような方法では、手首部フランジ面が回転しない場合は問題無いが、そのフランジ面が回転した場合、別の位相で傾きが発生してしまうため、パレタイズ作業時、常に平行度が保てないという問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、産業用ロボット、特にダンボ−ルや袋詰めされた物品をパレットへ積み付けるようなパレタイズ作業に使用する4自由度の産業ロボットにおいて、簡単に手首部フランジ面の傾きが調整できる産業用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、固定ベースに一端を固定された旋回ヘッドと、前記旋回ヘッドに連結された下部アームと、前記下部アームに連結された上部アームと、前記上部アームの先端に手首部を備え、4自由度を有し、前記旋回ヘッドに連結された第1の補助リンクの他方端と一端が連結された第2の補助リンクの他方端と前記手首部の間に長さ方向に分割連結された第3の補助リンクを備えたものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記第3の補助リンクが、分割された前記第3の補助リンク間のスキマを調整するスキマ調整機構を備え、前記手首部のフランジ面が参照面対して平行になるように構成されたものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記スキマを調整機構が、スキマを調整するのにシムを用いるものである。
また、請求項4に記載の発明は、固定ベースに一端を固定された旋回ヘッドと、前記旋回ヘッドに連結された下部アームと、前記下部アームに連結された上部アームと、前記上部アームの先端に手首部を備え、4自由度を有し、一端が前記旋回ヘッドに連結され、先端が前記手首部に連結された複数からなる補助リンクを備え、前記手首部と連結された前記補助リンクが分割連結されて、構成され、前記補助リンクの分割部のスキマを調整することにより前記手首部のフランジ面の参照面に対する角度を任意に設定できるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、ロボットを架台に据え付けた後からでも簡単に参照面に対するフランジ面の傾きを調整することが可能であり、手首部フランジ面の傾きを調整するためにア−ム部品等を交換する必要がなく、メンテナンス性が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の産業用ロボットの側断面図
【図2】第3の補助リンクの分割部を示す図
【図3】手首部フランジの角度調整を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の第1実施例を示す産業用ロボット(4自由度のパレタイズ用ロボット)の側断面図である。また、図2は第3の補助リンクを側面から見て展開した説明図あり、図3は手首部6を側面から見て展開した説明図である。以下、図1および図2、図3に従って構造の詳細について説明する。図1において、産業用ロボット1は、主としてダンボ−ルや袋詰めされた物品の輸送用パレットへの積み付け、すなわちパレタイズ作業に使用する。産業用ロボット1は固定ベース2と旋回ヘッド3と下部アーム4と上部アーム5と手首部6と第1の補助リンク7と第2の補助リンク8と第3の補助リンク9を備えている。旋回ヘッド3は固定ベース2に、垂直軸S回りに回動自在に支持され、旋回駆動される。下部アーム4はその下端で旋回ヘッド3に、水平軸L回りに回動自在に支持され、前後に揺動駆動される。上部アーム5は下部アーム4の上端に、水平軸U回りに回動自在に支持され、上下に揺動駆動される。手首部6は上部アーム5の先端に、水平軸回りに回動自在に支持されている。第1の補助リンク7は一端を旋回ヘッド3に回動自在に支持され、他方端は第2の補助リンク8に回動自在に連結されている。第2の補助リンク8は下部アーム4に、水平軸U回りに回動自在に支持され、前述したように第1の補助リンク7の他方端が回動自在に連結され、また第3の補助リンク9の一方端も第2の補助リンク8に回動自在に連結されている。第3の補助リンク9の他方端は手首部6に回動自在に連結されている。
このように、旋回ヘッド3と下部アーム4と第2の補助リンク8と第1の補助リンク7からなる第1の平行四辺形リンクと、上部アーム5と手首部6と第3の補助リンク9と第2の補助リンク8からなる第2の平行四辺形リンクが構成されているので、手首部6は下部アーム4および上部アーム5の姿勢に関わりなく、一定の姿勢、つまり手首部6のフランジ62が常に下を向く姿勢を保持する。
また、第3の補助リンク(a)91は、第2の補助リンク8に取り付けられ、第3の補助リンク(b)92は手首部6に取り付けられている。
本発明が従来技術と異なる部分は、従来の第3の補助リンク9が1個の筐体で配設されていたのに対し第3の補助リンク9を分割して第3の補助リンク(a)91と第3の補助リンク(b)92を配設した部分である。
【0010】
次に、第3の補助リンク(a)91と第3の補助リンク(b)92の結合部について説明する。 図2は、第3の補助リンクを側面から見て展開した説明図である。
第3の補助リンク(a)91と第3の補助リンク(b)92はボルト93で固定されているが、あらかじめスキマδを設けており、その間にシム94を挿入する構造としている。組立て時はシム94をあらかじめ設計寸法通りのリンク長(寸法 L)となる分の厚さのみを挿入しておく。ボルト93をゆるめればスキマδが広がり、シム94の追加および削減が可能となる。
【0011】
次に、手首部フランジ面の傾き調整方法について説明する。図3は手首部6を側面から見て展開した説明図である。まずユ−ザ−がロボットを架台に設置後、手首部フランジ面の大地に対する傾き角度αを測定する。手首部6が参照面(大地)に対し+αで傾いていた場合、前記ボルト93をゆるめ、その角度α分を補正するシム94を追加する。また、−αで傾いていた場合、前記ボルト93をゆるめ、その角度α分を補正するシム94を削減する。
ロボットを据え付ける架台自身の参照面に対する傾きおよび各部ロボットを構成するア−ム部品の寸法誤差、組付け精度の誤差などをシム94の厚みで吸収し、手首部フランジ面の傾きを調整するのである。
尚、この場合、参照面を大地としたが、搬送作業により配置される荷受面も傾いている場合が想定される。その場合には、参照面を荷受面にしてフランジ面の傾きを調整することは当然である。したがって、フランジ面の傾きは、上記した方法により任意の角度に調整されるものである。
【0012】
このように、第3の補助リンクをあらかじめ分割し、ロボットに配設しておけばその間にシムを追加、削減することで第3の補助リンク長(寸法 L)が簡単に変更可能となり、手首部フランジ面の傾きを調整することができる。また、手首部フランジ面の傾きはフランジ面の位相に依存しない。
【符号の説明】
【0013】
1 産業用ロボット
2 固定ベース
3 旋回ヘッド
4 下部アーム
5 上部アーム
6 手首部
61ケ−シング
62フランジ
7 第1の補助リンク
8 第2の補助リンク
9 第3の補助リンク
91第3の補助リンク(a)
92第3の補助リンク(b)
93ボルト
94シム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベースに一端を固定された旋回ヘッドと、前記旋回ヘッドに連結された下部アームと、前記下部アームに連結された上部アームと、前記上部アームの先端に手首部を備え、4自由度を有し、前記旋回ヘッドに連結された第1の補助リンクの他方端と一端が連結された第2の補助リンクの他方端と前記手首部の間に長さ方向に分割連結された第3の補助リンクを備えたことを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記第3の補助リンクは、分割された前記第3の補助リンク間のスキマを調整するスキマ調整機構を備え、前記手首部のフランジ面が参照面対して平行になるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の産業ロボット。
【請求項3】
前記スキマを調整機構は、スキマを調整するのにシムを用いることを特徴とする請求項2記載の産業ロボット。
【請求項4】
固定ベースに一端を固定された旋回ヘッドと、前記旋回ヘッドに連結された下部アームと、前記下部アームに連結された上部アームと、前記上部アームの先端に手首部を備え、4自由度を有し、一端が前記旋回ヘッドに連結され、先端が前記手首部に連結された複数からなる補助リンクを備え、前記手首部と連結された前記補助リンクが分割連結されて、構成され、前記補助リンクの分割部のスキマを調整することにより前記手首部のフランジ面の参照面に対する角度を任意に設定できることを特徴とする産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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