産科分娩台の支脚器開閉装置
【課題】 開閉装置にあっては、分娩台の昇降、背凭れの起伏等の制御を行なう油圧シリンダの油圧制御回路と、患者の脚力によってモータへの通電を遮断するモータ制御回路とが必要となるため回路構成が複雑となり、かつ、モータ制御によって開閉動作をさせるための機構が複雑となるため製造コストが高くなるといった問題があった。
【解決手段】 一端が分娩台本体側に軸支され他端に支脚器11が取付けられた一対の回動リンク12と、該回動リンクと前記分娩台本体側との間に設置された複動型の支脚器用油圧シリンダ13と、前記回動リンクの回転量を検出するセンサ12aと、前記支脚器用油圧シリンダと油圧ポンプOPとを接続する分岐された油パイプと、該油パイプにおける前記油圧ポンプと前記分岐点との間に取付けられた1つの電磁弁EVと、前記センサよりの出力で前記電磁弁への通電を遮断する制御回路ORとから構成した産科分娩台の支脚器開閉装置である。
【解決手段】 一端が分娩台本体側に軸支され他端に支脚器11が取付けられた一対の回動リンク12と、該回動リンクと前記分娩台本体側との間に設置された複動型の支脚器用油圧シリンダ13と、前記回動リンクの回転量を検出するセンサ12aと、前記支脚器用油圧シリンダと油圧ポンプOPとを接続する分岐された油パイプと、該油パイプにおける前記油圧ポンプと前記分岐点との間に取付けられた1つの電磁弁EVと、前記センサよりの出力で前記電磁弁への通電を遮断する制御回路ORとから構成した産科分娩台の支脚器開閉装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産科分娩台において患者が検診あるいは分娩を受ける時に、患者の下肢を支脚器に載せた状態で開脚を行なうための産科分娩台の支脚器開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における産科分娩台の支脚器開閉装置としては、例えば、特開2000−51293号公報や特開2001−29404号公報に記載の発明がある。この発明に開示されている支脚器開閉装置にあっては、駆動源をモータとなし、該モータの駆動力をギアを介して支脚器に取付けられた回動リンクを左右方向に回動し、該回動リンクの先端に取付けられている支脚器に載せられている患者の下肢を開脚、閉脚状態とするものである。
【0003】
ところで、前記した開閉装置にあっては、支脚器と腰受けの裏面側に引出し可能に取付けられている新生児受台、または、左右の支脚器との間に人や干渉物が当たっても、前記モータの駆動力よりも大きな負荷が加わらないと支脚器が閉じてしまい、また、分娩中において支脚器を開閉させている間に患者の体位に無理が生じても患者の脚力では停止せず支脚器が開閉動作が継続され患者に苦痛を与えるという問題があった。
【0004】
前記した問題点を解決するものとして、特開2002−248134号公報に開示されている発明がある。この発明に開示されている支脚器開閉装置はモータに設定値以上の負荷である患者の脚力による負荷が加わりモータへの電流量が増加するとモータへの通電を遮断して開脚動作を停止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−51293号公報
【特許文献2】特開2001−29404号公報
【特許文献3】特開2002−248134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した開閉装置にあっては、分娩台の昇降、背凭れの起伏等の制御を行なう油圧シリンダの油圧制御回路と、患者の脚力によってモータへの通電を遮断するモータ制御回路とが必要となるため回路構成が複雑となり、かつ、モータ制御によって開閉動作をさせるための機構が複雑となるため製造コストが高くなるといった問題があった。
【0007】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、支脚器の開閉動作を油圧ポンプによって行なうことで、分娩台の昇降、背凭れ等の制御を油圧シリンダで行なうようにしたので、制御回路としては油圧制御回路のみで済むことから回路構成が簡単になると共に製造コストの低減を図ることができる産科分娩台の支脚器開閉装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の産科分娩台の支脚器開閉装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、一端が分娩台本体側に軸支され他端に支脚器が取付けられた一対の回動リンクと、該回動リンクと前記分娩台本体側との間に設置された複動型の支脚器用油圧シリンダと、前記回動リンクの回転量を検出するセンサと、前記支脚器用油圧シリンダと油圧ポンプとを接続する分岐された油パイプと、該油パイプにおける前記油圧ポンプと前記分岐点との間に取付けられた1つの電磁弁と、前記センサよりの出力で前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断する制御回路とから構成し、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断し前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して前記一対の回動リンクの動作が停止され前記支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする。
【0009】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記電磁弁を前記分岐された油パイプに取付け、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、負荷が加わった側の油パイプに取付けられた電磁弁が前記制御回路によって閉じられ負荷が加わった側の前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して回動リンクの動作を停止され、該回動リンクに取付けられている支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の産科分娩台の支脚器開閉装置は前記したように、2つの支脚器の何れかに負荷が加わり支脚器が取付けられている回動リンクに負荷が加わったことをセンサが検出すると、制御回路によって油圧ポンプ側に取付けられている電磁弁が閉じて2つの支脚器用シリンダへの油の供給が停止して一対の回動リンクの動作を停止させ支脚器の開閉動作を停止するようにしたので、分娩台の昇降、背凭れ等の制御を油圧シリンダで行なうことにより、制御回路としては油圧制御回路のみで済むことから回路構成が簡単になると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、前記電磁弁を前記分岐された油パイプに取付け、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、負荷が加わった側の油パイプに取付けられた電磁弁が前記制御回路によって閉じられ負荷が加わった側の回動リンクの動作を停止させ、該回動リンクに取付けられている支脚器の開閉動作を停止させることで、患者の一方の脚力に問題があるような場合に、該脚力に問題がある下肢を受けている支脚器のみを停止することで患者の開脚角度が大きくなるので施術が行い易くなる。また、施術中に医師等が患者の一方の下肢のみの開脚角度を変更したいような場合には、前記各別に接続されている電磁弁を外部から操作可能する構造とすることで、患者の開脚度合いを自由に変更して施術がやり易くなる等の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の産科分娩台の支脚器の一実施例を示すベッド状態の斜視図である。
【図2】図1の支脚器部分を除く側面図である。
【図3】支脚器を開脚した状態の斜視図である。
【図4】支脚器の開閉装置部分と支脚器部分の側面図である。
【図5】支脚器を閉脚した状態の開閉装置を示す平面図である。
【図6】支脚器を開脚した状態の斜視図である。
【図7】支脚器の開閉装置の要部を示す裏面図である。
【図8】開閉装置の制御を行なうためのブロック図である。
【図9】ブロック図による動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】支脚器を閉じ支脚器の下肢受けを屈曲した状態の斜視図である。
【図11】図10の支脚器を開脚した状態の斜視図である。
【図12】支脚器の下肢受けをフラット状態とした側面図である。
【図13】支脚器の下肢受けを屈曲状態とした斜側面である。
【図14】図11の要部を示す斜視図である。
【図15】支脚器の下肢受けに帆布を装着した状態の斜視図である。
【図16】図13に患者の下肢を載置した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の支脚器を備えた産科分娩台の概略を図1〜図3と共に説明する。
Aは妊婦の検診や出産時に使用される分娩台にして、1は産婦人科等の床面に設置される基台、2は該基台1のボックス1a内に設けられた昇降用シリンダによって上下動する支持台、3は該支持台2に取付けられ分娩等の施術時に医者から産道が見やすくなるように図示しない腰受け用シリンダによってチルト動作する腰受け、4は前記支持台2に対して背凭れ用シリンダ5によって起伏する背凭れである。なお、分娩台Aを基台1に対して回転可能に取付け、フリー状態とロック状態となるように構成してもよい。
【0014】
また、前記支持台2は前記基台1との間に設けられた1つの縦転用シリンダ6によって長手方向に所望の角度だけ縦転し、また、2つの横転用シリンダ7によって横方向に所望の角度だけ横転可能に構成されており、施術の状況に応じて患者を縦方向と横方向に傾斜可能に構成されている。そして、前記した昇降用シリンダによって上下動する支持台2、腰受け用シリンダ、背凭れ用シリンダ5、縦転用シリンダ6、横転用シリンダ7は公知のフットペダルFP(図8参照)の操作によって制御可能となっている。
【0015】
さらに、8は背凭れ4の両側に着脱自在に取付けられ患者の上半身を保護するサイドフェンス、9は出産時に患者が意気込む時に握る怒責グリップである。
【0016】
次に、前記腰受け3の先端側に取付けられている支持板10に取付けた一対の支脚器11を開閉するための支脚器開閉装置の構造について図4〜図7と共に説明する。
【0017】
一対の支脚器11は支持板10に水平方向に回動自在に取付けられた回動リンク12の先端に取付けられており、該回動リンク12の略中間位置に一端が支持板10に軸支された公知である複動型の支脚器用シリンダ13のロッド側が軸支されている。従って、支脚器用シリンダ13のシリンダ内にロッドが伸びる側に油が供給されるとロッドが吐出され2つの支脚器11は近接状態となり、また、シリンダ内のロッドが縮む側に油が供給されると離開されることとなる。
【0018】
また、前記2つの支脚器用シリンダ13は図示しない油圧ポンプから延長された1本の油パイプを途中で2本に分岐し、その分岐された油パイプの先端に取付けられ2つの支脚器用シリンダ13に同時に油が供給され、あるいは排油される。また、回動リンク12の回動軸部にはセンサSの1つであるポテンショメーター12aが取付けられ、該ポテンショメーター12aの回転軸には前記支持板10に固定されたギア10aが噛合され、回動リンク12の回動量に応じて抵抗値が変化するように構成されている。また、前記油パイプにおける油圧ポンプOP(図8参照)と分岐点との間には電磁弁EV(図8参照)が取付けられている。
【0019】
次に、図8に示す開閉装置の制御を行なうためのブロック図について説明する。
ORは支脚器11の離開・近接を操作するめのスイッチを操作することで油圧ポンプOPや電磁弁EVを制御するためのマイクロプロセッサである。該制御回路ORに入力側にはフットペダルFPとセンサS(実施例ではポテンショメーター12a)が接続されている。また、制御回路ORの出力側には油圧ポンプOPと電磁弁EVが接続されている。
【0020】
前記制御回路ORには図9に示すフローチャートの動作を実行するためのプログラムが記憶され、また、ROMは油圧ポンプOPと電磁弁EVの動作を制御し、さらにRAMは必要に応じて記憶させて動作を制御するように構成されている。
【0021】
なお、制御回路ORは前記した背凭れ4の起伏を行なう背凭れ用シリンダ5、腰受け用シリンダ(図示せず)、縦転用シリンダ6および横転用シリンダ7を制御するための回路も組み込まれている。また、前記フットペダルFPには背凭れの起伏制御用スイッチ、腰受け制御用スイッチ、縦転制御用スイッチおよび横転制御用スイッチが組み込まれている。
【0022】
次に、支脚器11の開閉動作を図9のフローチャートと共に説明する。
図1、図5に示すように支脚器11が閉じられている状態、すなわち、支脚器用油圧シリンダ13内にロッドが伸びる側に油が滞留している状態、あるいは図3、図6に示すように支脚器11が離れている状態、すなわち、支脚器用油圧シリンダ13内にロッドが縮む側に油が滞留した状態において、フットペダルFPの支脚器開閉用のスイッチが操作されたか否かを制御回路ORは監視している(ステップS1)。
【0023】
この監視において支脚器開閉用のスイッチが操作されたことを確認すると、電磁弁EVに通電して油圧回路を開放する(ステップS2)と共に油圧ポンプOPを駆動させる(ステップS3)。
【0024】
前記支脚器開閉用スイッチが支脚器11を離開させるためのスイッチである場合には、支脚器用油圧シリンダ13内のロッドが縮む側に油が供給され、これによりロッドがシリンダ内に移動するので、回動リンク12は左右方向が離開する方向に回動される。従って、左右の支脚器11は離開方向に回動され、また、前記支脚器開閉用スイッチが支脚器11を近接させるためのスイッチである場合には、支脚器用油圧シリンダ13内のロッドが伸びる側に油が供給され、これによりロッドがシリンダから吐出するので、回動リンク12は近接方向に回動される。従って、左右の支脚器11は近接方向に回動される(ステップS4)。
【0025】
前記回動リンク12が離開方向あるいは近接方向に回動されると、該回動リンク12に取付けられているポテンショメーター12aの抵抗値がギア10aとの噛合によって一定の変化量で変化する。そして、この変化量を制御回路OPで常に監視し(ステップS5)、何らかの原因、例えば、人や干渉物が一方の支脚器11に当たった場合には回動リンク12の回動速度に変化が生じ、その結果、ポテンショメーター12aの抵抗値変化量が異なる状態となる。
【0026】
なお、1つの支脚器11に人や干渉物が当たった側の支脚器用油圧シリンダ13には油が流れ難くなった分だけ、他の支脚器用油圧シリンダ13に余分に油が流れ込むことになるが、前記ポテンショメーター12aが抵抗値変化量を検出したことにより制御回路OPは油圧ポンプOPの駆動を停止する(ステップS7)と共に電磁弁EVへの通電を停止(ステップS8)する。従って、外力が加わった回動リンク12への油の供給が停止されると非常に短い時間差の後に外力が加わらなかった回動リンク12への油の供給も停止されるので、2つの支脚器11は略同じ離開角度で停止することとなる。
【0027】
前記ステップS5の監視においてポテンショメーター12aが予め設定した抵抗値変化を検出しなかった場合には、制御回路OPは予め設定した支脚器の離開終了位置におけるポテンショメーター12aの抵抗値となったか否かを監視する(ステップS6)。
【0028】
前記ステップS6において制御回路OPが支脚器の離開終了位置におけるポテンショメーター12aの抵抗値になったと判断すると、制御回路OPは油圧ポンプOPの駆動を停止する(ステップS7)と共に電磁弁EVへの通電を停止(ステップS8)して、支脚器11は患者の下肢を開脚あるいは閉脚状態とする。
【0029】
なお、前記した図9のフローチャートでの説明では、支脚器用油圧シリンダ13への油の供給を停止するための電磁弁EVを油圧ポンプと分岐点との間の油パイプに設け、一方の支脚器11に外力が加わった時に両方の支脚器の開閉動作を停止した場合について説明したが、該電磁弁EVを油パイプの分岐部分にそれぞれ取付けることで、何れか一方のポテンショメーター12aの抵抗値が異常に変化した時に、該異常を検出した側の支脚器用油圧シリンダ13に接続されている側の電磁弁EVのみを停止するようにしてもよい。
【0030】
このような構成とすることで、例えば、患者の一方の脚力や股関節に問題あり大きく開脚できないような場合には、該脚力や股関節に問題がある下肢を受けている側の回動リンク12のポテンショメーター12aが異常を検出すると、前記回動リンク12の回動を制御する支脚器用シリンダ13へ油を供給する油パイプ側に取付けられている電磁弁EVへの通電を遮断することで1つの支脚器11のみが停止し、他の回動リンク12は最終開脚位置まで回動して停止するので、前記動作説明の場合よりも患者の開脚角度が大きくなり、従って、産道が見やすくなって施術が行い易くなる。
【0031】
また、施術中に医師等が患者の一方の下肢のみの開脚角度を変更したいような場合には、前記各別に接続されている電磁弁を外部から操作可能とする構造、例えば、背凭れ4の側面に2つの電磁弁EVを各別に制御するためのスイッチを配置することで、患者の開脚度合いを自由に変更することも可能である。
【0032】
なお、前記した実施例では、回動リンク12の回動異常をポテンショメーター12aの抵抗値変化で検出した場合について説明したが、ポテンショメーター12aに変えて回動リンク12の回動時に発生する圧力を検出する圧力センサ、ロータリーエンコーダ、タコジェネレータ等のセンサや、それぞれの支脚器用油圧シリンダ13に繋がる油パイプ内の油圧を検出する油圧センサであってもよい。
【0033】
次に、支脚器11の具体的な構成について図10〜図16と共に説明する。
支脚器11は前記した回動リンク12の先端に固定された支柱111に固定板112が固定されており、該固定板112の両端には後述する一対のパイプフレーム113と、患者の足裏を載せるための足載せ台114を軸支するための取付部材115が取付けられている。また、前記固定板112の前記パイプフレーム113側には水平方向に伸びる受け台116が固定されている。
【0034】
パイプフレーム113と足載せ台114は取付部材115に相対向して回動自在に軸支され、かつ、パイプフレーム113と足載せ台114との対向部には連結リンク117で連結されている。また、前記取付部材115の裏面から垂下された垂下片115aにはガスシリンダ118のシリンダ側が軸支され、該ガスシリンダ118のロッド側が足載せ台114の先端に軸支されている。なお、ガスシリンダ118には解除レバー118aが設けられており、該解除レバー118aを操作するとロッドがシリンダより吐出して足載せ台114を図12、図13において反時計方向に回動する。
【0035】
そして、足載せ台114が反時計方向に回動されると、連結リンク117が変移することでパイプフレーム113が時計方向に回動され足載せ台114とパイプフレーム113とはV字状態となる。なお、このV字状態において、足載せ台114に対してパイプフレーム113の方が鋭角状態となるように連結アーム117によって調整されている。
【0036】
119は下肢受け部材にして、帆布等のシート材で構成したハンモック式の脹ら脛受け部119aと足裏受け部119bとより構成されている。脹ら脛部119a内には患者の脹ら脛を支持した時に湾曲形状となるよう僅かな量のクッション材が挿入され、かつ、裏面側に前記したパイプフレーム113を差し込むための筒状部119cが形成されている。
【0037】
また、足裏受け部119bは前記脹ら脛部119aと折り込み部119dを介して連結されており、脹ら脛受け部119aの筒状部119cをパイプフレーム113に差し込んだ状態で前記した足載せ台114の上面に載置されるように構成されている。なお、足裏受け部119b内にもクッション材が挿入されている。
【0038】
前記した下肢受け部材119は脹ら脛受け部119aと足裏受け部119bとを一体化したものとすることで、脹ら脛受け部119aをパイプフレーム113に差し込むことで、足裏受け部119bを足載せ台114に載置するだけで患者の脹ら脛と足先を支持することができ、従って、脹ら脛受け部119aと足裏受け部119bとを別個に製作するよりも簡単で、かつ、支脚器11への設置も簡単に行なえるという利点を有するが、必ずしも、一体化する必要はなく足裏受け部119bを足載せ台114を別個に製作し、足裏受け部119bを足載せ台114に紐等で固定してもよい。
【0039】
次に、支脚器11の動作について説明するに、図1に示す分娩台に患者が仰臥状態で乗り、あるいは背凭れ4が起立した椅子の状態で乗る。この時は、支脚器11は近接状態となっている。
【0040】
この状態から検診を受けたり分娩を行なう場合には、支脚器11を前記した支脚器開閉装置によって図3に示す患者の足が開脚状態となるように離開状態とする。この状態において医師や看護師がガスシリンダ118の解除レバー118aを操作するとガスシリンダ118のロッドが吐出して足載せ台114が取付部材115に軸支された部分より起立方向に変移される。
【0041】
この足載せ台114の変移に伴って連結リンク117を介してパイプフレーム113が受け台116から離れる方向に起立する。そして、ガスシリンダ118のロッドが最終位置まで吐出した状態で足載せ台114とパイプフレーム113の起立は解除レバー118aを戻すことで最大限の状態となって停止する。
【0042】
この状態において患者の脹ら脛部はパイプフレーム113に取付けられた下肢受け部材119における脹ら脛受け部119aによって支持され、また、足裏は足裏受け部119bに載置された状態となる。
【0043】
ところで、患者の脹ら脛部が脹ら脛受け部119aによって支持されるが、脹ら脛受け部119aはハンモック式となっているので、患者の脹ら脛部を湾曲状態で支持して脹ら脛部が沈み込むことになる。従って、脹ら脛部を患者が動かそうと思っても左右方向への滑りが防止されるので、患者はフィット感を得た状態で常にホールドされることとなり、検診や分娩施術が容易に行なえるものである。
【0044】
なお、パイプフレーム113と足載せ台114との起立角度を、パイプフレーム113の起立角度を足載せ台114の起立角度よりも大きくしたことにより、患者の脹ら脛部の脹ら脛受け部119aによるホールド性が向上され、より確実に患者の脹ら脛部を固定状態で保持することが可能となる。また、筒状部119cがパイプフレーム113をスライドすることで、様々な患者の身長差による足の長さに対応でき、さらには、下肢受け部材119の傾動動作による足への当たり部分への変化にも対応できるようにしている。
【0045】
そして、患者の検診や分娩が終了した後は、ガスシリンダ118の解除レバー118aを操作すると共に足載せ台114を水平方向に戻すことで、下肢受け部材119は水平状態となり、また、支脚器開閉装置によって支脚器11は近接状態となって患者の足は閉脚状態となる。
【0046】
前記した下肢受け部材119が水平状態となった時に、前記下肢受け部材119における脹ら脛受け部119aが受け台116に載った状態となることから、患者の脹ら脛は受け台116で支持されるので、患者の下肢は水平状態に維持され、かつ、脹ら脛受け部119aは平坦な状態に戻される。
【0047】
なお、前記した実施例にあっては、足載せ台114をガスシリンダ118によって起伏させるようにしたが、ガスシリンダに代えて油圧シリンダや電動機とギアとの組み合わせた他のアクチュエータを利用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
11 支脚器
12 回動リンク
12a ポテンショメーター(センサ)
13 支脚器用油圧シリンダ
OR 制御回路
OP 油圧ポンプ
EV 電磁弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、産科分娩台において患者が検診あるいは分娩を受ける時に、患者の下肢を支脚器に載せた状態で開脚を行なうための産科分娩台の支脚器開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における産科分娩台の支脚器開閉装置としては、例えば、特開2000−51293号公報や特開2001−29404号公報に記載の発明がある。この発明に開示されている支脚器開閉装置にあっては、駆動源をモータとなし、該モータの駆動力をギアを介して支脚器に取付けられた回動リンクを左右方向に回動し、該回動リンクの先端に取付けられている支脚器に載せられている患者の下肢を開脚、閉脚状態とするものである。
【0003】
ところで、前記した開閉装置にあっては、支脚器と腰受けの裏面側に引出し可能に取付けられている新生児受台、または、左右の支脚器との間に人や干渉物が当たっても、前記モータの駆動力よりも大きな負荷が加わらないと支脚器が閉じてしまい、また、分娩中において支脚器を開閉させている間に患者の体位に無理が生じても患者の脚力では停止せず支脚器が開閉動作が継続され患者に苦痛を与えるという問題があった。
【0004】
前記した問題点を解決するものとして、特開2002−248134号公報に開示されている発明がある。この発明に開示されている支脚器開閉装置はモータに設定値以上の負荷である患者の脚力による負荷が加わりモータへの電流量が増加するとモータへの通電を遮断して開脚動作を停止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−51293号公報
【特許文献2】特開2001−29404号公報
【特許文献3】特開2002−248134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した開閉装置にあっては、分娩台の昇降、背凭れの起伏等の制御を行なう油圧シリンダの油圧制御回路と、患者の脚力によってモータへの通電を遮断するモータ制御回路とが必要となるため回路構成が複雑となり、かつ、モータ制御によって開閉動作をさせるための機構が複雑となるため製造コストが高くなるといった問題があった。
【0007】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、支脚器の開閉動作を油圧ポンプによって行なうことで、分娩台の昇降、背凭れ等の制御を油圧シリンダで行なうようにしたので、制御回路としては油圧制御回路のみで済むことから回路構成が簡単になると共に製造コストの低減を図ることができる産科分娩台の支脚器開閉装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の産科分娩台の支脚器開閉装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、一端が分娩台本体側に軸支され他端に支脚器が取付けられた一対の回動リンクと、該回動リンクと前記分娩台本体側との間に設置された複動型の支脚器用油圧シリンダと、前記回動リンクの回転量を検出するセンサと、前記支脚器用油圧シリンダと油圧ポンプとを接続する分岐された油パイプと、該油パイプにおける前記油圧ポンプと前記分岐点との間に取付けられた1つの電磁弁と、前記センサよりの出力で前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断する制御回路とから構成し、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断し前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して前記一対の回動リンクの動作が停止され前記支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする。
【0009】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記電磁弁を前記分岐された油パイプに取付け、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、負荷が加わった側の油パイプに取付けられた電磁弁が前記制御回路によって閉じられ負荷が加わった側の前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して回動リンクの動作を停止され、該回動リンクに取付けられている支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の産科分娩台の支脚器開閉装置は前記したように、2つの支脚器の何れかに負荷が加わり支脚器が取付けられている回動リンクに負荷が加わったことをセンサが検出すると、制御回路によって油圧ポンプ側に取付けられている電磁弁が閉じて2つの支脚器用シリンダへの油の供給が停止して一対の回動リンクの動作を停止させ支脚器の開閉動作を停止するようにしたので、分娩台の昇降、背凭れ等の制御を油圧シリンダで行なうことにより、制御回路としては油圧制御回路のみで済むことから回路構成が簡単になると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、前記電磁弁を前記分岐された油パイプに取付け、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、負荷が加わった側の油パイプに取付けられた電磁弁が前記制御回路によって閉じられ負荷が加わった側の回動リンクの動作を停止させ、該回動リンクに取付けられている支脚器の開閉動作を停止させることで、患者の一方の脚力に問題があるような場合に、該脚力に問題がある下肢を受けている支脚器のみを停止することで患者の開脚角度が大きくなるので施術が行い易くなる。また、施術中に医師等が患者の一方の下肢のみの開脚角度を変更したいような場合には、前記各別に接続されている電磁弁を外部から操作可能する構造とすることで、患者の開脚度合いを自由に変更して施術がやり易くなる等の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の産科分娩台の支脚器の一実施例を示すベッド状態の斜視図である。
【図2】図1の支脚器部分を除く側面図である。
【図3】支脚器を開脚した状態の斜視図である。
【図4】支脚器の開閉装置部分と支脚器部分の側面図である。
【図5】支脚器を閉脚した状態の開閉装置を示す平面図である。
【図6】支脚器を開脚した状態の斜視図である。
【図7】支脚器の開閉装置の要部を示す裏面図である。
【図8】開閉装置の制御を行なうためのブロック図である。
【図9】ブロック図による動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】支脚器を閉じ支脚器の下肢受けを屈曲した状態の斜視図である。
【図11】図10の支脚器を開脚した状態の斜視図である。
【図12】支脚器の下肢受けをフラット状態とした側面図である。
【図13】支脚器の下肢受けを屈曲状態とした斜側面である。
【図14】図11の要部を示す斜視図である。
【図15】支脚器の下肢受けに帆布を装着した状態の斜視図である。
【図16】図13に患者の下肢を載置した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の支脚器を備えた産科分娩台の概略を図1〜図3と共に説明する。
Aは妊婦の検診や出産時に使用される分娩台にして、1は産婦人科等の床面に設置される基台、2は該基台1のボックス1a内に設けられた昇降用シリンダによって上下動する支持台、3は該支持台2に取付けられ分娩等の施術時に医者から産道が見やすくなるように図示しない腰受け用シリンダによってチルト動作する腰受け、4は前記支持台2に対して背凭れ用シリンダ5によって起伏する背凭れである。なお、分娩台Aを基台1に対して回転可能に取付け、フリー状態とロック状態となるように構成してもよい。
【0014】
また、前記支持台2は前記基台1との間に設けられた1つの縦転用シリンダ6によって長手方向に所望の角度だけ縦転し、また、2つの横転用シリンダ7によって横方向に所望の角度だけ横転可能に構成されており、施術の状況に応じて患者を縦方向と横方向に傾斜可能に構成されている。そして、前記した昇降用シリンダによって上下動する支持台2、腰受け用シリンダ、背凭れ用シリンダ5、縦転用シリンダ6、横転用シリンダ7は公知のフットペダルFP(図8参照)の操作によって制御可能となっている。
【0015】
さらに、8は背凭れ4の両側に着脱自在に取付けられ患者の上半身を保護するサイドフェンス、9は出産時に患者が意気込む時に握る怒責グリップである。
【0016】
次に、前記腰受け3の先端側に取付けられている支持板10に取付けた一対の支脚器11を開閉するための支脚器開閉装置の構造について図4〜図7と共に説明する。
【0017】
一対の支脚器11は支持板10に水平方向に回動自在に取付けられた回動リンク12の先端に取付けられており、該回動リンク12の略中間位置に一端が支持板10に軸支された公知である複動型の支脚器用シリンダ13のロッド側が軸支されている。従って、支脚器用シリンダ13のシリンダ内にロッドが伸びる側に油が供給されるとロッドが吐出され2つの支脚器11は近接状態となり、また、シリンダ内のロッドが縮む側に油が供給されると離開されることとなる。
【0018】
また、前記2つの支脚器用シリンダ13は図示しない油圧ポンプから延長された1本の油パイプを途中で2本に分岐し、その分岐された油パイプの先端に取付けられ2つの支脚器用シリンダ13に同時に油が供給され、あるいは排油される。また、回動リンク12の回動軸部にはセンサSの1つであるポテンショメーター12aが取付けられ、該ポテンショメーター12aの回転軸には前記支持板10に固定されたギア10aが噛合され、回動リンク12の回動量に応じて抵抗値が変化するように構成されている。また、前記油パイプにおける油圧ポンプOP(図8参照)と分岐点との間には電磁弁EV(図8参照)が取付けられている。
【0019】
次に、図8に示す開閉装置の制御を行なうためのブロック図について説明する。
ORは支脚器11の離開・近接を操作するめのスイッチを操作することで油圧ポンプOPや電磁弁EVを制御するためのマイクロプロセッサである。該制御回路ORに入力側にはフットペダルFPとセンサS(実施例ではポテンショメーター12a)が接続されている。また、制御回路ORの出力側には油圧ポンプOPと電磁弁EVが接続されている。
【0020】
前記制御回路ORには図9に示すフローチャートの動作を実行するためのプログラムが記憶され、また、ROMは油圧ポンプOPと電磁弁EVの動作を制御し、さらにRAMは必要に応じて記憶させて動作を制御するように構成されている。
【0021】
なお、制御回路ORは前記した背凭れ4の起伏を行なう背凭れ用シリンダ5、腰受け用シリンダ(図示せず)、縦転用シリンダ6および横転用シリンダ7を制御するための回路も組み込まれている。また、前記フットペダルFPには背凭れの起伏制御用スイッチ、腰受け制御用スイッチ、縦転制御用スイッチおよび横転制御用スイッチが組み込まれている。
【0022】
次に、支脚器11の開閉動作を図9のフローチャートと共に説明する。
図1、図5に示すように支脚器11が閉じられている状態、すなわち、支脚器用油圧シリンダ13内にロッドが伸びる側に油が滞留している状態、あるいは図3、図6に示すように支脚器11が離れている状態、すなわち、支脚器用油圧シリンダ13内にロッドが縮む側に油が滞留した状態において、フットペダルFPの支脚器開閉用のスイッチが操作されたか否かを制御回路ORは監視している(ステップS1)。
【0023】
この監視において支脚器開閉用のスイッチが操作されたことを確認すると、電磁弁EVに通電して油圧回路を開放する(ステップS2)と共に油圧ポンプOPを駆動させる(ステップS3)。
【0024】
前記支脚器開閉用スイッチが支脚器11を離開させるためのスイッチである場合には、支脚器用油圧シリンダ13内のロッドが縮む側に油が供給され、これによりロッドがシリンダ内に移動するので、回動リンク12は左右方向が離開する方向に回動される。従って、左右の支脚器11は離開方向に回動され、また、前記支脚器開閉用スイッチが支脚器11を近接させるためのスイッチである場合には、支脚器用油圧シリンダ13内のロッドが伸びる側に油が供給され、これによりロッドがシリンダから吐出するので、回動リンク12は近接方向に回動される。従って、左右の支脚器11は近接方向に回動される(ステップS4)。
【0025】
前記回動リンク12が離開方向あるいは近接方向に回動されると、該回動リンク12に取付けられているポテンショメーター12aの抵抗値がギア10aとの噛合によって一定の変化量で変化する。そして、この変化量を制御回路OPで常に監視し(ステップS5)、何らかの原因、例えば、人や干渉物が一方の支脚器11に当たった場合には回動リンク12の回動速度に変化が生じ、その結果、ポテンショメーター12aの抵抗値変化量が異なる状態となる。
【0026】
なお、1つの支脚器11に人や干渉物が当たった側の支脚器用油圧シリンダ13には油が流れ難くなった分だけ、他の支脚器用油圧シリンダ13に余分に油が流れ込むことになるが、前記ポテンショメーター12aが抵抗値変化量を検出したことにより制御回路OPは油圧ポンプOPの駆動を停止する(ステップS7)と共に電磁弁EVへの通電を停止(ステップS8)する。従って、外力が加わった回動リンク12への油の供給が停止されると非常に短い時間差の後に外力が加わらなかった回動リンク12への油の供給も停止されるので、2つの支脚器11は略同じ離開角度で停止することとなる。
【0027】
前記ステップS5の監視においてポテンショメーター12aが予め設定した抵抗値変化を検出しなかった場合には、制御回路OPは予め設定した支脚器の離開終了位置におけるポテンショメーター12aの抵抗値となったか否かを監視する(ステップS6)。
【0028】
前記ステップS6において制御回路OPが支脚器の離開終了位置におけるポテンショメーター12aの抵抗値になったと判断すると、制御回路OPは油圧ポンプOPの駆動を停止する(ステップS7)と共に電磁弁EVへの通電を停止(ステップS8)して、支脚器11は患者の下肢を開脚あるいは閉脚状態とする。
【0029】
なお、前記した図9のフローチャートでの説明では、支脚器用油圧シリンダ13への油の供給を停止するための電磁弁EVを油圧ポンプと分岐点との間の油パイプに設け、一方の支脚器11に外力が加わった時に両方の支脚器の開閉動作を停止した場合について説明したが、該電磁弁EVを油パイプの分岐部分にそれぞれ取付けることで、何れか一方のポテンショメーター12aの抵抗値が異常に変化した時に、該異常を検出した側の支脚器用油圧シリンダ13に接続されている側の電磁弁EVのみを停止するようにしてもよい。
【0030】
このような構成とすることで、例えば、患者の一方の脚力や股関節に問題あり大きく開脚できないような場合には、該脚力や股関節に問題がある下肢を受けている側の回動リンク12のポテンショメーター12aが異常を検出すると、前記回動リンク12の回動を制御する支脚器用シリンダ13へ油を供給する油パイプ側に取付けられている電磁弁EVへの通電を遮断することで1つの支脚器11のみが停止し、他の回動リンク12は最終開脚位置まで回動して停止するので、前記動作説明の場合よりも患者の開脚角度が大きくなり、従って、産道が見やすくなって施術が行い易くなる。
【0031】
また、施術中に医師等が患者の一方の下肢のみの開脚角度を変更したいような場合には、前記各別に接続されている電磁弁を外部から操作可能とする構造、例えば、背凭れ4の側面に2つの電磁弁EVを各別に制御するためのスイッチを配置することで、患者の開脚度合いを自由に変更することも可能である。
【0032】
なお、前記した実施例では、回動リンク12の回動異常をポテンショメーター12aの抵抗値変化で検出した場合について説明したが、ポテンショメーター12aに変えて回動リンク12の回動時に発生する圧力を検出する圧力センサ、ロータリーエンコーダ、タコジェネレータ等のセンサや、それぞれの支脚器用油圧シリンダ13に繋がる油パイプ内の油圧を検出する油圧センサであってもよい。
【0033】
次に、支脚器11の具体的な構成について図10〜図16と共に説明する。
支脚器11は前記した回動リンク12の先端に固定された支柱111に固定板112が固定されており、該固定板112の両端には後述する一対のパイプフレーム113と、患者の足裏を載せるための足載せ台114を軸支するための取付部材115が取付けられている。また、前記固定板112の前記パイプフレーム113側には水平方向に伸びる受け台116が固定されている。
【0034】
パイプフレーム113と足載せ台114は取付部材115に相対向して回動自在に軸支され、かつ、パイプフレーム113と足載せ台114との対向部には連結リンク117で連結されている。また、前記取付部材115の裏面から垂下された垂下片115aにはガスシリンダ118のシリンダ側が軸支され、該ガスシリンダ118のロッド側が足載せ台114の先端に軸支されている。なお、ガスシリンダ118には解除レバー118aが設けられており、該解除レバー118aを操作するとロッドがシリンダより吐出して足載せ台114を図12、図13において反時計方向に回動する。
【0035】
そして、足載せ台114が反時計方向に回動されると、連結リンク117が変移することでパイプフレーム113が時計方向に回動され足載せ台114とパイプフレーム113とはV字状態となる。なお、このV字状態において、足載せ台114に対してパイプフレーム113の方が鋭角状態となるように連結アーム117によって調整されている。
【0036】
119は下肢受け部材にして、帆布等のシート材で構成したハンモック式の脹ら脛受け部119aと足裏受け部119bとより構成されている。脹ら脛部119a内には患者の脹ら脛を支持した時に湾曲形状となるよう僅かな量のクッション材が挿入され、かつ、裏面側に前記したパイプフレーム113を差し込むための筒状部119cが形成されている。
【0037】
また、足裏受け部119bは前記脹ら脛部119aと折り込み部119dを介して連結されており、脹ら脛受け部119aの筒状部119cをパイプフレーム113に差し込んだ状態で前記した足載せ台114の上面に載置されるように構成されている。なお、足裏受け部119b内にもクッション材が挿入されている。
【0038】
前記した下肢受け部材119は脹ら脛受け部119aと足裏受け部119bとを一体化したものとすることで、脹ら脛受け部119aをパイプフレーム113に差し込むことで、足裏受け部119bを足載せ台114に載置するだけで患者の脹ら脛と足先を支持することができ、従って、脹ら脛受け部119aと足裏受け部119bとを別個に製作するよりも簡単で、かつ、支脚器11への設置も簡単に行なえるという利点を有するが、必ずしも、一体化する必要はなく足裏受け部119bを足載せ台114を別個に製作し、足裏受け部119bを足載せ台114に紐等で固定してもよい。
【0039】
次に、支脚器11の動作について説明するに、図1に示す分娩台に患者が仰臥状態で乗り、あるいは背凭れ4が起立した椅子の状態で乗る。この時は、支脚器11は近接状態となっている。
【0040】
この状態から検診を受けたり分娩を行なう場合には、支脚器11を前記した支脚器開閉装置によって図3に示す患者の足が開脚状態となるように離開状態とする。この状態において医師や看護師がガスシリンダ118の解除レバー118aを操作するとガスシリンダ118のロッドが吐出して足載せ台114が取付部材115に軸支された部分より起立方向に変移される。
【0041】
この足載せ台114の変移に伴って連結リンク117を介してパイプフレーム113が受け台116から離れる方向に起立する。そして、ガスシリンダ118のロッドが最終位置まで吐出した状態で足載せ台114とパイプフレーム113の起立は解除レバー118aを戻すことで最大限の状態となって停止する。
【0042】
この状態において患者の脹ら脛部はパイプフレーム113に取付けられた下肢受け部材119における脹ら脛受け部119aによって支持され、また、足裏は足裏受け部119bに載置された状態となる。
【0043】
ところで、患者の脹ら脛部が脹ら脛受け部119aによって支持されるが、脹ら脛受け部119aはハンモック式となっているので、患者の脹ら脛部を湾曲状態で支持して脹ら脛部が沈み込むことになる。従って、脹ら脛部を患者が動かそうと思っても左右方向への滑りが防止されるので、患者はフィット感を得た状態で常にホールドされることとなり、検診や分娩施術が容易に行なえるものである。
【0044】
なお、パイプフレーム113と足載せ台114との起立角度を、パイプフレーム113の起立角度を足載せ台114の起立角度よりも大きくしたことにより、患者の脹ら脛部の脹ら脛受け部119aによるホールド性が向上され、より確実に患者の脹ら脛部を固定状態で保持することが可能となる。また、筒状部119cがパイプフレーム113をスライドすることで、様々な患者の身長差による足の長さに対応でき、さらには、下肢受け部材119の傾動動作による足への当たり部分への変化にも対応できるようにしている。
【0045】
そして、患者の検診や分娩が終了した後は、ガスシリンダ118の解除レバー118aを操作すると共に足載せ台114を水平方向に戻すことで、下肢受け部材119は水平状態となり、また、支脚器開閉装置によって支脚器11は近接状態となって患者の足は閉脚状態となる。
【0046】
前記した下肢受け部材119が水平状態となった時に、前記下肢受け部材119における脹ら脛受け部119aが受け台116に載った状態となることから、患者の脹ら脛は受け台116で支持されるので、患者の下肢は水平状態に維持され、かつ、脹ら脛受け部119aは平坦な状態に戻される。
【0047】
なお、前記した実施例にあっては、足載せ台114をガスシリンダ118によって起伏させるようにしたが、ガスシリンダに代えて油圧シリンダや電動機とギアとの組み合わせた他のアクチュエータを利用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
11 支脚器
12 回動リンク
12a ポテンショメーター(センサ)
13 支脚器用油圧シリンダ
OR 制御回路
OP 油圧ポンプ
EV 電磁弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が分娩台本体側に軸支され他端に支脚器が取付けられた一対の回動リンクと、該回動リンクと前記分娩台本体側との間に設置された複動型の支脚器用油圧シリンダと、前記回動リンクの回転量を検出するセンサと、前記支脚器用油圧シリンダと油圧ポンプとを接続する分岐された油パイプと、該油パイプにおける前記油圧ポンプと前記分岐点との間に取付けられた1つの電磁弁と、前記センサよりの出力で前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断する制御回路とから構成し、
前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断し前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して前記一対の回動リンクの動作が停止され前記支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする産科分娩台の支脚器開閉装置。
【請求項2】
前記電磁弁を前記分岐された油パイプに取付け、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、負荷が加わった側の油パイプに取付けられた電磁弁が前記制御回路によって閉じられ負荷が加わった側の前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して回動リンクの動作を停止され、該回動リンクに取付けられている支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする請求項1記載の産科分娩台の支脚器開閉装置。
【請求項1】
一端が分娩台本体側に軸支され他端に支脚器が取付けられた一対の回動リンクと、該回動リンクと前記分娩台本体側との間に設置された複動型の支脚器用油圧シリンダと、前記回動リンクの回転量を検出するセンサと、前記支脚器用油圧シリンダと油圧ポンプとを接続する分岐された油パイプと、該油パイプにおける前記油圧ポンプと前記分岐点との間に取付けられた1つの電磁弁と、前記センサよりの出力で前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断する制御回路とから構成し、
前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、前記油圧ポンプと電磁弁への通電を遮断し前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して前記一対の回動リンクの動作が停止され前記支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする産科分娩台の支脚器開閉装置。
【請求項2】
前記電磁弁を前記分岐された油パイプに取付け、前記何れかの支脚器に負荷が加わり該支脚器が取付けられている前記回動リンクに負荷が加わったことを前記センサが検出すると、負荷が加わった側の油パイプに取付けられた電磁弁が前記制御回路によって閉じられ負荷が加わった側の前記支脚器用油圧シリンダへの油の供給を停止して回動リンクの動作を停止され、該回動リンクに取付けられている支脚器の開閉動作を停止することを特徴とする請求項1記載の産科分娩台の支脚器開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−161075(P2011−161075A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28534(P2010−28534)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】
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