説明

産業用ロボット

【課題】アラーム発生時にどのデータを記録するかは予め設定されており、運転稼動中に運転を停止させることなく、どのデータを記録するのか設定することができない。
【解決手段】ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、前記ロボットを操作するティーチペンダントとを備えた産業用ロボットであって、前記ロボット制御装置および/または前記ティーチペンダントは記録メディアスロットを有し、前記記録メディアスロットに接続された記録メディア内に記憶されており前記産業用ロボットの動作中に記憶する情報を定義した記録方法ファイルを前記記録メディアの接続時に自動的に読み出し、前記記録方法ファイルを構成しており情報を記録するトリガとなる記録トリガの監視や記録した情報の書き出しを含む処理を行う解析用機能の実行を自動的に開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの動作異常要因の解析を可能とするための産業用ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインで連続稼動している産業用ロボットに何らかの異常が発生してしまい、産業用ロボットの運転が停止し、生産ラインを一時的にでも停止させることは、生産ライン全体に影響を及ぼす。そのため、異常の発生による産業用ロボットの停止は、極力防止する必要がある。また、万一異常が発生して産業用ロボットが停止した場合でも、速やかに産業用ロボットの運転を復旧させる必要がある。
【0003】
しかしながら、産業用ロボットにおけるハードウェアの偶発的な不良や、ソフトウェアの不具合による産業用ロボットの異常は、不定期に発生する。そして、異常の原因を突き止めることが困難な場合もある。
【0004】
このような場合、異常の原因の調査方法として、異常が発生したときのアラームコードや発生日時などの複数の情報である履歴をロボット制御装置のメモリに記録し、記録した履歴を後から閲覧できるようにするものがある。これにより、記録した履歴を異常の原因究明のための情報として利用できるようにしている。
【0005】
なお、異常発生に関する履歴を残す際、アラームデータを取捨選択するようにセットする。これにより、過去に発生したアラームデータを保管するメモリが効率よく使用できるとした数値制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、発生したアラームをアラームレベル毎に別々のファイルとして記録するアラームロギング機能を備えるようにする。これにより、重要なエラーアラームの履歴をできるだけ過去に遡って保存する基板処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、アラームごとに重要度を設定し、重要度ごとに記録領域を設け、重要度が高いほど記録領域の容量を大きくする。これにより、重要度が高いアラームに関する情報を長時間確実に記録できるようにした機械の制御装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
また、アラームになった要因を、数値制御装置に記録したデータを使用して表示装置に具体的に表示する。これにより、アラームが発生した際に顧客(ユーザ)が問題を解決するために必要な工数を削減するための異常情報を表示する機能を有する数値制御装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−241635号公報
【特許文献2】特開2001−230209号公報
【特許文献3】特開2008−176579号公報
【特許文献4】特開2009−223354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の技術では、異常の発生時に要因解析に必要なデータのうちどのデータを記録するかは、運転稼動前に予め設定されている。そのため、運転稼動中に運転を停止させることなくどのデータを記録するかといった設定を行うことができないという課題がある。この課題は特に、24時間連続して運転している機器について重要な課題である。
【0011】
また、異常情報を記録するトリガは、異常発生時に限定されており、内部データの状態遷移時にデータの記録を行うことができないという課題がある。
【0012】
また、異常情報を記録するための記録トリガ、および、どのデータを記録するかの設定は、制御装置を操作して行うものである。従って、外部の記録メディアに記録された記録トリガや記録対象などを自動的に読み込んで異常情報の記録を行うといったことができないという課題がある。この課題も特に、24時間連続して運転している機器について重要な課題である。
【0013】
上記従来の技術では、24時間連続して運転する必要があるなど、機器を停止することができない場合に特に大きな課題となる。
【0014】
また、異常発生時等では、メーカーの意図したとおりの異常要因解析に必要な記録データを取得する必要がある。しかしながら、この記録データを取得できるようにティーチングペンダント等を用いて現場の作業者が設定することは非常に負担となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の産業用ロボットは、ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、前記ロボットを操作するティーチペンダントとを備えた産業用ロボットであって、前記ロボット制御装置および/または前記ティーチペンダントは記録メディアスロットを有し、前記記録メディアスロットに接続された記録メディア内に記憶されており前記産業用ロボットの動作中に記憶する情報を定義した記録方法ファイルを前記記録メディアの接続時に自動的に読み出し、前記記録方法ファイルを構成しており情報を記録するトリガとなる記録トリガの監視や記録した情報の書き出しを含む処理を行う解析用機能の実行を自動的に開始するものである。
【0016】
また、本発明の産業用ロボットは、上記に加えて、産業用ロボットの動作中に記録メディアの情報の読み込みを可能とし、前記産業用ロボットの運転稼動を停止せずに、前記産業用ロボットの動作中で記録メディアスロットに前記記録メディアが接続された時に、前記記録メディアスロットに接続された前記記録メディア内の記録方法ファイルを自動的に読み出し、解析用機能の実行を自動的に開始するものである。
【0017】
また、本発明の産業用ロボットは、上記に加えて、記録方法ファイルは、所定の異常コードおよび/または所定のメモリ状態遷移が生じた時に記録を行うかを定義する記録トリガ項目と、異常コードの具体例である異常コード番号および/または前記メモリ状態遷移が行われるメモリアドレスを定義する記録トリガ情報と、記録を行う際の記録範囲としてのロボット制御装置内のメモリアドレスを定義する記録対象メモリ情報を含むものである。
【0018】
また、本発明の産業用ロボットは、上記に加えて、記録方法ファイルの記録トリガ項目として指定されている記録トリガの発生時に、ロボット制御装置に記録されており記録対象メモリ情報で定義されている情報を記録メディアスロットに接続されている記録メディアに保存するものである。
【0019】
また、本発明の産業用ロボットは、上記に加えて、記録トリガ項目は、異常発生時および/または所定の記憶部の所定のアドレスの情報が所定の値になったことを示すメモリ状態遷移としたものである。
【0020】
また、本発明の産業用ロボットは、上記に加えて、記録方法ファイルの読み出しは、ロボット制御装置に設けられた記録メディアスロットに接続された記録メディア内の記録方法ファイル、または、ティーチペンダントに設けられた記録メディアスロットに接続された記録メディア内の記録方法ファイルの一方から記録メディア接続時に自動的に記録方法ファイルを読み出すとともに、記憶を行った情報を、前記ロボット制御装置の記録メディアスロットに接続された記録メディア、または、ティーチペンダントの記録メディアスロットに接続された記録メディアの少なくとも一方に保存するものである。
【0021】
また、本発明の産業用ロボットは、上記に加えて、24時間連続して運転されるものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、工場の生産ラインで連続稼動している産業用ロボットにおいて、記録メディアスロットに記録メディアが接続された時に記録メディアから記録方法ファイルを自動的に取り込み、解析用機能を開始する。これにより、現場の作業者が操作設定をすることなく、メーカー等が予め設定した記録メディアを読み込ませることにより、解析用機能を開始させることができる。従って、異常発生時等に、現場の作業者の負担を増加させることがなく、メーカー等の意図した通りの異常要因解析に必要な記録データを取得することができ、異常要因解析を効率的に行うことができる。
【0023】
また、記録方法ファイルを、産業用ロボットの運転稼動を停止させずに外部から自動的に取り込むことにより、生産ラインを停止させることなく解析用機能を開始し、記録データを取得することができる。特に、24時間連続して稼動される機器に対して非常に有用である。
【0024】
また、指定された記録トリガの発生時に、その時の産業用ロボットに関する情報を記憶して自動的に記録メディアに保存することにより、現場の作業者の負担を増加させることなく、メーカー等の意図した通りの記録データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1における産業用ロボットの概略構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における記録方法ファイルの概略構造を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における記録データの概略構造を示す図
【図4】本発明の実施の形態1におけるタスク遷移の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図1から図4を用いて説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における産業用ロボットの概略構成を示す図である。図2は、実施の形態1における記録方法ファイルの概略構造を示す図である。図3は、実施の形態1における記録データファイルの概略構造を示す図である。図4は、実施の形態1におけるタスク遷移に例を示す図である。
【0028】
図1において、ロボットシステムである産業用ロボットは、ロボット101と、ロボット制御装置102と、ティーチペンダント109を備えている。
【0029】
ロボット101は、複数の関節軸を備え、各関節軸はモータと減速機で構成される。ロボット制御装置102は、ロボット101を含むロボットシステム全体を制御するものである。ティーチペンダント109は、ロボット101の動作の教示等に用いられるものである。
【0030】
ロボット制御装置102は、ロボット制御装置102の構成要素全体を制御する制御装置CPU103と、ロボット制御装置102を制御するためのロボット制御プログラムが格納される読み出し専用メモリであるROM104と、ロボット101の動作など作業者が教示した教示ファイルが格納され随時読み出し/書き込み可能なメモリであるRAM105と、ロボット101を構成するモータを制御してロボット101の位置や姿勢を制御するためのモータ制御部106と、記録メディアを接続するための制御装置メモリスロット107と、制御装置CPU103と制御装置メモリスロット107との間の信号の受け渡しを制御するための制御装置メモリスロットコントローラ108を備えている。
【0031】
作業者がロボット101を動作させて教示ファイルを作成するため等に用いられるティーチペンダント109は、ティーチペンダント109の構成要素全体を制御するTP−CPU110と、記録メディアを接続するためのTPメモリスロット111と、TP−CPU110とTPメモリスロット111との間の信号の受け渡しを制御するためのTPメモリスロットコントローラ112を備えている。
【0032】
次に、制御装置メモリスロット107および/またはTPメモリスロット111に接続される記録メディアに記録される記録方法ファイルについて、図2を用いて説明する。図2は、記録メディアに記録される記録方法ファイルのデータ構造を示す図である。なお、記録方法ファイル自体は、テキストデータで構成されてもよいし、バイナリデータで構成されてもよい。また、詳細は後述するが、この記録方法ファイルは、産業用ロボットの動作中に記憶する情報を定義したものである。
【0033】
図2において、記録方法ファイルを構成する記録方法ファイル識別子201は、これが記録方法ファイルであることを示すものである。
【0034】
記録方法ファイルを構成する記録トリガ項目202は、ビットパターンになっている。記録トリガ項目202を構成する記録トリガ項目Bit0は、異常発生を意味するものである。記録トリガ項目Bit0の値が「1」となっている場合は、異常が発生した場合に記録データを記録することを示す。記録トリガ項目Bit0の値が「0」となっている場合は、異常が発生した場合でも記録データを記録しない。
【0035】
また、記録トリガ項目202を構成する記録トリガ項目Bit1は、メモリ状態遷移を示すものである。なお、メモリ状態遷移については後述する。記録トリガ項目Bit1の値が「1」となっている場合は、特定のメモリ内容が指定した値に変化した場合に記録データファイルを記録することを示す。なお、記録トリガ項目Bit1の値が「0」となっている場合は、メモリ状態遷移が発生しても記録データを保存しない。
【0036】
記録トリガ項目202の値が図2に示すように16進数で「03」となっている場合は、2進数では「11」となる。記録トリガ項目202を構成する記録トリガ項目Bit0の値と記録トリガ項目Bit1の値がともに「1」であることを示しており、異常が発生した場合と特定のメモリ内容が指定した値に変化したメモリ状態遷移が生じた場合の少なくとも一方が発生した場合に、記録データを記録することを示している。
【0037】
記録方法ファイルの記録トリガ情報を構成する異常発生コード個数203は、異常発生コードの個数を示す。異常発生コード個数203の値が図2に示すように「02」となっている場合は、異常発生コード個数203の後に続く異常発生コードが2個あることを示している。
【0038】
記録方法ファイルを構成する異常発生コード204は、1番目の異常発生コードである。異常が発生した場合の異常発生コード204の値が「1000」の場合、データの記録を行うことを示す。また、異常発生コード204に続く異常発生コード205は、2番目の異常発生コードである。異常が発生した場合の異常発生コード205の値が「2000」の場合は、データの記録を行うことを示す。異常発生コード204が「1000」である異常と、異常発生コード205が「2000」である異常の少なくとも一方が発生した場合に、データを記録することを示している。
【0039】
記録方法ファイルを構成するメモリ状態遷移設定個数206は、メモリ状態遷移設定の個数を示す。メモリ状態遷移設定個数206の値が図2に示すように「02」となっている場合は、後に続くメモリ状態遷移設定が2個あることを示している。
【0040】
記録方法ファイルの記録トリガ情報を構成するメモリアドレス207および遷移値208は、1番目のメモリ状態遷移設定である。メモリアドレス207は、1番目のメモリ状態遷移設定のメモリアドレスを示す。遷移値208は遷移値を示す。メモリアドレス207の値が「1F000000」であり、遷移値208の値が「01」の場合では、メモリアドレス「1F000000」に格納されているデータが「01」以外の値から「01」に遷移した場合に、記録データの記録を行うことを示す。
【0041】
記録方法ファイルを構成するメモリアドレス209および遷移値210は、2番目のメモリ状態遷移設定である。なお、その内容と役割については、1番目のメモリ状態遷移設定であるメモリアドレス207および遷移値208と同様である。メモリアドレス209の値が「2F000000」であり、遷移値210の値が「02」の場合では、メモリアドレス「2F000000」に格納されているデータが「02」以外の値から「02」に遷移した場合に、記録データの記録を行うことを示す。
【0042】
なお、異常発生コード個数203と、異常発生コード204と、異常発生コード205と、メモリ状態遷移設定個数206と、メモリアドレス207と、遷移値208と、メモリアドレス209と、遷移値210は、記録方法ファイルの記録トリガ情報を構成する。
【0043】
記録方法ファイルの記録対象メモリ情報を構成する記録対象メモリアドレス個数211は、記録対象メモリアドレスの個数を示す。記録対象メモリアドレス個数211の値が図2に示すように「03」となっている場合は、後に続く記録対象メモリアドレス設定が3個あることを示している。
【0044】
記録方法ファイルを構成する記録対象メモリスタートアドレス212および記録対象メモリエンドアドレス213は、1番目の記録対象メモリアドレス設定である。記録対象メモリスタートアドレス212は、1番目の記録対象メモリのスタートアドレスを示す。記録対象メモリエンドアドレス213は、1番目の記録対象メモリのエンドアドレスを示す。記録トリガが発生し、データの記録を行う場合、記録対象メモリスタートアドレス212から記録対象メモリエンドアドレス213までのメモリデータをRAM105から読み出してRAM105に記録データファイルとして記録することを示す。
【0045】
記録方法ファイルを構成する記録対象メモリスタートアドレス214および記録対象メモリエンドアドレス215は、2番目の記録対象メモリアドレス設定である。また、記録方法ファイルを構成する記録対象メモリスタートアドレス216および記録対象メモリエンドアドレス217は、3番目の記録対象メモリアドレス設定である。なお、記録対象メモリスタートアドレス214および記録対象メモリエンドアドレス215と、記録方法ファイルを構成する記録対象メモリスタートアドレス216および記録対象メモリエンドアドレス217の内容と役割については、記録対象メモリスタートアドレス212および記録対象メモリエンドアドレス213と同様であるので説明は省略する。
【0046】
次に、記録メディアに記録される記録データファイルについて、図3を用いて説明する。図3は記録メディアに記録される記録データファイルのデータ構造を示している。記録データファイル自体はテキストデータで構成される。
【0047】
図3において、記録データ識別子301は、このテキストデータが記録データファイルであることを示すものである。
【0048】
記録データファイルを構成する記録時刻情報302は、記録時刻に関する情報である。例えば、記録時刻情報302が「2010,01,05,15,10,01」となっている場合、記録データファイルが作成された年月日時刻が2010年01月05日15時10分01秒であることを示す。
【0049】
記録データファイルを構成する記録トリガ情報303は、記録データファイルが作成されるトリガとなった記録トリガ情報であり、ビットパターンになっている。
【0050】
記録トリガ情報を構成する記録トリガ情報Bit0は、異常発生を意味するものである。記録トリガ情報Bit0の値が「1」となっている場合は、記録データファイルが作成されたトリガが異常発生であることを示す。
【0051】
記録トリガ情報を構成する記録トリガ情報Bit1は、メモリ状態遷移を示すものである。記録トリガ情報Bit1の値が「1」となっている場合は、特定のメモリ内容が指定した値に変化した記録データが作成されたトリガが、特定のメモリ内容が指定した値に変化したことを示す。例えば、記録トリガ情報303が「01」となっている場合は、記録データファイルが作成されたトリガが異常発生であることを示す。
【0052】
記録データファイルを構成するメモリ内容個数304は、記録したメモリ内容の個数を示す。メモリ内容個数304の値が図3に示すように「03」となっている場合は、後に続くメモリ内容が3個あることを示している。
【0053】
記録データファイルを構成するメモリスタートアドレス305と、メモリエンドアドレス306と、メモリ内容307は、1番目のメモリ内容である。メモリスタートアドレス305は、1番目のメモリ内容のスタートアドレスを示す。メモリエンドアドレス306は、1番目のメモリのエンドアドレスを示す。メモリ内容307は、メモリスタートアドレス305からメモリエンドアドレス306までのメモリ内容そのものを示す。メモリ内容307のデータ長さは、メモリスタートアドレス305とメモリエンドアドレス306から一意に決まる。
【0054】
記録データファイルを構成するメモリスタートアドレス308と、メモリエンドアドレス309と、メモリ内容310は、2番目のメモリ内容である。また、記録データを構成するメモリスタートアドレス311と、メモリエンドアドレス312と、メモリ内容313は、3番目のメモリ内容である。なお、メモリスタートアドレス308およびメモリエンドアドレス309およびメモリ内容310と、メモリスタートアドレス311およびメモリエンドアドレス312およびメモリ内容313の内容の役割については、1番目のメモリ内容であるメモリスタートアドレス305およびメモリエンドアドレス306およびメモリ内容307と同様である。
【0055】
なお、メモリ内容個数304と、メモリスタートアドレス305と、メモリエンドアドレス306と、メモリ内容307と、メモリスタートアドレス308と、メモリエンドアドレス309と、メモリ内容310と、メモリスタートアドレス311と、メモリエンドアドレス312と、メモリ内容313は、記録データファイルのメモリ情報を構成している。
【0056】
次に、制御装置メモリスロット107またはTPメモリスロット111に接続された記録メディア内の記録方法ファイルを自動的に読み出し、ロボット101の運転稼動を停止せずに解析用機能を自動的に実行開始する方法について、図4を用いて説明する。
【0057】
図1に示すロボット制御装置102において、制御装置CPU103は、ROM104に記録されたロボット制御プログラムを解釈実行し、作業者が教示した教示プログラムの通りにロボット101を動作させる。ROM104に記録されたロボット制御プログラムは、マルチタスク方式となっており、役割が同じ処理をタスクとしてまとめている。そして、制御装置CPU103が複数のタスクを優先度に応じて切り替えながらタスク処理を実行する。
【0058】
制御装置CPU103は、ロボット101を動作させるための軌跡演算制御を周期的に行っており、この周期処理は制御タスクで行っている。制御タスクが動作している時間を、図4の期間402で示している。周期処理を行うためのタイミングは、制御装置CPU103の図示しない内部タイマーで生成している。
【0059】
軌跡演算制御を行っていない時間、つまり制御タスクが動作していない時間は、制御装置CPU103はアイドル状態となり、アイドルタスクが起動している。アイドルタスクが動作している時間を図4の期間401で示している。このアイドルタスクでは、ロボット101の現在位置表示などのリアルタイム要求度の低い処理を行っている。アイドルタスクを実行中に制御タスクを動作させるタイミングになると、制御装置CPU103は、タスク切り替えを行い、アイドルタスクを待ち状態とし、制御タスクを実行中状態にする。制御タスクは、ロボット101を動作させるための軌跡演算を行うとともに、モータ制御部106に対して動作指令を行い、ロボット101を動作させる。制御装置CPU103がモータ制御部106に対して動作指令を行うと、モータ制御部106がロボット101の関節部に組み込まれたモータのフィードバック制御を行う。モータ制御部106がフィードバック制御を行っている間は、制御装置CPU103は、次の軌跡演算タイミングを待つ状態となり、制御装置CPU103が制御タスクを待ち状態にして、アイドルタスクを実行中状態にする。
【0060】
次に、記録メディアをティーチペンダント109のTPメモリスロット111に接続したときの制御装置CPU103の処理について説明する。
【0061】
予め記録方法ファイルが書き込まれた記録メディア(図示せず)をTPメモリスロット111に接続したとき、TPメモリスロットコントローラ112は、記録メディアがTPメモリスロット111に接続されたことを検知する。この検知方法としては、例えば、TPメモリスロット111に設けられたメカニカルスイッチが記録メディアにより押下されたことを電気的に検知してもよい。あるいは、TPメモリスロットコントローラ112がTPメモリスロット111に対して常に電圧を印加するようにし、記録メディアがTPメモリスロット111に接続されたときに電気信号が変化することにより検知するようにしてもよい。
【0062】
TPメモリスロットコントローラ112が、記録メディアが接続されたことを検知すると、記録メディアが接続されたことをTP−CPU110に通知する。ティーチペンダント109のTP−CPU110は、ロボット制御装置102の制御装置CPU103に対して、記録メディアが接続されたことを通知する。
【0063】
制御装置CPU103は、TP−CPU110からの記録メディアが接続されたことを示す通知を割り込み信号として受信する。割り込み信号は、制御装置CPU103のピンに接続され、ハードウェア上の信号として制御装置CPU103に入力される。制御装置CPU103に割り込み信号が入ると、制御装置CPU103は、割り込み処理が実行される。割り込み処理は、タスク実行よりも優先され、制御タスク実行中であっても割り込み処理が優先される。
【0064】
図4に示す期間403は、制御タスク実行中に記録メディアがTPメモリスロット111に接続され、割り込み処理が実行されている状況を示している。制御タスク実行中に割り込み処理が入力された場合、制御タスクは実行中に強制中断されて待ち状態になり、割り込み処理が実行される。なお、割り込み処理が実行されることにより制御タスクの中断状態が長くなると、ロボット101の制御に遅れが生じてしまう。従って、割り込み処理は極力短い時間で完了するように実行される。
【0065】
割り込み処理では、記録メディアがTPメモリスロット111に接続されたことによって解析タスクを実行する旨の情報をRAM105に記録することのみを行う。そして、直ちに割り込み処理を終了し、制御タスクの待ち状態を解除して実行中状態に戻す。これにより、ロボット101の制御に遅れが生じてしまうことがないようにする。なお、図4に示す期間405は、解析タスクが実行されている状況を示している。
【0066】
制御タスクが実行中状態に戻って軌跡演算が完了すると、制御装置CPU103は、アイドルタスクよりもタスク優先度が高い解析タスクを実行する。解析タスクでは、記録メディアに記録された記録方法ファイルを読み出す。なお、記録方法ファイルのデータ構造については、図2で既に示している。
【0067】
次に、制御装置CPU103が記録メディアから記録方法ファイルを読み出して解析を行う方法について説明する。制御装置CPU103が解析タスクを実行すると、解析タスクの処理は、TPメモリスロット111に接続された記録メディアに記録されている図2に示す記録方法ファイルの記録方法ファイル識別子201「1234」を読み出す。そして、記録メディアに記録されているデータが記録方法ファイルであることを確認する。なお、記録方法ファイル識別子201が記録方法ファイルであることを示す所定の識別子「1234」になっていない場合、記録メディアに記録されているデータは記録方法ファイルではないと判断し、記録メディアに記録されている情報の読み出しは行わない。
【0068】
次に、記録トリガ項目202と、記録トリガ情報(異常発生コード個数203から遷移値210まで)と、記録対象メモリ情報(記録対象メモリアドレス個数211から記録対象メモリエンドアドレス217まで)を記録メディアから読み出し、解析タスクが使用する情報としてRAM105に記録する点について説明する。
【0069】
この記録メディアからの読み出しとRAM105への記録は、記録メディアがTPメモリスロット111に接続された初回のみ行い、以降、制御装置CPU103が解析タスクを実行した場合は記録メディアからの読み出しは行わない。なお、一度記録メディアが取り外され、再度記録メディアが接続された場合には、記録メディアからの記録方法ファイルの読み出しは実施される。
【0070】
解析タスクの実行中、制御装置CPU103は、記録トリガ項目202の内容を解釈し、記録トリガ項目202の記録トリガ項目Bit0が「1」となっていて異常発生時にトリガする値となっている場合において、異常発生コードを監視する。制御タスクがロボット動作実行中に異常が発生した場合、その異常に対応する異常発生コードをRAM105の所定のアドレスに書き込む。制御タスクから解析タスクに実行が移ったとき、解析タスクはRAM105をチェックする。RAM105に異常発生コードが書き込まれている場合は、異常発生コードが記録方法ファイルの記録トリガ情報に指定されている異常発生コード204、または異常発生コード205と同一か否かをチェックする。該当する異常発生コードである場合、記録対象メモリ情報の記録対象メモリスタートアドレス212から記録対象メモリエンドアドレス217で指定されているアドレスのRAM105のデータを読み出し、TP−CPU110経由でTPメモリスロット111に接続された記録メディアに、図3で示した記録データファイルとして書き出す。
【0071】
例えば、記録トリガ情報の異常発生コード204が「1000」となっている場合において、制御タスクがロボット動作実行中に発生した異常コードが「1000」の場合、制御タスクは異常発生コード「1000」をRAM105の所定のアドレスに書き込む。制御タスクから解析タスクに実行が移ったとき、解析タスクは、RAM105をチェックする。RAM105に異常発生コード「1000」が書き込まれている場合は、異常発生コードが記録方法ファイルの記録トリガ情報に指定されている異常発生コードであるので、記録対象メモリ情報に指定されている記録対象メモリスタートアドレス212、記録対象メモリエンドアドレス213、記録対象メモリスタートアドレス214、記録対象メモリエンドアドレス215、記録対象メモリスタートアドレス216、記録対象メモリエンドアドレス217のRAM105のデータを読み出し、TP−CPU110経由でTPメモリスロット111に接続された記録メディアに記録データファイルとして書き出す。
【0072】
解析タスク実行中、制御装置CPU103は、記録トリガ項目202の内容を解釈し、記録トリガ項目202の記録トリガ項目Bit1が「1」となっていて、記録トリガ項目202がメモリ状態遷移時となっている場合において、RAM105のメモリ状態を監視する。制御タスクから解析タスクに実行が移ったとき、解析タスクはRAM105のメモリ状態をチェックし、記録方法ファイルのメモリアドレス207のデータが遷移値208で指定された値に変化したとき、記録対象メモリ情報の記録対象メモリスタートアドレス212から記録対象メモリエンドアドレス217に指定されているアドレスのRAM105のデータを読み出し、TP−CPU110経由でTPメモリスロット111に接続された記録メディアに記録データファイルとして書き出す。
【0073】
例えば、図2に示すように、メモリアドレス207のアドレスは「1F000000」となっているので、解析タスクはRAM105のアドレス「1F000000」の値をチェックする。遷移値208の値は「01」となっているので、アドレス「1F000000」の値が「01」となったとき、記録対象メモリ情報の記録対象メモリスタートアドレス212から記録対象メモリエンドアドレス217で指定されている記録対象メモリスタートアドレス212、記録対象メモリエンドアドレス213、記録対象メモリスタートアドレス214、記録対象メモリエンドアドレス215、記録対象メモリスタートアドレス216、記録対象メモリエンドアドレス217のデータをRAM105から読み出し、TP−CPU110を経由してTPメモリスロット111に接続された記録メディアに記録データファイルとして書き出す。
【0074】
なお、記録メディアに記録データファイルとして書き出す際のフォーマットは、図3を用いて前述した記録データファイルのフォーマットで書き出す。
【0075】
次に、ロボット制御装置102内に設けられた記録メディアスロットである制御装置メモリスロット107に接続された記録メディア内の記録方法ファイルを自動的に読み出し、記録データファイルをロボット制御装置102内の制御装置メモリスロット107に接続された記録メディアに書き出す方法について説明する。
【0076】
先ず、記録メディアを制御装置メモリスロット107に接続したときの制御装置CPU103の処理について説明する。予め図2に示すような記録方法ファイルが書き込まれた記録メディアを制御装置メモリスロット107に接続したとき、制御装置メモリスロットコントローラ108は、記録メディアが制御装置メモリスロット107に接続されたことを検知する。この検知方法としては、例えば制御装置メモリスロット107に設けられたメカニカルスイッチが記録メディアにより押下されたことを電気的に検知してもよい。あるいは、制御装置メモリスロットコントローラ108が制御装置メモリスロット107に対して常に電圧を印加し、記録メディアが制御装置メモリスロット107に接続されたときに電気信号が変化することにより検知してもよい。
【0077】
制御装置メモリスロットコントローラ108が、記録メディアが接続されたことを検知すると、制御装置CPU103に割り込み信号として通知する。割り込み信号は、制御装置CPU103のピンに接続され、ハードウェア上の信号として制御装置CPU103に入力される。制御装置CPU103に割り込み信号が入ると、制御装置CPU103により割り込み処理が実行される。なお、以降の記録方法ファイルの読み出しや解析タスクの実行は、前述した処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。そして、記録データファイルとして書き出す際には、制御装置CPU103が、制御装置メモリスロットコントローラ108を経由して制御装置メモリスロット107に接続された記録メディアに対して記録データファイルを保存する。
【0078】
なお、記録方法ファイルの読み出しがTPメモリスロット111に接続された記録メディアからの読み出しであり、保存が制御装置メモリスロット107に接続された記録メディアであってもよい。
【0079】
また、記録方法ファイルの読み出しが制御装置メモリスロット107に接続された記録メディアからの読み出しであり、保存がTPメモリスロット111に接続された記録メディアであってもよい。
【0080】
以上のように、実施の形態1によれば、産業用ロボットの運転中にTPメモリスロット111または制御装置メモリスロット107に、記録方法ファイルを記録した記録メディアを取り付け、記録方法ファイルを読み出してRAM105に記録することにより、記録対象メモリ情報としてどのデータを記録するのかの設定を、産業用ロボットの運転稼動を停止することなく、産業用ロボットの運転稼働中に設定することができる。特に、24時間連続して運転しており停止することができない産業用ロボットにおいて非常に有用である。
【0081】
また、情報を記録するタイミングを示す記録トリガとして、異常時だけでなく状態遷移時を設定するようにしたことで、異常時だけでなく状態遷移時の情報も取得することができる。
【0082】
また、TPメモリスロット111または制御装置メモリスロット107に、記録方法ファイルを記録した記録メディアを取り付け、記録方法ファイルを読み出してRAM105に記録することにより、ロボット制御装置102やティーチペンダント109の操作を行うことなく、記録トリガやどのデータを記録するか等の設定を行うことができ、作業者の設定の負担を抑制することができる。そして、記録方法ファイルとして、例えば産業用ロボットのメーカー等が必要とする異常要因解析に必要な情報を記録しておくことで、異常要因解析に必要な情報を容易に取得することが可能となり、メーカー等による異常要因解析に非常に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の産業用ロボットは、産業用ロボットの稼動を停止することなく産業用ロボットの異常解析を行うことができ、例えば工場の生産ライン等で使用する産業用ロボットとして産業上有用である。
【符号の説明】
【0084】
101 ロボット
102 ロボット制御装置
103 制御装置CPU
104 ROM
105 RAM
106 モータ制御部
107 制御装置メモリスロット
108 制御装置メモリスロットコントローラ
109 ティーチペンダント
110 TP−CPU
111 TPメモリスロット
112 TPメモリスロットコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、前記ロボットを操作するティーチペンダントとを備えた産業用ロボットであって、
前記ロボット制御装置および/または前記ティーチペンダントは記録メディアスロットを有し、前記記録メディアスロットに接続された記録メディア内に記憶されており前記産業用ロボットの動作中に記憶する情報を定義した記録方法ファイルを前記記録メディアの接続時に自動的に読み出し、前記記録方法ファイルを構成しており情報を記録するトリガとなる記録トリガの監視や記録した情報の書き出しを含む処理を行う解析用機能の実行を自動的に開始する産業用ロボット。
【請求項2】
産業用ロボットの動作中に記録メディアの情報の読み込みを可能とし、前記産業用ロボットの運転稼動を停止せずに、前記産業用ロボットの動作中で記録メディアスロットに前記記録メディアが接続された時に、前記記録メディアスロットに接続された前記記録メディア内の記録方法ファイルを自動的に読み出し、解析用機能の実行を自動的に開始する請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
記録方法ファイルは、所定の異常コードおよび/または所定のメモリ状態遷移が生じた時に記録を行うかを定義する記録トリガ項目と、異常コードの具体例である異常コード番号および/または前記メモリ状態遷移が行われるメモリアドレスを定義する記録トリガ情報と、記録を行う際の記録範囲としてのロボット制御装置内のメモリアドレスを定義する記録対象メモリ情報を含む請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
記録方法ファイルの記録トリガ項目として指定されている記録トリガの発生時に、ロボット制御装置に記録されており記録対象メモリ情報で定義されている情報を記録メディアスロットに接続されている記録メディアに保存する請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
記録トリガ項目は、異常発生時および/または所定の記憶部の所定のアドレスの情報が所定の値になったことを示すメモリ状態遷移である請求項3または4記載の産業用ロボット。
【請求項6】
記録方法ファイルの読み出しは、ロボット制御装置に設けられた記録メディアスロットに接続された記録メディア内の記録方法ファイル、または、ティーチペンダントに設けられた記録メディアスロットに接続された記録メディア内の記録方法ファイルの一方から記録メディア接続時に自動的に記録方法ファイルを読み出すとともに、記憶を行った情報を、前記ロボット制御装置の記録メディアスロットに接続された記録メディア、または、ティーチペンダントの記録メディアスロットに接続された記録メディアの少なくとも一方に保存する請求項4記載の産業用ロボット。
【請求項7】
産業用ロボットは、24時間連続して運転されるものである請求項1から6のいずれか1項に記載の産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228734(P2012−228734A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96800(P2011−96800)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】